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S-9-3-48 (3) 森林減少・劣化による花粉媒介・生物制御

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S-9-3-48 (3) 森林減少・劣化による花粉媒介・生物制御
S-9-3-48
(3) 森林減少・劣化による花粉媒介・生物制御サービスの広域変動予測手法の開発
国立研究開発法人森林総合研究所
森林昆虫研究領域
岡部貴美子
森林昆虫研究領域
昆虫生態研究室
森林植生研究領域
滝
久智
正木
隆・佐藤
徳島大学
山下
聡
京都大学
市岡
隆朗
神戸大学
前藤
薫
公一
保
<研究協力者>
国立研究開発法人
国立環境研究所
五箇
国立研究開発法人
森林総合研究所
長谷川
泰洋
平成23~27年度累計予算額:97,231千円(うち平成27年度:17,754千円)
予算額は、間接経費を含む。
[要旨]
森林生態系においては、送粉サービスや生物制御サービスが森林劣化による生物多様性の変化
の影響を強く受けることが懸念されている。また分解サービスは物質循環、炭素排出、リサイク
ルなどにおいて重要視されてきた。そこで森林劣化の観点からこれらの定量化を試みた結果、日
本のローカルな送粉サービスにおいては、送粉昆虫の多様性とソバの結実率との間に正の相関が
検出され、また人工林との明確な関連はないが、天然林や自然植生が正の効果を持つことが明ら
かとなった。一方昆虫による生物制御サービスについては、ローカルなスケールではおそらくミ
クロな景観および種の多様性により、明瞭な関係は抽出されなかった。分解サービスについては
樹種によって差異はあるものの、ブナ枯死木において木材分解菌の多様性が分解サービスの指標
となる可能性が示唆された。これらの定量化に基づき、ローカルな送粉、生物制御、分解サービ
スの予測マップを作成した。また国スケールではサービス供給能力(例:送粉効率)、移動性等を考
慮し、送粉サービスではニホンミツバチの遺伝的多様性、生物制御サービスでは捕食性天敵の種
多様性を指標とし、これらと景観および気象等の非生物的要因との関係を解析して全国的な生態
系サービス予測マップを作成した。マレーシア・ボルネオ島においては、生物制御サービス、分解
サービスについて森林劣化との関係を定量化し、東南アジアにおけるローカルなサービス予測マ
ップを作成した。これらのことから生態系サービス予測手法について、1.東アジアの温帯雨林
地域で生物相が類似する地域では類似の手法を適用可能である、2.気候帯と生物相が大きく異
なる地域では、主要なサービス供給生物を明らかにし、定量化する必要がある、3.基盤情報と
して植生図(土地利用図)を整備する必要がある、4.将来予測においては適切なシナリオの開発
が必要であることを整理した。またREDD+における生物多様性の指標として、人為かく乱や森林タ
イプなどを提案した。
S-9-3-49
[キーワード]
送粉サービス、生物制御サービス、分解サービス、森林劣化、REDD+
1.はじめに
生物多様性条約(CBD)の第10回会議(COP10)では「生物多様性概況第3版(GBO3)」の分析を
受けて、2010年以降の戦略目標(愛知目標)が採択された。この議論の中ではさまざまなステー
クホルダーによる具体的な行動を促すため、生態系サービスの評価などが強調されている。また
「生物多様性と生態系サービスの経済学(TEEB)」の最終報告書が提出されたことにより、革新
的資金メカニズムなどの議論も進んでおり、そのためにも生態系サービスの定量化を進める必要
がある。森林生態系に関しては、温暖化緩和策としての「森林の減少・劣化の防止による温室効
果ガスの排出削減(REDDおよびREDD+)」とのコベネフィットが期待され、その導入に欠かせない
評価やモニタリング手法が望まれている。さらに、「生物多様性と生態系サービスに関する政府
間科学政策プラットフォーム」(IPBES)の設置が決まり、生物多様性や生態系サービスの現状と
予測や評価に関する科学的知見がCBDの中で果たす役割が重要視されている。
このような国際的な状況の下、わが国の森林分野では大規模長期生態学研究のネットワーク
(JaLTER)等により長期的な森林動態の研究が進捗しているが、生態系機能の評価は端緒につい
たところであり、人間社会への恩恵としての生態系サービスについては未評価の部分が大きい。
今後生態系サービスには生物多様性保全のインセンティブとして、さらには安全安心な社会の構
築のための基盤情報として、期待が高まると予想される。加えて政府間地球観測作業部会(GEO)
による全球地球観測システム(GEOSS)のなかで、生物多様性観測に関する地球規模のネットワー
ク(GEO BON)がスタートし、日本国内の観測ネットワークとしてJBON、アジア太平洋地域にAP BON
が設立されたことから、東~東南アジアに共通の生態系サービス評価のためのプロトコルが望ま
れている。これらのことから本研究では、国際的に共通課題である森林減少や劣化と生態系サー
ビスの変動との関係を日本および東南アジアの研究サイトにおいて解明し、ローカルと国・地方
レベルという異なるスケールにおける適切な生態系管理手法開発に資する。
2.研究開発目的
森林の減少と劣化が昆虫を中心とした動物による花粉媒介と生物制御サービスにおよぼす影響
を解明し、森林景観データを用いて、森林に由来する送粉者と天敵による生態系サービスの地理
的・時間的変動をアジア全域について予測する手法を開発する。
3.研究開発方法
森林減少・劣化による花粉媒介・生物制御サービスの広域変動予測手法の開発のために、1)
モデルサイトにおける森林景観と生態系サービスを供給する生物との関係の解明、2)送粉者・
天敵昆虫のデータベース構築、3)森林劣化と生態系サービスの量的関係の解明およびこれらに
基づく日本および東アジアの生態系サービスローカル予測マップの作成と、日本の国レベルの同
マップ作成、4)生態系サービスの変動予測手法の開発を行った。生態系サービスの予測マップ
作成は、モデルサイトまたは全国に調査地点を設置し、生態系サービスを供給する生物種または
生物群の多様性と景観(特に森林劣化)との関係を定量化し、これを外挿して求める範囲で地図化
S-9-3-50
した(手法の概要は図(3)-1参照)。
1)日本国内で森林景観と送粉サービスの関係を定量化するために、茨城県常陸太田市に17地点
のモデルサイト(ソバ圃場)を設定した(図(3)-4参照)。モデルサイトで一定時間内にソバの花に訪
花する昆虫を採集し、それらの種と個体数を調べた。その中で最も機能が高いと考えられる送粉
昆虫を抽出し、森林景観との関係を解析した。また生物制御サービスを定量化するために同サイ
トにマレーズトラップ(図(3)-4参照)を設置し、ワタアブラムシ( Aphis gossypii )と天敵昆虫(テ
ントウムシおよびクサカゲロウ)を採集し、小型昆虫(害虫および天敵)と周辺の景観との関係を
解析した。さらに茨城県北茨城市と高萩市の森林地帯に集合フェロモントラップを設置してチャ
バネアオカメムシ( Plautia stali ;害虫)を採集し、森林景観と森林からのディスサービスである
害虫供給との関係を予測した。同時に天敵も採集し、景観との関係を考察した。分解サービスに
関しては、同様に茨城県北部の異なる森林タイプ・林齢の森林から得たサルノコシカケ類の多様性
を解析した。また老齢林内で異なる分解度のブナ属およびコナラ属の枯死木から木材腐朽菌のDNA
を採集し、菌類の多様性と分解速度との関係を解析した。
東南アジアではマレーシア・クチン市の郊外にモデルサイトを設定し(図(3)-2)、隣接する原生
林とアカシア林(二次林)の5本のライン上にマレーゼトラップを設置して天敵昆虫を採集、同定し
た。この野外調査にもとづき、森林劣化との定量的関係を解析した。またマレーシア・ビンツル市
のアカシア林、天然林には分解サービス調査のモデルサイトを設定し、木片の分解速度を指標と
する分解サービスの定量化を行った。さらに東南アジア地域の分解サービスの予測を行う準備と
して、タイ(アカシア林3、天然林2)、ベトナム(アカシア林2、天然林2)、マレーシアボルネオ
島サラワク、サバ(どちらもアカシア林4、天然林2)での多孔菌類の調査を元に、森林タイプと
多孔菌の多様性または種組成の一般化について検討した。
S-9-3-51
これらの研究結果と既存の出版物(主に科学論文)をレビューし、森林劣化と生態系サービスの
関係を定量的に予測した。またREDD+のスキームにおいて生態系サービス保全のための森林減少・
劣化対策の手法を取りまとめた。さらにREDD+におけるセーフガードの生物多様性および生態系サ
ービス保全のモニタリングと評価に資するために、アジア地域で有効と考えられる基準と指標を
整理した。
2)既存の採集情報や文献情報を元に、国内及びアジアの送粉及び天敵サービスを中心とするデ
ータベース構築を行った。
3)日本のローカルスケールではハナバチ類による送粉サービスを定量化するために茨城県常陸
太田市に17地点のモデルサイト(ソバ圃場)を設定した(図(3)-4参照)。モデルサイトで一定時間内
にソバの花に訪花する昆虫を採集し、それらの種と個体数を調べた。また同サイトでソバの結実
量を調べ、送粉サービスの定量化を行ったこの評価をもとに、送粉サービスマップのプロトコル
を作成した。またローカルな分解サービスを予測するために、木材腐朽菌をサービス供給生物と
し、分解速度を指標として定量化を行い、分解サービス予測マップのプロトコルを作成した。
国スケールの生態系サービスを予測するために、①送粉能力が高い、②営巣場所として森林に依
存する傾向がある、③餌探索のための移動能力が高いことから在来ミツバチのニホンミツバチ
( Apis cerana )を対象送粉生物として、北海道と南西諸島を除く全国135箇所で花または巣から
採集を行い、遺伝的多様性を指標として送粉サービス供給ポテンシャルの予測を行った。遺伝的
多様性に関しては採集個体の対立遺伝子数とヘテロ接合度を調べた。また送粉サービスの利用状
S-9-3-52
況を全国レベルで予測するため、農林水産省の作物統計を用いて、昆虫によって受粉する虫媒作
物の県単位の耕作地面積を調べた。
国スケールの生物制御サービスを予測するために、①害虫捕食能力が高い、②営巣場所として森
林に依存する傾向がある、③移動能力が高いことから、カリバチのうちスズメバチ類を対象捕食性
昆虫とし、南西諸島を除く全国132地点に誘引トラップ(オレンジジュースと蒸留酒の混合による
一般的なスズメバチトラップ)を設置して採集を行い、種の多様性を指標として生物制御サービ
ス供給ポテンシャルの予測を行った。
アジアのローカルスケール(マレーシア・クチン市郊外)における生物制御サービスの定量化に
もとづき、サブテーマ4によって作成された現地の植生図を利用して、予測マップを作成した。
アジアのローカルスケールの分解サービスマップ作成のためには、マレーシアサラワク州ビンツ
ル市郊外の天然林(5林分)、アカシア林(人工林、15林分)に木片を設置して分解速度を調べ、分
解サービスの定量化を行い、景観との関係を解析した。結果にもとづき、サブテーマ4に作成され
た現地の植生図を利用して、予測マップを作成した。
本研究による日本における生態系サービス予測マッププロトコルから、東アジアにおける生態
系サービス予測手法について考察した。また同様に熱帯アジアにおける生物多様性に強い影響を
受ける生態系サービスの調査、定量化手法について整理した。
4)茨城県北茨城市北部の10km四方のサイトの土地利用図にもとづき、1)と3)から20年後
の植生変化を予測して、分解サービス変動予測マップを作成した。
長期的な生物多様性および生態系の変動予測にはシナリオが必要であることから、既存の研究
をレビューし、トレンド分析を行った(図(3)-3)。生態系サービスの長期的な変動の予測を行うた
めにどのようなシナリオが適切かを明らかにするため、web of scienceに「生物多様性」「生態
S-9-3-53
系サービス」「シナリオ分析」等のキーワードを入力して既存の関連論文を抽出し、そのトレン
ドを解析した。
4.結果及び考察
1)本モデルサイトの送粉昆虫の中ではミツバチの送粉サービスが大きいことが示唆された。ニ
ホンミツバチ個体数はソバ畑周囲3km以内の森林面積と有意に相関し、森林等自然植生の面積と結
実量にも有意な相関が認められたことから、ニホンミツバチ個体数と森林面積(二次林または人
工林)及びニホンミツバチ個体数との関係について、競合する可能性のあるセイヨウミツバチ個
体数との関係について解析した。その結果、ニホンミツバチ個体数は二次林面積と有意な相関が
あることがわかった(図(3)-4)。
同モデルサイトにおける害虫であるワタアブラムシの発生は、天敵昆虫のテントウムシやクサ
カゲロウの在・不在、あるいは周囲の自然、半自然景観には影響を受けなかった。一方クサカゲ
ロウには当てはまらなかったものの、天敵のテントウムシの個体数には自然植生の面積が有意に
影響していた(図(3)-5)。このことから周辺植生は農地の天敵の増加に影響する可能性があるも
のの、小型昆虫においてはその距離によっては影響が顕在化しにくいことが示唆された。またチ
ャバネアオカメムシの個体群変動には、季節性、個体群密度、年次変動のほか周囲の景観が影響
していることがわかった。特に半径2km内の針葉樹人工林率と個体数の間に正の相関が認められた
(図(3)-6)。さらにカメムシの天敵ヤドリバエの個体群変動はカメムシの個体群変動にも影響を
受けていたことから、森林害虫の天敵は直接的のみならず間接的に周囲の森林植生の影響を受け
ていることが示唆された。
S-9-3-54
S-9-3-55
茨城県北部の森林地帯の調査結果から、森林タイプ間でサルノコシカケ類の種数と種構成が異
なることが明らかとなった(図(3)-7)。特に天然林二次林では、林齢とともに多孔菌類の種数が
増加することが明らかになったことから、温帯では、種数と種構成は分解における有用な指標と
なることが示唆された。そこで分解サービスの指標として分解速度を利用し、木材分解菌の多様
性と分解速度との関係を解析した。その結果、枯死木の樹種によって異なる傾向が見られたもの
の、ブナ枯死木の材密度と枯死後の年数との間に負の相関が認められた(図(3)-8A)。さらに単
木レベルでは材内の真菌類の多様性が分解の進行の程度を示す指標と正の相関を示していたこと
から、真菌類の多様性が分解の進行の指標となる可能性が示唆された(図(3)-8B)。分解サービ
スの一般的な指標はこれまで科学的に検討されてこなかったが、分解過程においてその速度は定
量化しやすい(山下ら 2013)。しかし分解速度が速いことは炭素の蓄積期間の短さとも考えられ
ることから、速度の速さそのものを分解サービスにおける望ましいの状態と捉えることは、必ず
しも正しくない。分解サービスを評価するためには、今後、分解速度の変化に対する参照レベル
の設定などのアプローチが必要である。
S-9-3-56
マレーシア、クチンの天然林とアカシア林では、カリバチ類は96個体が得られ、外部形態によ
りドロバチ科、アナバチ科、クモバチ科、コツチバチ科、ツチバチ科、スズメバチ科の58種に分
けられた。森林タイプによる種数や種組成の違いは明瞭ではなく、境界からの距離にも大きな差
異は認められなかった(図(3)-9)。これらのカリバチの餌メニューを見ると、全体的にはカリバ
チが食植性昆虫の天敵として機能している可能性が示唆された(図(3)-10)。また森林タイプごと
に寄生蜂個体数を定量化した結果、境界から30m付近と100m付近では個体数が有意に低かった。
つまり、境界のアカシア林側で個体数が減少した(図(3)-11)。したがって生物制御サービスは天
然林とアカシア林の境界付近からアカシア林内に入るに従って、減少するものと考えられる。
S-9-3-57
東南アジアの熱帯林地域ではアカシア人工林と天然林の間でサルノコシカケ類の種数の関係は
調査地により異なった。その一方で、属構成は林分間で異なった。また、アカシア林分間での変
異性が高かったことから、温帯林と異なり林分ごとの固有性が大きい可能性が示唆された(図
(3)-12)。これらのことから、小区画内の種数を指標とした場合、種数は指標性が低いことがわ
かった。ただし異なる林分あるいは植生間で属構成は大きく異なったので、木材腐朽菌は属レベ
ルでは指標となりうると考える。また二次林では森林の林齢とともにサルノコシカケ類の種数が
増加する傾向が認められたことから、同じ遷移系列中の森林であれば、種数は有用な指標になる
と考えられた。
S-9-3-58
東南アジアの熱帯林地域において森林タイプごとに分解速度を定量化した結果、アカシア林に
おける分解速度は天然林における分解速度よりも低かった。その一方で、アカシア林内の分解速
度において周囲の天然林面積と負の相関関係を検出した(図(3)-13)。また、設置した材に対する
シロアリの食痕の頻度は周囲の天然林面積と負の相関関係にあった。調査対象とした林分の数が
少ないため、今後の検討が必要とされるものの、広大なアカシア林の内部では、シロアリによる
食害が増える可能性が示唆される。シロアリ捕食者の分布パターンが寄生蜂と同じ分布パターン
を示すのであれば、広大なアカシア林内部では、捕食者の個体数密度が減少しているのかもしれ
ない。
REDD+等森林保全に関連するメカニズムに貢献するために、森林劣化の定義(FAOの定義:期待
される=参照レベル、からの生物多様性及び生態系サービスの低下)を科学的に示した。生物多様
性および生態系サービスの劣化は熱帯林では主に天然林の改変によって生じるが、天然林を維持
しても分断化されたり、温暖化等の影響があったりすることでより劣化が懸念される。また生態
S-9-3-59
系サービス間(生物多様性の影響を強く受けるサービスと受けないサービス間)のトレードオフ
を明示した(図(3)-14)。また本研究成果によって、熱帯林では天然林の転換による生物多様性
や生態系サービスの変動が著しいことが示唆されたことから、REDD+のセーフガードにおいて生物
多様性指標として、土地利用区分と面積、森林および非森林のタイプ別の配置と面積、貴重な生
態系、林分構造、人為攪乱、分断化、森林性の種、定量的生態系サービスを提案した(表(3)-1;
REDD+のためのセーフガード・ガイドブック
表(3)-1
林野庁2016)。
REDD+セーフガード項目(e)(生物多様性保全等)における指標
項目
*
1、
2、
3
指標
測定項目の例
スケー
ル
国、準
国、プロ
ジェク
ト
土地利用
区分と面
積
森林、農地、そ
の他の自然植生
1、
2、
3
森林およ
び非森林
のタイプ
別の配置
(地図)
と面積
原生林、二次林、 国、準国
人工林の区別
(各タイプとも
細分化できるこ
とが望ましい)
モニタリング
手法
リモートセン
シング情報、
国別レポート
(生物多様性
条約等)
リモートセン
シング情報
(REDD+にお
ける森林タイ
プ別炭素蓄積
量を推定する
際の情報を利
用する)、そ
の他の森林資
源調査
コスト
コスト
(支出) (時間)
低(既存 低
情報有
り)~高
い(なし)
低(既存
情報有
り)~中
(なし)
低
科学的
専門性
低~中
(技術
供与が
可能)
低~中
(技術
供与が
可能)
S-9-3-60
原生林、二次林、 プロジ
細分化された人 ェクト
工林(例:単一
樹種または混交
林、早生樹等)
1、
2、
3
2
1、
2、
3
貴重な生
態系
林分構造
人為攪乱
保護地及び稀少
な生態系の面
積、位置と状態
(劣化の有無や
程度)
国、準国
保護地及び地域
的に稀少な生態
系の面積、位置
と状態(劣化の
有無や程度)
プロジ
ェクト
林齢(または林
冠高)を含む森
林タイプ別情報
国、準国
林齢(または林
冠高)、林冠閉
鎖度(ギャッ
プ)、バイオマ
ス量、倒木量、
樹木の機能群分
布
プロジ
ェクト
伐採法(皆伐、
低インパクト伐
採など)、土地
改変(大面積農
国、準国
リモートセン
シング情報
(REDD+にお
ける森林タイ
プ別炭素蓄積
量を推定する
際の情報を利
用する)、植
生調査、植林
に関する情報
収集および現
地調査
リモートセン
シング情報に
森林性の種情
報(IUCNやCBD
の報告書な
ど)を加味し
て地図化、劣
化の現地調査
リモートセン
シング情報に
森林性の種情
報(IUCNやCBD
の報告書な
ど)を加味し
て地図化、劣
化の現地調査
リモートセン
シング情報
(REDD+にお
ける森林タイ
プ別炭素蓄積
量を推定する
際の情報を利
用する)
リモートセン
シング情報
(樹冠高やギ
ャップ)、プ
ロットを設定
した現地調査
(REDD+のサ
ンプリング調
査で代替する
か、調査項目
を追加する)
森林からおよ
び森林への土
地改変は森林
資源調査等を
低(既存
情報有
り)~高
(なし)
中
低~中
(技術
供与が
可能)
低(既存
情報有
り)~高
(なし)
中~高
中~高
低(既存
情報有
り)~高
(なし)
中~高
中~高
低
低
低~中
(技術
供与が
可能)
低(既存
情報有
り)~中
(なし)
中
低~中
(技術
供与が
可能)
低
低
低
S-9-3-61
2、
3
1、
2、
4
*
分断化
森林性の
種
地化、人工林化、
アグロフォレス
トリーなど)
利用
伐採法(皆伐、 プロジ
低インパクト伐 ェクト
採など)、土地
改変(大面積農
地化、人工林化、
アグロフォレス
トリーなど)の
場所と量の特定
およびこれによ
って影響を受け
た生物や生態系
サービスの特定
森林全体/重要 国、準国
な自然植生の面
積とその連結性
現地調査(森
林利用許可を
持つ事業者か
らの聞き取
り、生物多様
性やサービス
は森林性の種
の調査で代替
等)
低
低
中~高
生態系タイプ
別の配置の地
図化と面積と
同時に実施
低(既存
情報有
り)~中
低
低
生態系タイプ
別の配置の地
図化、重要種
の分布調査に
基づくコリド
ーの推定
地域レベルの
調査の統合
中
低
中~高
低(既存
情報有
り)~中
低
低~中
中
高
中~高
生態系タイプご
との面積と同一
タイプ間の距
離、コリドーの
存在
プロジ
ェクト
国の希少種、絶
滅危惧種、象徴
種などの記述と
保全手法、分布
状況(地図化が
望ましい)
国、準国
国の希少種、絶
滅危惧種の分布
と保全状況、地
域的絶滅危惧種
や希少種の分布
と保全状況、地
域的な重要種
(林産物を含
む)の分布と利
用および保全策
プロジ
ェクト
現地調査(自
動撮影、プロ
ット調査等の
生物調査)、
地域住民への
聞き取り
環境セーフガード(カンクン合意のガイダンスにおける(e))の分類:1.天然林の保全、2.
生物多様性の保全(森林にかかわらず)、3.天然林の転換がない、4.天然林保全と(そこか
らの)生態系サービスの保全への動機付け、5.その他の社会・環境便益の増強。
REDD+セーフガードでは天然林保全、生物多様性および生態系サービスの保全と持続可能な利用、
社会・環境便益の増強が求められていることから、これらのうち生態系サービス保全のために、本
S-9-3-62
研究および既存研究のレビューによって熱帯林に期待される主な生態系サービスとそのメカニズ
ムやプロセス、考慮すべきスケールについて明らかにした(表(3)-2)。
表(3)-2
生態
系サ
ービ
ス
生
産
生態系サービスのメカニズムから見た特徴
キーファクタ
ー/生物学的
過程
メカニズム/
対処
メカニズ
ム:相補性、
要因:種、
促進、相利共
生態系タイ
生、光合成、
プ、森林面
種の優占
積、生息地、
管理:造林、
過程:個体
SFM、人工林、
あるいは個
森林法、ガバ
体群増殖
ナンス、狩猟
規制
生態系との関係
種との関係
スケール
(面積)
スケール(時
間)
調整サービスの
影響を受ける
(送粉、生物制
御、土壌養分)
および種子分散
や水の供給など
のその他の生態
系プロセス
しばしば種数と関
連 (Thompson et
al. 2009、 Zhang
et al. 2012) 、機
能種と強く関連
(Diaz and Cabido
2001). バイオマ
スは種の多様性と
関連(Cardinale et
al. 2011). 植物の
遺伝的多様性が生
産性と関連
(Crutsinger et
al. 2006).
林分~ラ
ンドスケ
ープ
伐期/成木
までの年数
林分
植物の多様
性と土壌生
物相との関
係性が確立
する程度長
い、植物種
が変化して
から、土壌
動物相が代
わるまでに
4~6年かか
る
(Eisenhaue
r et al.
2012)
通常はロ
ーカルだ
が、より
広い地方
レベルも
(Tscharn
tke et
al.
ランドスケ
ープレベル
の天敵保持
状況
(Tscharntk
e et al.
2008). も
し天敵がい
物
質
循
環
及
び
分
解
要因:温度、
湿度、バイ
オマス、落
葉量
過程:窒素
固定、生物
的分解、植
物の吸収に
よる促進
(Vitousek
and
Sanford
1986)
メカニズ
ム:高剛性や
窒素固定を
含む化学反
応、生物間相
互作用を介
した食物網
機械的・有機
的分解管理
(例:共生菌
の供給)
病
害
虫
制
御
要因:種組
成、個体数、
生息地、気
象
過程:個体
群動態、大
発生 s
メカニズ
ム:森林害虫
の天敵によ
天敵の生息地が
る捕食、寄
必要(Siemann
生、
et al. 1998)
管理:天敵の
生息地保全、
ホストの供
樹冠の存在>>樹
冠の消失 (Firn
et al. 2007)
土壌性生物の多様
性は土壌養分、形
成、質②関連する
(Harris 2009) し
かし常に窒素が必
要なわけではない
(Diaz and Cabido
2001). 分解生物
相はよく物種数と
関連する(Zeugin
et al. 2010).
微生物の多様性は
理論的に重要だ
が、実験的に証明
されない
(Hättenschwiler
et al. 2005)、 窒
素は植物生長を促
進する (Davies et
al. 1999)
天敵の多様性は生
物防除に必須
(Hambäck et al.
2000; Gifford et
al. 2012)、 捕食
者の多様性は環境
要因に依存tt
(Tylianakis et
S-9-3-63
与
送
粉
種
子
分
散
水
分
量
al. 2008).
2008).
一般に送粉者の多
様性増加で受粉率
が高まる (e.g.
Kremen et al.
2002;
Tylianakis et al
2008)
送粉者の
移動能に
よるがロ
ーカル
(Klein et
al. 2004)
周辺ランドスケ
ープに生息地が
あることが必要
(Tscharntke et
al. 2008);熱帯
の広いランドス
ケー王では 群
集の形成が可能
分散者の多様性は
正に働く(Garcia
and Martinez
2012); 共進化に
より冗長性は低
い、特に大型種子
の場合
採餌およ
び種子分
散移動が
可能な範
囲の地域
およびラ
ンドスケ
ープ
(Tscharr
ntke et
al.
2008);
遺伝的分
散には林
分~ラン
ドスケー
プレベル
発芽までの
時間と更新
にかかる時
間による
定量的な水分供
給には、森林>
植生を改変して
いない裸地>改
変した土地
(Bruijnzeel
2004、 Brauman
et al. 2007)
成長率によって水
分要求量が高まる
(Law et al. 2002)
しかし早生樹はよ
り多くの水分を要
求する(Stape et
al. 2004、 Binkley
2012). アカシア
など一部の種は水
分要求が高く、地
域的な水量に影響
を及ぼす (van
Wilgen et al.
2001). 望ましい
供給量は天然林>
人工林 (Lara et
al. 2009)
ローカル
から地方
タイムラグ
がある
メカニズ
ム:動物によ
要因:種組
る花粉の移
成、個体数、
送(通常昆
送粉者の生息地
生息地、気
虫、鳥、ある が必要 (e.g.
象
種の哺乳類) Ricketts 2004)
過程:共進
管理:送粉者
化
の生息地保
全
メカニズ
要因:種組 ム:果実食、
成、個体数、 種子食、通常
生息地、気 鳥や哺乳類
による
象
過程:共進 管理:巣や採
餌種の生息
化
地保全
要因:植物
被覆、植物
根、降水量、
人為的消費
過程:植物
や土壌によ
る保持
メカニズ
ム:植物や土
壌による水
分吸収、保持
管理:森林生
態系の維持
れば、生物
種による
が、短期間
で機能を発
揮
ランドスケ
ープレベル
で送粉者を
プールする
ために要す
る時間
(Tscharntk
e et al.
2008). 既
存の送粉者
があれば短
期間で発揮
S-9-3-64
水
質
要因:物理
的あるいは
生物学的フ
ィルター効
果
過程:汚染
から洗浄水
への浄化
メカニズ
ム:土壌屋根
によるろ過
(Neary et
al. 2009)お
よび解毒
管理:森林
面積の維持
(天然林>
人工林)
(Little et
al. 2009)
天然林>修復し
た生態系>大面
積農地(Foley
et al 2005)
森林>耕作地>
宅地(Neary et
al. 2009)
渓畔林が重要
(Postel and
Thompson 2005)
おそらくない
ローカル
から地方
短期~長期
(不明瞭)
2)送粉サービスでは、1979、1989年の札幌市内の同一地域のハナバチ採集データが得られたこ
とから、未同定標本の同定を完了し、データベース化した。標本は今後博物館に収められる予定
である。またデータベースは北海道大学が公開を検討する予定である(図(3)-15)。また東南アジ
アでは、土地利用(原生林、二次林、アブラヤシ園、ゴム園など)とローカルな生物多様性の関
係に関するデータベースを作成した。このデータベースは生物情報を格納したものであり、メタ
解析等の研究上の利用が可能である。現在は徳島大学が所蔵している。
3)茨城県常陸太田市に17地点のモデルサイトでの結果にもとづき、同地域でローカルな生態系
サービス予測マッププロトコルを作成した(図(3)-16)。ローカルなスケールでは、様々な送粉昆
虫が様々な種類の送粉を担うことから、送粉昆虫の種の多様性を指標とした定量化が可能である。
送粉サービスの予測を行うためには、送粉昆虫の中でも機能が高いハナバチの種多様性を説明可
S-9-3-65
能な変数を求め、説明変数にもとづき予測を行う。本研究ではソバの結実を例にとると、ソバの
結実率とハナバチの多様性の間には正の相関が認められている(Taki et al. 2010) 1) 。さらにソ
バの結実にはミツバチの関与が大きく、ほかのハナバチ類の寄与は比較的小さいことが明らかと
なっていることから、本研究ではニホンミツバチに着目して、送粉機能の指標となるニホンミツ
バチの個体数が周囲の植生、人工林率の影響を受けることを明らかにした。これらのことからサ
ービス予測マップ作成に際して、まず対象地域の天然林、人工林、草地、農地、植生のない土地
等を示す植生図を作成し(図(3)-16左)、最終結果に基づくハナバチ個体数の分布図(図(3)-16中
央)を重ね合わせることで、ハナバチによるポテンシャルな生態系サービス予測マップの作成が可
能である(図(3)-16右)。アジア地域でも湿潤な温帯地域では同様の、①ハナバチの多様性に関する
説明変数の抽出(生態学的要因、気象的要因など)、②説明変数によって多様性を説明可能な空間ス
ケールの探索、③説明変数の分布予測マップの作成、④①、②にもとづき説明変数にハナバチの多
様性を外挿することで、ポテンシャルな送粉サービス予測マップが得られる。日本以外でプロト
コルを応用する際に重要な点は、①地域的に重要な送粉生物を明らかにし、これらの生物によるサ
ービスを定量化すること、②該当生物の多様性またはサービス量を説明する要因を明らかにするこ
とである。
生物制御サービスもローカルマップ作成のために同地域で定量化を試みた。しかし1)で述べ
たように、ファインスケールでは対象作物、対象害虫、対象天敵種などによって環境に対しての
反応が異なるため、プロトコルの作成は行っていない。寄生蜂などの小型天敵は林内に生息する
個体数が森林タイプや林齢に応答することが明らかになっているが(Maleque et al. 2010) 2) 、
本研究から農地における天敵として評価した場合は、植生が影響を及ぼす空間スケールを特定す
ることが困難であることがわかった。一方害虫も、周辺植生への応答は種によって異なった。こ
れらが移動性によるものか、生息地や餌種によるのかは明らかになっていない。ファインスケー
S-9-3-66
ルの生物制御サービスの予測に関しては、特定の作物を対象とするなど、更なる検討が必要であ
る。
分解サービスについても1)で定量化を行った。分解サービスでは生物制御サービス同様空間
スケールを明らかにしていないが、森林内の枯死木の分解を対象にしていることから、森林タイ
プと林齢にもとづき予測マップを作成することが可能である。その作成方法は、①分解速度を指
標とする場合は、分解速度と菌類の多様性の相関を確認する、②相関がある場合、菌類の多様性
と森林タイプ等の森林景観とその他の説明変数との関係を明らかにする、③①、②にもとづき、
森林を中心とする植生図に菌類の多様性を外挿する、である。
ニホンミツバチを指標とし、国スケールの送粉サービス予測マップを作成した。ミツバチは個
体数が多いほど機能量が大きくなると推測されるが、個体数を算出することが不可能なため、遺
伝的多様性が巣の数の代替指標であり、さらには持続性をも評価できることから、対立遺伝子数
とヘテロ接合度をインデックスとして、森林タイプ、気象要因などとの相関を解析した。その結
果、人工林との間に負の相関が認められた(図(3)-17)。しかし森林のほかに農地や宅地などの
土地利用を加えると、オープンランドと強い正の相関があることが明らかとなった。これらの結
果を基に、ニホンミツバチが自然分布しない地域を除く日本全土のポテンシャルな送粉サービス
予測マップを作成した(図(3)-18)。ポテンシャルなサービス予測マップは、生態系サービスを供
給可能な量を予測したマップである。しかし持続的な生態系サービス利用のためには、実際にど
の地域で該当サービスが必要とされているのか、また必要な地域でサービスが十分に供給されて
いるのかを明確にする必要がある。そこで作物統計にもとづき、サービスの利用予測マップを作
成した(図(3)-19)。ニホンミツバチの遺伝的多様性が個体数を反映するとすれば、比較的広い平
野を有する地域でより高い送粉サービスが期待される(図(3)-18)。また虫媒作物は平地の畑地に
おける作付面積が大きいことから(図(3)-19)、現状では生態系サービスの潜在的な供給量の多く
が享受されていることが示唆された。また里山景観におけるこれらのサービス供給生物の生息地
保全がより重要であることが示唆された。
ニホンミツバチはアジアに生息するアジアミツバチの日本亜種であることから、東アジアのア
ジアミツバチ分布域では同様の手法で予測を行うことが可能であると考える。日本ではミツバチ
の遺伝的多様性と気象要因との間にも相関が認められたことから、手法の適用に当たっては、森
林劣化のほかに雨量や気温の影響を受ける森林タイプ等についても検討すべきである。
S-9-3-67
S-9-3-68
移動性が高く捕食能力も高い捕食性天敵のスズメバチを指標とし、国スケールの生物制御サー
ビス予測マップを作成した。スズメバチは、コガタスズメバチやキイロスズメバチは食性範囲が
広い、モンスズメバチはセミを捕食する、オオスズメバチは大型のガ幼虫を好むなど、種によっ
て餌の選好性が異なることから、種の多様性と生態系機能に正の相関が見られることが示唆され
る。調査地点からは12種5548個体が得られ、内訳は、 Vespa 属:キイロスズメバチ、コガタスズメ
バチ、モンスズメバチ、オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、チャイロスズメバチ、 Vespula 属:ク
ロスズメバチ、シダクロスズメバチ、キオビクロスズメバチ、ツヤクロスズメバチ、Dolichovespula
属:キオビホオナガスズメバチ、シロオビホオナガスズメバチであった。この結果をもとにスズ
メバチの種多様性と景観や気象要因との関係を解析した。その結果、いずれのグループも人工林
率と負の相関が認められた(表(3)-3)。景観に対する反応は属ごとに異なり、比較的大型の Vespa
属は人工林、それ以外の属は人工林、耕作地、年平均気温と有為な負の相関が認められた。これ
らの解析に基づき種の多様性をマップ上に示したところ、山地の森林地帯で多様性が高い傾向が
認められた(図(3)-20)。
S-9-3-69
東アジア全域には精度の高い土地利用の情報がないか入手できないため、現時点では網羅的な
マップを作成することはできない。しかしながら、ニホンミツバチはアジアミツバチの亜種とし
て類似の生活史をもつことが推測されること、カリバチについても共通種が認められることから、
特に温帯湿潤地域では本マップ作成手法を応用することで、生態系サービスの潜在的な供給マッ
S-9-3-70
プの作成と、生態系改変や劣化との関係予測が可能になると考える。しかしながら科学的知見に
もとづいて対象とすべき天敵種を選択することが必要で、種によっては日本で通常利用されてい
るトラップ手法が適切でない場合もありうるので留意する必要がある(表(3)-4)。
S-9-3-71
アジアのローカルスケール(クチン市周辺)における生物制御サービスの定量化に基づき、サ
ブテーマ4によって作成された現地の植生図を利用して、予測マップを作成した(図(3)-21)。
これを作成するに当たっては、ハチ類の効率的な採集が必須であり、適切な方法を選ばなければ
ならない。例えばマレーゼトラップを用いることで効率的な採集を行うことができるが、竹筒ト
ラップでは営巣率が極端に低いか営巣期間が集中しないために、長期間の調査が必要となる。し
たがって、熱帯雨林地域において、生物制御サービスを供給するカリバチ類の量・種多様度の空
間変異を簡便に評価するための手法として、竹筒トラップは不適であり、マレーゼトラップの方
が適当と考えられた。方法論の検討に加えて、種同定の困難さを解決する必要もある。寄生蜂、
カリバチともに未記載種が多く、同定には困難を要した。広域で生物制御サービスを評価するに
当たっては、簡便な調査が必要となるため、個体数のみを指標して森いることも考えられる。
アジアのローカルスケール(ビンツル市周辺)における分解サービスの定量化に基づき、サブ
テーマ4によって作成された現地の植生図を利用して、予測マップを作成した(図(3)-22)。こ
れを作成するに当たっては、分解速度を定量化するためにある程度の労力が必要となる。しかし
ながら、菌類の種同定には高い専門性が必要であることや遺伝情報を必ずしも入手できるとは限
らないことなどから、試料を設置・回収して分解速度を直接定量化する方法は広域での評価を行
う上で有用であろう。ただし、これに当たっては、精度の高い植生図が対象地域にあることが必
要である。
4)生態系サービスの将来的な変動を予測するために、茨城県北部の森林地帯(約10km四方)で
作成された生態系サービス予測マップを利用し、森林の成長シナリオ(ビジネス・アズ・ユージ
ュアル)に基づいて20年後を予測した。既に送粉、生物制御サービスは予測済みであったので、
分解サービスについて予測した。既に(国)森林総合研究所が所有する1962年、1999年の土地利
用図から、ビジネスアズユージュアルのシナリオに基づき、20年後(2019年)の土地利用予測図
S-9-3-72
を作成した。これらの土地利用図に基づき、分解サービス変動予測マップ(分解速度に基づく)
を作成した(図(3)-23)。20年間に人工林の成長により伐採が進むと予想されるが、一方該当地域
では再造林が促進されず広葉樹林化が進むと予想されるため、分解サービスは促進されることが
予測された。
より長期的な変動予測を行うためにはシナリオが必要となることから、最近のシナリオ分析のト
レンドについて分析した。検索語別の文献数の変遷は、「温暖化」、「農業」、「森林」、「開
発」などは研究が公表され始めた1990年代前半から公表数が多く、「バイオマス」、「都市」、
「ローカル」などは、2005年前後から増加の傾向が見られた。シナリオアプローチの事例研究に
おいては、IPCCやMAに見られる4象限に分けた社会経済的なシナリオを用い、予測年数は50年か
ら100年として、土地利用の他に気候変動を主要なドライバーとした研究が多かった(表(3)-5)。
また、推計においては、予測の目的や範囲に応じて異なるグリッドスケールを用いていた。ほか
に、主要なドライバーごとの影響力の違いやドライバー間の相互関係を考慮した報告や都市拡大
の影響を考慮した報告がみられた(図(3)-24)。これらの方法の枠組みは、日本の陸域のBD・ES
に対して当該手法を適用する際に示唆に富むと考えられる。
S-9-3-73
5.本研究により得られた成果
(1)科学的意義
送粉サービスの供給者として最も重要な昆虫の一つであるニホンミツバチの遺伝的多様性の地
域的変異を明らかにしたことにより、景観に基づく地域的な多様性及び生態系サービス評価の重
要性を示すことが可能になった。
アジアの一地域において、原生林の改変により天敵サービスが変化することを明らかにし、分解
サービスにも定量的な差異が認められることを示唆したことから、森林劣化の定量的評価手法の
S-9-3-74
開発が可能になった。
これまで経済的評価が先行していた生態系サービスを生物・生態学的に定量化することにより、
各生態系サービスにおける経済的価値が異なるアジア地域に標準化可能な指標およびモニタリン
グ手法の開発着手が可能となった。またこのことにより、生物多様性と高い相関を示す生態系サ
ービスを評価軸とする生態系の劣化の評価が今後可能になると考える。
生態系サービス予測のための定量化手法として、土地利用変化によって説明可能な生態系サー
ビス供給者の個体数、種や遺伝的多様性の予測手法を開発した。このことにより土地利用変化シ
ナリオに基づく将来予測が可能となった。またこれらを地図化する手法を開発した。
(2)環境政策への貢献
<行政が既に活用した成果>
・本研究成果を元にCPF/ IUFRO GFEPに参画して生物多様性、住民及び炭素に関する総説を作成し、
CBD COP11及びUNFCCC COP18のサイドイベントで報告した(2012年)。
・農林水産省林野庁事業の評価等のプロジェクトに対して助言を行った(2013-2015年)。
・本研究成果を元にIPBES Deliverable 3(a): Thematic assessment of pollinators、 pollination
and food production にLeading Authorとして参加し、花粉媒介と食糧生産について現状や現
在までの対策について本プロジェクト成果にもとづき、既存報告を取りまとめた(2013-2015年)。
・第 2 回生物多様性総合評価(JBO2)に貢献した(データを提供し、送粉サービスの評価結果が p113
に採用された)(2015 年)。
・林野庁事業「森林保全セーフガード確立事業」の REDD+におけるセーフガードの基準指標の作成と
ガイドブックの作成に貢献した(REDD プラスセーフガードにおけるモニタリングの基準指標と
して、本研究成果に基づき熱帯森林の生物多様性指標に森林タイプや人為かく乱等を含め、ま
た生態系サービスについての解説に利用した)(2014-2015 年)。
<行政が活用することが見込まれる成果>
・IPBES
2b:Regional Assessments for Asia Pacific Region にリードオーサーとして参画して
いる(プロジェクト成果に基づきアジア太平洋地域の生物多様性におけるガバナンスについて、
特に森林劣化および REDD+について生物多様性保全とのリンクに関する本成果を含めた既存の
報告を取りまとめ、報告書を作成している)。
6.国際共同研究等の状況
・「寒帯~温帯林における枯死木による炭素蓄積評価(仮称)」;Martin Moroni博士(CSIRO・オ
ーストラリア);オーストラリア、ドイツ、スロバキア、チェコ共和国、スウェーデン、ノル
ウェー、ロシア、カナダ、合衆国の研究者と連携;IUFRO(国際森林研究機関連合)第8分科会に
おける生物多様性と生態系機能に関する国際共同研究
・「IUFRO Global Forest Expert Panel」;Understanding Relationships between Biodiversity、
Carbon、 Forests and People: The Key to Achieving REDD+ Objectives; John A. Parrotta
博士(USDA Forest Service)、IUFRO事務局担当者(Christoph Wildburger、 Stephanie
Mansourian);UNEP/WCMC、 イギリス、カナダ、イタリア、オランダ、オーストリア、スウェ
S-9-3-75
ーデン、フランス、ドイツ、スコットランド、フィンランド、スイス、カメルーン、インドネ
シア、タイ、オーストラリア、合衆国、ブラジル;REDD+における生物多様性の寄与に関する分
析;IUFROにおける専門家委員会としてREDD+への多面的な提言に関する出版物を作成し、2012
年のドーハにおけるCOP18で公表し、シンポジウムを主催
・「生物多様性と農業(仮称)」;Nancy Shellhorn博士(CSIRO・オーストラリア);イタリア、
イギリス、ハンガリー、オランダ、ベルギー、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーラ
ンド、合衆国;OECDの支援により、生物多様性と農業における食の安全性について、文献ベー
スの分析を行い、論文ベースで報告
・「Comparison of diversity and abundance of insects functioning as predator, pollinators
and decomposers in Acacia mangium plantation and the adjacent natural forest in Bintulu,
Sarawak」; As indices of ecosystem services inherent to tropical rainforest; Joseph Jawa
Kendawang 博士(SPF・マレーシア)、 Paulus Meleng研究員(RDID・マレーシア);マレーシア・
ラワク州内の天然林及び人工林における生物多様性と生態系機能に関する国際共同研究
7.研究成果の発表状況
(1)誌上発表
<論文(査読あり)>
1) Taki, H., Yamaura, Y., Okabe, K. & Maeto K. (2011). Plantation vs. natural forest: Matrix
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3) 滝久智,山浦悠一,田中浩(2011). 森林景観と生態系サービス. In: シリーズ現代の生態学8,森
林生態学 (正木隆, 相場慎一郎 編). 共立出版, 東京, pp. 245-257.
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Biodiversity of man-made open habitats in an underused country: a class of multispecies
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S., Parrotta, J.A., Sasaki, N., Schmitt, C.B., Barlow, J., Kanninen, M., Okabe, L., Pan,
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Cunningham, S.A., Danforth, B.N., Dudenhöffer, J-H., Elle, E., Gaines, H. R., Garibaldi
L.A., Gratton, C., Holzschuh, A., Isaacs, R., Javorek, S., Jha, K.S., Klein, A.M.,
Krewenka, K., Mandelik, Y., Mayfield, M.M., Morandin, L.,
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Cunningham, S.A., Mayfield, N.M., Arthur, A.D., Andersson, G.K.S., Bommarco, R., Brittain,
S-9-3-78
C.A., Carvalheiro, L.G., Chacoff, N.P., Enttling, M.H., Foully, B., Freitas, B.M.,
Gemmill-Herren, B., Ghazoul, J., Griffin, S., Gross, C.L., Herbertsson, L., Herzog, F.,
Hipolito, J., Jaggar, S., Jauker, F., Klein, A.-A., Klein, D., Krishnan, S., Lemos, C.Q.,
Lindstron, S.A.M., Mandelik, Y., Monteiro, V.M., Nelson, W., Nilsson, L., Pattermore,
D., Pereira, N., Pisanty, G., Potts, S.G., Reemer, M., Rundlof, M., Sheffield, C.S.,
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29)
長谷川泰洋(2016). 名古屋都市圏における社叢管理主体の文化的サービス保全の意識. 日
本造園学会研究論文集,79, (in press).
<その他誌上発表(査読なし)>
1) 滝久智:植物防疫 69、 306-310 (2015).
「チャバネアオカメムシの広域管理に向けた針葉樹人工林の季節ごとの景観の影響評価」
(2)口頭発表(学会等)
1)山下聡、吉村剛、本田与一、服部武文、土居修一、服部力:第55回日本菌学会大会(2011)
「東南アジアにおけるアカシア植林が多孔菌類の群集構造に及ぼす影響」
2) 山下聡、安藤清志、伊藤昇、片山雄史、川那部真、丸山宗利、保科英人、市岡孝朗:第71回日
本昆虫学会(2011)
「東南アジア熱帯林における多孔菌類食性甲虫種構成の菌類間変異」
3) H. TAKI: Conservation and sustainable use of pollinators: towards global assessments.
Fukuoka, Japan, 2012.1
“Pollinator responses to forest management in Japan.”
4) K. OKABE, S. YAMASHITA, T. HATTORI, M. HASEGAWA, H. TANAKA and S. MAKINO: The 2nd
International Conference on Biodiversity in Forest Ecosystems and Landscapes. Cork,
Ireland, 2012.
“Conservation of deadwood could conserve microscopic organisms such as mushroom mites.”
5) K. TABUCHI, H. TAKI, H. IWAI, N. MIZUTANI, K. NAGASAKA, S. MORIYA and R. SASAKI: XXIV
International Congress of Entomology. Daegu, Korea, 2012.
“Detecting source habitat of the bean bug Riptortus pedestris and its egg parasitoid:
toward area-wide pest management using natural pest control.”
6) 滝久智: 日本生態学会第60回大会 (2013)
「日本の土地利用と送粉者 -森林管理を中心に-」
7) 宇野正人、小黒芳生、佐々木雄大、滝久智、横井智之、中静透: 日本生態学会第60回大会(2013)
「土地利用と作物生産の関係 -統計資料による送粉サービスの評価-」
8) 宇野正人、小黒芳生、佐々木雄大、滝久智、中静透: 日本生態学会第60回大会 (2013)
「土地利用と作物生産 -統計資料によるポリネーションサービスの評価-」
9) 大村彰、仲島義貴、赤坂卓美、滝久智、田渕研: 日本応用動物昆虫学会・日本昆虫学会共催北
S-9-3-79
海道支部大会(2013)
「周辺環境がイネの主要害虫2種の個体数におよぼす影響」
10) 仲島義貴、大村彰、赤坂卓美、滝久智、田渕研: 第57回日本応用動物昆虫学会大会 (2013)
「非農耕地と周辺作物が北海道の水田害虫の個体数に及ぼす影響」
11) 滝久智、前藤薫、岡部貴美子、春山直人: 第57回日本応用動物昆虫学会大会(2013)
「複雑な景観における農地周辺の自然植生と農地内の害虫被害との関係」
12) R. SUZUKI, H. FADAEI, R. ISHII, S. NAGAI, K. OKABE, S. YAMASHITA, H. TAKI, Y. HONDA,
and K. KAJIWARA: AGU fall meeting, San Francisco, USA, 2013.
“Super High Resolution Airborne Remote Sensing for Evaluating the Decomposition Function
of Ecosystem of Temperate Forest in Japan”
13)滝久智、大河内勇、岡部貴美子、井上大成、後藤秀章、松村雄、牧野俊一:第61回日本生態
学会大会(2014)
「天然林と人工林の遷移とハナバチ:草地環境の重要性」
14)山下聡、服部力、岡部貴美子:第61回日本生態学会大会(2014)
「生物群集に対する人為活動と環境要因の影響を相対的に評価する:木材腐朽菌群集を例に」
15)滝久智、前藤薫、岡部貴美子、春山直人:第58回日本応用動物昆虫学会大会(2014)
「ソバ畑のアブラムシと捕食天敵が示唆する景観規模における天敵利用の注意点」
16)山下聡、服部力、岡部貴美子:第125回日本森林学会大会(2014)
「子実体を用いた多孔菌類の種多様性評価方法の検討」
17) K. OKABE: OECD supported symposium on Sustainable Management and Traditional knowledge
in Satoyama-Satoumi and other Social Ecological Production Landscapes and Seascapes
(SEPLS), Komatsu, Japan, 2014.
“Ecosystem services from forest biodiversity.”
18) K. OKABE: The 24th world congress of the International Union of Forest Research
Organizations (IUFRO), SP-03 Forest health in a changing world, Sault Lake City, USA,
2014.
“Forest biodiversity and forest health.”
19) H. TAKI: The 24th world congress of the International Union of Forest Research
Organizations (IUFRO), Sault Lake City, USA, 2014.
“Effects of plated forest biodiversity on pollination services.”
20) K. OKABE: CBD/COP12 Side event of Biodiversity criteria for REDD+ -What science sees
and how it works-, CBD/COP12, Pyong Chang, South Korea. 2014.
“Challenges on indicators and monitoring of forest biodiversity for REDD+ safeguards.”
21) K. OKABE: OECD supported workshop of Strategies to support both biodiversity and
production in agricultural landscapes, Ecoscience Precinct, Brisbane, Australia, 2014.
“Forest management for conservation of biodiversity in forest ecosystem neighboring on
an agricultural landscape.”
22) S. YAMASHITA: The 10th International Mycological Congress, Bangkok, Thailand, 2014.
“Diversity of wood-inhabiting polypores in Southeast Asia.”
S-9-3-80
23) 山下聡、Mohamad Nafri、市岡孝朗、竹松葉子、岡部貴美子:第126回森林学会大会 (2015)
「アカシア植林地における木材分解速度の林分間変異に関わる要因」
24) 山下聡、升屋勇人、阿部真、正木隆、岡部貴美子:第62回日本生態学会鹿児島大会 (2015)
「ブナ属とコナラ属に おける木材分解過程と腐朽菌類の群集構造との関係」
25) P. MELENG, T. ITIOKA, S. YAMASHITA, F.B. MOHAMAD, A.N. MOHAMAD, H.Y. MOHAMAD, K.
TAKENAKA, F. HYODO, Y. TAKEMATSU, M. ITO and K. MAETO : Joint Projects between the Forest
Department Sarawak and the Japan Research Consortium for Tropical Forests in Sarawak,
Kuching, Malaysia, 2015.
“Effects of isolated reserved forests on the assemblage of parasitoid wasps in the
surrounding areas.”
26) S. YAMASHITA, A.N. MOHAMAD, P. MELENG, F.B. MOHAMAD and T. ITIOKA: Joint Projects between
the Forest Department Sarawak and the Japan Research Consortium for Tropical Forests in
Sarawak, Kuching, Malaysia, 2015.
“Decomposition process of wood cubes in Acacia plantation forest and natural forest in
Bintulu.”
27) 長谷川泰洋、岡部貴美子、滝久智:環境アセスメント学会第14回大会 (2015)
「生物多様性・生態系サービスの将来予測におけるシナリオアプローチのあり方」
(3)出願特許
特に記載すべき事項はない
(4)「国民との科学・技術対話」の実施
特に記載すべき事項はない
(5)マスコミ等への公表・報道等
1)
aff(アフ:農林水産省公報ウェブサイト)(2011年10月号、
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1110/mf_news_02.html、
「昆虫の多様性がソバの実りを豊かに」)
(6)その他
特に記載すべき事項はない
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S-9-3-83
(4)リモートセンシング技術を用いたアジアにおける生物多様性・生態系機能マッピングとそ
の時空間変動の推定
国立研究開発法人海洋研究開発機構
地球表層物質循環研究分野
鈴木 力英
地球表層物質循環研究分野
石井 励一郎
地球表層物質循環研究分野
永井 信
<研究協力者>
国立研究啓発法人海洋研究開発機構
地球表層物質循環研究分野
井上 智晴
平成23~27年度累計予算額:75,808千円(うち平成27年度:13,850千円)
予算額は、間接経費を含む。
[要旨]
生物多様性や生態系機能を定量的に評価するためには、ある地点の情報だけでは不十分であり、
地図上で面的に連続した分布情報として把握する必要がある。これを可能とするのがリモートセ
ンシングである。リモートセンシングによる生物多様性や生態系機能の研究には大きく三つのア
プローチがあり、本研究テーマではそのすべてを行った。一つ目のアプローチは、生物の個体を
識別する方法である。森林生態系の分解機能における倒木の役割に着目し、2011年11月29日に北
茨城市の温帯落葉林を対象に自律飛行するヘリコプターの空撮画像から倒木を検出する研究を行
った。その結果、地上で確認された44本の倒木の中、空撮画像から検出されたのは11本にとどま
った。数十メートルという低空からの空撮であったが、その画像上では倒木が立木や枝よって隠
され、検出率が低いことがわかった。二つ目のアプローチは、リモートセンシングデータから、
植生の物理情報を推定し、それを尺度として植物の形質などを推定する手法である。国内の落葉
林を対象に、衛星搭載センサーMODISのデータ(2001年1月~2015年の12月)から得た植生指数の季
節変化から年間の機能的着葉期間を推定し、環境省のモニタリング1000サイトにおいて収集され
た葉の形質データとの着葉期間との関係を基に葉の形質情報を地図化した。三つ目のアプローチ
は、リモートセンシングによる画像から地表面被覆を生態系の観点から分類、地図化し、生物の
生息域を推定するアプローチである。MODISのデータ(2001年~2013年)を分析し、植生指数が小さ
いピクセル、すなわち森林が伐採された可能性のある地域を抽出し、その分布の経年変化を分析
した。その結果、小植生指数のピクセルは2007年以降に高標高地域へとその分布範囲を広げる傾
向が顕著だった。これは、プランテーションのための森林伐採が近年になるにつれ沿岸の低標高
地域から内陸の高標高地域へと広がりを見せていることを示唆する。
S-9-3-84
[キーワード]
人工衛星、UAV(unmanned aerial vehicle)、分解機能、熱帯林伐採、葉の形質
1.はじめに
生物多様性や生態系機能を定量的に評価し、人間社会との関連を理解し、さらにそれが政策決
定に活かされるためには、森林サイトにおける現地観測や調査だけではなく、面的に連続した観
測を行い、生物多様性や生態系機能の地理的な広がりや、さらにその時間変動を把握する必要が
ある。この観測を実現するのが人工衛星や航空機によるリモートセンシングである。リモートセ
ンシングからは、太陽光に照明された地表からの反射光などを測定することにより、そこを覆っ
ている植生の状態についての情報を地図上に表現された画像の形で取得する。画像からは生態系
の質の地理的広がりを面的にくまなく推定することができる。また、同一の地域を反復観測した
画像からは、時間的な変化を知ることができる。本研究テーマでは、リモートセンシングデータ
を使うことにより、生物多様性や生態系機能の地理的分布やその変化を評価するための基盤とな
る地図情報を作ることを研究した。
生物多様性や生態系機能をリモートセンシングから推定しようとした場合、大きく三つのアプ
ローチがあるだろう (1,
2)
。本研究テーマではその三つのアプローチすべてを行った。一つ目は、
生物の個体(森林の場合は個木)を識別、個々の特徴を把握し、生物種や機能を推定する方法であ
る。高水平分解能が要求されるので、航空機によって低空からのリモートセンシングが行われる
ことが一般的である。本研究テーマでは自律飛行する無人ヘリコプターに搭載されたカメラで北
茨城市の温帯落葉林を対象に倒木を検出し、森林生態系の分解機能に結び付ける研究を行った。
二つ目は、リモートセンシングデータから、植生の季節変化などの物理情報を抽出し、それを尺
度として植物の形質などを推定する手法である。本研究テーマでは、国内の森林の形質の地図化
に対してこのアプローチを用いた。三つ目は、リモートセンシングによる画像からある特徴を持
った生態系の地理的広がりを抽出し、すなわち地表面被覆を生態系の観点から分類、地図化し、
その情報を元に個々の生物の生息域を推定するアプローチである。衛星リモートセンシングなど、
比較的低解像度のデータを使って行われ、本研究テーマでは主にボルネオ島の熱帯林の伐採やプ
ランテーション地域の抽出に対して、このアプローチを適用した。
2. 研究開発目的
(1)温帯林における菌類の分解機能の航空機リモートセンシングによる評価
倒木は小動物や昆虫、菌類などの生息環境となることから、森林内の倒木の空間分布は森林内
の生物多様性を理解するための評価指標の一つとなる。また、微生物などによる倒木の分解によ
って多くの炭素や窒素が供給されることから、森林生態系における炭素や窒素循環のメカニズム
を理解するうえで倒木の空間分布を把握することは重要である。これまでの研究では主に地上観
測によって倒木の位置情報やその詳細な形質データ(長さ•太さ•腐食度など)が明らかにされた。
しかし、地上観測の実施には多大な労力と時間を必要とするため、倒木の広域的な空間分布を明
らかにすることは適していない。
近年、リモートセンシング観測プラットフォームの一つである無人航空機(Unmanned Aerial
Vehicle : UAV)の技術的発展が著しい。その高い携帯性と有人航空機観測よりも低い運用コスト
S-9-3-85
の利点から、生態系観測における活用が期待されている。本研究は、落葉広葉樹林における倒木
の空間分布を評価する手法の一つとしての小型UAVによる空撮画像の判読の利用可能性とその課
題点を明らかにすることを目的として、落葉後の時期にUAV観測を実施した。
(2)国内における季節林の衛星データから推定された着葉期間に基づく形質の評価
地球温暖化など著しい気候変動下において、植生の機能(光合成や蒸発散など)の時空間分布
の変動を高精度に評価することは、大気と陸域生態系の相互作用(アルベド•炭素や水の循環など)
を深く理解するために重要な課題の一つとなる。植生の光合成機能と関連性が高いと考えられる
葉の形質情報(大きさ•厚さ•強さ•葉に含まれる窒素量など)が全球を対象にデータベース化され
(TRY; https://www.try-db.org/TryWeb/Home.php)、それらの空間分布の特性と説明要因の解析
•評価がおこなわれている。その結果、植生の潜在的な光合成能力は、葉の形質•葉の寿命•気候条
件(年平均気温•年降水量)と相関関係をもつことが明らかになっている (3) 。葉の形質情報は地上
の多地点で得られたデータであるため、面的な解析•評価は困難である。一方、衛星リモートセン
シングで毎日観測された植生指数の解析により、植生の生長期間の時空間分布の変動をたとえば、
500mの空間分解能で検出することが可能である。これは、葉の形質と葉の寿命(すなわち植生の
生長期間)の対応関係に基づいて、衛星観測で検出された植生の生長期間により、葉の形質の空
間分布を面的に評価できる可能性を示唆する。
本研究は、東アジアの温帯における葉の形質を500mの空間分解能で推定•地図化する手法開発を
目的として、モニタリング1000サイトで収集された葉の形質データとTerraとAqua衛星に搭載され
たMODISセンサーで毎日観測された植生指数の解析により検出した生長期間の対応関係を解析•評
価した。
(3) ボルネオの熱帯林における植生フェノロジーの定点カメラ画像による検出
熱帯多雨林では、光合成を最大限におこなうための戦略に関連して、多様な構造(樹高•樹形な
ど)や形質(葉の大きさや厚さ•葉に含まれる生化学物質や窒素量など)をもつ多様な種が同一気
候条件下に生育し、植生フェノロジー(植物季節;たとえば、開花•開葉•落葉など)の様式や期
日には種ごとに特徴がみられる。植生フェノロジーは、送粉昆虫や植食性昆虫の生活史と対応関
係がみられる。熱帯域は温帯域や寒帯域と比べて、季節的あるいは経年的な気候変動は不明瞭で
あるにも関わらず、たとえば、エルニーニョによる乾燥イベントは熱帯多雨林の生態系の機能や
サービス•生物多様性に大きな影響を及ぼす。このため、種から群落スケールで植生フェノロジー
の様式や期日を高精度にモニタリングすることは、重要な課題の一つとなる。
地上においてこれを遂行するためには、デジタルカメラや分光放射計(光量子センサー)によ
る長期連続的な近接リモートセンシング観測が有益である。分光放射計は対象とする数 m から数
十 m の範囲に位置する多様な複数の個体のフェノロジーを平均値としてとらえるため、各個体を
対象とした植生フェノロジーの検出は困難である。これに対して、デジタルカメラは関心領域に
位置する個体または群落のフェノロジーを赤•緑•青の輝度値のそれぞれ平均値としてとらえるこ
とが可能である。また、衛星リモートセンシング観測は、地上の分光放射計による観測と同様に、
各個体を対象としたフェノロジーの検出は困難であり、不確実性や問題点を多く含むため詳細な
地上検証を必要とする。
S-9-3-86
本研究は、熱帯多雨林における樹種ごとに異なる植生フェノロジーの検出手法の開発と衛星に
よる植生フェノロジー観測の地上検証を目的として、デジタルカメラにより毎日撮影されたフェ
ノロジー画像を解析•評価した。
(4)東南アジアにおける森林伐採の経年変化の広域観測衛星データによる評価
東南(島嶼)アジア(インドネシア国やマレーシア国)では、木材やパーム油の供給に起因し
て森林伐採が大規模かつ継続的におこなわれている。近年のブラジル国の減少に対して、インド
ネシア国の増加は深刻である (4) 。森林伐採は、炭素固定や気候調整など基盤的な生態系サービス
の低下のみならず、ハビタットの環境悪化•破壊によって生物多様性の損失を生じさせる。とりわ
け、近年の東アジアの新興国の台頭は、さらなる木材やパーム油の需要を生じさせ、その結果、
森林伐採は今後も継続的におこなわれる可能性が高い。このため、島嶼アジアにおいて森林伐採
がおこなわれた地域の空間分布の年々変動を高精度に検出することは、生態系の機能やサービス、
生物多様性の時空間分布の変動を評価するために重要な課題となる。
これを遂行するためには、広域的な観測を可能とする衛星リモートセンシングで得た観測デー
タの解析が有益である。過去の研究では、たとえば、30mの空間分解能をもつLandsatシリーズ衛
星や250mの空間分解能をもつTerra衛星に搭載されたMODISセンサーで観測されたデータの解析に
より、島嶼アジアにおいて森林伐採がおこなわれた地域の空間分布が10年スケールの規模で検出
された (4, 5) 。しかしながら、衛星観測の時間解像度と空間解像度には、トレードオフの対応関係が
あるため、高空間分解能な衛星データを高頻度で得ることは不可能である(同一地点を16日や46
日ごとに観測する)。また、島嶼アジアは雲被覆が顕著であるため、解析に最適なデータの取得
頻度は著しく低下するという欠点がある。このため、過去の研究では、島嶼アジアにおいて森林
伐採がおこなわれた地域の空間分布の年々変動は検出されていない。
本研究は、島嶼アジアにおいて森林伐採がおこなわれた地域の空間分布の年々変動を500m空間
分解能で地図化する手法開発を目的として、TerraとAqua衛星に搭載されたMODISセンサーで観測
されたデータを解析•評価した。
3.研究開発方法
(1)温帯林における菌類の分解機能の航空機リモートセンシングによる評価
本研究は、茨城県北茨城市に位置する落葉広葉樹林(森林総合研究所小川試験地; 北緯36°56′
10″、東経140°35′18″)に設置した検証区域(6 ha)にて実施した(図(4)-1)。2011年11月
29日に同区域上空でデジタルカメラ(EOS Kiss X5, Canon)を搭載した無人ラジコンヘリコプタ
ー(RMAX-G1、ヤマハ)を3m/sの速度で飛行させ、地表面を5秒間隔で空撮した(図(4)-1)。同ヘ
リコプターにはGPSセンサーも取りつけられており、0.1秒間隔で飛行地点の位置情報(緯度•経度
•高度)を記録した。空撮撮影時刻に近いGPSの位置情報から空撮地点を求めた。また、試験地の
地形は、北から南へと傾斜しており、東西の中心付近には小河川が流れ、谷地形を作っている(図
(4)-1)。この特徴を測定するために、ヘリコプターに搭載したレーザースキャナ(SkEyesBox,
SkEyes)によって対象森林の樹体も含む地表面の凹凸を計測した。このデータより、1m×1m解像度
のDEM(Digital Elevation Model)を作成した。対象林分は211枚のデジタルカメラ画像でカバーさ
れた。それぞれの画像はヘリコプターの姿勢やDEMを基にオルソ補正し、さらに隣接し重なり合う
S-9-3-87
図(4)-1 無人ヘリコプターによる観測の概要。図は、Inoue et al. (2014, PLOS ONE)より
引用。左上図は観測を行った小川試験地の位置と、観測の当日に撮影された林内の写真を
示す。右上図は無人ヘリコプターによる空撮範囲(灰色に網をかけた地域)と、地上検証を
おこなった9地点(黄色の四角)を示す。左下図は観測に用いた無人ラジコンヘリコプター
と、搭載したカメラの写真である。
画像間にタイポイントを設定し、森林全体をカバーするように画像を並べ接合する処理(モザイ
ク処理)をおこなった。
一方、地上では航空機リモートセンシングに対する地上真値を得るための調査を2012年5月31日
に行った。対象林分内に東西南北10m ™
10mの大きさを持つ9か所のサブプロットを設定し、それ
ぞれのサブプロット内に認められた直径10cm以上の倒木の本数と長さを計測した。これらの地上
調査によって取得した倒木の分布情報と、空撮画像から目視によって検出した倒木の分布情報と
の対応関係を検証した。
S-9-3-88
(2) 国内における季節林の衛星データから推定された着葉期間に基づく形質の評価
はじめに、衛星データの解析により日本の機能的な着葉期間(潜在的な光合成期間)の時空間
分布の変動を検出するために、TerraとAqua衛星に搭載されたMODISセンサーで毎日観測された幾
何•大気補正済みの500mの空間分解能をもつ分光反射率データセット(MOD09GA•MYD09GA
collection 5)をNASA Land Processes Distributed Active Archive Center (LP DAAC)よりダウ
ンロードし、利用した。解析対象は、2001年1月から2015年の12月とした(Aqua衛星の観測史前の
2001年1月から2002年12月は、Terra衛星のみを利用した)。
本研究では、これらのデータセットからGreen-Red Vegetation Index(GRVI=(可視緑の反射率
−可視赤の反射率)/(可視緑の反射率+可視赤の反射率))をピクセルごとに毎日計算し、その
結果得たGRVI時系列において、春に0を初めて超えた日を機能的な着葉期間の開始の期日、秋に0
を初めて下回った日を機能的な着葉期間の終了の期日とそれぞれ定義した。様々な落葉性の生態
系観測サイトを対象とした地上検証では、GRVI=0は、開葉開始と紅葉•落葉のピークの期日に相当
することが報告されている (6) 。雲被覆や大気の影響によるノイズを含む衛星データは、データセ
ットに付属するクオリティフラグの情報に基づいて解析対象から除外し、それらを含む欠測値は
BISE法により補間した。詳細な手法は、Nagai et al. (2015, Int J Biometeorol)を参照された
い。
つぎに、国内の様々な生態系を対象とするモニタリング1000サイトにおいて収集された葉の形
質データ(生葉窒素濃度•個葉面積•強度•厚さ)と衛星観測データの解析により検出された機能的
な着葉期間の対応関係を調査した。落葉林として、針広混交林と落葉広葉樹の計10サイトを対象
とした。その結果得た対応関係に基づいて、衛星観測データの解析により検出された機能的な着
葉期間により、葉の形質情報をそれぞれ地図化した。衛星データの解析において落葉性の生態系
であると判断されなかったピクセルは常緑林であると判断し、常緑林を対象としたモニタリング
1000サイトで得られた葉の形質データの平均値をそれぞれ適用した。
(3)ボルネオの熱帯林における植生フェノロジーの定点カメラ画像による検出
マレーシア国のサラワク州に位置するランビルヒルズ国立公園(ランビルサイト)において(北
緯 4°11′43.71″、東経 114°2′22.55″)、クレーン観測タワーの上部(地上高 76m)に設置し
た自動撮像型カメラシステム(デジタルカメラ:ニコン製 Coolpix-4500、制御装置:早坂理工製
SPC31A)により撮影した毎日のフェノロジー画像を 2013 年 1 月から 2014 年 12 月まで利用した。
撮影時刻は正午(タイマー撮影のためズレが生じた)、ホワイトバランスは晴天、露出は自動、
画像サイズは 2272×1704 ピクセルに設定した。観測は”Phenological Eyes Network”
(http://www.pheno-eye.org)により運営•管理され、データは制限付きで公開されている。
群落全体や各個体の関心領域を対象に、フェノロジー画像から赤•緑•青のデジタルナンバー(R
•G•B)の平均値を抽出し、デジタルナンバーのそれぞれの割合(%R=R/(R+G+B)•%G=G/(R+G+B)
•%B=B/(R+G+B))、Green Excess Index (GEI=(G−R)+(G−B))および HSL カラーモデルにお
ける色相•彩度•明度をそれぞれ計算した。これらの植生指数の時系列パターンの評価により、生
態系や樹種ごとに異なる植生フェノロジーの特徴を検出可能であることが過去の研究で明らかに
なっている (7) 。ランビルサイトでは、2013 年の 8 月に多くの個体が開花した。本研究では、詳細
S-9-3-89
な開花フェノロジーの真値情報として、現地において目視観測により得た開花フェノロジーの記
録を利用した。詳細な手法は、Nagai et al. (2016, Ecol Informat)を参照されたい。
(4)東南アジアにおける森林伐採の経年変化の広域観測衛星データによる評価
島嶼東南アジア(マレーシア•インドネシア•ブルネイ•パプアニューギニア国を含む)を対象に、
TerraとAqua衛星に搭載されたMODISセンサーで毎日観測された幾何•大気補正済みの500mの空間
分解能をもつ分光反射率データセット(MOD09GA•MYD09GA collection 5)をNASA Land Processes
Distributed Active Archive Center (LP DAAC)よりダウンロードし、利用した。解析対象は、2001
年1月から2014年の12月とした(Aqua衛星の観測史前の2001年1月から2002年12月は、Terra衛星の
みを利用した)。
本研究では、これらのデータセットを用いて、雲被覆や大気のノイズなどによる影響が無い
ベストクオリティなGRVI(以後GRVI_bestと表記する)をピクセルごとに計算し、1年間のGRVI_best
の取得日に対するGRVI_best<0の取得日の割合をピクセルごとに算出した。GRVI_bestは、データ
セットに付属するクオリティフラグの情報に基づいて抽出した。前述(2)のように、森林において
GRVI<0は、林冠に緑の葉が付いていない状態を示すため、1年間のGRVI_bestの取得日に対する
GRVI_best<0の取得日の割合が高いピクセルは、森林伐採が生じたと仮定した。この作業仮説は、
熱帯多雨林や森林伐採後アカシアにプランテーション化された地点において検証した。1年間の
GRVI_bestの取得日に対するGRVI_best<0の取得日の割合を2001年から2014年の各年解析し、地図
化した。詳細な手法は、Nagai et al. (2014, Int J Remote Sens)を参照されたい。
4. 結果及び考察
(1)温帯林における菌類の分解機能の航空機リモートセンシングによる評価
211枚の空撮画像から244本の倒木を目視検出した(図(4)-2)。しかし、地上で調査した44本の
倒木の内、空撮画像からも検出できた倒木は11本にとどまった。その結果、直径30cm以上または
長さ10m以上の倒木の検出率は90–80%であったが、直径や長さがそれ未満の倒木の検出率は30–0%
であった(表(4)-1, (4)-2)。このような直径や長さが短い倒木の検出率の低さは、画像上では
倒木が立木や枝、林床植生によって隠されやすいことが理由であると考えられる。空撮の時間間
隔を短くして複数の角度から地表面を撮影することによって、この検出率の低さが改善すること
が期待される(図(4)-3)。
S-9-3-90
図(4)-2 目視により検出した倒木(黄丸)。図は、Inoue et al. (2014, PLOS ONEより引用)。
表(4)-1 倒木の最大直径によって異なる検出率
倒木の最大直径 (m)
地上調査に基づく倒木数
空撮画像から検出した倒木数
検出率 (%)
0.30 ≦ x
8
7
88
0.20 ≦ x < 0.30
7
2
29
0.10 ≦ x < 0.20
28
2
7
0.05 ≦ x < 0.10
1
0
0
表(4)-2 倒木の長さによって異なる検出率
倒木の長さ (m)
地上調査に基づく倒木数
空撮画像から検出した倒木数
検出率 (%)
10 ≦ x
9
7
78
5 ≦ x < 10
15
3
20
0 ≦ x< 5
20
1
5
S-9-3-91
図(4)-3 同一地点を様々な角度から撮影した画像の例。撮影角度によって画像判読による倒木
の検出率は異なる。図は、Inoue et al. (2014, PLOS ONE)より引用。
(2) 国内における季節林の衛星データから推定された着葉期間に基づく形質の評価
衛星データの解析により検出した2013年の機能的な着葉期間に基づいた、生葉窒素濃度•個葉面
積•強度の推定値の空間分布を図(4)-4に示した。機能的な着葉期間に関して北方および高標高域
は、南方および低標高域よりも短い、常緑林は落葉林と比べて生葉窒素濃度が低く•個葉面積は小
さく•強度は強い、北方および高標高域は南方および低標高域と比べて生葉窒素濃度が高く•個葉
面積は大きく•強度は弱いという空間分布の特徴が地図化された。葉の寿命と形質の対応関係は、
葉の生産コストと潜在的な光合成能力との対応関係(コストベネフィット)により説明される。
本研究で得た機能的な着葉期間(開葉から紅葉•落葉のピーク)は、葉の寿命(開葉から落葉)と
等価ではないにも関わらず、葉の形質の潜在的な空間分布を地図化するために有用であると考え
られる。葉の形質の空間分布が500mの分解能で地図化されることによって、気候変動下における
潜在的な光合成能力の時空間分布の変動が高精度に推定されることが期待される。
しかしながら、衛星データの解析により検出した機能的な着葉期間は、衛星データの空間分
解能に相当する500〜1,000m×500〜1,000mの範囲に位置する様々な樹種の平均値をとらえている。
落葉広葉樹林を対象とした10年を超える定点カメラによる植生フェノロジー観測は、開葉や紅葉•
落葉の様式や期日と気温変化に対するフェノロジーの感度は樹種ごとに異なることを明らかにし
た。その特徴は、紅葉•落葉は開葉と比べて顕著であった。これらの事実は、気候変動下における
潜在的な光合成能力の時空間分布の変動を高精度に推定するためには、高空間分解能をもつ葉の
形質の分布情報だけではなく、群落レベルにおける気候変動に対する植生フェノロジーの感度の
特徴を説明可能とする景観植生図など他の生態系情報を併せて利用することの重要性を示唆する。
S-9-3-92
図(4)-4 衛星データから求めた機能的な着葉期間を基に推定した葉の形質情報のうち、生
葉強度。衛星データの解析により落葉性でないと判断されたピクセルは、常緑林における
形質データの平均値をそれぞれ利用した。
(3) ボルネオの熱帯林における植生フェノロジーの定点カメラ画像による検出
解析例として、2013 年の 8 月に開花した Dryobalanops aromatica の%RGB の時系列を図(4)-5 に
示した。開花前後に、%G や彩度は急激な増加や減少を示した。これは、開花にともなう樹冠の色
の変化(深緑色から白っぽい緑色へ)に起因すると考えられる。同様に、同時期に開花した他の
個体や樹種も%RGB や彩度の時系列に変化がみられた。また、葉の更新にともなう樹冠の色の変化
(深緑色から黄緑色や赤みがかった緑色へ)に起因して、%RGB や彩度の時系列に変化がみられた。
GEI の時系列にも変化がみられたが、開花に関しては不明瞭であった。これらに対して、色相や明
度の時系列は明瞭な変化を示さなかった。詳細な結果は、Nagai et al. (2016, Ecol Informat)
を参照されたい。
一方、群落全体を対象とした%RGB•GEI•色相•彩度•明度の時系列や、光量子センサーによる観
測で得た%RGB と植生指数(NDVI•EVI•GRVI)の時系列は、明瞭な変化を示さなかった。これは、開
花や開葉などの様式と期日が異なる様々な樹種と個体のフェノロジーを平均値としてとらえてし
S-9-3-93
まったためと考えられる。植生フェノロジーの観測を可能とする衛星に搭載された可視•近赤外分
光センサーは空間分解能が粗い(250〜1,000m)。このため、現時点において、熱帯多雨林の詳細
な植生フェノロジーを観測•評価することは困難である。これらの結果は、分光放射計や光量子セ
ンサーと比べて、安価であり汎用性のある観測を可能とする定点カメラシステムを多地点で導入
することの有用性を示唆する。多地点を対象とした長期連続的なフェノロジー画像が蓄積される
ことにより、気候変動に対する群落および樹種ごとの植生の応答性と機能変化(光合成や蒸発散)
が明らかになるであろう。
図(4)-5 フェノロジー画像から抽出した Dryobalanops aromatica の%R, %G, %Bの時系列。
図は、Nagai et al. (2016, Ecol Informat.)より一部引用。
(4) 東南アジアにおける森林伐採の経年変化の広域観測衛星データによる評価
マレーシア国のサラワク州やインドネシア国の西•中央カリマンタンやスマトラ東部の低標高
域では、1年間のGRVI_bestの取得日に対するGRVI_best<0の取得日の割合が高い地域が広く分布し
た(図(4)-6)。これらの地域では、森林伐採後にオイルパームやアカシアのプランテーションへ
の転換がおこなわれたと考えられる。とりわけ、泥炭林からオイルパームへ転換がおこなわれた
地域では、炭素の蓄積量が減少し、炭素の放出量が増加した可能性を示唆する。過去の研究では、
2006年においてオイルパームが分布する割合は、ボルネオに位置するサラワク州や西•中央カリマ
ンタンと比べて、マレーシア国のマレー半島•サバ州やインドネシア国のスマトラがより高かった
ことが報告されている (8) 。本研究の結果と比較すると、近年では、森林伐採がおこなわれている
地域がマレー半島やスマトラからボルネオへと遷移している可能性を示唆する。
ボルネオにおいて、2001年から2013年に森林伐採がおこなわれた地域と標高の対応関係を図
(4)-7に示した。森林伐採がおこなわれた地域は、経年的にみて高標高域へと徐々に拡大している
ことが分かる。オイルパームの生産量は、マレーシア国とインドネシア国ともに指数関数的に年々
増加しているが、インドネシア国の生産量は、2006年にマレーシア国を上回った(FAOSTAT;
http://faostat.fao.org)。インドネシア国において、森林伐採後のオイルパームのプランテー
ションへの転換がおこなわれる地域は、今後、高標高域(内陸)へ拡大する可能性が予測される。
S-9-3-94
オイルパームは、栽植後25から30年で
伐採•再栽植することが報告されてい
る (9) 。森林伐採後のオイルパームのプ
ランテーションへの転換が比較的早
期におこなわれた地域では、今後の伐
採と再栽植により、高標高域を対象と
したオイルパームのプランテーショ
ンの新たな開発は減速するかもしれ
ない。しかしながら、島嶼東南アジア
では、生態系の機能やサービス•生物
多様性を著しく低下させる人間活動
にともなう負の圧力が年々生じ、その
影響がおよぶ地域は年々拡大してい
ることが示唆された。
5.本研究により得られた成果
(1)科学的意義
高解像度かつ精密な森林内部の立
体構造、及び、立木/倒木の空間分布
を同時に取得可能なUAV(無人航空機)
図(4)-6 ボルネオ島においてTerra/Aqua MODIS衛星デ
ータの解析により検出された2001年から2014年の各年
に森林伐採がおこなわれた地域。2001年は都市域や高
標高域など植生が疎な地域も含まれる。
観測手法を開発した。本手法を用いる
ことで、林分での炭素蓄積や分解速
度の分布評価のための基盤情報を
得ることができるため、典型的な森
林タイプごとの測定によって生態
系機能/サービス分布のリファレン
ス値の取得が可能となる。
衛星データの解析により検出し
た機能的な着葉期間に基づいて、落
葉林における葉の形質の空間分布
を広域的に地図化し た。 その結果 、
気候変動下における植生の機能(光
合成)の時空間分布を高精度に評価
するための基盤情報を提供するこ
図(4)-7 ボルネオにおいて森林伐採がおこなわれた地
とが可能となった。
域と標高との対応関係のまとめ。
熱帯多雨林を対象に、長期連続的
な定点カメラ観測により、植生フェノロジーの様式や期日の特徴を検出する手法を開発した。そ
S-9-3-95
の結果、超高解像度なデジタルカメラを衛星に搭載することにより、将来、生態系の機能•サービ
スや生物多様性の評価のための基盤情報となる植生フェノロジーを個体レベルで広域的に観測•
評価する可能性を示唆した。
島嶼東南アジアにおける森林伐採がおこなわれた地域の年々変動を500mの空間分解能で初めて
明らかにした。本手法では森林伐採後の土地被覆を直接的に評価できないにも関わらず、森林伐
採がおこなわれた地域の年々変動の空間分布を明らかにすることは、土地被覆変化に起因した生
態系の機能•サービスや生物多様性への影響を高精度に評価するための基盤情報を提供する利点
がある。
(2)環境政策への貢献
メンバー(石井)は、GEO-BON,SBSTTA17に参加しその報告書を通じて、本研究成果を踏まえ
た環境省に対しての助言を行った。
<行政が既に活用した成果>
特に記載すべき事項はない。
<行政が活用することが見込まれる成果>
小型UAVによるリモートセンシング観測•評価手法は、アジア地域全体でREDDにおける測定•報告
•検証(MRV)等を実施する際に、局所スケールで高精度かつ詳細な生態系情報を取得するために
有益である。人間活動の影響が大きく、土地利用のモザイク構造が小さい里山の現状診断(例え
ば、生態系機能/サービスの分布の把握)にも有益である。
定点カメラによる群落•樹種レベルを対象とした植生フェノロジー観測•評価手法は、地球環境
観測を目的とした将来の衛星センサー開発•運用計画に関して、生態学的な視点から有益な提言を
可能とする。
島嶼東南アジアを対象とした森林伐採がおこなわれた地域の年々変動の地図は、炭素吸収•排出
量の算定や動植物の生息域分布の推定のための基盤情報として活用が期待される。
6.国際共同研究等の状況
特に記載すべき事項はない。
7.研究成果の発表状況
(1)誌上発表 。
<論文(査読あり)>
1)
Nagai, S., Saitoh, T.M., Suzuki, R., Nasahara, K.N., Lee, W.K., Son, T. et al. (2011). The
necessity and availability of noise-free daily satellite-observed NDVI during rapid phenological
changes in terrestrial ecosystems in East Asia. Forest Science and Technology, 7(4), 174-183.
2)
Saitoh, T.M., Nagai, S., Yoshino, J., Muraoka, H., Saigusa, N., Tamagawa, I. (2012). Functional
consequences of differences in canopy phenology for the carbon budgets of two cool-temperate
S-9-3-96
forest types: simulations using the NCAR/LSM model and validation using tower flux and
biometric data. Eurasian Journal of Forest Research, 15, 19-30.
3)
Nagai, S., Saitoh, T.M., Kurumado, K., Tamagawa, I., Kobayashi, H., Inoue, T. et al. (2013).
Detection of bio-meteorological year-to-year variation by using digital canopy surface images of a
deciduous broad-leaved forest. SOLA, 9, 106-110.
4)
Nagai, S., Saitoh, T.M., Noh, N.J., Yoon, T.K., Kobayashi, H., Suzuki, R. et al. (2013). Utility of
information in photographs taken upwards from the floor of closed-canopy deciduous broadleaved
and closed-canopy evergreen coniferous forests for continuous observation of canopy phenology.
Ecological Informatics, 18, 10-19.
5)
Chung, H., Muraoka, H., Nakamura, M., Han, S., Muller, O., Son, Y. (2013). Experimental
warming studies on tree species and forest ecosystems: A literature review. Journal of Plant
Research, 1246, 447-460.
6)
Nagai, S., Inoue, T., Ohtsuka, T., Kobayashi, H., Kurumado, K., Muraoka, H. et al. (2014).
Relationship between spatio-temporal characteristics of leaf-fall phenology and seasonal Variations
in near surface- and satellite-observed vegetation indices in a cool-temperate deciduous
broad-leaved forest in Japan. International Journal of Remote Sensing, 35, 3520-3536.
7)
Nagai, S., Yoshitake, S., Inoue, T., Suzuki, R., Muraoka, H., Nasahara, K.N. et al. (2014).
Year-to-year blooming phenology observation using time-lapse digital camera images. Journal of
Agricultural Meteorology, 70, 163-170.
8)
Inoue, T., Nagai, S., Yamashita, S., Fadaei, H., Ishii, R., Okabe, K. et al. (2014). Unmanned aerial
survey of fallen trees in a deciduous broadleaved forest in Eastern Japan. PLOS ONE, 9, 10,
e109881.
9)
斎藤琢, 永井信, 村岡裕由 (2014). 陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測―リモート
センシングの利用― 日本生態学会誌 , 64, 243-252.
10) Nagai, S., Ishii, R., Suhaili, A.B., Kobayashi, H., Matsuoka, M., Ichie, T. et al. (2014). Usability of
noise-free daily satellite-observed green–red vegetation index values for monitoring ecosystem
changes in Borneo. International Journal of Remote Sensing, 35, 7910-7926.
11) Nagai, S., Saitoh, T.M., Nasahara, K.N., and Suzuki, R. (2015). Spatio-temporal distribution of the
timing of start and end of growing season along vertical and horizontal gradients in Japan.
International Journal of Biometeorology, 59, 47-54.
12) Nagai, S., Inoue, T., Ohtsuka, T., Yoshitake, S., Nasahara, K.N., Saitoh, T.M. (2015). Uncertainties
involved in leaf fall phenology detected by digital camera. Ecological Informatics, 30, 124-132.
13) Nagai, S., Nasahara, K.N., Inoue, T., Saitoh, T.M., Suzuki, R. (in press). Review: advances in in
situ and satellite phenological observations in Japan. International Journal of Biometeorology, doi:
10.1007/s00484-015-1053-3
14) 永井信, 井上智晴, 鈴木力英 (2015). 秋の衛星季節学におけるウェブサイト上で公開され
ている紅葉情報の有用性. 日本生気象学会雑誌 , 52, 119-129.
15) 鈴木力英 (2015). 陸域生態系機能と生態系サービスのリモートセンシングによる評価法.
日本生態学雑誌 , 65, 125-134.
S-9-3-97
16) Nagai, S., Ichie, T., Yoneyama, A., Kobayashi, H., Inoue, T., Ishii, R. et al. (2016). Usability of
time-lapse digital camera images to detect characteristics of tree phenology in a tropical rainforest.
Ecological Informatics, 32, 91-106.
<その他誌上発表(査読なし)>
1)
Ishii, R., Muraoka, H., Nasahara, K.N., Suzuki, R., Yamano, H. (2014). 国連 CBD SBSTTA17 報告
書 Review of the use of remotely-sensed data for monitoring biodiversity change and tracking
progress towards the Aichi Biodiversity Targets. 3 章 Lessons learnt from national experiences,
National case study for Japan: J-BON(1)
2)
石井励一郎(2014). 環境省 CBD-SBSTTA17 報告書「GEO-BON, SBSTTA17 報告」
3)
Suzuki, R. Fadaei, H., Ishii, R., Nagai, S. Okabe, K. Yamashita, S., Taki, H., Honda, Y. Kajiwara, K.
(2014). High resolution airborne remote sensing for evaluating decomposition function of ecosystem
of temperate forest in Japan. Proceedings of International Symposium on Remote Sensing 2014,
16-18.
4)
Suzuki, R. and Nagai, S. (2015). Recent shift of deforestation to high elevation areas from 2001 to
2013 in Borneo detected by MODIS data. Proceedings of 2015 ICEO&SI and ICLEI Resilience Forum
(2)口頭発表(学会等)
1)
R. ISHII & N. FUJITA: 3rd iLEAPS Science Conference 2011 (poster), Garmisch-Partenkirchen,
Germany, 18-23 September (2011)
“A new mechanistic model scheme for vegetation transition at the topographical scale:
Spatio-temporal transition in Mongolian forest-steppe vegetation under climate change and
increasing livestock.”
2)
R. SUZUKI, H. MURAOKA, R. ISHII: International Conference on Earth Observations and Societal
Impacts, Keelung, Taiwan (2011)
“Enhance the link between remote sensing and in-situ observation network for biodiversity
monitoring.”
3)
R. SUZUKI, Y. KIM, R. ISHII, J. NICOLL: 3rd iLEAPS Science Conference,
Garmisch-Partenkirchen, Germany (2011)
“Estimation of above-ground biomass of Alaskan boreal forest by ALOS-PALSAR with slope effect
reduction process.”
4)
R. SUZUKI, Y. KIM, R. ISHII, and J. NICOLL: International Symposium on Remote Sensing, Yeosu,
Korea (2011)
“Estimation of above-ground biomass of Alaskan boreal forest by ALOS-PALSAR with slope effect
reduction process.”
5)
R. SUZUKI, S. NAGAI, T. NAKAI, Y. KIM: AGU 2011 Fall Meeting, San Francisco, USA (2011)
“Comparison of bi-directional reflectance distribution functions of black spruce forest in snow and
no-snow seasons in Alaska.”
6)
R. ISHII & N. FUJITA: Planet Under Pressure. London, England (2012)
S-9-3-98
“To predict vegetation transition at the topographical scale under global changes.”
7)
S. NAGAI : Workshop on assessing Ecosystem Structure and Function with Satellite- and
Ground-based Observations. February 23-24, University of Hawaii at Manoa (2012)
“Comprehensive, long-term, continuous, and global ground-truth for accurate phenological
observations by using satellite remote-sensing -the challenging activities of the ‘Phenological Eyes
Network (PEN)’ -.”
8)
S. NAGAI : The 5th EAFES International Congress, Ryukoku University (2012)
“Comprehensive, long-term, and continuous ground-truthing and ecological examination of satellite
remote sensing for accurate phenological observation.”
9)
R. SUZUKI, R. ISHII, Y. KIM : Planet under Pressure 2012 International Conference, London, UK,
(2012)
“Potential of ALOS-PALSAR to estimate forest above-ground biomass as a biodiversity indicator.”
10) H. FADAEI, R. ISHII, R. SUZUKI, J.J KENDAWANG: The 34th Asian Conference on Remote
Sensing, Bali, Indonesia (2013)
“Detection of oil palm and acacia plantation areas using object based classification in Sarawak,
Malaysia.”
11) H. FADAEI, R. ISHII, R. SUZUKI, J. KENDAWANG: AGU 2013 Fall Meeting, San Francisco,
Calif., USA (2013)
“Extracting features of acacia plantation and natural forest in the mountainous region of Sarawak,
Malaysia by ALOS/AVNIR2 image.”
12) R. SUZUKI, H. FADAEI, R. ISHII, S. NAGAI, K. OKABE, S. YAMASHITA, H. TAKI, Y. HONDA,
K. KAJIWARA: AGU 2013 Fall Meeting, San Francisco, Calif., USA (2013)
“Super high resolution airborne remote sensing for evaluating the decomposition function of
ecosystem of temperate forest in Japan.”
13) 永井信: 第 52 回日本生気象学会大会(2013)
「落葉広葉樹林におけるデジタルカメラを用いた長期連続的な生物気象観測」
14) M. KURIBAYASHI, N.-J. NOH, T.M. SAITOH, A. ITO, Y. WAKAZUKI, H. MURAOKA: The 20th
Anniversary of the Takayama Site?, Takayama, Japan (2013)
“Effect of spatial resolutions of climate data on estimating carbon budget in forest ecosystem over
central Japan. Synthesis Workshop on the Carbon Budget and Forest Ecosystem in the Asian
Monitoring Network ?”
15) M. KURIBAYASHI, N.-J. NOH, T.M. SAITOH, I. TAMAGAWA, Y. WAKAZUKI, H. MURAOKA:
3rd HESSS, and 14th Annual Meeting of KSAFM, Seoul, Korea (2013)
“Influence of land surface scheme in regional climate model on estimating snow water equivalent
over mountainous landscape in central Japan.”
16) H. MURAOKA, NJ. NOH, T.M. SAITOH, M. KURIBAYASHI, H.M. NODA, S. NAGAI: JpGU ,
Tokyo (2013)
“Open field warming experiments for canopy photosynthesis and soil carbon cycling in a
cool-temperate deciduous forest in Takayama, Japan.”
S-9-3-99
17) H. MURAOKA, S. NAGAI, T.M. SAITOH, K.N. NASAHARA: INTECOL, London, UK (2013)
“Satellite ecology and phenological eyes network to link satellite remote sensing and in situ
observation of forest canopy phenology, structure and functions under climate change.”
18) H. MURAOKA: The 20th Anniversary of the Takayama site., Takayama (2013)
“"Satellite Ecology": Crossroad of plant ecology and climate change science”
19) N.J. NOH, M. KURIBAYASHI, T.M. SAITOH, T. NAKAMURA, T. NAKAJI, T. HIURA, H.
MURAOKA: AGU 2013 Fall Meeting, San Fransicso, Calif., USA, (2013)
“Effects of experimental soil warming on soil, autotrophic and hetertrophic respiration in
cool-temperate deciduous broad-leaved forests.”
20) N.J. NOH, M. KURIBAYASHI, T.M. SAITOH, T. INOUE, H. MURAOKA: Proceeding of Synthesis
Workshop on the Carbon Budget and Forest Ecosystem in the Asian Monitoring Network, Abstract
p76, Takayama, Japan (2013)
“Response of belowground carbon fluxes to experimental soil warming in a cool-temperate
deciduous broad-leaved forest of Takayama.”
21) N.J. NOH, T. INOUE, M. KURIBAYASHI, T.M. SAITOH, T. NAKAJI, T. HIURA, H. MURAOKA:
Proceedings of the 60th Annual Meeting of the Ecological Society of Japan, Abstract P2-457,
Shizuoka, Japan (2013)
“Effect of experimental soil warming on soil respiration in deciduous broad-leaved forests in
Takayama and Tomakomai, Japan.”
22) N.J. NOH, M. KURIBAYASHI, T.M. SAITOH, T. NAKAJI, T. NAKAMURA, T. HIURA, H.
MURAOKA: Inter-university Cooperative Project, Abstract CC3, Sugadaira, Japan (2013)
“Effects of experimental soil warming on the temperature sensitivity of soil CO 2 fluxes in
cool-temperate deciduous broad-leaved forests. Proceedings of the 2013 Annual Meeting of the
Japanese Alps.”
23) T.M. SAITOH, S. NAGAI, J. YOSHINO, N. SAIGUSA, I. TAMAGAWA, H. MURAOKA:
International Joint Conference of 11th AsiaFlux international Workshop, 3rd HESSS and 14th
Annual Meeting of KSAFM, communicationg Science to Society: Coping with Climate Extremes for
Resilient Ecologica-Societal Systems, Seoul, Korea (2013)
“Impact of canopy phenology on carbon budget in a deciduous broad-leaved forest with understory
evergreen dwarf bamboo under near future climate condition.”
24) T.M. SAITOH, S. NAGAI, J. YOSHINO, N. SAIGUSA, S. MURAYAMA, K.N. NASAHARA, I.
TAMAGAWA, H. KONDO, H. MURAOKA: Synthesis Workshop on the Carbon Budget and Forest
Ecosystem in the Asian Monitoring Network, Takayama, Gifu, Japan (2013)
25) “Impact of canopy phenology on carbon and heat cycles in a deciduous broad-leaved forest under
climate change: implication for phenological observation.”
26) 栗林正俊、N.-J. NOH、斎藤琢、若月泰孝、玉川一郎、村岡裕由:高山セミナー、つくば市、
茨城県(2013)
「地域気象モデル WRF の陸面過程の違いが中部山岳域における積雪深の再現性にもたらす影
響」
S-9-3-100
27) 栗林正俊、N.-J. NOH、斎藤琢、若月泰孝、玉川一郎、村岡裕由:日本地球惑星科学連合 2013
年大会、幕張市、千葉県(2013)
「地域気象モデル WRF の陸面過程の違いが中部山岳域における積雪深の再現性にもたらす影
響」
28) 栗林正俊、N.-J. NOH、斎藤琢、若月泰孝、玉川一郎、村岡裕由:日本気象学会 2013 年度秋
季大会、仙台市、宮城県(2013)
「地域気象モデル WRF の異なる陸面過程を用いた中部山岳域における積雪水量の評価.」
29) 栗林正俊、N.-J. NOH、斎藤琢、伊藤昭彦、村岡裕由:第 60 回日本生態学会大会、静岡市、
静岡県(2013)
「気候モデルの時空間分解能の違いが中部山岳域の森林生態系の炭素収支推定にもたらす影
響」
30) 栗林正俊、N.-J. NOH、斎藤琢、伊藤昭彦、若月泰孝、村岡裕由:中部山岳地域環境変動研究
機構 2013 年度年次研究報告会(2013)
「気候データの空間分解能の違いが中部山岳域における森林生態系の炭素収支推定にもたら
す影響.」
31) 村岡裕由、斎藤琢:平成 25 年度地球観測連携拠点主催ワークショップ:陸域における炭素循
環及び生態系・生物多様性観測の最近の動向、東京(2013)
「高山スーパーサイトにおける野外温暖化実験と衛星-生理生態学統合研究の展開」
32) 村岡裕由:高山サイト 20 周年記念一般公開講演会「わたしたちの山と森と地球環境」、高山
(2013)
「植物の光合成からみた森の営みと温暖化」
33) 村岡裕由,庄司千佳,永井信,野田響:日本生態学会第60回大会、静岡(2013)
「冷温帯落葉広葉樹林における野外温暖化実験:ミズナラ個葉の光合成・分光特性・フェノロ
ジーに対する温度環境の影響」
34) 永井 信、梶原康司、本多嘉明、斎藤 琢、小林秀樹、鈴木力英:第 16 回環境リモートセンシ
ングシンポジウム(千葉大、2014/2/21)(2014)
「衛星観測による緯度と高度の環境勾配に沿った展葉と落葉のタイミングの時空間分布の検
出」
35) S. NAGAI: Seminar at School of GeoSciences, University of Edinburgh (University of Edinburgh,
UK, 5, Mar, 2014) (2014)
“Multidisciplinary in situ and satellite observations for accurate detection of spatio-temporal
variability of the timing of start and end of growing season in deciduous forests in Japan.”
36) S. NAGAI, R. ISHII, M. MATSUOKA, T. ICHIE, T. MOTOHKA, H. KOBAYASHI, R. SUZUKI,
A.B. SUHAILI, J.J. KENDAWANG, and T. ITIOKA: International Symposium on Remote Sensing
2014, Pukyong National University, Busan, Korea, (2014)
“Detection of interannual variations in northern Borneo forests by noise-free daily satellite-observed
green–red vegetation index.”
37) R. SUZUKI, H. FADAEI, R. ISHII, S. NAGAI, K. OKABE, S. YAMASHITA, H. TAKI, Y. HONDA,
AND K. KAJIWARA: International Symposium on Remote Sensing 2014, Pukyong National
S-9-3-101
University, Busan, Korea (2014)
“High resolution airborne remote sensing for evaluating decomposition function of ecosystem of
temperate forest in Japan.”
38) 鈴木力英:日本地球惑星科学連合 2014 年大会(2014)
「陸域生態系研究についての航空機観測の展開」
39) R. SUZUKI, H. FADAEI, R. ISHII, S. NAGAI, K. OKABE, S. YAMASHITA, H. TAKI, Y. HONDA,
AND K. KAJIWARA: 4th iLEAPS Science Conference -Terrestrial ecosystems, atmosphere, and
people in the Earth System-, (2014)
“Airborne remote sensing of decomposition function of forest ecosystem in Japan.”
40) S. NAGAI, T.M. SAITOH, and K.N. NASAHARA: AsiaFlux workshop, Philippines (2014)
“Multidisciplinary in situ and satellite observations for accurate monitoring terrestrial ecosystem
structure and functioning: knowledge gained from Phenological Eyes Network (PEN) ”
41) S. NAGAI: Phenology Symposium, Zurich University (2014)
“In situ and satellite observations for accurate monitoring tropical ecosystem structure and
functioning: knowledge gained from Phenological Eyes Network (PEN)”
42) R. ISHII: 8th European Conference on Ecological Modelling, Univérsité Cadi Ayyad – Marrakech,
Morocco (2014)
“A new ecosystem network model under human activity.”
43) 永井信、井上智晴、大塚俊之、吉竹晋平、奈佐原顕郎、斎藤琢:高山セミナー、国立環境研
究所(2015)
「インターバルカメラによる落葉フェノロジー観測に含まれる不確実性とは何か?」
44) 永井信:第17回環境リモートセンシングシンポジウム、千葉大(2015)
「地上と衛星の統合的な観測による植生フェノロジーの大陸間比較」
45) 井上智晴、永井信:日本環境学会第 6 回若手研究者発表大会 (2015)
「気候変動がもたらす身近な生態系の変動を知る-リモートセンシング観測、官庁発信情報、
インターネット情報を活用した植生の季節変化情報の抽出-」
46) 永井信:第62回日本生態学会大会、鹿児島大学(2015)
「インターバル撮影カメラによる様々な樹種の植生フェノロジーの特徴検出」
47) 井上智晴、永井信、山下聡、HADI FADAEI、石井励一郎、岡部貴美子、滝久智、本多嘉明、
梶原康司、鈴木力英: 第62回日本生態学会大会、鹿児島大学(2015)
「UAVによる空撮画像を用いた落葉広葉樹林内の倒木の検出」
48) T. INOUE, S. NAGAI, R. SUZUKI: International Symposium on Remote Sensing 2015, Tainan,
Taiwan (2015)
“Mapping of land-cover change in north-western Borneo by using low-price and high-resolution
visible/NIR satellite imagery.”
49) R. SUZUKI and S. NAGAI: International Symposium on Remote Sensing 2015, Tainan, Taiwan
(2015)
“Recent shift of deforestation to high elevation areas from 2001 to 2013 in Borneo detected by
MODIS data.”
S-9-3-102
50) S. NAGAI and T.M. SAITOH: Japan Geoscience Union Meeting 2015, Chiba, Japan (2015)
“Year-to-year variability in the timing of start and end of growing season in deciduous forests in
Japan.”
51) R. ISHII: 日本地球惑星科学連合 2015 年大会、千葉(2015)
“To realize the integration and interoperability of environmental data from diverse disciplines.”
52) R. SUZUKI and S. NAGAI: 2015 ICEO&SI and ICLEI Resilience Forum, Kaohsiung, Taiwan (2015)
“Recent shift of deforestation to high elevation areas from 2001 to 2013 in Borneo detected by
MODIS data.”
53) 永井信、鈴木力英:航空機観測による気候・地球システム科学研究の推進、名古屋大学(2015)
「リモートセンシングによる陸域生態系観測の挑戦的課題と将来性」
54) R. ISHII: WG4 Asia-Pacific Biodiversity Observation Network (AP BON), 8th GEOSS Asia-Pacific
Symposium, Beijing China (2015)
“Progress Report from J BON”
55) S. NAGAI, T. ICHIE, A. YONEYAMA, H. KOBAYASHI, T. INOUE, R. ISHII, R. SUZUKI, T.
ITIOKA: International Symposium Frontier in Tropical Forest Research: Progress in Joint Projects
between the Forest Department Sarawak and the Japan Research Consortium for Tropical Forests in
Sarawak. Malaysia (2015)
“Detection of characteristics of tree phenology in a tropical rainforest by analysing time-lapse digital
camera images.”
56) S. NAGAI and R. SUZUKI: International Symposium Frontier in Tropical Forest Research: Progress
in Joint Projects between the Forest Department Sarawak and the Japan Research Consortium for
Tropical Forests in Sarawak. Malaysia. (2015)
“Usability of cloud-free daily MODIS satellite-observed green-red vegetation index (GRVI) for
monitoring Bornean terrestrial ecosystem changes.”
57) S. NAGAI, S. TEI, K. KAJIWARA, H. IKAWA, R. SUZUKI, K.N. NASAHARA: Phenology 2015,
Kusadasi, Turkey (2015) “Detection of spatio-temporal variability of the timing of start and end of
growing season by multidisciplinary in situ and satellite observations.”
58) R. SUZUKI: International Workshop on Bridging Gap between Environmental Geospatial Information
and Environmental Policy, a special event of 2015 Fall Conference of Korean Society of Remote
Sensing, Kim-Dae-Jung Convention Center, Kwangju, Korea (2015)
“Remote sensing of forest function of carbon flow/stock in the global geochemical cycle and
ecosystem service.” 《招待講演》
59) R. SUZUKI: Cold lands workshop at North-Eastern Federal University in Yakutsk, Russia (2015)
“Remote sensing of forest functions on global carbon cycle and ecosystem services”
60) S. NAGAI, T.M. SAITOH, T. INOUE, R. SUZUKI, Y. HONDA: 23rd CEReS International
Symposium. Chiba, Japan (2015)
“Usability of phenological information published on web sites for ground-truthing of satellite remotesensing observations.”
61) S. NAGAI, T.M. SAITOH, K.N. NASAHARA, T. INOUE, R. SUZUKI: 2015 AGU fall meeting. San
S-9-3-103
Francisco, CA, USA (2015)
“Accurate detection of spatio-temporal variability of plant phenology by using satellite-observed
daily green-red vegetation index (GRVI) in Japan.”
62) R. SUZUKI and S. NAGAI: 2015 AGU Fall Meeting, San Francisco, CA, USA. (2015)
“Recent shift of deforestation to high elevation areas from 2001 to 2013 in Borneo detected by
MODIS data”
63) 永井信:日本生態学会第63回全国大会、仙台(2016)
「リモートセンシングによる植生フェノロジーの時空間分布変動の検出」
64) 鈴木力英:日本生態学会第63回全国大会、仙台(2016)
「生物多様性研究へのリモートセンシングの利用」
65) 井上智晴:日本生態学会第63回全国大会、仙台(2016)
「衛星データによる土地被覆分類を活用した土壌呼吸変化の広域マッピング」
(3)出願特許
特に記載すべき事項はない。
(4)「国民との科学・技術対話」の実施
1)
R. SUZUKI: JAMSTEC Headquarters Guided Tour by Geo-Informatics and Space Technology
Development Agency, Thailand, Yokosuka HQ, JAMSTEC, 2013 “Studies on terrestrial ecosystems
by remote sensing in JAMSTEC”
2)
鈴木力英:独立行政法人海洋研究開発機構第10回「地球環境シリーズ」講演会,ヤクルトホ
ール,2013「CO2などの温室効果ガスの変動に対する陸上生態系の関わり合い」
3)
鈴木力英:生物多様性観測・評価・予測研究の最前線3 ~アジアでの展開~,「アジア規模
での生物多様性観測・評価・予測に関する総合的研究」公開講演会,東京大学農学部,2014
「ルネオの熱帯林の変化を人工衛星から見る」
4)
鈴木力英:「アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合研究 」ウェブサイト
http://s9.conservationecology.asia/outcome/theme3_201401 ,2014 「ボルネオの熱帯林の
変化を人工衛星から見る」
5)
永井 信:宇宙航空科学技術推進委託費「宇宙人材育成プログラム」にて高校生•大学生向け
に講演, 千葉県東金市, 2015/8/6 「陸上の植物の時空間分布の変動
リモートセンシング観
測により調べる」
(5)マスコミ等への公表・報道等
特に記載すべき事項はない。
(6)その他
1)
日本生態学会第63回全国大会にて自由集会「我が国におけるリモートセンシング観測による
生態系評価研究の現状•課題•将来性」を主催, 仙台市, 2016/3/22。上述口頭発表(62, 63)
S-9-3-104
を含む。
8.引用文献
1)
鈴木 力英 (2015). 陸域生態系機能と生態系サービスのリモートセンシングによる評価法,
日本生態学会誌 , 65, 125-134.
2)
H NAGENDRA. (2001). Using remote sensing to assess biodiversity. International Journal of
Remote Sensing, 22, 2377-2400.
3)
IJ. WRIGHT, PB. REICH, M. WESTOBY, et al. (2004). The worldwide leaf economics spectrum.
Nature, 428, 821-827.
4)
MC. HANSEN, PV. POTAPOV, R. MOORE, M. HANCHER, SA. TURUBANOVA, A.
TYUKAVINA, D. THAU, SV. STEHMAN, SJ. GOETZ, TR. LOVELAND, A. KOMMAREDDY,
A. EGOROV, L. CHINI, CO. JUSTICE, JGR. TOWNSHEND. (2013). High-resolution global maps
of 21st-century forest cover change. Science, 342, 850-853.
5)
J. MIETTINEN, C. SHI, SC. LIEW SC. (2011). Deforestation rates in insular Southeast Asia
between 2000 and 2010. Global Change Biology, 17, 2261-2270.
6)
T. MOTOHKA, KN. NASAHARA, H. OGUMA, S. TSUCHIDA. (2010). Applicability of green–
red vegetation index for remote sensing of vegetation phenology. Remote Sensing, 2, 2369-2387.
7)
AD. RICHARDSON, JP. JENKINS, BH. BRASWELL, DY. HOLLINGER, SV. OLLINGER, M-L.
SMITH. (2007). Use of digital webcam images to track spring green-up in a deciduous broadleaf
forest. Oecologia, 152, 323–334.
8)
FB. FITZHERBERT, MJ. STRUEBIG, A. MOREL, F. DANIELSEN, CA. BRÜHL, PF. DONALD,
B. PHALAN. (2008). How will oil palm expansion affect biodiversity? Trends in Ecology and
Evolution, 23(10), 538-545.
9)
WAHID, SNA. ABDULLAH, IE. HENSON. (2005). Oil palm – achievements and potential. Plant
Production Science, 8(3), 288-297.
S-9-3-105
Quantitative Assessments on Influence of Biodiversity Degradation on Functions and
Services of Ecosystems in Asian Region
Principal Investigator:Tohru NAKASHIZUKA
Institution:
Tohoku University
6-3 Aza-Aoba, Aramaki, Sendai 980-8578, JAPAN
Tel: +81-22-795-6696
E-mail: [email protected]
Cooperated by: Hokkaido University, Forestry and Forest Products Research Institute,
Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
[Abstract]
Key Words: Ecosystem functions, Ecosystem services, Biodiversity, Forest, Climate
change, Land-use change
This project aimed at assessing ecosystem functions and services of Asian forests
using the trait-based approach and remote sensing.
We compiled a functional trait database for c. 320 tree species in Japan and c. 1000
species in Malaysia and Thailand. Based on the database, we mapped functional
compositions of tree communities in these regions. Then we transformed these values of
functional compositions into values of two essential ecosystem functions; maximum
photosynthetic capacity and litter decomposition rate, based on known relationships
between functional traits and those functions. Furthermore, impacts of climate change and
land-use change on these ecosystem functions were assessed by scenario analysis.
We build databases including 900 metadata and 200 raw data of forest plots in East
Asia, tree allometry data of 2000 trees and 130 species, and leaf optical reflectance of 18
sites and 420 species. By using these databases, we analyzed some parameters of forest
dynamics such as recruitment, mortality, and growth depending on the climate condition,
and the relationships between the reflectance and the plant traits associated with
ecosystem functions such as productivity, decomposition and herbivory. Furthermore, we
illustrated some ecosystem services such as carbon stock, BVOC, and sightseeing in some
spatial scales.
We assessed the relationship between pollination, biological control and
decomposition services and forest biodiversity at the local and national scales in Japan
S-9-3-106
and forest dominated landscapes in Boneo, Malaysia. Based on the results, we developed
protocols of mapping potential ecosystem service (ES) at local and national scales. Those
protocols can be applied to other East and Southeast Asian regions by specifying a target
ecosystem service, determining correlations of drivers with the service and/or diversity of
agent organisms, and using a vegetation/land use map and scenarios for future prediction.
Using remote sensing, we developed methods for (1) detecting fallen trees in the
deciduous forest of Kitaibaraki by a camera on an unmanned helicopter and assessing the
decomposition function of the forest ecosystem, (2) estimating and mapping leaf traits of
deciduous forest in Japan by satellite-derived growing season length, and (3) mapping
deforestation and its between-year change in Asian tropical forest based on satellite
images. Those investigations demonstrated the high potential of the remote sensing for
assessing biodiversity and ecosystem function.
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