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Annual Report 2016 Technology and Quality Section (J)

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Annual Report 2016 Technology and Quality Section (J)
Annual Report 2016
Technology and Quality Section
研究開発と生産への取り組み
グローバルな研究開発体制
1
各事業における知的資産の活用
7
特許の取得と状況/模倣品対策
16
グローバル生産体制
18
製造現場での品質管理
19
グローバルな研究開発体制
グローバルな研究開発体制
テルモでは2014年度よりカンパニー経営に移行し、研究
の次世代製品の開発や、現行カンパニーにはない新たな事
開発体制も
「カンパニー研究開発」
と
「コーポレート研究開
業を創出する研究開発を担っています。
カンパニー、
コーポ
発」
の2つのグループに分かれています。
「カンパニー研究開
レートがそれぞれの研究開発を推進するとともに、
両グルー
発」
では、
3カンパニーの経営戦略に基づき、
各事業がそれぞ
プの連携による研究開発にも取り組むことで、
新しい価値の
れ製品開発から生産・販売まで一気通貫の運営を担い、
各事
創出を目指しています。
また、
カンパニー、
コーポレートを含
業戦略に沿った製品パイプラインの開発を担っています。
研
むテルモグループ全体の研究開発を統括する責任者として、
究開発本部が担う
「コーポレート研究開発」
では、既存事業
チーフテクノロジーオフィサー
(CTO)
を任命しています。
テルモグループ全体の研究開発を統括するCTO
2015年7月、テルモはグローバル本社機能の強化を図るため、全社の重要
機能を担う責任者として6名のCXOを任命しました。
その一人であるCTOは、
コーポレートの研究開発を主導するとともに、
グループ全体の研究開発の連携
および内部開発力の強化を推進する役割を担っています。
カンパニーや事業の
枠を超えた横断的プロジェクトを発足させ、新事業創出に向けた研究開発に取
り組むとともに、将来の医療トレンドを把握・分析して経営メンバーと共有し、
成長戦略を立案します。
また、CTOをサポートするCTOチームとともに、事業の枠を超えた戦略的な
研究開発の推進に加え、技術やノウハウ、知識を持つ開発者の横の連携を促進
する人的ネットワークの構築にも取り組んでおり、
テルモグループ全体の研究
粕川 博明
執行役員
チーフテクノロジーオフィサー
(CTO)
研究開発本部長
開発力の最大化を追求しています。
1
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
カンパニー経営における研究開発体制
チーフテクノロジーオフィサー(CTO)
カンパニー
研究開発
心臓血管カンパニー
コーポレート
研究開発
ホスピタルカンパニー
TIS事業
ニューロバスキュラー事業
● CV事業
● 血管事業
血液システムカンパニー
基盤医療器事業
D&D事業
● DM・ヘルスケア事業
●
●
●
●
●
研究開発本部
血液システム事業
カンパニー研究開発との連携・支援
テルモグループの研究開発拠点(2016年6月30日現在)
テルモメディカル Corp.
バスクテック Ltd.
テルモカーディオ
バスキュラーシステムズ Corp.
マイクロベンション, Inc.
テルモヨーロッパ NV
テルモ
研究開発本部
愛鷹工場
富士宮工場
テルモペンポール
プライベート Ltd.
甲府工場
テルモ・
クリニカルサプライ
(株)
2
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
テルモBCT, Inc.
テルモメディカル
イノベーション, Inc.
テルモが目指す研究開発:新しい価値の創出
世界的に高齢化が進む中、発症後の治療に加えて、健康
確に把握し、
ニーズを充たす価値あるソリューションを生み
維持や予防医療へのニーズが高まっています。また、医療
出すことが求められています。
におけるITの活用も進み、患者さん一人ひとりに応じた最
テルモの研究開発では、
ニーズの探索とソリューションの
適な個別化医療や遠隔・在宅医療の発達などが見込まれま
開発という2つの活動サイクルのスピードと精度を上げるこ
す。医療を取り巻く環境とニーズが変化する中、研究開発の
とで、医療現場に新しい価値をもたらすイノベーションを、
役割も、新たな技術や製品を開発するだけではなく、医療現
より速く、
より多く創出することを目指しています。
場の中から、社会的・経済的にも重要性の高いニーズを的
内部開発力の強化
医療現場に新しい価値を提供するためには、患者さんや
にとって最も重要性が高いと思われるニーズを選択します。
医療従事者とのコミュニケーションを通じて、重要性の高い
そのニーズを充たすために、市場性があり、かつ実現可能
アンメットニーズを洞察する力が求められています。
また、
なコンセプトを立案し、事業化を目指します。
この手法のメ
アンメットニーズを充たすソリューションの開発では、
自社
リットは、学びながら実践することで、人材育成と開発の成
技術だけでなく、
オープン・イノベーションを通じて、社内外
果を同時に追求可能であることです。
その他にも、経済産業
の技術やノウハウを柔軟に組み合わせることが必要です。
省主催のグローバル起業家等育成プログラムへの参加や、
テルモでは、
このようなオープン・イノベーションを担う
先端技術習得のための留学などを実施しています。
研究開発人材の育成に力を入れており、新しい視点や手法
これらの取り組みを通じて、
グローバルな医療市場で求
を積極的に取り入れています。その1つとして、米国のスタ
められるイノベーション創出のための視点やマインドセッ
ンフォード大学で提唱された
「バイオデザイン・プログラム」
ト、
ノウハウの習得、人的ネットワークの構築などを目指し
の実践的な開発手法を取り入れています。
この手法では、医
ています。
療現場のニーズを自らの目で観察し、
その中から医療現場
3
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
成長機会の探索
医療技術の進歩やITの進化とともに、従来の医療の在り
保有しており、
これらを活かし、循環器およびその周辺領域
方が大きく変わりつつあります。
また、世界的な高齢化の進
において新たな取り組みを検討していきます。
展や、新興国における経済成長を背景とした生活スタイル
もう1つの大きな柱は、
再生医療の本格的な事業化の推進
の変化などを背景に、予防から発症予知、診断・治療、治療
です。世界初の重症心不全治療用の再生医療等製品「ハー
後のQOL(生活の質)
の改善までをトータルに捉え、
その中
トシート」
の開発で培った技術を活かし、心不全治療におけ
から社会的・経済的により価値のある医療を提供すること
る再生医療のポテンシャルを幅広く検討していきます。
が求められています。
また、病気の治療だけでなく、術後合併症、疼痛管理など、
テルモの研究開発は、そうした価値を生み出すイノベー
術後のケアに注目し、患者さんのQOLの改善を目指す医療
ションに挑戦し、世界の医療現場に貢献することで、
テルモ
の提供にも取り組んでいます。
その他にも、ITを活用した診
グループの持続的な成長を支えることを目指しています。
そ
察や病気の発症予知、予防、医療データの解析技術などを
の1つの例が、増え続ける循環器疾患の予防・治療です。心
応用し、新たな製品・サービスの開発を行うことも検討して
臓血管カンパニーでは、血管内のカテーテル治療や心臓外
いきます。
科手術用の製品開発における豊富な開発実績とノウハウを
4
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
基盤技術の改良・改善と共有化
医療機器を開発・製造する上で共通して要求される基盤
耐光性、耐変性、耐滅菌性、薬剤適合性等、様々な機能を兼
技術は、
日々改良・改善を続けながらテルモグループ全体で
ね備える必要があります。適切な素材を開発・選定し、
ユー
共有されています。
そのひとつとして生体適合性を高める技
ザーの使い勝手等を踏まえた形状へ加工・成形するまでの
術が挙げられます。医療機器は、体表に触れるもの、体内に
一連の工程において、
テルモの素材に関する豊富な経験と
入れるもの、長期的に体内に埋め込むもの等、様々な形態を
技術が生かされています。
とって生体へアクセスすることにより、診断や治療に使用さ
これらの素材を加工、成形、滅菌等する段階においては、
れます。
そのため、身体への負担を最小限に留めながら、い
長年の実績によって裏打ちされた技術やノウハウ
(生産技
かに安全に生体にアクセスするかがポイントとなります。
ア
術)
によって効率的かつ徹底した品質管理体制が構築され、
レルギー反応や血栓症等が起きにくい素材を開発し、構造
その下で生産が行われます。各工場が、
自ら製造している製
上の工夫を凝らすことにより生体適合性を高めることが、
そ
品に関連する生産技術を蓄積しつつ、他工場の生産を横断
の製品を優れたものと位置づける要因になるのです。
的に支援する体制を組むことで、すべての工場において高
また、医療機器に使用される素材は、
その用途に応じて、
品質な生産体制が整っています。
5
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
技術を製品につなげる組織力
開発から販売までの基本的なフローチャート
医療機器は、生理学、生化学、薬学、細胞工学、高分子化
学、
材料加工技術、
電子技術等の非常に多様な要素技術が統
合されて初めて成り立つものです。
また、
人の体に使用される
ものである以上、
その製造販売に係る承認には、国内外の当
開発
局によって、
安全面で非常に高いハードルが設定されます。
テルモグループは幅広い基盤技術を有し、同時に高度な
市販後調査
専門知識を持つ多くの人材を擁しています。
しかし、異業種
特許出願・
調査
からの参入などますます競争が激しくなってきている医療
機器業界において、
新たな製品を確実・迅速に社会に提供し
ていくには、社内に存在する基盤技術に加えて、社外技術も
安全性評価
販売
積極的に活用して製品開発を行うとともに、製品開発から
販売に結びつけるまでの流れをコントロールし、医療機器
特有の厳格な承認プロセスに対応できるような組織体制を
構築することが、競争を優位に進める上で必要不可欠とな
承認申請
臨床試験
ります。
これらを実現するために、
テルモの研究開発本部では、研
究から製品化までを一貫してスピーディーに進めることが
できるようプロジェクトの管理機能を強化しています。新規
との折衝を行う部門、市販後の製品の有効性・安全性の調
の医療ニーズや未成熟な技術を探索し、新たな価値を見出
査・管理を行う部門が、開発の初期段階から機能的に絡み
す部門と、それらを量産可能な製品に進化させる部門の2
合い、効率的な製品化を可能にしています。
また、近年では、
本柱の構造をとり、
その拠点を研究開発本部と各主要工場
日本に比べてよりスピーディーに実施することのできる欧
の両方に据えることで、研究開発段階にある新製品を生産
州の制度を利用して治験を進めたり、戦略的に海外子会社
移管するまでの工程が滞りなく行われる環境を整えていま
と連携し、各国の審査当局がそれぞれの国で取得したデー
す。
また、
その一部には、理化学・生物学的評価を行うことの
タを相互活用して早期承認を目指す同時治験を行うなど、
できる独自の評価センターを有し、研究開発本部や各工場
海外に多数の開発拠点を持つ強みを生かし、技術をうまく
による研究開発において必要となる実証データの取得や、
取り込むことで、新製品開発へとつなげる取り組みを行っ
臨床試験の前段階となる非臨床試験等を、社内で行うこと
ています。
を可能にしています。
このことは、多様な技術に対応した安
このように、
製品の開発から販売までをスムーズにサポー
全性評価のノウハウを獲得できるというメリットにもつなが
トできる組織体制は、テルモの医療機器メーカーとしての
ります。
長年の事業活動と、近年の積極的なM&Aや国内外の有力
これに加えて、知的財産権についての調査や保護を行う
企業との技術提携等により取得されたものであり、
テルモの
部門、臨床試験の実施をコーディネイトする部門、国内・海
強さを支える知的資産の一角を占める重要な要素となって
外の様々な薬事関連法規制に対応した申請や行政当局等
います。
6
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
各事業における知的資産の活用
基本的な考え方
テルモには、現在のテルモの主幹を成す3つの事業分野
と、次世代を担うことが期待される新規分野があります。各
分野には、製品や対象ユーザーの違い等に基づいたそれぞ
れの特性があるため、
その特性に応じて適切な素材や生産
高成長
高収益
技術、薬事戦略等を組み合わせ、それぞれ最適化した事業
展開を計画・推進しています。
イノベー
ション
テルモの各事業分野を担う3つのカンパニーの収益サイ
クルは、
それぞれ「先端製品」
と
「基盤製品」の両輪で形成さ
れています。
イノベーション、高成長・高収益、短いライフサ
先端
基盤
イクルを特徴とする
「先端製品」
と、改良改善、安定成長・高
改良改善
収益、長いライフサイクルを特徴とする
「基盤製品」の組み
短い
ライフ
サイクル
長い
ライフ
サイクル
安定成長
高収益
合わせにより、
「基盤製品」の安定した収益を医療の先端を
担う
「先端製品」に投資し、
「 先端製品」のブランドイメージ
やテクノロジーを
「基盤製品」にフィードバックする、
という
サイクルになっています。
心臓血管カンパニー
微細技術が組み合わされ、高い柔軟性を実現しています。
心臓血管カンパニーは、テルモの要素技術のうち、コー
ティング技術と合金・金属加工技術が複合的に活用されて
テルモでは現在、
「世界で存在感のある企業」
を目指すと
いる代表的な分野です。例えば、血管造影用ガイドワイヤー
いう長期目標を掲げており、
その実現に向け、
これまでに心
には超弾性合金技術、PTCA(経皮的冠動脈形成術)拡張カ
臓血管領域で培った技術を生かし、画像領域、下肢領域、脳
テーテルにはレーザー加工技術を採用しているだけでなく、
血管領域といった領域のパイプラインの強化を図っていま
それぞれに親水性潤滑コート
(Mコート)がコーティングさ
す。
これらの領域でもテルモの要素技術や精密加工・微細技
れており、血管深部への到達性向上の重要な一手を担って
術が生かされています。
います。
また、
ステントには、
これら要素技術に、精密加工・
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
薬剤溶出型冠動脈ステント
「Ultimaster®」
―ステント血栓症の発生率低減と血管への負荷軽減を目指して
薬剤溶出型冠動脈ステント
「Ultimaster」は、薬剤含有
コーティングの材料に生分解性ポリマーを採用し、加えてポ
リマーならびに薬剤を血管組織に接する面にのみ塗布する
ことで、長期的にみたステント血栓症発生率の低減が期待
拡張後のステント
できます。更に、
コバルト合金の採用とステントデザインを
工夫することにより、蛇行した血管内で通過性を向上させる
とともに、曲がった血管に沿って留置しやすくすることで、
血管への負荷を下げ、予後の改善を目指しています。
薬剤溶出型冠動脈ステント
「Ultimaster」
TRI用シース
「Glidesheath Slender®」
およびTRI用止血デバイス
「TRバンド®」
―カテーテル治療における患者さんの負担軽減に寄与
手首の橈骨動脈からカテーテルを挿入して治療するTRI
(経橈骨動脈冠動脈カテーテル術)は、従来の足の付け根
からカテーテルを挿入する治療法と比べて、合併症が少な
いことや入院日数が短くなることから、患者さんのQOL(生
活の質)
と医療経済性の向上に寄与する治療法です。
テルモが開発したTRI用シース
「Glidesheath Slender」
TRI用シース
「Glidesheath Slender」
は、
これまで血管が細く難しいと言われてきた高齢者や女
性にも治療が可能となるよう、従来のカテーテル製品が通
れるよう内径を保ちつつ外径を細経化しました。血管内壁
損傷のリスク低減、止血時間の短縮なども実現しています。
橈骨動脈用止血器「TRバンド」
は、二つのバルーンにより
血管を圧迫する力を適切に方向付けることで、橈骨動脈穿
刺部位の止血効果を高めるとともに、
止血を必要としない他
の血管や神経の圧迫を回避するよう工夫がなされています。
橈骨動脈用止血器「TRバンド」
8
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
体外循環装置用遠心ポンプ駆動装置「キャピオックス® 遠心ポンプコントローラー SP-200」
―視認性と操作性を向上、患者さんの安全性にも配慮
心停止時の緊急心肺蘇生などに使われるPCPSシステム※
の体外循環装置用遠心ポンプ駆動装置「キャピオックス遠
心ポンプコントローラー SP-200(通称NEO)」
は、従来機に
比べ、大画面タッチパネルの採用、重量を4割削減、流量セ
ンサーに専用コネクタを不要とするなど、視認性と操作性を
向上させました。特に重量の削減は、緊急時の可搬性向上
に寄与します。
また患者さんの安全性に配慮し、流量や圧力
などの履歴が確認でき、循環状態の変化を見守るヒストリ
体外循環装置用遠心ポンプ駆動装置
「キャピオックス遠心ポンプコントローラー SP-200」
機能を追加しました。
※PCPSシステム
(Percutaneous CardioPulmonary Support [経皮的心
肺補助]システム)
:心停止時の緊急心肺蘇生や、重症心不全に対する一時
的な循環補助で使用される医療機器。遠心ポンプと人工肺を含む血液回
路キット、送脱血カニューレ、駆動装置などからなり、心臓と肺の機能を代
行し全身の血液循環を補助します。
ホローファイバー(中空糸)型人工肺「キャピオックス®」
―心臓の外科手術を受ける患者さんの負担軽減を追求
テルモは、世界初の多孔質ポリプロピレンの中空糸(細
い筒状の繊維)
を用いたホローファイバー型人工肺の開発
に成功し、1982年に販売を開始しました。
このホローファ
イバー型人工肺は、安定したガス交換性能や小型化された
構造などから発売以降、世界に広く普及しています。人工肺
のグローバルスタンダードとなったホローファイバー型の
開発により世界の心臓外科手術の発展に貢献してきたこと
と、人工肺で使用される高品質な中空糸膜を安定生産する
現在の人工肺
「CAPIOX FX」
独自技術が評価され、公益財団法人大河内記念会より
「第
を受賞しました。
62回
(平成27年度)大河内記念賞※」
※大河内賞は大河内正敏工学博士の功績を記念して設けられ、わが国の生
産工学、生産技術の研究開発、
および高度生産方式の実施などについて、
学術の進歩と産業の発展に大きく貢献した功績に対し贈呈される伝統と
権威ある賞です。
中空糸
(左:写真)/断面図(右:イメージ)
9
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
ホスピタルカンパニー
ホスピタルカンパニーでは、病院内のベッドサイドからご
全、使い勝手、医療経済性を考慮した医療機器、一般家庭で
自宅まで、幅広い領域で使用される医療機器を取り扱って
の健康管理や予防医療をテーマとした医療機器など、
それ
います。医薬品に関する技術を併せ持つ強みを生かしてよ
ぞれの使用目的に応じた技術が採用されています。
り大きな付加価値を持たせた医療機器や、使用する人の安
皮内注射デバイス
「イムサイス®」
―難しい皮内への注射をより簡便かつ確実に
表皮や真皮など皮膚の上層部(皮内)
には、免疫を担当す
な深さまで刺すことができる針の形状について最適な組み
る細胞が多く存在しています。近年、皮内への注射では、従
合わせを追求しています。2015年9月に、
イムサイス皮内注
来と同じワクチン量でより早く効果が得られることや、従来
射針が日本で製造販売承認を取得しました。今後は、
インフ
より少ないワクチン量で皮下や筋肉注射と同等の効果が得
ルエンザワクチンにとどまらず、他のワクチンへの応用も期
られることなどが分かってきました。
しかし皮内の厚みはわ
待されます。
また、
日本だけでなく海外への展開も検討して
ずか2mm程度のため、注射を行う医師の技能によりその
いきます。
効果が左右されるというデメリットがありました。
そこで、
テ
ルモは従来困難であった皮内注射を
「簡便に、確実に」
でき
ることをコンセプトとした皮内注射デバイス「イムサイス」
の開発に着手しました。2010年には、第一三共株式会社と
提携し、皮内投与型季節性インフルエンザワクチンの共同
研究を開始しました。
「イムサイス」
は、針を垂直に皮膚に押
し当てる注射方法を採用しています。
また、針を刺しやすい
よう、皮膚を押さえて盛り上がった状態を作る構造と、適切
皮内注射デバイス
「イムサイス」
10
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
閉鎖式輸液システム
「シュアプラグ® AD」
シリーズ
―点滴を使用する医療現場の安全や業務効率化への貢献を目指して
輸液管理における院内各部署の様々なニーズに対応した
閉鎖式輸液システム
「シュアプラグAD」
シリーズを開発し、
2014年から本格販売を開始しました。
「シュアプラグAD」
シ
リーズは、混注部の薬液滞留をなくすため、独自に開発した
新構造を採用し、薬剤の微量投与が可能です。
また、接続に
専用アダプターが不要で、注射器や点滴器具を直接接続で
きるため、簡単かつ迅速に薬液を注入できます。
この2つの
機能を備えているのは「シュアプラグAD」
シリーズが世界
閉鎖式輸液システム
「シュアプラグAD」
シリーズ
初です。
シンプルな構造、
シンプルな操作性を有した
「シュア
プラグAD」
シリーズは操作間違いなどのリスクを低減でき、
医療の安全に貢献します。
また物品管理も簡便で経済面で
の価値も両立させています。
テルモはこれらの点滴に用いる
医療機器をシステムで提案し、医療現場の安全と業務効率
化に貢献していきます。
ペン型注入器用注射針「ナノパス® ニードルⅡ
(ナノパス® 34)」
―インスリン注射時における痛みの軽減を追求
テルモは、長年にわたり注射針のトップメーカーとして
培ってきた独自技術と、ユーザー目線に立った探索からす
くい上げたニーズを組み合わせ、患者さんの生活の質を向
上させるために必要な製品を開発し、提供しています。例え
ば、
インスリン注射時の痛みの軽減を追求し、針先の直径が
わずか0.18mmと世界最細のペン型注入器用注射針「ナノ
パスニードルⅡ
(ナノパス34)」
を開発し、
日本や中国、
イタリ
ア、
ドイツなどで販売しています。
「ナノパスニードルⅡ
(ナノ
ペン型注入器用注射針「ナノパスニードルⅡ
(ナノパス34)」
パス34)
」
では、
皮膚への挿入をスムーズにするため、
独自の
非対称の刃面構造(アシンメトリーエッジ)
を採用していま
す。
また、針の外径・内径ともに先へ行くほど細くなるダブル
テーパー構造を採用し、
針が細くなることによる注入抵抗の
増大を抑える工夫がなされています。
さらに、
テーパーの角
度を緩やかにすることで針にかかる力を分散し、
必要な強度
を確保しました。
2014年には、
前のモデルである
「ナノパスニードル
(ナノパ
ス33)
」
と合わせて累計販売本数が10億本を突破しました。
11
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
プラスチック製のプレフィラブルシリンジ(薬剤充填用シリンジ)「PLAJEX®」
―医薬品の特性に応じた付加価値の高いシリンジの開発
近年、
プレフィルドシリンジ(薬剤充填済みシリンジ)が
テルモはより安全性の高いプレフィルドシリンジの普及に
広く利用されていますが、抗体などのバイオ医薬品は総じ
貢献していきます。
て不安定であり、従来のガラス製シリンジでは、潤滑剤とし
て塗布されているシリコンオイルの影響でバイオ医薬品の
効果や安全性が低下する可能性があることが知られてい
ます。テルモは、長年培ってきたプラスチック製シリンジ製
造技術と独自のコーティング技術であるi-coatingにより、
シリコンオイルフリーのプラスチック製プレフィラブルシリ
ンジ「PLAJEX」
を開発し、国内外の製薬企業に販売してい
ます。医薬品の特性に合わせたシリンジ容器の開発により、
プレフィラブルシリンジ(薬剤充填用シリンジ)
イコデキストリン含有腹膜透析液「ニコペリック® 腹膜透析液」
―腹膜機能への影響軽減を目指した、世界初の中性化腹膜透析液
1987年から腹膜透析液およびその周辺システムを発売
し、
在宅医療である本療法において、
「患者さんにやさしい」
を
目指して製品開発を進めてきました。
その中で、世界初の中
性化されたイコデキストリン含有腹膜透析液「ニコペリック
腹膜透析液」
を開発、
2014年に販売を開始しました。
「ニコペ
リック腹膜透析液」
は、
輸液分野で培った技術を生かした2室
容器を採用し、
イコデキストリンを浸透圧物質として含有す
る腹膜透析液であり、
使用時に混合することで中性化するこ
「ニコペリック腹膜透析液」
とができるものです。
これにより、
腹膜透析中止の原因の1つ
と考えられている腹膜機能への影響の軽減が期待できます。
日本初のスプレー式癒着防止材「アドスプレー®」
の開発
―合併症のリスク低減を目指して
テルモは外科領域において、術後癒着の軽減を目指し、
ス
着を軽減するため、
日本初のスプレー式癒着防止材を開発
プレー式癒着防止材の開発に取り組んできました。
し、2016年6月に日本での製造販売承認を取得しました。本
術後癒着とは、外科手術などで欠損または損傷した生体
製品はスプレー式のため、開腹手術や腹腔鏡手術といった
組織が修復する過程において、本来は離れている臓器・組織
術式を問わず処置部位へ簡便にアクセスし、目的とする部
面が連結してしまう現象です。
この現象は術式にかかわらず
位への適切な噴霧を行うことができます。
テルモは、本製品
腹腔内、骨盤腔内などのあらゆる手術部位で50–90%とい
の拡大を通じて、手術を受けた患者さんの術後癒着を起因
う頻度で起こり、腸閉塞、不妊症、慢性骨盤痛など手術後に
とする合併症リスク低減を目指します。
生じる合併症の原因の1つとなっています。
テルモは、
この癒
12
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
血液システムカンパニー
テルモの輸血関連製品は、血液バッグを中心に世界各地
提供しています。
また、近年注目されているアフェレシス治
域で使用されており、
それぞれの国や地域によって、採血方
療の領域でも、
これまで培ってきた血液成分分離技術を生
法や採取した血液を製剤化する方法が異なるため、地域ご
かした製品を開発・提供しています。
とに最適な企業と連携しながら、市場に適した製品を開発・
血液自動製剤システム
「TACSI®」
(タクシー®)
―血液製剤工程の作業効率向上、血液成分の均質化・高品質化に貢献
近年、先進国では、
ドナーから献血された血液をそのまま
輸血する
「全血輸血」はほとんど行われず、患者さんに必要
な成分のみを分離して輸血する
「成分輸血」が主流です。全
血から患者さんが必要とする血液成分を効率よく分離する
ために、
テルモが独自の技術を持つ血液バッグと、遠心分離
装置のメーカーとして長い歴史を持つ独Hettich社の装置
とを組み合わせた血液自動製剤システム「TACSI」を共同
開発しました。
TACSIでは、
これまで手作業で行われてきた工程の自動
化を実現しました。
これにより一連の製剤工程における精度
と作業効率を飛躍的に向上させるとともに、血液成分の均
質化・高品質化により輸血の安全性向上に貢献しています。
血液自動製剤システム
「TACSI」
遠心型血液成分分離装置「Spectra Optia®」
(スペクトラ オプティア™)
―難病の治療に新たな選択肢を提供するアフェレシス治療に貢献
近年では、原因が解明されていない自己免疫性疾患や難
治性炎症性疾患、
ウィルス性疾患といった治療が困難な難
病と闘っている患者さんに、新たな治療の選択肢としてア
フェレシス治療が注目されています。アフェレシス治療で
は、難病と闘う患者さんの血液から原因物質を含む血漿を
分離・除去し、献血で提供された血漿等に交換することで病
態の改善を図ります。
テルモでは、
これまで培ってきた独自
の遠心分離の技術を応用し、原因物質を含む血漿を効率よ
くかつ適切に除去するための遠心分離システムを採用した
遠心型血液成分分離装置「Spectra Optia」
を開発・提供し
ています。
遠心型血液成分分離装置「Spectra Optia」
13
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
細胞増殖システム
「Quantum™」
(カンタム™)
―細胞培養プロセスの作業効率の向上とコスト低減に貢献
今後拡大が期待される再生医療や細胞治療では、治療に
元(3D)中空糸バイオリアクター※を採用し、必要最低限の
必要な品質の高い細胞を大規模かつ安定的に培養すること
空間で細胞培養に必要な大きな表面積を確保し、接着した
が求められています。従来のフラスコを用いた培養工程で
細胞を最大限に増殖できるよう設計されています。
は、多くの人手と極めて高度な品質・安全管理が可能な設
※バイオリアクター:生物やその成分の反応(生化学反応)
を利用して物質を
生産する装置の総称。細胞の培養に用いる場合は、適切な足場を提供し、
容器内の温度、pH、濃度、圧力、撹拌速度、流量、通気などを制御しつつ反
応を管理する。
備が必要とされ、多額のコストを要します。
このような課題
に対し、
テルモは培養プロセスの簡略化を目指し、
自動細胞
培養プラットフォームである細胞増殖システム
「Quantum」
を開発しました。培養に使用する細胞の準備から、試薬の添
加、
細胞を培養するための培地供給、
培養した細胞の回収と
いった一連のプロセスを自動で行うことができ、作業効率の
向上とコスト低減を図りながら、
細胞培養プロセスの再現性
および拡張性を高めることが可能です。
「Quantum」
では細
胞培養中の温度やガスを制御することで、
機能的にクローズ
ドなシステムを確保し、
手作業に起因する汚染や失敗のリス
クを抑えながら、
わずか0.3m2という非常に小さい設置面積
で大量の細胞の培養を可能にしました。
さらに、独自の三次
細胞増殖システム
「Quantum」
14
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
再生医療
テルモでは、
さらなる成長を担う新しい分野として、再生医療に取り組んでいます。世界初の重症心不全治療用の再生医療
等製品「ハートシート」
を開発するとともに、
その開発で培った技術を活かし、心不全治療における再生医療のポテンシャルを
幅広く検討していきます。
ヒト
(自己)骨格筋由来細胞シート
「ハートシート®」
―日本発、世界初となる重症心不全治療用の再生医療等製品
2015年9月18日、
テルモが再生医療等製品として申請し
展示スペースに細胞シートを出展し、
日本の再生医療技術
たヒト
(自己)骨格筋由来細胞シート
「ハートシート」が、初
の先進性を世界に発信しました。
このシートは、虚血
の国内製造販売承認※を取得しました。
今後も再生医療の普及に向けて技術開発を進め、患者さ
性心疾患による重症心不全の患者さんを対象とした再生医
んのQOL向上への貢献を目指して取り組んでいきます。
療等製品で、
患者さんの大腿部より筋肉組織を採取し、
組織
※条件及び期限付承認
内に含まれる骨格筋芽細胞を培養して作製します。心臓の
表面に貼ることで重症心不全の改善が期待でき、新たな治
療の選択肢となることが期待されています。
テルモは2007
年より開発に着手し、大阪大学(澤芳樹教授)
と共同で開発
を進めてきました。2012年から国内3医療機関で7例の治
験を実施し、2014年の治験完了後、10月に厚生労働省へ再
生医療等製品として、ハートシートの製造販売承認申請を
行い、承認取得後、2016年5月下旬に販売を開始しました。
調製された細胞シート
また、同年5月に開催された伊勢志摩サミットの政府広報
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
特許の取得と状況/模倣品対策
知的財産戦略の基本方針
革新的なアイデアをノウハウや特許権等の知的資産とし
海外の拠点を含めたグローバルな研究開発活動によって
て管理し、
それら知的資産を戦略的に活用して利益へ転換
創出された革新的なアイデアが、知的資産としてグローバ
させる活動は、
メーカーの生命線であると考えます。
テルモ
ルに展開している事業の収益に確実に貢献できるように、
グループにおける知的資産の創出活動にあっては、
「創造的
研究開発戦略と事業戦略の双方と密接に連携したグローバ
な風土の醸成」、
「価値ある資産の増加」
を基本方針としてグ
ルな知的財産戦略を立案・推進しています。
ローバルに掲げています。
部門間の垣根を越えた創出活動
テルモでは、開発の初期段階から開発者と知的財産部員
に相談し合える環境を整え、
スムーズな創出活動をサポー
とが一体となって、
自社の発明と他社の特許や製品の特徴
トしています。
とを対比した上で、自社の開発がどのような方向に進むべ
また、知的財産部は、創出された発明を通じてテルモグ
きか、そして、
どのような知的資産のポートフォリオを構築
ループの事業の成長に貢献すべく、必要な国や地域を特定
すべきかを考えて発明創出活動を行っています。知的財産
して、特許出願および権利化の強化を図っていきます。
部員は、開発者と密にコミュニケーションをとることで気軽
知財マインドの醸成
価値ある資産を増加させるためには社員の知的財産に関
み出される環境づくりとして、毎年、知的財産部門が主催者
する意識を高め、興味を持ってもらうことが必要と考え、世
となり、多種多様な社内研修も実施しています。
この社内研
界各国の知的財産権に関するニュースを社内でタイムリー
修は、基礎的なコースから専門的かつ実務的なプログラム
に発信しています。
また、安定して発明や技術的な考案が生
まで、受講者のレベルに合わせて整備されています。
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
特許状況
特許出願件数(事業別)
2015年度の特許出願件数(事業別構成比)
2015年度の特許出願件数(第一国出願件数)は455件
で、既存事業に関する出願件数が65%、既存事業に属さな
新規分野
い新規分野に関する出願件数が35%を占めています。
これ
35%
心臓血管
31%
は、
テルモが既存製品の改良・改善を継続するとともに、積
極的に将来の事業拡大・新領域への展開を見据えた投資を
行っていることを表しています。
血液システム
ホスピタル
3%
31%
特許保有件数(事業別)
2016年3月末時点の特許保有件数(事業別構成比)
2016年3月末時点の国内外の特許保有件数は約3,800
件となっています。既存事業に関する保有件数が80%と高
新規分野
い比率を占めていますが、
これは、
「 先端製品」のテクノロ
20%
心臓血管
36%
ジーを「基盤製品」にフィードバックするというテルモの収
益サイクルの結果であり、新規分野として特許出願した発
明等が既存事業に貢献していることを表しています。
血液システム
8%
ホスピタル
36%
模倣品対策の強化
グローバル展開を強化しているテルモにとって、
ブランド
を信頼してくださっているユーザーに対しても被害をもた
イメージは常に保護・強化していかなければならないもの
らす可能性があります。テルモは、メーカーの使命として、
です。
ブランドを不正に使用した模倣品は、
これまで築いて
常に世界的に模倣品の有無を調査し、早期発見に努めるな
きたブランドイメージを壊すだけでなく、
テルモのブランド
ど、断固とした姿勢で対策を講じています。
17
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
グローバル生産体制
生産のグローバル化に対応した品質保全・生産の安定化を推進
テルモでは、事業のグローバル化が加速する中、世界の
ローバルな成長を支えるコスト競争力の強化にも取り組ん
医療現場に、高品質な製品を安定的かつ迅速に供給するた
でいます。2014年7月には、
ベトナムのホーチミン市近郊に
め、
グローバル生産体制の強化に取り組んでいます。
同国で2拠点目となる工場を開設し、血液バッグや成分採血
日本の工場は、
ものづくりのコアとなる高度な生産技術
キットの生産移管を進めています。
力を磨き、
ノウハウを蓄積するとともに、
その技術を海外の
アジア以外の地域では、2013年に、米国子会社のマイク
工場に伝達・移管するマザー工場の役割を担っています。現
ロベンション, Inc.が、コスタリカに工場を開設しました。
在、静岡県の富士宮工場、愛鷹工場、山梨県の甲府工場や
グローバルで需要拡大が続く脳動脈瘤治療用のコイルやス
2016年1月より商業生産を開始したテルモ山口、
テルモ山
テントなどを安定的に量産し、各地域に供給しています。
口D&Dなどを含め、計7拠点で生産を行っています。
今後も、競争力の源泉となる高度な生産技術力を磨くと
海外では、
アジアをテルモグループの生産センターと位
ともに、
コスト競争力の継続的な強化にも取り組み、事業環
置付け、品質の高い製品を安定的に供給すべく、
フィリピ
境や需要の変化にも柔軟に対応できる生産体制を構築して
ン、ベトナムなどの生産拠点に、マザー工場からの技術移
いきます。
管を進めています。
さらにアジアでの生産拡大を通じて、
グ
テルモグループの生産拠点(2016年6月30日現在)
欧州
5
拠点
英国
3拠点
ベルギー 2拠点
アジア他
5
ベトナム
フィリピン
中国
インド
拠点
2拠点
1拠点
1拠点
1拠点
日本
7
米州
拠点
日本
海外
計
7
18
拠点
8
拠点
米国
7拠点
コスタリカ1拠点
拠点
25
拠点
18
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
製造現場での品質管理
国際規格に適合した品質マネジメントシステムを構築
1995年、
テルモは欧州の医療機器指令への対応を皮切
りに、国際規格に適合した品質マネジメントシステムと既存
の医薬品GMP※1をベースにした、高度な品質保証体制の
融合を進めました。
そして現在、
グローバルな要求に適合す
る品質マネジメントシステムの構築を継続的に推進してい
ます。
医療機器の品質保証にまつわる国際規格のISO13485※2
の外部認証を、国内・海外すべての生産拠点で取得してい
工場での厳しい品質管理
ます。
また、医薬品医療機器等法、欧州医療機器指令、近年
強化されている米国のFDA規制や、
グローバルハーモナイ
ゼーションの潮流に伴い、急速に強化が進む新興国での規
制など、医療機器や医薬品に対する各国規制の最新動向を
早期に把握し、
品質マネジメントシステムの一層の改善に努
めています。
また、品質システムの継続的な維持・向上のため、新たな
規格・規制の動向の共有や、
品質に対する意識向上を目的と
して、
アソシエイトに対する教育訓練を毎年実施しています。
※1「Good Manufacturing Practice」
の略。医薬品などの製造管理および
品質管理に関する基準
※2 医療機器産業の品質マネジメントシステムを確立するために作成された
国際規格。
アソシエイトに対する研修の風景 「お客様の視点」
を第一とした品質方針を設定
品質マネジメントシステムの構築と実施、その有効性の
品質方針
維持のため、
経営者が自ら品質方針を定めています。
各部門
はこの方針に基づいて品質目標を設定し、
トップの方針が
私たちは、
医療の現場に安全と安心をお届けするため、
アソシエイト一人ひとりの目標に落とし込まれていきます。
■お客様にとって価値ある製品を追求します。
品質方針の一番目に掲げている
「お客様の視点」
がテルモの
■品質システムにおける自らの役割を理解し、
品質保証のベースになっています。
実践します。
■仕事の進め方を常に見直し、
改善します。
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
生命倫理の尊重に関する社内規定を策定
テルモの医療機器・医薬品開発および評価は、生命の尊
確認、
動物の適正な飼養・管理・自己点検を実行しています。
厳を第一に考え、関連法や公的指針だけでなく、社内規定を
このような当社の動物実験の実施体制は、
「 厚生労働省
定めて倫理性と科学性の両立を図っています。
の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する
研究開発および製品評価のための動物実験では、2005
基本指針」に適合していることが、財団法人ヒューマンサイ
年の法改正により明確化された3Rの理念※に加え、4番目の
エンス振興財団による外部評価により検証されています。
Rである
「実験責任
(Responsibility)
」
を果たせるよう、
動物
※3Rの理念:Replacement
(動物を使用しない研究への代替)
、
Reduction
(動物数の削減)、Refinement( 動物の受ける苦痛の軽減)の3項目を
十分に考慮・検討した上での研究が重要であると、1959年にRusselと
Burchが初めて提言した。
日本では2005年、動物の愛護及び管理に関す
る法律の改正で、
その理念が明文化された。
実験を実施する実施機関の長が社内に動物実験委員会を
設置し、社員教育、実験計画の審査、適正な実験実施と終了
内部・外部監査で品質マネジメントの実効性を評価
品質を維持・向上させるため、
品質マネジメントシステムが適
の個別要求事項に適合していることを証明するため、
各国行政
切に遵守・運用されていることを客観的に評価する内部監査を
や認証機関などから、
毎年多くの外部監査を受けています。
実施しています。
内部監査は、
トレーニングを積み、
社内認定を
受けたアソシエイトが行います。
結果は経営者に報告され、
改善
指示がなされ、
それに基づき品質マネジメントシステムの継続
的な改善につなげます。
さらに、
医薬品医療機器等法をはじめ
欧米各国から全世界に拡大しつつある規制や、
取引先企業から
厳しさを増す外部監査にも対応
海外でも厳しい品質管理を実施
たシステム面について、
多くを海外工場から学んでいます。
グローバル化に伴う、
グループ全体のリスクマネジメントや
品質保証への期待の高まりを背景に、
2015年にCQO体制※
※CQO
(Chief Quality Officer:最高品質責任者)
をトップとする品質管理体制
を導入し、
全生産拠点に対する監視強化を行っています。
また、対応のスピードアップや連携強化に向け、国内外の
品質部門の責任者が集まり、共通課題の議論や知識・経験
の共有なども行っています。海外工場の役割が増す今、国内
で培った品質向上のノウハウを海外アソシエイトに伝える一
方、国内のアソシエイトも、体系的な考え方や標準化といっ
品質部門の責任者が、
グローバルの課題について議論
はテルモ株式会社の商標です。
テルモ、Mコート、Ultimaster、Glidesheath Slender、TRバンド、CAPIOX、
キャピオックス、
イムサイス、
シュアプラグ、
ナノパス、PLAJEX、i-coating、
ニコペリック、
アドスプレー、TACSI、
タクシー、
ハートシートはテルモ株式会社の登録商標です。
Spectra OptiaはテルモBCT, Inc.の登録商標です。
スペクトラオプティア、Quantum、
カンタムはテルモBCT, Inc.の商標です。
20
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016 Technology and Quality Section
東京オフィス
〒163-1450 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー
© テルモ株式会社 2016年8月
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