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平成24年度 - 神奈川県柔道整復師会

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平成24年度 - 神奈川県柔道整復師会
【特 別 講 演】
日常診療における上肢外傷のピットフォール
順天堂大学医学部准教授
同 医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター
整形外科科長 岩 瀬 嘉 志 先 生
いわせ よしゆき
岩瀬 嘉志
昭和37年 3 月23日生 50歳 男性
昭和63年3月 順天堂大学医学部卒業
昭和63年4月 順天堂大学整形外科学教室入局臨床研修医
昭和63年5月20日 医師国家試験合格医師免許取得
平成 7年2月 日本整形外科学会専門医
平成 8年7月 順天堂大学整形外科学講座助手
平 成 9 年 3 月 学 位 取 得 (医 学 博 士)
平成13年6月 東京都社会保険診療報酬支払基金整形外科主任審査委員
平成13年7月 順天堂大学医学部整形外科学講座講師
平成15年7月 順天堂大学整形外科医局長
平成17年7月 順天堂大学医学部付属
順天堂東京江東高齢者医療センター医長
平成18年1月 順天堂大学医学部付属
順天堂東京江東高齢者医療センター科長
平成19年5月 順天堂大学医学部整形外科学講座准教授
現在に至る
日本整形外科学会専門医
日本手外科学会認定専門医
日本手外科学会代議員
千葉手肘研究会世話人
東京手肘研究会世話人
城東臨床整形外科医会幹事
【学 術 交 流】
足底アーチテーピングが
足底圧ならびに足底軸に及ぼす影響
公益社団法人東京都柔道接骨師会
学術委員 久
米
信
好
キ ー ワ ー ド : 足 底 ア ー チ、 テ ー ピ ン グ、 足 底 圧
はじめに
2 足 歩 行 を 行 う 人 間 に と っ て 、 足 底 ア ー チ の 機 能 異 常 は 様 々 な 疼 痛 を 引 き 起 こ す 誘 因
の 1 つ に な り 得 る も の と 考 え ら れ、 一 般 的 に 疼 痛 を 抱 え る 患 者 の 歩 様 を 観 察 す る と 跛 行
す る 場 合 が 多 い 4) 。 そ こ で 、 疼 痛 が 原 因 で 接 骨 院 を 来 院 し た 患 者 を 無 作 為 に 抽 出 し 、 そ
の 疼 痛 部 位 を 判 断 し た 後、 足 底 ア ー チ の 機 能 を 静 止 立 位 な ら び に 動 的 歩 行 に つ い て 評 価
し、 非 伸 縮 性 固 定 テ ー プ を 用 い て 足 底 ア ー チ の 補 正 テ ー ピ ン グ が 足 底 圧 の 面 積 な ら び に
足 底 軸 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 査 を 行 う こ と を 目 的 と し た。
対象および方法
1. 対 象
被 験 者 は 平 成 23 年 9 月 か ら 12 月 に 何 ら か の 疼 痛 を 訴 え 接 骨 院 を 訪 れ た 患 者 を 無 作
為 に 抽 出 し た 、男 性 56 名 ( 最 小 9 歳 、最 大 80 歳 、平 均 28.5 歳 ± 21.8)、女 性 53 名 ( 最
小 9 歳 、 最 大 78 歳 、 平 均 42.6 歳 ± 22.8)、 計 109 名 を 対 象 と し た 。 ま た 、 調 査 の 目 的
な ら び に 方 法 に つ い て 説 明 を 行 い、 同 意 を 得 た 者 を 被 験 者 と し た。
2. 足 底 圧 計 測 器 に よ る 測 定
メ デ ィ キ ャ プ チ ャ ー ズ 社 製 、 ダ イ ナ ミ ッ ク 歩 行 測 定 シ ス テ ム Win-Track を 用 い て 計 測
を 行 っ た 。 Win-Track は 、 長 さ 1,610 × 幅 652 × 高 さ 30mm で プ レ ー ト 部 の 厚 み は 9mm、
測 定 有 効 面 積 は 1,500 × 500mm で 計 測 エ リ ア 内 は 、 分 解 能 1cm2 あ た り 4 セ ン サ ー で 1
枚 の 連 続 し た 測 定 板 を 使 用 し 、 セ ン サ ー サ イ ズ は 7.8 × 7.8mm で セ ン サ ー 数 は 12,288
個 の 抵 抗 性 セ ン サ ー を 用 い て い る 。 最 小 圧 力 は 0.4g/cm2、 最 大 圧 力 は 100g/cm2 で 、 毎
秒 200 イ メ ー ジ を 抽 出 し 、 専 用 PC ソ フ ト に て 静 止 立 位 に よ る 重 心 位 置 (mm)、 前 後 ・
左 右 面 積 率 (%) と 動 的 歩 行 に よ る 面 積 (cm2)、 最 大 圧 (g/ cm2)、 平 均 圧 (g/ cm2) を
抽 出 し て 足 底 ア ー チ 補 正 テ ー ピ ン グ 前 後 の 値 の 変 化 を 調 査 し た ( 図 1)。 な お 、 足 底 圧
の 静 止 立 位 は プ レ ー ト 上 で 足 踏 み を 行 わ せ、 力 が 抜 け た と こ ろ で 停 止 さ せ た。 動 的 歩 行
は プ レ ー ト の 手 前 2m か ら 歩 行 さ せ 、 足 底 の 面 積 、 圧 力 と 軸 の 軌 道 を 計 測 し た ( 図 2)。
図 1、 メ デ ィ キ ャ プ チ ャ ー ズ 社 製 、 ダ イ ナ ミ ッ ク 歩 行 測 定 シ ス テ ム Win-Track
図 2、 Win-Track に よ る 静 止 立 位 と 動 的 歩 行 の 測 定 : 左 ( 静 止 立 位 ) 右 ( 動 的 歩 行 )
3. 足 底 ア ー チ の 補 正 テ ー ピ ン グ
テ ー ピ ン グ の テ ー プ は 皮 膚 か ぶ れ を 防 止 す る た め、 低 ア レ ル ギ ー 性 ア ク リ ル 系 粘 着 剤
を 用 い て 格 子 型 の 通 気 孔 で 通 気 性 を 考 慮 し た 3M ヘ ル ス ケ ア 製 、 マ ル チ ポ ア ス ポ ー ツ ホ
ワ イ ト 非 伸 縮 性 固 定 テ ー プ を 用 い た 。 な お 、 テ ー プ 貼 付 部 に は 3M ヘ ル ス ケ ア 製 、 非 ア
ル コ ー ル 性 皮 膜 キ ャ ビ ロ ン を 塗 布 し た 後、 皮 膚 に 直 接 テ ー プ を 貼 付 し、 テ ー プ 除 去 後 に
は キ ャ ビ ロ ン ス キ ン バ リ ア ク リ ー ム を 塗 布 し て 皮 膚 を 保 護 し た ( 図 3)。
オ ー ス ト ラ リ ア の 足 病 医、 ポ デ ィ ア ト リ ー が 行 う テ ー ピ ン グ 手 法 を 改 良 し た 非 伸 縮 性
ホ ワ イ ト テ ー プ を 用 い た 足 底 ア ー チ の 補 正 テ ー ピ ン グ の 貼 付 方 法 は 、 図 4 の よ う に 1)
距 骨 頭 部 を 母 指 と 示 指 で 押 さ え、 足 部 を 内 ・ 外 転 さ せ て 距 骨 下 関 節 の ニ ュ ー ト ラ ル ポ ジ
シ ョ ン を 決 定 す る 。 2) MP 関 節 の 近 位 部 に ア ン カ ー テ ー プ を 貼 る 。 3) ア ン カ ー テ ー プ
の 内 ・ 外 側 か ら 始 め た テ ー プ は 踵 骨 隆 起 部 を 通 り、 足 底 腱 膜 が 足 底 で 踵 骨 に 付 着 す る 部
を 斜 め に 通 過 し て、 同 側 の ア ン カ ー テ ー プ の 足 底 面 ま で 貼 り、 内 ・ 外 側 の 縦 ア ー チ を 補
正 す る 。 4) 踵 後 部 の 皮 膚 が テ ー プ 間 か ら 露 出 し て 圧 迫 さ れ る た め 、 そ の 部 を テ ー プ で
包 み 込 む 。 5) 足 部 内・外 側 面 を U の 字 状 に 、次 に 足 底 部 を U の 字 状 に テ ー プ を 貼 り 、遠・
近 位 の 横 ア ー チ を 補 正 す る 。 6) 距 腿 関 節 前 面 の 遠 位 か ら 中 足 部 を 環 行 す る よ う に 巻 く
こ と、 後 足 部 か ら 前 足 部 を 補 正 し て 終 了 す る
1,2)
。
図 3、足 底 ア ー チ 補 正 テ ー ピ ン グ 材 料:左(キ ャ ビ ロ ン)、中(マ ル チ ポ ア ス ポ ー ツ ホ ワ イ ト テ ー プ)、右(キ ャ ビ ロ ン)
図 4、 足 底 ア ー チ 補 正 テ ー ピ ン グ の 方 法
4. 疼 痛 部 位 の 判 定
疼 痛 部 位 の 判 定 は 柔 道 整 復 師 が 行 い、 一 般 的 に 歩 様 に お い て 影 響 を 及 ぼ す の は 下 肢 の
疼 痛 で あ る と 考 え ら れ る が、 上 肢 や 体 幹 の 疼 痛 を 庇 う こ と の 影 響 も 探 る た め、 患 者 の 主
訴 な ら び に 圧 痛 等 の 臨 床 症 状 に て 上 肢 群、 下 肢 群、 体 幹 群 の 3 群 に 分 類 し た。 な お、 疼
痛 の 程 度 に つ い て は 客 観 的 に 判 断 す る こ と は 困 難 で あ る が、 接 骨 院 に 疼 痛 を 訴 え 来 院 し
た 患 者 で あ る た め、 各 々 の 疼 痛 は 日 常 生 活 に 何 ら か の 支 障 が あ る 疼 痛 で あ る。
Ⅲ . 結果
測 定 結 果 の 値 は 平 均 お よ び 標 準 偏 差 で 示 し た。 な お、 統 計 処 理 は 静 止 立 位 の 変 化 率 を
one sample t-test を 用 い 、 動 的 歩 行 時 の テ ー ピ ン グ 前 後 の 値 を Paired t-test を 用 い て 有 意 水
準 5% ま た は 1% 未 満 を 有 意 と し た 。
1. テ ー ピ ン グ 後 の 静 止 立 位 の 足 底 面 積 率 の 変 化 は 左 右 の 面 積 率 4.0% ± 11.2、 前 後 の 面
積 率 3.9% ± 14.2 と 過 荷 重 側 か ら 有 意 に 移 動 し た ( 表 1)。
2. 静 止 立 位 の X 軸 ( 左 右 動 揺 ) と Y 軸 ( 前 後 動 揺 ) は 、 過 荷 重 側 か ら テ ー ピ ン グ 後 に
X 軸 は 7.4mm ± 16.0、 Y 軸 は 2.6mm ± 23.1 と 変 化 し 、 X 軸 の み 有 意 に 反 対 側 へ 軸 が
移 動 し た ( 表 1)。
表 1、 足 底 ア ー チ テ ー ピ ン グ 後 の 静 止 立 位 時 の 足 底 面 積 と 軸 の 変 化
左右足底面積率
4.0%± 11.2 *
前後足底面積率
3.9%± 14.2 *
足底 X 軸
7.4mm ± 16.0 *
足底 Y 軸
2.6mm ± 23.1
*
p < 0.01
3. 動 的 歩 行 時 の 歩 行 面 積 は テ ー ピ ン グ 前 の 左 足 88.6cm2 ± 18.9、 右 足 89.7cm2 ± 17.6、
テ ー ピ ン グ 後 の 左 足 90.4cm2 ± 16.5、 右 足 92.2cm2 ± 17.7 で あ っ た 。 歩 行 平 均 圧 は
テ ー ピ ン グ 前 の 左 足 1,013.7g/cm2 ± 203.0、 右 足 1,033.3g/cm2 ± 203.4、 テ ー ピ ン グ
後 の 左 足 1,048.2g/cm2 ± 216.4、 右 足 1,078.2g/cm2 ± 227.7 と テ ー ピ ン グ 後 は 有 意 に
歩 行 時 の 面 積 が 広 が っ た ( 表 2)。
表 2、 動 的 歩 行 時 の 足 底 ア ー チ テ ー ピ ン グ 前 後 の 足 底 圧
歩行面積
歩行平均圧
テーピング前左足
88.6cm2 ± 18.9
1013.7g/cm2 ± 203.0
テーピング後左足
90.4cm2 ± 16.5 *
1048.2g/cm2 ± 216.4 *
テーピング前右足
89.7cm2 ± 17.6
1033.3g/cm2 ± 203.4
テーピング後左足
92.2cm2 ± 17.7 **
1078.2g/cm2 ± 227.7 *
*
p < 0.05,
**
p < 0.01
4. 動 的 歩 行 時 の 疼 痛 部 位 ( 上 肢 群 ・ 下 肢 群 ・ 体 幹 群 ) 別 の テ ー ピ ン グ 前 後 の 歩 行 面 積 、
歩 行 平 均 圧、 歩 行 最 大 圧 を 比 較 し た 結 果、 上 肢 群 お よ び 体 幹 群 の 変 化 に 有 意 な 差 は
認 め ら れ な か っ た 。 下 肢 群 の 歩 行 面 積 は テ ー ピ ン グ 前 の 左 足 83.7cm2 ± 18.8、 右 足
87.5cm2 ± 19.6、 テ ー ピ ン グ 後 の 左 足 88.0cm2 ± 16.9、 右 足 90.5cm2 ± 19.0、 歩 行 平
均 圧 は テ ー ピ ン グ 前 の 左 足 1,005.0g/cm2 ± 213.2、 右 足 1,036.0g/cm2 ± 201.8、 テ ー
ピ ン グ 後 の 左 足 1,077.8g/cm2 ± 207.3、 右 足 1,118.1g/cm2 ± 252.6 と テ ー ピ ン グ 後 に
は 有 意 に 歩 行 時 の 面 積 は 広 が っ た。
Ⅳ . 考察
足 底 ア ー チ の 機 能 不 全 を 補 正 す る た め の テ ー ピ ン グ を 巻 く こ と で、 足 底 圧 な ら び に 足
底 軸 が ど の よ う に 変 化 す る か に つ い て 調 査 し た 結 果、 以 下 の 考 察 を 得 た。
1. 静 止 立 位 時 の 過 荷 重 側 か ら 反 対 側 へ 左 右 の 面 積 率 、 前 後 の 面 積 率 は 共 に 高 く な り 、 足
底 軸 は 左 右 動 揺 の X 軸 の み 変 化 し た こ と よ り、 足 底 ア ー チ テ ー ピ ン グ を 巻 く こ と で、
左 右 の 足 底 圧 の バ ラ ン ス が 良 く な る の で は な い か と 考 え ら れ た。
2. 動 的 歩 行 時 の 歩 行 面 積 、 歩 行 平 均 圧 は 左 右 共 に 高 く な っ た こ と よ り 、 足 底 ア ー チ テ ー
ピ ン グ を 巻 く こ と で、 歩 行 時 の 左 右 の 安 定 性 が 良 く な る の で は な い か と 考 え ら れ た。
3. 下 肢 に 疼 痛 を 認 め た 群 で は 、 歩 行 面 積 、 歩 行 平 均 圧 は 左 右 共 に 高 く な っ た こ と よ り 、
足 底 ア ー チ テ ー ピ ン グ を 巻 く こ と で、 疼 痛 に よ る 跛 行 を 軽 減 さ せ る こ と が で き る の
で は な い か と 考 え ら れ た。
Ⅴ . まとめ
疼 痛 を 訴 え て 接 骨 院 を 訪 れ た 患 者 を 無 作 為 に 抽 出 し 、 109 名 を 対 象 と し た 足 底 ア ー チ
テ ー ピ ン グ が 足 底 圧 お よ び 足 底 軸 に 与 え る 影 響 を 調 査 し た 結 果、 足 底 ア ー チ テ ー ピ ン グ
を 巻 く こ と で、 静 止 立 位 時 に は 過 荷 重 側 か ら 反 対 側 に 荷 重 が 移 動 し、 動 的 歩 行 時 に は 足
底 の 面 積 な ら び に 平 均 圧 が 左 右 の 足 共 に 高 く な り、 安 定 し た 地 面 の 蹴 り 出 し が 可 能 と な
る の で は な い か と 思 わ れ た。
テーピングが及ぼす足圧変化
小田原支部 曽 我 昌 企
キーワード:足圧変化 テーピング 検査方法
【は じ め に】
バ イ コ ン、 フ ォ ー ス プ レ ー ト な ど を 用 い た 動 作 分 析 に よ り 膝 の 障 害、 足 首 の 障 害 を 関
連 づ け た 論 文 は 数 多 く 発 表 さ れ て い る が、 足 圧 分 布 ・ 足 関 節 の 動 作 解 析 ・ 膝 の 動 作 解 析
・ 上肢の動作解析など関連づける項目が多すぎるために臨床の現場においては今一つ有
効 に 活 用 さ れ て い な い よ う に 思 わ れ た。
今 回、 接 骨 院 で よ く 使 わ れ る 足 裏 縦 ア ー チ 補 強 テ ー ピ ン グ と 足 裏 横 ア ー チ 補 強 テ ー ピ
ングが実際にどのような役割を果たししているか一般に思われている仮説を立てて検証
し て み た。
【仮 説】
ここでいう足裏立てアーチ補強テーピングとは5㎝幅の伸縮性のあるテーピング15
㎝を足裏第2趾基底部を中央に踵骨後面まである程度の張力をつけて添付したものの事
で あ る。
仮 説 1 縦 ア ー チ が 脆 弱 な た め、 立 脚 中 期 に お い て ア ー チ 崩 れ が お こ す の を 予 防 し、 縦
ア ー チ の 角 度 が な い (扁 平 足) 場 合 若 し く は 少 な い 場 合 ア ー チ 角 を 補 い、 接 地 期
か ら 立 脚 中 期 終 盤 ま で の 体 重 の 距 腿 関 節 移 動 を ス ム ー ズ に す る。
今回使用する足裏横アーチ補強テーピングは5㎝幅の伸縮性のあるテーピング20㎝
を 第 5MP 関 節 中 央 よ り 第 1MP 関 節 中 央 を 回 り 1 周 す る 。 横 ア ー チ を 作 る よ う に 添 付
し た も の で あ る。
仮説2 横アーチが脆弱若しくは変形のため機能不全をおこしている場合アーチを補強
し 推 進 力 を 増 強 す る。
【方 法】
被験者 運動器に異常の無い任意の健者5人と片膝または両膝に疼痛を訴える患
者 5 人 を 足 底 の 変 形 ・ 膝 の 変 形 は あ え て 考 慮 せ ず 無 作 為 に 集 め た。
基 本 デ ー タ 体 重 ・ 足 の 縦 幅 サ イ ズ ・ 足 幅 と し て 第 1 MP 関 節 外 側 と 第 5 MP 関 節 外
側 を 立 位 で 計 測 し た。
足 圧 計 測 S-Plate を 用 い た 。
S-Plate 計 測
①立脚踵骨自然肢位(以下 RCSP と呼ぶ)における足圧の計測
②自然歩行時の足圧を計測 以下ノーマルという
③足底に縦アーチに補強テーピングを張って測定 以下テーピング1と
い う。
④足底に横アーチに補強にテーピングを張って測定
以下テーピング
2という
⑤足底に縦と横アーチに補強にテーピングを張って測定 以下テーピン
グ 3 と い う。
1. 最 初 に 健 者 5 人 に つ い て 計 測 を 行 う 。
A 体重計測
B 足幅計測
C S-Plate に て RCSP 計 測
D S-Plate に て 歩 行 計 測
E S-Plate に て テ ー ピ ン グ 1 を 添 付 し た 歩 行 計 測
F S-Plate に て テ ー ピ ン グ 2 を 添 付 し た 歩 行 計 測
G S-Plate に て テ ー ピ ン グ 1 + 2 を 添 付 し た 歩 行 計 測
2. 計 測 D に お け る RCSP の 左 右 体 重 バ ラ ン ス と 前 後 体 重 バ ラ ン ス を 確 認 す る 。
3. 計 測 E に お い て a) 着 地 最 大 力 ( 最 大 N 値 ) b) 着 地 最 大 圧 力 を 確 認 す る 。
4. 計 測 E に て c) 足 尖 離 地 最 大 力 ( 最 大 N 値 ) d) 足 尖 離 地 最 大 圧 力 確 認 す る 。
5. テ ー ピ ン グ 1 ・ 2 及 び 3 に つ い て も 3 ・ 4 を 同 様 に 行 い 、 そ れ ぞ れ を 比 較 す る 。
6. 患 者 5 人 の 計 測 を 健 者 と 同 様 に 行 い 比 較 し た 。
7. 健 者 の デ ー タ と 患 者 の デ ー タ を 比 較 し た 。
※ a) b) c) d) の 説 明
歩 行 立 脚 相 は 1) 接 地 期 (踵 接 地 ∼ 足 底 接 地) 2) 立 脚 中 期 (足 底 接 地 ∼ 踵 離 地)
3) 推 進 期 (踵 離 地 ∼ 足 尖 離 地) に 分 け ら れ る。
a) 着 地 時 最 大 力 ( 最 大 N 値 ) = 踵 接 地 ∼ 足 底 接 地 ∼ 踵 離 地 の 間 体 重 が 距 腿 関 節 を 通
過する中間最大力
b) 着 地 時 最 大 圧 力 = 接 地 期 に お け る 1 点 最 大 圧 力
c) 足 尖 離 地 最 大 力 ( 最 大 N 値 ) = 推 進 期 に お け る 最 大 力
d) 足 尖 離 地 最 大 圧 力 = 推 進 期 に お け る 1 点 最 大 圧 力
※最大力と最大圧力の違い
● 最 大 力 (N =ニュートン) 計 測 時 の 設 置 面 積 ( ㎠ ) と 同 平 均 圧 (g/㎠ ) を 乗 算 し た も の
● 計 測 時 1 ㎠ あ た り 最 大 圧 力 (g/㎠ )( 接 地 期 と 足 尖 離 地 時 に 分 割 )
【検 査 結 果】
(ア)被験者の体重と足幅及び左右体重バランスと前後体重バランス
体重
左右バランス
前後バランス
足幅 左
足幅 右
左
前
右
後
被験者1
66
11.1
11
45
45
50
50
被験者2
54.2
8.6
8.4
49
51
40
60
被験者3
86.1
10.6
10.2
50
50
46
54
被験者4
61.5
10.5
10.7
47
53
69
31
被験者5
87
10.3
10.4
51
49
58
42
被験者6
79.1
10.2
10.5
59
41
51
49
被験者7
60.5
8.6
8.9
57
43
61
39
被験者8
66.5
9.0
9.3
46
54
33
67
被験者9
64.1
9.9
9.8
58
42
42
58
被験者 10
52.9
9.5
9.8
54
46
41
59
(イ)被 験 者 1 0 人 ( 1 ∼ 5 は 健 康 体 6 ∼ 1 0 は 膝 に 疼 痛 有 り ) の 着 地 最 大 力 ( 最 大
N値 ) と 着 地 最 大 圧 力 の 比 較 。 足 尖 離 地 最 大 力 ( 最 大N値 ) と 足 尖 離 地 最 大 圧 力 の
比較。テーピング使用時の比較(着地時・足尖離地時)
被験者1
左足着地最大
N
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
ms
N
ms
N
ms
g/㎠
無し
340
539
560
587
260
1956
縦テープ
210
645
460
636
140
横テープ
170
575
410
707
縦+横テープ
170
592
430
633
被験者2
左足着地最大
N
ms
N
520
2506
290
604
2358
490
2691
160
100
2259
510
2090
100
2427
480
2449
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
N
ms
N
ms
g/㎠
無し
250
479
540
438
130
1893
縦テープ
300
474
540
505
130
横テープ
280
365
530
359
300
397
590
412
被験者3
無し
縦テープ
左足着地最大
N
630
553
210
2182
680
2251
1030
710
664
440
603
130
2919
460
2254
560
560
110
703
390
775
110
2502
430
2307
550
510
180
667
470
702
130
2763
520
2539
590
590
300
513
1681
590
2340
350
120
1844
580
2447
200
1832
600
2168
N
ms
g/㎠
280
499
520
459
150
1943
280
左足
2425
ms
g/㎠
560
左足着地最大
圧力
左足足尖離地最
大圧力
ms
総時間 (/ms)
ms
N
左足足尖離地
最大 N
ms
右足足尖離地最
大圧力
g/㎠
右足着地最大
N
ms
右足着地最大
圧力
Ms
ms
N
左足足尖離地最
大圧力
右足足尖離地
最大 N
N
g/㎠
ms
ms
右足着地最大
N
g/㎠
ms
縦+横テープ
左足足尖離地最
大圧力
右足足尖離地
最大 N
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
540
433
180
1836
560
2051
660
640
531
590
446
180
1776
590
2202
690
710
310
358
550
358
180
2087
570
3318
690
700
370
464
600
421
250
1817
590
2639
720
720
右足着地最大
N
g/㎠
ms
N
540
2768
300
523
2136
840
1998
270
ms
右足着地最大
圧力
右足
右足足尖離地
最大 N
ms
右足着地最大
圧力
右足足尖離地最
大圧力
左足
右足
総時間 (/ms)
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
550
542
170
2123
580
2656
740
730
562
530
527
160
2079
530
2617
840
710
横テープ
330
524
650
483
160
2142
620
2763
200
508
450
536
130
2052
470
2629
890
660
縦+横テープ
260
463
490
450
120
1912
490
3135
230
471
490
439
130
2185
590
2422
690
690
被験者4
左足着地最大
N
ms
N
無し
縦テープ
横テープ
縦+横テープ
被験者5
240
398
左足着地最大
N
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
ms
ms
g/㎠
180
1817
N
560
2064
350
356
920
474
170
1863
1050
2210
670
1230
540
386
150
2207
490
2547
150
352
490
410
100
1776
520
2134
650
600
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
340
481
780
608
縦+横テープ
350
529
710
592
被験者7
352
740
2065
横テープ
350
830
170
270
左足着地最大
N
3012
406
675
縦+横テープ
630
560
720
415
1736
690
553
350
220
770
400
横テープ
243
1941
縦テープ
630
590
2205
右足
1822
310
縦テープ
左足
150
482
g/㎠
456
790
ms
560
437
無し
281
g/㎠
431
450
N
320
Ms
270
無し
ms
1959
N
2037
g/㎠
670
ms
総時間 (/ms)
660
ms
被験者6
N
右足足尖離地最
大圧力
1822
N
ms
右足着地最大
圧力
140
ms
左足着地最大
N
g/㎠
右足足尖離地
最大 N
507
N
ms
右足着地最大
N
630
ms
左足足尖離地最
大圧力
左足足尖離地最
大圧力
g/㎠
ms
N
820
2615
350
385
2462
740
2703
560
270
2201
830
2557
260
2266
750
2844
ms
右足着地最大
N
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
830
489
630
3955
830
3922
1000
1020
661
830
659
350
2478
960
2885
940
1000
370
521
680
529
280
2475
720
3286
970
870
350
533
730
554
260
2174
760
3302
900
900
ms
g/㎠
ms
g/㎠
ms
N
ms
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
960
1044
330
1213
1230
1717
610
696
1080
718
360
1520
1110
1740
1350
1270
750
2035
690
565
150
1215
720
2128
850
840
270
1298
960
2228
930
600
260
1425
1160
2138
1100
1250
240
1306
910
2801
930
458
340
1701
930
2384
1050
1050
880
534
880
409
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
ms
ms
N
ms
N
無し
550
530
890
493
縦テープ
340
497
850
521
440
g/㎠
1409
左足足尖離地最
大圧力
ms
1020
g/㎠
460
547
420
474
右足着地最大
N
ms
N
490
419
1345
500
536
右足足尖離地
最大 N
ms
右足着地最大
圧力
右足足尖離地最
大圧力
N
右足着地最大
圧力
ms
右足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
右足着地最大
N
ms
右足着地最大
圧力
左足足尖離地
最大 N
左足足尖離地最
大圧力
右足足尖離地
最大 N
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
総時間 (/ms)
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
900
522
370
1674
107
1497
1170
1110
860
523
1080
1510
1050
1130
横テープ
縦+横テープ
被験者8
410
433
400
509
左足着地最大
N
ms
N
無し
縦テープ
横テープ
縦+横テープ
被験者9
無し
縦テープ
横テープ
縦+横テープ
被験者 10
390
430
左足着地最大
N
ms
N
790
376
790
409
330
1072
980
2019
840
1798
335
750
576
408
390
1946
1240
442
500
1396
左足着地最大
圧力
ms
N
ms
g/㎠
ms
g/㎠
830
705
420
1314
1030
1117
940
412
300
1494
1020
1945
860
785
270
1079
960
1322
左足足尖離地
最大 N
左足足着地最
大圧力
ms
ms
g/㎠
N
左足足尖離地最
大圧力
ms
右足着地最大
N
820
左足足尖離地
最大 N
左足足尖離地最
大圧力
320
ms
420
N
627
右足着地最大
N
g/㎠
ms
N
右足足尖離地
最大 N
ms
1564
1050
1000
1170
1798
950
1450
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
370
1117
910
1401
1100
1100
970
1179
980
1050
250
1263
980
2459
1210
1140
471
350
1179
900
1433
1050
1120
860
N
右足着地最大
圧力
940
右足足尖離地
最大 N
ms
右足着地最大
圧力
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
N
Ms
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
390
1610
950
1866
610
582
930
491
440
1339
1010
1440
1120
1120
320
1320
910
1736
380
517
780
523
330
1240
830
1615
1050
960
260
1574
860
1735
420
557
770
471
350
1289
830
1949
960
950
800
1594
430
538
740
440
390
1315
720
1725
870
880
440
524
左足着地最大
N
780
448
左足足尖離地
最大 N
左足着地最大
圧力
ms
N
ms
N
ms
g/㎠
無し
580
504
860
419
430
1289
縦テープ
430
469
780
419
380
1437
横テープ
390
533
730
467
230
縦+横テープ
370
456
800
432
320
左足足尖離地最
大圧力
ms
右足着地最大
N
右足足尖離地
最大 N
g/㎠
ms
N
940
1364
450
473
740
371
830
1927
350
413
670
395
1262
820
1690
400
511
660
436
1322
850
1498
ms
N
右足着地最大
圧力
Ms
右足足尖離地最
大圧力
総時間 (/ms)
g/㎠
ms
g/㎠
左足
右足
370
1294
790
1781
1080
910
750
1568
1090
920
290
1453
710
1490
970
790
350
1349
820
1664
1020
940
【比 較 結 果】
上 記 の 検 査 結 果 よ り、
(ア)テーピング1はノーマルより体重移動する際のアーチ崩れを補強しており、接地
期から立脚中期終盤までの体重の距腿関節移動をスムーズにしているのではないか
と 考 え ら れ た 。 そ こ で 左 右 の ① 歩 行 総 時 間 ・ ② 着 地 最 大N到 達 時 間 ・ ③ 着 地 最 大 圧
力時到達時間を比較してみた。
被験者1∼5
N より短縮された数
母数(N の有効実数)
①歩行総時間
7
10
②着地最大 N 到達時間
5
8
③着地最大圧力時到達時間
7
10
被験者6∼10
N より短縮された数
母数(N の有効実数)
①歩行総時間
7
10
②着地最大 N 到達時間
4
5
③着地最大圧力時到達時間
3
3
(イ)テーピング2は横アーチを補強することで、推進期に置いて拇指に力を伝達しや
す く す る よ う に 思 わ れ た 。 そ こ で ① 推 進 期(足 尖 離 地 時)の 最 大Nの 力 と ② そ の 到 達
時間そして③推進期の最大圧力を比較してみた。
被験者1∼5
N より上昇又は短縮された数
母数(N の有効実数)
①推進期 ( 足尖離地時 ) の最大 N の力
6
9
②①の到達時間
6
9
③推進期の最大圧力
4
10
被験者6∼10
N より上昇又は短縮された数 母数(N の有効実数)
䐟᥎㐍ᮇ 㻔 ㊊ᑤ㞳ᆅ᫬ 㻕 䛾᭱኱ 㻺 䛾ຊ
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㻢
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䐡᥎㐍ᮇ䛾᭱኱ᅽຊ
㻠
㻝㻜
(ウ) テ ー ピ ン グ 3 に つ い て は テ ー ピ ン グ 1 ・ 2 の 良 い 点 が 継 承 さ れ る と 予 想 し た。
テ ー ピ ン グ 1 効 果 と し て ① 歩 行 総 時 間 ② 着 地 最 大 N 到 達 時 間 に つ い て 比 較 し、 テ ー ピ
ン グ 2 の 効 果 と し て、 ③ 推 進 期 ( 足 尖 離 地 時 ) の 最 大 N の 力 を 比 較 し て み た。
⿕㦂⪅䠍䡚䠑
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※ 母 数 は 5 人 の 左 右 の 足 な の で 基 本 1 0 で あ る、 母 数 が 1 0 に 満 た な い も の は そ の 数 値
が 計 測 不 能 で あ っ た た め で あ る。
【考 察】
上 記 の 比 較 し た 結 果 に よ り、
(ア) 被 験 者 1 ∼ 5 に お い て、 こ の テ ス ト の 際、 1 名 の み 全 て 逆 の 結 果 が 出 た 被 験 者 が
お り、 原 因 を 検 証 し て み た。 被 験 者 2 の 場 合 他 の 4 名 よ り 明 ら か に 縦 ア ー チ が 発 達 し
て お り 被 験 者 の 申 告 に よ れ ば 、「 テ ー ピ ン グ す る 事 で 歩 く バ ラ ン ス が 悪 く な っ た 気 が す
る 。」 と の こ と で あ っ た 。
被 験 者 6 ∼ 1 0 の 場 合、 こ の テ ス ト の 際、 被 験 者 か ら の 申 告 は 6 ∼ 9 の 方 は 「歩 き や
す く な っ た 。」 と 答 え 、 被 験 者 1 0 の 方 の み 「 余 り 変 わ ら な い 。」 と 答 え た 。 観 察 者 か ら
は 一 人 を 除 い て 全 て ノ ー マ ル よ り は 安 定 し て い る よ う に 思 わ れ た。
結 果 に つ い て は あ る 程 度 仮 説 通 り 出 現 し て お り、 縦 ア ー チ 補 強 テ ー ピ ン グ は 接 地 期 か
ら 立 脚 中 期 終 盤 ま で の 体 重 の 距 腿 関 節 移 動 を ス ム ー ズ に し て い る も の と 考 え ら れ た。
(イ) 被 験 者 1 ∼ 5 の 場 合、 4 人 の 申 告 に よ る と 「ち ょ っ と 歩 き や す い 程 度、 テ ー ピ ン
グ 1 の 方 が 歩 き や す か っ た。
被 験 者 6 ∼ 1 0 の 場 合、 感 想 は 最 大 N 上 昇 の な か っ た 4 人 が 「と て も 歩 き や す く な
っ た 。」 と 解 答 し て お り 、 上 昇 の あ っ た 被 験 者 9 の 解 答 は 「 よ く 解 ら な い 。」 で あ っ た 。
下 降 し た 6 例 は ノ ー マ ル 時 と 比 べ て そ れ ぞ れ 、 4 4.5 % 2 9.9 % 2 9.6 % 2 7.3 % 4 0.6 % 4 5.1 % と 大 幅 な 下 降 が 認 め ら れ た 。 着 地 時 の 時 間 も 同 様 に
短 縮 し て お り、 1 点 最 大 圧 力 の 上 昇 (踏 み 出 し の 強 さ と 推 測 さ れ る) は 見 ら れ る が、 全
体 的 に 省 エ ネ で 歩 く こ と が 出 来 た と 考 え ら れ る。
( ウ )テ ー ピ ン グ 3 に つ い て は テ ー ピ ン グ 1・2 の 良 い 点 が 継 承 さ れ る も の と 推 定 さ れ た 。
テーピング1の効果①②については被験者1∼10についてほぼ推定通りの結果が得ら
れ た が (テ ー ピ ン グ 1 だ け の 時 よ り は 短 縮 割 合 が 少 な か っ た) テ ー ピ ン グ 2 の 効 果 に お
い て は 、 被 験 者 1 ∼ 5 の 場 合 で 、 9 例 中 ( 計 測 不 能 1 例 ) 5 例 、 被 験 者 6 ∼ 1 0 の 場
合 は、 7 例 中 (計 測 不 能 3 例) 2 例 の み の 上 昇 で あ っ た。
被 験 者 の 申 告 は 1 ∼ 5 が 「 足 が し っ か り 固 定 さ れ た 感 じ が し た 。」 で あ っ た が 、「 長 く
つ け た ら 邪 魔 。」 と い う 意 見 も あ っ た 。 し か し 被 験 者 6 ∼ 1 0 に 関 し て は 「 歩 い て い て
一 番 安 心 。」「 ふ ら つ き が な く 歩 け た 気 が す る 。」 で あ り 、 テ ー ピ ン グ 1 ・ 2 に お い て 差
異 が 認 め ら れ な か っ た 被 験 者 1 0 に お い て も 好 評 だ っ た。
被 験 者 6 ∼ 1 0 に 関 し て い え ば、 テ ー ピ ン グ 2 の 効 果 が 仮 説 と 逆 の 結 果 が 出 た が 被 験
者 の 申 告 は 想 定 内 で あ っ た。 そ こ で、 実 際 の 歩 行 経 路 を 確 認 す る 事 と し た。
下 に 被 験 者 6 の ノ ー マ ル 歩 行 時、 テ ー ピ ン グ 2 添 付 時 の 足 圧 分 布 を 示 し た。
ノーマル歩行
G テ ー ピ ン グ 2 歩 行 G
( 全 過 程 ) ( 全 過 程 )
《ノ ー マ ル 歩 行 時》
《テ ー ピ ン グ 2 添 付 歩 行 時》
《ノ ー マ ル 歩 行 時》
《テ ー ピ ン グ 2 添 付 歩 行 時》
各 画 像 の 最 初 の 画 像 は G 表 示 で あ る が、 グ ラ ン ド の 意 味 で 全 課 程 の 足 圧 分 布 を 重 ね
合 わ せ た も の で あ り、 歩 行 ラ イ ン と 最 大 圧 力 ラ イ ン も 表 示 さ れ て い る。 そ の 後 の 画 像 は
2 0ms ご と に 表 示 し た 。
最 初 の G に お い て の 見 え 方 が だ い ぶ 違 う 事 が 解 る、 ノ ー マ ル で は 第 4 指、 第 5 指 の 足
圧 を 関 知 し て い な い が 、 テ ー ピ ン グ 2 で は は っ き り 関 知 し て い る 。 被 験 者 6 の RCSP 足
幅 は 1 0.2 ㎝ で あ っ た が 、 ノ ー マ ル 歩 行 時 で は 1 0.4 ㎝ 、 テ ー ピ ン グ 2 で は 1 1.2
㎝ だ っ た。 こ れ は ノ ー マ ル は 足 底 が 地 面 に 対 し て 凸 状 態 だ っ た が、 テ ー ピ ン グ 2 を す る
こ と で 横 ア ー チ が 形 成 さ れ た た め と 思 わ れ た。 ま た、 ノ ー マ ル で は 靴 下 を は い た よ う な
ボ テ と し た 感 じ で 足 ら し く な い が、 テ ー ピ ン グ 2 で は 足 を 感 じ さ せ て い る。 着 地 時 の 最
大圧力がノーマルでは強かったがテーピング2ではそれほど強くなく体重移動がなされ
て い る。 歩 行 ラ イ ン、 最 大 圧 力 ラ イ ン と も に ノ ー マ ル で は か か と か ら 内 側 に 進 ん で い る
が 、 T2 で は う ま く 外 側 に 体 重 を 移 動 さ せ な が ら 内 側 で 推 進 し て い る こ と が 解 る 。 ノ ー
マ ル で は 1 0 0ms ∼ 1 2 0ms の 間 に 最 大 圧 力 が 第 1MP 関 節 か ⇒ 第 1IP 関 節 ⇒ 第 1MP
関 節 ⇒ 第 2MP 関 節 ( こ こ で し ば ら く 停 滞 ) ⇒ 第 1IP 関 節 と 時 計 回 り に 体 重 移 動 し て お り 、
正 常 の 人 に は 見 ら れ な い 動 き を し て い た 。 ノ ー マ ル と テ ー ピ ン グ 2 の 最 大 N・ 最 大 圧 力
の 数 値 の 大 き さ だ け を 比 較 す る と そ の 違 い が 分 か ら な か っ た が、 画 像 に お こ し て み る と
テ ー ピ ン グ 2 で は 推 進 力 の 発 生 が 強 化 さ れ て い る こ と が よ く 解 っ た。
【ま と め】
今 回 の 実 験 で 縦 ア ー チ 補 強 テ ー ピ ン グ は 体 重 移 動 を、 横 ア ー チ 補 強 テ ー ピ ン グ は 推 進
力 に 深 く 関 わ っ て い る こ と が 解 っ た。 今 回 分 か っ た 結 果 を 臨 床 に 生 か し て い く た め に は
足 関 節 自 体 の 詳 細 な 動 き の 把 握 が 必 要 だ と 感 じ た。 治 療 対 象 者 の 距 骨 下 関 節 の 動 き や 横
足 根 関 節 の 動 き、 ま た 変 形 な ど の 基 本 デ ー タ を と り 考 慮 に 入 れ た 方 が 有 効 性 を 特 定 で き
る よ う に 思 え た。
被験者2はハイアーチのためどのテーピングを使用した際にも違和感を感じ安定性が
阻 害 さ れ る 傾 向 に あ っ た が、 そ の 原 因 は ハ イ ア ー チ が 距 骨 下 関 節 の 内 反 変 形 に よ る も の
か、 ま た は、 距 骨 下 関 節 の 可 動 域 障 害 と 前 足 部 の 変 形 に よ る も の な の か、 原 因 を 特 定 す
る た め に も 詳 細 な 基 本 デ ー タ 収 集 の 必 要 性 を 認 識 し た。
被 験 者 6 ∼ 1 0 に 関 し て は 同 じ よ う な 歩 行 を し て は い る が、 テ ー ピ ン グ を 使 用 し た 際 の
結 果 は 4 : 1 に 分 か れ た。 被 験 者 6 ∼ 9 の 4 名 と 被 験 者 1 0 の 違 い を 調 べ る 必 要 性 を 認
め た。
最後に追試として距腿関節で体重移動がスムーズに行われる事はどのような症例に対
し て 有 効 性 が 認 め ら れ る の か、 ま た 推 進 力 と そ の バ ラ ン ス を 良 く す る こ と で 有 効 な 症 例
に つ い て、 今 後 調 査 検 討 を 重 ね て 行 き た い。
膝関節前十字靱帯再建術の前後に行った
柔道整復師によるリハビリテーション
(症例報告)
横浜中支部 藤 井 俊 二
キ ー ワ ー ド : 前 十 字 靱 帯 完 全 断 裂 、 ACL 再 建 術 、 医 接 連 携
【要 旨】
新 鮮 ACL 完 全 断 裂 の 患 者 が 、 途 中 で リ ハ ビ リ を 一 時 中 断 せ ざ る を 得 な か っ た に も 関 わ
ら ず、 結 果 的 に 競 技 へ の 早 期 復 帰 を 果 た し た 症 例 か ら、 整 形 外 科 医 の 指 導 の 下、 再 建 術
の 前 後 に 行 っ た 柔 道 整 復 師 の 施 療 が そ の 一 助 と な っ た 可 能 性 を 検 証 し て み た。
結 果 、 ① 受 傷 直 後 か ら の RICE の 徹 底 な ら び に 柔 道 整 復 師 の 観 点 か ら の 固 定 包 帯 法 施
行 ② MENS に よ る 、 急 性 期 や 訓 練 後 の 疼 痛 ・ 炎 症 の 早 期 除 去 ③ レ ジ ス タ ン ス ト レ ー ニ
ン グ に お け る EMS の 利 用 ④ 複 数 医 師 の 指 示 に 従 い な が ら 、 患 者 の 状 態 に 則 し た 臨 機
応変なメニュー策定 ⑤ほぼ毎日の通院による患者の状態把握 などの要因が効果を上
げ た と 仮 説 を 立 て た。
現 在、 術 後 2 年 3 ヶ 月 を 過 ぎ て 患 者 は 競 技 を 続 け て お り、 特 に パ フ ォ ー マ ン ス に 問
題 は 見 ら れ な い。 し か し、 本 研 究 は 1 症 例 に 過 ぎ ず、 ま た 手 術 前 の 健 側、 及 び 競 技 復 帰
6 週 後 の 両 側 で の WBI 値 が 一 流 選 手 レ ベ ル を 示 す ほ ど 患 者 の 身 体 パ フ ォ ー マ ン ス が そ も
そ も 優 れ て い た こ と な ど か ら、 今 後 も 追 試 の 必 要 性 は あ る と 考 え る。
【は じ め に】
新 鮮 膝 前 十 字 靱 帯 ( 以 下 、 ACL) 断 裂 は 一 部 の 例 外 を 除 き 、 保 存 的 に は 治 癒 が 困 難 な
こ と、 放 置 し た 場 合 3 ∼ 5 年 で 二 次 的 半 月 板 損 傷、 さ ら に そ れ 以 上 の 年 数 で 変 形 性 関 節
症 の 合 併 率 が 高 く な る こ と か ら 、 45 歳 以 下 で 活 動 性 の 高 い 患 者 に は 可 及 的 早 期 の 観 血
療 法 が 薦 め ら れ る。 な お 手 術 は 関 節 鏡 に よ る 靭 帯 再 建 術 が 一 般 に 行 わ れ る が、 復 帰 す べ
き 競 技 の 特 性 に 応 じ て 採 取 す る 組 織 は 骨 付 膝 蓋 腱 や 多 重 折 り 半 腱 様 筋 腱 (ST 腱 ) / 薄 筋
腱 (G 腱 ) が 選 択 さ れ る 。
ACL 再 建 術 で は 、 受 傷 直 後 の 手 術 は 関 節 線 維 症 の リ ス ク が 高 く な る こ と と 、 手 術 時 に
膝 関 節 の 運 動 制 限 や 筋 力 低 下 が あ る と 術 後 も 運 動 制 限 が 残 る こ と が 多 い こ と か ら、 膝 の
屈 伸 が 十 分 に 可 能 に な る ま で は 手 術 し な い。 そ の た め、 術 前 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン は 早
期 の 日 常 生 活 動 作 ( 以 下 、 ADL) 回 復 、 競 技 復 帰 の た め に は 大 変 重 要 で あ る 。
ま た 術 後 の ト レ ー ニ ン グ は、 再 建 し た 靭 帯 の 特 性 に 合 わ せ、 そ の 修 復 過 程 の 段 階 に 応
じ た メ ニ ュ ー の 設 定 が 必 要 で あ る が、 同 時 に 患 者 の 身 体 能 力 や 回 復 状 況 な ど に よ っ て 臨
機 応 変 に 対 応 す る こ と も ま た、 大 変 重 要 で あ る。
本 稿 で は、 医 科 受 診 前 ま で の 応 急 処 置 と、 手 術 を 行 っ た 横 浜 市 立 み な と 赤 十 字 病 院 の
浅 野 浩 司 医 師 の 指 示 を 仰 ぎ つ つ 行 っ た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン メ ニ ュ ー を 紹 介 し、 そ の ス ケ
ジ ュ ー ル と、 日 本 鋼 管 病 院、 関 東 労 災 病 院、 み な と 赤 十 字 病 院 の 標 準 的 な リ ハ ビ リ テ ー
シ ョ ン ス ケ ジ ュ ー ル と 比 較 検 討 し て み た。
【対 象】
( 患 者 ) 36 歳 男 性 、 電 気 設 備 職 人 、
( 受 傷 機 転 ) 平 成 22 年 2 月 20 日 19:30 頃 、 近 隣 中 学 校 グ ラ ウ ン ド に て 社 会 人 サ ッ カ ー
ク ラ ブ 練 習 試 合 中、 ジ ャ ン プ 中 に 相 手 選 手 と 接 触 し て バ ラ ン ス を 崩 し て 落 下、 右 足 で
着 地 し た 際 に 踏 ん 張 り き れ ず に 転 倒 し た も の。 着 地 時 断 裂 音 を 感 知 し、 疼 痛 で し ば ら
く 起 き 上 が れ ず、 ま た 直 後 よ り 急 激 な 腫 脹 ・ 熱 感 ・ 自 発 痛 発 生。 歩 行 不 能 に て 担 が れ
て 帰 宅 。 翌 21 日 に 来 院 。
【医 科 受 診 前】
( 初 検 ) 自 発 痛 ( + )、腫 脹 (++)、熱 感 (++)、膝 蓋 跳 動 ( + )、前 方 引 き 出 し テ ス ト ( + )、
内 ・ 外 反 ス ト レ ス テ ス ト ( − )、 屈 曲 痛 45°( + )、 伸 展 − 10°( + )、 疼 痛 と 膝 崩 れ で
荷 重 立 脚 不 能。
※ 前 方 引 き 出 し テ ス ト 陽 性 で あ っ た こ と と 、 腫 脹 と 疼 痛 が 顕 著 の 為 、 McMurray,
Appley テ ス ト は 困 難 と 判 断 し 、 実 施 せ ず 。
( 検 断 ) 身 体 所 見 と 徒 手 検 査 の 結 果 ACL 断 裂 を 疑 い 、 専 門 医 に よ る 精 査 が 必 要 と 説 明 。
( 応 急 処 置 ) ① 冷 罨 法 、 ② 微 弱 電 流 (Microcurrent Electrical Neuromuscular Stimulation、 以
下 MENS) 後 、 2 日 後 の 医 科 受 診 ま で の 応 急 処 置 と し て 、 ③ ∼ ⑦ テ ー ピ ン グ 、 持 続 冷
却 湿 布、 厚 紙 副 子、 非 伸 縮 綿 包 帯 を 施 行 し、 松 葉 杖 を 利 用 し た 免 荷 歩 行 と し、 座 位 ・
臥 位 時 の 過 伸 展 禁 止 指 導。
① 冷 罨 法 : 患 者 臥 位、 膝 関 節 軽 度 屈 曲 位 に て 膝 窩 動 脈 部 を 冷 罨 法 (ア イ ス パ ッ ク を 濡 れ
タ オ ル で く る ん だ も の に て ア イ シ ン グ)
② MENS は 、 一 般 に 750 μ A 以 下 の 低 出 力 の 電 流 を 流 す 治 療 法 。 周 波 数 及 び 出 力 の 設
定 に よ っ て 鎮 痛 あ る い は 治 癒 促 進 効 果 が 期 待 で き る。 今 回 は 術 後 の 電 気 筋 肉 刺 激
(Electrical Muscle Stimulation、 以 下 EMS) も 含 め 、 伊 藤 超 短 波 社 の 『ES-360』 を 使 用 。
冷 却 と 同 時 に 、 関 節 裂 隙 部 に MENS 通 電 。 出 力 750 μ A、 パ ル ス 幅 50msec、 周 波 数
200Hz の 、 鎮 痛 モ ー ド で 30 分 以 上 通 電 。
③ 伸 縮 テ ー プ ( ダ イ ヤ 工 業 、ア ク シ ョ ン テ ク ス )、ガ ー ゼ 、綿 花 、油 紙 、非 伸 縮 綿 包 帯 ( 3
裂 × 3 本 )、 厚 紙 副 子 、 綿 花 、 ゴ ム チ ュ ー ブ ( ア ル ケ ア 、 装 着 尿 器 用 )、 ス ポ イ ト
④ 脛 骨 の 前 方 移 動 を 抑 制 す る 目 的 で 施 行。 5 ㎝ 幅 の 伸 縮 テ ー プ を 2 5 ㎝ の 長 さ で 切 り、
脛 骨 粗 面 部 か ら 大 腿 長 軸 に 沿 っ て 引 き な が ら 貼 付 し た。
⑤ 水 道 水 で 湿 ら せ た 綿 花 と ガ ー ゼ に ゴ ム ホ ー ス を 差 込 み 油 紙 で 覆 う。
⑥ 油 紙 で 覆 っ た 上 か ら 厚 紙 副 子 を 用 い て 膝 関 節 軽 度 屈 曲 位 に て 包 帯 に よ る 圧 迫 固 定。
⑦ 包 帯 よ り ホ ー ス の 先 が 出 る よ う に し、 自 宅 で 自 発 痛 や 熱 感 を 感 じ る 場 合 に は 適 宜 ス ポ
イ ト に て 氷 水 を 注 入 さ せ る。
【 診 断 1】
近 隣 の 総 合 病 院 に て MRI 撮 影 後 、 サ ポ ー タ ー で 帰 さ れ 、 疼 痛 増 悪 。 当 院 に て 再 固 定 。
2 日 後 に 『ACL 完 全 断 裂 』 と 診 断 さ れ 、 手 術 を 勧 め ら れ る 。
【診 断 2】
患 者 が 症 例 の 多 い 病 院 で の 手 術 を 望 ん だ た め、 横 浜 市 立 み な と 赤 十 字 病 院 に 紹 介 し、
3/8 『ACL 単 独 損 傷 、 完 全 断 裂 』 と 診 断 。 5/5 (10.5 週 後 ) 入 院 予 約 。 装 具 固 定 。
【術 前 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン】
( 目 的 ) 腫 脹 ・ 熱 感 な ど の 炎 症 症 状 を 抑 え る 、 膝 関 節 の ROM、 な ら び に 周 囲 の 筋 力 低 下
な ど の 二 次 障 害 を 改 善 さ せ る、 再 負 傷 を 避 け る 身 体 作 り を す る。
( 方 法 ) 3/8 よ り 装 具 着 用 で の 荷 重 歩 行 開 始 し 、 3/24 み な と 赤 十 字 病 院 再 診 時 ま で は 、
腫 脹 ・ 熱 感 僅 か に 残 存 し て い た た め 、 ア イ シ ン グ + MENS 後 、 パ テ ラ モ ビ ラ イ ゼ ー シ
ョ ン 、 他 動 ROM 運 動 施 行 。 3/24 よ り EMS を 用 い て の ニ ー セ ッ テ ィ ン グ 、 レ ッ グ カ ー
ル 開 始。
体 幹 の 強 化 な ど は 受 傷 前 同 様、 継 続 す る。
【 診 断 3】
4/16 ( 約 8 週 間 後 ) Cybex マ シ ン 測 定 。 ス ポ ー ツ 復 帰 の 目 安 と な る 体 重 支 持 指 数
(Weight-Bearing Index、 以 下 WBI) は 健 側 で 1.17 ( 一 流 選 手 レ ベ ル )、 患 側 で 0.81 ( ス ポ
ー ツ マ ン 以 上、 体 育 大 学 以 下 レ ベ ル、 レ ク リ エ ー シ ョ ン プ レ イ 可 能 程 度) 判 定。 術 式 の
決 定。 全 身 麻 酔 で、 多 重 折 半 腱 様 筋 腱 を 用 い た 鏡 視 下 で の 靭 帯 再 建 術。 手 術 翌 日 よ り 装
具 装 着 の 上、 松 葉 杖 歩 行 開 始、2 週 間 で 杖 除 去、 退 院。 装 具 装 着 に て 平 地 歩 行、 階 段 昇
降 予 定 。 以 後 も EMS レ ジ ス タ ン ス ト レ ー ニ ン グ 継 続 。
【 術 後 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 、 急 性 期 ( 入 院 中 )】
( 目 的 ) 手 術 に よ る 疼 痛 緩 和 、 失 血 量 の 軽 減 、 ROM 制 限 を 最 小 限 に す る 。
( 方 法 ) 当 日 よ り RICE 処 置 、 装 具 + 両 松 葉 杖 歩 行
翌 日 よ り Continuous Passive Motion 利 用
1 週 間 で ヒ ー ル ス ラ イ ド、 パ テ ラ モ ビ ラ イ ゼ ー シ ョ ン、 片 松 葉 歩 行
2 週 間 で 荷 重 歩 行、 階 段 昇 降 開 始
い ず れ も、 訓 練 中 は 装 具 除 去 に て 行 っ た。
【術 後 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン、 亜 急 性 前 期 2 週 ∼ 8 週】
(目 的) 術 後 6 ∼ 8 週 は、 再 建 靭 帯 が 関 節 内 で 一 度 壊 死 す る た め、 脆 弱 に な っ て お り、
脆 弱 な 靭 帯 に ス ト レ ス を か け な い よ う に 細 心 の 注 意 を も っ て ROM 訓 練 に 加 え 、 筋 力
強 化 訓 練、 有 酸 素 運 動 を 継 続 す る。
(方 法) 平 地 歩 行 ・ 階 段 昇 降 訓 練。 ス ト レ ッ チ 後、 パ テ ラ モ ビ ラ イ ゼ ー シ ョ ン、 フ ロ ー
リ ン グ で の ヒ ー ル ス ラ イ ド 後、 各 種 等 尺 性 抵 抗 運 動。 セ ッ テ ィ ン グ で は 過 伸 展 を 制
限 す る た め に 鍛 え に く い 内 側 広 筋 は EMS を 併 用 し て 行 っ た 。 有 酸 素 運 動 と し て は エ
ル ゴ メ ー タ ー ( キ ャ ッ ト ア イ EC-2300R) 使 用 。 レ ッ グ カ ー ル は 疼 痛 を 伴 い や す い の
で、 徒 手 に て 弱 抵 抗 よ り 開 始 し た。 訓 練 後 は 患 部 周 辺 が 熱 を 持 つ の で、 ア イ シ ン グ +
MENS 処 置 。 4 週 目 よ り 装 具 よ り ラ イ ン サ ポ ー タ (D&M ひ ざ ) に 変 更 、 8 週 目 か ら ハ
ー フ ス ク ワ ッ ト 開 始。
【 術 後 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 、 亜 急 性 後 期 (9 ∼ 16)】
(目 的) 壊 死 し た 靭 帯 が 強 度 を 増 し て く る に 従 っ て 訓 練 強 度 を 上 げ て い く。 ス ポ ー ツ 基
本 動 作 の 訓 練 に 備 え る。
( 方 法 ) 前 期 同 様 の 訓 練 継 続 し 、 膝 完 全 伸 展 を 伴 わ な い 運 動 全 般 。 12 週 目 に は 他 動 運 動
で の ROM 完 全 回 復 、 マ シ ン ト レ ー ニ ン グ 、 ラ ン ジ 開 始 。
【 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 中 断 期 (14 ∼ 22 週 )】
術 後 14.5 週 目 、 追 突 事 故 に 遭 い 、 頚 部 捻 挫 及 び 右 下 背 部 挫 傷 の 為 、 運 動 不 可 能 に 。
さ ら に 10 代 に 患 っ た 外 傷 性 白 内 障 の 為 に 入 っ て い た 人 口 水 晶 体 が 脱 臼 し て 入 院 手 術 と
な り、 目 に 流 入 す る お そ れ が あ る、 汗 ば む 運 動 は 4 週 間、 眼 圧 の 高 く な る レ ジ ス タ ン ス
ト レ ー ニ ン グ は 8 週 間 禁 止 さ れ る。
【 ス ポ ー ツ 動 作 開 始 期 17 週 ∼ 40 週 】
(目 的) 再 建 靭 帯 が 通 る 大 腿 骨 及 び 脛 骨 の 骨 孔 の 硬 化 が X 線 上 確 認 が で き、 一 年 か け て
靭 帯 強 度 と ハ ム ス ト リ ン グ ス の 強 度 が 復 活 す る。 競 技 復 帰 を 目 指 し て よ り 高 度、 か
つ 実 践 的 な 訓 練 に 取 り 組 む。 具 体 的 に は、 膝 軽 度 屈 曲 ∼ 完 全 伸 展 位 で の 体 重 支 持 の
不 安 定 感、 敏 捷 な 動 き で の も た つ き、 走 行 時 の 膝 深 屈 曲 の 不 足 解 消 を 目 指 す。
( 方 法 ) 上 記 事 故 に よ り 、 18 週 目 ま で 頚 背 部 の 施 療 を 中 心 に 行 い 、 膝 に お い て は MENS
+ ス ト レ ッ チ の み 継 続 。 22 週 よ り リ カ ン ベ ン ト バ イ ク に よ る 有 酸 素 運 動 を 追 加 。 眼
科 よ り 許 可 の 出 た 22 週 目 よ り マ シ ン ト レ ー ニ ン グ 、 不 安 定 板 ( ダ イ ヤ 工 業 レ ク ト レ
ス テ ッ プ) で の 片 足 ス ク ワ ッ ト、タ ー ン 開 始。 ス ポ ー ツ 基 本 動 作 で の 問 題 点 が 解 決 さ
れ て か ら 、 徐 々 に チ ー ム プ レ イ へ の 練 習 を 開 始 。 術 後 35.5 週 目 に 競 技 本 格 復 帰 。 不
安 感 は 訴 え る も、 動 き に は 問 題 な か っ た と の こ と。
【予 後】
競 技 復 帰 6 週 後 ( 術 後 41 週 )、 Cybex マ シ ン で の 測 定 。 健 側 WBI は 1.17、 患 側 WBI は
1.15 と 、 共 に 一 流 選 手 レ ベ ル 。 競 技 試 合 が 十 分 に 許 可 で き る レ ベ ル を 維 持 。 2 年 以 上 経
た 現 在 も、 問 題 な く 競 技 で き て い る。
【比 較 表】
別紙
【考 察】
予 約 が 取 れ ず に 手 術 ま で に 10.5 週 開 い て し ま っ た こ と 、 ACL 断 裂 と 無 関 係 な 理 由 で 8
週 間 運 動 制 限 の あ っ た 中 で 、 結 果 的 に 術 後 35.5 週 で 競 技 へ の 本 格 復 帰 が 果 た せ た こ と
に 関 し て、 以 下 の 6 点 が 要 因 で は な い か と 仮 説 を 立 て た。 し か し、 本 発 表 は 1 症 例 の
み を 対 象 と し て お り、 今 後 さ ら に 症 例 を 重 ね て 検 討 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る。
① RICE の 徹 底 と 固 定 包 帯 法
受 傷 直 後 よ り RICE の 徹 底 を 図 り 、 安 価 な 材 料 で も で き る 家 庭 で の 持 続 冷 却 を 試 み た 。
腫 脹 減 退 を 目 的 と し た 弾 性 包 帯 法 に よ る 圧 迫 は 整 形 外 科 で も 行 わ れ て い る が、 柔 道 整
復 師 の 非 伸 縮 綿 包 帯 を 用 い た 圧 迫 固 定 包 帯 法 も 効 果 的 で あ っ た と 思 わ れ る。
② MENS に よ る 、 急 性 期 や 訓 練 後 の 疼 痛 ・ 炎 症 の 早 期 除 去
炎 症 の 強 い 期 間 は 30 分 、訓 練 と 併 用 し た 時 は 15 分 通 電 し た が 、外 見 上 の 腫 脹 の 軽 減 、
患 者 の 満 足 度 は 高 か っ た 。 ③ レ ジ ス タ ン ス ト レ ー ニ ン グ に お け る EMS の 利 用 膝 過 伸
展 位 が 困 難 な 期 間 は 内 側 広 筋 に、 そ れ 以 外 に も レ ッ グ カ ー ル に も 用 い た。
③ レ ジ ス タ ン ス ト レ ー ニ ン グ に お け る EMS の 利 用
膝 過 伸 展 位 が 困 難 な 期 間 は 内 側 広 筋 に、 そ れ 以 外 に も レ ッ グ カ ー ル に も 用 い た。
④ 複 数 医 師 の 指 示 に 従 い な が ら、 患 者 の 状 態 に 則 し た メ ニ ュ ー 策 定
主 治 医 で あ る 執 刀 医 の 指 示 を 伺 い な が ら 施 術 所 で 出 来 る メ ニ ュ ー を 考 え、 か つ、 眼 科
医 の 指 導 に よ る 禁 忌 事 項 を 犯 さ ぬ 範 囲 で の 訓 練 を 考 え、 可 能 な 限 り 継 続 で き た。
⑤ほぼ毎日の通院
患 者 の 競 技 復 帰 の 意 思 が 強 く、 訓 練 に 対 す る モ チ ベ ー シ ョ ン が 一 貫 し て 保 て た 結 果、
ほ ぼ 毎 日 の 通 院 が 果 た せ た。 結 果、 患 者 の 状 態 把 握 や 自 宅 で 行 う 訓 練 の 確 認 な ど が 詳
細 に で き た。
⑥患者自身のパフォーマンス
も と も と 運 動 能 力 の 高 い 競 技 者 で あ り、 柔 軟 性 や 筋 力 が 備 わ っ て い た。 運 動 慣 れ し
て い た た め、 単 調 な メ ニ ュ ー で も し っ か り こ な せ た。
【参 考 文 献】
〇 Merrill A. Ritte r , Marjorie J. Albohm, 魚 住 廣 信 訳 , ス ポ ー ツ 外 傷 ・ 障 害 マ ニ ュ ア ル , 医
道 の 日 本 , 1988
〇 石 井 直 方 , レ ジ ス タ ン ス ト レ ー ニ ン グ , ブ ッ ク ハ ウ ス H D , 1999
〇 中 村 耕 三 ( 監 )、 織 田 弘 美 ・ 高 取 吉 雄 ( 編 ), 整 形 外 科 ク ル ズ ス , 南 江 堂 , 2003
〇 栗 山 節 郎 ( 監 )、 川 島 敏 生 ( 著 ), 実 践 ア ス レ チ ッ ク リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン , 南 江 堂 , 2005
○ 福 林 徹 、 蒲 田 和 芳 ( 監 ), A C L 損 傷 予 防 プ ロ グ ラ ム の 科 学 的 基 礎 , N A P , 2008
○ 八 木 茂 典 、 今 屋 健 、 吉 田 昌 平 , 最 先 端 ACL リ ハ , Sports Medicine, 2010
週
受傷後
1
関東労災
RICE 処置
日本鋼管
RICE 処置
2-4 日常生活∼軽い 装具歩行
ジョギング可能。
筋力などの回復
状態を測定、方針
決定。
みなと赤十字
本症例
RICE 処置
RICE 処置
装具歩行
●装具にて荷重歩行開
始。
●足部・足趾の運動 4 週:パ
テラモビライゼーショ
ン、他動ROM、ニー
セッティング、レッグ
カール
備考
炎症残存時
は MENS +
アイシング、
抵抗運動時
は EMS 併用
5-10
手術
術後
急性期
1 日 臥床安静
CPM
2 日 リハビリ開始
亜急性
前期
固定装具
パテラ、患部外R
OM
1
リハ時装具除去
ヒールスライド、 片松葉、ヒールス
パテラモビライゼ ライド、90°スク
ーション
ワット保持
2
日常生活レベル
全荷重、エルゴメ 片松葉
ータ、階段昇降、
近位抵抗膝抵抗伸
展
エルゴメーター
杖除去
ジョギング
装具除去
●荷重歩行、階段昇降、EMS 併用、
他動ROM、パテラ、 訓練後、ア
ヒールスライド、等尺 イシング+
性抵抗運動セッティン MENS
グ、膝屈曲、エルゴメ
ータ● 4 週:装具→サ
ポータ● 8 週:ハーフ
スクワット、エルゴメ
ータ
3
4
5
6
7
8
亜急性
後期
9-11
12-13
ジョギング
ROM 全快、マシントレ
ーニング
14
事故
15
入院
16
膝伸展位、ジョギ
ング
競技動作 17-19
開始期
20-22 軽いスポーツ
MENS, ストレッチのみ 力み、発汗
禁止
サイドステップ、
リカシェット
ストレッチ、有酸素運 力み禁止、
動としてエルゴメー
タ、ジョギングのみ
23
膝最大伸展位でのトレ
ーニング
24-27
クロスオーバース
テップ
28-31
ランニング、ター
ン
32-34 競技復帰
ジャンプ
ダッシュ開始
35
競技復帰
36-39
ダッシュ
40
競技復帰
競技復帰
手の舟状骨骨折と第五中足骨
骨幹部螺旋骨折の固定法の一考察
横浜西支部 村 山 正
キーワード:骨折 固定法 超音波画像
(要 旨) 手 の 舟 状 骨 骨 折 は 骨 折 部 位 に よ っ て は 偽 関 節 と な る 難 治 箇 所 で あ る が、 今 回 は
骨 癒 合 が 可 能 な 部 位 で あ っ た た め 着 脱 可 能 な 可 逆 性 ギ プ ス 素 材 (キ ャ ス ト ラ イ ト) を 使
用 し た 固 定 法 を 考 案 し た の で 報 告 す る。 ま た、 第 五 中 足 骨 骨 幹 部 螺 旋 骨 折 に お い て も、
同 じ く 偽 関 節 に な り や す い 骨 折 箇 所 で あ る が、 超 音 波 画 像 と レ ン ト ゲ ン を 比 較 し 整 形 外
科 医 の 固 定 法 に 付 加 し た 固 定 法 を 考 察 し た 事 を 報 告 す る。
Ⅰ. は じ め に
我 々 柔 道 整 復 師 は、 古 来 江 戸 時 代 か ら 怪 我 に 対 す る 治 療 法 と し て 固 定 法 に 重 き を 置
き 様 々 な 固 定 用 具 を 使 用 し て い た。 今 回 は 名 倉 堂 接 骨 に お い て 伝 承 さ れ た ス ダ レ 副 子 を
使用した固定法と現代の固定素材であるシャーレキャストを融合した固定法による骨折
の 固 定 を 報 告 す る。
Ⅱ. 対 象
症 例 1 右 手 舟 状 骨 骨 折 昭 和 58 年 生 ま れ 28 歳 男 性
原 因 平 成 24 年 7 月 1 日 バ ス ケ ッ ト ボ ー ル の 試 合 中 に 転 倒 し 手 を 衝 い て 負 傷 。
緊 急 で 総 合 病 院 で レ ン ト ゲ ン を 撮 影 し 明 ら か な 骨 折 を 認 め な か っ た。 翌 日 当 院 へ 来 院 し
症 状 確 認 後、 骨 折 症 状 が 強 い た め 再 度 整 形 外 科 に て 診 察 依 頼 し た 結 果、 舟 状 骨 骨 折 と 診
断 を 受 け 当 院 に て の 後 療 を 承 諾 し 定 期 的 検 査 を 実 施 し 経 過 観 察 す る 事 に な っ た。
症 例 2 第 五 中 足 骨 骨 幹 部 螺 旋 骨 折 昭 和 22 年 生 ま れ 65 歳 女 性
原 因 平 成 24 年 7 月 20 日 踏 み 台 か ら 降 り る と き 、 本 が 足 部 に 直 接 当 た り 転 落
し た も の。 翌 日 来 院 し、 症 状 は、 腫 脹、 限 局 性 の 圧 痛 が 著 明 で あ る こ と か ら、 超 音 波 画
像 観 察 を 実 施 し た と こ ろ、 骨 折 の 疑 い が あ っ た た め、 整 形 外 科 に て 診 察 依 頼 し た 結 果、
第五中足骨骨幹部骨折と診断を受け当院にての後療を承諾し定期的検査を実施し経過観
察 す る 事 に な っ た。
Ⅲ. 固 定 方 法
症 例 1 舟 状 骨 骨 折 は、 腰 部 骨 折 と 結 節 部 骨 折 と 分 類 さ れ 偽 関 節 と な る も の は 腰 部 骨
折 で あ る。 今 回 は 結 節 部 骨 折 で あ っ た た め 保 存 療 法 を 適 用 と し た。 本 来 は 手 関 節 軽 度 伸
展 位、 軽 度 橈 屈 位、 手 の 母 指 は 良 肢 位 に て 固 定 範 囲 は M P 関 節 手 前 ま で の 全 層 ギ プ ス 固
定 と な る が、 全 層 固 定 で は ど う し て も 皮 膚 が 弱 い 患 者 の 場 合 は 接 触 性 皮 膚 炎 を 発 症 し、
電 療 な ど 治 療 効 果 を 増 進 さ せ る こ と が 困 難 と な る。 ま た、 ギ プ ス シ ャ ー レ 固 定 で は、 従
来 の 方 法 に よ る と 母 指 の 外 転 運 動 が 若 干 可 能 で あ る こ と か ら、 ど う し て も 転 位 し や す く
偽 関 節 の 誘 発 原 因 に な り か ね な い こ と か ら、 キ プ ス の 離 開 部 分 を 橈 側 と 尺 側 に 分 け 母 指
の 完 全 固 定 を 優 先 し 、尺 側 か ら 手 関 節 の 屈 曲 伸 展 の 固 定 を 施 し た も の で あ る 。 骨 折 線 は 、
結 節 部 で あ る こ と か ら 偽 関 節 の 可 能 性 は 低 い が、 関 節 面 に 走 行 し て い る こ と か ら 骨 癒 合
後 の 手 関 節 の 背 屈 制 限 の 可 能 性 が あ る た め 母 指 な ら び に 手 関 節 の 完 全 固 定 を 考 慮 し た。
従来のギプスシャーレ
橈側と尺側の分裂ギプス
症 例 2 初 検 時 に 骨 折 の 疑 い か ら ア ル フ ェ ン ス 金 属 副 子 を 施 行 し た が、 キ ャ ス ト シ ー
ネ 固 定 だ け で な く、 我 々 柔 道 整 復 師 独 自 の 固 定 法 で あ る ス ダ レ 副 子 を 分 解 し 骨 幹 部 に 設
置し側方転位を矯正する方法で加えて腫脹も消失も早期に行われるカナル法を参考に施
行 し た。 ま た 捻 転 転 位 は テ ー ピ ン グ に て 介 達 牽 引 す る 方 法 を 考 え た。 こ の 方 法 も 持 続 的
に 行 う た め に 考 え ら れ た 方 法 で あ る が、 皮 膚 に 対 す る 刺 激 が 強 い た め に 接 触 性 皮 膚 炎 を
発 症 す る こ と か ら 使 用 す る 患 者 は 限 ら れ、 ま た 長 期 間 の 施 行 は 困 難 で あ る。 こ の 2 種 類
の 固 定 か ら 加 え て 上 方 か ら 厚 紙 副 子 を 第 四、 第 五 中 足 骨 の 上 方 か ら 圧 迫 し 包 帯 固 定 と し
た。 ま た 歩 行 困 難 で あ る こ と か ら ギ プ ス の し た に 綿 花 を ヒ ー ル と し て 使 用 し た。
Ⅳ. 結 果
症 例 1 1 週 間 は 微 弱 電 流 療 法 ( ア キ ュ ー ス コ ー プ キ ャ リ ー ) を 使 用 し 仮 骨 形 成 増 進
を 目 的 と し た。 限 局 性 疼 痛 腫 脹 残 存 し、 手 関 節 掌 側 面 に 内 溢 血 を 確 認 し た。
2 週 間 目 か ら 超 音 波 治 療 ( 伊 藤 超 短 波 10MZ) を 0. 8 W/cm を 3 分 間 を 行 い そ の 後 に
微 弱 電 流 療 法 を 行 っ た。 超 音 波 治 療 は、 骨 折 部 に 直 接 刺 激 が 加 わ る こ と か ら 施 行 時 は 強
い 疼 痛 が あ り 術 後 腫 脹 が 現 れ る こ と か ら 出 力 を 0.8 に 設 定 し た 。 ま た 、 超 音 波 治 療 の 後
に 微 弱 電 流 を 施 行 す る 事 に よ り 疼 痛 が 軽 減 で き た。
3 週 間 目 か ら 腫 脹 、 疼 痛 と も に 消 失 し 、 超 音 波 治 療 も 出 力 を 0. 9W/cm と し 仮 骨 形 成
の 増 進 を は か っ た。
5 週 目 は 、 症 状 が 安 定 し て き て お り 限 局 性 圧 痛 も ほ と ん ど 消 失 傾 向 に あ る も の の 、 レ
ン ト ゲ ン 状 で は 骨 折 線 が 確 認 で き る。 関 節 面 の 状 況 も 安 定 し て お り 過 剰 仮 骨 も 確 認 出 来
な い。
8 週 目 は 、 骨 折 線 も 無 く な っ て い る こ と が 確 認 出 来 る も の の 、 骨 が 萎 縮 し て い る 部 分
が あ る た め 固 定 を 軽 減 し た。 現 在 は 治 療 経 過 良 好 で あ る。
症 例 2 第 五 中 足 骨 骨 幹 部 螺 旋 骨 折 に お い て は 、 初 見 時 に 腫 脹 、 圧 痛 が 著 し く 超 音 波
画 像 に 置 い て も 骨 折 と 疑 い が あ っ た た め に 医 師 へ の 診 断 を 依 頼 す る こ と を 優 先 し た。
初 検 時 は 第 五 中 足 骨 部 だ け は 確 認 し て い た が、 レ ン ト ゲ ン 画 像 に よ り 第 四 中 足 骨 も 骨
折 し て い る こ と が 確 認 で き た。 第 四 中 足 骨 も 骨 折 し て い る こ と か ら、 第 五 中 足 骨 の 支 持
が 弱 く な り ア ル フ ェ ン ス シ ー ネ 固 定 で は 弱 い と の 判 断 で、 キ ャ ス ト シ ー ネ 固 定 を 行 い 経
過 観 察 と し た。
1 週 間 損 傷 部 位 の 腫 脹 は 消 失 し 前 足 部 に 内 溢 血 が 現 れ る。
2 週 間 損 傷 部 位 の 圧 痛 が 軽 減 し 腫 脹 も 消 失 す る。
3 週 間 レ ン ト ゲ ン 検 査 に お い て、 第 四 中 足 骨 の 前 額 面 は 良 好 と な り、 第 五 中 足 骨 は 弱
感 良 好 で あ る と 思 わ れ る が 長 軸 牽 引 が 弱 く 短 縮 が 改 善 出 来 な い た め 4㎜ 位 の 短 縮 が 残 存
す る 。 矢 状 面 に お い て は 第 4 中 足 骨 は 良 好 で あ る が 、 第 5 中 足 骨 に お い て は 2㎜ 位 の ア
ラ イ メ ン ト が 矯 正 で き て い る し か し 短 縮 と 捻 転 が 大 き く 非 常 に 困 難 で あ る。 超 音 波 画 像
に お い て は 画 像 描 出 状 1㎜ の 転 位 が あ る こ と を 確 認 し た 。 固 定 法 に あ っ て は 、 前 額 面 の
ア ラ イ メ ン ト が 良 好 で あ っ た た め、 骨 間 に 挿 入 し て い た ス ダ レ を 骨 の 上 に 添 付 し 背 面 と
足 底 に 当 て テ ー ピ ン グ に よ る 持 続 牽 引 を 継 続 し た。
5 週 間 外 見 上 の 問 題 は 無 い も の の 、 本 来 で あ れ ば 第 5 中 足 骨 部 に 仮 骨 形 成 を 触 知 出
来 る が ま だ 出 来 な い 状 況 で あ る。 前 額 面 ア ラ イ メ ン ト は 良 好 で あ る が、 矢 状 面 が 離 解 し
て い る よ う に 見 え る も の の 仮 骨 は 確 認 出 来 る、 ま た、 骨 の 動 揺 も な く 偽 関 節 の 可 能 性 は
無 い と の 診 断 を う け た 。 超 音 波 画 像 で は 2㎜ の 転 位 が 確 認 出 来 た 。 こ の 時 点 で 仮 骨 形 成
良 好 と な り 、ギ プ ス シ ャ ー レ 固 定 を 除 去 し た が 、当 院 で は 、厚 紙 副 子 に て 圧 迫 固 定 を し 、
足 底 に 綿 花 を 挿 入 し て 足 底 ア ー チ を 保 持 し た。
6 週 間 仮 骨 形 成 が 外 見 上 確 認 出 来 る が 、 シ ャ ー レ ギ プ ス を 除 去 し た こ と に よ る 腫 脹
も 伴 っ て い る こ と か ら 綿 花 に よ る 圧 迫 を 行 い 現 在 は 治 療 経 過 は 良 好 で あ る。
Ⅴ. 考 察
症 例 1 舟 状 骨 骨 折 の 結 節 部 は、 保 存 療 法 で も 可 能 で あ る が、 固 定 法 を 十 分 に 行 わ な
い と 関 節 面 の 状 況 に よ り 手 関 節 の 運 動 制 限 が 残 存 す る 可 能 性 が あ る。 今 回 は 損 傷 が 右 手
で あ り 就 業 に 影 響 を 及 ぼ す こ と か ら 完 全 修 復 を 目 指 し た。 し か し な が ら こ の 猛 暑 に よ る
皮 膚 の 状 況 が 良 く な い こ と か ら、 第 1 選 択 と し て 母 指 の 完 全 固 定 で あ り、 第 2 と し て 手
関 節 の 固 定 と し た。 こ れ は、 固 定 を 軽 減 す る 際 に 尺 側 側 の 固 定 を 除 去 す る だ け で 十 分 で
あ る こ と か ら ま た 作 成 し 直 す 事 が 要 ら な い か ら で あ る。 着 脱 が 安 易 で あ る こ と か ら 患 者
自 身 で 清 潔 に す る こ と が 出 来 し か も 固 定 強 度 は 十 分 で あ る。 ま た、 骨 の 転 移 も 確 認 で き
な い こ と か ら 固 定 素 材、 固 定 方 法 も 非 常 に 良 い 結 果 が 出 た と 考 え る。
症 例 2 今 回 の 第 五 中 足 骨 骨 折 は 第 四 中 足 骨 骨 折 の 合 併 を 含 ん で い る こ と か ら、 不 安
定 性 が あ り 外 科 的 治 療 が 望 ま し い も の か と 考 え、 整 形 外 科 医 師 に 相 談 し た と こ ろ 保 存 で
も 十 分 と の 意 見 が あ り 今 回 保 存 療 法 で 行 う こ と と し た。 し か し な が ら ギ プ ス シ ャ レ ー の
みでは骨折部位が動揺すると考え古来の療法であるスダレ副子をアレンジしたカナル療
法 を 選 択 し た。 ま た、 た だ ス ダ レ を 上 部 に 置 く の で は な く ス ダ レ に よ り 圧 迫 す る 部 位 を
特 定 し 圧 迫 す る 目 的 を 転 位 の 側 方 転 移 と 背 側 転 移 の 二 方 向 に 分 け ま た、 長 軸 牽 引 を 最 大
の 目 標 に 行 っ た。 し か し な が ら、 長 軸 牽 引 は 中 足 骨 で は 非 常 に 困 難 で あ り テ ー プ の 牽 引
力 で は 不 十 分 で あ る と 考 え る。 よ っ て 短 縮 転 移 が 除 去 出 来 な い こ と か ら 長 軸 ア ラ イ メ ン
ト は 若 干 の 矯 正 は 出 来 て い る が 目 標 と す る 整 復 ま で に は 至 ら な か っ た と 考 え る。 た だ、
カナル療法の起源であるスダレ副子においては腫脹も早期に改善されることから化骨形
成 も 過 剰 に 起 こ る こ と も な い と 考 え る。
Ⅵ. 結 語
現 在、 固 定 材 料 は、 様 々 な も の が 使 用 さ れ て い る が、 柔 道 整 復 師 が 古 来 か ら 使 用 し て
い る 固 定 素 材 を 現 在 の 固 定 法 に ア レ ン ジ し て 使 う こ と は、 患 者 さ ん に と っ て も エ モ ー シ
ョ ン で あ り、 高 齢 の 患 者 さ ん は 伝 統 医 療 の テ ク ニ カ ル の 良 さ を 教 示 し て く れ ま す。 当 院
で は 冷 湿 布 も 自 作 で あ り、 さ ら な る オ ー セ ン テ ィ ッ ク な 接 骨 院 を メ ル ク マ ー ク と し、 柔
道 整 復 学 の 技 法 は 正 骨 範 で あ る と 考 え、 古 来 の 柔 道 整 復 術 を 継 承 発 展 さ せ て い き た い と
考 え ま す。 神 奈 川 県 に は 本 家 名 倉 の 技 法 を 伝 承 さ れ た 先 生 も い ら っ し ゃ い ま す の で、 今
後 ご 教 示 頂 け れ ば と 思 い ま す。
「柔道整復師が開設する
通所介護事業所の考察 −第1報−」
川崎南支部 斎 藤 峰 暁
齋 藤 武 久
横浜中支部 柴 田 大 輔
キ ー ワ ー ド : 通 所 介 護 ・ 介 護 予 防 通 所 介 護 ( デ イ サ ー ビ ス )、 機 能 訓 練 指 導 員 、
個別機能向上訓練
1. は じ め に
平 成 2 2 年 1 2 月 の 厚 生 労 働 局 厚 生 労 働 統 計 保 健 衛 生 の「 衛 生 行 政 報 告 例 」に よ る と 、
柔 道 整 復 師 の 施 術 所 の 増 加、 就 業 者 数 の 増 加 も 顕 著 で あ る。 現 在、 施 術 所 を 開 設 す る 柔
道 整 復 師 の お か れ て い る 状 況 は、 健 康 保 険 財 政 の 悪 化 や、 乱 立 す る 施 術 所 の 増 加 は 留 ま
る 気 配 す ら 見 え ず、 決 し て 希 望 に 満 ち た も の と は 言 い 難 い。
同 時 に、 柔 道 整 復 師 の 就 業 は、 施 術 所 の 開 設 及 び 勤 務、 整 形 外 科 な ど の 医 療 機 関 で の
勤 務 に 加 え 、こ こ 数 年 で 機 能 訓 練 指 導 員 と し て 介 護 事 業 所 に 勤 務 す る 例 も 増 加 し て い る 。
超 高 齢 化 社 会 と な っ た 我 が 国 で は 高 齢 者 の 増 加 に 伴 い、介 護 認 定 者 も 増 加 の 一 途 で あ
り、 平 成 2 1 年 度 よ り 始 ま っ た 要 支 援 制 度 に よ り 要 支 援 者 も 増 加 傾 向 に あ る。 介 護 保 険
制 度 が 開 始 さ れ て か ら 訪 問 系 介 護 事 業 所 よ り も 通 所 介 護 事 業 所 の 増 加 が 顕 著 と な り、 平
成 2 4 年 4 月 の 介 護 保 険 法 改 正 で 通 所 介 護 単 位 数 が 改 定 さ れ て か ら、 短 時 間 (3 ∼ 5 時
間) デ イ サ ー ビ ス の 増 加 も 著 し い 現 状 で あ る。
Ⅱ. 目 的
介 護 事 業 所 数 に お け る 割 合 か ら 考 え た 場 合 に、 ま だ 多 く は 見 ら れ な い 柔 道 整 復 師 が 行
う 機 能 訓 練 特 化 型 の 通 所 介 護 事 業 所 ・ 介 護 予 防 通 所 介 護 事 業 所 (※ 以 下、 デ イ サ ー ビ ス
と す る) が、 柔 道 整 復 師 と し て の 知 識 ・ 技 能 を 生 か し て 地 域 に 貢 献 で き る 新 し い 活 躍 の
場 と な り 得 る の か 検 証 す る こ と を 目 的 と す る。
Ⅲ. 方 法
昨 年 8 月 に 柔 道 整 復 師 が 開 設 し た デ イ サ ー ビ ス と、 現 在 開 設 準 備 中 の デ イ サ ー ビ ス の
創 業 準 備 資 料 を 用 い て、
① 施 術 所 に お け る 「柔 道 整 復 師」 の 役 割 と デ イ サ ー ビ ス に お け る 「機 能 訓 練 指 導 員」 と
しての役割
② 患 者 に 対 し て 行 う 「施 療」 と 利 用 者 に 対 し て 行 う 「機 能 訓 練」
③施術所ならびにデイサービスの運営
の そ れ ぞ れ の 違 い に つ い て 比 較 し た。
Ⅳ. 結 果
① 「柔 道 整 復 師」 の 役 割 と 「機 能 訓 練 指 導 員」 と し て の 役 割 の 違 い
イ) 柔 道 整 復 師 の 役 割
施 療、 及 び 事 務 作 業 を 業 務 に 連 関 す る 法 規 に 則 り、 行 う。
ロ) 機 能 訓 練 指 導 員 の 役 割
機 能 訓 練 実 務、 及 び 事 務 作 業 を 業 務 に 連 関 す る 法 規 に 則 り、 行 う。
② 「施 療」 と 「機 能 訓 練」 の 違 い
イ) 施 療
電 療 ・ 罨 法 な ど の 物 理 療 法、 及 び 手 技 療 法 で 外 傷 の 早 期 回 復 を 図 る。 骨 折 ・ 脱 臼
を 除 い て、 柔 道 整 復 師 単 独 の 検 断 に 基 づ い て 行 う こ と が で き る。
ロ) 機 能 訓 練
個 別 機 能 向 上 訓 練 と し て、 関 節 可 動 域 拡 大 や、 筋 力 向 上 訓 練、 拘 縮 予 防、 転 倒 防
止 の 歩 行 訓 練 指 導 な ど で 、 Q O L の 改 善 、 A D L の 向 上 を 図 る 。( 家 族 、 ケ ア マ
ネ ジ ャ ー、 介 護 職 員、 主 治 医 な ど) 介 護 計 画 に 則 っ て 行 わ れ る が、 利 用 者 の 了 解
の 下 で 機 能 訓 練 メ ニ ュ ー の 策 定 や 実 施 が で き る。
③施術所ならびにデイサービスの運営の違い
イ) 施 術 所 の 運 営
柔 道 整 復 師 法 に 則 っ た 設 備 基 準 を 満 た し、 開 設 後 1 0 日 以 内 保 健 所 に 届 け 出。
設 備 費 及 び 運 転 資 金、 管 理 柔 道 整 復 師 1 名 を 要 す る。
ロ) デ イ サ ー ビ ス の 運 営
介 護 保 険 法 に 則 り、 開 設 基 準 を 満 た し、 自 治 体 の 許 認 可 を 得 て か ら 開 設。
小 規 模 で あ っ て も 、 施 設 管 理 者 ( 兼 務 可 能 )、 生 活 相 談 員 、 介 護 職 員 、 機 能 訓 練
職 員 を 要 す る 為、 設 備 費 以 外 の 運 転 資 金 が よ り か か る。
Ⅴ. 検 証
デ イ サ ー ビ ス 開 設 ・ 運 営 に 関 わ る 事 務 手 続 き が 煩 雑 で あ り、 創 業 費 用 も 膨 大 に な る。
柔 道 整 復 師 の 日 常 の 施 療 に 基 づ い た 機 能 訓 練 は、 利 用 者 の ニ ー ズ に 応 え ら れ る、 独 自
性 の 高 い も の に な り う る。
柔 道 整 復 師 単 独 で は 行 え ず、 必 然 的 に 多 く の 職 種 と の か か わ り が あ る。
Ⅵ. ま と め
柔 道 整 復 師 と し て 培 わ れ た 知 識 ・ 技 能 が 利 用 者 の ADL 回 復 に 効 果 的 で 他 の 施 設 と 差
別 化 が で き た。
利 用 者 の 安 心 感 や 満 足 度 が 高 い、 と の 評 価 は 施 術 者 と し て の や り が い に 通 じ た。
介 護 保 険 に か か わ る 多 く の 職 種 の 方 と ネ ッ ト ワ ー ク が 出 来 る 為、 デ イ サ ー ビ ス の 評 価
が 結 果 と し て 柔 道 整 復 師 の 存 在 意 義 と し て 周 知 で き た。
開設に要する初期費用及び労力がかかることや人員の確保・書類が膨大であることは
課 題 と し て 挙 げ ら れ る。
今後しばらくは増加し続けるであろう柔道整復師の就業の受け皿となりうると考えら
れ る。
【参 考 文 献】
藤 田 健 次 : デ イ サ ー ビ ス 機 能 訓 練 指 導 員 の 実 践 的 教 科 書. 日 総 研 「シ ニ ア ・ コ ミ ュ ニ テ ィ」 編 集 部 デ イ サ ー ビ ス 研 究 班 : よ く わ か る 新 し い デ イ サ ー ビ ス
∼ 開 設 と 運 営 の ポ イ ン ト ∼ 2011 年 改 訂 版 . ヒ ュ ー マ ン ・ ヘ ル ス ケ ア ・ シ ス テ ム
「組織の強化」 第 2 報
横浜中支部 柴 田 大 輔
キーワード:NP PA 法制度の整備
<はじめに>
平 成 22 年 日 整 広 報 に 掲 載 さ れ た 「 組 織 の 強 化 」 に つ い て 、 2 年 以 上 が 経 過 し た 現 在 、
社 会 状 況 の 変 動 に 伴 う 変 化 が 認 め ら れ た か 考 察 し 、 今 回 、 特 に 「 第 1 報 4」 に つ い て 学
術 部 と し て 検 証 を 行 っ た。
ま ず、 対 比 す る べ き 「第 1 報」 を 以 下、 掲 載 す る。
「組 織 の 強 化 第 1 報」
平 成 21 年 8 月 30 日 に 執 行 さ れ た 国 政 選 挙 に よ っ て 、 国 民 の 選 択 に よ り 政 権 交 代 が
な さ れ 社 会 全 体 に パ ラ ダ イ ム シ フ ト が お き て い る。 こ れ ら の 状 況 は 我 々 業 界 に と っ て も
様 々 な 影 響 を 与 え 始 め て い る。
具 体 的 に は、 政 府 の 行 政 刷 新 会 議 に よ る 「事 業 仕 分 け」 で あ っ て、 結 果 的 に は 療 養 費
の 見 直 し と い う こ と に な り 今 後 の 展 開 に つ い て は 予 断 を 許 さ な い が、 次 年 度 以 降、 個 個
人 の 会 員 の 生 活 権 に 深 刻 な 影 響 を 与 え る こ と は 必 至 で あ る と 推 測 さ れ る。
以 上 の 社 会 状 況 を 踏 ま え、 社 団 法 人 日 本 柔 道 整 復 師 界 ( 以 下、 日 整 ) の 組 織 に つ い て
以 下 検 討 し た。
1 最 初 に、 日 整 の 組 織 形 態 に に つ い て 検 証 す る。 検 証 す る 方 法 と し て 社 会 学 の 見 地 か
ら 行 っ た。
日 整 の 組 織 は、 マ ッ ク ス ・ ウ ェ ー バ ー が と な え た 「官 僚 制 組 織」 と み な す こ と が で
き る 。「 官 僚 制 組 織 」 と は 、 そ れ ぞ れ の 組 織 構 成 員 が 規 則 や 手 続 に 従 っ て 行 動 す る こ
と に よ っ て、 も た ら さ れ る 結 果 を 予 測 す る こ と が 可 能 と な る。 そ の た め 複 雑 で 大 量 の
業 務 を 最 高 の 能 率 で か つ 最 も 合 理 的 に 機 能 す る こ と に な る と 定 義 さ れ る。
し た が っ て、 日 整 の よ う な 大 規 模 な 組 織 に お い て、 執 行 部 が 一 般 会 員 を 知 ら な く て
も、 執 行 部 の 指 示 が 組 織 の 末 端 部 ま で 歪 め ら れ ず 伝 え ら れ、 指 示 通 り に 遂 行 さ れ る こ
と が 可 能 と な り 組 織 の パ フ ォ ー マ ン ス に 優 れ て い る と い え る。
こ の 「官 僚 制 組 織」 の 特 性 は、 ① ヒ エ ラ ル キ ー ( 重 要 な 意 思 決 定 は 組 織 の 最 高 執 行
部 で 行 わ れ る ) ② 規 則 の 合 理 的 支 配 ( 職 務 の 運 営 は 継 続 的 で あ り、 明 確 な 規 則 と 手 続
に拘束される ) ③文書主義 ( 職務に限った文書によるコミュニケーション ) などがあ
る 。 こ れ ら に よ っ て 、「 官 僚 制 組 織 」 は 大 規 模 組 織 が 不 可 避 的 に 発 展 さ せ る 合 理 的 な
構 造 で あ る と い わ れ て い る。
し た が っ て、 最 高 執 行 機 関 が 正 し い 意 思 決 定 を 下 せ ば、 環 境 の 変 化 に 適 応 し 事 業 執
行 を 行 う こ と が 可 能 と な る。 し か し、 問 題 点 と し て ① 規 則 に 固 執 す る こ と に よ っ て 変
化 し た 状 況 に 対 応 で き な い。 ② 環 境 が 流 動 的 で あ っ て も、 規 則 に 従 っ た 最 低 限 の 行 動
し か と ら な い。 ③ 目 的 と 手 段 が 逆 転 す る 目 標 置 換 に 陥 り や す い。 規 則 は 目 的 を 達 成 す
る た め に 規 定 さ れ て い る が 、規 則 を 遵 守 す る こ と 自 体 が 目 的 に な る こ と が 認 め ら れ る 。
④ 保 守 的 な 傾 向 が あ り、 新 た な 事 業 を 展 開 し よ う と す る と、 既 存 の 規 則 の 変 革 を 実 行
し な け れ ば な ら ず、 組 織 メ ン バ ー の 抵 抗 が 予 想 さ れ、 組 織 内 部 に 革 新 の 原 動 力 と な る
コ ン フ リ ク ト が 生 ぜ ず 改 革 が 阻 害 さ れ る 原 因 と な る。
以 上 の 問 題 点 を 包 括 し な が ら も、 過 去 の 安 定 的 な 状 況 や 定 常 的 な 環 境 下 で は 「官 僚
制 組 織」 が 適 合 し て い た と 考 え る こ と が 妥 当 で あ る。
2 し か し、 前 述 し た 通 り 業 界 を 取 巻 く 状 況 は 可 変 的 環 境 期 に 移 行 し て い る。 し た が っ
て、 こ の よ う な 時 期 に 執 る べ き 「組 織」 と は、 い か な る も の か 検 証 し た。
外 部 要 因 の 変 化 に 対 し て、 ど の よ う な 組 織 化 の 方 法 が 有 効 で あ る か を 分 析 し た 組 織
論 を 検 討 し た 結 果、 以 下 の 事 由 に よ り イ ギ リ ス の バ ー ン ズ が 提 唱 し た 「コ ン テ ィ ン
ジ ェ ン シ ー 理 論」 が 有 効 で あ る と 判 断 し た。
ま ず 、「 コ ン テ ィ ン ジ ェ ン シ ー 理 論 」 と は 、 普 遍 的 に 有 効 な 唯 一 の 組 織 は な い と い
う 前 提 に 立 ち、 組 織 が 異 な っ た 条 件 の 下 で い か に 機 能 す る か を 説 明 す る 理 論 で あ る。
① 環 境 が 安 定 し て い る 場 合 に は「 機 械 的 管 理 シ ス テ ム 」と 呼 ば れ る 組 織 構 造 が 適 合 し 、
環 境 が 非 常 に 不 安 定 な 場 合 に は 「有 機 的 管 理 シ ス テ ム」 と 呼 ば れ る 組 織 構 造 が 適 合 し
て い る。
②「 機 械 的 管 理 シ ス テ ム 」と は 、職 務 権 限 が 明 確 か つ 公 式 的 で 、上 層 部 に 情 報 が 集 中 し 、
ヒ エ ラ ル キ ー の 構 造 を も ち 、外 部 環 境 の 変 動 が 少 な い と き に 有 効 で あ る 。 前 述 し た「 官
僚 制 組 織」 に 近 い も の で あ る。
こ れ に 対 し て 、「 有 機 的 管 理 シ ス テ ム 」 と は 職 務 権 限 が 柔 軟 で 非 公 式 的 で 、 情 報 は 組
織 内 の あ ら ゆ る 場 所 に 均 衡 に 分 布 し、 水 平 的 な ネ ッ ト ワ ー ク 型 の 伝 達 構 造 を も ち、 外
部 環 境 の 変 動 が 大 き い 時 に 有 効 で あ る。 い わ ば 非 官 僚 的 な 組 織 で あ る。
し た が っ て、 a 「機 械 的 管 理 シ ス テ ム」 は、 安 定 的 環 境 で は 適 合 ・ 高 成 果 で あ り、
反 対 に 可 変 的 環 境 で は 、不 適 合・低 成 果 で あ る と い え る 。 b 「 有 機 的 管 理 シ ス テ ム 」 は 、
安 定 的 環 境 で は、 不 適 合 ・ 低 成 果 で あ り、 反 対 に 可 変 的 環 境 で は 適 合 ・ 高 成 果 で あ る
と い え る。
よ っ て 、「 コ ン テ ィ ン ジ ェ ン シ ー 理 論 」 と は 、 環 境 が 異 な る と 有 効 な 組 織 構 造 も 変
わ っ て く る と い う こ と で あ り、 換 言 す れ ば ケ ー ス ・ バ イ ・ ケ ー ス と い う こ と で あ る。
3 以 上 よ り 、「 コ ン テ ィ ン ジ ェ ン シ ー 理 論 」 を 日 整 の 管 理 シ ス テ ム に ど う 反 映 さ せ る
べ き か 検 証 し た。
そ も そ も 、「 コ ン テ ィ ン ジ ェ ン シ ー 理 論 」 で は 管 理 シ ス テ ム の 選 択 は 組 織 の 意 思 で
は な く 外 部 環 境 に よ っ て 決 定 さ れ、 さ ら に 環 境 に 対 し て 組 織 が 受 動 的 な 存 在 で あ る
と さ れ る。
し か し 、 現 在 の 業 界 を 取 巻 く 環 境 は 、「 受 動 的 な 存 在 と し て の 組 織 や 個 人 」 と し て
の 受 動 的 な 管 理 シ ス テ ム で は 対 応 で き な い ほ ど の 状 況 下 に あ る。 具 体 例 と し て は 前
述 し た 「事 業 仕 分 け」 に よ る 影 響、 新 規 免 許 所 得 者 の 激 増、 新 規 開 設 者 の 激 増 等 に
起 因 す る 生 活 権 の 侵 害 が あ げ ら れ る。
こ れ ら の 事 態 に 対 応 す る た め、 野 中 郁 治 郎 ら が 提 唱 す る、 既 に 存 在 す る も の を 処 理
す る の で は な く、 未 だ 存 在 し な い も の を 創 り 出 し て い く こ と を 重 視 す る 「環 境 な ど
に対して能動的に働きかける組織や個人」 を想定した管理システムを加えた 「有機
的 管 理 シ ス テ ム に よ る 組 織 の 強 化」 が 要 請 さ れ て い る と 考 え る こ と が 妥 当 す る。
4 こ の 新 た な 「有 機 的 管 理 シ ス テ ム に よ る 組 織 の 強 化」 を 導 入 す る こ と に よ っ て ど の
よ う な 結 果 が 生 じ る の か、 近 々 の 事 例 を あ げ て 検 討 す る。
平 成 21 年 11 月 26 日 付 け 朝 日 新 聞 朝 刊 第 7 面 「 政 策 ウ オ ッ チ 」 に 次 の 記 事 が 掲 載
さ れ た。
【医 師 業 務 の 解 禁】 職 種 の 専 門 性、 報 酬 で 評 価 を
「 医 師 不 足 」 の 深 刻 化 を 背 景 に 、 医 師 の 業 務 の 一 部 を 、 看 護 師 ら 他 職 種 に 解 禁 し て は
ど う か と の 議 論 が 本 格 化 し て い る。 看 護 師 の 役 割 拡 大 の 方 針 が 前 政 権 で 閣 議 決 定 さ れ
て、 厚 生 労 働 省 は 質 の 向 上 や 教 育 と 合 わ せ、 チ ー ム 医 療 推 進 の 会 議 を 立 ち 上 げ、 検 討
を 進 め て い る。 米 国 で は、 投 薬 や 処 置 な ど の 初 期 診 療 を 担 う 看 護 師 「ナ ー ス ・ プ ラ ク
テ ィ シ ョ ナ ー」 や 手 術 を 手 伝 う 「医 療 助 手」 が 制 度 と し て 導 入 さ れ、 医 療 の 質 向 上 や
コ ス ト 面 で 一 定 の 評 価 を あ げ て い る と い う 。( 以 下 、 省 略 )
こ の 記 事 に つ い て 承 知 し て い る 会 員 諸 兄 は 多 い と 思 わ れ る。 私 が 所 属 す る 学 術 グ ル
ー プ で は 昨 年 よ り、 こ の 問 題 に つ い て 研 究、 議 論 を 進 め、 あ る 場 で 厚 生 労 働 省 の 担 当
者 に 今 回 の 記 事 に 掲 載 さ れ た こ と と ま さ に 関 連 し た 質 問 を 行 っ て い る。
質 問 の 内 容 は 柔 道 整 復 師 が 将 来、 米 国 に 倣 っ た 医 療 助 手 「フ イ ジ シ ャ ン・ア シ ス タ
ン ト PA」 と し て の 可 能 性 に つ い て で あ っ た 。 可 能 性 の 可 否 に つ い て は 、 勿 論 即 答 が
有 っ た 訳 で は な い が、 質 問 し た 時 期 が 今 年 の 夏 で あ り、 今 回 の 記 事 と の 関 連 性 を 否 定
す る も の で は な い と 考 え る。
ま ず 、 米 国 に お け る ナ ー ス ・ プ ラ ク テ ィ シ ョ ナ ー (NP) と は 、 限 定 さ れ た 軽 疾 患
の 患 者 に 対 し 診 断 ・ 治 療 ・ 投 薬 を 行 う こ と が で き る。 こ の 資 格 は、 看 護 師 か ら 派 生 し
た 資 格 で あ り、 臨 床 経 験 を 有 す る 看 護 師 が 2 年 間 の 修 士 課 程 を 修 了 し、 資 格 試 験 に 合
格 す る と 国 家 資 格 が 与 え ら れ る 。 現 在 、 米 国 に は 14 万 人 以 上 の 有 資 格 者 が 存 在 し 、
個 人 で の 開 業、 診 断 ・ 治 療 ・ 処 方 ・ 検 査 オ ー ダ ー な ど の 裁 量 権 が 与 え ら れ て い る (州
に よ り 医 師 の 指 導 が 必 要 な 場 合 も あ り、 裁 量 権 の 幅 は 異 な る) フ イ ジ シ ャ ン ・ ア シ ス
タ ン ト (PA) の 有 資 格 者 は 米 国 全 土 で 約 7 万 人 が 存 在 し て い る 。 こ の 資 格 は 、 1965
年 に 医 師 か ら 派 生 し た 資 格 で あ る。 医 師 の 監 督 の 下 に 医 療 行 為 を 行 う 資 格 を 有 し、 医
師 が 行 う 医 療 行 為 の 8 割 を カ バ ー す る こ と が で き る と い わ れ て い る。 医 学 部 の カ リ キ
ュ ラ ム を 基 本 と し た 141 の 公 認 プ ロ グ ラ ム で 24 32 ヶ 月 間 の 大 学 院 相 当 の カ リ キ ュ
ラ ム を 卒 業 し 、 資 格 試 験 に 合 格 す る と 国 家 資 格 が 与 え ら れ る 。 PA は NP と 同 様 の 裁 量
権 に 加 え て、 手 術 助 手 と い っ た 侵 襲 的 手 技 に 関 与 す る 傾 向 が 強 く、 医 療 行 為 に 深 く か
か わ っ て い る 職 種 で あ る。 ま た、 こ の 制 度 は 米 国 以 外 で も イ ン グ ラ ン ド ・ ス コ ッ ト ラ
ン ド で 採 用 さ れ て い る ほ か、 カ ナ ダ で も 実 現 の 方 向 で 進 ん で い る の が 現 状 で あ る。
米 国 内 の 具 体 例 と し て は、 コ ロ ン ビ ア 大 学 メ デ ィ カ ル セ ン タ ー で は、 ほ ぼ 全 科 で
PA が 活 躍 し 、 中 で も 整 形 外 科 ・ 心 臓 外 科 ・ 脳 外 科 ・ 循 環 器 と い っ た 専 門 性 、 緊 急 性
の 高 い 科 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る。 成 人 心 臓 外 科 は 6 名 の 外 科 医 と 5 名
の 看 護 師 と 25 名 の PA か ら 組 織 さ れ 年 間 1500 例 程 度 の 手 術 を 行 っ て い る 。 PA の 業 務
は 、術 前 評 価 、同 意 書 の 作 成 、術 中 の 第 1 ま た は 第 2 助 手 、大 伏 在 動 脈 の 内 視 鏡 採 取 、
ICU 及 び 一 般 床 で の 術 後 管 理 と 多 岐 に わ た る 。
日 本 国 内 で は 、 NP 養 成 の た め 、 2008 年 4 月 大 分 県 立 看 護 大 学 に 大 学 院 NP 養 成 コ
ー ス が 開 設 さ れ 、 2009 年 4 月 に は 国 際 医 療 福 祉 大 学 大 学 院 に NP 養 成 コ ー ス が 開 設
さ れ た。
ま た 、東 京 医 療 保 健 大 学 大 学 院 、北 海 道 医 療 大 学 大 学 院 、聖 マ リ ア 学 院 大 学 大 学 院 、
聖 路 加 看 護 大 学 大 学 院 も 2010 年 開 始 予 定 と な っ て い る 。
国 内 で は 現 行 法 の 壁 が あ り、 米 国 の 事 業 モ デ ル を そ の ま ま 導 入 す る こ と は 大 変 難 し
い の が 実 情 で は あ る が 、 看 護 師 は 日 本 NP 協 議 会 を 設 立 し 将 来 の 制 度 化 に 向 け て 着 実
に 進 行 し て い る。
一 方、 柔 道 整 復 師 は 既 存 の 権 利 を 守 る こ と に 汲 々 と し て 将 来 の 展 望 す ら 開 け な い の
が 実 情 で あ る。 だ か ら こ そ、 厚 生 労 働 省 が 医 師 不 足 を 医 師 の 増 員 に よ る 解 決 で は な く
「 医 療 助 手 PA」 を 会 議 の 俎 上 に あ げ て 検 討 し て い る こ の 時 期 に 、 日 整 は 既 存 の 「 官 僚
制 組 織」 か ら 脱 却 し て 「有 機 的 管 理 シ ス テ ム に よ る 組 織 の 強 化」 を 実 行 し て、 ヒ エ ラ
ル キ ー で は な い 水 平 的 な 伝 達 シ ス テ ム を 構 築 す る こ と が 要 求 さ れ て い る と 考 え る。
5 前 述 の 検 討 事 例 は、 日 整 が 示 し た 「輝 け る 未 来 の た め の 組 織 の 強 化」 の 演 習 と し て
は 最 適 で あ る と 考 え る 。「 輝 け る 未 来 の た め の 組 織 の 強 化 」 の た め に 、 新 た に 部 を 設
立 す る こ と よ り も、既 存 の 組 織 を 可 変 的 な 環 境 に 対 し て 能 動 的 に 有 機 的 運 用 を 実 行 す
る べ き で あ る。 そ れ は、 末 端 の 会 員 ま で 情 報 処 理 パ ラ ダ イ ム を 援 用 す る こ と で、 組
織 の 置 か れ て い る 環 境 に 適 合 し た 組 織 の 情 報 処 理 の 仕 組 み を 作 り 上 げ る べ き で あ る。
結 果 と し て 、情 報 処 理 の た め の 新 た な 人 材 の 育 成 、優 秀 な 人 材 の 登 用 が 可 能 で あ り 、
さ ら に 新 入 会 員 の 増 加 が 推 測 さ れ る と 考 え る。
参照文献
2 1 世 紀 の 社 会 学 日 本 放 送 出 版 協 会 ( 船 津 衛 ・ 山 田 真 茂 留 ・ 淺 川 達 人 、 2008)
社 会 学 的 ア プ ロ ー チ 新 泉 社 ( 池 田 勝 徳 、 2005)
社 会 学 の 発 想 有 斐 閣 ( 中 野 秀 一 郎 、 2006)
思 想 家 た ち と の 対 話 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 ( 土 井 文 博 ・ 萩 原 修 子 ・ 嵯 峨 一 郎 、 2007)
社 会 学 小 辞 典 有 斐 閣 ( 濱 嶋 朗 ・ 竹 内 郁 郎 ・ 石 川 晃 弘 、 2005) <検証>
最 初 に、 厚 生 労 働 省 「チ ー ム 医 療 推 進 の た め の 看 護 業 務 検 討 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ」 に
お い て 医 師 の 管 理 下 で の 「 特 定 看 護 師 ( 仮 称 )」 を 養 成 す る た め の 「 調 査 試 行 事 業 」( モ
デ ル 事 業 ) に 平 成 24 年 5 月 11 日 現 在 、 修 士 課 程 は 10 大 学 院 (21 課 程 )、 研 修 課 程 は
1 研 修 期 間 (3 課 程 )、 1 大 学 院 (3 課 程 ) が 申 請 し て い る 。 特 定 看 護 師 が 行 う 「 特 定 の
医 行 為」 を 検 討 す る た め の デ ー タ を 集 め る こ と を 目 的 に、 今 年 度 初 め て 実 施 す る 「業 務
試 行 事 業」 に は、3 施 設 が 指 定 さ れ た。 こ れ ら の 施 設 で、 調 査 試 行 事 業 を 修 了 し た 看 護
師 は 医 療 現 場 に 出 て、 医 師 の 指 示 の 下、 同 事 業 で 習 得 し た 医 行 為 を 実 施 す る こ と が で き
る。
ま た、 こ の 認 証 に 必 須 と な る 教 育 内 容 等 を 定 め た 「最 低 基 準」 は、 フ ィ ジ カ ル ア セ ス
メ ン ト、 病 態 生 理 学、 臨 床 薬 理 学 の 実 習 を 柱 と し、 こ れ に 特 定 行 為 や 専 門 教 育 が 必 要 な
行 為 (医 行 為 で な い) の 実 施 に 必 要 な 知 識 や 技 術 な ど を 加 え た も の で あ る。 急 性 期 と 慢
性 期 の 両 分 野 に わ た る「 プ ラ イ マ リ・ケ ア 領 域 」を 想 定 し た 大 学 院 修 士 課 程(2 年 )で は 、
幅 広 い 特 定 行 為 の 習 得 を 目 指 す の に 対 し 、 研 修 課 程 (8 か 月 相 当 ) で は 、 ① 救 急 医 療 ②
感 染 管 理 ③ 皮 膚 ・ 排 泄 ケ ア ー の 各 領 域 (必 要 に 応 じ て 追 加) の 特 定 行 為 を 対 象 と し て い
る。
厚 生 労 働 省 は 、 平 成 24 年 7 月 31 日 「 チ ー ム 医 療 推 進 の た め の 看 護 事 業 業 務 検 討 ワ
ー キ ン グ グ ル ー プ ( 座 長 : 有 賀 徹 ・ 昭 和 大 学 医 学 部 教 授 )」 の 会 合 で 、 最 低 基 準 を 柱 と
し た 上 で、 大 学 院 や 研 究 機 関 が 教 育 内 容 を 追 加 す る こ と で、 例 え ば、 認 定 ・ 専 門 看 護 師
を 養 成 す る 大 学 院 修 士 課 程 や 研 修 課 程 で、 関 連 す る 専 門 領 域 の 特 定 行 為 の 習 得 を 可 能 と
す る な ど、 独 自 の カ リ キ ュ ラ ム を 策 定 す る こ と を 提 案 し た。
こ の よ う に、 特 定 看 護 師 (仮 称) と は、 保 健 助 産 柔 道 投 技 整 復 難 治 看 護 師 法 に お
い て 今 ま で 「診 療 の 補 助」 に 含 ま れ な い も の と 理 解 さ れ て き た 特 定 の 医 行 為 を、 医 師 の
指 示 を 受 け て 「診 療 の 補 助」 と し て 実 施 す る、 資 格 化 で あ る と 考 え る。
「NP」 は 、 日 本 NP 協 議 会 を 中 心 に 、 5 つ の 大 学 院 修 士 課 程 で 養 成 コ ー ス が 開 始 さ れ て
い る 。 欧 米 各 国 で 活 躍 し て い る 「NP」 と 「 特 定 看 護 師 」( 仮 称 ) の 違 い は 、「NP」 は 医
師 の 指 示 を 受 け ず に 医 行 為 を 行 う が、
「 特 定 看 護 師 」( 仮 称 ) は 医 師 の 包 括 的 指 示 の 下 で 、
あ ら か じ め 定 め ら れ た 特 定 の 医 行 為 を 行 う こ と に あ り 、 現 行 法 の 枠 内 で は 「NP」 を 養
成 し て も、
か な り の 時 間 を 要 す る も の と 思 わ れ て い る が、 何 れ に し て も 看 護 職 は 従 前 と は 違 う 発 展
を 窺 わ せ る。
そ れ に 対 し て 、 我 が 国 に お け る 「PA」 に つ い て は 、 2 年 前 に 比 べ る 明 ら か な 進 捗 状 況
は 見 出 す こ と は で き な い。 必 要 性 が あ る か ら 許 容 性 が あ る と 考 え れ ば、 阻 害 し て い る 因
子 は 現 行 法 の 下 の 膠 着 し た 医 療 制 度 そ の も の と 考 え る こ と が で き る。
次 に 、 米 国 に お け る 「 P A 」 の 数 は 2009 年 現 在 、 AAPA(1974 創 設 American Academy
of PHYSICIAN ASSISTANTS ) に よ れ ば 79,980 人 が 資 格 を 有 し て い る 。「 P A 」 は 開 業 権 が
な い た め 就 業 先 は 病 院 38% 、 医 師 グ ル ー プ 35% 、 個 人 開 業 医 9% と 続 い て い る 。
現 在 、 米 国 に は 日 本 人 「 P A 」 は 4 人 し か い な い が 、 そ の 内 の 2 人 が 3/11 東 日 本 大
震 災 で の 被 災 者 支 援 の た め 来 日 し、 気 仙 沼 市 と 南 三 陸 町 で 支 援 活 動 を 行 っ て い る。
こ れ は、 柔 道 整 復 師 が 応 急 処 置 で は 骨 折 ・ 脱 臼 に つ い て は 施 術 行 為 が 認 め ら れ、 同 意
が あ れ ば そ の 後 の 施 術 が で き る 点 で は、 日 本 国 以 外 で の 災 害 被 災 地 で の 医 師 と と も に 活
動 で き る 根 拠 と な る 可 能 性 は 否 定 で き な い と 思 わ れ る。 も ち ろ ん、 相 手 国 の 法 制 度 の 下
で の 制 限 さ れ る 可 能 性 も 考 え ら れ る。
< 考 察 > 以 上、 約 2 年 の 間 で 同 じ ミ ッ ド レ ベ ル プ ロ バ イ ダ ー の 一 員 で あ る 「N P」 を
目 指 す 動 き に 看 護 職 で は あ る 程 度 の 前 進 が 認 め ら れ、 同 じ グ ル ー プ の 一 員 で あ る 「P
A」 に つ い て は 柔 道 整 復 師 を は じ め そ の 他 の 医 療 隣 接 業 種 の 動 き が 停 滞 し て い る 状 況 が
あ り、 特 に 有 資 格 者 の 激 増 問 題 を 抱 え る 当 業 界 に お い て は、 既 設 の 会 員 の 生 活 権 の み な
ら ず 将 来 へ の 柔 道 整 復 術 の 存 続 の た め 憂 慮 す べ き 事 態 と 考 え へ、 調 査、 研 究 に 基 づ く 厚
生 労 働 省 な ど 国 に 対 す る 提 言 を 纏 め る 必 要 な 時 期 は 既 に 到 来 し て い る と 考 え る。
以上
柔道 「手車」 を応用した
肩関節脱臼整復法の一症例
学 術 部 長 齋 藤 武 久
キーワード:柔道 投技 整復難治
<はじめに>
整 復 に 難 治 し た 肩 関 節 前 方 脱 臼 の 1 症 例 に 対 し て、 講 道 館 柔 道 「手 車」 を 応 用 し た 整
復 法 を 行 い 良 好 な 結 果 を 得 た の で 報 告 す る。
<症例>
男 性 32 才 。 階 段 か ら 誤 っ て 転 落 、 受 傷 。 既 往 歴 と し て 5 年 前 に 草 野 球 試 合 中 に 転 倒 、
右 肩 を 脱 臼。 受 傷 後、 近 隣 の 整 形 外 科 で 右 肩 関 節 前 方 脱 臼 と 診 断 さ れ 治 療。 そ の 後、 再
受 傷 は 無。
今 回 、 受 傷 直 後 に 自 分 で 経 験 的 に 肩 関 節 脱 臼 と 判 断 し 、 自 己 流 に 整 復 動 作 を 約 30 分
の 間 に 繰 り 返 し 行 う も、 整 復 さ れ ず 受 傷 後、 約 1 時 間 後 当 院 を 受 診。
初 検 時、 右 肩 関 節 前 方 脱 臼 を 認 め る。 特 に 顕 著 な 骨 傷 は 認 め ら れ な い。 た だ し、 自 己
流 で 何 度 も 繰 り 返 し 整 復 動 作 を 行 っ た た め 、 腫 張 、 疼 痛 が 著 明 。 体 型 は 身 長 182cm、 体
重 87kg ( 本 人 申 告 ) で あ り 、 筋 力 が 強 い 。
ゼ ロ ポ ジ シ ョ ン で の 整 復 を 考 え る が、 体 型 が 大 柄 の た め 座 位 に よ る 後 方 か ら の、 倉 持
和 夫 式 整 復 法 を 行 う。 既 に、 自 己 流 で 繰 り 返 し た 整 復 動 作 の た め 疼 痛 が 顕 著 な た め、 座
位 で の 患 者 自 身 の 安 定 が 得 ら れ ず 、「 手 車 」 を 応 用 し た 整 復 法 に よ り 整 復 を 行 い 一 度 の
整 復 で 良 好 な 結 果 を 得 た。
<方法>
手 車 と は、 父 で あ る 講 道 館 柔 道 9 段 齋 藤 武 雄 が 考 案 し、 講 道 館 柔 道 十 段 三 船 久 蔵 師 範
に よ り 「 手 車 」 と 命 名 さ れ た 。 そ の 投 げ 方 に つ い て は 、 柔 道 経 典 「 道 と 術 」( 著 者 講 道
館 柔 道 十 段 三 船 久 蔵 )、「 柔 道 」( 講 道 館 柔 道 八 段 寺 山 幸 一 ) に よ り 詳 細 な 記 載 が さ れ て
い る 。 正 式 名 称 は 「 手 車 」 で あ る が 、「 手 内 股 」、「 仏 壇 返 」、「 徳 利 投 」、「 キ ン つ か み 」
な ど の 俗 称 が 有 り、 現 在 で は 「掬 投」 の 名 称 で 呼 ば れ て い る。
以 下、 具 体 的 方 法 は 実 技 に よ る。
<考察>
脱 臼 に お い て 患 者 自 身 に よ る 整 復 動 作 に よ り 整 復 困 難 な 事 例 と し て は、 顎 関 節 脱 臼、
肩 関 節 脱 臼 、手 指 関 節 脱 臼 に 多 く み ら れ 、し ば し ば 術 者 の 整 復 の 障 害 と な る こ と も 有 り 、
ま た、 反 復 性 脱 臼 に 移 行 す る こ と も 多 く、 患 者 さ ん に 対 す る 適 切 な 説 明、 指 示 が 必 要 と
考 え る。
以上
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