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いくつかの不等式の証明(pdfファイル:6ページ)
いくつかの不等式の証明 1.Schwarz の不等式 ai , bi ∈ R に対して、次の不等式が成り立つ. n ¡X ai bi ¢2 n ¡X ≤ i=1 ai 2 n ¢¡ X i=1 bi 2 ¢ (1) i=1 Pn 2 i=1 ai = 0 ならば ai = 0, 1 ≤ i ≤ n で、不等式は明らかに成り立つ.以下 Pn証明2 i=1 ai 6= 0 と仮定する.任意の実数 t に対して n n X X 2 (ai t + bi ) = (ai 2 t2 + 2ai bi t + bi 2 ) i=1 = i=1 n X ¡ 2 ¢ 2 ai t + 2 n ¡X i=1 ¢ ai bi t + i=1 n X bi 2 i=1 は正または 0 だから、これを t の 2 次式と見たときの判別式は n ¡X ai bi ¢2 − n ¡X i=1 ai 2 n ¢¡ X i=1 ¢ bi 2 ≤ 0 i=1 である.よって (1) が成り立つ. 注意 Schwarz の不等式 (1) は、次のことからもわかる. n ¡X ai 2 n ¢¡ X i=1 = = = = ¡ i=1 n X n X n ¢ 1 X (ai bj − aj bi )2 bi 2 − 2 i=1 j=1 ai 2 i=1 n n XX i=1 j=1 n X ¡ ¡ n ¢¡ X ai 2 bj 2 − ai bi i=1 n X n X n ¢ 1 X bj 2 − (ai 2 bj 2 + aj 2 bi 2 − 2ai bj aj bi ) 2 j=1 i=1 j=1 n X n X ai 2 bj 2 + i=1 j=1 ¢¡ n X aj bj n X n X ai bi aj bj i=1 j=1 ¢ j=1 ¢2 ai bi . i=1 2.Schwarz の不等式 (積分の形) 閉区間 [a, b] で連続な関数 f (x), g(x) に対して、次の不等式が成り立つ. ³Z b f (x)g(x)dx a ´2 ³Z b ≤ 2 ´³ Z b f (x) dx a 1 2 g(x) dx a ´ (2) Z b 証明 f (x) が連続関数だから、 f (x)2 dx = 0 ならば [a, b] において f (x) = 0 であ aZ b り、不等式は明らかに成り立つ.以下 f (x)2 dx 6= 0 と仮定する.任意の実数 t に対して a Z b a ¡ ¢2 f (x)t + g(x) dx Z b ¡ ¢ = f (x)2 t2 + 2f (x)g(x)t + g(x)2 dx a Z b ³Z b ´ ³Z b ´ 2 2 = f (x) dx t + 2 f (x)g(x)dx t + g(x)2 dx a a a は正または 0 だから、これを t の 2 次式と見たときの判別式は ³Z b ´2 ³ Z b ´³ Z b ´ 2 2 f (x)g(x)dx − f (x) dx g(x) dx ≤ 0 a a a である.よって (2) がわかる. 1 1 p とおく.よって q > 1 で + = 1 である.a, b ≥ 0 p−1 p q に対して、次の不等式が成り立つ. 3. p > 1 を実数とし、q = ab ≤ ap bq + p q (3) 証明 ab = 0 ならば (3) は明らかに成り立つので、a, b > 0 とする.0 ≤ α ≤ 1 をみ たす定数 α をとる.log x は x > 0 の範囲で上に凸だから、0 < s, t に対して、x = s と x = t を (1 − α) : α に内分する点 x = αs + (1 − α)t における log x の値 log(αs + (1 − α)t) は、x = s における値 log s と x = t における値 log t を (1 − α) : α に内分する値 α log s + (1 − α) log t より大きい.すなわち α log s + (1 − α) log t ≤ log(αs + (1 − α)t) (4) である.この左辺は log(sα t1−α ) に等しいので sα t1−α ≤ αs + (1 − α)t がわかる.(s = t のときは等号が成立する).この不等式で α = 1/p のとき 1 − α = 1/q である.さらに s = ap , t = bq とおくと、求める不等式 (3) が得られる. 別証明 1 0 ≤ α ≤ 1 とする.ex は R 全体で下に凸だから、(4) を示したときと同様 の議論により、s, t ∈ R に対して eαs+(1−α)t ≤ αes + (1 − α)et (5) が成り立つことがわかる.α = 1/p, s = log ap , t = log bq とおくと、(3) が得られる. 2 別証明 2 曲線 y = xp−1 を考える.(p − 1)(q − 1) = 1 だから x = y q−1 である.(3) を 証明するためには、a ≤ b と仮定しても一般性を失わない.xy 平面において、 {(x, y) | 0 ≤ x ≤ a, 0 ≤ y ≤ xp−1 } の面積を S1 {(x, y) | 0 ≤ y ≤ b, 0 ≤ x ≤ y q−1 } の面積を S2 とおく.1 < p < 2, p = 2, 2 < p の 3 つの場合に分けて図示すると、どの場合でも ab ≤ S1 + S2 が成り立つことがわかる. Z a Z b ap bq p−1 S1 = x dx = , S2 = y q−1 dy = p q 0 0 だから (3) が成り立つ. 別証明 3 最初に、0 < r < 1 ならば xr − 1 ≤ r(x − 1) for all x > 0 (6) が成り立つことを示す.f (x) = r(x − 1) − xr + 1 とおくと、 f 0 (x) = r(1 − xr−1 ), f 00 (x) = r(1 − r)xr−2 であるが、0 < r < 1 だから x > 0 の範囲で f 00 (x) > 0 である.f 0 (x) については、 0 < x < 1 のとき f 0 (x) < 0、x = 1 のとき f 0 (1) = 0、1 < x のとき f 0 (x) > 0 である. よって f (x) は x = 1 で最小値 0 をとり、(6) が成り立つ. (6) において r = 1/p, x = s/t とすると、 ³ s ´1/p ´ 1³s −1≤ −1 t p t となる.これより s1/p t1−1/p ≤ s ³ 1´ + 1− t p p がわかるが、ここで 1 − 1/p = 1/q に注意して、s = ap , t = bq とすれば (3) が得られる. 4.Hölder の不等式 p > 1 を実数とし、q = p とおく.ai , bi ∈ R に対して、次の不等式が成り立つ. p−1 n X |ai bi | ≤ i=1 n ¡X |ai | ¢ ¡ p 1/p n X |bi |q ¢1/q (7) i=1 i=1 Pn Pn q p |a | = 証明 Step 1. i i=1 |bi | = 1 の場合を最初に考える.a = |ai |, b = |bi | と i=1 して不等式 (3) を適用すると |ai | |bi | ≤ だから、 n X i=1 |ai bi | ≤ |ai |p |bi |q + p q n n 1 X 1 1 X q 1 + =1 |ai |p + |bi | = p i=1 q i=1 p q 3 となり、 Pn i=1 |ai |p = Pn i=1 |bi |q = 1 の場合の (7) が得られる. Step 2. 一般の場合に (7) を示す.すべての 1 ≤ i ≤ n について ai = 0 ならば明らか に (7) は成り立つ.よって、ai 6= 0 となる i が存在すると仮定してよい.同様に、ある j Pn Pn p q については bj 6= 0 と仮定してよい.このとき α = i=1 |ai | , β = i=1 |bi | とおくと、 α > 0, β > 0 である.a0i = ai /α1/p , b0i = bi /β 1/q とおくと、 n X n n n X 1 X 1 X q |ai |p = 1, |b0i |q = |bi | = 1 α β i=1 i=1 i=1 i=1 Pn である.よって、Step 1 より i=1 |a0i b0i | ≤ 1 がわかる.これより n X |a0i |p = |ai bi | = α1/p β 1/q i=1 n X |a0i b0i | ≤ α1/p β 1/q = n ¡X |ai |p n ¢1/p ¡ X i=1 i=1 |bi |q ¢1/q i=1 となり、(7) が得られる. 5.Hölder の不等式 (積分の形) p p > 1 を実数とし、q = とおく.閉区間 [a, b] で連続な関数 f (x), g(x) に対し p−1 て、次の不等式が成り立つ. Z b ³Z b ´1/p ³ Z b ´1/q p q |f (x)g(x)|dx ≤ |f (x)| dx |g(x)| dx (8) a a a 証明 f (x) あるいは g(x) が [a, b] で恒等的に 0 であれば、(8) の両辺はともに 0 とな Rb るので成り立つ.f (x) も g(x) も [a, b] で恒等的に 0 ではないとすると、 a |f (x)|p dx > 0, Rb Rb Rb q p |g(x)| dx > 0 である. α = |f (x)| dx, β = |g(x)|q dx とおく.x をひとつ定めて、 a a a a = |f (x)|/α1/p , b = |g(x)|/β 1/q として不等式 (3) を適用すると、 |f (x)g(x)| 1 |f (x)|p 1 |g(x)|q ≤ + α1/p β 1/q p α q β がわかる.この両辺の [a, b] における定積分を考えると、 Z b 1 1 1 |f (x)g(x)|dx ≤ + =1 α1/p β 1/q a p q となり、(8) が得られる. 別証明 n を自然数とし、∆ = (b − a)/n とおく.a + (i − 1)∆ < ξi < a + i∆ をみた す ξi (i = 1, 2, . . . , n) を任意にひとつとる.Hölder の不等式 (7) により n X |f (ξi )g(ξi )| ≤ i=1 n ¡X |f (ξi )| i=1 ¢ ¡ p 1/p n X |g(ξi )|q ¢1/q i=1 が成り立つ.この両辺に ∆ をかける.1/p + 1/q = 1 だから ∆1/p ∆1/q = ∆ であることに 注意すると、 n X i=1 |f (ξi )g(ξi )|∆ ≤ n ¡X n ¢1/p ¡ X ¢1/q |f (ξi )|p ∆ |g(ξi )|q ∆ i=1 i=1 4 がわかる.ここで n → ∞ とすれば、定積分の定義により (8) が得られる. 注意 Hölder の不等式で p = 2 の場合は Schwarz の不等式である. 6.Minkowski の不等式 p ≥ 1 を実数とする.ai , bi ∈ R に対して、次の不等式が成り立つ. n ¡X |ai + bi |p ¢1/p ≤ n ¡X i=1 |ai |p ¢1/p + n ¡X i=1 |bi |p ¢1/p (9) i=1 証明 p = 1 のときは |ai + bi | ≤ |ai | +¡ |bi | より ¢(9) は明らかに成り立つので、p > 1 と する.|ai + bi |p = |ai + bi | |ai + bi |p−1 ≤ |ai | + |bi | |ai + bi |p−1 より、 n X p |ai + bi | ≤ i=1 に注意する.q = n X |ai | |ai + bi | p−1 + i=1 n X |bi | |ai + bi |p−1 (10) i=1 Pn p とおき、 i=1 |ai | |ai + bi |p−1 に対して Hölder の不等式 (7) を適 p−1 用すると、 n X |ai | |ai + bi | p−1 ≤ n ¡X i=1 = ¡ i=1 n X |ai | |ai | n X ¢ ¡ p 1/p ¢ ¡ p 1/p i=1 n X i=1 |ai + bi |(p−1)q |ai + bi | ¢1/q (11) ¢ p 1/q i=1 がわかる.ここで (p − 1)q = p を用いた.同様に、 n X |bi | |ai + bi | p−1 ≤ i=1 = n ¡X |bi | ¢ ¡ p 1/p n X i=1 i=1 n ¡X n ¢1/p ¡ X |bi | p i=1 |ai + bi |(p−1)q |ai + bi | ¢1/q (12) ¢ p 1/q i=1 もわかる.(10) の右辺に (11) と (12) を代入すると、 n X i=1 p |ai + bi | ≤ n ³¡ X |ai | ¢ p 1/p + n ¡X i=1 i=1 |bi | ¢ p 1/p n ´¡ X |ai + bi |p ¢1/q (13) i=1 ¢ ¡ Pn Pn p 1/q 0 のとき (13) の両辺を となる.1−1/q = 1/p だから、 i=1 |ai +bi |p 6= P i=1 |ai +bi | n で割ると Minkowski の不等式 (9) が得られる. i=1 |ai + bi |p = 0 のときは、(9) は明ら かに成り立つ. 7.Minkowski の不等式 (積分の形) p ≥ 1 を実数とする.閉区間 [a, b] で連続な関数 f (x), g(x) に対して、次の不等式が 成り立つ. ³Z b ´1/p ³ Z b ´1/p ³ Z b ´1/p p p |f (x) + g(x)| dx ≤ |f (x)| dx + |g(x)|p dx (14) a a a 5 証明 上記の Minkowski ai を f (x) に置き換え、bi を g(x) Pの不等式の証明において、 n に置き換えて、さらに和 i=1 を [a, b] における定積分に置き換えて議論する.p = 1 の ときは |f (x) + g(x)| ≤ |f (x)| + |g(x)| より (14) は明らかに成り立つ.p > 1 とする. ¡ ¢ |f (x) + g(x)|p ≤ |f (x)| + |g(x)| |f (x) + g(x)|p−1 より、 Z b Z b Z b p p−1 |f (x) + g(x)| dx ≤ |f (x)| |f (x) + g(x)| dx + |g(x)| |f (x) + g(x)|p−1 dx (15) a a a Rb p とおき、 a |f (x)| |f (x) + g(x)|p−1 dx に対して積分の p−1 形の Hölder の不等式 (8) を適用すると、 であることに注意する.q = Z b |f (x)| |f (x) + g(x)| p−1 ³Z b dx ≤ a p |f (x)| dx ³Z a b = |f (x)|p dx ´1/p ³ Z ´1/p ³ Z a b |f (x) + g(x)|(p−1)q dx a b |f (x) + g(x)|p dx ´1/q ´1/q (16) a がわかる.同様に、 Z b ³Z b ´1/p ³ Z b ´1/q p−1 p |g(x)| |f (x) + g(x)| dx ≤ |g(x)| dx |f (x) + g(x)|(p−1)q dx a a a ³Z b ´1/p ³ Z b ´1/q p p = |g(x)| dx |f (x) + g(x)| dx a (17) a もわかる.(15) の右辺に (16) と (17) を代入すると、 Z b p ³³ Z b |f (x)+g(x)| dx ≤ a ´1/p ³ Z b ´1/p ´³ Z b ´1/q p p |f (x)| dx + |g(x)| dx |f (x)+g(x)| dx p a a a (18) ¡Rb ¢1/q Rb p p となる. a |f (x) + g(x)| dx 6= 0 のとき、(18) の両辺を a |f (x) + g(x)| dx で割ると Rb p Minkowski の不等式 (14) が得られる (1 − 1/q = 1/p に注意). a |f (x) + g(x)| dx = 0 の ときは、(14) は明らかに成り立つ. 注意 ここでの積分は連続関数の Riemann 積分であるが、同じ不等式が Lebesgue 積 分の可積分関数について成り立つ. 6