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開催報告 - Malaria No More Japan(マラリア・ノーモア・ジャパン)
Malaria No More & Malaria No More Japan カクテル・レセプション 「マラリア制圧に向けたプライベートセクターの貢献」 Private Sector’s Contribution for Malaria Elimination 2016 年 10 月 18 日(火)18:00 – 19:30 浜松町 東京會舘オリオン・ルーム 開催報告 Malaria No More Japan マラリア・ノーモア・ジャパンは、2016 年 10 月 18 日都内にて、米国本部マラリア・ノーモアと共に「マラリ ア制圧に向けたプライベートセクターの貢献」と題しカクテル・レセプションを開催しました。日本政府関係者、 アカデミア、製薬・医療機器メーカーほか企業関係者、関連機関・団体などから多数のご参加をいただきました。 マラリア制圧に向けた世界のマラリアの現況を技術的な側面から、そして、住友化学の取組みを事例とし企業が 社会課題解決にコアテクノロジーで継続的に取組む意義やパートナーシップの重要性を紹介、民間企業の果たす 役割の大きさを共有する機会となりました。今後、ますます本分野へ参加企業が増えることを期待します。 【開催概要】 主催: マラリア・ノーモア、マラリア・ノーモア・ジャパン 日時: 2016 年 10 月 18 日(火)18 時~19 時 30 分 会場: 浜松町 東京會舘 オリオン・ルーム(東京都港区浜松町 2-4-1 世界貿易センタービル 39 階) 参加人数: 57 名 通訳: 遂次通訳有 【プログラム】 18:03-18:18 司会進行 長島 美紀 マラリア・ノーモア・ジャパン理事 ウェルカムご挨拶 クリストファー・コーム マラリア・ノーモア共同代表、Combe Incorporated 会長 18:19-18:24 乾杯のご発声 近藤 哲生 国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 駐日代表 18:24-18:33 -ご歓談- 18:35-18:45 世界のマラリアの現況 狩野 繁之 マラリア・ノーモア・ジャパン理事 国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部長 18:46-18:56 マラリア制圧に 西本 向けたプライベート マラリア・ノーモア・ジャパン理事 セクターの貢献 住友化学株式会社 代表取締役兼専務執行役員 18:56-19:27 -ご歓談- 19:27-19:30 閉会挨拶 西本 麗 麗 1 Malaria No More Japan ウェルカムご挨拶 “Leveraging the US-Japan Special Relationship to Eliminate Malaria from the Asia Pacific” クリストファー・コーム マラリア・ノーモア共同代表、Combe Incorporated 会長 今回、東京におじゃまでき本当にワクワクしており また、この疾病によってもたらされる経済的な、直 ます。今晩はまさに日本にとって、そして世界にとっ 接的なインパクトは米ドルにして年間 120 億ドルと て非常に重要なプロジェクトのスタートであると思 言われておりますが、これはあくまでも疾病治療また っています。 早期死亡というコストのみを計上したものです。 さて、ここにおられる皆様は世界が抱えるマラリアと 実際にこのマラリアによってもたらされる経済的 いう問題になじみある方々ばかりだと思います。ご覧 な負荷は 1 兆から 2 兆ドルに相当する、これは実に のとおり全世界で 2 億 1400 万もの症例、マラリアの 200 兆円ないしは 300 兆円に近いということになりま 患者がいる、そのうちアジアには 3200 万ということ す。すみません、円の換算を間違えておりまして、100 になっています。 兆から 200 兆が正解です。実は 41 年ほど前に東京に 来て日本でビジネスを立ち上げるときの為替レート が 1 ドルに対して 300 円だったものですが、1 ドルに 対して 100 円という時代にまだなかなかなじまない もので、申し訳ございません。 歴史上、人類の人口の半分に相当する人が実はこの マラリアという病で命を落としております。そしてい ま、年間で 43 万 8000 人がやはりこのマラリアで命を 落としている、その多くは 5 歳未満の子どもや妊婦さ んであったりするのです。 2 Malaria No More Japan とはいうものの、実はこのアジアにおいてこそ非常 に大きなチャレンジもあり、また大きな機会もあると 思っております。というのは 1957 年、メコン川流域 で見つかった寄生虫が、いまやアルテミシニンという 唯一承認されているマラリア治療薬に対して耐性を 構築しつつあるということが指摘されているからで す。 したがって、ぜひこの 15 年の間にメコン川地域、 そしてアジアにおいて、私どもはマラリア制圧を目指 して尽力しなければなりません。すなわち唯一マラリ さて、マラリア・ノーモアが立ち上がった 2006 年 アに対して効果があるといわれている治療薬の効力 以降、まさに前例のないほど進捗があったというふう に対して耐性が構築されてしまう前に何とか制圧を に思っております。この 15 年間を振り返っただけで しなければならないのです。 も 100 万人が命を落としていたものが、いまや先ほど 申し上げましたとおり年間の死亡者が 43 万 8000 とい うところまできました。これがどうして実現できたか といいますと、この間、マラリア対策に対するサポー トが 270%増大し、そしていまやその金額が 30 億ド ルに到達したことが背景にあります。 また、ご存じだと思いますが、その中で日本はこの 分野に関して非常に大きな貢献をされてきました。日 本はグローバルファンドを立ち上げた創設国でもあ りますし、また引き続き非常に大きな貢献をされてお なぜ制圧をしなければならないのか、そうでないと られます。今年だけでも 8 億ドルの拠出ということに またこの疾病が再燃し、そしてさらに拡大の一途を遂 なっております。 げるからです。そして北方に進むことになるでしょう。 これは日本においても同じです。実は米国においても さて、マラリア・ノーモアですが、私どもはたとえ ジカ熱で同じようなことが見られています。ブラジル ばビル・ゲイツ財団やマッキンゼーなどの方々と協力 の疾病だったものが、あっという間に米国に入ってき させていただいておりまして、長期的な計画を描いて ているのです。 おります。すなわちこの 25 年の間にマラリア制圧を 図るということを考えています。 マラリア・ノーモアですが、蚊に刺されたというこ とで命を落とすような子どもがもはやいないような 3 Malaria No More Japan 世界をつくることにコミットをしているわけです。実 はこういった言葉は今年の 1 月、オバマ大統領が行い ました最後の一般教書演説の中でも指摘した言葉か ら抽出しているわけですけれども、彼いわく、「HIV の蔓延は何とか止めることができた、今度はマラリア の蔓延を止める時期だ」と。 上の写真は、私が実際にタイを訪問したときに撮っ たものですが、その結果、私自身、タイにおいてマラ リアに対抗するうえで、いかに現場で難しいチャレン ジに直面しているかということを目の当たりにする ことができました。というのは、たとえば近隣諸国の ミャンマーなどから移民労働者がタイに入ってくる、 そして彼らは夜間、ゴム工場などで仕事をしているた さて、マラリア・ノーモアというものはマラリア制 めに蚊に刺されてしまうのです。そこで地元のタイの 圧に特化した、またそれに邁進している唯一の組織で 若い女性のボランティアなどがこういった労働者に あると言ってよろしいかと思います。そしてそのため アプローチをして、ぜひクリニックなどでマラリアの にわれわれが何をやっているかといえば、やはりアド テストをするように呼びかけているのです。 ボカシー、政策提言ということで、それにあたっては 数多くのパートナーのお力添えをいただいています。 幸いなことに私の共同代表の同僚は、実はニュー ズ・コーポレーション、フォックスというニュース系 のグループの CEO を務めており、メディア界におい て数多くのコンタクトを持っている方で、その結果、 知名度を高める、啓蒙するということができたわけで す。 また、ノバルティスなども先ほど申し上げましたア ルテミシニンなどに対して相当程度投資をしている、 そういった意味ではいかにこのマラリア制圧のた そして 7 億もの薬を提供している、しかもそれはあく めの計画実施が難しいかということを感じ取ったわ までも実費のみのコストで提供しておられるのです。 けですが、この制圧にあたって、日本はまさにリーダ ー的な存在であるというふうに思っています。日本は ま た 、 GHIT Fund ( Global Health Innovative グローバルファンドを立ち上げた創設国でもありま Technology Fund)というようなファンドも相当程度 す。そして相当程度この分野に関して投資をしてこら マラリアに対する研究そして協力を行っております。 れた、そういった意味では向こう 15 年間でマラリア おかげさまで米国においては私ども、年間で 12.5 億 を制圧するということに関して、日本は相当程度の協 ドルもの資金調達をすることができております。 力を実行可能な地位にあると思っています。 4 Malaria No More Japan のさまざまなパートナーをこのスライドでご紹介し ております。日本の皆様のコミットメント、そしてま たご協力に心から感謝をする次第でございます。申し 上げましたとおり、われわれは本当にスタートを切っ たばかりだと思っております。しかし、この部屋には 私どもの最終的な目標でありますこの悲惨な疾病を とにかく制圧しようということに関して本当に力を 貸してくださるキープレイヤーばかりがそろってい ると思っております。 さて、後ほどマラリア・ノーモア・ジャパンの理事 皆様、本当にどうもありがとうございました。今回、 である狩野先生から、この分野にかかわる技術的な側 理事会のメンバーもおりますし、また米国からはアド 面についていろいろとお話を伺いたいと思っており ボカシー担当のスタッフも来ております。またアジア ます。また同じくマラリア・ノーモア・ジャパンの理 太平洋担当のマラリア・ノーモア・アジア・パシフィ 事でいらっしゃる住友化学株式会社の西本様からは、 ックのディレクターもおります。 企業サイドとして実際にどのような活動をしておら れるのかを伺いたいと思います。ちなみに住友化学さ んは数億という単位の蚊帳を提供しておられる会社 でいらっしゃいます。日本がいかにこの分野でそのサ ポートを提供していただけるかということの証左で ありましょう。 また、私は今朝、エーザイの内藤晴夫会長とお目に かかることができました。会長からまたいろいろとお 話を伺ったわけですけれども、たとえば GHIT、グロ ーバルヘルス技術振興基金の一環としてワクチンの 開発に取り組んでいるというお話をすることができ ました。 【写真】中央:ジョシュア・ブルーメンフェルド(マラリア・ノーモ ア、 米国・グローバルアドボカシーマネージング・ディレクター)、 左: アンジャリ・カウール(マラリア・ノーモア、アジア・太平洋担 当ディレクター) また同じくマラリア・ノーモア・ジャパンの理事の 方もおられますので、ぜひお話しできればと思います。 皆様からのさらなるご協力をいただければ幸いです。 まことにありがとうございました。 マラリア制圧のための戦略を練るということ、そして その戦略の実施にあたって協力しております全世界 5 Malaria No More Japan 乾杯のご発声 近藤 哲生 国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 駐日代表 マラリア・ノーモア共同代表のクリストファー・コー ム様、マラリア・ノーモアのすばらしい活動に感銘を 受けた次第でございます。私は今日、乾杯の音頭をさ せていただくようにということで、僭越ながら伺いま した国連開発計画、UNDP の駐日代表の近藤哲生と申 します。 国連機関である UNDP が、なぜ「マラリア制圧に 向けたプライベートセクターの貢献」と題したこのレ セプションに伺ったのか不思議に思われる方もいら っしゃるかもしれません。しかし民間企業と国際機関 すべての国に共通する社会課題を提示する SDGs、 との協力というのは、ただいまのマラリア・ノーモア すべての国の共通言語です。そこにはまだ充足されて の活動にも見られますように、対話や連携が世界中で いないニーズのヒントが散りばめられております。こ 広がっております。社会課題をビジネスで解決すると れらのニーズの解決に取り組むことでイノベーショ いう動きが活発になってきておりまして、プライベー ンを起こすことも可能です。SHIP ではこのイノベー トセクターの存在感、コーポレート・ソーシャル・バ ションプロセスの中に、近年のデジタル経済の進化を リューへの関心が高まっております。 組み合わせることで、これまでにない市場や産業の創 出を目指しています。 国際社会は昨年 9 月の国連総会において、2030 年 までに平和で繁栄した世界をつくるための持続可能 たとえば先ほども申し上げましたように SDGs の中 な開発目標、Sustainable Development Goals を採択 にはグローバルゴールズ、すべての人類の課題、地球 いたしました。今年からその実施が始まりました。 の課題が含まれていると言っても過言ではありませ SDGs、Sustainable Development Goals は開発途上 ん。17 の目標になっております。その目標 3、「すべ 国のみならず先進国を含むすべての国の達成目標で ての人に健康と福祉を」ということにつきましては、 ございます。 たとえば医療現場をもっとデジタル化することによ って医療従事者の方の雑用を劇的に減らして、効率的 また、民間セクターには資金提供のみならず事業活動、 かつ効果的に目標の達成に貢献する、つまり患者さん ビジネスを通じて SDGs の達成に積極的に貢献してい にフォーカスしていただくということも可能かもし ただくということが期待をされております。 れません。それは一つの例でございます。 これらの流れを受けまして、本年、UNDP は社団法人 このように SHIP は今後、日本の民間企業の皆様の Japan Innovation Network、JIN とともに、三菱総 参加を募りまして、国内外のイノベーション・ネット 合研究所のご協力の下、SDGs をビジネス機会として ワークや大学、海外のスタートアップ企業、それから とらえて、日本企業によって積極的なイノベーション 開発援助機関、投資機関、経済団体など多角的なステ を促進し、SDGs の達成に寄与する革新的な、イノベ ークホルダーを巻き込みながら、イノベーション機会 ーティブなビジネスを起こしていく連携プラットフ の探索、課題解決型ビジネスモデル構築、グローバル ォーム、SDGs Holistic Innovation Platform、SHIP なネットワークの構築という成果達成を目指してプ が船出いたしました。これを設立いたしまして、活動 ログラムを進めております。日本で SDGs を軸にビジ を開始しております。 ネス・イノベーションを図るこのようなオープン・ 6 Malaria No More Japan プラットフォームが構築されるのは SHIP が初めてだ と思います。 また製薬会社を始め数多くの企業、外務省、厚生労 働省、UNDP の連携によりまして熱帯病に立ち向かう プロジェクト、GHIT、グローバルヘルス技術振興基 また、本年 8 月には第 6 回アフリカ開発会議がケニ 金、この活動も着実に成果を上げております。新興国、 アで行われました。私も参加してまいりましたが、初 途上国をめぐるビジネス環境は政府や国際機関を巻 のアフリカでの開催ということで、今回の TICAD に き込みながらダイナミックに動いております。持続的 は日本経済界からも大きなミッションが派遣されま 成長に向けてビジネスの活性化をどう後押しするか した。75 社の会長、社長の皆さん、私もこんなに大勢 は SDGs の達成のための大きなカギです。プライベー の方々は見たことがありませんでした。 トセクターによる貢献は先進国、途上国を通じて企業 が社会課題をビジネスで解決するにはどうしたらい いのかということを教えてくださるアクターである というふうに考えております。 皆様のご協力で、またマラリア・ノーモアをモデル とするこういった動きで、この SDGs の達成を進めて まいりたいと思います。どうか皆様のご協力をお願い 申し上げます。 それでは乾杯の音頭を取らせていただきます。 多くの国際機関や企業同士の連携が広まりゆく中、 Congratulation for your great activities and アフリカの指導者との協力関係が構築されるすがた rollout of the Malaria No More, Initiative in Japan, を目の当たりにしました。このあとにお話を伺うのを Mr. Combe. 楽しみにしております住友化学株式会社様は、すでに 2008 年より UNDP など六つの開発機関、政府が主導 それではマラリア・ノーモアのますますの発展をご する Business Call to Action といわれる開発とビジネ 祈念いたしまして、また皆様のご健康とご事業の発展 スの長期目標達成の取り組みに参加されております。 をご祈念いたしまして乾杯をさせていただきます。 そちらにパンフレットがございますので、もしお荷物 乾杯。 でなければ後ほどお取りいただければと思います。 住友化学が開発したオリセット®ネットという蚊帳、 これはマラリアを媒介する蚊から人々を守り、安心し て生活できる環境を提供できるのみならず、タンザニ アでは現地生産をされて、約 7000 名のエンプロイメ ント、雇用を生み出している。地域経済の発展にも貢 献し、さらにはその売り上げでアフリカに小中学校の 校舎を建設し、また初等教育の教育環境を整備すると いうすばらしい開発と事業利益の両立を実現されて おります。 7 Malaria No More Japan 世界のマラリアの現況 狩野繁之 マラリア・ノーモア・ジャパン理事、国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部長 皆さん、こんばんは。マラリア・ノーモア・ジャパ かつては低中所得国(左記スライドの右上グラフ) ンの理事でございます、国立国際医療研究センター研 までマラリアが 10 大死因に入っていたのですけれど 究所 熱帯医学・マラリア研究部の部長を務めており も、現在は一番貧しい国、年間の 1 人当たりの GNI ます狩野繁之と申します。 が 825 ドル以下、年間 10 万円ぐらいで生きている人 今日、10 分ほど時間をいただきましてマラリアの現 たちがマラリアで死ぬということです。そしてわれわ 況を説明しろということで、日本語でやれということ れはもう下気道感染症ぐらいでしか死ななくて、いつ ですので少し気が楽になりましたけれども、先ほどク のまにかハートアタックとかストロークとか即ち虚 リスがお話しした内容とほとんど同じでございます 血性の心疾患や脳溢血というもので亡くなるという が、少し細かくおさらいをさせていただきたいと思い わけです。マラリアのインパクトというものは結局、 ます。よろしくお願いいたします。 貧しい人たちに及んでいるということです。エイズ、 結核、マラリア、下痢もそうです、それらの感染症は 貧しい人たちの病気であるということを認識し直す 必要があります。 マラリアというものがどのくらいのインパクトを 与えているかと、10 大死因で、貧しい国からわれわれ のようなお金持ちの国に四つに分けると、矢印がつい ているものは感染症で亡くなる方たちですけれども、 貧しい国の人たちはたくさんが感染症で亡くなる、そ の中にマラリアが入っているということです。 そしてマラリアの対策のためのマイルストーンで すけれども、 ( 「道標」 )書き上げてきました。92 年に アムステルダムでマラリアサミットが開かれて、世界 8 Malaria No More Japan の厚生労働大臣級の人たちが集まったときに、ここで 一つ考え方が大きく変わりました。マラリアの対策と いうのは垂直型のバーティカルなものから水平型の ホリゾンタルなものに変わらなくてはいけないとい うことです。ここでコミュニティベースト・マラリ ア・コントロールであるとか、プライマリーヘルスケ アに組み込んだマラリア対策が正当化されました。こ れが 1992 年で、この前のマラリア・エラディケーシ ョン・プログラム等ではすべてバーティカルだったも のがホリゾンタルになったというこの宣言をしたと きに、われわれは大きく驚いたものでした。 ロールバック・マラリアは 1998 年ですけれども、 そして 97 年、日本にとっては忘れられない、われ このときには WHO がよく言う言い方です、「No われ寄生虫学会、寄生虫学者にとっても忘れられない single organization can do it alone」 「われわれ WHO 、 のですけれども、橋本龍太郎元首相が世界のマラリア の船に乗れ、 みんなで一緒にやろう。船頭は WHO だ」 対策、寄生虫対策は日本が中心になってやるとデンバ と言うのですね。いつも船頭になりたがるのが WHO ーのサミットとバーミンガムのサミットで宣言し、日 でありまして、WHO 関係者の人がいないといいので 本の寄生虫学者が世界の寄生虫を撲滅せよという命 すが、(笑)みんな乗りなさいと。グローバルファン 令をしました。われわれはこれを、主にマラリアの場 ド、ユニセフのような国連機関も、流行国もそうでな 合にはスクールヘルスベースト・マラリア・コントロ い国も、いろいろなファウンデーション、いまでした ールというかたちで行いました。そしてほとんど同じ らマラリア・ノーモア・ジャパンも、乗った者全員で くして、グロ・ハーレム・ブルントラント WHO 事務 ロールバック・マラリアなのだというふうに主張する 局長(当時)がロールバック・マラリアを打ち立てま わけです。そしてそれをグローバルムーブメントであ すが、このお話はこのあとします。 るとか、キャタリスト、マラリア対策を加速するため の触媒のようなものだと言いました。 そして忘れもしない、クリスからも話がありました が、沖縄感染症対策イニシアティブによってエイズ、 結核、マラリアに日本が積極的に取り組むということ で、これがグローバルファンドの生みの親になったと いうことです。 目標は 2000 年から 2010 年までの間に、モータリ ティ、モービディティを 50%下げる、そして 2015 年 までに 75%までに下げるというのが 2000 年の目標で した。そして去年、2015 年がきて、この目標値が達 成されたかどうかというのが問題だったわけですけ れども、先ほどクリスがお話しされたように現在は 9 Malaria No More Japan 2 億 1400 万人、そして亡くなる方は 43 万 8000 人で 頑張らないといけないと思っているわけです。 すけれども、2000 年に比べますと有病者は 18%しか 下がっていない、75%と言ったではないかと・・・。 WHO のウエスタン・パシフィック・リージョンで 死亡者は 48%しか下がっていない、まあ 50 に近い、 は、20 年までのゴールをごく最近出したところであり いい線はいったかもしれないとは思いますが・・・・。 ますけれど、ここは死亡率を 50%、世界のものよりも 少し高めに、それから有病率、患者数は 30%、ちょっ それで WHO は、この数字を悪いと言うのか、620 と低めで、この数字は世界と合っていませんけれども、 万人もの命を救ったことに計算できるのだ、これを失 西太平洋事務局ではこのような数値を立てていると 敗と言うのかというふうに開き直った。(笑)それで ころであります。 われわれはこの 18%というものを見て、ちょっと満足 いかなかったのですけれども、まあいいか・・!?と それで西太平洋事務局ではマラリアのエリミネー いうふうに言ったとか、言わないとかというところで ション、エリミネーションというのはある一定の地域 ございます。 からケースをゼロにすること、一人の患者も出ない、 これが定義であります。ですからエリミネートの言葉 しかしながら、よく見ると結局、世界のマラリアの を使うときには非常に厳しい定義がついて回ること 流行自体はそれほど減っていないけれども早期診断 に注意して、これをコントロールと言ったほうがいい ができるようになった、ラピッド・ダイアグノスティ のか、またはエンド・マラリアと言ったほうがいいの ック・テスト(Rapid Diagnostic Tests) 、それからア か、フリー・マラリアと言ったほうがいいのか考えな ルテミシニン・コンビネーションセラピーズ いといけないのですけれど、とりあえずはエリミネー (Artemisinin-based Combination Therapies)で命 ト・マラリアということです。 はだいぶ救えるようになってきたというのは実際の ところだと思います。 カンボジアは 2025 年、中国は 2020 年までには、 ラオス、マレーシア、韓国、このへんは 2020 年ちょ このようなことで、WHO は過去 15 年は忘れまし っとくらいですね、フィリピン、パプアニューギニア ょう、 (笑)もう過去は全部チャラです。今年から、 のような島は、フィリピンは島の数が 7000 もありま 新 た な Global Technical Strategy for Malaria すし、パプアニューギニアも森が深いですし、2030 2016-2030(マラリア世界技術戦略 2016-2030 年)を 年ぐらいまではかかるかな・・・ソロモン・アイラン 15 年間でおこないます!と言って、上記数字を見てく ズも島が点在していて、島の反対側に行くのも大変、 ださい、2020 年までに少なくとも 40%、25 年まで 時間がかかるかなと・・・。しかしながらこのような 75%、30 年までに 90%死亡率、患者数を減らすとい 目標を立てて、しっかりとエリミネートしたあとは、 う壮大な目標を立てました。これを見たときに、私は また原虫が入ってこないようにきちんとサーベイラ あと 5 年から 10 年で定年ですけれど、30 年までは ンスをして、モニタリングする体制をつくるというの 10 Malaria No More Japan を具体的に立てなくてはなりません。 ベトナムは 40%、そしてラオスも 20%でした。 われわれはいまラオスパスツール研究所と一緒に 仕事をしていますので、世界パスツールネットワーク の皆さんが全力を尽くしてこの分布を世界中で調べ ました。アフリカはわずかでほとんど変異がないし、 中南米はまったく変異が入っていないというふうに、 この K13-propeller gene の変異のディストリビュー ションを調べました。これがまたクロロキンのように、 メフロキンのように、ファンシダールのように、世界 に拡散していくのを何としても止めなくてはいけな い、アジアで止めなくてはいけないというのがわれわ そして福音的なものはこのアルテミシニンであり れのミッションであります。 まして、昨年、中国の屠呦呦先生がノーベル賞をもら ったところでありますが、この薬が最後の砦と WHO も言っております。脳マラリア、重症マラリアに効く、 それから血中からの原虫の減少の速度が速い、しかも 副作用が少ない、何を取ってもいい薬です。これを 2000 年前の書物を見て、熱湯で煮込んで抽出しない で低温で抽出するというところがコツだったそうで すけれども、これでノーベル賞であります。 それでは日本はどうやってマラリアの流行拡散を 止めるかというところが問題です。先ほどご紹介があ りましたように Millennium Development Goals が去 年 ま で 、 そ し て こ れ が Sustainable Development Goals に変わって、われわれ感染症の研究者はちょっ と心配(great concern)になっています。なぜかとい うと、8 個のゴールの内の一つだった感染症が、17 の ゴールの内の一つの中の、そのさらに細かく押しやら しかしながら、クリスが言ったとおり、薬剤耐性が れて、世界の開発目標の中の感染症の対策というのは また新たにカンボジア、ミャンマーあたりから出てき そんなに小さい部分なのかなというふうな気がしな た。ここ(上のスライド)に私の名前だけ赤線を引い いでもなかったからです。 てきましたけれども、私たちが今年出した“The New England Journal of medicine”のアルテミシン耐性の けれども、まあいろいろなシナジスティックなイフ 遺伝子のマーカー、K13-propeller gene というものの ェクトで、水の問題で健康、母子の問題・子どもの教 ミューテーションの分布(ここに変異が入っていると 育で健康と、すべてポジティブなシナジーをもってナ 耐性の可能性が強い) を、 世界 59 カ国そして 1 万 3000 ンバー3 の健康のゴールをやっつけていくことが考え 人の検体を使って変異の率の分布を見たら、何とカン られます。この Sustainable Development Goals を達 ボジアはすでに 70%近い、ミャンマーは 50%近い、 成するために、安倍晋三首相を中心に日本が得意とす 11 Malaria No More Japan るユニバーサル・ヘルス・カバレッジの手法をもって、 Let’s make malaria no more、これがわれわれ、マ ここ(下のスライド)に書いてありますように、 「While ラリア・ノーモア・ジャパンの決め台詞であります。 sharing Japan’s relevant experiences, we can move 今後ともよろしくご支援のほどお願いいたします。 forward together with this new agenda」 、new SDGs の達成を加速するということです。 マラリアのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、マ ラリアの薬、蚊帳などを、本当に必要な人のところに それらを届ける、辺境の貧しい人たちに実際に届ける、 こういう届けるソフト面の援助は日本は得意です。日 本はマラリアをなくし、寄生虫症をなくし、多くの感 染症を克服した経験を持っています。こういう経験を 使って、われわれは世界に貢献していかなくてはいけ ないというふうに考えております。 12 Malaria No More Japan マラリア制圧に向けたプライベートセクターの貢献 西本 麗 マラリア・ノーモア・ジャパン理事、住友化学株式会社 代表取締役兼専務執行役員 こんばんは。引き続き私も英語ではなく、スライド は英語ですけれども日本語で説明をさせていただき この三つで、住友化学が取り組んできたことをベース にしてご紹介をしたいと思います。 ます。私に与えられたテーマは、プライベートセクタ ーとしてマラリアのエリミネーションにどう貢献で きるかということで、住友化学の例を使いながらお話 をさせていただきたいと思います。 住友化学は化学会社ですが、化学会社がなぜマラリ アと関係があるのかと先ほどもご質問を受けました。 住友化学自身はちょうど 100 年の歴史がございます が、いろいろな化学の分野がございます、石油化学、 メッセージが三つございます。民間企業はこういっ 情報電子化学、あるいは医薬、それと私がいます健康 た取り組みをするにあたって何を考えなければいけ 農業関連事業というところで、約 2 兆円の売り上げの ないかということで、まず一つはコアテクノロジーを うち 17%がヘルス・アンド・クロップサイエンスのセ ベースにして新しいことをやっていこうと、これはや クターでございます。 はり大事だというふうに思っております。二つ目はサ ステイナビリティで、継続的、持続的にこういった取 り組みをしていかなければいけない。1 回限りの寄附 といったことではだめだというふうに考えておりま す。三つ目がパートナーシップです。 13 Malaria No More Japan それと公衆衛生の薬剤、あるいは先ほどからお話しい ただいている蚊帳ですね、こういったことに取り組ん でいるということでございます。 蚊のコントロールというのはもちろん蚊帳だけで はなくて、皆さん、家庭で使っていただいているエア ゾールですとか蚊取り線香ですとか、いろいろなアプ リケーションがございます。実際に世界で蚊と戦うと きには蚊帳だけではなくて、そういったいろいろなア プリケーションを駆使して蚊をコントロールするこ とが大事だというふうに考えております。 住友化学は 100 年前に肥料をつくるところから会 社が始まりまして、どんどんいろいろな化学領域に出 て行きました。私の領域では 1953 年に天然除虫菊の 有効成分でありますピレトリンを元に発明されたア レスリンという物質を化学合成してビジネスをスタ ートしたというところが肥料の次のビジネスであり ます。そのあとに農業関係に出て行ったわけですけれ ども、これ(上のスライド)をご覧いただいてお分か りのように天然除虫菊を元にして蚊の殺虫剤ができ ます。住友化学はもう 60 年以上蚊との戦いをしてい るという歴史的な背景がございます。 われわれはそれをインテグレーテッド・ベクター・ マネージメントというふうに呼んでおりますけれど も、LLIN というのが Long-Lasting Insecticidal Nets という長期残効型の蚊帳、これは普通の蚊帳に殺虫剤 を練り込んだかたちでやっております。 あと、いわゆるボウフラの駆除剤ですね、ラービサ イド、スペーススプレー、それと IRS、これは Indoor Residual Spray ということで室内の残効散布、こうい ったいろいろなツールが実はあります。 現実に私どもはエンバイロメンタルヘルス、生活環 蚊もいろいろな種類があります。マラリアを媒介す 境事業というものがございまして、一つは家庭用の殺 る蚊は夜、活動するハマダラカですけれどもデング熱 虫剤が大きなビジネスです。住友化学は最終製品をや とジカ熱は昼、活動する蚊であり、べッドネットです っておりませんで、国内でいきますとアース製薬さん べて済むことではないということで、発生から水源の やフマキラーさん、金鳥さんが私どものお客様、海外 管理、空間管理、あるいは室内管理と、こういったと に行くと SC ジョンソンとかレキットベンキーザーと ころにすべていろいろなツールが必要になってくる、 いったところがお客さんです。そこに有効成分を販売 これを総合的にやっていこうというのが住友化学の しているというビジネスでございます。 考え方でございます。 14 Malaria No More Japan すね、これはケミカルもありますし生物農薬でも対応 をしております。また、IRS、ここに書いてあります ようにすべて、ほぼ全領域にわたって住友化学がいろ いろな薬剤を提供しております。 またパイプラインもいくつかあります。サードジェ ネレーションの蚊帳というのをいま開発をしており ます。これはいままでとはまたまったく違うモード・ オブ・アクションの薬剤を入れた蚊帳ということで、 引き続き WHO あるいは IVCC(Innovative Vector Control Consortium)というふうなパートナーシップ 近藤様からもご紹介いただいたオリセット®ネット で検討をしております。また、新しい IRS の薬剤、あ はもう非常に古くて、2001 年に初めて長期残効の蚊 るいはまったく新しい化学薬剤、こういったものをい 帳で WHO の承認をいただきました。もう 15 年やっ ろいろなかたちで開発をしているところでございま ております。現実にいまお話がありました す。 Millennium Development Goals の 10 年間、住友化 学の蚊帳は 80 カ国以上に 2 億張の販売というかディ ストリビューションがされたということで、住友化学 といえばオリセット®ネットと言われておりますけれ ども、実際にはこれだけではなくて新しいこと、先ほ ど言いましたようにいろいろなことをやっていく必 要があるということで研究開発を続けております。 いわゆる殺虫剤の開発というのは医薬ほどお金は かからないのですが、これ(上のスライド)はクロッ プライフ・インターナショナルというわれわれの業界 団体の表から持ってきたのですが、実際に開発が始ま って、ずっとお金を使っていって、どこで登録が取れ て、そこから回収が始まっていくということをキャッ シュフローのかたちで簡単なグラフにしております。 現実に、いまもうすでにマーケットに出ているもの ということで、このオリセット®ネットのセカンドジ ご覧いただきますように、すべてスムーズにいって ェネレーションというものを WHO の承認を取って出 約 10 年、開発に時間がかかります。その間、ずっと しております。先ほど薬剤抵抗性の話がありましたけ 研究コストをかけていまして、そのあとに回収が始ま れども、蚊も同じ化学成分を使っていますとどんどん ってくるということで、これはベストケースでこうい 抵抗性が発達してきます。それをいかにコントロール うことです。対象の国や分野によってコストはいろい するかというのが非常に重要で、それに対抗してセカ ろ変わりますけれど、こういった開発にはだいたい ンドジェネレーションの蚊帳も上市しております。ま 100 億円から 200 億円コストもかかるということで、 た、ラービサイドといういわゆるボウフラの駆除剤で これをどう回収するかというのは民間企業にとって 15 Malaria No More Japan は非常に重要な課題になるということでございます。 します。われわれもいま薬剤を開発していますけれど も、WHO に新しい薬剤を評価するスキームがない、 それをどうしようかということで、そこから話をしま すと、さっき言いました 10 年の期間がもっと延びて しまうということになります。したがいまして、それ をどうしていくのかということで、これは実はゲイツ 財団なども入りましてそのスキームをどうするかと いうことで、いま I2I、Innovation to Impact という 名前でプロジェクトをやっておりますけれども、こう いったことが非常に重要になってくると考えており ます。 こういったことで、いかに持続的にこういった活動 ができるかということは非常に重要になってきてお ります。国際機関でもよくバリュー・フォー・マネー というふうなことが言われます。一つの見方は安いコ ストでできるだけたくさんの、たとえば蚊帳を流通さ せるとか、あるいは薬剤を購入して配るというふうな ことが言われます。そのコストだけに注目しますと、 先ほど言いましたような開発費をまったくカバーで きないというふうなことになります。 したがいまして、バリュー・フォー・マネーという パートナーシップで、先ほどお話がありましたけれ のは決してコストのことだけではなくて、いかにイノ どもロールバック・マラリアはもう時間がたちました。 ベーションを、インセンティブをつけるかという視点 実はこの 4 月に大きくロールバック・マラリアの仕組 もいるのではないかというふうに思っております。こ みが変わりまして、従来は基本的に先ほどのようにい れは民間企業の普通の経済性計算だけではなかなか ろいろなパートナーシップがあるんですけれどもボ 成り立たないというふうに思っておりまして、いわゆ ードメンバーも非常に多くてなかなかワークしない るプロダクト・デベロップメント・パートナーシップ ということで、ボードメンバーを一新いたしました。 と言われるようなことが民間企業にとってこの開発 実は私もこの 4 月から、民間企業の代表ではなく個人 を促進する大きな力になるということです。 の資格で参加していますけれども 13 名のボードに入 って、もう一度ロールバック・マラリアをスタートし お話が出ておりました GHIT もそうですし、IVCC とか MMV(Medicines for Malaria Venture)とかい ようということで、いま一生懸命に本当にスクラッチ でやっております。 ろいろなパートナーシップがございます。民間企業に とってはこういったところと提携して継続的に研究 もともと WHO がホストをやっておりましたけれど 開発を進めていくということが非常に重要だろうと も、新しいホストは UNOPS ということで、いまいろ 思っております。 いろな組織のつくり直しをやっているところです。こ れはパートナーシップですので特に何かお金がいる ただ、新しいことをやるということは、その評価を とかということではないのですけれども、皆さん方も どうするかというのは非常に問題でして、よく新しい ぜひ一緒にロールバック・マラリアのパートナーシッ ガイドラインがなかなかないということに直面いた プにレジスターいただいて、いろいろなことを議論で 16 Malaria No More Japan きればと思います。 とをわれわれも経験しております。したがいまして、 いいパートナーをどうやって見つけるかというのは その中にいくつか、アドボカシーとかコミュニケー ションとか、あるいはリージョナルコンサルテーショ 民間企業にとっては非常に重要なことではないかな と思っております。 ンとか、そういったいろいろなコミッティをつくって います。そこにはパートナーの方は皆さん、参加でき るというふうな仕組みです。 アジア・パシフィックは、先ほど狩野先生からもあ りましたが 2030 年までにマラリアフリーにしようと いうことで、東アジアサミット、13 カ国ですか、ここ で各国の首脳が、安倍首相もサインをしました。それ そういったことでぜひお願いしたいと思いますが、 リ ー ジ ョ ン の ほ う で は ALMA ( African Leaders でそれぞれ国のスコアカードをつけて、その進捗を管 理していこうという仕組みが始まっております。 Malaria Alliance)と APLMA(Asia Pacific Leaders Malaria Alliance)という大きな組織がございます。 マラリアというと皆さん、アフリカのイメージがあ ALMA のほうはアフリカのリーダー、国の首脳の方が りますけれども、冒頭、クリス・コームさんからも話 決めて、マラリアに対してどういうことをやっていく がありましたようにアジアも実際にマラリアにエク かという仕組みをもう何年も続けております。それに スポーズしている人が非常にたくさんいるというこ 倣ってアジア・パシフィックでも APLMA というもの とで、まずアジアでなくしていかないといけない。先 を 2012 年のシドニーでの会議をベースにして立ち上 ほどの耐性薬剤の問題もありますので、アフリカがそ げております。 れに続くというふうなことが現実的ではないかなと 私は個人的に思っております。アジア・パシフィック APLMA はもともとアジア開発銀行のマニラのオフ がいかにこの活動を強化できるか、そこにマラリア・ ィスに事務所がありましたけれども、この 10 月から ノーモア・ジャパンも何とか協力して、いろいろなこ シンガポールにオフィスを移しまして新たに活動を とをやっていきたいと考えております。 しております。こういったオフィシャルなパートナー シップは大事なのです。 以上、非常に簡単ですけれども、民間企業の立場か ら言いますと、もう一度言いますけれども、やはり自 それ以外にわれわれは、たとえばタンザニアでビジ 分たちが持っているコアのテクノロジーで継続的に ネスをやるときにはやはりどうしてもローカルなパ イノベーションをやっていく、ただそのためには、そ ートナーがいるとか、ローカルのガバメントと協力し れを継続的にやるにはどういう仕組みがいるか、単独 なくてはいけない。民間企業にとってみますと、そう ではなかなか難しい、通常の経済計算だけでは難しい。 いうパートナーがうまくいかないと、単独で、自分一 そこに GHIT や IVCC といったプラットフォームが民 人で何かをやるというのはなかなか難しいというこ 間企業にとっては非常に大事になってくる。そして最 17 Malaria No More Japan 終的にいろいろなパートナーシップで一切の事業を やっていくと、こういうサイクルをうまく回していか ないと、なかなか単発で終わってしまうということで す。 日本には GHIT という、いろいろなところで話され ている本当にすばらしい仕組みができたと思ってい まして、こういったことをベースに製薬会社の方、あ るいは診断薬、いろいろなところをやっておりますが、 私個人的にはベクターのプログラムをぜひ GHIT で 何かやれないかなと思っております。 いずれにしても日本がこういった国際保健、マラリ アのエリミネーションに貢献していくチャンスはた くさんあると思いますので、ぜひ引き続き皆さんと一 緒に戦っていきたいと思っております。どうもありが とうございました。 18 Malaria No More Japan