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日本経済団体連合会 常任理事会 甘利経済産業大臣ご発言要領(案)

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日本経済団体連合会 常任理事会 甘利経済産業大臣ご発言要領(案)
日本経済団体連合会 常任理事会
甘利経済産業大臣ご発言要領(案)
平成19年3月1日(木)於:日本経団連
【はじめに(成長力底上げ戦略構想について)
】
この度は、日本経団連の常任理事会でお時間を頂戴し、ありが
とうございます。本日は、産業界の皆様に対し、下請取引の適正
化と、正規雇用化の推進に取り組んでいただくよう要請にまいり
ました。
1.先月(2月15日)
、
「成長力底上げ戦略」構想がとりまとめら
れ、翌日16日の経済財政諮問会議に報告されました。
「成長力
底上げ戦略」は、成長戦略の一環として、経済成長を下支えする
基盤(人材能力、就労機会、中小企業)の向上を図ることにより、
格差の固定化を防止しようとする考えから、とりまとめられたも
のです。
2.格差是正には、まず経済が成長してパイを大きくしていくこと
が必要条件となります。従いまして、パイを大きくするための「成
長戦略」と、その過程で格差の固定化を防止する「成長力底上げ
戦略」の両方をあわせて実行していくことが重要です。
3.経済産業省としましては、
「成長戦略」として、中小企業地域
資源活用促進法案をはじめ、産業活力再生法等の改正法案、地域
産業活性化法案の大綱関連3法案を今国会に提出しております。
-1-
4.加えて、
「成長力底上げ戦略」としては、中小企業の底上げや
人材能力の向上のための対策を積極的に実行していきたいと考
えております。
5.成長力底上げ戦略の3本柱(※)のうち「中小企業底上げ戦略」
については、<資料の1、2ページ目にありますように、>
① 下請取引の適正化
② 中小企業のIT化・機械化・経営改善
③ 中小サービス業等への取組
④ 中小企業の人材能力の向上
からなる、
「生産性向上プロジェクト」の実行などに取り組んで
いくこととしています。
(※)人材能力戦略、就労支援戦略、中小企業底上げ戦略
【本日の要請点】
このうち「下請取引の適正化」は大企業から中小企業に生産性
向上の成果を波及させる観点から、早急に措置することが必要と
考えております。皆様に次の4点をお願いします。<資料3ペー
ジ目の(ⅰ)
(ⅲ)
(ⅳ)
(ⅴ)になります>
1.先ず1点目は、情報通信機器産業、繊維産業、自動車産業、ソ
フトウェア産業、コンテンツ産業等の各業界において、取引適正
化の観点から、ガイドラインの策定と遵守に協力いただきますよ
うお願いします。
-2-
<資料4ページにありますように、>
既に、素形材産業においては、業界全体の競争力の維持・強化
の観点から、素形材業界団体、ユーザー業界団体、有識者からな
る「素形材産業取引ガイドライン策定委員会」を開催し、昨年
11月に報告書をとりまとめ、現在セミナー等を通じて普及啓発
を行っていると承知しております。
<資料5,6ページにありますように、>
このガイドラインでは、①企業のコンプライアンスの遵守、②
取引慣行の改善、③ベストプラクティスの事例の整理を柱として
おります。具体的には、
① 企業のコンプライアンス強化を促し、法令違反を未然に防ぐ
ため、契約上の根拠がないのに、金型等の保管費用負担を要請
するなど、下請代金法、独占禁止法に抵触する恐れのある留意
すべき取引例を分かり易く提示するとともに、
② 鋳物の重量取引(※)など、技術の高度化など下請企業の努
力の成果が価格に反映されない取引慣行を、事例を交えて示し
ています。こうした慣行は、収益を向上させ、研究開発や設備
投資を促進していく意欲を削ぐものですので、改善していくべ
きものです。
③ また、技術的に高度な鋳物は上乗せ価格で取引するなど、親
事業者と下請事業者がパートナーとして取引を行うベストプ
ラクティス事例を紹介して、取引の改善の方向性を具体的に示
しています。
-3-
(※)キロあたり何百円という方式で取引されるため、研究開発をして軽量
化すると、逆に代金が減ってしまう。
素形材産業以外の業界でも、一部の業界ではガイドラインを策
定していると聞いていますが、この際、下請取引の適正化の観点
から、ガイドラインの見直しを行っていただき、より包括的なも
のにして頂きたい、まだ策定していないところは策定を進めてい
くことが重要です。経済産業省としては、業界・有識者等による
研究会を組成してガイドラインの策定に取り組んでいくつもり
です。産業界におかれましても、積極的に参加いただき、策定と
普及に努めていただきたいと思います。
<資料3ページに戻りますが、>
2.2点目としては、下請の適正な取引環境を整備するため、独占
禁止法及び下請代金支払遅延等防止法(いわゆる「下請代金法」
)
の法令遵守をお願いします。
下請代金法においては、親事業者に対して、注文書の交付義務
や下請代金の支払期日(納品から60日以内)を定める義務など
を定めています。昨年度(平成17年度)の改善指導措置では、
違反の疑いのある例として、代金の減額で275件、支払遅延で
250件の指導を行っております。公正取引委員会でも同じよう
な指導を行っております。
現場の責任者、経営者にまで、コンプライアンス意識が徹底し
ていないこと等により、これらが遵守されていないことが少なく
-4-
ありません。
※改善指導措置の内容(中小企業庁:17 年度)
代金減額(275 件)
、支払遅延(250 件)
、長期手形交付(56 件)
返品(54 件)
、受領拒否(42 件)
等
経済産業省としても、下請代金法の違反を未然に防ぐため、大
企業及び中小企業の双方に対して講習会・セミナー等を開催し、
下請代金法の周知徹底に努めているところです。加えて、下請事
業者が親事業者との関係で不公正な取引を強いられることのな
いよう、親事業者に対する調査や立ち入り検査、改善指導等を行
っています。
今後とも、公正取引委員会と連携をとりつつ、事業者の法令遵
守が図られるよう、厳正に対処していきます。
※運用状況(17 年度)
書面調査・申告等
立入検査等
中企庁
143,935
1,598
公取委
201,869
未公表
皆様方には、トップから現場レベルに至るまで独禁法及び下請
代金法の法令遵守意識が徹底するよう改めてお願い申し上げま
す。
3.3点目は、取引価格の決定における、下請事業者に対する十分
な配慮であります。
-5-
下請中小企業振興法(いわゆる「下請振興法」
)では、下請事
業者と親事業者の間における望ましい関係のあり方に関するガ
イドラインを示す「振興基準」を定めております。
「振興基準」においては、下請事業者と親事業者の取引対価の
決定方法について、
「取引数量、品質、材料費、労務費、市価の
動向等の要素を考慮した合理的な算定方式に基づき下請事業者
の適正な利益を含むよう、下請事業者及び親事業者が協議して決
定されるもの」と定められています。
しかしながら、例えば
・昨今のエネルギーや原材料価格の高騰の中で、親事業者にこれ
らの要素をほとんど考慮してもらえない
・見積で前提とした納品数が親事業者の都合で急に半分になって
も当初見積と同じ単価を要請される
等々、中小企業の切実な声を多く耳にします。
この振興基準を遵守して、下請事業者に対して十分な配慮を行
って両者が協議して取引価格を決定していただくよう、よろしく
お願いします。
4.4点目は、下請事業者の取引先拡大のための、売り手、買い手
のマッチング支援です。本年4月から、全国中小企業取引振興協
会においてインターネットを活用した取引マッチングシステム
を立ち上げる予定ですが、このシステムを有効に機能させていく
ために、発注企業としても積極的に参加していただくようお願い
-6-
いたします。
【最後に】
むろん、生産性の向上に向けては、中小企業の自らの努力が必
須であります。中小企業のIT化・機械化を通じた経営改善や、
中小サービス業、流通、建設業等の生産性向上に向けた取組、中
小企業の人材能力の向上など、中小企業サイドの構造面での課題
にも経済産業省として精一杯対応していきたいと考えておりま
す。
本日は、以上、下請取引の適正化・中小企業の生産性向上の件
について申し上げました。皆様方ご承知のとおり、底上げ戦略の
コンセプトでは、従業員一人一人の生産性・能力を発揮させてい
くことが重要です。
その際、皆様方におかれましても、非正規社員のスキルアップ
のための訓練、正規社員への登用、「短時間正社員」導入などに
取り組まれる企業が出てきていると承知いたしております。今後
ともこうした動きを促進して頂くことが、我が国経済の成長基盤
を強固なものとし、また、企業収益と家計消費との好循環を醸成
するものだと考えております。
こうした皆様方の取組と、中小企業の取組があいまって、国際
競争力の維持・強化が図られるものであります。皆様方におかれ
ましても、本日申し上げました諸点につきまして宜しくお願い申
し上げます。
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