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人工知能学会合同研究会 2012 に参加して
特集 学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 18 人工知能学会合同研究会 2012 に参加して 小 関 基 徳 Motonori KOSEKI 電子情報学専攻修士課程 2年 1.はじめに 図1 Flickr の写真登録数の変遷 私は,2012 年 11 月 15∼17 日に慶応義塾大学日 吉キャンパスで開催された人工知能学会 合同研究 ところで,抽出したホット撮影スポットには多数 会 2012 に参加した.私は,その研究会においてイ の写真が含まれる場合があり,より詳細に調べれば ンタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研 サブ撮影スポットが存在する可能性がある.しか 究会(SIG-AM)のセッションの中で「写真属性と し,ホット撮影スポットを観光スポットとして推薦 画像特徴を用いたホット撮影スポット・アノテーシ することを考えた場合,その地域と期間に含まれる ョン」というタイトルで口頭発表を行った. 写真群が混沌とした未整理状態であるとわかりにく いという問題がある.そこで,本研究ではホット撮 2.研究概要 2. 1 影スポットの写真群について,ホット撮影スポット 背景,目的 を説明するアノテーション付与法を提案する. 近年,Geo-tag(地理情報)を写真に付与できる デジカメやカメラ付き携帯端末が一般化し始めてい 2. 2 提案法 る.また,Flickr などの写真共有サイトがにぎわい 本研究では,ホット撮影スポットごとの写真群を を見せており,写真と共に Geo-tag を登録できる機 3 つの情報(Geo-tag,画像特徴,撮影時間)の組み 能を備えているため,Web 空間に共有化された, 合わせによる類似度に基づいてクラスタリングする 膨大な Geo-tag 付き写真データが蓄積され続けてい ことで,ホット撮影スポットを説明するアノテーシ る.図 1 に Flickr の写真登録数の変遷を示す.こ ョンを付与する方法を提案する. のことから観光や旅行支援への応用も期待できる新 しいアプローチとして,Geo-tag 付き写真群を用い 2. 3 アノテーション る研究が注目を浴びており,Crandall ら(2009)は Geo-tag による実距離の近さを用いれば同じよう 大量の Geo-tag 付き写真と,その画像特量を用いて な地域で撮影された写真を分類,画像特徴の近さを 空間的クラスタリングを行い,多くの人が訪れる人 用いれば同じような内容の写真を分類,撮影時間帯 気スポットやランドマークのある主要地域が得られ の近さ(撮影日は考慮しない)を用いれば朝や夜の 1) ることを示した . 撮影スポットが異なるクラスタとして分類できる. また,我々は Crandall ら(2009)の研究を踏ま これらの 3 つの指標の組み合わせに基づいて分類 え,写真に付随する Geo-tag と時間情報に着目し, を行った写真群が,うまく撮影スポットの特徴を表 他の地域と比較して普段とは逸脱して顕著に撮影数 しているならば,クラスタに付与されたラベルが, が増える,集合知的観点を背景とした格別な地域と 写真群を説明することから,本研究では,そのラベ 期間のペアをホット撮影スポットとして推薦できる ルをアノテーションとみなす. 2) 可能性を示した . ― 13 ― 2. 4 類似度 写真に付随する 3 つの情報(Geo-tag,画像特徴, 撮影時間)について写真間の類似度を算出する.こ こで,各類似度の値が 0∼1 内になるように正規化 を行う.類似度を組み合わせる場合はそれぞれの値 を同等に扱って統合する. 2. 5 クラスタリング ホット撮影スポットからクラスタを抽出する手法 として,クラスタ数を自動決定できる Newman ク ラスタリングを用いる.実験ではホット撮影スポッ ト内の写真をノードとし,異なる二つの写真間の類 似度を重みとするリンクを張り,重み付き写真ネッ 図 2 提案法のクラスタリング結果(京 都,平安神宮) トワークを構築して Newman クラスタリングを適 用する. かる.また,平安神宮はライトアップがあり,夜景 2. 6 の写真も数多く撮影される観光スポットであるが, 実験 実データを用いた実験を行い,結果を考察する. 2. 6. 1 実験データ 図 2[c]の結果では,ほぼ同じ撮影地域でも,昼 と夜の写真は良く分離されており,提案法はうまく 写真共有サイト Flickr から,日本列島が含まれ 分類され,何が撮影できるかが明瞭に理解しやすい る矩形領域に含まれる 2010 年 1 月 1 日から 2010 年 クラスタを形成していることがわかる.以上から, 12 月 31 日までの 1 年間の Geo-tag・撮影時間の付 提案法の有効性が伺える. 随する写真データを収集した.そのデータを用いて 抽出された 205 のホット撮影スポット,総写真数 3.発表について 学会発表は今回が初めてであったが,落ち着いて 10,185 枚を実験データセットとする. 2. 6. 2 ゆっくり話すことを意識して発表を行うことができ 実験結果 図 2 は,三つの情報を用いてクラスタリングした た.質問については,うまく返答できなかった部分 提案法の結果を抜粋した例であり,図 2[a]はホ もあったが,多くの貴重な意見を頂けたので,今後 ット撮影スポットの一つである京都,平安神宮周辺 の研究に活かしていきたいと考えている. の写真群をクラスタリングし,色分けした結果を, 写真の Geo-tag を用いて Google Map に配置したも 参考文献 のである.説明上,図 2[a]内の枠に囲まれた地 1)D. Crandall, L. Backstrom, D. Huttenlocher and J. Klein- 域,図 2[b]に注目する.図 2[c]はその範囲内 の 8 クラスタの写真を抜粋したものである.図 2 berg : Mapping the World’s Photos, WWW’09(2009) 2)熊野雅仁,小関基徳,小野景子,木村昌弘:地理お [c]より,ほぼ同じ撮影地域でも画像特徴の効果か ら異なる撮影対象が別のクラスタに分かれ,写真の 印象が近いものが同じクラスタに含まれる様子が分 ― 14 ― よび時間情報をもつ写真データに基づいたホット撮 影 ス ポ ッ ト の 抽 出 , 情 報 処 理 学 会 論 文 誌 , Vol. 5, No.3, pp.41−53(2012)