私の考える地域力創造のポイント

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私の考える地域力創造のポイント
「私の考える地域力創造のポイント」
総務省地域力創造アドバイザー、前自治財政局長、
元地域力創造審議官(初代)、内閣府地域活性化伝道師
椎川
忍
皆さんこんにちは。本日はお呼びいただきどうもありがとうございます。
私は奈良県が大好きでして、荒井知事さんも47人の知事さんの中でも好きな知事さん
の一人です。この間も東アジア政府会合に呼んでいただきまして、人材育成のコーディネ
ーターをさせていただきました。また今日も呼んでいただきまして本当にありがとうござ
います。
今日は時間が余りないので余分なお話はできませんが、最初に少しだけ自己紹介を兼ね
てお話をしたいと思います。私が全国各地いろんなところを回っているわけですが、今日
は富士北麓の国際コモンズ学会北富士大会というところから朝5時に起きてやってまいり
ました。そんなことをずっとやっているわけですけれども、いろんな地域を回って、いろ
んな人たちとお話をしたり、一緒に活動したり、幸せそうに暮らしている高齢者を見てき
たりして、人間というのはどうやったら幸せになれるのかとか、どうやったらいい地域が
つくれるのかということを考え続けてきました。2冊の本の中に私が経験したことが全て
書いてありますが、これを1時間半で話すのは大変難しいので、今日はごくポイント、エ
ッセンスをお話していきたいと思います。興味のある方は、ぜひ本を読んでいただきたい
と思います。
〈 地域力は、資源力と人間力 〉
当たり前ですが、地域には人と物しかありませんから、地域力というのは資源力と人間
力になるわけです。地域資源の中には天然、自然のものと、そこに長く人間が住んできて
いるわけで、場合によっては何万年と住んできているわけですから、そこには人間力の蓄
積である文化というものがあるわけです。この文化というのはカルチャーだけではなくて、
経済のシステムとかインフラとかそういうものも全て含まれるということです。
人間力というのは何か。現在の人間力というのは皆さん方の自治体に5万人の人がいれ
ば、5万人の人のやる気と能力を1人ずつかけ合わせて、それを足し上げたものです。で
すからやる気がマイナスの人が一番困るのです。やる気のない人、あるいはみんなと反対
を向いている人です。ですからできるだけ地域の中でみんなが力を合わせられるような土
壌をつくっていくという、そのつながり力が非常に大事だと考えています。
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地域資源は地域にあるものすべてといってもいいくらいたくさんあります。雪が降って
困るとか、雨が多くて困るとか、災害が多くて困るとか、津波が来るとか言っても、それ
も地域資源なのです。そういうものは裏腹なのです。三陸海岸もあれだけ豊かな海だった
ということは、裏腹として百年に一度の津波が来るし、千年に一度の津波も来るというこ
とです。そういうことなのです。ということは、日本全体がそういうことで、自然と共生
して生きてきた国なのです。自然の豊かさと裏腹に災害というものと抱き合わせに生きて
いかざるを得ない宿命を負っています。ですから、そういうものをどう活用するかという
のは、結局、人間の力になるわけです。これを科学技術の力で抑え込もうとするのは、無
理なのです。これは梅原猛さんの考え方と近いと思います。
人の力というのはトータルの地域の人たちの力ですから、先ほど言いましたΣになるん
だということ。つながり力というのは災害があって最近はよく言われるようになりました
けれども、地域内でつながるというのは絆の再生です。今は外に向かってつながる力も非
孤立 して 閉鎖的 な 社 会を 形 成しているわけではありません。また、
分 権 と ICT の時 代 ですから、外につながっていくネット ワ ー ク の力も非常に重要だというこ
常に重要です。地域も
とになります。
〈 地域力は大元にさかのぼって考える 〉
本には 絵 を 描 いていますけれども、こういう人間力と資源力、いろいろ分 解 していくと
こういうことで、これが 都市集 積になったり人 口集 積になったり経済力になって、それが
また2 次的 な地域力になり、 循環 して 発展 していくわけです。 我々 は今、 ゼロ から 始め て
いるのではなくて、この 途 中 段階 にある。これは上向いているらせんですからいいのです
が、 実 は 下 を向いているらせんになっているところは大変なのです。いずれにしても、地
域力を大 元 にさかの ぼ って考えないとだ め なんだということです。
要するにほかの地域がうまくいっているから、 例 えば、上 勝町 の 葉 っ ぱビ ジネスがうま
くいっているから、 我々 も 葉 っ ぱ をやろうという 発想 は全然だ め だということです。なぜ
上 勝町 で 葉 っ ぱビ ジネスのようなものが生まれたのかという大 元 を考えないといけないと
いうことです。
〈 上勝町の地域力とは 〉
ご 存じ の方がおいでになるかもしれませんけれども、上 勝町 というのはごみ 焼却 場を 持
っていません。ごみ 収集車 も1 台 もありません。住 民 みずからがごみ 収集 ステーシ ョ ンに
ごみを 持 ってきて、 34 分 別 をやります。お年 寄 りが 持 っていけないときは、みんなでコ ミ
ュニ ティの中で 助 け合いをして、 ボ ランティアも 出 かけていって、ごみを 持 っていってあ
げます。 実 はその日が 集落 の 語 り合いの日にもなっているわけです。
町 内に1カ 所 あるごみ 収集 ステーシ ョ ン、年 末 年 始 しか 休 みはありません。そこに 持 っ
ていって 34 分 別 します。そしてさらに非常 勤職員 と ボ ランティアでそれを分 別 します。 例
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ザ ルのかみそりを 捨 てるところがあるわけです。住 民 の人はその 程 度で ぽ
んと 捨 てます。これを 砕 いてかみそりと プ ラスチッ ク に分けるのは、非常 勤職員 と ボ ラン
ティアの人たちがやります。そして、ほとんどのものを資源化します。 業 者に 引 き 取 って
もらって資源化をします。ですからごみはものすごく少ない。コンポストの 普及率98% と
いうことで、生ごみはごみになりません。そういうことをやっていきますと、住 民 もごみ
を 出 さなくなるのです。1人1日1 キロ というのが日本の 平均 だそうですけれども、上 勝
町 では大体 400グ ラムしか 出 していません。しかも、 34分 別 して資源化するわけですから、
ごくわずかなものが 焼却 ごみとして 残 るのです。では、それをどうするのか。 昔 は 小 さな
小型 の 焼却炉 で 燃 やしてしたのですけれども、 ダ イ オキ シンの 規制 で 燃 やせなくなりまし
て、これは県外 業 者に 持 って 行 ってもらって、県外で 焼 いてもらっています。 運搬料 とい
うのはすごく高いものですけれども、それができるほどにごみを 減 らしているということ
えばディスポー
です。
3代 の 町 長が 集落 回りをやり、住 民 を 説 得してきた、そういう土壌の中
に 葉 っ ぱビ ジネスというものがあるんだということを理 解 しないと、ただ 葉 っ ぱビ ジネス
を 真似 してもだ め です。その地域の人間力や資源力は何なのかということを考えていく 必
要があります。東 京 も 江戸 時 代以 前はただの 野 原で 洪水 の多いところだったのです。人間
もまばらしかいなかったはずです。それがなぜ 世界 に 冠 たる大 都市 になったのか。いろん
な要 因 がありますね。 じゃ あ 沖縄 はどうなのか。地方 圏 で 唯 一人 口 が ふ えている 沖縄 県は
どうして人 口 が ふ えているのか。それを 単 に 観光 とか物 産 というのではなくて、もっと 深
く 掘 り 下 げて考える 必 要があると思います。
そういうことを
〈 全員参加で地域資源を総ざらえする 〉
同じ ようなことです。あの人たちも、20年近
く前には、もうどうにもならないと思ったのです。しかし、今では見事に人 口 が ふ えてき
ています。やねだんは地域の中にあるものだけを 有効 活用しながら全ての 社 会 問題 を 解決
しています。ですから、地域 づ くりをやるときに何をしたらいいかと言ったら、自分たち
の地域の資源と人間の力をもう一回 深 く 掘 り 下 げて、 総 ざらいしてみないといけないとい
うことです。これには ワ ー ク シ ョ ッ プ とか、私が本で紹介している 滋賀 県 立 大学の上 田洋
平君 がやっている ふ るさと 絵屏風づ くりとか、そういうことをやるのが 有効 です。これは
ワ ー ク シ ョ ッ プ の一 種 ですけれども、 楽 しくやれる。そういうことをやって、自分たちの
地域のことを 突 き 詰め ないと、単 に何かが 使 える、今ここにあるものが 使 えるではなくて、
将 来10年 後 にこれが 使 えるかもしれない。20年 後 に 価値 を生 む かもしれない。今、 朽 ち 果
ててきたけれども、時 代 が変われば 使 えるようになるかもしれない。 価値 が 復 活するかも
これからやねだんの話もしますけれども、
しれないということをやっていくということです。
員参加 の地域 づ くりは 子供 さんから高齢者まで全て 参加 していないとできません。地
域を 売 るということ、地域の物 産 を 買 ってもらうということ、地域に興味を 持 って人が来
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全
消費 者がいるわけですから、いろんな年
齢 層 、いろんな 職業 の人たちが 参加 しないとだ め なんです。 企業 経 営 と地域経 営 は 通 ずる
ものがある。 例 えばランチ ェ スター 戦略 です。結局、人材を育成しないと何もできない。
地域に人材が育っていないときはとりあえず レ ンタルでもいいのです。
てくれるということを考えるときには、いろんな
〈 ICTを使わない地域おこしには限界がある
ICTを使わない地域おこしには限界がある 〉
ICTを 使 わない地域おこしには 限界 があります。葉 っ ぱビ ジネスもそうですけれども、お
ばあち ゃ んがタ ブレ ットを ぶ ら 下 げて裏 山 に 行 って、き ょ うは 柿 の 葉 が高いから、 柿 の 葉
を 出 そうかなとかやっているわけです。 同じ葉 っ ぱビ ジネスをしても、 80歳 のおばあち ゃ
んが ICT を 使 えるからできるわけです。今は 横 のネット ワ ー ク の時 代 、地方分 権 の時 代 です
から、 ICT を 使 わない地域おこしには 限界 があるということです。ですから高齢者にも ICT
のやさしい 機 能というのはきちんと 覚 えてもらう 必 要がある。
〈 歴史に学び人材育成と自立心の回復を 〉
一番大事なことは、 歴史 に学 ぶ ということです。要 点 だけもう一回言いますと、人の 真
似 をしていてもだ め だということです。そのた め には、地域資源と人間力を 総 ざらいしな
いとだ め です。結局、地域経 営 は 企業 経 営 と 同じ です。だから、人材育成が大事です。 歴
史 に学んで 昔 の 江戸 時 代 の 藩 というものを思い起こせば、どんなに 貧 しい 藩 でも 藩校 をつ
くって人材育成をし、今、皆さんの地域で 特産 物と言われるものは、たいてい 江戸 時 代 に
つくられているということです。きちんとそういうものを見 出 していく。自 立心 を 取 り 戻
すことも大 切 ですね。江戸 時 代 というのは中 央 政府は地方からお 金 を 取 り上げるだけです。
お 金 は1 銭 もくれません。お 金 を 使 わせるだけです。 参勤交代 もそう、 江戸 に来て 城普請
をやれとかいろいろ言われる。でも、その時 代 の地方の人たちの自 立心 はすごいではない
ですか。 江戸 時 代 に 戻 れとは言いません。 江戸 時 代 に 戻 れとは言わないけれども、この時
代 の自 立心 だけは 取 り 戻 してもらいたい。そうしないといくら 補助金 を 出 しても、いい 制
度をつくっても、地域は活 性 化しません。
〈 大切なのは内発的発展 〉
地域活 性 化のた め には内 発的発展論 というのが 基礎 にならなければいけない。これは 明
治 維新以 来、 脱亜入欧 と内 発的発展 という2大 潮流 があったわけですが、どんどん 脱亜入
欧路線 が 強 くなって、内 発的発展路線 というのは 弱 くなっているわけです。
内 発的発展論 というのは、 簡単 に言うと、日本には日本の、アジアにはアジアの 発展 方
策 があるはずだということです。しかし、これは私の 解釈 ですけれども、長年の 鎖 国 後 の
明 治 維新 、 第二次世界 大 戦 の 敗戦 で、日本は 西欧 に 追 いつくことに重 点 を 置 かざるを得な
かった。だから、内 発的発展論 というのは常に 陰 に 押 しやられてきた。そのことが今の日
本の地域 社 会あるいは 社 会の 病弊 を生んでいるのではないかと考えています。
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〈 ハイブリットな国家社会構造を 〉
グロ ー バリゼ ーシ ョ ンの中で 勝 ち 抜 かなければいけないという経済 至 上 主義 が 圧倒的 に
強 い現 状 を私は 憂 えています。かつて 我 が国は ハ イ ブリ ッ ド な国 家社 会 構造 を 持 っていた
し、これからもそうあるべきです。 我々 は先 進 国の中では 圧倒的 な少 数民族 です。先 進 国
の中ではまれな 稲作 と 漁労 で国を成り 立 たせてきて、国土を 守 ってきた少 数民族 です。だ
から、 独 自の 伝統 文化があります。そういうものを大 切 にすれば 観光面 でも、 産業面 でも
十 分な 可 能 性 があります。今は外国人のほうがこういうことを知っているわけです。日本
の 若 い人がどんどんこういうことを 忘 れようとしている。ですから、全 部 そうなれという
わけではないのですが、こういうものをきちんと 守 りながら ハ イ ブリ ッ ド な国 家社 会 構造
という 基礎 を 守 った上で グロ ー バリゼ ーシ ョ ンの中で 勝 ち 抜 く国をつくるというのが、も
ともと 安倍 さんの 発想 だったと思います。 美 しい国というのはそういうことだったはずで
す。
議論 していると 効率 化一本 槍 、 グロ ー バリゼ ーシ ョ ンの中
で 勝 つということが一番大事だという ふ うに 聞 こえてきてしまうのです。これをやれば要
するに高度経済 期 の 過疎過密 の 問題 、それから、日 米 経済 構造協議 で地方の中 心市街 地が
疲弊 した大 規模店舗 の 問題 などが再び起きるでし ょ う。いろいろ 過去 のことを学んでみれ
ば、それだけをやっていけば地方が 疲弊 することが 明 らかです。だからそれをやるときに
は地方というものをまず 守 るという、これを 守 った上で グロ ー バリゼ ーシ ョ ンの中で 闘 っ
ていくという 順 番を間 違 ってはいけないと思うのです。 順 番を間 違 えますと、また 同じ過
ちを日本は 繰 り 返 して、大変な 社 会 問題 が起きることになると思います。
サ ッカーに 例 えていえば、ディフ ェ ンスというものをしっかりやって、 点 を 取 りにいか
ないと ぼ ろ負けするわけです。日本の国のあり方もこれと 同じ ことです。ディフ ェ ンスを
しっかりやった上で 攻め に 出 ていかないと、ひどいことになる気がします。
ところが、どうしても経済を
〈 ネオ内発的発展へ 〉
今、 我々 はネ オ 内 発的発展論 ということを 主張 しています。これは、内 発的発展論 を 基
礎 にしながら、外 部 の人材とか ノウハウ とか資本を内にあるものと結びつけることが 簡単
にできる時 代 になったので、これを活用しまし ょ うということです。ICT と地方分 権 の時 代
ですからそういうことが 可 能になりました。これを 唱 えているのは 明 治大学の 小田切徳美
先生で、 小田切 先生が一 昨 年、イ ギリ スの ニュ ーカッスル大学に 研究留 学したところ、イ
ギリ スではこれが 既 にできているということがわかったそうです。 都 会で成 功 した人はみ
んな ふ るさとに 帰 って事をおこす。 企業 を起こしたり何か 業 を 始め る。したがって、こう
いうことが自然にできるわけです。 偉 い人が ふ るさと、 田舎 に 帰 ってきて、何かをやりだ
せば人 脈 もあるし、 ノウハウ も 持 っているし、お 金 も 持 っているのでネ オ 内 発的発展 にな
るわけです。そういうことがイ ギリ スでは国 民意識 として 定着 している。日本は 残念 なが
らそこまでまだいっていない。しかし、そういうムー ブメ ントは起きつつある、理 解 され
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我 が国では政 策的 な 後押 しが 必 要だということで、地域おこし 協
力 隊 、 集落支援員 あるいはア ドバ イ ザ ー 制 度などいろいろやってきました。
つつある。したがって、
〈 ネオ内発的発展=「緑の分権改革」=地域経済循環創造事業 〉
我々 がやってきた 「緑 の分 権改革」 は 民主党 時 代 の 名称 ですけれども、結局はネ オ 内 発
的発展論 だということです。自 公 政 権 になってこれをや め てしまったのかというと、や め
られるわけがありません。地方の 発展 方 策 は、 基 本 的 にこれしかないのです。 明 治時 代 か
ら言われていることです。そして今、ICT と地方分 権 でさらにこれを外と結びつけてやるこ
とができるようになった。地域の 発展 の 基盤 というのはこれしかないのだから、自 公 政 権
になってもや め られるわけはないので、 名 前は変わったけれども、 補正予算 で2 5億円 の 予
算 が 計 上されています。地域経済 循環創造 事 業 です。こちらのほうがわかりやすい人もい
るかもしれませんね。地域の経済をもう一度中で回るようにやっていきまし ょ う。その 手
助 けを 交付金 でやりますよということで25億円 の 予算 をつけているわけです。
だから考え方は全く一緒です。 名 前のつけ方が 民主党 の場合は 斬新 な、 奇 をてらったよ
うなつけ方になっているだけです。言 葉 は変わっても政 策 理 念 は変わらない。これだけで
は日本全体は 発展 できませんけれども、 ハ イ ブリ ッ ド な国 家社 会 構造 にしていくべきだと
いうことです。 歴史 に学 ぶ ということでもあります。
一番大事なことは、私たちは原 発 事 故 や大災害が起きる前に本当はこういうことに気が
つくべきだったということです。
ハ イ ブリ ッ ド な国 家社 会 構造 の 構築 を 目指 すというのが、 「緑 の分 権改革」 の 根
本思 想 です。これは 別 に原 口 さんが言ったわけではありませんけれども、 有識 者会 議 を 組
織 して大 森弥 先生ですとか 小田切徳美 先生、 宮口伺廸 先生も 入 っていたかもしれません。
安田喜憲 先生とか 月尾嘉男 先生とか、いろんな人に 議論 してもらった結 果 、結局は先ほど
言いました内 発的発展 というものをもう一度少し 取 り 戻 そうということになったわけです。
超 近 代主義 と 脱 近 代主義 の バ ランス、原 発 と再生 可 能エネル ギ ーの バ ランスなども重要な
結局、
ことです。
〈 トリクルダウンとファウンテンモデル 〉
ト リク ル ダウ ンというのはア メリ カの 新 自 由主義 の考え方で、大きな 企業 が 発展 すれば
奈良県の人たちもみんな幸せになれるはずだ。経済はつながっているのだから、何がしか
の
恩恵 はあるという考え方です。東 京 が 発展 すれば奈良も 発展 するだろうという考え方で
す。
ところが、それだけでは難しいのではないか。やはり地域にあるものを生かして、いろ
々浦々 から富が 湧 き上がるような 構造 にしていくべきではないかというのがフ ァウ
ンテンモデルです。これはどちらかが1 00%正 しいということではないのです。私はト リク
ル ダウ ンが大体 8割ぐ らいでいいと思っています。でも、今、日本を見るとト リク ル ダウ
6
んな津
00% でいこうとしている人たちが結 構 多いと思う。だからフ ァウ ンテンモデル20% を 取
り 戻 しまし ょ うよということを 申 し上げている。お 金 の 価値 に 換算 して何でも 市 場で 取引
できるというのは、すばらしいシステムですが、日本には 昔 からあった。人のつながりと
か 信頼関係 で物事を 解決 していきまし ょ うということもなければ困ります。もし、ト リク
ル ダウ ン1 00% になるとしたら、お 金 さえあれば何でもできるという 世 の中になるのです。
お 金 の 価値 に 換算 して 市 場で 取引 が何でもできるということはすばらしいシステムですが、
それが全てだと思ったら大間 違 いになる。 グロ ー バ ルな経済 競争 も大事だけれども、日本
は先ほど言いました先 進 国では少 数民族 なのですから、日本にしかないいいところがたく
さんあるので、これを大事にしたい。そうすれば グロ ー バ ルな経済 競争 の中でも 売 れるも
のがたくさんある。 観光客 も 増 えるということなのです。
きのうも富士 山 の ふ もとでコモンズ 世界 大会の バ ン ケ ット パ ーティーをやっていました
ら、外国の人たちが 樽酒 を結 構楽 しそうに 飲 んでいるのです。 山梨 県の人が来て 輸出 用の
ワ インですとか、いい ワ インをいっ ぱ い 並 べて 試飲 させているわけですけれども、外国の
人たちは 樽酒 を 升 で 飲 んでいるわけです。そういう時 代 になっているのです。
ン1
〈 日本酒の海外輸出プロジェクト 〉
私は 実 は日本 酒 の海外 輸出プロ ジ ェク トにもかかわらせていただいているのですけれど
も、 民主党 政 権 の時 代 にこれが国 家プロ ジ ェク トになりました。 國酒プロ ジ ェク トです。
奈良県は日本 酒醸造 の 発祥 の地です。そして、日本 酒 の 醸造 技術ほどすばらしい技術は 世
界 にないのです。だから 杜氏 さんという人たちがいたり、 水 と 米 の ハ ーモ ニ ーでその土地
独特 のお 酒 の味ができてきたりするわけです。今はとてもいいお 酒 ができるので、これを
ワ インの 流通 ルートに 乗 せようということをずっとやってまいりました。
ロ ン ド ンの IWCというコン ペ で日本 酒部門 をつくりまして、6 年 目 に 入 っています。ここ
での 「 チャン ピオ ン サケ」 というのは1本しか 出 ないのです。日本の 新酒鑑評 会のように
金賞 がたくさん 出 るというわけではなくて、1本しか 出 ない。 部門別 に本 醸造 、 純米 、 吟
醸 、大 吟醸 、 古酒 、この5 部門 で、まず1本ずつト ロ フィー 酒 が 出 ます。これは 6月 に 決
まる。ことしももうす ぐ ですね。そしてこの中から 「 チャン ピオ ン サケ」 が1本だけ 決 ま
るのです。
効果 と地域活 性 化の 効果 をもたらしています。 佐賀 県に 鍋島 というお
酒 があるのですが、一 昨 年、大 吟醸鍋島 が 「 チャン ピオ ン サケ」 になりました。 鍋島 のあ
る 鹿島 地 区 には 6社ぐ らい 酒蔵 があるのですけれども、 蔵開 きのイ ベ ントに今までは ぽ つ
ぽ つしか人が来ませんでした。 毎 年、 3月末 にやっていたのですが、その年は土日に 3 万
人のお 客 さんが来まして、 6 つの 酒蔵 の 酒 が全 部売 り 切 れてしまうという大変なことにな
これはすごい経済
りました。
去 年は私の地 元 の 秋田 の 湯沢 ですけれども、 福小町 というお 酒 が 「 チャン ピオ ン サケ」
になりまして、もうどこを 探 しても一 切 ありません。 秋田 は 酒 どころですからもう少しこ
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残念 ながら 佐賀 のようには活用できてい
ません。 観光庁 もそういうことに非常に力を 入 れていただいています。あるものを高く 売
る。すばらしい技術を、それから、その 独特 のストー リ ーを 売 るわけです。これはア ニミ
ズムという 我々 日本人の 根 本と結びついたものではないですか。ですから、 我々 が外国の
宗教 を理 解 するのと 同じ ように、海外の人たちは日本 酒 というものがどういうものである
かに非常に興味を 持 って 勉強 しているわけです。そして、こんな 素晴 らしい 醸造 技術、そ
しておいしくて 健康的 な日本 食 も今、 注目 をされていますし、それに合う日本 酒 が 売 れな
いはずがないわけです。日本 酒 の 流通 ルートを 世界 中に 新 たにつくるのは大変なことです
けれども、ワ インの 流通 ルートに 乗 せるのは 案 外 簡単 なことで、1本 5,000円 の大 吟醸酒 が
カジ ノ とかそういうところでは今、1 0 万 円 という高 値 で 売 れています。そういうことにな
れを活用したほうがいいと思うのですけれども、
ってくるのです。
〈 地域にあるものを生かし、ハイブリットな複線構造に 〉
これは1つのいい 例 で、本にも紹介しておきましたけれども、皆さんの地域にもそうい
うものがあるはずです。でも、自分たちがそれを 価値 のないものと考えてしまったり、自
分たちのライフスタイルがそういうものをだ め にしてきていることがたくさんあるわけで
す。というのは、みんな 都 会のように生活しなければいけない。 都 会の暮らし ぶ りがいい
ものだということでずっと 単線 化 路線 で日本はやってきていますから、お 子 さんたちにも
「 お前たちはこんなところに 残 っていないで、 都 会に 行 っていい会 社 に 勤め て高い 給料 を
もらっていい生活をすればいい。 」 などと言い続けてきたのではないか。大学を 卒業 させ
て、大会 社 に 入 れるようにきちんと 教 育するということを 単線 化でやってきているのです。
だから 単線 化 路線 をもう一回 ハ イ ブリ ッ ド な 複線 化 路線 に 戻 していかないといけないと私
は思っています。
8割 、2 割 の 関係 で ハ イ ブリ ッ ド な 構造 をもう一回 取 り 戻 しまし ょ う。 昔 の日本はそう
だったんですよ。当然、中国から、大陸のいろんなところから 伝 わってきたものがたくさ
んあります。 仏教 がその 代表例 です。 仏教 が 伝 わってくる前から日本にはア ニミ ズムとい
うものがありました。ですから 昔 の 我々 の 祖 先は 仏教 とア ニミ ズムを見事に 融 合させまし
た。それが、 神仏混淆(神仏習 合 ) であり、 山岳密教 であり、今も 修 験だとかそういうも
のとも結びついて 残 っているわけです。
皆さん 仏教徒 の方が多いと思いますけれども、本当の 仏教徒 であれば、要するに中国か
ら 伝 わってきた 仏教 であれば、お 酒 を 飲 んではいけないわけですから、こんなに日本人が
酒飲 みなわけはないのです。先ほどから 申 し上げているように、お 酒 の 醸造 というのは 神
道 、 神道 と言うと 誤解 があるかもしれませんけれども、ア ニミ ズムとの結びつきにおいて
日本にあるわけですから、日本は 仏教 を 取 り 入 れたときにお 酒 を 飲 んではいけないという
仏教 の 戒律 をほとんど 捨 てているわけです。これは 神道 の 影響 だと思います。要するに 神
様 に 感謝 して、自然の 恵 みに 感謝 して、お 酒 を 醸 して一緒に 飲 まなければいけないという
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ニミ ズムの考え方ですから、 む しろそちらのほうが 強 かったわけです。そういうこ
とで、日本人は 仏教徒 でありながら 酒飲 みの人が多いわけです。ですからこのように ハ イ
ブリ ッ ド な 構造 を見事につくり上げてきていたわけです。
その 後 、 廃仏毀釈 とかいろんな 不 幸なこともありまして ぐ ち ゃぐ ち ゃ になりましたが、
大 昔 に 立 ち 返 って 歴史 を 勉強 すると、そういうことがわかってくる。日本はもともとそう
いう国でした。ですからそれを 取 り 戻 しまし ょ う。1 00% ではだ め だということを言いたい
わけですね。 「緑 の分 権改革」 というのは、いろいろ 突 き 詰め て考えるとこういうことを
目指 している政 策 ではないかと思います。そんなことをいろいろ本に書いています。再び
自 公 政 権 になりましたが、 平 成2 4 年度 補正予算 では、 同趣旨 の事 業 として地域経済 循環創
造 事 業 25億円 が 計 上されていることは先ほど 申 し上げました。
のがア
〈 法律改正により社会システムを変革する 〉
単線 化 路線 は人、物、資 金 を全て大 企業 、大 都市 に 集め て 効率的 に生 産 をして、 グロ ー
バリゼ ーシ ョ ンの中で 勝 ち 抜 くことだけが 目標 だと考えるということです。 我々 は 鎖 国で
おくれてしまった。せっかく 立 て 直 したのに 第二次世界 大 戦 で 完 全に 敗 れた。もう一回、
世界第 2 位 の経済大国になろうということで経済中 心 、 単線 化 路線 でこればかりやってき
た結 果 、地域はどうなりましたか。過疎過密 の 問題 が起きて地方は 疲弊 したわけでし ょ う。
農業 の 衰退 の 問題 もこういうことに起 因 しているかもしれません。今こそ20% を 取 り 戻 し
まし ょ うということです。これは 江戸 時 代 を考えればわかります。全 部江戸 時 代 に 戻 るべ
きではありませんが、2 0%ぐ らいこういうものをち ゃ んと 維持 する 必 要があります。地 産
地 消 であったり、地域 通貨 であったり、あるいは再生 可 能エネル ギ ーによるエネル ギ ーの
自 給 であったり、 酒蔵 をつ ぶ さないようにしまし ょ う、中 心市街 地を 守 りまし ょ う、 古民
家 を 使 って何か 観光 をやりまし ょ うということです。全てそういうことですね。この 構造
を2 割ぐ らい何とか 残 していくように 努 力をしまし ょ うということです。そのときにどん
な 課題 があるかを地方から 提 起してもらって、それを 法律改正 により 解決 していく。再生
可 能エネル ギ ーはできてしまったのですが、 特 に1 次産業系 ではまだやらなければならな
いことがたくさんありますね。
〈 再生可能エネルギーの利用 〉
森林 の再生も 実 は 簡単 にできるのです。 危機感 が足りなくて 法律 ができないだけで、 法
律 が 弱 いだけです。再生 可 能エネル ギ ーはさすがに原 発 事 故 が起きたので、ある 意 味こん
なひどい 法律 をつくってしまったわけです。要するに大 電 力会 社 に 買 い 取 り 義務 を 課 して
いるわけです。私ももう 屋根 につけました。1 kwh 当たり 4 2 円 で 買 ってくれるのですから、
誰 でもつけますね。皆さんは1 kWh幾 らで 電 気を 買 っていますか。大体20円ぐ らい、もっと
安 いかもしれない。ところが自分が 電 気をつくったら 42円 で 買 ってくれるわけです。 家庭
の場合は 残念 ながら全 量買 い 取 りではなくて余 剰買 い 取 りなのですけれども、でもこんな
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季節 になりますと、東 電 から結 構 な 売電収入 が 入 ってきます。 電 気 代 は半分
ぐ らいになりました。でもこれは 投 資も結 構 大きいですから、 償却 には10年 ぐ らいかかり
ます。ですからもう少し 早 くやればよかったなと思います。 還暦 になってからやっても1 0
年たったら 子供 のた め にやっているようなものだという 感じ がしますけれども、原 発 を 減
らしていくという 意 味でも大 切 なことですし、これは地方政 策 としてもすごく大事なこと
に天気がいい
です。
過疎 地は今まで 電 気を 買 うしかなかった。少ない現 金収入 の中から 電 気を 買 うた め にお
金 を 払 う。それがみんなで共 同 して 発電所 をつくれば一 旦 、全 量 を1kwh当たり 42円 で 買 っ
てくれるわけですね。今年は少し 買取価格 が 下 がると言われていますけれども、 去 年つく
ったものは 4 2 円 で1 0 年間は 買取保障 ですから、 利益 が 確保 されます。要するに大 電 力会 社
から言わせれば、こんなひどい 法律 ないではないかということです。電 力会 社 は、何で 我々
にそんな高い 電 気を無理やり 買 わせるんだ。一番 安 くて 効率的 で 環境破壊 がないのは原 発
だと言っていたわけです。ですから、国会に 法律 を 出 してもしばらくたなざらしで、 審議
もされなかった。しかし、東日本大 震 災が起きて、原 発 事 故 が起きた 途端 に 与野党協議 が
進 み、さっさと成 立 しました。そして、 去 年の7 月 から 施行 されています。
〈 森林の再生 〉
こんな 法律 ができるなら 山 の 問題 はできますね。 公 共 建築 物 等木 材 利 用 促進法 というも
のが一 昨 年できています。これも中 身 はなかなかいい 法律 です。しかし、義務づ けがない。
努 力 義務 だけなのです。私は 民 間 企業 に 義務づ けるのは 激 し 過ぎ るというか、でもこの再
生 可 能エネル ギ ーのことを考えればその ぐ らいのことはできないことはないと思いますけ
れども、国、地方 公 共 団 体 ぐ らいは 公 共 施設 をつくるときは 3 分の1 ぐ らい 木 材を 使 いな
さいと 義務づ けすれば、 山 は 相 当再生します。 努 力 義務 にしているからだ め なので、 危機
感 があって本気にさえなればできます。それを国 民 合 意 にして、国会で 法律 を 通 すのがい
かに難しいことかということです。こういうことをみんなに知ってもらって、できるだけ
さまざまな
法律 を 改正 していく、 社 会システムを少し見 直 していく、 修正 していくことが
必 要なわけです。
〈 地域通貨、地域ファンド 〉
大事なのは地域フ ァ ン ド 、地域 通貨 です。地域 通貨 は結 構 あちこちやっていますけれど
も、 プレミ アムつき 商品券 のことではありません。地域 通貨 というのは ぐ る ぐ る地域の中
で何度も回るものでないと 意 味がないわけです。地域フ ァ ン ド はまだまだあまりできてい
ません。でも、今の 金融 システムだけではだ め だということは、いろんな人が言っていま
す。
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〈 高等教育のあり方 〉
最 後 は高 等教 育システム。これを 直 さない 限 り日本の地域から 若 者が 抜 け 出 ていって、
戻 ってこないという現 象 が続くと思います。これを20% でいいから 昔 の 藩校 のシステムみ
たいなものをつくりたい。2 0% は地域 定着枠 で奈良県 立 大学でもいいし、奈良 女子 大でも
いいし、地域の大学に 入 学した人が成 績優秀 ならば、北海 道 でも東 京 でも 沖縄 の大学でも
卒業 できるというシステムをつくるべきです。技術 的 にも 可 能です。これを2 割ぐ らい 導
入 しないと最 終的 になかなか地域の 疲弊 の 問題 は 解決 しないと思います。そういうことを
国 民 みんながなぜわからないのだろうということです。地方自治体の 首 長さんも 残念 なが
らあまり 主張 されない。
考え方は全 部同じ なのです。東日本大 震 災原 発 事 故 があったから再生 可 能エネル ギ ーと
いうだけではなくて、全てのことに気がつかないといけないということを言って回ってい
解 してもらえないですね。原 発 事 故 が起きたからこれに気
がついたのでも本当はおそかった。 ド イ ツ とか ベ ル ギ ーはとっくに気がついていたわけで
す。だからできればこれを 契機 に全ての 問題 について、 ハ イ ブリ ッ ド な国 家・社 会 構造 に
していけるように、みんなで考えていきまし ょ うということです。
るわけです。ただ、なかなか理
〈 文明の転換点に生きている私たち 〉
「緑 の分 権改革」 がどうして 必 要なのかということですが、それは今が文 明 の 転換点 だ
からです。今の文 明 はこのまま続かないでし ょ う。皆さん何となく ぼ んやりはわかってお
られると思います。文 明 というのは 廃 れては生まれ、生まれては 廃 れてきたわけで、 同じ
文 明 がずっと何 億 年も続いているわけではないのです。今、 我々 は 石器 時 代 にも生きてい
ない。 縄 文時 代 にも生きていない。 江戸 時 代 にも生きていない。だから文 明 というのは常
に変わっていくものです。今の文 明 もこのまま続けられないからどこかで変わります。も
う 既 に 転換 しつつあるというのが 世界 中の 有識 者の 意 見だと思います。気がつき 始め た人
もたくさんいます。 次 の文 明 はどんな文 明 かというと、 過去 に学びながら サ ステナ ブ ルな
社 会 構造 を め ざすということだと思います。そういう 風 に今 後 の文 明 を 予測 して、それを
先 取 りして対 応 していくことが国 づ くり、地域 づ くりの 根 本思 想 にならなければいけない
と思っています。
〈 公務員参加型地域おこしのススメ 〉
誰 が一番大事かと
いうと、中 心 は 公務員 だということです。 役 場の 管 理、 運営 を 行 ったり、 制 度を 運 用して
いるだけでは、地域は 元 気になりません。先ほどの 「緑 の分 権改革」 のようなことをやら
ないとだ め だということですから、自分たちも ぞ うきんがけでもいいし、 リ ー ダ ーでもい
いから一緒になって地域活動、 社 会 貢献 活動をやりまし ょ う。 田舎 のお じ いさん、おばあ
さんに住 民協働 とか 新 しい 公 共と言っても理 解 してもらえません。 新 しい 公 共というのは
そして、こういうことをわかって地域をつくっていくことになれば、
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懐 かしい 公 共というものがない 都 会の言 葉 です。コ ミュニ ティがない、あるいは
なくなったところに 新 しい 公 共をつくりまし ょ うと言っているわけで、内 閣 府も言ってい
ますけれども、む しろ 懐 かしい 公 共と言ったほうがわかりやすい地域だってあるわけです。
実践 活動が大事だということです。
1 00 の理 屈 をこねても 世 の中はよくならないというのが私の 持論 です。実践 をすることこ
そ 尊 いわけです。私もこういうことをずっとやっているわけですけれども、やはり 実践 と
いうものがなければいけない。日本の 武 士 道 の 精神 もそうだったではないですか。 善悪 と
いうことがわかるとか、理 屈 がわかることが 世 の中を動かすわけではないのです。わかっ
たらいいことはす ぐ に 実践 することが 世 の中を前に 進め るのです。それが日本の 武 士 道 の
精神 でもあるわけです。そういう 運 動を私はしてきました。
地域に 飛 び 出 す 公務員 ネット ワ ー ク は 誰 でも 入 れます。今、全国で2 , 2 00 人 以 上 入 ってく
れています。これを4年 以 上前につくりましたけれども、それから2年たって 応援 してく
れる 首 長 連 合をつくりました。そういう活動をち ゃ んと 応援 してくれる人たちを 増 やし、
組織 や地域の全体をそういうムー ド にしようということです。自分ができなくても 応援 し
てあげる、ほ め てあげることをち ゃ んと 組織 や地域でやっていきまし ょ う。
1 月末 に 毎 年 首 長 連 合 サミ ットをやっています。 松山 でやったときに12 名 、 実 際に 首 長
さんが 出 てこられました。ことしは 福島 県 伊達市 でやりましたけれども、このときも11 名
出 てこられました。何でこんな 忙 しい時 期 に 首 長さん自 身 が 出 てくるんだということを考
えていただきたい。 目 の前の 予算 をどうするとか、政 策 をどうするというのも大事なこと
です。しかし、この人たちは何を 感じ ているのでし ょ うか。 組織 の体 質 を変えること、体
質改善 こそが本当はもっと大事なんだということをわかっているから 出 てくるわけです。
それをみんなで 議論 しているわけです。
もともと
〈 地域に飛び出す公務員ハンドブック 〉
「緑 の分 権改革」 と重なる 部 分もあるの
ですけれども、これは大 森 先生が 帯 を書いてくれまして、全国の自治体 職員 に 放 つ 「横議
横行」 の 勧め と書いてくれたのです。大 森 先生の 講演 をお 聞 きになったことがある方はご
存じ でし ょ うけれども、大 森 先生は日本の 漢字 の 熟語 で 「横」 がつく言 葉 にいい言 葉 はほ
とんどない。 横柄 とか 横 やりを 入 れるとか 横領 とか 横流 しとか 横恋慕 とか、とにかく 横 は
よくない。なぜかというと、 縦 で 統率 したからだ。これは 集権 時 代 の 発想 で、今は分 権 時
代 ですから 横 が大事になってきたということを大 森 先生が言っているわけです。 横議横行
は 昔 は 悪 い言 葉 だったのです。今は大 森 先生が 勧め ているわけです。そうして地域人 へ の
連帯 の呼びかけと書いてくれている。これは 片山 先生の書いてくれた 帯 です。 総務 大 臣 も
やりました。 鳥取 県知事もやりましたが、自分も自治会で会 計係 をやっていましたと 総務
省 の 職員 に言っていました。年 頭 のあいさつをするときに、自分も自治会で会 計係 をやっ
ていました。 君 たちも何かやってくださいと。これは プ ラス ワ ン 運 動というのを 佐賀 県が
そういう活動をもとに私は本を書いています。
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似 た 様 なことです。そういうことでこう書いてくれました。
序章 として 公務員十戒 というものを 昔 から書いているのですが、まと め て本に書きまし
た。これは当たり前のことで、試 験に 出 したら 誰 でも1 00点 をとります。先ほど言ったよう
に、これはどれだけ自分が 毎 日 実践 できているかが大事なのであって、 頭 でわかっている
こととやれることは 違 います。これを 貼 ってくれている人はたくさんいまして、 島根 県の
雲南市役所 は 市役所 の 目立 つところに 貼 っています。長 崎市 の住 民協働 センターなど、住
民協働 センターのような 組織 を 持 っているところは、結 構 これを大きく 印刷 して 貼 ってく
れています。自 戒 の 意 味ですね。私はそういったことを 踏 まえて、 付録 に 工夫 してこうい
やっているのですけれども、
うものをつけることにしました。
公務員参加型 地域おこしというのが私のもう一つのタイトルですから、どうやったらい
いかということをいろいろ書いています。
飛 び 出 すときにいろいろ 作法 というものがあって、その 作法 を 身 に 着 けるという
ことが 必 要ですね。 過疎 地で 有名 な高知県の大豊 町 の 役 場の分 散機 能というのも紹介をさ
地域に
せていただいております。
今、地域活動をしている
公務員 の皆さんが 横 に 連携 する 組織 はたくさんできていまして、
私が知っているだけでもこれだけあるわけです。すばらしい活動を皆さんやっています。
救 う ふ れあい 囲碁 については 触 れる時間がありませ
んでしたけれども、東近 江 の自治の 精神 に 基づ く 魅 知 普請 の 創寄 り、半 田市 の 戸枝 さんの
障 害者の ノ ーマライ ゼ ーシ ョ ン、上 勝町 の話など、いろいろ紹介しています。
地域資源の話は大分しましたから、 省略 します。ここに国 宝十 一 面観音 とありますが、
奈良県が好きな理 由 の1つはこれです。日本に国 宝 の 十 一 面観音 は7体ありますが、 法隆
寺 の 九面観音 を 入 れると 8 体と言われています。奈良県には 3 つあります。全体を 8 体で
勘定 すれば4体あるわけですね。日本で一番多いのです。国 宝 の 十 一 面観音 が 3 体ある県
絆の話は先ほどやねだんの話、命を
というのは奈良県だけです。
部拝観 しました。 御開帳 が 6 年に1度とか 毎月 何日とかいろいろばらばらなので
すが、 聖林寺 は 宝 物 庫 に 行 けばいつでも見せていただけます。 法華寺 はたしか年に 3 回ほ
ど 御開帳 になると思います。国 宝 の 神社 、 社殿 が国 宝 というのは 出雲 大 社 だとか、ことし
改修 しているところでは 宇佐神宮 だとかいろいろありますが、国 宝 というのは 基 本 的 には
文書が多いのです。大体 平安 、 鎌倉 時 代 に 御 本人が書いたと言われるものは国 宝 になって
しまう。ところが、 建 物というのは当時の 様式 を 守 ってち ゃ んと 改築 していないと国 宝 に
はなりません。 仏像 はなかなか難しいですね。 焼 けてしまったり 破損 したりしますから。
私は全
余分なことをお話ししましたが、奈良県というのはそういうすばらしいところだというこ
とです。
め る方 法 もいろいろ紹介しております。
結局、地域の経済 循環 を最 終的 に高 め ていくことで、先ほどの地域フ ァ ン ド とか地域 通
貨 、 ICTを活用した地域 づ くりも 韓 国の 情報 化 村 というのはすごい事 業 なのですけれども、
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人間力を高
口 さんと私で 視察 に 行 きまして本当に 感心 しました。ア レ ッ ク スという会 社 がやってい
るすごい 電子 マー ケ ットもすばらしいものです。
終章 は原 点 に 戻 って大 山王 国の話を書かせていただいております。
昔 、「 地域 旅 で地域力 創造」という本も書きました。これは地域の人たちとの共 著 です。
阿蘇 だとか大 山 だとかです。最近、DVDも会 社 がつくってくれました。これは 益子町 で 講演
したときのものです。 益子町 も 震 災で大きな 被 害を 受 けまして、私は 去 年2回 ぐ らい 行 っ
たのですけれども、 彼 らはもう一回自分たちが土の 恵 みに生かされてきたという原 点 に 立
ち 帰 って、地域 づ くりをやっていこうということで、そこで 講演 をした DVD です。ぜひご 覧
原
いただければと思います。
どうもご
清聴 ありがとうございました。
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