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美女と野獣

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美女と野獣
文学 2011:民話ネットワーク・構造・力(資料 05)
ヨーロッパの異類婚姻:「美女と野獣」と「アモールとプシュケ」
1. 「アモールとプシュケ」と「美女と野獣」(『ガイドブック世界の民話』)
1-1. アモールとプシュケ
ギリシア・ローマ神話で「アモールとプシュケ」として知られる異類婿の物語です。ギ
リシア語ではエロス、ラテン語ではアモールあるいはクピドと呼ばれる愛の神と、霊
魂を意味するプシュケとを結びつけるこの象徴的な愛の物語は、かなり古くから民間で語
られていた痕跡があります。その話を二世紀にローマのアプレイウスが『黄金のろば』と
いう物語の中に、長い挿話としてとり入れたものが、ギリシア・ローマの神話に加えられ
るようになつたのです。それはつぎのような話です。
ある王に三人の美しい娘がありました。ひょんなことから愛の神アモールがいちばん美
しい末娘を愛するようになります。やがて神のお告げにより、プシュケは正体不明の怪物
に嫁ぐことになり山頂に連れてこられました。 一人おきざりになつたプシュケを、西風が
やさしく抱きあげ、森の中のりっぱな宮殿につれていきました。
プシュケは目にみえぬ召し使いたちにかしずかれ、なに不自由ない生活を送るようにな
ります。夜になると怪物だといわれた夫がやってきますが、夫の姿をみることは堅く禁じ
られています。プシュケは幸せに暮らしますが、そのうち肉親が恋しくなり、夫にたのん
で会わせてもらいます。姉たちはプシュケの幸せをねたみ、夫の姿をみるようにそそのか
します。
プシュケは明かりをつけて、眠って いる夫の姿をみてしまいます。夫は怪物どころか美
しいアモールだったのです。そのとき灯油が夫の上に落ち、目をさました夫は怒って姿を
消してしまいました。
プシュケは夫を探して旅に出ます。夫の母、 アフロディテはプシュケに、穀物をより分
げること、金の羊毛を集めること、死者の国へ美の箱をもらいにいくことなど、つぎ つぎ
に難題を与えます。そのたびにアモールのかくれた援助 があり、とうとう許されて二人は
結婚し、プシュケは神の仲間入りをします。
民間に伝わるこの型の昔話では、アモールに代わる人物は、多くは魔法によって動物や
怪物に姿を変えられた人間になっています。それらの動物は、蛇、豚、カラス、ねずみな
どじつにさまざまです。なかには グリム童話の鉄のストーブのように特殊なものもありま
すが、世界的な分布をもっているのは蛇でしょう。
失踪した夫を探す妻はさまざまな試練にあいますが、一般的な ヨーロッパの話では、七
足の鉄の靴をはきつぶし、七つのびんを涙で満たすまで探しつづけなければなりません。
また途中、風、太陽、月などの家を訪ね、はしばみ、くるみ、くりなどの三つの呪宝をも
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らい、その呪宝を夫の新しい婚約者に贈って夫に会わせてもらうというばあいが多いよう
です。
この話の類話である朝鮮の「青大将婿」では、途中で出会った人たちの仕事を手伝って、
夫のゆくえを教えてもらいます。その夫ははるばる訪ねてきた妻と、ほかの 二人の女にあ
らためて難題を出して正式な妻を選びます。
この話の興味の中心は、「姿をみるな」
「ぬいだ皮を焼くな」などのタブーを破ったため
に夫に去られた妻が、ふたたび夫にめぐり会って幸せな結婚にいたるまで、きびしい試練
を課されるところにあるといえるでしょう。たくさんある異類婿の話の中で、これらのモ
チーフをそなえ、細部の変化はあっても、
「アモールとプシュケ」から大きくはずれること
のない話が、ヨーロッパを中心に、広く厚く分布して います。アジアではとくに朝鮮半島
に多くみられるようです。
なお、結婚の際のタブーは、古い婚姻習俗を反映しているのかもしれません。
1-2. 美女と野獣
心のやさしい娘が、魔法で醜い怪物に姿を変えられた王子を救う異類婿の話の一つです。
この話型は、中部ヨーロッパを中心に口承の話としてかなり語られていますが、フランス
のボーモン夫人の再話作品『美女と野獣』の影響も大きいようです。
市場に出かける商人が三人の娘にみやげにはなにがいいかと尋ねると、下の二人の 娘は
美しい服や高価なものを、上の娘はバラをねだりました。商人は下の二人には約束のもの
を買いますが、雪の降る冬のさなかに。 バラなどどこにもなく、あきらめて帰ろうとした
とき、すばらしい城の庭に数え切れないほどの。 バラが咲いていました。商人が一枝折る
と、大きな熊が現れて「バラの代わりに、娘をよこせ」といいます。
熊の城にいった娘は手厚くもてなされますが、しばらくすると父親に会いたくなり、熊
に頼みます。
「二日以上いてはいけない」といいながら、熊は娘に、家と行き来できる指輪
をくれます。娘は指輪を使って父親のもとにいき楽し い時をすごすうち、約束の日をすぎ
てしまいます。
城に帰ると熊の姿はなく、娘は探し回ります。そして瀕死の熊を発見し、思わず「もう
ずっとあなたのところにいるわ。だって、あなたは私の 大切な人」と愛を告白しました。
するとかけられていた魔法が解け、熊は美しい王子に変身します。そして二人は幸せに暮
らしました。
これは、オーストリアのチロルの話です。冒頭、三人の娘の望むみやげの品は、一般に
ほかの二人が真珠、ダイヤ、きれいな衣類など高価なものであるのに対し、主人公の娘は
極端に控えめなもの
(帰りに最初に出会った枝や虫などのもの)または突拍子もないも
の(歌って跳ねるどんぐり、りんりん鳴る枝、真冬のバラなど)です。
話の発端としては、このほかに「家に帰って最初に出会ったものをやる」と怪物に約束
すると、それが末娘だったという話もあります。
怪物としては、ボーモン夫人の野獣のほか、竜、熊、ライオ ン、狼、犬、蛇、虫、また
それらの複合したもの、が登場します。娘の身代わりをさし出そうとする話もありますが、
怪物はそれをみぬきます。
この話のように、魔法で動物にされた王子を娘が 救う話は、グリム童話だけでも「蛙の
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王様」
「針ねずみのハンス」「鉄のストーブ」
「ろばっ子」などがあります。そして魔法から
の解放には、愛の告白のほかにも娘が動物王子を投げたり、切ったり、皮を焼き捨てたり
すること、がきっかけとなります。また「鳴いて跳ねるひばり」のように 夫が人間の姿を
とりもどした後、姿を消し、娘は失踪した夫を探す長い旅に出なければならないという話
「アモールとプシュケ」もあります。しかし、狭義の「美女と野獣」型の話では、娘の 涙
やキス、愛の告白が魔法を解きます。
日本の「たにし息子」
「蛙息子」なども、動物婿が娘の献身によって人間に変身するとい
う点では類似しています。
2. 美女と野獣
2-1. 18 世紀フランスの「美女と野獣」(『美女と野獣』ボーモン夫人著・鈴木豊訳)
むかし、とても大金持の商人がおりました。商人は息子三人、 娘三人の六人の子持でし
た。この商人はなかなか気のきいた男だったので、子供たちの教育のためにはまったく物
惜しみしないで、子供たちにどんなお稽古にもみんな先生をつけて勉強させました。娘た
ちはみんななかなかの器量よしでしたが、とくにいちばんの 末娘は、ほれぼれとみとれる
ほどの美しさでした。そこでみんな、子供のころから、この 娘を呼ぶには「きれいなお嬢
ちやん」という名前以外の呼びかたをしないくらいでした。いつまでたっても 妹がこんな
名前で呼ばれるのが、姉さんたちのたいへんなやきもちの種になるのでした。
この末娘は姉さんたちよりも器量もよくそのうえ、二人よりずっと気立てのよい娘でした。
姉さんたち二人はとても高慢ちきで、いつも貴婦人気取りだったので、自分たちのお友だ
ちにも、身分のあるひとたちでなげれば満足しませんでした。毎日毎日ダンス・パーティ
や、お芝居や、散歩に出かけて、 一日の大半の時間をためになる本を読んで過ごしている
末の妹をバカにしておりました。
この娘たちがたいへんな金持だということはみんなに知られていたので、たくさんの大商
人たちが、娘たちに結婚を申し込んできました。でも二人の姉さんのほうは、公爵か、せ
めて伯爵ぐらいは結婚相手に見つからなければ、ぜったいにお嫁にはいかない、などと答
えておりました。ベル(美女)は自分と結婚したい、というひとたちにていねいにお礼を
申しましたが、でも彼女は、自分はまだちょっと若すぎるし、それにもう何年かお父さん
といっしょに暮らしたいので、と答えておりました。
とつぜん、商人は財産を失って、手に残ったものはといえば、町からずっと離れた小さ
な別荘だけでした。商人は子供たちに向かって、家族はみんなその家に行かなければなら
ないし、お百姓のように働かなければ、そこで生活することはできないだろうと、涙なが
らに話しました。だれひとりとして、二人の姉娘をかわいそうだとは思いませんでした、
それというのも、二人ともあんまり 横柄なので、みんなに嫌われていたからです。けれど
も、ベルがこんな不幸に見舞われたことには、みんな が憤慨しておりました、つまりみん
な、それほどベルが気立てがよく、優しい りっぱな娘だと思っていたわけです。それどこ
ろか、ベルが一文なしになってしまったというのに、ベルをお嫁にほしいという貴族さえ、
何人かでてくるしまつでした。ところがベルは、そのひとたちに、あたくしはあの哀れな
お父さまを見捨てようという気持にはどうしてもなりません、それにお父さまといっしょ
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に田舎までついていって、慰めてあげたり、仕事のお手伝いをしたいのです、といって断
わりました。
田舎の家へ着くと、商人と三人の息子たちは、いっしょうけんめいに畑を耕しました。ベ
ルは朝の四時から起き出して、大急ぎで家じゅうの掃除をし、家族の昼食を作りました。
仕事がすんでしまうと、ベルは読書をしたり、クラヴサンを弾いたり、あるいはまた糸を
紡ぎながら歌を歌ったりして過ごしました。二人の姉さんたちは、あべこべに、退屈で退
屈で死にそうでした。二人は朝の十時にようやく起き、一日じゅうブラブラ歩いてみたり、
むかしのきれいな洋服や、お友だちのことをなつかしんで気晴らしをしておりました。二
人はよくこんなことを話したものでした。
「ネェ、妹をごらんなさいよ、あの子の心ったら、ほんとにお下劣で、鈍いんだから、
こんな不幸な境遇になっても、平気なのね」
お大好しの商人は、二人の姉娘のような考えかたをしませんでした。商人はベルのりっぱ
な心がけ、とりわけベルの辛抱強さには敬服しておりました。というのは、二人の姉さん
は、平気でベルに家じゅうの仕事を任せっきりにしているだげでは満足しないで、年がら
年じゅうベルに恥をかかせたりしていたからです。
商人が一通の手紙を受け取ったのは、この家族がこの人里離れた田舎へ住むようになっ
てから、一年ほどたったころでした。この手紙を読んで、商人は、商品を積んだ船ぶ二隻、
幸運にも港に着いところだということを知りました。このニュースを聞いて、二人の姉さ
んは、あぶなく頭がボッとなってしまうくらい大喜びでした、そして、お父さんが出かけ
る用意をしているのを見ると、帰りにはドレスやら毛皮のえりまきやら髪かざりやら、そ
のほかいろんなつまらないものを、おみやげに買ってきてくれとお父さんに頼むのでした。
ベルはお父さんになにもおねだりしませんでした、というのはベルが考えたところでは、
あの商品を全部お金に変えても、姉さんたちが欲しがっているものを買うにも足りないく
らいだ、と思ったからです。
「おまえは何か買ってきてくれと言って、わしにかねだりしないのかね?」
とお父さんがベルに言いました。
「あたくしのことまで考えてくださるなんて、ほんとうにご親切ですのね」とベルが言
いました。
「それでしたら、あたくしに。バラを一本おみやげに持ってきてください。ここ
ではバラは育たないんですもの」
好人物の商人は家を出かけていきました。ところが、町へ着いてみると、商品のことで商
人は訴えられていて、出た時と同じように無一文で家に帰ることになりました。
家へ着くまで、道のりはもうわずか三十マイルほどしかありませんでした。ところが途
中で大きな森を通り過ぎなければならなかったので、森の中ですっかり道に迷ってしまい
ました。雪がおそろしいほど降り続いておりました。風がものすごく吹き荒れて、二度も
馬から地べたへほうり出されてしまうほどでした。夜のとばりが落ちてきました、商人が
空腹と寒さのために、もう死んでしまうのではないかと思ったとき、とつぜん長い並本道
の向こうに、大きな明りがもれてきましたが、それははるか彼方のように見えました。商
人がそちらのほうへ向かって歩いていきますと、その灯は、家じゅう いっぱいにキラキラ
と明りのついている広い宮殿からもれてくるのがわかりました。商人は神に感謝して、急
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いでこのお城へかけつけました が、驚いたことに、このお城の中庭には、人っ子ひとり見
当たりませんでした。商人のうしろについてきた馬は、扉のあいたうまやを見つけると、
勝手にその中へはいってしまいました。商人は馬をつないでから、相変わらず 人っ子ひと
り見えない屋敷のほうへ歩いていきました。ところが大広間へはいると、暖炉にはあかあ
かと火が燃えて、おいしそうな肉料理を並べたテーブルかおりましたが、食器はただ一人
前しかおりませんでした。
十一時が鳴っても、だれひとり姿を見せません。お腹が空いて空いてペコペコになって
いた商人は、とうとう誘惑に勝てずに、テーブルの上の雛鳥をとり上げて、ガッガツとた
った二口で食べてしまいました。そのほか、ブドウ酒もゴクゴクと飲みました、そしてだ
んだん大胆になってくると、広間を出て、デラックスな家具を飾りつげた、いくつかの広
い部屋を歩き回ってみました。最後に商人はフカフカした暖かそうな ベッドのある部屋へ
はいりました。時間は真夜中を過ぎていましたし、体も グッタリ疲れていたので、とうと
う決心して、ドアを閉めてベッドに横になってしまいました。
翌朝、彼が目をさましたのは十時ごろでしたが、ドロドロに汚れていた自分の服の代わ
りに、とてもさっぱりした洋服が置いてあるのをみて、びっくりしてしまいました。商人
は窓ごしに外を眺めて、ゆりかごのように咲き乱れた花を見ると、すっかり目を奪われて
しまいました。商人は、ゆうべ夕食をたべた大広間に戻りました。 テーブルの上にはココ
アのはいった茶碗がのっていたので、商人はこのココアを欲んでしまいました。それから
家を出て、馬をとりにいきました。そのとき、バラのゆりかごの下を通りかかったので、
ベルが自分に。バラが一本欲しいとおねだりしたのを思い出して、いくつか花をつけてい
る木をえらんで、その一枝を折ってとりました。
するとそのとたんに、ものすごい音が鳴りひびいて、おそろしい顔付きをした野獣が彼
のほうへ近づいてきたので、枝は気が遠くなるほどびっくりしてしまいました。
「おまえというやつは、なんていう思知らずだ」とその野獣が商人に言いました。
「わた
しはおまえのいのちを助け、この城へ迎えてやった、それなのに、おまえときたら、わた
しがこの世でなによりも大切にしているわたしの。 バラを盗んで、わたしか悲しませるよ
うなことをするんだからな!
このあやまちを價うには、死んでもらわなければならん。
けれども、神にお許しを乞う時間を、ただ十五分だけ持ってやろう」
商人はひざまずいて、両手を組み合わせて野獣に申しました。
「お殿さま、どうかわたくしをお許しください。わたくし がバラを折ったのは、あなたさ
まを傷つけようなんて気持はさらさらございませんでした、ただわたくしの娘のひとりが
欲しがっていたので」
「わたしはお殿さまなんて呼ばれるほどの者じゃない」とその怪物が言いました。
「ただ
の野獣だよ。おまえがそんなお世辞を言ったからって、いい気になるなんて 思ったら大ま
ちがいだぞ。けれど、おまえには娘がいると言ったな。おまえの娘のうちだれかひとりが、
おまえの代わりに喜んでここへ米て死ぬ、というんなら、おまえを許してやってもいいぞ。
グズグズ言わずに早く行け、そして、もしおまえの娘たちがおまえの代わりに死ぬの が嫌
だと言ったら、三か月後に必ず決ってくると誓うんだ」
商人がそのとおりに誓いを立てると、野獣は、いつでも好きな時に出発してもいいぞ、
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と商人に言いました。
「それにしても、おまえだっておみやげもなしで手ブラで帰るわけにもいくまい。お ま
えが寝んだ部屋へ戻ってみなさい。部屋には大きな空の箱があるから。なんでも、おまえ
の好きなだけその箱へ入れるがいい、おまえの家までその箱を届けるようにはからってや
るから」
こう言うとすぐに野獣は向こうへ去っていきましたが、商人は心のなかでこんなことを
申しました。
「いずれわたしが死ななくてはならないんなら、せめてもの慰めに、かわいそうな子供
たちに、なにか食べるものを残していってやらなければなあ」
商人か部屋へ戻ると、金貨がザクザクあるのを見つげたので、さっそく野獣が自分に話
していた例の大きな箱いっぱいに金貨をつめ込み、箱を閉め、うまやへ行って馬を引き出
し、この宮殿を出ていきました。 けれども商人の心は、この宮殿へはいってきたときに感
じていた喜びと同じように悲しみにみちておりました。
ほとんど数時間かかっただけで、商人は自分の小さな家に帰りつきました。子供たちは
みんな商人のまわりに集まってきました。子供たち が優しい言葉をかけてくれるのに、喜
ぶどころか、商人は子供からを眺めてさめざめと涙を流しはじめました。商人はベルにお
みやげに持って帰ったバラの枝を手にもっておりました。その枝をベルにやると、 ベルに
こんなことを申しました。
「ベルや、サアこのバラをお取り。でも、このバラは、おまえの不幸なお父さんには、
ずいぶん高価いものにつくだろうな」
そしてすぐさま、自分の身の上に起こったあの悲しいできごとを、家族の者に語って聞
かせました。このいきさつを聞いて、二人の姉さんたちは大きな 叫び声をあげ、涙ひとつ
見せないベルに向かって、さんざん悪口を言いました。
「どうしてあたくしがお父さまの死を嘆き悲しまなければいげないんでしょう?」とベ
ルが返辞をしました。
「お父さまのいのちはちっとも危険ではありませんわ。だって、その
怪物はお父さまの娘のだれかひとりが来れば迎えてくれるって言ってるんですもの、 相手
がどんなに怒っても、あたくしは向こうの言うなりにまかせますわ。お父さまをお 救いで
きて、それにお父さまにあたくしの愛情の証しを見せることができれば、あたくしだって
ほんとうに嬉しいわ」
「ベルの真心はほんとうに心から嬉しいよ」と商人が言いました。
「でもね、わたしはお
まえを死の危険にさらすなんてまっぴらだよ。わたしはもう年寄りだからね。なあに、い
のちを失うようなことがあったって、何年か損をするだけのことさ、おまえたちのことを
考えると、ちょっと口惜しい気もするけれどね」
「お父さま、安心なさって」とベルが言いました。
「あたくしを連れないで、お父さまひ
とりでその宮殿へ行くなんてことぜったいありませんわ」
みんなが口を酸っぱくして言ってもむだでした。 ベルは自分の計画をがんこに主張して
譲りませんでした。
商人は自分の娘を失うという悲しみにすっかり気を奪われていたので、金貨をいっぱい
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につめた例の箱のことなど考えてもみませんでした。ところが、床に就こうとして寝室の
ドアを閉めたとたんに、ペッドと壁のあいだにその箱が置いてあるのに気がついて、びっ
くりしてしまいました。商人はベルにだげこの秘密を打ち明けましたが、 ベルはその財産
を、姉さんたちと二人の貴族の結婚の費用に使ってくれ、といって頼むのでした。その貴
族たちは商人の留守中に姉さんを訪ねてきて、姉さんたちを愛していたのです。
二人の意地悪な姉さんたちは、父親といっしょにベルが出発するときに、玉ねぎで目を
こすっ涙を出していたのですが、兄さんたちは、それでも、商人と同じように涙をポロポ
ロと流してほんとうに泣いておりました。位いていないのは、 ベルひとりだけでした、と
いうのはベルの気持としては、父や兄弟たちをあまり苦しめないように心を使っていたか
らです。
馬は宮殿へ向かう道を歩きつづけました。夕方になると、二人はようやくあかあかと明
りの輝いている宮殿を見つけました。馬はひとりでサ ″サとうまやへはいっていき、商人
は娘を連れて大広間へはいりました、するとどうでしょう、大広間には二人分の豪華なご
訟対を並べたテヒフルがちゃんと用意してありました。商人のほうは、とうていそんなも
のを食べる気力はありませ
んでしたが、ベルのほうはいっしょうけんめい、平静なようすを見せようとして、テーブ
ルについてご馳走を食べました。
食事がすむと、二人の耳にものすごい大きな育かひびきわたり、商人は泣きながら、哀
れな娘に「さようなら」を言って別れを告げました。というのは、商人は、あれは野獣が
やってくる音にちがいない、と思ったからです。ベルは野獣のこの怖らしい顔つきを見て、
思わずぞっとしてふるえないではいられませんでした。それでもできるだけ心を落ち着け
ました。怪物はベルに向かって、ここへ喜んできたかどうか、とたずねたので、 ベルはふ
るえながら答えました。
「はい、喜んでまいりました」
「おまえはなかなか優しい子だね」と野獣が申しました。
「わたしはおまえにお礼を言う
よ、ところで父親のほうはな、明日の朝ここを出発しなさい、もうふたたびここへ帰ろう
なんていう気を起こすんじゃあないぞ。じゃあ、ベル、さようなら」
「さようなら、野獣さん」とベルが答えますと、怪物はアごこいう間に姿を消してしま
いました。
商人とその娘は寝室へいきました。その晩ひと晩じゅう、とうてい眠れないと思ってい
たのに、床へつくやいなや、二人はすぐ目を閉じてしまいました。眠っているあいだに、
ベルはひとりの貴婦人、がベルに向かってこんなことを言う夢を見ました。
「おまえの優しい気持を知って、わたしはとても嬉しいんですよ、 ベルや。おまえの
お父さま
の命を牧おうとして、自分の兪を犠牲にするなんて、 おさえのしたことは、まったく見上
げたおこないですよ、いつかはよい報いがありますからね」
目がさめてから、ベルは父親に昨夜の夢のはなしをすると、父親もそれを間いていくら
か気持が安りましたが、でもいざかわいい娘と別れなければならない時になると、どうし
ても大きな声をあげて泣き出さずにはいられない始末でした。
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父稗が出発してしまうとすぐに、ベルは大広間に公って同じように泣き出し、そして神
さまにどうぞお守りくださいと祈りました。なにしろベルは、夜になったら野獣はきっと
自分を食べてしまうにちがいない、とかたく信じきっていたのですから。それでもベルは
お城を見にいこうと思い立ちました。どうしてもあの美しい お城を見物してみたいという
気持を抑えきれなかったのです。ところが門を見てみると、これはどうしたことでしょう、
門の上には、
「ベルの屋敷」と書いてあるのでベルはびっくりしてしまいました。ベルは大
急ぎでこの門を開けました、そしてこの お城の隅から隅まで心を配ったデラ ″クスな様子
に目を奪われてしまいました。な かでもいちばんベルの目を惹いたのは大きな書棚と、ク
ラヴサンと、何冊かの音楽の本でした。
「あたくしを退屈させまいという心づ かいなんだわ」とベルは小声言言いました。そし
てその後にこんな考えが浮かびました。
「もしあたくしが、たった一日しかここにいないとしたら、おそらくこんなりっぱな支
度をするわけがないわ」
こう考えると、ベルの気持は元気づけられました。ベルが書棚を聞いてみると、金文字
でこんな言葉を書いた本が目につきました。
「望むべし、命ずべし、なんじはここの女王にして女あるじなり」
「でも残念だわ!」とベルは皿排をつきながら申しました。
「だってあたくしの望みとい
えばただお父さまのお姿を見て、いまどうしていらっしゃるか知りたいだげなんですもの」
するとどうでしょう、驚いたことには、大きな鏡に目をやると、自分の家が見えて、ち
ょうどこれ以上悲しいことはないといった顔つきで、父稗が帰り着いたところが見えるで
はありませんか!
二人の姉が父親の前へやってきました。そしていかにもとってつけた
ように、悲しそうに顔をゆがめておりましたが、妹がいなくなったという喜びはかくすこ
とができず、二人の表情に表われておりました。しばらくすると、そんな画面もすべて消
えてしまいました。
正午になると、チャンと食事を並べたテーブルがあって、だれも人がいないのに、食事
中ずっと、チャーミングな音楽が流れてきました。
夜になって、ベルが食卓についていると、例の野獣 がくる時に聞こえる音が響いてきた
ので、ベルは体がふるえるのを抑えること、ができませんでした。
「ネエ、ベル」とこの野獣がベルに言いました。
「おまえが食事をしているところを見て
いてもいいかね?」
「あなたはご主人さまですもの」とベルはふるえながら言いました。
「いや、それにも、かう」と野獣が言葉をつづけました。
「ここにはおまえ以外には主人
はいないんだよ。もしわたしが邪魔だったら、あっちへ行げ、と言うだけでいいんだ、わ
たしはすぐその場で出ていくからね。言ってごらん、おまえはわたしがずいぶん醜いと思
っているだろうね?」
「ほんとうですわ」とベルが言いました。
「だってあたくしには朧、がつけないんですも
の。でも、あなたってとってもいい方だと思うわ」
「おまえの言うとおりだね」と野獣が言いました。
「でも、わたしは醜いだけじゃあな
い、その上に知恵もないんでね。自分でもよくわかるんだ、わたしはただの バカにすぎな
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いんだ、ということがね」
「バカだなんてとんでもない」とベルが続げました。
「だってご自分で知恵がない、とお
考えになっているくらいですもの。愚かなひとって、自分じゃそんなことぜったいわから
ないものですわ」
「とにかく食事をしなさい、ベル」と野獣が申しました。
「それになるべくこの屋敷で退
屈をしないようにね。だって、ここにあるものはなんでもおまえの自由に使っていいんだ
から、それに、おまえが物足りないなんていったら、わたしはきっと悲しくなるだろうか
らね」
「あなたってほんとうにいい方ですわ」とベルが言いました。
「正直に言って、あなたの
そんなお心づかいがほんとうに嬉しいんですの。そう思うと、あたくしにはあなたが醜い
ようには見えませんわ」
「もしわたしに知恵があったら」と野獣が言いました。
「わたしの感謝の気持を、うんと
じょうずな言葉で言い哀わせるんだが。でも、わたしに言えることはこれだけだよ、つま
り、わたしはおまえに心から感謝している、ってね」
ベルはとても食欲が出て、すっかり夕食を平らげてしまいました。ベルはもうほとんど
この野獣が怖くなくなりましたが、野獣が自分に向かってこんなことを言った時は、恐怖
のためにあやうく死にそうになったほどでした。
「ベル、わたしの妻になってくれないかね?」
ベルはふるえながらそれでも野獣にこう答えました。
「いやです、野獣さん」
するとそのとたんに、この哀れな怪物は溜息をつきました、が、その溜息はまるで宮殿
じゅうにひびき渡るようなものすごい 叫び声になって聞こえるのでした。けれどもベルは
まもなく落ち着きをとりもどしました、というのは野獣、が寂しそうなようすで、
「じやあ、さようなら、ベル」
と言うと、部屋を出ていったからです、もうコ肢ベルの姿を見ようとして何度も何度も振
りかえりながら。
ひとりっきりになってみると、ベルはこの哀れな野獣がほんとうにかわいそうになりま
した。
「アア、かわいそうに!」とベルは申しました。
「あんなにいい方なのに、あれほど醜い
顔をしてるなんて、ほんとに残念だわ!」
ベルは、ほとんど一日じゆう時間を勉強にうちこんで、平和な気持で、三か月もこの宮
殿で過ごしましたが、その孤独な時間もずいぶん短いように感じられました。
毎晩のように野獣はベルを訪ねてきます。そして夕食のあいだ、社交界では「気がきい
ている」とは言わないにしても、それでもなかなかセンスの良い調子でいろいろなおしゃ
べりをしていきました。毎日毎日、 ベルはこの野獣の心の中の、新しい善良なところを発
見していく思いがしました。毎日のように野獣を見ていると、 ベルはもう野獣の醜さにな
れてしまって、ベルを訪ねてくる時間が恐ろしいどころか、かえって、もう間もなく九時
になるのではないかしら、などと時間が待ち遠しくて、しばしば時計を見るような始末で
した。というのは、野獣はこの時間になるとぜったいかかさず姿を現わしたからです。た
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だ、ベルの悩みの種がひとつだけありました。
それは寝室へ行く前に、野獣がいつも、 ベルに妻になってくれる気はないか、と尋ねて、
ベルが[いやです]というのをきくと、いかにも悩ましげなようすを見せることでした。
ある日、ベルが例の鏡を見ていると、ベルがそばにいなくなったために悲しみのあまり
病気になった父親の姿が見えたので、それを野獣に話すと、野獣はベルにこう申しました。
「わたしからけっして離れない、とわたしに約束をしなさい」
「もちろん、ぜったいにあなたのところから逃げ出さないとお約束をしますわ。でもあ
たくし、どうしてももう一度お父さまに会いたいんです、それにもしあなたがこの楽しみ
をいけない、なんておっしゃったら、あたくしは悲しみのために死んでしまいますわ」
「そんなことになったらむしろわたしのほうが死にたいくらいだよ」と野獣が 申しまし
た。
「いいよ、おまえをお父さんのところまで送ってあげよう、しばらくお父さんのところに
いなさい、でもおかげでおまえの哀れな野獣は、死ぬほどの苦しみを味わらノだろうけれ
どね」
「そんなことはありませんわ」とベルが涙を流しながら、野獣に言いました。
「あたくし
心からあなたが好きなんですもの、あなたが死ぬ原因になるようなことはしたくありませ
んわ。あなたとお約束しましょう、一週間たったらきっと戻ってくるって。あなたの鏡の
おかけで、あたくしはお姉さまたちが結婚するところも、お兄さまたち、が兵隊に行くと
ころも見ましたわ。ですから、いまのところお父さまはたったひとりなんです、ね、一週
間だげお父さまといっしょにいるのを許してもようだい」
「明日の朝にはお父さんのところへ帰れるよ」と野獣が言いました。
「でも、おまえの
約束を覚えておいておくれ。お言えがここへ戻りたくなったらね、寝るときに、テーブル
の上へおまえの指環を置くだけでいいんだよ。じゃ、さようなら、ベル」
野獣は、こう言いながらいつものように溜息をつき言した、が、野獣の悲しそうなよう
すを見たベルも、つい寂しくなって床につきました。
朝、目がさめてみると、ベルは父親の家におりました、そして、べこドの脇にさがって
いる呼鈴を引くと、女中がきて、ベルを見てビックリして大きな声をあげました。この叫
び声を聞きつけて、商人か駆けつけ、かわいい娘を見ると、大喜びでまるで死にはしない
かと思われるほどのありさ言でした。そして二人は、十五分以上もしっかり抱擁したまま
でした。
ベルは、はじめの有頂天の時間がすぎると、ベッドから起きようにも、洋服を持ってこ
なかったことに気づきました。ところが女中が言うには、あたしは隣の部屋に、ダイヤモ
ンドをちりはめた、錦織りの洋服がいっぱいつまった大きな箱をい言見つげたところです、
ということでした。
ベルは善良な野獣のこんな心づかいに感謝をしました。ベルはそのなかでいちばん豪華
でない服を着て、残りの洋服はたたんで おくように女中に言いつけました、ベルは、それ
を姉たちにプレゼントしたかったのです。ところがベルがそう言うやいなや、その箱は消
えてしまいました。父親が、これはきっとこの洋服を、ぜんぶ、ベルが自分で着るように
とっておけばいい、と思っているんだよ、とベルに 申しますと、すぐに洋服と箱はもとの
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場所にまた現われました。
ベルが着換えをしていると、そのあいだに姉娘たちのところへも知らせがいき、二人は
めいめいにご主人たちを連れて駆けつけてきました。姉娘たちは二人とも、とってもふし
あわせでした。上の姉は、まるで「愛の神」みたいにハンサムな若い貴族と結婚しており
ました。ところがこのご主人は、もともと自分の容貌にたいそう自賛があって、朝から晩
まで顔のことにかかりっきりで、自分の妻の美しさなど鰍訟しきっていたのです。二番目
の姉は才気脱獄の男と結婚しておりました。ところが、才気煥発もげっこうですが、その
才気をそばにいるひとたちみんなの気を悪くさせるような時に限ってふり回すのですから
たまったものではありません。その上、最初にその槍玉にあがるのが自分の妻なのですか
ら、まったくしまつにおえないご主人でした。
二人の姉は、まるでプリンセスのように着飾り、しかもかかしよりずっと美しくなった
ベルを見ると、くやしくてくやしくて歯がみをしたいくらいでした。ベルが姉たちにどん
なに優しくしてもむだでした、どんなことをしても、二人のやきもちを鎮めることはでき
ないでベルが自分がどれほどしあわせな暮らしをしていたかを語ると、なおさら二人のや
きもちは激しくなっていき
した。
二人はさっそくベルをおとしいれる計画をたてました。
「ネエおまえ」と上の姉、が言いました。
「わたしにいいアイデアが浮かんだのよ、あの
子を一週間以上ここへとめておくようにしましょうよ。そうすればなにしろ頭の足りない
野獣のことだから、あの子が約束を破ったっていってすごく朧を立てるでしょ、きっとあ
の子をバリバリと食べちまうわよ」
「おっしゃるとおりだわ、お姉さま」と妹のほうが答えました。
「それには、あの子を
うんとチヤホヤしてやらなければね」
こんな決心をすると、二人は妹にうんと優しいようすを見せたので、ベルは嬉しくって
泣き出してしまうほどでした。一週間は あっという間に過ぎてしまって、二人の姉は絶望
のあまり髪をむしって、妹の出発を悲しむようなふりをしましたので、 ベルはとうとうも
う一週間家にとどまる約束をしてしまいました。
けれどもベルは、自分があの哀れな野獣に与えた苦しみのことを考えると、心がとがめ
てなりませんでした。じつは彼女はすでに心から野獣を愛していたので、もう野獣に会え
ないと思うと気分が滅入ってくるのでした。父親の家で過ごすようになって十目目の夜に、
彼女は自分が宮殿の庭園にいて、草の上に横になり、いまにも死にかかっている野獣に会
った夢を見ました。ベルは目をさまして、とび起き、涙を流して泣き出しました。
「あたくしはなんて悪い女だろう」と彼女は申しました。
「あたくしのために、あれほど
いろいろと気をつかってくれた野獣を悲しい目にあわせるなんて!
さあ、野獣をふしあ
わせにしもゃあいけないわ。そんなことをすれば一生涯自分の恩知らずな仕打ちが、気に
なって、悩みっづけるようなことになるわ」
こう言うと、ベルはテーブルの上に指環を置きました、するとその翌朝、自分が野獣の
宮殿にいるのに気付いて、大喜びでした。
野獣を喜ばせてやろうと思って、ベルは美しく首飾りましたが、夜の九時になるまでの
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あいだ、一日じゅう退屈で退屈でやりきれませんでした。ところが、時計がボンボンと打
ってもむだでした。野獣は姿を現わさないのです。ベルは叫び声をあげながら、宮殿のあ
ちらこちらを駆けめぐりました。ベルはすっかり絶望してしまいました。隅から隅まで、
くまなく探しおえてから、ようやくベルはあの夢の光景を思い出して、庭園の運河のほう
へ駆けていきました。あの夢では、野獣が運河のそばで眠っているところを見たからです。
やっぱり、哀れな野獣は、意識を失って倒れていました。ベルは、野獣がもう死んでい
るのかと思いました。もうあの恐ろしい顔が怖いなんていう気持も忘れて、ベルは野獣の
体の上に身を投げかけました、すると、まだ心臓が勤いているのが感じられたので、ベル
は運河の水を汲み、野獣の頭へ注ぎかけました。野獣が両眼を開いて、 ベルにこんなこと
を申しました。
「おまえは約束をすっかり忘れてしまったので、おまえを失ってしまった悲しみをまぎ
らわそうと、わたしは何も食べないで死のう、と決心したんだよ。でも死ぬ前にひと目お
まえに会えて嬉しいよ、心おきなくわたしは死ねるよ」
「いいえ、あたくしの大切な野獣さん、あなたは死にませんわ」とベルが申しました。
「サ
ア、元気になるのよ。いまから、あたくしはあなたの妻になります、そして誓いますわ、
生涯、あなた以外にあたくしの夫はありません」
ベルがこんな言葉を口にするやいなや、宮殿にはパッと明りがつきました。花火があ、
がり、音楽が聞こえ、そのほかいろいろお祭りのようににぎやかになりました。でもこん
な美しい光景もベルの目をひきませんでした。ベルは自分のだいじな野獣のほうをふりか
えってみました、野獣のいのちにかかおりそうなようすが気がかりでならなかったからで
す。
ところが、ベルはほんとうに驚いてしまいました!
野獣の姿は消えてなくなり、今は
もう、ベルの足もとに横だわっていたのは、
「愛の神」よりももっともっとハンサムな、ひ
とりの王子の姿だけでした。そして王子は、自分にかけられた魔法をといていただいてあ
りがとう、とベルに感謝するのでした。この王子の美しさがベルの目をひいたことはもち
ろんでしたが、そんなことはおかまいなく、 ベルはどうしても、王子に、あの野獣はどこ
へ姿を消したのですか、と尋ねずにはいられませんでした。
「あなたの足もとにおりますよ」と王子が申しました。
「意地悪な仙女かおりましてね、
ぼくがあんな姿になるように、むりやりぼくに言い渡したんですよ、ただ、だれか美しい
お嬢さんがぼくと結婚するのを承諾するまでということでした、がね、そればかりではな
いんです、ぼくは自分の頭を働かせてもいげない、といって禁じられていたんです。そん
なわけで、この世の中に、ぼくの性質の良さがわかってくれるほど、心のりっぱなひとは
あなたひとりしかいなかったんです。たとえぼくの王冠をあなたにさし上げても、まだま
だ、ぼくがあなたに受けたご恩を返し年れないくらいです」
ベルはまたびっくりしましたが、今度はとても気持のよい驚きでした。そしてこのハン
サムな王子に手をのばして、王子を起ち上がらせました。
二人は仲よくそろってお城へまいりましたが大広間に父親をはじめ、家族の者がみんな
そろっているのを見て大喜びでした。いつかベルの夢のなかに現われたあの貴婦人が、ベ
ルの家族をこのお城へ連れてきたのです。
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「ベルや」とその貴婦人、が申しました。この貴婦人は実はえらい仙女だったのです。
「サ
ア、ここへいらっしゃい、あなた が選んだひとはりっぱなひとですよ、サア、ごほうびを
上げますよ。あなたは見かけだけの美しさとか、才気よりも、りっぱな心を選んだのです
ね、そんな心掛けのおかげでそういう長所をすべてかねそなえたりっぱなひとにめぐり会
えたのですよ。あなたはきっとすばらしい女王さまになれますよ、でも女王さまの位につ
いたからといって、いい気になっ
て、あなたの持って生まれたりっぱな心を忘れないようにね」
「さて、あなたがたお二人ですがね」と仙女はベルの二人の姉に向かって申しました。
「わ
たしにはあなたがたの心の中、がわかります。あなた がたが心の中に隠している、その意
地悪な気持もよべわかっていますよ。二人とも石像におなりなさい、でも、すがたかたち
は石に変わっても、あなたがたの気持だけはもとのままでいるのです。二人とも妹の宮殿
の入口に立っていなさい、あなた、がたが受ける罰というのは、ほかでもない、自分の妹
のしあわせをその目で眺めていることなのです。いつか自分たちの間違いをさとる目がき
たら、二人ともまたもとの姿にかえることができますよ。でも、どうやら、生涯、そんな
石像のままでいることになりそうだね。なるほど、高慢ちきな気持とか、かんしゃくもち
とか、食いしんぼうとか、なまげぐせなんていうの は、心掛ければ直るものだけれど、意
地が悪くて、ひとを妬む心がりっぱな心にかわる、というのはまるで奇跡みたいなものだ
からねえ」
こう言って、仙女が手にしていた杖をひと振りすると、この広間に集まっていたひとた
ちはみんな、王子の国ヘアッという間に運ばれてしまいました。
むかしの家来たちは大喜びで王子を迎え、そして王子はベルと結婚しました。二人はほ
んとうに幸福に、すえ永くいっしょに暮らしましたが、それというのもその幸福が、二人
のりっぱな心掛けから生まれたためでした。
2-2.
ボーモン夫人について(『美女と野獣・解説』ボーモン夫人著・鈴木豊訳)
「美女と野獣」の作者、マダム・ルプラ ンス・ド・ボーモンは一七一一年四月二十六日
に、ルーアンの中流家庭に生まれました。マダムという言葉でわかるように女流作家で、
フル・ネームは、ジャンヌ=マリ・ルプランス・ド・ボーモン Jeanne‐Marie Leprince de
Beaumont といいます。生地のルーアンは、セーヌ河をパリから一〇〇キロあまり遡った、
オート・ノルマンディの大都会で、古くからこの地方の中心都市として栄え、古い教会や
建造物も多く、また十七世紀の大作家ピエール・コルネ イユや、十九世紀のフローベルの
誕生の地として、パリ、リヨンと並ぶ文化の中心地でもありました。作者の兄、ジャ ン・
ルプランスは画家として名高く、帝政時代のロシアのサ ンクト・ペテルスブルグに招かれ
て、ここの王宮に有名な天井画を残し、帰仏後はアカデミー の椅子を与えられたほどです
から、ルプランス家はおそらく、ただの中流家庭ではなく、芸術家的な雰囲気に包まれた
インテリ家庭だったと思われます。
こうした堅実な家庭で育ち、当時の女性としてはじゅうぶんな教育を受けてから、 ボー
モン某という男と結婚をしましたが、この夫が一種の性格破綻者で、放蕩という放蕩、悪
という悪に身を任せるような人物だったので、一七四五年にとうとうこの最初の結婚は 破
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綻の嘆きをみることになりました。悩みの多かった結婚生活から解放されて自由の身にな
りますと、夫人はようやく筆をとって日々を過ごすことを覚え、このころから夫人が作家
となる下地が養われたものと思われます。その後に夫人は同郷人のトマ・ピショ ンと再婚
しましたが、再婚の夫は夫人をよく理解し、二人のあいだには六人の子供が生まれて、は
じめの結婚の不幸を補ってもあまりある幸福な家庭生活を送りました。
一七四八年に、夫婦はイギリスヘ渡り、このころから夫人は子供たちの教育事業に打ち
込み、一七五〇年には、ロンドンで「新フランス誌」という雑誌を発刊して有名になって
おります。夫人がほんとうに作家として出発し、地歩をえたのはこのイギリス滞在時代の
ことでした。一七六一年に夫人 が一家をあげてフランスヘ帰った時には、約四十冊の作品
を書き上げ、また傑作として後世に残る作品はほとんどこのロ ンドン滞在中に執筆したも
のですから、この十年間が作家として、いちばんあぶらの乗りきった時代と思ってもよい
でしょう。
一七六八年にはサヴォワ地方のアヌシイ近郊のシャヴァノという小村に地所を買い、こ
こに瀟洒な家を建てて、村のやさしいおばあさんとして、近隣の子女たちの教育に当たり
ました。夫人の作品の編纂者のオルテール・フルニエは、一七七二年の夫人の誕生日に、
村長や、村の司祭や、子供たち、それにすでに嫁づいた近隣の娘たちにとり巻かれて、ニ
コニコとしあわせそうに誕生日の贈り物を受ける夫人の姿を、小説ふうにこまごまと描い
ておりますが、事実この小村での晩年は、夫人にとっては天国のようなものだったにち が
いありません。
一七八〇年といえば、フランス全土にあの酸鼻な革命の嵐 が吹きまくっていた時代でし
たが、そんな世間とは別世界のような平和な、暖かいひとびとの目にみとられながら夫人
は生涯を終わりました。亡くなった年が七十歳、そして生涯に書き上げた本の数も七十冊、
奇妙な符合としかいいようがありません。
夫人の作品は、処女小説「真理の勝利」
(一七四八)に始まり、
「新フランス誌」
(一七五
〇~55、三巻)
、「十四世紀逸話集」(一七五九)
、
「世に出る若い女性のための教育 」
(一
七六四、四巻)などが、まず代表作と呼ばれるものでしょうが、 ボーモン夫人の名前を聞
いてだれでもすぐに連想する作品といえば、次の二冊です。
「子供の雑誌」
“Magasin des Enfants”1757.
「若い女性の雑誌」
“Magasin des Adolesentes”1760
この二冊は発表以来現在にいたるまで、毎年版を重ね、ちょうど目本の「桃太郎」や「花
咲爺い」のお伽話のように、子供のある家ならどこの家の書棚にも欠かせないものとして、
母親に子供たちへの話の材料を提供してきたものです。つまりこの二作は、フランス童話
の古典的名作の名誉を与えられているわけです。
3 「アモールとプシュケ」AT425 類話 「ちいさなカラス」 (『フランス民話の世界』樋口淳)
むかし、三人の娘をもった夫婦がいた。亭主の方は盲だった。ある日、一番上の娘が泉
へ桶いっぱい水をくみにいって、水口(みなぐち)のところでカラスに会ったのさ。
「きれいな娘さん」ってカラスがいった。
「もし父さんの目をなおしたきゃ、わたしと一緒になりなさい。でも、もし嫌なら、明日
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の同じ時間に、妹さんを泉のうらのこの場所につれていらっしゃい」
家に帰ると、娘はぜんぶ父さんに語って聞かせのさ。
「好きなようにおし」って、父さんは答えた。
「あのカラスはあんまり汚いわ」って、娘はいった。
「わたしは嫌よ。あした泉に妹をつれてって、カラスが気にいるかどうか見てみましょ」
次の日、ふたりの娘はまた水くみにいって、泉のそばでカラスに会ったのさ。カラスは、
二人のうちのどちらかが自分と一緒になれば、父さんの目はなおるって、また言った。
「わたしは嫌よ」って上の娘がいった。
「わたしだって」ともう一人がいった。
「それじゃあ家にお帰りなさい。そして明日またここへ、一番下の妹さんをつれていらっ
しゃい」ってカラスは答えた。
家に帰って、娘たちがそのことを話すと、父さんはこういったのさ。
「目がなおるのは嬉しいけれど、もしもカラスが気にいらなけりゃ、お前たちが無理して
一緒になることはない」
「それじゃあ、あした妹がカラスを気にいるかどうか見てみましょ」
その次の日、三人の娘たちは泉にいって、またカラスに会ったのさ。カラスはまた同じ
ことをいった。
「もし父さんの目がなおるなら、わたしはあなたと一緒になりたいわ」って末の娘がいっ
た。
「そんなら、明日もう一度ここにいらっしゃい。結婚に必要なものをぜんぶ鞄につめて」
家に帰ると、父さんの目はすぐに開いたのさ。
そこで、三人の娘はいそいで鞄を用意した。そして次の日、娘はまっすぐ泉にでかけた。
そこにはカラスが待っていた。その片足に鞄をむすびつけ、翼にのると、二人は舞い上が
った。
ものの半時間もいくと、日が暮れて、二人はすごいお城につき、窓からまっ暗な部屋に
はいった。そらから、カラスは立派な王子さまに変わったのさ。妖精が、昼の間カラスに
変わる力を王子さまに授けたんだ。
一週間ほどして、気立てのいい王女さまは里帰りすると、みんなにぜんぶ話して聞かせ
た。姉さん達がどんなにやきもちを焼いたか、考えてごらん。あんまり悔しくてしょうが
ないんで、ある夕方、二人は城に登ってこっそり妹の部屋に入ったのさ。それからロウソ
クに火をつけて、王子さまの翼の上にロウをたっぷり流したんだ。王子さまは、カラスに
変身しないときは、翼を棚のうえに置いといたからね。
日が暮れてから、王子さまはそれを見つけて、とっても嘆いたんだよ。というのは、も
しその翼をいためたら、十年の償いがいるって妖精が言ってたからね。
二人は、それぞれ長い償いをしなくちゃいけなかった。王子さまは、ずっと城をはなれ
て、償いを果たしに遠くへ行かなくちゃいけなかったし、娘も城で二日ばかり働いてから、
やっぱり遠くへ償いにでなきゃならなかった。
「よくお聞き。むかし妖精がこんなことを教えてくれたんだ。あんまり辛い仕事をしなけ
りゃいけない時には、お前はこんな風に言えばいいんだよ。
ちいさなカラス、ちいさなカラス
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助けておくれ、お願いだ
ここで十分働いたら、お前はわたしのお婆さんのところへダイヤモンドをとりにやらさ
れるだろう。そしたら、七つのパンと七つの大きな箒、七本の針と七つの小さな箒、それ
と七本の油を忘れないように気をつけなさい。もどって来たら、城の中庭につれだされ、
男たちみんなの前を歩かされて、気にいった男を選ばされるだろう。最後の男がわたしだ
から、お前は「わたしはこの人がいい」と言えばいい。
そして王子さまは出ていったのさ。
次の日、最初の試練として、城の男たちはかわいそうな娘に、堆肥を馬車五十台分、一
日で積み込むようにっていったのさ。そこで娘は泣き出した。そんなに短い時間で終わら
せるなんて、出来っこないもの。でも、とにかく仕事を初めて、一台分は積み込んだ。そ
して疲れはてた時、娘は王子さまの言葉を思いだして、いった。
ちいさなカラス、ちいさなカラス
助けておくれ、お願いだ
すると、森のあっちこっちから、カラスの群れがやってきて、ものの三時間もしないう
ちに、残った四十九台の馬車に堆肥を積み終わったのさ。
夕方、男たちは仕事がどこまで捗ったか、のぞきに来てびっくりした。
「いったい、たった一人で、どうやってみんな積み込んだんだ」と一人がいった。
「出来っこないよ」ともう一人がいった。
「あしたは、どうするか見張っていよう」と三人目がいった。
次の日は、五十台の堆肥をお城の牧場ぜんぶにおろす仕事さ。最初の牧場にやってくる
と、娘は叫んだ。
ちいさなカラス、ちいさなカラス
助けておくれお願いだ
すると、いたるところからカラスたちがやって来て、ほんの二時間ばかりで五十台の馬
車を空にした。仕事を見にきた男たちは、昨日よりまたびっくりした。そこで娘に、今度
は王子さまのお婆さんのところへ、ダイヤモンドを取りにやることにした。
娘は次の日の明け方、王子さまに言われた通り、七つのパンと七つの大きな箒、七本の
針と七つの小さな箒、それに七本の油をもって旅に出たのさ。
ながい、長いあいだ歩いていくと、道が丘のてっぺんに向かって上りはじめた。すると
間もなく、七年まえから一つのパンを争って、道をふさいでいる七匹の犬にであったのさ。
娘がみんなに一つずつパンをわけてやると、犬は通してくれた。
丘を越えて少しいくと、七年まえから一つの箒を争って、道をふさいでいる七人の女に
であった。娘がみんなに一つずつ箒をわけてやると、女は通してくれた。
もっと行くと、七年前から一本の針を争って、道をふさいでいる七人の仕立屋にであっ
た。娘がみんなに一本ずつ針をわけてやると、仕立屋は通してくれた。
またもっと行くと、七年前から箒ではかれたことのない、大きな石の階段の下についた。
娘は、それを掃ききよめ、小さな箒でくもの巣をとってやったのさ。階段の上に、王子さ
まのお婆さんが住んでいる城の壁がみえた。でも扉はしまっていて、七年前から油をさし
たあとがなかった。娘がていねいに油をさしてやると、扉はひとりでに開いたのさ。する
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とまた、七年前から箒ではかれたことのない階段があった。娘はそれをきちんと掃ききよ
め、小さな箒でくもの巣をとってやったのさ。どんどん上って、階段のてっぺんにつくと、
お婆さんの部屋の扉の前についた。娘が、七年前から一滴の油もさしたことのない、この
扉にも油をさしてやると、それはひとりでに開いたのさ。けれども、これで七本の油はな
くなってしまったし、七本の小さな箒もすり切れてしまったから、もうなんにも残ってい
なかった。
部屋には、お婆さんが眠っていて、ダイアモンドは梁にぶらさがってた。娘はいすに上
って、ダイアモンドをとって、いそいでとび出したのさ。ところが、お婆さんはたちまち
目をさまし、梁にダイアモンドがないのに気づくと、起き上がってこう叫んだ。
扉よ、とびら、娘をはやく捕まえろ
階段よ、かいだん、どろぼう娘を捕まえろ
扉よ、とびら、どろぼう娘を捕まえろ
けれども、七年ぶりに油をさしてもらった扉は、すっかりごきげんで、七年ぶりに清め
てもらった階段は、すっかりごきげんで、娘を通してくれたのさ。
お婆さんは、自分で追いかけはじめた。そして娘が、あの七人の女の近くまでくると、
叫んだんだ。
女よ、おんな、どろぼう娘を捕まえろ
すると七人の女は答えた。
「あたしたちゃ、七年前から一本の箒を争ってきたけど、いまじゃ一人に一本あるのさ」
そして娘を通してくれたのさ。
もっと行くと、お婆さんは七人の仕立屋と七匹の犬に気がついて、こう叫んだ。
仕立屋よ、したて屋、どろぼう娘を捕まえろ
犬よ、いぬ、どろぼう娘を捕まえろ
仕立屋はこう言った。
「おれたちゃ、七年前から一本の針を争ってきたけど、いまじゃ一人に一本あるのさ」
そして、犬はこう答えた。
「おいらたちゃ、七年前から一つのパンを争ってきたけど、いまじゃ一匹に一つあるのさ」
そうして、仕立屋も犬も、娘を通してくれたのさ。娘は、こうしてダイヤモンドを手にい
れて、王子さまのお城にたどりついたんだ。
その次の日娘は、中庭に一列にならんだお城の男たちぜんぶの前を歩かされた。そのう
ちのだれを聟に選ぶかっていうんだな。
「この男にするかね」って、男たちの前を通るたんびに聞かれるんだ。
「いいえ」って娘が答える。
こうして、最後にボロボロの着物をきた男のところへきた。
「この男にするかね」って尋ねられて、
「ええ、この人にします」って、娘は答えた。
それが王子さまだったんだ。
勇敢な娘は、試練にたえて、王子さまを手にいれたのさ。
それから、二人は結婚することになって、いままで誰もみたことのないような素晴らし
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い式を挙げたんだ。
牧場についたぞ
トリック・トラック
わたしの話もおしまいだ
(アリエージュ地方のフーガ・エ・バリヌフに住む、63歳のマリー・アルノー夫人から
1949年12月と1950年12月に聞く。モーリス手稿)
【解説】アプレイウスの『黄金のロバ』に収められた「アモールとプシュケ」のエピソー
ドによって、よく知られた話です。
三人の娘に求婚するカラスは、ふしぎな力をもち、しかも怪物めいていますから、導入
部は日本の「蛇婿入り」や「猿婿入り」のような異類婚姻譚の場合とよく似ています。し
かしすぐにカラスが美しい王子に変身し、娘と幸せな結婚生活をおくるところが異なりま
す。
娘が長い旅をかさねて訪れる他の果てには、ふしぎなお婆さんが犬や 階段や扉に守られ
て住んでいますが、これはロシアのヤガー婆さんやドイツのホレ婆さんと同じく超自然的
な他界の主でしょう。
娘は王子の言いつけをよく守り、他界の宝を奪い、見事に脱出します。このスリ リング
な脱出には決められた約束があって、世界各地の昔語りのなかに回しパターンが見られま
す。最後の語り納めも、きちんと約束を踏まえた見事な語りです。
なお、ボーモン夫人の「美女と野獣」もこの話のサブ・タイプに分類されます。
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