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大学等の研究成果を 特許出願するために

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大学等の研究成果を 特許出願するために
大学等の研究成果を
特許出願するために
-知的財産の活用を目指して-
平成24年6月
特 許 庁
目次
目次....................................................1頁
研究成果の特許出願と活用の重要性 .......................3頁
研究成果の発表前に特許出願の検討を .....................5頁
共同研究と共同発明 .....................................9頁
大学の知的財産の創造・保護・活用のための体制 .........11頁
外国での特許取得 .....................................14頁
こんなときには? .....................................16頁
特許電子図書館(IPDL) .................................18頁
研究の参考に .........................................20頁
お問い合わせ先 .......................................22頁
1
研究成果の特許出願と活用の重要性
知的創造サイクル
知的創造サイクルとは、研究開発により発
明をし、その発明で特許権を取得し、その権
利を活用して事業を行って収益をあげ、この
収益を用いて新たな研究開発を行うというシ
ステムです。
これを大学と産業界で上手く回していくこ
とが、産業の発展を促し、豊かな社会を築い
ていくことになります。
大学の高い研究ポテンシャル
大学は、我が国における研究者の約37%が在籍し、研究費の約20%が投入されているこ
となどからわかるように、非常に高いポテンシャルを有しているところであり、また、企
業ではなかなかできない基礎研究もおこなっているところです。
大学の占める研究者数
大学の占める研究費
20%(約3.4兆円)
37%(約31万人)
我が国の研究費
約17.1兆円
我が国の研究者
約84万人
出典:総務省「平成23年 科学技術研究調査結果の概要」
コラム
大学の第3のミッション
~研究成果の社会的活用に向けた大学の役割
大学は、研究者の自由闊達な発想と研究意欲、高度な研究能力を源泉として、独創的・
基礎的・先端的な研究を行うことにより、広く社会や人類全体の発展の基礎となる知見を
生み出すとともに、次世代を担うすぐれた人材を育成することが期待され、大学には「教
育」と「研究」という伝統的な二つの使命があります。加えて現在では、研究成果を産業
界に技術移転することにより産業を振興し、国の経済の継続的な発展に寄与するという社
会的・経済的な役割が、「大学の第3の使命」としてクローズアップされ、大学で生まれた、
質の高い知的財産を産業界へ展開することが、大きく期待されています。
2
研究成果の特許出願と活用の重要性
特許と実用化研究
一般的に、基礎研究の成果を製品化するまでには、さらに多くの実用化研究が必要とな
ります。企業が安心して実用化研究を行うためには、ライセンスを受ける研究成果が、特
許等で適切に保護されていることが必要です。
論文発表のみに留まる研究成果に比して、特許権等で適切に保護された研究成果は、ラ
イバル企業の参入に対して対抗できることから、ライセンスを受ける企業は安心して実用
化研究を行うことができます。また、投資した研究費回収の期待も大きくなることから、
大学の研究成果をライセンスすることへのインセンティブも高まります。
■医薬品の場合■
医薬品の場合、基本となる化合物が発見された後、薬理研究、動物実験、臨床試験と研究が進
むにつれ、研究費が増大していきます。そのため、大学で開発された基本となる化合物が、最終
的に薬を製造・販売した際に、研究開発費を回収できるように特許化されていなければ、企業は
大学から技術移転を受け応用開発研究に着手するのを躊躇します。つまり、研究成果を特許化す
ることは、応用研究や開発研究を一層推進する効果があるということです。
事業化で広がる研究
大学の特許化された研究成果を、企業にライセンスし、事業化することにより、さらに
大きな研究へと発展していきます。
■名古屋大学の例■
名古屋大学の赤﨑勇特別教授により発明・開発された青色発光ダイオード(青色LED)はLED応
用産業に革命をもたらしたといわれています。同大学では、独創的・先端的な科学技術研究を推
進し広く社会に貢献するために、青色LED関連の特許料収入を活用して、産学官連携推進本部や
レンタルラボ等が入居する赤﨑記念研究館を建設しました。
特許になるための要件
特許となるためには、新規性や進歩性等の要件を満たしている必要があります。
■産業として利用できるか
■新しいかどうか(新規性)
■容易に考え出すことができないか
(進歩性)
■明細書の記載が規定どおりか
■その他
例:人間を手術、治療又は診断する方法は×
医療機器、医薬品は○
例:公然と知られた発明(発表、TV放映)は×
公然と実施された発明(販売)は×
刊行物に記載された発明(特許公報、論文、
書籍、インターネット)は×
例:当業者が容易に考えつかない発明は○
例:当業者が実施可能な程度まで技術内容の記
載をしてあれば○
例:同じ発明が先に出願されていなければ○
反社会的な発明は×
3
研究成果の発表前に特許出願の検討を
●研究成果の発表前に特許出願をすることが原則
・研究成果の中に特許出願できそうな成果はないでしょうか。
・発表後にした特許出願は、原則として特許を取得できません。
●なるべく早く出願
・同じ発明については、最先の出願人のみが特許を受ける
ことができます。
●研究段階から特許文献調査を行って、重複研究や
無駄な出願を回避
・特許電子図書館(IPDL)や民間の特許データベースを活用
した先行技術調査を行うことで、重複した研究を回避する
とともに、特許を取得できそうなもののみを出願しましょう。
知的財産の効率的活用のためのモデル
現在、多くの大学が、大学で創出される知的財産を社会で活用するための取組を始めて
います。その第一ステップとして、教員が発明をおこなった場合に、大学に届け出ること
をルールとして定めています。
大学の教員
の発明
コラム
大学に帰属
「職務発明」
大学知的財産本部、承認
TLO等を通じた技術移転
社会で
有効活用
学会発表で失われた日本の基本特許
ジベレリンは日本で発明された植物品種改良剤であり、植物の生長促進物質として作用
します。1926年に黒沢英一によってイネのバカ苗病を引き起こすカビの分泌物が発見され、
1935年に東京帝国大学の藪田貞治郎と住木諭介によってバカ苗病の学名である「ジベレラ
フジクロイ」にちなんで命名されました。1958年に農業試験場でブドウの房を大きくする
ための実験をしていて、種なしブドウが得られるという予想外の効果が発見されるなど、
現在でも各種農作物の生産に役立てられています。
この発明は、当時非常に注目を集めた革新的な発明でした。研究に携わった住木博士は、
海外渡航が著しく制限されていた戦後まもない時期にもかかわらず、招待されてニュー
ヨークでの国際学会に参加し研究成果を発表しましたが、この発明についての基本特許は
日本人によって取得されていません。住木博士は学会発表後に特許出願をしたため、自分
の研究発表論文が出願前公知となってしまったからです。
その一方で、この発明を知ったアメリカの製薬会社は、ジベレリンが空気中の酸素に
よって劣化することをヒントに、合成樹脂のカプセルで包錠するという改良技術に関する
特許を取得しました。このため日本で研究開発された基本発明であるにもかかわらず、ア
メリカに対して高額の特許料を払わなければ実施できないという事態が生じたのでした。
4
研究成果の発表前に特許出願の検討を
学会発表・論文発表と特許出願
研究者にとって論文発表・学会発表は重要な業務です。しかし、研究の成果を特許出願
するとともに論文などで発表する場合には、内容とタイミングをうまく調整しないと思わ
ぬ失敗をします。
■特許出願は論文発表の前にする■
『特許出願は論文発表前にする』ことが原則と理解して下さい。
特許出願前にその発明の内容が公に知られている場合には、たとえそれが発明者自身
の発表に基づくものであっても、原則として特許を受けることができないからです。し
たがって、論文発表・学会発表より前に、特許出願をすることが必要です。
■出願は1日でも早く■
特許出願が遅れることは特許の成立に悪影響を及ぼします。特に、競合相手がありそ
うな研究テーマでは、特許出願は1日でも早くしなければなりません。
特許制度は出願した日を重視し、同じ発明であれば、先に発明を完成した者にではな
く、1日でも早く出願した人に特許が与えられます。いち早く発明を公開しようとした
者を保護しようとする特許制度の目的に沿ったものです。
5
研究成果の発表前に特許出願の検討を
新規性喪失の例外
特許出願は学会・論文発表前にすることが基本です。しかし、一定の条件を満たした場
合は、学会・論文発表後の出願であっても特許が受けられる可能性があります。ただし、
外国(特に欧州)で特許を受けることができなくなったり、出願前の他人の発表や出願
(例えば本人が発表した発明の改良発明)により拒絶されたりする場合がありますので、
十分な注意が必要です。
■新規性喪失の例外適用の対象となる場合(特許法第30条第2項)■
・学会において発表する
・刊行物に発表する(論文発表)
・電気通信回線を通じて発表する
・公開試験を行う
等の、特許を受ける権利を有する者による公開
■特許出願と学会・論文発表の時期■
発明
出願
発表
①発明~出願~発表(発表前の出願)
発表前に出願を行っており、理想のケー
ス。
発表後6ヶ月
①
②発明~発表~発表後6ヶ月以内の出願
自己の発表後6ヶ月以内に出願された場合
は、新規性喪失の例外規定の適用を受け
ることが可能。ただし、外国で特許を受
けることができなくなったりすることが
ある。
出願
②
出願
③発明~発表~発表後6ヶ月以降の出願
自己の発表後6ヶ月を過ぎて出願された発
明は、発表した事実により新規性を失う。
③
6ヶ月
■参考情報-新規性喪失の例外の各国比較-
国名
対象
期間
出願時の手続
根拠条文
特許を受ける権利を有する者による公開
日本 (学会での発表、刊行物による発表、
電気通信回線を通じた発表 等)
6月
必要
特許法第30条第2項
米国
全ての公開
1年
不要
米国特許法第102条(b)
欧州 特定の国際博覧会
6月
必要
欧州特許条約第55(1)(b)
6
研究成果の発表前に特許出願の検討を
職務発明
大学や会社における職務として研究・開発をした結果として完成した発明は、「職務発
明」と呼ばれます。
研究者と大学あるいは企業は雇用関係にあり、使用者である大学・会社は、研究者に対
し給与の提供をし、研究者の研究能力向上に投資しており、また、研究のための設備・費
用を提供するなど発明の完成に大きな貢献をしています。こうした使用者の貢献度を考慮
して特許法では、生み出された発明の実施や、発明に対する権利を承継することについて、
使用者の権利も保障しています。
具体的には、大学など使用者は職務発明について、研究者から「特許を受ける権利」
(あるいは特許権)を譲り受けることを事前に定めておくこと(予約承継)が認められて
います。また、研究者がその権利を第三者に譲ってしまっても、使用者はその発明を実施
できる権利(通常実施権)を有するとされています。
職務発明に対する補償
職務発明に該当する発明について、使用者が「特許を受ける権利」を承継した場合、発
明者は、使用者から相当の対価の支払いを受けることができます。
大学の発明取扱い規定
職務発明か、自由発明か
発明
研究成果である発明が、職
務発明にあたる場合には、発
明に係わる権利を大学に承継
することになります。各大学
では「職務発明規程」・「発
明取扱規程」等を定めて、そ
の取扱いを規定しています。
発明に該当する研究成果に
ついては、各大学の発明規程
に従って取り扱い・管理をし、
研究者個人の判断で勝手に処
分することのないようにしま
しょう。
ただし、具体的な発明と権
利の取扱は、大学と研究者と
の契約により異なりますので、
注意が必要です。
自由発明
職務発明
発明届
研究者個人の権利
大学の長
出願するか否か
を含め、発明の取
扱を研究者自身が
判断します。
発明委員会
受理・審査・認定・出願の可否
大学として出願しない
大学として出願しない場合
でも、出願する権利を大学が
持っており、研究者が勝手に
出願したり、処分したりでき
ないことがありますので注意
が必要です。
発明と権利に関する具体的
な取扱は、大学と研究者との
間の契約によります。
大学として出願
7
共同研究と共同発明
数人で発明をした場合(共同発明)
一つの発明を数人、例えばA、B、Cの三人の共同で完成したときは、その全員が「発
明者」となり、その共同発明についての「特許を受ける権利」を全員で共有することにな
ります。
一方、発明を完成するまでの過程で、補助的な仕事に関わっただけであったり、共同研
究者として名前が入っていただけで、実際にはその発明を直接行なわなかった者、資金提
供や設備の提供による援助をしたが直接発明に携わらなかった者は、「発明者」とはなり
ません。
完成した発明が、単独の発明者によるものなのか、共同の発明なのかが、特許出願の際
や出願後に問題になる場合がありますので、共同研究者は研究ノートや打合せ記録などの
資料を整備しておくことが必要です。
■論文掲載者との違い■
研究論文などには、研究室で研究に関係した全員の氏名を掲載することがありますが、
特許を出願する場合には、真に発明に関与した者(発明者)のみを、そして発明者全員
を「発明者」として願書に記載する必要があります。
大学と企業との共同研究・受託研究
技術の高度化・複合化に伴い、大学の研究資源への期待による産学連携推進により、大
学等と企業との間の共同研究、受託研究などが増加し、活発に行われています。
■ 権利の帰属について■
真に発明に関与した者(発明者)が誰なのかにより次の3つのケースが考えられます。
①企業の研究員独自の発明
②大学教員独自の発明
③大学教員と企業の研究員との共同発明
特段の定めがなければ、①の場合は、各企業の職務発明規程により、職務発明であれ
ば通常使用者である企業に「特許を受ける権利」が帰属します。②の場合は、大学の職
務発明取扱規程により、大学又は大学教員個人に権利が帰属します。 ③の場合には、
権利は原始的に大学教員と企業の研究員との共有となり、大学の職務発明取扱規定及び
企業の職務発明規定により、(a)大学と企業との共有又は(b)大学教員個人と企業との
共有、になります。
権利帰属をめぐるトラブルを回避するためには、共同研究や受託研究を始める前に、
成果物の知的財産権の取扱いを契約などで予め定めておくことが大切です。また、誰が
発明者であるのかをしっかりと判断し関係者の間で共通の認識を形成しておくことも大
切です。
8
共同研究と共同発明
特許出願
権利が共有となる場合には、特許出願の前に、それぞれの研究員の貢献度、費用分担な
どを踏まえて、それぞれの特許権の持分を決めた上で、別途締結する共同出願契約にした
がって共同出願するようにします(一般的には、共同研究の契約書でこのように取り決め
ておきます)。
■共同研究における持分に関する契約の例■
甲及び乙は、甲に属する研究員及び乙に属する研究員が本共同研究の結果共同して発
明等を行ったときは、当該発明等に係る出願等の前に、速やかに、それぞれの研究員の
貢献度、費用分担等を踏まえ、甲及び乙の本発明等に係る知的財産権の持分を定めた上
で、別途締結する共同出願契約にしたがって共同出願する。この場合、出願手続及び維
持管理に要する費用(以下「出願等に要する費用」という。)は、甲乙の持分割合に応
じて負担するものとする。
特許の実施
共同出願を行って取得した特許権は、共有の特許権となります。この場合、大学と企業
はともに特許権者であり、それぞれ独自に特許発明を実施することができます。
一方、共有の特許権は、特段の定めがない場合、他の共有者の同意なしには、その権利
を第三者に譲渡したり、第三者に実施許諾したりすることはできません。
研究成果の社会還元という大学の目的や、大学自身は生産手段を持たず自己の特許発明
を実施(製品の生産・販売等)をすることはないという大学の事情を考慮し、共同研究・
受託研究の契約の段階で、例えば以下のような契約がなされることもあります。
①共有の特許権について、共有者たる企業が正当な理由なく特許発明の実施をしな
い(研究成果の社会還元をしない)場合、大学はその特許権について第三者に実施権
を許諾することができる。
②共有の特許権について、共有者たる企業が特許発明を実施するときは、大学が特
許発明の実施を放棄する(共有者たる企業と競業しない)ことを条件に、共有者
たる企業は大学に一定額を支払う。
秘密保持・研究成果の公表・ノウハウ
共同研究等の過程で、企業において秘密として管理されている技術上あるいは営業上の
情報を知ることがありますが、これらについては「営業秘密保持規定」等を定めるととも
に、その遵守に努めるようにします。
また、研究成果の公表については、企業側の了解も必要となります。研究成果の公表と
いう大学の社会的使命も踏まえて適切な時期に公表できるよう、研究契約において取り決
めておくと良いでしょう。
また、「ノウハウ」として秘匿する情報については、その指定の方法や秘匿期間・公表
方法などを研究契約において取り決めておくとよいでしょう。
9
大学の知的財産の創造・保護・活用のための体制
特許を取るだけでは不十分!
特許権を取得しただけでは、研究成果は社会で活用されません。その特許を実用化する
企業等にライセンスするなど、知的財産の活用を図ることが重要です。
①戦略的な知的財産の管理体制
②高いマーケティング能力
③法律知識と交渉能力
①強い権利の取得
②最適な実用化企業の発掘
③適切な契約
そのために、知的財産管理・活用体制が必要
知的財産本部やTLOがあります~大学における産学連携体制の一例
学
長
研究組織
知的財産本部
共同研究
センター
大学院・
附置研究所
【共同研究や受
託研究の推進】
研究成果
(機能)
・知的財産戦略の企画・立案
・知的財産創出・取得のマネージメント
・知的財産の管理・活用ルール作成
・研究成果・秘密情報の保護
・外部人材の積極的活用
・内部人材の教育・研修
・企業経験者(知的財産部、研究開発部
等の経験者)
・弁護士・弁理士等の専門家
など
連携
ベンチャー
支援組織
インキュベー
ションセンター
【大学発ベン
チャー創業支援】
出資・役員派遣等
企業ニーズと、大学の研
究室、研究者のもつ研究
シーズとのマッチングを
行い、産学連携による共
同研究、技術移転を実現
させるための支援を行い
ます。このような機能を
有する組織を「リエゾン
オフィス」と呼んでいま
す。
事務組織
研究協力
・部課等
【共同研究・受託
研究の契約事務】
TLO
・研究成果の発掘、評価、選別及び知的財産権化
(知的財産本部と一体となって実施)
・知的財産の活用・対価の配分 等
企業による
研究の依頼等
研究成果のマーケティング・
ライセンス等
10
大学の知的財産の創造・保護・活用のための体制
TLO:研究成果を企業に技術移転するための機関
TLOは、研究成果がより広く社会で活用されるよう設けられた組織であり、知的財産本部
と連携しつつ、大学等の研究成果を産業界に技術移転しています。特許出願するか否か、
技術移転するか否か等については、TLOや知的財産本部に相談することをお奨めします。
■承認TLO(39機関)の分布(平成24年4月現在)■
(
INFORMATION
)内は主な提携大学
参考URL
■承認TLOについては、経済産業省大学連携推進課ホームページ
http://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/top-page.htm
をご参照下さい。
■一般社団法人 大学技術移転協議会(UNITT)
産学連携を効率的に推進するための、TLOや大学知的財産本部からなる組織です。
http://www.unitt.jp/ をご参照下さい。
11
大学の知的財産の創造・保護・活用のための体制
コラム
特許化にあたって 研究者は・・・
特許化にあたっては、特許が適正に取得できるよう、また、取得した権利が有効に活用
できるよう、必要な権利範囲の設定を行う必要があります。
このため、最も技術を知っている研究者が特許明細書の作成などに協力することや、さ
らに、特許庁の審査において拒絶理由通知書が送られてきた場合はその対応のため、研究
者が協力することが時として必要となります。
研究成果が社会で広く活用されるために、その特許の権利を有効に利用できる内容にし、
また、製品開発をする企業が安心して投資に踏み切れる内容にして、大学から民間への技
術移転の流れを円滑にする必要があるためです。
TLOスタッフも事業化の経験等をもとにして、弁理士とともに戦略的な対応を行います。
研究者からは、発明の詳細情報、構成(技術手段)を示す図面、効果を示す表・グラフ等、
さらには、発明の利用分野、実施候補企業等を提示するなど、適切な権利化・実施化にむ
けて積極的に協力していくことが大切です。
INFORMATION
知的財産の創造・保護・活用に向けて
大学において創出される知的財産を、技術移転、共同研究、委託研究やベンチャー創出
といった形で産業界において活用するため、特許庁((独)工業所有権情報・研修館)は以
下の事業を行っています。
① 広域大学知的財産アドバイザーの派遣
知的財産管理に関する情報の共有に取り組む大学間ネットワークを対象として、大学内
の有用な技術を確実に捕捉・選別して適切な権利保護・活用を行う仕組み作りを支援する
ため知的財産管理の専門家(広域大学知的財産アドバイザー)を派遣しています。
② 知的財産プロデューサーの派遣
公的資金が投入された研究開発プロジェクトを推進している大学や研究開発コンソーシ
アムを対象として、プロジェクト全体を見据えた知財戦略の策定を支援するため、知的財
産マネジメントに関する専門家(知的財産プロデューサー)を派遣しています
③ 海外知的財産プロデューサーの設置
海外進出を開始・拡大しようとする企業(大学発ベンチャー等も含む。)に対し、海外
進出先での事業内容や知的財産の保護事情等を踏まえて、適切な知的財産マネジメントに
関するアドバイスを行い海外進出を知的財産の面から支援するため、企業での駐在経験を
有し海外の知的財産に関する事情に精通した専門家(海外知的財産プロデューサー)を設
置しています。
詳細については、(独)工業所有権情報・研修館HPをご参照下さい。
http://www.inpit.go.jp/katsuyo/index.html
12
外国での特許取得
優れた知的財産は海外においても権利化することが重要です。
研究成果の権利化を日本だけでなく、外国においても行うことで、研究開発にかかった
コストを日本の領域だけでなく、外国でも回収できる可能性が広がり、回収のスピードが
上がります。そして、このことは更なる研究開発の促進につながるとともに、優れた知的
財産の社会還元を図ることができ、産業の発展に寄与していきます。
特許権の効力が及ぶのは、特許を取得した国の領域内に限られ、その領域を越えて他
国にまで及ぶものではありません。これを「属地主義」と言います。
すなわち、日本で取得した特許は、日本国内のみ有効であって、外国まで権利が及ぶ
ものではありません。
外国で特許権を得るには、主に2つの方法があります。
■外国の特許庁に直接出願する方法■
権利を取得したい国の特許庁に、その国の国内法に基づき、その国の言語で出願書類を作成して出願します。
出願人
【
日本語
】
【
A国語
】
【
B国語
】
日本国特許庁
A国特許庁
B国特許庁
■国際的に統一された出願制度【特許協力条約(PCT)】を利用した方法■
多数の国に出願することは出願人にとって大変な作業となります。
特許協力条約(PCT)は外国出願の方法を合理化し、手続を簡易的で経済的なものとすることをねらいとした条約です。
●日本国民等であれば日本国特許庁(受理官庁)に、日本語(又は英語)による国際出願をすることによって、
全てのPCT加盟国へ同時に出願した効果を得られます。
●すべての出願は先行技術調査(国際調査)が行われ、その報告書が出願人に送付されます。これにより出願人は、
各国での特許取得可能性を検討することができます。
●各国に対する手続きは、優先日から30ヶ月の猶予期間があります。出願人は、この期間を利用して、特許取得可能性
の検討や、より良い翻訳の作成、ライセンス・パートナー探し等を慎重に行うことができます。
国際公開
本頁で述べている方法は、あくまでも手続に関
するものです。出願された発明を特許とするか同
課の判断は、各国特許庁がそれぞれ独立して行い
ます(各国特許独立の原則)。
A国特許庁に翻訳文提出【A国語】
A国
B国
B国特許庁に翻訳文提出【B国語】
<
出願人
多くの国では、一国にした最初の出願に基づい
て後に他国へ同一内容の出願をした場合、一定条
件(後の出願が最初の出願から12ヶ月以内である
こと)の下で、他国への出願を最初の出願をした
日に行ったものとして新規性、進歩性の判断など
をすることとしています(優先権制度)。
見解書
日本国特許庁
国際調査
出願人
国際出願【日本語(又は英語)】
優先権制度のイメージ
>
最初の出願
【
日本語
最初の出願日
】
日本国特許庁
A国に直接出願【
A国語 】
B国に直接出願【
B国語 】
PCT出願
【
日本語
】
A国特許庁
B国特許庁
日本国特許庁
12ヶ月
13
外国での特許取得
経済のグローバル化に伴い、世界的に
外国への特許出願件数が増加
コラム
日本国出願人の出願構造の変化
全世界の特許出願件数の推移
(万件)
20 0
60
18 0
50
自国出願
16 0
44%
14 0
17.2 万件
40
43%
12 0
10 0
海外出願
自国出願
海外出願
7.1 万件
40%
30
36%
80
20
60
40
64%
60%
57%
56%
1995
2000
2004
2 0 0(
8 出願年)
33.4 万件
33.0 万件
1995
2008
10
20
0
0
企業活動のグローバル化に伴い、全世界の特許出願は増加しています。特に、海外への
出願が顕著に増加しています。
また、日本企業の国際出願も増加しています。日本企業は外国でも権利を取得すること
を目指しているといえます。
INFORMATION
外国出願をスムーズに進める方法
■特許審査ハイウェイ■
特許審査ハイウエイとは、第一庁(例えば日本)で特許可能と判断された出願について、
出願人の申出により、第二庁(例えば米国)で簡易な手続で早期審査が受けられる枠組の
ことです。これにより、第二庁における安定した強い特許権の早期取得を支援します。
2012年5月現在、日米、日韓、日英、日独間など22カ国間で実施しています。
詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/patent_highway.htm
■ JP-FIRSTの実施について■
特許庁は、特許審査の国際ワークシェアリングの推進と、海外での適切な特許権の取得
のため、日本から海外への出願を対象に早期に審査着手し、いち早く日本国特許庁の審査
結果を世界に発信する施策(JP-FIRST:JP-Fast Information Release STrategy)を実施し
ています。
これにより、各国特許庁の審査官は日本での審査結果を利用することとなり、海外にお
いても質の高い審査が期待され、安定した強い権利を取得することができます。
詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/jp_first.htm
14
こんなときには?
研究成果を権利化するにあたっての支援
特許庁をはじめとする様々な機関では、大学・TLOや大学で研究に携わる研究者を対象に、
特許出願・特許権活用等のための支援を実施しています。
詳しい内容は、併記したURLをご参照下さい。(URLは変更になる場合があります。)
特許取得・維持の費用
を抑えたい
INFORMATION
そんな時は・・・
料金の軽減措置があり
ます
審査請求料・特許料の軽減措置の申請
■ 『特許料等の減免措置一覧』■
大学等、大学等の研究者、承認TLOが出願人の場合、第1~10年分の特許料及び審査請
求料が1/2に軽減されます。軽減申請をする場合は、所定の書類を特許庁へ提出する必
要があります。
詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/genmensochi.htm
1.大学等の研究者(発明者)の場合
2.大学等の場合
件:当該発明が職務発明であること。
要
申請書類:審査請求料軽減申請書
(又は特許料軽減申請書)
職務発明であることを証する書面
要
件:当該発明が大学等の研究者がした職務
発明であり、その大学等が承継したこと。
申請書類:審査請求料軽減申請書(又は特許料軽減
申請書)
職務発明であることを証する書面
職務発明について大学等が特許を受ける
権利を承継したことを証する書面
■ 権利取得までにかかる費用■
特許権を取得するためには、少なくとも以下の費用を特許庁に納付する必要があります。
・出願時・・出願料
・審査請求時・・審査請求料
・登録時・・特許料(第1~第3年分)
詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm
(上述のほかに弁理士に明細書の作成を依頼する際の弁理士費用などが必要になるこ
とがあります。)
15
こんなときには?
一刻も早く
審査の結果を知りたい
INFORMATION
そんな時は・・・
早期審査の制度を
活用しましょう
早期審査の請求をすることにより、
優先して審査が行われます。
『早期審査制度』
大学等又は承認若しくは認定を受けた技術移転機関(承認TLO又は認定TLO)が出願人
の発明については、出願人の要請に応じて他の出願に優先して早期に審査を行います。
この早期審査制度においては、審査請求がなされている特許出願について、「早期審
査に関する事情説明書」を提出して請求することにより、無料で通常の出願に優先して
審査が行われます。
詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/v3souki
/guideline.pdf
■早期審査の事情説明書を書面で提出する場合の記載例■
※これは記載例です。詳細については、特許庁HPをご参照下さい。
早期審査に関する
事情説明書
.......
.......
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特許電子図書館(IPDL)
INFORMATION
特許電子図書館(IPDL)
(独)工業所有権情報・研修館では、特許庁が発行する公報類や審査状況が確認できる
経過情報等、約8,000万件の特許・実用新案・意匠・商標の情報をインターネットを通じ
て無料で検索できる、特許電子図書館(IPDL)サービスを提供しています。
100年以上の前の技術から最先端の技術まで、特許庁が公報として公開した全ての特許
情報を検索することが可能ですので、例えば次のように利用することができます。
特 許 情 報
特徴
○最先端の技術
○最先端の技術
○技術情報の宝庫
○技術情報の宝庫
○権利情報
○権利情報
効果
○無駄な研究開発の防止
○無駄な研究開発の防止
○最新技術動向把握
○最新技術動向把握
○技術情報の収集
○技術情報の収集
○紛争の回避
○紛争の回避
詳細については、http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl
をご参照下さい。
情報収集①(学会等の論文と併せて)
技術動向を探り今後の研究の羅針盤に
情報収集②
過去の研究開発成果を活かす
社会のニーズを探る→効率のよい研究
活動の実施、他の研究者と重複した研
究の回避
技術的な問題に直面した場合に、過去の
解決手法を調べ、活かす。
出願を考えている発明に特許性があるか
ないかの調査
事業に抵触している他人の特許権が存
在しないかの調査
権利化される見込みの少ない発明の出願、
審査請求を回避→出願費用などの無駄な
支出の軽減
(例えば新規事業の起業を考えている
場合)
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特許電子図書館(IPDL)
特許電子図書館
(IPDL)ホームページ
http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl
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研究の参考に
INFORMATION
研究の参考情報
特許庁をはじめとする様々な機関では、企業や大学などの技術開発等を支援するため、
次のような情報を公開しています。
詳しい内容は、併記したURLをご参照下さい。(URLは変更になる場合があります。)
■特許出願技術動向調査報告書■
特許情報は、研究開発動向を把握し、技術開発の方向性を決定していく上で重要な情
報になります。そこで、特許庁では、科学技術基本計画(平成13年3月閣議決定)にお
いて重点分野と定められた4分野を含む8分野(ライフサイエンス,情報通信,環境,ナ
ノテクノロジー・材料,エネルギー,製造技術,社会基盤,フロンティア)を中心に
テーマ選定を行い、技術動向を分析して、その調査結果をインターネットで公開してい
ます。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/gidou-houkoku.htm
<調査テーマ>
●ライフサイエンス関連 ……再生医療、マクロアレイ関連技術、幹細胞関連技術など
●情報通信関連 ……インターネット社会における検索技術、ネットワークPOSなど
●環境関連 ……ディーゼルエンジンの有害排出物質の低減技術、ヒートアイランド対策技術など
●ナノテクノロジー・材料関連 ……バイオベースポリマー関連技術、ナノテクノロジーの応用など
●エネルギー関連 ……太陽電池、電気推進車両技術、メタンハイドレートなど
●製造技術関連 ……車両用施解錠技術、半導体の機械加工技術、電動機の制御技術など
●社会基盤関連 ……警報システム、自然災害対策関連技術、電子地図(GIS)利用技術など
●フロンティア関連 ……航空機(民需用)
■特許マップ■ ~平成23年度特許出願技術動向調査「電子ペーパー」より抜粋~
○特許出願についてみると、欧州勢は相対的に駆動方法技術に関する出願が多い。
○主要国際誌掲載論文についてみると、材料に関する論文が多く、また欧州の機関の論
文が多い。
技術区分別-出願人国籍別出願件数
(出願先国:日米欧中韓)
(1980-2009年の出願)
技術区分別-研究者所属機関国籍別
主要国際誌掲載論文件数
(1980-2010年の発行)
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研究の参考に
試験・研究の例外
1.研究を行うときは、他人の特許発明に注意しましょう
大学において試験や研究を行う場合に、他人の特許発明を実施すると、その特許発明
についての特許権侵害となることがあります。
2.特許権を侵害しないためには事前の調査が有効
ありきたりの物や方法は特許になりません。また、特許発明に係る物であっても、そ
の物が正規に購入した物であれば特許権侵害にはなりません。
一方、試験や研究において特殊な物を自作して使う場合や特殊な方法を使う場合には、
その物や方法についての特許権の有無を確認しましょう。(ライフサイエンス分野につ
いては、下記「リサーチツール特許データベース」が参考になります。)
また、例外として、下記3のように試験や研究が特許権侵害に該当しない場合があり
ます。
3.研究において他人の特許発明を使用しても侵害に当たらない場合
このような例外を「試験又は研究の例外」と言います。※試験・研究の全てが例外と
される訳ではありません。
Q1.あなたの行っている研究は、特許発明
それ自体についての試験・研究ですか?
いいえ
「試験又は研究の例外」
に該当しない。
はい
(例) 特許発明である
実験用マウスを繁殖して、
これを用いて行う新薬開
発のための研究
Q2.以下の1~3の何れかに該当しますか?
1.改良・発展を
目的とする試験
技術(特許発
明)を進歩させ
て、もっと良い
ものにしたい。
2.機能調査
特許発明の効果
や副作用を確認
したい。
3.特許性調査
特許となる要件
を満たしている
か確認したい。
いいえ
はい
「試験又は研究の例外」に該当する。権利者の許諾を得
なくても特許発明に関する研究を行うことができる。
INFORMATION
「試験又は研究の例外」
に該当しない。
(例) 特許発明を実施
して行う当該特許発明の
経済的効果の研究
リサーチツール特許データベース
試験や研究を行う際に、他人の特許発明を利用する場合は、例外を除き、特許権者か
ら利用許諾を受けることが必要です。リサーチツール特許データベースは、ライフサイ
エンス分野におけるリサーチツール特許の円滑な利用に向けて、ライセンス条件・有体
物情報・アクセス先などの閲覧が可能なデータベースです。
http://plidb.inpit.go.jp/PDDB/Service/RTPatents/index.jsp
20
お問い合わせ先
特許庁ホームページの「特許行政サービス一覧」に、各種手続や特許庁の取組についての
ご案内を掲載しています。ご不明な点は、各問い合わせ先にご連絡下さい。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/sesaku/gyousei_service.htm
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