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これで安心 - ITpro
パソコンとネットの著作権 特集1 特集1 パソコンと ネットの これで安心 パソコンやインターネットを利用する上で、著作権がらみの話題や疑問は尽き ない。法改正などで今までの常識が非常識に変わることもある。知らない間に 他人の権利を侵害しないためにも、正しい知識が欠かせない。本特集を参考に、 健全で安心なパソコン、ネットの利用を心がけてほしい。 (井原 敏宏) ※本特集は、西村あさひ法律事務所の岩瀬ひとみ弁護士、山口勝之弁護士に監修をお願いしました。 PHOTO:ⓒ Image Source/amanaimages 28 日経パソコン 2009.8.24 著作権 日経パソコン 2009.8.24 29 パソコンとネットの著作権 総論 著作権のキホンと改正のポイントを知る パソコンやインターネットを利用 する上で、著作権に関する知識は欠 かせない。例えば、パソコンに取り ●著作権の種類は多彩 著作者人格権 込んだ音楽 CD のデータを友人にメ ールで送ったりすると、著作権法違 利なのか。これを知らないと、うっ かり著作者の権利を侵害していたと いう事態も起こり得る。また、時代 著作財産権 ※譲渡や相続が可能 複製権 上演権・演奏権 氏名表示権 上映権 公衆送信権・伝達権 図 1 著作権は著作者の人格的な利益を保護する 「著作者人格権」と、財産的な利益を保護する「著 作財産権」の 2 つに分かれる。他人が勝手に著作 物を複製したり(複製権)、勝手に内容を要約した り(翻案権)すると、著作権の侵害に当たる 口述権 展示権 頒布権 譲渡権 貸与権 翻訳権・翻案権など 二次的著作物の利用権 ●2010年1月1日から始まる改正著作権法のポイント や配布が容易だからだ。 例えばレンタル店で借りてきた音 公表権 同一性保持権 反になる。 そもそも著作権とはどのような権 ※譲渡や相続は不可 か。理由はデジタルデータのコピー 違法 楽 CD は、パソコンの音楽管理ソフ トを使えば手軽にコピーできてしま 合法 ーすることは、私的使用のための複 ただし、パソコンにコピーしたデ ー タを友人にメ ー ルで送 っ たり、 →違法化(罰則なし) 海賊版 DVD などのネットオークションへの出品 →違法化(罰則あり) →合法化(条件付き) 裁定制度の拡大によるテレビ番組の二次利用の推進 →合法化 障害者向けコンテンツ作成のための複製 →合法化 情報検索サービスを実施するための複製等 製として著作権者の許可なしでも認 めている。 違法配信による音楽・映像の複製 ネットオークションでの美術品等の画像掲載 う(図 2) 。著作権法では、個人や家 族内だけで使うために著作物をコピ 特集1 →合法化(条件付き) 図 4 2009 年 5 月に衆議院、同 6 月に参議院で改正著作権法が可決、成立した。2010 年 1 月 1 日 より主に上記の内容が施行となる。違法配信による音楽・映像の複製が違法となるなど著作権の規定を 強化する一方、ネットオークションでの美術品等の画像掲載を合法化するなど権利を緩和した点も ●違法配信している音楽・映像のダウンロードは私的使用でも違法になる によって著作権法は改正が加えられ よう。 権利侵害で訴えられて有罪となっ Web ページでダウンロードできるよ る。従来は合法だった行為も改正後 著作権とは「文芸、学術、美術、 た場合、個人の罰則は最大で「10 年 うにしたりすると、私的使用の範囲 に違法になることがあるので注意が 音楽などの文化的な創造物を創作し 以下の懲役、もしくは1000 万円以下 とは認められず、複製権や著作物を 必要だ。 た作者(著作者)に対して発生する の罰金、又はこれらの併科」となる。 広く送信する「公衆送信権」の侵害 1000万円以下の罰金も 権利」のこと。著作権が保護する範 また、著作権の侵害は、損害賠償請 となる。 囲や対象は著作権法で定められてお 求などの民事訴訟につながる可能性 パソコンやインターネットの利用 そこで、まずは著作権の基本と、 り、他人が許可なく著作者の権利を もある。 は、知らない間の著作権侵害につな 著作権法の最新動向について説明し 侵害すると著作権法違反となる。 著作権の種類は多彩で、大きく2 がりやすい。ネット上のコンテンツ つに分かれる(図 1) 。一つは、著作 を利用する際は、著作権法違反にな 者の人格的な利益を保護する「著作 る可能性を考慮しておこう。 サイトや「Winny」などのファイル 正後は、定められた複製防止技術を 者人格権」だ。これには、著作物を もちろん、著作権者が認めるなら 交換ソフトでは、権利者側の許諾を 施すなどの条件を守れば、説明写真 公表するかどうかを決める「 公表 著作物の複製なども可能だ。最近で 得ていないテレビ番組や DVD ソフ の掲載が合法となる。 権」 、氏名を表示するかなどを決め は、一定の条件下で著作物の利用を トなどの動画が多数アップロードさ ほかには、過去に放送したテレビ られる「氏名表示権」 、著作物の内 認めるニュースサイトや動画共有サ れている。 番組をデジタル化する際の手続きを 容やタイトルを他者が勝手に変更す イトなどが登場している(図 3) 。こ これらの動画ファイルをアップロ 進めやすくしたり、Google などの検 ることを禁止する「同一性保持権」 れらのサービスが増えれば、ユーザ ードすることは現行法でも違法とな 索サイトが検索サービスの提供のた がある。 ーの利便性が高まるだろう。 る。ただ、現在は、私的使用でのダ めに Web ページの解析情報をサー もう一方は、著作者の財産的な利 著作権法自体も変わる ウンロードは違法ではない。改正後 バーにコピーすることを認めたりし は罰則はないものの、違法な配信と ている。 これらの改正は、 新たな ●パソコンやインターネットの利用には著作権の問題が絡みやすい HDD にコピー 音楽 CD 知人にメール で送信 複製権 Web ページにアップロード 複製権、公衆送信権 図 2 パソコンはデータのコピーが容易にできる。保存したデータをメールで知人に送ったり、Web ページで誰でもダウンロードできるようにしたりすると、複製権や公衆送信権の侵害となる ●著作権を気にせず記事や写真を利用できるサービスも登場 図 3 最近では著作物を広く活用してもらう目的で、著作権の制限を緩やかにしたサービスが登場し ている。左は仏 AFP 通信社のニュース記事を写真付きでブログに引用できるニュースサイト「AFP BB News」 。右は一定の条件下で複製なども可能な写真を公開できる写真共有サイト「フォト蔵」 30 日経パソコン 2009.8.24 益を保護する「著作財産権」だ。他 無許可の音楽・映像ファイル ダウンロード 合法 改正前 違法 音楽・動画配信 サイトやファイ ル交換ソフト アップロード 改正後 ダウンロード 違法 図 5 現行法では違法配信している音楽・映像のダウンロードは、私的使用に限って認められていた。 ただし、改正後は私的使用でも違法となる(罰則なし) 。視聴については引き続き認められる 者が勝手に著作物をコピーすること 新しいサービスが登場する一方で、 知った上で動画や音楽ファイルをダ Web サービスの登場につながると を禁止する「 複製権 」などがある。 著作権法自体も変わろうとしている。 ウンロードすると、私的使用でも違 考えられる。 著作財産権は譲渡や相続が可能で、 2010 年 1 月 1 日には、改正著作権法 法となる。 以上、著作権の基本的な説明と改 国内では原則として著作者の死後 50 が施行になる。図 4 では、著作権の 時代に合わせて著作権者の許諾な 正著作権法のポイントについて述べ 年(映画は 70 年)間保護される。 主な改正点をまとめている。 しで著作物の利用が可能になった点 た。次ページ以降では、これらを踏 パソコンはコピーが簡単 ユーザーにとって影響が大きいの もある。例えば、現行法では絵画な まえた上で、著作権に配慮しながら が、違法配信している音楽・映像の どの美術品をネットオークションで パソコンやインターネットを利用す では、なぜパソコンやインターネ ダウンロードが禁止になる点だ(図 出品する際、説明用の写真を掲載す るための実践的な方法について紹介 ットの利用で著作権が問題になるの 5) 。 「YouTube」のような動画配信 ると著作権法違反となっていた。改 していく。 日経パソコン 2009.8.24 31