Comments
Description
Transcript
SMESと電流型交直変換器を用いた 大強度陽子加速器用電磁石電源の
と電流型交直変換器を用いた 大強度陽子加速器用電磁石電源の設計 古川 光治 伊瀬 敏史 大阪大学 原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構の統合計画 として建設中の大強度陽子加速器施設では のシン 5/'5 5/'5 はじめに クロトロンの設置が予定されており,その最大有効電力は ! にものぼる .この電源としては他の原子力研究 所内設備及び原子力研究所外部の電力品質に悪影響を与え 5/ 5/ '5 '5 ないように検討を行う必要がある. での運転においては,電磁石用電源として自励式 の電流型交直変換器を用いることにより,電力補償装置を 5/ れることが確認されている 5/ '5 追加することなく,系統電圧の変動を許容範囲内に抑えら .これに基づき,はじめに最 対応の電流型交直変換器を " 台設置 して で運転し,後にさらに " 台の交直変換器を増 設することによって直流側の出力電圧の面でも 対応 '5 図 大出力電流が 全体の回路構成 # $ #% & !" として,この増設と同時に系統電圧の変動を抑制するため の電力補償装置を設置するというのが,現在の計画である. # $# の特徴をいかして電力補償装置を交 本研究では, 直変換器の直流側で連係することにより,交直変換器を増 て 設することなく,電力補償装置のみを設置することによっ 対応とする回路方式について検討する. 回 路 構 成 # $# を直流側で連係する場合の全体の回路 構成を図 に示す.この図の回路は, 対応時に増設 する " 台の交直変換器の代わりに # $# を " 台設置したも のであると考えることが出来る.また,この図の回路を " つに等分し,その つを詳細に示したのが図 % の回路であ る.図 の破線で囲まれた部分がこれに相当する. # $# は電流源であるため,電流型交直変換器と直流側 で連係するためには,図 % に示すように &''% でコン はじめに, $#% #% !" 図 モジュールの主回路構成 本研究では,この図 % の回路についてシミュレーション を行う. デンサ電圧を一定に制御することによりいったん電圧源に &'' を介して接続する.図 におけ る # $# のブロックは,図 % における超伝導マグネット本 体に加えて &'',&''% およびコンデンサを含 むものである.# $# の 台のエネルギー容量は ( ) と 変換してから, 制 御 方 式 . に *+, , の通電パターンを示す.*+/ , , に流れる瞬時電流を とすると,*+, , のもつ抵抗 0 1%(2 およびリアクタンス 0 "(3 より,*+, , の両端にかかる電圧 図 した. *+, , の負荷容量も全体の -" としている. ½ +PLGEVKQP U M# #EEGNGTCVKQP U 'ZVTCEVKQP &GEGNGTCVKQP U U 3 · ´½ · ½ µ · · ½ 2.5 2 # $# 電流一定制御のブロック図 図 1.5 1 20 0.5 0.275Hz 1 1.5 2 2.5 3 3.5 U *+, , の通電パターン 図 Gain (dB) 0.5 0 −20 −40 M8 1 Phase (rad) 4 2 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 −1 3.5 U -2 10 −2 10 −1 0 10 Frequency (Hz) 10 1 -4 図 図 *+, , の両端電圧のパターン は次式で表される. 0 4 . この式と図 の通電パターンより得られた の両端電圧のパターンを図 に示す. # $# 電流一定制御系のボード線図 0 4 4 4 4 4 4 . % # $# *+, , の電力変動分を補償するという目的から, の直流成分を通さず,6%137 以上の交流成分につい て となることが理想的である.6%137 とは,*+, , 電流の繰返し周期が .6" であることから得られ ここで, は一定値であるので,第 項目は無視し てもよい.第 項目は, の電流を一定に制御しつつ *+, , # $# と交直変換器で必要な電力を分担す *+, , の電流フィードバック制御は &'/ ' を用いて行う.交直変換器は,*+, , 電流 本研究では, るが, の指令値に対応してあらかじめ設定された電圧を直流側に る電力変動の周波数である.ここでは,初期状態から定常 出力するよう制御する.この電圧は図 状態におさまるまでの時間も考慮して, の電圧を基準に設 # $# 電流の制御の仕方によって設定が異なる ので, 〈・%〉 および 〈・.〉 節で検討する. &''% はコンデンサ電圧を一定に制御する. フィードバック制御による # $# 電流一定制御系のブロッ ク図を図 に示す.ここで, は # $# に現在蓄えら した.この場合のボード線図を図 定するが, 交直変換器の交流側電流は,フィルタによる共振を防ぐ る制御を行う. これらをまとめたシステム構成を図 を図 れているエネルギーであり, はその指令値である. これらは のリアクタンス ,現在の 電 電流指令値 より,次式で表 流 および # $# # $# ( に示す. 1 に,制御系の詳細 シミュレーション結果 〈・ 〉 せる. " に示す. ため,電流の微分をフィードバックして電流指令値に加え # $# 0 % 0 % と 0 % 0 これらの差を取り,5 制御器から得られた出力 は, 交直変換器の出力電力指令値である.図 において, は # $# と *+, , との間でやり取りされる電 で運転する場合 運 はじめに, 運転を行うために必要な設計を確認するために, 転時におけるシミュレーションを行った.この場合の主回 8 に示す.この回路においても,図 % と同様に,交 直変換器は全 " 台のうち 台を取り出したものであり,負 荷容量は *+, , の全負荷容量の " とした.こ の場合のシミュレーション結果を図 に示す. 図 より,*+, , 電流は指令値に十分追 従できており,この設計で 運転が可能であること 路を図 力である.このブロック図をもとに の応答を求める と,次式のようになる. % Ibm M# Ibm2 2.4 2 1.6 1.2 0.8 3 # 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 8 U 7.5 電流 Iinva2 Iinvb2 Iinvc2 # ! " 0 " # 0.4 1 ## $ 0.5 0 -0.5 図 システム構成 -1 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 交直変換器の各相の変調率 P /9/8CT 4.5 1 -2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 U 交直変換器の交流側での有効電力および無効電力 -6 Q 8 図 運転におけるシミュレーション 結果 〈・〉 充電電力を平均的に分配した場合 次に,提 運転時におけるシミュレー ションを行った.電流型交直変換器が直流側に出力する電 圧の初期設定値は,交直変換器の最大出力電力を 運 転時と同程度にするという目的から,図 で与えられる電 圧の とした. シミュレーションの結果を図 に示す.図 の よ り, 電流の一定制御が成功していることが分かる.図 の , より, 電流は目標値に追 従できていることが分かる.図 の より,交直変換器 の出力有効電力が全体的に正側に偏っていることが分かる. これは,システムの損失を補償するためのフィードバック制 御による影響である.また,このときの交直変換器の最大出 力電力は であった.図 の より,図 で示 した電圧の予測値は正しいことが分かる.図 の より, 案する回路方式について # $# 9 図 制御のブロック図 交直変換器の直流側電圧は,図 , *+, , : 168 ! . + の + と比較して正側に 偏っていることが分かる.これは,システムの損失を補償 するため,交直変換器の有効電力が全体的に正側にシフト の の &'' 6(∼%6. の間で 変動している.この場合,&'' と % の間のコンデン サの電圧は " 程度必要となる.ゆえに,&'' を構 しているためである.このため,図 図 モジュールの主回路構成 の出力電圧は負側に偏っており, 9 より,交直変換器の交流側の各相の変 調率は最大で 近くまで達しており,交流電源電圧の設定 値は適切であると考えられる.図 : より,有効電力は 41. (( ! の間で変化している.無効電力はほ ぼ 6( 進み で一定であり,これはフィルタに用い 成する素子には高い耐圧のものが必要になる. たコンデンサの無効電力である. から決めるのではなく,交直変換器が軽負荷となる時の直 〈・〉 充電電力を初期設定で分配した場合 さきほ どの 〈 ・〉 節の結果より,フィードバック制御のみを用いて 電流の制御を行った場合, 周期全体で平均して充電 を行うため,高い 電圧が必要となることが分かっ た.そこで,本節では,交直変換器の両端電圧を図 だけ が分かる.図 % # $# . &'' Ibm M# M8 Ibm2 3.5 3 2.8 2.1 2 1.4 0.7 1 0 39 40 41 42 44 U 43 電流 0.5 # -1 1.5 -2 1 1.5 2 2.5 3 3.5 U 2.5 0.5 -0.5 図 交直変換器の直流側電圧の初期設定 -1.5 39 40 41 42 44 U 43 電流のトラッキングエラー P /9/8CT Q 8 6 &'' が出力しなければならない電圧を可能な限り 低くした. 4 2 0 39 40 41 42 44 U 43 交直変換器の交流側での有効電力および無効電力 # $# 電流はフィードバック制御を用いない場合にも *+, , 電流の 周期のうちに充放電のバラ ンスがほとんどとれており,フィードバック制御は補 M8 助的なものとなるようにした. 6 4 2 0 交直変換器の直流側電圧の上限は,はじめに設計した 交流側電圧により出力可能な値とした. -2 -4 -6 39 40 41 42 44 U 43 運転時の最大 交直変換器の出力電力の上限は, 出力電力と同程度に抑えることとした. の両端電圧 M8 6 ;+'< , の電力と足し合わせたときのピー ク電力が小さくなるように,ピーク電力になる時点で 4 2 の交直変換器の出力電力を小さくして,この時点では 0 &'' の出力電力が大きくなるようにした. シミュレーションの結果を図 . に示す.図 の , よ り,# $# 電流の一定制御が成功していることが分かる. 図 の ,9 より,*+, , 電流は目標値に 追従できていることが分かる.図 の : より,交直変 換器の有効電力は軽負荷時や $=: の期間で大きく なっており,この期間に # $# のエネルギーが充電されて -2 -4 -6 39 40 41 42 43 44 U 43 44 U 電流型交直変換器の直流側の両端電圧 M8 6 4 2 0 -2 -4 -6 39 40 41 42 いることが分かる.この場合の交直変換器の最大出力電力 の出力電圧 16 ! であった.図 の より,交直変換器の直 流側電圧は,図 % とほぼ一致していることが分かる.これ により,# $# の充放電はフィードバック制御にほとんど は M# 4.5 4 3.5 3 2.5 頼ることなくバランスが取れていることが分かる.このた 2 の の &'' の出力電圧はバランスが取 &'' と % の間のコンデンサの電圧は . 程度でよい.ゆえに,&'' を構成する素子の耐圧は, 〈・%〉 節の例より低くすることが出来る. 〈・〉 系統電圧変動のシミュレーション結果 図 . の : より,*+, , 用電源の電力変動のパター 1.5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 め,図 45 U 電流 れており, 図 充電電力を平均的に分配した場合のシミュ レーション結果 流側電圧をはじめから高く設定しておくことによって効果 ンが分かる.このような電力変動のパターンに対して,系 的に充電を行い,これによってフィードバック制御による 統電圧がどのように変化するかをシミュレーションによっ 充電量を可能な限り減らし,必要な て解析した. るという方式について考える. このために設定した電圧を図 &'' 電圧を低減す に,シミュレーションにおいて想定した系統のイ ンピーダンスマップを示す.各>インピーダンスの基準は ? である.*+, , 電源及び ;+'< , 電源は,電流源で模擬した. 図 % に示す.この初期設定電 圧は,繰り返しシミュレーションを行って経験的に決めて いるが,その際に考慮した条件を以下に列挙する. Ibm M# Ibm2 3WCFTWRQNG /CIPGV 3.5 < 2.8 < 2.1 $GPFKPI /CIPGV CPF 5/'5 1.4 0.7 0 21 22 23 24 2QYGT 5WRRN[ 26 U 25 M8M8 /8# M8 電流 # 1.5 1VJGT .QCFU 図 系統のインピーダンスマップ 1 0.5 0 -0.5 1 -1 -1.5 21 22 23 24 0.5 26 U 25 0 電流のトラッキングエラー -0.5 P /9/8CT Q -1 8 3 6 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 U 7 7.5 8 U ラインにおける電圧変動率 4 2 0 -2 2 -4 21 22 23 24 1 26 U 25 0 交直変換器の交流側での有効電力および無効電力 -1 M8 -2 6 3 4 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 ラインにおける電圧変動率 2 0 -2 -4 図 系統電圧の変動率のシミュレーション結果 -6 21 22 23 24 26 U 25 の両端電圧 ま と め M8 6 4 # $# を用いる 2 大強度陽子加速器用電磁石電源として, 0 -2 方式について検討した.その結果を以下に要約する. -4 # $# を用いた電力補償装置を 対応の交 直変換器の直流側で連係することにより, 対 -6 21 22 23 24 ( ) 26 U 25 電流型交直変換器の直流側の両端電圧 応の電源システムから交直変換器を増設することな M8 6 く 対応とする回路方式を提案した. % *+, , 電流について,提案した回路方式 4 2 0 ( ) -2 -4 を用いた場合も指令値に追従できることを確認した. -6 21 22 23 24 . # $# と交直変換器との電圧分担を適切に行うこ とにより,直流電圧 . のチョッパと ( ) の # $# を " 台ずつ増設することによって に拡張可 26 U 25 ( ) の出力電圧 M# 4 3.65 3.3 2.6 0 5 10 15 20 25 分に抑制できることを確認した. 30 U " 電流 能であることを確認した. ( ) 提案した方式を用いた場合,系統電圧の変動を十 2.95 今後の課題としては, 台の交直変換器と # $# を連係 して制御する方式について考えることと,今回のシミュレー 図 充電電力を初期設定で分配した場合のシ ミュレーション結果 ションモデルについて,小容量のモデルで実験を行い,そ の性能を確認することである. 文 に示す.図 の より, ラインにおける電圧変動幅は 6%∼ 6%>となる.図 の 9 より,"" ラインにおける 電圧変動幅は 6%∼6(%8>となる.これらの結果より, # $# による電力補償によって系統電圧変動が十分に抑制 この場合のシミュレーション結果を,図 献 ( ) !" # $ %"& ' (& ') *++,,)+--+ "++.,- ( ) 武藤 * /$( 01 主リング電磁石電源の概要説明,00 年 月 日 ( ) 武藤 * 01 リングの 01 運転時に於ける電力及び電圧変動 について,00 年 月 日 されていることが分かる.