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幸福マーケティングの最前線

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幸福マーケティングの最前線
Japan Marketing Academy
★
論文
幸福マーケティングの最前線
❶ ——— 幸福論の拡がり
❷ ——— 幸福指標作成の現状
❸ ——— 幸福指標を作成する意義
❹ ——— Being から Well-being へ
❺ ——— 幸福感を変える時間の使い方
❻ ——— 幸福感を変える人間関係のつくり方
❼ ——— 参加するものとしての幸福
❽ ——— 京都での幸福感の測定
❾ ——— ナッジという新しいマーケティング
袖川 芳之
それを取り戻すかのように,さまざまな国や
● ㈱電通 電通総研 ヒューマン・インサイト部 部長
自治体,団体が幸福指標作りに取り組み始めて
いる。その目的は「GDP に“代わる”指標と
❶ ——— 幸福論の拡がり
して幸福指標を策定する」とするものもあれ
ば,より慎重に「GDP で測れないものを測り,
2011 年 11 月,ブータン国王夫妻が新婚旅行
GDP を“補完するより包括的な”幸福指標を
のため日本を訪問し,多くの日本人を魅了した。
策定する」としているものもある。いずれにし
ブータン国王夫妻の威厳と物腰,国会や交流会
ても,幸福を求める心は,経済成長によって与
での真摯なメッセージ,そして被災地の子供た
えられる幸福感への信頼が本格的に崩れてきた
ちに対して希望を与える「心の龍」の話も魅力
ことを示している。
的ではあったが,日本人が特に心を惹かれたの
本稿ではいま取り戻そうとしている幸福とは
はブータンが「幸福の国」であるという点に違
どのような幸福なのか,今の社会状況を変革す
いない。ブータン国王の日本訪問を取り上げた
るためにはどのような幸福指標が有効なのか,
テレビ番組の多くも「幸福の国ブータン」とい
そして幸福への関心がマーケティングに与える
うテーマで番組が構成されていた。日本人が
新しい展開について検討する。
失ってしまったものへの郷愁をこめて,幸福な
国の国王だから立派なのだ,というストーリー
❷ ——— 幸福指標作成の現状
を描いているように見えた。
かつて戦後の日本人はアメリカのテレビドラ
国や自治体が幸福指標を策定する動きが世界
マの中に自分たちが手に入れたことのない憧れ
中で広がっている。幸福を言葉として定義する
の生活を見たが,今はブータンに自分たちが
だけでなく,具体的な数値として可視化するこ
失ってしまった生活の美意識に憧れを見ている
とを目的としている。
のではないだろうか。
日本でも 2009 年から政府が「幸福度に関す
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る研究会」
(座長:山内直人 大阪大学大学院教
国民生活指標」を作成し,生活大国としての国
授)を発足し,2011 年 12 月に報告書が提出さ
民の生活の質を測定するものとして県別のラン
れた。
キングも発表していた。ところが,経済的には
これに先立って,フランス政府はスティグ
豊かで人口が流入している県のランキングは低
リッツ,アマルティア・センを委員とした「経
く,逆に過疎化が進み人口流出が止まらない県
済のパフォーマンスと社会進歩の測定に関する
が上位に多かったことから,実感を反映してい
委員会」
(いわゆる「スティグリッツ委員会」
)
ないとして 99 年に中止されたままになってい
で社会の豊かさを測る指標のあり方を検討し,
る。これをみても,住居の広さ,一教室当たり
2009 年に中間報告書が提出された。
の生徒の数,一人当たりの公園の面積などの「生
OECD も 2004 年から幸福指標の策定に向け
活のゆとり」を指標として生活の質を測ると実
た世界会議を開催している。国の統計が国民の
感に合わないものができてしまうことがわか
生活の状況や社会の進歩を十分に捉え切れてい
る。
ないのではないか,という視点からより良くそ
飯田経夫は『豊かさとは何か』の中で,戦後
れらを捉えるための指標体系作りの一環として
の日本の豊かさは「インダストリアリズム」と
幸福指標の策定を進めている。これまでに 3 回
いう産業基盤が支えていたと指摘している。男
の国際会議が開かれガイドラインが作成されて
女が役割分担をして家族を維持し,経済成長と
いる。2012 年にはインドのニューデリーで第 4
人口増加を両立させるシステムを確立したこと
回の会合が開催される予定である。2011 年 12
が豊かさの基盤になっていたのだ。
月に東京の政策研究大学院大学で「幸福度に関
人々が求めているものは人と人とのつながり
するアジア・太平洋コンファレンス」が開催さ
や絆であるといわれるが,実際により切実に求
れたのは,第 4 回会議への準備としてのリジョ
めているものは,その基盤となる十分な収入や
ナルな会議として開催されたものである。
雇用,老後生活の見通しなどの経済的な要素で
その他,ブータンをはじめ,韓国,イギリス,
ある。
フランス,オーストラリア,ニュージーランド,
また,先の OECD 他の主催による「幸福に
フィンランド,オランダ他も着手しており,日
関するアジア・太平洋コンファレンス」も,「幸
本の自治体でも荒川区の他,各県で検討を開始
福」に対する英語のタイトルの表記は「Well-
したことを公表している。
being」であり,「Happiness」という用語は使
朝日新聞が「くたばれGNP」という記事を
われていない。会場での議論でも,「ここで議
連載したのは 1970 年である。公害問題や交通
論すべきなのは「Happiness」ではなく「Well-
渋滞,激烈な労働環境,受験戦争などの経済成
being」が重要だ」という意見が出され,多くの
長のマイナス面が深刻になっていた時代で,政
諸外国では教育や雇用,女性の社会進出など
府はGNPとは異なる指標として 1974 年に「社
「Well-being」が十分でないことを国際的なテー
会指標」を作成し公表した。その後も改良を加
マとすべきだという意見が主流であった。
えて,1986 年に「国民生活指標」
,1992 年に「新
このような状況を見ても,幸福指標が「GD
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Pに代わる」ものとなることはなく,
「GDP
がなくなってきた。すると,個人の幸福を足し
を補完する」あるいは「GDPをより包括的な
あげたものが社会の幸福だから「自分の幸福を
指標とする」ものとして捉えることが望ましい。
最大化することで社会の幸福の最大化に貢献で
幸福感が経済成長という基盤の上に成り立って
きる」とは考えにくく,「社会の幸福なくして
いることはより強調されるべきである。
個人の幸福なし」がより妥当な感覚になってき
ている。だから,社会の全員で幸福とは何かに
❸ ——— 幸福指標を作成する意義
ついて項目を出し合って合意する必要が出てき
た。そのリストこそが幸福指標なのだ。
それではなぜ,2000 年代になって幸福指標
また,国際的な視点で見ると,世界がエネル
が求められるようになったのだろうか。
ギーやマテリアルを資源とした生産力や,お金
それは,政府が経済運営だけで国内を統治す
によるインセンティブで動いていた時代から,
ることが難しくなってきたからだ。低成長下で
「知」や「人間関係を運営するスキル」を資源
経済成長を是とした政策を実行しようとする
として動く時代になることを見越している。
と,格差の拡大や雇用の流出,所得税や法人税
「知」が資源である社会とは,GDPで測る
の減税,社会福祉費の削減,低金利を招く政策
ことのできないもの,たとえば人間関係,文化,
が取られがちになる。その結果,競争の自由は
歴史,伝統,教育水準,威厳などがパワーの源
確保されても競争の結果にゆがみが出る。社会
泉になっているということである。
の幸福量は最大化できても,幸福は 1%の人が
日本は 80 年代に世界でナンバーワンの国で
独占し,99%が幸福でなくなる場合もある。そ
あるという自負を確立した時期があった。しか
れが今の先進国・途上国を問わず起きている暴
し,日本がGDPで世界第一位になったことは
動や抗議行動につながっている。
一度もない。日本が世界一の金持ちだといわれ
日本ではまだ危険域には入っていないもの
るのも,1400 兆円ある個人金融資産があるか
の,効率性が政策の良し悪しを決める基準でな
らではない(米国の個人は日本の倍以上の額を
くなってきたのは確かだ。そうだとすれば,何
保有している。海外にある日本人の対外純資産
が政策を決定する原理になるのか。正義と公正
が世界一であるにすぎない)。それでも世界一
とは何かを考えざるを得なくなってきたこと
の自負を持てたのは,GDP以外に世界一を感
と,マイケル ・ サンデル教授の「白熱教室」が
じさせる“何か”があったからだ。
話題になったこととは無関係ではない。
世界中で,もはやGDPの額はその“何か”
可能なことかどうかはわからないが,社会を
を説明していないことを実感し,それに替わっ
構成する全員で,社会の幸福とは何かを話し
て何が国のパワーになるのかの棚卸を始めた。
合ってみる時が来たのだ。少し前なら多少,経
その“何か”探しが幸福指標だという言い方も
済的に余裕のある人は,社会の大半はダメに
できる。
なっても自分だけは生き残れると思えたかもし
幸福を構成する要素を一覧表にし,要素間の
れないが,いまや日本国内にも海外にも逃げ場
ウエイトを計算できれば,人々が何を求めてい
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るものについて合意を持ち,国民の勢いを作る
いないはずだ。
ことができる。その勢いに自分が参加している
しかしその一方で,予想外や意外性を提供す
という感覚が“何か”の正体である。
るカスタマー・ディライトを演出した商品は高
ブータンがGNHを提唱したのは先代のジグ
額でも受け入れられる。原価や品質がどのよう
ミ・ シンゲ・ワンチュク国王で 1972 年のこと
なものであれ,モノが与えてくれる喜びが強け
である。その頃のブータンには貨幣経済がなく,
れば高い価格でも構わないという価値観もあ
物々交換が主な経済で,信用による経済の膨張
る。
がない社会であった。その隣にあるインドは巨
気持ちに訴えてくる新しい商品やサービスは
大な人口と経済市場を持つ大国であり,インド
幸福の尺度で選ばれるものであり,日本の製造
の経済文化が流れ込んでくれば国の秩序が失わ
業が勢いを失ったのもこのような商品を提供す
れることは確実だ。このような状況下で国の秩
る企業と入れ替わりつつあるのである。
序維持のために国民と国際社会に向けて発信し
たのがGNHであった。
❹ ——— Being から Well-being へ
各国も,事情は違うにしろ,幸福が経済支配
に対する最大の防御となり,経済をしのぐパ
人々の価値観がモノの豊かさから心の豊か
ワーになる可能性を模索し始めているのだ。
さへとシフトしたのは 1979 年であった。この
GDPは資源やマテリアルの価値を測るのに
年,エズラ・ヴォーゲル ハーバード大学教授
適した手法であった。GDPとは一年間に国内
が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を著した
で作られた付加価値の合計である。付加価値を
こともあり,日本が自国の経済や生活に自信を
作るものは労働であり,労働は時間によって測
持ってきた時期である。
られるというのが従来の考え方である。そして,
この頃までの日本人の生活価値観は「Having
一定時間に作る付加価値が高いことを生産性が
(所有)」の時代。少しでも大きな家電製品や車,
高いという。
電話などを所有する競争をしていた時代といえ
凡庸な料理人と腕のいいシェフがハンバーグ
る。
を作ると,当然腕のいいシェフのハンバーグの
続く 80 年代は余暇・レジャーの時代である。
値段が高く,従って生産性が高い。しかし,そ
オレンジと牛肉の貿易摩擦が激化して 85 年に
の値段はシェフの腕に支払っている面もある
プラザ合意で急激な円高へと傾き,内需の拡大
が,腕のいいシェフの料理に使われている高級
がテーマとなり,バブル経済へと突入していっ
であろう素材に支払っている面が実は大きい。
た時代である。この時代はモノからサービスへ
たとえば,同じ材料のひき肉を使って調理され
の転換が進み,持つことよりも五感全体で感じ
た場合,私たちは同じように数倍の価格を腕の
る経験に価値を見出す「Doing(感性)」の時
いいシェフの料理に支払うだろうか。それに戸
代となる。円高も手伝って海外旅行者が急増し,
惑う人は,工業化時代の価値観にまだとらわれ
東京ディズニーランドをはじめとするテーマ
ている人で,多くの日本人もまだ抜けきっては
パークが各地でオープンすることになる。自動
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車の販売台数もピークとなり,人々の移動ニー
は「裁量の自由」である。これは,自分の好き
ズを支えた。
なことを自分のペースで自分の好きな時にでき
そして 90 年代の半ば以降,バブルの崩壊と
る自由を自分が持っていることである。従って,
97 年のアジア通貨危機から平成不況と失われ
ワーク・ライフ・バランスが求められるのは,
た 20 年が始まった。そして人々は経済的な豊
育児時間を確保するためだけでなく,すべての
かさではなく家族や仲間とのつながりを求め,
勤労者に与えられるべきものである。また,家
「Being(自分の在り方)
」の時代になった。
事・子育てをする専業主婦にもそれらから解放
そして 2000 年代の後半から現在にかけて
された自由な時間が持てるように,夫婦の協力
「Well-being(幸福)
」の時代になったのである。
関係がなければならない。
Being か ら Well-being へ の 変 化 は, 制 約 の
資源や金銭,雇用機会の制約下で切実に求め
ない(少なくとも,なんとかなりそうな)資源
られるのは時間の有効な使い方になる。人々は
の下で拡大する欲望をいかに充足するかという
生活に必要なことに要する時間を短縮すること
時代から資源制約下でいかに欲望をコントロー
に精力を傾けてきたが,空いた時間を有効に使
ルするかという時代に変わり,効率性に対する
うことに努力を要するようになる。
疑問が大きくなったことに起因する。
また,今はバブル時代とは違って,次々と新
Well-being の時代の消費は,節約でもなく,
製品が登場し,新しいレストランやテーマパー
プチ贅沢やメリハリをつけたモザイク消費のよ
クができ,余暇・レジャーという未体験ゾーン
うな今までの生活の修正ではなく,欲望の持ち
にお金を費やして時間の充実感を得続けられる
方も含めて生活全体をいかにコントロールすべ
時代ではない。収入が減少し,お金を使う対象
きかを問いかけている。
も乏しくなる中で,休日も何か自分でイベント
を企画することが普通になる。でないと,日曜
❺ ——— 幸福感を変える時間の使い方
日の夜に自己嫌悪を残すことになる。
すると,自分にとって時間を有意義に埋めて
では,人はどのように生活のあり方を変えよ
くれる最適なものは仕事になる。仕事をしてい
うとしているのだろうか。
れば,「もっと有意義な時間の過ごし方があっ
それをコントロールする要素は二つある。ひ
たかもしれない」という機会費用からの脅迫に
とつは「時間の使い方」であり,もうひとつは
悩まされなくてもすむ。そこで,仕事が人生の
「人間関係のつくり方」である。
充実感の対象となるが,仕事の充実感も損なわ
時間は資源に劣らず,人間の幸福を制約する
れつつある。
要因である。時間の使い方はさらに二つの要素
さらに,年金支給額年齢が引き上げられ,こ
に分かれる。ひとつは時間への没入の度合いで
のままでは支給額が減少することを織り込ん
「時間密度」と呼ぶべきものである。1 日の中
で人生設計をしなければならない。60 歳で定
でどれだけ夢中になって前向きに没頭できる時
年を迎えれば,お金と時間と健康の三要素がそ
間があるかがひとつの尺度である。もうひとつ
ろった状態で定年後に本来の生活を取り戻そう
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という考え方は有効であったが,支給年齢が例
ルメディアである。ソーシャルメディアでは自
えば 70 歳近くまで引き上げられるのであれば,
分と同質の意見や趣味を持つ人が集まりがち
考え方を変えねばならない。
「いまできなくて
で,その中ではお互いの空気を読みながら意見
も定年後に楽しもう」から「いまできることは
を言う。従って,この人間関係の中では比較的
今のうちにやっておこう」へ。現役時代にした
自分の意見が受け入れられやすくなる。自分の
いことを小出しに実行していくという考え方に
意見に同調する反応をもらう形で自分の影響力
変わっていくだろう。
を確認することができる。
幸福の変化を見ていると時間の使い方の変化
自分の影響力が届く範囲,自分が大切にされ
が見えてくるのである。
る範囲,自分の意見が無視されずに何らかの反
応を期待できる範囲を「効力圏」と呼ぶとすれ
❻ ——— 幸福感を変える人間関係の ば,この「効力圏」は参加する人々の幸福を高
つくり方
めてくれる社会的単位となる。
山崎正和は,この「効力圏」に近い概念とし
もうひとつの要素は人間関係である。人は人
て「社交」を挙げている。社交とは「顔の見え
間関係から承認と自尊心を得る。承認と自尊心
る社会」での行動様式であり,社交の中では常
は依存関係にあり,他人から承認されることに
に他人の機嫌を伺いつつ,場を白けさせること
よって自分の影響力を他人の中に感じる(自己
のないように積極的に会話に参加し他人と衝突
効用感)ことができ,その自尊心があるから他
しそうになると引き下がれる醒めた部分を持つ
人に働きかけようとする意欲が生まれる。
大人の関係だ,という。だが,対面の「社交」
人間関係の顕著な変化は,従来からあった地
はやや窮屈である。
域,職場,家族の関係が薄れ,ケータイのメー
ソーシャルメディアの中では,自分のペース
ルやソーシャルメディア空間での人間関係が密
で意見に対する承認を与えあい,反応し合うこ
になっていることである。地域や職場,家族の
とで影響力を確認できるのである。社会的地位
関係が希薄になってきていることは平成 19 年
やある程度の財産の上に安定したアイデンティ
度版の内閣府「国民生活白書」にデータを示し
ティを得ている人々は,まだ承認された経験も
ながら検証されている。また,
『不機嫌な職場』
なく社会で声を上げる場も与えられていない若
では社内関係がぎすぎすし,協力できない関係
い人々(に限らないが)が,自由に意見を述べ
になってしまったことをリアルな職場の観察か
て反応してもらえる喜びを想像してみるべきだ
ら指摘している。
ろう。
その一方で,内閣府の「社会意識に関する世
新たな効力圏を求める動きは,時代の中で形
論調査」では,
「社会に貢献したい」
「自分の利
成された集団をいったん破壊した上で,新たに
益よりも社会の利益を優先すべきだ」という意
再編成をする動きと見ることができる。ロバー
見が 2005 年以降に顕著に上昇している。
ト・パットナムの『孤独なボウリング』は米国
社会とのつながりを支えているのがソーシャ
社会で 60 年代に形成された様々な社会集団が
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80 年代に崩壊したことを,多様なデータを用
要なポジションを占めるようになるだろう。
いて実証的に語っている。PTAの参加者,医
❼ ——— 参加するものとしての幸福
師会などの専門業の集団への参加者,労働組合
の構成員数,そして地域親交の象徴であるリー
グボーリングの参加者が 80 年代に激減してい
人の幸福感は自分の置かれているライフス
る。
テージや生活状況によって様々である。
これと同じ現象が日本でも起きている。60
シニア層は物質的なゆたかさを享受してお
年代に盛んであったPTA,町内会,政治集会
り,これから努力して何かを獲得していくより
への参加,新興宗教への加入は 80 年代以降に
は安らぎや充足感を求めている。30 ~ 40 代の
減少している。人々が社会に貢献したい意識が
人は子育てや仕事の忙しさから逃れ,自分の時
高まったとしても,それはPTAや町内会,政
間(裁量の自由)を持ちたいと願っている。20
治活動を通じてではない。彼らが目指している
代はダイナミズムを失った日本社会に対して,
のは,直接助けた人の笑顔が見られて,感謝の
もっと日々の刺激を求めていて,物質的なゆた
言葉を直接聞ける活動である。つまり,承認と
かさへの欲望も大きい。
自尊心を得るための幸福活動として人間関係を
さらに,人々の幸福感はある方向に向かって
捉え直しているのである。
一途に進んでいくことはない。幸福は,「変化
先ほど述べたことをより詳細に定義すると,
の中にあっては安定に宿り,安定の中にあって
この動きは 50 ~ 60 年代に作られた社会集団や
は変化に宿る」というような両義的な感覚とし
国の制度による社会集団の枠組みを取り壊し,
て常に現れる。刺激か落ち着きか,忙しさか安
より承認と自尊心を得られる社会集団の枠組み
らぎか,制約か自由か,どちらか一方を追求す
へと組みかえようとする動きである。最近の選
れば幸福が満たされ続けるということはない。
挙の動向を見ていても,
「自民党をぶっ潰す」
「政
従来の幸福感は自分自身が個人として何かを
権交代」
「大阪都構想」など,50 年代,60 年代
得た時に感じるもの(刺激に対する反応として
に作られた社会の制度をとりあえず崩壊させ,
の幸福),あるいは生活の水準が上がってきた
新しい社会契約の下に新たな社会集団の枠組み
ために感じるもの(過去の参照ポイントと比較
=効力圏を作りたい,という意識が見え隠れす
しての幸福)などとして幸福が捉えられること
る。選挙のアジェンダとなっている政策を評価
が多かったが,それだけでは最近の幸福は捉え
して投票したというよりは,現状をひとまず崩
られない。幸福感は,受動的な「感じるもの」
してもらって,そのあとで自分のアイデンティ
としてではなく,能動的にかかわって「作り出
ティを確認できる「自分サイズの効力圏」を実
していくもの」へと変わりつつある。「何」が
現し,その中で自分の生き方を思うように選べ
幸福なのかではなく,「何をしていること」が
る環境が欲しいという切実な思いであるように
幸福なのかという形で定義しなければならな
見える。
い。
幸福を実感するための人間関係はますます重
そこで,新しい幸福の定義として,次のよう
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幸福マーケティングの最前線
に定めたい。
として記述し,幸福の正体をはっきりさせたい
「幸福とは,自分の居場所があると感じるこ
という気持ちがこの数年の幸福指標ブームの背
とのできる効力圏(コミュニティ)を持ち,そ
景にある。
のなかでの自分のやりたいことや生き方に対し
「参加するものとしての幸福」も取り入れて
て自分がコントロール権を持てること」
構成した幸福の形を表した一例として,京都の
この中で「居場所」とは,
住居や地域社会,
ネッ
幸福を測定した事例について紹介したい。
ト空間も含んでいる。
50 ~ 60 年代にできた制度は硬直していて巨
❽ ——— 京都での幸福感の測定
大になりすぎ,その中では自分自身に対するコ
ントロール権を持つことができない。匿名性の
京都は政令指定都市で日本有数の観光都市,
自由を求めて都会に住んでも,町内会には入ら
そして多くの大学を要する学園都市でもある。
ざるを得ず,税金や社会保険料は自分のライフ
しかし,その市の財政は逼迫しており,このま
プランや自分が社会に貢献したいと思う気持ち
ま高齢化が進む状況では国同様サステイナブル
とは無関係に,毎月国で決められた額を納めな
な状況にはない。
ければならない。
そこで(社)京都経済同友会では「ハピネス
このような新しい幸福の側面も捉えつつ,形
特別委員会」を発足し,京都の大学を中心とす
にしにくい幸福というものを可視化できるもの
る学者・有識者が設立した(株)京都クオリア
■図表——1
幸福を捉える 4 軸の構造
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研究所と共に京都の財政を分析しつつ,京都市
イサー」の軸を設けた。マキシマイザーとは少
民を対象に 2011 年 7 月に調査を実施した。
しでも品質の高いものを求める心理的性向,サ
この調査では,幸福を捉える軸として「変革
ティスファイサーはそこそこの品質で妥協して
-安定」と「個人志向-コミュニティ志向」と
満足する心理的性向である。幸福論では一般に
いう 2 つの軸を主軸とした。
「変革-安定」は
サティスファイサーの方がマキシマイザーより
時間に関する軸で,時間密度を求めるのが「変
も幸福感が高いといわれている。
革」
,裁量の自由や安らぎを求めるのが「安定」
これら8つの要素それぞれを表現する質問を
と想定する。
「個人志向-コミュニティ志向」
3つずつ設け,計 24 問の質問について「そう
は人間関係に関する軸で,個人の自由を重視す
思う」から「そう思わない」の 4 段階で評価し
るか,利他主義も含むコミュニティを重視する
てもらった。こうして得られたのが京都人の幸
かを判定する軸である。
福のカタチである。(図表− 1)
その中間に経済的な欲求に関する「所有-
この図から読み取れるのは,京都人の幸福感
シェア」の軸と「マキシマイザーとサティスファ
は経済的な指標と同じくらい非経済的な指標か
■図表——2
幸福の価値観による6つのクラスター
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幸福マーケティングの最前線
ら得られているということである。
変革派は「京都新コミュニティ派」「京都理
しかも,シンプル志向が突出しており,商品
想派」「脱現状志向派」の3クラスターである。
の高度化を追及し他人と比較して満足感を味わ
これらの変革クラスターを中心に他のクラス
う戦後成長期の消費志向が変化し,自分の中の
ターの特徴や分布を見ることによって,京都人
基準で満足する幸福感が高い。また,商品の所
全体の幸福感を高めることができる。そのため
有にはまだこだわりがあり,シェアすることを
には次のような方向性が考えられる。
熱心には歓迎していない。これは特に若い世代
①「京都新コミュニティ派」の方向性=京都
では所有欲が強い傾向があるためである。
という新しい街を開かれたコミュニティに
この調査項目で得られた結果をさらにクラス
組み替えていく。京都の良さを残しながら,
ター分析にかけることで6つのクラスターを得
表面に見えない複雑な人脈によって物事が
た。それぞれのクラスターのプロフィールと構
決まっていくことをなくし,オープンで誰
成比は以下の通りである(図表− 2)
。
でも参加できる街にしていく。
① 京都ご意見番(20.0%)=京都の価値観
しかし,この方向性は「京都ご意見番」には
を支えている 50 代以上の既婚男性
受け入れがたい面があり,そのままでは採用し
② 生活リアリティ派(17.4%)=子育てに
がたい。
追われお金や時間にゆとりのない 40 歳以
②「脱現状志向派」の方向性=京都は高い給
下の専業主婦
料をもらえる仕事が少なく,チャンスも乏
③ 京都新コミュニティ派(14.6%)=京都
しく閉塞性を感じる街なので,たとえば世
は好きだが,新たに人間関係を結び直し自
界最先端の技術を持つ企業を誘致したり,
分たちの効力圏としてのコミュニティに作
ショッピングセンターを建設して最先端の
り直したい既婚女性たち
流行を導入するなど,世界的な感性度の高
④ 京都理想派(7.8%)=京都の今後を考
い「クリエイティブ都市」を目指すべきで
えて,守るものは守り変えるものは変えよ
ある。
うとする変化志向の強い 60 代以上の既婚
しかし,市の財政状況や日本社会の現状を考
者
えた時にはこの方向性は現実的ではない。財政
⑤ 脱現状志向派(5.8%)=収入が低くあ
出動で一足飛びにこのような状況を作り出せな
らゆることに不満とストレスを抱え,生活
い以上,この方向に向けては地道に時間をかけ
を変えたいと考えている 20 代独身男性
て進んでいくしかない。
⑥ 無関心派(34.0%)=そこそこの生活で
③「京都理想派」の方向性=京都の伝統や文
満足しており,京都のことにもあまり関心
化の良さをさらに際立たせて進化させてい
がない。ほぼ全ての年代にまたがって存在
こうという方向性である。
している
この方向性は,京都らしさを活かしたいとい
う「京都新コミュニティ派」,現状をさらに進
1)幸福感を高めるための施策の方向性
化させたいとする「脱現状志向派」と共通の基
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論文
盤をもっているばかりか,
「京都ご意見番」と
なく,文化,歴史,知のネットワーク,街の雰
も親和性が高い。
「生活リアリティ派」は「脱
囲気,人間関係,そして京都に暮らす人自身な
現状志向派」も日常の刺激や楽しみを求めてい
ど,お金ではつくりだせない貴重な生きた資産
るので,この層からも歓迎される可能性が高い。
である。このような資産を持ちながら,京都の
以上の検討から,京都の革新の方向性として
行政はこの資産を十分に活かし切れていない。
は,
「京都の伝統や文化の良さをさらに際立た
京都の資産を活用することによって,人と街を
せて京都を進化させる」という方向性が最も全
輝かせることに本腰を入れるべきである。
体の幸福感をまとめやすい方向であることがわ
かる。
この施策の展開は,“参加する幸福”という
新しい定義から発想されたものである。すなわ
2)京都人の幸福感を高めるための施策
ち,ゆたかな社会における幸福とは与えられる
この方向性へと京都の街全体を動かすため
ものではなく参加して作り上げていくものだと
に,行政他に次のような施策が求められるだろ
いう考え方である。そして消費と仕事(=経済)
う。
は幸福の基盤を形成するものとして忘れてはな
○ソーシャル・ビジネスの創出
らないものである。
バーチャルではなくリアルな人間関係を結べ
周りがどうであれ自分だけが幸福になれると
るような市民参加型のソーシャル・ビジネスを
いう確信が薄らぎ,社会の幸福なくして自分の
創設すべきである。京都に住む人だけでなく,
幸福もないということが実感されるようになっ
観光客も巻き込みながら,みんなで社会を良く
てきたことがみんなで協力して幸福に至る要素
していく活動を公募でアイデア募集をし,それ
を積み上げたいという気持ちを生み,参加する
に少額でも予算を付けていくことを実行すべき
幸福を求める気持ちにつながっている。
である。あるいは,このような活動を支援する
京都経済同友会は「ハピネス特別委員会」の
ためのマイクロファイナンスが容易になるよう
中で,今後,幸福指標を作成する予定である。
な規制緩和を進めるべきである。
○産業力の強化
❾ ——— ナッジという新しいマーケティング
京都は大企業の城下町ではなく,志と意思の
こもった技術を持つ中小企業の集積地である。
戦 後 の 消 費 の 大 き な ト レ ン ド の 中 で,
その技術は必ずしも工業に貢献するだけのもの
Having,Doing,Being から Well-being の時代
ではなく,その範囲は工芸,ファッション,食,
へと移り変わる中で,幸福研究からひとつの示
文化に広く及んでいる。このような技術を継承
唆が提供されている。ダニエル・カーネマン教
し,深めるための「学び・教え合う」場を創設
授を経済学と結び付けるのに大きな役割を果た
すべきである。
したリチャード・セイラー教授が提唱している
○京都の資産の活用
「ナッジ(nudge)」という考え方だ(図表− 3)。
京都の資産とは金融・経済的なものだけでは
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「ナッジ」は人に決断を促すために優しく肘
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幸福マーケティングの最前線
で相手を押す行為をいうが,決断ができない問
分の好みのものを選んでいるだけだが,それが
題に囲まれて身動きが取れなくなっている現在
自分にも社会にも良い選択になるように選択肢
の人々が判断しやすいように選択肢を用意する
がデザインされているのである。
ことをセイラー教授は「ナッジ」と呼んでいる。
最近,観光地の土産物のパッケージは平たい
判断を容易にするテーマは,商品選びから結婚
ものが多い。従来の考え方ならば,量を実際よ
すべきかどうかのような人生の選択,金融商品
りも多く見せかけるために底上げで嵩を多く見
や年金制度のような社会制度の選択まで幅広く
せてお得感を出す戦略が好まれたかもしれな
対象となる。
い。しかし,北海道の白い恋人や京都の餡を包
「ナッジ」の最もわかりやすい事例は,男性
んだ八橋などの箱は平たく仕上げてある。それ
用トイレの便器に張られたハエのシールであ
は空港や駅で荷物がいっぱいになった旅行者
る。これを貼るだけで用を足す人はハエを狙う
に,最後にもうひとつ買える,と手にとっても
ために飛び散りが減り,清潔なトイレを社会が
らうためのデザインである。しかも,翌日に会
享受できる。
社に持っていく時にもビジネスバッグに入りや
他に「ナッジ」の本で紹介されているのは,
すい。包みを小さくすることによって環境負荷
社員食堂の給仕係の女性の例である。社員に健
も低くなり,社会にとっても優しいデザインに
康的なメニューを選択してほしいと思うが,社
なっている。
員は脂っこいものを選びがちである。そこでメ
このように,デザインを変えて選択しやすく
ニューの構成や並べ方を変えて健康に良いメ
するだけでも,社会を住みやすい場所にできる
ニューが魅力的に見えるようにしたところ,健
のだ。
康に良いメニューを選ぶ社員の割合が増えたと
「ナッジ」がどのようなものかを,有名な「二
いうことである。
頭のラバ」の図で説明すると次のようになる。
ここで重要なのは健康的なメニューを選んで
原案では背中側で互いにつながれた二頭のラバ
もらうために,健康に気を使おうという説得を
は欲望のままに左右の自分のえさに行こうとす
行っていないことである。対象となった人は自
るが,それでは双方が望むものを得られない。
■図表——3
ナッジの構造
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そこで何かのきっかけで二頭のラバは「協力す
これからの時代にターゲットとすべきなの
ればいい」ことに気がつき,二頭同時に片方づ
は,人の「知や好奇心」である。気持ちはすぐ
つえさを食べる,というものである。しかし,
にいっぱいになってしまうが,「知や好奇心」
欲望にとらわれて他人を信用できない社会で
は一生の間汲んでいっても汲みつくせない。80
は,必ずしも協力し合うことを期待できない。
年代に出された電通の「90 年代生活大予言」
そこで,もうひとつの解決法はインセンティ
のキーワードは「知衆化」の時代であった。確
ブを与えることだ。一方のえさの前に水を置き,
かに情報の量と質は高まったが,その効果とし
先にそのえさを食べたほうが得だということを
ては刺激や快適性など人の「気持ち」を満たす
知らせるのである。すると個々のラバは水のあ
ことにより多くの情報が使われた。
るえさの方に向かうため,協力したつもりはな
「ナッジ」の時代は,自分の気持ちのとおり
いのに協力するのと同じ効果が得られる。しか
に行動すれば社会がますます良くなるという究
しこのやり方では水を用意するという社会的コ
極の知的好奇心を刺激することだ。そのために,
ストが発生する。
何が社会に良いことなのかを合意しておく必要
そこで「ナッジ」の方法である。
「ナッジ」
がある。その気づきとなるのが幸福の理解なの
ではえさの総量を変えないで片方のえさを多く
である。「チョイス・アーキテクト」は自分が
するという選択肢のデザインを行なう。すると
恣意的に幸福につながると判断するのではな
二頭とも多いえさの方を目指す。社会的コスト
く,幸福指標に照らし合わせてどの選択肢が幸
もかからないし,ラバたちが心理的負担を被る
福につながるかを知っていなければならない。
こともない。
そのためにも幸福指標を作成しておくことが必
このように選択肢を「ナッジ」にデザインす
要になるのだ。
る人を「チョイス・アーキテクト」とセイラー
今の社会は「ナッジ」不足の社会である。幸
教授は呼んでいる。
福への基準を持つためにも幸福の研究は今後も
今の社会は人々の多様な欲望に対応するため
必要性は高まっていくのである。
に十人十色の選択肢を提供している。それがか
えって,高度化する選択肢の中で消費者を戸惑
参考文献
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ダニエル・ピンク『ハイコンセプト 新しいことを考
え出す人の時代』大前研一訳 三笠書房 2006
飯田経夫『豊かさとは何か -現代社会の視点』講談
社現代新書 1980
ブルーノ S. フライ,アロイス・スタッツァー『幸福の
政治経済学 -幸福を促進するものは何か』沢崎
冬日,佐和 隆光訳 ダイヤモンド社 2005
山崎正和『社交する人間 ホモ・ソシアビリス』中央
公論社 2003
ロバート・D. パットナム『孤独なボウリング -米
わせ消費意欲を減退させる。
特に 80 年代の後半以降,マーケティングは
売れるものを提供してきた。社会や消費者自身
への影響はどうであろうと,売れるものは良い
ものだと考えて提供してきた。そんなマーケ
ティングがターゲットとしていたのは,
「快適
性」という名の人の「気持ち」である。しかし,
人の「気持ち」はすぐにいっぱいになってしま
う。
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Japan Marketing Academy
幸福マーケティングの最前線
国コミュニティの崩壊と再生』柴内康文訳 柏書
房 2006
河合 太介,高橋 克徳,永田 稔,渡部 幹『不機嫌な職場
なぜ社員同士で協力できないのか』講談社現代
新書 2008
山田昌弘+電通チームハピネス『幸福の方程式』ディ
スカヴァー携書 2010
Richard H. Thaler and Cass R. Sunstein『Nudge』Penguin
Books 2008
Richard Layard Happiness The Penguin Press 2005
袖川 芳之(そでかわ よしゆき)
1963 年 大 阪 府 生 ま れ。1987 年 京 都 大 学 法 学 部 卒。
1987 年株式会社電通入社。マーケティング局,1992
年電通総研主任研究員,2005 年内閣府経済社会総合
研究所政策企画調査官などを経て現職。多摩美術大
学,慶應義塾大学大学院で非常勤講師を務める。
政府の委員として,内閣府『未来生活懇談会』(2002
調査など
内閣府「国民生活に関する世論調査」(時系列調査)
内閣府「社会意識に関する世論調査」(時系列調査)
(社)京都経済同友会 「京都人の幸福感調査」2011
年),『暮らし指数検討委員会』,『日本 21 世紀ビジョ
ン委員会』(2005 年)などにも参加した。
専門分野はマーケティング・コミュニケーション及
び家族研究,世代論,ヒット商品・トレンド分析など。
著書に,竹中平蔵氏と編共著『ソフトパワー』実業
之日本社(2001 年)の他,『クリエイティブ頭のから
くり』朝日新聞社(2007),『線と面の思考術』大和
書房(2008),『幸福の方程式』 山田昌弘 + 電通チー
ムハピネス ディスカヴァー・トゥエンティワン
(2009)がある。
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