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第一種特定鳥獣保護計画 -ツキノワグマ-

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第一種特定鳥獣保護計画 -ツキノワグマ-
第一種特定鳥獣保護計画
-ツキノワグマ-
(平成27年5月29日から平成29年3月31日まで)
京
都
府
目
1
次
計画策定の目的と背景
1
(1) 目的
1
(2) 背景
1
2
計画の対象鳥獣
1
3
計画の期間
1
4
計画の対象地域
1
5
(1) 対象地域
1
(2) 地域個体群の区分
2
ア
丹後個体群
2
イ
丹波個体群
2
クマに関する現状
(1) 生息状況
6
3
ア
丹後個体群
4
イ
丹波個体群
5
(2) 生息環境
5
(3) 出没状況
7
(4) 捕獲状況
8
ア
有害捕獲
8
イ
誤捕獲
8
(5) 被害状況
11
保護の目標
14
(1) 丹後個体群
14
ア
被害防除の実施
14
イ
個体の捕獲
14
ウ
生息地の環境整備
14
(2) 丹波個体群
7
3
14
ア
被害防除の実施
14
イ
個体の捕獲
15
ウ
生息地の環境整備
15
保護の実施
15
(1) 個体の管理
15
ア
ツキノワグマ出没対応マニュアル
15
イ
クマ剥ぎ被害対応マニュアル
15
ウ
ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル
15
エ
捕殺個体の処理
15
オ
個体管理に係る捕獲許可の方針
16
カ
狩猟による捕獲の禁止
16
(2) 誤捕獲の防止
16
8
9
10
ア
誤捕獲の防止
16
イ
狩猟に対する指導啓発
16
(3) 個体群の保護
17
(4) 捕獲上限数の設定
17
(5) 被害防除
18
ア
出没・精神的被害
18
イ
農作物・養蜂被害
18
ウ
クマ剥ぎ被害
18
(6) 生息環境管理
18
(7) 近隣府県との連携
19
モニタリング
19
(1) 生息状況調査
19
(2) 被害調査
19
(3) 生息環境調査
19
普及啓発
20
(1) パンフレット等による普及啓発の推進
20
(2) 研修会等の実施
20
計画の実施体制
20
別添1
ツキノワグマ出没対応マニュアル
21
別添2
クマ剥ぎ被害対応マニュアル
27
別添3
ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル
31
1 計画策定の目的と背景
(1) 目的
地域住民や農林業者その他の府民、行政、研究者など多様な主体の連携のもと、
人とクマとの共存を目標として、クマによる人身被害の回避や農林業被害の軽減を
図るとともに、科学的・計画的な保護管理により、絶滅のおそれのある府内のクマ
の地域個体群について長期に渡る維持を図る。
(2) 背景
京都府の個体群の概要
京都府は、南部に広く平野が広がり、中部から北部にかけては高原状のなだらか
な 山 地 帯 が 続 い て い る 。 森 林 面 積 は 総 土 地 面 積 460,820ha の 約 74 % に あ た る
343,073ha である。
本府に生息するクマの個体群は、琵琶湖北部から丹後半島南部にまたがる「近畿
北部地域のツキノワグマ個体群(以下、近畿北部地域個体群)」に属しており、分
布域は約 4,000km2 で、関係する都道府県は福井、滋賀、兵庫の3県である(平成 10
年度クマ類の生息実態等緊急調査報告,1999)。
平成8年度から平成 12 年度に行った調査で府内のクマの生息数は 200 ~ 500 頭
と推定され、14 年度に発表された京都府レッドデータブックでは「絶滅寸前種」
に区分されている。このようなクマの個体群は、生息密度と増加率が低いことから、
生態学的リスク管理では、人為による死亡率を適正な水準に管理するための慎重な
配慮が必要とされている。このため本府では 14 年度からクマの狩猟による捕獲を
禁止し、学習放獣を行うなど保護施策を実施している。しかし一方で人家周辺への
出没による人身被害や人工林、果樹園への農林業被害など、人とのあつれきも続い
ており、これらの軽減や解消のための取り組みが課題となっている。
人とクマとの共存をめざすため、平成 8 年度から平成 14 年度にかけて実施した
モニタリング調査の結果を踏まえ、平成 16 年 5 月には第 1 期の特定鳥獣保護管理
計画-ツキノワグマ-を、平成 19 年 4 月に第 2 期計画を、更にその後平成 24 年4
月に第3期計画を策定した。
今回、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の改正に伴い、前計画に基づく
対策の効果を検証するとともに、その後のモニタリング調査結果を基礎資料として、
人とクマとの共存をめざした取り組みを推進するため、第一種特定鳥獣保護計画-
ツキノワグマ-(第3期)を策定する。
2
3
計画の対象鳥獣
ツキノワグマ
計画の期間
平成27年5月29日から平成29年3月31日まで
ただし、人家周辺への出没の増加や人身被害、農林被害の増加等、現在想定され
ていない状況が発生した場合には、必要に応じて、計画期間中であっても計画の見
直しを行うものとする。
-1-
4 計画の対象地域
(1) 対象地域
京都府全域
但し、国指定の冠島・沓島鳥獣保護区(舞鶴市)は除く
(2) 地域個体群の区分
京都府の個体群は、東日本から連続する個体群の西端に位置すると見られる(図
-1)。独立行政法人森林総合研究所で平成3年度から実施されている頭骨やミト
コンドリアDNA解析による研究から、府内の個体群は由良川を境として東西2つ
の系統に分かれていることが明らかになっている。
従って、府内の個体群を管理する上で全体を1個体群として扱うのではなく、以
下のとおり丹後個体群と丹波個体群の2つに区分して扱うこととする(図-2)。
ア 丹後個体群(由良川より西側)
〈関係市町4市2町〉福知山市(由良川以西・以南)、宮津市、舞鶴市(由良川以
西)、京丹後市、与謝野町、伊根町
イ 丹波個体群(由良川より東側)
〈関係市町6市1町〉京都市、亀岡市、南丹市、綾部市、福知山市(由良川以東・
以北)、舞鶴市(由良川以東)、京丹波町
図-1 クマの分布状況
(平成 10 年度クマ類の生息実態等緊急調査報告,1999 より)
-2-
図-2 京都府のクマ分布図
(本図の分布図は環境省生物多様性調
査 お よ び 平 成 14~ 22年 度 の 出 没 情 報 地
点〈情報が2年以上にわたって得られた
地点〉から作図した)
5 クマに関する現状
(1) 生息状況
近畿北部地域個体群は、福井・滋賀の両県を通じて「白山・奥美濃地域個体群」
と連続的な分布域を構成すると考えられるが、自然林の伐採や交通網の発達などに
より局地的に移動の障害となる環境が作り出され、近畿北部地域個体群でも個体群
内外における分布域の分断化が危惧されている。
府内の生息数は、標識再捕獲法及び階層ベイズ法による最新の個体数推定および
ヘアトラップ法※によるモニタリング調査により、丹波個体群が約 200 頭、丹後個
体群が約 700 頭とされており、環境省発行の特定鳥獣保護管理計画作成のためのガ
イドライン(クマ類編)2010 年 3 月発行によれば、丹後個体群は個体数水準3の
危急地域個体群、丹波個体群は個体数水準2の絶滅危惧地域個体群にあたる。(表
-1)
また、丹波個体群は滋賀県から福井県の嶺南地方に広がる北近畿東部個体群の一
部、丹後個体群は兵庫県但馬地方に広がる北近畿西部個体群の一部に属しているが、
これらを含めた場合それぞれ個体数水準は3ないし4(安定存続地域個体群)に該
当する。
表-1 各推定手法による推定生息数
推定手法
推定生息数
標識再捕獲法
965頭(府全域)
ヘアトラップ法による密度推定と
664~698頭(府全域)
森林面積による試算
中央値 905頭(丹後)
階層ベイズ法
中央値 263頭(丹波)
個 体 群
丹後地域
丹波地域
推定生息数
491~905頭
173~263頭
-3-
備 考
2010~2013年度の標識個体総数207頭
生息密度を0.164~0.172頭/km2と仮定
90%信頼限界 277~1,989頭
90%信頼限界 58~652頭
備 考
約700頭と推定
約200頭と推定
表-2 クマの個体数水準
個体数水準1
(危機的地域個体群)
個体数(成獣、以下同じ)100頭以下、または分布面積が極めて狭い(例え
ば<1,000km2)地域個体群
個体数水準2
(絶滅危惧地域個体群)
個体数が100~400頭程度で、現状を放置すると水準1の危機的地域個体
群に移行するおそれのある地域個体群
個体数水準3
(危急地域個体群)
個体数が400~800頭程度で、現状を放置すると水準2の絶滅危惧地域個
体群に移行するおそれのある地域個体群
個体数水準4
(安定存続地域個体群)
個体数が800頭以上で、絶滅のおそれは当面ない個体群(しかし乱獲や不
適切な管理によっては水準3の危急地域個体群に移行するおそれのある
地域個体群)
特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編) 環境省2010年3月発行より
なお、本府におけるクマの生息頭数の把握に努めているところであり、平成 14
年度からヘアトラップ法による個体群動向調査を丹後地域及び丹波地域において実
施している。同法により採取された体毛と捕獲個体からの遺伝情報を合わせて、調
査地区及びその周辺地域において平成 14 年度に 19 個体、平成 15 年度に 16 個体、
平成 16 年~ 17 年度には 22 個体、24 ~ 25 年度には 25 個体の識別が行われた。現
時点では、本調査結果からは個体群動向の把握に至っていないが、これらの識別個
体と合わせ、外部標識(イヤータグ)又は電子標識(マイクロチップ)が装着され
た個体、あるいは遺伝的にも識別可能となるように分析用試料が採取された捕獲個
体は、約 441 個体(注:これまでに装着した個体数であり、これら装着個体が現在
生存しているとは限らない。)となっており、今後のさらなる情報の集積・解析に
よって個体群動向の指標として有効な情報が得られることが期待されている。
※ヘアトラップ法……有刺鉄線により個体の体毛を採取し、体毛の毛根部に含ま
れるDNAを抽出することにより個体の遺伝子レベルでの差を読
取り、地域個体群の系統や個体群規模の推定などができる。
※階層ベイズ法……現在までの捕獲数や調査データなど密度指標の年変動を組み
込んだモデルを用い、もっとも現実性の高い個体数の変動パターン
を、ベイズ統計学を使ったコンピュータプログラムで推定する方法
ア
丹後個体群
丹後個体群は隣接する東中国山地個体群と近畿北部地域個体群との連続性を保つ
要となる個体群であるが、由良川及び流域の市街地・交通網が連続性を阻害する大
きな要因となっている。また、丹後半島の局所個体群は丹後山地で隔離されており、
地域的な絶滅が心配されてきたが、近年は丹後個体群の個体群サイズは回復傾向に
ある。また、人家周辺の出没や果樹を中心とした農業被害の発生が大きな問題であ
り、人身被害の防止と防除対策の徹底した取り組みが重要な課題となっている。
近年、目撃情報が増加傾向にあるが、目撃情報が捕獲に直結したり、逆に情報が
放置されて被害につながったりする状況は避けなければならない。
-4-
イ
丹波個体群
丹波個体群は、滋賀県から福井県の嶺南地方に広がる北近畿東部個体群の一部に
属している。東日本の個体群との連続性から見て、現時点では個体群の隔離による
遺伝的劣化などを原因とした地域的な絶滅のおそれは低いと思われるが、個体群サ
イズは第 2 期計画からほとんど変化していない。
クマは繁殖力が低い動物であり、絶対的な個体数が多くない現状や生息環境の悪
化等を考えると、過度の捕獲は地域個体群に回復不能な影響を与えかねず、保護管
理は慎重に行う必要がある。一方で、クマ剥ぎ被害への対応が重要な課題である。
また、滋賀県と福井県を経て保たれている東日本の個体群との連続性を確保する
ため、関係府県との連携が重要である。
(2) 生息環境
京都府の森林の大半が民有林であり、樹種別の面積割合は針葉樹 56.7 %、広葉
樹 39.6 %、竹林・その他 3.7 %である。
クマの生息環境としては、堅果類などの実をつける広葉樹林が重要であり、針葉
樹林は、食物環境としての価値は著しく低いと考えられる。
京都府の森林は戦後に人工造林が進み、丹波地域では人工林率が高まったが、ま
だ比較的広い面積の広葉樹林がまとまって残っている。
一方、丹後地域では人工林率は低いが平野に遮られるなどして広葉樹林の広がり
もそれほど大きくない状況である(表-3)。
丹後地域で数年間にわたり追跡した個体についても、最も利用頻度が高い植生は
落葉広葉樹林であり、その次にスギ、ヒノキ林であった。スギ、ヒノキ林は林間に
パッチ状に点在する小面積の広葉樹林間の移動経路または休息地として考えられ
る。
また、丹後地域や丹波地域の生息地域は比較的積雪量が多く、人の活動が制限さ
れ、クマにとって安定した越冬環境と考えられる。
しかし、府内のクマの生息地において、重要な食物資源となるナラ類がカシノナ
ガキクイムシにより集団枯損しており、地域的にはほぼ消失しているところもある
など、クマの個体群維持やエサ不足による人里への出没に対する影響が心配されて
いる。
なお、クマの主要な食物資源であるブナ科の堅果の豊凶と、人里への出没の関連
の可能性があることから、京都府では、平成 15 年度からブナ科樹種における堅果
の豊凶調査を実施している。その結果は、表-4のとおりである。
堅果類の豊凶の平均評点を見ると平成 18、20、22 年度は、隔年で凶作となって
おり、これらの年はクマの大量出没が発生している。
(図-3)
表-3
民有林樹種別構成
単位:ha
広葉樹
スギ
ヒノキ
マツ類
構成比(広:針)
丹後地域
46,045
13,877
20,727
18,050
4.7:5:3
丹波地域
79,037
48,597
29,965
41,839
4.0:6.0
計
125,082
62,474
50,692
59,889
4.2:5.8
-5-
表-4 調査地別、年度別の豊凶
調 査 地
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
南丹市美山町佐々里(佐々里峠)
並
凶
凶
凶
並
凶
並
凶
凶
凶
綾部市故屋岡町(頭巾山)
並
凶
凶
凶
並
凶
並
凶
並
凶
福知山市大江町北原(大江山)
豊
凶
並
凶
豊
凶
並
凶
並
凶
3.0
0.0
2.4
0.5
1.9
0.0
凶
凶
豊
凶
凶
0.7
0.0
4.8
0.0
0.0
0.0
ブナ
平均評点
シードトラップ法による判定
イヌブナ
京都市左京区雲ヶ畑
豊
凶
凶
凶
京都市左京区花脊原地町
凶
平均評点
シードトラップ法による判定
ミズナラ
京都市右京区京北大野町正木
並
凶
並
並
並
凶
凶
凶
並
凶
京都市左京区花脊原地町
並
凶
並
凶
並
凶
凶
凶
凶
凶
南丹市美山町大野
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
南丹市美山町五波谷
並
凶
凶
凶
並
凶
凶
凶
凶
凶
南丹市美山町佐々里大川上
並
凶
並
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
綾部市故屋岡町大コモ
並
凶
凶
凶
並
凶
凶
凶
凶
凶
綾部市睦寄町鳥垣
並
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
与謝郡与謝野町与謝下道
豊
凶
豊
並
豊
凶
並
並
並
並
与謝郡伊根町野村太鼓山
並
凶
並
並
並
凶
凶
並
並
並
2.2
0.9
1.4
0.7
2.0
0.6
0.8
1.4
1.2
1.4
京都市右京区京北上弓削町西丁子谷
凶
凶
豊
並
凶
並
並
並
並
京都市右京区京北上弓削町原山
並
並
並
並
凶
凶
並
並
並
南丹市美山町原綾ノ谷
並
並
凶
並
凶
凶
凶
凶
凶
南丹市美山町佐々里大川上
並
並
凶
並
凶
凶
並
並
凶
舞鶴市西方寺平
凶
並
凶
並
凶
並
並
凶
並
(凶)
(並)
(並)
並
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
凶
豊
凶
凶
並
凶
凶
(凶)
(豊)
(凶)
並
凶
凶
並
凶
凶
並
並
並
並
凶
凶
並
並
凶
並
並
平均評点
1.4
1.5
1.7
2.1
0.8
1
1.7
1.4
1.4
京都市右京区京北上弓削町原山
並
並
並
並
凶
凶
凶
並
並
南丹市美山町原綾ノ谷
並
並
並
並
凶
凶
凶
並
凶
綾部市睦寄町山内
並
並
並
豊
並
並
並
並
並
京丹後市大宮町三坂有明
宮津市小田
並
豊
並
豊
並
並
並
豊
並
並
並
平均評点
コナラ
舞鶴市観音寺
(並)
綾部市睦寄町鳥垣シデ
京丹後市峰山町鱒留(天女の里)
(並)
京丹後市大宮町森本宮ノ奥
宮津市小田
クリ
並
並
2.4
1.9
京丹後市久美浜町尉ヶ畑
平均評点
2.6
2.9
2.5
3.0
1.3
H22
0.0
H23
2.4
1.6
1.4
12
10
8
6
4
2
0
H18
H19
H20
H21
3.0
0.7
0.0
4.8
0.0
0.0
0.0
0.9
1.4
0.7
2.0
0.6
0.8
1.4
1.2
1.4
コナラ
1.4
1.5
1.7
2.1
0.8
1
1.7
1.4
1.4
クリ
2.6
2.9
2.5
3.0
1.3
1.6
1.4
2.4
1.9
ブナ
H17
0
イヌブナ
0
ミズナラ
2.2
図-3 年度別堅果類豊凶調査の平気評点
-6-
H24
0.5
H25
1.9
H26
0.0
(3) 出没状況
府内の出没状況について、平成 15 年度から集計を行っている。出没の多い年と
少ない年が隔年で起こり、いわゆる大量出没年とされた 16、18、22 年度は 6 月か
ら増え始め 10 月がピークに、平成 20、24 年度は 9 月がピークとなっている。出没
の少ない年は夏前にやや増加するものの、夏以降はそのまま減少している。出没の
多い年も少ない年も、ともに 12 月にはほぼ終息している。ただし、平成 25 年度は 11
月まで目撃数は増加し続けた。
毎年実施している堅果類の豊凶調査では、出没の多かった 16、18、20、22 年度
でブナ科 4 樹種が凶作となっており、府内においてもブナ科の堅果類の豊凶が秋の
クマの出没と関係があると推定される。また、後述する捕獲数についても、出没と
大きな相関関係があることがわかっている。(図-4)(表-5)
図-4
クマ目撃件数(月別・年度別)
800
H22
H15
H16(大量出没)
700
H17
年度別ピーク
H18(大量出没)
600
H19
平常年
大量出没年
H20(大量出没)
H21
500
H22(大量出没)
H16
400
H23
H26
H24
H20
H25
300
H24
H23
H18
H26
H25
H19
H21
200
H17
100
0
4月
表-5
年度
H15
H16(大量出没)
H17
H18(大量出没)
H19
H20(大量出没)
H21
H22(大量出没)
H23
H24
H25
H26
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
クマ目撃件数(月別・年度別)
4月
5
1
13
19
12
13
4
7
30
29
19
32
5月
32
14
45
29
36
68
43
41
59
43
114
72
6月
50
57
27
46
45
89
35
140
72
102
129
142
7月
35
48
25
60
45
89
45
140
98
82
153
201
8月
18
25
17
44
52
78
34
224
97
90
163
300
9月
8
55
15
86
34
150
27
338
51
120
130
151
-7-
10月
21
350
17
212
52
132
22
713
81
35
159
48
11月
17
155
18
111
19
54
13
327
49
7
173
12月
7
9
6
19
16
14
4
33
15
3
30
1月
2
1
1
2
2
1
1
4
5
1
3
2月
1
3
1
4
1
0
0
2
3
2
2
3月
0
0
0
2
1
0
6
7
2
1
2
計
196
718
185
634
315
688
234
1976
562
515
1077
946
(4) 捕獲状況
ア 有害捕獲
本府におけるクマの狩猟及び有害鳥獣捕獲による総捕獲数は、昭和 49 年まで増
加し、その後年変動はあるものの緩やかに減少している。
有害鳥獣捕獲は、年により変動があるが、狩猟による捕獲は、昭和 49 年に 64 頭
でピークを示した後、狩猟者や平成4年度以降大日本猟友会の自主規制により大幅
に減少し、平成 14 年度から狩猟による捕獲を禁止した(図-5)。
個体群別有害鳥獣捕獲数は、全体的に丹波地域がクマ剥ぎ被害を反映して多い状
況であるが、平成元年以降は、丹後地域でも果樹被害等により増加している状況で
ある。平成 22 年度は近隣府県も含めクマの大量出没が見られたが、特に丹後地域
ではかつてない程の出没と被害があり、捕獲数が急増した(図-6,図-7)。
また、有害鳥獣捕獲による月別捕獲状況では、丹後個体群では果樹被害や柿等の
摂食のため人家周辺への出没が多い9~ 10 月の捕獲数が多く、丹波個体群ではク
マ剥ぎ被害の影響で7~8月にかけて捕獲数が最も多く、次いで9月~ 10 月が多
い。
平成 3 年度から平成 25 年度に有害鳥獣捕獲で捕獲された個体の内、性別が明ら
かな個体 357 頭についての性比はオス:メス= 199:158(= 1.3:1)である。
京都府では、平成9年度に初めて学術捕獲による放獣を実施している。また、平
成11年度からは誤捕獲による放獣を、平成14年度から有害捕獲による放獣を実施し
ており、ほぼ全ての捕獲個体には耳標およびマイクロチップによる標識を行ってい
る。平成25年度までの有害捕獲による放獣実績は174頭である(表-6)
そのうち、標識の存在により再捕獲が確認された個体は、平成14年度から25年度
までの12ヵ年間で36頭(22年度の大量出没時には20頭)、再捕獲率は20.7%であっ
た。平成 16 年度からは、「ツキノワグマ出没対応マニュアル」に基づき放獣を実施
してきたが、放獣を実施した地域では、一部地域を除き住民の理解は、ある程度得
られたものと考えられる。
なお、平成 16 年度の大量出没時には、大量出没によって高まった人身事故の危
険回避のため、殺処分の条件を緩和するなど緊急対応マニュアルを作成し対応した。
イ
誤捕獲
イノシシやシカの捕獲を目的として設置された檻やくくりわな等に誤ってクマが
捕獲される事例が多く発生しており、捕獲個体については、原則放獣を行っている。
平成 14 年度以降 12 年間の捕獲数(放獣数)は、275 頭である(表-7)。放獣
を行った 275 頭のうち、標識の存在により再捕獲が確認された個体は、35 頭であ
った。そのうち、平成 14 年度から 21 年度の期間での再捕獲は 5 頭、22 年度の大
量出没年での再捕獲は 22 頭で、翌 23 年度以降は 8 頭であった。
有害捕獲、誤捕獲の再捕獲の総数は、71 頭(総放獣数 449 頭の 15.8 %)であっ
た。そのうち、平成 22 年度の大量出没年の捕獲は 42 頭(同 30.7 %)に達したが、
平成 23 年度以降の再捕獲数は 22 頭(同 16.5 %)であった。
平成 22 年度は、堅果類がかつてない大凶作であったため、奥山に生息していた
個体も例外的にエサを求めて人家周辺まで出没したと考えられる。
-8-
図-5
クマ捕獲数推移 (京都府林業統計平成 26 年版より)
90
狩猟
80
有害捕獲
70
60
捕
獲
数
捕
殺
50
(
)
40
30
20
10
0
狩猟
S43 S44 S45 S46 S47 S48 S49 S50 S51 S52 S53 S54 S55 S56 S57 S58 S59 S60 S61 S62 S63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
21 17 25 34 42 53 64 35 29 37 44 26 29 29 42 18 34 17 48 25 21 32 37 35 13
8
13 12 20 12
有害捕獲 19 26 27 32 21 29 18 42 15 32 12 22 45 12 30 45 15 40 30 24 31 45 20 22 43 23 21 27 36
90
8
8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
50 26 22 10
8
8
11
3
2
12
0
4
3
8
4
54
4
2
19
90
丹波 有害(放獣)
丹後 有害(放獣)
80
丹波 有害(殺処分)
80
70
丹波 狩猟〈捕殺)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
丹後 有害(殺処分)
丹後 狩猟
10
0 SSSSS SSSSS SSSSS SSSSS SHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH
図-6
個体群別有害捕獲数
-9-
H25
H24
H23
H22
H21
H20
H19
H18
H17
H16
H15
H14
H13
H12
H11
H10
H9
H8
H7
H6
H5
H4
H3
H2
H1
S63
S62
S61
S60
S59
S58
S57
S56
S55
S54
S53
S52
S51
S50
S49
S48
S47
S46
S45
S44
S43
0
4444444555555555566661234567891111111111222222
345678901234567890123
0123456789012345
100
89
90
放獣
80
捕殺
70
頭数 頭()
60
50
19
40
28
30
10
5
1
13
8
5
3
8
2
丹後
丹波
H24
丹後
0
丹波
H23
丹後
H22
丹波
H21
丹後
丹波
丹後
H20
0
2
丹波
丹後
H19
丹波
H18
0
丹後
丹波
丹後
H17
7
4
丹波
0
丹後
1
丹波
計
H16
丹後
丹後個体群
H15
4
丹波
丹波個体群
0
丹後
H14
2
丹波
丹後
丹波
0
20
18
20
H25
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
計
放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺 放獣 捕殺
2
3
0
2
7
11
0
0
5
3
1
3
1
2
1
4
14
14
0
2
0
0
2
2
24
30
1
0
0
0
3
1
1
0
12
1
0
0
14
6
2
0
49
40
7
2
8
2
19
17
112
68
3
3
0
2
10
12
1
0
17
4
1
3
15
8
3
4
63
54
7
4
8
2
21
19
136
98
図-7
個体群別有害捕獲個体捕獲状況(H14 ~ 25)
表-6
年度別放獣数(有害・誤捕獲別
年度
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
計
有害捕獲
3頭
0頭
10頭
1頭
17頭
1頭
15頭
3頭
63頭
11頭
10頭
40頭
174頭
誤捕獲
うち再捕獲
0頭
0頭
0頭
0頭
0頭
1頭
0頭
1頭
20頭
2頭
2頭
10頭
36頭
16頭
15頭
28頭
15頭
21頭
10頭
15頭
9頭
74頭
12頭
18頭
42頭
275頭
H 14 ~H 25)
放獣数合計
うち再捕獲
再捕獲計 再捕獲率
0頭
19頭
0頭
0頭
15頭
0頭
0頭
38頭
0頭
0頭
16頭
0頭
2.1%
0頭
38頭
0頭
2頭
11頭
3頭
2頭
30頭
2頭
1頭
12頭
2頭
22頭
137頭
42頭
30.7%
1頭
23頭
3頭
13.0%
2頭
28頭
4頭
14.3%
5頭
82頭
15頭
18.3%
35頭
449頭
71頭
15.8%
- 10 -
表-7
誤捕獲頭数の状況(平成 13 ~ 25 年度実績)
丹波個体群
年度
誤捕獲数
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
計
2
10
4
14
5
7
4
3
3
22
7
7
17
105
計
1
7
1
6
3
4
2
2
2
5
3
0
6
42
狩猟での誤捕獲
おり
くくりわな オス メス 不明 計
1
0
0
1
0
1
4
3
6
1
0
3
0
1
0
0
1
3
6
0
4
2
0
8
0
3
2
1
0
2
3
1
1
3
0
3
2
0
2
0
0
2
0
2
1
1
0
1
2
0
0
2
0
1
5
0
5
0
0 17
2
1
3
0
0
4
0
0
0
0
0
7
3
3
1
5
0 11
28
14 25 16
1 63
有害捕獲での誤捕獲
おり
くくりわな オス メス 不明
1
0
0
1
0
3
0
1
2
0
3
0
0
1
2
5
3
3
5
0
1
1
2
0
0
3
0
0
1
2
1
1
2
0
0
1
0
0
0
0
1
0
1
0
0
12
5
8
3
6
2
2
1
2
1
4
3
5
2
0
3
8
2
9
0
40
23 25 26 11
狩猟での誤捕獲
おり
くくりわな オス メス 不明 計
0
0
0
0
0
3
1
2
2
1
0
3
2
7
6
3
0
2
2
4
3
1
2
8
1
4
3
2
0
5
5
4
5
2
2
5
3
2
2
3
0
1
2
4
4
2
0
6
0
0
0
0
0
6
16
1 13
4
0 35
1
1
1
1
0
3
1
0
0
0
1 10
7
2
6
1
2 16
41
31 45 20
7 103
有害捕獲での誤捕獲
おり
くくりわな オス メス 不明
0
3
2
1
0
1
2
0
1
2
1
1
1
1
0
3
5
2
4
2
2
3
2
1
2
2
3
2
1
2
0
1
0
1
0
2
4
2
3
1
1
5
3
3
0
27
8 20 15
0
2
1
2
0
1
6
4
8
1
1
2
14 13
3
0
49
54 57 35 11
丹後個体群
年度
誤捕獲数
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
計
3
6
11
14
10
14
6
12
6
52
5
11
25
175
計
0
3
9
6
5
9
5
6
0
17
2
1
9
72
(5) 被害状況
府内において、クマによる人身被害は、第 1 期計画中に5件(17 年度 1 件(6 月
綾部市)、18 年度 4 件(11 月与謝野町、福知山市、12 月南丹市、京丹後市))、第 2
期計画中に 6 件(22 年度 6 件 8 月南丹市、9 月与謝野町、10 月舞鶴市、福知山市、11
月京丹波町)第 3 期計画中に 1 件(24 年 7 月京都市)発生した。人身事故には、
山菜採取や森林作業中など恒常的生息域内で起きるものと、大量出没年の際に農地
や集落など恒常的生息域外で起きるものがあるが、これまで府内で発生した人身事
故 12 件のうち 9 件は大量出没年などに恒常的生息域外で発生している。
出没に対する人身被害率(人身被害件数÷出没情報件数× 100)をみると、平成 17
年度が 0.54 %、平成 18 年度が 0.64 %、平成 22 年度は 0.3 %、平成 24 年度は 0.2 %
となる。平成 22 年度は大量出没があったが、人身被害率を見るとそれほど際立っ
てはいない。これまで死亡に至る事故は発生していないが、クマが、人家周辺へ出
没することによる人身被害の未然防止が大きな課題となっている。
農林業被害について、面積は平成 7 年度をピークに、金額は 11 年度をピークに
減少している(図-8)。
被害の内容は、クマ剥ぎ被害が被害量及び被害額の大半を占めており、広大な山
- 11 -
林で発生すること、被害を受ける可能性のある期間が極めて長いこと、発生機構が
明らかでないこと等により、解決策が乏しく大きな課題となっている。また、平成 18
年や 22 年度など大量出没年には、丹後地域を中心に果樹などの被害が急増した。
(図
-9)
また、クマが人家周辺へ出没することによって発生する人身被害や精神的被害(農
林業被害を除く)は、被害量として評価することが困難であるが、有害鳥獣捕獲に
よる捕獲数も多く、平成 10 年度以降はクマ剥ぎ被害による捕獲数よりも多い傾向
にある。
なお、クマの電気柵については、各広域振興局及び京都林務事務所(以下、「振
興局等」という。)に移動用電気柵を配備し活用している。また、鳥獣被害対策と
して電気柵等の設置に対して補助事業を実施している。
- 12 -
ha
クマによる農林業被害面積
500
果樹
400
工芸作物
300
365 320 野菜類
クマ剥ぎ被害
200
100
0
52 181 124 101 88 21 H6
H7
H8
H9
55 49 15 50 55 43 H10
H11
H12
10 100 H13
17 52 7 82 12 77 7 79 H14
H15
H16
H17
13 15 10 11 7 18 5 23 12 21 5 19 1 23 3 4 H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
クマによる農林業被害金額
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
被害額(百万円)
86 82 69 64 47 H6
90 H7
図-8
61 51 49 H8
86 40 40 27 23 36 32
37
33
25
10
H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
クマ農林業被害面積・金額の推移
クマ剥ぎ被害面積
クマによる農作物被害面積
ha
ha
100
20
0.75
0.1
5
80
工芸作物
15
10
90
野菜類
60
果樹
50
0.09
17.00 11.63 6.97 0.1
6.97
0
9.6
0.1
6.91
4.94
11.6
30
0.3
5.3
0.1
1.4
0.2
20
2.5
10
52
15
10.9
18
22.5
21.2
19.4
22.9
0
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
図-9
82.03 77.37 78.6
40
0.15
12.97
クマ剥ぎ被害
70
4
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
クマによる農作物、クマ剥ぎ面積
(注)本図の数値については、特に著しい被害や農林家から自主的に申し出があった被害
状況等について集約したものである。また、明確な算定基準が設けられたものではないの
で、あくまで被害傾向を知る上での参考値である。
- 13 -
6
保護の目標
クマの個体及び生息地の管理とともに、捕殺以外の防除法を積極的に実施するこ
とにより、個体群の安定的維持、農林業や人身への被害の未然防止及び地域住民の
精神的不安を軽減することを目標とする。
(1) 丹後個体群
ア 被害防除の実施
丹後地域では、人家周辺への出没による精神的被害及び果樹被害や養蜂被害が大
きな問題となっている。
人家周辺への出没に対しては、「ツキノワグマ出没対応マニュアル」により危険
個体の速やかな除去を行う。
また、人家近くのゴミや農畜産物の廃棄や放置等は、クマを引き寄せる一因とな
るため、適切な処理について普及啓発する。
経営されている果樹園や養蜂場において、被害が発生した場合には、「ツキノワ
グマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル」により被害防除と個体管理を行う。
果樹被害については、山林と農耕地との境界付近で発生することが多く、クマの
侵入を電気柵等で遮断するのが有効であり、電気柵等の普及に努める。
イ
個体の捕獲
丹後個体群の個体群サイズは、推定生息数が約 700 頭と個体数水準3の危急地域
個体群にあたるため、狩猟による捕獲を禁止するとともに、基本的には防除対策を
優先することとし、生息数の減少を抑制する。
捕獲については、加害個体の管理を目標とした個体管理を行うこととし、被害の
状況等により捕獲を実施する。
ただし、個体群保全の観点から過剰捕獲とならないように、捕殺上限数を設定す
るとともに、分布域が連続する兵庫県と連携し、個体群の安定的維持を図る。
ウ
生息地の環境整備
丹後地域は日本海側に比較的広葉樹林が残っているものの、全体としては広くは
ない状況である。森林法における森林整備の基本方針との整合を図りながら、可能
な場所から広葉樹への樹種転換を図る等、クマの生息環境に配慮した森林づくりを
進める。
近年クマの食物として重要なナラ類の集団枯損が発生しており、防除の徹底と被
害対策を進める必要がある。
(2) 丹波個体群
ア 被害防除の実施
丹波個体群においても、人家周辺への出没に対しては「ツキノワグマ出没対応マ
ニュアル」により対応するとともに、経営されている果樹園や養蜂場において、被
害が発生した場合には、「ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル」によ
り被害防除と個体管理を行う。
当該地域において甚大な被害が発生しているクマ剥ぎ被害については、「ツキノ
ワグマ剥ぎ被害対応マニュアル」により適切な防除と個体管理を実施する。
- 14 -
また、現時点ではテープ巻きが効果的な防除方法であり、積極的な普及に努める
とともに、クマ剥ぎ発生機構の解明を含め、新しい対策の開発に努める。
イ
個体の捕獲
丹波個体群の個体群サイズは、推定生息数が約 200 頭と個体数水準 2 の絶滅危惧
地域個体群にあたるため、狩猟による捕獲を禁止するとともに、基本的には防除対
策を優先することとし、生息数の減少を抑制し健全な個体群を維持する。
捕獲については、丹後個体群と同様に加害個体の管理を目標とした個体管理を行
うこととし、被害の状況等により適切な捕獲を実施する。
ただし、個体群保全の観点から過剰捕獲とならないように、捕殺上限数を設定す
るとともに、分布域が連続する滋賀県、福井県と連携し、個体群の安定的維持を図
る。
ウ
生息地の環境整備
比較的奥山については、クマの生息に適した環境を残すよう努め、各森林計画と
の整合性を保ちながら、中長期的な観点で生物多様性や環境保全に配慮した森林づ
くりを目指す。
また、ナラ類の集団枯損は丹波地域にも広がっており、被害対策を進める必要が
ある。
クマの生息上重要な地域については、森林所有者の協力の下に、生息環境の整備
を推進し、強度間伐による下層植生の回復、針広混交林化や堅果類の広葉樹植栽な
どクマが安定的に生活できる場の確保に努める。
7
保護の実施
(1) 個体管理
クマと人との様々なあつれきを軽減・解消し、人とクマの共存を実現するため、
クマの生態や被害の状況を把握し、個体の管理、被害防除の実施、生息地の環境整
備等、総合的な施策を実施する。
ア「ツキノワグマ出没対応マニュアル」
クマが人家周辺等、人の生活圏に出没した場合や、狩猟行為等による誤捕獲
の場合などの対応方針を定める。
イ「クマ剥ぎ被害対応マニュアル」
クマ剥ぎはクマの生息地の中心である森林で発生する被害であり、他の農林
業被害とは異なった対応が必要であるため、クマ剥ぎ被害に対する対応方針を
定める。
ウ「ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル」
果樹園や養蜂場への被害は、地域の産業として与える影響が大きいため、そ
の被害に対する対応方針を定める。
エ 捕殺個体の処理
捕殺を行う場合は原則として安楽死処分を行うこととする。
捕殺個体の処理については、被害を発生させた個体の確認及び発生機構解明
のために必要な器官を指定研究機関等に送付することとし、その他の部分は市
- 15 -
町村が適切に処分を行う。
オ
個体管理に係る捕獲許可の方針
各マニュアルにより実施する捕獲については、必要最小限の範囲で行うこと
とする。
放獣個体にはマイクロチップ等を装着するとともに、必要に応じ電波発信器
を装着し、放獣後の監視を行うとともに、再出没した場合には同一個体の確認
等を行うこととする。
なお、同一個体が再被害を起こし、再度捕獲された場合は人慣れグマと判断
し、原則として捕殺する。
また、府において放獣作業班を組織し、迅速な放獣を実施できる体制を整備
する。
カ 狩猟による捕獲の禁止
平成 14 年度からクマの狩猟による捕獲を禁止しており、引き続き本計画期間
においても捕獲の禁止を行う。
(2) 誤捕獲の防止
有害鳥獣捕獲や狩猟において、イノシシやシカの捕獲を目的として設置されたオ
リやくくりわななどに誤ってクマが捕獲される「誤捕獲」が多く発生しているため、
捕獲者に対して誤捕獲防止の指導及び普及啓発を徹底する。
有害鳥獣捕獲や狩猟によるクマの誤捕獲は目的外捕獲のため、人身被害などの危
険性がない場合は、原則として放獣する。放獣作業は、森林保全課が作業班を編成
し、市町村等の関係者が協力して実施する。
ア
誤捕獲の防止
原則としてクマの生息地では「くくりわな」の使用を避けるよう指導するとと
もに、イノシシやシカの有害鳥獣捕獲等については、クマが逃げられる構造の檻
等(天井に直径 30cm 程度穴をあけたもの)の使用を推進する。
やむなく「くくりわな」を使用する場合は、法律では、4 mm 以上のものを使
用することと規定されているが、放獣作業等の安全性を考慮し、ワイヤー直径の
太い(5 mm 以上)ものの使用に努めるものとする。
イノシシやシカの捕獲を目的とした箱わなを設置した場合において、クマの足
跡などの痕跡が箱わな及びその周辺で発見された場合には、箱わなの扉を一時的
に閉じるなどクマの誤捕獲を防止する措置をとるよう指導する。
また、箱わな及びくくりわななどでクマの誤捕獲が発生した場合、府は捕獲者
に対し、わなの適性管理及び設置場所の変更、クマを誘引する可能性のある餌の
使用を避けるなどの指導を行うものとする。
それでもなお、有害捕獲において適切な予防措置を講じないまま、繰り返し誤
捕獲を起こすなど、改善が見られない場合は、許可権限者は捕獲許可の更新中止
を検討するものとする。
また、誤捕獲の報告が遅れることのないよう、わなの管理を徹底する。
イ
狩猟に対する指導啓発
狩猟者に誤捕獲防止について普及啓発を行う。
- 16 -
また、密猟の防止等の観点から、狩猟者から府や市町村への通報体制を確立す
るとともに、わな設置者の放獣作業への全面的な協力を求めていく。
(3) 個体群の保護
本計画では、近畿北部地域個体群に属している府内の個体群を対象としているが、
個体群管理についても関係府県で一貫した対策がとれる体制が未整備であることか
ら、現時点では府内のクマを保全する観点から個体群管理を行うものとする。
ただし、丹後、丹波両個体群間のコリドー等による分布の連続性の確保等につい
ては、両個体群の間には形態的、遺伝的変異が異なることが指摘されており、歴史
的経過やクマ剥ぎ被害の拡散等を検討の上、慎重に対応するものとする。
(4)捕殺上限数の設定
第5(1)で述べたように、環境省の「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイド
ライン」のクマ類個体数水準に基づき、府内の個体群は個体数水準3(危急地域個
体群)及び個体数水準2(絶滅危惧地域個体群)程度であり、仮に隣接県も合わせ
て北近畿東部個体群とした場合、個体数水準3(危急地域個体群)程度と判断でき
ることから、同マニュアルの個体数水準と捕獲数上限設定例を参考に捕殺上限数を
設定する(表-8)。
①単年度における捕殺上限数は、丹後個体群で56頭まで、丹波個体群で16頭
までとする。ただし、ブナ科堅果類の豊凶度やクマ剥ぎ被害の年変動を考慮し
て、当該年度の年間捕殺数が捕殺上限数を下回った場合、その下回った頭数分
のみを翌年度に限り持ち越すことができるものとする。
②年度内において、被害の増大等により年間捕殺上限数を超えると予想される場
合は、緊急に「特定鳥獣保護管理計画-ツキノワグマ-検討会」を開催し、被
害防止対策の強化や捕殺上限数等を検討する。
③クマの自然死、交通事故死及び放獣個体については捕殺上限数に含めないもの
とする。なお、誤捕獲等により捕獲されて手負いになった場合の捕殺は、捕殺
上限数に含める。
④振興局等が捕獲許可をする場合は、捕殺上限数内であるかを森林保全課に確認
の上、許可する。
(注)捕殺上限数は、固定数値(丹後56頭、丹波16頭)であり、年間捕
殺上限数は、変動数値(捕殺上限数+「①」による持ち越し数)である。
表-8
個体数水準と捕獲数上限の設定例
1)個体数水準1:狩猟禁止とし、緊急避難的な有害駆除も捕獲数最小限にとどめるため、非捕
殺的防除を推進する。総捕獲数は最大でも生息数の3%以下にとどめる。
2)個体数水準2:水準1の危機的地域個体群と同様、狩猟を禁止する。本計画に基づく捕獲数
は生息数の5%程度以下にとどめ、それ以上は非捕殺的防除(学習放獣)などで対応する。
3)個体数水準3:制限した狩猟を認めてよいが、狩猟と本計画に基づく捕獲数をあわせた総捕
獲数を生息数の8%程度以下にとどめる。
4)個体数水準4:狩猟を認めてよいが、狩猟と本計画に基づく捕獲数をあわせた総捕獲数を生
息数の12%程度以下にとどめる。
(環境省特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編),2010 より)
(注)本表の「捕獲数上限」は、本計画における「捕殺上限数」に相当する。
- 17 -
(5) 被害防除
ア 出没、精神的被害
人の生活域にあっては人の安全が何よりも優先されなければならない。基本的に
は「ツキノワグマ出没対応マニュアル」により危機管理体制を確立する。
精神的被害に対しては、不安を解消する有効な情報を提供することが重要であり、
クマに関する生物学的な知識や遭遇しないための注意点などの情報提供を行うパン
フレット等を作成して普及啓発を図り、精神的被害の解消に役立てる。
また、森林への入山者についても、生息情報の提供や注意事項等の啓発を行う。
イ
農作物・養蜂被害
クマの人里への出没を防ぐためには農地や集落周辺での誘引物の管理強化や除去
対策の徹底を地域ぐるみで行う必要がある。
1)誘引物の除去:生ゴミの除去、土穴での生ゴミ処理の中止、コンポストの管理
強化、養蜂箱の管理強化、野外の漬け物樽の除去、放置果実類の除去、家畜・
家きん飼料の管理強化、飼料作物刈り取り後の管理強化
2)農地・果樹園への出没防止対策:廃果の適切な処理、果樹園や養蜂場周辺への
電気柵の設置、養蜂の被害管理
3)クマと人との突然の出合いを防ぎ人身事故を回避するため、クマの出没ルート
の森林や通学路周辺の森林、道路の法面などの下草刈りや灌木の刈り払いなど
のバッファゾーン整備が効果的である。
クマの被害防除方法として電気柵が有効である。被害を受けた養蜂場や果樹園で
は、電気柵の設置が進んでいるが、電気柵を設置しても侵入されている例も見られ
ることから、今後は安価で維持管理がしやすい効果的な防除技術の開発や設置方法
の検討が必要である。
人家周辺に植えられている柿等の被害は、出没に対する精神的被害とも相まって
対応が難しいため、早期の収穫やトタン巻き等の実施を啓発する。
また、果樹園や養蜂場への被害は、地域の産業として与える影響が大きいため、
「ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル」によりその被害に対する対応
方針を定める。
ウ クマ剥ぎ被害
基本的に「クマ剥ぎ被害対応マニュアル」により対応することとし、各種補助事
業を活用してテープ巻き防除等を強力に推進する。
(6) 生息環境管理
クマの生息上重要な地域については、森林所有者の協力の下に、各森林計画との
整合性を保ちながら生息環境の整備を推進し、強度間伐による下層植生の回復、針
広混交林化や堅果類の広葉樹植栽、広葉樹林への樹種転換などを推進し、自然植生
の回復を図るなど生息環境の確保を行う。
なお、広葉樹を植栽する緑の公共事業「いのちと環境の森づくり事業」を平成 14
年度から実施している。なお、平成 18 年度までの実施面積は、丹波個体群の地域
では、京都市、南丹市で 18.5ha、丹後個体群の地域では、宮津市、京丹後市、伊根
町で 11.0ha である。
- 18 -
(7) 近隣府県との連携
移動能力が高く、広い行動圏をもつクマの保護管理は分布域に関係する複数の府
県が協議を行いながら互いに整合性を保つことが必要である。
隣接府県に近接して放獣を実施したときや人身被害が発生したときには、近隣府
県に情報を提供し、互いに情報を共有できるよう努める。
8
モニタリング
クマの健全な個体群を維持し、かつ被害を最小限に抑えるためには、個体群や被
害発生状況のモニタリングが極めて重要である。従来から実施している生息動態調
査に加え、捕獲等で得られる捕獲情報、被害情報及び出没情報等の情報収集体制を
整備する。
また、クマの食料となる堅果類が奥山で凶作の年は、クマやイノシシをはじめ多
くの獣類が里に下りてきて、農作物被害が増加すると言われている。このため豊凶
調査を行い、広く注意喚起することにより、電気柵の設置や誘引物の除去など早め
の防除対策を行うことができ、被害軽減につなげることができる。
(1) 生息状況調査
クマの生息数についてのモニタリング手法は全国的にも確立されていないが、継
続的な調査によりデータを蓄積し、精度の高い結果が得られるよう努力する。
・個体数増減の指標とするため、ヘアトラップ法調査等新たな調査手法の開発に努
める。
・狩猟者に協力を求め、出猟カレンダー調査により目撃情報の収集・解析を行う。
・地域住民等からの出没や目撃情報の収集・解析を行う。
・捕獲等から得られた個体の試料調査を関係機関の協力を得て行う。
(2) 被害調査
被害農林家からの申し出を主とした被害調査の精度を高め、被害に対する意識調
査を実施するとともに、被害対策の効果検証を行う。
・各市町村の協力を得て被害情報を収集・整理する。
・クマの捕獲制限等にともなう被害への影響について、アンケート等により農林業
被害意識調査を行う。
・クマ剥ぎ被害地にモデル地区を設定し、被害対策の効果検証のモニタリング調査
等を実施する。
(3) 生息環境調査
クマの保護管理に当たり、最も重要とされる課題の一つが良好な生息環境の安定
的な維持である。クマの生息上重要な地域における強度間伐による下層植生の回復、
針広混交林化や堅果類の広葉樹植栽などを推進し、生息環境の確保を行うことを目
的に、次の調査を実施する。
・主要な食物資源となっているブナ科堅果類の結実調査を行う。
・ラジオテレメトリー調査等により、クマの利用環境調査を行う。
- 19 -
9
普及啓発
クマが通常生息している地域と生息していない地域とでは、クマに対する意識や
対応が異なっていることが多い。このため、クマの問題を生息地域だけの問題とせ
ず、NPO等と連携を図り府民全体として取り組む必要がある。
(1) パンフレット等による普及啓発の推進
クマの生息地においては、クマの生態を理解していればクマとの遭遇を避けるこ
とができる。一般の入山者等にもわかりやすいパンフレット等を作成し、普及啓発
に努める。
また、人家周辺への出没に対しても、放置した果樹や生ゴミの適切な処理等誘引
物の除去について地域住民へ周知徹底を図る。
クマの生態や対処方法などを啓発し、クマに出合わないよう危険の回避方法やク
マの生活を知ることでむやみにクマと接触せず、人身被害の防止のための啓発を推
進する。
(2) 研修会等の実施
クマの被害防除方法等に関する研修会の実施やNPO等によるセミナー等の実施
に協力する。
10
計画の実施体制
クマの生息及び被害状況や捕獲状況を適切に把握し、個体数のモニタリングをし
ながら計画を推進するとともに、第一種特定鳥獣管理計画‐ツキノワグマ‐に基づ
いた年度別事業実施計画の作成を検討する。
また、計画の効果やモニタリングの結果に基づいて、その後の行動や判断を修正
するフィードバック体制を確立し、必要があれば本計画を見直し、より的確な保護
計画に発展させる。
- 20 -
【参考】
第一種特定鳥獣保護計画-ツキノワグマ-策定に係る経緯
◎特定鳥獣保護管理計画専門家会議
【 平 成 26 年 10 月 29 日 】 学 識 経 験 者 に よ り 課 題 整 理 、 素 案 検 討
【 平 成 26 年 11 月 13 日 】 学 識 経 験 者 に よ り 課 題 整 理 、 素 案 検 討
◎特定鳥獣保護管理計画検討会
【 平 成 26 年 12 月 24 日 】 農 林 業 団 体 、 狩 猟 団 体 、 関 係 行 政 機 関 等
により計画案の検討
◎関係行政機関との協議
【 平 成 27 年 2 月 4 日 】 市 町 村 及 び 隣 接 府 県 と 計 画 案 に つ い て 書 面
にて協議
◎京都府環境審議会への諮問・答申
【 平 成 27 年 3 月 10 日 】 環 境 審 議 会 へ の 諮 問
【 平 成 27 年 3 月 13 日 】 自 然 ・ 鳥 獣 保 護 部 会 で の 審 議
【 平 成 27 年 3 月 16 日 】 環 境 審 議 会 か ら 知 事 に 答 申
- 30 -
別添1
ツキノワグマ出没対応マニュアル
京
都
府
1
目的
京都府のツキノワグマ(以下クマという。)の生息数は、丹波個体群が約 200 頭、
丹後個体群が約 700 頭とされており、環境省発行の特定鳥獣保護管理計画作成のた
めのガイドライン(クマ類編)2010 年 3 月発行によれば、個体数水準2の絶滅危
惧地域個体群及び個体数水準3の危急地域個体群にあたる。また、府内での分布域
の減少及び孤立化により、京都府レッドデータブック(平成 14 年度)に掲載され、
絶滅寸前種に区分されている。
一方、クマによる人身被害や農林業被害が府内各地で発生しており、被害対策へ
の強い要望があり、有害鳥獣捕獲や狩猟による捕獲を行ってきた。しかし、近年、
クマが人家周辺など主要な生息地以外に出没する事例が多く、住民の安全確保を図
るとともに、クマの個体群の維持も同時に考える必要がある。
このため、人身被害のおそれからの必要以上の捕獲を避け、状況に応じた適切な
処置が必要とされる。
本マニュアルは、クマが原則として人家周辺等主要な生息地以外に出没した場合
や、狩猟行為等による誤捕獲の場合の基本方針を定め、人とのあつれきを減少させ、
人とクマの共生を図ることを目的として作成したものである。なお、クマ剥ぎ被害
及び果樹・養蜂被害については別途対応する。
2
出没に対する基本方針
人家周辺等の出没に対しては、出没を避けるための「予防的な措置」と、それを
行っていても「クマが出没した場合の措置」の2つを分けて考える必要があり、特
に前者の予防的な措置は基本的なものである。
3
予防措置
クマは学習能力が高く、一度生ゴミなどの味を覚えると、頻繁にゴミ捨て場など
に現れるようになる。また、たとえ学習放獣しても、再び戻ってくる可能性が高い
ため、残飯など生ゴミなどを適正に管理し、クマが餌付いて人間の居住地域周辺に
誘引されないようにすることによって、クマと人の出会いを減少させることは必須
である。
このため、次の事項について指導及び啓発する。
(1) クマの出没する可能性のある地域では、ゴミの出し方に留意する。(例えば頑
丈で臭いが漏れないような構造のゴミ箱の設置、早急なゴミ収集体制の実施な
ど。)
(2) 集落内の柿の実等を求めてクマが出没しないよう、それらの除去あるいは樹幹
へのトタン巻きや電気柵の設置等を行う。
(3) 野外活動時の山中でのゴミ放置を止める。
(4) 水産廃棄物及び農畜産廃棄物の適正な処理を行う。
(5) 家畜飼料管理を適正に行う。
(6) 狩猟、有害鳥獣捕獲、交通事故、防鹿ネット等に絡んで死亡している個体等、
- 21 -
動物の死体を放置しない。
(7) 上記(1)~(6)の普及啓発のために広報活動を行う。
4
クマが出没した場合の措置
(1) 住民等からクマ出没の通報を受けた部署は、別紙通報記録票により、通報者、
目撃場所、目撃時刻、目撃個体の状況、負傷者の有無、遭遇時の状況、出没要
因等の事項を聞き取り、京都府農林水産部森林保全課(以下、森林保全課とい
う。)に連絡する。
(2) 人家周辺や市街地などに出没し、人身被害が生じた場合、又は生じるおそれが非常
に強い場合(人身事故が生じるおそれが非常に強い場合とは、①クマが人を追跡す
るなど攻撃的な行動をした場合、②クマが人家(廃屋・空家を除く。以下同じ。)
や多数の人が出入りする建物に侵入した場合、③誘引物を除去し、電気柵を張
るなど防除対策をしてもなお人家の敷地内に頻繁に出没し執着している場合の
ことをいう。以下同じ。)は、「緊急対応」を行い、それ以外の場合は「一般対
応」を行う。
5
緊急対応
人家周辺や市街地などに出没し、緊急対応を行う場合は、森林保全課、広域振興局
等、市町村、警察署の関係機関が協議の上、捕獲許可に基づき捕獲又は殺処分等を
行う。
なお、通報を受けた部署は以下の対応を講じる。
(1) 市町村は地元猟友会に状況を連絡して捕獲班を編成するとともに、捕獲許可申
請を行うとともに、警察署と協力して付近住民にツキノワグマが出没したこと
を知らせ、注意を喚起する。
(2) 広域振興局等は許可事務を進め、檻等による捕獲準備を行う。
(3) 森林保全課、振興局等、市町村及び警察等による現場調査を行い、当該個体の
行動を監視し、出没の可能性がある地域における立ち入り制限等の措置を講じ
る。
(4)クマが人家に侵入しているなど、人身被害の危険な状態が現に差し迫っている
場合は、広域振興局及び京都林務事務所(以下、振興局等という。)で対応につい
てすみやかに現場判断するものとする。なお、一旦危険な状態が回避されるなど、
差し迫った場合を除いては森林保全課と協議の上判断し、必要に応じて現地調査の
実施や専門家の意見を聞くものとする。
6
一般対応
クマが緊急対応に該当しないものの人家周辺等に頻繁に出没し、農林産物等に被
害を与え、又はそのおそれがある場合は、次のとおりとする。
(1) 人家周辺、観光地、学校の通学路等に出没した場合は、誘引物の除去及び出没
の可能性に対する住民への注意喚起を行い、クマの隠れ場所となるような薮や
草地がある場合は、刈り払い等の対策を検討する。
また、誘引物の除去が困難な場合等は、電気柵等による防除を実施する。
(2) 農林業被害(クマ剥ぎ被害を除く)がある場合は、誘引物除去、追い払い、電
- 22 -
気柵等による防除等を実施する。
(3) 誘引物の除去や追い払い、電気柵設置などの適切な防除対策を実施したにもかか
わらず再三出没する場合は、捕獲許可申請を行い、檻により捕獲する。しかし、
平成 22 年度以降柿の実等を求めて人家周辺に頻繁に出没しており、地域住民の
精神的な負担は計り知れない。また、丹後地域を中心として、集落等へのクマ
の出没が急激に増加している状況である。このため、集落等を徘徊する個体に
ついては、捕殺上限数の範囲内において、1回目の捕獲個体であっても捕殺を
可能とする。
なお、人家周辺に出没する個体が目撃により有害捕獲による放獣個体である
ことが明らかである場合には、銃器による捕獲も可能とする。
7
誤捕獲
有害鳥獣捕獲及び狩猟行為において、クマが誤って捕獲された場合は、森林保全
課、振興局等、市町村、警察署の関係機関が連携し原則としてすみやかに放獣する。
なお、クマを捕獲目的としないわな等について、クマが捕獲できないような、あ
るいは捕獲されても脱出できるような措置を講じるものとする。
8
追い払い作業
追い払いを実施する場合は、必ず専門家のアドバイスを受けながら次により行う。
(1) 通常の追い払いは、花火、爆竹等により実施する。
(2) 追い払いは、ゴム弾、花火弾を使用できる。(ただし、ゴム弾等の使用は、第
1種銃猟免許所持者等で所定の研修等を受けた者が実施する。)
9
放獣作業
(1) 放獣場所は、捕獲許可による捕獲の場合は、申請前に市町村が選定する。
(2) 放獣作業は森林保全課が作業班を編成して実施する。(麻酔銃及び麻酔薬の使
用は、獣医師等で所定の研修等を受けた者が実施する。)
(3) 放獣個体には、イヤータグやマイクロチップ等を装着するとともに、必要に応
じ電波発信器を装着し、振興局等や市町村等が協力の上、放獣後の行動を監視
する。
(4) 放獣作業は危険が伴うため、必ず捕獲許可を受けた銃器携行者を同行するなど
十分な安全確保を行う。
10
専門家(学識経験者)チームの設置
森林保全課は専門家チームを設置し、出没対応、放獣作業等に関する事項につい
て、助言又は協力を得ることとする。
11
その他
振興局等を単位に、休日及び夜間の連絡体制並びに関係者リストを整備する。
- 23 -
ツキノワグマ出没対応フロー図
地域住民
出没通報
地元猟友会
注意喚起、現地調査
市 町 村
振 興 局 等
警 察 署
地域住民から連絡があり
次第森林保全課へ連絡
連絡
現 地 調 査
森林保全課
人身被害等の緊急性小
一般対応
専 門 家
アドバイス
人身被害等の緊急性大
緊急対応
森林保全課
振興局等、市町村
追い払い、被害防除の実施
誘引物の撤去、 電気柵の設置等
振 興 局 等
捕獲申請・許可
協力・連絡
市町村
警察署
安全対策依頼・協力
合 同 現 地 調 査
(捕 殺 の 検 討)
再出没
再出没の可能性小
不 必 要
必 要
再出没の可能性大
捕獲申請
市町村
振興局等
捕獲許可
檻による生捕り
捕
殺
放獣の検討
- 24 -
捕 殺
ツキノワグマ通報記録票
通報日時 平成
年
月
午前
時
分
午後
時
分
日
通報受理者
氏 名
通 報 者
連絡先
住 所
自宅
携帯
目撃記録 目撃場所
目撃時刻
平成
年
個体数
目撃個体
月
日
頭 (内訳 オトナ 頭
大きさ
性 別
午前 ・ 午後
cm
オ ス
時
分
コドモ
頭)
不 明
メ ス (
)
不 明
移動方向
その他個
体の特徴
など
負傷者等
有(
人 負傷の程度
)
無
遭遇時の
状況
出没要因
ゴミ類(
農作物(
参考事項
) ・ 動物の死体(
) ・林産物(
) ・ 養蜂
) ・その他(
(※危険防止の措置等)
出没位置メモ(※25,000分の1程度の図面を添付のこと)
- 25 -
)
ツキノワグマ誤捕獲通報記録票
通報日時 平成
年
月
午前
時
分
午後
時
分
日
通報受理者
氏 名
罠設置者
連絡先
住 所
自宅
携帯
捕獲記録 捕獲場所
捕獲時刻
平成
年
月
個体数
目撃個体
罠の別
cm
オ ス
放獣の
同 意
その他
個体の
特徴な
ど
負傷者等
有(
時
分
頭 コドモ
頭)
不 明
メ ス (
)
くくり罠(ワイヤーの太さ等
(かっている場所
前足
後足
檻
場 所
午前 ・ 午後
頭 (内訳 オトナ
大きさ
性 別
日
不 明
mm )
指 )
(丈夫さ等
人家近く
その他(
畑
有
)
薮の中
山林
)
無
(※暴れている、おとなしい等)
人 負傷の程度
)
無
参考事項
捕獲位置メモ(※25,000分の1程度の図面を添付のこと)
- 26 -
別添2
クマ剥ぎ被害対応マニュアル
京
都
府
京都府では、クマ剥ぎ被害は林業の生産意欲の減退や森林の荒廃等大きな問題と
なっているが、その被害発生機構や被害実態については研究が進められているもの
の未だ不明な点が多くある。
本マニュアルは、これまでの調査・研究の成果と防除体制の現状を踏まえた上で、
ツキノワグマ(以下、クマという。)の特定鳥獣保護管理計画の一環としてクマ剥
ぎ被害への対応策をまとめたものである。
1
目的
京都府のクマ個体群の安定的維持を図りつつ、クマ剥ぎ被害の発生を効果的に減
少させることを目的とする。
2
クマ剥ぎ被害とその対応策に関する基本認識
(1) クマ剥ぎ被害
クマ剥ぎとは、クマがスギやヒノキなどの樹皮を剥いで木部部分をかじること
である。樹液成分の濃度が高い時期を中心に、4 ~ 8 月に発生しているが、クマ
剥ぎ被害の時期、量、林分は、年によって変動している可能性がある。
1シーズンの被害回数は、一つの林分で 1 回で終わることもあれば、何度も繰
り返し被害を受ける場合がある。
被害齢級は、胸高直径が 5cm を越える程度になると見られ始め、3 齢級から 8
齢級くらいの林分に集中して発生し、それ以上の齢級になると散発して発生する
傾向が報告されている。ただし、被害を受ける可能性のある林分全てが被害を受
けるわけではなく、被害を全く受けない林分もある。
府内において被害が激しい地域は丹波個体群内の一部地域に限られている。
(2) 対応策
クマ剥ぎ被害への対応策は、被害防止と捕獲の2つに大きく分けられる。
被害防止方法として費用対効果の面から推奨される方法は、造林木の地際から
荷造り用テープをらせん状に巻き付ける方法(以下、テープ巻き防除という。)
である。しかし、テープの耐久性の問題から 3 ~ 4 年ごとに巻き直しが必要なた
め、広い林分を対象に実施し続けることは現実的には困難であり、新しい被害防
止方法の開発が必要である。(近年では耐久性の高いロープを用いる方法も行わ
れつつある。)
捕獲には、一般的に密度を下げる密度管理と加害個体を除去する有害鳥獣捕獲
とがある。密度管理の実施は、被害がクマの密度とともに変化することが前提と
なるが、クマ剥ぎ被害がこれにあたるかは不明である。
しかし、捕獲を継続してきているにもかかわらず被害が収まっていないことか
ら、密度管理による被害軽減効果は不十分と思われる。
一方、一般的にクマの行動には個体差がみられるので、クマ剥ぎを覚えた個体
が繰り返しクマ剥ぎを行っている可能性を考慮すると、クマ剥ぎ被害防除のため
- 27 -
の捕獲は、加害個体を除去する方が被害軽減効果が高いと考えられる。
3
クマ剥ぎ被害対応策の基本方針
(1) クマ剥ぎ被害対応策は、テープ巻き防除などの有効な被害防止方法の推進を優
先する。
(2) 被害防止策は、その効果をできるだけ高めるため、2、3年以内に樹皮を剥が
れた新しい被害が確認されている林分(以下、「現被害林分」という。)及びそ
の周辺林分で実施する。
(3) 現被害林分のうち、被害防止方法としてのテープ巻き防除を早急かつ十分に行
うことが困難でやむを得ない場合には、専門家の意見を聞いて当該年度の特定
鳥獣保護管理計画で設定されている年間捕殺上限数の範囲で捕獲を実施する。
4
クマ剥ぎ被害防止対策の実施
クマ剥ぎ被害防止対策を実施する際には、以下の点に注意し、効率的な防除を実
施する。
(1) 限られた防除量で効果的に被害防止を行うために、現被害林分及びその周辺の
林分を防除対象林分とする。
(2) 被害防止策の実施に当たっては、実施可能な防除量、防除対象林分、地域の事
情などを勘案して、被害軽減効果を高められるよう計画的に実施する。
(3) 現在、被害防止効果の実績が高く、簡易性の面で優れた方法はテープ巻き防除
であり、各種事業のテープ巻き防除を積極的に推進する。
(4) テープ巻き防除以外で高い被害防止効果と継続性の期待できる防止方法の開
発、導入を推進する。
5
クマ剥ぎ被害対策としての捕獲
クマ剥ぎ被害対策としての捕獲は、加害個体の除去のみとし、以下により実施す
る。
(1) 捕獲可能場所は、現被害林分及びその周辺林分のみとする。
(2) 捕獲可能期間は、クマ剥ぎ発生のおそれのある 5 月 1 日から 7 月 31 日までが
望ましいが、被害確認の遅れや檻の設置作業期間等を考慮して、当面は 5 月 1
日から 8 月 31 日までとする。
(3) 捕獲許可は、年間捕殺上限数、捕獲可能期間等を検討し、被害状況等の確認、
捕獲檻の設置場所と管理者及び設置者を特定した上で許可をする。
(4) 現被害林分及びその周辺では、捕獲可能期間前に捕獲檻を搬入することができ
る。
(5) 捕獲個体については、原則として放獣せずに殺処分とする。
(6) 捕獲檻の管理者等は、捕獲許可期間外は、捕獲檻の入り口を閉じて鍵をかけた
り、蓋を持ち帰るなどして、不特定者が勝手に檻を使用できないよう適切に管
理する。
(7) 捕獲許可を受けた申請者は、捕獲個体の有無にかかわらず当該年度の被害状況
について許可証返納時に報告する。
- 28 -
クマ剥ぎ被害対応フロー図
クマ剥ぎ被害防止対策
前年度作業
森林所有者
被害状況の把握
クマ剥ぎ被害対策としての捕獲
被害防止対策が早急かつ十分に行えず
やむを得ない場合
森林所有者
被害状況の把握
報告
通報
市 町 村
被害情報の収集
市 町 村
現被害林分の確認
(確認調査票)
申請 報告
(申請)
振興局等・森林保全課
被害情報の取りまとめ
計画の取りまとめ
被害防止事業の補助等
捕獲依頼
(依頼)
地元猟友会等
※檻による捕獲の実施
振 興 局 等
個体数調整許可
現被害林分の確認
(確認調査票)
当年度
許可
確認
森林所有者
※被害防止対策の実施
森林保全課
年間捕殺上限数の管理
※防止対策はテープ巻き防除等とする。
※捕獲個体は原則として殺処分とする。
- 29 -
クマ剥ぎ被害防止捕獲等申請に係る確認調査票
住 所
被
害
者
氏 名
地
名
面 積・樹 種
林齢・平均直径
被害地
所 属
調
査
員
氏 名
調
調
査
年
査
月
印
日
年
月
日
地
被
害
の
状
況
被 害 林 分 の 面 積
被害林分での全被害率
枯死木本数
など
面 積 (概 数 )
激害部分の 総
本
数
被 害 状 況 全被害本数
新被害木本数
備
考
注 1 調査員は、原則として鳥獣保護行政担当職員とする。
2 被害地の写真を添付すること。
3 激害部分の被害状況は、ある程度被害がまとまって受けている区域について
記入する。
4 本様式は捕獲許可に添付する「鳥獣被害防止捕獲申請にかかる調査書」
に代えることができる。
- 30 -
別添3
ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応マニュアル
京
都
府
果樹被害や養蜂被害は、平成 16、18、22 年度とほぼ隔年のツキノワグマの大量
出没時に増大した。特に平成 18 年度には防除しているにもかかわらず激しい被害
が発生し、地域の産業へ大きな打撃となった。第1次の保護管理計画では、このよ
うな事態を想定しておらず、明確な対応策が盛り込まれていなかったため、第2期
計画ではその現状を踏まえて、ツキノワグマの保護管理計画を補完するために、本
マニュアルで対応策についてまとめたものである。
ただし、被害対策としての捕獲の実施については、生産を目的として経営されて
いる果樹園、養蜂場を本マニュアルの対象とすることとし、自家消費を目的とする
ものや趣味としての果樹栽培・養蜂に関しては、ツキノワグマ出没対応マニュアル
により対応する。両者を分けるのは、前者は、規模が大きいため誘引効果が高いと
考えられること及び経済的被害が大きいことによる。
1
目的
京都府において安定的なツキノワグマ個体群の維持を図りつつ、ツキノワグマに
よる果樹産業及び養蜂産業に対する被害を減少させること、特に集中的な激甚被害
の発生を抑えることを目的とする。
2
果樹・養蜂に対する被害とその対応策に関する基本認識
ツキノワグマによる果樹被害は、果樹(モモ、ブドウ、ナシ、クリ、カキ等)を
食べられることだけにとどまらず、その枝を折って将来の生産量の減少を招く被害
も大きい。被害時期はその収穫期とほぼ重なり、毎年のように被害を受ける場所も
見られる。
一方、ツキノワグマによる養蜂被害には、蜜を食べられることだけでなく、巣箱
を破壊されてその後の生産量の減少を招くことも含まれる。春先から秋に養蜂を終
えるまで被害に遭う可能性がある。養蜂がツキノワグマを誘引する恐れもあるため、
地域の人々に配慮して人里から離れた場所となったり、蜜源となる花のある場所に
合わせて山間地となったりして、被害に遭いやすい場所にせざるを得ない場合もあ
る。ツキノワグマは、蜂蜜に対する執着が強いので大きな被害になりやすい。
また、特定の品種の作物の苗や種を生産するには、密閉した温室内で他の品種と
混じることのないように受粉させる必要がある。それら受粉のために、京都府内で
飼育されている蜂が用いられており、春先の養蜂被害は、養蜂家のみならず地域の
農業へも大きな影響を及ぼす。
ツキノワグマによる果樹被害、養蜂被害ともに、現在、最も効果的な防除対策は
電気柵の設置である。そのため、すでに電気柵により自衛を行っている農家も多い。
平地では電気柵が本来の効果を発揮することが多いが、山間地では地形的に設置が
- 31 -
困難な場所もあり電気柵が期待されるほどの効果を発揮しない場合も見られる。電
気柵などの防除対策を実施しているにもかかわらず、被害が発生した場合には、有
害捕獲も実施されているが、大量出没年を除き、放獣個体の再出没は数件となって
いる。
3
果樹・養蜂被害対応の基本方針
果樹や巣箱を防除するため電気柵など効果的と考えられる対策が行われ、かつそ
れらの対策が効果を発揮するように維持管理されている果樹園・養蜂場に限り、被
害が発生、あるいは発生する可能性が高い場合に、速やか、かつ適切に捕獲を実施
する。
4
果樹・養蜂被害防除の実施
果樹・養蜂被害防除を実施する際には、以下の点に注意して効果的な防除を実施
する。
(1) ツキノワグマ対策として効果が確認されている電気柵を適切に設置する。特に、
周囲の木を伝わって侵入されないように、その恐れのある木や枝を切ったり、
その木ごと電気柵で囲うなどする。
(2) ツキノワグマが身を隠す場所をなくすことで果樹園や養蜂場に近づきにくくす
ることが、防除効果を高めるので、電気柵の近くだけでなく、周辺の下草や藪
も、可能な限り刈り払いを行う。
(3) 電気柵は、侵入することを一旦学習されてしまうと効果が極めて低くなる可能
性があるので、電気柵の下の草を刈ったり、電圧を確かめるなど、定期的なメ
ンテナンスに努める。
(4) 侵入の可能性が高い地域では、電気柵を二重に張るなど効果的な対策を検討す
る。
(5) 被害の発生する恐れが高い場合には、頻繁に見回りして、早期に被害が発見で
きるように努める。
(6) 廃棄果樹が誘引物とならないように、埋設や園外への搬出等適切に処理する。
山間地の果樹園でそれらの処理が困難な場合は、廃棄場所を電気柵で囲うなど
ツキノワグマが容易に近づけないように努める。
(7) 放棄果樹園は、その果樹が誘引物となって被害を拡大する恐れがあるので、市
町村や府と協力して、残った果樹を伐採するなどの対策を速やかに講じるよう
に努める。
5
被害対策としての捕獲の実施
4で示した防除を行っているにもかかわらず、被害が発生した場合や毎年のよう
に被害が発生している場合には、加害個体ないしは加害する可能性の高い個体の除
去を目的とした有害捕獲を行う。
(1) 毎年のように被害が発生している果樹園・養蜂場や、防除していたにもかかわ
らず激甚な被害にあったことのある果樹園・養蜂場では、事前に捕獲檻を用意
- 32 -
することができる。
(2) 捕獲可能な場所は、原則として当該果樹園・養蜂場の周囲のみとし、捕獲可能
な期間は、被害時期に限定する。
(3) 被害が発生した場合、あるいは発生の可能性が高い場合、京都府は、当該果樹
園・養蜂場の被害状況と防除状況を確認した上で、許容限界捕獲数を考慮して、
有害鳥獣捕獲を許可する。
(4) 春の養蜂被害はその年の生産に大きな損失をもたらすため、特に京都府が必要
と認めた場合に限り、4月~5月の間、被害を受ける前であっても有害鳥獣捕
獲を許可する。
(5) 有害捕獲申請者は、有害鳥獣捕獲の許可を受けて捕獲を実施できる。
(6) 捕獲檻の設置に当たっては、設置場所、檻の管理者を市町村で把握する。
(7) 1回目の捕獲個体であっても捕殺を可能とする。
(8) 被害対象となる果樹や巣箱が数多く残っている場合、加害個体が捕獲された後
も、他の個体による被害が発生する恐れもあるので、有害捕獲を継続すること
ができる。
(9) 捕獲檻を設置しても個体が捕獲されず、被害が発生した場合には銃器による捕
殺も検討する。
(10)ももは 6 月から 8 月の間、なし等果樹及び養蜂は、8 月から 11 月の間(ただ
し、当該果樹園や養蜂場に現に収穫物があるに限る。)に、有害捕獲が行われ
た場合には、1回目の捕獲個体であっても捕殺を可能とする。
(11)捕獲檻の管理者は、捕獲許可期間外は、捕獲檻の入り口を閉じて鍵をかけたり、
蓋を持ち帰るなどして、不特定者が勝手に檻を設置できないように管理する。
6
果樹・養蜂被害の把握と防除対策効果測定
果樹・養蜂被害への対策が効果的であるかどうかを検証することが、これからの
よりよい保護管理計画の策定に必要である。そこで、被害状況と、防除対策や捕獲
との関連性を得るための情報収集を行い、被害量と被害防除効果の把握に努める。
有害捕獲許可を受けた場合、許可申請者は、捕獲個体の有無にかかわらず、当該
年度の被害状況及び防除対策について報告し、被害があった場合には市町村がその
状況を確認し、京都府に報告する。
- 33 -
ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)対応フロー図
(自家消費や趣味としてのものを除く)
果樹園・養蜂場
大きな被害が発生していない
毎年、被害が発生している
捕獲檻の現地準備
被害発生
連絡
振興局等、市町村
被害の発生
調査
被害防除の実施
防除施設の点検、補強
再被害の可能性大
捕獲許可申請
市町村
振興局等
捕獲許可
捕獲檻による生捕り
捕
殺
(被害が継続して発生する可能性の高い場合は、継続実施)
放獣の検討
- 34 -
捕
殺
ツキノワグマ被害(果樹・養蜂)防止捕獲等申請に係る確認調査票
被
害
住
所
氏
名
者
場
所
被害地
被
調
査
調
査
調
被
物
所
属
氏
名
果
樹
(
)
養
蜂
員
年
査
月
印
日
年
月
日
地
害 の 状 況
被 害 地 の 面 積
被
害
量
他
備
注
害
1
2
3
考
調査員は、原則として鳥獣保護行政担当職員とする。
被害地の写真を添付すること。
本様式は捕獲許可に添付する「鳥獣被害防止捕獲申請にかかる調査書」
に代えることができる。
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