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EC基礎講座(全11回) 第8回:お客様が買う気になる、コンテンツの工夫とは?(前編) ~アパレル編~ 執筆:杉浦 治(一般財団法人 ネットショップ能力認定機構) 第7回では、お客様の心理や習慣に合わせたページ設計の重要性をお話いたしました。しかし、良い設計ができても、良 いコンテンツ(画像や文字、動画といった情報)を載せなければ、伝えたい事が伝わらないのも事実です。ここでは、売れ ているネットショップの商品ページ事例を挙げて、良質なコンテンツにする工夫を解説いたします。 [後編] 食品編 はこちら >> 商品ページでの表示位置と配置されるコンテンツの注意点 商品ページの位置におけるお客様の心理とコンテンツに関する注意点は、次の通りです。 1. ページの上部、ファーストビュー ページを開けたら、最初に目に飛び込んでくる情報です。商品の魅力を一瞬で本能に訴える必要があります。お客様 はファーストビューを見て直感的に、「読みたいページか?」を判断します。3秒以内に、前のページに「戻る」か、その ページを「読み込む」かを決めています。 2. ファーストビューの下~中段 ファーストビューで感じた直感的な印象(商品の魅力)を、詳細に解説したり、魅力の証拠を示したりと、論理的に解 説していきます。大量かつ詳細な情報を、斜め読みしても分かるように見やすくデザインします。 3. 中段~下段 カタログに記載されているような情報を網羅します。法令で表記が義務づけられている情報や、お客様にとってのマ イナス情報なども漏れなく記載します。 4. 最下段 ショップのサービスや組織に対する信頼、安心のために必要な情報を記載します。ネットショップが伝えるべき標準情 報を漏れなく記載します。 1. ページの上部、ファーストビュー (画像提供:アンジェ Web Shop) このケースでは、使用シーンを想起させるコーディネート写真にキャッチコピーを重ねた画像をメインビジュアルとしてい ます。着用イメージと特徴を同時に伝えるためです。写真だけでは着用しているどの商品のページか?が不明ですが、キャッ チコピーにある「カーデ」の文字で、カーディガンの商品ページであることを明確にしています。もちろん画像の上に、 という商品タイトルがありますので、間違えるはずがないという意見もあるでしょうが、この例ではメインビジュアルだけを 見た、直感的な思い込みもカバーできています。 「定番」という単語は、「毎日着る」「しょっちゅう着る」「さまざまな組み合わせで頻繁に使える」「さまざまなシーンで使 える」という印象を与えていて、「最愛」という単語がそれをポジティブに後押ししています。「定番」に加えて、「上質」と いう特徴を、イチオシの売りにしているのが分かります。 画像の上の説明文に目がいった場合は、最初に出てくるカタカナ文字の「シンプルな」が印象に残りやすいですね。この ように、どんな単語を使うか?どの漢字を使うか?漢字を使うか?カタカナを使うか?といった点も工夫のしどころになり ます。 モデルさんを屋外で撮影した写真は被写界深度(カメラのピントが合う範囲)を浅くして、衣服に焦点をあて、背景をボ カすことで見て欲しい部分を明確にしています。また、モデルの目を構図から外しているのは、人物による主張を避ける ためです。ちなみに、下の写真はこの点が全く逆で、人物(オーナー)による主張、想いを前面に出そうとしているのです。 さらに、下記の写真では被写界深度を深くしており、背景の「茶畑」にも焦点が合っていますね。 (画像提供:京都おぶぶ茶苑) 2. ファーストビューの下~中段 ファーストビューで伝わった印象は、「上質」「シンプル」そして「定番(最愛)」ですので、スクロールすると目に入ってくる のは、これらの点の詳細解説になります。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 「上質」という単語を「いつか着てみたかった」「特別」「リッチ」「超上質」と展開し、これら類義の言葉で文章を構成して います。ここでは、特徴を具体的に解説する必要があるため、上質なカーディガンである理由を「3種類の素材」を使って いるからだと切り出し、それぞれの素材を、認知されている高級素材名称(メリノウール、シルク、カシミヤ)の前に「最高 品質」「最高級品」「繊維の宝石」という装飾語を追加した表現で紹介しています。最後に生地の生産者を公表して、信 頼感も演出していますね。 「シンプル」という特徴については、下記のようにポイント部分をマップのようにレイアウトし、それぞれ慎重に単語を選ん でいます。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 「定番(最愛)」についてはカラーバリエーションとコーディネート例で具体化しています。画像の端に小さく、モデルさん の身長と体重を記載していて、少しでもお客様が着た時のイメージをし易いように工夫しています。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 屋内の写真は、右側に窓がある設定になっていますが、実際は人工の照明で撮影しているようです。太陽光がやわらか く差し込んでいる様子をイメージさせ、商品の質感が伝わる写真を撮るために、ディフューザーを使用して照明を面光源 にしています。 モデルさんの左側にはレフ板を置いて、右からの光を反射させ、左側にできる濃い影を消しています。 3. 中段~下段 申込ボタンの下側には、アパレルに必須の表記を掲載しています。伝えたい内容の性質から、表形式で見た目を整え、 小さめの文字で整然と表示し、端的な表現を使っています。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 別ページにリンクしていますが、アパレルではサイズに関する情報も重要なコンテンツです。試着したときに気になるよう な部分を具体的に伝えられるように、十分な情報を提供しています。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 4. 最下段 最下部にはフッターがあり、必要な情報を掲載していますが、表や円グラフ、クレジットカードのロゴなどを活用して見や すくなる工夫をしています。 (画像提供:アンジェ Web Shop) 同じ種類の商品を扱う優良ショップを観察(ベンチマーク)することは、コンテンツの工夫をするために大変に役立ちます。 様々な視点で細かくチェックし、まずは真似してみるとよいでしょう。しかし、ネットショップのコンテンツに正解があるわけ ではないというのも事実です。優良ショップも、新商品では思ったように購入率が上がらないケースが多く見られます。 では、優良ショップはどのように対処しているのでしょうか。実は、短い時間に評価と改善のサイクルをくり返して、ページ のチューニングをしているのです。このチューニング作業を、継続して何度も行うことが重要なポイントです。もしも、写真 撮影や画像の加工、キャッチコピーのアイディア出しなどを、プロの外注業者だけに頼っていたらどうなるでしょうか。繰 り返し修正する分だけコストが上がってしまって、膨大な支出になってしまいますね。ですから、これらのことをできるだけ 自前ですることが大切なのです。 写真であれば、少なくとも絵コンテを描いてカメラマンに指示するとか、キャッチコピーであれば、単語の案を自分でたく さん出しておくとか、そういった努力が成果に繋がるのです。 是非、ご自身もチャレンジしてみてください。 杉浦 治(すぎうら・おさむ) 一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事 2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やEC事業者向け 研修開発を行う。2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ 運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催し、自ら講師として全国でセミナーを実施。 Copyright 2017 はじめてWEB All Rights Reserved. http://hajimeteweb.jp/