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PBに対する消費者の知覚リスクと商品評価

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PBに対する消費者の知覚リスクと商品評価
Japan Marketing Academy
★
論文
PBに対する消費者の知覚リスクと商品評価
笊 ――― はじめに
笆 ――― 関連する既存研究
笳 ――― 調査設計
笘 ――― 分析結果
笙 ――― 考察
笞 ――― おわりに
宮下 雄治
とにより,このような高関与型の商品を想定
● 城西国際大学 経営情報学部 助教
した意思決定に関する研究がこれまで多く行
われてきた。一方で,価格が安く習慣的に購
笊――― はじめに
入される商品は,購買における機会損失とし
てのリスクそれ自体は小さいことにより,そ
消費者の購買意思決定は,消費者行動研究
の意思決定プロセスに焦点を当てた研究は少
や心理学研究の学問分野から長年研究が行わ
ない 1)。例えば,食料品や日用雑貨品などの
れ,消費者行動研究においてはとくに情報処
消費財がこれに該当するが,これら商品の購
理理論に依拠する形でこれまで多くの理論研
買においても消費者は値引きや各種プロモー
究が積み重ねられてきた。Bettman モデルの
ションなど与えられた刺激に反応して意思決
登場以降,購買意思決定過程における情報処
定を行うだけではなく,候補となる商品群か
理や記憶,知識等に関する研究が進展し,さ
ら一つの銘柄を選択するまで何らかの基準を
まざまな状況下における消費者の意思決定や
用いて情報処理を行っていると考えられる。
消費行動の違いを探る研究が行われてきた。
また,消費者は低関与型商品の購入において
消費に伴う意思決定は問題解決の過程として
も何らかの不安要素といったある種のリスク
理解され,広範囲な問題解決において複雑な
を考慮して意思決定する場面も多いと考えら
情報処理が必要とされる意思決定から,限ら
れ,そのようなマイナス面の知覚の程度が実
れた情報や購買基準を用いて行われる意思決
際の商品購入において大きく影響するのでは
定,あるいは日常的な買物における探索時間
ないかと思われる。
本稿では,上記のような問題意識に基づき,
や労力を節約した習慣的な意思決定など,異
なる関与水準を仮定した意思決定プロセスが
低関与商品の購買時における意思決定につい
研究されてきた。とくに,自動車や住宅,高
て,とくに商品の購入に関連して生じる不安
額な家電や家具の購入のように,消費者の情
やためらいといった知覚リスクに焦点を当て
報処理負荷の高い商品では,購入後に間違い
て議論する。対象とする商品は,一般的に関
や後悔がないような決定を下さなければなら
与水準が低い消費財で展開されることが多い
ず,広範囲で複雑な情報処理が要請されるこ
PB(プライベート・ブランド)2)とし,習慣
● JAPAN MARKETING JOURNAL 121
マーケティングジャーナル Vol.31 No.1(2011)
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
的に購入される食品,飲料,日用雑貨におけ
笆――― 関連する既存研究
るカテゴリーを研究対象とする。周知の通り,
PB は近年の日本で存在感を増しており,スー
1.PB の品質・商品評価に関する研究
パー・マーケットやコンビニエンスストアを
展開する大手流通業を中心に,ホームセンタ
PB に焦点を当てた研究は 1960 年代から本
ーやドラッグストアなどさまざまな業態にお
格的にはじまり,60 年代と 70 年代における
いて多様な製品分野での開発が進展している 。
初期の研究では,PB の購入者と非購入者の違
欧米諸国と比較すると日本の PB の市場シェ
いに関する社会人口特性(デモグラフィック
3)
アは相対的に低いが ,同業他社との熾烈な
要因)や性格特性(ライフスタイル要因)を
競争のなかで PB を競争力の柱に据える流通
明らかにする研究が多くみられた(e.g.,
業は増えており,この 3 年ほどで PB 市場は
Bettman 1974 ; Burger and Schott 1972 ; Coe
急成長している 。このように日本でも PB 市
1971 ; Frank and Boyd 1965 ; Myers 1967)。
場が急成長している要因には,流通業の積極
その後 PB の成功要因を解明する研究として,
的な取組みに加え,消費者の PB に対する評
消費者の PB に対する態度や評価など PB の購
価や意識の変化が大きく影響しているものと
買における意思決定プロセスに影響を与えて
思われる。NB(ナショナル・ブランド)の相
いる要因を解明する研究が行われてきた
次ぐ値下げをうけて価格優位性が薄れてきて
(e.g., Bellizzi et al. 1981; Cunningham et al.
4)
5)
いることもあり,安さ一辺倒を脱した付加価
1982; Quelch and Harding 1996)。たとえば,
値型の PB 開発を強化する流通業は増えてお
Bellizzi et al.(1981)は,消費者は総合的な
り,日本の消費者の PB に対する商品評価や
品質,味,香り,信頼性といった項目におい
購入基準なども変容しつつあることが推測さ
て PB は NB より劣っていると知覚している
れる。
ことを指摘し,Cunningham et al.(1982)は,
そこで,本稿では消費者の PB に対する評
味や外観,選択のバリエーションなどの項目
価と購入時の意思決定に焦点を当て,第一に
で PB は NB と比較して劣っていると消費者
PB を購入する際に,どのような不安やためら
は知覚していることを明らかにしている。
いといったリスクをどの程度発生しているの
また,消費者が PB に対して知覚する品質
か,食品・飲料・日用雑貨における 9 カテゴ
は,実際の品質よりも低く評価されてしまう
リーを対象に低関与型商品の意思決定におけ
傾向にあることが指摘されてきた(Kumar
る知覚リスクの程度を明らかにし,PB の購入
and Steenkamp 2006 ; Richardson et al.
にマイナスの影響を与える要素を抽出するこ
1994)。Richardson et al.(1994)の調査では,
とを目的とする。そして第二に,知覚リスク
1,564 人の消費者にポテトチップスやチョコレ
以外の項目において,今日の PB に対する消
ートクッキー,ゼリーなどの NB と PB の味
費者の商品評価や PB の購買・利用の実態と
覚の比較を行っており,NB と PB のラベルを
意識について明らかにする。
張り替えて NB のラベルに PB の商品を,PB
のラベルに NB の商品を差し替えた状態で評
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論文
価をすると,NB のラベルが貼られた PB は品
日本の消費者を対象とした調査をみると,
質を高く評価される一方で PB のラベルが貼
流通経済研究所が 2010 年に実施した消費者調
られた NB は低く評価されている。ここでの
査では,最近 1 年間の PB 購入経験率は 94 %,
調査からは,消費者はパッケージ消費財にお
繰り返し購入率は 90 %と高く,購入金額でみ
ける品質・商品評価を,その食品本来の味や
ると食品では約 5 割,日用雑貨では約 3 割が
品質といった本質的(intrinsic)な要因より
「増えた/やや増えた」と回答している。最近
もむしろパッケージやラベルからの情報やブ
1 年間に最もよく買った PB 銘柄の満足度をみ
ランド名や価格といった外部的(extrinsic)
ると,「満足/やや満足」への回答は食品では
な要因を優先して評価していることを示唆し
75 %,日用雑貨は 55 %であった。食品と日
ている。このような PB に対する消費者評価
用雑貨の PB を購入する際に重視する項目で
の向上が PB 市場拡大の不可欠な条件となる
は,「味や品質の良さ」が最も高く,次いで
ものであり,消費者の PB に対する知覚品質
「安全性」「NB に比べて価格が安い」と回答
を変化することに成功することが PB 支持者
しており,節約志向のなかでも価格以上に PB
を拡大する大きな原動力につながり,NB を
の味や品質を重要視している傾向がわかる
提供するメーカーにとっては最大の脅威とな
(流通経済研究所 2010)
。
る(Ailawadi and Keller 2004)。多くの小売
以上のように PB は主に NB との関連でそ
業が PB を取り扱う状況になる中で,PB であ
の評価が論じられてきたが,近年では店舗へ
れば無条件に販売実績が高まる状況ではなく
のストア・ロイヤリティとの関連に焦点を当
なっており,そのために消費者から一定以上
てた研究も蓄積されている(e.g., Ailawadi et
の支持を得られる PB 商品への絞り込みが顕
al. 2008 ; Corstjens and Lal 2000 ; Kumar and
在化している(菊池 2010)。NB の相次ぐ値下
Steenkamp 2007 ; 清水 2004)6)。
げを受けて PB の価格優位性が薄れている今
2.知覚リスクに関する研究
日では,消費者の PB に対する購買基準や評
消費者は商品やサービスの購入に際して,
価項目は変化しているものと思われる。
さまざまな懸念や不安を抱きながら意思決定
近年の PB に関する消費者意識をみると ,
Deloitte & Touche(2010)による 2,000 人以
を行う。なぜならば,購入を意図する商品や
上のアメリカの消費者を対象とした意識調査
サービスのすべてが常に満足のいくものであ
では,これまで NB に高いロイヤリティを持
るとは限らないからであり,その意味から購
ち合わせていた消費者の多くがいまや PB と
買行動には絶えずリスクが伴っており,消費
NB の間に重要な違いは存在しないというこ
者は商品の購入に際して,リスク敢行(危険
とを認識して PB 支持へとシフトしており ,
敢行; risk-taking)を行っている(神山 1997)。
調査対象の約 80 %がたいていの PB は NB と
このような消費者の購買時や使用時に伴うリ
同じ企業によって生産されており本質的には
スクを知覚リスク(perceived risk)と呼び,
同一のものだと認識していることを明らかに
ある製品やブランドの購入に関連して生じる
した。
負の期待効用(Dune et al. 1986)であり,起
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
こりうる結果とこれらの結果の不確実性の関
る消費者の健康や安全面を懸念するリスクを
数として捉えられる(Robertson 1970)。知覚
指す。経済的リスクとは支払う金額と商品や
リスクは,高関与商品時の購買だけではなく
サービスの価値を比較して金銭的損失を懸念
日常的な購買行動における意思決定時にも影
するリスクを指し,社会的リスクとは購入し
響を与えるものであり,消費者は知覚リスク
た商品が家族や友人などの準拠集団から賛同
を軽減させるために,1)対象商品の購入を変
を得られないかもしれないといった他者から
更または延期させる,2)よく知っているブラ
のマイナス評価を懸念するリスクを指す。心
ンドを購入する,3)信用できる情報源から助
理的リスクとは商品を購入・使用することに
言や推奨を探索する,4)非耐久財の場合は,
よる自己イメージや自分らしさを損なうかも
対象商品の見た目や賞味期限や有効期限など
しれない,といった自尊心を懸念するリスク
といった他の購入に向けた要素を探す,など
を指し,最後に時間的リスクとは商品やサー
の行動をとることが指摘されている(Tsiros
ビスの探索における時間,あるいは修理や交
and Heilman 2005)。このように,消費者は
換等が発生した場合に生じる時間の損失を懸
日々のさまざまな買物場面において何らかの
念するリスクを意味している。一般的に消費
リスクを感じることが多いと考えられ,商品
者がここで挙げた各リスクをどのような重み
やサービスの購入時に消費者が知覚するリス
で知覚するかは,商品カテゴリーや消費者の
クのタイプや種類についてこれまで多くの研
関心の度合い,購買経験の有無等により大き
究者によってさまざまな分類が試みられてき
く変化する。
た。
このような消費者の知覚リスクと購買行動
Robertson(1970)では,知覚リスクを機
に焦点をあてた研究は,近年ではインターネ
能的リスクと心理社会的リスクに大別した。
ットやテレビ通販などダイレクトマーケティ
機能的リスクは製品の性能に密接に関連した
ングにおける購買行動を対象とした研究が蓄
不安であり,心理社会的リスクは,製品が人
積されている(e.g., Alba et al. 1997 ; Garbari-
の幸福感や自己概念を高めるかどうかに関連
no and Strahilevitz 2004 ; Keeney 1999)
。消
した懸念や不安を意味する。その後,知覚リ
費者は伝統的な販売チャネルと比較してオン
スクはさらに細かく分類され,代表的には機
ライン上でのショッピングでは多くのリスク
能的リスク,身体的リスク,経済的リスク,
を認識しやすい(Keeney 1999)。なぜなら,
社会的リスク,心理的リスク,時間的リスク,
ネット店舗は,消費者の品選びの要求を満た
等のリスクが識別されている(Greenleaf and
す確率が飛躍的に高くなるが,商品の購入に
Lehmann 1995 ; Roselius 1971 ; Schiffman
あたって現物に触れる魅力を消費者が享受で
and Kanuk 1997 ; Solomon et al. 1999 ; Tsiros
きないという限界や商品を注文してからそれ
and Heilman 2005)
。機能的リスクとは,商品
を入手するまでの調達時間がかかる,という
の品質や機能が不備や不良,または期待通り
犠牲を担わなければならない(上原 2003)。
でなかった場合に被る損失に関するリスクを
このようにインターネットをはじめとする
意味し,身体的リスクとは商品の使用におけ
ダイレクトマーケティングの展開において知
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覚リスクは発生しやすいと考えられてきたが,
各設問間の評定平均値での議論と,知覚リス
実店舗では価格も関与度も高い商品や商品機
クの程度と購買実績の関係をみた共分散構造
能等が複雑で理解しにくい商品の購買時に知
分析の結果により考察する。
覚リスクは発生しやすいと考えられてきた
知覚リスクは上述の通りさまざまな種類が
(Solomon 1999, p.218)。これに対し,実店舗
存在するが,本稿ではその代表的なリスクと
において日常的に買物されるような関与度の
し て い く つ か の 研 究 ( Greenleaf and
小さい商品では,それほど大きく重要な知覚
Lehmann 1995 ; 守口 2010 ; Roselius 1971 ;
リスクは発生しづらいと考えられるためか,
Schiffman and Kanuk 1997 ; Solomon et al.
前述の通りこれらの買物行動における消費者
1999 ; Tsiros and Heilman 2005)で挙げられ
の知覚リスクに焦点をあてた研究は少なく,
ている「機能的リスク(Functional risk)」,
なかでも PB に焦点をあてた研究は少ない 。
「経済的リスク(Monetary risk)」,「身体的
守口(2010)では,消費者の日常的な買物に
(Physical risk)
」
,
「社会的リスク(Social risk)
」
,
おける躊躇・不安の発生要因と発生頻度に焦
「心理的リスク(Psychological risk)」,「時間
点を当て,洗濯洗剤,スナック,ビール類,
的リスク(Time risk)」の 6 つを参考とした。
化粧品の 4 商品の購買時点におけるリスクに
このうち,「時間的リスク」とは,商品やサー
ついて,機能的側面,安全面,社会面,経済
ビスの購入,あるいは商品の修理や組立てな
面,機会損失面,その他の合計 6 種から調査
どに伴う時間的な損失を意味するが,探索時
を行った。躊躇や不安の発生率は消費者の購
間の短い商品が多い PB ではこうした時間を
入状況によって大きく異なり,購入者の
失うことに関連するリスクはほとんど発生し
35.8 %が購入時に何らかの躊躇・不安を感じ,
ないと思われ,今回の調査では対象から外し
とくに過去にその製品の購入経験がないトラ
た。また,社会的リスクと心理的リスクにつ
イアル購入時には購入者の 71.4 %が何らかの
いては,日用消費財の場合は両者を明確に分
躊躇・不安を感じていることが明らかになっ
離することが難しいと考えられることから一
た。実店舗における日常的な買物においても
体化させた。上記の先行研究を参考にして,
ある程度のマイナス面の知覚が発生している
代表的な質問項目を以下の通り設定した。
ことが示唆される。
各々の知覚リスクに関する質問項目の設定で
は,被験者である一般消費者にとってできる
笳――― 調査設計
だけわかりやすく実感がわくようなワーディ
ングをこころがけ,「知覚リスク」という言葉
1.知覚リスクに関する項目
は用いず「不安やためらい」に統一し,以下
本調査では,今日の消費者の PB に対する
11 の質問項目を設けた。
評価について,日常的な買物場面において,
どのような種類の知覚リスクを,どの程度の
【機能面に関する知覚リスク】
強さで,またどれくらいの割合で発生してい
・期待したどおりの機能(食品・飲料の場合
るのか,について明らかにする。ここでは,
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はこれを「味・おいしさ」という言葉に変
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えている)が得られないかもしれない等の
からの評価に関する不安やためらい
不安やためらい
・家族が喜んでくれないかもしれない等の家
・原材料や素材の品質が良くなさそう,ある
族の評価という面での不安やためらい
いは品質が劣化していそうといった不安や
2.商品評価に関する項目
ためらい
・内容量が少なそう,使用の機会が少なそう
また,本調査では知覚リスク以外の項目に
といった実際の役立ち度という面での不安
ついて,PB の「商品評価」と「購買・利用に
やためらい
関する意識」に関連した以下 10 の設問を設け
ている。ここでは,ここ 1 ・ 2 年の PB に対す
【安全面に関する知覚リスク】
る評価や購買実態について,それ以前(3 年
・有害成分が含まれており,人体の健康や安
以上前)と比較した変化についてたずねてい
全に悪影響を与えるかもしれない等の不安
る。
やためらい
・この商品を購入・使用,あるいは廃棄する
【PB の商品評価】
際に,環境に悪い影響を与えるかもしれな
(1)商品クオリティに関する評価
い等の環境負荷という面での不安やためら
・PB の味や品質,機能などに関する評価
い
・NB との品質差に対する評価
・商品パッケージ/包装が簡易であることなど
(2)商品安全性に関する評価
による衛生面での不安やためらい
・PB に対する信頼性・安全性に関する評価
(3)価格の優位性に関する評価
【価格面に関する知覚リスク】
・NB に対する価格優位性やコストパフォー
・NB の価格と比較してさほどお買い得では
マンスに関する評価
ないかもしれない,といった NB との価格
比較での不安やためらい
【PB の購買・利用に関する意識】
・同等の品質の商品でもっと安いものが買え
(1)満足度に関する意識
るのではないか,といった商品間の価格比
・最近の PB に対する満足度
較での不安やためらい
(2)抵抗感に関する意識
・PB の購入・利用に対する抵抗感
【社会・心理面に関する知覚リスク】
(3)期待感に関する意識
・この商品を購入・使用して気分がいいだろ
・PB の多品目化に対する期待
うか,といった自己イメージや自分らしさ
・PB の今後の購入意向
を損なうことに関する不安やためらい
(4)プレミアム PB の購入実態
・この商品を利用していることで友人や知人
・高機能・高価格 PB の購入頻度
といった周囲から貧相に思われないか,あ
(5)比較検討に関する実態
るいは低く評価されないか,といった他者
・他店の PB 間との比較検討
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3.調査概要
品の 3 商品群において,3 商品ずつ選定。
本調査はインターネットを利用し,株式会
食料品は「スナック菓子」,「カップ麺・袋
社マクロミルが保有するモニターを対象とし
麺(生麺含む)」「パン類」の 3 カテゴリー,
て行った。モニターの中から,予めスーパ
飲料では「牛乳・乳飲料(飲むヨーグルト
ー・マーケットやコンビニエンスストアの利
等)」,「茶系飲料(緑茶,烏龍茶,紅茶等)」,
用者で PB の購入実績がある女性モニターに
「清涼飲料(茶系除く)」の 3 カテゴリー,
限定し,20 代から 50 代まで延べ 312 名を対象
日用雑貨では「洗剤(衣料・台所・食器用
に行った 。同じ人が複数の製品カテゴリー
等)」,「衛生紙類(ティッシュ・トイレット
7)
を購入している場合には,それぞれに回答し
ペーパー等)」
,「化粧品」の全 9 商品。
てもらっている。また,本調査では,スーパ
・質問項目:商品別にみる PB と NB の購入
ー・マーケットやコンビニエンスストアの業
頻度,商品別にみた知覚リスクの程度(質
態において日常的に購入される代表的な商品
問項目は上述),PB の商品評価(質問項目
を食品,飲料,日用雑貨の 3 つの商品群から
は上述)
9 つのカテゴリーを選出した。カテゴリーの
笘――― 分析結果
選出には,流通経済研究所(2010)が行った
PB の購買実態に関する調査で購入頻度の高か
1.PB 購入率とリスクの知覚
った上位 5 品目の中から商品群ごとに 3 品を
表− 1 は,商品別に PB を購入したことがあ
選出した。調査の概要は下記のとおりである。
る経験者の人数と割合,そして商品購入時点
において何かしらの不安やためらいといった
・調査対象者:日本在住の 20 代から 50 代の
女性,合計 312 名。調査対象者の条件は PB
リスクを知覚した人数と割合を表している。
の購入経験がある消費者とした。
PB の購入者は,調査対象人数(n=312)から
「NB のみ購入(PB の購入はなし)」,「この商
・調査対象項目:食料品,飲料品,日用雑貨
■表―― 1
商品別にみる PB 購入者とリスクを知覚した回答者(n=312)
PB商品
スナック菓子
食品 カップ麺
パン類
牛乳・乳飲料
飲料 茶系飲料
清涼飲料
洗剤
日用
衛生紙類
雑貨
化粧品
食品3商品 計
飲料3商品 計
日用雑貨3商品 計 9商品 合計
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PB 購入者
人数
比率(%)
283
90.7
261
83.7
267
85.6
260
83.3
272
87.2
248
79.5
239
76.6
269
86.2
106
34.0
811
86.6
780
83.3
614
65.6
2,205
78.5
リスクの知覚者
人数
比率(%)
213
75.3
185
70.9
161
60.3
143
55.0
141
51.8
150
60.5
153
64.0
142
52.8
77
72.6
589
72.6
433
55.5
371
60.4
1,393
63.2
86
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
品は購入したことがない」と回答した人数を
( 7 2 . 6 % ),「 カ ッ プ 麺 」( 7 0 . 9 % ),「 洗 剤 」
差し引いた値であり,「スナック菓子」が 283
(64.0%)が続いている。調査対象の全商品で
人(90.7 %)と最も多くなっており,以下
みると,9 製品すべてで半数を超える高い割
「茶系飲料」272 人(87.2 %),「衛生紙類」
合で PB の購入において何かしらの不安やた
269 人(86.2 %)が続いており,「化粧品」
めらいといったリスクを知覚している実態が
(106 人,34.0 %)を除いた商品で 8 割前後の
明らかになった(9 商品全体で 63.2 %)。製品
高い購入経験率が観察された。商品群では
拡張が著しく新製品が多い PB は,過去に購
「食品」
(811 人,86.6 %)が最も高く,
「飲料」
入経験がなく,はじめて店頭で目にする機会
(780 名,83.3 %)も食品同様に 8 割を超え,
も多いと考えられ,購入経験のある銘柄に比
化粧品を含む「日用雑貨」(614 人,65.6 %)
して何らかの不安やためらいを感じやすいも
を大きく上回っている。
のと思われる。
一方で当該 PB の購入経験者のうち,購買
2.商品・要因別にみる知覚リスクの程度
において何かしらの不安やためらいといった
知覚リスクを感じた経験を有する人(リスク
対象商品と要因別にリスクの程度を分析す
の知覚者)は,「スナック菓子」が人数(213
るにあたり,本研究が仮定したリスクと質問
人),比率(75.3 %)ともに最も高くなってい
間の関係が適切であるか,前述の各リスクに
る。これに該当する回答者は,知覚リスクの
おける全 11 項目の調査結果をもとにプロマッ
程度を訊ねた 5 段階評定の設問のなかで
クス回転を採用して因子分析を行った。固有
「(PB 購入時に不安やためらいを)いつも感じ
値 1 以上の因子抽出を試みたところ, 表− 2
る」もしくは「たまに感じる」を選択した回
に示すとおり 4 因子を抽出することができ,
答者である。リスクの知覚者の高い商品は,
それぞれのリスクにおける質問項目の共通性
が確認された。因子 1 の「安全面リスク」は
「スナック菓子」(75.3 %)の次に「化粧品」
■表―― 2
知覚リスクの因子分析結果
質問項目
因子 安全面リスク 社会・心理 機能面リスク 価格面リスク
因子
面リスク因子
因子
因子
環境負荷に関する不安・ためらい
1.039
0.012
-0.145
衛生面に関する不安・ためらい
0.785
0.123
-0.051
-0.004
0.058
健康面に関する不安・ためらい
0.716
-0.051
0.290
-0.045
他者評価に関する不安・ためらい
0.047
0.914
0.002
-0.104
自己評価に関する不安・ためらい
0.073
0.807
0.028
0.050
家族評価に関する不安・ためらい
-0.040
0.698
0.056
0.071
原材料に関する不安・ためらい
0.082
-0.032
0.930
-0.079
機能・味に関する不安・ためらい
-0.206
0.124
0.699
0.067
実際の役立ち度(有用性)に関する不安・ためらい
0.231
-0.021
0.555
0.107
NBとの価格比較における不安やためらい
-0.014
-0.017
0.054
0.904
同等価格の商品間における不安やためらい
0.032
0.007
-0.031
0.872
・因子抽出法: 主因子法
・回転法: Kaiser の正規化を伴うプロマックス法
・6 回の反復で回転が収束
87
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★
論文
PB の消費・利用における人体の健康や安全,
高く,これに「価格面リスク」(2.5)が続き,
あるいは環境負荷に悪い影響を与えるかもし
「社会・心理面リスク」(2.1)と「安全面リス
れない等のリスクである。因子 2 の「社会・
ク」(2.0)がほぼ同程度になっている。また,
心理面リスク」は,当該 PB を利用している
商品別にみると「化粧品」の評定値が他の商
ことで自己イメージや自分らしさを損なうの
品カテゴリーに比べ高い水準になっており,
ではないか,あるいは周囲からの評価を損な
「価格面」を除く 3 つの要因で知覚リスクの程
うのではないかといった自己・他者からの評
度が最も高くなっている。他方で,どの要因
価に関するリスクである。因子 3 の「機能面
をみても数値が総じて低いのが「衛生紙類」
リスク」は,商品の味や機能,品質といった
であり,とくに「安全面」「価格面」「社会・
本質的な価値や実際の商品の役立ち度に関す
心理面」で他商品に比べてリスクの知覚が低
る不安やためらいを表す。因子 4 の「価格面
くなっている。商品群でみると「食品」の数
リスク」は,NB との価格差でのためらいや
値が総じて高く,「飲料」が低い傾向にある。
同等の品質の商品でもっと安いものが買える
全体的にみると不安やためらいの感じ方はさ
のではないかというためらいを表している。
ほど高くないが,対象商品を PB に限定して
表− 3 は,上で識別された 4 つの知覚リス
いない先行研究と比較すると高い数値となっ
クについて,要因・商品別にみたリスクの程
ている。例えば,守口(2010)の研究では,
度を表している。知覚リスクの程度を表す数
共通する商品であるスナック菓子のリスク
値は,それぞれのリスクに含まれる質問項目
(躊躇・不安の程度)をみると機能面が 1.91,
の 5 段階評定値の平均であり,値が大きいほ
安全面 1.66,経済(価格)面が 2.14,社会面
ど PB に対する知覚リスクの程度が高いこと
1.43 と,PB に限定した本調査と比較すると総
を表している。評定平均値を要因別にみると,
じて低い評定値となっている。その他,洗剤,
9 商品全体では「機能面リスク」(2.7)が最も
化粧品が共通する商品であり,それぞれのリ
■表―― 3
商品・要因別にみる知覚リスクの程度(5 段階評定値の平均値)
人数
(PB購入者) 機能面
スナック菓子
283
2.8
食品 カップ麺
261
2.9
パン類
267
2.7
牛乳・乳飲料
260
2.5
飲料 茶系飲料
272
2.5
清涼飲料
248
2.6
洗剤
239
2.7
日用
衛生紙類
269
2.5
雑貨
化粧品
106
3.2
食品3商品 計
811
2.8
飲料3商品 計
780
2.6
日用雑貨3商品 計 614
2.7
9商品 合計
2,205
2.7
PB商品
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知覚リスクの程度
安全面
価格面 社会・心理面
2.0
2.7
2.1
2.1
2.6
2.2
2.0
2.5
2.1
1.9
2.4
2.0
2.0
2.3
2.1
2.0
2.4
2.1
2.0
2.5
2.0
1.9
2.3
1.9
2.4
2.6
2.4
2.0
2.6
2.1
2.0
2.4
2.1
2.0
2.5
2.0
2.0
2.5
2.1
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
スク要因と比較しすべてスナック菓子と同様
RMSEA は 0.1 を下回り概ねあてはまりはよい
の傾向が観察された 。先行研究とは調査設
と判断できる 9)。パス図の「購買実績」とは,
計の違いから正確な手続きによる比較はでき
該当商品の購買の頻度を表しており,「毎回
ないが,PB に限定した方が機能面,安全面,
PB を購入」から「NB のみ(PB の購入はな
価格面,社会面において消費者は知覚リスク
し)」まで 7 段階評定を設定し,PB の購入頻
を感じやすい傾向にあることが示唆される。
度が高いほど評定が高く,「毎回 PB を購入」
8)
を 7 としている。
3.共分散構造分析の検証結果
これらの購買実績と 4 つの潜在変数である
図− 1 は,上で識別したリスクによる検証
リスク(「機能面リスク」「安全面リスク」「社
結果であり,各潜在変数を構成する観測変数
会・心理面リスク」「価格面リスク」)の関係
とその標準化係数を表している。対象となる
をみると,「安全面リスク」(0.14,p<.01)を
サンプルは 表− 1 から 表− 3 同様,「PB 購入
除いた 3 つの変数で負の値が観察された。「機
者」の 2,205 ケースである。適合度指標をみ
能面リスク」は− 1.8(p<.01),「社会・心理
ると,GFI=.932,AGFI=.883,CFI=.945,
面リスク」は− 1.3(p<.01),「価格面リスク」
RMSEA=.099 であり,GFI,CFI の指標では
は− 0.6(p<.05)であり,パス係数が負の値
経験的基準である 0.9 を上回っており,
を示したこれらのリスクを PB の購買時に知
■図―― 1
パラメータ推定結果(標準化係数)
e1
機能・味
e2
原材料
.66
.86
機能面リスク
.81
e3
有用性
e4
健康面
e5
環境負荷
e6
衛生面
e7
自己評価
e8
他者評価
-.18
.85
e12
.92
安全面リスク
.88
.14
購買実績
.92
.87
-.13
社会・心理面リスク
.73
e9
家族評価
e10
nb価格差
-.06
.93
価格面リスク
.86
e11
価格比較
x 二乗値
df
p値
GFI
AGFI
CFI
RMSEA
1013.445
45
0.00
0.932
0.883
0.945
0.099
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論文
覚するほど消費者の購買にマイナスの影響を
回答者は 11 人(3.5 %)だけであった。この
与えていると解釈することができる。なかで
ような抵抗感の減少とともに,「PB の多品目
も「機能面リスク」が PB 購買のブレーキ要
化を今後さらに期待」している回答者が全体
因として作用しており,次いで「社会・心理
の約 7 割と高い値になっている。とくにこの
面リスク」,「価格面リスク」が続いている。
両設問では,否定的評価の人数が他設問と比
「機能面リスク」では「原材料」への係数
べ低くなっている。また,「今後,PB の購入
(0.86, p<.01)が高いことから,「機能・味」
を増加予定」かどうかをたずねた設問と「最
(0.66, p<.01)への不安やためらいよりも「原
近の PB 商品には全体的に満足」かどうかを
材料」へのリスクを知覚し,これの知覚が機
たずねた設問でも全体の 6 割を超える回答者
能面リスクの項目に強く表れている。
が肯定的評価を示している。これらの設問に
おいても,否定的評価をした回答者は約 5 %
4.PB に対する商品評価
と低い水準になっている。このように PB に
表− 4 は,消費者の PB に対するここ 1 ・ 2
対する評価が向上している要因には,「商品の
年の評価を示したものであり,数値は 5 段階
質(味や機能,品質)が向上」(肯定的評価
評定の平均値と肯定的評価(「5 :とてもそう
72.8 %)
,
「NB との品質差が縮小」
(同 59.6 %)
,
思う」「4 :ややそう思う」)と否定的評価
「価格の魅力が向上」(同 58.7 %),「安全性・
(「1 :まったくそう思わない」「2 :あまりそ
信頼性が向上」(同 57.1%)などの各設問にお
う思わない」)のそれぞれの人数と比率を表し
いて高い評価が得られていることが影響して
ている。評定平均値および肯定的評価数が最
いると思われる。特に PB の本質的な機能と
も高かった設問は「PB の購入・利用における
しての味や機能,品質面の向上を 7 割強の回
抵抗感が減少」したかどうかをたずねた設問
答者が肯定的に評価しており,価格面の評価
であり,全設問のなかで唯一 4 を超える平均
(58.7%)を大きく上回っている。今日の PB
値であり,全体の 8 割を超す回答者(254 人)
が高い支持を集めている背景には消費者から
が肯定的評価をし,反対に否定的評価をした
価格だけでなくそれ以上に機能や品質面の評
■表―― 4
PB に対する商品評価(n=312)
平均値
肯定的評価
人数
否定的評価
比率(%) 人 数
比率(%)
PBの購入・利用における抵抗感が減少
PBの多品目化を今後さらに期待
4.11
3.95
254
218
81.4
69.9
11
8
3.5
2.6
商品の質(味や機能、品質)は向上していると実感
今後、PBの購入を増加予定
3.84
3.75
227
192
72.8
61.5
14
15
4.5
4.8
最近のPB商品には全体的に満足 NBとの品質差が縮小していることを実感
3.72
3.70
197
186
63.1
59.6
16
37
5.1
7.1
安全性や信頼性が向上していると実感
値段の魅力が向上していると実感
3.65
3.62
178
183
57.1
58.7
10
37
3.2
11.9
プレミアム(高機能・高価格)PBの購入頻度の拡大
NBだけでなく他店のPBとの比較検討を行う
3.39
3.30
150
144
48.1
46.2
51
64
16.4
20.5
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
価が高まっていることを示している。価格へ
いた観測変数「購買実績」に該当する設問で
の魅力に関する設問では否定的評価(11.9%)
ある。ここでは,上記と同じ 9 商品と食品全
が他設問と比べて高くなっている。PB が広く
般,飲料全般,日用雑貨全般の買物における
普及している今日,PB 価格を意識して NB の
ここ 1 ・ 2 年での PB の購入頻度についてたず
価格を下げるメーカーも多く,PB の価格優位
ねている。商品群でみると「食品全般」にお
性が薄れてきていると実感している消費者は
いて PB の購入頻度が増加した回答者は 203
一定数いることがわかる。そして,「高機能・
人(65.1 %)であり約 3 人に 2 人と高く,反
高価格 PB の購入頻度の拡大」は否定的評価
対に食品の PB の購入頻度が減少した回答者
をした回答者も 16 %ほどいるが,全体の約半
はわずか 8 名(2.6%)であった。そして,「飲
数(48.1%)が肯定的評価をしており,もはや
料全般」と「日用雑貨全般」では約半数の回
今日の PB は安さ一辺倒から脱し,NB と同じ
答者が購入頻度が増加したと回答し,否定的
土俵において品質・機能面で評価されはじめ
評価は「飲料全般」では 10 名(3.2 %),「日
ていることがわかる。
用雑貨」はとくに低く 6 人(1.9 %)となって
PB に対するこのような高い評価をひとつの
いる。商品別にみると「スナック菓子」の
背景として,従来のような NB と PB 間での
1 2 7 人 ( 4 0 . 7 % ) が 最 も 高 く ,「 カ ッ プ 麺 」
競争だけでなく,「NB だけでなく他店の PB
( 1 2 2 人 , 3 9 . 1 % ),「 衛 生 紙 類 」( 1 2 0 名 ,
との比較検討を行う」という設問にも約半数
38.5%)が続いている。全商品とも購入頻度が
(46.2 %)の消費者が肯定的評価をしており,
増加した割合が減少した割合より大幅に上回
PB 間の競合関係が強まってきている傾向をみ
っており,減少率はすべて 1 割に満たないこ
ることができる。
とから,PB はさまざまな商品群・カテゴリー
表− 5 は,このような消費者の PB 評価の高
において多くの消費者から支持されているこ
まりに対して,実際の PB の購買実績を示し
とがわかる。
たものである。同設問は共分散構造分析で用
■表―― 5
製品別にみる購入頻度の増減(n=312)
PB商品
スナック菓子
食品 カップ麺
パン類
牛乳・乳飲料
飲料 茶系飲料
清涼飲料
洗剤
日用
衛生紙類
雑貨
化粧品
食品全般
飲料全般
日用雑貨全般
9商品 合計
平均値
3.43
3.46
3.51
3.50
3.45
3.29
3.38
3.53
3.05
3.72
3.53
3.51
3.43
購入頻度 増加
人数
比率(%)
127
40.7
122
39.1
115
36.9
112
35.9
117
37.5
75
24.0
82
26.3
120
38.5
99
31.7
203
65.1
153
49.0
145
46.5
969
34.6
91
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購入頻度 減少
人数
比率(%)
21
6.7
17
5.4
6
1.9
5
1.6
15
4.8
12
3.8
11
3.5
8
2.6
7
2.2
8
2.6
10
3.2
6
1.9
102
3.6
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論文
安やためらいと同等品でもっと安いものがあ
笙――― 考察
るのではないかといった価格面でのためらい
が発生しやすい傾向が観察された。全商品に
今回の調査では 3 つの商品群(食品,飲料,
共通して概ね 3 割から 4 割強の消費者が価格
日用雑貨)から 9 つの商品の PB について,
面に関する知覚リスクを感じており,低価格
購買実態から消費者が購買時に抱く知覚リス
競争が進展する日本において,PB の価格面で
クや商品評価について分析した。PB 購入の実
のお買い得感が減少していると感じている消
態をみると,「化粧品」を除いたすべての商品
費者が一定数いることが示唆される。また,
が 8 割前後の高い購入経験率であり,とくに
全商品において「安全面」のリスクの数値が
「スナック菓子」は 90.7 %と高く,これに
最も低くなっていた。「安全面」に関連した設
「茶系飲料」(87.2 %),「衛生紙類」(86.2 %)
問をみると,「安全性や信頼性が向上している
が続いた。「化粧品」は今回の対象製品の中で
ことを実感」しているかどうかをたずねた設
は一般的に価格帯が高く探索時間を要する商
問で 178 名(57.1 %)が肯定的評価をし,否
品であることから,女性に限定した本調査の
定的評価(10 名,3.2%)を大きく上回ってい
結果でも 3 割の低い水準になっている。知覚
る。また,「社会・心理面」に関する設問では,
リスクの発生率をみると「化粧品」の PB 購
「PB の購入・利用における抵抗感が減少」し
入者のうち 7 割(72.6 %)を超す消費者が購
たかどうかをたずねた設問が全設問の中で最
買において何らかの知覚リスクを感じており,
も高い肯定的評価と平均値となっており,こ
「スナック菓子」,「カップ麺」も 7 割を超えて
うした PB への信頼性の高まりや抵抗感の減
いる。このうち,知覚リスクの発生率が最も
少が今日の PB 普及の大きな原動力になって
高い商品が「スナック菓子」(75.3 %)であり,
いると考えられる。
同商品のリスクを要因別にみると,「機能面」
知覚リスクの程度と購買実績の関係をみた
(評定平均値 2.8)と「価格面」(同 2.7)が高
共分散構造分析の分析結果をみると,「機能面
くなっている。とくに「価格面」に関する知
リスク」の知覚を筆頭に,「社会・心理面リス
覚リスクの数値は,全 9 商品の中で最も高く
ク」,「価格面リスク」が PB の購買にマイナ
なっていることから,他の商品以上に特売や
スの影響を与えるブレーキ要因として作用し
低価格化が進行する NB との価格差が縮小し
ていることが明らかになった。ここでは,価
ていると知覚されているカテゴリーであると
格に関するリスク以上に商品の本質的な価値
考えられる。
に関する不安やためらいと,友人や家族とい
全 9 商品を知覚リスクの要因別にみると,
った周囲の評価や自己イメージに関する不安
高い値を示したのが「機能面」(評定平均値
やためらいの知覚が強く影響している結果と
2.7)と「価格面」(同 2.5)であり,9 商品す
なった。「機能面リスク」ではその商品の「機
べてに共通して「機能面」が最も高く,これ
能・味」よりも「原材料」に関するリスクが
に「価格面」が続いている。PB の購入には,
高く表れている。商品評価に関する設問をみ
とりわけ品質・原材料を含めた機能面での不
ると PB の機能や味への評価は高い結果がみ
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
られ,「商品の質(味や機能,品質)は向上し
笞――― おわりに
ていると実感」しているかどうかをたずねた
設問で肯定的評価の回答者は 227 名,全体の
72.8 %であり,また,「NB との品質差が縮小
本論文では,PB を通して日常的に購買され
していることを実感」しているかどうかをた
る低関与商品の購買時における知覚リスクと
ずねた設問では 186 名,全体の 59.6%が肯定
PB の商品評価に焦点をあて,調査結果に基づ
的評価であり否定的評価を大きく上回ってい
き議論を行った。食品,飲料,日用雑貨の商
る。また,「安全面リスク」のみが購買のブレ
品群から 9 商品を対象とした調査から,概ね
ーキ要因とはなっておらず,安全性や信頼性
8 割を超える高い購買実態と,調査対象の全
への評価の高まりがこの結果に表れていると
商品で 5 割を超える回答者が PB 購買時に何
思われる。
らかの不安やためらいを感じている実態が明
らかになった。また,本研究では不安やため
これらの分析結果から,今日の PB への高
い支持は,企業努力による機能面や安全性の
らいの発生要因として 4 つ(機能面,安全面,
向上が消費者評価に繋がっていることに加え,
価格面,社会・心理面)の種類を考慮し,こ
購買や利用における抵抗感といったマイナス
れらのうちどの製品においても「機能面」に
要因の軽減が大きく影響していることが分か
関するリスクが最も高く,次いで「価格面」
る。全体の約半数(48.1%)が「プレミアム
のリスクが続いていた。そしてリスクと実際
(高機能・高価格)PB の購入頻度が拡大」し
の購買実績との関係では「機能面」「社会・心
ているかどうかをたずねた設問に肯定的評価
理面」「価格面」に関するリスクが購買にマイ
をしており,「今後,PB の購入を増加予定」
ナスの影響を与えるブレーキ要因として作用
かどうかの設問では 61.5%の消費者が肯定的
しており,購買意思決定時にこれらの要素の
評価をしており,このような PB への商品評
熟考がなされていることがわかる。
これまで,日常的に購買する低関与商品の
価の高まりは NB との競争が今後より激化し
ていくことを意味するものである 。
意思決定や購買リスクに関する研究,とくに
10)
本調査の結果から,日本においてこれから
PB の知覚リスクに焦点をあてた研究は少ない。
開発が強化されていくであろう PB の方向性
その意味で,本稿で提示した調査結果とそれ
を展望すると,これまでの「価格重視型」に
に基づく議論は一定の貢献を果たしたものと
特化した商品とは異なり,機能や品質面にお
考えられるが,消費者の購入状況を考慮して
いても NB と同等ないしは NB より優れ,か
いない点や NB との直接的な比較が行えてい
つ価格が割安な「機能・価格両立型」の商品
ない点など限界点も存在する。今後は,これ
であることが推測される。機能と価格を競争
らの点を考慮した調査設計と分析を行うこと
軸とした製品開発競争が NB 対 PB のみなら
で,より詳細な低関与商品時における購買意
ず PB 間においても激しく展開されていくこ
思決定や PB 独自の購買基準や商品評価など
とが予想される。
の把握を試みていきたい。
最後に,日本における PB の発展可能性に
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論文
ついて触れて結びとしたい。日本において今
う現象は一時的な盛り上がりを意味するもの
後,PB がさらなる発展をするかどうか予測す
で,PB の魅力も低価格だけではブーム的現象
るうえでは,とくに考慮しなければならない
にすぎないが,本稿の調査結果が示す通り,
要素は 2 つある。第 1 の要素は,大型小売業
近年の消費者にはむしろ商品価値への評価と
ならびに有力卸売業の売上の集中化,寡占化
いう本質面の評価に由来していることに注目
がより進展するかどうかという点である。そ
すべきである。
して第 2 の要素は,PB 商品に対する消費者の
日本で流通しているすべての PB がそのよ
評価が今後より一層高まるかどうかである。
うな高い評価を得ているわけではないが,本
まず,第 1 の要素であるが,日本の大型小売
稿の結果をみるかぎりでは日本における PB
業の場合,売上集中度も寡占度も欧米諸国と
はブーム的現象はすでに過ぎて,むしろ着実
比較してまだ低いレベルにあるのが現実であ
に一定の高い評価の下に定着を示しつつある
る。相対的に上位集中度,寡占度が高い国ほ
ものといえるであろう。
ど大型小売業による PB の開発が活発であり,
そのような国ほど PB の市場シェアが高くな
っている 11)。欧米諸国と比較すると日本の PB
<謝辞>
の市場シェアははるかに低いのが現状である
本論文の作成にあたり,守口剛先生(早稲田
が,今後の日本の小売業界はイオングループ,
大学)から多大なるご指導を賜りました。こ
セブン&アイ・ホールディングスの 2 強を中
こに記して厚く御礼申し上げます。
心に大手小売業間の企業統合等の再編成がよ
注
1)消費者の日常的な買物におけるリスクや不安など
について検討した研究には,守口(2010),Tsiros
and Heilman(2005),竹村(1996),Dunn et al.
(1986)などがある。
2)PB は生産者以外が設定するブランドであり,卸売
商,小売商などの商業者(再販売業者)などが主
体となって開発するブランドを指す。PB にはサイ
ズやパッケージを若干変えただけのものもあれば,
小売業が仕様書も書いている場合もあり,開発輸
入の一部のように小売業が生産まで管理している
ものまで様々である(住谷 2000,p.130)。
3)PB 開発を強化する流通業は小売業だけでなく,卸
売業においても積極的な取組みがみられる。全国
規模の卸売業だけでなく,各地域の有力な卸売業
でもその開発が加速しており,特産物などの地域
資源を生かした PB や気候や文化・風習に適合した
PB の開発に力を入れている。
4)21 世紀最初の 10 年で PB は世界的に急速な成長を
遂げ,欧米の多くの小売業は今後さらに自社の PB
シェア拡大を目指して積極的な開発を行っている
(Kumar and Steenkamp 2007; Geyskens et al.
り進行し,大手小売業への上位集中化,寡占
化がより進展することが予想され,それに伴
う PB の市場シェアならびに普及はより一層
増大するものとみることができよう 12)。第 2
の消費者評価の向上に関しては,本稿の調査
結果が示すように日本の消費者は PB に対し
て明確に肯定的な態度と評価を示している。
調査を通して PB に対する評価や知覚品質が
変化していることが明らかになり,これが PB
への支持者を拡大する大きな原動力につなが
り,NB にとっては最大の脅威となるであろ
う。昨今,PB の市場はすでに成熟しはじめて
おり PB ブームはすでに終焉したという見方
が一部にあることは事実である。PB ブームが
真に去ったかどうかの判断は難しいところで
あるが,いかなる場合においてもブームとい
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PB に対する消費者の知覚リスクと商品評価
2010)。最新の統計を国別にみてみると,PB の販
売シェア第一位はスイスで 46 %,第二位はイギリ
スで 39 %,以下ドイツ 34 %,スペイン 29 %,ベ
ルギー 28 %,フランス 27 %と続き,ヨーロッパで
とくに高い支持を得ていることがわかる。アメリ
カは 19 %であり,日本は空前の PB ブームとはい
え 4 %(2009 年時点)に過ぎない(M+M Planet
Retail 2009)
。
5)日本では食品全体(生鮮・惣菜除く)の売上高に
占める割合は 10 %に迫っており,2010 年の PB 食
品は前年比 6.9 %増の 2 兆 4265 億円の市場である
(日経 MJ 2011 年 2 月 18 日)。また,日本ではこれ
まで何度か PB ブームがあり,今日のそれは平成に
入って 2 度目となる。平成における 1 回目のブーム
は,1990 年代前半から半ばであり,バブル経済崩
壊後の円高不況とともに始まった。1995 年以降,
当初の勢いは影をひそめたが,2007 年後半からみ
られた原油・原材料価格の高騰と 2008 年秋に発生
した米国のサブプライムローン問題に起因する世
界的金融危機と経済不況といった市況の変化をき
っかけに再び PB の開発機運が強まっている。
6)清水(2004)では,PB の利用者は他の商品カテゴ
リーの PB への派生需要を生じさせる力があり ,
NB にはないブランド拡張力をストア・ロイヤリテ
ィのある消費者に対して PB は保持していることを
明らかにしている。
7)調査対象者は 20 代,30 代,40 代,50 代でそれぞ
れの人数が等しくなるよう抽出している。調査は
2011 年 4 月 19 日・ 20 日に実施された。
8)守口(2010)では,最終的に対象商品を購入した
人だけが調査対象者になっているという点で本調
査と違いがあり,躊躇・不安を強く感じた購入検
討者のうちの多くはその結果購入をしなかったと
考えられるため直接的な比較はできないが,傾向
としては 4 つのリスクすべてにおいて PB に限定し
た本調査の評定値が上回っている。
9)GFI は一般的に 0.9 以上であれば「説明力のある
(=データと当てはまっている)パス図である」と
判断される。その他適合度指標では,概ね 0.9 以上
が当てはまりが良いとされ,本調査では AGFI の
値が 0.883 と若干下回っている。また,RMSEA で
は豊田(2007)ではグレーゾーンに位置している。
10)ドイツでは成長著しい PB を背景に NB 全体のシェ
アは減少しているが,NB において唯一シェアを伸
ばしているのがプレミアムブランド(マーケット
リーダーの NB の価格より高い NB)であり,PB
と比較して品質や機能面での付加価値が高いと認
識される商品でない限り成長を続けるのが難しい
ことが示唆される(Kumar and Steenkamp 2007)。
11)欧州諸国が大型小売業への売上集中度は世界で最
も高いと言われ,イギリスでは上位 5 社で約 8 割を
占めている。アメリカには多数の大手小売業が存
在し,かつ大手小売業の売上高に占める海外店舗
の比率が高いこともあって,アメリカ国内におけ
る上位 5 社の大手小売業の市場シェアはイギリス
の約半分であるが,日本のそれよりはるかに高く
なっている。
12)ただし,PB の徹底した低価格化や他品目化を積極
的に行う総合スーパー等では PB シェアは向上して
いても業績は悪化している企業も少なくはない。
PB 開発に伴うリスクは,根本(2009)に詳しい。
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宮下 雄治(みやした ゆうじ)
明治学院大学大学院 経済学研究科経営学専攻 修士
課程 修了(2004 年)。
東京大学大学院 総合文化研究科広域科学専攻 博士
課程 退学(2008 年)。
2008 年 4 月より,城西国際大学経営情報学部 助教。
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http://www.j-mac.or.jp
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