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論文 マーケティング戦略にマネジャーの準拠枠は影響するか?

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論文 マーケティング戦略にマネジャーの準拠枠は影響するか?
Japan Marketing Academy
論文
マーケティング戦略にマネジャーの
準拠枠は影響するか?
─ アラブ諸国のマーケティング活動の多様性と価値観 ─
アラブ・アメリカン大学 講師
アッラーム・アブ・ファルハ
神戸大学大学院 経営学研究科 教授
南 知惠子
要約
意思決定者の外部環境に対する認識が,企業戦略において重要な役割を果たすことが主張されてきた
が,本稿は,とりわけマーケティング活動の選択において,マネジャーの外部環境に対する知覚がどの
ように影響を与えるかに焦点を当てる。マーケティング・マネジャーの知覚を,Shrivastava & Mitroff の
準拠枠に従い,起業家的,官僚的,専門家的,政治的準拠枠を持つものとして類型化し,マーケティン
グ活動においては,取引型マーケティング,データベース・マーケティング,インタラクティブ・マー
ケティング,ネットワーク・マーケティングの4つに類型化する。アラブ圏のパレスチナ,UAE,エジ
プトの3国において,マネジャー層を調査対象としてデータ収集を行い,準拠枠とマーケティング活動
とのパターン・マッチングについて構造方程式モデリングを用いて確認した。本研究の成果は,
マネジャー
の知覚と選択する活動との一貫性を識別した点にあり,調査対象となった経済・文化圏では,マーケティ
ング活動の多様性は,外部環境に対するコンティンジェントな要因というよりはむしろ,マネジャーの
様々な知覚に起因することを示すものである。
キーワード
組織的準拠枠,マーケティング戦略類型,アラブ圏
は,価値観や物事の認識のしかたが,情報の収
Ⅰ. はじめに
集および解釈の方法に影響を与え,そのことが
企業の戦略策定において,意思決定者の外
を及ぼすということにある(Shrivastava and
部環境への知覚や認知というものがいかに影
Mitroff, 1983 など)。
響を与えるかは,組織論及び戦略論において
これまでトップ・マネジメントの認知的な
少なからぬ関心を集めてきた(Kaplan, 2011;
ベースとなっているものが,企業戦略および事
Smircich and Stubbart, 1985; Daft and Weick,
業戦略において,どのように様々な組織戦略と
1984; Shrivastava and Mitroff, 1983; Durand et
関連するのかについて研究され,重要な洞察が
al., 1996; Schwenk, 2007)
。マネジャーなど経営
示されてきた(例えば,Herbert and Deresky,
における意思決定者の価値観と認知とが,組織
1987; Thomas et al., 1993)。しかしながら,マ
内で実行される戦略に対して様々に直接的な影
ネジャー層が,どのようにして特定の情報が
響を及ぼすことが論じられてきたが,その論拠
戦略に合致するものと解釈しているかについ
適切な戦略を選定あるいは策定することに影響
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ては,まだ理解が限定的なものにとどまって
層の認知に影響を与える決定因として提示す
い る(Kathuria and Porth, 2003; Varadarajan
る。そのうえで,マーケティング活動と準拠
and Jayachandran, 1999; Gallen, 2006)
。先行研
枠との関係についての概念モデルを提示する。
究において,経営戦略は,意思決定者の思考の
そのモデルをアラブ圏の 3 つの国から収集した
影響を受けるということが強調されてきたもの
152 企業のサンプルを用いて相互の関連性を検
の,マーケティング分野においては,マーケティ
証し,その結果とインプリケーションについて
ング活動の選択に同様な影響が想定されるにも
議論する。加えて,今後の研究への提言および
関わらず,そうした影響は比較的軽視される
本研究の限界について述べる。
傾向にあったといえる(Day and Schoemaker,
Ⅱ. 先行研究
2004; Noble and Mokwa, 1999; Prahalad, 2004;
Tollin and Jones, 2009)
。マーケティング領域
においても,マーケティング戦略パターンと,
1. 経営管理者層の認知と戦略との関連性
意思決定するマネジャーの認識枠組みとの合致
市場における戦略的行動には様々な差異が見
という重要な問題を検証することは,企業の戦
られるが,この差異が現れることを説明しよう
略策定および競争行動に対する理解を深めるの
として,戦略論においては,経営管理者層の認
に貢献するものと思われる。
知的側面がこうした多様性を生み出すものの
したがって,本稿は,マネジャーの知覚とそ
1 つであるという主張がされてきた(例:Daft
のマーケティング活動との関係とに焦点を当
and Weick, 1984; Hambrick and Mason, 1984;
て,より具体的には,外部環境に対するマネ
Schwenk, 2007; Smircich and Stubbart, 1985;
ジャーの知覚がマーケティング活動の選択にど
Shrivastava and Mitroff, 1983)。これらの研究
のように一致しうるかという問題を明らかにす
は,組織的な成果は,組織内でパワーを持つ行
ることを目的とする。
為者の価値観や認知を反映しているものと指摘
本稿は以下,次のように構成される。まず
してきた(Kaplan, 2011)。すなわち,認知的
経営管理者層の認知に関する研究と,マーケ
なベースや価値観が組織の意思決定者の視野,
ティング戦略のパターンに関する先行研究をレ
選択力および解釈プロセスに影響を及ぼすた
ビューする。ここではマーケティング活動に
め,こうした認知や価値観が戦略上の選択に直
ついての多様な類型化が存在することに焦点
接関わることを明らかにしている(Hambrick
を当てるが,なかでも本研究は,理論的な支柱
and Mason, 1984, p. 195)。
として,Contemporary Marketing Practice グ
これまでに,経営管理者層の認知に関して
ループ(以下,CMP)によるマーケティング
様々な概念化が行われてきたが(例:Day and
活動の分類について焦点を当てる。企業戦略
Nedungadi, 1994; Goodenough, 1971; Prahalad
とマネジャー層の認知との関連性については,
and Bettis, 1986; Shrivastava and Mitroff, 1983;
Shrivastava と Mitroff による「準拠枠(Frame
Webster, 2005), 本 稿 で は, 研 究 の 目 的 上,
of Reference:以下,FoR)
」の類型をマネジャー
Shrivastava and Mitroff(1983)が提唱した準拠
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枠を,本研究が対象とするマネジャー層の認知
が共有するという意味で,集合的なものである
に影響を与える決定因として採用する。採用す
(Schneider and Shrivastava, 1988)。
る理由は,この準拠枠では,構成概念が明確に
Shrivastava & Mitroff(1983) は, 準 拠 枠
分類され,操作化されてきたことに拠る。
について「政治的 FoR(Political FoR)」,「起
Shrivastava and Mitroff(1983)は,
準拠枠と
業 家 的 FoR(Entrepreneurial FoR)」,「 官 僚
いうものを,組織が問題に対して理解しようと
的 FoR(Bureaucratic FoR)」,「専門家的 FoR
する際に基づく基本的な想定であると述べてい
(Professional FoR)」(表− 1)という 4 つの類型
る。準拠枠とは,組織内の成員が社会的事象に
化を行っている。これらの類型化は,次に挙げ
対し,そこから互いに合意できる意味を見出さ
る 6 つの構成概念,すなわち,
「認知的要素」,
「認
せるような,方法論的,認識論的,存在論的,
知的操作化」,「リアリティの検証」,「探求の領
ならびに観念的な想定を含むものとされる。換
域」,「明瞭さの度合い」,「メタファー」に基づ
言すれば,それは,組織に物事を理解させ,精
いている。
神的支柱へと導くツールであるということにな
こ れ ら は Shrivastava and Mitroff (1983)
る。組織的な準拠枠とは,組織の成員の大部分
により次のように説明される。まず,「認知的
表 —— 1 Shrivastava & Mitroff による準拠枠分類
FoR
FoR
FoR
FoR
FoR
/
/
/
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要素」とは,アイデアや,概念,想定といった,
別のアプローチを取る研究者たちは,マーケ
基本的な情報の単位を指す。
「認知的な操作化」
ティング活動を二分法ではなく,様々なタイプ
とは,膨大な量のデータを取得し,秩序だて再
が連続体上にあるものとして概念化し,より多
び整理して意味を成そうとする方法をいう。
「リ
元的な視点から捉えている。例えば,取引型
アリティの検証」とは,組織が何かを知ろうと
マーケティング,データベース・マーケティン
し,その結果として起こることを,
「真実」や
グ,インタラクティブ・マーケティング,ネッ
「現実」として捉えるプロセスを意味する。リ
トワーク ・ マーケティングというタイプ分けや
アリティの検証方法は,組織の中では,具体的
(Brodie et al., 1997; Coviello et al., 1997),離散
な規則や規制,あるいは個人的な価値観,社会
的取引,付加価値の交換,協調的交換といった
的イデオロギー,慣習または科学的知見の形を
タイプ分け(Day, 2000),あるいは,取引的,
とる。
「探求の領域」とは,すなわち企業が認
限定的,ならびに広範なリレーションシップ・
識し取り組む探求のプロセスの範囲および領域
マーケティング(Sheth and Parvatiyar, 2000)
を指す。
「明瞭さの度合い」とは,準拠枠の構
といった類型化があり,様々なマーケティング
成要素ではないが,各要素がどのように組織内
活動の相違を概念的に捉え,類型化が試みられ
で明瞭であるかに関わる。
「メタファー」とは,
てきている。
何かに意味を持たせる,象徴を作り上げること
マーケティング活動を二分法的に捉えようと
を指す。
する立場は,マーケティング分野における関係
性というものを単純化するという点において,
2. 市場におけるマーケティング活動の
また市場のダイナミズムに対する理解を容易
にするという点で有用である。しかしながら,
多様性と類型化
マーケティング活動には様々なタイプがあ
取引型マーケティングとリレーションシップ・
り,2 つの主要な観点からタイプ分けを行うこ
マーケティングとの両極の間に存在し得る,多
とができる。一つ目の観点については,マーケ
様なマーケティング活動自体を捉え損なうとい
ティング活動のタイプ分けについて二分法的な
う問題がある。したがって,本稿は多元的な観
立場を取っており,取引型(トランザクション)
点の方を採用し,マーケティング活動を,二者
マーケティングとリレーションシップ・マー
択一的なタイプが存在するというよりはむし
ケティングとに区別される(Berry, 1983)
。こ
ろ,いくつかのタイプが同時に存在し,補完的
の立場では,これら 2 つのマーケティングは
に捉えられるものとして扱う(Arndt, 1979)。
両 極 に あ る(Grönroos, 1995; Håkansson and
本研究では,マーケティング活動の多様性を
Snehota, 1989)
。二分法的な分類をする立場と
実証するという目的のために,CMP グループ
して,伝統的なモノ中心的なマーケティングを
の研究に理論的に依拠したが,その理由は,
一方に,もう一つの極を,サービスの論理に基
CMP 研究自体がマーケティング活動の分類枠
づくマーケティングとして捉える立場も台頭し
組みを提案しており,それが広範な実証研究に
てきている(Vargo and Lusch, 2004)
。
より支持されているということに依る(例えば,
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Brodie et al., 2008; Coviello et al., 2002; Dadzie
Ⅲ. マーケティング活動の選択と
et al., 2008; Pels and Brodie, 2004)
。
CMP 研究のうち,Coviello et al.(1997)は,
マネジャーの外部環境認識とのマッチング
関係的交換と管理活動とに焦点をあてた分類枠
組みを開発したが,これらの点は,企業がいか
先行研究では,組織的準拠枠が戦略上の方向
に市場と相互作用するかに関連する。彼らは,
性において重要な役割を果たしていることを
マーケティング活動を次に挙げる 4 つのタイプ
指摘してきた。本節では,マーケティング戦
に類型化している。すなわち,
(1)取引型マー
略に関する,マネジャーの知覚を検証するに
ケティング(Transaction marketing:
「TM」
)
,
あたっての分析枠組みを示すことにする。先
(2)データベース・マーケティング(Database
行研究において,組織的な準拠枠は,マーケ
marketing:
「DM」
)
,
(3) イ ン タ ラ ク シ ョ
ティング活動の選択に対して直接的に影響を
ン・マーケティング(Interaction marketing:
与えているという主張がある(Pels, 2011)。マ
「IM」
)
,
(4) ネットワーク・マーケティング
ネジャーの認知が,組織の戦略的方向性に影響
(Network marketing:
「NM」の 4 つのタイプ
を及ぼし,そこにはマーケティング活動の方向
である。
性も含まれると想定すれば,組織的準拠枠は
取引型マーケティング(以下 TM)とは,
マー
マーケティング活動の選択に直接的な影響を与
ケティングミックスの要素を管理することで潜
えるという仮定ができることになる(Day and
在的な買い手の関心を引き,満足感を与えるこ
Nedungadi, 1994; Deshpande and Webster Jr,
とに焦点を当てるマーケティング・マネジメン
1989; Krepapa and Berthon, 2003; Tollin and
トの系譜をひくものである。データベース・マー
Jones, 2009; White et al., 2003; Pels, 2011)。
ケティング(以下,DM)とは,IT などのツー
マーケティング活動をマネジャーの知覚面か
ルを用いて顧客維持を目的とし,売り手から顧
ら分析しようとする試みはそれほど研究蓄積が
客「に向けての」積極的なコミュニケーション
ないが,少ないながらも,意思決定におけるマ
を行うものとして捉えられる。また,
(3)イン
ネジャーの想定の重要性を扱った研究はある。
タラクション・マーケティング(以下 IM)とは,
その一例として,Day and Nedungadi(1994)は,
顧客「との」対面のコミュニケーションを通じ
流動的な競争市場に対するマネジャーの知覚こ
て協調的かつ互恵的な対人関係を構築し,最終
そが,客観的現実よりもむしろ彼らの意志決定
的には,現有顧客の維持をめざすものである,
を推進すると指摘している。また,Deshpande
最後の(4)ネットワーク・マーケティング(以
and Webster(1989)は,組織文化がマーケティ
下 NM)とは,IM の要素を帯びつつも,企業
ングに影響を及ぼすことを示唆したが,彼らの
間の関係構築により焦点を置き,最終的に,ビ
組織文化の議論の中心は組織としての認知的側
ジネス ・ ネットワークにおける当該企業のポジ
面にある。さらに,Krepapa and Berthon(2003)
ションの向上させることをめざすものを指す。
は,マネジャーが,外部環境に対する理解を深
めるため,いかに意味を成そうとするかに焦点
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を当てることで,解釈の多様性と市場に対する
ず概念モデルを提示する(図− 1)。この概念枠
学習にアプローチしている。
組みが示唆するのは,組織的準拠枠がマーケ
一方,実証研究としては,White et al.(2003)
ティング活動の選択に影響を与えること,さら
が,マーケティング・マネジャーの認知スタイ
に,異なった準拠枠のタイプとそれに対応する
ルが市場の状況についての解釈に影響を及ぼ
マーケティング活動との一致というものが存在
し,市場への反応行動の大きさに影響を与える
するということである。
ことを明らかにしている。同様に,Tollin and
モデル構築にあたり,Lindgreen et al.(2008)
Jones(2009)の研究成果からは,マーケティ
研究にしたがい,準拠枠のタイプについて,事
ング・マネジャーの意思決定を支配する,個々
業の成果面との結びつきを議論するのではな
に異なる独自の論理が存在することが示されて
く,むしろ,市場環境との結びつきに注目する。
いる。Pels(2011)研究では経営管理上の認知
このことは事業の財務的成果のみに注目するよ
と環境的要因とマーケティング活動を結びつけ
り,マーケティング研究としては,より豊かな
るパターンを識別している。しかしながら,こ
洞察が得られると判断したからである。モデル
れは 2 つのケーススタディに基づいており,大
では,企業の戦略選択は,マネジャーの事業環
規模に検証されているものではない。
境に対する多様な解釈に起因しており,その解
上記に述べてきた議論に基づき,本研究は,
釈は個人の認識特性,社会環境および利用され
マネジャーの知覚とマーケティング活動との間
る情報に起因しているということを想定する
に関連性があることを想定する。本研究は理論
(White et al., 2003)。一方,事業における成果
創出を最終的にめざす研究であることから,ま
は,制御できるかどうかわからない,膨大な変
図 —— 1 概念的枠組み
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数の影響を受ける広い測定尺度であると考えら
とが予測されることから,この地域のこうした
れ(Lindgreen et al., 2008)
,本研究において
特徴は,他の地域以上に,我々のモデルを明確
は直接扱わないことにした。
に検証するために妥当性を持つものと考えられ
る。アラブ諸国を選んだ2番目の理由としては,
Ⅳ. 実証分析
この地域の経済的および政治的重要性にも関わ
らず,アラブ圏における組織および経営上の活
1. データの収集とサンプル
動に関する実証研究はほとんど蓄積されていな
デ ー タ 収 集 に つ い て は, オ ン ラ イ ン 調 査
いということが挙げられる。よって,アラブ圏
フォーマットを用いた自答式のアンケートを
の企業の心理学的および実践上の側面を解明
配布した。本研究は,確率抽出法に基づかな
し,説明しようとする研究は意義を持つものと
い,スノーボール・サンプリング技法を採用し
考えられる。
た(Biernacki and Waldorf, 1981)
。この方法
調査対象 3 か国においてマーケティング,財
は,調査対象とする,ある特性を共有する個
務,人事分野を専門とする者のリストを最初に
人,あるいはそうした特性を備えた者を知って
作成したのち,その中から 50 人を選別し,ア
いる個々人の集団の間での照会により標本を集
ンケート調査の目的と内容を説明したカバーレ
めるもので,母集団がわかりにくい,あるいは
ターとともに調査のリンク先を送付し,さらに
接触が難しい場合に推奨される(Atkinson and
所定の基準を満たす他の上記分野を専門とする
Flint, 2001)
。
企業勤務者にもアンケートを送信してもらうよ
本研究の対象はアラブ地域であり,データは,
う依頼した。回答者は,質問群のアラビア語版
パレスチナ,UAE(アラブ首長国連邦)およ
または英語版のいずれか好きな方に回答するこ
びエジプトの 3 か国から収集された。このよう
とができるものとし,2週間おきにリマインダー
にデータ収集地域が選択された理由はいくつか
として E メール送信 / 電話発信を行った。
あるが,まず,アラブ地域では,ビジネスにお
その結果,本アンケートを見た 351 人のマネ
ける企画,監督および資源配分といった責務の
ジャーのうち,158 人がアンケートにすべて記
大半をマネジャーが担うことの多く,また職務
入し,約 45% の回答率を得ることができた。内
階層にしたがった働き方をする傾向があること
訳は,パレスチナ(n=53),UAE(n=60),エ
が挙げられる。さらに,これまでの先行研究の
ジプト(n=40),5 人が未特定である。回答者
結果から,アラブ圏のマネジャーには戦略的な
の所属組織の特性としては,全組織の 21% が 5
方向付けにおいて多様性が見られること,彼ら
年(もしくは 5 年未満)前に設立されており,
自身の価値体系に基づいて意思決定を行うとい
さらに 21% が 6 ~ 10 年前,25% が 11 ~ 20 年の
うことが多く見られ,経済的根拠に厳格に基づ
間,そして 17% が設立されてから 20 年超であっ
いて意思決定することは稀であることが明らか
た。全組織のうち,63% が 100% 国内資本企業
になっている。戦略的な意思決定は,
マネジャー
で,13% が 100% 外国資本会社,残りの 24% が
の知覚という変数から直接的に影響を受けるこ
国内と外国資本の合弁会社であった。そして,
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企業の約半数が,子会社など,より大規模な組
2. 測定尺度
織の一部であった。市場セグメントについては,
アンケートの質問項目は,先行研究における
消費者市場をターゲットとする企業が 28% を占
測定尺度に基づいて設計された。これは我々が
め,
24% が B to B 市場であったが,
約半数(46%)
既に操作化されている分類枠組みを選択した
が同時に両方の市場を対象にしていた。市場へ
という理由に依る。「組織的準拠枠」という構
の提供物については,34% が製品,41% がサー
成概念は,Shrivastava and Mitroff(1983)が
ビスで,
両方を提供していたのが 24% であった。
最初に主張した質問項目に基づいている。具
回答者特性については,37% が上級の管理職
体的には,準拠枠の 4 つの構成要素を反映した
者で,中間管理職者と下級管理職者の比率は
計 28 の質問を設計した。「ビジネス戦略」につ
それぞれ 39%,21% であった。担当職務種別で
いては,ポーターの基本戦略の操作化が多くの
は,37% がマーケティング分野,27% が財務お
の研究者により行われてきたが(例えば Dess
よび経理,8.5% が人事・労務,残りはエンジ
and Davis, 1984; Miller and Dess, 1993; Miller,
ニアリング等の分野であった。この配布状況に
1988),その中で Miller(1988)の研究が最も
ついて,我々は,大半のアラブ企業が小規模で
明瞭で,概念化しやすく,広範に受け入れられ
あることを認識し,職能横断的に職務が行われ
ていると判断した。よって,本研究はその操作
るケースが多いことから,本アンケートの目的
化を採用し,12 の質問項目を使ってポーター
から,この調査対象特性を受容できるものとし
の基本戦略を測定したが,うち 7 つの質問が差
た。したがって,調査回答者は所属企業のマー
別化,5 つがコストリーダーシップに関する質
ケティング活動に関与しているか,少なくとも
問であった。「マーケティング活動」について
関連する知識を有していると判断した。回答者
は,マーケティング活動にあたって CMP 研究
の大半は学士号の保有者(68%)で,専門的な
の標準化されたアンケートを用いて測定を行っ
経験が6年以上であった。全回答者の約65%が,
た。全 40 の質問のうち,9 つの質問に各マーケ
3 年以上,現在の雇用主の下で従事しており,
ティング活動のタイプを反映させた。構成概念
こうした経験は,所属する企業の現行の戦略を
とインディケータとを「別表− 1」に示す。
実行し,活動するに十分な経験を持つものと判
断した。
3. データ分析
以上が収集したサンプルの全般的な特性であ
本研究は,
PLS
(Partial Least Squares Regression)
るが,国際研究関連の先行研究に整合的なもの
解析(Fornell and Bookstein, 1982; Chin, 1998)
であり(例:Lindgreen et al., 2008; Coviello et
を採用したが,マーケティング分野では,これ
al., 2002)
,統計的な面では,アラブ地域を対象
まで少なからぬ研究が,構造方程式モデリング
に実施されてきた先行研究と比較可能なもので
の採用にあたってこの手法を採用してきてい
ある。
る(Henseler et al., 2009; Albers, 2010)。 PLS
を採用するメリットは 3 つあるが,これらは本
研究の目的と特徴とに一致する。1 点目は,理
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別表——1 CMP 研究に基づく構成概念とインディケータ
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/
CMP
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/
/
/
/
/
/
/
論開発を重視するモデルに推奨される技法で
1. 測定モデルの結果
あること (Vinzi et al., 2010; Chin, 2010),2
測定モデルの信頼性と妥当性について評価を
点目は,因果関係モデルが分析可能であるこ
行った。本モデルの信頼性と妥当性の検証のた
と(Henseler et al., 2009),3 点目は,PLS は,
め,合成信頼性(ρc)の値,Cronbach の α 係数,
サンプル数やサンプルの分布の正規性の条件と
平均分散抽出(AVE)および指標係数を 表− 2
いった分析についての要件が最少で済むこと,
に示す。
の 3 つである。とりわけ本研究同様,確率抽出
モデルの信頼性については,合成信頼性(ρc)
法によって収集されていないデータへの適用に
(Chin, 2010)を用いて評価したが,全ての構
適していることが指摘される(Albers, 2010)
。
成概念が 0.7 の最小値を上回っていることを示
した(Hair et al., 2006; Henseler et al., 2009)。
Ⅴ. 調査結果
Cronbach の α 係数についても,慣例として
本研究は,SmartPls のバージョン 2.0(Ringle
ρ c は,パラメータ推定値が正確であるという
et al., 2005)を用いてモデルの検証を行った。
想定の下では,α 係数 以上に構成概念につい
モデル推定は,Henseler et al.(2009)が推奨
て,より緊密な信頼性の測定である傾向が強い。
する二段階手順にしたがって実施した。最初に,
指標の信頼性については,同じ構成概念につい
構成概念とその指標との関係を検証する測定モ
ての他の質問項目の因子負荷量が大きい場合は
デルを評価し,次に,構成概念間または潜在変
0.5を上回る項目でも許容するというChin(1998,
数間の関係を示す構造モデルの検証を行った。
2010)の方針を採用して評価を行い,結果的に
合計22の項目を削除した。これらの結果により,
評価を行った。Chin(2010)の報告によれば,
モデルが信頼性基準を満たすことを示す。
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表 ——2 測定モデルの結果
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モデルの収束妥当性の評価にあたっての一
らびに全ての構成概念の共通性を示す。内生
般的な測定方法は,平均分散抽出(AVE)の
変数がどの程度まで外生変数によって説明され
値 を 評 価 す る も の で あ る(Götz et al., 2010;
るかを示唆する R2 は,0.272 ~ 0.375 の間の値
Ringle et al., 2009)
。AVE は,測定項目が構
を示している。Chin(1998)によれば,この
成概念とどれだけ分散を共有しているかを示
値は適切なレベルであると考えられ,Henseler
す。表− 2 の最終列は,提示モデルの AVE の値
et al.(2009)にしたがえば許容できる値であ
が Fornell and Larcker(1981)によって提起さ
る。Q2 は,モデルの予測能力を表わしており,
れた 0.5 のカットオフ・ポイントを超え,構成
0.127 ~ 0.192 の範囲でゼロ以上の数値を示した
概念妥当性が充たされていることが明らかであ
が,これは予測妥当性が高いことを意味する
(Henseler et al., 2009)。VIF の値は,10 を大き
る。
弁別妥当性を確認するため, 表− 3 からは,
く下回り,多重共線性がないことが明らかであ
対角線上の AVE の平方根(2 乗根)は下の全
る。最後の列に,共有性の値を示すが,各構成
ての相関よりも高いことを確認した。つまり,
概念がモデルに包含されるその他の全ての変数
各潜在的変数は,他の潜在的変数との組み合わ
と共有する分散の程度が見て取れる。全ての構
せ以上に,その指標との組み合わせにおいて
成概念は,0.5 という基準点(Hair et al., 2006)
分散が大きいことを意味している(Chin, 1998;
を上回る共有性が確認され,十分な説明力を有
Henseler et al., 2009)
。
していることが示唆される。
表− 5 に提示するのは,効果量 f 2 である。こ
2. 構造モデルの結果
の数値は,内生変数に及ぼす外生変数のイン
構造モデルの測定結果は表− 4 の通りであり,
パクトを検証するものであるが,これらの数
決定係数(R )
,Stone- Geisser の Q ,分散拡
値は全て,0 を上回っている(Henseler et al.
大要因(Variance Inflation Factor:VIF)
,な
2009)。0.02,0.15 および 0.35 の数値は,小~中
2
2
表 ——3 弁別妥当性の係数
101
JAPAN MARKETING JOURNAL Vol.34 No.1(2014)
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論文
表 ——4 構造モデルの結果
表 ——5 効果量 ( f 2 ) の結果
f2
TM
0.272
DM
0.063
TM
0.0856
DM
0.0784
IM
0.4136
NM
0.1315
DM
0.3456
IM
0.0566
NM
0.2914
程度の範囲内の効果である(Cohen, 1988)
。
Ⅵ . 本研究から得られた発見物:
図− 2 において示される実証結果は,ブート
アラブ諸国のマーケティングに見られる
ストラップ法を 5000 回繰り返し,有意となら
なかった相関関係を取り除いた後の全ての有意
多様性とマネジャーの認識枠組みとの関連性
なパスである。
研究の結果から,変数間にはある一貫性が存
在することが指摘される。まず,「政治的 FoR」
は,「TM」および「DM」というマーケティン
グ活動に対して統計的に有意な結果となってい
マーケティングジャーナル Vol.34 No.1(2014)
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マーケティング戦略にマネジャーの準拠枠は影響するか?
図 ——2 実証結果
ることが明らかである。こうした相関関係は,
こうした結果を支持してきており,官僚的な企
「政治的 FoR」を準拠枠として持つ組織は,個
業のマネジャーは,通常,組織の規則を順守
人的な情報ソースや内部データを好み,外部の
することに責任を持ち,客観的な内部の情報
情報源とは相互に関わりを持たず,こうした特
源に依存することが言われてきた。こうした
質は対人関係に依存しない「TM」および「DM」
マネジャーは「リスク回避」に走る傾向がある
の持つ特徴に合致することから説明される。す
ため,より保守的な戦略を模索することにな
なわち,政治的準拠枠も TM や DM といった
る(Miller et al., 1982)。 加えて,アラブ圏の
マーケティング活動のタイプも,顧客「との協
伝統的なマネジャーは,市場調査およびその他
働」よりもむしろ,顧客「に向けての」コミュ
のマーケティング・ツールを,不要な贅沢とし
ニケーション管理に比重を置いているため,こ
て直接の販売活動から切り離す一方で,伝統的
の政治的準拠枠とこれらのマーケティング活動
なマーケティング手法がより望ましい成果を生
とがフィットするということができる(Coviello
む,と考えていることがこれまで指摘されてき
et al., 2002)
。
ている(Souiden, 2002; Leonidou, 1991)。 正
次に注目すべき有意な相関関係は,
「官僚的
の相関関係があることが明らかになった 3 つ目
FoR」と「TM」との関係である。先行研究は
の点は,
「起業家的 FoR」とリレーションシップ・
103
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マーケティング分野に関連する DM,IM,NM
いると解釈できる。
との相関関係であり,IM への強いパスである。
この関係は,予想された関係であり,先行研究
の結果と整合的である(例えば,Pels, 2011)
。
Ⅶ . 結論
「起業家的 FoR」を持つ組織は幅広い視野を持
先行研究では,意思決定者の認識が,戦略的
ち,革新性を模索することから,公式の情報源
な意思決定において重要な役割を果たすという
に依存しない傾向がある。むしろ社内外のデー
ことが示されてきた。本稿では,マネジャーの
タから派生する非公式の情報源を優先する。こ
認知的側面に注目し,マネジャーの有する準拠
のようなマネジャーは,各顧客との長期的な関
枠とマーケティング活動の多様性との間に相関
係構築を目指すリレーションシップ・マーケ
関係が見られるかどうかを検証した。組織にお
ティングと調和を図り,顧客のニーズを深く理
ける意思決定者の知覚が戦略決定における重要
解し,競合他社よりもスピーディにより革新的
な要素であることが明らかにされながらも,こ
な商品やサービスを届けようとする傾向がある
れまでのマーケティング分野での先行研究では
(Gummesson, 2002; Grönroos, 1995)
。
上記の関係はそれほど注目されてこなかったと
最後に,本研究により,
「専門家的 FoR」と
いえる。本研究の発見物は,組織的な準拠枠と
リレーションシップ・マーケティング領域の
マーケティング活動タイプの選択とは,相互に
DM,IM,NM との相関関係についても明らか
関連し,マネジャーは,外部環境に対する自ら
になった。この結果は,専門家的準拠枠を持つ
の知覚や解釈に基づいて,マーケティング活動
マネジャーを有する組織は,モデルや,科学的
の選択を行うことを示したことにある。すなわ
な厳密性,および実証主義に基づくという点で
ち,本研究の結果からは,マーケティング上の
興味深い発見物である。こうした組織は TM を
意思決定に対して,マネジャーの知覚が関連す
優先することもあり得る(Pels, 2011)
。しかし
るということが支持されたことに本研究の意義
ながら,
「専門家的 FoR」を長期的観点から見
がある。戦略的意思決定における多様性は,彼
ると,広範な探求および多様な情報ソースの利
らの事業領域における競争的優位性を示すため
用する傾向があり,本調査結果は予測され得た
にマネジャーが使用する様々なメンタル ・ モデ
ものである。先行研究で明らかにされたのは,
ル,その表現の仕方,および競争的優位性を評
顧客やステークホルダーとよりオープンな関
価する依りどころとする情報の種類に起因する
係を構築することは,より安定性をめざす重要
という考え方が再確認されたといえる。
な戦略であり,結果として,新しい方法で価値
本研究の成果は,マーケティング活動の多様
を創り出す機会を新たに切り開くということで
性は,外部環境に対するコンティンジェントな
あ っ た(Day, 2000; Gummesson, 2002)
。専門
要因というよりはむしろ,マネジャーの様々な
家的な組織にとってこのような考えは受容でき
知覚に起因することも示唆した点にある。さら
る概念となっていることから,関係性志向を実
に,マネジャーの知覚とマーケティング活動の
行に移し,一つの戦略的な選択としようとして
選択という,2 つの変数が強く関連するという
マーケティングジャーナル Vol.34 No.1(2014)
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マーケティング戦略にマネジャーの準拠枠は影響するか?
結果から導かれることとして,次のことが主張
グ戦略を選択できることになり,したがって選
される。つまり組織の準拠枠がマネジャーの知
んだマーケティングについての意思決定プロセ
覚を通して,特定のマーケティング活動のタイ
スをより有効なものにでき,効率性の点からも
プを選ぶということにつながり,マネジャーの
メリットがでることになる。この点で,White
知覚と選ぶ活動とが強く整合的であるならば,
et al.(2003)が指摘しているのが,企業を構
マーケティング活動の成果を向上するために
築していくということは,新しい資源や技術を
は,組織内で優勢な準拠枠を反映している活動
展開することのみならず,組織として生き残る
を育成すべきだということである。
ために有効な,適切な行動を採用するためには
本研究は,いくつかの点でマーケティング研
これらのことがどのように関連しあうかについ
究に貢献できると思われる。まず,理論的観点
ての理解を必要としているということである。
から見ると,マネジャーの準拠枠とマーケティ
自社のものの見方や考え方を理解することが,
ング活動の選択との一貫性を識別することは
自社に適したマーケティング戦略パターンを選
マーケティング戦略研究におけるアプローチと
び出し,その効果を高めることになるのである。
して新規性を持つ。準拠枠という次元を現代の
2 番目に,適切な組み合わせを深く理解するこ
マーケティング活動の枠組みに加えようという
とは,同時に,マーケティング意思決定を向上
試みは,戦略策定,マーケティングが実行され
させていく基礎となる。最後に,マーケティン
る方法とその多様性が存在する理由に対しての
グ活動が組織の準拠枠にどのように適合するか
理解を深めることにつながるであろう。加えて,
をマネジャーが認識できるようになれば,彼ら
本研究では,組織の準拠枠とマーケティング活
は競合他社の活動をより明確に把握できるよう
動との間の様々な相関関係が確認され,マーケ
になり,単に他者のやり方を踏襲するのではな
ティング活動の選択は単なる技法にとどまらな
くむしろ,自らの組み合わせに適合する効果的
いことが実証された。こうした関係は,マネ
な方法で対処できるようになると思われる。
ジャーが情報を収集し,外部市場を認識する方
Ⅷ . 本研究における限界と研究の
法に関する態度やアプローチに関わるからであ
る。
将来的な展望
実務的な観点からは,次のようなインプリ
ケーションが得られる。本研究から,
企業がマー
本研究は本質的には検証型ではなく,説明的
ケティング活動と管理面との関連性に関して,
なアプローチであり,そのため限界をいくつか
組織内部の行動原理を慎重に検証し,それに応
明示しておく必要がある。最初に,本研究では
じてマーケティング活動を管理していくことが
因果関係ではなく,「関連性」について結論を
重要であると言える。言い換えれば,組織の準
導いている。2 番目に,研究の対象はアラブ地
拠枠が特定のマーケティング活動の採用にどの
域の 3 か国に限定されており,サンプル・サイ
ような影響を及ぼすかをマネジャー自身が知覚
ズが小規模であることから,研究成果および結
していれば,その組織に適合するマーケティン
論の一般化可能性という点において課題を残
105
JAPAN MARKETING JOURNAL Vol.34 No.1(2014)
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Japan Marketing Academy
論文
す。さらに本調査は,各組織内の単一の情報提
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供者にデータ収集の点で依存している。こうし
た個人は組織の準拠枠およびマーケティング活
動に対する十分な知識を持っていると確信して
いるものの,1 つの組織内で複数の回答者から
データ収集の協力を得られることがより望まし
いことは言うまでもない。
前述した限界を持ってしても,本研究が将来
当該分野の研究の発展に機会を作りだすもので
あると確信している。なぜならば,第一に,本
研究には多様な業界や製品/サービス等の提供
分野の企業が網羅されているが,同一産業内で
調査を実施するとさらなる研究の発展が期待で
きるからである。本研究の対象はアラブ市場に
限定されて実施しているが,他国や他の市場で
本研究を再現し,同時に調査結果の比較を行え
ば,本研究の発見物の有効性や適用可能性は高
まり,一般化可能性に関する洞察も得られるこ
とが期待される。
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アッラーム・アブ・ファルハ(Allam Abu Farha)
アラブ・アメリカン大学,講師
2004 年 Claremont Graduate University にて MBA
取得
2013 年 神戸大学大学院経営学研究科にて博士号(経
営学)取得。
南 知惠子
神戸大学大学院経営学研究科 教授
専門領域はリレーションシップ・マーケティング,
サービス・マネジメント
本誌編集委員
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