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独立行政法人 放射線医学総合研究所 - QST

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独立行政法人 放射線医学総合研究所 - QST
放医研レポート 2011-2
独立行政法人 放射線医学総合研究所
はじめに
放射線の人体への影響および障害の予防に関する研究は、独立行政法人放射線医学総合
研究所(放医研)の重要な社会的使命である。この使命を果たすべく、放医研では第 2 期
中期計画において、放射線防護研究センターを設置して、放射線影響の解明と、より合理
的な安全規制への反映を目指した研究を実施してきた。これまで進められてきた基礎研究
の成果は、すぐに規制や社会に反映するものではないことがあり、科学と社会との橋渡し
の役割を果たすため、放射線防護における規制科学研究という新たな研究分野に取り組ん
だ。
平成 22 年度は、放医研の第2期中期計画の最後の年度にあたり、放射線防護研究センタ
ーの研究の成果を総括し、それを国内外の専門家に評価いただき、さらに新たな中期計画
を展望することを目的で、第 5 回放射線防護研究センターシンポジウムとして「放射線防
護における規制科学研究とその展望」というタイトルで 2010 年 12 月 13 日と 14 日の 2 日
間で開催した。 シンポジウムの 1 日目は、第 1 部として「放射線防護における規制科学研
究の現状」のテーマで、原子力や放射線の安全規制に係わる行政の立場から、内閣府原子
力安全委員会や文部科学省から、規制科学研究に対する期待について講演いただいた後に、
センターの成果を紹介した。2 日目は第 2 部として「放射線防護研究の将来の展望」として、
国際機関・組織において放射線防護のそれぞれの分野で活躍されるキーパーソンを招待し
て国際的な研究の最前線の動向を紹介いただき、放医研の成果を紹介するとともに、パネ
ルディスカッションで放射線防護研究の将来について、議論していただいた。
この報文集は、第 5 回放射線防護研究センターシンポジウムでの講演の内容をまとめた
ものである。放医研の放射瀬防護研究の現状とその展開について、ご理解いただき、また
わが国の放射線防護研究の今後の方向性を見据える上に、参考になれば幸いである。
第 5 回放射線防護研究センターシンポジウム実行委員長
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
規制科学総合研究グループ
米原 英典
目 次
はじめに
米原 英典(放医研)
放射線防護における規制科学研究の現状
規制科学の役割
規制科学とは
米原 英典(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥
1
原子力行政における規制科学の役割
久住 静代(原子力安全委員会)‥‥‥
5
放射線安全規制における規制科学研究への期待
渡辺 格(文部科学省)‥‥‥‥‥‥‥
7
放射線防護における規制科学研究の成果
酒井 一夫(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
環境放射線と規制科学
宇宙線に対する防護
保田 浩志(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 14
ラドン被ばくの防護
石川 徹夫(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 20
環境防護
吉田 聡(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24
環境生物影響評価体制構築のための規制科学研究
川口 勇生(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 33
特別講演
自然放射線による被ばくと規制
下 道國(藤田保健衛生大学)‥‥‥‥ 39
放射線影響研究の規制科学
機構解明研究からの知見
根井 充(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50
こども被ばくにおける放射線影響研究
島田 義也(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 55
小児がん患者における放射線治療後の二次がん
リスクのメタ・アナリシス
土居 主尚(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 61
アーカイブ研究
三枝 新(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 66
特別講演
放射線がなければできないこと
中西 友子(東京大学)‥‥‥‥‥‥‥ 70
社会と科学の橋渡し
疫学研究と放射線防護
吉永 信治(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 74
リスクコミュニケーションの取り組み
神田 玲子(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 79
情報発信 -NORNデータベース-
岩岡 和輝(放医研)‥‥‥‥‥‥‥‥ 84
Future Perspective on Regulatory Sciences in Radiation Protection
Overview and Trend in Radiation Protection
Research in UNSCEAR and EU
Wolfgang Weiss (Bfs)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
89
Research for Low Dose Radiatiion Effects
Findings Obtained from Mechanism Studies
Mitsuru Nenoi (NIRS)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
96
Impact of Low-Dose Mechanistic Research on
Radiation Protection
Antone Brooks (Washington State Univ)‥‥‥‥
100
Research Trrend in Radiation Protection
Masami Watanabe (Kyoto Univ.) ‥‥‥‥‥‥‥‥
111
Cancer Risk among Redidents in High Background
Radiation Areas
Suminori Akiba (Kagoshima Univ.)‥‥‥‥‥‥‥‥
113
Research for protection against various exposures
Radiation Exposure at Early Stage of Life
Yoshiya Shimada (NIRS)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
121
Research for Medical Radiation in NIRS
Keiichi Akahane (NIRS)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
122
Studies for Protection against Exposure to Natural
Radiation in NIRS
Hidenori Yonehara (NIRS) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
127
Activities of WHO Radiation Programme on
Medical and Natural Exposure
Emile Deventer (WHO)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
131
Research for Protection of Environment in NIRS
Satoshi Yoshida (NIRS)‥‥‥‥‥‥‥‥…‥‥‥
136
Emphasizing the Ecosystem Concept for the
Radiological Protection of the Environment
Francois Brechignac (IRSN)‥‥‥‥‥‥‥‥‥
137
Sciences and Radiation Protection
Contribution of Basic Research to Radiation
Protection
Ohtsura Niwa (Bio Medics Ltd.)‥‥‥‥‥‥‥‥
144
Future Subjects in ICRP
Christopher Clement (ICRP)‥‥‥‥‥‥‥‥‥
146
Views from Radiation Safety Regulation
Yuji Inoue (MEXT)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
147
規制科学とは
放射線医学総合研究所 放射線防護センター
規制科学総合研究グループ
米原
英典
[email protected]
1.規制科学について
規制科学は、1972年に米国の物理学者A.M.Weinbergが論文1)の中で初めて用いたといわれ
る“regulatory science"の訳語である。米国における“regulatory science"は、1985年に米国国税
庁によって設立された非営利組織である、Institute for Regulatory Scienceが長期に亘り活動を
続けていることや、様々な研究機関で取り上げている他、南カルフォルニア大学では“regulatory
science"における博士課程を設置しているなど、一つの研究分野として確立しつつある。我が国
では「レギュラトリー・サイエンス」という用語として、医薬品や食品の分野で最初に使われた 2)。
この分野では、“regulatory"を行政に係わる「規制」という意味だけではなく、「調整」という広い意
味で捉え、「レギュラトリー・サイエンス」とは科学技術の進歩を人間との調和の上で最も望ましい
姿に調整する科学であると説明している。このように “regulatory science"という学問分野は、医
薬品や食品の分野を中心に、国際的にも確立しつつあるが、規制科学とはどのような学問かに
ついては、分野ごとに異なった捉え方をしている。最近、米国厚生省食品医薬品局(FDA)は、
「 進歩す る公衆 衛生のた め の “regulatory science” 」とい う冊子 3 ) を 発行し たが 、その 中で
“Regulatory science”を 「FDAが規制する製品の安全性、有効性、品質、性能を査定する新たな
ツール、基準、方法を開発する科学」 と定義している。
“Regulatory science”の定義は各分野で異なると考えられるが、その役割は、一般的に安全
基準の制定や,安全性を確保するための規制を含む社会の調整に資する科学的情報を提供す
るための科学であると考えられる。放射線医学総合研究所(放医研)の第2期中期計画において、
国民の放射線安全の確保に貢献し、信頼を構築することによって、国民の安心を支える役
割を果たすことを目的として、科学的合理性と社会的合理性のギャップを埋める融合領域
の総合科学として規制科学の考え方を取り入れた。
図1
規制科学研究の役割
- 1-
2.放射線防護における規制科学
現在、我が国の放射線安全行政は、ICRP勧告で示された放射線防護の基本的な理念や基
本的な防護基準に則して制定された法令に基づいて、遂行されている。ICRP勧告において
は、低線量被ばくで重要である発がんや遺伝性影響を含む確率的影響についての線量反応
関係は、しきい値なしの直線モデル(LNTモデル)を仮定して、どんなに小さい線量でも、
影響が発生するということを前提にして、リスクを管理することで防護するとしている。
そして、リスクを容認できるレベルに制限するための線量限度のレベルを示してきた。図
2は、米国研究評議会(NRC)リスク評価・リスク管理パラダイム4)を参考にして、放射線
の安全規制におけるリスク評価とリスク管理の過程とそれに及ぼす要因を示したもので
ある。この図に示すようにリスクを管理するための規制や個人が実施する防護策の実施の
意思決定に対して、社会的、経済的要因が影響する。特にこれら要因には、規制の決定に
係わるステークホルダーのリスク認知が関与していると考えられる。放射線のリスクと他
のリスクについての認知の差異が意思決定に大きな影響を及ぼすことが考えられる。
リスク評価
リスク管理
線量・反応関
法令制度の考慮
係の評価
公衆衛生
の考慮
有害性の特定
社会的
要因
リスク評価
線量評価
(特性)
リスク管理の意思決定
リスク管理
の選択肢
経済性
考慮
環境動態
政策的考慮
米国研究評議会(NRC)リスク評価・リスク管理パラダイム1983を参考に作成
図2
放射線安全規制におけるリスク評価とリスク管理
ICRP1977年勧告では、職業被ばくの線量限度の根拠として、その限度に相当するリスク
を放射線以外の職業におけるリスクレベルと比較した。これは、線量限度の規準の根拠と
して理解しやすいものであったが、ICRP1990年勧告では、産業安全の基準は世界全体で一
様でないことや全産業の平均値で個人の限度を決めることの問題、さらには多種多様の産
業に同じ線量規準の根拠を期待しているかどうかなど、様々な理由で、リスクの比較で安
全基準を示すことの限界を示した。ICRP2007年勧告でも、線量限度や線量拘束値の数値規
- 2-
準の根拠は明解に示されず、依然、規制当局や放射線防護の専門家にとって、規制対象者
に規制基準の妥当性を示すことや公衆に規制基準の安全性を示すことにより、規制の信頼
性を確保することにおいて重要な課題が残されている。
今後の放射線の安全規制において、これまで規制の対象となっていなかった自然放射線
による被ばくは、重要な課題の一つである。特に自然起源の放射性物質(NORMと呼ばれる)
の利用は、場合によっては人工放射線源よりも高い被ばく線量をともなうこともあるが、
これまでそれが放射能を含んでいることについて認識されずに利用されてきたことや、す
でに生活環境に存在するものも多いことなど、人工線源と同様の規制をかけることは難し
い。このようなNORMをどのように規制するかについての方策を検討して、今後法令やガイ
ドラインである規準以上のものについて管理することになる。しかし、すべての物質を人
工放射線源のように行政が法令に沿って管理するのは極めて難しいので、ある部分は一般
の人の自主的な管理を行うことが必要となる。そのためには、国民が、NORMとその利用に
伴うリスクについて正しい知識を持つ必要がある。規制科学研究では、NORM産業関係者、
規制当局などの専門家や一般公衆が、正しい科学的な情報を得られるようにNORMデータベ
ースを作成して公表した。この点において、規制科学研究は、行政の規制をどのように実
施して、安全を確保するか、その方策について検討することがまず重要であるが、規制規
準の条件に入らなかった物質について安全な取扱について一般の人に情報を与える必要
がある。作業者がこれらの措置された作業環境で働く場合、そしてこれらの物質を含むコ
ンシューマープロダクツを一般の人が利用する場合に、混乱しないように、作業者や一般
の人が正しいリスクを認知し、正しい放射線防護方策を実施するように、情報を配信する
必要がある。これらNORM問題例のように総合的に社会をいかに調整して安全を確立するか
を検討する幅広い科学を目指すべきであることを示している。
3.放医研での取り組み
放射線防護における規制科学研究は、このような課題を含めて安全規制にともなう様々
な問題について、既存の科学的知見を用いて解析することや、新たな研究を促進すること
によって、解決することを目指してきた。その役割を果たすために、必要とされる科学的
知見のための研究の成果を収集し、まとめてデータベース化することを実施した。また放
射線防護に関連する国際機関との間で最新の研究成果や防護方策に関する情報交換を活
発にすることにより、放射線防護の最新で重要な情報を収集し、それらを防護方策の策定
や国民が正しい認知のために役立つようにまとめることに取り組んだ。また放射線防護研
究センター内での研究と共同して、子ども被ばくのリスクに関する数理統計的解析研究、
ラドン被ばくの疫学調査研究、自然放射線源からの被ばくの実態調査や防護方策に関する
研究、環境防護における線量評価などの研究を進めた。またこれらの様々の被ばくについ
て国民が正しい科学的知見に基づいたリスク認知をするために、リスクコミュニケーショ
ンは重要なツールである。規制科学研究においてはリスクコミュニケーション方策を開発
- 3-
する研究も進めるとともに、専門家とステークホルダーの間や、それぞれの分野の専門家
の間のギャップを埋めるために、対話を通してお互いに理解を深めることを目的としたダ
イアログセミナーを開催した。
4.おわりに
放射線防護における規制科学研究として、この5年間に、放射線安全行政の喫緊の課題
について対応してきたが、今後は、将来にわたり理想の放射線防護のあり方を目指した課
題も重要であると考えられる。そのためには、より幅広い科学的知見を集めるとともに、
新たな方法論を開発しながら、規制科学を一つの学問体系として発展させる必要がある。
参考文献
1) Alvin M. Weinberg, Science and Trans Science, Minerva, Vol. 10, 209-222.1972
2)内山充、レギュラトリ-・サイエンスとは、日本リスク研究学会誌 13(2):5-10、2002
3) Department of Health and Human Services; U.S. Food and Drug, Administration Office of the
Commissioner, Advancing Regulatory Science for Public Health,2010
4)National Research Council. Risk assessment in the federal government. Managing the process.
National Academy Press, Washington, DC., 1983
Regulatory Sciences in NIRS
Hidenori Yonehara
National Institute of Radiological Sciences
A concept of “Regulatory Science” was introduced into research for radiation protection in the
second five-year plan of National Institute of Radiological Sciences (NIRS), for the purpose of
enhancement of the people’s reassurance of radiation safety by means of contribution to ensuring
confidence in radiation safety regulation. We consider the regulatory science as integrated science
which can bridge the gap between scientific principle and social rationality. In this research plan,
we collected significant and latest information by enhanced information exchanging with relevant
international organizations. These information was summarized in the database so that it can be
used for development of safety regulation and risk perception based on correct scientific
knowledge. We have provided the results of researches focused on statistical analysis of
experimental study on exposure of children, epidemiological study on natural radiation exposure,
dose evaluation study on exposure to natural radiation exposure and environmental protection.
Dialogue Seminars were held for the purpose of dialogue between experts and stakeholders.
- 4-
原子力行政における規制科学の役割
-原子力ルネサンスと放射線研究原子力安全委員会
久住 静代
[email protected]
1.
原子力ルネサンス
2009 年に、IAEA は、
「現在原子炉の運転を行っている 30 か国に加えて、43 か国が原子
炉の建設計画を、25 か国が可能性に関心を持っている。
」と報告している。国連加盟国が
192 か国であることを考えると、世界の半数以上の国が原子力の利用を推進ないし予定し
ているということになる。TMI 事故(1979 年)で米国が原子炉の建設を止め、旧ソ連邦の
チェルノブイリ事故でヨーロッパが脱原発化したころ思うと、隔世の感がある。
しかし、原子力利用の大前提は、安全の確保であり、原子力安全の確保は、放射線安全・
放射線防護である。
2.
放射線防護と原子力安全の歴史
1895 年の放射線の発見の約 40 年後、1938 年にオットー・ハーンによって核分裂が発見
され、原子力利用が始まった。その後、核兵器としての悲惨な原子力利用を経験した人類
は、1953 年のアメリカ合衆国・アイゼンハワー大統領による国連総会演説「平和のため
の核(Atoms for Peace)により、核の兵器使用を発電としての原子力平和利用に大きく政
策転換を行った。本講演では、その安全確保の歴史をたどる。
3.
放射線防護研究センターへの期待
原子力安全は、放射線安全、放射線防護である。そして、「放射線防護は、単に科学で
はなく、哲学であり倫理であり、最高の知恵である。」(Dr. Lauriston S. Taylor)
このことを踏まえて、放射線防護研究センターへの期待を述べる。
- 5-
Role of Regulatory Sciences Research in Nuclear Administration
- -Nuclear Renaissance and Radiation Protection- Shizuyo Kusumi
Nuclear Safety Commission
[email protected]
1. Nuclear renaissance
In 2009, IAEA reported “Thirty countries over the world are operating nuclear power plants for the
energy purpose, and additionally 43 countries have plans to construct nuclear power plants as well
as 25 are interested in its possibility”. It means that more than half of the UN member states (192
in total) have a plan or interest in the use of nuclear energy.
Noting that US had has no plan of construction of NPP since the TIM accident (1979) and many
EU countries adopted anti-nuclear policy after the Chernobyl accident (1979), we are welcoming a
completely different age.
However, it has no change that safety is the first prerequisite for the use of nuclear energy, and it is
well recognized that safety in this respect means radiation safety.
2. History of radiation protection and nuclear safety
In 1938, forty years after the discovery of radiation in 1895, Otto Hahn discovered nuclear fission
and the atomic age launched. After the miserable experiences of nuclear bombings, the “Atoms for
Peace” speech was given by the US President Eisenhower at the UN General Assembly in 1953
and many countries accepted it as a new nuclear policy “the peaceful use of nuclear energy”.
The history of nuclear safety will be introduced through my presentation.
3. Expectations for the Research Center for Radiation Protection
It is well recognized that nuclear safety means radiation safety or radiation protection.
Dr. Lauriston S. Taylor said that the radiation protection is “not only a matter for science. It is a
problem of philosophy, and morality, and the utmost wisdom”.
Lastly, our expectations for the research center for radiation protection will be given.
- 6-
放射線安全規制における規制科学への期待
文部科学省科学技術・学術政策局
渡辺 格
[email protected]
我が国では、原子力基本法に基づく、放射性同位元素等による放射線障害防止に関する
法律(以下、「放射線障害防止法」という。)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の
規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)を基本とし、放射性同位元素及
び放射線発生装置の利用に伴って生じる放射線障害の防止、及び原子炉の運転や核燃料物
質の使用施設等についての放射線安全規制を実施している。これらとは別に、表に示す放
射性物質の取扱いに関連する諸法令が関係省庁によって規定されている。
我が国では、国際放射線防護委員会(以下、「ICRP」という。)及び国際原子力機関
(以下、「IAEA」という。)の国際基本安全基準の放射線防護に関する考え方を尊重し、
ICRP の主勧告の考え方や IAEA の免除レベル等の放射線防護に関する技術的規準を国内
制度等に導入してきた。ここで、放射線防護に関する技術的規準を国内制度等に反映させ
るためには、「放射線障害の防止に関する技術的基準の法律」に基づき文部科学省に設置
されている放射線審議会で審議を行う必要がある。放射線審議会は、関係法令の放射線障
害の防止に関する技術的規準の斉一を図ることを目的とした諮問機関である。関係省庁の
所管する法令が制定又は改正される場合で、その内容が放射線障害の防止に関する技術的
規準を含むとき、関係行政機関の長は放射線審議会へ諮問しなければならないこととされ
ている。
放射線審議会は、専門的事項を調査する際は、放射線審議会の下に部会を設定すること
ができる。現在、放射線審議会の下に設置されている基本部会では、ICRP2007 年勧告の
国内制度等への取入れについての検討が平成 20 年 3 月から継続中である。放射線審議会
又は部会は、これまでに数々の放射線安全規制に係る事項の検討を行ってきており、
「ICRP1990 年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)(平成 10
年、放射線審議会)」、「規制免除について(平成 14 年 10 月、基本部会)」及び「放
射性固体廃棄物埋設処分及びクリアランスに係る放射線防護に関する基本的考え方につ
いて(平成 21 年 1 月、基本部会)」等が検討されてきた。これらの報告書は、以下の
URL で閲覧可能である。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/index.htm)
- 7-
表
放射線安全に関係する諸法令
所管省庁
法令の名称(略称)
人事院
人事院規則
文部科学省
放射線障害防止法、原子炉等規制法
厚生労働省
医療法、薬事法、臨床検査技師・衛生検査技師法、労働安全衛生法
農林水産省
獣医療法
経済産業省
鉱山保安法、電気事業法、原子炉等規制法
国土交通省
船員法、船舶安全法、航空法
原子力の研究、開発及び利用の推進は、エネルギー分野のみならず、研究、教育、医療、
工業など様々な分野において幅広く活用され、また、国民生活に密着していることから、
安全確保に係る規制や体制のあり方について、適宜、見直しを図ることが求められる。文
部科学省においては、原子力安全行政の透明かつ効果的、効率的な展開に資するため、放
射線防護の専門家をはじめとする有識者の方々からなる原子力安全規制等懇談会を設置
している。また、当該懇談会の下に放射線安全規制検討会及び研究炉等安全規制検討会(以
下、「安全規制検討会等」という。)を設置し、放射性同位元素又は研究炉等のそれぞれ
の放射線安全規制において問題となる事項が検討され、原子力利用や放射性同位元素等の
使用形態の多様化、又は社会環境の変化、若しくは ICRP や国際原子力機関の勧告等に対
応してきている。
これらの放射線審議会や安全規制検討会等での検討は、国内外における最新の科学的知
見及び国内状況を把握したうえで、実施することが重要である。放射線医学総合研究所で
進められてきた規制科学研究については、前述の放射線審議会や安全規制検討会等におけ
る検討で必要とする科学的情報を収集し、また、検討事項に関する研究を遂行することで
有益な成果を得ることが期待される。
今後、検討を進めるべき規制科学研究として、「放射線リスクに関する科学的知見を得
る研究」、「ラドンに起因した被ばくに関する放射線防護」及び「自然起源放射性物質(以
下、「NORM」という。)の取扱いに係る放射線防護」について、成果が期待される。
この他、放射線審議会基本部会で検討が進められている ICRP2007 年勧告の国内制度等
への取入れに関し、規制科学研究を進める必要が生じると考えられる。以下、それぞれの
規制科学研究についての課題を挙げる。
1) 放射線リスクに関する科学的知見を得る研究
以下の課題に対し、規制科学と社会をステークホルダーに理解しやすい規制に関する事
項の伝達手法の構築が必要である。
・ 規制規準の根拠を明確に示すための情報
・ Risk Informed Regulation のための情報
- 8-
・ 原子力事故、NORM の廃棄など際に、住民が正しいリスクを認知できるようなリ
スクコミュニケーション
2) ラドンに起因する被ばくに関する放射線防護
ICRP 及び IAEA 等の国際機関の、ラドンに起因する被ばくの放射線防護に動向を踏ま
えると、我が国においてもラドンに起因する被ばくから放射線業務従事者及び一般公衆を
適切に防護するための指針が必要と考えられる。ラドンは生活の中で普遍的に存在するこ
とから、そこで得られる指針は我が国の実態を反映したものであるべきである。また、そ
の指針は社会的にも合理的と認識されなければならない。我が国におけるラドンに起因す
る被ばくの実態に関する研究は、放射線医学総合研究所を中心に長期間に亘り実施されて
きた。しかしながら、防護の最適化を実施するための参考レベルの設定方法について、科
学的な知見が得られていないのが現状である。
今後、規制科学研究として、ラドンの参考レベルの最適値に関する提案や、参考レベル
を設定した場合に必要となる日本家屋におけるラドン濃度の低減方策の開発についての
研究が期待される。
3) NORM の取扱いに係る放射線防護
これまで、NORM の取扱いに係る放射線防護については、これまで放射線審議会の検
討を踏まえて、「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドラ
イン(平成 21 年 6 月、文部科学省)」の策定などで対応してきている。NORM の産業利
用が多様化されている現状において、2011 年に改訂が予定されている IAEA の国際基本
安全基準においても、規制の基準となる放射能濃度が明確に提示されるなど、NORM の
規制の重要性が国際的にも増大している。国内においては、放射線医学総合研究所では従
来から NORM に関連する調査や研究を進めている。今後、NORM データベースの充実、
被ばく実態の解明、ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイド
ラインのフォローアップ調査、海外情報収集及び国際基準策定の積極的な参加などの活動
について大いに期待する。
4) ICRP2007 年勧告の国内制度への取入れに関する事項
放射線審議会基本部会において検討が継続されている ICRP2007 年勧告の国内制度等
への取入れについて、放射線安全規制に係る研究が期待される。2011 年 1 月に取りまと
められた「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)の国内制度等への取
入れについて -第二次中間報告-(平成 23 年 1 月、基本部会)」に示した提言の中で、
胚/胎児への追加線量 1mSv を超えないための管理方策の開発、我が国における医療被ば
くの実態調査、母乳中に含まれる放射性物質に起因する乳児の被ばくの実態調査など、放
射線業務従事者及び一般公衆に対する放射線防護の高度化を目指すための研究が期待さ
れる。第二次中間報告の詳細については、放射線審議会のホームページを参照されたい。
- 9-
以上、文部科学省の放射線安全規制の観点から規制科学研究への期待を述べたが、放射
線安全規制においては新たな研究分野として、規制科学研究が、今後も成果を挙げるとと
もに、学術的にも体系化して一つの分野として根付くことを期待している。
Expectation for Research in Regulatory Science from a Viewpoint
of Radiation Safety Regulation
Itaru Watanabe
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT)
Requirements for radiation safety regulation in Japan are provided mainly in "Law
concerning Prevention form Radiation Hazards due to Radioisotopes, etc." and "Law for
Regulation of Nuclear Source Material, Nuclear Fuel Material and Nuclear Reactors" and other
regulations under jurisdiction of relevant ministries. When a ministry would establish or revise
such national law for radiation safety including a technical standard on prevention of radiation
hazards, the ministry shall consult the Radiation Council set up in the Ministry of Education,
Culture, Sports, Science and Technology (MEXT). The Radiation Council can set up the basic
committee to investigate specific issues. The basic committee has been investigated issues on
introduction of ICRP 1990 recommendations into the Japanese legal system in 1998, exemption
levels provided in the international BSS in 2002. The basic committee have been discussing items
on adoption of ICRP 2007 recommendations.
The committee for radiation safety and that for regulation of research reactors are also set up
in MEXT to investigate specific issues of the safety regulations. These committees have discussed
issues due to diversified utilization of radioisotopes and change in the social environment, or
issues on ICRP recommendations and IAEA safety standards.
Studies for “Regulatory Sciences” performed in NIRS would be expected to fulfill the role to
contribute to radiation safety in Japan by finding out significant scientific knowledge in the
research areas of low dose radiation effects, radiation protection in NORM, risk communication
and so on, and summarizing them and providing the information to the public and the regulatory
authorities.
- 10 -
放射線防護における規制科学研究の成果
(独)放射線医学総合研究所
酒井
一夫
[email protected]
1.はじめに
放射線防護では、社会的・経済的要因も考慮に入れた上で、人間と環境を護る仕組みの
構築を目指す。放射線防護研究センターでは、
(1)どのような線源からどれほどの線量を
受けているか(線量の評価)、
(2)どれほどの線量の放射線によってどのような影響がどれ
ほど現れるのか(影響の評価)について研究を進めてきた。詳細はそれぞれの項に譲るが、
概要を以下にまとめる。
放射線防護研究の枠組みと規制科学
2.線量の評価
地球上には、自然放射線レベルの高い地域が存在する。このような地域における住民の
健康影響調査は、放射線の健康リスクを検討する際の貴重な情報を提供している。このよ
うな疫学的な検討においては、線量の評価が非常に重要となる。中国と共同で進めている、
中国黄土高原におけるラドン・肺がん調査においては、ラドンとトロンの弁別測定により、
正確な線量評価に貢献している。
高い高度を飛行する航空機の中では地上よりも高いレベルの宇宙線を受ける。このよう
な宇宙線の実測に基づいた被ばく線量評価モデルの構築を進めた。これにより、航路に応
じたより正確な線量評価を実現し、航空機乗務員の被ばく管理にも貢献している。
- 11 -
3.影響の評価
放射線防護の分野での近年の重要な動きのひとつとして、環境生物における放射線の影
響評価への関心の高まりを挙げることができる。放射線防護研究センターでは、環境中の
重要生物種を選定し、これらに対する放射線の影響の解析を進めつつある。この解析にあ
たっては、放射線に応答する遺伝子の解析を含む分子レベルの手法を導入し、現象論的な
観察を越えたに検討を進めている。
胎児・小児は成人に比べて放射線感受性が高いとされるが、どのような時期にどれほど
の感受性を示すのかが放射線防護の観点からは重要である。動物実験により、発達期(胎
児、新生児、幼児、思春期、成体)による発がん感受性を調べている。その結果、臓器に
よって感受性の高い時期が異なることや、胎児の時期には感受性が低いことなどが明らか
となり、胎児・小児の防護を考える上で貴重な情報が得られつつある。
放射線の影響、特に低線量の影響を理解するためにはそのメカニズムに踏み込んだ解析
が必要である。放射線の影響を左右する要因のひとつとして、放射線によって生じた DNA
損傷を修復する機構があげられる。この DNA 修復機構に関与するタンパク因子の解析が進
み、これを欠く細胞は生存率が低く、また、突然変異率が高いことが明らかとなった。こ
の結果は、通常の状況では、修復機能がはたらく範囲では、DNA 修復機能によって突然変
異が抑えられていることを示す結果である。
4.おわりに―科学と社会の橋渡し
放射線を安全にかつ安心して利用するためには、一方では適切な規制や管理手法の確立
が、他方では一般の方の、放射線利用とそれに伴う放射線の影響に関する理解が欠かせな
い。規制科学研究には、(1)科学的エビデンスを、規制や管理における科学的根拠として
提供すること、(2)一般の理解促進のために分かりやすい形で提供すること、そして、(3)
規制におけるニーズや一般の不安・懸念を集約し、放射線防護研究の課題として提示する
ことが期待されている。いわば「科学と社会との橋渡し」と言えよう。
これまでも、国内外規制関連組織との連携や一般・専門家を対象としたダイアログセミ
ナーの開催や教材作成を通じて、この役割を果たすべく活動を進めてきた。「橋渡し」の
重要性は今後ますます大きくなるものと考えられる。なお一層の努力を続けていきたい。
- 12 -
Recent Advances of Regulatory Science in the Context of Radiation Protection
Kazuo Sakai
National Institute of Radiological Sciences
The aim of radiation protection is to establish a system to protect people and the environment
without discounting benefits from peaceful uses of ionizing radiation. The activities of the Research
Center for Radiation Protection include (1) to estimate exposed dose from various radiation sources,
and (2) to estimate effects from various types of radiation. The subjects of the research include
estimation of exposure/dose from environmental radiation, age dependency of radiation sensitivity,
effects on environmental species, and mechanisms underlying biological effects of radiation.
In regulatory science area we have been trying to contribute in establishing reasonable
radiation standards and propose means for radiation control. Also, we have disseminated scientific
evidence to promote public understanding on radiation effects.
Here, recent achievements in the area of regulatory science in regard to the development of
radiation protection.
- 13 -
宇宙線に対する防護
放医研 放射線防護研究センター
環境放射線影響研究グループ
保田浩志
[email protected]
1. はじめに
宇宙から飛来する放射線(宇宙線)の強さは高度とともに上昇し、被ばく線量のレベルは、
ジェット機内では平地の百倍近く、国際宇宙ステーション(ISS)内では千倍近くになる。
そのため、職務として上空や宇宙空間を長時間飛行する乗務員は相当の被ばくを受ける。
例えば、国際線の運航乗務員が付加的に受ける実効線量は年間 3mSv ほどになり、近年では
原子力施設や放射線医療施設等で働く放射線作業者に比べて概して高い水準にある。
この事実を踏まえ、国際放射線防護委員会(ICRP)は、1990 年勧告
1)
において、自然放
射線被ばくのうち職業被ばくとして考える必要があるものとして、
“ジェット機の運航”と
“宇宙飛行”を挙げた。この見解は 2007 年勧告 2)でも踏襲されている。
我が国でも、欧米に続き、航空機乗務員や宇宙飛行士の被ばく管理に関する指針等が策
定され、事業者による自主的な管理が行われている。本報ではその概略を紹介したい。
2. 航空機乗務員の被ばく管理
2006 年 4 月、文部科学省放射線審議会(会長[当時]:佐々木康人 放射線医学総合研究所
理事長)は「航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドライン」3)を策定、その翌月
に国(文部科学省、厚生労働省、国土交通省の担当局)から本邦航空会社に対してガイド
ラインに沿った措置を講じるよう通達がなされた。その全文を表 1 に記す。
表1. 放射線審議会が2006年4月に策定した「航空機乗務員の宇宙線
被ばく管理に関するガイドライン」3) .
① 航空機乗務員の被ばく線量管理について
航空機乗務員の被ばく線量管理については、事業者が年間5ミリシーベルトの管理目標値を設定し、
乗務員各個人の被ばく線量を抑える努力を自主的に行うことが適切であること。
その際、付加的な線量増加なども予想される太陽フレアについては、宇宙天気予報など可能な予測
手段なども利用することにより、適切な対応を図ること。
② 航空機乗務員の宇宙線による被ばく線量の評価方法について
航空機乗務員の宇宙線被ばく線量評価は、計算による評価方法で十分な精度が確保できると判断
されること。なお、必要に応じて、計算精度を評価する目的で実測を行い、計算による評価方法の精
度維持に留意すること。
③ 航空機乗務員への宇宙線被ばくに関する説明と教育について
航空機乗務員が宇宙線被ばくに関する知識を正しく理解することは、不必要な不安を払拭し、安心
して業務に専念するためにも有効な手段であり、また、自ら納得して被ばく管理を行うことができる。こ
のため、既存の職場教育プログラムの中に宇宙線被ばくに関する事項を盛り込み、必要な場合には、
産業医等による健康教育や健康相談を実施し、航空機乗務員への宇宙線被ばくに関する説明に意
を払うこと。
特に、女性の航空機乗務員に対しては、胎児への放射線影響についての教育を行い、宇宙線被ばく
についての適切な認識を持たせるべきこと。
④ 航空機乗務員の宇宙線による被ばく線量の閲覧、記録及び保存について
教育によって得られた知識を踏まえて、被ばくに関する意識を高め、より適切な自主管理を行うため
に、航空機乗務員が自らの被ばく線量を把握できるよう、各個人毎に、被ばく線量の閲覧、記録、保
存ができるような体制を構築すること。その際、個人情報の保護にも適切な配慮を行うこと。
⑤ 航空機乗務員の健康管理について
航空機乗務員の宇宙線被ばくに対しては、新たに付加的な健康診断を行う必要はないこと。
- 14 -
当該ガイドラインでは、航空機乗務員の被ばく線量管理について、年間 5 ミリシーベル
トを管理目標値として乗務員各個人の被ばくを抑える自主的な努力を事業者に求めている。
又、線量の評価方法については、計算で十分な精度が確保できること、ただし、必要に応
じて計算精度を評価する目的で実測を行うこと等の見解を示している。これは、大気圏内
の宇宙線被ばくをもたらす主な放射線源が銀河系や他の銀河から飛来する銀河宇宙線
(GCR)で、通常は GCR 粒子の成分やエネルギースペクトルが安定しているという理由によ
る。
また、ガイドラインでは、個人情報の保護に配慮しつつ、各乗務員について評価された
被ばく線量値を本人自らが知ることができるような体制の整備を促している。情報公開と
セキュリティ確保の重要性が高まっている現代社会にあって、時宜を得た指針と思われる。
ガイドラインが策定されてから 1 年後の 2007 年度より、国際線を運航する本邦航空会社
において、運航・客室乗務員約 1 万 8 千人の被ばく線量管理が開始された。その主たる作
業内容は、計算による被ばく線量の評価(アセスメント)である。その計算には、放射線
医学総合研究所が開発した“JISCARD EX”4)が用いられている。JISCARD EX は、原子力機構
が主体となって開発した粒子輸送モデル“PARMA”5)を取り入れた汎用型の航路線量計算用
プログラムで、放医研が開発した航路線量計算システム(JISCARD: Japanese Internet
System for the Calculation of Aviation Route Doses)6)の一部として、個人向けバージ
ョンが一般向けに公開されている。JISCARD EX による計算結果の一例を図 1 に示す。
実効線量率 [mSv h-1]
San
Francisco
Tokyo
Tokyo
Sydney
離陸からの経過時間 [h]
図1. JISCARD EXを用いて計算した、成田-サンフランシスコ便と成田-シドニー便を
飛行中の宇宙線線量率の推移(太陽活動極小期、巡航高度40,000ft、上昇・下降時
間はそれぞれ20分と仮定);航路により被ばく線量が大きく異なることが分かる.
被ばく管理の初年度となる 2007 年度について JISCARD EX を用いて推計された結果 7)によ
れば、本邦航空会社に勤務する運航乗務員の年間実効線量は平均で 1.68mSv、最大で 3.79mSv、
客室乗務員は平均で 2.15mSv、最大で 4.24mSv と評価され、いずれも放射線審議会が提示し
た管理目標値の 5mSv を下回った。これらの線量値は欧米の乗務員に比べて概して低いレベ
ルにあるが、その主な原因として、当該計算では 2007 年勧告 2)で提示された新しい放射線
- 15 -
加重係数を採用していること、日本の地磁気緯度が欧米より低いこと等が挙げられる。
ただし、路線によっては、欧米のコードを用いた場合に比べて線量値に相当の違い(~
30%)が見られる。特に、上空での被ばくに最も寄与する成分である中性子のうち、20MeV
を超える高エネルギー中性子の寄与については相当の不確かさがあることが指摘されてい
る。今後、航空会社の協力を得て、正しい線量値が得られているかを主要な路線で実測に
より検証し、計算コードの信頼性を更に高めていく必要がある。
また、上空での宇宙線被ばくに関わる大きな懸案として、突発的に起こる太陽フレアへ
の対応がある。巨大な太陽フレアが発生すると数時間のうちに中性子由来の被ばく線量が
大きく変化することがあるが(図 2)8)、そのような短時間の非等方的な線量変化をリアル
タイムに計算することは現時点では難しい。もし巨大な太陽フレアが発生した場合には、
宇宙線強度の変化を分単位で推定して、特定のフライトについて実際の航路・高度の推移
に関する詳細情報を取り込んだ精密な計算が必要になる。
中性子モニタの相対カウントレート [%]
10000
South Pole (南極)
1000
Inuvik (カナダ)
100
Barentsburg (ロシア)
10
Jungfraujoch (スイス)
1
6:00
7:00
8:00
9:00
2005年1月20日の時刻 [UT]
図2. 2005年1月20日の太陽フレア発生時に観測された世界各地の中性子
モニタのデータ8);立ち上がり時刻の差が10分ほどしかないこと、場所に
より強度増加のパターンが異なること等が分かる.
3. 宇宙飛行士の被ばく管理
今も約 350 キロメートルの上空を周回している国際宇宙ステーション(ISS)は、1980 年
代に米国が示した構想を基に、日本を含む 11 カ国の参加を得て 1998 年から建設が続く有
人施設である。2010 年現在、ISS には宇宙飛行士が 6 名常駐し、宇宙環境を利用した様々
な研究や実験を行っている。
ISS に滞在中の飛行士は、
宇宙線により 1 日あたり 0.4~1.0mSv、
約 6 ヶ月の滞在で 100mSv
前後の被ばくを受ける。巨大な太陽フレアが発生した時には、数 10mSv の被ばくが加わる
ことも想定されている。その実効線量レベルは、地上での自然放射線被ばく(年間約 2mSv)
に比べて顕著に高く、職業被ばくとしての管理が求められる。
ISS に搭乗する日本人宇宙飛行士の被ばく管理については、2002 年に宇宙開発事業団の
- 16 -
外部諮問委員会の報告書 9)としてとりまとめられ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発足し
てからも、その内容に沿った自主的な管理運用が引き続き行われている。
管理の柱は運用基準で、環境放射線モニタ(人工衛星に搭載された観測装置や ISS 内に
ある NASA の組織等価比例計数管のデータ等)や個人線量計(TLD と CR-39)のデータから
各飛行士の個人線量を評価し、これを基準値と比較することで安全性を判断し、必要であ
れば運用制限を行うこととしている。
基準値には、宇宙飛行士のみに適用する生涯実効線量制限値(表 2)及び組織等価線量制
限値(表 3)が定められている 9)。生涯実効線量制限値は、ICRP の線量限度(全集団と成人
のみ区分)とは異なり、性別と 4 段階の年齢範囲で区分して 8 つの基準値が与えられてい
る。これらは、確率的影響のリスクを一般の放射線業務従事者と同程度、すなわち生涯の
がん死亡のリスクが 3%程度の増加になるように決められており、その結果として、年齢が
高いほど制限値が大きくなっている。一方、組織等価線量制限値は、特定の部位(骨髄、
水晶体、皮膚及び精巣)ついて、確定的影響の発生を防止する目的で設けられている。
表2. 国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士について宇宙
航空研究開発機構(JAXA)が定めている生涯実効線量制限値9).
初めて宇宙飛行を
行った年齢
男性
(mSv)
女性
(mSv)
27~29歳
600
600
30~34歳
900
800
35~39歳
1000
900
40歳以上
1200
1100
表3. 国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士について宇宙
航空研究開発機構(JAXA)が定めている組織等価線量制限値9).
組織/臓器
1週間 (Sv)
1年間 (Sv)
生涯 (Sv)
骨髄
ー
0.5
ー
水晶体
0.5
2
5
皮膚
2
7
20
精巣
ー
1
ー
- 17 -
4. さいごに
現在、宇宙線に対する防護が必要とされているのは、航空機乗務員と宇宙飛行士という
2つの職業に限られる。その実践は事業者による自主的な被ばく管理という形をとり、航
空機乗務員については ICRP が勧告する職業人の線量限度(5 年平均で 20mSv)より低いレ
ベルの管理目標値、宇宙飛行士についてはそれより高いレベルの制限値を設けて自主的に
運用されている。将来、これらの例外的な措置を包括する放射線防護体系が築かれること
を期待し、その実現に貢献したいと考えている。
参考文献
1) ICRP: Publ.60, Annals of ICRP 21. Pergamon Press: Oxford (1991).
2) ICRP: Publ. 103, Annals of ICRP Vol.37(2/4), Pergamon Press, Oxford (2007).
3) 文部科学省: 審議会情報(放射線審議会),
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/sonota/06051009.htm (Accessed Dec.
2010)
4) 保田浩志:JISCARD EX Personal Edition ユーザーズマニュアル ver.1.0 (2008),
http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/ex/manual.pdf (Accessed April 2009)
5) T. Sato, H. Yasuda, A. Endo et al.: Radiat. Res. 170, 244-259 (2008),
http://phits.jaea.go.jp/expacs/jpn.html (Accessed Dec. 2010)
6) 保田浩志: Isotope News, Vol. 624, 9-12 (2007),
http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/index.shtml (Accessed Dec. 2010)
7) 文部科学省: 第 107 回放射線審議会総会配布資料,
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/news/siryou/rc107/20081030_02.html
(Accessed Dec. 2010)
8) Bütikofer et al.: Sci. Total Environ. 391, 177-183 (2008).
9) 有人サポート委員会:宇宙放射線被曝管理分科会報告書,宇宙開発事業団 (2002).
- 18 -
Protection against Cosmic Radiation Exposure
Hiroshi Yasuda
National Institute of Radiological Sciences
Aircraft crew and astronauts are exposed to elevated levels of cosmic-ray particles, that is,
galactic-or solar-origin particles and their secondary radiation. The average dose level of aircraft
crew is generally higher than that of radiation workers at nuclear facilities. The ICRP has thus
recommended in 1990 (Publ.60) that cosmic radiation exposure of crew involved in operation of
jet aircraft and space flight should be part of occupational exposure. This view is maintained in the
2007 recommendations (Publ. 103).
About 10 years late from the EU directive, the Radiation Council of the Japanese government
has established a guideline on April 2006 for the management of cosmic radiation exposure of
aircraft crew. The guideline requests the domestic airlines to keep the annual crew doses below
5mSv and also gives some advice and policies relating to this issue. The voluntary management by
airlines started on - 8 - the 2007 fiscal year and has continued so far. NIRS has supported this task,
particularly in regard to cosmic radiation dosimetry using an originally developed software called
“JISCARD”.
Regarding radiation exposure in space, guidelines have been issued in each country or by
each agency. For Japanese astronauts, the Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) is
voluntarily carrying out the management on the basis of the own guidelines including dose
limitation values.
- 19 -
ラドン被ばくの防護
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
環境放射線影響研究グループ
石川徹夫
[email protected]
1.はじめに
放医研において実施しているラドン研究の目的の一つは、ラドンを含む自然起源放射性
物質の規制を検討するにあたって必要なデータを提供することである。この観点から本中
期計画の期間(2006-2010 年度)中、実施してきた主な項目は下記のような内容である。
①トロンの影響を受けない測定器(ラドン・トロンを弁別できる測定器)を用いた、中
国の洞窟式住居におけるラドン調査、及び疫学データと併せた肺がんリスクの解析
②日本における高自然放射線(ラドン)地域の調査
③屋内ラドン(線量)低減に関わる検討
④建材や一般消費材に関して、放射性核種濃度や、発生するラドン・トロンの測定
⑤ラドンの線量評価に関わる研究(放射能だけでなく、粒径分布も考慮した線量評価)
紙面の都合上、全ての成果を紹介するのは困難であるので、ここでは②、③、④に関わ
るトピックとして、高ラドン濃度家屋と人工ラドン温泉源に関する研究例を紹介する。
2.高ラドン濃度家屋に関する調査
屋内ラドンに関する規制(参考レベル)が将来導入された場合、それに伴って多くの課
題が生じる。例えば、参考レベル以上の高濃度家屋が見つかった場合には、ラドン及び子
孫核種に関する詳細測定、高ラドン濃度の要因調査、低減化などが必要となる 1)。Sanada
ら 2)が発表した屋内ラドン濃度の全国調査結果によれば、屋内ラドン濃度は幾何平均 12.7
Bq/m3 で対数正規分布に近い分布をしている。対数正規分布は、高濃度側に長くテールを
引くような分布をしており、幾何平均値、あるいは算術平均値は低くとも、高濃度側にも
点々と測定値が分布している。実際に、このときの調査で測定された最高ラドン濃度は
208 Bq/m3 であった。また、より最近の屋内ラドン全国調査の結果 3)でも、同様の傾向で
あり、幾何平均 10.8 Bq/m3 の対数正規分布に近いと報告している。この文献では 100
Bq/m3 以上の家屋を 0.1%であると評価している。
しかしながら、総務省の統計 4)によると、全国には 4,900 万世帯が存在する(平成 17
年現在)。仮に 1 世帯=1 家屋であると仮定すると、0.1%であっても約 5 万程度の家屋が
100 Bq/m3 以上である計算になる。つまり確率的には、日本にも高ラドン濃度家屋が相当
- 20 -
数存在すると考えられる。そのため、参考レベルが導入された場合に備えて、参考レベル
以上の濃度の家屋に対する低減化対策をあらかじめ検討しておくことが重要である。
このような場合に備えたケーススタディとして我々は、ある高ラドン濃度家屋を調査し
た。調査結果の詳細は別報 5)にまとめてある。この家屋は、調査期間中の平均ラドン濃度
が約 300Bq/m3 であった。いくつかの測定器を持ち込んで、ラドン濃度、平衡等価ラドン
濃度、ラドン子孫核種の粒径分布を測定するとともに、これらに基づいた被ばく線量及び、
エアクリーナーの使用による線量低減効果について試算した。調査は 2 日間にわたって行
われ、1 日目は通常の生活状態で、2 日目はエアクリーナーを使用した状態で、測定が行
われた。1 日目の平均ラドン濃度は 229±15 Bq/m3、平衡等価ラドン濃度は 33.1±3.1 Bq/m3
であったのに対して、2 日目の平均ラドン濃度は 373±17 Bq/m3、平衡等価ラドン濃度は
14.4±0.7 Bq/m3 であった。2 日目にラドン濃度が上昇した理由は不明であるが、エアク
リーナーの使用によって平衡等価ラドン濃度が減少し、これに伴って被ばく線量低減の効
果もあった。粒径分布等も考慮した計算によると、通常の状態での線量率 0.92μSv/h で
あったのに対し、エアクリーナー使用時は 0.46μSv/h と半分に減少した。しかしながら、
ラドン濃度を低減することはできなかった。規制がラドン濃度に対して行われるとなると、
被ばく線量は低減しているにも関わらず、ラドン濃度は規制値(参考レベル)以上のまま
である、というケースが考えられる。このようなケースへの対応は、今後の検討課題であ
る。
3.人工ラドン温泉源に関する調査
インターネットなどで、家庭用風呂に入れて使うために人工ラドン温泉源が市販されて
いる。文部科学省では、このような一般消費財による利用者の無用な被ばく低減化等を目
的として、
「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドライン」
を策定した(平成 21 年 6 月)6)。このように、一般消費財からの被ばくに関心が高まっ
ている状況から、我々はインターネット等を通じて 5 種類の人工ラドン温泉源を入手し、
これらのガンマ線線量率や発生するラドン・トロン濃度等を測定した。詳細は既報に記述
してある 7)。
サーベイメータを用いて、サンプルから 1cm のところでガンマ線線量率を測定したと
ころ、一番高い線量率は 2.7μGy/h であった。例えば、これを枕や敷布等に入れるという
使い方をした場合には、局部的ではあるが、2.7μGy/h×8 h/日×365 日/年=約 8 mGy の
年間被ばくという計算になる(1 日 8 時間睡眠と仮定)。また、サンプルから発生するラ
ド ン ・ト ロン 濃度 を測定 し たと ころ 、 最 高でラ ドン 704±165 Bq/m3 、 ト ロン 濃度
23,709±834 Bq/m3 という非常に高い濃度が測定された。例えば、これらのサンプルを枕
に入れて使用した場合、このような高濃度のラドン・トロン(及びその子孫核種)を吸入
する可能性もあり、内部被ばくも懸念される。しかしながら、これらのサンプルを風呂水
- 21 -
に沈めて使用するという本来の方法で使用した場合の水中ラドン濃度は非常に低く、1 週
間程度水に浸けていても、水中ラドン濃度は 0.5 Bq/L 程度であった。
さらに、前述の文部科学省ガイドラインの対象となり得るかも検討した。ガイドライン
の中では、フローチャートに従って、ガイドラインの対象となるかどうかを判定するよう
になっている。例えば、モナザイトを原料とし、ウランまたはトリウムの放射能濃度が 1
Bq/g 以上、かつ数量が 8,000 Bq を超えて、身体に密着した形で使用されるものであれば、
ガイドラインの対象となる。今回用意したサンプル中の
232
Th 濃度は一番高いもので
28,143±23 Bq/kg であった。つまりこのサンプルを 300g 程度(8,000 Bq 以上)
、身体に
密着した形で使用するとガイドラインの対象となる。現在、ガイドラインは事業者の自主
規制に任せている状態であるが、今後もこのような被ばく実態の調査が必要である。
4.おわりに
ラドンに関して本中期計画で実施してきた項目の中から、2 つのトピックを紹介した。
NORM、ラドンはまさにガイドライン(規制)が策定されつつある対象であり、喫緊の
課題である。今後も規制ニーズに対応した科学的データの取得が必要であると考えられる。
引用文献
1) 日本保健物理学会:屋内ラドンの規制に対する日本保健物理学会の提言、屋内ラドン
規制対応委員会 (2005).
2) Sanada, T., Fujimoto, K., et al.: J. Environ. Radioact., 45, 129-137 (1999).
3) Suzuki, G., Yamaguchi, I., et al.: J. Radiat. Res., 51, 683-690 (2010).
4)総務省統計局ホームページ
第 2 章 人口・世帯:
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
5) Kranrod, C., Tokonami, S., et al.: Appl. Radiat. Isot., 67, 1127-1132 (2009).
6) 文部科学省:ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドラ
イン(平成 21 年 6 月 26 日)、(2009).
7) Ishikawa, T., Hosoda, M., et al.: J. Radioanal. Nucl. Chem. (in press)
- 22 -
Protection against Radon
Tetsuo Ishikawa
National Institute of Radiological Sciences
Our team has conducted studies on NORM including radon for obtaining scientific data
needed for regulatory science (regulations, guidelines, etc). Here, two topics are presented: a
dwelling with a high radon concentration in Japan and artificial radon sources.
In order to introduce regulations related to radon (reference level) in Japan, many associated
things should be discussed. For example, if a dwelling with a high radon concentration (exceeding
a reference level) is found, detailed measurements of radon (progeny) and mitigation of radon
(progeny) will be necessary. We conducted a case study for such situation; a dwelling with an
average radon concentration of about 300 Bq/m3 was investigated using several kinds of radon
(progeny) detectors.
Dose mitigation effects due to the use of air cleaner were also investigated.
Another topic to be presented will be radon/thoron released from “artificial radon sources”.
Nowadays, many types of “artificial radon sources” for home baths are sold thorough internet.
From the viewpoint of NORM guidelines, radiological characterization of these sources is
significant. We - 10 collected some samples of “artificial radon sources” and measured radionuclide concentrations,
radon/thoron released from them.
- 23 -
環
境
防
護
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
環境放射線影響研究グループ
吉田
聡
[email protected]
1.はじめに
現在の放射線防護の仕組みはヒトを対象に作られたものであり、研究もその目的のために行
われてきた。しかし、環境問題に対する関心が世界的に高まる中、放射線が環境そのもの
に与える影響を評価する必要性が指摘され、環境アセスメントの一環としてこれを実施す
る国が出始めた。国際的なコンセンサスを形成することが必要となり、多くの国際機関が
協力して合意形成のための議論を重ねて来た。こうした中、放医研では、平成 18 年度か
らの第 2 期中期計画の中に「環境生物・生態系に対する放射線の影響に関する研究」を取
り入れ、本格的な取り組みを開始した。我が国で環境防護に関する規制の議論を進めるた
めには、その科学的な根拠となりうる基礎データの蓄積が不可欠である。本報告では、国
内外の動向とともに放医研におけるこれまでの研究成果の概要を紹介する。
2.国内外の動向
国際放射線防護委員会(ICRP)は、人を守るための防護体系においては環境も十分に守
られているはずと言う立場を維持しつつも、環境問題に関する共通の枠組み作りの重要性
を認識して国際的な議論を先導している。2005 年には環境の防護に関する第 5 委員会が
新設され、2007 年に刊行された新勧告 Publication 103 には、3 ページと言う短い内容で
はあるが環境防護に関する新しい章が加わった
1)
。標準人に相当する標準動物及び植物
(Reference Animals and Plants)の概念が提唱され、2008 年には 12 種類の標準動物及
び植物の詳細とそれを用いた環境防護の枠組みについての報告書(Publication 108)が
刊行された 2)。定められた標準動物及び植物は、シカ、ラット、カモ、カエル、マス、カ
レイ類、ハチ、カニ、ミミズ、マツ、イネ科植物、褐藻類海藻である。この報告書では、
標準動物及び植物の仮定された生物学的特性に加えて、生物個体や環境媒体中の核種の濃
度(Bq/kg)から生物個体が受ける線量率(μGr/day)を算出するための線量換算係数
(Doseconversion factors)
、及び得られた線量率が影響を考慮するにあたる量であるか
を判断するための目安として誘導考慮参考レベル(Derived Consideration Reference
Levels(mGy/d))を示している。現在、標準動物及び植物への核種の移行係数を取りまと
めた報告書が準備されている。
放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は 1996 年のレポートで、各種汚染
- 24 -
源による環境生物の被ばくとその影響を論じた 3)。環境生物・生態系に対する核種の移行
と影響について取りまとめた報告書(Effects of ionizing radiation on non-human biota)
が間もなく刊行される予定である 4)。
ICRP の新勧告を受け、国際原子力機関(IAEA)では、国際基本安全基準(BSS)の改訂を
進めている。環境の放射線防護については、具体的な基準値等は示されていないが、その
重要性が文章で示されている。また、関連する安全基準(Safety Guide)と安全レポート
(Safety Report)も準備されている。IAEA のプロジェクト EMRAS (Environmental Modelling
for Radiation Safety) には環境防護に関するワーキンググループがおかれ、2 つのシナ
リオを用いて環境生物の線量評価に関するモデルの検証作業が行われた 5,6)。2009 年 2 月
に開始され EMRAS-II は、野生生物に関する移行係数や放射線の生物影響に関するデータ
ベース整備に取り組んでおり 7)、放医研を中心に我が国もその活動に貢献している。
ヨーロッパでは EC EURATOM(European Atomic Energy Community)の資金援助のもと
に、複数のプロジェクトにて、関連データベースの整備および環境リスクアセスメントと
マネージメントの手法開発が進んでいる 8)。ここで得られたデータベースは、環境防護に
関して最も充実したものとなっており、放射性核種の移行係数、線量換算係数、放射線影
響等の情報が整備されている 9)。しかし、研究やデータベースの整備が進むにつれ、線量
評価や影響評価に必要なデータの多くが欠落している事もまた明らかになってきている。
放医研では 2007 年に「放射線の環境影響を考える」と題する放射線防護研究センター
シンポジウムを開催し、国内外の動向の取りまとめと、将来展望に関する議論を行なった
10)
。現在、この議論の参加者を中心に国内の研究が進められており、例えば、環境科学技
術研究所では生態系でのバックグラウンド線量についてのデータ収集が、日本原子力研究
機構では生物線量評価のためのファントム開発及びマイクロビーム等を用いた影響評価
研究が、産業技術総合研究所では DNA マイクロアレーを用いたモデル生物のトランスクリ
プトーム解析が、京都大学では線量評価モデルの開発研究が実施されている。
一方、規制に関連する国内議論は始まったばかりである。原子力発電所等の立地指針
の改訂の検討(原子力安全委員会の指針見直し検討グループ)の中では、ヒト以外の生物
種への影響の評価が議論され、一般論としては記載される見込みである。しかし、具体的
な規制値は設定されない。また、BSS の改訂に係る議論に日本も積極的に加わっている。
3.放医研の研究
3−1.生物個体(個体群)
生物に放射線が当たると分子レベルから生態系レベルまで様々な影響が生じる可能性
がある。現在 ICRP は生物個体及び個体群に対する影響に焦点を定め、致死、罹患率、遺
伝的影響、増殖(繁殖)率等をエンドポイントとした影響評価体系を作る事を目指してい
る。放医研においても数種類の環境生物を選定し、目に見える影響を指標とした影響評価
- 25 -
試験を開始した。同時に、遺伝子発現等の解析を導入することで、細胞・分子レベルの応
答を検知し、より高感度の影響評価手法を開発することを目指している。線量評価につい
ては、放射性核種や関連元素の生物への移行と体内分布を把握するための研究を行なった。
選定した生物種の例を図1に示す。選定に当たっては、ICRP の標準動物及び植物に選定
されていること、化学物質の毒性評価試験に用いられており放射線との比較が可能である
こと、日本人になじみがあること、等を念頭に置いた。トビムシ、ミミズ、針葉樹(植物)、
メダカに関して簡単に紹介する。
図1:放医研で用いた環境生物の例とその選定基準:個別の生物種に加えて
モデル生態系を用いた影響研究も実施している。
トビムシ:体長 0.5 - 3 mm の土壌動物である。主としてキノコやカビなどの菌類を食べ
ることで、土壌有機物の分解を制御している。この中で、オオフォルソムトビムシ
(Folsomia candida)は、経済協力開発機構(OECD)等で化学物質の毒性評価試験に利用
されており、同様の手法で放射線の影響を評価すれば、放射線と他の毒性物質の影響を比
較できる可能性がある。オオフォルソムトビムシに異なる線量のガンマ線を急照射した結
果、50%致死線量(LD50)は 1360 Gy、成長率に対する 50%影響線量(ED50)は 144 Gy、繁
殖率に対する 50%影響線量(ED50)は 22 Gy であった 11)。即ち、放射線影響は、指標とす
るエンドポイントによって大きく異なり、上記の中では繁殖率が最も高感受性であること
が明らかである。
網羅的遺伝子発現解析法の high-coverage expression profiling(HiCEP)12)を用いて、
ガンマ線の急照射に応答する遺伝子を検索した 13)。その結果、ガンマ線に線量依存的に応
- 26 -
答する遺伝子を複数見出すことができた。これらは、放射線の生物影響をより高感度に判
定するための指標となる可能性がある。
ミミズ:土壌中を比較的広範囲に移動し、落ち葉や土壌に含まれる物質のうち吸収可能な
ものを体内に取り込んでいる。すなわち、ミミズは陸上生態系にとって重要な土壌を常に
毒味しており、汚染物質の蓄積や生態系の受ける影響の指標となる可能性がある。実際、
シマミミズ(Eisenia fetida)は OECD において化学物質の毒性評価試験に利用されてい
る。放医研では、このシマミミズとヤマトヒメミミズ(Enchytraeus japonensis)を研究
に利用した。
ヤマトヒメミミズは東北農業試験場で発見された体長 10-15 mm 程度のミミズである。
通常、破片分離(自切)と呼ばれる無性生殖によって増殖する。即ち、成長したミミズは
約 10 個の断片に分離し、それぞれの断片に頭部と尾部が再生して、約 2 週間で成長して
再び分離するという増殖を繰り返す。寒天培地で飼育が可能なため、放射線の影響評価試
験にも適している。ガンマ線の急照射試験を行なったところ、照射後 30 日目の個体数に
及ぼす 50%影響線量(ED50)は 20 - 25 Gy であった。種々の重粒子線の照射試験も行ない、
ガンマ線に対する重粒子線の生物学的効果比は 2 - 3 程度である事が明らかとなった。ミ
ミズに関する遺伝子発現解析研究も実施している。
ミミズへの核種の移行・蓄積に関しての情報はごく一部の元素に限られている。そこ
で、シマミミズ(Eisenia foetida)を実験室内で一定期間飼育し、ミミズ及び培地に含
まれる約 30 元素を分析した。培地からミミズへの移行係数(ミミズ中濃度/培地中濃度)
は元素によって大きく異なった。移行係数が大きい元素は、P、K、Ca、Cu、Zn、Mo、Cd
等であった。アルカリ及びアルカリ土類元素の移行係数は重い元素ほど小さく、Sr の移
行係数は 0.8 以下、Cs は 0.16 以下であった 14)。
針葉樹(植物)
:針葉樹は植物の中で放射線高感受性であり、マツは ICRP のレファレンス
動植物の一つである。放医研では、針葉樹の増殖細胞への放射線の影響を明らかにするた
めの実験系として、植物培養細胞を用いた放射線照射試験法を確立し、スギ(Cryptomeria
japonica)とカラマツ(Larix kaempferi)に対する影響を評価した。その結果、スギ培
養細胞の増殖は 0.5 Gy 以上のX線急照射で明らかに抑制された。ガンマ線の緩照射では
5.3 mGy/h 以上で増殖阻害が見られた。
スギの培養細胞について放射線照射に応答する遺伝子の解析を行った結果、3 Gy のX
線照射によって発現量が 10 倍以上となる遺伝子が複数見つかり、発現遺伝子に関する塩
基配列決定作業とホモロジー検索を進めている。また、モデル生物であるシロイヌナズナ
(Arabidopsis thaliana)の遺伝子発現と比較する事で、影響機構の解析を進めている。
樹木個体内における放射性核種及び関連元素の分布を明らかにするため、チェルノブ
- 27 -
イリ 30 km 圏内の森林で採取したマツの地上部について、部位別に
137
Cs と安定元素の分
析を行った。その結果、年輪中の 137Cs は樹皮のすぐ内側の形成層で最も高い値を示した。
枝や葉では若い部分ほど高濃度であった。最も生長が盛んな部位で濃度が高くなる状態は、
放射線の影響を評価する上で重要である。安定 Cs の分布は
137
137
Cs と非常に良く似ており、
Cs/安定 Cs 比は部位によらずほぼ一定であった。他の安定元素についても分析し、元素
毎の特徴を明らかにした 15)。
環境中の全ての生物種に対して線量評価に必要なデータをそろえる事は不可能であり、
不足する部分は何らかの手法で推定・補完する必要がある。農作物に対する移行係数のデ
ータが比較的充実している事に注目し、データの少ない樹木中の元素濃度を葉菜類中の元
素濃度から推定可能である事を示した 16)。
メダカ:多くの分野で脊椎動物のモデル動物として用いられている他、化学物質の影響評
価試験にも広く用いられている。全ゲノムが解読されており、また、胚が透明であるため、
負荷を与えた胚の成長を生きたまま外部から観察することが可能である。メダカ(Oryzias
latipes)成魚に対するX線急照射の 50%致死線量(LD50)は約 20 Gy である。放医研では
発生過程の脳に注目し、これ以下の線量での影響を検知するための手法を開発した。
器官形成期が終わった直後のメダカの胚(ステージ 28 - 30)にX線(1 - 10 Gy)を
急照射し、中脳の視覚を司る視蓋における細胞の変化を観察した。その結果、照射後 6 35 h にかけて、視蓋で起こる一過性の放射線誘発細胞死をメダカが生きたまま実体顕微
鏡下で観察できることを見出した 17,18)。この細胞死は複数の細胞が集まったクラスター様
を呈しており、線量に依存して増加した。照射後の胚は一見正常に孵化したが、10 Gy 照
射群では脳の一部や網膜の組織に明らかな異常が見られた 19)。
3−2.生態系
環境は生態系という複雑なシステムから成り立っており、ある生物が影響を受ける事
でその生物と強く関わっている他の生物が間接的に影響を受ける事がある。また、構成生
物や系の機能の一部が影響を受ける事によって、系内での物質循環が変化し、被ばく線量
その物が変わる可能性もある。しかし、生態系への影響は実験的な検証が非常に難しく、
国際的にも研究は殆どない。
モデル生態系:放医研ではこの問題にアプローチするためにモデル生態系を用いた影響評
価法の開発を進めてきた。最初に導入したのは川端マイクロコズム(水圏微生物生態系)
である。この系は、生産者としてのユーグレナ(Euglena gracilis)、消費者としてのテ
トラヒメナ(Tetrahymena thermophila)
、分解者としての大腸菌(Escherichia coli)の
3種の微生物で構成され、最初に基質としてのペプトンを必要とするがその後は光を当て
- 28 -
るだけで 1 年以上安定して維持可能である。これに放射線等の有害因子を負荷すると、
個々の生物の直接影響だけでなく、大腸菌が死滅することでそれを餌とするテトラヒメナ
も減少する等の間接効果を観察することができた 20)。これまでに、系内生物の個体数変化
の程度を定量化するための影響指数を開発し、影響指数が 50%となるときの有害因子の用
量(50%影響用量)が生態系影響評価の尺度となること示した。これにより、放射線と他
の有害因子の影響を比較する事も可能となった 21)。また、放射線等の有害因子がマイクロ
コズムに与える影響を評価するために、モデル生態系個体群動態シミュレータ(SIMCOSM)
を開発し、個体群・群集動態の数理解析が可能となった 22)。
より複雑な系として、8 種の同定されている微生物を含む多種マイクロコズム(栗原マ
イクロコズム)の利用も進めた。その結果、3 種マイクロコズムと同様に 50%影響用量を
算出することが可能となった。50%影響用量は、安定期への負荷の場合、例えば、ガンマ
線: 5600 Gy、ベンチオカーブ(除草剤): 6.7 mg/l、LAS(合成洗剤): 6.1 mg/l であ
る 23)。
細菌群集:個々の生物種を積み上げて生態系を構築するのではなく、実生態系の群衆構造
の変化を直接解析する研究も実施している。土壌には非常に多くの細菌が生息しており、
土壌細菌の変化は生態系の機能に大きな影響を及ぼす可能性がある。従来、放射線の影響
研究には細菌の単離と培養が必要であったが、実験室での培養方法が確立されている細菌
は全体の 10%に満たない。近年、培養に依存せず、細菌のゲノムや遺伝子等を直接解析で
きる手法が登場した。放医研では、細菌の 16S rRNA 遺伝子配列を標的とした変性剤濃度
勾配ゲル電気泳動法(DGGE:denaturant gradient gel electrophoresis)を用い、土壌
細菌群集に対するガンマ線の影響を評価する研究を開始した。
湛水土壌に 1 Gy/day のガンマ線を連続的に 5 - 10 日間照射した後、土壌から DNA を
抽出し、16S rDNA を増幅後、DGGE 解析を行った 24)。この結果、照射試料においてコント
ロール試料には見られないバンドが数本観察された。また、照射によって土壌溶液中の鉄
の濃度が減少することも見出された 25)。これらは、ガンマ線照射によって土壌細菌の組成
と鉄などの物質の挙動が変化した事を示しており、生態系の種の組成や機能の変化を簡便
に評価するための手法として期待される。
4.おわりに
現在、ICRP を始めとする国際機関にて今後の重要課題とされているのは、線量評価の
ための移行パラメータの高度化、線質の違いについての対応、生態系への影響評価、他の
環境有害物質との共存下での影響評価と規制の調和等である。
放医研ではこれらの国際動向を注視しつつ、平成 23 年度からの第 3 期中期計画におい
ては、より規制に近い立場での研究に重点を移し、日本の環境における放射線の影響を評
- 29 -
価するための手法(ツール)の開発を実施する予定である。すなわち、我が国における環
境移行パラメータを整備して環境生物に対する線量評価モデルを開発し、これによって得
られる線量率を、生物影響試験データの解析から導き出されるスクリーニング線量率(環
境に対して影響を与えないと仮定できる線量率)と比較するものである。欧米とは環境の
異なる我が国での影響評価を可能にする事により、日本はもとより、アジアにおける環境
防護について、科学的な根拠に基づく規制の議論が可能になると期待できる。
謝辞
ここで紹介した放医研の研究成果は以下の方々によって得られたものであり、深く感
謝致します。
石井伸昌、石川裕二、川口勇生、久保田善久、田上恵子、武田 洋、中森泰三(現横浜
国立大学)
、坂内忠明、藤森 亮、府馬正一、丸山耕一、宮本霧子、保田隆子(現東京大学)、
柳沢 啓、渡辺嘉人
引用文献
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2) ICRP: Environmental protection: the concept and use of reference animals and plants, ICRP
publication 108 (2008).
3) UNSCEAR: Sources and effects of ionizing radiation, Annex: effects of radiation on the
environment (1996).
4) UNSCEAR: 2008 Report Volume II (Effects of Ionizing Radiation on Non-human Biota) (in
press).
5) EMRAS: http://www-ns.iaea.org/projects/emras/
6) 川口勇生, 土居雅広: 保健物理, 43, 246-252 (2008).
7) EMRAS-II: http://www-ns.iaea.org/projects/emras/emras2/default.htm
8) EC プロジェクトについては http://www.ceh.ac.uk/protect/ 参照
9) 府馬正一: Radioisotopes, 55, 113-115 (2006).
10) 放医研:放射線の環境影響を考える, 第2回放射線防護研究センターシンポジウムプ
ロシーディングス, NIRS-M-212 (2008).
11) T. Nakamori, S. Yoshida, Y. Kubota, T. Ban-nai, N. Kaneko, M. Hasegawa and R. Itoh:
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Radiat. Res., 47, 295-303 (2006).
18) T. Yasuda, M. Yoshimoto, K. Maeda, A. Matsumoto, K. Maruyama and Y. Ishikawa: J. Radiat.
Res., 49, 533-540 (2008).
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21) S. Fuma, H. Takeda, Y. Takaku, S. Hisamatsu and Z. Kawabata: Bull. Environ. Contam. Toxi.,
74, 263-272 (2005).
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23) S. Fuma, N. Ishii, H. Takeda, K. Miyamoto, K. Yanagisawa, K. Doi, I. Kawaguchi, N. Tanaka,
Y. Inamori and G.G. Polikarpov: J. Environ. Radioactivity, 100, 1027-1033 (2009).
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press).
25) N. Ishii, S. Homma-Takeda, K. Tagami, S. Fuma and H. Takeda: Int. J. PIXE, 17, 161-167
(2007).
- 31 -
Research for Protection of Environment in NIRS
Satoshi Yoshida
National Institute of Radiological Sciences
Present system of radiation protection has been developed in order to protect human. On the
other hand, increasing attention has come to be focused on the protection of the environment, i.e.,
non-human biota and ecosystems, from ionizing radiation, over the last decade. Several
international organizations, such as ICRP, IAEA and UNSCEAR, organized the meetings on this
matter. The ICRP established “Committee 5” for the environmental protection in 2005, and put a
new chapter entitled “Protection of the Environment” in the ICRP recommendation in 2007.
Although a lot of efforts have also been put on the collection of available scientific data mainly
through European projects, further researches are required to get necessary parameters and to
establish suitable methods for evaluation of radiation dose and effects. In addition, there is a need
to collect scientific information in Asian countries including Japan, because of the difference in
environmental condition between Europe and Asia.
This paper summarizes progress of research activities in 5 years project starting from 2006 in
NIRS for evaluation of the radiation effects on selected terrestrial and aquatic organisms as well as
the ecosystems. Among organisms, conifers, earthworms, collembolans, algae, Medaka, etc. are
selected to study. Transfers of radionuclides and related elements from medium to organisms are
evaluated, for the estimation of possible radiation dose. Dose-effect relationships of acute gamma
radiation on the survival, growth, and reproduction of selected organisms have been studied.
Information of genomeand metagenome-wide gene expression has been collected. Studies on the
effect of chronic gamma radiation at low dose rate were started. Effects of heavy ions were also
studied. In order to evaluate ecological effects of radiation, study methods by using three-species
microcosm were established, and an index for the holistic evaluation of effects on various
ecological parameters was proposed. More complicated and practical model ecosystems were also
applied. Radiation effects on soil bacterial community were studied.
- 32 -
環境生物影響評価体制構築のための規制科学研究
1)
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター 規制科学研究グループ
2)
京都大学原子炉実験所、3)放射線医学総合研究所
勇生 1)、高橋
川口
知之 2)、内田 滋夫 3)
[email protected]
1. はじめに
放射線が与える環境生物への影響に対する国際的な関心の高まりを受けて、欧米では独
自に生物線量を評価し、スクリーニングを行えるツールが開発されているが、日本ではい
まだ体制が整っていない。従って、日本で環境生物影響評価体制を構築するための規制科
学研究として、まず、既存の欧米モデルの比較検討や日本環境への適用を行い、課題点の
抽出を行った(1-2)。検討結果及び EMRAS での生物線量評価ツール比較の結果(3)から、移
行パラメータは環境条件に依存するため、線量評価モデルを日本環境へ適用する場合には、
移行パラメータの設定方法が評価の妥当性に影響を与えることが示唆された。そこで本研
究では、まず、放医研を含む日本環境での土壌―植物間移行係数を主とした移行パラメー
タを取りまとめてデータベース化を行った。
1. 土壌-植物移行係数に関する検討
日本において測定された安定元素および自然放射性核種の移行係数と欧州原子力共同体
で構築された生物線量評価ツールである ERICA tool(4)で用いられている土壌−植物移行係
数のうち Grass&herbs と比較した結果(表 1)、ERICA で用いられている移行係数は、Sb に
ついては、環境研で測定されたカボチャの移行係数(5)が ERICA の値より高く、また、Zr
については、日本におけるデータの最小値よりも一桁程度低いことから ERICA によって
これらの元素についてスクリーニングを行う際は注意が必要であることがわかった。
今回比較した元素の内、Sb、Zr 以外ついては、一般的に保守的な値が用いられており、
スクリーニング目的で用いるのであれば妥当な値である。ただし、Cs などいくつかの元
素については、本研究において収集したデータの移行係数の最大値よりも ERICA が 1 桁以
上高い移行係数を設定しており、第 2 段階以降の現実的な評価においては、より適切な移
行係数を用いる必要があると考えられた。その際、本研究において収集したデータは平均
値や幾何平均値が混在しており、さらに、Tracer 実験や Fallout、安定元素分析が混在して
いるため、日本環境において生物線量評価を適切に実施するための移行係数を導出するに
は,オリジナルデータを十分検討することが必要である。
元素
Ag Am C Cd Ce Cl Cm Co Cs Eu H
評価結果 A ND X
A
B
B ND B
A
B
X
I Mn Nb Ni Np P Pb Po Pu Ra Ru S Sb Se Sr Tc Te Th U Zr
A
A ND A ND X
- 33 -
A ND ND B ND X
C
A
B
B ND A
B
D
A
日本で測定された Natural の TF の最大値より1桁以上高い
D
日本で測定された Natural の TF の範囲より低い
B 日本で測定された Natural の TF の最大値より高い(1桁以内) ND
C
日本で測定された Natural の TF の範囲内
X
比較できる TF 値がない
単位系が空気中濃度のため比較不可能
表1: 日本で測定された移行係数と ERICA のデフォルト値との比較
次に、日本分析センターの環境放射線データベース(6)を用い、Cs-137 について、日本
の平均的な土壌−植物移行係数を試算した。土壌中濃度は、全国の非耕作地土壌放射能濃
度を用い、植物中濃度はデータ数が多く可食部が生物全体のほとんどを占める葉菜類とし
た。試算した結果、1.1x10-3~4.0x10-3 となった。これは、作成したデータベースと比較し
て、安定元素分析の範囲内に収まったが、直接沈着の寄与の同定や土壌中における核種の
エイジング効果の定量化など、さらに詳細な検討が必要であると考えられた。
3. スクリーニング線量率の検討
次にスクリーニング線量率の検討を行った。生態リスクを評価する場合、生物に対する
毒性試験を行い線量(用量)-反応関係から影響線量(LD50 等)を推定するが、全ての生物に
対して毒性試験を行うことは不可能であるため、いくつかの種から他の種の影響を推定す
る必要がある。ERICA tool でのスクリーニング線量率の導出には、化学物質の生態リス
ク評価で用いられている方法である、種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution:
SSD)による解析が使用されている(7)。SSD は、撹乱因子に対する種の感受性が特定の分
布に収束すると仮定する。ERICA tools では、FREDERICA データベースの中の Chronic
のデータから、突然変異を除く死亡率、繁殖率、健常性への 10%影響線量率を推定し、
種の感受性分布を作成して、その 5 パーセンタイル値を 5%危険線量率(HDR5)とし、
HDR5
に不確実性を考慮して安全係数 5 で割り、1 桁目を切り捨てた値を予測無影響線量率
(PNEDR)として、スクリーニング線量率としている。今回我々は、放医研で今期取得さ
れた影響データ及び日本で取得された影響データ(文献数 107)の中から、Chronic のデ
ータ(8-20) を用いて ERICA tool と同様の手法によりスクリーニング線量率を試算し
た。
累積確率
10%影響線量率
- 34 -
●:マウス寿命短縮
■:マウス寿命短縮
◆:メダカ繁殖率
▲:メダカ繁殖率
▼:メダカ脊柱異常
○:メダカ生存率
□:コメ稔実率
◇:メダカ生存率
△:コメ生存率
▽: コメ発芽率
●:トビムシ生存率
試算した結果、HDR5 が 76.4Gy/h(C.I. 16.0-595Gy/h)となり、PNEDR は 10Gy/h と
なった。これは ERICA tool の値(HDR5:81.8, PNEDR: 10Gy/h)と比較して、近い値に
なった。しかし、ERICA tool において、スクリーニング線量率の導出に用いたデータは、
線の影響データに絞っているのに対して、今回はメダカでトリチウムのデータを用いる
などデータの質がそろっておらず、生物種も、ほ乳類、鳥類、爬虫類、両生類、無脊椎動
物、植物のデータが少ないなど、さらにデータを収集し検証が必要と考えられる。
4. 日本環境における生物線量評価
最後に、アジアの特徴的な環境として水田を想定し、線量評価を行った。生息する生物
はイネ、メダカ、ミミズ、トビムシを想定して、137Cs について線量率を計算した。保守
的な評価のため、137Cs の環境媒体中濃度は耕作地中フォールアウト核種濃度の最大値
138Bq/kg(1967 年、上越、農環研)(21)を用い、淡水中濃度は、放医研で取得された分
配係数の最小値(269L/kg)(22)を用いて、最大値を推定した(0.51Bq/L)。濃縮係数はメダカ
を除き放医研で取得されたものを用い(23-25)、メダカの濃縮係数には日本で取得された
タナゴのデータ(26)を用いた。計算には ERICA tool を用い、濃縮係数に ERICA tool の
規定値を用いた場合と比較した。
体長 体幅 体高
重量
(cm) (cm) (cm)
(g)
濃縮係数
78
線量率
ERICA tool
(Gy/h)
(規定値を用いた計算)
メダカ
3
0.5
0.6
0.5
イネ
100 14
14
140
7.34x10-4
5.97x10-3 7.44x10-3
1
5.24
2.72x10-2
3.80x10-2 4.53x10-2
(タナゴの値)
シマミミズ 10
1
ヒメミミズ 1
0.02 0.02 2.10x10-4
トビムシ
2.72x10-2
(シマミミズの値)
0.16 0.027 0.027 2.63x10-5 8.75x10-2
4.92x10-3 5.20x10-1
N/A
N/A
N/A
N/A
ヒメミミズ、トビムシについては、重量が小さく ERICA tool では計算できなかった。ま
た、どの生物も導出したスクリーニング線量率 10Gy/h を越えることはなく、ERICA tool
の値と比較しても小さかった。従って、今回の想定では、環境生物に対して影響がないと
考えられる。
- 35 -
5. 今後の課題
本研究では、日本における環境生物影響評価体制の構築を念頭に、移行パラメータの整
備、スクリーニング線量の導出を行った。また、並行して、線量換算係数の検討も行って
いる。従って次期中期に向けては、誰でも評価が行えるように、これらを統合しツール化
していく必要がある。また、移行パラメータ及び生物影響データ共に、不十分であるので
継続して収集する必要があるが、全生物種や核種について揃えることは不可能であるため、
既存のデータから換算する推定法の開発も必要と考えられる。最後に、スクリーニング線
量率については、SSD を用いたが SSD には 1)個体影響のエンドポイントに基づく、2)
種間相互作用が考慮されない、3)保護されない 5%の中にキーストーン種や絶滅危惧種な
どが入る場合の取り扱い、など手法そのものの問題点があり、今後検討が必要と考えられ
る。
引用文献
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Regulatory Science Study for Development of Framework
of Environmental Protection in Japan
Isao Kawaguchi
National Institute of Radiological Sciences
Recently, international concerns about framework for protection of non-human biota have
been increasing and European and North American countries have respectively developed
assessment frameworks and tools to evaluate the radiological impact on non-human biota. From
applying the assessment tools developed by Europe and the U.S.A. to the environment of Japan, it
was found that default parameters which are used in both tools were different from the Japanese
environment.
Therefore, we collected Japanese concentration ratio data from the literature and compared the
collected data with default values of the ERICA tool (European assessment model). We also
calculated the dose of biota in paddy field.
- 38 -
自然放射線による被曝と規制
藤田保健衛生大学
下
道 國
[email protected]
1.はじめに
自然放射線は、地球生誕当初の太古の昔から地球のどこにでも存在していて、宇宙に由
来する放射線と地球自身に起源を持つ放射線に分けられる。われわれは潜在的に、放射線
が生物の進化に正の影響があったと信じているが、日常的には無関心であるか、あるいは
その負の影響について関心を持つことが多い。この小論では自然放射線による被ばく影響
を念頭において、前半では、地上における自然放射線の種類、分布、濃度等について、そ
の中でも関心の高いラドンを特に取り上げてまとめる。後半では、自然放射線による被ば
くの実態を整理した後で、これらに対する規制の考え方や私見を述べる。
2.自然放射性核種の種類、濃度、分布
自然放射線の源は、始原放射性核種と誘導放射性核種に区分される。さらにそれらは区分
化されて、始原放射性核種は系列核種と非系列核種とに分けられる。系列核種はその始祖核
種、すなわち 232Th、235U、238U、237Np の4系列があり、それぞれαおよびβ壊変を繰り返し
て最終的には安定同位元素の鉛もしくはビスマスに行き着き、順にトリウム系列、アクチニ
ウム系列、ウラン系列、ネプチニウム系列と称されている。このうち、237Np の半減期は短い
ために、この系列核種は地球には痕跡程度しか存在しない。系列核種および主な非系列核種
を Table 1, Table 2 に示した。
Table 1 始原放射性系列核種
系列名
始祖
半減期
核種
(億年)
トリウム
232
140.5
228
ウラン
238
44.7
234
アクチニウム
235
ネプチニウム
237
Th
U
U
Np
壊 変 途 中 の 主 な 核 種
最終
核種
Th, 224Ra, 220Rn, 212Pb, 212Bi, 208Tl
U,
7.04
231
0.0214
233
226
Ra,
Pa,
U,
219
222
Rn,
Rn,
229
Th,
- 39 -
211
Pb,
213
Bi,
218
Po,
211
Bi
209
Tl
214
Bi,
214
Pb,
208
Pb
210
Pb,
210
Po
206
Pb
207
Pb
209
Bi
Table 2 主な始原放射性非系列核種
核 種
40
K
V
50
87
Rb
115
In
123
Te
La
138
142
Ce
Nd
144
147
Sm
152
Gd
Lu
176
174
Hf
187
Re
190
Pt
同位体比
0.0117 %
0.250
27.83
半減期(年)
9
1.277×10
3.9×1017
β:1.314, γ:1.461
β:0.4, γ:0.78, 1.58
4.9×1010
β:0.272
14
95.71
β:0.48
6×10
0.89
0.090
主な放射線エネルギー(MeV)
13
1.3×10
1.06×1011
16
β:0.21, γ:0.81, 1.43
11.114
23.80
7.5×10
2.1×1015
α:1.5
α:1.83
14.99
1.08×1011
α:2.2
14
0.20
2.59
1.1×10
2.2×1010
α:2.14
β:0.43, γ:0.31, 0.202, 0.089
0.16
62.60
0.014
2.0×1015
4.5×1010
6.9×1011
α:2.5
β:0.0027
α:3.854
地球の上層大気では、銀河もしくは太陽に起源を持つ極めてエネルギーの高い一次宇宙線
(プロトンやヘリウム、さらにより重い元素の核)の入射により2次宇宙線(ミューオン、
中性子など)が生成されているが、その2次宇宙線がさらに大気と反応して宇宙線誘導放射
性核種と呼ばれる多くの核種を生成し、これらは大気中や地表面近くの土壌や水中に存在す
る。これを Table 3 に示した。また、地殻中にはウランとトリウムの自発核分裂反応で生まれ
た中性子の核反応により生成された誘導放射性核種が、わずかに存在する。
Table 3 主な宇宙線誘導放射性核種
核種
3
H
Be
10
Be
14
C
7
半減期
12.33 y
53.29 d
1.6×106 y
5.73×103 y
生成率(ms)-1
3
推定量 (kg)
存
在
2.5×10
8.1×102
4.5×102
2.3×104
3.5
3.2
4.6×105
7.5×104
雨水、陸水
雨水
海底土
大気、生体、海水
22
2.609 y
7.4×105 y
0.86
1.6
1.9×10-3
1.1×103
海水
堆積土
32
Si
32
P
6.50×102y
14.26 d
1.6
8.1
8.1
4×10-4
海水、堆積土
雨水
33
25.34 d
87.51 d
3.01×105 y
2.69×102 y
6.8
14
11
56
6×10-6
4.5×10-3
1.5×104
22
Na
26
Al
P
35
S
36
Cl
39
Ar
- 40 -
雨水
雨水
岩石鉱物
大気
これらのなかで被ばくの観点から関心をもたれる核種は、ウラン、トリウム、ラジウム、
ラドン、ポロニウム、鉛、ビスマス、タリウム等の放射性同位元素をはじめ、40K、3H、7Be、
14
C、41Ar などである。なお、宇宙線による被ばくでは、2次宇宙線として生成される中性子
やミューオンなどによる影響が大きく、放射性核種自身による影響は小さい。
地表面近くの地殻中の濃度は、土 1 トン中ウラン(238U および 235U)が 1 g(1g/t = 0.01 Bq/g)
オーダーであるが、トリウムはそれよりほぼ1桁高い。自然界のすべての物質はその分布に
広がりを持つが、たとえば、ウラン鉱床等のない普通の地域のウラン最大濃度は平均濃度の
100 倍程度である。これを Fig.1 に示した 1)。これにより明らかであるが、含有量には相当の
幅があり 6 桁にも及ぶことがわかる。一般に、岩石中のウラン濃度は花崗岩で高く、玄武岩
では低い。砂岩、礫岩等の堆積岩ではその成分により広い幅が認められる。海水中のウラン
濃度は土中濃度の 1/1000 ほどであるが、その絶対量は表層土壌中の量よりも多い。河川水中
のウラン濃度は海水に比べると少し低い。またトリウムはウランと違って水溶性でないため
に、その水中濃度はウランよりも比べて2桁ほど低い。
水中
水中
土壌中(世界)
土壌中(世界)
土壌中(国内)
土壌中(国内)
岩石中(国内)
岩石中(国内)
コンクリート
コンクリート
一般金属
一般金属
アルミニウム
アルミニウム
リン鉱床(国内)
リン鉱床(国内)
マンガン鉱床(国内)
マンガン鉱床(国内)
ウラン鉱床(高品位)
ウラン鉱床(高品位)
1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00
1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04
ウラン含有量(g/g)
U-238濃度(Bq/g)
Figure 1 種々な物質中のウラン濃度
多くの飲食品中に放射性核種が認められるのは、生物も地球構成成分のひとつであること
を思えば当然のことと理解しうる。植物のなかには特定の核種を濃縮するものがあるなどそ
の濃縮形態は多様で、海藻類やきのこ類中の濃度は高いなど種によっても違いがある。
3.ラドン
ラドン(222Rn)は、主に地殻中で 226Ra から生まれる希ガスであるが、その一部が地表面
218
から大気中に散逸してきて、
Po, 214Pb, 214Bi などの子孫核種とともに空気中に浮遊している。
- 41 -
子孫核種の一部は空気中の様々のエアロゾルに付着して、
放射性エアロゾルを形成している。
建屋内には、地下室や建物の隙間から侵入し、あるいは建材から発生したラドンが子孫核種
とともに存在している。屋内外の測定の一例を Fig.2 に示した。屋内外ともその濃度は気象・
気候条件に大きく影響を受けるが、多くの場合濃度は日中に低く夜間に高いという日変動が
ラドン濃度 (Bq/m3)
25
屋内大気
屋外大気
20
15
10
5
0
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00
時間 (h)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
RI②
0
0
0
0
0
時間(h)
0
0
0
Figure 2 屋内外のラドン濃度の例、上段(a):屋内外における1日の状況、
下段(b):空調のある職場の1週間の状況(変動のない日は、土・日曜日)
- 42 -
0
見られること、風向により濃度差の見られる場合があること、気団の入れ替わりによる(季
節)変動があること、屋内の方が屋外よりも濃度が高いこと、屋内では換気の影響を強く受
けることなどは、どこでもしばしば見られる現象である。さまざまな場所における屋外の値
は 5 Bq/m3 付近を中心に2桁の範囲に分布している。先に述べたように、238U の含有量の違
いにより、陸に比べて海からのラドン発生が少ないために海洋上の濃度は低い。屋内のラド
ン濃度として、放射線医学総合研究所と日本分析センターが共同して行った全国サーベイで
は、測定数が1県で 20 軒(全国で 940 軒)未満と少ないことから、地方別にまとめられてい
る。これを住居以外のデータと共に Table 4 に示した 2)。
Table 4 わが国のラドン濃度 (単位:Bq/m3)
地方別
北海道
関東
中部
関西
中国
四国
・東北
屋内
九州・
沖縄
12.4
9.7
11.5
12.7
14.4
12.2
12.7
濃度
全国
屋内
屋外
職場環境
事務室
工場
学校
病院
算術平均値
15.5
6.1
22.7
10.1
28.4
19.3
幾何平均値
12.7
5.9
8.5
8.1
22.8
13.2
測 定 数
899
705
705
放射線医学総合研究所/日本分析センターの測定による
わが国には放射能温泉(ほとんどがラドン温泉)が多くあり、鹿児島県垂水温泉、島根県
池田温泉、鳥取県三朝温泉、兵庫県有馬温泉、岐阜県高山温泉(ローソク温泉)
、山梨県益富
温泉などが知られている。その源泉濃度は高くても数千 Bq/L 程度である。実際の湯船中の
ラドン濃度は源泉供給方式に依存するが、源泉濃度よりかなり低いことが多い。飲用に利用
されている地下水にもラドンが測定されるが、花崗岩地域の湧き水の濃度は高い。
4.空間線量率
わが国の空間線量率については、
主に 1980 年初頭までに行われた阿部史朗らによる全国サ
ーベイがよく利用されている。この線量率マップは都道府県単位で表示されている。Fig.3 に
示すのは、1990 年中ごろまでに各都道府県の衛生研究所を中心に得られたデータに基づく宇
宙線成分を除いた空気吸収線量率で、湊によりまとめられたものである 3)。表示は市町村ご
とにまとめられた数値が基本となっている。この線量率は地質をよく反映しており、総体的
には西日本に広く見られる花崗岩露出地域で高いのに対して、関東地方や北海道地方によく
見られる玄武岩質地域では低く、いわゆる「花高玄低」あるいは「西高東低」である。砂岩
や礫岩など堆積岩類露出地域ではその成分の由来に依存して、幅広い値となっている。
- 43 -
Figure 3 わが国のγ線による空間線量率マップ
二次宇宙線線量は地磁気緯度に依存するために、南北に細長いわが国では北海道では沖縄
県よりも 10%ほど高くなり、また海抜高度が上がれば高い値となる。なお、宇宙線に関して
は、本報文集の他章を参照されたい。
5.被ばく線量
日本人の平均的な年間の被ばく量は、外部被ばくが 0.76 mSv(宇宙線分が 0.3 mSv、大地
からのγ線分が 0.44 mSv で、そのうちウラン系列寄与分は 0.1 mSv、大気中ラドンからのγ
線分は 0.02 mSv 程度)
、ラドン・トロン子孫核種の吸入による被ばくが 0.56 mSv(内トロン
子孫核種分が 0.1 mSv)
、食物摂取による被ばくが 0.8 mSv で、合計 2.1 mSv である。これは、
世界平均 2.4 mSv と比べて若干低い程度であって、差はない。これらをまとめて Fig.4 に示し
た。なお、Fig.4 はラドンと表示しているが、そのほとんどは短寿命子孫核種 218Po、214Pb、214Bi
- 44 -
に由来する。その理由は、222Rn は気体であるから吸気されても呼気とともに排出されて実質
的な影響は小さいのに対して、子孫核種が吸気されると呼吸気道に沈着してそこで放射線を
出すために、呼吸気道への影響は 222Rn の 40 倍ほどと見積もられる。
自 然 放 射 線
2.1 (2.4)
光子・中性子・他
ラドン・トロン
1.5 (1.2)
食品
宇宙線
0.8 (0.3)
0.3 (0.4)
Po
他 μ、他
0.6
0.2
0.6 (1.2)
大地放射線
0.4 (0.5)
K
Th
U
0.15 0.15 0.1
Rn
0.5
Tn
0.1
Figure 4 わが国の自然放射線による被ばく線量
また、最近になって魚介類に 210Po が多く蓄積されていてことが明らかとなり 4)、日本人は
その食生活のために欧米諸国に比べてこれによる内部被ばくが大きく、0.6 mSv を超えると
見積られ、これまでに比べて 0.5 mSv ほど高くなっている。
大地からのγ線の 90%は半径 100 m、地下 20 cm 以内の寄与であり、ラドンによる被ばく
は 98%がその子孫核種によるもので、屋内での被ばくが 90%である。
6.自然放射線の規制
放射線利用では法令は整備されているが、自然放射性物質(NORM)と住居内ラドンについ
ては未整備である。これらの整備を行う際には、炉規法と障害防止法等や自然放射線との整
合に配慮するとともに、クリアランスレベルや放射性廃棄物処分管理終了後の線量等、さら
には放射線以外のリスクとのバランスにも目配りが必要である。Fig.5 には、炉規法、文部科
学省ガイドラインほかクリアランスレベル等を一覧として示した。この中に示している文部
科学省のガイドライン 5)は、
規制の必要性が議論されながら、
まだ法制化されていない NORM
に関するガイドラインである。NORM は Table 5 に示したように、放射線審議会報告書 6)では
1~10 mSv/y、1 mSv/y、10μSv/y の3区分での参考レベルが提案されている。
- 45 -
104
ウランの国際規制物質管
103
50 mg 以上
300 g
よる規制
370 Bq/g
102
8,000 Bq (~1 g)
濃
度
炉規法に
文科省によるガイドライン
1
10
(Bq/g)
1 Bq/g
100
U系列 クリアランス・レベル
10-
0.033 Bq/g 天然土壌の世界平均値
10物 量(数量) (g)
Figure 5 法規等に示されているウランの数量と濃度
Table 5 NORM の規制値の案
目安線量(mSv/y)
対象(核燃料・放射線利用を目的としたものを除く)
・ 過去に廃棄された残渣
1~10
・ 産業で生産される灰、缶石など
・ 産業利用の残渣、
・ 現在操業中の鉱山の残渣・捨石
1
・ 産業用原材料、採掘
・ 一般消費財の一部
・ 一般消費財の一部
0.01
・ 放射線利用を目的とする物質
放射線審議会専門部会報告書からの抜粋
NORM の中でもラドンは別途に扱うとされているが、わが国では複数の組織からの参考レ
ベル案を参照することができる。日本保健物理学会(2005 年)7)は住居・公共施設で 200 Bq/m3、
- 46 -
職場環境で 500 Bq/m3 を、ICRP2007 勧告 8)では参考レベルとして住居で 600 Bq/m3、職場で
1,500 Bq/m3 を示したが、
2009 年にWHO9)に倣って300 Bq/m3 および 1,000 Bq/m3 としている。
ちなみに障害防止法による作業環境のラドン濃度限度は 8,000 Bq/m3 であり、またその廃気濃
度限度は 50 Bq/m3 である。居住区域のラドンの規制で法的に強制を伴えば、それに伴う経費
の負担を行政庁が負うことが求められることが想定されるが、これに関しては納税者の理解
を得て実施方法の確立するのは相当な困難が予想される。
また、
参考レベルにとどめた場合、
一部に見られるような極端に高濃度(1,000 Bq/m3 以上)の住宅が問題となる。このような例
では何らかのより強制力のある規制が求められるかもしれない。そこで、Table 6 に示す2段
階規制レベルを提案したい。すなわち、A レベル(p mSv/y)を超えれば、その上の B レベ
ル(q mSv/y)までは注意喚起を促すための情報を提供するものの、その対処は個人の判断に
委ねるとする(Table 6 の黄ゾーン)
。これ以下は制約なしである(同、青ゾーン)
。B レベル
(q mSv/y )以上は行政府による何らかの規制の対象となるものとする(同、赤ゾーン)
。Table
6 では p に 3 を、q に 20 を与えているが、3 mSv/y は自然環境放射線による被ばくレベルの
世界平均値 2.4 mSv/y を勘案した数値であり、またラドン濃度に換算した場合に WHO 等が
それ以上では肺がんの増加が有意に認められるとしている 100 Bq/m3 に相当する。20 mSv/y
(ラドン濃度では 600 Bq/m3 に相当)は、障害防止法の職業人の線量限度 100 mSv/5 年を 1
年に割り振った数値である。ただし、B レベルについては、50 mSv/y(障害防止法での 1 年
の最大被ばく限度)や、ICRP2007 が影響は有意と認められるとしている 100 mSv/y とするな
ど、議論の余地はある。
Table 6 一般住宅におけるラドン対応レベル(私案)
レベル
赤
黄
青
対応
対 策
注意喚起
制約なし
年線量(mSv) 濃度(Bq/m3)
20 以上
600 以上
3~20
100~600
3 以下
100 以下
注:赤は線量限度の年平均値 20 mSv に対応、
黄は自然放射線レベル 2.4 mSv(WHO 提案値 100 Bq/m3)に対応
線量・濃度換算係数:DC=11nSv/(Bq h m-3)、F=0.4、T=7,000 h
ラドンを含めた NORM の規制レベルを考える上では、➀ 炉規法や障害防止法などに規制
される原子力・放射線利用に伴う規制レベルとの整合性を取ることのほかに、②人間活動や
自然災害による様々なリスクとのバランス 10)(Table 7)
、➂リスクに対する一般公衆の判断
レベル 11)(Table 8)への配慮が重要である。なお 10-5/y のリスクは概ね 0.3mSv/y に比定され
る。これらを規制の枠組みとして体系化していくときに最も重要であるのは、一般市民の放
射線に関する正しい理解、およびリスクに対する理解と相対的な冷静な判断が得られること
であり、
それへの尽力が最も求められていることをわれわれはよく認識しなければならない。
- 47 -
Table 7 さまざまなリスクとの比較
要
素
年間の死亡者数
備
考
(10 万人当り)
がん
250
自殺
24
交通事故
9.0
放射線 1 mSv/y
3
火事
1.7
自然災害
0.10
放射線 10 μSv/y
0.03
飛行機事故
0.013
落雷
0.002
LNT 仮説での期待値
LNT 仮説での期待値
注:中谷内一也「リスクのモノサシ:2004 の人口動態」を使用
Table 8 公衆のリスクの受容度
リスクレベル
-2
判
断
10 /y
継続的にこのレベルのリスクを受けることは容認できない
10-3/y
利益を受けており、防護の最適化が図られている場合には受容可能
(1~3)×10-4/y
危険な産業による死亡率
10-5/y
さらにリスクを低減するための費用を投入しようとしない
10-6/y
とるに足らないリスクとみなすことができる
放射線防護の基礎(辻本忠、草間朋子著)から
7.おわりに
この小論の前段では、自然放射線の種類、分布、濃度、特にラドンについて、概略的にま
とめて示した。後半では、自然放射線による被ばくの実態をまとめるとともに、ラドンに対
する規制への提案として、注意レベル(3 mSv/y)と規制レベル(20 mSv/y)の2レベルによ
る規制の考え方を私案として示した。また、自然放射線(NORM)を規制する上で、すでに
法の下にある原子力・放射線利用に伴う規制レベルとの整合性を取ること、人間活動や自然
災害による様々なリスクとのバランスを見ること、リスクに対する一般公衆の判断レベルを
尊重することの重要性を述べた。
引用文献
1) 日本原燃株式会社他:
「ウラン廃棄物の処分及びクリアランスに関する検討書」p.1-19
-1-23 (2006).
- 48 -
2) Sanada, Y., Oikawa, S., Kanno, N., Abukawa, J., Higuchi, H.: Proceeding of International
Symposium on Radioecology and Environmental Dosimetry, Aomori, Japan, p.438-443
(2003).
3) 湊 進:日本における地表γ線の線量率分布、地学雑誌、115, 87-95 (2006).
4) 太田智子:FB News, No.364, 1-5 (2007).
5) 文部科学省:
「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドラ
イン」平成 21 年 6 月
6) 放射線審議会基本部会:
「自然放射性物質の規制免除について」
、平成 15 年 10 月.
7) 日本保健物理学会屋内ラドン規制対応委員会:
「屋内ラドン の規制に対する日本保健
物理学会の提言」(2005).
8) ICRP; The 2007 Recommendations of the International Commission on
Radiological Protection, ICRP Publication 103, p.112 (2007).
9) WHO Handbook on Indoor Radon, Vienna, p.3 (2009).
10) 中谷内一也:
「リスクのモノサシ」
、NHK Books、p.139-140 (2006).
11) 辻本 忠、草間朋子:
「放射線の防護」第2版、p.288、日刊工業新聞社、(1995).
Exposure to Natural Radiation and Its Regulation
Michikuni Shimo
Fujita Health University, Visiting Professor
The natural radiation exists everywhere from the birth of the earth and the main component is
cosmic ray and terrestrialγray. The natural radioactive nuclides are of the uranium series, thorium
series, potassium 40 and others. The average uranium content is 1 g/t (i.e. 0.01Bq/g) order in the crust
and the content of thorium is one order higher than uranium content. In Japan the average annual
external exposure is 0.76mSv (0.3mSv from cosmic ray, 0.44mSv from terrestrial γray) and the
exposure to radon and thoron progeny is 0.56mSv, and the exposure by intake of food is 0.8mSv.
Japanese takes much sea food and therefore the exposure to Po-210 is pretty high. Japanese
government does not yet regulate the NORM and radon, and the risks of other materials and events, the
clearance level and the dose after the period for active control of radioactive waste should be
considered on the legislation.
- 49 -
機構解明研究からの知見
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
生体影響機構研究グループ
根井
充
[email protected]
1.はじめに
生体影響機構研究グループの中期計画は、放射線の生体影響のうち発がん、突然変異、
発生・分化異常の機構を解明し、規制科学に必要な科学的知見を提供すること、および低
線量放射線に対する生体応答及び情報伝達に関与する遺伝子の同定と機能解明を行い、低
線量放射線に特有なリスク修飾因子を決定することであります。本中期計画を遂行するに
当たり、4つのキーワード、すなわち発がん、突然変異、発生・分化異常および低線量放
射線に対する生体応答に対応して4つのチームを構成して研究に取り組んできました。
発がん修飾因子研究チームでは体内環境変化による非標的放射線発がんの解析を通して
低線量放射線発がんにおける間接効果の寄与に関する知見を提供すること、DNA 修復遺
伝子研究チームでは非相同末端結合(NHEJ)修復関連遺伝子の解析を通して放射線感受
性マーカーについての知見を提供すること、発生分化異常研究チームでは神経冠細胞の分
化異常の解析を通して分化異常等の閾値に関する知見を提供すること、適応応答研究チー
ムでは適応応答関連遺伝子の解析を通して低線量放射線特有のリスク修飾因子に関する
知見を提供することを目指してきました。本講演では、特に体内環境変化による非標的発
がんに関する研究、および低線量特有のリスク修飾因子について、第2期中期全般にわた
る成果として概要を紹介します。
2.体内環境変化による非標的放射線発がん
はじめに体内環境変化による非標的発がんに関する研究について説明します。標的細胞
が直接照射されなくても、細胞が位置する器官内環境変化が放射線発がんの原因になるこ
とが知られています。このいわゆる非標的放射線発がんの機構を明らかにするために、胸
腺移植の実験系を用いて解析しました。図1左側に非標的発がんを調べるための実験系を
示します。まずマウスの胸腺を摘出し、放射線を照射します。これに遺伝的に区別がつく
別系統のマウス、ここでは細胞表面マーカーの異なるマウスを用いていますが、これから
胸腺を摘出し、移植します。移植は皮下あるいは腎臓皮膜下に行います。移植後飼育して
いると、一定の割合で胸腺リンパ腫が発生します。その頻度は移植部位によって異なりま
すが、どちらの場合も大多数が donor 由来、すなわち胸腺を提供したマウスに由来するも
のでありました。すなわち放射線を照射していない胸腺細胞が、放射線照射によって引き
起こされた体内環境変化が原因で発がんすることが実証されたわけであります。この非標
- 50 -
図1
図1
非標的発がんの実験系
Host: B6 thy1.2
Donor: B6 thy1.1
非標的発がんの機構モデル
野性型マウス骨髄
移植胸腺
T cell
細胞数の減少
骨髄移植
(炎症等)
scidマウス骨髄
胸腺摘出
ROS産生
V(D)J組換え能の低下
バイスタンダー効果
DSB誘発
染色体不安定性誘発
胸腺摘出
放射線照射
がん関連遺伝子異常
胸腺移植
前リンパ腫
リンパ腫
胸腺リンパ腫の発生
的放射線発がんは scid マウスを宿主として用いた場合、皮下移植の場合は 0.2Gy、腎臓
皮膜下の場合は 0.1Gy という低い線量から有意に観察され、すなわち低線量域でも機能
するメカニズムであることがわかりました。
私たちはこれまでに、胸腺移植を介さない全身照射による放射線発がんでは、まず照射
後数週間経て活性酸素が上昇し、それに伴い DNA 二重鎖切断、染色体不安定性がバイス
タンダー効果を介して誘発され、これにより異数性や染色体構造異常を持つ前リンパ腫が
形成されてがん遺伝子の変異を経て発がんに至ることを明らかにしています。移植された
胸腺においても同様に、照射後数週間経て活性酸素の上昇、および前リンパ腫の形成が認
められました。一方、私たちは照射マウスに胸腺移植後骨髄細胞を移植すると、非標的効
果による発がんは抑制されることを明らかにし、胸腺内の細胞数の減少が非標的放射線発
がんの原因になっていることを示唆しました。以上のことから、非標的放射線発がんは図
1右側に示す通り、まず骨髄の損傷による pre-T 細胞の供給が低下して移植胸腺内の T
細胞数が減少することが引き金となり、その後全身照射と同様のプロセス(活性酸素の上
昇→DNA 二重鎖切断誘発→染色体不安定化→前リンパ腫形成→リンパ腫の発生)を経て
発生に至るというメカニズムが示唆されました。
3.放射線適応応答
次に低線量特有のリスク修飾因子について説明します。予め低線量放射線に当たることに
より、その後の中高線量放射線に対して抵抗性を獲得する生体応答を放射線適応応答と呼
びます。私たちは培養細胞における放射線誘発突然変異(HPRT 遺伝子座)を指標とした
- 51 -
実験系と、マウス胎児における放射線誘発奇形発生(四肢形成異常)と致死を指標とした
実験系を用いて解析を行いました。図2左は培養細胞における突然変異頻度を示しており、
γH2AX発現量
図2
p53+/ -
炭素イオン40 keV/μm
priming は予めの低線量(20mGy) X 線照射のみ、challenging は粒子線による本照射
(2Gy)のみ、priming+challenging は予め低線量照射した6時間後に本照射を行った場
合を表しています。本照射には炭素イオン線 20 keV/μm(黒) 、炭素イオン線 40 keV/μm
(グレー) およびネオンイオン線 150 keV/μm(白)を用いた。予め低線量照射するこ
とにより、本照射による突然変異頻度の低減(適応応答)が見られます。このメカニズム
を解析するため、炭素イオン線本照射後の DNA2本鎖切断量(γH2AX 発現量)の経時
変化を調べました(図2右)
。X は本照射のみ、▲は予め低線量 X 線照射を行った場合を
示しています。予め低線量照射することにより(放射線適応応答条件下で) DNA2本鎖
切断の消失が速いことがわかりました。即ち、効率のよい DNA2本鎖切断修復機構の活
性化が放射線適応応答に関係していることが示唆されました。一方、細胞周期とアポトー
シスは、どちらも適応応答条件下で変化していないことから、主要なメカニズムではない
ことを明らかにしました。
次にマウス胎児における放射線誘発奇形発生(四肢形成異常)と致死を指標とした実験
系について説明します。図3左は妊娠マウス(器官形成期)を X 線で本照射(3Gy)する
図3
80
p53+/+
p53+/-
Percentage of Apoptosis (%)
Cont (no siRNA)
70
Cont (siRNA)
Tead3
Cont (Sc siRNA)
60
Challenging Dose (4Gy)
0.3Gy on E11 + 4Gy on E12 (AR)
siRNA + Challenging Dose (4Gy)
siRNA + 0.3Gy on E11 + 4Gy on E12
Sc siRNA + 0.3Gy on E11 + 4Gy on E12
50
40
30
20
10
0
- 52 -
Tead3
ns
と 98.4%の胎児に四肢の異常が発生するが、予め低線量照射(0.05Gy あるいは 0.3Gy)
することにより頻度は有意に低下する(放射線適応応答)ことを示しています。これまで
の解析から、私たちはこの適応応答は、本照射による過剰な細胞死(apoptosis)が予め
の低線量照射によって低減するためであることを明らかにしています。この放射線適応応
答のメカニズムをあきらかにするため、マイクロアレイを用いて胎児組織で放射線適応応
答条件特異的に発現変動する遺伝子を探索し、数個の遺伝子を候補遺伝子として抽出しま
した。そしてこれら候補遺伝子の適応応答における機能的関連を調べるために RNA 干渉
によるノックダウンを行うことを計画し、そのために胎児マウス指趾原基細胞培養系を確
立しました。胎児マウス指趾原基細胞培養系で Tead3 および Cacna1a 等をノックダウン
し、放射線適応応答が誘導されないことを確認し、これによりこれら遺伝子の放射線適応
応答における機能的関与を明らかにしました。図3右は Tead3 遺伝子についての解析例
ですが、アポトーシスは本照射(4Gy)のみの場合(紫)に比べ、低線量照射(0.3Gy)
すること(緑)により有意に低下するが、siRNA によって Tead3 遺伝子活性を抑制して
おくことにより、適応応答は観察されなくなること(青と水色)がわかります。
4.おわりに
現在の放射線防護体系は、「放射線発がんと遺伝的影響のリスクは総線量に直線比例す
る」とする、いわゆる LNT モデルに基づいて低線量放射線のデトリメントを評価してい
ます。すなわちその影響は蓄積し、どんなに微量であっても有害とされ、しばしば科学的
真実と受け入れられて、公衆の低線量放射線に対する不安感の要因になってきました。本
研究により、放射線に対する防御(障害が抑制される)メカニズムが誘導されること、即
ち放射線影響は必ずしも加算されないことをメカニズムに基づいて示されました。今後は
応答の一般性(範囲と程度)を理解するためにメカニズム解明が必要と考えられます。一
方、放射線発がんには必ずしも DNA が標的でないメカニズムがあることがメカニズムを
もって示されました。これが細胞枯渇が主因かもしれないことから、放射線発がんの閾値
に関して重要なインパクトをもたらしたと考えられます。
本研究は、以下に示す生体影響機構研究グループメンバーにより実施されました。
辻秀雄、石井洋子、広部知久、江口(笠井)清美、菅谷公彦、村上正弘、小野田眞、小池
学、高萩真彦、森雅彦、勝部孝則、小池亜紀、中島徹夫、王冰、瀧景子、Guillaume Vares
1) G. Vares, B. Wang, K. Tanaka, A. Kakimoto, K. Eguchi-Kasai, M. Nenoi: Mutat. Res.,
in press.
2) G. Vares, B. Wang, K. Tanaka, Y. Shang, K. Taki, T. Nakajima, M. Nenoi: J. Radiat.
Res., in press.
- 53 -
Findings Obtained from Mechanism Studies
Mitsuru Nenoi
National Institute of Radiological Sciences
The purpose of Radiation Effect Mechanisms Research Group is to establish a scientific basis
for the risk assessment of low-dose radiation that can be used to refine the regulatory framework.
Several subthemes have been investigated, including “untargeted radiation carcinogenesis” and
“radioadaptive responses”. For untargeted radiation carcinogenesis, we have established a mouse
experiment system where carcinogenesis due to changes in the microenvironment could be
analyzed.
It was found that, when thymuses of unirradiated new-born mice were transplanted in
thymectomized, irradiated mice, T-cell lymphomas of transplanted thymus origin were induced
depending on the radiation dose. This untargeted radiation carcinogenesis was observed with the
doses as low as 0.1 Gy when scid mice were used as the host. For radioadaptive responses, we
identified the genes associated with the radioadaptive response of mouse fetuses. When pregnant
ICR mice are irradiated with high dose of X-rays (4 Gy) on day 12 after fertilization, only about
three living fetuses will be born per dam, and most of them will be malformed. But if the mice are
pre-exposed to low doses of X-rays on day 11, the number of living fetuses will be increased, and
the fraction of malformed fetuses will be decreased. By performing microarray analyses and RNA
interference analyses, we could identify several genes, such as Tead3 and Cacna1a, which were
functionally involved in radioadaptive response of mouse fetuses.
- 54 -
こども被ばくにおける放射線影響研究
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
発達期被ばく影響研究グループ
島田 義也、西村
臺野 和広、岡本
甘崎
まゆみ、柿沼 志津子、今岡 達彦、高畠 貴志、山 田裕、
美恵子、石田 由香、小久保 年章、三好 智子、尚 奕、
佳子、澤井
知子、平野 しのぶ、岩田 健一
[email protected]
1.世界的な胎児・こども研究の流れ
近年、こどもの健康リスクについての関心が高くなってきている。この理由は、アトピ
ーや喘息、シック症候群、きれるこどもが多くなっていることに加え、小児がんが徐々に
増えていることから、こどもたちの周りの環境になにか異変が起こっていると感じるから
である。こうした背景の中、1997 年、8 カ国環境大臣サミットにおいて、「こどもの環境
保護に関する 8 カ国環境リーダーの宣言書」が提出され、各国でこどもの問題に積極的に
取り組むことが同意された。当時は、内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)がこども
への生殖系や内分泌系に影響を与えるということが大きく取りあげられた。我が国でも、
現在、化学物質の小児への影響を把握するために、調査研究(エコチル研究)が進められ
ている。こどもは小さな大人ではなく、こどもの行動様式、生理状態、代謝などを考慮し
た新たなリスク評価体系が必要とされている。
2.増加する医療被ばく
日本は医療被ばく大国であるといわれている。2004 年の Lancet に日本の CT 保有台数は
世界一であり、日本人のがんの 3%は CT 検査によると報告され、一躍、社会的な関心を
集めることとなった[1]。医療放射線の源には、CT の他に通常のX線の一般撮影、マンモ
グラフィー、歯のパノラマ撮影、バリウム検診などの造影撮影、核医学検査などがある。
その中でも CT は一検査あたりの放射線の線量が高く(臓器吸収線量は 10-40mGy)、複
数回検査すると 100mGy を超え、発がんリスクを増加させる線量に達する。20%以上の小
児がん患者は、PET/CT 検査による被ばく線量が 100mSv を超えているという報告もある
[2] 。ちなみに、我が国の小児の CT 検査総数は、2000 年と 2005 年の調査では、114 万な
らびに 122 万件と推測されている。7 割は頭頸部である。
また、治療においても新しい放射線療法が導入されている。例えば、腫瘍の形に合わせ
て線量を集中させ、重要臓器を避ける方法として利用が拡大している強度変調放射線治療
(intensity modulated radiation therapy: IMRT)や粒子線である。IMRT においては、照射装
- 55 -
置から 2 次的な中性子線がでる。また、プロトンを中心とした粒子線はその線量分布の良
さから小児がん治療への期待が高まっている。しかし、中性子線、粒子線ともに小児への
影響を評価した報告はない。そこで、発達期被ばく影響研究グループでは、中性子線や粒
子線(放医研の炭素線治療)の小児に及ぼす影響を、マウス、ラットを用いて明らかにす
ることを目標とし、その影響をヒトで治療が普及する前に評価することにした。
3.寿命短縮と発がん
診断において正常組織が被ばくする線量はそれぞれ数 mGy から数百 mGy、治療では数
Gy である。この線量域で問題となる影響は、発がんである。そこでまず、毒性試験で標
準的に用いられている B6C3F1 マウスを用いて、発がんや寿命短縮を指標とした場合の被
ばく時の週齢依存性について過去の報告を当グループで確認し、B6C3F1 マウスでは評価
するのが難しい脳や消化管(大腸)、乳腺などの特定臓器の発がんモデルを用いて、組織
特異性についても調べた。
結果を簡単に述べると B6C3F1 を用いた寿命短縮効果は、雌雄差があり、雌の方で効
果が大きかった。また、被ばく時週齢の違いが認められた。特に、生後 1-3 週齢の幼若機
被ばくで寿命短縮が雌雄ともに最大となった。寿命短縮の原因は、発がん率の増加や潜伏
期の短縮である。B6C3F1 では、肝腫瘍の発生率が増加し、その潜伏期が短くなっていた。
小児の CT 検査の 7 割以上が頭頸部であることから、脳腫瘍の一種である髄芽細胞腫のモ
デルである Ptch1+/-マウスを用いて、発がん効果を評価した。その結果、胎児後期や新生
児期の限られた時期に放射線を被曝すると腫瘍が早く高率に誘導された[3]。また、腎細
胞がんのモデルである Eker ラットを用いた研究でも、胎児後期から新生児期が放射線発
がんの感受性の時期であることがわかった[4]。ApcMin/+マウスはヒトの家族性大腸腺腫症
のモデルで大腸がんなどの消化管腫瘍を多発する。ApcMin/+マウスにおける大腸がんの発生
も幼若期の被ばくで高率に促進される[5] 。しかし、全ての臓器が幼若にのみ感受性を示
すわけではない。ラット肺がん(WM ラット)は、新生児期(生後 1 週)が思春期や成体
期に比べ、発生リスクが少し小さいことが示された (Yamada et al., 未発表)。骨髄性白血
病の誘発効果も思春期以前の被ばくでは低いことが報告されている[6]。また、乳がんも、
幼若期では高線量被ばくによる発がんリスクが低下する。これは、幼若期の卵巣の細胞が
放射線に極めて感受性でその機能が低下する結果、乳がんのプロモーターである女性ホル
モンの分泌が抑制されるからである [7]。
粒子線(炭素線)と中性子線(1-2MeV/u)被ばく群については、現在、飼育観察中であ
る。炭素線によるがん治療において、腫瘍部位は 40-60keV/um の LET の炭素線が照射さ
れるが、腫瘍の前方にある正常組織は 13keV/um の腫瘍部位に比べ低い LET の炭素線を被
ばくする。予備的な検討では、炭素線(13keV/um)による寿命短縮効果は、γ 線のそれと
大きく変わらなかった (Kakinuma et al., 未発表)。RBE は 1.1〜1.5 以下であった。実際の
- 56 -
治療においては、炭素線の細胞殺傷効果が大きい(生物学的効果比(RBE)が 3)ので、
X 線と同じ腫瘍殺傷効果を得るには、その物理線量は 3 分の 1 でよい。従って、正常組織
の被ばくする線量も 3 分の 1 になるので、発がん(寿命短縮)の RBE を考慮しても、炭
素線治療による2次がんリスクは小さくなることを意味している。
4.発がん感受性が被ばく時週齢によって異なる理由
なぜ、小児の組織は、放射線による発がん感受性が高いのだろうか?その原因の一つは、
発達期の組織、細胞は、活発に分裂していて、傷を持ったまま生き残った細胞が急激に増
加する(クローン増殖)からであると考えられている。しかし、我々は別の理由を提案す
る。消化管の絨毛の根元にあるクリプトに存在する幹細胞は、消化管がんの標的細胞であ
る。成体期の幹細胞は低線量の被ばくによって死んでしまう(アポトーシス)が、幼若期
の幹細胞は被ばくしてもアポトーシスを起こさない [8] 。つまり、傷を持ったまま生き残
っているのである。この生き残った傷ついた幹細胞にその後新たな変異が加わることが将
来の発がんリスクを高くしている一つの原因であろう。
5.胎児期被ばく
次に胎児期被ばくを考える。妊娠中に X 線検査を受けた母親から生まれたこどもに、白
血病、固形腫瘍などの小児がんが 1.4 倍ほど多く発生したことが報告されている [9, 10] 。
しかし、その後の妊婦の医療被ばくの調査や原爆被ばく者の調査では、小児がんの増加は
認めていない。最近原爆被爆者の調査から、胎児期の被ばくによって、大人になってから
発がんリスクが増加することが報告された[11]。しかし、胎児期の被ばくの発がんリスク
は小児期の被ばくと比べて、4 分の 1 とかなり小さい。
なぜ、胎児期被ばくの発がんリスクは低いのか。胎児期では、放射線による致死感受性
が極めて高く、被ばくによって傷ついた細胞が、出生後まで持ち越されないということが
提案されている[12] 。
6.放射線の爪痕
古くから、がんの原因物質の推定に DNA の傷(痕跡:radiation signature)の存在や遺伝
子発現のパターンを利用できないかという研究が進んでいる[13]。最も研究されてきたの
は、ヒトのがんの半数に突然変異がみられる p53 癌抑制遺伝子で、タバコでできた肺がん
では、コドン 248 や 273 のG→Tの変化、かびの成分であるアフラトキシンB1でできた
肝がんではコドン 249 のG→Tの変化、紫外線でできた皮膚がんでは、複数のコドンのC
C→TTの変化が報告されている。しかし、放射線の被ばく後に発生したがんについては、
そのようなエビデンスは限られている。以前、ラドン曝露量の高い鉱山夫に発生した肺が
んにおいてコドン 249 のG→Tの変異が特徴的であるという報告があったが、追試されて
- 57 -
いない。一方、甲状腺がんには、RET 遺伝子と PTC3 遺伝子などの染色体再構成が 0.5 Gy
以上の被ばくで増えること、B-RAF の点突然変異は減少することが報告されている。しか
し、放射線被ばくとの関係はないという報告もある。
何故、放射線誘発がんで被ばくの痕跡が見つからないか?それは、がんは多段階であ
り、放射線が発がんの DNA 損傷を誘発したとしても、放射線以外の発がん要因(化学物
質や酸化ストレスなど)による損傷が多く関与し、放射線による損傷を抽出するのが難し
いためである。また、放射線に特徴的な DNA2 本鎖切断も酸化ストレスにより誘導され、
その区別がつかないことも考えられる。
そこで、放射線誘発がんにおいて放射線の痕跡をさがすには、(1)放射線以外に他の発が
ん要因が関与しない系であること、(2)放射線で高率に誘発される系であること(放射線の
寄与率が高いこと)、(3)なるべく発がんの段階の少ない(潜伏期の短い)系であること、
(4)標的遺伝子が絞られている発がん系を用いると可能性が高くなると考えられる。
その様な系として、マウスの胸腺リンパ種、ApcMin/+マウスの消化管腫瘍、Ptch1+/-マウ
スの髄芽腫が着目され、放射線誘発がんの特徴が検討されている。結論的には放射線腫瘍
のゲノム変異の特徴として、この 3 種の腫瘍において標的がん抑制遺伝子領域の短い介在
欠失が共通して観察された[ 3, 14-16]。Ptch1+/-マウスの髄芽腫の場合、この介在欠失はお
どろいたことに 50mGy で誘発された腫瘍にも見つかった[3]。これらの腫瘍には、ともに
幼若期の被ばくで高率に誘発され、放射線が痕跡を作るには、標的細胞の増殖、分化段階
が重要であることを示唆している。
今後は、粒子線や中性子線で誘発した種々の腫瘍のゲノム解析を進めることによって、
線質とゲノム損傷の特徴が明らかにしたい。また、幼若期と成体期で放射線発がんのメカ
ニズムが同じなのか、異なるのかをまず発生した腫瘍のゲノム変異の比較から始める予定
である。
7.データ、標本のアーカイブ化
本研究で蓄積したデータやサンプルは、アーカイブとして公開し、より多くの研究者に
利用してもらう準備をしている。このような動物実験は、動物愛護に視点から次第に行い
にくくなっている。従って、蓄積したデータの再解析やサンプルの利用などを促進するこ
とで、より効率的に情報が蓄積すると考えられる。現在、EU の放射線影響研究である
MELODI プログラムのアーカイブとの乗り入れを協議中である。
文献
[1] A. Berrington de Gonzalez and S. Darby Risk of cancer from diagnostic X- rays: estimates for
the UK and 14 other countries, Lancet 363 (2004) 345-351.
[2] S.C. Chawla, N. et al. Estimated cumulative radiation dose from PET/CT in children with
malignancies: a 5-year retrospective review, Pediatr Radiol 40 681-686.
- 58 -
[3] Y. Ishida, et al. Genomic and gene expression signatures of radiation in medulloblastomas after
low-dose irradiation in Ptch1 heterozygous mice, Carcinogenesis 31 1694-1701.
[4] T. Kokubo, et al. Age dependence of radiation-induced renal cell carcinomas in an Eker rat
model, Cancer Sci 101 616-623.
[5] M. Okamoto and H. Yonekawa Intestinal tumorigenesis in Min mice is enhanced by
X-irradiation in an age-dependent manner, J Radiat Res (Tokyo) 46 (2005) 83-91.
[6] A.C. Upton, et al. Influence of age at time of irradiation on induction of leukemia and ovarian
tumors in RF mice, Proc Soc Exp Biol Med 104 (1960) 769-772.
[7] T. Imaoka et al. Pre-and postpubertal irradiation induces mammary cancers with distinct
expression of hormone receptors, ErbB ligands,and developmental genes in rats, Mol Carcinog
(2011) in press
[8] T. Miyoshi-Imamura, et al.
Unique characteristics of radiation-induced apoptosis in the
postnatally developing small intestine and colon of mice, Radiat Res 173 310-318.
[9] A. Stewart, et al. A survey of childhood malignancies, Br Med J 1 (1958) 1495-1508.
[10] R.H. Mole Childhood cancer after prenatal exposure to diagnostic X-ray examinations in
Britain, Br J Cancer 62 (1990) 152-168.
[11] D.L. Preston, et al. Solid cancer incidence in atomic bomb survivors exposed in utero or as
young children, J Natl Cancer Inst 100 (2008) 428-436.
[12] K. Ohtaki, et al. Human fetuses do not register chromosome damage inflicted by radiation
exposure in lymphoid precursor cells except for a small but significant effect at low doses, Radiat
Res 161 (2004) 373-379.
[13] C.C. Harris p53 tumor suppressor gene: at the crossroads of molecular carcinogenesis,
molecular epidemiology, and cancer risk assessment, Environ Health Perspect 104 Suppl 3
(1996) 435-439.
[14] Y. Shimada, et al. Radiation-associated loss of heterozygosity at the Znfn1a1 (Ikaros) locus on
chromosome 11 in murine thymic lymphomas, Radiat Res 154 (2000) 293-300.
[15] J. Haines, R. et al. Loss of heterozygosity in spontaneous and X-ray-induced intestinal tumors
arising in F1 hybrid min mice: evidence for sequential loss of APC(+) and Dpc4 in tumor
development, Genes Chromosomes Cancer 28 (2000) 387-394.
[16] S. Kakinuma, et al. Spectrum of Znfn1a1 (Ikaros) inactivation and its association with loss of
heterozygosity in radiogenic T-cell lymphomas in susceptible B6C3F1 mice, Radiat Res 157
(2002) 331-340.
.
- 59 -
Radiation Exposure at Early Stage of Life
Yoshiya Shimada
National Institute of Radiological Sciences
[email protected]
Given both the established vulnerability of children to ionizing radiation and a progressive increase
in the use of medical radiation, understanding the relationship between children’s health outcome
and radiation exposure is critical for our children’s wellbeing. These conditions have forced the
radiation-regulatory bodies to draft global initiatives on radiation protection for children. In order to
obtain the parameters of radiation protection for children, we have studied, using several animal
carcinogenesis models, the age dependence of effect of gamma rays, X-rays, neutrons, heavy ions
and uranium on cancer induction and lifespan shortening. Final goals of our research are to propose
relative biological effectiveness (RBE) of neutrons and heavy ions for fetuses and children for
radiation protection and to clarify the underlying mechanisms of cancer induction after childhood
exposure to radiations.
- 60 -
小児がん患者における放射線治療後の
二次がん発症リスクのメタ・アナリシス
1)
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
2)
自治医科大学 情報センター
1)
2)
土居主尚 、三重野牧子 、島田義也
1)
1)
、米原英典 、吉永信治
1)
[email protected]
1. はじめに
メタ・アナリシスとは、過去に行われた複数の独立な研究結果を併合するための統計解
析であり、個々の研究の精度を考慮して一つの推定値を得ることができる。近年注目され
ている根拠に基づいた医療(EBM)において、ランダム化比較試験のメタ・アナリシス
は最もエビデンスレベルが高いものとして位置付けられている。
メタ・アナリシスはランダム化比較試験だけでなく観察研究である疫学研究に対しても
行われるが、個々の観察研究はバイアスを受け易く、適用の際には注意が必要である。し
かしながら、しばしば研究規模が小さく、明確なエビデンスが得られない場合の解決手段
として有効である。放射線疫学の分野で有名なメタ・アナリシスの適用例として、屋内ラ
ドンと肺がんの症例・対照研究が挙げられる。メタ・アナリシスに含まれる欧州の 13 の
研究は、個々の研究では有意な結果は得られなかった。メタ・アナリシスにより併合した
結果、有意なリスク増加が見られ(8.4% per 100Bq、95% CI: 3.0-15.8)
、これはメタ・
アナリシスによって精密な推定値が得られ、信頼区間の幅が狭くなったものと解釈される。
このメタ・アナリシスによって小児期被ばくによりリスク評価を行った。
近年、小児がん患者の生存率は治療法の進歩と共に向上しているが、二次がんリスクは
治療後数十年に渡り上昇することが示唆されている。小児は成人と比べ、放射線感受性が
高いにも関わらず、二次がんリスクと線量関係の研究は多くない。そこで、メタ・アナリ
シスによる評価を行った。併合する指標として、ERR(excess relative risk) per Gy を
選択してメタ・アナリシスを実施したところ、研究数は 9 つしか併合可能ではなく、詳細
なリスクの検討を行うことができなかった 1)。そこで、ERR 以外の指標から ERR を算出
する方法を開発し、統合可能な研究数を増加させ、再度メタ・アナリシスを行った。
2. 対象・方法
メタ・アナリシスの文献検索は、PubMed データベースを用いたキーワード検索を行っ
た。MeSH キーワードとして‘Neoplasm, Secondary Primary’と‘Radiotherapy’を用い、
さらに通常のキーワード検索として‘paediatric/pediatric’ or ‘childhood’を用いた。研究の
- 61 -
選択基準はコホート研究もしくは症例・対照研究であること、そして ERR が掲載されて
いるか計算可能であることである。ERR が掲載されていない研究では、回帰モデルに基
づく方法にて ERR の推定が可能なものを、計算可能とした。解析方法は、変量効果モデ
ルにより併合推定値を求めた。またメタ回帰により、ERR の被ばく時年齢依存性を推定
し、さらに研究デザイン(コホート / 症例・対照研究)、地域(欧州 / 北米)、二次がん
の部位ごとの併合推定値を求めた。
3. 結果・考察
文献検索の流れ図を図 1 に示す。
図 1. 文献検索の流れ図
PubMed のキーワード検索の結果、198 件の文献が見付かった。そのうち、182 件は研究
の選択規準に該当しない研究、もしくは以前の研究と同じデータを用いた文献であった。
さらに一つずつの文献の参考文献リストや、関連参考書籍の文献リストから手作業による
文献検索の結果、10 件の文献を追加した。最終的に ERR が掲載されている文献は 15 件、
そして ERR が計算可能な文献が 11 件であった。合計 26 件の研究をメタ・アナリシスに
よって併合した。表 1 に 26 件の文献一覧を示す。
また図 2、図 3 にそれぞれ個々の研究の ERR と併合した ERR を示す。個々の研究の ERR
では Klein 2003 の推定値の重みが他の研究と比べて極端に大きい結果となった。その原
因を調べたところ、この研究では線量として治療部位のものを使っていることが判明した。
- 62 -
表 1. メタ・アナリシスに含めた文献一覧
効果の指標
ERR/Gy (95%CI)
ハザード比
0.38 (0.08, 2.30)
コホート
ハザード比
0.11 (0.02, 0.35)
フランス
コホート
率比
2.24 (0.68, 11.6)
固形がん
フランス、UK
コホート
率比
0.63 (0.11, 7.69)
全部位
全部位
北欧、フランス、UK
症例・対照
オッズ比
0.42 (0.01, 5.92)
Guerin 2007
全部位
固形がん
フランス、UK
症例・対照
ERR
0.13 (0.05, 0.27)
Guibout 2005
乳がん
全部位
フランス、UK
コホート
ERR
0.13 (<0, 0.75)
Haddy 2006
白血病
固形がん
フランス、UK
コホート
ERR
0.31 (-0.32, 0.94)
Haddy 2009
甲状腺
固形がん
フランス、UK
コホート
ERR
10.2 (1.7, 18.6)
Hawkins 1992
白血病
全部位
UK
症例・対照
オッズ比
0.73 (0.23, 5.75)
Hawkins 1996
骨がん
全部位
UK
症例・対照
オッズ比
1.24 (0.26, 14.6)
Inskip 2009
乳がん
全部位
USA、カナダ
症例・対照
ERR
0.27 (0.10, 0.67)
Karlsson 1998
頭蓋内腫瘍
皮膚血管腫
スウェーデン
コホート
ERR
2.7 (1.0, 5.6)
Klein 2003
全部位
全部位
ドイツ、スイス、オース
トリア、オランダ
症例・対照
オッズ比
0.004 (-0.01, 0.02)
Le Vu 1998
骨肉腫
固形がん
フランス、UK
症例・対照
ERR
3.1 (SE: 4.5)
Lindberg 1995
甲状腺、脳腫瘍
皮膚血管腫
スウェーデン
コホート
ERR
7.5 (0.4, 18.1)
Little 1998
脳腫瘍
全部位
フランス、UK
症例・対照
ERR
0.19 (0.03, 0.85)
Lundell 1994
甲状腺
皮膚血管腫
スウェーデン
コホート
ERR
4.92 (1.26, 10.2)
Lundell 1996
乳がん
皮膚血管腫
スウェーデン
コホート
ERR
0.38 (0.09, 0.85)
Menu-Branthomme2004
軟組織
固形がん
フランス、UK
症例・対照
オッズ比
0.22 (0.04, 1.25)
Neglia 2006
中枢神経
全部位
USA、カナダ
症例・対照
ERR
0.69 (0.25, 2.23)
Nguyen 2008
全部位
全部位
フランス、UK
コホート
ERR
0.48 (-0.04, 0.99)
Sigurdson 2005
甲状腺
全部位
USA、カナダ
症例・対照
ERR
1.32 (0.44, 4.06)
Svahn-Tapper 2006
固形がん
全部位
北欧
症例・対照
ERR
0.28 (0.13, 0.59)
Tucker 1991
甲状腺
全部位
USA、UK、オラン
ダ
症例・対照
オッズ比
0.40 (0.09, 4.06)
Wong 1997
骨・軟組織
網膜芽腫
USA
症例・対照
オッズ比
0.10 (0.07, 0.13)
著者
二次がん
小児原発がん
国
デザイン
Bhatia 1996
全部位
ホジキン病
USA、UK、オラン
ダ
コホート
Bhatia 2002
全部位
急性リンパ白血病
USA、カナダ
Vathaire 1992
甲状腺
全部位
甲状腺
Guerin 2003
Vathaire 1999
治療部位の線量を使っている研究は他にも Bhatia 1996、Bhatia 2002 が挙げられ、他の
研究は二次がん部位の線量を用いていた。
図 3 の併合した ERR の結果より、コホート研究でやや ERR が高い傾向が見られた。
欧州と北米の研究の推定 ERR の結果より、地域差は大きくないことが示唆された。二次
がん部位ごとの併合推定値の結果より、甲状腺で ERR が高く、骨がん・軟部組織、乳が
んでやや ERR が低い傾向が見られた。メタ回帰の結果より、被ばく時年齢の 1 歳の増加
- 63 -
Papers
Bhatia 1996
Bhatia 2002
de Vathaire 1992
de Vathaire 1999a
de Vathaire 1999c
Guerin 2003
Guerin 2007
Guibout 2005
Haddy 2006
Haddy 2009
Hawking 1992
Hawking 1996
Inskip 2009
Karlsson 1998
Klein 2003
Le Vu 1998
Lindberg 1995c
Lindberg 1995t
Little 1998
Lundell 1994
Lundell 1996
Menu-Branthome 2004
Neglia 2006
Nguyen 2008
Sigurdson 2005
Svahn-Tapper 2006
Tucker 1991
Wong 1997
0
5
10
15
20
図 2. 個々の研究の ERR(正方形の面積は個々の研究の重み)
図 3. 併合した ERR
により ERR は 0.83 倍(95%CI: 0.73, 0.95)になることが示唆された。個々の研究の ERR
のばらつきは大きかったが、その原因として線量評価部位、二次がん部位、研究デザイン、
被ばく時年齢などが示唆された。
全体の ERR は 0.61(95%CI: 0.31, 1.20)であり、原爆被爆者の小児被ばく(1.7; 95%CI:
1.1, 2.5)と比べて低い結果であったが 2)、その原因として 1 回被ばくと分割照射の違い、
原爆被爆者と比べて被ばく時年齢が高いこと、cell-killing effect の可能性(二次がん部位
に 100Gy 以上)などが考えられる。
今回、放射線影響を評価する手段としてメタ・アナリシスを用いたが、その結果 ERR
- 64 -
の変動要因の示唆が得られた。他の被ばく集団やエンドポイントに対して適用することは
有用であると考えられる。
参考文献
1. Doi K, Mieno MN, Shimada Y, Yoshinaga S 2009 Risk of second malignant neoplasms among
childhood cancer survivors treated with radiotherapy: meta-analysis of nine epidemiological
studies. Paediatr Perinat Epidemiol 23:370-379.
2. Preston DL, Cullings H, Suyama A, Funamoto S, Nishi N, Soda M, Mabuchi K, Kodama K,
Kasagi F, Shore RE 2008 Solid cancer incidence in atomic bomb survivors exposed in utero or as
young children. J Natl Cancer Inst 100:428-436.
Meta-analysis of Second Cancer Risk Among Childhood Cancer Survivors
Treated with Radiotherapy
Kazutaka Doi
National Institute of Radiological Sciences
Second cancer risks of childhood cancer survivors following radiotherapy have not been well
characterized in terms of radiation dose. Before we have conducted a meta-analysis of studies on
the excess relative risk per Gy (ERR) of second malignant neoplasm (SMN) among childhood
cancer survivors, but the small number of eligible studies restricted quantitative evaluations. To
solve this problem, we developed a statistical method to calculate an ERR estimate from other
estimates, and conducted a meta-analysis again.
We searched the PubMed database, and 26 studies were identified. ERR estimates were
available in 15 studies, and for the rest of 11 studies, we used the regression model to calculate a
ERR estimate from other estimates. The overall ERR was 0.60 [95% CI: 0.31, 1.15]. Cochran’s Q
statistic was 319.7 (P < 0.001), indicating a significant heterogeneity among studies. The
heterogeneity was attributed partly tothe sites of second cancer, the design of studies, the region of
the study, and the age at radiotherapy. Especially, we focused on the dependence in ERR on age at
radiotherapy, and it was suggested that the second cancer risk is decreased by 11 percent in terms
of ERR per one year increase in the ageradiotherapy (p = 0.01).
- 65 -
アーカイブ研究
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
規制科学総合研究グループ
三枝
新
[email protected]
1.はじめに
長期動物実験研究の役割は、従来より放射線影響・リスク研究において重要な役割を
担って来ており、その成果は、ヒト集団に対する疫学研究だけでは得ることの出来ない情
報として放射線安全規制に反映されている。このような長期動物実験は、実験動物を種々
の様式で放射線にばく露し、その後長期の飼育を行い、発がんを主とした健康影響を経過
観察するというもので、大規模な実験施設と予算、長期にわたる研究期間、そして何より
も高度の専門性を有する経験豊かな実験病理学者の技術を必要としている。しかしながら
近年では、熟練した実験病理学者の退職、更に動物愛護の流れなどにより、新規の実験が
困難となりつつある。今日、わが国においては環境科学技術研究所、放射線医学総合研究
所、電力中央研究所、広島大学などの研究機関において実験が実施されているが、これら
の機関においては過去の実験による一次データのアーカイブ化に関して様々な取り組み
が始まっている。
放医研では今日に至るまで様々な動物実験が行われてきており、これらの実験に基づい
た一次データ(実験結果データ、照射試料)は極めて重要な価値を持っている。これらを
体系的に保存・管理し、研究に供する事には以下のようなメリットが考えられる。
1) Retrospective Research にとってのメリット
・過去の一次データのシステマチックな再解析が容易
・分子生物学的手法など、最新の分析手法を用いた再解析が可能
2) Pospective Research にとってのメリット
・新規実験の効率的な立案・実施が可能
・研究試料の効率的な再利用が可能
3) メタアナリシスの可能性
・国内外の共通フォーマットを持つデータベースおよびサンプルバンクと連携するこ
とによるメタアナリシスが可能
これらのメリットは、省庁再編成や研究機関・組織の統廃合に伴う資・試料の散逸を防ぐ
という重要な意味を持つと言える。
- 66 -
2.目的
今日まで残されている研究成果(飼育や照射に関する実験条件データ、スライド標本・
包埋試料などの生物試料等)をその属性に応じてデジタルデータ化し(データベース構築)、
照射試料も管理・保全(アーカイブ構築)することによって、将来における更なる解析に
供することを目的として実施した。
3.手法
放医研において過去に実施された長期動物実験を対象として、アーカイブ化に必要な情
報抽出を行い、得られたデータ項目に応じた登録フォーマットを作成し、登録・閲覧用ア
ーカイブシステムの構築を行った。また、国内の他の長期動物実験データの登録を将来的
に可能にするために、先に抽出したデータ項目毎に関連する登録情報を拡張した。
4.成果
システムとしては、Linax をベースにしたデータサーバを構築すると共に、サーバー
コンピュータなどのハードウェア技術に詳しくない生物系研究者による管理・運用をを前
提としたシステムとインターフェースを構築した。即ち、Excel フォーマットによるデー
タアップロードを可能とし、さらに管理者のデスクトップ上の管理者用アプリケーション
から、データのアップロード/ダウンロードや利用者画面の編集(データ検索機能の自由
な作りかえや、その際のプルダウンメニューの自由な登録など)を可能とした。さらに国
内外の同様のアーカイブと、ソフト・ハード両面からの連携を進めるため、EU が進めて
いる長期動物実験の国際アーカイブ計画に協力を行うと共に、プログラムの共通化を図っ
た。
このシステムへの登録項目としては、過去に放医研で実施された実験(C3H/He マウス
を用いた Cs-137γ線照射実験(総匹数 6400、照射 25 群とコントロール 1 群、大津・古瀬・
野田らによる)を対象として、アーカイブ化に必要なデータ項目の抽出を行い、得られた
データ項目に応じた登録フォーマットを作成した。さらにこれらのデータ項目については
わが国で過去に行われた研究を調査し 1)、関連する条件を適宜リストアップし、登録の際
の選択肢リストとしてあらかじめシステムに組み込んでいった(例:実験研究機関リスト、
各機関における照射装置リスト、動物種・系統リスト、他)。これにより、本システムを、
国内の他の研究機関が将来的に利用できる様にしている。
なお、システム構築においては、将来におけるデータ登録システム等のハード面での連
携を考慮し、
EU が構築したデータベース(ERA Project, European Radiobiology Archives。
サーバはケンブリッジ大学に設置。2009 年構築完了)2, 3)のデータファイル名・構造との
共通化を行った。
- 67 -
図1.検索画面
5.おわりに
放射線防護のおける生物影響評価の基本となるがヒト集団を対象とした疫学研究であ
ることは昔も今も変わらない。しかしながら、今後、メカニズムを考慮した放射線防護を
より深めていく上で、長期動物実験研究は不可欠である。
EU では、前述の ERA データベース構築の後にアーカイブ構築計画(STORE Project,
Sustaining access to Tissues and data from Radiological Experiments。2009 年構築
開始)をスタートした。そこではアーカイブの構築のみならず、アーカイブ試料を用いた
最適な解析手法に関する研究に対しても積極的な助成が行われており、わが国においても
今後は、アーカイブを利用した解析手法の標準化のための実験研究など、ハード・ソフト
両面からの取り組みが求められる。
引用文献
1) International Radiobiology Archives of Long-Term Animal Studies: Vol.1 Descriptions of
Participating Institutions and Studies. (Eds. Gerber, G.B., Watson, C.R., et al.), DOE/RL-96-72,
EUR 16954 (1996)
2) S. Tapio, P.N. Schofield, et al.: Int. J. Radiat. Biol., 84, 930–936 (2008).
3) M. Birschwilks, M. Gruenberger, et al.: Radiat Res., Posted online, (2011)
4) O. Azimzadeh, Z. Barjaktarovic, et al.: J Proteome Res., 9, 4710-4720 (2010)
- 68 -
Archival Research
Shin Saigusa
National Institute of Radiological Sciences
The long term animal studies have played fundamental roles for the radiation effects/risk
studies, providing important complementary data to the human epidemiological studies which
have been reflected in the radiation protection/safety regulations. Animal experiments require
long-term and large scale experimental designs with the skilled technique of savvy animal
pathologists. NIRS has been carrying out the various kinds of the long term animal experiments till
today.
To proceed the further biological investigation with the latest technique and the meta-analysis
of the animal data, we have been promoted the construction of animal experiment archives. The
fundamental design of the archive depended on the previous experiment carried out in NIRS (6400
C3H/He mice, gamma irradiated, 25 groups in various doses/dose-rates) and was expanded to be
able to registrate the other sets of animal experiment. Furthermore, the collaboration with the
foreign archive networks has been carrying out.
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放射線がなければできないこと
東京大学大学院農学生命科学研究科
中 西 友 子
[email protected]
1.はじめに
最近、エネルギーとしての原子力の重要性が議論されるようになってきた。そして一般
に原子力の利用といえばエネルギー利用が大部分ではないかと思われがちである。しかし、
放射線の利用についての経済効果を調査した結果によると、エネルギー分野と工業・医療
などの分野との比率がほとんど同じだった。普段、どこに利用されているかあまり気がつ
かない分野が多いものの、放射線を利用しなければできないことが多いのである。
研究面を見てみても、例えばアイソトープ(RI)を用いた研究は、近年の遺伝子工学の
発展に大きく寄与してきた。それは極微量の DNA 検出には RI を用いた標識技術が欠かせ
なかったからである。しかし、その後は RI 利用に対する規制の厳しさから研究者は RI
を用いない方法に移っていった。
放射線の利用なしにはできないことが他にも沢山ある。そこで、ここでは特に水と元素
に着目し、植物を対象にした放射線の利用について紹介したい。
2.水
私達は作物を育てるためには水が必要だと判っているものの、植物の中に存在する水そ
のものの分布や動きについては、実はほとんど判っていない。この生きた植物中の水の分
布を調べるためには、中性子線を用いるイメージング法が最適である。中性子線を用いる
イメージング手法は工業的には、非破壊検査手法としてコンクリート内部の亀裂検査や航
空機の翼中の水分検査などに応用されてきた。
植物に中性子線を照射すると、
「みずみずしい」植物の水の姿を見ることができる。
図1 スギ小口材(1cm)中の水分分布。高いところほど水分量が多い。
- 70 -
この方法で、植物試料の像を取り続けると、通常見ることができない土壌中の根の生育
状況、根の形態や、根のどの部分から水が吸収されていくかを解析することができる。
ではリアルタイムの水の動きはどのように調べることができるのだろうか。植物に吸収
された水を追跡するためには、今まで存在していた水と新しく吸収された水を区別する必
要がある。そのためにはアイソトープで標識した水を吸収させ、放出される放射線を頼り
に水の動きを追跡すればよい。水は水素と酸素元素から成るが、水素のアイソトープであ
るトリチウム(3H)から出されるβ線のエネルギーは非常に低く植物の外側に出てこない。
そこで、私達は酸素のアイソトープ(15O)を利用することとした。この核種はポジトロ
ン放出核種であり、半減期が僅か 2 分である。放射線医学総合研究所ではヒト用の 15O 標
識水を定期的に製造している。そこで、ここでしか得られない 15O 標識水を使用させてい
ただき、実験を行った。
アイソトープを用いる利点のひとつは計測値を水分量に換算できることである。ダイズ
の根の上部、1cm の茎をターゲットに、新しく吸収されここに蓄積されていく水の量を求
めてみた。その結果、驚いたことには、水を運搬するパイプと思われてきた導管からは、
常に多量の水が水平方向に漏れ出てまた導管に戻っていることが判った。15O の半減期が
2 分なので測定は高々15 分ほどであるが、シミュレーションにより、20 分以内に、それ
まで存在していた水の半分が新しく吸収された水と置き換わることが示された。動かない
植物の中でのダイナミックな水動態を解析できたことは 15O というアイソトープを利用で
きたからである。
3.元素
植物は水と 17 種類の元素を吸収して生育する。そのため、元素分布や動態を知ること
は植物栄養学・生理学上極めて大きな意義がある。まず、元素の分析であるが、最近は原
子吸光や ICP などの手軽な分析機器の発達により放射化分析はほとんど行われなくなっ
てしまった。しかし、非破壊状態で分析できる放射化分析は、依然として、元素の絶対量
が測定できる唯一の手法である。試料中の元素の絶対量は他のどんな方法でも求めること
はできず、米国の NIST (National Institute of Standards and Technology)では標準試料の認証
値は放射化分析に依っている。
放射化分析では多元素を同時に測定できることから、各生育段階における植物の各組織
を測定したところ、例え葉一枚、茎一本といえども、その中には元素ごとに異なる濃度勾
配が広がっており、しかも異なる組織の間、例えば根と地上部、茎と葉柄、葉柄と葉では
濃度差を作り上げるジャンクションが存在していることがわかった。しかも植物体全体に
広がった元素ごとの濃度プロファイルは生育過程を通して保存されていた。重金属の多く
は根に蓄積しているものの、種子には次世代保護のためと思われるが殆ど移行していかな
いことも示された。元素の移動に際しては元素特異的なトランスポータが知られているが、
詳細な動きを解析するためには、生きた植物を対象に元素の動態と遺伝子解析がミクロな
- 71 -
レベルで同時に行われることが必要だと考えられる。
経時的な元素濃度分布から元素動態が考察されるものの、リアルタイムの元素動態を知
るためには、やはりアイソトープの利用が欠かせない。医療用では、PET(Positron Emission
Tomography)と称して、アイソトープの一種であるポジトロン放出核種を用いた検査が行
われる。ポジトロン放出核種の製造には特別な装置が必要でかつ一般に半減期が短いため
実験は装置のすぐ近くで行わなくてはならない。
しかし大型設備を使うためのマシンタイムは限られており、またせっかく状態の良い植
物を持参しても機械のトラブルのため実験できないこともある。そこで、何とか手近に、
また市販のアイソトープを用いた元素のイメージングができないかということから、リア
ルタイムアイソトープイメージング装置の開発を行った。イメージングについては、現在、
蛍光イメージング法が発展してきているが、蛍光測定は明るい所ではできず、また得られ
る画像の定量性も非常に困難である。
このイメージング装置開発では、植物体全体をイメージングできるマクロ装置と蛍光顕
微鏡を改造したミクロ装置の 2 種類を開発してきた。植物にアイソトープを吸収させ、放
出される放射線をシンチレータで光に変換し、その微弱は光を増幅させてフォトンカウン
ティング用の超高感度 CCD カメラで撮影する。
当初は超高感度 CCD カメラの保護のため、
イメージングは全て暗箱中で行ったが、現在は植物育成箱が出来上がり植物の地上部だけ
光を照射し、昼・夜のリズムをつけることができるようになった。
32
P-リン酸の場合、根から吸収されたリン酸は最初に最も若い組織に運ばれ次に他の組
織に蓄積していくことがリアルタイムイメージング像から判った。植物というものは、例
えれば一個体中に赤ん坊から年よりまで抱えたようなものなので、真っ先に赤ん坊の部分
に運ばれたのだろう。根の先の分裂組織にも常に根の他の箇所と比較してリン酸濃度は高
く、また地上部には夜よりも昼に多く運ばれていた。
図 2 ダイズにおけるリン酸吸収のリアルタイムイメージング
- 72 -
32
P-リン酸の吸収動態で非常に印象的だったことは土壌栽培と水耕栽培の差である。リン
酸は土壌に吸着されやすいこともあるが、イネの場合、水耕栽培ではゆうに 30 倍ものリ
ン酸が吸収され、常に植物はメタボ状態であった。土壌栽培では植物は根周辺の僅かなリ
ンを吸収し生育も遅かったものの、収穫量は水耕栽培されたイネよりもはるかに多かった。
まるで若い時に苦労するほど実りが多いという戒めのようでもある。
3.おわりに
これらは放射線を利用した研究の一部であり、他にも放射線利用なくしてはできないこ
とが多い。放射線の利用は特別な手法ではなく、いろいろな手法のひとつの手段であり、
非常に有用なものであることを再度確認することが大切である。
参考文献
M. Yamawaki et al. J. Radioanal. Nucl. Chem., 282(1) 275-279 (2009)
T.M. Nakanishi et al. J. Radioanal. Nucl. Chem., 282(1) 265-269 (2009)
T. Ohya et al. Plant Cell Physiol. 49(5), 718-729 (2008)
Possibilities of Radiation Sciences
Tomoko M. Nakanishi
Graduate School of Agricultural and Life Sciences,
The University of Tokyo
It is well known that the application of a radioisotope made it possible to develop recent
overwhelming gene technology so rapidly. Not only in biological science, but in many other fields
radiation technology plays an essential role for the research. There was a survey work for the
economic scale of radiation market. About half of the market was related to atomic energy but the
other half was the others, i.e. engineering, medical and agricultural fields. Though we are not
aware of these large radiation markets comparable to that of atomic energy, there are so many
fields applying radiation technology. Take a look at research field. For example, radiation
technology is crucial in analysis and imaging. In the case of analysis, only activation analysis
provides absolute amount of the elements in the sample, because it allows nondestructive
experiment. Imaging based on radiation measurement can be
performed under light condition
and allows numerical treatment of the image.
We have to confirm again that the radiation technology is an indispensable tool to open new
sciences.
- 73 -
疫学研究と放射線防護
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
規制科学総合研究グループ
吉永
信治
[email protected]
1.はじめに
放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究から得られる情報は、国際放射線防護委員
会(ICRP)で放射線防護基準の策定のために用いられるなど、放射線防護の科学的基盤と
して役立っている。一方、それらの疫学研究は、特に低線量域での不確かさなど、いく
つかの限界を持つ。本発表では、放射線防護における疫学研究の意義と限界を解説する
とともに、現在、内外で実施されている放射線に関わる疫学研究の動向を紹介し、さら
に、今後の課題を議論する。
2.放射線疫学研究の意義
疫学は、主にコレラなどの急性感染症の原因の探索やその予防対策の樹立を目的とし
て発祥し、その後、対象は慢性感染症や非感染性の生活習慣病などの制御へと大きく広
がってきた。その間、研究の方法や技術が大きな発展を遂げ、今では、人々におけるあ
らゆる疾患の予防や健康の維持増進に役立つ情報を疫学研究が提供していると言っても
過言ではない。
疫学研究のうち、放射線被ばくによる健康影響に関する疫学研究は、特に放射線疫学
研究と呼ばれる。放射線疫学研究の意義は、放射線被ばくによるヒトへの影響に関する
直接的なエビデンスを提供することである、がんは、放射線による健康影響の中でも、
最も盛んに研究がなされてきた疾患である。
国際がん研究機関(IARC)は、ヒトの疫学研究、動物実験、機構研究の3種類の研究
からどのようなエビデンスが提供されているかを総合的に検討し、様々な因子のヒトに
対する発がん性を評価している。IARC の発がん性評価では、発がん性がグループ1の
「発がん性あり」から、グループ4の「発がん性はおそらくない」までの5段階のいず
れかに分類されている。ここで注目すべき点は、この評価の際に、疫学研究からのエビ
デンスが動物実験や機構研究からのエビデンスに比べて極めて重視されている点である。
例えば、疫学研究からの十分なエビデンスがあった場合には、たとえ、動物実験や機構
研究からのエビデンスが十分でなかったり、限定されていたりした場合でも、その因子
は「発がん性あり」のグループ1に分類される。電離放射線(全種類)、放射性核種(内
部沈着α粒子放出体)
、放射性核種(内部沈着β粒子放出体)、ラドン 222 とその壊変生
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成物、X 線およびγ線はこのような観点から、いずれもグループ1に分類されている。
一方、ICRP では、放射線疫学研究から得られたデータや知見を、がんリスク係数や
損害(デトリメント)の算定のための基礎データやデトリメント算定に関わる判断材料
として用いている
1)。前者については、単位線量あたりのがんリスク、がんの自然発生
率、がん致死率等が該当し、後者については、リスク転換の際のモデル選択、組織加重
係数の算定、線量・線量率効果係数の判断等が該当する。このように放射線疫学研究は、
放射線被ばくの健康影響評価だけでなく、放射線防護基準の策定に大きく役立っている。
3.放射線疫学研究の動向
原爆被爆者を対象とした疫学研究は、ヒトの放射線影響に関わる情報源として、中心
的な役割を果たしてきた。特に、2007 年に公表された原爆被爆者のがん罹患リスクに関
する最新の解析結果
2)は、国際的な注目を集めている。最近では、原爆被爆者の疫学研
究から情報が得られない低線量率長期被ばくや反復被ばくのがんリスクについての関心
が高まり、職業被ばく、環境被ばく、医療被ばくなど様々な被ばく形態の集団を対象と
した疫学研究が幅広く実施されるようになった。
例えば、Nair ら 3)は、インドの高自然放射線地域の住民約 7 万人におけるがん罹患率
を解析し、固形がんリスクについては、推定された累積被ばく線量との間に統計学的に
有意な関連がないこと、また、線量あたりの過剰相対リスク推定値が負であることを報
告した。一方、旧ソ連のテチャ川周辺住民約 1 万 7 千人におけるがん罹患率を解析した
Krestinina ら 4)は、線量の増加とともに固形がんリスクが直線的に増加する有意な傾向
性があること、また、1Gy あたりの過剰相対リスクが 1.0(95%信頼区間:0.3-1.9)と、
原爆被爆者での推定値の約2倍であることを報告した。さらに、診断用 X 線と小児白血
病リスクの関連を検討した米国の症例・対照研究 5)では、出生後の X 線診断の受診回数
が多いほど、小児の急性リンパ性白血病のリスクが増加する有意な傾向性があることが
報告されたが、一方、診断用 X 線を受けたドイツの約 9 万 3 千人の小児を対象としたコ
ホート研究 6)からは、診断用 X 線に関連した小児がんリスクの増加は報告されなかった。
最近は、放射線被ばくによるがん以外の健康影響についても国際的な関心が高まり、
原子放射線に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、その 2006 年報告書で、心血管
疾患およびその他の非がん疾患についてのレビューを附属書
7)として取りまとめた。ま
た、Shimizu らは、原爆被爆者における 1950 年から 2003 年までの循環器系疾患死亡率
を解析し、心血管疾患の死亡率は線量ともに直線的に増加すること、また、1Gy あたり
の過剰相対リスク推定値は 0.14(95%信頼区間:0.06-0.23)であることなどを報告した
8)。
さらに、確定的影響と従来考えられていた白内障あるいは水晶体白濁について、最近、
原爆被爆者 9)や米国放射線技師
10)などのいくつかの研究で、低い線量でもリスクが増加
することが示唆されており、国際的な注目が集まっている。
- 75 -
4.放射線疫学研究の限界
放射線被ばくによる様々な健康影響について、疫学研究から多くの情報が提供されて
いる一方で、それらの疫学研究では、因果関係やメカニズムに関しては決定的な情報が
提供されないという限界がある。また、特に低線量に関する疫学研究は、交絡やその他
の因子によってバイアスを受けやすいという限界もある。例えば、米国の地域相関研究
で見られた、ラドン濃度の増加とともに肺がん死亡率が低くなるという「逆相関」の結
果の解釈を巡って激しい論争が交わされたが、この結果は、肺がんの強いリスク因子で
ある喫煙による交絡がもたらした誤った結果であるという解釈が最近の国際的評価であ
る 11)。すなわち、平均ラドン濃度が高い郡ほど喫煙者の割合が低かったため、ラドン濃
度と肺がん死亡率の間に見かけ上の「逆相関」がもたらされたのである。
低線量被ばくの健康影響に関する疫学研究のもう1つの限界として、統計学的検出力
の問題が挙げられる。低線量域では、放射線の影響が仮にあったとしても、その影響を
検出するためには多くの対象者を調査する必要がある。ICRP は、放射線被ばくによる
がんの過剰リスクを検出するために必要な集団の大きさを試算し、その数が 1Gy では
80 人であるのに対し、100mGy では 6,390 人、10mGy では 62 万人、さらに 1mGy で
は 6,180 万人になることを示し、低線量の疫学研究の限界を指摘した 12)。
このように、特に低線量被ばくについては、バイアスや統計学的検出力の問題により、
結果に大きな不確かさがあることが、低線量率長期被ばくや反復被ばくのがんリスクに
関わる疫学研究結果に一貫性がない大きな理由となっている。バイアスの問題を解決す
るためには、交絡因子の情報の収集と解析、線量測定・評価の改善などが重要であり、
また、統計学的検出力の問題については、大規模研究の実施、あるいは既に実施された
研究データを統合して評価するプール解析やメタ解析による取り組みが重要である。そ
れらの大規模研究ですら統計学的検出力が必ずしも十分でないかもしれないが、リスク
推定値の上限値や下限値を異なる被ばく形態のリスク推定値と比較することにより、有
用な情報を提供することが期待される。
5.放射線防護・規制へのさらなる貢献
線量・線量率効果は、直線の線量反応関係とともに、放射線による確率的影響からの
防護のために用いられる基礎的な概念であるが、その評価は主に、原爆被爆者データで
の線量反応曲線の傾きや曲がり具合、また、発がんや寿命短縮に関する動物実験データ
に基づいてなされてきた。一方、低線量率長期被ばくのがんリスクを、原爆被爆者にお
ける高線量・高線量率被ばくのそれと比較することは、線量・線量率効果に関する直接
的な評価を可能にさせるが、前者の不確かさが大きいことなどの理由により、まだ広く
行われていない。今後は、関連する疫学研究による科学的知見のさらなる収集と評価に
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より、がんリスクの線量・線量率効果についての有用な情報が蓄積されることが期待さ
れる。
疫学研究が放射線の防護や規制にさらに貢献していくためには、これまで科学的知見
が十分でないものの、多くの人々に潜在的なリスクを与えうる、心血管疾患や白内障な
どがん以外の疾患についても、特に低線量被ばくに関して、疫学研究の知見をさらに収
集して評価することが重要である。
がんにせよがん以外の疾患にせよ、喫煙や飲酒などの生活習慣、また、遺伝的要因が
それらのリスクに対して一定の役割を果たしていることがよく知られている。しかしな
がら、これらの放射線以外の因子が放射線被ばくによるがんや非がん疾患のリスクをど
れほど修飾するかについては十分な情報が蓄積されていない。これらの修飾効果につい
てさらなる情報を蓄積することにより、仮に放射線へ被ばくしたとしても、放射線以外
の因子の制御により、疾患のリスクを低下させるという、新たな防護方策が可能となる
かもしれない。
放射線疫学研究による知見が蓄積されていく一方で、それらの解釈や補完のための動
物や細胞を用いた実験研究は引き続き、重要な役割を果たしていく。疫学研究や実験研
究から得られた結果を放射線の防護や規制へさらに活用するためには、研究による科学
的知見の合理性を放射線防護や規制における社会的合理性と調和・調整させていく規制
科学的アプローチがますます重要になってくる。
6.おわりに
放射線疫学研究は放射線防護の科学的基盤を提供してきたが、バイアスや低い検出力
などの問題により、研究結果には大きな不確かさが存在する。疫学研究から得られる科
学的知見は今後とも大きな役割を担っていくことが期待されるが、知見が十分でない低
線量率長期被ばくや反復被ばくのがんリスク、放射線以外の因子のがんリスク修飾効果、
低線量被ばくによる非がん疾患のリスクなどの知見を蓄積し、放射線防護へ反映させる
取り組みが重要である。
引用文献
1)ICRP. ICRP Publication 103. 2007.
2)Preston D.L. et al. Radiat Res 168: 1-64, 2007.
3)Nair R.R. et al. Health Phys 96: 55-66, 2009.
4)Krestinina L. et al. Int J Epidemiol 36: 1038-1046, 2007.
5)Bartley K. et al. Int J Epidemiol 39: 1628-1637, 2010.
6)Hammer G.P. et al. Radiat Res 171: 504-512, 2009.
7)United Nations. Annex B, UNSCEAR 2006 Report. 2008.
- 77 -
8)Shimizu Y. et al. BMJ 340: b5349, 2010.
9)Neriishi K. et al. Radiat Res 168: 404-408, 2007.
10)Chodick G. et al. Am J Epidemiol 168: 620-631, 2008.
11)United Nations. Annex E, UNSCEAR 2006 Report. 2009.
12)ICRP. ICRP Publication 99. 2005.
Epidemiological Studies and Radiation Protection
Shinji Yoshinaga
National Institute of Radiological Sciences
Epidemiology started its history with purpose of survey of causation and establishment of
preventive measures against infectious diseases. Then, its focus has been extended to control of
variety of diseases including non-infections chronic diseases with great advancement of
methodology.
Epidemiological studies provide useful information for human health. Regarding health
effects of radiation exposure, studies of atomic-bomb survivors in Japan, medically irradiated
populations, etc. are most informative scientific basis for such radiation protection system as the
ICRP developed.
While epidemiological studies are expected to continue providing scientific evidence on health
effects among human populations, there are several limitations, including low statistical power
and large uncertainty, especially in low-dose epidemiological studies. In this presentation, I will
explain about significance and limitations of epidemiological studies in the context of radiation
epidemiology, and will discuss about future perspectives
- 78 -
リスクコミュニケーションの取り組み
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
規制科学総合研究グループ
神田玲子
[email protected]
1.はじめに
リスクを社会と科学技術との接点として捉え、広い視点からその意味合いを論じたの
はカリフォルニア大学のスタアによる論文 1)が最初であると言われている。それから 50
年近く経過した現在では、社会と科学技術との接点として、ステークホルダー関与とい
う言葉がしばしば使われるようになった。この用語は市民参加とほぼ同義語として使わ
れることが多いが、単に情報提供から、協議、そして市民が意思決定まで行う権限付与
と、関与のレベルはさまざまである2)。
原子力分野では、黎明期より、パブリックアクセプタンス(PA)の名の下にレベル 1
の市民参加が行われてきた。PA もリスクコミュニケーションも、正しい情報により国民
の理解促進をめざすことは共通だが、国が政策を決定することが前提の PA では、国民が
国の方針を受容することが目的であるため、広報的性格を帯びている。一方リスクコミ
ュニケーションでは、国民が正しい理解の下、政策決定にも何らかの関与をすることが
前提であり、原則広報的性格はない。最近では、原子力分野でも、PA という言葉よりは、
リスクコミュニケーションの方が一般的に使われるようになっている。
近年、放射線防護の範疇が自然放射線にまで広がったこと、それからインターネット
等で非専門家でも様々な情報が得やすくなった分、誤解そして不安を抱く場面が増えた
ことから、放射線・原子力の分野におけるリスクコミュニケーションやステークホルダ
ー関与がますます重要になっている。原子力の重点安全計画(2004)や原子力大綱(2005)
あるいは ICRP2007 年勧告にも、リスクコミュニケーションやステークホルダー関与につ
いて記載されるなど、その重要性が社会的に認知されるようになった。
2.放医研における最近の活動とその意義
こうした社会的ニーズを受けて、放医研では安全研究の枠組みで、リスク認知調査研
究およびリスクコミュニケーション事業を開始した。
中でも、規制科学ダイアログセミナーは中心的活動の一つである。対話により、ステ
ークホルダー間や専門家と公衆の間のギャップを埋め、正しい理解を深めることを目的
として開催し、放射線防護のホットトピックスに関する情報や問題の共有、課題解決の
模索を行ってきた。特に、自然放射線による職業被ばく(航空機乗務による宇宙線被ばく、
NORM の産業利用)と、医療による患者被ばくの最適化、正当化は重要なテーマであった。
- 79 -
また航空機乗務員のための共通教材、書籍や HP、
あるいは他機関の活動協力を通じて、
情報発信を行った。これらは、原子力、医療放射線、自然放射線等の個別のテーマで実
施されるリスクコミュニケーションにおいて、放射線リスクの説明に不整合がないよう、
情報発信側に国際動向や科学的最新知見提供することを目的としている。
さらに、食品安全等先行分野を参考に、放射線安全に対する安心を社会的に構築する
ためのリスクコミュニケーションのあり方について模索している。こうした研究や活動
の成果を以下に述べる。
3.アンケート調査研究の成果
3.1 知識
リスクの説明方法や内容は、情報の受け手の知識レベルや認知に合わせることが望ま
しい。そこで全国 1300 名の成人男女対象訪問調査を実施し、さまざまな質問を行った。
日常生活で最も多い被ばく源について質問したところ、4 割は原子力施設からの被ば
くであると答え、医療被ばくと正解した人は 3 割程度だった 3)。こうした量に関する誤
解が、放射線のリスクに対する理解の妨げになっている。
なお看護師対象のアンケート 4)でも、正答率は 3 割と公衆と同程度であるが、宇宙線
と答えた誤答者が最多数(4 割)と、大変特徴的な結果が得られている。
3.2 リスク認知
放医研では、1983 年、1992 年、2007 年の 3 回、リスクランキング法によるアンケー
ト調査を実施し、リスク認知の傾向を調査した。これは米国の心理学者スロビックが開
発した方法で、産業および社会的事象のリスク 30 項目を、危険と感じる順に並べるもの
である 5)。その結果、この 25 年の間で、年齢、性別、職業、学歴による差がなくなって
きていること(Table 1)、女性のグループでは 25 年間を通じて原子力は 30 項目中 1-2 位
と大変危険なリスクと判断されていることが明らかになった。また概して医療放射線の
リスクは、原子力に比べ低く見られているが、高齢者(>60 歳)のみは原子力と同程度
と感じていた。
医療ひばくに関しては、検査項目別に受容度に関する認識調査を行った。その結果、
がんの検査、幼児や児童の虫歯の検査、あるいは新生児の心臓病の検査などのように、
受けないリスクが明らかな放射線診療は受容されており、公衆がかなり合理的に判断し
ていることが明らかになった 6)。
- 80 -
Table.1 Ordering of perceived risk for 30 activities and technologies in the Web survey
Male
1.Handguns
2.Nuclear power
3.Smoking
4.Private aviation
5.Hunting
6.Police work
7.Surgery
8.Fire fighting
9.Motorcycles
10.Large construction
11.Motor vehicles
12.X-rays
13.Commercial aviation
14.Pesticides
15.Antibiotics
16.Food preservatives
17.Mountain climbing
18.Food colouring
19.Power mowers
20.Contraceptives
21.Alcoholic beverages
22.Vaccinations
23.Spray cans
24.Railroads
25.Skiing
26.Bicycles
27.Home appliances
28.Electric power
29.Football
30.Swimming
Female
20s 30s
40s
50s >60s 20s
30s
40s
50s >60s
1
2
3
5
9
8
4
15
7
10
6
11
14
19
12
13
18
17
21
16
20
26
22
27
23
28
24
25
30
29
1
2
3
5
4
8
7
9
6
10
11
12
17
13
14
16
15
18
20
19
21
23
22
25
24
27
30
28
26
29
1
2
3
4
8
6
5
7
10
9
12
11
13
14
15
17
16
18
20
23
21
19
22
25
24
26
28
29
27
30
1
2
3
6
4
7
5
8
15
11
13
12
10
9
17
14
18
16
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Occupation*
Life-style
Group Group Group
NonNonA
B
C Smoker smoker Driver driver
1
1
1
1
1
1
1
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10
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13
13
14
14 13 15
15
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14
13
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16
16
16
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17
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16
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19
19
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19
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21
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25
25
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26
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27 29 27
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28
26
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28
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29 26 29
29
29
29
29
30 27 30
30
30
30
30
*Group A: Company employee and a public employee/Group B: Self-employed persons
and freelance professionals/Group C: Housewives, part-timers and unemployed.
4.リスクコミュニケーション事業(社会実験)による成果
4.1 リスク比較を用いた説明
リスクの数値そのものでは、公衆にとってその大小が実感しにくい場合、複数のリス
クの大きさを比較し説明することは一般的に行われている。しかし、リスクの定義がさ
まざまであり、混乱しやすいなどの問題点もあり、あまり安易に用いるべき説明手法で
はない。
たとえば、リスクといった場合に、望ましくない事象の発生確率を指す場合と、これ
に被害の大きさをかけたものを呼ぶ場合がある。また同じ年間死亡率でリスクを表す場
合も、災害・事故によるリスクは、実際の災害(事故)の件数からリスク値が計算でき
るが、低線量放射線のリスクは、あるモデルを用いて推定している値である。特に低線
量放射線のリスク推定には、大きな不確実性が伴うことを説明する必要がある。
- 81 -
また、発生確率や被ばくの大きさを、個人のレベルで制御できるリスクに比べ、制御
できないリスクは公衆が容認しにくいリスクであると考えられている
7)
。こうした性格
の異なるリスクを比較し、その大小のみを論じることは、一般のリスク認知とのギャッ
プが大きく、 かえってリスクの理解を妨げる可能性が高い。
リスク比較による説明を取り入れる場合は、こうした点に留意すべきである。
4.2 放射線リスクの寄与分に関する説明
放射線による発がんリスクを誤解なく伝えることは難しい。同じ線量/線量率で放射線
を受けた集団からは、確率的にがんの発生が生じる。その割合(リスク)を科学的に正
確に伝えるには、原爆被爆者の過剰相対リスクを用いるべきであるが、この説明はやや
難解である。一方、がん自然発生率(ベースライン)に対し、放射線誘発のリスクの程
度を説明することは、理解されやすいものの、これを裏付ける科学的データは十分では
ない。
現時点でももっとも放射線による発がんの寄与率を示すのに適しているのは、高自然
放射線地域住民の染色体異常頻度のデータである。 中国広東省になる高自然放射線地域
と対象地区住民の染色体異常調査で
8〉9〉
は、放射線量のマーカーである二動原体につい
ては、集積線量の差異に応じて頻度に違いが見られたが、発がんリスクのマーカーと考
えられている転座の頻度には差がなかった。また in vitro の系では放射線により二動原
体と転座は 1 対 1 の頻度で生成されるが、住民の血液サンプルでは、二動原体に比べ転
座の頻度は数倍~10 倍高かった。以上のことは、放射線により誘発された転座よりも、
放射線以外の要因で引き起こされた転座の方がはるかに多く、集積線量の範囲〈~約
300mSv〉では、放射線の被ばくを低減しても転座の頻度、すなわち発がんリスクは下が
らないと説明することができる。
4.3 ベネフィットコミュニケーション
リスクコミュニケーションに関して先行する食品安全分野では、一般公衆に対し、な
ぜこの技術を使うのか、使わなければどのような不都合があるのか、ということの説明
からリスクコミュニケーションを開始するケースが多い。放射線のリスクコミュニケー
ションにおいても、これは模倣すべきである。
特に放射線検査のリスクコミュニケーション、あるいはインフォームドコンセントに
おいては、行為の正当化を説明することが極めて重要である。特に放射線感受性の高い
小児に被ばく量の多い CT 検査を行う際には、検査を受けるリスク(放射線リスク)と受
けないリスク(疾患やけがの発見が遅れるリスク)、なぜ放射線を使うのか(代替法に関
する情報)についての説明が必要である。
- 82 -
5.おわりに
平成22年の 3 月に医療関係者のための公開講座を開催したが 実際には一般の方で
会場を埋め尽くした。一般の方はわかりやすいもさることながら、正確な情報を望んで
おり、 自然科学系研究者によるリスクコミュニケーションには大いなる需要があると考
えている。
引用文献
1) Starr, C.: Science, 165 (3899), 1232-1238 (1969)
2) International Association for Public Participation (2008) IAP2 Spectrum of Public
Participation,
http://www.iap2.org/associations/4748/files/ IAP2%20Spectrum_vertical.pdf
3)辻さつき、神田玲子:日本リスク研究学会誌 18(2), 33-4 (2008)
4)神田玲子、辻さつき、白川芳幸、米原英典:日本放射線技術学会雑誌, 64(8), 937-947
(2008).
5) Slovic, P., Fischhoff, B., Lichtenstein, S. and Roe F. J. C.: Proceedings of the Royal
Society. A 376: 17–34 (1981).
6)辻さつき、神田玲子:日本放射線技術学会雑誌, 65(2), 254-262 (2009).
7) Slovic, P.: Science, 236, 280-285 (1987).
8) Jiang, T., Hayata, T., et al.: J Radiat Res, 41 No. SUPPL, S63-S68 (2000).
9) Hayata, I. , Wang, C., et al.: J Radiat Res 41 No. SUPPL, S69-S74 (2000).
The Programs of Risk Communication at NIRS
Reiko Kanda
National Institute of Radiological Sciences
In nuclear safety in Japan, PA and risk communication have common aspect that aim is
promotion of public understanding by means of correct information. When PA is performed, the
government is considered to be responsible for decision making of policy in nuclear safety.
Therefore, another aim of PA is that public can accept the policy of government so that it has a
characteristic of publicity. On the other hand, in concept of the risk communication public have
some involvement with policy making. In risk communication, construction of confidence
between stakeholders with exchange of opinions is focused.
National Institute of Radiological Sciences (NIRS) has started a study on investigation of
risk perception in 1983. Contents and significance of studies on risk perception and risk
communication in NIRS have been varied with circumstances of PA and risk communication in
these 25 years. In the present study, historical change and current results in these studies in NIRS
are introduced and significance of risk communication is discussed.
- 83 -
情報発信
1)
–NORM デー タ ベ ー ス
放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
規制科学総合研究グループ
2)
放射線医学総合研究所
岩岡和輝
1)
、黒田典子
2)
情報業務室
、米原英典
1)
[email protected]
1. は じ め に
地 球 誕 生 時 地 球 に は 、自 然 起 源 の 放 射 性 核 種 が 多 く 存 在 し て い た 。な か で も
232
40
9
238
U、
11
Th、 K と い っ た 半 減 期 が 長 い (10 ~ 10 年 )自 然 起 源 の 放 射 性 核 種 は 、 地 球 誕
生 か ら 46 億 年 過 ぎ た 現 在 で も 残 存 し て い る 。 そ の た め 、 現 在 、 地 球 を 構 成 す る
すべての土壌、岩石、鉱石、石炭、石油などの天然資源は、地域や物質で差は
あるものの自然起源の放射性核種を必ず含み、放射能を有している。それらは
自 然 起 源 放 射 性 物 質 (NORM: Naturally Occurring Radioactive Materials)と 一
般的に呼ばれる。
国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 (ICRP)1990 年 勧 告
1)
に お い て 、NORM の 産 業 利 用 に よ っ て
受 け る 放 射 線 は 、 職 業 被 ば く と し て 管 理 す る 必 要 性 が 示 さ れ 、 NORM の 規 制 に 関
す る 国 際 的 な 基 準 が 整 備 さ れ つ つ あ り 、 我 が 国 に お い て も NORM の 利 用 に 関 す る
規 制 方 針 が 検 討 さ れ て い る 。 し か し 、 NORM の 利 用 状 況 に つ い て は 人 工 放 射 性 物
質と異なり、包括的な情報が少ないのが実状である。このような状況を踏まえ
て、放射線医学総合研究所放射線防護研究センター規制科学総合研究グループ
で は 、 NORM の 放 射 能 濃 度 、 使 用 量 、 用 途 、 利 用 時 に 受 け る 線 量 な ど に つ い て の
データを実測や文献から収集し、これによって得た様々な結果をデータベース
化 し て 、WEB サ イ ト で 一 般 に 公 開 し て い る (NORM デ ー タ ベ ー ス )(図 1)。本 稿 で は 、
公 開 し て い る NORM デ ー タ ベ ー ス の 内 容 や NORM の 概 要 な ど に つ い て 紹 介 す る 。
な お 、 本 デ ー タ ベ ー ス の 主 な 目 的 は 、 NORM を 産 業 用 材 料 と し て 取 り 扱 う 作 業 者
や 製 品 と し て 利 用 す る 一 般 の 人 々 に NORM に つ い て 正 し く 理 解 し て も ら う こ と や 、
自 身 の 利 用 す る NORM の 相 対 的 な 放 射 能 濃 度 や 利 用 時 に 受 け る 線 量 を 知 っ て も ら
い安全に取り扱いしてもらうことである。また規制当局、放射線防護の専門家
に 規 制 の 対 象 と な る NORM の 検 討 な ど 規 制 に 必 要 な 情 報 を 資 す る こ と も 目 的 と し
ている。
- 84 -
図 1. NORMデ ー タ ベ ー ス の ト ッ プ ペ ー ジ
http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/NORMDB/index.php
2. NORM デ ー タ ベ ー ス の 内 容
本データベースには、
『 線 量 デ ー タ 』、
『 放 射 能 濃 度 デ ー タ 』、
『 NORM の 一 般 的 な
説 明 』、『 専 門 家 向 け の 情 報 』 と い っ た 情 報 が 蓄 積 さ れ て い る 。 こ こ で は 、 本 デ
ー タ ベ ー ス の メ イ ン の 情 報 で あ る 『 線 量 デ ー タ 』、『 放 射 能 濃 度 デ ー タ 』 の 2 つ
についてのみ具体的に説明する。
『 放 射 能 濃 度 デ ー タ 』 に つ い て は 、 現 在 (2010/12)の と こ ろ 、 実 測 と 文 献 調 査
(1999 年 以 降 )か ら 収 集 さ れ た 855 件 の デ ー タ が 蓄 積 さ れ て お り 、 そ れ ら デ ー タ
は 、「 一 般 向 け ペ ー ジ 」、「 専 門 家 向 け ペ ー ジ 」 の 2 つ の ペ ー ジ か ら 閲 覧 す る こ と
が で き る 。「 一 般 向 け ペ ー ジ 」 で は 、 物 質 名 を ク リ ッ ク す る こ と で そ の 物 質 の 平
均 的 な 放 射 能 濃 度 を 閲 覧 す る こ と が で き る 。 一 般 の 人 (専 門 的 な 知 識 を 持 っ て い
な い 人 )で も 選 択 し た 物 質 の 放 射 能 濃 度 の レ ベ ル を 容 易 に 確 認 で き る よ う に 、 国
際 的 な 規 準 値 (IAEA の 安 全 指 針 RS-G-1.7 で 定 め ら れ て い る 放 射 線 防 護 の 管 理 の
- 85 -
対象として考える必要のない放射能濃度の上限値)
2)
と選択した物質の放射能濃
度 を 比 較 し た グ ラ フ が 表 示 さ れ る よ う に な っ て い る (図 2)。 一 方 、「 専 門 家 向 け
のページ」では、一般向けページで表示される平均的な放射能濃度の基となる
デ ー タ (放 射 能 濃 度 の 個 々 の デ ー タ )を 閲 覧 す る こ と が で き る 。 ま た 、 産 地 、 濃
度の測定方法も閲覧することができる。
図 2. 一 般 向 け ペ ー ジ , 濃 度 表 示 画 面
『線量データ』については、本データベースの放射能濃度データと欧州委員
会 報 告 書 の 計 算 方 法 を 基 に 算 出 さ れ た 約 3000 通 り の 作 業 条 件 に 応 じ た 線 量 が 蓄
積 さ れ て お り 、 そ れ ら デ ー タ は 、「 一 般 向 け ペ ー ジ 」、「 専 門 家 向 け ペ ー ジ 」 の 2
つ の ペ ー ジ か ら 閲 覧 す る こ と が で き る 。「 一 般 向 け ペ ー ジ 」 で は 、 利 用 物 質 、 利
用方法、利用時間の作業条件を選択することで、その作業条件に応じた典型的
な 線 量 を 閲 覧 で き る 。 一 般 の 人 (専 門 的 な 知 識 を 持 っ て い な い 人 )で も 作 業 条 件
に応じた線量のレベルを容易に確認できるように、日常生活で受ける線量と作
業 条 件 に 応 じ た 線 量 を 比 較 し た 図 が 表 示 さ れ る よ う に な っ て い る (図 3)。 一 方 、
「専門家向けページ」では、細かい作業条件を入力することで、その利用に応
じ た 正 確 な 線 量 を 閲 覧 す る こ と が で き る 。 ま た 、 線 量 の 内 訳 (外 部 線 量 、 吸 入 線
量 、 経 口 線 量 )も 閲 覧 す る こ と が で き る 。
- 86 -
図 3. 一 般 向 け ペ ー ジ , 線 量 表 示 画 面
3. 終 わ り に
NORM の 被 ば く 実 態 の 全 容 を 把 握 す る に は 、ま だ 情 報 が 十 分 で は な い と 考 え ら れ 、
よ り 内 容 の 充 実 を 図 っ て い く こ と が 重 要 で あ る 。 ま た 、 将 来 新 た な NORM に 関 す
る規制値が設定されたときに、被ばく防護策のない現状のままでは、社会が混
乱 す る 恐 れ が あ る た め 、有 効 な 被 ば く 防 護 策 を 開 発 し て い く こ と が 重 要 で あ る 。
4. 引 用 文 献
1) International Commission on Radiological Protection, 1990 Recommendation
of the International Commission on Radiological Protection, ICRP
Publication 60 (1991)
2) International atomic energy agency, Application of the Concepts of Exclusio n,
Exemption and Clearance, Safety Standards Series No. RS-G-1.7 (2004)
- 87 -
Transmission of Information -NORM
Kazuki Iwaoka
National Institute of Radiological Sciences
A material containing a significant amount of natural radioactive nuclides such as
238 U
series and
2 32 Th
series is referred to as Naturally Occurring Radioactive Material
(NORM), and people using NORM could be exposed to radiation in large amounts
without knowing. The Regulatory Sciences Research Group, National Institute of
Radiological Sciences (NIRS) has developed and released an original database for
information on radiation exposure due to industrial use of NORM by reflecting the
measured records as well as referring to literatures so as to relieve anxieties among the
general public and to provide extensive data regarding NORM for researchers and
regulators. This presentation will describe an overview of the database.
NORM Database, http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/ NORMDB/ENG/index.php )
- 88 -
Overview and Trends in Radiation Protection Research in UNSCEAR and EU
Wolfgang Weiss
Federal Office for Radiation Protection, Germany
[email protected]
1. Introduction
Both natural and man-made sources of ionising radiation contribute to human exposure and constitute a hazard for human health. Exposure of the population to natural radiation is to some extent
unavoidable and medical use of radiation is now an indispensable part of modern healthcare. The
exposure of workers, and to a smaller extent of the public, to low levels of radiation from nuclear
energy production and other industrial uses of ionising radiation have become an integral part of
industrialised society. These uses are heavily regulated.
Judgements on radiation protection standards are highly dependent upon a) scientific knowledge
that is reviewed in cycles by national committees and by a committee of the United Nations (UNSCEAR) and b) the recommendations made by the International Commission on Radiological
Protection (ICRP) that seek to take account of such scientific development. The acquisition of new
scientific knowledge through research is therefore a crucial element in improving the protection of
the public, radiation workers and medical patients from the adverse health effects of radiation.
Although much is known about the quantitative effects of exposure to ionising radiation, considerable uncertainties and divergent views remain about the health effects at low doses. UNSCEAR
defines low doses as those of 200 mGy or less and low dose rates as 0.1 mGy/min averaged over
one hour or less for radiations such as external X-rays and gamma rays but notes that several values are used in the literature to define low dose and low dose rate.
Outside of Europe, the US and Japan have established specific programmes of low dose risk research. Many of the larger Member States of the EU also have considerable research activities in
low dose risk. However, beyond the EURATOM research programme, little has been done to integrate these national programmes.
There has been a decline in scientific and regulatory expertise in radiobiology and radiotoxicology
during the last decades worldwide, but plans to establish new nuclear plants and the increasing
application of ionising radiation in medicine now accentuate the need to revitalise the field and
research capacity. All these aspects highlight the necessity to address these issues at a strategic
level. The key elements of such a research strategy for low dose risk research in Europe are described in the 2009 report of the High Level and Expert Group.
The report
 Identifies key policy issues;
 Assesses the state of science and the main research challenges;
 Proposes a European research strategy and a way forward for its implementation.
The over-arching policy questions addressed in the HLEG report are:
 How robust is the current system of radiation protection and risk assessment in the light of
scientific uncertainties?
 How can it be improved?
The radiation protection system, in order to make it practicable, is underpinned by a number of
value judgements and simplifying assumptions based on the existing scientific knowledge (see Fig.
1). The robustness of each of these value judgements or simplifying assumptions determines that
of the protection system as a whole. It is pertinent, therefore, to address each of the key value
judgements or simplifying assumptions separately.
- 89 -
Fig 1 Key value judgements in the radiation protection system
How robust is the system of radiation protection and risk assessment?
Shape of dose response
LNT
• Linear non-threshold
Radiation quality
wR
Tissue sensitivities
wT
• Radiation weighting factors
• Tissue weighting factors
Radiation Protection System
• Dose limits
• Constraints
• Optimisation
• Dose as surrogate for risk
• Additivity
• Cancer and hereditary effects
?
Internal emitters
• Biokinetic models
• Dosimetric models
?
Individual sensitivities
• Genetics • Age
• Gender
• Lifestyle
• Other exposures
• …….
Non-cancer effects
• Circulatory diseases
• Cognitive functions
• Lens opacities
• …….
8.8.08
The more important issues identified in the HLEG report are:
 The shape of dose-response for cancer;
 Tissue sensitivities for cancer induction;
 Individual variability in cancer risk;
 The effects of radiation quality (type);
 Risks from internal radiation exposure;
 Risks of, and dose response relationships for, non-cancer diseases and
 hereditary effects.
For each of these issues, the HLEG report provides a summary of the current state of knowledge
and identifies the most promising future research directions.
It has been proposed by the HLEG that these goals can best be achieved through the launch of a
new initiative, which is described as “Multidisciplinary European LOw Dose Initiative”
(MELODI).
2. Current and future work of UNSCEAR
The mandate of UNSCEAR includes the periodic review of the levels, effects and risks of ionizing
radiation worldwide in order to
 Identify emerging issues including research needs;
 Evaluate levels and effects;
 Improve knowledge
for the General Assembly, the scientific community, and the public.
The most recent scientific findings have been documented in the 2006 summary report to General
Assembly (A/61/46) and five scientific annexes
– Volume I (published April 2008):
• Cancer epidemiology
• Non-cancer epidemiology
– Volume II: (published July 2009):
• Non-targeted and delayed effects
• Effects on immune system
• Sources-to-effect assessment of radon risks.
- 90 -
and in the 2008 summary report to General Assembly (A/63/46) and five scientific annexes
– Volume I (published July 2010):
• Medical exposures
• Public and occupational exposures
– Volume II (expected by the end of 2010):
• Exposures in accidents
• Radiation effects of Chernobyl accident
• Effects on non-human biota.
In these most recent reports UNSCEAR has reviewed many epidemiological studies on radiation
effects in exposed populations, including radium dial painter, early x-ray exposures of doctors and
patients, the population at the Semipalatinsk test site, the Mayak workers, and the survivors of the
atomic bombing in Japan. The review of all new relevant studies took advantage of the longer
follow-up of exposed populations, particularly for the Hiroshima and Nagasaki survivors. The
overall conclusion of these review was: there is no major change in the risk estimates for cancer in
the dose range 100 to 1000 mSv as compared to previous estimates. Table 1 summarizes the results.
Table 1 Live time risk estimates averaging over five populations of all ages, both sexes
Risk of exposure-induced acute 0.1 Sv
death (%/Sv)
Solid cancer
3.6–7.7
acute 1 Sv
Leukaemia
0.6–1.0
0.3–0.5
4.3–7.2
The reviews of the new data implicitly account for extrapolation to low doses eg. there was no
need for a DDREF. The risks to children were 2–3 times higher that those of adults.
Specific risk factor have been developed for organs which have not been considered in the 2000
report eg salivary gland, rectum, pancreas, ovary, kidney, and cutaneous melanoma.
The occurrence of cardiovascular disease has been reported for high doses, eg well above 500 mSv
in the cohort of the of the A-bombs survivors but there was no clear evidence at lower doses. In
addition, according to the published scientific results which were available up to the year 2006 the
mechanisms for the induction and/or promotion of cardiovascular disease remained unclear. The
2010 UNSCEAR review of post-2006 data and new technical approaches for radiation mechanisms describes the current situation of knowledge as follows: There is emerging evidence from
recent epidemiological studies indicative of raised risks below doses of 1–2 Gy and, in some cases,
much lower. However, the associated mechanisms are still unclear and the estimation of risks at
low doses remains problematic. This is an area of active research and the Committee will continue
to keep developments under review. Recent studies also suggest that cataracts may be associated
with low-dose radiation exposure. The induction of such abnormalities in the lens of the eye has
been recognized for some years as an effect of high-dose exposures. As with circulatory diseases,
the Committee will continue to monitor and review new findings in this area.
Ongoing work includes scientific topics such as
– Exposures from energy production;
– Attributibility of health effects to radiation exposure;
– Uncertainty in radiation risk estimation.
During its 2010 session the Committee reviewed plans for conducting work on biological effects
of selected internal emitters, the development of a knowledge base on radiation levels and effects,
- 91 -
medical radiation exposures, enhanced exposures to natural sources of radiation due to human
activities, and on improving public information. The Committee decided that the work on selected
internal emitters should focus on tritium and uranium. In addition the Committee considered proposals for its future programme of work. It decided to conduct some preparatory investigations
into the merits and appropriateness of preparing substantive documents on radiation effects and
risks in children, and on low dose and low dose rate epidemiology of natural and artificial environmental exposures of the public.
3. The EC programme on research and training (EURATOM)
The European Commission is now (end of 2010) entering an intense period of activity to prepare
FP8, which includes fission and fusion research. FP8 will be the main Community instrument to
deliver support to science and innovation as part of the Europe 2020 Strategy. The EC has asked
MELODI to provide input to this process (see below). At the same time the proposal for an extension to Euratom FP7 for the years 2012 and 2013 is prepared. A summary of the research projects
funded by EC during the period 2007 to 2010 is provided by Table 2.
Table 2 Research projects funded by the European Commission (FP 6/7 EURATOM)
Title
Acronym
Programme area
High level expert group on European low
dose risk research
Low Dose Research towards Multidisciplinary Integration
Agenda for research on Chernobyl health
(ARCH)
Quantification of risks associated with low
and protracted doses
Sustaining access to tissues and data
from radiobiological experiments
The Chernobyl tissue bank coordinating
international research on radiation induced thyroid cancer
Prospective cohort studies of children
with substantial medical diagnostic exposure
Epidemiological Studies of Exposed
Southern Urals Populations
The mechanisms of cardiovascular risks
after low radiation doses
Non Targeted Effects of low Dose
Dedicated CT of the female breast: feasibility, optimization and comparison to
standard x-ray procedures (digital mammography and tomosynthesis)
Early and late health risks to normal/healthy tissues from the use of existing and emerging techniques for radiation
therapy
Optimization of radiation protection of
medical staff
Safety and Efficacy of Computed Tomography (CT): A Broad Perspective
Safety and Efficacy for New Techniques
and Imaging Using New Equipment to
Support European Legislation: Supporting Digital Medicine
HLEG
Low Dose Risk
DOREMI
Low Dose Risk
ARCH
Low Dose Risk
RISC-RAD
Low Dose Risk
STORE
Data bases and tissue banks
CTB
Data bases and tissue banks
CHILD-MEDRAD
Epidemiological studies
SOLO
Epidemiological studies
CARDIORISK
Non-cancer effects
NOTE
BREAST CT
Non-cancer effects
Medical use of radiation
ALLEGRO
Medical use of radiation
ORAMED
Medical use of radiation
CT Safety and
Efficacy
SENTINEL
Medical use of radiation
- 92 -
Medical use of radiation
European Approach to Nuclear and Radiological Emergency Management and
Rehabilitation strategies
Towards a European network of excellence in biological dosimetry
Design of optimised systems for monitoring of radiation and radioactivity in case
of a nuclear or radiological emergency in
Europe
Environmental Risk from Ionising Contaminants: Assessment and Management
Coordinated Network for Radiation Dosimetry: Collaborating for Better Radiation Protection
EURANOS
Emergency management
TENEB
Emergency management
DETECT
Emergency management
ERICA
Protection of the environment and
radioecology
Protection at the workplace
CONRAD
4. The MELODI initiative
The association “Multidisciplinary European LOw Dose Initiative” (MELODI) has been established as a legal entity in October 2010. It has 15 founding members from 11 EU member states
(for details see www.melodi-online.eu). They jointly state their intention to bring together, in a
step by step approach and with a view to sustainability, their respective R&D programmes in the
area of low dose health effects into an integrated trans-national programme capable of addressing
the challenges of low dose risks, in accordance with the strategy described in the HLEG report.
They decided to act jointly for the purpose of:
o reviewing their respective current R&D programmes and related activities (funding
processes, training and education, knowledge management, maintenance and development of key infrastructures, …) with a view to elaborate proposals towards their
progressive integration within the scope of a future joint strategic research agenda
(SRA),
o elaborating proposals for a sustainable trans-national organisation capable of managing such a SRA, leading to the formal setting up, as soon as possible, of such an organisation,
o developing appropriate interface with the radiation protection research community, as
well as the wider biology research community, in order to maximize the research potential in the area of low dose health effects,
o ensuring appropriate exchange of information with responsible organizations at governmental level in the countries of the signatory organisations, as well as at EU institutions level, particularly the European Commission services, as well as with all key
stakeholders.
According to MELODI, priorities for forthcoming and long term future research should take into
account the need to investigate effects of ionising radiation of different qualities on radiationinduced cancer and non cancer diseases as well as on individual variation of radiation risks. The
long term priorities include the following areas:
(1) for radiation-induced cancers and non cancer diseases

Identification, establishment and continued follow-up of suitable cohorts for epidemiological studies related to cancer and non-cancer effects.

Identification, development and validation of biomarkers for radiation exposure, effects
and disease.

Continued development of suitable animal models for radiation carcinogenesis and noncancer diseases which bear clear relationships to human diseases.

Use of suitable human cellular models for radiation carcinogenesis and non-cancer diseases.
- 93 -
(2) for radiation-induced cancer diseases

Examination of the impact of low dose and low dose rate radiation effects on pathways/processes contributing to carcinogenesis, including dosimetry, animal models and
cellular models (incl. human somatic stem cells), usable to provide experimental platforms to model human diseases. This involves the understanding of the relationship between early and late effect and the role of delayed genetic instability in radiation carcinogenesis instability.

Identification of the nature and number of target cells at risk for a specific cancer in humans.
(3) for radiation induced non cancer diseases

Examination of the impact of low dose and low dose rate radiation effects on pathways/processes contributing to cardio-vascular disease, incl. dosimetry.

Identification of the nature of target cells at risk for specific non-cancer diseases in humans.

Examination of the impact of low dose and low dose rate radiation effects on pathways/processes contributing to cerebro-vascular disease and cognitive function.
(4) for individual and general health and radiation protection issues

Understanding the impact of inter-individual variation of radiation risks in relation to
cancer and non-cancer diseases, and how this might impact on dose response relationships in populations.

Clarification of the contribution of effects in target cells and the tissue environment and
interaction between them at different dose levels to the development of radiationassociated diseases.

Examination of the impact of low dose and low dose rate radiation effects on immune
function.

Understanding of the effect of age-at-exposure on radiation risk.

Examination of the impact of low dose and low dose rate radiation effects on stems cells
(including researches on several molecular and cellular aspects of the long-term effects
of low doses).

Better understanding of the risks of internal emitters following internal contamination
with radionuclides.
MELODI is currently in the process of organising all these priorities within a Strategic Research
Agenda (SRA). In view of the most recent developments, MELODI recommends that short to
medium term Priority (funding period 2011/2012) should be given to:

Quantification of the role of ionising radiation in cardio-vascular disease development
after low dose (< 500 mSv) irradiation.

Development of suitable biomarkers, regarding immediate post exposure radiation as
well as long time period after exposure, for cellular and tissue effects and disease. The
biomarkers should be usable for molecular epidemiological studies of cancer risk < 100
mSv and for non-cancer risk studies below 500 mSv.

Clarification of the role of effects observed in target cells an in the tissue microenvironment, with clear focus on low doses, in mediating radiation responses and contributing
to disease. This includes the development of suitable animal models for the identifica-
- 94 -
tion and quantification of the nature of the interaction between target cells in tissue environment. It may also include stem cell research (incl. human somatic stem cells and iPS,
pluripotent stem cells).

Identification, robust development and analysis of suitable epidemiological cohorts,
animal models and associated experimental studies capable to improve low dose radiation risk evaluation by reducing uncertainties including those contributed by exposure
assessment. This includes cohorts exposed to internal contaminations in order to address
the uncertainties inherent in dose and risk estimation for internal emitters.

Identification of the nature of the respective effects, and of age-dependence factors of
radiation risk in the low dose range after acute, chronic and fractionated radiation exposure.

Analysis of health effects with the focus on leukaemia after exposure with cumulative
doses of 100 mGy and below.

Development of sustainable archives for data and biological material for future use in
radiation sciences.
5. References
W. Weiss, M. Belli, P. Legrain, J. Repussard, H. Walker, S. Saloma, M. Atkinson, E. Cardis, R.
Cox, A.t.Eliot, J. Hall. M. Harms-Ringdahl, J.-R. Jourdin, A. Ottolenghi, High Level and Expert
Group on European Low Dose Risk Research, European Commission; Report EUR 23884, European Communities, 2009
M. Belli; A. Ottolenghi; W. Weiss The European strategy on low dose risk research and the role of
radiation quality according to the Recommendations of the "ad hoc" High Level and Expert Group
(HLEG), Radiation and Environmental Biophysics, 2010
Salomaa, Sisko; Weiss, Wolfgang; Repussard, Jacques; Bloch, Gilles; Hardemann, Frank, Macellari, Velio; Harrison, John; Harms-Ringdahl, Mats; Vaz, Pedro; Zölzer, Friedo; Jouve, Andre;
Averbeck, Dietrich; Ottolenghi, Andrea; Sabatier, Laure; Atkinson, Michael; Bouffler, Simo;
Gourmelon, Patrick; Jourdain, Jean-René; Simone, Giustina; Baatout, Sarah; Jung, Thomas;
Cardis, Elisabeth and Hall, Janet, European Low Dose Risk Research Strategy; IRPA 2010; Helsinki
- 95 -
Findings obtained from mechanism studies
Mitsuru Nenoi
Radiation Effect Mechanisms Research Group,
National Institute of Radiological Sciences
[email protected]
The purpose of Radiation Effect Mechanisms Research Group is to establish a scientific basis
for the risk assessment of low-dose radiation that can be used to refine the regulatory
framework. Several subthemes have been investigated, including “untargeted radiation
carcinogenesis” and “radioadaptive responses”. For untargeted radiation carcinogenesis, we
have established a mouse experiment system where carcinogenesis due to changes in the
microenvironment could be analyzed. It was found that, when thymuses of unirradiated
new-born mice were transplanted in thymectomized, irradiated mice, T-cell lymphomas of
transplanted thymus origin were induced depending on the radiation dose. This untargeted
radiation carcinogenesis was observed with the doses as low as 0.1 Gy when scid mice were
used as the host. For radioadaptive responses, we identified the genes associated with the
radioadaptive response of mouse fetuses. When pregnant ICR mice are irradiated with high
dose of X-rays (4 Gy) on day 12 after fertilization, only about three living fetuses will be born
per dam, and most of them will be malformed. But if the mice are pre-exposed to low doses of
X-rays on day 11, the number of living fetuses will be increased, and the fraction of
malformed fetuses will be decreased. By performing microarray analyses and RNA
interference analyses, we could identify several genes, such as Tead3 and Cacna1a, which
were functionally involved in radioadaptive response of mouse fetuses.
Progress of Research
1) Radiation Carcinogenesis Research Team
Radiation risk of cancer induction has been evaluated based on direct effects of radiation
on irradiated cells. It is known that radiation causes cancer through two types of damage:
DNA damage directly induced in target cells and radiation-induced change of a
microenvironment. The contribution of the latter untargeted carcinogenesis to
radiation-induced cancer risk has not been evaluated. To elucidate its contribution to radiation
risk, we have established a thymus transplantation system for assessment of untargeted effects
of radiation on carcinogenesis. When thymuses of unirradiated new-born wild type mice were
transplanted in thymectomized, irradiated scid mice, T-cell lymphomas of transplanted
thymus origin were induced at 0.1 or 0.2 Gy, depending on the transplantation sites
(subcutaneous or under the kidney capsule). The results indicate that low doses of -rays
induce untargeted lymphomagenesis in a Prkdc-deficient condition. Bone marrow
transplantation prevented this untargeted carcinogenesis by supplying progenitor T cells into
transplanted atrophic thymuses and relieving them from radiation-induced thymic hypoplasia,
which demonstrated a relationship between induction of untargeted lymphomagenesis and
thymic hypoplasia. We also determined whether Notch1, one of the major oncogenes related
to lymphomagenesis, was rearranged in the 5' region of the locus in untargeted lymphomas.
- 96 -
Notch1 was interstitially deleted in untargeted lymphomas at a frequency similar to that in
lymphomas induced by whole-body irradiation. Furthermore, Notch1 was deleted in
untargeted lymphomas through mechanisms similar to those in lymphomas induced by
whole-body irradiation. These results suggest that the development of radiation-induced
untargeted lymphomas share the same mechanisms with those in lymphomas induced by
whole-body irradiation.
2) DNA Repair Gene Research Team
DNA double strand breaks (DSBs) are highly cytotoxic lesions that are generated by
ionizing radiation (IR), various DNA-damaging chemicals and DNA replication itself. Failure
to repair DSBs, or their misrepair, may result in cell death or chromosomal rearrangements,
including deletions and translocations. This chromosomal instability can promote
carcinogenesis and accelerate aging. The repair of DSBs is indispensable for genomic
integrity. Cells, therefore, have invested in at least two pathways to repair DSBs, namely
homologous recombination repair (HRR) and non-homologous end-joining (NHEJ). In higher
organisms, NHEJ can function in all phases of the cell cycle and is the predominant repair
pathway. Our chief aim is, in this context, to clarify the induction-mechanism of mutation by
radiation. In particular, identification of the modulatory factor(s) for a low-dose radiation-risk
in NHEJ and the elucidation of the molecular mechanism(s) involved with those factor(s) are
the focus of our interest. Up to the present, we have established three cell lines having XRCC4,
Artemis and MDC1 (mediator of DNA damage checkpoint 1) disrupted, respectively, by a
gene targeting technique in a human colon tumor cell line HCT116 to define the biological
roles of NHEJ-related genes on DNA damage induced by IR. We then demonstrated higher
sensitivities of these three knockout cell lines to IR and various chemical reagents that induce
different types of DNA damages by a survival assay in comparison with parental HCT116
cells. Frequencies of chromosomal aberration induced by IR were also significantly higher in
all deficient cell lines than that in the parental cells. In addition, we showed that MDC1
closely correlates with regulation of the phosphorylation, at least, of ATM and DNA-PKcs
after IR.
In the current study, we determined that frequency of the HPRT gene mutation induced by
X-rays (0.5-2 Gy) was significantly increased in a dose-dependent manner in MDC1-/- cells,
whereas the induction of mutation beyond the basal level was not observed in parental cells
up to 2 Gy of X-rays. This radiation-induced mutagenic phenotype of MDC1-/- cells is
consistent with previous findings in survival rate and chromosomal aberration assays.
Subsequently, these findings suggest that MDC1 plays an important role in DNA damage
signaling/repair machinery in human cell lines.
Meanwhile, we analyzed gene expression by use of a DNA micro-array technique to find
genes influenced by low-dose radiation in MDC1-/- cells as well as in parental HCT116.
Enhancement of expression levels of genes coding for factors related to DNA replication, cell
cycle and DNA repair was exhibited in MDC1-/- cells compared with parental HCT116 cells
under normal culture conditions, while the expression levels of genes related to translation
and protein folding were suppressed. Interestingly, we found that MDC1 is associated with the
expression of genes coding for factors which function in pathways of aging and circadian
rhythms. In any event, MDC1 may regulate many aspects of DNA damage response pathways,
and may be associated with stabilizing the interactions and retention of NHEJ components at
the site of DSBs. We are currently working on validation of the expression profiles of the
- 97 -
genes mentioned above, and investigating the influence of X-ray irradiation on gene
expression profiles in MDC1-/- cells.
3) Developmental Anomalies Research Team
To elucidate the mechanism of the effects of low dose radiations on the development of
mice as well as neural crest-derived cells, melanocytes at the cellular level, pregnant females
of C57BL/10J mice at 9 days of gestation were whole-body irradiated with a single acute dose
-rays (0.1, 0.25, 0.5, and 0.75 Gy). The effect was studied by scoring changes in the
postnatal and prenatal development of mice as well as cutaneous coats 22 days after birth and
in the melanocyte development in the prenatal epidermis and hair follicles. The percentage of
live birth and body weight at day 22 were not affected by the irradiation, whereas the survival
to day 22 was significantly decreased in mice irradiated with 0.75 Gy -rays. The frequency
and size of white spots (white hairy skin devoid of melanoblasts and melanocytes) in the
mid-ventrum increased in irradiated mice in a dose-dependent manner. In 18-day-old
embryos, the frequency of abnormalities in tails and eyes as well as of hemorrhage increased
as dose increased. In contrast, the number and body weight of embryos were not affected by
the irradiation (0.1 to 0.75 Gy). The numbers of melanoblasts and melanocytes in the
epidermis and hair follicles also decreased in a dose-dependent manner. The numbers
decreased significantly even in mice irradiated with 0.1 Gy -rays. These results suggest that
-rays seem to have a great effect on post- and prenatal development of mice as well as on
melanocyte development.
4) Radioadaptive response research team
Exposure of low doses of ionizing radiation can induce protective mechanisms against a
subsequent higher dose of irradiation. This phenomenon, called radiation-induced adaptive
response (AR), has been described in a wide range of biological models. We previously
demonstrated the existence of AR in mice during late organogenesis. In the present study,
induction of AR by priming X-rays in combination with challenging irradiations from high
LET accelerated heavy ions (HI) in C57BL/6J Jms mice was examined, using 30-day survival
after challenging irradiations as an index. Three kinds of accelerated HI from mono beams of
carbon, silicon and iron with LET values of about 15, 55, and 200 keV/µm, respectively were
examined. The priming low dose of X-rays at 0.50 Gy significantly reduced mortality from
the high challenging dose of carbon or silicon particles, but not from iron particles. These
results indicate that AR could be induced by priming low LET X-rays in combination with
subsequent challenging high LET irradiations from certain kinds of accelerated heavy ions,
and successful induction of AR would be a possible event relating to the LET value or/and the
HI particle of the challenging irradiations. We here demonstrated the existence of AR induced
by low LET X-rays against high LET irradiations at the whole body level in a mouse model
for the first time. These findings would provide new insight into studies on radiation-induced
AR in vivo.
Major Publications
1. Hirobe, T., Shinpo, T., Higuchi, K. and Sano, T. Life cycle of human melanocytes is
regulated by endothelin-1 and stem cell factor in synergy with cyclic AMP and basic
fibroblast growth factor. Journal of Dermatological Science 57, 123-131, 2010.
2. Hirobe, T. Ferrous Ferric Chloride Stimulates the Proliferation of Human Skin
- 98 -
Keratinocytes, Melanocytes, and Fibroblasts in Culture, Journal of Health Science
(Tokyo, Japan), 55, 447-455, 2009
3. Zakeri, F., Hirobe, T. A cytogenetic approach to the effects of low levels of ionizing
radiations on occupationally exposed individuals, European Journal of Radiology, 73,
191-195, 2010
4. Taki, K., Wang, B., Nakajima, T., Wu, J., Ono, T., Uehara, Y., Matsumoto, T., Oghiso,
Y., Tanaka, K., Ichinohe, K., Nakamura, S., Tanaka, S., Magae, J., Kakimoto, A., Nenoi,
M. Microarray analysis of differentially expressed genes in the kidneys and testes of mice
after long-term irradiation with low-dose-rate gamma-rays., Journal of Radiation
Research, 50, 241-252, 2009
5. Nenoi, M. Regulation of the p21 gene promoter in response to clinically low dose
radiation., Data Science Journal, 8, BR42-BR48, 2009
- 99 -
Impact of Low-Dose Mechanistic Research on Radiation Protection
Antone L. Brooks
Pacific Northwest National Laboratory
Richland WA. 99352-1671
[email protected]
I. Introduction
The major questions associated with understanding the risks from low dose radiation are: 1)
What is the shape and slope of the Dose-Response relationship in the low dose region? 2) Is a
dose and dose-rate effectiveness factor needed to estimate risk in the low dose region? 3) Are the
mechanisms of action for the biological responses in the high and low dose region the same? 4)
How can we relate radiation dose and response in cell and molecular systems to risk and
communicate the results of the research that clarify these relationships to both the public and those
that need the information to set radiation standards? These have been important questions since
the advent of radiation biology. The primary goal of this manuscript is to help address these
questions. An additional goal is to provide a brief summary of the data generated in the DOE
Program that will provide a scientific basis for low dose radiation standards. Finally, the impact
of the research on models and low dose standards will be discussed. The research from the
Program has provided extensive information that has helped define biological responses in the low
dose region. Serious challenges still remain and must be resolved before this information can be
used to evaluate if standards associated with the risk from low dose radiation exposures are
adequate and appropriate.
One of the major problems associated with communication of dose-response relationship is
the lack of understanding of radiation dose. It is important to recognize the wide range of doses
that we as the public are exposed to on a daily basis. One of the prime achievements of the
Program has been to develop a Dose-Ranges Chart that is easy to understand and very helpful in
communicating radiation dose to every day uses and experiences that are easy to understand
(Figure 1).
11
ISCORS Update Nov 2010
U.S. Department of Energy • Office of Science • Biological and Environmental Research
Figure 1: Dose-ranges chart. Each of the lines on this chart are separated by a factor of 10.
The chart is designed to be able to look at every day experiences with radiation
and determine where the dose is relative to other activities and exposures.
- 100 -
This chart can be viewed almost like a Richter scale with each line increasing by a factor of
ten. Thus the events listed on the lowest line would be of little concern while those at the top are
of great concern. This chart provides a very useful tool to relate daily interactions with radiation
to radiation dose.
When this DOE low dose research was initiated, there were several well-accepted radiation
paradigms some of which need to be challenged. For example, it was assumed that the cell was
the important biological unit for determining radiation response and that energy deposited in an
individual cell was responsible for the biological effect observed in that cell. This was called the
“hit” theory. Results from the recent research from the Program has demonstrated that this is not
the case and that “bystander” cells, which have no energy deposited in them, also can respond to
radiation exposure with a wide variety of different changes. Some of these biological changes
seem to be damaging and others protective.
Another widely held paradigm was that cells act independently and that cancer risk could be
evaluated based on single cell responses. However, it has now been well established that
extensive cell/cell, cell/matrix and tissue/tissue interactions exist which determine the outcome of
any radiation exposure and demonstrate that it “takes a tissue to produce a tumor” (Barcellos-Hoff
2001.)
Research has also demonstrated that in addition to causing mutations, ionizing radiation
changes expression of a large number of genes, epigenetic processes and proteins. It has also
demonstrated that post-translational changes in proteins can be modified by low doses of radiation.
These changes are altered as a function of radiation dose, with unique low dose and high dose
genes and proteins identified which change the fate of the cells. This research demonstrates that
very different mechanisms of action are involved in the response following exposure to low doses
of radiation than those activated by high doses.
It has been demonstrated that, in addition to mutations in individual cells, radiation can also
produce genomic instability in cell populations and that this instability can be seen only after
many cell divisions. The role of genomic instability in radiation-induced cancer, especially at low
doses, represents a major paradigm change and a major focus of the research in the DOE Program.
All of these processes are inter-related and each is highly dependent on the genetic background of
the biological system being studied. Figure 2 provides a quick visual representation of these
interactions and the role of genetic background on the responses.
Biological Responses Induced by
Low Doses of Radiation
Adaptive
Response
Genomic
Instability
Bystander
Effects
Figure 2: The figure is designed to show the inter-relationships that exist between
Adaptive response, Genomic instability and Bystander effects. All are
influenced by thegenetic background of the biological system being studied.
- 101 -
II. Materials and Methods
This paper represents a review of the data produced by the DOE Low Dose Radiation
Research Program from its start in 1998 to 2010. It is not all inclusive but is designed to hit the
high points of the research accomplishments.
III. Results (Review of Data)
The shape of the dose-response relationships following low doses remains the most important
questions in the field of radiation biology. Research conducted by the DOE program has
demonstrated that the “adaptive” responses can occur in many animal, tissue, cell and molecular
systems at low doses and not only modify the response to subsequent high doses but also decrease
the background frequency of the endpoints of interest.
This suggests the possibility of a
radiation-induced decrease in cancer risk in the low dose region. When considering the response
to low doses of radiation the National Academy of Sciences BEIR VII committee (NAS/NRC
2006) reviewed the data generated by the Program and at that time stated that the mechanistic
basis for adaptive responses, bystander effects and genomic instability were not well enough
defined to include any of these in estimation of risk in the low dose region. On the other hand the
French Academy supported the data from the Program (Tubiana et al. 2005). The mechanisms
involved in these and other responses are currently the primary focus of the current DOE Program
and of this manuscript.
A. Mechanisms of Action DNA damage and repair
a. Differences between radiation-induced and spontaneous DNA damage
Research conducted by the Program has made progress in identifying the differences
between radiation- induced damage and that produced by endogenous factors. The mechanisms
involved in the production and repair of radiation induced clustered DNA lesions has been
reviewed (Prise et al. 2001) and remains an area of continuing research effort. This research
suggests that clustered lesions are not a marker of radiation exposure (Sutherland et al. 2003)
but are part of normal human biology and may be produced by a wide range of sources both
endogenous and from other environmental insults in addition to ionizing radiation (Bennett et al.
2005).
b. DNA alterations as signaling molecules
Radiation-induced DNA damage is detected by cells and results in the initiation of a
number of signaling processes, many of which are involved in the repair of DNA damage. The
repair of DNA damage has been reviewed and is available on the web as a flow chart
www.abcam.com/nuclearsignal.
c. The role of ATM and P-53 in Signaling
An important breakthrough in the study of DNA damage and repair was the observation
that individuals with the disease Ataxia Telangiectasia have a deficiency in DNA repair. It was
determined that people with this disease have a mutated gene which produces an altered protein
called ataxia telangiectasia mutated protein. (ATM). This gene is responsive to radiation and
has been carefully studied, the protein isolated and characterized, and the normal protein
associated with the mutated gene was able to correct the phenotype of cells that had the mutated
ATM gene (Lavin 1999).
Biological pathways have been studied in the ATM cascade and many of these pathways
involve the p53 gene (Amundson et al. 2005). It is well established that p53 is the “guardian of
the genome” and it is involved many repair processes (Amundson et al. 2002) as well as in the
induction of cell death and apoptosis (Slee et al.2004). A well defined data base (http://wwwp53.iarc.fr/) has been developed that summarizes the involvement of mutated TP53 genes in the
- 102 -
induction of human cancers. Research on p53 has been very extensive. PubMed has about 3600
citations per year on this research (Deppert 2007). Thus, large data bases are available that
summarize the knowledge about the role of p53 (http://p53.bii.a-star.edu.sg) in radiation
response and cancer induction (Lim et al. 2007, Amundson et al. 2008).
B. Chemical factors and metabolic pathways modified by low doses of radiation
The radiation-induced pathways are interlinked so it is not possible to discuss them
independently. As radiation induced changes in signaling pathways continue they can modify
the signaling and the
biological outcome. Early in the DOE Program, it was recognized that tumor growth factor beta
(TGFwas one of the factors that was important in the expression and modification of direct
and bystander induced radiation induced damage both in vitro and in vivo (Barcellos-Hoff and
Brooks 2001, Ewan et al. 2002). Other important cellular changes directly related to TGF may
play a role in cancer development. Additional research in the low dose region is essential to
determine if cancer risk in this region can be impacted by TGF.
NF-κB (nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells) is a protein
complex that controls the transcription of DNA. It is found in almost all animal cell types and is
involved in cellular responses to stimuli such as stress, cytokines, and free radicals produced by
both ionizing and ultraviolet irradiation. NF-κB is important in maintaining genomic stability
and is modified in cells that display radiation induced genomic instability.
Clusterins are stress-inducible polypeptides that play an important role in cell survival,
proliferation and the induction of cell death through apoptosis. The cellular location of clusterin
modifies the activity. It has been demonstrated that secretory clusterin plays an important role
in many of the radiation responses (bystander effects, genomic instability and adaptive
responses) induced by low doses of radiation (Kolokov et al. 2004).
C. Radiation-induced changes in Gene expression
Low doses of radiation induce a different spectrum of changes in genes and proteins than
those seen following high radiation doses (Robson et al. 1997; Hande et al. 2003; TomascikCheesman et al. 2004). These changes represent one of the most basic changes elicited by
radiation exposure in the low dose region. Since gene expression is different after high and low
radiation doses this seems to address one of the major questions in radiation biology and suggests
that the mechanism of action of low and high doses are different. Modification of genes involved
in control of the cell cycle, changes in oxidative metabolism, and alteration of signaling pathways
were induced by low doses of radiation. These changes are reflected in adaptive responses that
are produced by both low total doses and low radiation dose rates. Such changes have been shown
to result in protection and sometimes even in the decrease in biological damage expressed as cell
transformation or mutations below the level observed in control cells (Elmore et al. 2008, Sykes et
al. 2006a).
D. Radiation Effects on the ROS Status of Cells and Tissues
Research emphasized the important role of the reactive oxygen status of the cells and
oxidative stress in the development of radiation-related disease. In the low dose region, it was
determined that protective mechanisms were activated that involved changes in the
mitochondria, the ROS status of the cells and the modification of radio-protective chemicals,
including the well known SH containing chemicals. This research provided a very good link
between low doses of radiation and the observed biological responses like adaptive response,
bystander effects and genomic instability.
Extensive research has demonstrated that in the low dose region protective or adaptive
responses are induced which can alter the responsiveness of cells and also decrease the level of
damage below that observed in control cells and tissues. The role of the low dose changes in
ROS status of the cells on the induction of adaptive responses has been and remains an
important area of research, since adaptive responses can have a major impact on the shape of the
- 103 -
dose-response relationship in the low dose region. As the research has progressed from the
single cells exposed in vitro to more complex cell and tissue relationships, it has become evident
that both the tissue architecture and oxidative metabolism are critical parts of the induction of
adaptive responses (deToledo et al. 2006). Other research has demonstrated that by altering the
ROS status of the cells it is possible to provide protection against radiation of a wide range of
different LET such as that which would be encountered during space exploration. In these
studies, both antioxidants and Bowman Birk proteins resulted in marked reduction of the free
radicals in cells and protected against radiation- induced damage (Kennedy et al. 2006).
The redox status of the cell plays a critical role in signaling in cancer biology. This subject
has been reviewed and the role of low dose radiation and stress and how it alters gene
expression, senescence, redox status of the cells and the risk for cancer provides rather strong
links between these factors (Gius and Spitz 2006). Thus, the ROS status of the cells is critical
during cancer development and the response to radiation in altering this status is very dependent
on the radiation dose.
There are strong relationships between environmentally induced stress, cellular oxidative
stress, chronic inflammation and the induction of cancer. Many inflammatory diseases result in
major risk factors in the production of cancer. Thus, the role of ROS in the maintenance of
genomic stability has been the subject of research in the DOE Program. It was determined that
changes in the ROS status of cells in culture were important in the production of apoptosis and
reproductive failure of cells. These changes were evident in radiation exposed cells with a
compromised genomic integrity (Limoli et al. 1998) and resulted in chromosomally unstable
cells (Limoli et al. 2003). The relationships between normal metabolism, mitrochondrial
dysfunction, levels of reactive oxygen species and radiation-induced genomic instability have
been carefully reviewed (Kim et al. 2006).
High doses increase the stress and reactive oxygen levels in the tissues and cells and
increase risks, low doses seem to increase the level of MnSOD and other protective compounds
which act to decrease ROS, protect cells and reduce cancer risks. To be useful in risk
assessment radiation responses need to be extended and coordinated across different levels of
biological organization.
E. Radiation induced Cellular Changes
a. Chromosome Aberrations
Radiation produces changes in chromosomes expressed as chromosome aberrations. It has
been well established that scoring chromosome aberrations is very useful in biodosimetry but
may not reflect risk (Brooks et al. 2003). Studies on chromosome aberrations also continued to
supply critical new information on the mechanisms of action of radiation as a function of
radiation type, dose, dose-rate and dose distribution (Brooks et al. 2009).
b. Telomeres
The next important recently discovery regarding radiation induced changes in
chromosomes is the role of the telomere in radiation-induced biological damage. Telomeres
play a critical role in the proliferative life of cells. Research demonstrated that telomere
maintenance isclosely linked to end repair of double strand-breaks in DNA (Nugent et al. 1998)
and is required to cap the ends of mammalian chromosomes during the formation of telomeres
(Bailey et al. 1999). Reviews of the literature on the inter-relationships between genomic
instability and telomere dysfunction suggest that telomere dysfunction is one of the major
driving forces in radiation-induced genomic instability (Bailey et al. 2007). Since the induction
of genomic instability by higher radiation doses increases linearly with radiation dose, such a
model supports the LNT hypothesis.
c. Cell Cycle
Radiation can block progression of the cell cycle at specific stages. It was postulated that
cell cycle blockage in the G2 stage allowed additional time for DNA repair before the cell
progressed through mitosis and “set” the damage. This was thought to be a protective
mechanism that decreased the damage and risk from radiation. It was determined that Cyclin
- 104 -
D1 was a critical actor involved in altering cell cycle and during the induction of the adaptive
response (Ahmed et al. 2008). This recent research was in contrast to much early research on
the adaptive response that failed to show that the cell cycle was an important variable in the
adaptive response.
d. Hyper-radiation sensitivity and Induced radiation resistance
It was determined that cell killing increased rapidly as a function of very low dose
exposures (hyper-radiation sensitivity, HRS). As the dose continued to increase, the cells
became radiation resistant (induced radiation resistance, IRR). The literature was carefully
reviewed and it was determined that cells in the G2 stage of the cell cycle were most sensitive to
low dose hypersensitivity (Marples et al. 2004; Marples and Collins 2008). These phenomena
are very important observations relative to the shape of the dose-response relationships in the
low dose region. If low doses of radiation increase cell killing, this treatment could be
eliminating cells from the population that may be at higher risk for the induction of cell
transformation. However, if low dose hypersensitivity and radiation-induced radiation
resistance to cell killing increases cell proliferation in the low dose region and protect cells that
are sensitive to radiation-induced cell transformation in the medium dose range this could result
in an increase in cancer risk in the low dose region. Such increases above that predicted by the
LNT have not been detected in any animal or human studies and do not seem to be a viable
postulate.
e. Apoptosis
During the early days of radiation biology, it was not widely recognized that radiation
produced apoptosis. Cells were thought to be killed by radiation through either the process of
mitotic death or necrosis. It was determined that, at very low doses, the induction of apoptosis
may be protective for the induction of cell transformation and other endpoints of interest for
cancer risk (Mendoca et al. 1999). One of the most important observations associated with
radiation induced apoptosis is that low doses of radiation can trigger biochemical and signaling
pathways in bystander cells that result in selective apoptosis of cells that are transformed.
(Bauer 2007). If low doses of radiation can selectively cause transformed cells to undergo
programmed cell death, then it has been postulated that the cancer risk can be directly reduced
(Portess et al. 2007). Many experimental results in the study of cell transformation where low
doses of ionizing radiation decrease the frequency of transformed cells below the levels seen in
controls support this mechanism of action (Redpath 2006). Similar results on the induction of
mutations could be explained by this apoptosis related process (Sykes 2006a, Sykes 2006b).
f. Influence of genetic background on Cancer Risk
Cancer has long been known to be influenced by genetic background, since many families
and experimental animals are cancer prone (Takamitsu et al. 2009). Genetic differences in
many molecular, cellular and experimental animal systems support the importance of genetic
background on biological responses to ionizing radiation (Williams et al. 2008).
IV. Communication of the Low Dose Research Results
One of the major goals of the DOE Low Dose Research Program was to monitor and
communicate the results of the research in an effective manner. This communication was to be
directed: first, to the scientists involved in the research, second, to policy makers to help
government agencies use the information to set standards to control radiation exposure and
finally, to stakeholder and the public to help them make informed choices associated with the
risks from radiation. This continues to be a major goal for the program and is an essential part
of any research program (Brooks 2003).
V. Current and Potential Impact on Radiation Standards
In addition to the National academy report (NAS/NRC 2006) and the French Academy
- 105 -
reports (Tubiana et al.2005; Averbeck 2009) there were other activities associated with
evaluating radiation standards during the time when the DOE Program was being funded. The
research associated with the Program provided substantial input into each of these.
In 2009 the Electric Power Research Institute had a review team evaluate more than 200
publications that were published after the BEIR VII report. This review demonstrated that
additional mechanistic data have become available since the above publications on the responses
of biological systems to low doses of radiation and that these data need to be considered in future
standard setting activities. The report supported the need for a low dose rate effectiveness factor,
reviewed the evidence that the mechanisms of action change as a function of dose and that the
slope of the dose-response curve in the low dose region is lower than that observed in the high
dose region. A summary of this report has been recently published (Dauer et al. 2010).
An additional report has been partly released by The United Nations Scientific
Committee on the Effects of Atomic Radiation (UNSCEAR 2006). This report included five
scientific annexes:
 Epidemiological studies of radiation and cancer
 Epidemiological evaluation of cardiovascular disease and other diseases following
radiation exposure
 Non-targeted and delayed effects of exposure to ionizing radiation
 Effects of ionizing radiation on the immune system
 Sources-to-effects assessment for radon in homes and workplace
The last three of these annexes have not been released. They concluded from the report
that the risks from cancer and genetic effects previously recommended did not require any
change at this time.
Additional reports were issued by The International Commission on Radiological
Protection (ICRP 2007). They published Report 99 by Valentin (2005) that evaluated the lowdose extrapolation of radiation-related cancer risks. These reports suggested the continued use
of the LNT hypothesis combined with an uncertain dose-dose rate effectiveness factor (DDREF)
to extrapolate risks from high doses of radiation into the low dose region.
In addition to these committee reports many review articles and book chapters were
published using data and results of the Program. “Biological Effects of Low Doses of Ionizing
Radiation” represented a good balance of view points and data from the molecular to
epidemiological data (Brooks et al. 2006). The 44th Annual meeting of the National Council on
Radiation Protection and Measurements was focused on Low Dose and Low Dose-Rate
Radiation Effects and Models. This meeting provided a special issue of (Health Physics 97
2009) where there were a large number of publications associated with the application of
research data to standards.
This discussion demonstrates that the Program has had important impact on standard
setting and has played a critical role in providing data and information on the responses in the
low dose region. In the future with the development of better systems biology methods and
models cell and molecular data can have additional influence on setting standards. The low
dose research data has demonstrated that 1) the scientific community really understands the
responses at low doses, 2) that there are no surprises and data that suggest that we have
underestimated the risk in the low dose range and 3) the low dose data suggest that that LNT
overestimates the risk in the low dose region and that LNT provides an adequate and appropriate
safety factor for risks in the low dose region. The data produced by the Program is very
important, has been considered in past standard stetting and will impact more strongly in the
future, the research has resulted in some major paradigm changes in radiation biology and will
be essential in the future in understanding and communicating the risks from low levels of
radiation exposure.
- 106 -
VI. Acknowledgements
The author would like to acknowledge Dr. Noelle Metting, director of the USDOE low
dose program, for her continued support to summarize these data and conduct the research
needed to provide such summaries. This research was supported by the Office of Science
(BER), U.S. Department of Energy, Grant No. DE-FG02-05ER64082.
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Research Trend in Radiation Protection
Masami Watanabe
Laboratory of Radiation Life Science, Research Reactor Institute,
Kyoto University
[email protected]
The basic concept of radiation protection is to minimize the carcinogenic risk of
radiation to humans. The International Commission on Radiological Protection (ICRP)
reported in their Publication 103 that while epidemiological and experimental studies
confirm that radiation exposure causes cancer, there is uncertainty regarding doses of 100
mSv or less. This is because the accumulated cellular and animal data relevant to radiation
tumorigenesis has, since 1990, strengthened the view that the responses of individual cells
to DNA damage play an important role in preventing the development of cancer after
radiation exposure. These data underscore the idea that detailed information on DNA
damage response/repair and the induction of gene/chromosomal mutations can contribute
significantly to judgments on the radiation-associated increase in the incidence of cancer
at low doses. Although there are recognized exceptions, for the purposes of radiological
protection, the commission judges that the weight of evidence on fundamental cellular
processes coupled with dose-response data supports the view that, in the low dose range
below about 100 mSv, the incidence of cancer effects will rise in direct proportion to an
increase in the equivalent dose in the cells. Therefore, the practical system of radiological
protection recommended by the commission will continue to be based upon the
assumption that, at doses below about 100 mSv, a given increment in dose will produce a
directly proportionate increment in the probability of incurring a cancer effect attributable
to radiation. This dose-response model is generally known as the “ linear-non-threshold
(LNT)” model.
However, we have doubt about the LNT hypothesis, because it may conflict with
our knowledge of radiation carcinogenesis in two ways. First, it is not certain that DNA is
the sole target of radiation carcinogenesis. In the previous century, of course, "target
theory" was the central dogma in regard to the biological effect of radiation. In this theory,
radiation specifically targets the cellular DNA, and the resulting DNA lesions are the
cause of both mutation and carcinogenesis. However, our previous results conflict with
this theory. For example, we found that the transformation frequency in cells derived from
the embryos of hamsters, mice and rats and irradiated with a low dose of X-rays was 500
〜1,000 times higher than that of somatic mutation. If mutations arising from DNA
lesions cause carcinogenesis, the frequency of carcinogenesis should be smaller than those
- 111 -
both of gene mutation and/or of DNA lesion. In addition, we reported the presence of a
new type of radical that causes radiation carcinogenesis. Surprisingly, this radical is stable
at 37oC (T1/2>20 hours), and it does not cause DNA damage and/or cell death. Taken
together, these results lead us to speculate that the route started from DNA lesions may not
be the only mechanism to radiation carcinogenesis. Second, it is not certain that
non-targeted effects modify cell transformation frequency. Recent reports by our group
and others have pointed out the possibility that non-target effects, such as the bystander
effect or delayed effect, may modify the carcinogenesis frequency. Therefore, we
speculate that non-DNA damage also plays an important role in the initiation of malignant
cellular transformation, and not only in the progression of carcinogenesis. This suggests
that we cannot definitively explain radiation carcinogenesis by means of mutation theory
and that we must review the LNT hypothesis again.
Most recently, we discovered that the frequency of aneuploid cells was closely
related to both radiation-induced cell transformation and natural-cell transformation, but
the frequency of genetic mutations was not.
Aneuploidy may be produced by
dysfunction of the centrosome induced by long-lived radicals. This alternative route of
carcinogenesis may be the same as that of natural carcinogenesis. In this address, therefore,
we will introduce a new hypothesis, the non-DNA target theory, to explain the main route
of radiation carcinogenesis. These recent results support the necessity of a review of the
LNT hypothesis from the point of view of radioprotection.
- 112 -
Cancer risk among residents in High background Radiation areas
Suminori Akiba
Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences
[email protected]
Introduction
There are several areas in the world where background radiation levels are high due to naturally
occurred sources of radioactivity. We have been conducting epidemiological studies of residents living
in high background radiation (HBR) areas in Yangjiang, China, in Ramsar, Iran, and in Karunagapally
of Kerala State, India. Among them, the most important is the study in Karunagapally for its high doses
and dense population. On January 15-16, 2010, a small workshop entitled "International Review
Meeting on Low Dose Rate Radioepidemiology of High Background Radiation Areas" was held in
Tokyo, Japan. Its review committee consisted of Drs John D. Boice, Jr., Jolyon Hendry and Nori
Nakamura. The conclusion of this workshop was as follows: “Discussions at this workshop highlighted
the unique opportunity to obtain quantitative information on the long-term effects of radiation doses
delivered over protracted periods at a low rate but cumulating to relatively high levels. Populations
residing in areas of high background radiation, particularly in India, represent a large and relatively
unrecognized database whose value is just emerging. Lifetime doses can be accurately estimated for
large numbers of individuals, cancer incidence can be determined, confounding factors can be adjusted
for in the analyses, the cumulative doses can reach levels approaching 1 Gy with substantial numbers
exceed 500 cGy, the studies are larger and doses greater than current studies of occupational and
environmental populations (UNSCEAR 2008). With the large increase in the use of diagnostic radiation,
the potential increase in nuclear energy production, the use of x-ray scanner at airport for security
purposes, and so on, the world’s population will continue to be exposed to low-levels of radiation
throughout life (NCRP 2009). Thus large studies with good dosimetry of populations living in areas of
high background radiation have the potential to contribute much-needed data on human health risks
from exposures to radiation delivered slowly throughout life.”
The coastal belt of Karunagappally taluk (the name of an administrative unit) is known for HBR from
thorium-containing monazite sand. In coastal panchayats (the name of administrative unit consisting of
a taluk), median outdoor radiation levels were more than 4 mGy/year and, in certain locations on the
coast, it is as high as 70 mGy/year. Although HBR has been repeatedly shown to increase the frequency
of chromosome aberrations in the circulating lymphocytes of exposed persons, its carcinogenic effect is
still unproven. A cohort of all 385,103 residents in Karunagappally was established in the 1990s to
evaluate health effects of HBR. Based on radiation level measurements, a radiation subcohort
consisting of 173,067 residents was chosen, and cancer incidence in this subcohort aged 30-84 years
(N= 69,958) was analyzed. Cumulative radiation dose, lagged by 2 years for leukemia and 10 years for
cancer excluding leukemia, was estimated for each individual, using outdoor and indoor doses of each
- 113 -
household, and sex- and age-specific house occupancy factors. Following 69,958 residents for 10.5
years on average, 736,586 person years of observation was accumulated and 1,379 cancer cases
including 30 cases of leukemia were identified by the end of 2005. Poisson regression analysis of
cohort data, stratified by sex, attained age, follow-up intervals, socio-demographic factors and bidi
smoking, showed no excess cancer risk from exposure to terrestrial gamma radiation. The excess
relative risk (ERR) of cancer excluding leukemia, assuming a linear dose-response relationship, was
estimated to be -0.13 Gy-1 (95% CI: -0.58, 0.46). In site-specific analysis, no cancer site was
significantly related to cumulative radiation dose. Leukemia was not significantly related to HBR,
either.
In Yangjian area in Guangdong Province, China, a cohort of 125,079 men and women living in the
HBR area or the control area was followed. The information on deaths and migrations of cohort
members were collected by trained local census takers, who visited the study areas every 3-4 years.
Cumulative external radiation dose, lagged by 2 years for leukemia and 10 years for cancer excluding
leukemia, was estimated for each individual, using hamlet-specific average indoor and outdoor doses,
and sex- and age-specific house occupancy factors obtained froma a survey of 5,291 residents. The
cancer mortality study accumulated 1.7 million person-years during the period 1979–1995 in a
follow-up of subjects and identified 1,003 cancer deaths (Sun et al. 2000 J Radiat Res). ERR/Sv was
estimated to be -0.11 (95% CI, –0.67, 0.69).
The cancer risk of chronic radiation exposure has also been examined by epidemiological studies of
nuclear workers. By far the most extensive evaluation of solid cancer risk among nuclear worker is the
‘IARC 15-country’ study of nuclear workers (Cardis et al. 2005; Cardis et al. 2007). The study subjects
for this pooled analysis were 407,391 workers individually monitored for external radiation, and their
follow-up accumulated a total of 5.2 million person years. The total collective recorded dose was 7892
Sv. This study showed a statistically significant excess of solid cancer risk in relation to occupational
radiation exposure: the excess relative risk (ERR) was 0.97 (95% confidence interval: 0.14, 1.97),
which is much larger that the estimate (-0.07; 90%CI: -0.4, 0.3) reported by IARC’s 3-country study
(Cardis et al. 1995) as summarized in Table 1.
Table 1. Estimates of ERR per dose for cancer excluding leukemia obtained by IARC studies.
ERR/Sv 90%CI
IARC 15-country study, BMJ 2005
stratification on duration of employment
+
0.97
0.27,
1.80
−
0.31
− 0.23,
0.93
-Canada
0.58
− 0.22,
1.55
-smoking related cancer
0.62
−0.51,
2.20
− 0.07
− 0.4,
0.3
IARC 3-country study (RadRes 1995)
- 114 -
The validity of the radiation risk estimates reported by IARC 15-country study has been questioned
(Wakeford 2005; Shigematsu 2005; Lagarde 2005; McGeoghegan2005). As frequently pointed out, one
of anomalous features of this study is a large ERR estimate of Canadian data, which gave an ERR
estimate of 6.65 (90%CI= 2.56 13.0) after exclusion of Ontario Hydro workers, which were not
included in the standard analysis because of its lack of information on SES. It should be of note that
approximately 75%of the Canadian data used were accounted for by Atomic Energy Canada Limited
(AECL) in the standard analysis. Its anomalously high radiation-associated risk is suspected to be
related to missing dosimetry information, including dates of hire, which occurred when dosimetry data
transfer was made from the AECL worker records to the National Dose Registry (Ashmore et al.,
2010).
The present study calculated a summary estimate of all cancer excluding leukemia for Indian and
Chinese HBR area studies, conducting a meta-analysis. Also conducted was a meta-analysis of cancer
risk reported by nuclear workers studies.
Materials and Methods
The present study conducted a random effect meta-analysis, using the meta.summaries of R program,
authored by Thomas Lumley. The random-effect analysis estimated a heterogeneity variance, and was
added to estimated variance.
Results
A meta-analysis using ERR estimates reported by Indian and Chinese studies of residents in HBR
areas gave a summary estimates of -0.12 (95%CI= -0.60, 0.35). In addition, the present study
conducted a meta-analysis of nuclear worker studies that had 100 or more deaths of all cancer
excluding leukemia (or solid cancer), and reported the estimate of ERR per dose. Among Canadian
studies, the study of AECL workers, reported by Gribbin et al., was used because it is the most recent
report that does not use the National Dose Registry data. The Mayak study was excluded from this
meta-analysis since internal exposure dose was large. In total, the meta-analysis in the present study
used eight studies, including the present study. The studies included in the meta-analysis are shown in
Table 2. The number of all cancer excluding leukemia (or solid cancer) deaths were 12,647, average
dose was >20mSv, and ERR/Sv was 0.19 (95% CI = -0.11, 0.49).
- 115 -
Table 2. ERR per radiation dose for all cancer excluding leukemia or solid cancer, obtained from
mortality follow-up studies of nuclear workers
facility
Canada AECL (1956-85)
Reference
Gribbin et al.
1993
U.S. ORNL (-1990)
Richardson et al.
1999
U.S. NPPs (1979-97)
Howe et al
2004
U.S. Hanford (-1994)
Wing et al.
2005
U.S. Rocketdyne (1948-99) Boice et al.
2006
France, COGEMA (1950-94) Telle-Lamberton et al.
2007
average dose* ERR/Sv
52.1mSv
0.049 (90%CI= -0.68, 2.17) all ca- leukemia (N=221)
dose was lagged by 10 years
?
1.8 (SE=0.9)
all cancer (N=879)
follow-up was lagged by 10 years
25.7mSv
0.51 (95%CI= -2.01, 4.64)
solid cancer (N=368)
dose was lagged by 10 years
27.9mSv
0.28 (90%CI= -0.30,1.00)
all cancer (N=2265)
follow-up was lagged by 10 years
13.5mSv
0.00 (95%CI= -0.19, 0.24)
all ca-leukemia (N=431)
U.K. NRRW (-2001)
24.9mSv
France, EDF (1961-2003)
Muirhead et al.
2009
Laurent et al.
2010
8.3mSv
21.5mSv
2.0 (90%CI= -0.1, 4.5)
all cancer (N=745)
dose was lagged by 10 years
estimated by our previous study
0.275 (90%CI=0.02, 0.56)
all ca-leukemia (N=7455)
follow-up was lagged by 10 years
-2.9 (90%CI= -5.6, 0.6)
all ca-leukemia (N=283)
dose was lagged by 10 years
* dose from external radiation
all ca-leukemia: all cancer excluding leukemia
Discussion
The summary estimates of ERR/Sv for HBR area studies in India and China, and of nuclear worker
studies were much lower than the ERR estimate of 0.47/Gy for solid cancer, reported by a atomic bomb
survivor study (Preston et al. 2003).
In the Karunagapally study, socioeconomic status (SES) and lifestyles, including smoking, were taken
into account. On the other hand, the IARC 15 country study of nuclear workers lacked information on
smoking, the most important potential confounder in cancer risk analysis. Adjustment for SES made in
this study might have reduced the magnitude of potential confounding by smoking but it is unlikely to
have eliminated it. Confounding by smoking is strongly suspected because the ERR/Sv became 0.62
(95%CI= -0.51 to 2.20), and statistical significance disappears after removal of lung cancer from the
analysis. In order to minimize confounding by smoking, the meta-analysis of the present study was
limited to the studies that reported facility specific ERR/Gy or ERR/Sv estimates for solid cancer (or
cancer excluding leukemia) unrelated to smoking or cancers excluding at least lung cancer. Among the
U.S. studies, only the Hanford study reported an estimate for smoking unrelated solid cancer (Gilbert et
al., 1993). For the U.K. nuclear workers, we used the estimate reported by the UK NRRW (national
Registry for Radiation Workers) study. The third analysis of the NRRW, published in 2009, reported an
ERR estimate of cancer excluding leukemia and cancers of the lung and pleura (Muirhead et al., 2009).
In addition, the Mayak study(Shilnikova et al., 2003) was included. This study reported the mortality of
solid cancer excluding cancers of the lung, liver and skeleton. The other studies did not report the
estimates that can be used in our meta-analysis.
- 116 -
Table 3. ERRs/dose obtained from three cancer mortality studies of nuclear workers
Hanford
UK NRRW
ERR
Confidence Interval
Ca-leukemia
0
95%CI: 0, 1.2
Cancer in men
-0.1
95%CI:<0, 1.0
Smoking-unrelated cancers
-0.3
95%CI: <0, 1.1
0.323
90%CI: 0.02, 0.67
0.08
90%CI: 0.03, 0.14
0.08
95%CI: 0.02, 0.16
all cancer
Cancers-leukemia-lung –pleura
Mayak
solid cancer-lung-liver-skeleton
All the three facilities
IARC 15 country study (solid cancers unrelated to smoking)
a-bomb survivors solid ca
0.62
95%CI:-0.51, 2.20
0.47
90%CI: 0.37, 0.57
Table 3 shows the estimates used in the meta-analysis of these three studies. A random effect
meta-analysis of ERR per Gy (or Sv) obtained from the Hanford study, the UK NRRW study and the
Mayak study gave a summary ERR/Gy of 0.09 ( 95% CI: 0.02, 0.16). This summary estimate is
significantly higher than zero in a two-sided test, and is significantly lower than the ERR estimate of
solid cancer for 70-years old men exposed at age 30 (ERR/Gy=0.35; 90%CI=0.24, 0.46) obtained from
the RERF study of atomic-bomb survivor (P<0.001) and was also lower than the BEIR VII estimates of
0.23 (95%CI: 0.15, 0.36) for those aged 60 exposed at age 30. There was no significant heterogeneity
among three estimates. Those findings were presented at the 7th conference of High Level Natural
Radon and Radiation Area, held in Mumbai during November 24-26, 2010.
Pooled analysis combines the data obtained from different studies using the same format, and
conducts analysis with the same statistical models. In addition, biases that might have overlooked in the
original studies may be eliminated. These are advantageous features of pooled analysis, which the
meta-analysis of published data does not have. A disadvantage of pooled analysis is that the analysis
may not be able to use information that are important for particular studies but are not available for the
rest of the study. In addition, some datasets/studies may be excluded from pooled analysis because of
the lack of information even though they are not critically important for those datasets/studies. Another
possible disadvantage of pooled analysis is the collective decision making, which is often involved in
pooled analysis using the data obtained from different studies. Such a decision making may inhibit
insightful approach tht may be critically important to obtain valid results. It should also be noted that if
the estimate obtained from a pooled analysis is markedly different from what was estimated by a
meta-analysis, one cannot deny the possibility that pooled analysis introduced a new bias. Note that
- 117 -
meta-analysis cannot eliminate any bias when calculating a summary estimate. That also means that
meta-analysis is unlikely to introduce biases as long as it is properly conducted. involved in the
estimation of a bias. Therefore, if the risk estimate published by the original study is reliable, the risk
estimate obtained from the meta-analysis of original estimates may be sufficiently reliable even if small
details of data and analysis may be different from study to study. Anyway, it is too naive to assume that
the pooled analysis is always superior to the meta-analysis.
Table 4. The Estimates of ERR per dose for solid cancer or cancer excluding leukemia
in the study of residents with chronic elevated-radiation exposure
ERR / Gy
Pooled analysis of Chinese and Indian data
Ca-leukemia
Taiwan
-0.20 (95%CI: -0.77, 0.36)
residents in Co60-contaminated buildings
Ca-leukemia incidence
0.2
(90%CI: -0.5, 0.8)
1.0
(95% CI: 0.3, 1.9)
Techa river residents
Solid ca incidence
Atomic bomb survivors
Solid cancer incidence
0.47 (90%CI: 0.40, 0.54)
In addition to the studies of HBR area residents in India and China, there are at least two important
studies of residents exposed to relatively high-level protracted radiation exposure. They are the studies
of residents along Techa river in Ural, Russia (Krestinina et al., 2005), and of residents in building with
Co-60 contaminated building materials in Taiwan (Hwang et al., 2008). The ERR estimate of solid
cancer obtained from the Techa river study was 0.99 (95%CI: 0.3, 1.9), a value significantly higher
than the Indian estimate (P=0.040) but was not significantly different from atomic bomb survivors’
estimate. This study includes the residents along the river. The highly exposed area and the control area
are about 200 km apart. The lifestyles and other social and natural environment may be different in the
highly exposed area and the control area. In addition, in the highly exposed areas, the external exposure
is predominant, and in the medium dose areas, internal exposure is predominant. Although their
internal dose estimation is considered to have no serious flaw, the precision may be much lower than
that of external dose measuremtns. Table 5 shows the ERR estimates, which we obtained from Poisson
regression analysis using dose-category specific observed and expected numbers of deaths and the
mean dose. For the entire dose range, the ERR/Sv was estimated to be 0.99 (95%CI=0.29, 1.79), which
is almost the same as the one reported by the original study. When the analysis was limited to the high
dose range (0.2+Sv), the estimate was only 0.39. In the range of medium doses, there was no apparent
dose-response. Needless to say, our analysis is merely preliminary one, and further studies are
necessary.
- 118 -
Table 5. Techa river study in Ural, Russia
dose
dose
solid cancer
category
mean
O
E
RR
<0.01
0.005
1018
1038.6
1
0.01-
0.015
555
565.7
1
0.05-
0.075
65
62.4
1.06
0.1-
0.15
107
102.7
1.06
0.2-
0.25
26
19.7
1.34
0.3+
0.39
65
46.9
1.41
1836
1836
Total
ERR/Gy
0.99
0.39
The ERR estimate of solid cancer obtained from the Taiwanese study was 0.3/Gy. Note, however, that
the estimate for cancer of the lung was 0.9/Gy, therefore confounding by smoking cannot be denied.
Anyway, because of its wide confidence interval, the Taiwanese ERR estimate was not significantly
different from atomic bomb survivors’ or the Indians’.
Conclusion
The results obtained from the meta-analysis of HBR area studies and the meta-analysis of nuclear
worker studies suggest that the ERR estimate of solid cancer is unlikely to be higher than the estimate
of 0.47/Gy obtained from atomic bomb survivor study. In conclusion, the estimates of solid cancer risk
associated with low dose and dose-rate exposure to low-LET ionizing radiation are not inconsistent
with currently accepted risk estimates, which assumes DDREF larger than 1.
References
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- 120 -
Radiation Exposure at Early Stage of Life
Yoshiya Shimada
National Institute of Radiological Sciences
[email protected]
Given both the established vulnerability of children to ionizing radiation and a
progressive increase in the use of medical radiation, understanding the relationship
between children’s health outcome and radiation exposure is critical for our children’s
wellbeing. These conditions have forced the radiation-regulatory bodies to draft global
initiatives on radiation protection for children. In order to obtain the parameters of
radiation protection for children, we have studied, using several animal carcinogenesis
models, the age dependence of effect of gamma rays, X-rays, neutrons, heavy ions and
uranium on cancer induction and lifespan shortening. Final goals of our research are to
propose relative biological effectiveness (RBE) of neutrons and heavy ions for fetuses and
children for radiation protection and to clarify the underlying mechanisms of cancer
induction after childhood exposure to radiations.
- 121 -
Research for Medical Radiation in NIRS
Keiichi Akahane, Keisuke Fujii and Shunsuke Yonai
Radiological Protection Section
Research Center for Charged Particle Therapy
NIRS
[email protected]
1. Background
As UNSCEAR 2008 REPORT shows, the numbers of radiation uses in medicine have been
increasing, and medical radiation is one of the important issues in the current situation of the world in
radiological protection. Among the countries, Japan is well-known as having both so many
radiological examinations and X-ray equipment. For example, the number of CT machines per million
of Japanese population is estimated to be 92.6 according to OECD data1), which is highest number
compared to member states (Fig. 1.1). The statistical data by Ministry of Health, Labour and Welfare
also show that there are about 12,000 CT machines in Japan in 2008. Among them, more than half of
MDCT are in general hospitals. On the other hand, Other CT machines are in general clinics 2)(Fig.
1.2). For the appropriate protection of medical radiation, the basic data such as the frequencies and
doses of medical exposures are needed.
Fig. 1.1 Numbers of CT in OECD countries Fig. 1.2 Numbers of CT in medical facilities in Japan
2. Investigations on Medical Radiation Uses
The nation-wide surveys on the radiation uses in medicine have been performed in NIRS for long
periods. In the surveys, the frequencies and exposure conditions of X-ray diagnoses, X-ray CT
- 122 -
examinations, nuclear medicine, radiotherapy and dental radiology have been investigated by sending
questionnaires to the hospitals and clinics, and analyzing the data replied from the medical facilities.
The asked issues of the questionnaires were age and sex of the patients, kinds of the examinations,
exposure conditions such as kV and mAs, injected activities of radiopharmaceuticals, and so on.
For example, the data of CT surveys performed in 2006 showed that about 30 % of CT
examinations for adults were preformed for head and neck, on the contrary, about 68% for child (Fig.
2.1). The age group with highest numbers of CT examinations was 70-74 year-old. Other survey data
have been also analyzed.
Child
Adult
Abdomen
and
Lumber
13%
Chest
and
Lumber
10%
Chest
and
Abdomen
13%
Others
7%
Head and
neck
31%
Abdomen
9%
Head and neck
Neck
Chest
Abdomen
Lumber
Chest and Abdomen
Chest and Lumber
Abdomen and Lumber
Arm and leg
Others
Chest
15%
Arm and leg
8%
Others
8%
Abdomen
2%
Chest
3%
Head and
neck
68%
Fig. 2.1 CT examinations for adult and child in 2006
3. Dose Estimations on Medical Exposures
Based on the practical exposure condition data, radiation doses for the patients in X-ray
examinations have been evaluated with small dosimeters such as TLDs and glass dosimeters, which
were set in various tissue or organ positions within an adult and child anthropomorphic phantoms. The
Monte-Carlo simulations of mathematical phantoms were also done to estimate organ doses which
could not be directly measured. Adding the calculated doses in nuclear medicine and referring
available reported data, total population doses in medicine have been estimated.
Recently, there has been growing concerns about radiation doses and the risk for children in X-ray
examinations. The protection for pediatric patients is very important because of the higher sensitivity
against radiation, however, reported data on the exposure doses in pediatric X-ray examinations have
not been sufficient to consider the protection. Thus, organ doses in X-ray CT examination for children
were evaluated using the small dosimeters and 1 year-old and 6 year-old phantoms (Fig. 3.1) in some
hospitals. The results show that the doses for children in chest and abdominal CT were less than 1/2 of
those for adults. The doses have varied among the medical facilities depending on their own exposure
conditions of the examinations3,4) (Table 3.1): the differences in types of CT scanners and scan
parameters such as effective mAs and tube voltage. Further dose reduction in pediatric CT
examinations could be done by the adjustment of scan parameters based on patient’s size.
- 123 -
Table 3.1 CT protocols and doses
Fig. 3.1 Anthropomorphic child phantoms
(Left: 6 year-old phantom, Right: 1 year-old phantoms)
It is important to estimate the risk of secondary cancer, including the contribution of secondary
neutrons that are inevitably produced within the patient and beam line devices due to the potency of
their biological effect.
We obtained absorbed doses, quality factors and, consequently, dose
equivalents within water phantom by using tissue-equivalent proportional counter5) (Fig.3.2, Table
3.2).
Table 3.2 Dose equivalent at each position
Fig. 3.2 Photograph of the experimental setup at HIMAC
4. Dose Estimations on Occupational Exposures
For the protection of occupational exposures in medical facilities, the doses for the medical staff
were estimated. For example, the doses for medical staff involved in
125
I brachytherapy for prostate
cancer were measured by attaching the small dosimeters to their body surfaces. The results show that
the dose at the left hand were 50-70% lower than at the left front arm (at point close to hand outside a
glove) (Fig. 4.1), and the doses for surgeon could be reduced by the use of lead gloves, the adjustment
of fluoroscopic parameters and the increase in the number of surgeon’s experiences6) (Fig. 4.2).
- 124 -
Fig. 4.1 Surface doses (μGy) at each
Fig. 4.2 Trend of surface doses to surgeon’s left hand
monitoring point
In particle therapy, some parts of the equipment can be activated by the proton or carbon ion
beam, and induced neutrons by them. The actual exposure levels to the medical staff and public were
investigated by the measurements in particle therapy facilities. Under the assumptions on the activities
and time of the procedures of radiological technologists in the rooms and in the facilities 7) (Table. 4.1),
doses were estimated based on the measurements. The results show that the exposure levels were very
low enough not to consider any especial regulations of the protection for the staff and public in particle
therapies (Table 4.2).
Table 4.1 Assumptions on the activities of radiological technologists
Table 4.2 Estimated effective doses and equivalent doses of skin
- 125 -
5. Future Works
We are planning to continue the investigation on the frequencies and the estimation of doses and
risks in medical radiation uses for optimizing of radiation protection, and the survey results could be
reported to the UNSCEAR as Japanese data. The output of our research could be expected to
contribute both to the improvements of domestic radiation protection in medicine and to the
international activities including WHO Global Initiatives.
6. References
1. United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation. (2010) Sources and
effects of ionizing radiation, UNSCEAR 2008 Report: Volume I: Sources – Report to the General
Assembly Scientific Annexes A and B.
2. Ministry of Health, Labour and Welfare. (2008) Survey of Medical Institutions.
3. Fujii, K., Akahane, K., Miyazaki, O., et al. (2010) Evaluation of Organ Doses in CT Examinations
with an Infant Anthropomorphic Phantom, Roentgenologia and Radiologia, Suppl. 10: 24.
4. Nishizawa, K., Mori, S., Ohno, M., et al. (2008) Patient Dose Estimation for Multi-detector-row CT
Examinations, Radiat. Prot. Dosim. 128: 98-105.
5. Yonai, S., Kase, Y., Matsufuji, N, et al. (2010) Measurement of Absorbed Dose, Quality Factor, and
Dose Equivalent in Water Phantom outside of the Irradiation Field in Passive Carbon-ion and Proton
Radiotherapies, Med. Phys. 37: 4046-4055.
6. Fujii, K., Ko, S., Nako, Y., et al. Dose Measurement for Medical Staff with Glass Dosemeters and
Thermoluminescence Dosemeters during 125I Brachytherapy for Prostate Cancer, Radiat. Prot. Dosim.
(in press).
7. Tujii, H. Akagi, T., Akahane, K., et al. (2009) Research on Radiation Protection in the Application
of New Technologies for Proton and Heavy Ion Radiotherapy, Jpn. J. Med. Phys. 28: 172-206.
- 126 -
Studies for Protection against Exposure to Natural Radiation in NIRS
Hidenori Yonehara, Shinji Yoshinaga, Kazuki Iwaoka,Hiroshi Yasuda, Tetsuo Ishikawa
Research Center for Radiation Protection,
National Institute of Radiological Sciences
[email protected]
xposure to radiation from natural sources has become an important issue from viewpoint of
radiation protection. Studies on the exposure to natural radiation sources have become more
significant since ICRP mentioned in Publication 60 1) as it is necessary to control the some cases
of worker’s exposures to industrial raw materials containing naturally occurring radioactive
materials called as NORM, radon in workplace, and cosmic radiation in jet aircraft. Residential
radon issue has also become more significant since epidemiological studies on indoor radon in
Europe2), North America3) and so on with pooled analysis were published. In order to address
these issues, we focus on the research to investigate current status of these exposures in worker
and public and to develop the mitigation measures.
Regarding cosmic radiation exposure of aircraft crew, the Radiation Council of the Japanese
government has established a guideline which requests the domestic airlines to keep the annual
doses of crew below 5mSv and also gives some advice and policies relating to this issue. We
have supported the voluntary management of the exposure using a software called “JISCARD”
developed in NIRS. Using the software, we carry out the assessments of doses of aircraft crew
for management of their exposure according to the guideline4). We also provided a material for
education on the subjects of radiation health effects and radiation protection.
Figure 1. The top page of JISCARD on the NIRS homepage
(http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/index.shtml).
- 127 -
National surveys of residential radon have been carried out forth times. Results of the survey
are shown in Table 1.
Table 1. Results of national survey of residential radon in Japan.
We carried out studies on radon issues in case of setting the reference level against radon in
Japan. We conducted a case study for such situation in a dwelling where an average radon
concentration of about 300 Bq/m3 was investigated using several kinds of detectors for radon
and its progeny. We also carried out studies 8) on mitigation of radon exposure. An example of
a result of the studies is shown in Figure 2.
Figure 2. Result of study on measures against indoor radon exposure.
- 128 -
Study on issue of exposure due to industrial use of NORM was also carried out. We
investigated a current status of exposure of workers handling raw materials including NORM.
In order to provide correct knowledge to the worker and the public, a database of
comprehensive information regarding exposure due to use of NORM has been developed and
published on the web. Information on activity concentrations in every kind of industrial raw
materials, building materials and consumer goods containing NORM were corrected from
scientific literature or obtained by experiment9). The database provides a search system by
which users of the materials can investigate the level of activity concentration in more than
1000 types of materials and estimate a dose during handling the materials.
Figure 3. NORM Database disclosed on NIRS homepage
Reference
1) ICRP, 1990 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection,Pergamon
Press,1991
2) S. Darby, D. Hill, A. Auvinen, J. M. Barros-Dios, H. Baysson, F. Bochicchio, H. Deo, R. Falk, F.
Forastiere, M. Hakama, I. Heid, L. Kreienbrock, M. Kreuzer, F. Lagarde, I. Mäkeläinen, C. Muirhead, W.
Oberaigner, G. Pershagen, A. Ruano-Ravina, E. Ruosteenoja, A. Schaffrath Rosario, M. Tirmarche, L.
Tomásek, E. Whitley, H.-E. Wichmann, R. Doll. Radon in homes and risk of lung cancer: collaborative
analysis of individual data from 13 European case-control studies. BMJ, 330(7585),223-227, 2005.
3) D. Krewski, J. H. Lubin, J. M. Zielinski, M. Alavanja, V. S. Catalan, R. W. Field, J. B. Klotz, E. G.
Le´tourneau, C. F. Lynch, J. I. Lyon, D. P. Sandler, J. B. Schoenberg, D. J. Steck, J. A. Stolwijk, C.
Weinberg, H. B. Wilcox. Residential Radon and Risk of Lung Cancer: A Combined Analysis of 7
North American Case-Control Studies, Epidemiology, 16(2). (2005)
4) Hiroshi Yasuda, Tatsuhiko Sato, Hidenori Yonehara, Toshisou Kosako, Kazunobu Fujitaka,
Yasuhito Sasaki: Management of cosmic radiation exposure for aircraft crew in Japan, Radiation
Protection Dosimetry, 2011,in press
- 129 -
5) Fujimoto, K.,et. al., Nationalwide radon survey in Japan, Japanese Health Physics,J., 32:41-51, 1997
6) Tetsuya Sanada, , a, Kenzo Fujimotob, Keiji Miyanoa, Masahiro Doib, Shinji Tokonamib, Masaki
Uesugia and Yoshinori Takata, Measurement of nationalwide indoor Rn concentration in Japan. Journal of
Environmental Radioactivity
Volume 45, Issue 2, 129-137, 1999
7) Gen Suzuki, Ichiro Yamaguchi, Hiromitsu Ogata, Hideo Sugiyama, Hidenori Yonehara, Fumiyoshi
Kasagi, Saeko Fujiwara, Yoshimi Tatsukawa, Ippei Mori and Shinzo Kimura, A Nation-Wide Survey on
Indoor Radon from 2007 to 2010 in Japan, Journal of Radiation Research,Vol. 51, 683-689, 2010.
8) Kranrod Chutima, Shinji Tokonami, Tetsuo Ishikawa, Atsuyuki Sorimachi, Janik Miroslaw, Reina
Shingaki, Masahide Furukawa, Chanyotha Supitcha, Chankow Nares: Mitigation of the effective dose of
radon decay products through the use of an air cleaner in a dwelling in Okinawa, Japan., Applied
Radiation and Isotopes, 67(6), 1127-1132, 2009
9) Kazuki Iwaoka, Keiko Tagami, Hidenori Yonehara: Measurement of natural radioactive nuclide
concentrations in various metal ores used as industrial raw materials in Japan and estimation of dose
received by workers handling them, Journal of Environmental Radioactivity, 100(11), 993-997, 2009
- 130 -
Activities of WHO Radiation Programme on Medical and Natural Exposures
Emilie van Deventer*, María del Rosario Pérez, Ferid Shannoun
World Health Organization, Department Public Health and Environment, SWITZERLAND
*[email protected]
1. Introduction
The World Health Organization (WHO) is the coordinating authority for health within the
United Nations (UN) system, with specific mandate on public health. The decentralized structure
provides WHO with diverse opportunities and optimal conditions for working with the health
authorities of its 193 Member States. While the headquarters focus on issues of global concern,
the six Regional Offices provide technical support and help building national capacities with the
country offices keeping a close relationship with ministries of health.
Since its establishment in 1948, WHO has played a prominent role in launching,
coordinating and implementing public health programmes and initiatives. WHO is responsible for
recommending evidence-based public health policy to protect health and for the provision of
technical support and capacity building. Through the Radiation Programme in the Department of
Public Health and Environment, WHO aims to protect patients, workers and members of the
public under planned, existing and emergency radiation exposure situations.
The international benchmark for standard-setting on ionizing radiation was first published
in 1996. Known as the International Basic Safety Standards (BSS) for Protection against Ionizing
Radiation and for the Safety of Radiation Sources, it is co-sponsored by six international agencies,
including WHO1. The BSS represent a milestone towards global harmonization of standards, with
major implications on the development of norms and regulations at country level. WHO is
engaged and committed to promote the implementation of the BSS in health care settings and for
the control of existing exposures, such as radon. This paper summarizes the activities of the
WHO programme on medical exposures and radon.
2. Medical exposures
The engagement in the promotion of radiation safety in healthcare has a long history
within WHO. In 1971 the World Health Assembly (WHA) requested WHO to "study the
optimum use of ionizing radiation in medicine and the risks to health of excessive or improper
use". A further WHA resolution in 1972 urged WHO to "continue technical assistance to
governments in the promotion of radiation medicine, .... and to cooperate with IAEA, UNSCEAR
and other international organizations in evaluating the world situation as regards the medical use
of ionizing radiation and the effects of radiation on populations".
WHO initiated a Global Initiative on Radiation Safety in Health Care Settings (GI) in
December 2008 to improve the implementation of BSS and mobilize the health sector towards
safer and effective use of radiation in medicine. . Addressing a number of activities that relate to
risk assessment, risk management and risk communication, this initiative seeks to complement
the International Action Plan for the Radiological Protection of Patients established by the IAEA2
1
FAO: Food and Agriculture Organization; IAEA: International Atomic Energy Agency; ILO: International Labour
Organization; NEA/OECD: Nuclear Energy Agency/Organization for Economic Co-operation and Development;
PAHO: Pan American Health Organization; and WHO: World Health Organization.
2 IAEA: International Atomic Energy Agency
- 131 -
in 2002. Special aspects related to occupational radiation exposures for health care workers are
also dealt within the GI, linked to the objectives of the Global Plan of Action on Worker's Health
(GPA, 2008-2017) being implemented by WHO.
2.1 Risk assessment activities
Exposure assessment
Collaboration between UNSCEAR3 and WHO on the assessment of levels and effects of
medical radiation exposures is ongoing under the GI. This cooperation includes data collection on
patient exposures, particularly in developing countries where this information is still scarce, as
well as capacity-building and technical support to conduct national surveys. A methodology
based on the EC guidance DOSE DATAMED approach4 has been proposed for population dose
estimation, with a focus on the most significant procedures and a simplified questionnaire in
terms of design, content, taxonomy, terminology, and instructions. It is planned to develop
electronic solutions for data collection and dissemination of findings.
Global research agenda
There is a need for more focused research to evaluate health risks following medical
exposures, including cancer and non-cancer effects. WHO has defined one of its core function as
"harnessing research and stimulating the generation, translation and dissemination of valuable
knowledge". In line with this function, the WHO Global Initiative is developing a strategy to
shape a global research agenda on health effects of medical radiation exposures, in collaboration
with UNSCEAR. The strategy particularly addresses possible health effects on most vulnerable
populations such as children, young adults and pregnant women. Cooperation with the European
Commission (EC) in this field is being implemented through the Multidisciplinary European Low
Dose Initiative (MELODI). WHO and the EC co-sponsored two International MELODI
workshops held in Stuttgart, 2009 and in Paris, 2010. This cooperation with EC aims to facilitate
a dialogue between stakeholders from within Europe and includes interaction with research
institutions in the United States of America and Japan 5 . This collaboration will be further
expanded during 2011.
Assessment of radiation risks in children is a priority in the collaboration between WHO
and the National Institute of Radiological Sciences/ NIRS6. A joint workshop7 on Radiation Risk
Assessment in Paediatric Health Care was hosted by NIRS in December 2009 to review ongoing
research on radiation risks following medical exposures early in life, identify gaps and needs and
outline a strategy towards the development of a global research agenda. A meeting report of the
Workshop was since published in the Journal of Radiological Protection J. Radiol. Prot. 30 105–
110, 2010.
3
UNSCEAR: United Nations Scientific Committee on the Effects of the Atomic Radiation
EC RADIATION PROTECTION N° 154 European Guidance on Estimating Population Doses from Medical X-Ray
Procedures(2008).
5
US: Low Dose Research Programme of the Department of Energy (DoE); Japan: National Institute of Radiological
Science (NIRS) and Nagasaki University.
6
NIRS KIDs Workshop http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200909/hik06p_2.htm
7
Meeting report WHO Workshop on Radiation Risk Assessment in Paediatric Health Care, National Institute of
Radiological Sciences(NIRS), Chiba, Japan, http://iopscience.iop.org/0952-4746/30/1/M03/pdf/09524746_30_1_M03.pdf
4
- 132 -
2.2 Risk management activities
Justification of medical exposures- referral guidelines
The GI is currently focusing on justification of medical exposures. Referral guidelines
provide physicians information on which imaging procedure is most likely to yield the most
informative results, and whether another modality is equally or more effective, and therefore
more appropriate. As decision-aiding tools to provide a basis for good medical practice, these
guidelines support evidence-based medicine and guide appropriateness in prescribing diagnostic
imaging services.
A WHO international consultancy on “Referral Guidelines for Appropriate Use of
Radiation Imaging” was held in March 2010. The consultancy gathered thirty six experts from 23
international, regional and national agencies and professional societies 8 . They agreed upon a
roadmap to produce global evidence-based referral guidelines (RGs), facilitate their
implementation, monitor their use and evaluate their impact in different clinical settings. These
RGs will take account of differences in available technologies and disease profile between and
within developed and developing countries. Existing guidelines will be used as the starting point
to produce global referral guidelines that are evidence-based, cost effective, appropriate to a
global audience and suitable for different clinical settings. This will imply the adoption, update,
adaptation and/or expansion of recommendations as necessary. This project on "Referral
Guidelines" is aimed to support good medical practice by helping the medical community to take
appropriate decisions when requesting (general practitioners) and undertaking (radiologists)
imaging exams. This will prevent unnecessary radiological imaging procedures and their inherent
risks and will contribute to a more cost-effective allocation of health resources.
2.3 Risk communication activities
Risk communication is also a key component of the GI, A balanced approach is needed to
communicate radiation risks in health care, that recognizes the benefits that can be obtained from
the use of radiation, while addressing potential health risks. Research shows that medical
professionals generally have low awareness of radiation protection issues and often underestimate
doses and associated risks.
Paediatric imaging
As part of a focused educational campaign to empower health professionals to make
informed decisions about the use of imaging procedures in children, the GI is currently
developing a tool for radiation risk communication in paediatric imaging.
A workshop on Radiation Risk Communication in Paediatric Health Care
was held in Geneva in September 2010. Representatives of key stakeholders (radiologists,
pediatricians, family doctors, radiographers, nurses, parents, regulators, researchers),
8 The following institutions were represented: Alliance for Radiation Safety in Pediatric Imaging- Image Gently Campaign, American College of
Radiologists, Argentine Society of Radiology (SAR), African Society of Radiology (ASR), Association of General Practitioners (Geneva), Canadian
Association of Radiologists, Chinese Society of Radiology, European Commission (EC), European Society of Radiology (ESR), Federal Office for
Radiation Protection (BfS, Germany), Hong Kong College of Radiologists, Inter-American College of Radiologists, International Atomic Energy Agency
(IAEA), International Pediatric Association (IPA), International Radiology Quality Network (IRQN), International Society of Radiology (ISR),
International Society of Radiographers and Radiological Technologists (ISRRT), National Centre for Child Health and Development (Japan), Nuclear
Safety Authority (ASN, France), Pan American Health Organization (PAHO), Royal and Australian New Zealand College of Radiologists, Royal College
of Radiology (RCR, UK) and World Health Organization.
- 133 -
communication experts, representatives of the IAEA, EC and professional societies mapped out
existing guidance and tools to communicate risks in paediatric imaging, identified gaps and needs,
developed key messages for effective communication and produced a first draft tool. This tool for
doctors will be complemented with a tool targeted to patients and parents, as a first step towards
the development of a toolkit to communicate risks in health care settings.
3. Indoor radon exposure
WHO has long been aware of the health impact from natural ionizing radiation sources,
such as radon. Radon was classified as a human carcinogen by IARC 9 in 1988 based on
epidemiological evidence from the miner studies. WHO first considered residential radon
exposures as a possible health hazard in 1993 and organized an international workshop on indoor
radon in Eliat, Israel. A large number of scientist and radon experts from Europe, North America
and Asia were involved to develop a unified approach to control radon exposures and advised on
communication of associated health risks.
Recent epidemiological studies of residential exposure to indoor radon have confirmed
that radon in homes is a serious health hazard that can be easily mitigated. The vast majority of
radon induced lung cancers are thought to occur following exposure to low and moderate radon
concentrations. WHO established the International Radon Project (IRP) in 2005 to provide an
international forum for scientific exchange and policy discussion on radon risk, radon policies,
radon mitigation and prevention as well as radon risk communication. This project builds on a
network of key partner agencies from over 40 Member States. The project's scope and the main
key objectives of the IRP are to:
o
o
o
identify effective strategies for reducing the health impact of radon;
promote sound policy options, prevention and mitigation programmes; and
raise public, political and economical awareness about the consequences of exposure to
radon;
WHO and its Member States strive through the IRP to succeed in putting indoor radon on
the environmental health agenda in countries with low awareness of radon as a health problem
and in strengthening local and national radon-related activities in countries with ongoing radon
programmes.
WHO Handbook on indoor radon
One of the major output of the IRP is the "WHO Handbook on indoor radon - a public
health perspective" ,published in September 2009. The WHO handbook focuses on residential
radon exposure from a public health point of view. It includes chapters on health effects, radon
measurement, mitigation and prevention, cost-effectiveness and radon risk communication, as
well as a chapter on recommendations for policies leading to radon risk reduction and national
radon pogrammes.
This publication and other international activities on this topic provide an opportunity to
inform public health authorities and policy makers about options to reduce the global health risk
from radon exposures. WHO is currently promoting the use of the handbook to build capacity at
country level and to support the development of national radon programmes.
9 IARC: International Agency for Research on Cancer
- 134 -
Targeted advocacy for the building sector
As levels of radon concentrations in homes can be mitigated effectively at reasonable
cost and be prevented easily in new constructions, one of the next steps is to develop advocacy
tools and training material to raise awareness of the hazards from radon for building professionals.
Architects, civil engineers and other building /mitigation professionals are seen as important
stakeholders and should be made aware of methods and tools to prevent and mitigate radon
successfully in homes and other buildings,.
For this purpose, WHO organized a workshop on Radon Communication for Building
Professionals in November 2010. The scope of the meeting was to :
o develop the outlines of communication products for building/mitigation professionals,
o consolidate information received from the different countries into workable interventions for
both technical and communication best practices,
o develop the outlines for training materials taking into account the identified best practices,
o identify and involve representatives of building professionals such as CIB 10 and UIA11,
o coordinate such activities with other international organization such as the IAEA.
In particular, there is a need to develop advocacy tools and training material to raise
awareness of the hazards from radon in the building sector. Aspects related to energy efficiency
and an increased radon risk were addressed as well as the importance of including radon into
indoor air quality and other healthy housing activities.
4. Conclusion
WHO's Department of Public Health and Environment has identified several topics
related to radiation and health as a high priority area for reducing environmental risks and is
implementing them through the International Radon Project and the Global Initiative on
Radiation Safety in Health Care Settings. The thematic issues mentioned in this paper need a
multi-sectoral approach and partnerships with a range of stakeholders in this field, including
public health authorities, international organizations, professional bodies, scientific societies and
academic institutions. WHO is determined to provide a platform to engage the health community
to join the international efforts towards a better implementation of radiation protection standards.
10
11
CIB: International Council for Building
UIA: International Union of Architects
- 135 -
Research for Protection of Environment in NIRS
Satoshi Yoshida
Environmental Radiation Effects Research Group, NIRS
[email protected]
Present system of radiation protection has been developed in order to protect human. On the
other hand, increasing attention has come to be focused on the protection of the environment, i.e.,
non-human biota and ecosystems, from ionizing radiation, over the last decade. Several
international organizations, such as ICRP, IAEA and UNSCEAR, organized the meetings on this
matter. The ICRP established “Committee 5” for the environmental protection in 2005, and put a
new chapter entitled “Protection of the Environment” in the ICRP recommendation in 2007.
Although a lot of efforts have also been put on the collection of available scientific data mainly
through European projects, further researches are required to get necessary parameters and to
establish suitable methods for evaluation of radiation dose and effects. In addition, there is a need
to collect scientific information in Asian countries including Japan, because of the difference in
environmental condition between Europe and Asia.
This paper summarizes progress of research activities in 5 years project starting from 2006 in
NIRS for evaluation of the radiation effects on selected terrestrial and aquatic organisms as well as
the ecosystems. Among organisms, conifers, earthworms, collembolans, algae, Medaka, etc. are
selected to study. Transfers of radionuclides and related elements from medium to organisms are
evaluated, for the estimation of possible radiation dose. Dose-effect relationships of acute gamma
radiation on the survival, growth, and reproduction of selected organisms have been studied.
Information of genome- and metagenome-wide gene expression has been collected. Studies on the
effect of chronic gamma radiation at low dose rate were started. Effects of heavy ions were also
studied. In order to evaluate ecological effects of radiation, study methods by using three-species
microcosm were established, and an index for the holistic evaluation of effects on various
ecological parameters was proposed. More complicated and practical model ecosystems were also
applied. Radiation effects on soil bacterial community were studied.
- 136 -
Emphasizing the Ecosystem Concept for the Radiological
Protection of the Environment
François Bréchignac
Institute of Radioprotection and Nuclear Safety (IRSN), Scientific Direction (DS/Dir), Blg 229,
Centre d’Etudes de Cadarache, 13115 St Paul-lez-Durance, France
[email protected]
1. Introduction
There is a wide consensus today recognizing that human health is pledged to the health status of
the environment. This is why environmental protection has become an important issue that
radiological protection needs to consider as well. Indeed, current civil nuclear activities are
prompting fears, questions and significant efforts of regulation to prevent the occurrence of harm
which would be unacceptable to society. Concern exists with respect to the effectiveness of
mastering radiological risk in a robust and transparent manner. This led the International
Commission of Radiological Protection (ICRP), which had for a long time subordinated
environment protection to the protection of human beings, to reconsider its original paradigm and
to initiate the construction of a specific system framework for the radiological protection of the
environment (actually non-human biota) against ionizing radiation (ICRP, 2003).
It is to be strengthened however that central to the development of this system still lies an
ambiguity as to what “protection of the environment” actually means. Indeed, the “environment”
notion covers a range of different realities: pristine nature, environmental media such as soils,
atmosphere and water (including geological resources,…), individual organisms of endangered
wildlife species, communities of interacting populations of species (fish stocks in the ocean,
tropical forest,…), landscapes, habitats, ecosystems including their provision of life support
functions (climate control, air regeneration, waste recycling, biomass production…) and of
services. We stress that the “protection of the environment” terminology is often abusively
employed where it actually only addresses a few of the specific aspects mentioned above.
2. Origin of environment protection
Environmental protection initially was concerned with human health, and the major driver during
long periods had been protection of human life per se, without any major need to consider the
environment in a broad sense. Much more recently, environmental protection evolved during the
20th century as an issue due to the planetary exponential growth of human population. This
population growth, initiated during the 19th century, prompted an associated growth of
industrialisation of various processes, including exploitation of natural resources, which have
proven to impact on the environment. The goods to humankind provided by these developments,
in terms of economical development, have been recognised also to lead to potential deleterious
side effects requiring consideration in view of ensuring “sustainability” of the processes
concerned. Interestingly, concerns about the environment have not primarily evolved from the
harm observed on the environment itself (air, land, water, biota), but rather from the impairments
of human health it has been recognised to be able to promote.
Quite similarly, in radiation protection, the first phase of development has been anthropocentric
(figure 1, left), restricting the consideration of the environment to a simple vector of radionuclides
to human beings, transferred through air, water, soils and sediments, and/or through animals and
plants of agricultural value only (as food source, vegetables, milk, meat, etc…). This phase
considered human beings as the only target of concern and environment protection was directly
subordinated to this goal. It formed a very linear concept which oriented research work on transfer
of radionuclides essentially and considered man as being located external to the environment.
- 137 -
Soil,
sediment
Air
Water
Anthropocentric
Biocentric (ICRP)
Figure 1: The anthropocentric and biocentric views over the environment for the purpose of
its protection against radiation: a linear concept.
Perhaps, the first reason that has driven to protecting the environment per se has been the
rarefaction of biological resources (e.g., fish, game, forest) that had been exploited for centuries as
granted for free by nature through numerous generations of harvesters, hunters and agriculture
growers. This has been followed more recently by facing a rarefaction of species richness
(biological diversity, genetic diversity) which promotes fears in our societies with respect to the
sustainability of future generations. Next, have appeared more or less concomitantly the growing
contamination of these resources by xenobiotics (technogenic substances released by human
activities and accumulated in the environment), which impact on human health, but also on other
life forms. Artificial radionuclides produced within the nuclear cycle of electric power generation,
from atomic weapons testing or for other industrial and medical purposes, and also
“technologically enhanced naturally occurring (radioactive) materials” (TENORMs) resulting
from mining and various mineral/organic resources exploitation (oil and gas), all fall in this
category.
3. The biocentric approach focused upon individual organisms
The immediate need to ensure sustainable provision of biological resource to feed the human
population has prompted a concern about the health status of non-human biota, and especially in
response to deleterious impacts from xenobiotics, therefore shifting the protection focus from man
to other species. This is why radiological protection, in a second phase, has moved to a biocentric
approach (Figure 1, right), as currently driven by ICRP Committee 5. Paralleling the system of
protection designed for man, it takes now non-human biota as targets of radiation and follows a
very similar philosophy. This system of protection of “non-human biota” (and not the
“environment”, as often abusively stated) is dominated by the need for practical operation, leading
in turn to a number of simplifications.
One major simplification roots from facing the vast diversity of species: the system reduces the
scope to a small set of “reference organisms” (mimicked from the concept of “reference man” used
in human radiation protection) supported by traditional radio-toxicological data at individual
organism level from which typical dose-response curves are derived (from literature knowledge)
along four categories of effects endpoints concerning individual organisms - mortality, morbidity,
reproductive success and mutation - in order to construct a scale of risk (ICRP, 2008). This is still a
linear concept, which emphasizes effects on non-human biota. Such radiation effects have been
subjected to numerous studies in the past decades, but essentially focused upon individual
organisms (as for humans) exposed to high levels and acute dose rates of external  irradiation. The
resulting overall knowledge therefore still proves to be very fragmented: a poor understanding of
the impact of chronic exposures to internally accumulated irradiation in the long run ( and ,
especially), over several generations of non-human biota, taken as populations of species and their
communities. Large gaps also remain with respect to the diversity of animal and plant species.
- 138 -
Because these shortcomings are typically overcome by means of extrapolations, also carrying large
uncertainties, research work is oriented towards unravelling radiation effects in individual
organisms of a larger array of different species exposed to chronic and low dose from internally
accumulated radionuclides.
An advantage of this approach is to ensure an immediate consistency with the system of
radiological protection of man. This is seducing as it opens the path to designing a unique system
of radiological protection of both, humans and “the environment”. However, one must strengthen
that “the environment” here is actually restricted to “non-human biota” only, taken up to the
individual organism level, and not very much more. It is argued that this is quite a limitation when
facing the more holistic nature of environmental problems, as illustrated from: 1) the consensus
goal that environment protection needs to be set at the population level (or above), 2) the upcoming
international legislation which often recommends to adopt an “ecosystem approach”, 3) the focus
on ecosystemic concepts in other fields of environment protection (biodiversity, halieutics,
forestry).
4. The need for an ecocentric approach focused upon the ecosystem concept
Public perceptions of the value of nature emerge from two major considerations: the need to
safeguard biodiversity and the will to preserve life-supporting functions within natural systems
such as maintenance of safe drinking water, clean air and safe non-contaminated food, all of
which depend on ecosystem level processes. The need to view environmental problems in a more
holistic manner comes therefore from the recognition that human health is strongly bound to the
health status of the environment itself. Toxic substances which man introduces in the environment
elicit direct deleterious effects on humans, animals and plants, but also promote alterations of
ecological processes which indirectly impact them, ultimately (Bréchignac, 2003; Bréchignac and
Doi, 2009). This leads to considering the relationship between environment and human protection
as a closed loop within which man promotes changes in the environment (harmful or not to nonhuman biota), such changes in turn being capable of promoting harmful feed-back impacts in
humans.
4.1 New ecological theories refer to ecosystems as complex systems
As a foundation, new ecological/ecosystem theories currently develop a better description and
understanding of the behaviour of complex ecological systems (Jørgensen, 2006; Kay, 2000;
Müller et al., 2000). As opposed to the classical approach to presenting the impacts of toxicants
upon various aspects of biological and ecological systems, a new framework is now proposed that
incorporates complexity theory.
Essentially, the basic format of this framework features two distinct types of structures that
concern risk assessment. Living organisms (left, on Figure 2) have a central core of information,
the genome, subject to natural selection, and which drives homeostasis upon the constituents of
that system. The genome of an organism is highly redundant, a complete copy existing in virtually
every cell, with high communication and coordination between the various constituents within
organisms. Somatic cells and structure of the organism are steadily maintained through successive
generations by true inheritance through the germ line (unless DNA mutations). Above this
individual organism level, ecological (non-organismal) structures have fundamentally different
properties (right, on Figure 2). Here, there is no central and inheritable repository of information,
analogous to the genome, which would serve as the blueprint for an ecological system. Natural
selection is selfish, working upon the phenotype characteristics of a genome and its close relatives
and not upon a structure that exists beyond the confines of a genome. Hence, the lack of a blueprint
and the many interactions and non-linear relationships within an ecosystem mean that the history
of past events is written into its structure and dynamics. The many non-linear dynamics and
historical nature of ecosystems are characteristic of complex systems, and provide them with
emergent properties which are critical to how they react to contaminants.
- 139 -
In this context, Cambel (1993) has emphasized the following properties : complex systems are
neither completely deterministic or stochastic, they exhibit both characteristics; they undergo
irreversible processes; they are dynamic and not in equilibrium, they are constantly moving targets;
their different parts are linked and affect one another in a synergistic manner; the causes and
effects of the events which the system experiences are not proportional.
Ecotoxicology
Organismal approach
Eco-systemic approach
Toxicology
Ecology
DNA-RNA
Membrane receptors
Key enzymes
Organisms
Community
(Physiol. parameters:
mortality, morbidity,
reproductive success,
mutation)
(Structure, diversity,
energy transfer
efficiency, stability,…)
Xenobiotic
introduction
Ecosystem
effects
Site of
action
Population
Molecules
Cells
(Biotransformation
parameters)
(Biochemical
parameters)
(Density, productivity,
mating success,
competitive alterations
Historical traits, non-linearity, cahotic
behaviour around attractors
Inheritable genome, homeostasy
Figure 2 : Parameters and indications of the interaction of xenobiotics with all levels of biological
organisation within the ecosystem (adapted from Landis and Yu, 2004).
4.2 The goal to protect populations
There is a consensus today to consider the population(s) as the most relevant and pertinent object
of protection and many authors call for ecological risk assessment that would consider risks to
populations, no more simply to individuals. The main reason for that is that all individuals
eventually die, whereas populations persist in the long run. This is why interest in population-level
ecological risk assessment has dramatically increased within both, the scientific and regulatory
communities. SETAC in particular is advancing the practice of population-level ecological risk
assessment (Barnthouse et al., 2007). Such developments have been prompted by the consensus
recognition that individual-based assessments are inadequate for the prediction of the ecological
fate of a species-specific endpoint. The current rarity of assessments that focus on population
characteristics does not result from the absence of a scientific foundation or understanding, but
rather from the lack of concerted effort to advance their use in a risk management context.
An operational definition of the population is essential to examine the biological and ecological
context necessary for risk assessments. Roughgarden (1996) defined the population as a group of
individuals that are genetically and reproductively connected so that the transfer of genetic
information to the next generation is greater within the group that between groups. Although the
individuals provide the means, reproduction for obligate sexual organisms is a population-level
property. A ramification of this definition is that the individual organism is ecologically
insignificant unless placed in the context of a population. The population provides the individual
mates, a gene pool for genetic recombination, social structure, modified habitat, and all other
information necessary for the survival and transmission of the genetic information of the
individuals to the next generation.
- 140 -
4.3 The subsystems-to-system extrapolation in question
Controlled laboratory tests on single-species systems provide clear and easily understood linkages
between stressor exposure and effects. They are typically inexpensive, quick and easy. But a
population perspective invites examination of complexity and the use of experimental information
to address issues associated with multiple stressors, cumulative effects and real-world population
dynamics. Factors regulating populations such as disease, predation, and combination of stressors
are important to consider. Criticisms of the extrapolation from laboratory single-species toxicity
tests to an ecosystem effects approach state that toxicity tests do not consider bioaccumulation of
contaminants and ignore both temporal changes and multiple stressors effects.
Indeed, recent observations or experimental investigations on the effects of radiation have
demonstrated that overall responses at ecosystemic level may not be simply derived from local
responses observed at individual organism level (Bothwell et al., 1994). This can be due to indirect
effects mediated through alteration of trophic interactions between populations of different species
(Fuma et al., 2003; Doi et al., 2005). But more generally, this roots from “emergent” properties of
ecosystems, like resilience or resistance, which drive to non straightforward propagation of effects
across levels of biological organisation (Sokolov and Krivolutsky, 1998), or through successive
generations (Massarrin et al., 2010). Similar responses have already been faced in other fields of
environmental protection against other stressors, pushing a number of environment professionals to
assign stronger emphasis on more systemic approaches.
4.4 The emergence of the “ecosystem approach” concept
The above-mentioned considerations lead to advocating the need to boost science and methods
along an ecocentric approach (Bréchignac, 2002, 2003; Bréchignac and Doi, 2009), in a third
phase (Figure 3). Leaving the previous linear view, the approach features now the ecosystem, with
its loops of material and energy cycling, as a central concept to structure the system of radiological
protection (of the environment, including man).
Environment including man
Oxygen
Biomass
Water
• Ecosystem = biotope + biocenose
Man
PRODUCERS
CONSUMERS
- Services (waste recycling,
provision of ressources, …)
Minerals
Water
CO2
DECOMPOSERS
Biomass
Waste
CO2
- Life support (water
recycling, air bioregeneration,
biomass production, …)
Figure 3 : Ecocentric approach for environment protection featuring the ecosystem concept
There is indeed a growing awareness nowadays among policymakers and scientists that assessment
studies should adopt an ecosystem approach. Started almost 2 decades ago, this trend is best
illustrated by the vast literature on this subject area (Crober, 1999), demonstrating that
environmental managers, the primary customers of methodologies for ecological risk assessment,
have shifted towards applying an ecosystem approach to environment management.
Today, the recommendation to apply an ecosystem approach can be traced within many
governmental institutions and agencies throughout the world, as related to the protection of
biodiversity (Convention on Biological Diversity, 2004), of marine resources (FAO, 2005), of
marine and coastal environments (Laffoley et al., 2004), among many others.
- 141 -
5. Conclusion
There are several advantages expanding the system of radiological protection of the environment to
considering an ecosystem approach. First, it overcomes the large uncertainties generated by the
otherwise necessary extrapolations from organism toxicology to impacts on ecosystems. Second, it
solves the ambiguity stressed above with respect to the “environment” terminology because it
embraces an overarching goal of protection: preserving life sustainability through protection of
ecosystem structure and functioning. Finally, it improves the radiological protection credibility by
adopting the modern concepts which the overall environment protection community is now
developing to overcome and prevent man-made damages to the ecosystem-based sustainability of
life.
The sustainability of life (the actual main driver for environment protection, including man), is not
exclusively a question of toxicological harm to organisms, but also a question of maintaining
symbiotic-like assemblies of interacting species in ecosystems because these latter provide
essential features such as life support and many services. In other words, life sustainability is best
characterized in terms of ecosystems which include organisms rather than in terms of individual
organisms only. However, resilience, resistance and non-linear responses to impacts are key
ecosystem attributes needing further consideration in this context.
References
Barnthouse L.W., W.R. Munns, M.T. Sorensen (2007) Population-level Ecological Risk Assessment. Society
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Radioprotection 37; C1 161-166.
Bréchignac F. 2003 Protection of the environment : how to position radioprotection in an ecological risk
assessment perspective. The Science of the Total Environment, 307;37-54.
Bréchignac, F., Doi, M., 2009. Challenging the current strategy of radiological protection of the
environment: arguments for an ecosystem approach. Journal of Environmental Radioactivity 100, 11251134.
Cambel A.B. (1993) Applied chaos theory: A paradigm for complexity. Academic press, Inc., Boston, MA,
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Honous Thesis, Department of Geography, Faculty of Environmental Studies, University of Waterloo,
Canada. Available from: http://www.nesh.ca/jameskay/ersserver.uwaterloo.ca/jjkay/
Doi M., Kawagushi I., Tanaka N., Fuma S., Ishii N., Miyamoto K., Takeda H., Kawabata Z. (2005) Model
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Fuma S., Ishii N., Takeda H., Miyamoto K., Yanagisawa K., Ishimasa Y.,Saito M., Kawabata Z., Polikarpov
G. G. 2003 Ecological effects of various toxic agents on the aquatic microcosm in comparison with
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chronic uranium exposure on life history and physiology of Daphnia magna over three successive
generations. Aquatic Toxicology 99:309-319.
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and environmental requirements. Ecological Modelling 130, 13-23.
Roughgarden J. (1996) Theory of population genetics and evolutionary ecology: an introduction. PrenticeHall Inc., Upper Saddle River, NJ, USA.
Sokolov V.E., Krivolutsky D.A. (1998) Change in ecology and biodiversity after a nuclear disaster in the
southern Urals. Pensoft Publishers, Sofia, Moscow, 228 pages.
- 143 -
Contribution of Basic Research to Radiation Protection
Ohtsura Niwa
BioMedics Ltd.
[email protected]
The need of the basic research in radiation protection has been discussed many times in
numerous reports of radiation protection communities, yet real contribution from the basic
radiation research is slow to come. There reason for this can be of two fold; from radiation
protection side and from radiation research side. The problem of the former is that it fails
to present the need in more intelligible way to the research communities. The problem of
the latter is somewhat similar, but more serious since its root is deep down to the identity
problem of radiation research as a field of science.
The radiation research communities fail to recognize the risk related studies as the serious
subject and this drove the loss of motivation and aim by researchers of the field. This
needs some explanation which is given as below.
Any basic research field has to be competitive and productive, and has to be useful to the
society.
Radiation research does not have these in recent years. However, radiation research was
born as the cutting edge science 1950s when it was the forerunner of biophysics and later
developed molecular biology. Radiation research at that time was indispensable in
estimating DNA size of virus, bacteria and even cells, and even Dr. Jim Watson worked
on the target size analyses of bacteriophage before this was replaced by other techniques.
Radiation research kept its impact on life science by discovering DNA repair and damage
response at the cellular level and stem cells at the whole body level offering indispensable
information to radiotherapy of its infancy. Being the forerunner of life science, radiation
research was the excitement for young scientists in these days. Even radiation protection
helped promoting radiation research, as UNSCEAR was established in 1955 when
radiation
research was expected to solve all the problems of radiation effects from
molecular/cellular levels to the whole body level. Thus, in these golden eras of radiation
research, the intrinsic energy of the field as one of life science fields was strengthened by
the needs from the medical side as well as from the radiation protection side. Then, with
the rise of molecular technologies in late 70 to early 80, other fields started to take the
leading position of life science. And one has to admit that radiation research is not
- 144 -
particularly attractive to many enthusiastic young researchers in recent years. So, radiation
research now faces the identity problem as one of the field of life science in addition to
keep its identity as one of the basic research fields for radiation protection.
So, how to have “contribution of basic research to radiation protection” has to be tackled
from two sides. One is that radiation research should be revived as the competitive cutting
edge field of life science. The other is to establish one branch of radiation research within
radiation research where researchers are conscious of the mission and the need for
radiation protection. Thus, risk conscious radiation research should be established as a
competitive field of life science and as a mission oriented field. Such a branch is expected
to be very productive and in fact, can be easily established since 45radiation research is a
field so rich with bewildering range of knowledge on whole dimension of life science.
Also, such a branch can be established if we reverse the order of the wording in a reverse
order as “contribution of radiation protection to basic research”.
In the present lecture, an example of stem cell radiobiology is discussed as such a branch
of risk conscious radiation research. Stem cell radiobiology can easily be competitive in
life science. It can also be risk conscious since stem cells are the target of radiation
carcinogenesis and their behavior in a body determines the occurrence of health
detriments under low dose and low dose rate irradiation scenarios.
- 145 -
Future Subjects in ICRP
Christopher H. Clement
International Commission on Radiological Protection
[email protected]
The International Commission on Radiological Protection (ICRP) is an independent,
international organization that advances for the public benefit the science of radiological
protection, in particular by providing recommendations and guidance on all aspects of
protection against ionizing radiation. This presentation reviews the broad areas of work of
ICRP following publication of the latest fundamental recommendations in ICRP
Publication 103. In addition, specific efforts now or soon to be undertaken within the
program of work are presented, including: examination of the state of science related to
radiological protection; development of dose coefficients based on new radiation and tissue
weighting factors and other developments relevant to ICRP Publication 103; radiological
protection in medicine; application of the Commission’s recommendations related to
specific circumstances, and; radiological protection of the environment.
- 146 -
Views from Radiation Safety Regulation
Yuji Inoue
Office for Radiation Regulation, Nuclear Safety Division, Science and Technology Policy
Bureau, Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT)
It is the purpose of the Radiation Hazard Prevention
ATOMIC
ATOMIC ENERGY
ENERGY BASIC
BASIC ACT
ACT
Law, based on the Atomic Energy Basic Law, to
Law
LawConcerning
Concerningthe
thePrevention
Preventionfrom
fromRadiation
RadiationHazards
Hazardsdue
dueto
to
Radioisotopes,
Radioisotopes,etc.
etc.(The
(TheRadiation
RadiationHazards
HazardsPrevention
PreventionLaw)
Law)
– to prevent from possible radiation hazards and to secure
public safety,
safety by regulating the use,
use, sale,
sale, lease,
lease, disposal and
others in which radioisotopes are handled and regulating the
use of radiation generator, disposal and others in which the
materials contaminated by radioisotope are handled.
Law
LawConcerning
Concerningthe
theRegulation
Regulationof
ofNuclear
NuclearSource
SourceMaterial,
Material,
Nuclear
NuclearFuel
FuelMaterial
Materialand
andReactors
Reactors
(The
(TheNuclear
NuclearReactor
ReactorRegulation
RegulationLaw)
Law)
– to ensure usage of nuclear source material, nuclear fuel
material and reactors are limited to peaceful purpose and
carried out in a planned manner,
– to ensure public safety by preventing hazards due to these
materials and reactors and protecting nuclear fuel material.
prevent from possible radiation hazards and to secure
public safety, by regulating the use, sale, lease, disposal
and others in which radioisotopes are handled and
regulating the use of radiation generating apparatus,
disposal and others in which the materials contaminated
2
by radioisotope are handled. Introduction into the
regulation of the items relating the radiological protection is performed when (1) ICRP (International
Commission on Radiological Protection) publish their recommendations and IAEA (International
Atomic Energy Agency)
publish their safety requirement, (2) the necessity of radiological protection
and the enhancement of social needs for the members of public and for radiation workers occur.
Radiation safety regulation in Japan has been
discussed on the basis of view in the recommendation
of ICRP and BSS (International Basic Safety
Standards) of IAEA. Left slide shows the flow diagram
of the introduction of the system of radiological
protection into regulation. The reports published by
UNSCEAR (United Nations Scientific Committee on
the Effects of Atomic Radiation) and BEIR Committee
(Committee on the Biological Effects of Ionizing Radiation) show the new scientific evidence about
the fundamental findings on radiation safety and biological effects of radiation. Based on these
scientific evidences, ICRP leads the recommendation of the system of radiological protection
including dose criteria such as dose limit, reference level, and so on. Then, IAEA provides for the
government, regulatory body and employer etc. the safety requirement of radiological protection in
order to aim the supporting the introduction into national regulation.
The Radiation Council is established within MEXT under “the Act for Technical Standards of
Radiation Hazards Prevention”. The mandate of the radiation council is to clarify basic policy on
establishing technical standards for prevention of radiation hazards and to maintain consistency among
related technical standards. The basic policy is that the radiation doses of occupational personnel and
- 147 -
the general public shall be less than the dose that may
cause radiation hazards. The council report to the
consultation from the heads of the administrative
organization
concerning
technical
standards
for
prevention of radiation hazards, and state its opinion to
the heads of administrative organization to keep
consistency among technical standards .
Under the radiation council, specific committees
can be established to investigate the scientific issues that relate to radiological protection. Currently,
the basic committee has been established under the radiation council.
Since March 2008, the basic committee has been
investigating for the implementation of ICRP 2007
recommendation in national regulations.
In January 2010, the basic committee made the
intermediate report including the results of that
investigation. In that report, the basic committee has
selected 15 items to review from ICRP 2007
recommendation. Then, main 8 items were selected by
the review, that is (1) dose constraint for radiation
workers, (2) dose constraint for the members of public,
(3) emergency exposure situation (reference level), (4)
medical exposure, (5) dose limit for pregnant radiation
workers, (6) dose limit and frequency of dose
assessment for women radiation workers, (7) medical
examination, (8) effective dose coefficient and the
limit of radioactive concentrations. In January 2011,
the basic committee made the Secondary intermediate
report showing the suggestions for each item.
The representative results of the discussion for
above items are shown as follows. ICRP 1990
recommendation said that 2 mSv should be applied to
the equivalent dose limit on the abdomen surface of the
woman in pregnancy. According to this view in ICRP
1990 recommendation, 2 mSv is applied to that
equivalent dose limit in Japanese regulations for radiological protection and 1 mSv is applied to the
- 148 -
dose limit of internal exposure for the pregnant radiation worker in Japan. The basic committee said
that the validity of current radiation management technique should be reviewed, and the development
of new management technique to ensure radiation exposure of embryo/fetus less than 1 mSv is
expected as a future study.
The radiation effects to the baby grown up by breast
milk of woman radiation worker should be considered.
It is necessary to consider about the radiological
protection for the baby grown up by breast milk,
because there is no direct measure against this issue so
far in Japan. Fact-finding study for the types of infant’s
exposure attributed to breast milk is needed for the
future discussion.
Other scientific considerations are thought to be
reviewed for (1) dose constraint for the members of
public using representative person, (2) case study for
optimized dose constraint for carer, comforter, and
volunteer for medical research as a medical exposure,
(3) reassessment of the values of effective dose
coefficient, limits of radioactive concentration in
exhaust air and in air within controlled area, and in
exhaust water.
The basic committee will discuss about a radiation
protection from radon and a treatment of NORM
(Naturally Occurring Radioactive Material) in 2011.
UNSCEAR mentioned that the relative risk of the
lung cancer significantly increased by exposure to
radon of 100Bq/m3 from the result of 13 epidemiology
investigation in their recent report. In the light of the
reports, examination was pushed forward in each
international
organization,
then
WHO’s
radon
handbook, ICRP’s radon statement in 2009 and the
revised BSS (draft 4.0 in 2010.) were provided
respectively as a reference level for the public exposure.
For these international trends, the protection of
- 149 -
members of public from radon exposure is to be considered in the system of radiation safety regulation
in Japan. For example, the determination of the optimum reference level for residence will be needed.
Then, the method of the reduction of radon concentration in residence should be developed in the
future.
“Guideline for securing the safety of raw materials and products etc. containing Uranium or
Thorium” was published in June 2009 in Japan. Further studies about the radiological protection,
regulation level and waste disposal for NORM are necessary to secure the radiological protection for
the workers of associated facility and public around the facility.
In general, new regulation relating the radiological
protection will be introduced, or current regulation will
be revised, according to the evolution of the system of
radiological protection, or enlargement of utilization of
radioactive material. To fulfill the object of regulation,
the
regulation
needs
to
regulate
rationally.
Indispensables are the cooperation of the research
organizations (e.g. relating academic associations,
radiation-related industry and academia) which gather
the experts those specialize in medical or general
radiological protection and many persons concerned. To
develop
the
optimized
regulation,
more
certain
scientific evidences and fact-finding for domestic
situation must be essential.
We hope that academic group and enterprises,
universities related to radiation would find international
new themes and operate advanced researches and thus, have contribution for the system of
radiological protection.
- 150 -
第5回放射線防護研究センターシンポジウム報文集
「放射線防護における規制科学研究とその展望
Regulatory Sciences in Radiation Protection
and their Perspective」
平成23年3月刊行
発
行
郵便番号
住
所
連 絡 先
独立行政法人 放射線医学総合研究所
263-8555
千葉県千葉市稲毛区穴川4丁目9番1号
独立行政法人 放射線医学総合研究所
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ISBN 978-4-938987-98-8
NIRS-M-238
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