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外部磁場による マイクロ波エンジンの逆流電子制御
2001 年度卒業論文 外部磁場による マイクロ波エンジンの逆流電子制御 北海道工業大学 工学部 応用電子工学科 6−4−M−98−072 田中 吹雪 指導教員 佐鳥 新 目次 第一章 序論 1. 目的 2. 電気推進 3. 電気推進の種類 4. イオンエンジンの原理 5. マイクロ波放電型静電加速推進機 第二章 原理 1. 作動原理 1-1.プラズマ生成 1-2.マイクロ波サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマ生成 1-3.電子によるイオンビームの中和 第三章 実験装置 1. 真空装置 2. ガス供給系 3. 測定装置 4. 中和器の仕様 第四章 実験方法 第五章 実験結果 1. ノーマルエンジン 2. 外部磁場 タイプ 1-1 3. 外部磁場 タイプ 1-1 4. 外部磁場 タイプ 1-3 5. 外部磁場 タイプ 2-1 6. 外部磁場 タイプ 2-2 7. 外部磁場 タイプ 2-3 第六章 考察 第七章 結論 謝辞 参考文献 1 1 1 1 3 4 7 7 7 7 11 15 16 18 20 23 25 27 27 29 40 49 64 67 70 73 80 第1章 序論 1. 目的 イオンエンジンは、推進剤を電離・プラズマ化させ、イオンをグリッドによ り抽出・加速し、その反作用により推力を得る電気推進のひとつである。し かし本研究で用いたマイクロ波エンジンはグリッドを使用せず、エンジンに 電圧を加え、それによって出来た電位勾配でイオンを抽出・加速する。イオ ンエンジンに共通することで、抽出・加速されたイオンを中和するために、 中和器が必要となる。しかし、この時グリッドの付いていないマイクロ波エ ンジンは、中和器から出た電子がエンジンへと流入してくるのを防ぐことが 出来ない。これにより加速電流の上昇、そして加速効率の低下へとつながっ てしまう。この電子の流入を防ぐために、エンジンの上部に電子シールドを 形成、磁場により電子を閉じ込め、電子の流入を防ぐことが本研究の目的で ある。具体的な基準を以下に示す。 (1) 外部磁場を設置しないエンジンの加速効率よりも上とする (2) 加速効率 50%以上は必須とする 2. 電気推進 電気推進とは、その名の通り電気エネルギーを運動エネルギーに変換する ことによって推力を得る、宇宙空間で用いるロケットエンジンの一つである。 電気推進は、科学推進に比べ低推力、高比推力を特徴とする。この為、電気 推進で直接地上から打ち上げることができないが、小重力天体(小惑星・彗 星等)へのミッションや、衛星の姿勢制御等、低い推力で長時間運用できる 様なミッションに適している。前述した高比推力という事から、推進剤の重 量の大幅な削減が可能となる為、人工衛星の軽量化・長寿命化、そしてペイ ロード増を図ることができる。更にその他の特徴として、投入するエネルギ ーが電気のため、推進剤が燃焼性のものである必要がなく、基本的には推進 剤の種類は問わない。しかし、現実的には効率、点火性、もろもろのシステ ム構成、更には環境問題などが考えられ、一般的にはキセノン(Xe)やアル ゴン(Ar)が使用される。 3. 電気推進の種類 電気推進は電気エネルギーの変換方法によって主に 4 タイプに分類される。 I) 電力を熱源として推進剤を加熱する電熱加速(DC アークジェット) II) ローレンツ力によって推進剤を加速(MPD アークジェット) III) ホール電流と外部磁場の干渉による電磁加速(ホールスラスタ) 1 IV) 静電的にイオンを加速するタイプ(イオンジェット) DC アークジェットは、アーク放電により高温・高圧になった推進剤をノズ ルから噴出させて推力を得る。比推力は1000[sec]以上、推力比100 [mN/kW]以上の作動範囲を持つ。推進剤には主に化学推進と同じヒドラジン (N2H4)が用いられる。その為、大きな誤差が生じたときの補正や電気推 進の故障時、また短時間で姿勢や軌道を変更する必要のあるシーケンス用と して搭載される化学推進系と推進剤タンクを共用することが可能である。ま たその機構上のシステム重量は電気推進の中でも比較的軽量である。 MPD(Magneto Plasma Dynamic)アークジェットは、 電熱加速型の推進機で、推進剤をアーク放電により加熱、電離した上で、放 電電流が作る周方向磁界に電流自身が干渉して生じるローレンツ力により、 電離した推進剤を電磁加速して推力を発生する機構を持ち、比推力1000 [sec]以上、推力電力比50[mN/kW]程度を作動範囲とする。推進剤にはヒド ラジンや水素用いることが多い。DC アークジェットの内部機構は気体力学 であるのに対し、MPD アークジェット電流流体として捉えるのが妥当であ り、磁気圧の効果をも含んだ磁気音速がその場を支配する。現在行われてる 研究開発の多くはパルス型(準定常型)のものである。 ホールスラスタは、陽極・陰極・加速チャネルの三つに分かれており、この 加速チャネルには軸方向に電界、半径方向に磁界がかけられている。そして 陰極から放出された電子は、加速チャネルに入り、加速チャネルにかけられ た電場と磁場の作用により周方向にホール運動を行う。そこに投入された推 進剤と電子が衝突することにより電離、プラズマが生じる。そしてこのプラ ズマ中のイオンが軸方向にかけられている電界により飛び出し、その反作用 によって推力を得る。非推力は 1000∼2000 秒で、現在の人工衛星に搭載さ れており高い信頼性を得ている。 イオンエンジンは、推進剤を電離・プラズマ化し、多孔状のグリッドに引火 した電圧で静電的にイオンを加速し、その反作用で推力を得て加速する。化 学ロケットよりも一桁高い比推力(一桁燃料消費量が少ない)を有している。 応用としては大型衛星や宇宙プラットフォームの位置・姿勢制御、大型構造 物や物資などの静止軌道の運搬、さらには月・惑星ミッションにおける主推 進としての利用が考えられている。 実際に宇宙科学研究所では小惑星ネレウ ス探査用として、科学衛星Muses-Cにイオンエンジンを搭載している。 2 4. イオンエンジンの原理 第一章にて前述したが、イオンエンジンは推進剤を電離・プラズマ化し、静 電力によりイオンを抽出・加速噴射して推力を発生する装置である。静電加 速の宿命として、単位面積あたりの電荷粒子流が空間電荷効果を受け、推力 密度は大きくできない。しかし、粒子噴射速度が高く、化学ロケットより一 桁高い比推力を実現、つまり推進剤の消費を一桁少なくする事ができる。こ れにより推進剤を大量に消費する今後の宇宙活動には、イオンエンジンは重 要な技術となる。 イオンエンジンシステムは主にイオンスラスタ・電源部・推進剤貯蔵供給 系等から構成される。このイオンエンジンの推力発生過程/機構から大きく 以下の図2―1の様に三つの部に分けられる。 推進剤 + 推進剤 + e- ee抽出・加速部 プラズマ生成部 中和部 図2―1 イオンエンジン概念 a.) プラズマ生成部 イオンエンジンはイオンを加速し推力を得る。その為には、イオンを生 成しなくてはならない。 最初に推進剤タンクからプラズマ生成部(放電室)へ推進剤を供給し、 放電により推進剤を電離/プラズマ化させる。電離の方法は電子衝突型 とマイクロ波放電型とに分けられる。電子衝突型はタングステンフィラ メントやホローカソードといった電子源からの電子にエネルギーを与 え、推進剤と衝突させ、推進剤を電離する方法である。高周波電離型は 3 マイクロ波により電子にエネルギーを与え推進剤を放電する方法であ る。これについては後ほど詳しく説明する。 b.) イオン抽出・加速部 イオン加速抽出部は、2 枚または 3 枚のグリッドと呼ばれる多数の小さ い穴の開いた電極で構成されている。これらのグリッド間に電位差を与 え、プラズマ生成部で作られたプラズマからイオンを抽出・加速する。 スラスタは、イオンビーム抽出の反作用により、推力を得る。 ちなみに、イオン源側のグリッドをスクリーングリッドといい、正の電 圧が加えられる。次のグリッドは、アクセルグリッドと呼ばれ、負の電 圧が加えられる。 c.) 中和部 中和部には中和器と呼ばれる電子源があり、イオンビームと同じ量の 電子を放出してエンジン全体を中性に保っている。これは、エンジン の外に引き出されたイオンビームを中和しないと、エンジンが負に帯 電してイオンビームが逆流して推力を発生することが出来ないからで ある。また、加速グリッドに高エネルギーのイオン粒子が衝突し、加 速グリッドの損耗や2次電子放出による放電などの問題が起こること もある。 この中和器はイオンビームに直接たたかれぬ程度に離れ、イオンビームと の電位差が大きくならないよう(∼20V)に決められている。 5. マイクロ波放電型静電加速推進機 図1−1に示すように、マイクロ波放電型静電加速推進機では、放電室の 上流と下流に設けた2つの電極間に1個の電源を用いて電位をかける構成 となっている。これは、従来の静電加速推進機に比べイオン加速に要求さ れる電源を減らす事ができたからである。中和器プラズマを生成するため の中和器には、コードカソード(冷陰極)を用いる構成になっているため 余分な推薬の削減になっているとともに、性能低下を改善する事ができる。 加速電極をシンプルな構造に且つ部品点数を減らすためにアンテナをイオ ン加速の為に上流側の電極と兼用構造になっている構成となっている。ま た、マイクロ波放電型静電加速推進機で用いるアンテナはマイクロストリ ップラインで構成されたマイクロ波発振器、マイクロ波増幅回路及びマイ クロ波整合回路と同一の基板上に配置された回路構成となっているため小 4 型化が可能になりエンジン全体のユニット化、クラスター化することへの 応用も可能となっている。 コールドカソ−ド 中和器 下流加速電極 e e シールドケース 放電室側面 プラズマ 回路基板 加速電源 マイクロ波アンテナ /上流加速電極 マイクロ波 図1-1 マイクロ波放電型加速推進器 図 1−2に新型スラスタの原理概略図を示す。 マイクロ波 推進剤 e Xe e e e e e e アノード カソード/ 中和器 図1―2 新型マイクロ波エンジン この電気推進機はイオン加速室と中和器から構成されている。推進剤には Xe ガスを使用し、プラズマは、マイクロ波と放電室内のカスプ磁場による 電子サイクロトロン共鳴(ECR)により生成される。電極は放電室の上流と 下流にそれぞれ配置する。中和はホールスラスタと同じように下流に置か 5 れた電極により行われる。この二つの電極間に加速電圧を与えてプラズマ の中に静電界勾配を形成し、イオンを加速して推力を得る。 6 第2章 原理 1. マイクロ波エンジン作動原理 1-1 プラズマ生成 イオン抽出・加速部と中和器の構造や機能は、エンジンによって大 差は無く、エンジン全体の構造、作動、性能などはプラズマ生成部、 つまりイオン源の種類のよって決まるため、プラズマ生成の方法によ りエンジンは分類される。現在では直流放電を利用する電子衝撃型エ ンジンを中心に、高周波(RF)誘導加熱型、マイクロ波電子サイクロト ロン共鳴型(ECR)などの研究が進められている。 1-2 マイクロ波サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマ生成 マイクロ波放電の特徴は、プラズマ中に大きな電場を導入できる ので大気圧から低気圧まで幅広い放電領域がカバー出来る事である。 イオンエンジンの作動領域のような低気圧での放電には、電子サイ クロトロン共鳴(ECR)を利用するために、マイクロ波と磁場が 併用されることが多い。従来マイクロ波放電は、プラズマ・プロセ シングや多価イオン源、核融合のプラズマ加熱などの分野に用いら れてきたが、これがイオンエンジンのイオン源にも応用され始めた 理由は、 1) 放電電極を使用しない為、スラスタの高寿命化と構造の簡略化 2) 単一のマイクロ波電源で主放電室と中和器のプラズマを同時に 生成できる 3) 直流放電方に比べて電源数が減るのでシステムの構成が簡単に なる といった利点があるからである。以下においてECRによるプラズ マ生成と着火の問題を概説する。 まずECR放電について粒子モデルを用いて説明する。一般に電 子は磁場中では螺旋運動を行う。この運動は磁力線に沿う方向の速 度 V‖の等速運動と、磁力線に垂直な V⊥による反磁性円運動の重ね あわせである。円運動のラーマー半径を r⊥とすると r ⊥= V ll = V ⊥ 2 π (eB/ 2 π m e ) 2 π f c 7 [m] …1 fc = eB = 28 ⋅ B 2 π me [GHz] …2 となる。ここで、me:電子の質量、B:磁束密度[T]、e:素電荷 を表している。fc はサイクロトロン周波数と呼ばれ、これに一致す る電磁波を外部から供給すれば、電子は右回りの円偏波電界から共 鳴的にエネルギーを受け取る(=加速される)。左回りの円偏波電界 の下では、加速と減速が交互に起こり、電子による有効なエネルギ ーの受け渡しは起こらない。 具体的な数値を見る為に、周波数 4.2[GHz]、電力 100[W]のマイ クロ波が、代表長 10[cm]の放電室に入射する例を考える。ECR が起 こる磁場強度は 2 式より 1.5[kG]となる。簡単のため電力密度 I[Wm-2]の直線偏波された平面波で近似すると、その電界は E = I⋅ Z 0 [Vm-1] …3 で与えられる。ここで Z0:真空中の特性インピーダンス(=377[Ω]) である。平面波は右偏波と左偏はに分解できるが、そのうち電子へ のエネルギー伝搬に寄与するのが右偏波であることを考慮すれば、 電界の振幅は 1/2・E となる。即ち、 P = 100[W] = 10 4 [W・m-2] …4 2 100[cm ] Er = 1 10 4 [W ⋅ m − 2 ] ⋅ 377 [Ω ] = 9.7 ⋅ 10 2 [V・m-1] 2 …5 この値を使い右偏波電界で速度 0 の電子がガスの電離電圧まで加速 される時間を見積もってみる。ガスは通常イオンエンジンに用いら れてるキセノン(電離電圧=12.13[V])を仮定すると、 V⊥ = 2 T⊥ = 5.9 ⋅ 10 3 T⊥ [V ] = 5.9 ⋅ 10 3 12.13 = 2.05 ⋅ 10 6 m e [m・s-1] …6 電子が V⊥間で加速される時間を t0 と置けば V 2.05 ⋅ 10 6 m⋅ s −1 t 0 = eTr ⊥ = = 12 [n sec] …7 1.7 ⋅ 1014 m⋅ s −1 me [ [ ] ] となる。マイクロ波の1周期は 0.238[n sec]なので、電子サイクロト ロン共鳴が放電に有効に作用するためには、少なくとも 50 回程度の サイクロトロン運動が維持されなくてはならない。この条件は放電 室内の真空度(ガス圧)に上限を与える。電子‐中性ガスの衝突周 8 波数ν[s-1]、マイクロ波の角周波数ω[s-1]、中性ガス密度 n[m-3]、キ セノンの衝突断面積σを用いて表すと、 ν = nσ V⊥ ≤ 1 ω ω 50 (キセノン、f = 4.2[GHz]) となる。中性ガス密度を圧力 p[torr]で表すには、n[m-3]=3.54×1022・ p[torr]で置き換えればよい。キセノンの場合σ=1.85×10-19[m2]であ るから、これらの数値を不等式に代入すると、 p ≤ 0.04 [torr] (キセノン) を得る。同様にしてキセノンより電離電圧の高いヘリウム(= 24.95[V])に対しては、 p ≤ 0.13 [torr] (ヘリウム) となる。つまり、ガス種にもよるが、1[torr]未満であれば顕著な共 鳴効果が期待できる。 ECR イオン源にはいくつかタイプがあるが、イオンエンジンに用 いるイオン源には、軽量化の観点からカスプ磁場を利用したものが 適している。カスプ磁場配位は元来 DC 放電による大容量プラズマ 生成のために考案されたもので、ECR と組み合わせるにはそれぞれ 異なった設計指針が必要となる。 図 2-2 にカスプ磁場の原理概略図を 示す。 磁力線(カスプ磁場) Xe N Xe 推進剤供給口 S e Xe S Xe+ Xe+ Xe+ e e 主陰極 グリッド e S e N 陽極 e S 磁石 中和器 図 2-2 カスプ磁場概略図 9 永久磁石によりカスプ型(三日月型)磁場を形成し,ミラー効果 によりプラズマの閉じ込めが行われる。N 極と S 極を交互に配置 することで,放電室壁近傍には強い磁場,放電室中央には弱い磁 場が形成される。 次にプラズマの着火について説明する。ECR 領域で加速された 電子は放電室内の磁場中で▽B ドリフトによる効果が大きい。そ の速度は ρ B 1 …8 V∇B = ν ⊥ γ ⊥ × ∇2 B 2 B で与えられる。▽B ドリフトを模式的に表すと図 2-3 のようになる。 図 2-3 ▽B ドリフト軌道と電子の運動 電子がカスプ磁場に閉じ込められ、その電離作用による電子密度 の増加が拡散およびドリフトによって壁に失われる割合と釣り合 うときに放電が開始される。カスプ磁場配位をリング状に閉じた 構造にすればドリフトによる電子の損失を最小限に抑えることが でき、低電力での放電が維持できると共にイオン生成コストを低 く保つことが可能である。その効果は実験でも確認されており、 直接的な例では、電子のドリフト電流をプローブで測定した実験 や、間接的なものでは、カスプを形成する磁石列のミスアライメ 10 ントのためにイオン漏れ(壁面損失) が生じる場合には最小放電維持電力が増大する事、電子のドリフ ト軌道を硝子板等の障害物で遮ると最小放電維持圧力が上昇する 事、などが報告されている。従って性能の良いイオン源を設計す る為には、(1)磁石表面から離れた広い ECR 磁場領域を作ること、 (2)▽B ドリフト軌道が途切れないように保持すること、という 二点に配慮する必要がある。 最後にプラズマの分散について説明する。プラズマが生成され て電子密度が増えると、電子は単独に電磁波と相互作用できず集 団運動に支配され、電磁波に対して分散のある媒質となる。厳密 ρ ρ ρ な意味での ECR(f = fc)は k llB の場合にのみ成り立ち( k :波数 ベクトル)、電子密度 ne には依存しないが、実際には磁場と電子密 度に依存して複数の伝搬モードが存在することが知られている。 まず低磁場側から磁力線に並行に伝搬するホイスラー波と呼ばれ る伝搬可能な電磁波モードが依存する。磁力線に垂直な方向に伝 搬が許される高域混成共鳴波も存在し、その共鳴条件は ω 2 = ω 2p + ω c2 …9 で与えられる。ωp はプラズマ振動数と呼ばれる量で、 ω 2p = n ee2 ε0me …10 で定義される。 1-3 電子によるイオンビームの中和 イオンエンジンでは、イオン源から加速電極を用い静電的にイオ ンを抽出加速して、エンジン後方へ高速で噴出させることにより推 力を得る。推力は次式で表される。 ⋅ F = m i ν i cos(θ ) = 2 ⋅ mi jbi Vb cos(θ ) q …21 m i :ビームのイオン流量 νi:イオン噴出速度 Jbi :ビームのイオン電流 q :イオン質量当り電荷 mi Vb:正味加速電圧 Θ:イオン噴出速度の中心軸となす平均角 11 噴出されるイオンは正電苛を持っているので、エンジンを宇宙で使 う場合には、噴出イオンビーム中に電子を注入して、中和を行う必 要がある。中和には二つの目的がある。 (1) 常に噴出イオンと同数の電子を放出して宇宙機あるいは人工 衛星の電荷の蓄積を防ぐ。 もしこの条件が満たされないで、例えば、放出電子電流がイオン電 流より小さいと、負の電荷がたまり、機体の電位が次第に低下して、 加速されたイオンが再び引き戻されるか、さらには加速されないと いう事態も起きる。 (2) できるだけ噴出口の近くまでビームの電荷を中和、すなわち プラズマ状態にし、イオンの電荷によるビームの空間電位の 上昇と、それから起こるイオンの減速、拡散による推力低減 を防ぐ。 中和によって下流にもプラズマが形成される。しかし実際には中和 現象は使用される中和器の電子放出能力の影響を受け、イオンビー ムに対応する十分な電子放出が行えない場合、100%中和が達成でき ず、中和面の形成は下流に移動し、イオンビーム地震の収束に影響 するものと考えられるためである。上記 21 式のΘを大きくしないこ とである。 この二つを式で表すと、イオンと電子の電流および数密度が等し いとして、 (1) J bi = J ne (2) nbi =n be … 22 … 23 である。条件(2)がビームの全領域で達成されることは無く、一般 に、下流へ行くに従ってイオンと電子の混合が進み、満足度が高く なると思われる。一方、加速電極のすぐ近くでは電子が存在せずに、 イオンだけの領域がある。このイオン流領域とプラズマ流との境界 面を中和面と言い、中和面があまり下流になると、ビーム電流の上 昇、ビームの拡がり角増大などが起こり好ましくない。以上の 2 条 件が必要であるが、(1)の条件が優位に立つ。 イオンビームを宇宙で中和する際に、本当に中和できるか危惧さ れたが、電子放出能力が十分ある中和器をビーム近くに置くことで、 電子はビームに吸い込まれて行く事が解った。 今、図 2-5 の様に、イオン電流 Jbi のビームの中和を考える。 12 イオンエンジン Ib + イオンビーム − ln Vcp 中和器 図 2-5 中和器の配置とビーム中和 中和器が電子のみを放出し、その電子放出面の面積を Ae、ビーム端 までの距離、電位差を ln、Vcp とし、放出面の電子放射が十分で電子 が空間電荷制限下で放出されるとすれば、比例定数 k を用い、放出 電子電流は、 J ne = kAe Vcp2 l n2 3 … 24 である。22 式を用いるとカップリング電圧 Vcp は、 J l2 Vcp = bi n kAe K= kAe l n2 2 3 J bi3 = K 2 … 25 … 26 となる。K は空間電子放出能力ともいえるが、これが大きいと、イ オンビーム電流が同じであれば、中和器に対するビームの電位は低 くなる。この能力が小さい時は、電子抽出電圧即ちビームの電位が 高くなって、イオン電流に等しい電子電流を達成する。中和器が放 電を利用するホローカソードであれば、それが同時に放出するイオ ンによって空間電荷が打ち消され、電子の移動が容易になり Vcp は低 下する。このようにホローカソードは、イオンの攻撃を受けない安 全な場所に設置しても、ビームの電位を十分低く保つことが出来る 有用な電子源である。また 24 式に示すように、ビームと放出面との 13 距離が小さいほうが、容易に電子が放出できる事がわかる。この容 易さからすると中和器をビーム中に置いたほうが良いが、高エネル ギーのイオンの直接攻撃を受けるので、それによる浸蝕が大きく寿 命が短い。そのためイオンエンジンの中和器は、普通、ビームの外 側に置かれる。 14 第3章 実験装置 本実験での実験装置の構成は以下の通りである。 1. 真空装置 2. ガス供給系 3. 電源及び測定回路 4. 中和器の仕様 15 図 真空装置 ・装置について 1) 真空チャンバー 内部にスラスタを入れ測定するための装置 2) ロータリーポンプ (×2) チャンバー内、及びディフュージョンポンプ内の空気をあら引きするための装置 3) ディフュージョンポンプ ロータリーポンプで粗く真空にした後、さらに高い真空度を得るための装置 4) ピラニ真空計 −1 3 チャンバー内の真空度を測定する装置。2.0×10 ∼2.0×10 [Pa]まで測定可能 5) 電離真空計 −4 チャンバー内の真空度を測定する装置。×10 −7 ∼ ×10 [torr]まで測定可能 6) ゲートバルブ 真空にするために、各ポンプ間のゲートを開く為のハンドル式のバルブ 7) リーク弁 真空から大気圧に戻すための装置 ・ 装置の仕様 1) ロータリーポンプ A 16 UST – 100 OIL ROTARY VACUUM PUMP 100 [L/min] No.9909201 2) ロータリーポンプ TOKUDA B OIL – SEALED ROATRY VACUUM PUMP 300[L/min] No.900015743 3) ピラニ真空計 OKANO WORKS LTD:AVP 202N12 RANGE 0.2∼2000[Pa] No.03J175 4) 電離真空計 Unitec RANGE IONIZATION GAUGE -4 IG-8 −7 1.0×10 ∼10 17 PIRANI GAUGE ・ 装置について 1.) ラインストレッチャー マイクロ波回路の線路長を可変させて回路の整合をとる装置 2.) 方向性結合器 マイクロ波の入射波と反射波の一部(30 ㏈)を伝送路から別々に取り出す装置。 この装置を使うことで、入射波と反射波の出力を測定することが出来る 3.) DC ブロック スラスタ側からの電流が、マイクロ波アンプに逆流するのを防ぐ装置 4.) パワーメーター マイクロ波の電力をパワーセンサで検出して測定するための装置。電力を検出し、 電気信号に変換して測定する。100[kHz]∼90[GHz]まで測定可能 5.)発振器 周波数 1.5[GHz]のマイクロは発振器 6.)マイクロ波パワーアンプ 発振器からのマイクロ波を増幅する装置 7.)加速電源 スラスタ本体にプラスの電圧をかけ、イオンを加速させるための装置。本実験では 100∼300[V]まで印加する。 8.)点火器・中和器電源 点火器・中和器を使用するための電源。それぞれの端子から出ているコネクタに 接続して使用する。その際に点火器側は 5[A]、中和器側は 2[A]までとする 9.) コレクタ電源 電位勾配を作りイオンビームを引き出すために、コレクタに負の電圧を印加する装 置 ・装置の仕様 1. ラインストレッチャー 2. 方向性結合器 DIRECTIONAL COUPLER MODEL : C3545‐30 SERIAL No. 601001 3. DC ブロック 4. 加速電圧電源 TAKASAGO LTD:GPO350-0.5 REGULATED DC POWER SUPPLY NO. 18290011 21 5. コレクタ用電源 TAKASAGO LTD:GPO500-1R REGULATED DC POWER SUPPLY NO. 23291059 6. 中和器(フィラメント)電源 KIKUSUI ELECTRONIC CORP : REGULATED DC POWER SUPPLY MODEL PAD 55-20L 7. マルチメータ ⅰ) GRAPHTEC : THERMAL ARRAYCORDER WR8500 NO. 8018258 ⅱ) NEC : omniace AT3600 NO. 0030820 22 4. 中和器の仕様 今回の実験で使用した中和器はフィラメント中和器と、マイクロ波中和器である。 ・ フィラメント中和器 25%Re・タングステンを使用。 ・ マイクロ波中和器 図 マイクロ波中和器概要図 実験時には、中和器上部に 6 mm径のアルミ製オリフィスを設置。 ※詳細は“高田尚広 北海道工業大学 2001 年度卒業論文 研究”を参照 ・ 使用した磁石の寸法 23 ディスプレイ型電気推進の 磁石の材質はサマリウム・コバルト(Sm-Co) 磁力線の向き 磁力線の向き 4[mm] 2[mm] 4[mm] 2[mm] 4[mm] 8[mm] ・角型 ・リング型 24 第4章 実験方法 1. スラスタ上部に何もつけず、ノーマルな状態での加速電流・ビーム電流・加速効率を測 定する。 2. スラスタ上部に、ホールスラスタをモデルとしたオプションを取り付け、1 と同様の実 験を行う。これによりノーマルな場合との比較を行う。ちなみにこのオプション部分は 2タイプあり、それぞれに 3 つの異なる長さのものがある。これらを取替えることによ る変化も合わせて測定する。 実験手順 a.真空装置 1. リーク弁 A を閉める 2. 冷却系のスイッチを入れる 3. ロータリーポンプ A のスイッチを入れる 4. ゲートバルブ A を開ける 5. ディフュージョンポンプのスイッチを入れる 6. リーク弁 B を閉める 7. ロータリーポンプ B のスイッチを入れる 8. ゲートバルブ B を開ける 9. 2.0×10[pa]になったらゲートバルブ B を閉める 10. ゲートバルブ C を開ける 11. クイックバルブを開ける −5 12. 真空チャンバー内が 2.0×10 b−1.点火 [torr]になるまで待つ その1(フィラメントカソードを用いた場合) 1. Xe を 3.5[sccm]を流す 2. 流れているのを確認した後、加速電圧を 100[V]まで上げる 3. 点火器電源のスイッチを入れ、5[A]まで上げる 4. μ波発振機のスイッチを入れる 5. μ波アンプのスイッチを入れる 6. 点火器のスイッチを入れる 7. 点火した後反射が大きい場合、ラインストレッチャーで調整する 25 b−2.点火 その2(μ波中和器使用) −5 1. 中和器側のクイックバルブを開け、4∼5.0×10 [torr]にする 2. “点火その1”と同様にする 3. 点火器電源のスイッチを入れ、5[A]まで上げる 4. 中和器側のμ波アンプのスイッチを入れる 5. 点火器のスイッチを入れる c.測定 1. 加速電圧を 100∼300[V]まで 50[V]づつ上げていく 2. それぞれの電圧ごとの加速電流を測る 3. コレクタ電源のスイッチを入れる 4. それぞれの電圧ごとのイオンビーム電流を測定する 26 第5章 実験結果 1. ノーマルエンジン 外部磁場を取り付けない状態のエンジン概要図を以下に示す。 図 1-1 ノーマルエンジン概要図 以後エンジンの寸法はすべて同じ ※ 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 40 20 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 1-2 加速電圧と加速電流の関係図 27 350 40 35 30 25 Ib[V] ノーマル 20 0.35[sccm] 電流換算 15 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 1-3 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 40 ηa[%] ノーマル 30 20 10 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 1-4 加速電圧と加速効率の関係図 28 350 2-1. 外部磁場 タイプ 1-1 version-A 図 2-1 外部磁場設置イオンエンジン概要図 80 70 60 Ia[mA] 50 ノーマル 40 タイプ 1-1 30 20 10 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 2-2 加速電圧と加速電流の関係図 29 300 35 30 Ib[mA] 25 ノーマル 20 タイプ 1-1 15 0.35[sccm]電 流換算値 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 2-3 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-1 20 10 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 2-4 加速電圧と加速効率の関係図 30 300 2-2. 外部磁場 タイプ 1-1 version-B ・外部磁場にカプトンテープを貼付 図 2-5 外部磁場設置イオンエンジン概略図 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 タイプ 1-1 40 20 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 2-6 加速電圧と加速電流の関係図 31 350 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-1 20 0.35sccm] 電流換算値 15 10 5 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 350 図 2-7 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 加速効率[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-1 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 2-8 加速電圧と加速効率の関係図 32 350 2-3. 外部磁場 タイプ 1-1 version-C ・ 外部磁場の磁石の極性を反転 図 2-9 外部磁場設置イオンエンジン概略図 120 100 Ia[mA] 80 60 ノーマル タイプ 1-1 40 20 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 図 2-10 加速電圧と加速電流の関係図 33 300 350 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-1 20 0.35[sccm]電 流換算値 15 10 5 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 350 図 2-11 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-1 20 10 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 2-12 加速電圧と加速効率の関係図 34 350 2-4. 外部磁場 タイプ 1-1 version-D ・ 中和器を交換 ※(以後中和器はタイプ 1-3 まで、マイクロ波中和器を使用) 図 2-13 外部磁場設置イオンエンジン概略図 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 タイプ 1-1 40 20 0 0 50 100 図 2-14 150 200 Va[V] 250 300 加速電圧と加速電流の関係図 35 350 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-1 20 0.35[sccm]電 流換算値 15 10 5 0 0 50 100 図 2-15 150 200 Va[V] 250 300 350 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-1 20 10 0 0 50 100 図 2-16 150 200 Va[V] 250 300 加速電圧と加速効率の関係図 36 350 2-4. 外部磁場 タイプ 1-1 version-E ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] 図 2-17 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 60 ノーマル タイプ 1-1 40 20 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 2-18 加速電圧と加速電流の関係図 37 350 40 35 Ib[mA] 30 25 ノーマル 20 タイプ 1-1 15 0.35[sccm] 電流換算値 10 5 0 0 50 100 図 2-19 150 200 Va[V] 250 300 350 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-1 20 10 0 0 50 100 図 2-20 150 200 Va[V] 250 300 加速電圧と加速効率の関係図 38 350 3-1. 外部磁場 タイプ 1-2 version-A 図 3-1 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 タイプ 1-2 40 20 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 3-2 加速電圧と加速電流の関係図 39 350 40 35 30 Ib[mA] 25 20 ノーマル 15 タイプ 1-2 10 0.35[sccm]電 流換算値 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 3-3 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-2 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 3-4 加速電圧と加速効率の関係図 40 350 3-2. 外部磁場タイプ 1-2 version-B ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] 図 3-5 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 タイプ 1-2 40 20 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 3-6 加速電圧と加速電流の関係図 41 350 40 35 30 Ib[mA] 25 ノーマル 20 タイプ 1-2 15 0.35[sccm] 電流換算値 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 3-7 加速電圧とビーム電流の関係図 80 70 60 ηa[%] 50 ノーマル 40 タイプ 1-2 30 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 3-8 加速電圧と加速効率の関係図 42 350 3-3. 外部磁場タイプ 1-2 version-C ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] ・ 中心の鉄のナット 増(2個) 図 3-9 外部磁場設置エンジン概要図 80 70 60 Ia[mA] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-2 20 10 0 0 50 100 図 3-10 150 Va[V] 200 250 加速電圧と加速電流の関係図 43 300 35 30 Ib[mA] 25 ノーマル 20 タイプ 1-2 15 0.35[sccm] 電流換算値 10 5 0 0 50 100 150 Va[V] 200 250 300 図 3-11 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-2 20 10 0 0 50 100 図 3-12 150 Va[V] 200 250 加速電圧と加速効率の関係図 44 300 3-4. 外部磁場 タイプ 1-2 version-D ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] ・ 中心の鉄のナット 増(3 個) 図 3-13 外部磁場設置エンジン概要図 80 70 60 Ia[mA] 50 ノーマル 40 タイプ 12 30 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 200 250 図 3-14 加速電圧と加速電流の関係図 45 300 35 30 25 Ib[mA] ノーマル 20 タイプ 1-2 15 0.35[sccm] 電流換算値 10 5 0 0 50 100 150 Va[V] 200 250 300 図 3-15 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-2 20 10 0 0 50 100 図 3-16 150 Va[V] 200 250 加速電圧と加速効率の関係図 46 300 4-1. 外部磁場 タイプ 1-3 version-A 図 4-1 外部磁場設置エンジン概要図 60 50 Ia[mA] 40 30 ノーマル タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 図 4-2 加速電圧と加速電流の関係図 47 200 250 30 25 ノーマル Ib[mA] 20 タイプ 1-3 15 0.35[sccm]電 流換算値 10 5 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 4-3 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル タイプ 1-3 30 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-4 加速電圧と加速効率の関係図 48 250 4-2. 外部磁場 タイプ 1-3 version-B ・中心の鉄のナット 増(2個) 図 4-5 外部磁場設置エンジン概要図 80 70 60 Ia[mA] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 200 図 4-6 加速電圧と加速電流の関係図 49 250 300 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-3 20 0.35[sccm]電 流換算値 15 10 5 0 0 50 100 150 Va[v] 200 250 300 図 4-7 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 200 250 図 4-8 加速電圧と加速効率の関係図 50 300 4-3. 外部磁場 タイプ 1-3 ・中心の磁石 version-C 増(3 個) 図 4-9 外部磁場設置エンジン概要図 60 50 Ia[mA] 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 図 4-10 加速電圧と加速電流の関係図 51 200 250 30 25 Ib[mA] 20 15 ノーマル タイプ 1-3 10 0.35[sccm]電 流換算値 5 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 4-11 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-12 加速電圧と加速効率の関係図 52 250 4-4. 外部磁場 タイプ 1-3 version-D ・中心の鉄のナット 増(3 個) 図 4-13 外部磁場設置エンジン概要図 60 50 Ia[mA] 40 ノーマル 30 タイプ 13 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-14 加速電圧と加速電流の関係図 53 250 30 25 Ib[mA] 20 ノーマル 15 タイプ 1-3 10 0.35[sccm]電 流換算値 5 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 4-15 加速電圧とビーム電流の関係図 55 54 53 52 ηa[%] 51 ノーマル 50 タイプ 1-3 49 48 47 46 45 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-16 加速電圧と加速効率の関係図 54 250 4-6. 外部磁場 タイプ 1-3 version-E ・外部磁場∼エンジン間 +5[mm] 図 4-16 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 60 ノー マル タイプ 1-3 40 20 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 4-17 加速電圧と加速電流の関係図 55 350 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-3 20 0.35[sccm] 電流換算値 15 10 5 0 0 50 100 図 4-18 150 200 Va[V] 250 300 350 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 図 4-19 150 200 Va[V] 250 300 加速電圧と加速効率の関係図 56 350 4-5. 外部磁場 タイプ 1-3 version-F ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] ・ 中心の磁石 増(3 個) 図 4-20 外部磁場設置エンジン概要図 70 60 Ia[mA] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-21 加速電圧と加速電流の関係図 57 250 40 35 Ib[mA] 30 25 ノーマル 20 タイプ 1-3 15 0.35[sccm]電 流換算値 10 5 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 4-22 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 4-23 加速電圧と加速効率の関係図 58 250 4-7. 外部磁場 タイプ 1-3 version-G ・ 外部磁場∼エンジン間 +5[mm] ・ 中心の鉄のナット 増(3 個) 図 4-24 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 60 ノー マル タイプ 1-3 40 20 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 4-25 加速電圧と加速電流の関係図 59 350 40 35 30 ノーマル Ib[mA] 25 タイプ 1-3 20 0.35[sccm]電 流換算値 15 10 5 0 0 50 100 図 4-26 150 200 Va[V] 250 300 350 加速電圧とビーム電流の関係図 70 60 ηa[%] 50 40 ノーマル 30 タイプ 1-3 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 図 4-27 加速電圧と加速効率の関係図 60 350 5. 外部磁場タイプ 2-1 図 5-1 外部磁場設置エンジン概要図 120 100 Ia[mA] 80 ノーマル 60 タイプ2-1 40 20 0 0 50 100 150 200 Va[V] 図 5-2 加速電圧と加速電流の関係図 61 250 300 350 45 40 35 Ib[V] 30 25 ノーマル 20 タイプ2-1 15 0.35[sccm]電 流換算値 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 5-3 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 40 ηa[%] ノーマル 30 タイプ2-1 20 10 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 5-4 加速電圧と加速効率の関係図 62 300 350 外部磁場 タイプ 2-2 図 6-1 外部磁場設置エンジン概要図 100 90 80 70 60 Ia[mA] 6. ノーマル タイプ 2-2 50 40 30 20 10 0 0 50 100 150 Va[V] 200 図 6-2 加速電圧と加速電流の関係図 63 250 300 45 40 35 Ib[mA] 30 ノーマル 25 タイプ 2-2 20 0.35[sccm]電 流換算値 15 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 Va[V] 図 6-3 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 ηa[%] 40 30 ノーマル タイプ 2-2 20 10 0 0 50 図 6-4 100 150 Va[V] 200 加速電圧と加速効率の関係図 64 250 300 外部磁場 タイプ 2-3 図 7-1 外部磁場設置エンジン概要図 80 70 60 50 Ia[mA] 7. ノーマル 40 タイプ2-3" 30 20 10 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 7-2 加速電圧と加速電流の関係図 65 300 35 30 25 Ib[mA] ノーマル 20 タイプ2-3 15 0.35[sccm]電 流換算値 10 5 0 0 100 図 7-3 200 Va[V] 300 400 加速電圧とビーム電流の関係図 60 50 Ib[V] 40 ノーマル 30 タイプ2-3 20 10 0 0 50 100 150 200 250 Va[V] 図 7-4 加速電圧と加速効率の関係図 66 300 第六章 考察 ・ 性能評価 以下の点について、外部磁場の性能評価を行う。 1. 外部磁場の形状変化による加速効率の変化 2. 外部磁場の高さによる変化 基準となる数値は加速効率ηa[%]で、ηa は次のように定義される。 ηa = Ib/Ia [%] 1. 外部磁場の形状変化による加速効率の変化 まず外部磁場タイプ 1 とタイプ 2 を比較してみる。それぞれの実験データを元に、 加速電流、ビーム電流、加速効率のグラフを作成した結果、以下のようになった。 90 80 70 Ia[mA] 60 50 タイプ 1-1 ( 5 mm) 40 30 20 タイプ 2-1 ( 5 mm) 10 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-1 外部磁場の形状変化による加速電圧と加速電流の関係図 30 25 Ib[mA] 20 15 タイプ 1-1 ( 5 mm) 10 タイプ 2-1 ( 5 mm) 5 0.35[sccm]電 流換算値 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-2 外部磁場の形状変化による加速電圧とビーム電流の関係図 67 60 50 ηa[%] 40 タイプ 1-1 ( 5 mm) タイプ 2-1 ( 5 mm) 30 20 10 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-3 外部磁場の形状変化と加速効率の関係図 加速電流とビーム電流を比べると、明らかにタイプ 2 のほうが、数値が大きい。これは、 タイプ 1 の中心に設置した磁石が、エンジン側の磁石と影響しあい、プラズマを閉じ込 め、さらにイオン放出を妨げているためと考えられる。 そこで、加速効率という点でタイプ 1 とタイプ 2 を比較してみる。加速効率ではタイ プ 1 がタイプ2よりも優れている。これはタイプ 2 の外部磁場部分で、磁場に閉じ込め た電子が加速され新たにプラズマを作ってしまい(グロー放電)、エンジン側のプラズマ からのイオンを遮蔽する膜のようになってしまった。さらに、その2重に出来たプラズ マのために、加速電流は上昇し、加速電流が低下したと考えられる。 ちなみにこれらのグラフでタイプ 2 のほうが、250[V]を過ぎたところで急に低下して いるが、これは電圧を上昇している際に起きた放電で、全体的にプラズマの量が減少し たためである。 2. 外部磁場の高さによる変化 1 と同様に、タイプ 1-1、1-2, 1-3 の加速電流、ビーム電流、加速効率をグラフにし 68 た。これらの比較を行う。 60 50 Ia[mA] 40 タイプ1−1 ( 5mm ) タイプ1−2 ( 10mm ) タイプ1−3 ( 15mm ) 30 20 10 0 0 50 100 150 200 Va[V] 250 300 350 図 6-6 外部磁場の高さ変化による加速電圧と加速電流の関係図 Ib[mA] 30 25 タイプ1−1 ( 5mm ) 20 タイプ1−2 ( 10mm ) 15 タイプ1−3 ( 15mm ) 10 0.35[sccm] の電流換 算 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-7 外部磁場の高さ変化による加速電圧とビーム電流の関係 69 70 60 ηa[%] 50 40 タイプ1−1 ( 5mm ) 30 タイプ1−2 ( 10mm ) 20 タイプ1−3 ( 15mm ) 10 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-8 外部磁場の高さ変化による加速電圧と加速効率の関係図 これらのグラフから、タイプ 1-2(=10[mm])が最も優れている。しかしタイプ 1-3 が 200[V]以上にする度に放電してしまい、プラズマが消えるので正当な判断はしかねる。 そこで最も加速効率が良かった条件でのそれぞれの数値の比較を行う。最も良かっ た条件とは、タイプ 1 において、エンジンと外部磁場間に5mm 加えた状態である。 このグラフは以下の通りになった。 120 100 ノーマル Ia[mA] 80 タイプ1−1 ( 5mm ) タイプ1−2 ( 10mm ) タイプ1−3 ( 15mm ) 60 40 20 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-9 外部磁場の高さ変化による加速電圧と加速効率の関係図 70 45 40 ノーマル 35 Ib[mA] 30 タイプ1−1 ( 5mm ) 25 タイプ1−2 ( 10mm ) 20 15 タイプ1−3 ( 15mm ) 10 5 0.35[sccm] の電流換算 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-10 外部磁場の高さ変化による加速電圧とビーム電流の関係図 80 70 60 ノーマル ηa[%] 50 タイプ1−1 ( 5mm ) タイプ1−2 ( 10mm ) タイプ1−3 ( 15mm ) 40 30 20 10 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-11 外部磁場の高さ変化による加速電圧と加速効率の関係図 図 6-11 を見ると、外部磁場タイプ 1-3 が全体的に60%前後の数値を出していて、最 も安定している。しかし、図 6-10 を見ると、基準となるキセノンガス流量 0.35[sccm] を 100%電流換算したときの値を超えてしまっている。これはマイクロ波エンジンの プラズマ生成の基本となる ECR から別のモードに変化し、キセノンイオンをさらに電 離し、二価のイオンへなってしまった為に、コレクタが拾ったイオン電流が大きくな ったと考えられる。 71 この二価のイオンは、キセノンの第2電離電圧(=21.2[eV])を放電電圧が上回る事 で生成される。この二価イオンの発生は、磁場に閉じ込められた電子が、ECR とは異 なり、エンジンに印加された加速電圧によって生じる電界の影響を受け、それにより 与えられるエネルギーで加速した電子が、中性ガス(プラズマ化していないキセノン) と衝突し、キセノンが電離したためと考えられる。 ・中和器を交換することによる変化 本研究では研究の途中で中和器を交換した。それによるエンジン側の性能の評価 をする。 30 25 タイプ1-1 (フィラメント 中和器) Ib[mA] 20 タイプ1-1 (マイクロ波 中和器) 15 10 0.35[sccm] 電流換算値 5 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-4 中和器の変化によるビーム電流の変化 60 50 タイプ 1-1 (フィラメント 中和器) ηa[%] 40 30 タイプ1-1 (マイクロ波 中和器) 20 10 0 0 50 100 150 200 250 300 350 Va[V] 図 6-5 中和器の変化による加速効率の変化 フィラメント中和器とマイクロ波中和器を交換することで、図 6-5 から、加速効率は若干低 72 下したが、高電圧になっても安定していることがわかる。これはマイクロ波中和器が加速 するイオンの量に応じた電子を放出するため、過剰な電子供給を避けることを意味する。 さらに、ビーム電流もフィラメント時よりも上昇している。これは、マイクロ波中和器の 電界がエンジン側に影響を及ぼし、通常のエンジン側の電位が高くなった為、エンジン側 のイオンが引き出されたと考えられる。 73 第7章 結論 今回の実験では、外部磁場を変える事により、以下のことが判明した。前述したが、 基準となるのは加速効率ηa [%]である。 ・ タイプ 1(リング型)のほうが、タイプ 2(角型)より優れている ・ 高さは、5・10・15 [mm]の中で、10 [mm]が最も優れている 以上のことから、“タイプ 1-2:10 [mm]”が最も優れている。加速効率は最大で 70[%] 弱という数値を出しており、ビーム電流もキセノンガス流量 0.35[sccm]の 100%電流換 算値である 25.126 [mA]という、基準点を超えない程度に上昇した。 今回の実験の目的は、(1)ノーマルエンジンより加速効率が上(2)加速効率 50%以上 は必須”であり、そして、タイプ 1-2 はこれらの目的を達成したといえる。これにより、 外部磁場を設置することで、逆流電子の制御が可能であることが実証された。しかし、 磁場の形状をわずかに変えることで、加速効率が変動する為、エンジンによって最適な 磁場形状は変化すると考えられる。更に、今回の実験では加速電圧を 0 ∼ 300 [V]と設 定したが、より高い加速電圧を印加することで、加速効率がどのように変化するのか判 断しかねる。 ・今後の展望 今回行った実験は、これから作成する大型エンジンの基礎実験として行われた。この大 型のエンジンを作成するに当たり、投入される電力も大きくなる。その為に、前述したが、 高レンジの加速電圧を印加したときの加速効率と、最適な磁場形状を調べる必要がある。 80 謝辞 本研究を行うにあたり、ご指導いただいた佐鳥新助教授に深く感謝の意を表します。そし て、本研究で実験や実験以外において、様々なアドバイスを与えてくださり、研究に多大 な協力をしていただいた伊藤康正氏、青木嘉範氏、長田淳氏に深く感謝の意を表します。 最後に、寡黙ながらも、冷静に的確な判断で実験を手助けしてくれた同ゼミ生の高田尚広 君に深く感謝を致します。 81 参考文献 小野学 小田島健 工藤優 佐藤博信 北海道工業大学工学部応用電子工学科 1999 年度卒業論文 「新型マイクロ波スラスタの研究」 電気推進システム実現のための物理的諸現象の解明 平成 9 年 3 月 研究代表者 吉川孝雄 P168∼203 82