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平成26年度教師海外研修報告書(PDF/7.49MB)

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平成26年度教師海外研修報告書(PDF/7.49MB)
平成
年度 教師海外研修報告書
26
独立行政法人国際協力機構 北陸支部
はじめに
この報告書は、平成 26 年度に JICA 北陸が実施した「教師海外研修」についてまとめたものです。
「教師海外研修」は開発教育、国際理解教育に関心のある教師及び教育委員会指導主事を対象に、開
発途上国の現状、日本との関係や国際協力についての理解を深めていただき、その成果を次世代を担
う児童・生徒への開発教育・国際理解教育に役立てていただくことを目的に実施しております。毎年
全国各地で約 170 名の先生方に参加いただいておりますが、今年度北陸 3 県では、小学校、中学校、
高等学校の教師 7 名の方に参加いただき、太平洋州の島国のサモア独立国に派遣しました。
この研修に参加された教師の方々はサモアでの海外研修だけでなく、国内での事前研修にも参加さ
れ、政府開発援助(ODA)の必要性やその実施機関である JICA の各種事業について、また開発教育
に対する認識の共有等を行っております。
平成 26 年 7 月 27 日から 8 月 6 日まで訪問したサモアは、さんご礁に囲まれ椰子の木が生い茂る緑豊
かな国である一方、島嶼国に共通する多くの問題を抱えています。特に自然環境、生活環境の悪化が
問題となっている廃棄物管理や生態系保全、防災・気候変動対策などの支援が重点分野となっていま
す。参加教員は、当該分野の国際協力の現場や教育現場を中心に青年海外協力隊の活動視察や意見交
換等を行った他、サモア人家庭へのホームステイも体験してきました。
参加教員は、帰国後は国内事前研修及びサモア訪問を踏まえ、開発教育の実践授業の計画、実施、
結果の共有と改善の検討を繰り返してきました。平成 27 年 2 月 22 日には教師や学生を中心に 21 名の
参加を得て、公開報告会を実施し、実践してきた様々な開発教育の取り組みとその結果が報告されま
した。この流れが広く普及し、開発教育・国際理解教育を実践される方々の参考となることを期待し
ております。
ご参加いただいた 7 名の教師のあふれる熱意と真摯な取り組みに敬意を表するとともに、引き続き学
校現場などで国際理解促進にご尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。また、各参加教
師の所属学校の校長先生を始め関係者の皆様のご理解とご協力に心からお礼申し上げます。
平成 27 年 3 月
独立行政法人国際協力機構
北陸支部長 堀
内 好 夫
目 次
はじめに
研修概要
… ……………………………………………………………………………………………………… 1
海外研修報告
… ……………………………………………………………………………………………… 5
授業実践報告
【小学校】
・加賀市立分校小学校 東 春奈 … ………………………………………………………………………… 12
「しあわせのヒミツ~サモアからのおくりもの~」
・金沢市立三馬小学校 田中哲也 … ………………………………………………………………………… 23
「日本発 サモア経由 日本行き…そして」
・鯖江市立鯖江東小学校 髙島純子 … ……………………………………………………………………… 31
「地球に生きるわたしたち」
【中学校】
・氷見市立北部中学校 森永真未 … ………………………………………………………………………… 41
「国際理解―サモアに学ぶ―」
・福井工業大学附属福井中学校 佐藤千恵里 … …………………………………………………………… 49
「サモア!ふしぎ発見!~あなたにとって大切なものとは?~」
【高等学校】
・不二越工業高等学校 平井樹里 … ………………………………………………………………………… 56
「サモア VS 日本 住むならどっち?」
・石川県立能登高等学校 高野勝郎 … ……………………………………………………………………… 64
「サモアの風にふかれて」
番外編~参加教員が所属校以外で行った講演や講義の様子を紹介します~…………………………… 71
JICA 開発教育支援事業紹介 …
……………………………………………………………………… 73
研修 概要
研修の目的
JICA では開発途上国で起こっている様々な開発をめぐる問題、望ましい開発のあり方を私たち一人
ひとりが理解し、共に生きることのできる公正な地球社会づくりに貢献するため「開発教育支援事業」
を実施しています。
その一環として本研修では北陸三県(富山・石川・福井)の小・中・高等学校及び特別支援学校の教
師などを対象に、国内研修と海外の現場訪問からなる海外研修を行い、その経験を次代を担う児童・生
徒の教育に役立ててもらうことを目的として実施しています。
また、研修参加後 JICA 北陸と協力し、教育現場で開発教育・国際理解教育を推進する中核となって
いただくことも期待しています。
応募資格
北陸三県(富山・石川・福井)の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校及び教育委員会に置いて
教育活動をしている 50 歳以下の方で、所属先の校長または教頭の推薦が得られる方。あわせて過去に
JICA が行う海外派遣事業に参加した経験のない方。
研修国
サモア独立国
2014 年度 参加者一覧
富山県
石川県
福井県
業務調整
氷見市立北部中学校
森永 真未
不二越工業高等学校
平井 樹里
加賀市立分校小学校
東 春奈
金沢市立三馬小学校
田中 哲也
石川県立能登高等学校
高野 勝郎
鯖江市鯖江東小学校
髙島 純子
福井工業大学附属福井中学校
佐藤 千恵里
JICA 北陸 市民参加協力調整員
JICA 北陸 石川県国際協力推進員
―2―
木水 蔦代
佐戸 めぐみ
教師海外研修 1 年の流れ
■ 国内事前研修
2014 年 6 月 21 日(土)
内容:①参加者自己紹介
研 修 概 要
② JICA 事概要説明及び開発教育支援事業概要紹介
③教師海外研修事業説明
④海外研修参加にあたっての派遣手続き及び事務連絡
⑤派遣概要紹介
⑥過年度参加者との意見交換
■ 海外研修
2014 年 7 月 27 日~ 8 月 6 日
内容:JICA 事業のプロジェクトサイトや、青年海外協力隊の活動現場を訪問し、ボランティアや現地
の関係者との意見交換を行い、開発途上国が置かれている現状について理解を深め、国際協力の
あり方について考える。また、ホームステイを通じサモアの社会、文化、人々の生活の様子に理
解を深めた。
―3―
■ 国内事後研修
2014 年 8 月 23 日 ( 土 )
内容:海外研修での学びを振り返り、収集したデータ
などを共有するとともに、実践授業の計画を発
表し、意見交換を実施。過年度参加者、参加者
同士、JICA スタッフなど様々な人の意見を聞
き、授業実践に向けた準備を実施。
■ 実践授業
2014 年 9 月~ 2015 年 1 月
内容:研修成果の還元として、海外研修での体験を踏まえ、収集したデータや資料等を使って、授業を
行った。日本が世界で担う役割について、サモアの社会について、参加者がサモアで見聞きし、
体験したことを伝え、多様性について考えさせるなどしていた。
■ 実践報告会
2015 年 2 月 22 日(日)
内容:サモアでの海外研修と各学校での実践授業の内容及び様子について報告
―4―
海外研修報告
研修国概要
サモア独立国
首
都:アピア
面
積:2,830 平方キロメートル(東京都の約 1.3 倍)
人
口:188,900 人(2012 年:世銀)
民
族:サモア人(ポリネシア系)90%、
サバイイ島
その他(欧州系混血、メラネシア系、
アピア
中国系、欧州系等)
言
語:サモア語、英語
宗
教:キリスト教(カトリック、メソジスト、
ウポル島
モルモン教等)
【サモア概要】
サモア独立国(以後「サモア」
)は、東京都の約 1.34 倍の広さの国土に、人口約 18 万人が住む、南
太平洋の島嶼国の一つ。
「ファレ」と呼ばれる壁がなく柱だけの建築や、
「ラバラバ」と呼ばれる腰巻き
が未だに多く見られ、マタイを長とする首長制度が根を張っているなど、昔日のポリネシアの伝統、習
慣、生活様式が残っている。
サモアは経済成長により 2014 年、後発開発途上国(LDC)の指定を解除された。しかし、他の太
平洋島嶼国と同じく、国土が小さく、人口は少なく、国際市場から地理的に遠いなど、開発上の困難を
抱えている。サモア人の多くは、就学や就労の機会を求めてニュージーランドやオーストラリアに移住
しており、サモア国内にいる人口と同じくらいの人数のサモア人が移住していると言われており、それ
ら海外居住者からの仕送りがサモア人の暮らしやサモア経済の大きな支えとなっている。
項目
調査年
1 人あたりG NI
3,030 US$
2010
出生時の平均余命
72.31 歳
2010
乳児死亡率(出生 1000 件当たり)
16
2011
5 歳未満児死亡推定数(出生 1000 件当たり)
18.7
2011
妊産婦死亡数(出生 10 万件あたり)
100
2010
初等教育純就学率 ( % )
93.7
2010
成人識字率
98.8
2009
出典:外務省ウエブサイト
ODA メールマガジン第 221 号
―6―
海外研修日程
日 付
曜日
7/27
日
7/28
月
7/30
7/31
8/1
成田空港出発(オークランド経由で移動)
夜
サモア到着
午前
在サモア日本大使館表敬
JICA サモア支所訪問
JICA 事業概要紹介
午後
JICA プロジェクトサイト視察
・ディーゼル発電所
・タファイガタゴミ処理場
・気象観測・災害対策施設
午前
ファレアタ中高等学校訪問
【中村 由香隊員(理数科教師)配属先】
午後
ロト・タウマファイ・ソサエティ(障害児施設)訪問
【谷口 智子隊員(作業療法士)配属先】
市内視察(魚市場(無償資金協力で建設)
、野菜マーケット等)
午前
ウェスリー中高等学校(教会系)訪問
【工藤 直人隊員(PC インストラクター)配属先】
午後
アアナ No.2 中高等学校訪問
【湯澤 千里隊員(理科教育)配属先】
サバイ島へフェリーで移動(※フェリーは無償資金協力で供与)
午前
ガガエマラエ小学校
【高井 優美隊員(小学校教育)配属先】
午後
アヴァセレモニー体験
火
水
金
土
内 容
8/2
土
終日
ホームステイ
8/3
日
終日
ホームステイ
午前
ウポル島へ移動
午後
JICA サモア支所への研修報告
JICA ボランティアとの意見交換
8/4
火
8/5
水
サモア出発
8/6
木
成田着
―7―
海外研修報告
7/29
時 間
海外研修報告
1 日目(2014/7/29)
訪 問 先 ‌在サモア日本大使館、JICA サモア支所、ディーゼル発電所、タファイガタゴミ処理場、
気象観測・災害対策施設
澁田大使や JICA 事
務所の職員からサモア
の現状や JICA が実施
している事業等の内容
について紹介を受け、
サモアの置かれている
現状や課題などの概要
をつかむことができ
た。
サモア独特のマタイ制度やシェアの文化などこれからの研修で体験するサモア社会についてのイメー
ジを膨らませながらサモアでの国際協力に携わる人たちの話しを聞いていた。
午後から視察した発電所やごみ処理場、災害対策施設でも、それぞれで働く日本人や現地の方々の話
を聞き、日本の国際支援の現状を知ることで、世界の中での日本の役割を実感できる機会となった。
2 日目(2014/7/30)
訪 問 先 ‌ファレアタ中高等学校(公立)、ロト・タウマファイ・ソサエティ
午前中に訪れたファレアタ中高等学校は、首都アピアにある大規模中高等学校で、青年海外協力隊の
中村由香隊員(理数科教師)が活動している学校であった。中村隊員からサモアの教育制度の概要や学
校現場の課題などについて話を聞き、実際の授業の様子も視察した。生徒からは歌と踊りの披露があり、
しなやかなダンスや迫力のある歌声とともに、楽器が無くてもカバンや床を打ち鳴らしてリズムを刻む
様子や、即興でも息のあったパフォーマンスに大いに感動し圧倒された参加者達だった。
午後訪問した障がい児施設は、肢体不自由、聴覚障害、視覚障害、ダウン症などの児童・生徒が通っ
ている施設で作業療法士として谷口智子隊員が活動していた。施設の概要を聞き、見学をした後、子供
たちと持参した日本のおもちゃで交流した。子供たちにとっては初めて見るおもちゃばかり。それを丁
寧に子供たちの状態に
あった使い方を考えな
がら一緒に遊び、時間
を忘れて交流する様子
が印象的だった。
―8―
3 日目(2014/7/31)
訪 問 先 ‌ウェスリー中高等学校 ( 私立 )、アアナ No.2 中高等学校 ( 公立 )
PC イ ン ス ト ラ ク
ターの工藤直人隊員が
活動しているウェス
リー中高等学校は私立
といっても、日本の私
立とは違い、教会が運
との施設設備等の違い
や生徒の質(英語力)の違いなど気づかされた。午後のアアナ No.2 中高等学校は首都から離れた公立
学校で、前日訪問したファレアタ中高等学校との比較、私立学校との比較をしながら視察した。ここで
も全校生徒が集まり歓迎の意味を込めて歌や踊りが披露されたので、参加者たちからも持参したおも
ちゃなどを紹介して、生徒との交流を深めた。アアナ No.2 中高等学校で活動する湯澤千里隊員からは
活動上の苦労や生活の様子などについても話を聞くことができた。地方に配属される協力隊員の生活上
の苦労話には参加者が驚く場面もあった。
4 日目(2014/8/1)
訪 問 先 ‌ガガエマラエ小学校、アヴァセレモニー体験
サバイ島にあるガガエマラエ小学校を訪問。首都と地方の違いを感じながら、高井優美隊員(小学校
教育)の活動の様子を視察。視察後、校長先生と意見交換をすることができた。現地の方の考え方や
サモア人教師が考える学校の状況などを聞き、社会の違いについて改めて考える機会となった。この学
校の訪問では、軽食が準備された。カップ麺、クラッカー、揚げパンのようなものなど、ホテルで朝食
を済ませた私たちには重い軽食だったが、サモア人の食生活の一端を垣間見、またこういったものの準
備の話から学校と保護者の関係性などについてなどの隠れた事情についても知ることができた。ここで
も持参したもので日本
紹介をし、子供たちか
らはサモアの遊びを教
えてもらうなどして交
流を行った。
―9―
海外研修報告
営する学校。公立学校
4 日目~ 5 日目(2014/8/2 ~ 2014/8/3)
訪 問 先 ‌サバイ島 ファガ村
ファガ村でのホーム
ステイ体験。アヴァセ
レモニーでの歓迎を受
け、それぞれのホーム
ステイ先で週末を過ご
した。それぞれの家族
だけでなく、それらの
家族が構成する一つ
の大きな家族のような村での生活は、シェアの文化、マタイ制度、サモア人にとっての宗教、食生活、
家での過ごし方等々、2 日間の滞在でそれぞれの参加者が様々な体験から、サモア社会を捉える機会と
なった。当初一人でホームステイすることに不安を感じていた参加者も迎えに行くと、
「いい体験だっ
た!」と満面の笑顔で話していた。
6 日目(2014/8/4)
訪 問 先 ‌JICA サモア支所、JICA ボランティアとの意見交換会
サ モ ア 支 所 長 に 対
し、この海外研修の成
果 を 報 告。 社 会 の 状
況、生活の様子、国民
性やサモア人特有の考
え方等を通して、この
国に本当に開発は必要
なのか、必要な支援と
は何か、深く考えさせられた。
最後に行われた意見交換会では、訪問で出会ったボランティアだけでなく、それ以外の協力隊員や
シニア海外ボランティアが参加してくれた。視察の際に聞きそびれた活動の話や、ボランティアとして
の生活についてなど、いろいろな話題が飛び交っていた。サモア語で同僚や生徒たちとコミュニケー
ションをとる頼もしい姿、同僚や生徒から慕われる姿、苦労を笑い飛ばしながら話すタフな姿等、異文
化の中で活躍する日本人について改めて思いを強くした。
― 10 ―
授業実践報告
しあわせのヒミツ~サモアからのおくりもの~
実践場所
加賀市立分校小学校(石川県)
実践者
東 春奈
対 象
全校児童(保護者、地域の方)
実践教科
学活、道徳(全 6 時間)
ねらい
○サモアという国を知ることで世界の多様性を感じ、異文化に興味・関心を持つことがで
きる。
○文化や価値観が生活様式に影響していることを知り、多様な生き方を認めることができ
る。
○サモアと日本の生活を比較することで違いを知ると共に、自己の生活を振り返ることが
できる。
回
備 考
1
【サモアとつながろう】
・サモア独立国について知る
・サモアについて知りたい、見たいこと等を考える。
・サモアの子ども達にプレゼントを作る。
自己紹介や日本の歌のビデオ撮影をする
2
【サモア行ってみたらホントはこんなトコだった!】
・サモアに関するクイズに答えながら、サモアという国を知る。 全校(学活)
・プレゼントや歌が届いたことを知り、つながりを感じられる。 1 コマ× 6 学年
・サモアの物に触れたり、身に付けたりしてサモアを体感する。 カードアクティビティ
パワーポイント
サモア民芸品
【サモアンブース@文化祭】
3
実践内容
プログラム
5・6 年(学活)
1 コマ× 2 学年
パワーポイント
ほけんだよりで他学
年にも周知
4
【サモアふしぎ発見!】
・サモア民芸品の展示・紹介コーナー
・ サモア○×クイズ
5
【命を育む食~ところ変われば食も変わる~】
・日本とサモアの伝統料理を比較し、それぞれの特徴を捉える。 4・5 年(学活)
・バランスの良い食事や健康的な食習慣とは何か、地産池 カードアクティビティ
パワーポイント
消について考える。
サモア BOX
【しあわせのヒミツ~サモアからのおくりもの~】
・日本とサモアの文化の違いを知り、世界の多様性を感じ 5 年(道徳)
られる。
・生活様式の背景には価値観や文化が影響していることを知る。
・自分にとっての幸せ(豊かさ)とは何かを考える。
6
備 考
― 12 ―
児童・保護者
パワーポイント
サモア BOX
「サモアとつながろう」(5・6 年:1 コマ× 2)
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・未知なる国への興味関心を持つことや、自分達が作ったプレゼントやメッセージが実際にサモアの子
ども達に届くことへの期待感が高まることで、今後の国際理解教育に主体的に参加できるようになる。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの基礎情報を知る。
(位置、面積、人口、気候、言語等)
②サモアの見たいもの、知りたいことを考える。
③・サモアの子どもへのプレゼントを作る。
・自己紹介、プレゼント紹介のビデオ撮影をする。
・日本の歌を合唱する様子をビデオ撮影する。
◇外国の暮らしや祭りを取り上げたテレビ番組を好んで観ている児童が多く、以前から外国への興味関
心が高かったようで、たくさんの質問があがった。
◇日本語や外国語活動で学んでいる英語、新しく知ったサモア語を使い、プレゼントを作ったり、自己
紹介したりすることで、自分発信で外国の人々とコミュニケーションがとれるという可能性を感じる
ことができたのではないかと思う。
◇自主的に地図やインターネットでサモアについて調べた児童もいた。しかし、情報がなかなか得られ
なかったようで、
「先生に調査してきて欲しい!」と目を輝かせていた。
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
〈教材 2〉質問用紙
メッセージカード、びゅんびゅんごま、折り紙など
― 13 ―
授業実践報告
2 子どもの活動の成果・反応
「サモア行ってみたらホントはこんなトコだった!? 」(全校児童:1コマ×6)
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・サモアと日本の生活様式や文化の違いを知ることで、世界の多様性やおもしろさに気づくことが
できる。
・現地のモノに触れ、体験してみる。
1 子どもの活動の流れ
①カードアクティビティ
②分校小発サモア行の旅(Google Earth)
③サモアクイズ(フォトランゲージ、モノランゲージ)
④サモア民芸品に見て ・ 触れて・感じる
2 子どもの活動の成果・反応
◇日本とサモアの対照的な事柄を挙げたカードアクティビティを導入に使ったことで、ゲーム感覚で予
備知識を与えることができ、その後に写真や動画を使ってスムーズにより詳細な説明をする事ができ
た。また、話し合う雰囲気作りにもなり、活発な感想や疑問、質問発表につながった。
◇ Google Earth で作成したビデオを用いて小学校からサモアの首都アピアまでの道程を一緒に辿った
ことで、その位置関係や交通の不便さ、島嶼国であることなどを感覚的に捉えられたのではないかと
思う。自宅で保護者と一緒に Google Earth で「何回もサモアに行ったよ!」という 1 年の児童もお
り、興味を引くツールであると感じた。
◇最初に写真を見せると、壁のない家ファレに住むことをかわいそうと言ったり、サモアの男性はス
カートをはくことに驚いたりしていたが、サモアは一年中蒸し暑いことを知った上で実際にラバラバ
を巻いてみると、風通しの良さを体感し、住居や伝統衣装は気候に合った理にかなったものになって
いることがわかったようであった。
◇サモアの民芸品を実際に触れたり、身に付けたりすることで、
サモアの文化をより身近に感じられたようである。
《児童の感想》
○1年
・なつしかないなんてしりませんでした。だからおしえてもらって
よかったです。
・サモアでは、いえにかべがないなんてしんじられなかったです。
・サモアはにほんとちがって、おとこの人もスカートをはいていた
のをみておもしろかったです。
○2年
・サモアのひとはなんでもつくるからすごかったです。
・日本とサモアは、くらしかたがとってもちがうことがわかりました。
・サモアの人はじぶんでつくるものが多いんだなとおもいました。
○3年
・サモアに行って、バナナやイモがなっているところを見てみたいです。
・サモア人はみんなが友だちのようにえがおでした。
― 14 ―
・家にかべがないなんてしんじられないけど、とっ
ても楽しそうな国だと思いました。
○4年
・サモアの人の食べるじゅん番が大人が先に食べ
て、子どもがあまったものを食べるなんてビック
リしました。
・サモアの家にかべがないのはきけんな動物がい
ないからなのかなと思いました。
・サモアの人はやせている人が多いと思ったけど、
太っている人が多いことがわかりました。
○5年
○6年
・はく手でリズムがとれてすごかったです。
・ぼくたちのつくったものをよろこんでくれて
・サモアはとても自然にやさしい物を作って
使っていると思いました。
うれしかった。
・やさしそうな人ばかりで行ってみたくなりま
・うちわやかごをヤシの葉で作っているのを見
した。日本文化を知ってもらって仲良くした
て、日本とちがうけど、にているところもあっ
・モアはすごくまずしそうなイメージだったけど、
みんなで支え合っていてすごいと思いました。
子どもが家事をするなんてびっくりしました。
3 使用した教材
〈教材 1〉カードアクティビティ
〈教材 2〉サモアクイズ
〈教材 3〉サモア民芸品(ラバラバ、ヤシの葉のうちわ、かばん、帽子、財布、ココナッツのアクセサリー
など)サモアの子どもの絵
― 15 ―
授業実践報告
たのでうれしかったです。
いと思いました。
「サモアンブース@文化祭」
▲
▲
▲
3 時限目
ねらい
・児童だけでなく、保護者・地域の方にもサモア文化に触れてもらうことで、本校が取り組んでい
る国際理解教育の理解を図り、家庭での話題となるきっかけ作りをする。
1 子ども、保護者、地域の方の活動の流れ
①サモア民芸品の展示・紹介コーナー
②伝統衣装ラバラバ、アロハシャツ試着体験
③サモアンパネル写真撮影コーナー 2 子ども、保護者、地域の方の活動の成果・反応
◇児童は、授業時間内ではじっくり見られなかった写真やいろいろなサモアの民芸品を手に取ってゆっ
くり見たり、質問したりでき、より理解が深まった。日本にはないものや、似ているものがある等と
日本と関連付けて考えられたようである。
◇保護者の方と直接会話できたことで、以前の授業が児童の口から家族にも伝えられ、家族でサモアに
ついて話したり、調べたりする機会があったということがわかった。
◇「貧しい、危険とかマイナスイメージしかなかったけど、“ 発展途上国 ” の捉え方が変わったわ。」「テ
レビの中の人じゃなくて、先生が行ったから子どもに伝わるんやね。
」などの感想をいただき、実際
に見聞きしたからこそ伝わることがあると実感できた。物質的豊かさ、心の豊かさについてまで話す
機会を持つことができた。
3 使用した教材
〈教材 1〉サモア BOX(JICA 関西より貸与)
、サモアの民芸品
〈教材 2〉サモア写真
〈教材 3〉あっという間に南国気分♪サモアンパネル(3 人が顔を出して写真撮影できます)
〈教材 4〉割り箸ファレ「こんなおうちにすめる~ん !? 」と驚きながら手に取る児童。
― 16 ―
「サモアふしぎ発見!」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・サモアの民芸品を見て触れることで、体験的にサモア文化の理解を深められる。
1 子ども、保護者、地域の方の活動の流れ
①サモア○×クイズ
②アヴァってどんなもの?(アヴァ:こしょう科の根の粉を水で溶いた飲み物)
2 子ども、保護者、地域の方の活動の成果・反応
◇「トイレを流すとメダカが出てくることがある」の○×問題では、信じられない顔を見せながらも全
員が○サインを送ってきた。サモアは水道設備が整っておらず、雨水を貯めて使用している地域も多
いと知り、蛇口をひねれば水が出てくることが当たり前でないことを知った。
◇サモアのナイロン袋はトウモロコシからできていて半年で土に還るので、環境や海の生物にも優しいこ
とを知り、
「日本もトウモロコシで作ればいいのに。
」と言っていた。日本の方が技術的には進歩している
◇「サモアの人は熱中症にならないのですか?」という質問に対して、
「1 年中夏で体が熱さに慣れて
いることや、家に壁がなかったり、伝統衣装ラバラバを着ることで風通しが良く、暑さ対策の工夫が
できているから大丈夫です。それより、太っていることでいろいろな病気になってしまうのがサモア
の人の健康の大問題になっています。
」と答えた。ちょうどラバラバと特大サイズのアロハシャツを
試着したまま話を聞いていた児童がいたので、着心地を伝えてもらったり、サモアの人がどれ程の体
格か示してもらったりでき、伝わりやすかったのではないかと思う。
◇アヴァに粉くずがたくさん浮いているのをみたり、匂いを嗅いだりして、これがおもてなしの飲み物
だとは思えないといった反応だった。衛生面が保証できないのでアヴァの試飲やタロチップスの試食
体験が叶わなかったのが残念だった。
3 使用した教材
〈教材 1〉サモア BOX 民芸品
アヴァの器とコップ
フエ(魔よけの儀式の道具)
サモアの箒
サモア人のお面を付けて
なりきりお掃除隊。
「サモアのしぜんはオレがまもる!」
アヴァの匂いをクンクン。
「え~!こんなののめる~ん!? 」
― 17 ―
授業実践報告
が、その技術をどう使うかということも大切であり、サモアに見習うところもあると感じたようであった。
「命を育む食∼ところ変われば食も変わる∼」(4・5 年:1コマ×2)
▲
▲
▲
5 時限目
ねらい
・日本とサモアの食生活を比較し、それぞれの特徴を知る。また、サモアの食の問題点やその解決
策を考え、表現することができる。そして、自己の食生活を振り返り、健康的な食を選択できる。
1 子どもの活動の流れ
①カードアクティビティ
②サモアの伝統料理ウムの作り方
③サモアの食生活の変化と健康問題
③サモア人の食生活アドバイザーになろう!
④地産地消の大切さ
2 子どもの活動の成果・反応
◇担任にサモア人役を演じてもらい、児童はサモアの食生活の問題点とその解決策をアドバイザーに
なったつもりで発表した。担任からの揺さぶりにも屈せず、健康的な食生活に必要な事柄を的確にア
ドバイスできていた。
◇伝統を守っていくことの大切さと輸入品の利便性との兼ね合いの難しさを児童なりに捉えられたので
はないかと思う。
◇サモアと同じように日本も食の欧米化が進んでいることを児童はあまり実感できていないようで、地
産地消の大切さとの関連や意味づけが弱くなってしまった。
食生活指導を受けるサモア人
食生活アドバイザー
「わかっているけど、やめられない
「将来の健康のために、
から仕方ない!
SOS(砂 糖・ 油・ 塩)
みんなもそうだろ?」
に気をつけたらいいと
「おなかいっぱいになって寝るのが
ランスの良いごはんを
「今は元気そのものさ。心配ないよ」
思います。1日3回バ
幸せなんだよ」
食べて、間食するのを
「病気になるかどうかなんてわから
止めましょう。」
ないだろ?
なったらその時考えればいいよ」
《児童の感想》
○4年
・男の人が料理を作っていてびっくりしました。
・日本とはちがう料理があるなんてびっくりしま
した。サモアの人は太らないようにたくさん運
動したほうがいいと思いました。
・サモアの食べ物がどんどん変わって伝とう的な
食べ物がへっていることがわかりました。
・サモアの食べ物が変わっていっているのがわかり
ました。スーパーには外国のものばかりでびっく
りしました。ウムのごはんがおいしそうでした。
食べてみたいです。サモアにも行ってみたいです。
― 18 ―
○5年
・料理を作るのに半日くらいかかっていたので大変だと思いました。輸入品はさとうがたくさんはいっ
ていたり、薬も使われていると思うと、伝とうを守って、昔ながらの料理がいいと思いました。
・サモアの人はこういう風な食事をしているから太るんだなぁと思いました。自分のふるさとの食材を
たっぷり食べることで栄養がとれて、りっぱに育つんじゃないかなとサモア人に伝えたいです。
・輸 入食品が多くなったので太ってしまったことがわかりました。海や森に行って食べ物をとり、
サモアの伝とうを受けつぐ人がふえてほしいです。
・サモアの人はひまな時間があったらいろいろな運動をすればいいと思いました。油っこいものを食べ
ずに、栄養のあるものを食べると病気にならないから食べてほしいです。
・サモアの食べ物は日本のようなものかと思っていました。サモアはとても大変な料理法で日本の機械
が貴重だとわかりました。昔と今の料理は変わってきています。昔は油の多いものを食べてはいな
かったそうです。今の食事のようにカップラーメンではなく、昔の伝とう的な食事をしてほしいと思
いました。
3 使用した教材
〈教材 1〉‌カードアクティビティ
授業実践報告
(左:サモア、右:日本)
〈教材 2〉パワーポイント(一部抜粋)
〈教材 3〉サモア BOX(JICA 関西より貸与)
― 19 ―
「しあわせのヒミツ∼サモアからのおくりもの∼」(5 年)
▲
▲
▲
6 時限目
ねらい
・サモアと日本の生活を比較することで違いを知り、豊かさには種類があることを理解できる。
また、自分にとっての豊かさ(幸せ)とは何かを考えることができる。
1 子どもの活動の流れ
①サモアってどんな国?
②「しあわせ」を感じるのはどんな時?
③日本とサモアの良い点・問題点を分類しよう
④物質的な豊かさと精神的な豊かさとは
2 子どもの活動の成果・反応
◇ 5 年児童にとって総まとめといえる 4 回目の実践授業で、サモアの国民性や伝統文化、食生活などが
次々と発表でき、これまでの実践授業が児童にとって興味深いものであり、理解が深まっていたこと
がわかった。
◇それぞれの国には良い点・問題点の両側面あり、どちらの国が良いとは決められないが、自分や周り
の人の幸せのためには、良い点を心がけていけばいいということに気づけたようである。
◇日常生活で幸せについて考えたことのなかった児童にとって「しあわせとは何か」の題材は少し難し
かったようである。活発な意見発表までには至らなかったが、児童なりに「しあわせ」について真剣
に考える時間になった。外に目を向けることで初めて気づく自分を取り囲んでいる環境に感謝した
り、改善点を見つけたりできたことは、将来グローバルな人材になる第一歩となったのではないかと
思う。
便利ではない生活の中でも、サ
モアの人々はどうしていつも笑
顔で幸せそうなのでしょう?
しあわせのヒミツって
なんやろう?
「し あ わ せ」 と「う れ し い」
はちょっとちがうよ!
《児童の感想》
・サモアが笑顔で話をすることがいいと思いまし
た。日本も笑顔だと思うけど、サモアのように
明るくはありません。日本の技術がどれだけす
ごくても、明るく、幸せでいることが一番のく
らしのよさにつながると思いました。幸せに生
きるためには、協力が必要だと思いました。日
本も今より幸せになるといいです。
・心の豊かさとはこういうことなんだなぁとこの
― 20 ―
授業を通して 1 番心にじ~んときました。幸せに生きることについて、いじめをしない、助け合うこ
とが大事だと思います。
・写真をとる時も幸せそうな表情でうつっていました。サモアは便利なものは日本と比べてないことが
わかりました。でもサモアはみんなで協力しているので、日本はもっと協力が必要だと思いました。
・みんなで助け合い、協力して何でもしていて、ホームレスもいないのですごいなと思いました。食べ
物で困っているとき、自分の分を少し分けてあげるなんてサモアの人はとっても親切だと思いまし
た。
・かべのない家なので、誰でも OK という国でした。みんなで助け合って、笑い合うのはとてもいいこ
とだと思いました。その心の豊かさが幸せにつながることがよ~くわかりました。
・サモアの人たちはとてもいい人だと思いました。みんなでいろいろなことをするのが幸せと言ってい
たからです。日本人はお金やゲーム等自分のためのことが幸せだと言っていたけど、サモアの人はち
がいました。幸せとはみんなでいることだと思いました。サモアの人のようになりたいと思いました。
・サモアの人たちのいいところは困っている人を助けるところです。それをまねしてできるようにした
いです。
・日本では便利な事がたくさんあるけど、サモアには心がよくなるような村の人がいて、とても幸せだ
と思いました。歌やおどりで村の人全員と仲よくできたり、なやみを相談できたりするので、とても
することでそういう事が少なくなっていくと思いました。
・物じゃなくて気持ちだと思いました。いくら物がたくさんあって便利でも、物がなくて困っていて助
けたり、協力したりする気持ちが大切だと思いました。
「1 人じゃなくて、みんなで」の言葉。助け
ること、協力することなどがしあわせの 1 つだと思います。助けること、協力すること、思いやり、
親切にすることを大人になってもその気持ちを大切にしていきたいと思いました。
3 使用した教材
〈板書〉
分かち合える喜び
心の豊かさ
キズナ
― 21 ―
授業実践報告
良いと思いました。日本では事件や自殺などがすごく多いけど、みんなサモア人みたいに心を豊かに
全体を通して
1 所感
調べても情報のなかなか得られない世界に飛び込むことに多少の不安があった。訪れてみると想像と
は違い、サモアは飢餓や凶悪犯罪、感染症の恐怖など開発途上国にみられる、生きていく上での困難感
が少ないと感じた。肥沃な土地と気候のおかげで働かなくても食べていけることが大らかな国民性を作
り上げているのではないかと思った。そして、所有の概念がないことがサモアの人々の価値観や生活様
式の根底にあるとわかった。よく言えばシェアの文化だが、計画性がなかったり、貪欲さに欠けたりす
るので、開発にはブレーキとなっていることがわかった。
しかし、特に精神的な面では日本人より豊かのように思え、見習わなくてはならないと思う部分が多
くある。確かに不便なことも多いが、人々は常に笑顔で困難感を示さないので、サモアの人々は本当に
開発を望んでいるのか、今の生活で “enough(十分)” だと思っているのではないかと感じた。自然と
共生し、結束の強いコミュニティの中で生活が完結している。便利になりすぎた故に人間関係が希薄に
なってしまうこともあるとしたら、果たして開発は必要なのか?そう思うほどサモアの人々はいつも幸
せそうに映った。また、サモアの人々が大切にする歌や踊りは本当に素晴らしい。声が空間を振動させ、
心にまで届き、自然と涙がこぼれる。芸術には訴える力があり、言葉がなくても心が通い合うことを体
感できた。これから大切にしていきたいことは何か、幸せとは何かと自問自答した現地研修となった。
自校での実践授業では、養護教諭である為、学級担任に理解と協力を得て時数を確保し、打ち合わせを
する時間を設けなければならないので、単独では行えない点が難しかった。しかし、TT で行えるとい
うメリットがあり、授業にメリハリをつけたり、ストーリー性を持たせたりすることができ、児童は展
開を期待しながら主体的に参加する事が出来たのではないかと思う。また、特定の学年に限定せず、全
校児童に向けて学級別で国際理解教育を進められたことは良かったと思う。発達段階や学習到達度の異
なる児童に同じ内容が理解できるかどうか心配はあったが、説明に少しずつ変化を持たせれば、学年に
応じた学びになるとわかった。低学年でも補助なしでカードアクティビティも参加することができた。
児童は「発展途上国」というとマイナスイメージを強く持っていたようだが、経済においては日本より
発展していないかもしれないが、人々の心の豊かさや絆、独自の文化の継承、芸能に長けているところ
など、サモアの素晴らしさを感じることができ、一面からではなく、多面的に外国を見つめる目が養え
たのではないかと思う。また、違いだけに注目するのではなく、日本と似たところがあるという気付き
を持てた児童が多くいた。世界には多様な生き方、価値観を持つ人々がいることを理解し、ありのまま
を認められることは人権教育の基礎になるのではないかと感じた。また、異国への興味関心が高まり、
多くの児童が自分の目で見たい、体験してみたいと感じられたことから、今回の国際理解教育がグロー
バル人材を育てる一助になったのではないかと思う。
2 参考文献・資料
1)JICA 北陸『平成 25 年度教師海外研修報告書』
2)JICA 関西『2012 年度教師海外研修報告書サモア』
― 22 ―
日本発 サモア経由 日本行き…そして
実践場所
金沢市立三馬小学校(石川県)
実践者
田中 哲也
対 象
5 年生、6 年生
実践教科
道徳、総合的な学習の時間(全 7 時間)
ねらい
○サモアの文化や生活を知り、異文化に対する理解と親善の心を育てる。
○サモアの現状から世界の環境問題を知り、自分達ができることを考える。
○世界で活躍する日本人の姿から、働くことの意義を理解し、社会に奉仕し公共のために
役立とうとする心を育てる。
回
プログラム
実践内容
4
・サモアの写真・動画
・ラバラバ
・アバセレモニーに
使う道具
【サモアふしぎ発見!】
〈サモアにはどんな問題があるのか〉
・サモアの市街の様子や人々の写真から、ごみ問題、食習
慣の問題があることに気付かせる。
5 ~ 6 【こんなところに日本人 ~世界で活躍する人々~】
〈世界では、どんな人がどのように働いているのか〉
・JICA の人々の働きを知る。
・青年海外協力隊の方との交流をする。
〈サモアと日本どちらが豊かなのか〉
〈ジュニア海外協力隊として何ができるだろう〉
7
・世界で働く人々を知り、自分が世界の問題に対して何が
できるかを考える。
・青年海外協力隊の
方との交流
・JICA の方の話
成 果
・サモアの生活や文化を知り、多様な価値観や文化があることに気づけた。
・世界のさまざまな問題に気づき、よりよい未来のために世界とつながることの大切を感
じていた。
課 題
・実際にサモアの子どもと関わる機会を設けられるとよかった。
備 考
・2 回目は授業参観で実施。5、6 回目は、6 年生にも実施。
― 23 ―
授業実践報告
1 ~ 3 【サモアに行ったらホントはこんなとこだった !? 】
〈サモアってどんな国なのか〉
・クイズでサモアの生活や文化を知る。
〈サモアの人々はどんな生活をしているのか〉
・サモアのダンスや文化を体験する。
〈サモアの学校と日本の学校の違いは何か〉
・サモアの学校の様子を知り、日本と学校の様子の違いに
気付かせる
備 考
「サモアってどんな国 ? 」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・サモアの位置、面積、気候、人口などを知り、サモアについて興味をもつ。
・興味を持って話を聞ける ように実物や写真を使うようにする。
1 子どもの活動の流れ
①サモアはどこにあるのか地球儀を使って調べる。
②サモアクイズでサモアについて知る。
2 子どもの活動の成果・反応
①全員が意欲的に 学 習 に 参 加 で き る た めの手立て
~その① 地球儀で調べる~
児童全員が意欲的に学習に取り組めるために、地球
儀を使ってサモアの位置を調べた。
クラスの全児童がサモアを知らなかったこともあ
り、児童は夢中でサモアの位置を調べていた。サモア
の位置がわかると「見つけた!」と喜ぶ姿が見られ「日
本よりも小さい国なんだ」
、
「オーストラリアの近くに
ある国だよ」などに気付く児童もいた。地球儀を使う
ことで全員が意欲的に調べることでき効果的な手立て
であった。
写真 1 地球儀でサモアの位置を調べる児童
②全員が意欲的に 学 習 に 参 加 で き る た めの手立て
~その② サモアクイズ~
全児童が学習がサモアについて興味がもてるように
サモアクイズをした。サモアクイズとは、サモアの面
積や気候、人口、服装などの内容を 4 択クイズにした
ものである。クイズでは、できるかぎり日本と比較し
たもの取り入れ、日本とサモアの違いを意識できるよ
うにした。例えば、
「サモアの人口は金沢市より多い
か少ないか」という問題では、サモアは約 18 万人で
金沢(約 40 万人)より少ないとわかると子ども達は
「えー!」と驚いた反応を見せた。授業後「クイズだ
写真 2 サモアクイズの様子
けでサモアのことがたくさん知れてとても楽しかった」という感想が多かった。さらに、
「サモアにつ
いてもっともっと知りたくなかった」
、
「サモアに行ってみたくなった」とサモアに興味をもっていた。
3 使用した教材
地球儀、ラバラバ、サモアクイズ・プレゼンテーション
― 24 ―
「サモアってどんな国?∼生活や学校の様子∼」
▲
▲
▲
2・3 時限目
ねらい
・サモアの暮らしや文化、伝統・学校の様子について知り、世界には多様な文化、価値観があるこ
とに気づく。
1 子どもの活動の流れ
①サモアのホームステイ体験から暮らしの様子を知る。
②サモアの学校見学から学校の様子を知る。
2 子どもの活動の成果・反応
①日本の常識は、サモアでは通じない !? ~多様な文化や価値観に気付く~
本時もサモアの服装や生活、文化、伝統についてのサモアクイズを行った。
「壁がない家」や「ラバ
ラバを着ていること」など日本では考えられないことが、サモアでは常識であることに多くの児童が驚
いていた。
「同じ地球に住んでいるのに、まるで違う惑星にいるようでした」と感想をもつも児童もいた。
②児童の興味を引き付ける「モノランゲージ」
「フォトランゲージ」
本授業では、児童の興味をより引き付けるため、
「モ
ノランゲージ」と「フォトランゲージ」という手法も
使った。
「モノランゲージ」では、写真 3 のように実
物を見せて「これは何をするものでしょう」と児童に
考えさせた。児童は「ふろしき?」「バスタオル?」
「魔法のじゅうたん!」と予想したが、サモアの衣服
と知り驚いていた。
「フォトランゲージ」では、写真 4 を児童に見せ、
「日
本と違う所はどこですか」と問うた。児童は「はだし」
「服を着ていない」
「何か持っている」と答えた。どれ
も正解である。そして、少年が持っているものは「ナ
写真 3 モノランゲージの様子
イフ」と知ると「えー!」と驚き、
「どうしてナイフ
を持っているの?」とさらなる疑問をもち、よりサモ
アについて知りたいという思いを強くした様子であっ
た。
他にもサモアのお金や儀式の道具などできるだけ、
サモアの実物のものを見せるようにした。実物は、
JICA 関西から借りたサモアボックスを借りた。実物
を見せることで児童は、サモアの文化などがより理解
でき、興味をもてた様子であった。
3 使用した教材
写真 4 フォトランゲージの写真
サモアボックス、ラバラバ、アバセレモニーの道具、お金、現地写真
― 25 ―
授業実践報告
この授業で、子どもの常識をゆさぶり、多様な文化や価値観があることに気付くことができた。
「サモア、不思議発見 !? 」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・サモアの暮らしや文化、伝統・学校の様子について知り、世界には多様な文化、価値観があるこ
とに気づく。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの写真を見て、サモアにはどんな問題があるのかを考える。
②サモアには環境、教育、格差の問題があることに気付く。
③サモアの問題に対してサモアで働く日本人がいることを知る。
2 子どもの活動の成果・反応
①サモアのゴミ問題を知る
本授業は、フォトランゲージでサモアの問題につい
て考えた。児童に写真 5 を見せた。児童から、
「ごみ
だらけだ」
「きたない」という声が聞こえた。その後
に、サモアにはごみ処理場はあるが、ごみを埋め立て
たり、燃やしたりせず、そのまま山に捨てることを説
明した。児童は、
「このままいったらゴミだらけになっ
てしまう」「環境に悪そうだな」
「このままではサモア
に住めなくなってしまう」などサモアのゴミ処理の仕
方を問題視していた。
写真 5 サモアのゴミ処理場の様子
②サモアの教育問題を知る
サモアの学校の様子からもサモアの教育問題につい
て考えた。児童に写真 6 を見せると「先生がいない」
、
「子どもがたくさんいるな」「あれ、つくえがないよ」
と反応があった。その後、サモアでは、先生不足の問
題や教員の知識不足で上手に教えられないこと、机や
いすが足りないこと、子ども達は教科書をもっていな
いこと、サモアの学校に行くにはお金がいり、お金が
払えなくて学校に行けない子どももいることなど教育
問題があることを説明した。
サモアの学校の現状を知った児童は、
「サモアでは
しっかりとした勉強ができないから少しいやだと思い
ました」
「サモアにも苦しい問題があることに気が付
きました」とサモアの教育問題が深刻であることを感じていた。
3 使用した教材
ゴミ処理場の写真 学校の写真
― 26 ―
写真 6 サモアの学校の様子
「青年海外協力隊の方はどんな活動をしているの?」
▲
▲
▲
5 時限目
ねらい
・世界のさまざまな問題に対して青年海外協力隊の方はどんな活動をしていて、どんな思いをもっ
ているのかを知る。
1 子どもの活動の流れ
①青年海外協力隊の方の話を聞く。
②青年海外協力隊の方に質問する。
2 子どもの活動の成果・反応
①青年海外協力隊の活動から世界と関わる大切さに気づく
本授業は、世界の問題の解決のための活動している
青年海外協力隊で活動された経験があり、教師海外研
修でサモアの協力隊員のサポートをされていた大奥さ
授業実践報告
んに話をしていただいた。
大奥さんから、実際にサモアに住んでいた体験から
サモアのよさをたくさん教えていただいた。しかし、
児童がより印象に残ったのは、サモアのさまざまな問
題であった。例えば、先生の数が足りないこと、食べ
物がイモ、肉中心で栄養が偏っていること、病院が島
に 1 つしかないことなどである。そのために、青年海
外協力隊の方がさまざまな活動をしていることを教え
写真 7 大奥さん(JICA サモア支所元スタッフ)の話
いただき、児童は、
「よりよい未来にするために、世
界と関わる青年海外協力隊のは必要だと思う」と感じ
ていた。
話を聞いた後、質問タイムを設けた。質問タイムで
は、たくさんの質問があった。
「どうして青年海外協
力隊になろうと思ったのですか」という質問では、
「日
本以外の外国に住んでいろいろな人と親しくなり働い
てみたかった」という思いを知った。大奥さんの話を
聞いて、児童は青年海外協力隊の活動の必要性や大切
さを感じていた。さらに児童の現状を知り、日本と世
界がお互いに支え合っていくことの重要さに気づかせ
写真 8 大奥さんに質問する児童
る必要があることを感じた。
授業後の児童の感想
・ぼくも、まずしい国の青年海外協力隊になってみたいと思いました
・サモアは外国の力にたよっているから自分の国の力で生活できるように手助けをしたいです。
3 外部講師
JICA サモア支所元スタッフ
― 27 ―
「サモアと日本はどちらが豊かなのか?」
▲
▲
▲
6 時限目
ねらい
・サモアと日本はどちらが豊かなのかを考えさせることで、豊かさには、利便さ・便利さだけでな
く、人との温かい関わりによる心の豊かさ、自然にあふれる環境の豊かさがありことに気づく。
1 子どもの活動の流れ
①サモアと日本どちらが豊かか討論をする。
②青年海外協力隊の方(大奥さん)の考えを聞く。
③ JICA の活動を知り、世界と日本がつながり続ける大切さを知る。
2 子どもの活動の成果・反応
①サモア、日本どちらにもそれぞれの豊かさがあることに気づく
本時は、「サモアと日本どちらが豊かだと思うか」について考えた。前時の児童の様子から日本は豊
かで、豊かでないサモアなどの発展途上国にいろいろな支援をしてあげるという上からの見方をしてい
る児童が多くいると感じたからである。児童に日本とサモアはどちらが豊かか問うと以下のように考え
た。
日本… 9 人
サモア… 2 人
どちらか迷う… 21 人
(理由)
・停電がなく、暮らしが安
定しているから。
・サモアは町にゴミが捨て
られているから。
・食材や家具が豊富で生活
しやすいから。
(理由)
・サモアは犯罪が少ないし、
自然豊かだから。
・テレビや写真でサモアの
人たちは誰もが笑顔だし、
やさしそうだから。
(理由)
・日本は、ごみが落ちてい
なかったり、便利であっ
たりするが、サモアは海
がきれいで、みんなでダ
ンスなどをして楽しそう
だから。
討論後、サモアに住んでいた大奥さんの考えを話
していただいた。話を聞いた児童は「サモアに住ん
でいたらサモアの方が豊かと言っていたかもしれな
い」
「ぼくは、サモアの方が豊かだと思う人はいない
と思ったけど、サモア派の友達の考えを聞いておどろ
いたし、なるほどと思った」など考えの変化が見られ
た。
その後、JICA 北陸の木水さんから JICA の活動の意
義について話をしていただいた。授業後、児童は「外
国の問題は、その国の問題だけでなく、他の国の問題
であり、他の国を支援することが世界全体をよくする
写真 9 大奥さんの考えを聞く児童
ことにつながると知りました」「他国と協力し未来へ
とつなげて、よりよい暮らしがおくれるようにしたいです」と感想をもっており、外国とつながり合う
ことがよりよい未来へつながると感じていた。私は授業前、多くの児童が日本の方が豊かと考える人が
ほとんどだろうと思っていたが、多くの児童がサモアと日本のそれぞれの豊かさを感じていた。本時の
交流で、サモアと日本どちらともの豊かさに気づく児童もおり、有意義な時間となった。
― 28 ―
「ジュニア海外協力隊としてわたしたちには何ができるだろう?」
▲
▲
▲
7 時限目
ねらい
・これまで学習から、世界のさまざまな問題に対して何ができるか、何をしたいかを考え、これか
らも外国と日本が支え合い、つながっていこうという思いをもつことができる。
1 子どもの活動の流れ
①世界の問題に対して、自分には何ができるか(何がしたいか)を考える。
②考えを交流する。
2 子どもの活動の成果・反応
①もし、私がジュニア海外協力隊だったら…
これまでの学習のまとめとして、自分がジュニア海外協力隊だったら、何ができるか(何がしたいか)」
を考えた。子どもたちからは、以下のような意見が出た。
・ぼくも青年海外協力隊の方のように、海外へ行ききれいな水をつくることができる浄水場などを
と思いました。本のような死にそうな人などがなくなるようにして世界の差を縮めていきたい。
・私がジュニア海外協力隊になってやりたいことは 2 つあります。1 つ目は、洋服を作ることです。
貧しくて服が買えない人たちを助けたいし、洋服を作ってみたいと思っていたからです。2 つ目
は、ボランティアをしたいです。学校にいけない子の家に行って今もっている知識を全て教えて
あげたいです。
・お金がなくて学校に行けない人がいるのでぼ金したいです。ぼくも青年海外協力隊のように貧し
い国の人々を助けたいです。
・私は、食べ物が少ない地域の人たちに、日本の食べ物を提供したり、その食材をつかった料理を
ふるまったりしたいです。わけは、食べ物が少ないと、健康になることができないし、日本の料
理の作り方などを教えることで、毎日栄養バランスのよい食事をとってほしいからです。
・サモアの人たちと交流して、一緒に栄養のある食べ物などを学んだり、サラダなどの作り方を教
えたり作ったりしたいです。
・野菜を食べない人やとうぶんをとりすぎている人がいたら、体を健康にするために農業(野菜づ
くり)を教えたいです。
・先生不足を減らすために、子どもが将来先生になれるようにきっちりと勉強を教え、ノートやえ
んぴつなどを支援したいです。
本時は、世界の問題に対して、
「将来どんな世界にしていきたいか」
、
「そのためにどんなことができ
るか」、「どんなことをしていきたいか」など現実から未来を考えるきっかけとなった。
3 使用した教材
「池田香代子『世界がもし 100 人の村だったら』2001 年、マガジンハウス」
― 29 ―
授業実践報告
つくったり、教育もやりたいと思いました。そして、どの国も差が無く、平等にできたらいいな
全体を通して
1 所感
(授業実践で工夫した点)
・ESD の視点を取り入れた授業展開
本校は、ユネスコスクールの加盟校であり、ESD(持続可能な開発のための教育)の以下の 2 つの
視点を取り入れて授業実践をした。
1 つ目は、多様な立場や価値観から物事を考えることである。
2 つ目は、世界とつながりから未来の社会の形成者としての思いを育むことである。
上記の 2 つの視点を意識して世界とつながり合い、持続可能な未来を考えるために体験活動を取り
入れるように授業を工夫した。サモアの生活や文化を実際に写真で見たり、実物に触れたりすること
で児童の価値観や考えを広げることができた。また、青年海外協力隊の方や JICA 北陸の方との交流
から、これからも世界とつながることの大切を学び、これからの未来を考える大きなきっかけとなっ
た。
(授業実践で苦労した点)
・学校の教育課程と関連させながら、授業計画を立てること
研修前は、「環境教育」をテーマに教師海外研修で学んだことを実践していきたいと考えていた。
しかし、十分な授業時間を確保することや、教育課程と関連させて授業をつくることに苦労した。
授業実践を通して、学校の教育課程に沿いながら、テーマを絞り授業計画を立てることが大切であ
ると学んだ。サモアの研修から教材化できる学習内容がたくさんある。例えば、
「国際理解」
「環境教
育」「食育」「貧困」などさまざまなテーマで授業実践できる。テーマを選定し、付けたい力を明確に
して今後も授業実践に取り組んでいきたい。
(実践後の児童の感想)
・最初は、サモアの事は全く知りませんでした。でもこの授業をして興味深く感じました。サモアには、
良い所がたくさんあるけれど、ひまんや食べ物のバランスが取れていなかったり、先生が足りないな
どの問題があるとわかりました。この授業で、国外のことを考えるのも必要だと思いました。
・ぼくがこの授業で思った事は、世界には自分達のようにごはんを食べたり、学校に行けない人がたく
さんいるということです。今までの授業で、自分の視野がとても広くなって、いろいろなことが見ら
れるようになりました。
2 参考文献・資料
1)独立行政法人国際協力機構 北陸支部「平成 25 年度 教師海外研修報告書」2014 年 3 月
2)独立行政法人国際協力機構 関西支部「2012 年度 教師海外研修報告 カンボジア・サモア」
― 30 ―
地球に生きるわたしたち
実践場所
実践者
鯖江市鯖江東小学校(福井県)
髙島 純子
対 象
小学 6 年生
実践教科
総合的な学習の時間、社会、道徳(全 6 時間)
ねらい
○地球にはさまざまな人々が生活しており、違った文化や伝統があることを理解する。
○地球という村がより良い村になるように活動している人々(青年海外協力隊)について知る。
○地球という村をより良い村にするために、自分ができることを考える。
プログラム
1
【世界に目を向けよう】(事前学習)
・「世界がもし 100 人の村だったら」を読んで考える。
世界の国々は日本と同じ暮らしではないことをデータで
知る。
【ドミニカ共和国について知ろう】
・ドミニカ共和国で青年海外協力隊として活動していた倉橋
先生の話を聞く。
ドミニカ共和国の紹介
JICA の紹介
隊員として実際行った仕事内容の紹介
【サモア独立国について知ろう①】
・ここはどこだろう(クイズ)……写真から
・サモアの学校の紹介
・サモア語の紹介
【サモア独立国について知ろう②】
・サモアの生活……衣・食・住
・子どもの生活……サモアと日本
・サモアの文化・伝統……ダンス、歌、宗教
【青年海外協力隊について知ろう】
・ウズベキスタンで活動していた元協力隊隊員 多田さんの
話を聞く。
【ジャイピーと学ぼう】
・日本と開発途上国とのつながりについて知る。
・ジャイピーがわたしたちに届けたいメッセージについて考える。
2
実践内容
3
4
5
6
備 考
道徳副読本
資料
パワーポイント
パワーポイント
パワーポイント
サモアボックス
パワーポイント
ゲストティーチャー
(元隊員)
ワークシート
DVD
成 果
・世界の国々は多種多様な生活をしており、いろいろな文化があるということに気づき、世界
に興味関心をもつことができた。
・生まれた時からスイッチ一つで何でもできてしまう、そして溢れるほどの物に囲まれて生活
している子どもたちが、この生活は日本だけでは成り立っていないのだ、世界の国々との支
え合いによって成り立っているのだということに気づくことができた。そして、自分の生活
の仕方や生き方についても考えられる児童も出てきた。
課 題
・国際協力や異文化理解・多文化共生についての学習をこれからも継続して取り組むこと。
備 考
・児童が地球規模で考えられる日本人に成長してほしい。そして、どんなに小さな取り組みで
もいいので、国際協力につながる行動を起こせる大人になってほしいと思う。
・多様な価値観があることを知り、それらを認め、繋がりをもとうとする日本人になってほしいと思う。
― 31 ―
授業実践報告
回
「世界に目を向けよう」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・世界の現状を知り、世界の人々の平和と幸せのために努力しようとする心情を養う。
1 子どもの活動の流れ
①資料「世界がもし 100 人の村だったら」を読んで話し合う。
②資料「2000 年に生まれた子どもが 100 人だったら」を読んで話し合う。
③世界の人々が幸せに暮らしていくためにできることを考える。
2 子どもの活動の成果・反応
◇子どもたちは、テレビや本や授業などで、世界の国々についての知識を多少は持ち合わせていたが、
どちらかといえば先進国についての知識が多く、世界全体の現状について考えたことはなかった。
資料「世界がもし 100 人の村だったら」を読んで、びっくりしていた子も少なくない。
《児童の感想》
・世界には水や食べ物が十分食べられない子どもや大人がたくさんいるのに、日本はいつでも食べ物が
あるし、お金持ちだから幸せな国だなあと思いました。
◇現状をおおまかに知った上で、
「では世界の人々が幸せに暮らしていけるようにするために何ができ
るかな。」という質問を投げかけると、子どもたちは考え込んでいた。多かった反応は「募金をする」
ということだった。
3 使用した教材
〈教材 1〉道徳副読本「みんなで考える道徳 6 年」
(日本標準)
出典 池田香代子再話「世界がもし 100 人の村だったら」
(マガジンハウス)
「ドミニカ共和国について知ろう」
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・ドミニカ共和国の写真を見たり、話を聞いたりして日本とは違う文化や伝統があることに気づく。
・青年海外協力隊の活動について知る。
1 子どもの活動の流れ
①ドミニカ共和国の生活や文化を知る。
② JICA の概要(活動内容、歴史)を知る。
③青年海外協力隊として現地でどのような活動をし、どのようなことを考えたのかを知る。
2 子どもの活動の成果・反応
◇昨年度 10 月から本校の職員となった倉橋先生は、本校勤務になる数ヶ月前までドミニカ共和国で 3
― 32 ―
年間青年海外協力隊隊員として活動されていた。現地の学校の先生に教授法を指導するという仕事
だったそうだ。子どもたちは生活様式や学校の様子、文化、宗教等全てが日本とまるきり違うことに
驚いていた。
《児童の感想》
・ドミニカは、日本みたいに時間がしっかり決まっていない
ということを聞き、とてもびっくりしました。また、学校
の教科が 4 教科しかないなんてなぜだろうと不思議に思い
ました。倉橋先生の話を聞いているうちに、それは教えら
れる先生がいないからだということが分かりました。
・ド ミニカ共和国のことを聞いて、日本とはあまりにも違
うことばかりなのでびっくりしました。倉橋先生の友達
のドミニカ人が、普通に道を歩いていていて銃で撃たれ
たという話を聞いて、とてもこわいと思いました。
・ドミニカでは日本ではできないことができて楽しそうだなと思いました。例えば、毎日必ずお昼寝
をする時間があるということです。こわい話もあったけれど、楽しい話もいろいろ聞けて、もっと
授業実践報告
ドミニカのことを知りたいと思いました。
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
ドミニカの先生たちに教授法を
指導中の倉橋先生
元気いっぱいのドミニカの
子どもたち
ドミニカの食事
― 33 ―
「サモア独立国について知ろう①」
▲
▲
▲
3 時限目
ねらい
・サモアに関するクイズを解きながら、サモアという国を知り、興味・関心をもつ。
1 子どもの活動の流れ
①ここはどこだろうクイズをする。
②サモアの学校の様子について知る。
③簡単なサモア語を知る。
2 子どもの活動の成果・反応
◇社会科で「世界の国調べ」という学習がある。その時、自分が興味をもった国について、その概要や
生活、文化などについて調べ、みんなに発表するという学習を計画した。みんなの調べ学習が一応
済み、いよいよ発表という段階で、
「実は先生もある国のことを調べたので、トップバッターで発表
するね。」と言ってパワーポイントを使って問題を出しながら発表を始めた。発表の途中、パワーポ
イントの中に私の写真が出てきた時、子どもたちは「あれっ、先生が写っている!」と驚いていた。
そして、その先生が自分たちの学校の様子をサモアの子供たちに写真で紹介してきたということで、
サモアのことを身近に感じてくれたように思った。
◇授業の数日後、ある子が友達に何か話をした後、
「マラマラマ?」とサモア語で問いかけている姿を
見て、サモア語をちゃんと覚えていてくれたのだと嬉しく感じた。
《児童の感想》
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント「ここはどこだろう」
日本は…
・食料自給率 40 %…輸入に頼っている
・借金もたくさんある
・子どもは少なく、高齢者が増えている
・変な事件がたくさん起きている
・災害も多い…地震、津波、水害など
・大人は朝から晩まで忙しく働いている
これから紹介する国は
開発途上国です
さて、ここは どこの国?
― 34 ―
日本には ある(いる)けれど
この国には ない(いない)もの
1.意地悪な人
2.物の取り合い、うばい合い
3.家の仕事(家事)をしない子ども
4.「早く勉強しなさい」という大人
5.不審者
〈教材 2〉パワーポイント「サモアの学校」
・サモア
6 才
13 才
プライマリースクール 8 年
18 才
カレッジ 5 年
・日本
7 才
12 才
小学 6 年
18 才
中学校 3 年
高校 3 年
プライマリースクール訪問
鯖江東小学校のことを写真と片言の英語で紹介した時の様子
〈教材 3〉パワーポイント「簡単なサモア語」
サモア語
Fa’afetai ファフェタイ
1 学校
Malamalama マラマラマ
2 ソーセージ
Pepe ぺぺ
3 ありがとう
Sosisi ソシシ
4 赤ちゃん
Fale aoga ファレアオガ
5 わかりますか?
Lavalava ラバラバ
― 35 ―
サモア語の
「ファフェタイ」は
日本語で言うと何?
1~5から選ぼう。
授業実践報告
サモアのプライマリースクールで習字をした時の様子
「サモア独立国について知ろう②」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・サモアの生活や文化にふれ、異文化に興味・関心をもつ。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの生活(衣・食・住)を知る。
②サモアの子どもの生活を知る。
③サモアの文化・伝統を知る。
2 子どもの活動の成果・反応
◇子どもたちは、3 時限目にサモアという国について少し
知ったので、4 時限目は「また楽しい国の話だな」と笑
顔になっていた。とにかく、文化も生活事情も日本とは
全く違う異国の話という感じで受け止めていた。サモア
の子どもの話になると、家の仕事などほとんど親任せで
していない子が多いので、耳が痛そうだった。
《児童の反応》
・サモアの食べ物はとてもおいしそうだったので食べてみ
たくなりました。バナナの採り方を初めて知りました。
採れたてのバナナを食べてみたいです。
・大人の男の人がスカートのようなものをはいていたので
びっくりしました。それに実物を見たらとっても大き
かったので、またまたびっくりしました。
・サモアという国はおもしろい国だなと思いました。とて
も興味がわいたのでもっと詳しく調べてみたいと思いま
した。
◇お借りした「サモアボックス」の中には興味深い物がたくさんあり、子どもたちは実際に手に取って
その感触を確かめたり、試着してみたり、匂いを嗅いでみたりして楽しんでいた。
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント「サモア衣食住」
衣
― 36 ―
住
食
「青年海外協力隊について知ろう」
▲
▲
▲
5 時限目
ねらい
・ウズベキスタンの写真を見たり、話を聞いたりして日本とは違う文化や伝統があることに気づく。
・青年海外協力隊の活動について知る。
①ウズベキスタンの生活や文化を知る。
②青年海外協力隊として現地でどのような活動をし、どのようなことを考えたのかを知る。
③疑問に思ったことやもっと知りたいことを質問する。
2 子どもの活動の成果・反応
◇ウズベキスタンで 2 年間青年海外協力隊の活動に取り組まれた看護師の多田明未さんに学校に来てい
ただいた。貴重な経験談なので、この時間は本校の 6 年生児童全員がお話を聞いた。多田さんは
ウズベキスタンの民族衣装を着てお話してくださっ
た。とても気さくでソフトな語り口に、みんな吸い
込まれるように話に聞き入った。ウズベキスタンと
いう国がどこにあるのかさえも分からない子がほと
んどである。イスラム国と聞くと、とても危険な国
というイメージを持ちがちだが、多田さんが言われ
るには「とても人が温かい」そうだ。
△ 6 年生から多田さんに歌をプレゼントしました
― 37 ―
児童が多田さんに書いた手紙
授業実践報告
1 子どもの活動の流れ
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
マハラ……町内ごとに作られた組織のこと。
お祝いごと、結婚、お葬式など、このマハラ
で執り行われる。サモアのマタイ制と似通っ
ている。
ウズベキスタンでは、「ひとりの子供に7組
の両親がいる」と言われる。そして、それは
ウズベキスタンの宝だと言われる。
「ジャイピーと学ぼう」
▲
▲
▲
6 時限目
ねらい
・日本と開発途上国とのつながりについて知る。
・わたしたちは世界の国々とのつながりの中で生きていることに気づく。
1 子どもの活動の流れ
①「身の周りで見つけた外国から来た物」を発表する。
②日本が開発途上国にしている援助について知る。
③ジャイピーが届けたいメッセージと自分にできることを考える。
2 子どもの活動の成果・反応
◇自分の身の周りにある外国から来た物を、食べ物・衣料品・その他の領域に分けてワークシートに書
き込んだ。それを発表し合い表にまとめていくうちに、輸入品は開発途上国が多いということが一目
瞭然だった。その後、JICA の子供向け DVD「もっと知ろう世界のこと」を視聴した。その中に出て
くるマスコットキャラクターが「ジャイピー」である。子どもたちは、食べ物、衣類、エネルギーな
ど毎日の生活に必要な物を開発途上国からの輸入に頼っていることを理解した。またジャイピーは、
日本が開発途上国にしている援助についても説明している。例えば、アフリカで井戸を掘ったり、ア
ジアで予防接種をしたり、中南米のアマゾンで森林を守る活動をしたりといったことだ。それに付け
加えて、サモアではごみ処理場や気象観測所、発電所などを建設したことも紹介した。
◇「ジャイピーはみんなにどんなメッセージを届けたかったのでしょう。
」
、そして「そのために、自分
はどのようなことをしようと思いますか?」という質問を投げかけた。
― 38 ―
《児童の反応》
・自分は世界のみんなとつながっている。日本だけでは今のような生活はできない。資源を大切にしな
ければいけない。そして、物を大切に使おうと思う。
・世界のいろんな人たちと支え合いながら生きていることを忘れてはならない。みな同じ地球に生きて
いるのだから、みんなが幸せでなくてはならない。日々の生活の中であらゆる物に感謝し大事にしよ
うと思う。
・地球のために二酸化炭素を減らすようにしたい。節電・節水に心がけようと思う。
授業実践報告
児童が取り組んだワークシート
3 使用した教材
〈教材 1〉JICA 子供向け DVD「もっと知ろう世界のこと ~ JICA は世界とともに~」2010
― 39 ―
全体を通して
1 所感
今回幸運にも「チームサモア」の一員として現地に行く
ことができ、そこで体験したことを児童たちに伝える授業
を実践しました。「地球に生きるわたしたち」の 5 時限目
の授業で、元青年海外協力隊の多田さんに体験談を話して
いただいた後、多田さんに手紙を書きました。何人かの児
童が「生活、気候、言語など日本とは全く違う開発途上国
にたった一人で行って活動した『勇気』が素晴らしい」と
書いていましたが、私もサモアの学校訪問で、一人で活動
している隊員に直に会った時、同じことを感じました。多
田さんが、派遣先で生き生きと活動し帰国した後、
「これ
から、この日本で自分ができることは何かということを考
えるようになりました。」と言われた言葉が心に残ってい
ます。
『地球に生きるわたしたち』の学習のねらい「地球
という村をより良い村にするために、自分ができることを
考えること」は、子供たちのみならず私自身の目標でもあ
ります。
ガガエマラエ小学校の先生方と
笑顔が素敵なサモアの子供たちと
2 参考文献・資料
1)JICA 北陸 『平成 25 年度 教師海外研修報告書』
2)JICA 北陸 『JICA 北陸 Profile』
3)JICA 地球ひろば 『国際理解教育 実践資料集』
4)JICA 子供向け DVD「もっと知ろう世界のこと ~ JICA は世界とともに~」2010
― 40 ―
国際理解 ―サモアに学ぶ―
実践場所
実践者
氷見市立北部中学校(富山県)
森永 真未
対 象
中学校 2 年生
実践教科
英語(6 時間)
ねらい
○サモアの生徒と英語で手紙の交換をすることを通して、サモアの文化への興味を高める。
○サモアと日本の学校や文化の共通点や違いについて知ることができる。
回
1
【サモアってどんな国?】
・世界地図を見て、サモアを見付ける。
・サモアのことを予想する。
・サモアについて知りたいことを書く。
2
【サモアの生徒に手紙を書こう】
・サモアの生徒に英語で手紙を書く。
3
【サモアって、こんな国!】
・サモアの生徒からの手紙の返事を読む。
・サモアについて、手紙から分かったこと、疑問に思った
ことをまとめ、発表する。
4
【サモアの食べ物を知ろう】
・サモアの食べ物についてのクイズ
5
【サモアの生徒に、手紙の返事を書こう】
・サモアについてもっと知りたいことを書く。
備 考
世界地図
手紙
写真
手紙
パワーポイント
写真
手紙
成 果
・サモアの生徒と英語で手紙をやりとりすることで、サモアの文化に関心をもつことがで
き、また、英語を学ぶことの大切さや、楽しさを実感することができた。
課 題
・国際理解を深めるためには、様々な視点から物事をみる必要がある。今後もサモアで学
んだことを教材の 1 つとして、授業の題材の内容と絡めて、授業に取り入れていきたい。
備 考
・10 月に行われた学校祭の国際理解コーナーで、保護者や地域の方にも、サモアの紹介を
した。
― 41 ―
授業実践報告
実践内容
プログラム
「サモアってどんな国?」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・サモアという国の存在を知り、興味をもつ。
・日本とサモアの生活を比較し、自分の生活を見直す。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの国旗を提示し、どこの国か予想する。
②サモアの国の場所を探す。
③どのような国かを予想する。
④教師にサモアで見てきてほしいことを書く。
2 子どもの活動の成果・反応
◇サモアの国旗を提示したが、知っている生徒はおらず、
「サモア」という国の名前を知る生徒もいな
かった。
◇サモアの場所については国旗の南十字星をヒントに、南半球からサモアを探すように促した。見付け
た時は、「小さい」という反応をする生徒が何人もいた。
◇どのような国かを予想させる。
・海がきれいだろう。 ・自然が多そうだ。 ・イモを食べている国だろう。
◇教師にサモアで見てきてほしいことを書く。このときに、サモアは日本と比較すると、あまり発展し
ていないということを伝えた。
・主食は何か。
・気候はどうか。
・給食はあるのか。
・人気のある食べ物は何か。
・どんな野生の動物がいるのか。
・どんな教科を勉強しているのか。
・納豆を知っているか。
・野球のチームはあるのか。
・部活動はあるのか。
・どんな服を着ているのか。
・人気のあるスポーツは何か。
・携帯電話はあるのか。
・人口はどれくらいか。
・日本のことを知っているのか。
・友達とどんなことをして遊ぶ
・どんな家に住んでいるのか。
・車はたくさん走っているのか。
・休日はどこへでかけるのか。
・ライフラインは整っているのか。
・テレビゲームはするのか。
・肌の色は。
・鉄道や新幹線は走っているのか。
・インターネットは繋がってい
・何歳で結婚できるのか。
・義務教育制度であるのか。
・四季はあるのか。
・制服はあるのか。
3 使用した教材
〈教材 1〉『中学校社会科地図』
(帝国書院)
〈教材 2〉サモアの国旗
― 42 ―
のか。
るのか。
「サモアの生徒に手紙を書こう」
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・これまでに学んだ英語の表現を使い、日本のよさについて伝えたいことや、サモアについて知り
たいことを手紙に書く。
・英語を使い、他の国の人に、自分の考えを伝えたり、相手にたずねたりすることで、英語学習の
大切さを感じる。
1 子どもの活動の流れ
①英語での手紙の書き方を学ぶ。
② 6 人グループを作り、1 枚の手紙を書く。
③手紙を清書する。
2 子どもの活動の成果・反応
◇日本のどんな事を紹介するのか、真剣に話し合っていた。内容としては、食べ物やスポーツ、または
物でも、サモアではどうだろうと話合いをしながら活動に取り組んでいた。
◇サモアの生徒にどんなことを聞きたいかを考え、分からない単語は辞書を用いて一生懸命に英文を書
くことに取り組んでいた。
◇清書では、1 人につき必ず 1 文を、丁寧に書いた。
3 使用した教材
〈教材 3〉手紙の書き方のワークシート
生徒が書いた手紙の下書き
― 43 ―
授業実践報告
地元の氷見について書いているグループが多かった。
「ブリ」は知っているかなど、日本では有名な
「サモアって、こんな国!」
▲
▲
▲
3 時限目
ねらい
・英語で書かれた手紙からサモアについて知る。
・サモアと日本の学校を比較する。
1 子どもの活動の流れ
①手紙の返事をくれたファレアタ中高等学校の生徒の写真を見て、サモアの生徒や学校の様子を読み取
る。
②サモアの生徒が書いた手紙の返事を、質問を書いたグループごとに読む。
③手紙の内容から、わかったことと疑問に思ったことをまとめる。
④グループごとに、わかったことと疑問に思ったことを発表する。
2 子どもの活動の成果・反応
◇手紙の内容の中で、サモア語の挨拶が書いてある手紙もあり、興味をもって読み方を質問していた。
◇読みにくい文字もあったが、苦労しながらも分からない単語は辞書を用いて必死に手紙を読んでい
た。
◇手紙の英文の文法の間違いに気付く生徒がいた。
◇手紙の相手が 10 年生だったので、日本とサモアの学校のカリキュラムの違いに気付き、興味をもつ
生徒が多くいた。
◇発表の中で、疑問に思ったこととして挙げられたことについて、質問の回答から疑問に答えられる他
のグループの生徒は、その疑問に対して自主的に答えていた。
〔わかったこと〕
〔疑問に思ったこと〕
・サモアは面積が小さい。
・collage なので大学生なのか。
・サモアでは、ラグビー、クリケット、バレーボー
・14 歳なのに、なぜ high school なのか。
ルをする。
・学校には、何年間通うのか。
・ファレアタという学校に通っている。
・学校の 1 学年には、何クラスあるのか。
・主に、バナナとタロイモを食べる。
・タロイモとは、どのようなイモなのか。
・サモアでは、米はあまり食べない。
・スポーツクラブはあるのか。
・クラスメイトは 15 歳と 16 歳である。
・ネットボールとは何か。
・サモアは平和な国である。
・何年生まであるのか。
・魚をよく食べる。
・なぜ、サモアが好きなのか。
・学習している教科は、英語、数学、サモア語であ
・パルサミとは何か。
る。
・サモア語 Hello = Talofa
・サモアは大家族なのか。
goodbye ‒ Tofa
・サモアの伝統的な衣装はシアポという。
・サモアでは、箸を使わない。
― 44 ―
・食事は何を使って食べるのか。
3 使用した教材
〈教材 4〉サモアの生徒が書いた手紙
「サモアの食べ物を知ろう」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・食べ物から、食文化の違いを学ぶ。
・サモアの生徒が手紙に書いていた食べ物について知る。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの食べ物について学ぶ。
②サモアの食べ物のクイズに答える。
2 子どもの活動の成果・反応
◇タロイモやパパイヤ、ココナッツなどは、名前は知っていても、実際に見たことがある生徒は少なく、
その味や食べ方にも興味をもっていた。
◇日本で食べるバナナに比べ、サモアのバナナは小さく、市場では大きな束になって売られている写真
を見て、生徒たちは驚いていた。
◇サモアでは朝からカップラーメンを食べ、のびた麺をスプーンで食べると聞いて、驚いており、日本
との食の違いを感じていた。
◇住む場所やその国の気候によって食べる物が異なるこということを、生徒たちは学ぶことができた。
◇生徒たちはサモアの食べ物の 1 つとして、タロイモチップスを食べた。
「おいしい」
「味が薄い」
「ポテトチップスみたい」などの感想を言っていた。
― 45 ―
授業実践報告
生徒が書いた手紙の下書き
3 使用した教材
〈教材 5〉現地の写真・パワーポイント
samoa∼食べ物編∼
「サモアの生徒に、手紙の返事を書こう」
▲
▲
▲
5 時限目
ねらい
・サモアの生徒の返事を読み、知らない言葉や疑問に思ったことなどから、サモアへの関心を高め、
意欲的に英語で手紙を書く。
1 子どもの活動の流れ
①手紙の返事の書き方を教科書とワークシートから学ぶ。
②サモアの生徒が書いた手紙を読み直す。
③手紙の返事をくれた相手に、返事を書く。
2 子どもの活動の成果・反応
◇今回の手紙は、送り主が決まっているので、“Dear ○○ ” と宛名を書くことができた。また、相手の
ことを考えて 2 回目の手紙に、取り組んでいた。
◇イラストを書いたり、折り紙の鶴を入れたり、オリジナルの手紙を書く生徒がいた。
◇手紙の返事から更にサモアに興味をもち、手紙の感想や、知らない言葉についての質問などについて
一回目よりも多くの内容を書いていた。
― 46 ―
3 使用した教材
〈教材 6〉『SUNSHINE ENGLISH COURSE2』
「Writing2 ホ ス ト フ ァ ミ リ ー へ の メ ー ル」2012 年 開隆堂出版株式会社
〈教材 7〉
宛名を書いた手紙
授業実践報告
折り紙で作った鶴を入れた英文の手紙
▲
▲
▲
その他
学校祭国際理解室展示「Samoa s Life」
ねらい
・生徒がサモアの生活や文化を知り、興味・関心をもつ。
1 活動の流れ
①学校祭の国際理解室係の生徒は、サモアの食べ物、服装、お金、交通、学校生活等のレポート用紙を
作成する。
2 成果・反応
◇サモア BOX に入っていた、サモアで行われる儀式の道具や、明るい色の服等に、生徒や保護者は興
味をもって見ていた。
◇見たことのない道具について、質問をする生徒や保護者の方がいた。
◇保護者の中には、サモアという国の名前を知る方が何人もおり、関心をもって展示を見ていた。
― 47 ―
3 使用した教材
〈教材 8〉サモア BOX
全体を通して
1 所感
〈写真 1〉手紙を読む生徒
〈写真 2〉サモアについて発表する生徒
生徒たちは全く聞いたこともない国「サモア」について、様々な面で興味をもった。サモアの生徒た
ちに手紙を書くことで、これまでに学んだ英語を生かし、活用する場面をもつことができ、生徒たちの、
英語に対する学習意欲も高まった。そして、手紙の返事が届き、生徒たちはとても嬉しそうに手紙を読
んでおり、英語を苦手とする生徒たちも、真剣に理解しようと取り組んでいた。教師が、サモアについ
ていろいろなことを話す前に、生徒たちに手紙を通してサモアについてわかったこと、疑問に思ったこ
とを書かせた。その疑問に思ったことを中心として、サモアについて紹介をした。生徒たちが、最も関
心をもったことは、自分たちと同じ年代の子供たちが、どのように学校で学んでおり、生活をしている
かということであった。自分たちが当たり前にしていることが、サモアでは違っており、文化や習慣の
違いを感じさせることができたと思う。話を聞くことは、もちろん大切だが、直接見たり、現地の方と
やりとりをしたりすることが、生徒の学習意欲を高めることにつながったと感じる。
この授業実践を通して、国際理解に関心をもち、英語の学習に意欲的に取り組む生徒が増えたように
感じる。これからも、子供たちが広い視野をもち、世界に目を向けるような授業ができるように努めて
いきたい。
― 48 ―
サモア!ふしぎ発見!~あなたにとって大切なものは?~
実践場所
福井工業大学附属福井中学校(福井県)
実践者
対 象
1年3組
実践教科
総合(全 6 時間)
ねらい
○サモアを紹介し、サモアの概要を知る。
○サモアの人の生活や家族、生き方について、日本人との相違点や等しい点を考える。
○サモアの人々の生活を通して、自分自身の価値観を深く見つめ直す。
回
プログラム
備 考
1
世界地図
・導入 行った動機・JICA の紹介
・クイズ形式で地図を出し、場所やサモアの人口、面積、 写真
産業などの紹介、サモアの風景、食べ物などの質疑応答。
・他の国の人やその生活に興味を持つ。
2
・サモアの気候、服装などについて実物のものに触れてい
ろいろ考える。
3
・サモアの文化について(食べ物、衣服、言語、宗教等)
日本との違いを見つけだし、考える。
自分の国についても深く考える。
4
パワーポイント、
・サモアの家庭の様子を紹介
サモアの子どもたちの様子を写真や動画を通して紹介する。 写真
5
・サモアの教育現状について知る。写真や動画を通して紹
介する。
違いについて深く考える。
・現地の小学校・中学校の様子を伝える。
・サモアの学校の様子を通して、自分たちの生活を振り返
る。サモアの学校生活を見て、感じたこと、学んだこと
をグループで話し合い、発表する。
・自分たちにとって “ 大切なもの ” は何かをグループで話し
合って考え、ダイヤモンドランキングにして発表する。
服、ラバラバ
タ ロ イ モ チ ッ プ ス、
硬貨、
写真
パワーポイント、
写真
画用紙、のり
成 果
・サモアの習慣や異文化に触れる中で、子どもたちの目が輝きだし、表情が明るくなった。
机上の学習も重要だが、実際に動画を見たり、現地のものに触れることは国際交流が深
まり、学ぶ気持ちが一層高まった。サモアに住む人々や文化を初めて知る機会が持てた
ことは、子どもたちにとって素晴らしい経験になった。
課 題
・パワーポイントで多くの資料を作ったが、限られた時間の中で伝えたいことが多くなり、
まとまりのない授業になってしまったこともあった。今後は、ポイントを押さえ、分か
りやすい授業を考えて行っていきたいと思う。
備 考
・サモアの学校の様子がわかる動画や写真を使用する。
・今回の授業とは別に、違うクラスでもサモア紹介の授業をした。
― 49 ―
授業実践報告
実践内容
佐藤 千恵里
「いろんな国の生活を見てみよう」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・世界には多くの国があることを知り、サモアという国から思い浮かぶイメージを考え、サモアの
気候や食べ物、生活習慣について興味・関心持つ。
1 子どもの活動の流れ
①世界地図を見てサモアがどこにあるのかを考え、クイズ形式で気候や食べ物について話し合う。
②サモアのイメージを考える。
③ JICA の活動について学び、日本とサモアの交流について知る。
④国際支援について学ぶ。
2 子どもの活動の成果・反応
◇サモアは太平洋の島々の一つというイメージがあったので、ハワイやグアムと同様に陽気で明るい人
たちが住む国という意見が多かった。
◇開発途上国の人たちの生活が他国の輸入や援助によって成り立っていることを知り、とても驚いてい
た。
◇物がなくても、サモアの人々が毎日笑顔で元気に過ごしている理由(わけ)を知りたがっていた。
使用した教材
〈教材 1〉世界地図、地球儀
〈教材 2〉サモアの風景動画、パワーポイント
サモアの海
サモアのイメージを考える生徒
― 50 ―
「サモアのものに実際に触れてみよう!」
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・サモアの人々の衣服、雑貨、文化や踊りについて感じたことをみんなで話し合う。
・サモアの特色について発表する。
1 子どもの活動の流れ
①教師がサモアでどのような活動をし、どのような出会いがあったかを知る。
②実物教材、写真を見ながら、日本との違いや共通点を考える。
③サモアの人々がどのような生活をしているのかを知る。
2 子どもの活動の成果・反応
◇①服装について
・鮮やかな色、布が柔らかい、生地が軽い。コットンの肌触りが良い。
・軽装が多い。腰に布を巻きつけて過ごすことが一般的。
・ヤシの皮で編んでいて丈夫そう。編み方がきれい。日本にも売っていそう。
サモアのいろいろなものを通して日本の文化との違いを学んだ。
3 使用した教材
〈教材 1〉サモアで買った服、布(ラバラバ)
、鞄、うちわ
〈教材 2〉英字新聞
〈教材 3〉パワーポイント、アルバム
手にとって触ってみて。
日本の物とどう違うかな?
先生、これでいいの?
ラバラバの巻き方が分からない
ので教えて下さい。
― 51 ―
授業実践報告
◇②鞄やうちわについて
「サモアを体験しよう!」
▲
▲
▲
3 時限目
ねらい
・サモアの食文化に触れ、日本とサモアの違いを実際に感じ取り異文化を楽しむ。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの人々が主食として食べているものを知る。
②日本とサモアの食べ物の違いを知る。
③日本とサモアの紙幣の違いを知る。
④サモア語について学ぶ。
2 子どもの活動の成果・反応
◇どの生徒も大変サモアの食文化に興味を持ち、
『食べてみたい!』
、
『美味しそう!』と言ってタロイ
モチップスを恐る恐る口にしていた。日本の食べ物がどれだけ豊かで贅沢なのかよく理解できたと思
う。輸入に頼っているサモアと日本の共通点も見い出すことができた。
また、パワーポイントでも、サモアの食材や文化について見せたところ、
『日本とは全然違う!』と
驚いて、前のめりになって見ていた。サモアの紙幣も日本と異なり、鮮やかなので驚いていた。
3 使用した教材
〈教材 1〉タロイモチップス、ブレッドフルーツチップス
〈教材 2〉サモアの紙幣、硬貨
〈教材 3〉パワーポイント
教材として使用した実物や写真等
― 52 ―
「サモアの家庭を覗いてみよう!」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・サモアの家族構成やその生活習慣に興味を持つ。
・日本人の家庭とサモアの家庭の違いの理解を深める。
1 子どもの活動の流れ
①サモアでは日曜学校に行き、また、白い衣装を身にまとい教会に通うという習慣が根付いていること
を理解する。
②歌と踊りが日常生活に根付いていることを知る。
③家族全員が自分の出来ることをしっかりと把握し、行動している。
2 子どもの活動の成果・反応
◇家族のリーダー的存在の男の子が画面に登場し、踊りと歌を歌い始めた。見ていた生徒は圧倒され、
今はなき大家族の絆に感動しているようであった。
として頑張っている。それがシェアの文化でもあり、分かち合いの精神だと気づいたようだった。
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
〈教材 2〉写真
サモアの家族と
朝ごはん!
みんな仲がいいよ!
― 53 ―
授業実践報告
サモアの子どもたちは、兄弟の上の子が下の子の面倒をみて、親代わりとなり、また頼りになる存在
5 時限目
▲
▲
▲
「あなたにとって大切なものって何だろう?」
ねらい
・今までの授業を通して自分にとって何が一番大切かを考える。サモアの学校の現状を知る。
1 子どもの活動の流れ
①サモアの学校について学ぶ。
②サモアの学校の設備、生徒の様子を知る。
③日本の中学生やサモアの中学生にとっての “ 大切なもの ” とは何かをダイヤモンドランキングを使っ
て考える。
2 子どもの活動の成果・反応
◇ダイヤモンドランキング作成にあたって
【選択肢】
友達 家族 健康 お金 勉強 権力 運動 優しさ
自分たちが考えている “ 大切なもの ” とサモアの生徒が考えている “ 大切なもの ” について、グループ
に分かれて話し合った。それぞれのグループの意見が異なっていて興味深げに聞いていた。
3 使用した教材
〈教材 1〉ダイヤモンドランキング、マジック、画用紙、のり
〈教材 2〉パワーポイント
〈教材 3〉世界地図
実践授業の様子(ダイヤモンドランキングについて発表したり話し合ったりしている生徒)
― 54 ―
授業実践報告
全体を通して
1 所感
今回の教師海外研修を通して、自分自身が大きな驚きと感動を味わうこと出来てとても良かった。サ
モアの暮らしは決して豊かではないが、日本にはなくなりつつある心の豊かさを大事にして生きている
ことが理解できた。
私は “ 大切なもの ” について渡航する前からずっと考えていたが、あのサモアの広い海原を見ていて、
そして、実際にサモアの風にあたり人の生き方について考えることで、人の温かさや家族の大切さ、地
域の必要性を改めて考えさせられた。
帰国後、多くの生徒がサモア体験談を聞きたいのかすぐに集まってきた。サモアの映像を見せると「か
わいそう」「貧しい」
「私たちの方が恵まれている」という想いは消え、
「幸せそう」
「明るくていいなあ」
と皆羨ましそうなため息混じりの言葉になっていた。今後、サモアの実践授業を通して、国際交流・
国際協力に興味を持ち、貢献する生徒が一人でも多く現れることを心から願っている。
2 参考文献・資料
1)JICA 北陸『平成 25 年度 教師海外研修報告書』
― 55 ―
サモアVS日本 住むならどっち?
実践場所
実践者
不二越工業高等学校(富山県)
平井 樹里
対 象
高校 3 年生
実践教科
HR(全 6 時間)
ねらい
○日本以外の国の思想、生活を知り見聞を広げることで固定観念を捨て多角的なものの考
え方ができるようにする
○グループワークの中で協調と自己主張の方法、バランスを習得する
○グループディスカッションの方法を学ぶ
回
実践内容
プログラム
1
【知らない世界について想像しよう】
・アンケートを用いて「JICA」
「発展途上国」
「国際協力」「サモア」についてイメージを膨らませる
・発表
・ダイアモンドランキング
2
【JICA って?】
・JICA 概要説明
・青年海外協力隊について
・前時のアンケートでイメージしたものと比較
3
【サモアって?】
・サモア概況
・研修日程説明
4
【サモアの生活を体験してみよう】
・ものランゲージ
・発表
5
【わたし達の生活とどうちがう?】
・サモアの生活について
・自分達の生活と比較する
6
【住むならどっち?ディスカッションをしよう】
・自分たちが生活するとしたらどちらの国が言いかグルー
プ内でディスカッションを行う
備 考
これ以降
グループワーク
成 果
・サモアを知ることだけにとどまらず、日本について様々な発見があったように思う。さ
らに社会に出る生徒にとって視野を広げるきっかけとなった
課 題
・両国の比較で終わってしまい、
「今わたし達ができることは」というところまで考えを波
及させることができなかった
備 考
― 56 ―
「知らない世界について想像しよう」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・導入としてこの後学ぶことについて想像をめぐらせることで、より関心を持たせる。
・また、ディスカッション前に他人の意見との比較や受容をする練習をする。
1 子どもの活動の流れ
①アンケート
【質問内容】
・「国際協力」と聞いて思い浮かぶ活動や内容を書いてください。
・「JICA(ジャイカ)
」という言葉を聞いたことがありますか?
・「Japan International Cooperation Agency」 日 本 語 訳・JICA の 活 動 内 容 の ひ と つ で あ る
「青年海外協力隊」事業を知っていますか? など
アンケートの答えを項目ごとに発表させる。自分となる意見を聞いて、発見、再考する流れを身に付
ける
③ダイヤモンドランキング
・自分の大切なものをランキング形式で並べさせる
【選択肢】
A.携帯電話 B.友人 C.お金 D.健康な体 E.家族
F.知識 G.恋人 H.ゲーム I.宗教
頭を悩ませながら並べていたが、
「宗教なんて必要ない」
「宗教はいってないし」などの発言が多く、
自分は無宗教であると思っているようだ。サモア人と宗教のつながりを語るには好都合かもしれない。
2 子どもの活動の成果・反応
◇アンケートでは「わからない」
「聞いたことない」などと言っていたが、その分多様な意見がでた
◇「海外で生活してみたいと思うか」の問にはほとんどのせいとが NO と答えた理由は「こわい」
「英語が話せないから」がほとんどである
◇ダイアモンドランキングでは、改めて自分の生活を振り返り、頭を悩ませていた
3 使用した教材
〈教材 1〉アンケート
― 57 ―
授業実践報告
②アンケート内容発表→他者意見との比較
〈教材 2〉ダイアモンドランキング
ダイアモンドランキング
事前アンケート
途上国は環境がよく
なさそうだから行き
たくないな
「JICA って?」
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・JICA や青年海外協力隊の活動を知ることで、
「自分達とは関係のない縁遠い活動」という生徒の
意識を変える。
・さらに自分達にできることはなにかを考えさせる。
1 子どもの活動の流れ
① JICA の概要説明
②青年海外協力隊について
③事前アンケートとの比較
2 子どもの活動の成果・反応
◇ JICA とはどのような目的で、どのような活動をする団体なのかを動画等を見ることで理解する
◇途上国での活動は苦労、過酷などのイメージを持っていたが、HP 上で見る協力隊や現地の人たちが
笑顔でいることが印象に残ったようである
― 58 ―
◇青年海外協力隊として働く方々の志を知り、自分達が小さい世界の中でものごとを考えているという
感覚を少しかんじているようだった
◇青年海外協力隊について様々な職種があることを知り、驚いていた。また、
「これなら俺もできるかも」
と青年海外協力隊を身近に感じることができたようだ
3 使用した教材
〈教材 1〉JICA ホームページ
ねらい
・サモアの情勢についてより詳しく知ることによって、JICA の活動内容の必要性などを理解する
・実際の研修日程を説明し、後の授業につなげる
1 子どもの活動の流れ
①サモア概況説明
②研修日程説明
2 子どもの活動の成果・反応
◇クイズも交えながらサモアの概況について説明した
渡航前に説明していたことを案外おぼえており、彼らが興味をもってくれていることが確認できた
◇研修日程を追いながらサモアでの活動について話す。写真を見て街の様子や生活について「思ってい
たより発展してる」
「のんびりしていていいな」といった感想がでていた
◇ JICA の施設については隊員と現地の人が協力して運営していることに「すごい」と感じたようだ
◇日本と外国、特に発展途上国では環境が異なるとは思っていたが、その差の大きさや方向性の違いに
おどろいていた
◇自分達にとって今の生活が当たり前なように、サモアの人もその生活が当たり前だからそのままでも
いいのではという意見もあった
◇サモアは海のきれいな観光地というイメージしか持っていなかったが、現地の人の生活をよりリアル
に知ることでそこに隠れている問題点が浮かび上がったようだ
◇学校については興味があるようで「施設については思ったより充実していたが、そのシステムはやは
り途上国だと感じた」
「生徒が楽しそうに勉強している」など自分達と比較していた
― 59 ―
授業実践報告
「サモアって?」
▲
▲
▲
3 時限目
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
「サモアの生活を体験してみよう」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・実際にサモアで使われているものを手にすることで、より身近にサモアを感じると共に、日本と
の違いを具体的に考える。
・班で話し合い意見をまとめる術を身に付ける。
1 子どもの活動の流れ
①サモア語クイズ(Malo、Time など)
②ものランゲージ(ほうき、やしの実コップ、ラバラバ など)
③発表
④サモアの生活について知る
2 子どもの活動の成果・反応
◇身のまわりのものを工夫してつかっているのでエコだと感じたようだった
◇日本と異なるようで似ている部分もあることに驚いている生徒もいた
◇他生徒と意見交換し、一つの意見を導くという作業をリーダーを中心に行うことができた
3 使用した教材
〈教材 1〉サモア BOX
(JICA 関西より借用)
〈教材 2〉パワーポイント
〈教材 3〉サモア語クイズ
どうやって使うのかな?
― 60 ―
これは鍋か器だと思います!
「わたし達の生活とどうちがう?」
▲
▲
▲
5 時限目
ねらい
・ホームステイで感じたサモアの人たちの生活や考え方を生徒に伝え、自分達の生活との違い、想
像していた生活との違いを班でまとめる。
・途上国の実態を把握する。
1 子どもの活動の流れ
①ホームステイでの体験を聞く
②写真で一日の流れを確認する
③班で話し合う
2 子どもの活動の成果・反応
◇食事の回数、量の多さに驚いていた。
「途上国の人は食料が不足していて、やせているイメージだっ
たのにびっくり。サモアの人が太っている理由がわかった」
「意外とおいしそう」という意見がでて
◇時間の感覚の違いにも興味を示しており、
「こんなゆったりした生活がうらやましい」という意見と
「この状態だと JICA の施設の仕事を現地の人でやるのは無理だろう」と表面的に感じるのではなく、
そこから波及する意見が出たので、これまでの授業の積み重ねの意味がでたと感じる。
◇シェアの文化も興味深かったようで村のつながりの強さを感じながらも「自分のものを知らない間に
だれかに使われちゃうのはいやだな」という意見が目立った。
◇ある生徒の「サモアの人は笑顔だね」という意見から途上国に対するイメージが少しずつ変化しはじ
めた。「先生楽しかった?」という質問がでるなど生徒の視点が少しずつ広がっていくのを感じた。
3 使用した教材
〈教材〉パワーポイント
ホームステイ先での豪華おもてなし
ホームステイ先のみんなと
― 61 ―
授業実践報告
いた。
「住むならどっち?ディスカッションしよう」
▲
▲
▲
6 時限目
ねらい
・今まで学んできたことを基に「生活するなら」どちらがよいか考える。
・その際幸せとはなにか。様々な方面から考えるようにする。
1 子どもの活動の流れ
①前時までに学んだことを基に生活するならどちらの国がいいか班で意見をまとめる
②班でまとめた意見を発表用に整える
③各班で発表し、質疑応答などを行う
2 子どもの活動の成果・反応
◇どの班も日本がいいという意見であったが、事前アンケート時のような「日本語しか話せない」
「こ
わい」という短絡的なものではなく、
「今の自分がサモアの文化になじむのは時間がかかりそうだか
ら」
「老後を暮らすのは家族やまわりとの繋がりが深いサモアもいいかな」というように一旦サモア
の生活に身を置く自分をイメージした上での好意的な意見が目立った。
◇「どちらの国も考え方によっては幸せに暮らせると思う」
「それぞれのいいところをもっと取り入れ
ればよい」という意見もあり、サモアのことはもちろん自分達の生活を改めて見直す機会にもなった
ようである。
3 使用した教材
〈教材 1〉パワーポイント
〈教材 2〉教育出版「国語表現Ⅰ改訂版」
やっぱり日本がいいなと思いました
どっちに住みたいか考え中……
― 62 ―
全体を通して
1 所感
本学級生徒は 2 年次に修学旅行でシンガポールへ行っているが、それがはじめての海外旅行である生
徒がほとんどである。そのため知っている国はメディア等で取り上げられる先進国がほとんどである。
また、途上国については汚い、怖い、貧困というこれもまたメディアで報道される部分的な情報しかな
いのが実情である。そして旅行も含め、海外へは行きたくないと考える生徒が大多数である。
わたしも渡航経験は先進国のみで、途上国に対して生徒と似たようなイメージをもっていた。そして
サモアについて予備知識をあまり持たずに入国したので、最初は正直なところドキドキわくわくという
よりビクビクしながらの研修であった。しかし、サモアの文化、人に触れるうちにそのような意識は薄
れ、むしろ魅力的な部分が多く見えた。研修を通して常時考えていたのは「幸せとはなにを尺度に決め
たらよいのか」ということである。わたしが会った現地の方は皆サモアを愛し、誇りに思っていた。み
んな笑顔で迎え入れてくれて「サモアはいいところだから必ず戻っておいで。
」と言ってくれた。それ
はサモアの文化、家族体系、自然環境などの全てがそうさせていると感じた。その点先進国である日本
は(わたしは?)常に時間に追われ、不満を訴えているように思う。先進、後進の尺度とはまた別の幸
わたしが感じたこのたくさんの感覚をひとつでも多く生徒に伝えたいと思った。そのためわたしが見
てきたものをなるべく多くの視覚的教材を通して生徒に「素直に伝える」授業にしたいと考えた。より
理解を深めるため、生徒が関心を持ちやすいゲーム形式を取り入れ、さらにグループワークをとりいれ
た。
生徒は予想以上に興味を持ってくれ、わたしの想像を越える感想を持ってくれた。サモアに好意的な
意見が多く出たが、途上国に対してわたしたちになにができるかというところにまで話を持っていけな
かった点は反省材料である。しかし、生徒の視点は確実に広がったと感じており、これから生活してい
く上で今までとは異なる感覚で国際情勢を感じてくれるのではないかと期待している。
― 63 ―
授業実践報告
せの観点を見つけられたことが私自身一番の収穫だったように思う。
サモアの風にふかれて
実践場所
石川県立能登高等学校(石川県)
実践者
対 象
地域創造科 1 年生
実践教科
世界史 A(全 4 時間)
ねらい
高野 勝郎
○サモアの文化、生活を知り、異文化に対する関心・理解を深める。
○途上国の生活と自分たちの生活を比較し、豊かさ・幸せについて考える。
回
プログラム
備 考
1
【サモアにいってきました】
・先進国、途上国どっちに住みたい?なぜ?
途上国ってどんなイメージ?
・サモアってどんな国?
・サモアの学び
パワーポイント
サモアの楽器、ラバ
ラバ
2
【学校へ行こう in サモア】
・サモアの学校紹介クイズ
・サモアの教育の問題点をまとめよう
・発展途上国、先進国ってなんだろう
パワーポイント
ワークシート
3
【衝撃ホームステイ体験】
・ホームステイ体験クイズ
・サモアのここがステキ&キツイ
・サモアって~~なところ!
パワーポイント
アヴァセット
ワークシート
4
【豊かさってなんだろう】
・日本(サモア)で幸せに生活するためには?
・GDP と世界幸福度を比べてみよう
・あなたはどんな時に幸せを感じますか?
パワーポイント
ラバラバ
ワークシート
実践内容
成 果
・サモアという異文化を通じて、自分たちの恵まれた環境に気づくことができた。しかし
サモアが不幸せでは決してないということも理解してもらえた。人生において何が大切
かということを再考する良いきっかけになったと思う。
課 題
・国際理解教育は数回授業を行って終わりでは意味がない。継続的に行うことが必要であ
り、身をもって体感し、共感する場面をこれからも作っていきたい。
備 考
・研修前に町内の中学校で研修に向けての抱負を話し、研修終了後、全校生徒に対して講
演を行った。
― 64 ―
「サモアにいってきました」
▲
▲
▲
1 時限目
授業実践の詳細
ねらい
・生徒たちが持っている途上国へのイメージを確認する。
・サモアという国がどのような国かを簡単に理解する。
・サモアという未知の世界に対しての「知りたい、おもしろい」という興味関心をひきだす。
1 子どもの活動の流れ
①先進国、途上国どちらに住みたいかを考え、途上国に対して持っているイメージを書き出す。
②サモアがどのような国かをクイズに答えながら知る。
(場所、国旗、食事、サモア語、国民性…)
③与えられた情報が日本についてのものかサモアについてのものかを区別するワークショップ「サモア
の学び」をグループで行う。
例)「携帯電話の所有率が 100 %」
2 子どもの活動の成果・反応
◇日本とは全く違うサモアの食生活や大きなサモア人の姿を見て驚きの声をあげていた。
◇ラバラバを巻いている私の姿を見て、異文化を感じているようだった。
◇「サモアの学び」では、日本の生活を改めて振り返ることができ、サモアと日本の比較をすることが
できた。
3 使用した教材
〈教材 1〉
〈教材 2〉
ラバラバと手作りの楽器。
ラバラバを巻いて授業をしたが、女装しているようだと笑われ
た。楽器は棒で叩くと、高く澄んだ音がした。
― 65 ―
授業実践報告
「男女関係なくスカートをはく」
「ゴミ処理は埋め立てが一般的だ」など
「学校へ行こう in サモア」
▲
▲
▲
2 時限目
ねらい
・サモアの教育の実状を知る。
・発展途上国、先進国とは何かをサモアの問題点から考える。
1 子どもの活動の流れ
①クイズを行いながらサモアの学校について紹介する。 歓迎ダンスの VTR、授業風景、教材
②クイズを通して知ったサモアの教育の問題点をまとめる。
例)机、教科書などの物資の不足、体罰・授業のあり方、教員の質、卒業後は多くの学生が家に戻る
かオーストラリア・NZ への出稼ぎに出てしまう、など
③発展途上国、先進国という枠組みについて考える。
確かにサモアは貧しい国かもしれないが、自分たちの文化に誇りを持ち、家族・地域のコミュニ
ティを大事に生活している。様々な問題はあるが、もしサモアが日本のように「豊かな」国になった
時、果たしてサモアの良いところは残っているだろうか。
2 子どもの活動の成果・反応(生徒の感想から)
◇教科書が足りなかったり、机がボロボロだったり、私たちが当たり前だと思っていることが当たり
前ではないということに気がつき、改めて自分たちの生活の豊かさを知ることができた。しかし、
サモアには日本にはない良さがたくさんあるから、そこをこれからも残していってほしいと思った。
◇サモアは今のままで十分幸せなんじゃないかと思った。
◇優しくていつも笑顔で素敵。家族を一番大切にしているところがすごい。
◇教育に関して日本はとても恵まれている!
◇歌や踊りを人前で堂々と踊っていてすごい。歌声がきれい。
◇机がボロボロや体罰はかわいそうだと思った。
◇ちょっとサモア行ってみたいかも。
◇みんな元気に授業を受けていて、発展途上国への見方が変わった。
3 使用した教材
〈教材 1〉
― 66 ―
「衝撃ホームステイ体験」
▲
▲
▲
3 時限目
ねらい
・体験、体感してきたリアリティのある話を聞き、異文化に対する関心・理解を深める。
・ファガ村での人とのふれあい、つながりを感じる。
1 子どもの活動の流れ
①ファガ村でのホームステイ体験をクイズに答えながら学ぶ。
アヴァセレモニー、ファレ、サモアの人気ゲーム、ウム料理、日曜日の過ごし方など
②サモアのここがステキ!キツイ!
これまでの授業で感じたサモアの素敵なところ、ここはちょっときついというところを書きだす。
③サモアって~~なところ!
これまでの授業でサモアという国に対してどのようなイメージを持ったかを「サモアって~~なとこ
ろ」という形式で答える。
◇サモア(ファガ村のステキ&キツイ)
3 使用した教材
〈教材 1〉アヴァセット。実際に水に溶かして臭いをかがせた。
実際にファガ村でプレイしたビンゴ用紙。
〈教材 2〉
人生初!ホームステイinファガ村
― 67 ―
授業実践報告
2 子どもの活動の成果・反応(アンケート結果から)
「豊かさってなんだろう」
▲
▲
▲
4 時限目
ねらい
・日本とサモアそれぞれの「幸せ」について考え、豊かな生き方とは何か、本当の幸せとは何かを
考える。
1 子どもの活動の流れ
①前回アンケートをとった「サモアのここがステキ&キツイ」と「サモアって~~なところ」を発表する。
②日本(サモア)で幸せに生活するために必要なもの TOP5 を選ぼう。
1 スマホ、2 家電、3 宗教、4 家族との時間、5 趣味、6 のんびり過ごす時間、
7 安定した職業、8 きれいな水、9 お金、10 地域の人とのつながり
10 項目から日本・サモアで幸せに生活するために必要なもの 5 つをランキングにする。
③ GDP 上位国と世界幸福度上位国を比較する。
GDP 上位国で世界幸福度上位 10 カ国に入っている国はなく、逆に世界幸福度上位国で GDP 上位 10
カ国に入っている国はない。あくまで一つの指標に過ぎないが、このことから「経済的な発展」と「幸
福」は必ずしも比例する訳ではないということに気づく。
④あなたはどんな時に幸せを感じますか?
幸せに感じる出来事を書き出し、その幸せが「物質的な豊かさ」による幸せか「精神的な豊かさ」に
よる幸せかを分類する。ホストファミリーへのアンケートも紹介。
2 子どもの活動の成果・反応(アンケート、感想から)
◇サモアのここがステキ…家族と楽しく過ごせる、おもてなしの精神、笑顔がステキ、ご飯が結構うま
そう、海が最高、人々が優しい、など
ここはキツイ…家に壁がない(プライバシー)
、ラーメンがのびている、水道水が飲めない、
イモ料理ばっかり、体罰、電波なさそう、水シャワー、虫が多そう、衛生面、
など
◇サモアって~~なところ…家族が仲良く平和、コミュ能力が高い人が多い、人が優しくて自然が多い、
ダンスが大好き、など
◇日本で幸せに生活するために必要なもの TOP5
1班
2班
3班
4班
5班
1位
家族との時間
きれいな水
お金
家族との時間
家族との時間
2位
お金
趣味
家族との時間
友人との時間
のんびり
3位
安定した職業
家電
家電
お金
お金
4位
家電
家族との時間
きれいな水
のんびり
友人との時間
5位
きれいな水
のんびり
スマホ
趣味
きれいな水
3 つの班が家族との時間を 1 位にあげ、他の班も上位にあげた。一方でお金はやはり多くの班が必要
だと感じているようだった。意外なことにスマートフォンをランキングに入れた班は 1 つだけであ
り、それでも 5 位だった。しかし、本当に家族との時間を大切にできているかどうかたずねると、皆
難しい顔をしていた。
― 68 ―
◇サモアで幸せに生活するために必要なもの TOP5
1班
2班
3班
4班
5班
1位
家族との時間
家族との時間
家族との時間
きれいな水
家族との時間
2位
きれいな水
宗教
友人との時間
家族との時間
のんびり
3位
宗教
のんびり
のんびり
友人との時間
お金
4位
友人との時間
友人との時間
家電
のんびり
家電
5位
のんびり
きれいな水
きれいな水
趣味
きれいな水
どの班も TOP3 はほとんどが「精神的な豊かさ」を求めたものを上位にあげている。
サモアで幸せに生活するために必要なもの TOP5
◇・はじめサモアと聞いたら、貧しそうなイメージで悪いところしかないと思っていたけど、人と人と
のつながりやおもてなしの精神があったりと、精神的な豊かさが豊富なところだと感じた。
・サモアの話を聞いて ‘ 豊かさ ’ について深く考えさせられたし、単に物質的な豊かさだけでなく、人
とのつながりなどの精神的な豊かさもあるということを知ることができた。
・日本もサモアの良いところを真似をすればいいと思う。そしてサモアも日本の良いところを、便利
なところを真似していければいいと思う。
・日本人も時間にゆとりがあればもっと笑顔が増えると思う。
・自分は物質的な豊かさがないと生きられないのでサモアでは生きられないなぁ~。
・サモアに家族の大切さを改めて教わった。
・日本人はお金はあっても幸せとは言えないところがあるのかもしれない。
3 使用した教材
〈教材 1〉
― 69 ―
授業実践報告
日本で幸せに生活するために必要なもの TOP5
全体を通して
1 所感
全 4 回の授業を通して感じたことは、生徒たちは「自分が知らないこと、自分たちの生活とかけ離れ
たこと」に関してとても興味があり、またそれに関してもっと知りたいという気持ちを持っているとい
うことだ。生徒たちは私が見たこと・感じたことを意欲的に聞き、途上国の良さと課題を考え感じてく
れた。石川県の奥能登で暮らす生徒たちは地元愛に溢れ地域を大事にする子ども達だが、一方で外の世
界への目や国際的な視野に立って物事を考えることに関しては苦手なところがある。しかしそれはその
ような場面・チャンスが少ないというだけで、きっかけを与えてあげれば生徒たちの目が輝くというこ
とを知ることができた。今回の報告授業では、サモアという異世界を身近な人間から聞くことでより理
解が深まり、広い世界・様々な価値観を意識できたのではないかと思う。
またサモア人の笑顔や振る舞いから日本で失われつつある「温かさ」や「素直さ」
「人とのつながり」
を感じ取り、自分たちの生活を振り返って「先進国ってなんだろう」
「発展ってなんだろう」というこ
とを考えるきっかけにもなっていた。日本は幸せな国ではあるが、より幸せを感じ、豊かに生きていく
ためのヒントを得られたと思う。私自身もこの研修を通して、非常に多くのことを学び感じることがで
きた。この研修に参加できたことを本当に嬉しく思う。
〈写真 2〉ファガ村を出発する日
― 70 ―
実践授業 ~番外編~
今年の参加教員の中には、所属校、担当クラスの枠を超えて、研修成果を還元してくれました。
その例をご紹介します。
【事例①】
実践者:東 春奈教諭(加賀市立分校小学校)
日 時:2015 年 27 年 1 月 27 日
対 象:金沢医療センター附属金沢看護学校 2 年生
内 容:教師海外研修について(実践授業の紹介)
・サモアの肥満率や輸入に依存した食生活などの現状について知り、サモアの人々の健康の維持増進の
ために必要なことは何かを考える。
看護学生の活動の成果・反応
も日本と同じように生活習慣病が問題になっているという共通点があることに驚いていたようであ
る。
◇サモアの国民性や伝統文化を知った上で、健康問題について考えたので、単に健康的な生活を勧める
のではなく、サモアの人々の生き方や様々な事情を考慮した上で調和のとれた指導が必要であり、そ
れが継続的な支援に繋がると考えた学生が多かった。
「Q.看護学生のあなたなら、サモアの人々に健康のためのどんなアドバイスをしますか?」という問
いかけへの学生の意見
・伝統の食事をもう一度見直し、現在の食事に活かして、ヘルシーで満腹感の得られる食事を意識しま
しょう。病気になると、好きなものばかりは食べられなくなりますよ。
・輸入する商品を生活に合ったものに変えていく。食堂を作り、料理が苦手な人でも手作りの料理を食
べられる環境を作る。
・好きな物を全く食べてはいけないというわけではなく、自分が食べているものを知った上で、上手に
取り入れていけば良いと思う。ただ、自分が食べている物の害についても知るべきである。
・台所の様子を見て、油であげないような調理方法の工夫を伝える。食べ順を教える。
― 71 ―
授業実践報告
◇サモアと日本に違いがあることは当然のこととして予測できていたためか、開発途上国であるサモア
【事例②】
実践者:高野 勝郎教諭(石川県立能登高等学校)
日 時:2014 年 11 月 1 日(土)
学校公開日
対 象: 能登高校全校生徒、保護者数名
内 容: サモアの風にふかれて~豊かさってなんだろう~
サモアで私が最も強く感じた「発展・豊かさとは何
か」
「先進国・途上国とは何か」ということをテーマ
に 50 分間の講演を行った。
「途上国」と言ってしまう
と「先進国」に比べて劣っている国という印象を抱い
てしまいがちだが(私がそうであった)、この研修で
私が体験したことは、それらを大きく覆してくれた。
サモアで体感した「精神的な満足感」は日本では見落
とされつつあるものであり、それはもしかしたら「発
展」とともに失われていく(見えにくくなる)ものな
のかもしれない。サモアが今後発展し、私が感じた心が満たされていくような温かさが消えてしまった
ら、それはサモアにとって本当の意味で良い発展と呼べるのか、疑問に思った。またこのことは先進国
と言われる日本のこれからの在り方についても大きなヒントとなるのではないかと思う。
50 分という短い時間に詰め込んで話をしたため、少しまとまりに欠けるものとなってしまったが、
生徒は真剣に話を聞いてくれた。
生徒の感想
・自分達はこんなにも裕福な環境にいるせいで、本当の幸せというものを見間違えているのでは?と感
じた。
・先進国はもちろん幸せだが、途上国にも先進国では味わえない幸せがあるとわかった。
・能登は遊ぶところが少なく休日は寝て過ごすことが多いが、サモアと少し似ているなと思った。改め
て能登の人の温かさを実感し能登に生まれてよかったと思った。
・サモア人は自分たちの伝統や文化を大切にしているが、能登の人たちも祭りや方言などの伝統文化を
後世に残していっているところが似ていると思った。
・サモアの人たちが日本に来て日本の生活をしたら良く思うのか気になった。
・これから自分が海外に行くことがあれば、自分の生活を見直すチャンスだと思って外国人とたくさん
コミュニケーションをとろうと思った。
・不衛生で不便なサモアだからこそ、人と人とのつな
がりが深いのだと思う。
・やっぱり日本に生まれてよかったと思えた。
・先進国だから「幸せ」ではなく、人と人とのつなが
りの中から幸せが生まれるのかなと思った。
・発展とは、その国の環境・価値観によって意味が変
わってくると思う。難しい問題だと思った。
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JICA 開 発 教 育
支援事業紹介
学校で活用いただける JICA プログラムのご紹介
JICA では、海外の国際協力の現場における経験をリソースに、地域の橋渡し役として、
開発途上国や
国際協力について「知り」
、自分に何ができるかを「考える」機会を提供し、国際協力に参加するなど
の「行動」につながるよう、様々なプログラムを実施しています。
JICA 国際協力出前講座
開発途上国の実情を知り、日本との関係や国際協
力がなぜ必要なのかを考える授業や研修などの機会
に、JICA 職員や青年海外協力隊をはじめとするボラ
ンティア経験者などを講師として派遣するプログラム
です。
教育現場では、国際理解を目的とした総合的な学習
の時間はもちろん、社会や道徳の学習、職業理解の講
座などでも活用されています。
教師海外研修
教員を対象に、開発途上国がおかれている現状、日
本との関係、国際協力の実情などを約 10 日間の海外
研修を通して直に学び、その学びと体験を帰国後、授
業実践を通して還元する事業です。
校種、勤務地域、科目などが違う先生方が一つの
チームとなって海外研修に臨みます。海外研修で得た
学び、五感で感じたこと、それらを使って、児童・生
徒に世界のことを伝えてください。
北陸 3 県からの参加状況
研修国
参加者の校種
2012 年度
エチオピア
小学校 5 名、中学校 1 名、高校 2 名、特別支援校 1 名
2013 年度
エチオピア
小学校 3 名、高校 4 名、特別支援校 1 名
2014 年度
サモア
小学校 3 名、中学校 2 名、高校 2 名
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JICA 施設訪問
課外活動、修学旅行などで JICA を訪問してみませ
んか?
JICA 北陸(金沢市)のほか、JICA 地球ひろば(東
京)、なごや地球ひろば(愛知)など、全国各地の
JICA で施設訪問を受付けています。JICA の実施する
国際協力事業説明、青年海外協力隊体験談など、希望
する内容について事前にご相談ください。
JICA ホームページ
● JICA ホームページ
●キッズコーナー
http://www.jica.go.jp/
http://www.jica.go.jp/kids/index.html
お問い合わせ先
JICA 北陸
〒 920-0031 石川県金沢市本町 1 - 5 - 2 リファーレ(オフィス棟)4F
TEL:(076)233-5931 FAX:
(076)233-5959
各県 JICA デスク
富山県 ――
(公財)
とやま国際センター
富山市牛島新町 5 - 5 タワー 111 4F
TEL/FAX:076-464-6491
石川県 ――
(公財)
石川県国際交流協会
金沢市本町 1 - 5 - 3 リファーレ 3F
T E L:
(076)262-5932
FAX:
(076)222-5932
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福井県 ―
(公財)
福井県国際交流協会
福井市宝永 3 - 1 - 1
福井県国際交流会館
T E L:
(0776)28-8800
FAX:
(0776)28-8818
平成 26 年度教師海外研修報告書
発 行
平成 27 年 3 月
発行者
独立行政法人国際協力機構北陸支部(JICA 北陸)
〒 920-0853 石川県金沢市本町 1-5-2 リファーレ(オフィス棟)4F
(076)233-5931 FAX:
(076)233-5959
TEL:
E-mail:[email protected]
URL:http//www.jica.go.jp/hokuriku/index.html
平成
年度 教師海外研修報告書
26
独立行政法人国際協力機構 北陸支部
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