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地球をめぐる温室効果ガス ―どこでどれだけ減らせる

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地球をめぐる温室効果ガス ―どこでどれだけ減らせる
地球をめぐる温室効果ガス
―どこでどれだけ減らせるか?-
さいぐさ のぶこ
三枝信子
国立環境研究所 地球環境研究センター
温室効果ガスは地球全体で増え続けています
全大気平均CO2濃度は 400 ppm を超えました
温室効果ガス観測技術衛星
「いぶき」(GOSAT)による観測
年に 約 2 .5 ppm の割合で上昇中
環境省・国環研・JAXA 2016年5月20日報道発表
http://www.nies.go.jp/whatsnew/2016/20160520/20160520.html
本日のポスター②「宇宙から観た温室効果ガスの挙動」
横田達也(地球環境研究センター)
全大気平均CO2濃度は 400 ppm を超えました
温室効果ガス観測技術衛星
「いぶき」(GOSAT)による観測
年に 約 2 .5 ppm の割合で上昇中
環境省・国環研・JAXA 2016年5月20日報道発表
http://www.nies.go.jp/whatsnew/2016/20160520/20160520.html
地球をめぐる温室効果ガス
―どこでどれだけ減らせるか?-
計画
実行
改善
検証
新しいサイクルで答えに向かっていきます
地球をめぐる温室効果ガス
―どこでどれだけ減らせるか?-
計画
1.パリ協定とは?
温暖化対策の新たな国際的枠組、採択される
2.実質的な排出量ゼロとは?
実行
人為的な排出量の削減、その先に...
検証
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検証
1.パリ協定とは?
温暖化対策の新たな国際的枠組、採択される
COP21*、フランス・パリにて開催
(2015年11月30日~12月13日)
*国連気候変動枠組条約第21回締約国会議
温暖化対策は、次のステージへ
写真:畠中エルザ・小坂尚史(2016)地球環境研究センターニュース
http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201602/303001.html
1.パリ協定とは?
温暖化対策の新たな国際的枠組、採択される
●途上国含む全ての国の参加
●産業革命前からの 気温上昇を2℃未満
●21世紀後半に、温室効果ガスの実質的な排出量ゼロ
世界平均地上気温の将来予測
(産業革命前の気温との差を表示)
現状を上回る排出
削減をしない場合
強い排出
削減が
必要
排出削減して気温上昇
を2℃までに抑える場合
図:IPCC (2013) WG I Figure SPM.7(a)を改変
1.パリ協定とは?
温暖化対策の新たな国際的枠組、採択される
本日のポスター⑤「パリ合意の意義・課題と今後の温暖化対策」
増井利彦ほか(社会環境システム研究センター)
動画による解説シリーズ
第1回・第2回: 亀山康子さん
(社会環境システム研究センター)
地球環境研究センターホームページより
(http://www.cger.nies.go.jp/ja/cop21/)
2.実質的な排出量ゼロとは?
日本の「地球温
暖化対策計画」
人為的な排出量の削減、その先に...
●2015年7月、日本の約束草案 を提出
●削減目標(2030年度):2013年度比で26.0%減
①日本の温室効果ガス排出量(1990~2014年度)、②2030年目標、③2050年目標
単位:
億トン
(CO2
換算)
16
1400
14
家庭部門
-26%
1200
12
業務その他
1000
10
運輸部門
800
8
600
6
家庭やオフィス:
産業部門
400
4
約40%の排出
エネルギー転換部門
2
200
削減が必要!
00
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
2035
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
2035
1600
エネルギー起源CO2以外
エネルギー転換部門
エネルギー起源以外CO
2 およびその他産業部門
運輸部門
-80%
2040
2045
2040
2045
業務その他部門
家庭部門
2050
2050
年
引用:
○国環研・温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2014年度)」
○「日本の約束草案」(2015年7月、国連気候変動枠組み条約へ提出)
○日本の「地球温暖化対策計画」(2016年5月、閣議決定)
2.実質的な排出量ゼロとは?
日本の「地球温
暖化対策計画」
人為的な排出量の削減、その先に...
●2015年7月、日本の約束草案 を提出
●削減目標(2030年度):2013年度比で26.0%減
①日本の温室効果ガス排出量(1990~2014年度)、②2030年目標、③2050年目標
単位:
億トン
(CO2
換算)
16
1400
14
家庭部門
1200
12
業務その他
1000
10
運輸部門
800
8
600
6
産業部門
400
4
2 エネルギー転換部門
200
00
1990
1995
2000
2005
2010
2015
1990
1995
2000
2005
2010
2015
1600
-26%
-80%
2020
2020
2025
2025
エネルギー起源CO2以外
エネルギー転換部門
エネルギー起源以外CO
2 およびその他産業部門
2030
2035
2030
2035
運輸部門
2040
2045
2040
2045
業務その他部門
家庭部門
2050
2050
年
引用:
○国環研・温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2014年度)」
○「日本の約束草案」(2015年7月、国連気候変動枠組み条約へ提出)
○日本の「地球温暖化対策計画」(2016年5月、閣議決定)
その先は?
2.実質的な排出量ゼロとは?
例えば
人為的な排出量の削減、その先に... 世界では?
その先に、CO2回収貯留?
(Carbon dioxide Capture and Storage; CCS)
石油・天然ガス採掘所や発電所などからCO2を回収し、
地中や水中に貯留する技術
CO2回収
CO2回収
世界で15件の大規模CCS
プロジェクトが運転中.
(米国、カナダほか)
引用:Global CCS Institute (2015)
“The Global Status of CCS 2015”
枯渇した油田
にCO2貯留
深い帯水層
に貯留
日本でも2007年に法整備
が整い、海底下貯留が
実施可能に.
CO2圧入による
増進回収
図:IPCC (2005) Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage, Fig. SPM 4 に追記
2.実質的な排出量ゼロとは?
例えば
人為的な排出量の削減、その先に... 世界では?
さらに、ネガティブエミッション(排出をマイナス)?
現在検討されている、大気からCO2を除去する技術
バイオマスエネルギー燃焼とCO2回収貯留の組合せ
with
○Bioenergy
carbon capture
and storage
(BECCS)
○大規模植林
沿岸生態系へ
の炭素貯蔵
木造建築への
長期炭素貯蔵
海洋施肥による
CO2吸収促進
バイオ炭貯蔵
大気中CO2の
化学的直接回収
風化促進
(ケイ酸塩岩)
図:Williamson (2016) Nature に追記
2.実質的な排出量ゼロとは?
例えば
人為的な排出量の削減、その先に... 世界では?
さらに、ネガティブエミッション(排出をマイナス)?
現在検討されている、大気からCO2を除去する技術
バイオマスエネルギー燃焼とCO2回収貯留の組合せ
with
○Bioenergy
carbon capture
and storage
(BECCS)
○大規模植林
沿岸生態系へ
の炭素貯蔵
木造建築への
長期炭素貯蔵
海洋施肥による
CO2吸収促進
広大な面積が必要
→食料生産や生態系保全との競合
十分な灌漑が必要
大気中CO の
風化促進
バイオ炭貯蔵
→他産業との水資源をめぐる競合
化学的直接回収
(ケイ酸塩岩)
2
大量の肥料投入が必要
→環境負荷およびコストの問題
3.地球全体の温室効果ガスを監視する
2.実質的な排出量ゼロとは?
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
人為的な排出量の削減、その先に...
これが目標
削減された
人為的排出
強化された
人為的吸収
大気CO2濃度が安定すると
共に減少すると予想される
海洋
自然吸収
陸域
自然吸収
地球全体の
吸収・排出量
のイメージ
3.地球全体の温室効果ガスを監視する
2.実質的な排出量ゼロとは?
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
人為的な排出量の削減、その先に...
想定し得る問題:
① 国ごとの排出削減量報告は正確か?
削減された
人為的排出
強化された
人為的吸収
海洋
自然吸収
陸域
自然吸収
地球全体の
吸収・排出量
のイメージ
3.地球全体の温室効果ガスを監視する
2.実質的な排出量ゼロとは?
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
人為的な排出量の削減、その先に...
想定し得る問題(将来気候下で):
② 予想外の大規模排出や自然吸収量の急減はないか?
例)森林火災, 凍土融解, 干ばつ, 海洋循環の変化, …
削減された
人為的排出
強化された
人為的吸収
海洋
自然吸収
陸域
自然吸収
地球全体の
吸収・排出量
のイメージ
3.地球全体の温室効果ガスを監視する
2.実質的な排出量ゼロとは?
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
人為的な排出量の削減、その先に...
このため、将来にわたって
地球全体で温室効果ガスの
吸収・排出量の監視が必要
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
1)ボトムアップ的アプローチ(自然吸収・排出量)
地上や船舶の現場データに基づき、
陸や海での温室効果ガスの吸収・排出量を観測
地球環境モニタリング事業として実施中のさまざまな観測プラットフォーム
世界の陸域観測点(2016年: 562地点)
※地球センターはアジアの事務局を担当
富士北麓 森林観測サイト
北海道大学天塩研究林 観測サイト
(北大・国環研・北海道電力共同研究)
太平洋・オセアニア観測航路図
日米航路船 New Century 2
日本-オセアニア航路船 Trans Future 5
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
1)ボトムアップ的アプローチ(自然吸収・排出量)
モデル、気象データ、
衛星画像等を用いた
吸収・排出量の広域評価
観測データの収集と
広域化手法の改良
右上の図:国環研ホームページ
「Carbon Sink Archives」より
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
2)トップダウン的アプローチ
人工衛星、航空機、地上で温室効果ガス濃度を観測
http://www.cger.nies.go.jp/contrail/
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
2)トップダウン的アプローチ
大気の流れを再現するモデル
を用いた吸収・排出源推定
人為排出量
を差し引き、
衛星・航空機・船舶・
地上などで観測した
CO2濃度
自然の吸収・排出量の分布を推定
吸収
図:国環研ホームページ「GOSATのプロダクト」より
放出
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地表から、吸収・排出源の変化を検出
2)トップダウン的アプローチ
大気の流れを再現するモデル
を用いた吸収・排出源推定
今は大領域ごとに
推定可能
将来はより細密に
衛星・航空機・船舶・
地上などで観測した
CO2濃度
自然の吸収・排出量の分布を推定
吸収
図:国環研ホームページ「GOSATのプロダクト」より
放出
3.地球全体の吸収・排出量を求める
陸域での観測を基に吸収・排出源の変化を検出
ボトムアップ的アプローチでここまで分かる
陸への自然吸収量は、暑夏・冷夏・乾燥などの影響を強く受ける
光合成に有効な光の量
2003年7~8月
光合成の総量
(平年との差)
2003年7~8月
(平年との差)
多
多照で吸収増
多
い
い
多照で少
吸収減
少
な
い
な
い
(base period 2001-2006)
現場観測データで検証済み
三枝ほか(2010) Biogeoscience を改変
(base period 2001-2006)
吸収・排出量の現場観測データで
検証済み
3.地球全体の吸収・排出量を求める
表面海水観測から、海洋全体の吸収量の変化を検出
ボトムアップ的アプローチでここまで分かる
船舶観測を基に海洋全域のCO2の地域分布を求めます.
(単位 μatm)
分圧
高い
海から放出
されやすい
分圧
低い
海へ吸収
されやすい
2014年の海洋表層のCO2分圧(海へのCO2の溶け込みやすさがわかる)
図作成: 中岡慎一郎
3.地球全体の吸収・排出量を求める
表面海水観測から、海洋全体の吸収量の変化を検出
ボトムアップ的アプローチでここまで分かる
海による吸収
CO2収支(10億トン 炭素換算)
海洋全体への自然吸収量は、増えています.
年
図作成: 中岡慎一郎 (Rödenbeck ほか [地球 C 中岡・曾含む] ) (2015) Biogeoscience を改変
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から、吸収・排出源の変化を検証
トップダウン的アプローチでここまで分かる
全球陸域炭素収支
(10億トン/年)
地球全体の陸域: 2000年台半ば以降、安定してCO2吸収
ただし大規模エルニーニョ年に吸収量は低下
正味
吸収
全球陸域
世界の研究機関が開発した
トップダウンモデルによる結
果を示す
引用:Thompsonほか(マクシュートフ, 白井, 石澤, 町田 含む) (2016) Nature Communications
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から、吸収・排出源の変化を検証
2015年インドネシア森林火災では
日本の年間人為排出量を上回る
CO2排出あり
正味
※11月中旬までに推計17億トンCO
吸収
2
引用:「全球火災排出データベース」
写真は参考例です
3.地球全体の吸収・排出量を求める
空から地域別に吸収・排出源の変化を検証可能に
地域別炭素収支(10億トン/年)
トップダウン的アプローチでここまで分かる
植林・再植林・
CO2施肥の
影響か?
正味
吸収
東アジアで吸収増加
大規模エルニーニョ
正味
吸収
東南アジアは時々大きな排出
地域別の吸収排出
世界の研究機関が開発した
量がようやく検証で
トップダウンモデルによる結
果を示す
きるようになりました
引用:Thompsonほか(マクシュートフ, 白井, 石澤, 町田 含む) (2016) Nature Communications
3.地球全体の吸収・排出量を求める
さらに、観測の充実と評価精度の向上が必要.
トップダウン・ボトムアップの比較検証
GOSATデータを用いたトップダウン
陸域観測ネットワークデータを用いたボトムアップ
熱帯では差があり
ボトムアップの吸収>トップダウンの吸収
中高緯度では良好に一致
冬
夏
正味
吸収
JAMSTEC-NIES 報道発表 (近藤・市井・ 地球C 高木・笹川)
http://www.nies.go.jp/whatsnew/2015/20150717/20150717.html
正味
吸収
Kondo ほか (2015) JGR
3.地球全体の吸収・排出量を求める
何ができたか、何を目指すか
精度向上に取組中
現在
自然 吸排出 =
トップダウン
ボトムアップ
人為 吸排出
⇒
今後
地球全体の
- 人為 吸排出
-
吸排出
観測により裏付け
より迅速に、地域的に
統計データから算出
地球全体の
ー 自然 吸排出
-
吸排出
トップダウン
ボトムアップ
半歩よりは かかるかも知れませんが
現在は、
変動する吸収・排出量を地域
別に観測することが可能に
今後は、より精密に
1)国別 人為排出削減量の検証
2)予想外の吸収・排出量変化
を早期検出
年間の人為排出量(10億トンCO2)
今後の展望と課題
「実質的な排出ゼロ」により気候を安定化させる社会づくり
に貢献するため、地球規模での観測を通して
「どこで、どれだけ減っているか」を検証します.
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