Comments
Description
Transcript
報告書 - 経済産業省
平成22年度化学物質安全確保・国際規制対策推進等 「途上国におけるオゾン層破壊物質の転換プロジェクト推進事業」 報告書 平成23年3月 株式会社 旭リサーチセンター 目 次 はじめに ...................................................................... 1 1.調査の背景と目的 ...................................................................................................... 1 2.事業内容..................................................................................................................... 1 3.調査の期間 ................................................................................................................. 2 1.国際会議の状況 ............................................................ 3 1-1.モントリオール議定書関連会合.......................................................................... 3 1-2.モントリオール議定書多数間基金執行委員会 .................................................... 4 1-2-1 第 60 回基金執行委員会(モントリオール) ........................................... 4 1-2-2 第 61 回基金執行委員会(モントリオール) ......................................... 12 1-2-3 第 62 回基金執行委員会(モントリオール) ......................................... 16 2.今年度提案したプロジェクト ............................................... 21 2-1.2010-12 年のビジネスプラン .......................................................................... 21 2-1-1.第 60 回基金執行委員会に提出したビジネスプラン............................... 21 2-1-2.第 61 回基金執行委員会に提出したビジネスプラン............................... 22 2-2.コロンビア(スプレー発泡プロジェクト)...................................................... 24 2-2-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 24 2-2-2.第 60 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 24 2-3.ナイジェリア(製氷機転換プロジェクト)...................................................... 29 2-3-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 29 2-3-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 29 2-4.中国(XPS 発泡プロジェクト)......................................................................... 33 2-4-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 33 2-4-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 33 2-5.中国(洗浄プロジェクト)............................................................................... 43 2-5-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 43 2-5-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 43 2-5-3.中国洗浄関係者の来日 ........................................................................... 46 2-6.フィリピン(フォームセクタープラン) ......................................................... 54 2-6-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 54 2-6-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 54 2-7.サウジアラビア(XPS 発泡プロジェクト)....................................................... 55 2-7-1.プロジェクトの背景と概要 .................................................................... 55 2-7-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 ......................................... 55 3.懸案中のプロジェクト ..................................................... 57 3-1.タイ(洗浄プロジェクト等) ........................................................................... 57 3-2.インド(XPS 発泡およびスプレー発泡プロジェクト) ..................................... 57 3-3.メキシコ(エアゾールプロジェクト) ............................................................. 57 3-4.マレーシア(冷凍空調プロジェクト) ............................................................. 59 3-5.中国(ODS 破壊プロジェクト)......................................................................... 60 3-6.アフリカ地域(ODS 破壊プロジェクト) .......................................................... 60 4.現在進行中のプロジェクト ................................................. 61 4-1.中国(冷媒サービス分野用 CFC 全廃プロジェクト)........................................ 61 4-2.インド(金属洗浄用途 CTC 全廃プロジェクト)............................................... 62 4-3.アフリカ(CFC チラー転換デモプロジェクト)................................................ 63 5.その他 ................................................................... 64 5-1.UNIDO から5名が来日し日本企業を見学 .......................................................... 64 5-2.NOU2名を JICA セミナーに招聘........................................................................ 65 はじめに 1.調査の背景と目的 オゾン層破壊物質の多くは高い温室効果を有するガスであり、近年のモントリオール議 定書締約国会合においては、オゾン層保護のみならず地球温暖化防止対策の観点を踏まえ た新たな取組みが模索されている。 2007 年のモントリオール議定書締約国会合で合意された HCFC(ハイドロクロロフルオロ カーボン)の全廃前倒しを受けて、その後の締約国会合や多数国間基金執行委員会では、 HCFC 削減の方法論やクライテリア、コスト、支援額などについて議論が重ねられている。 すなわち、次のような事項が喫緊の課題として同会合で取り上げられている。 -HCFC の代替物質の一つとして HFC(ハイドロフルオロカーボン)が挙げられるが、当 該物質は温室効果が高い上、京都議定書の規制対象物質となっているため、可能な限 り温室効果のより低い物質への転換が望まれていること。 -HFC 以外で代替物質があり、またオゾン層破壊係数の高い物質を使用している発泡分野 や洗浄分野の転換を優先して行う。ただし、用途によっては、HFC 以外に適当な代替物 質が存在しない場合や、HFC 以外の冷媒を使用するとエネルギー効率が悪くなり、かえ って温暖化を助長するというケースがあり、このような場合には、HFC の回収・破壊等 の総合的な対策が求められること。 -CFC や HCFC はオゾン層破壊係数や地球温暖化係数が高いことから、これらのバンク対 策として、フロン回収・破壊への取組みが求められていること。 そこで、本調査事業は、途上国支援のあり方を議論するモントリオール議定書多数国間 基金執行委員会等への参加を通じ、気候変動枠組み条約における温暖化防止対策にも資す る途上国における具体的なプロジェクトの発掘、提案、実施及び支援を行うことを目的と して実施した。 2.事業内容 上記の目的に照らし、以下の事業を実施した。 (1)以下の国際会議等に参加し、その会議等が終了した後、速やかに簡単な報告書をま とめ、経済産業省製造産業局化学物質管理課オゾン層保護等推進室担当者へ報告を行っ た(括弧内は国際会議開催地)。各会合への参加にあたっては、各国の提案プロジェク トの分析、国連実施機関との意見交換、情報収集、日本の技術/代替状況等の紹介、 その他オゾン室出張者のサポートを行った。 ①モントリオール議定書多数国間基金執行委員会(モントリオール) :計 3 回 1 ②以下の(2)に掲げたプロジェクトの関係者会合 ・中国 XPS foam sector プロジェクト会議(上海):計 2 回 ・ナイジェリア HPMP 関連会議(ラゴス):1 回 (2)新規プロジェクトに関する調査 以下の調査を実施し、新規プロジェクトの準備を実施した。 ①コロンビア・デモンストレーションプロジェクトの提案書作成・提出 ②ナイジェリア・デモンストレーションプロジェクトの提案書作成・提出 ③中国・デモンストレーションプロジェクト(XPS 発泡)の提案書作成・提出 ④中国・デモンストレーションプロジェクト(洗浄)の提案書作成・提出 ⑤サウジアラビア・投資プロジェクトの提案書作成・提出 ⑥フィリピン・フォームセクタープランの提案書作成・提出 ⑤UNIDO 担当者の来日調整・アテンド ⑥中国洗浄担当者の来日調整・アテンド ⑦JICA 主催のセミナーへのオブザーバー参加者の来日調整 ⑧ビジネスプラン作成(2010-2012 年、2011-2014 年) (3)現在進行中のプロジェクトに関する調査 継続実施中のインドにおける金属洗浄用四塩化炭素転換プロジェクトについて、プ ロジェクト完了の目処を付けた。また中国における冷媒サービス部門における CFC の 削減プロジェクト、アフリカ地域における CFC チラーの非 CFC への転換デモンストレ ーションプロジェクトに関して、現況の調査を行った。 (4)上記の他、必要に応じモントリオール議定書締約国会合/同作業部会及び気候変動 枠組み条約/京都議定書関連会合における議論の情報収集を行い、本調査業務に役立 てた。 3.調査の期間 平成 22 年 4 月 1 日から平成 23 年 3 月 31 日まで 2 1.国際会議の状況 1-1.モントリオール議定書関連会合 (1)2010 年の主要会合 会期 場所 第 60 回基金執行委員会 2010 年 4 月 12 日~4 月 15 日 モントリオール(カナダ) 第 30 回公開作業部会 2010 年 6 月 15 日~6 月 18 日 ジュネーブ(スイス) 第 61 回基金執行委員会 2010 年 7 月 5 日~7 月 9 日 モントリオール(カナダ) 第 22 回締約国会合 2010 年 11 月 8 日~11 月 12 日 バンコク(タイ) 第 62 回基金執行委員会 2010 年 11 月 29 日~12 月 3 日 モントリオール(カナダ) (2)基金執行委員会の主要議題 議題 実施年月 Business plans (10~12 年の 3 年分を ローリングで) Consolidated Bilateral agencies UNDP UNEP UNIDO World Bank Annual tranche submission delays Status on implementation of delayed projects Updated model rolling 3-year phase-out plan Progress report Consolidated as at end 2009 Bilateral cooperation UNDP UNEP UNIDO World Bank Evaluation of the implementation of the 2009 business Report on implementation of approved projects with specific reporting requirements Project Proposal Bilateral Work Programme UNDP UNEP UNIDO World Bank Work Programme UNDP Amendment for 2010 UNEP UNIDO World Bank 3 第 60 回 第 61 回 10 年 4 月 /7 /8 /9 /10 /11 /12 10 年 7 月 /7 /8 /9 /10 /11 /12 /5 /6 /6 第 62 回 10 年 11 月 /5 /6 /7 /13 /14 /15 /16 /17 /18 /19 /16 /17 /18 /19 /20 /20 /9 /22 /12 /23 /24 /25 /26 /13 /14 /15 /16 注1)表内の数字はドキュメント・ナンバー 注2)通常、7 月に開催される基金執行委員会では、ビジネスプランについて議論されな いが、2010 年は 4 月に開催された第 60 回基金執行委員会で HCFC 削減のクライテ リアが決定されたことから、第 61 回基金執行委員会において修正版ビジネスプラ ンを議論することとなった。 1-2.モントリオール議定書多数間基金執行委員会 モントリオール議定書多数間基金執行委員会に関して、以下の会合に出席した。 1-2-1 第 60 回基金執行委員会(モントリオール) 日程 2010 年 4 月 12 日~4 月 15 日 場所 モントリオール(カナダ) 会場 International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場 (1)全体所感 第 60 回基金執行委員会では、長年の懸案であった HCFC 削減に関する基金供与等のクラ イテリアが決定され、今後の HCFC 削減において大きな意味を持つ会合であった。 また、会議日程を試験的に 4 日間(通常は 5 日間)にする試みもなされた。結果として は、議題の審議時間が足りず、いくつかの議題が先送りされたことから、2011 年以降は当 面は 5 日間の会議日程で行うこととなった。 プロジェクト関連では、デモンストレーションプロジェクトの提案が再開され、日本も コロンビアにおける超臨界 CO2 技術を使用したスプレー発泡のデモンストレーションプロ ジェクトを提案し、承認された。 なお、デモンストレーションプロジェクトについては、第 57 回基金執行委員会において、 一部のプロジェクトを除いてビジネスプランへの掲載が取り止めとなった(決定 57/6)が、 第 59 回基金執行委員会において、日本の主張により、2010 年のビジネスプランへの掲載が 認められた(決定 59/9)経緯がある。 4 (2)主要議題 <議題6 2010-2012 ビジネスプラン> 本議題では、IA および二国間の 2010~2012 年のビジネスプランについて議論された。主 な論点は以下のとおりである。 統合版ビジネスプラン 第 60 回基金執行委員会に提出されたビジネスプランの総額は、2010 年は 1 億 1,180 万 ドル、2011 年は 2 億 3,140 万ドルである。 ODS 破壊活動 ODS 破壊については、新規デモプロジェクト準備のビジネスプランへの掲載や削減見込 量の掲載のない提案について不採択にすべきか否かにつき審議が行われ、主に以下の事 項が決定された。 - 今次会合に提出されたビジネスプランから、①決定 59/10 で要求される活動、②59 回基金執行委員会で考慮された国々への要求、を除いて、ODS 破壊活動の新規プロジ ェクト準備を削除する。 - 中国の ODS 破壊については、UNIDO 分:938,209 ドル(100 ODP トン)、日本分: 961,791 ドル(100 ODP トン)に修正する。 日本の二国間プロジェクト(経済産業省案件)である、中国における ODS 破壊プロジ ェクトについては、ビジネスプランに掲載されていた金額が ODS 破壊への基金供与の基 準を超えている旨を事務局から指摘されていた。これに対し、日本からは、中国政府お よび UNIDO に異存が無ければ減額することが可能である旨を事前に事務局に伝達してい たところ、中国政府、UNIDO もこれに同意したため、特段の議論もなく修正されることと なった。 ※参考:決定 59/10 UNIDO に対し、アフリカと西アジアにおける 2 つの ODS 破壊パイロットプロジェクトの準 備を、2010 年のビジネスプランに載せるよう要請する。 HCFC HCFC 削減対策については、2010 年~2012 年のビジネスプランに 17 件のデモプロジェ クトが提案されたが、2011 年以降のデモプロジェクト提案を認めるべきか等について審 議が行われ、2011 年以降はデモプロジェクトの提案を認めない旨が決定された。 また、今次会合で HCFC のクライテリアが決定されたことから、それを反映した形で、 IA と二国間は次回の基金執行委員会にビジネスプランを再提出することとなった。 (決定 60/5) 5 <議題8 プロジェクト提案> (a)プロジェクトレビューの間に特定された政策課題 ビジネスプランに含まれていない又は遵守を要求しないプロジェクト 米国より、ビジネスプランに掲載されることなく提出されたプロジェクトについて、 基金執行委員会のメンバーにより事前に当該プロジェクトの妥当性を検証する機会が無 かったことが問題として指摘され、①ビジネスプランに掲載されていない活動、②ビジ ネスプランの額を超える活動、③必ずしも遵守達成に帰結しない活動については、プロ ジェクト承認申請を延期することが提案された。一方カナダからは、案件ごとに固有の 事情が考慮されるべきであり、例えば、ODS の削減スケジュール期限が迫っている場合に は、春の基金執行委員会でビジネスプランとプロジェクト申請を同時に提出し、速やか に実施に移すことが必要な場合もあり得る旨発言がなされた。 これについては、小グループ内での議論を経て、以下の点が決定された。 - 事務局は、以前に承認された多年度合意および基金執行委員会の他の決定を反映し て、その年の最初の会合に提出された活動と一致するよう、自動的にビジネスプラ ンを調整すること。 - 遵守を要求しない新しい活動および事前に基金執行委員会において考慮されなかっ た活動が年初の基金執行委員会に提出された場合は、同会合においてビジネスプラ ンの検討が終了するまで(次回の基金執行委員会以降に)延期すること。 (決定 60/9) 500 万ドルを超える HCFC 削減プロジェクト UNIDO から提出されたパキスタンの家庭用・業務用冷蔵庫メーカー5 社の HCFC から HC への転換プロジェクトについて、プロジェクトコストが 625 万ドル超であったため、 「500 万ドルを超えるプロジェクト申請は 12 週間前に提出(決定 20/7)」すべきところ、8 週 間前に提出がなされた。事務局は UNIDO へ 61 回基金執行委員会での再提出を要請したと ころ、UNIDO よりプロジェクトを 2 件に分割して、それぞれ 500 万ドル以下のプロジェク トとして再度申請された。事務局はレビューを行ったが、通常のプロジェクトに比べて 多くの手間を要することとなった。これを受けて、関連するセクター・サブセクターを 網羅する 1 つのプロジェクトのみ提出すること、および基金執行委員会の 12 週間前まで に提出することが決定された。 (決定 60/12) 家庭用および業務用冷蔵庫メーカーの HCFC 削減プロジェクト 家庭用・業務用冷蔵企業で使用されている CFC-11 の 79%はフォームとして使用される が、冷蔵セクターとして費用対効果の閾値が計算されてきたが、HCFC ベースの家庭用冷 蔵庫で使用される HCFC と業務用冷蔵庫で使用される HFC134a は、フォームとして使用さ れている。このため、事務局より、冷蔵庫転換 PJ については、硬質断熱材の転換として 6 費用対効果の閾値を計算すべきであり、今後のプロジェクトや HPMP の中で費用対効果の 閾値の情報を集めるよう要請された。 これに対し、5 条国からは、こうした変更は業界に負担を強いるものであり同意が出来 ないとの意見が表明された。また業務用機器に関しては、HCFC は冷媒用として使われる こともあり、その際には従来の冷蔵セクターの数字を使用すべきとの意見も出た。この ため非公式の議論を経て、この問題は家庭用冷蔵庫のみに適用すること、および以下の 点を決定した。 - 家庭用冷蔵庫製造企業における(断熱剤)HCFC 削減プロジェクトは、フォームセク ターとして考えるべき。 - HCFC 削減プロジェクトや HPMP において十分な情報が集まった際には、将来の基金執 行委員会においてコスト効果閾値を決定する。 (決定 60/13) (c)ワークプログラム UNDP XPS 発泡転換プロジェクト準備は、HCFC142b 及び HCFC22 をギ酸メチル及び CO2 に転換 するプロジェクトである。XPS 発泡は 10 年前からすでに HC 技術が確立しており、ギ酸メ チル(低沸点の引火性物質)のボード用としての使用は必要とされない。このため、日 本(経済産業省)から「ギ酸メチルは、可燃性があること、CO2 と混合することで断熱性 能が著しく低下し断熱材として XPS 発泡を用いる意味がなくなること等から日本では採 用されていない」旨を説明した。さらに「先進国で使用されていない技術を基金プロジ ェクトにすることに疑問があること、UNDP は、HC への転換は多額の投資が必要となり中 小企業向けではないとしているが、日本では必要最低限の防爆対策を行うことで高額な 設備投資を行わずに HC への転換を果たしていること、本プロジェクトについては、代替 技術について再考の余地がある」旨の発言を行った。一方、カナダからはギ酸メチルは 新規性のあるプロジェクトである旨の発言があり、その他の国からは特段の反対意見も なく、本プロジェクト準備は承認された。 洗浄デモプロジェクト準備については、日本の二国間プロジェクトに繋がるものであ ることから、日本(経済産業省)より本プロジェクト準備を支持する旨発言したが、カ ナダから、中国はデモプロジェクト件数が多過ぎ、洗浄セクターは HCFC 消費量が少ない ため緊急性がないとの発言があり、他の意見もなく本提案はいったん不採択となった。 その後、議場外で日本よりカナダに対し、本提案が後に日本の二国間プロジェクトに繋 がるものであること等を説明。元々あった 2 件の洗浄プロジェクトを 1 件に限ることを 条件にカナダの合意を取り付け、本会議で採択された。 (決定 60/20) 7 (d)投資プロジェクト 日本が提案したコロンビアにおけるスプレー発泡転換デモプロジェクトについては、カ ナダ(オーストラリア)から、 「デモプロジェクト終了後の技術移転について不透明なので、 何か情報があれば教えて欲しい」旨の発言があった。これに対し日本からは、「デモプロジ ェクトの結果および今後のアキレス社の戦略次第であるが、追加の技術移転料、秘密保持 契約等を条件に他のシステムハウスや他国へと超臨界 CO2 の技術移転をする可能性があ る。」旨の発言を行い、他国からはその他の意見もなく承認された。(コロンビアのプロジ ェクトの詳細については、「2.今年度提案したプロジェクト」を参照。) (決定 60/29) その他の投資プロジェクトの承認状況は以下の通り。 ・バングラデシュ:CFC 国家 削減計画(第 5、6、7 トランシェ):承認 ・チリ:臭化メチル国家削減計画(第 1 トランシェ):承認 ・中国:HCFC22 転換(冷媒)2 件(①22→32、②22→アンモニア/CO2):承認 ・コロンビア:HCFC-141b、22 転換(家庭用冷蔵庫の断熱材・冷媒転換、HC へ):承認 ・クロアチア:HCFC141b 転換(フォーム、水、HFC365/227 へ):承認 ・エジプト:国家 CFC 削減計画(第 4、5 トランシェ):承認 ・ヨルダン:HCFC22、HCFC141b 転換(エアコンメーカー):承認 ・モルディブ:HPMP(第 1 トランシェ):承認 ・パキスタン:HCFC141b 転換(フォーム)2 件:承認 ・マケドニア:HPMP(第 1 トランシェ):承認 ・メキシコ:ODS 破壊デモプロ(フェーズ 1):61 回基金執行委員会に延期(本プロジェ クトは、モントリオール議定書の基金提供の有資格性の観点から検討すべき点が多い ため、特別融資ファシリティの議論を考慮しながら、他の資金の活用の可能性も含め て次回基金執行委員会で検討することとなった。) ・トルコ:XPS 発泡剤の転換(HFO1234ze):承認 <議題9 HCFC> (b)HCFC に関する課題:カットオフ期日、IOC のレベル、サービスセクターへの資金提供、 ICC 本議題は、過去数回に渡る基金執行委員会において議論されたが、基金供与の増額を望 む 5 条国と、それに反対する非 5 条国の間の溝が埋らず、結論が出ていなかった。今次会 合では、前回に引き続きコンタクトグループ内で議論が行われた。今回は米国の提案によ り、冷蔵サービスセクターの議論から始まり、HCFC プロジェクトの適格な増加費用、IOC の順に議論が行われ、5 条国内、非 5 条国内での数回の議論を経て、最終的に以下の点を決 8 定した。 ・カットオフ期日 2007 年 9 月 21 以降に設置された製造機器へのプロジェクトは考慮しない。 ・二度目の転換 下記の原則を適用すること、および 2013 年の最後の会合に先立っては、基金執行委 員会はレビューしないこと。 - 二度目の転換の増加費用に対する基金の全額供与は、2020 年の 35%削減にとって 必要であると考慮された場合、および/もしくは、最もコスト効果の高いプロジェ クトに限り支給される。 - 上記以外の二度目の転換への基金供与は、設置、試験、トレーニングに限定される。 ・HCFC 消費の削減量の起点 - 評価ベースラインに先立ち、HCFC 投資プロジェクト若しくは HPMP のうちいずれか を基金執行委員会での検討のため最初に提出する 5 条国のために、HCFC 消費量に係 る削減総量の起点を設定すること。 - HCFC 消費量の削減総量の起点を計算するに当たり、HPMP 提出時のモントリオール 議定書第 7 条の下での最新の HCFC 消費量報告、又は/若しくは投資プロジェクト 及び 2009 年と 2010 年の平均予測消費量のいずれを採用するかを 5 条国が選択でき るようにすること。 - 第 7 条データに基づいて計算された HCFC ベースラインが 2009 年と 2010 年の平均 予測消費量に基づいて計算された起点が異なる場合は、HCFC 消費量の削減総量の合 意起点を調整すること。 ・HCFC プロジェクトの適格な増加費用 2013 年のレビューを前提として、2013 年と 2015 年の HCFC 削減遵守目標の達成に向 けた、HPMP 第一段階のための HCFC フェーズアウトプロジェクトの適格な増加費用に関 して、下記の原則を適用すること。 - フォーム、冷蔵、エアコン製造セクターにおける HCFC 削減プロジェクトを準備す る際、二国間及び実施機関はガイドとして UNEP/OzL.Pro/ExCom/55/47 の技術情報 を使用すること。 - CFC 削減プロジェクトで使用される現在の費用対効果の閾値(16 回基金執行委員会 の最終リポートのパラグラフ 32)は、kg で計測され、HPMP 第一段階の開発及び実 施期間中にガイドラインとして使用されること。 - プロジェクトの目的を変えない限り、ICC の 20%を限度として、ICC から IOC への 変更認める。変更の際には、基金執行委員会に報告する。 - 上記費用対効果の閾値の 25%の最大減までの基金拠出は、低 GWP の導入に必要とさ れる場合に提供される。 ・フォームセクターでの HCFC 削減 9 - フォ ームセ クタ ーの IOC は、 HCFC-141b: US $1.60/metric kg、 HCFC-142b: US $1.40/metric kg で考慮される。 - システムハウスに関連したグループプロジェクトでは、IOC は削減されるすべての 下流のフォーム企業の総 HCFC 消費量をベースに計算される。 - 低 GWP の代替技術に際しては、基金執行委員会は上記 IOC を超える額について、ケ ース・バイ・ケースで判断する。 ・冷蔵およびエアコン製造セクターでの HCFC 削減 - 冷蔵およびエアコン製造セクターの IOC は、US$6.30/metric kg で考慮される。 - 商業冷蔵庫の製造セクターの IOC は、US$3.80/metric kg で考慮される。 - 決定 31/45 の通り、冷蔵組立業、設置業、注入業には IOC は考慮されない。 ※参考:決定 31/45 ・ 冷蔵組立業、設置業、注入業のサブセクターのためのガイドラインとして 18 ヵ月の期 間を採用する。 ・ 増加費用の適格性を判断するために、ガイドライン 3、4 の下で提出されたプロジェク トを精査する。 ・ 経験を得るために、ケース・バイ・ケースでプロジェクトを考慮する。 ・冷蔵サービスセクターでの HCFC 削減 - 360MT までの HCFC 消費国は、HPMP に最低限以下を含めなくてはならない。 a 冷媒サービスセクターでは、少なくとも 2013 年のフリーズ及び 2015 年に 10% の削減、もし可能ならば 2020 年までに 35%削減を、更なる基金を要求すること なく実現する責任。これには、削減遵守及び適切な撤廃活動の支援に必要なら ば、HCFC ベースの機材の輸入を制限する国によるコミットメントを含めること。 b HPMP が要求される基金トランシェの期限までに、前年に冷蔵サービスセクター において実施した活動の他、次回トランシェ活動の実施に関する詳細かつ包括 的な行動計画についての義務的報告。 c 主要ステークホルダーの他、適切なリード機関及び協力機関の役割と責任の説明。 - 360MT までの HCFC 消費国は、基金水準が 2013 年及び 2015 年、可能ならば 2020 年 の削減目標を達成するのに必要であることを引き続き証明する必要があるプロジ ェクト提案であるという理解の下で、以下の表に従い基金が供与される。 Consumption (metric tonnes)* Funding up to 2015 (US$) Funding up to 2020 (US$) 0 <15 51,700 164,500 15 <40 66,000 210,000 40 <80 88,000 280,000 80 <120 99,000 315,000 120 <160 104,500 332,500 160 <200 110,000 350,000 10 200 <320 176,000 560,000 320 <360 198,000 630,000 - 360MT までの HCFC 消費で上表の基金を受け取る 5 条国は、可能な限り最もスムーズ に HCFC の撤廃を進めるため、プロジェクト履行中に生じるかもしれない特定のニー ズに対処するべく冷蔵サービスセクターの下で資金使用の柔軟性を持たせる。 - 360MT を超える HCFC 消費の 5 条国は、まず製造セクターでの消費に対処すべきであ る。しかし、冷蔵サービスセクターへの支援が目標遵守にとって必要性が高いと証 明される場合には、トレーニングのような活動にも US$4.50/metric kg を基準とし て基金が供与され、この削減量はスターティングポイントから差し引かれる。 ・エアゾール、消火器、ソルベントにおける HCFC 削減 エアゾール、消火器、洗浄セクターにおける HCFC 削減プロジェクトのための ICC 及び IOC の適格性は、ケース・バイ・ケースで考慮される。 (決定 60/44) <議題 11 気候変動への影響の指標(MCII)に関連するインセンティブおよび特別融資ファ シリティ(SFF)> MCII については、事務局より、MCII の採用を検討する目的は、HCFC 削減技術のうち、気 候変動等環境への付随的影響を最小化する技術を優先化することにあり、5 条国が HPMP を 計画する段階において、気候変動へのインパクトがより小さい代替技術を採用するための インセンティブを提供し、利用可能な選択肢の幅を広げることが重要である旨説明がなさ れた。メンバー国からは、まず MCII についての理解をより深める必要があり、MCII が採用 されているプロジェクトであるヨルダン及び中国における HCFC 関連プロジェクト等が実施 された後に、改めて検討がなされるべきとの見解で一致し、これ以上、特段の議論は行われ なかった。 SFF に関しては、コンタクトグループでの議論を経て、カナダにより決定案が準備された が、資金の使途等に関してメンバーの見解が分かれたため一致した結論が得られなかった。 メンバー国の見解の主要な相違点として、①温室効果ガスの性質をもつ ODS の破壊により カーボン・クレジットを取得するなど、議定書の遵守に結びつかない活動に拠出すべきか 否か、②SFF のもとで共同出資を認めるか否か、③IA の活動には追加的な資金動員のため の活動も含まれるのか、またその場合、市場の状況調査をどのように行うのか、などであ る。 (決定 60/48) 11 <その他の議題>中国における HCFC 削減(世界銀行のプレゼンテーション) 会議場外において、世界銀行の Steeve Gorman 氏より、中国における HCFC 削減プロジェ クトの将来に関する提言についてプレゼンテーションが行われ、中国およびドナー国から カナダ、フランス、米国、スイス、日本が参加した。 世界銀行より、中国における HCFC 削減プロジェクトを一括して計画し、実施することに よって、低コストでの削減を実現する旨提案する、中国は 5 条該当国全体での HCFC 生産量 の約 80%、HCFC 消費量の約 50%を占め、同国での削減は、モントリオール議定書及び MLF にとって大きなインパクトを持つ、HCFC 削減プロセスは、コスト・ガイドラインが決定され た後に始動する見通しであるが、中国でのプロジェクト実施は先行経験として他国での活 動につながるという意義を持つ、コスト見積もりは、生産部門における削減(81,298 メト リック・トン(MT))に関しては 3 億 1,500 万ドル、消費部門(40,139MT)に関して 2 億 1,700 万ドルである、課題としては、市場経済体制への移行にともない、中国国内では以前 よりも民間企業との協議に時間を要する、といった点があげられた。 日本を含むドナー国からの反応は、中国での HCFC 削減が成果を上げない限り他国でもう まくいかないことは明らかであること、低コストでの削減が可能であることを理由として、 概ね肯定的であった。 1-2-2 第 61 回基金執行委員会(モントリオール) 日程 2010 年 7 月 5 日~7 月 9 日 場所 モントリオール(カナダ) 会場 International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場 (1)全体所感 前回の基金執行委員会において、長年の懸案事項であった HCFC 削減のクライテリアが決 定されたことから、今次会合では特段の緊急性のある議題はなかった。また、前回基金執 行委員会以降、決定された HCFC 削減のクライテリアを使用してプロジェクトを準備する十 分な時間がないことから、HCFC 削減のプロジェクト提案も少なく、全体として小休止の感 がある会合となった。 12 (2)主要議題 <議題6 2010-2014 ビジネスプラン> 本議題では、前回の基金執行委員会で決定された HCFC 削減のクライテリアを反映して再 提出された、IA および二国間のビジネスプランについて議論された。主な論点は以下のと おりである。 統合版ビジネスプラン 事務局からは、 「基金執行委員会の決定を完全に履行するビジネスプランのみについて、 基金執行委員会への提出を認める旨決定すること」の決議案が提案されたが、「完全に履 行するビジネスプランのみ」という文言について、各国から「ビジネスプランの採否を 決定する場は基金執行委員会であり、事務局が事前に機械的に判断すべきではない」旨 の発言が相次いだ。本件はベルギーを議長とするコンタクトグループでの議論の結果、 以下が決定された。 - HCFC に関するコストと削減 ODP 量は参考に過ぎず、プロジェクト提案を制限するも のではないとの理解の下、会議文書(UNEP/OzL.Pro/ExCom/61/7)をテークノートする こと。 - 次回の基金執行委員会において、2013 年のフリーズ目標に合致する基金活動を検討 すること。 - ビジネスプランに掲載された削減 ODP 量が、スターティングポイントを超える国は、 削減 ODP 量を引き下げること。 (決定 61/5) 実施機関のビジネスプラン IA のビジネスプランについて、米国より「遵守を要求されない活動は取り除くべき」 との発言があり、議論の結果、リソース活用と ODS 破壊を除く遵守を要求されない活動 はビジネスプランから取り除かれることとなった。 (決定 61/7~10) <議題8 プロジェクト提案> (b)二国間協力 イタリアが提案したモントリオール基金以外のリソース活用スタディについては、米国 やスイス、日本から慎重な意見が表明され、次回基金執行委員会に延期となった。日本の デモンストレーションプロジェクト準備(ナイジェリア)については、特段の議論もなく 承認された。(ナイジェリアのプロジェクトの詳細については、「2.今年度提案したプロ ジェクト」を参照。) 13 (決定 61/21、22) (d)投資プロジェクト 投資プロジェクトの承認状況は以下の通り ・ドミニカ(商業冷蔵庫の断熱材 HCFC141b 転換):延期 ・北朝鮮(CTC 削減):64 回基金執行委員会まで延期 ・アルゼンチン(エアコン製造 HCFC22 転換):承認 ・中国(エアコン製造 HCFC22 転換デモプロジェクト):承認 ・エクアドル(国別 CFC 削減計画):承認 ・北朝鮮(NPP):64 回基金執行委員会まで延期 ・チュニジア(国別 ODS 削減計画):承認 ・カンボジア(HPMP):承認 ・クロアチア(HPMP):承認 ・ガーナ(HPMP):承認 <議題9 IS 更新のための資金供与オプションおよびフォーマット> IS については、59 回及び 60 回基金執行委員会において、(a)2010 年以降、2011 年 12 月 まで支援を続けること(決定 60/10)、(b)5 条国にスタンドアローンもしくは HPMP の中で IS プロジェクト提出を許可することが決定された(決定 59/47)。 これを受け、事務局からは、 - 全ての IS プロジェクトに対し現在の水準の支援を維持することを検討するとともに、 61 回 基金執行委員会から 2 年間は IS プロジェクトのリニューアルに合意すること - AnnexⅤにある IS リニューアルの修正版フォーマットを承認するとともに、62 回基金 執行委員会から二国間および実施機関は修正版フォーマットを使用すること が提案された。 これに対し、日本、米国、カナダ等の非 5 条国側からは、 「事務局の提案は大筋で同意で きるが、IS は永続的ではないので、NOU の機能を強化し、MLF から NOU へ機能を移管してい くことが望ましい」旨の発言があった。一方 5 条国側からは、 「IS はモントリオール議定書 のキーファクターであり、縮小することは同意できない」 「途上国政府は限られた予算で運 営されていることが多く IS は重要であり、金額削減は受け入れられない」との発言が相次 ぎ、結果として事務局提案が承認された。 (決定 61/43) 14 <議題 10 HCFC> (d)プレブレンド・フォーム・ケミカルに含まれる HCFC 消費 第 30 会公開作業部会において、印より、ポリオールに発泡剤の HCFC-141b を事前に混合 したものを過去の TEAP や MOP のガイドラインに沿って規制対象にすべきとの提案がなされ、 61 回基金執行委員会にて引き続き議論することとなったことを受け、事務局より、輸入さ れたポリオールに関するディスカッション・ペーパー(UNEP/OzL.Pro/ExCom/61/53)が紹介 された。それによると、HCFC141b が既にブレンドされた状態で輸入されるポリオールにつ いて、実際は消費量にカウントしている国、していない国があり、輸出入双方でカウント した場合、消費量のダブルカウントの可能性があることなどが指摘された。 この問題は、HCFC 削減への基金供与額の変更に繋がる可能性があるだけでなく、米国を 始め非 5 条国側からは、 「今になっての変更は、既存の国内法規制の変更を強いるものであ り、受け入れられない」旨の発言が相次いだ。一方、インドは「ポリオールは原料であり、 モントリオール議定書の対象物質である」との姿勢を崩さなかった。この問題は、コンタ クトグループ内で米国からの案を中心に議論され、最終的には基金供与されることとなっ た。 (決定 61/47) <その他の議題> 今次基金執行委員会では、緊急性の高い議題がなかったことから、IA およびイタリアか ら MLF 以外の資金を利用した Resource Mobilazation についてのプレゼンテーションがあ った。内容としては、フロン削減と地球温暖化防止の双方にメリットをもたらすために、 ODS 削減活動や ODS 破壊活動において、CDM などモントリオール基金以外の資金調達の可能 性や NAMAs(国内における適切な緩和行動)と HPMP とのシナジー効果創出について紹介さ れた。 また、中国および世界銀行からは、中国の HCFC 削減についてのプレゼンテーションがあ った。中国からは、中国の経済成長率は約 10%であるが、HCFC 消費は年間 10%以上増加し ているため、CFC 削減時と比べて大変な努力が必要なこと、代替技術選定にあたっては、技 術の効率性、環境、安全性、コスト、セクターと企業の特性に配慮することが必要である との意見が表明された。また世界銀行からは、フォームセクターの HCFC 削減のためにかか る総費用は約 7 億ドルであり、このうち約 4 億ドルをモントリオール基金で充当する予定 であること、2010 年に HPMP の第 1 フェーズ、2013 年に第 2 フェーズを提出予定であるこ と等が紹介された。 15 1-2-3 第 62 回基金執行委員会(モントリオール) 日程 2010 年 11 月 29 日~12 月 3 日 場所 モントリオール(カナダ) 会場 International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場 (1)全体所感 2010 年 4 月の第 60 回基金執行委員会にて、HCFC 削減のクライテリアが決定されたこと から、今次会合では多数の HPMP の提案があり、議題の中心は HPMP の審議となった。特に、 世界最大の HCFC 消費国である中国から複数のセクタープランが提出されたことから、非 5 条国の関心は中国への基金供与に集中し、その他のデモプロジェクト等は、十分な審議も されないまま、先送りとなった。 (2)主要議題 <議題7 プロジェクト提案> (a)プロジェクトレビューの間に特定された政策課題 10%ベースラインを超える HCFC 消費 非低消費国の HCFC 消費量が、経済成長のため当初の見積りより増加する可能性があ り、ベースラインから 10%を超える HCFC 削減に対する基金供与については、ケース・バ イ・ケースで対応すべきか検討するよう事務局から求められた。 これについては、ドナー国側からは、限られた基金の中でベースラインから 10%を超 える範囲への基金供与は慎重にすべきとの意見が表明されたが、5 条国からはケース・ バイ・ケースで対応すべきとの意見が相次いだ。この議題については、数回に渡るコン タクトグループや米国・インドの二国間でも議論され、最終的には米国より議場におい て、個別プロジェクトごとにケース・バイ・ケースで検討することとしたい旨提案され、 了承された。 (決定 62/10) 低消費国の 2020 年以降の HCFC 削減加速と HPMP 基金供与の増加 第 60 回基金執行委員会において、HCFC 削減を加速する強い意志を持つ低消費国につ いては、2020 年以降の基金供与の増額についてケース・バイ・ケースで対応していくこ とが決定された。今回、ブータン、ネパール、スリランカ、キルギスタンの HPMP がこ れに該当しており、これらの国に基金供与増加を認めるか、またいくら増額するかの検 討が求められた。これに対し、サウジアラビアからは追加資金の必要性が表明されたが、 スイスや米国などドナー国からは限られた基金の中で、基金追加は慎重にすべきとの発 16 言があり、HCFC 全廃のための基金総額は 35%削減の見通しが立った段階で推定し供与 されることとなった。 (決定 62/10) 低消費国の HPMP における HCFC 消費量の多さ HCFC 消費量の増加により、これまで低消費国に分類されていた国(ブルキナファソ、 チャド、ガボン、トーゴ)が低消費国の基準を超えることになった。このため、これら の国の扱いを検討するよう求められた。カナダ、スイス、ベルギー、米国等の意見に従 って、HPMP の第 1 ステージにおいてはケース・バイ・ケースで対応し、その結果を見て 再度検討する旨が決定された。 (決定 62/11) HCFC の優先付け 決定 59/11 において、HCFC141b を優先的に削減することが決定したが、今回提案され た HPMP やプロジェクトでは、HCFC22(冷蔵、XPS 発泡)、HCFC142b(XPS 発泡)の削減 も多く含まれている。これに対し、スイスからは ODP だけではなく他の要素も考慮して 柔軟に対応すべき、米国からは HCFC141b を優先すべきと、ドナー国間でも意見が分か れた。小グループでの議論の結果、HCFC141b に先立って HCFC22 や HCFC142b を削減する 必要性が明確に示された場合のみ、削減を考慮することが決定された。 (決定 62/12) HPMP の一部としての IS への基金供与 5 条国が IS を HPMP に含める際には、(a)多年度合意に基づいて成果ベースで基金供与 されるべきか、(b)多年度合意から除外して成果目標に関わらず基金供与されるべきか、 事務局から検討を要請された。これに対し、ドナー国からは(a)を支持、5 条国からは(b) を支持する発言が相次いだ。(a)を選択した場合でも、基金供与されないケースはほと んどないことから、成果ベースで基金供与されることが決定された。 (決定 62/15) 二度目の転換の正当性のガイダンス 当議題はカナダから議場にて提案されたもので、二度目の転換を含むプロジェクト提 案は、HCFC 消費割合の各種情報、他の製造企業とのコスト効果の比較情報を含むべきと の議決案が提案され、採択された。 (決定 62/16) (f)投資プロジェクト 日本のプロジェクト (プロジェクトの詳細は「2.今年度提案したプロジェクト」参照) ・ナイジェリア:製氷機転換デモプロジェクト ナイジェリアの HPMP と一緒にコンタクトグループの中で議論された。日本(経済産 17 業省)から、本プロジェクトの重要性について発言したが、米国やカナダから、これま での MLF のプロジェクトとは違ったアプローチであり、ナイジェリアの HCFC 削減に具 体的に貢献するものではないことから、次回以降に MLF の基準に合うよう変更の上、再 提出することを提案され、日本もこれに同意した。 (決定 62/38) ・フィリピン:フォームセクタープラン スイス、サウジアラビアから、フィリピン企業が超臨界 CO2 を選択した理由を知りた い旨の発言があり、UNIDO から、超臨界 CO2 は日本で 10 年以上に渡り使用されている技 術であり、フィリピン企業が日本に見学に行った上で採用を決定した旨の説明があった。 スイス、サウジアラビアもこれに納得し、承認された。 (決定 62/34) ・サウジアラビア:XPS 発泡転換投資プロジェクト コスト効果が高いプロジェクトであることから、カナダやグラナダから支持する旨の 発言があり、承認された。 (決定 62/35) ・中国:医療機器の洗浄デモプロジェクト 下記「中国のプロジェクト」参照。 ・中国 XPS 発泡転換デモプロジェクト 下記「中国のプロジェクト」参照。 中国のプロジェクト 中国については、下表のプロジェクトが提案され、基金供与額が多額であることから、 コンタクトグループの中で、セクタープランを中心に議論された。ドナー国側からは、 中国国内の業界事情、コスト効果の高い技術の選択、削減を優先するセクター等につい て質問が相次いだ。中国側は業界関係者や大学関係者も出席し、2013 年のフリーズ、2015 年の 10%削減のためには、今次基金執行委員会で採択される必要があることを強調した。 コンタクトグループの中の議論は最終日の午後まで続けられたが、情報が不足している として、ドナー国(特に米国、カナダ)の同意が得られず、日本が提案したデモプロジ ェクトも含めて先送りとなった。 (決定 62/60) プロジェクト概要 実施機関 HPMP:オーバーアーチ戦略 UNDP フォームセクタープラン WB XPS 発泡セクタープラン Germany/UNIDO CO2(ギ酸メチル混合)への転換デモプロジェクト UNDP ブタンへの転換デモプロジェクト UNIDO/Japan 商用冷蔵庫・エアコンセクタープラン 18 UNDP ルームエアコン製造セクターHCFC22 削減計画 UNIDO 医療機器洗浄デモプロジェクト UNDP/Japan その他のプロジェクト その他のプロジェクトの承認状況は以下の通り ・非 HCFC 投資プロジェクト - イラク(臭化メチル代替技術支援):承認 - キューバ(ODS 破壊):承認 - ガーナ(ODS 破壊):延期 - インド(CFC 生産削減) :延期 ・HCFC スタンドアローン・プロジェクト - アルジェリア(冷蔵設備断熱材の HCFC 転換):承認 - バングラデシュ(冷蔵設備断熱材の HCFC 転換):承認 - エジプト(フォームプロジェクト多数):承認 - モロッコ(冷蔵設備断熱材の HCFC 転換):承認 - スーダン(冷蔵設備断熱材の HCFC 転換アンブレラプロジェクト):承認 - トルコ(サンドウィッチパネル、XPS 発泡の HCFC 転換アンブレラプロジェクト) :承 認 - シリア(エアコン製造および断熱パネルの HCFC 転換プロジェクト):承認 ・低消費国の HPMP - アルメリア:承認 - ベーリーズ:承認 - ドミニカ:承認 - グレナダ:承認 - マダガスカル:承認 - マラウィ:承認 - セルビア:承認 - トルクメニスタン:承認 - ブルキナファソ:承認 - チャド:承認 - ガボン:承認 - トーゴ:承認 - ブータン:延期 - ネパール:承認 - スリランカ:承認 19 ・非低消費国の HPMP - コロンビア:承認 - インドネシア:延期 - イラン:延期 - ナイジェリア:承認 - パキスタン:承認 20 2.今年度提案したプロジェクト 2-1.2010-12 年のビジネスプラン 2-1-1.第 60 回基金執行委員会に提出したビジネスプラン 第 60 回基金執行委員会(2010 年 4 月開催)において、経済産業省が提出した 2010-12 年のビジネスプランは以下の通りである。 Country China Type Chemical Sector/ Value( Value( Value( Sub sector $000) $000) $000) in 2010 in 2011 in 2012 1,000 1,000 1,000 Demonstration/ HCFC142b Foam/XPS Investment HCFC22 China Demonstration CFC Destruction 182 1,000 1,000 China Demonstration/ HCFC141b Solvent 500 500 600 HCFC141b Foam/PU spray 500 582 200 Demonstration CFC Destruction 600 Nigeria investment HCFC141b Foam/PU spray 800 Nigeria Demonstration HCFC22 Refrigeration/ 800 Investment Colombia Demonstration/ Investment African region Air-conditioning Thailand investment HCFC22 Refrigeration/ 500 Air-conditioning Thailand investment HCFC141b Solvent India investment HCFC142b 40 300 500 Foam/XPS 1,000 791 Foam/PU spray 1,000 791 HCFC22 India investment HCFC141b 21 Mexico investment HCFC141b Solvent 500 2-1-2.第 61 回基金執行委員会に提出したビジネスプラン 第 60 回基金執行委員会において HCFC 削減のクライテリアが決定されたことから、それ を反映した形で IA および二国間は、第 61 回基金執行委員会(2010 年 7 月開催)にビジネ スプランを再提出することとなった。 再提出したビジネスプラン(経済産業省分)は以下の通りである。 Country China Type Chemical Sector/ Value( Value( Value( Sub sector $000) $000) $000) in 2010 in 2011 in 2012 1,000 1,000 1,000 Demonstration/ HCFC142b Foam/XPS Investment HCFC22 China Demonstration CFC Destruction China Demonstration/ HCFC141b Solvent 500 510 600 HCFC141b Foam/PU spray 499 500 600 Demonstration CFC Destruction 600 Nigeria investment HCFC141b Foam/PU spray Nigeria Demonstration HCFC22 Refrigeration/ 950 Investment Colombia Demonstration/ Investment African region 800 827 Air-conditioning Thailand investment HCFC22 Refrigeration/ 500 Air-conditioning Thailand investment HCFC141b Solvent 300 500 Thailand investment HCFC141b Foam 300 500 Thailand HPMP 0 0 0 22 India investment HCFC142b Foam/XPS 800 800 800 800 HCFC22 India investment HCFC141b Foam/PU spray Mexico investment HCFC141b Solvent 23 500 500 2-2.コロンビア(スプレー発泡プロジェクト) 2-2-1.プロジェクトの背景と概要 TEAP のメンバーであるコロンビア人のフォーム発泡の専門家より、アキレス社の超臨界 CO2 技術を使用したコロンビアのスプレー発泡企業 Espumlatex 社の HCFC 転換を進めるプロ ジェクトの要請があり、アキレス社もこれに同意したため、2009 年 11 月の第 59 回基金執 行委員会に向けて、デモンストレーションプロジェクトの提案準備を行うこととなった。 2-2-2.第 60 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)第 59 回基金執行委員会へのプロジェクト提出 上記専門家、経済産業省、旭リサーチセンターにて、プロジェクト提案書を作成し、基 金事務局に提出したが、基金事務局より、決定 57/6 に掲載された以外のデモンストレーシ ョンプロジェクトは採択しない旨の連絡があり、第 59 回基金執行委員会への本プロジェク トの提案は見送ることとなった。 <決定 57/6> (f)IA のビジネスプランから以下のものを取り除く (ⅰ)すべての MDI 戦略 (ⅱ)すべての HCFC 生産部門 (ⅲ)以下を除く全ての HCFC フォームデモンストレーションプロジェクト ブラジル(UNDP) 中国(世界銀行)×3 プロジェクト エジプト(UNDP) (ⅳ)すべての HCFC 冷蔵デモンストレーションプロジェクト (ヨルダンのプロジェクトは投資プロジェクトとして再分類) (ⅴ)すべてのソルベントデモンストレーションプロジェクト (2)第 59 回基金執行委員会での議論 第 60 回基金執行委員会に本プロジェクトの提案を可能とするべく、第 59 回基金執行委 員会決定において、決定 57/6 について経済産業省より以下の発言を行い、他の国からも同 意が得られたため、コロンビアにおけるデモンストレーションプロジェクトについては、 2010 年ビジネスプランに掲載の上、次回基金執行委員会に再提出することについて了承が 得られた。 ・ 2015 年の HCFC10%削減達成に向けて早急な対応が必要である。 24 ・ フォームの HCFC デモンストレーションプロジェクトについては第 57 回基金執行委員会 において、5 件を除き 2009 年のビジネスプランへの掲載が不採択となったが、5 条国の HCFC 削減義務の達成に役立つ可能性のある新たな技術のデモンストレーションを行う ことまで制限した訳ではない。 ・ デモンストレーションの目的は 2013 年フリーズ及び 2015 年 10%削減の達成にあり、5 条国への導入やコストがリーズナブルな技術があるならば、5 条国の HCFC 削減義務達成 を加速させるためにも、当該デモンストレーションの早期実施を図ることが極めて重要。 ・ 先進国で商業利用が進んでいる低 GWP 代替技術については、積極的に 5 条国への導入を 検討するべき。 ・ よって基金執行委員会には、2010 年以降もデモンストレーションプロジェクトの提案を 受け入れ審議対象とすることを求める。 ・ 必要に応じて新たなデモンストレーションプロジェクトのガイドラインについても議 論を進めていく必要がある。 <決定 59/9> 二国間と IA の 2010 年のビジネスプランに、代替・新技術をデモンストレーションし、決 定 55/43 で要求される情報を含む HCFC プロジェクトの掲載を認める。それらは、21 回 MOP の決定 XXI/9 で要求される、5 条国の高気温でのエアコンと冷蔵セクターの低 GWP 代替技術 の効果を決めるデモプロジェクトを含む。 (3)第 60 回基金執行委員会に提案書を提出 第 59 回基金執行委員会にて、次回の基金執行委員会に本プロジェクトが提出可能となっ たことを受け、プロジェクト提案書の内容の修正を行い、第 60 回基金執行委員会に向けて 事務局へ提出した。 主な変更点は以下の通りである。 ・ 本プロジェクトがデモンストレーションプロジェクトであることを考慮し、アキレス社 は受益企業に対し、技術の開示をしない。 ・ 上記変更に基づき、アキレス社へのロイヤリティー額を変更。 ・ 本デモンストレーション終了後の投資プロジェクト(フェーズ 2)については、未定の 部分が多く、事務局に誤解を与える恐れがあることから、フェーズ 2 の記載を削除。 <プロジェクト提案書カバーシート> COUNTRY : Colombia IMPLEMENTING AGENCY : Japan PROJECT TITLE : Demonstration project to validate the use of Super-critical CO2 in the Manufacture of Sprayed Polyurethane Rigid Foams in developing 25 countries PROJECT IN CURRENT BUSINESS PLAN : yes SECTOR : Foam SUB-SECTOR : Rigid PU (spray) ODS USE IN SECTOR (2008) : 1,380 metric tons (HCFC-141b and HCFC-22) ODS USE AT ENTERPRISES (2008) : 160 MT of HCFC-141b PROJECT IMPACT : 14 MT of HCFC-141b (Phase II) PROJECT DURATION : 8 months TOTAL PROJECT COST: -Incremental Capital Cost:US$401,000 -Contingency:US$40,100 -Total Project Cost:US$441,100 LOCAL OWNERSHIP : 100% EXPORT COMPONENT : 0 % to non-A5, 15% to A5 REQUESTED GRANT:US$441,100 COST-EFFECTIVENESS : na IMPLEMENTING AGENCY SUPPORT COST:US$57,343 (13% for bilateral agency) TOTAL COST OF PROJECT TO MULTILATERAL FUND:US$498,473 STATUS OF COUNTERPARTS FUNDING: : Letters of commitment received PROJECT MONITORING MILESTONES : Included NATIONAL COORDINATING AGENCY : Ministry of Environment - National Ozone Unit <プロジェクトスケジュール> 2010 ACTIVITY Q2 Approval * Grant transfer to UNDP * Work Arrangement between UNDP and beneficiary * First visit by Achilles representatives. Development of experimental protocol (accelerated aging tests will be included). Coordination of technology demonstration * Contract with Achilles * Specification of equipment determined * Procurement of equipment * Q3 Delivery of equipment and material * Achilles engineers second visit for practical technology demonstration * 26 Q4 Testing foams including field test, accelerated aging tests to check long term performance (three months) * * Achilles engineers third visit to evaluate project results and give specific recommendations. * Dissemination workshop * Final review * (4)第 60 回基金執行委員会での審議 第 60 回基金執行委員会の本プロジェクトの資料において、事務局から大きな問題点は指 摘されなかったが、委員会に向けて想定される質問と対処方針を作成した。 <会議文書における事務局の Recommendation> In light of the comments by the Secretariat, the Executive Committee may wish to consider whether to approve the demonstration project to validate the use of super-critical CO2 in the manufacture of sprayed polyurethane (PU) rigid foam in Colombia, at a cost of US $441,100 plus agency support costs of US $57,343 for Japan, on the understanding that the project would be the final validation project for supercritical CO2 technology in the manufacture of sprayed polyurethane rigid foams. 本プロジェクトは、本会議場での審議となったが、カナダ(オーストラリア)から、「デ モプロジェクト終了後の技術移転について不透明なので、何か情報があれば教えて欲しい」 旨の発言があった。これに対し日本(経済産業省)からは、「デモプロジェクトの結果およ び今後のアキレス社の戦略次第であるが、追加の技術移転料、秘密保持契約等を条件に他 のシステムハウスや他国へと超臨界 CO2 の技術移転をする可能性がある。」旨の発言を行い、 他国からはその他の意見もなく承認された。 (5)本プロジェクトの現状 2010 年 4 月の第 60 回基金執行委員会で承認された後、夏には本プロジェクトがスタート する予定であったが、スケジュールが遅れている。プロジェクト承認後の経緯は以下の通 りである。 ・ 2010 年 8 月に UNDP よりアキレス・UNDP 間の契約書案が送付され、アキレス社は修正 要望を追記の上、UNDP に返送。 ・ UNDP より、コロンビア政府・UNDP 間の契約が遅れている旨の連絡。 ・ 2010 年 11 月の基金執行委員会にて、UNDP の担当者に現状についてヒアリング。担当 者によると、6 月にコロンビアの大統領が代わったことで、省庁が再編となり混乱し ているため、とにかく反応が遅いということ。ただ、新しい政府も本プロジェクトに 反対しているわけではないので、待って欲しいとのこと。 27 ・ 2011 年 1 月に、UNDP より「コロンビア政府がようやく契約書に署名したので、スケ ジュールを調整する」との連絡。 ・ 2011 年 2 月に、UNDP より「プロジェクト実施のための調達に関する書類を準備中」 との連絡。 28 2-3.ナイジェリア(製氷機転換プロジェクト) 2-3-1.プロジェクトの背景と概要 本プロジェクトは、ナイジェリアの Austin Laz 社の製氷機を三洋電機が保有する CO2 冷 媒技術に転換するデモンストレーションプロジェクトである。CO2 冷媒技術は、温暖化係数 が低い先進的な技術であり、本プロジェクトはナイジェリアだけではなく、他の 5 条国の 冷凍空調分野の HCFC22 の削減の参考となるパイロット的な意味を持つプロジェクトとなっ ている。 なお、本プロジェクトの executive agency は UNIDO を予定している。 2-3-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)第 61 回基金執行委員会に提案書を提出 プロジェクト提案書は、旭リサーチセンターが中心となり、技術提供企業の三洋電機の 協力を得ながら作成され、2010 年 7 月に開催される第 61 回基金執行委員会に向けて事務局 に提出された。 CO2 冷媒技術が先進的な技術であること、およびナイジェリアの治安情勢等の観点から、 本プロジェクトにおいては、Austin Laz 社の製氷機を三洋電機に送り、三洋電機にてその 製氷機に適した CO2 冷媒のプロトタイプを製造し、ナイジェリアから技術者を呼び寄せて 日本にてトレーニングするスキームとなっている。 これに対し事務局からは、受益企業の追加情報の要求やコスト・技術に関する質問の他 に、製氷機を日本に送り日本でプロトタイプを製作することから、受益企業の製造ライン そのものを転換するプロジェクトではなく、モントリオール議定書のガイドラインに合致 しているか判断がつかないことが指摘された。事務局との何度かのやり取りにおいて、事 務局から「今回は提案を取下げて、準備資金を第 61 回基金執行委員会に申請し、再度提案 したらどうか」との提案があり、事務局の提案を了承した。 日本は、第 61 回基金執行委員会にナイジェリアプロジェクトの準備資金 30,000 ドルお よびエージェンシーフィー3,900 ドルを申請し、特段の議論もなく承認された。 (2)三洋電機による Austin Laz 社の製氷機検証 第 61 回基金執行委員会で承認された準備資金を使用し、Austin Laz 社の製氷機を三洋電 機に送り、三洋電機によるコストの検証が実施された。 (3)第 62 回基金執行委員会に提案書を提出 三洋電機によるコスト検証を元にした情報を追加し、第 62 回基金執行委員会にプロジェ 29 クト提案書を再提出した。 <プロジェクト提案書カバーシート> COUNTRY :Nigeria IMPLEMENTING AGENCY : Japan PROJECT TITLE : Demonstration project to validate the trans-critical CO2 refrigeration technology for application to ice-block makers at Austin Laz, Nigeria PROJECT IN CURRENT BUSINESS PLAN : yes SECTOR : Refrigeration SUB-SECTOR : Commercial refrigeration ODS USE IN SECTOR (2008) : country total; 3,980 metric tons (HCFC-22) ODS USE AT ENTERPRISES (2008) : 30 MT of HCFC-22 PROJECT IMPACT : not applicable PROJECT DURATION : 21 months TOTAL PROJECT COST: -Incremental Capital Cost:US$665,200 -Contingency:US$66,520 -Total Project Cost:US$731,720 LOCAL OWNERSHIP : 100% EXPORT COMPONENT : nil REQUESTED GRANT:US$731,720 COST-EFFECTIVENESS : not applicable IMPLEMENTING AGENCY SUPPORT COST:US$95,124 TOTAL COST OF PROJECT TO MULTILATERAL FUND:US$826,844 STATUS OF COUNTERPARTS FUNDING: : not applicable PROJECT MONITORING MILESTONES : Included NATIONAL COORDINATING AGENCY : Federal Ministry of Environment <プロジェクトスケジュール> 2010 2011 Q4 Approval Work arrangement Q1 2012 Q2 * * Contract with Sanyo * Sanyo visit to Austin Laz * Design of component 30 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 cooling unit *** evaporating coils *** Austin Laz training *** Procurement of material * * Prototype fabrication ***** ****** *** Prototype testing *** ****** **** Project review * Dissemination workshop * (4)第 62 回基金執行委員会での審議 第 62 回基金執行委員会のための資料における、 本プロジェクトへの事務局のコメントは、 「このプロジェクトは、過去のプロジェクトとは違った新しいアプローチであり、事務局 は推奨できる立場にないため、基金執行委員会の場で審議してほしい」との事であった。 事務局にとっては、受益企業の製造ラインそのものを転換するプロジェクトではなく、製 氷機を日本に送り日本でプロトタイプを製作するという点が新しいアプローチと捉えられ たようだ。 本プロジェクトの承認に向けて、基金執行委員会の場での苦戦が想定されたことから、 想定される質問とその対処方針を作成して委員会に臨んだ。 <会議文書における事務局の Recommendation> As explained above, the Government of Japan has undertaken a novel approach to this project as compared to other projects submitted in the past to the Multilateral Fund. The Secretariat is therefore not in a position to provide a recommendation for its approval. The Secretariat suggests that the Executive Committee might wish to consider whether to approve the “Demonstration project to validate the trans-critical CO2 refrigeration technology for application to ice-block makers at Austin Laz”, at the level of funding being requested of US $731,720, or a different cost level, as appropriate. 第 62 回基金執行委員会では、多数の HPMP が提出されたことから、主要国の HPMP はコン タクトグループ内で議論された。本プロジェクトも、ナイジェリアの HPMP と一緒にコンタ クトグループ内での判断となったが、米国、カナダ等の主要なドナー国の関心が「いかに 基金供与の額を減額させるか」に移る中で、本プロジェクトについては特段の質問も出ず、 十分な議論もなされないまま、モントリオール議定書のガイドラインに合致するよう修正 の上で再提出することを促され、次回以降に延期となった。 31 本プロジェクトの今後については、 ・技術の現地化を図れるようコンセプトを変更 ・対象国がナイジェリアである合理的な説明、もしくはアジア等への対象国の変更 ・対象国の HPMP との関連付け ・コストの減額 等の方策が必要と考えられるが、中国やインドなど HCFC の大消費国の HPMP が提出される 中で、ドナー国の関心が「環境によい先進技術」よりは「コスト効果の高い技術」に移っ ており、本プロジェクトのように、先進技術をデモンストレーションするプロジェクトの 承認は難しくなる可能性がある。 32 2-4.中国(XPS 発泡プロジェクト) 2-4-1.プロジェクトの背景と概要 中国では、XPS 発泡の代替技術として、ドイツ GTZ が推奨する CO2 技術が有力であるが、 XPS 発泡企業が約 500 社と多いため、それぞれの企業の実状に合う代替技術の選択が必要と なる。そこで UNIDO は、日本で使用されている HC 技術に着目し、経済産業省に協力を求め てきた。日本における XPS 発泡製造企業のうちの 1 社であるカネカも協力に同意したため、 中国で HC 技術を使用したデモンストレーションプロジェクトを提案することとなった。 (受 益企業は上海新兆塑业 有限公司(Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises Co., Ltd)) 2-4-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)XPS 発泡ワークショップ(2009 年 9 月:北京) 2009 年 9 月に、北京にて XPS 発泡関連のワークショップが開催され、旭リサーチセンタ ーから 1 名が参加した。そのワークショップにおいて、カネカより HC 技術のプレゼンがあ り、中国政府や関係者から注目を集めた。(ワークショップの詳細については、「平成 21 年 度化学物質安全確保・国際規制対策推進等(フロン等排出抑制に係る国際交渉等調査(途 上国支援)) 」報告書を参照。) (2)カネカよりサンプルの送付(2009 年 10 月) 中国の難燃性基準に適合しているかテストするため、カネカより中国にサンプル品を送 付した。 (3)HCFC 代替技術セミナー(2010 年 3 月:東京) 2010 年 3 月に開催された、日本(経済産業省)および UNIDO 共催の「HCFC 代替技術セミ ナー」に中国から MOP/FECO 担当者が参加し、カネカの鹿島工場を見学した。 (4)プロジェクト関連会合(2010 年 5 月:上海) 2010 年 5 月に、上海の受益企業にて、プロジェクト作成に向けて関係者による会合が開 催された。 33 <プロジェクト関連会合(2010 年 5 月)メモ> 1.目 的:中国 XPS 発泡転換デモプロジェクト提案に関する討議 2.日 時:2010 年 5 月 12 日~5 月 15 日 3.場 所:上海 Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises. Co., Ltd. 4.出席者: ・カネカ ・中国環境保護局 ・UNIDO ・国塑料加工工業協会 XPS 発泡専業委員会 ・上海新兆プラスチック ・旭リサーチセンター 5.内 容: 【概要】 UNIDO の「中国での XPS 発泡剤の HC への転換」に関する準備プロジェクトの一環として の現地状況の調査を目的とし、討議した。 【討議内容】 Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises. Co., Ltd.は、中国環境保護局の指定によるデ モンストレーション(実証プロジェクト)を実施する XPS 発泡メーカー(現地資本)であ る。 工場視察とミーティングの結果、XPS 発泡の生産が本業ではなく、XPS 発泡生産設備(押 出機を含む全システム)を販売する事を主な業務の企業であることが判明。 HC での押出システムを構築し、中国国内を含む途上国に「HC 対応 XPS 発泡製造設備」と して、今後拡大が予想されるビジネスを狙いデモンストレーションに立候補したと思われ る。 【当該企業の保有(販売)XPS 発泡生産設備】 第一 Ex 第二 Ex 2軸押出機 75Kw (ガス圧入はせず、樹脂メルト供給のみ) 軸径 30~40mm (確認せず) 供給量 350Kg/h (Max) 単軸押出機 55Kw 34 第二 Ex の前半部にガス圧入ポート(2 箇所) 金型:小型の矩形ダイ 特に特徴はなし(図面を送付してもらうよう依頼) 成型:平板プレート方式(テフロンシート挟み込み) 小型 圧入ユニット:流量計システムはなく、圧入ポンプのストローク調整。 発泡剤:500Kg ボンベ直結方式(重量測定は実施していない様子) ブレンド:PS(再生品)を 25KgPB からホッパー投入。 添加剤はマスターバッチを定重量フィーダーで供給(ブレンダーはなし)。 仕上げはナイフカット方式で幅,長さをカットのみ。 ・ 上記システムを 20 百万円の価格で、中国国内及び近隣途上国に販売しており、5 台/月 の売り上げがあるとのこと。 ・ 先方が使用している再生 PS を入手した。カネカで MI を測定。 ・ 後工程では、スキンボードを片面ずつ簡易プレーナー(吸引はオバ Q)で表面仕上げを していた(接着性改良?) 【質疑応答】 Q:本システムをベースにブタン処方での実証実験は可能かどうか? A:ガスインジェクションの位置から見て、低回転の 2 段目押出機内で、ブタンが現状の HCFC と同様に完全に溶解するかどうかが第一のポイント。不完全な溶解であれば、ダイでの未 溶解ガスの暴噴により製品採取が不可能なだけでなく、暴噴ガスへの着火のリスクも発生 する可能性があるが、現状では判断できる基準が無い。 Q:ブタン処方にした場合、難燃剤の添加量が 4 部必要だとすると HCFC での 1.2 部より大 幅にコストアップし、問題である。 A:現状では HCFC でのコストがベストかもしれないが、規制を受けて使用禁止になる中で、 次善の策としての提案である HC 技術の展開可能性であるから、コストは対 CO2 で比較すべ き。現状(HCFC)比較のみでは始まらない。 Q:HCFC の完全禁止は未だ先(2030 年)だから、何らかの優位性が無ければ展開し難い。 A:フロン価格(200 円)と HC 価格(100 円)差から考えた場合、難燃剤量がアップしても 価格的には問題無いと思われる事を概算で提言(日本のノンフロン化の場合と同様) (計算) 単価 使用量 HCFC 200×0.12=24 円/製品1Kg HC 100×0.04= 4円 Mecl/DME も同程度→ 合計 8~10 円 発泡剤としては 14~16 円のコストダウン。 難燃剤 400×(0.05-0.012)=15.2 円のコストアップ。 35 先方は 1.2 部の HBCD 添加で燃焼性 OK と言っているが、再生 PS 中心でとても満足な結果 が出るとは思えないが、そのままで計算した。 HCFC が極端に安いため、コストダウンにはならないが、ほぼ価格アップ分は吸収可能な レベル。 Q:プロセスから見て、スキンボードでの要求になるが、現行システムで HC 化した場合に、 スキン形成が可能か? A:ダイの詳細が確認出来ていないため、なんとも言えないが、HC ではやや難しくなる。ス キンが良くない場合はダイの大幅な改良か、後工程でカットボード化する必要があるので はないか。 Q:複合セル構造を作ることは可能か? A:現システムでは、複合化のための水の使用は困難(吸収能力:時間)が不足する。EⅡ 処方で密度アップして熱伝導率(90 日)を確保する方向で検討が必要。その為には燃焼性 も含めて補助発泡剤は DME から Mecl に変更したほうが簡単。 Q:どのようなビジネスモデルが組めれば 9 月提案予定の実証プロジェクトにステップアッ プ出来るか? A:経済産業省/旭リサーチセンターで実証プロジェクトの提案に向けた検討をする。(カ ネカがアドバイス)。その場合に技術協力を得るカネカが受けられる見返りの条件が必要で あり、それを踏まえて検討する。 Q:昨年 10 月に送付したカネカサンプルの品質試験の結果はどうだったか? A:現在取り纏め中で、もう少しで発行できる。燃焼試験でほんの少し中国規格に未達であ った。(難燃剤量調整/DME→Mecl への変更)で達成可能ではないかと思う。 (5)プロジェクト関連会合(2010 年 8 月:上海) 2010 年 8 月に、上海の受益企業およびカネカの上海事務所にて、プロジェクト作成に向 けて関係者による 2 回目の会合が開催された。 36 <プロジェクト関連会合(2010 年 8 月)メモ> 1.目 的:中国 XPS 発泡転換デモプロジェクト提案に関する討議 2.日 時:2010 年 8 月 26 日(木)~27 日(金) 3.場 所:上海 Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises. Co., Ltd.(26 日) カネカ上海事務所(27 日) 4.出席者: ・カネカ ・ATP デザインアンドエンジニアリング ・Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises. Co., Ltd. ・MEP/FECO ・UNIDO ・旭リサーチセンター 5.内 容: 【概要】 8 月 26 日に、デモプロジェクト実施予定の企業にて、①デモプロジェクトの基本的な考 え方についての共通認識の確認と、②デモプロジェクトの見積もりに関する打ち合わせを 行った。 27 日にも継続して②の見積もりに関する打ち合わせを行った。提案書作成に必要な項目 の洗い出しと見積もりを完成した。また、HCFC 削減コストがガイドラインの範囲に収まる ことを確認した。 ただし、総経費が 1.9 億ドルとなった。日本のビジネスプランでは 1 億ドルの計画であ ったため、UNIDO との共同提案にするか今後協議する必要がある。 【詳細】 (1)デモプロジェクトの基本的な考え方についての共通認識の確認 カネカから、今回のデモプロジェクトの基本的な考え方について主に下記 3 点が提示さ れ、日本側、デモプロジェクト実施予定企業(以下当該企業) 、中国政府(MEP/FECO)、UNIDO の 4 者で基本的な合意がなされた。 ①既存設備への設備追加による中国に合ったシステムの検証 37 現在の Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises. Co., Ltd.の設備を基本にして、HCFC から HC へ転換するために必要な装置を追加して検証することについて、4 者で合意がなさ れた。従って、当初の提案書案にあった押し出し機の改造などは不要であることを確認し た。 ② デモンストレーション実施時の発火などに関する免責 カネカより、これまでの経験を生かして予防対策を提案するが、事故が起きないことを 100%保証できないことの確認が求められた。これに対して、当該企業から、デモンストレ ーションのオペレーションについては当該企業が責任を持って実施するという表明があ り、発火などに関するカネカの免責について 4 者で合意がなされた。 ③ 製品性能に関する免責 カネカより、HCFC で生産している製品とほぼ同等の製品が得られる見込みであるが、 100%の保証はできないことの確認が求められた。これに対して、UNDO の Grof 氏より、デ モンストレーションプロジェクトにおいて製品性能について 100%の保証を求めることは ないことが説明され、当該企業も同意し、製品性能に関するカネカの免責について 4 者で 合意がなされた。 さらに下記課題に関しても 4 者で合意がなされた。 製品の難燃性に関する合意 UNIDO から今回のデモプロジェクトの最も大きな課題は製品の難燃性であるという説明 があり、当該企業からも製品の難燃性確保に関する質問があった。これに対してカネカよ り、HBCD の含有量を増加させたり、他の難燃剤を追加したり、ブタンの量を調整すること によって B2 規格をクリアできる可能性があることを説明した。 特殊な難燃剤に関しては、容易に入手できる必要があると UNIDO および当該企業から要 望があった。これに対してカネカより、デモプロジェクトにおいては情報開示が難しいが、 デモプロジェクト終了後には別途協議する可能性があると説明があり、4者で難燃性の問 題は解決できないことはないという合意がなされた。 (2)デモプロジェクトの見積もりに関する打ち合わせ デモプロジェクトに必要な設備などに関する見積もりについて 1 つずつ詳細な検討がな された。 主なものとしては下記 3 点があった。 ① HC の溶解性確保に関する改造 38 当該企業より HC の注入位置を 1 段目で行いたいという希望が提出された。これに対して、 カネカよりシール性の点から難しくむしろ 3 段目の押し出し機を追加する方が、HC の溶解 を確保するために有効であるという説明がなされた。議論の後、HC の溶解性を確保するた めには押し出し機を追加することが有効であるという合意がなされた。 ② HC 屋外タンク UNIDO から HC の屋外貯留タンク設置の提案があった。これに対して、カネカより、500kg ボンベを使用する方が現実的であるという説明があり、ボンベを使用することになった。 ③ 技術移転料 カネカが現地に赴いて指導することも含めて、250,000 ドルとすることになった。 (3)その他 UNIDO から、オゾン層保護に関する途上国支援プロジェクトは基本的には国際入札である が、UNIDO のプロジェクトは指名入札のような形を取ることができるという説明があった。 従って本プロジェクトについては、当該企業とカネカ、ATP デザインアンドエンジニアリン グの実施体制で行う方向で提案を行うこととした。 (6)第 62 回基金執行委員会に提案書の提出 UNIDO が中心となりプロジェクト提案書を作成し、事務局に提出した。本プロジェクトの Implementing Agency は UNIDO であり、日本は Cooperative Agency として協力するという 体制になっている。費用に関しては、日本が 100 万ドル、UNIDO が残りの約 75 万ドルを負 担することとなった。 <プロジェクト提案書カバーシート> PROJECT COVER SHEET – NON-MULTI-YEAR PROJECTS THE PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA PROJECT TITLE (a) IMPLEMENTING AGENCY Demonstration project for conversion from HCFC-22 to butane blowing technology in the manufacture of XPS foam at Shanghai Xinzhao Plastic Enterprises Co., Ltd 39 UNIDO NATIONAL CO-ORDINATING AGENCY Foreign Economic Cooperation Office, Ministry of Environmental Protection (FECO/MEP) LATEST REPORTED CONSUMPTION DATA FOR ODS ADDRESSED IN PROJECT A: ARTICLE-7 DATA (ODP TONNES, 2009, AS OF SEPTEMBER 2010) Annex C, Group I 17,997.68 B: COUNTRY PROGRAMME SECTORAL DATA (ODP TONNES, 2009, AS OF SEPTEMBER 2010) Substance Consumption by sector (ODP tonnes) Aerosol Foam HCFC-22 1,353.0 HCFC-141b 5,056.8 HCFC-142b 1,066.0 Other Ref. Ref. Solvent manu. serv. 6,221.6 3,456.2 349.7 4.4 8.3 12.8 ALLOCATIONS Funding US $ (a) 1.0 13.7 n/a Phase-out (ODP tonnes) 2,075,000 PROJECT TITLE: 5,535.5 1,417.68 HCFC consumption remaining eligible for funding (ODP tonnes) CURRENT YEAR BUSINESS PLAN Total 11,030.8 465.9 1.95 Other 7.0 (a) ODS use at enterprise (ODP tonnes): 13.9 ODS to be phased out (ODP tonnes): 7.0 Project duration (months): 18 Project costs (US $): Incremental Capital Cost: 1,452,400 Contingency (10 %): 120,240 Incremental Operating Cost: 177,380 Total Project Cost: 1,750,020 Local ownership (%): 100 Export component (%): 0 Requested grant (US $): 1,750,020 40 Cost-effectiveness (US $/kg): 13.81 Implementing agency support cost Japan 130,000 (US $): UNIDO 56,252 Total cost of project to Multilateral Fund (US $): 1,936,272 Status of counterpart funding (Y/N): Letters of commitment received Project monitoring milestones included (Y/N): Y <プロジェクトスケジュール> Months 1 MLF Project approval x Preparation 2 3 4 5 x x x x x x x x x x 6 7 8 x x 9 10 11 12 13 14 15 x x x x x x x x x x 16 17 x x 18 of implementation plan, sign contract with enterprise Design and local approval Bidding document preparation Request for bids Award of sub-contract Equipment x x delivery, civil works Equipment installation, commissioning and trail run Training and technical assistant Safety audit x Commercial production, completion report x 41 x (7)第 62 回基金執行委員会での審議 中国は、第 62 回基金執行委員会に、多数のセクタープランを提案したことから、本デモ プロジェクトは、セクタープランと一緒にコンタクトグループ内で議論されることとなっ た。しかし、コンタクトグループ内の議論はセクタープランが中心であり、本デモプロジ ェクトについては、ほとんど議論されないまま、他のセクタープランと同様に次回に先送 りとなった。 42 2-5.中国(洗浄プロジェクト) 2-5-1.プロジェクトの背景と概要 本プロジェクトは、中国の医療機器製造企業である Zhejiang Kindly Medical Devices Co., Ltd.の HCFC141b を KC-6(イソパラフィンとシロキサン)に転換するデモンストレーション プロジェクトである。 中国の洗浄分野は、UNDP がリード IA であるが、UNDP との話し合いにより、日本も本プ ロジェクトに参加することとなった。 2-5-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)Inter-agency Coorination Meeting(2010 年 2 月) 2010 年 2 月にモントリオールで開催された Inter-agency Coorination Meeting において、 日本と UNDP の間で、中国の洗浄デモプロジェクトを日本の二国間プロジェクトとして進め る旨の合意がなされた。 (Inter-agency Coorination Meeting の詳細については、「平成 21 年度化学物質安全確保・国際規制対策推進等(フロン等排出抑制に係る国際交渉等調査(途 上国支援)) 」報告書を参照。) (2)第 60 回基金執行委員会に準備資金を提出 2010 年 4 月に開催された基金執行委員会に、UNDP は中国の洗浄のデモンストレーション プロジェクトの準備資金を 2 件提出した。しかしカナダより、中国はデモプロジェクトが 多すぎること、洗浄分野の HCFC 消費量は多くなく優先度が低いことを指摘され、一旦、準 備資金は否決された。その後、日本とカナダの話し合いにより、2 件のうち 1 件のみが承認 されることとなった。 (3)第 62 回基金執行委員会に提案書を提出 第 60 回基金執行委員会でプロジェクト準備資金が承認された後、日本より UNDP に対し、 準備資金を使用して日本の専門家を受益企業の調査に派遣したいことを申し入れ、また中 国の洗浄関係者を日本に招聘することを提案したが、UNDP 側からの反応はなかった。その 後、中国洗浄関係者の来日は、2010 年 12 月に実現した。 ( 「2-5-3.中国洗浄関係者の 来日」を参照。) このため、第 62 回基金執行委員会にプロジェクト提案書を提出するにあたって、日本は 受益企業や代替技術についての情報が不足していることから、プロジェクト実施に責任が 持てないことが想定された。そこで、本プロジェクトの Implementing Agency を UNDP とし、 日本は Cooperative Agency として協力する体制に変更するよう UNDP、中国政府、事務局に 43 申し入れ、同意が得られた。 プロジェクトコスト約 56 万ドルのうち、日本は約 21 万ドル、残り約 35 万ドルを UNDP が負担することとなった。 <プロジェクト提案書カバーシート> COUNTRY :China Bilateral Agency : Japan Exective Agency : UNDP PROJECT TITLE : Demonstration project for conversion from HCFC-141b-based technology to iso-paraffin and siloxane(KC-6) technology for cleaning in the manufacture of medical devices at Zhejiang Kindly Medical Devices Co. Ltd SECTOR : Solvents SUB-SECTOR : Medical Cleaning Applications ODS USE IN SECTOR (2009 ODP tonnes) : 480 ODS USE IN SUB-SECTOR/APPLICATION (2009 ODP tonnes) : 187 PROJECT IMPACT (ODP tones): 3.1 PROJECT DURATION : 18 months TOTAL PROJECT COST: -Incremental Capital Cost:US$320,046 -Contingency:US$32,005 -Incremental Operating Cost:US$205,616 -Total Project Cost:US$557,667 LOCAL OWNERSHIP : 100% EXPORT TO NON-A5 COUNTRIES : 0 REQUESTED GRANT:US$557,667 COST-EFFECTIVENESS : 20.05 IMPLEMENTING AGENCY SUPPORT COST:US$71,343 TOTAL COST OF PROJECT TO MULTILATERAL FUND:US$629,010 STATUS OF COUNTERPARTS FUNDING: : yes PROJECT MONITORING MILESTONES : yes 44 <プロジェクトスケジュール> Months 1 2 3 4 5 6 x x x x 7 8 9 10 11 12 x x x x x x x x 13 14 15 x x x x x 16 17 18 x x Start-up of project activities x Submission of project document for signature Project X x X document signature Preparation x and request for bids x Award of contracts Equipment x x x delivery and installation Commisioning and trial runs Training and technical assistantance x Commercial production x (4)第 62 回基金執行委員会での審議 本プロジェクトも、XPS 発泡のデモプロジェクトと同様に、中国の他のセクタープランと 一緒にコンタクトグループ内で議論されることとなった。しかし、コンタクトグループ内 の議論はセクタープランが中心であり、本プロジェクトについては、ほとんど議論されな いまま、他のセクタープランと同様に次回に先送りとなった。 <会議文書における事務局の Recommendation> The Executive Committee may wish to consider approving the project at the cost level indicated below on the understanding that the eligibility and costs presented in this document do not establish a precedent for the sector: Project Funding(US$):352,051 (UNDP)、205,616(Japan) Support Cost(US$):26,404(UNDP)、26,763(Japan) 45 2-5-3.中国洗浄関係者の来日 2010 年 12 月 6 日から 11 日にかけて、中国から洗浄調査団が来日した。これは経済産業 省の呼びかけに応じて、UNDP の後押しで実現したものである。 スケジュールとしては、日本と UNDP が洗浄デモプロジェクトを提案した第 62 回基金執 行委員会の後であることから、今回の調査団はデモプロジェクトと直接の関係はなく、今 後の中国における洗浄分野の代替技術の調査を目的としたものであった。 (1)来日メンバー 来日した 5 名の所属と役職は以下の通りである。 单位 职务 Agency Occupation 环境保护部环境保护对外合作中心 处长 MEP, FECO Division Chief 环境保护部环境保护对外合作中心 项目官员 MEP, FECO Project Officer 环境保护部环境保护对外合作中心 项目官员 MEP, FECO Project Officer 中国蓝星(集团)股份有限公司 蓝星环境工程有限公司 处长 Lanxing Environmental Engineering Co.,Ltd Division Chief 江西省环境监察局 副调研员 Jiangxi Environmental Protection Bureau Vice Consultant (2)スケジュール 日 活動/訪問先 ホテル 12/6(月) 来日 八重洲富士屋ホテル 12/7(火) 17:00 産洗協:終了後歓迎会 同上 12/8(水) 11:00 旭化成ケミカルズ(神保町) 14:30 日伸精機(木更津) 12/9(木) 10:00 三井・デュポンフロロケミカル(清水) 同上 同上 10:00 日本ゼオン(丸ノ内) 12/10(金) 13:30 エー・エス・ケー(川口) 16:00 経済産業省 12/11(土) 帰国 46 同上 (3)中国側からの事前質問 来日に際しては、中国側から各訪問先に対して事前に以下の質問が寄せられた。 Provisional Topics <Policies and publicity> 1. What policies have been issued on the ODS phaseout in Japan and how is the impact of them? 2. How does Japan supervise and manage enterprises involving ODS production and consumption to ensure eliminating illegal producing and using? Any quota license system has been used? 3. How does Japan promote the public awareness on ODS phaseout? What kinds of methods have been used and how is the effect? <Technologies For JICC> 4. Referring to CFC-113 phaseout in Solvent Sector in Japan, what alternatives did Japanese enterprises use and in which sub-sectors? When did the substitution finish with how many tonnes of CFC-113 were phased out in Solvent Sector? 5. 1) Referring to TCA phaseout in Solvent Sector in Jpan, what alternatives did Japanese enterprises use and in which sub-sectors? 2) When did the substitution finish with how many tonnes of TCA were phased out in Solvent Sector? 6. 1) Which sub-sectors and products in Japan had been applied with HCFC-141b and AK-225? 2) When did the HCFC-141b and AK-225 phaseout work start and finish with what kinds of alternatives? 3) How many tonnes of HCFC-141b and AK-225 were phased out respectively? 7. What kinds of hydrocarbon cleaning solvents have been used and in what sub-sectors in Japan? What are the names of the brands, products and price? 47 How long is the carbon chain respectively of these products? Could we have the contact information of main suppliers of hydrocarbon cleaning in Japan? 8. What is the main silicon oil diluents/thinner used in medical devices sector and other sub-sectors/areas in Japan? 9. What kinds of cleaning machine and cleaning technologies do Japanese enterprises use in cleaning LCD products? <For Asahi kasei Chemicals and Du Pont – Mitsui Fluorochemical> 10. 1) What kinds of products in your company could be used to substitute HCFC-141b? 2) Could the followed information be provided? Boiling point, kb value, ODP and GWP value, application areas, effect compared with HCFC-141b, etc. 3) Could any of the products be purchased in Chinese market and what is the price? 11. 1) What sub-sectors/industries use fluorocarbon cleaning solvent products in your company? 2) What are the values of ODP, GWP and Kb, and how about the price? <For A.S.K.> 12. How much difference is between degassing and without degassing in cleaning with hydrocarbon? Is there any experimental data about that? 13. How to set the power density of ultrasonic in cleaning with hydrocarbon? 14. 1) What is the optimum cleaning temperature in cleaning with hydrocarbon? 2) Is there any difference among different kinds of hydrocarbon? <For Nissin seiki > 15. 1) The data of PH value of electrolyzed ionized water. 2) What kinds of material/products the electrolyzed ionized water could clean? Does ionized water clean precision parts such as spinneret plate, contact lenses and especially compressor parts well? 3) The ability of cleaning and degreasing in comparison between electrolyzed ionized water and alkaline water-based cleaning solvent. 4) Does ionized water clean heavy grease off? 48 5) Any equipment of applying electrolyzed ionized water has been used in China, and if it has, which enterprise? How much is the equipment? Any supplier in China? 6) Is the acid water generated from electrolyzed ionized water very effective in sterilization? 7) Why the lifetime of electrolyzer is just 3,000 hrs for about 5 months? 8) What kinds of cleaning solvent have been used in precision casting cere cleaning? <For Conference or Nissin seiki> 16. What kinds of low foam water-based cleaning solvent which is suitable for spray cleaning have been produced in Japan? What is the price and can we have the contact information of the suppliers? <For Nihon Zeon> 17. We would like to have the information about cleaning application in Nihon Zeon and raise questions about that based on application in Chinese enterprises accordingly. (4)詳細 ①産業洗浄協議会(12 月 7 日 17 時~18 時 30 分) <議事> 日本側より、日本における産業洗浄の状況についてプレゼン。その後質疑応答。 主な質疑応答 Q.中国にも産業洗浄協議会のような業界団体はあるのか?(日本側より) A. National Cleaning Information Center がそれに該当。加盟企業は 1400 社程度との 事。歓迎会の席上で聞いたところ、1400 社のうち、協力的なのは 600 社程度であるとの事。 とにかく企業数が多いので、HCFC 使用量を把握するだけでも大変だとの事。 Q.日本は何故洗浄部門の HCFC 削減に成功したのか?(中国側より) A.出席者から出た主な意見:産業洗浄協議会の存在、METI との協力体制、削減に熱心な人 の存在、METI や産業洗浄協議会の啓蒙活動、削減時期が比較的景気が良く企業にとって削 減コストが受け入れやすかったこと等。 ②旭化成ケミカルズ(12 月 8 日 11 時~12 時) <議事> 旭化成グループの概要および旭化成ケミカルズの洗浄剤についてのプレゼン。その後質 疑応答。 49 中国側の関心は、可燃性と価格であり、製品に関するデータに関して技術的な質疑応答 がなされた。 旭化成ケミカルズは中国での販売は行っていないが、これを機会に社内で中国への協力 を検討したいと説明。中国も入手した情報をもとに検討すると回答。 主な質疑応答 Q.中国の主な洗浄分野は?(日本側より) A.医療機器、金属、エレクトロニクス、ソルベント用の 4 つが主なセクター。 ③日伸精機株式会社(12 月 8 日 14 時 30 分~16 時) <議事> 日伸精機の概要についてのプレゼン。その後ラボを見学しながら機器や製品の説明およ び質疑応答。中国側からは、アルカリイオン水の導伝率、生成の仕組みなど技術的な細か い質問が多数あり。 主な質疑応答 Q.御社の製品は中国では販売していないのか?(中国側より) A.直接には販売していないが、販売先の日本企業が中国に持っていっているケースはある。 Q.御社の製品を中国で製造する計画はないのか?中国で製造すれば、製品価格が下がると 思うが。(中国側より) A.将来のことは分からないが、今のところ、中国で生産する具体的な計画はない。 ④三井・デュポンフロロケミカル株式会社(12 月 9 日 10 時~16 時) <議事> 三井・デュポンより会社概要の説明があった。次いで中国側から今回の調査団の目的の 説明があり、再度三井・デュポンより洗浄剤に関する説明があった。その後、実験室を見 学したのち質疑応答を行った。特に、三井・デュポンから注射針用のグレードに関する説 明もあった。 中国側からは、三井・デュポンの製品、各グレードの性質に関する技術的な質問が多数 寄せられた。 三井・デュポンとしては、中国でのビジネス展開を検討しており、中国政府への協力と 中国政府からの支援を要請した。北京事務所もあるが、直接日本と連絡を取り合うことに なった。 主な質疑応答 (a)コスト 中国の関心は主にコストである。米国の製品を検討したことがあり、性能の面では優れ ていても価格の点で中国企業は受け入れなかった。日本の洗浄剤はどうかという質問であ る。 50 これに対して、三井・デュポンから従来のフッ素系洗浄剤、他社製品と三井・デュポン の製品とのコスト(機械投資および運転コスト)の比較表をもとに説明があった。説明の 要点としては、価格は高いが、運転コストはむしろ安くなる。さらに現在使用している装 置がそのまま使えるので初期投資もあまり要らないというもの。また、回収装置を付けれ ば外部への放出も抑えられる(これは注ぎ足し分が不要になるので運転コストが下がる)。 これに対して中国はやはり価格が高いことが問題という認識。参考価格を後日連絡する ことになった。 (b)生体適合性 中国側から生体適合性に関するデータはあるかという質問があった。 これに対して、毒性データはある。また、米国ですでに実績があるという回答があった。 しかし、中国には中国の基準があるということで、中国のどこでどのような検査をすれば よいかを後日三井・デュポンに連絡することになった。 (c)医療用途の対象 当初は注射針が対象ということだったが、注射筒も対象であることが確認された。 ⑤日本ゼオン株式会社(12 月 10 日 10 時~11 時 30 分) <議事> 日本ゼオングループの概要および日本ゼオンの洗浄剤についてのプレゼン。その後質疑 応答。中国側からの質問は技術的な細かい点が多数。 主な質疑応答 Q.御社の製品は中国では販売していないのか?(中国側より) A.直接には販売していないが、販売先の日本企業がブレンドして中国に輸出している。 Q.御社の製品を中国で製造する計画はないのか?中国で製造すれば、製品価格が下がると 思うが。(中国側より) A.まだ、具体的にはなっていないが、中国で生産する構想はある。 Q.価格はいくらか(中国側より) A.他社の HFC が 3,000 円ほどであるのに対して 10,000 円程度。 その他:ゼオンから、可燃性の改良や洗浄能力の向上のために自社の洗浄剤に他社がゼ オンの洗浄剤を混ぜて使っているという説明があったことに対して、炭化水素にゼオンの 洗浄剤を混ぜて使うことはできるか(コストも下がるし、可燃性の改善にもなる)という 質問があり、いくつかの炭化水素の溶解性データをもとに可能性を議論したが、結論はで なかった。 ⑥株式会社エー・エス・ケー(12 月 10 日 13 時 30 分~14 時 45 分) <議事> 中国側からの事前の技術的質問に対する回答。その後ラボを見学しながら質疑応答。中 51 国側からは技術的な細かい点についての確認があったが、その他については特に質問はな し。 また、日本では中小企業向けのよい解説書が出版されており、こうしたものによって CFC などの転換が短期間に達成できたと説明があり、中国側から購入したいという希望があっ た。 また産洗協より、以前行った講演資料が配布された。 ⑦経済産業省オゾン層保護等推進室(12 月 10 日 16 時~18 時) <議事> 挨拶の後、中国側からの事前の質問に対する回答。その後質疑応答。 主な質疑応答 Q.日本の最新の HCFC 使用量のセクターごとの内訳は?(中国側より) A.HCFC の物質ごとの内訳はあるが、セクターごとの内訳はない。物質ごとの内訳から推測 すると、RAC セクターの消費が多いと思われる。 Q.HCFC の使用許可は誰が出すのか?経済産業省か地方政府か?(中国側より) A.モントリオール議定書の目標遵守のために経済産業省が全国の HCFC 使用量を把握する 必要があるため、経済産業省が許可を出している。 Q.法による HCFC 規制以外に、企業への HCFC 削減の動機付けとして何か行ったのか?(中 国側より) A.補助金等を通して、HCFC 代替技術開発・普及の支援等を実施。 Q.日本以外の国で、どこかの国と協働して削減計画を進めているのか?(日本側より) A.国連機関およびドイツの GTZ と協働している。 Q.一週間日本企業を見学した感想は?(日本側より) A.企業の技術はどれも優れていると感じた。ただコスト的には中国が導入するには高いと 思われる。ドイツ、英国、米国企業の技術の方が、コスト的にはまだ許容できる範囲であ る。 Q.京都議定書関係で何か規制を行う予定はあるのか?(日本側より) A.NH3 および NOX の規制を始める予定である。 ⑧全体所感 企業訪問では、洗浄のエキスパートである National Cleaning Information Center の担 当者を中心に技術的な細かい質問が多数出て、日本企業の技術への関心の高さが窺われた。 一方、価格面では中国企業が導入するのにはハードルが高いようで、コストを下げるため に中国での生産を勧める場面が多く見られた。 日本の洗浄機メーカーは、中国への協力に必ずしも積極的ではなかった。ただし、洗浄 剤メーカーは中国でのビジネス展開を考えており、協力を申し出た。特に、HCFC141b が年 52 間 1,400 トン使われていることがわかったことが洗浄剤メーカーにとって大きな収穫であ ったようである。 53 2-6.フィリピン(フォームセクタープラン) 2-6-1.プロジェクトの背景と概要 本プロジェクトは、フィリピンのフォーム分野のセクタープランである。フィリピンは、 HPMP 全体計画(世界銀行)、エアコンセクタープラン(世界銀行)、商業冷蔵庫セクタープ ラン(UNDP)の提案が未提出であるが、フォーム分野を担当する UNIDO が、それらに先立 ってセクタープランを提案した。 フィリピンのフォームセクターの 2009 年の HCFC141b 消費量は約 40ODP トンであり、外 資が入っている企業も含めて 35 社程度の企業がある。そのうちの一部の企業が、アキレス の保有する超臨界 CO2 技術に興味を示したため、セクタープランの予算の一部を日本の二 国間資金から拠出することとなった。セクタープラン全体の予算は約 250 万ドルであり、 約 30 万ドルを日本が拠出、残りの約 220 万ドルを UNIDO が拠出している。 2-6-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)UNIDO 担当者がアキレスを見学(2010 年 3 月) 本セクタープランをまとめた、UNIDO 担当者が、2010 年 3 月に東京で開催された HCFC 代 替技術セミナーに同行し、アキレスの超臨界 CO2 技術を見学した。 (2)フィリピン企業数社がアキレスを見学(2010 年 7 月) UNIDO 担当者の勧めにより、フィリピン企業数社が来日し、アキレスを訪問した。その結 果、フィリピンのフォーム製造企業のうち、高品質のフォームを製造している企業数社が 超臨界 CO2 技術を使用することとなった。 (3)第 62 回基金執行委員会での審議 セクタープランの提案書は UNIDO によってまとめられ、第 62 回基金執行委員会に向けて 事務局に提出された。委員会では、スイス、サウジアラビアから「フィリピン企業が超臨 界 CO2 技術を採用した理由を知りたい」との質問があり、UNIDO から「超臨界 CO2 は日本で 10 年以上に渡り使用されている技術であり、フィリピン企業が日本に見学に行った上で採 用を決定した」との説明があった。経済産業省では、対処方針を準備して委員会に臨んだ が、その他は特段の議論もなく、本セクタープランは採用された。 54 2-7.サウジアラビア(XPS 発泡プロジェクト) 2-7-1.プロジェクトの背景と概要 本プロジェクトは、サウジアラビアの XPS 発泡製造企業 2 社(Al-Watania Plastics、 Arabian Chemical Company)の HCFC 転換を行う投資プロジェクトであり、UNIDO によって HPMP に先立って提案された。代替技術は HC(イソブタン)であり、この技術に知見のある 日本企業の技術指導の可能性もあることから、プロジェクトコストの一部を日本の二国間 資金から拠出している。 (プロジェクト全体のコスト約 200 万ドルのうち約 20 万ドルを拠 出) 2-7-2.第 62 回基金執行委員会での審議までの経緯 (1)サウジアラビアでのワークショップ(2010 年 5 月) 2010 年 5 月にサウジアラビアで開催されたフォームおよびエアコンセクターの HCFC 削減 のためのワークショップに、UNIDO からの委託により旭リサーチセンターから 1 名が参加し た。その際に、本プロジェクトの受益企業 2 社を訪問し、打合せの結果、代替技術として HC(イソブタン)が候補となった。 しかし、Arabian Chemical Company にはダウ資本が入っていること、日本の XPS 発泡企 業はサウジアラビアでのビジネスは想定していないことから、日本企業の技術を使用した 製造ライン転換は困難である。このため、日本企業が協力するとしても技術指導のみを担 当することになる。 (2)第 62 回基金執行委員会での審議 本プロジェクトの提案書は、UNIDO によってまとめられ、第 62 回基金執行委員会に提案 された。経済産業省は対処方針を用意していたが、コスト効果の高いプロジェクトである ことから、ドナー国から賛成する旨の発言が相次ぎ、特段の議論もなく承認された。 <会議文書における事務局の Recommenadation> The Executive Committee may wish to consider: (a) Approving the two foam project for the phase-out of HCFC-22 and HCFC-142b from the manufacture of extruded polystyrene foam as follows: (i) Phase-out of HCFC-22 and HCFC-142b from the manufacture of extruded polystyrene panel at Al-Watania Plastics at a cost of US $1,103,578 plus agency support costs of US $82,768 for UNIDO, and US $110,000 plus agency support costs of US $14,300 for the Government of Japan; 55 (ii) Phase-out of HCFC-22 and HCFC-142b from the manufacture of extruded polystyrene panel at Line #2 in the Arabian Chemical Company Plastics at a cost of US $615,323 plus agency support costs of US $46,149 for UNIDO, and US $110,000 plus agency support costs of US $14,300 for the Government of Japan; (b) Noting that the Government of Saudi Arabia agreed at the 62nd Meeting to establish as its starting point for sustained aggregate reductions in HCFC consumption the average level of consumption in 2009 and 2010 (estimated at 1,464.1 ODP tonnes); (c) Deducting 179.4 ODP tonnes (2,942 metric ton) of HCFCs from the starting point for sustained aggregate reductions in eligible consumption; and, (d) Requesting UNIDO and the Government of Japan to provide to the Secretariat, at the end of each year of the projects’ implementation period, progress reports that addressed the issues pertaining to the collection of accurate data in line with the objectives of decision 55/43(b), and to include those reports in the implementation reports on the HPMP, once it had been approved. 56 3.懸案中のプロジェクト 3-1.タイ(洗浄プロジェクト等) タイには日系企業が多数進出しており、日本の二国間プロジェクト策定の有望な国の一 つである。このため、タイにおける洗浄分野の情報収集およびタイのオゾンユニットとの 意見交換を目的に、2010 年 1 月に出張調査を行った。 (タイ出張調査の詳細については、 「平 成 21 年度化学物質安全確保・国際規制対策推進等(フロン等排出抑制に係る国際交渉等調 査(途上国支援))」報告書を参照。 ) タイのリード IA である世界銀行に対して、経済産業省から二国間プロジェクトの打診を 再三行った結果、2010 年 7 月の第 61 回基金執行委員会の議場外にて、世界銀行より「8.7ODP トン分を日本の二国間プロジェクトとする」 「2010 年 9~10 月頃に世界銀行とタイ政府の会 議があるので経済産業省も出席してほしい」旨の意見が表明されたが、その後会議は開催 されなかった。 世界銀行との協力体制が築けないこと、タイ政府も世界銀行に対して遠慮がみられるこ と等から、2011-14 年の日本のビジネスプランからタイのプロジェクトは外すこととなった。 なお、基金執行委員会でのプロジェクトの流れが技術よりもコスト重視になっており、日 本企業の技術を活用しづらくなっている点を考慮すると、タイでのプロジェクトはモント リオール議定書の枠組みの外で実施することも選択肢の一つとして考えられる。 3-2.インド(XPS 発泡およびスプレー発泡プロジェクト) 上述の 2010 年1月のタイ出張時に、インドのオゾンユニットと偶然 UNDP タイ事務所で 会い意見交換を行ったところ、インドオゾンユニットから経済産業省に XPS 発泡およびス プレー発泡分野での協力を求めてきた。UNDP によると、インドは 2011 年 7 月に開催の第 64 回基金執行委員会に HPMP の提案を予定しており、HPMP 承認後、XPS 発泡およびスプレー 発泡分野において具体的な投資プロジェクトが始動する予定となっている。 3-3.メキシコ(エアゾールプロジェクト) 2010 年 1 月に、メキシコの洗浄分野のリード IA である UNIDO から、メキシコのエアゾー ル分野の転換プロジェクトについて経済産業省に協力を求めてきた。 その後の UNIDO からの情報によると、メキシコの現地企業は HCFC 削減に消極的で、プロ 57 ジェクト作成に非協力的であるとのことであった。 また、日本のエアゾール協会にヒアリングしたところ、プロジェクトに協力する日本企 業を見つけるのは難しいとのことであった。 以上のことから、メキシコのエアゾールのプロジェクトについては、2011-14 年の日本の ビジネスプランからは当面外すこととなり、UNIDO にもその旨を連絡し、了承された。 <エアゾール協会ヒアリングメモ> ヒアリング日:2010 年 8 月 4 日 ヒアリング先:日本エアゾール協会 ヒアリング者:旭リサーチセンター (1)日本のエアゾール企業のフロン代替技術について ・ 日本企業は CFC から LPG および DME に転換済み。最近では CO2 や窒素も使われ始めてい る。CO2 や窒素は気体のため、使用し続け缶内の原液が少なくなるにつれ、気体の容積 が大きくなり噴射が一定でなくなる欠点がある。このため、LPG や DME に混ぜて使用す ることが多い。 ・ HFC も、一部の医療用途や不燃性が要求される溶接用には使われている。 ・ LPG や DME は可燃性のため、充填時に防爆設備が必要となる。日本では CFC 使用時から 防爆設備を使っていたため、特段の問題もなく LPG や DME に転換できた。 ・ 原液とガスの相性、缶の腐食性防止がそれぞれの企業のノウハウといえるが、下記に書 いたように、世界的にフロン代替技術は LPG および DME であり、高度な極秘技術という わけではない。その点では、途上国にライセンス供与しやすいともいえる。 ・ その他ノウハウといえば、LPG の脱臭装置。LPG は原産地によって特有の臭いがある。 これは化粧用途には致命的のため、企業は独自の脱臭装置を付けている。 (2)他の先進国のフロン代替技術について ・ エアゾール分野でのフロン代替技術が LPG および DME というのは世界共通。防爆設備が 問題になるくらいで、転換への技術的なハードルは低い。中国などでは、モントリオー ル基金を使わず、独自に転換も進んでいるようだ。 ・ 技術力も日本と他の先進国で差はない。一方、欧米企業は大量生産しているためコスト は安い。 (3)メキシコのエアゾール企業について ・ メキシコでは、噴射部には HCFC22、原液には HCFC141b を使用しているようであるが、 これは金属探傷用や溶接ガス用ではないか。いずれも不燃性が必須であり、代替技術と 58 して LPG や DME が使えない。 ・ 例え使えたとしても、現状で防爆設備が無ければ、多額の初期投資コストが必要。(製 品コストでみると、LPG や DME は HCFC より安価) ・ HFC134a は不燃だが GWP が高い。強いて代替技術を挙げると HFO1234ze か。GWP は 6 と LPG や DME よりは高いが HFC よりは低い。不燃性ではないが微燃性であり、企業や国の 判断によっては防爆設備が不要。もっとも HFO1234ze は高価のため、製品コストは HCFC 使用時に比べ高くなる。 ・ 日本企業でも HFO1234ze を使用している企業もあるので、ノウハウは持っている。 (4)日本企業のプロジェクト協力の可能性 ・ 具体的な転換先企業が決まっていないので何とも言えないが、日本企業でプロジェクト に協力するところは無いのではないか。上記のように世界的にみて技術の優位性はな く、コストも高いため海外進出には消極的。余程の大規模なプロジェクトでない限り協 力はしないと思う。 ・ エアゾール業界のコンサルタントとしては、エアゾール協会くらいしか知らない。プロ ジェクトが具体化し日本企業で参加するところがあれば、その企業の人に現地企業を見 てもらうのが良いのではないか。 3-4.マレーシア(冷凍空調プロジェクト) マレーシアには、日本企業が多数進出しており、冷凍空調分野にも日本企業の資本が入 っている企業が多い。このため、マレーシアのリード IA である UNDP も、冷凍空調分野で の日本の協力を求めている。 また、日本とマレーシア間には 2010 年に環境・エネルギー協力イニシアティブが締結さ れており、オゾン層破壊物質の削減も対象分野に入っている。 マレーシアは、第 64 回基金執行委員会に HPMP を提出する予定であり、日本の協力が期 待されていることから、今後プロジェクトを具体化する必要がある。 ※参考:日・マレーシア環境・エネルギー協力イニシアティブ 2010 年 4 月に両国首相により署名されたイニシアティブであり、安全保障上の重要なパ ートナーである両国が、環境・エネルギーに関する協力を強化することで、競争力の強化 や持続的成長を目指す。環境保全、化学物質管理、廃棄物・リサイクル等、生物多様性保 全、省エネルギー、再生可能エネルギー、基準認証の7つの分野での協力が予定されてい る。 59 3-5.中国(ODS 破壊プロジェクト) 中国の ODS 破壊プロジェクトは、UNIDO が中心となって計画が進められており、日本は、 優れた破壊技術を活かした機器導入の部分や法制化のアドバイス等で協力することが想定 されている。 ODS 破壊プロジェクトは、モントリオール基金以外からの協調融資が必須であり、回収・ 再生等に関する法制化も必要となる。このため、計画策定および基金執行委員会での承認 はハードルが高いものとなっており、本プロジェクトの計画の策定も遅れ気味となってい る。 3-6.アフリカ地域(ODS 破壊プロジェクト) アフリカ地域の ODS 破壊については、UNIDO がリード IA となり担当している。第 59 回基 金執行委員会において、委員会は UNIDO に対して 2010 年のビジネスプランにアフリカ地域 の ODS 破壊プロジェクト準備要求を掲載することを要請し、UNIDO により計画の策定が進ん でいる。 日本は機器の導入の部分で協力することが考えられるが、中国の ODS 破壊プロジェクト 同様に、基金執行委員会での承認までの道のりは長い可能性がある。 60 4.現在進行中のプロジェクト 4-1.中国(冷媒サービス分野用 CFC 全廃プロジェクト) 本プロジェクトは、2004 年末に承認され、実質上 2005 年の 1st tranche から始まり、2010 年の CFC 全廃に向けて毎年計画が推進されてきた。 CFC の回収機器に日本企業の製品が採用される可能性があることから、日本もプロジェク トに 400 万ドルを拠出している。回収機器の仕様書作成に中国政府の意図が大きく働いた ことから、結果としては、日本企業は CFC 回収機器の納入を落札出来なかったが、2007 年 にはアサダ製の冷媒検知装置 273 台が中国の各ユーザーに納入された。 プロジェクトは、既にカーエアコン整備会社への回収機器の設置は終了し、1000 人以上 の技術者の教育が終了している。2010 年は、カーエアコン分野の情報管理システムの運営 と数量監視を行ったほか、ポスター、カレンダー、パンフレット等の発行を行い、CFC 削減 の普及活動を実施した。なお本プロジェクトは 2011 年中に終了する予定となっている。 <プロジェクトの概要> プロジェクトの目的 中国全土でのサービスセクターにおける CFC の全廃 執行委員会承認 2004 年 12 月(第 44 回基金執行委員会) 金額 総額は 788.5 百万ドル そのうち日本分 400 万ドル(実施を UNIDO へ委託)、UNIDO 分 343.5 百万ドル、2005 年になって参画した UNEP 分 45 万ドル。 プロジェクトの活動 A.技術支援関係 ①情報管理システム構築とカーエアコン分野の数量監視 ②公衆への周知 ③政策検討と策定 ④消費量監視 ⑤報告 ⑥産業用冷凍空調とチラー分野での取り扱い綱領策定と業界調査 B.産業界関係 ①技術者教育 ②精製施設の設置 ③カーエアコン整備会社への回収機器の設置 C.政府関係 ①政策策定と調査 61 4-2.インド(金属洗浄用途 CTC 全廃プロジェクト) 2003 年にインド四塩化炭素(CTC)全廃プロジェクトとして執行委員会で承認され、順調 であれば 2005 年にも終了する予定となっていた。インド政府と世界銀行が全体を統括し、 各部分について、世界銀行、UNDP、UNIDO のほか日本、ドイツ、フランスなどが分担して全 体を進めてきた。 日本が分担している金属洗浄用 CTC 全廃については、2007 年にクリンビー社より洗浄機 器が出荷されたが、試運転が完了しない状態が続いていた。そこで、2010 年 1 月にタイの バンコクの UNDP 事務所で、UNDP およびインドのオゾンユニットと面談した結果、Bokaro と Bhilai の 2 ヵ所についてはクリンビーより技術者が訪問して、試運転をすることとなっ た。 当該合意に基づいてクリンビーが 2010 年 6 月 14 日から 18 日に 2 チームが 2 ヵ所を訪問 し、試運転を行ったところ、Bhilai については、保管状態が悪く、いくつかの機器からパ ーツを取り出して組み合わせを行った。自動運転はできなかったがマニュアルモードでの 試運転を行った。Bokaro についても保管状態が悪く、レベルセンサーなどの不具合があり、 試運転には至らなかった。 2 ヵ所とも、1 月の合意に基づいた訪問は満たされたという合意書を交わした。しかし、 UNDP の会計処理の関係で、まだクリンビーへの支払いが済んでいない。 一方、インドの企業側からは、必要な部品の交換を行って稼働できるようにしてほしい という要望がインドの UNDP に寄せられている。太平洋地区担当の UNDP の担当者からは、 プロジェクト資金にはまだ余裕があることから、インドの企業が要望する追加の作業を行 ったとしても、資金的には問題ないという回答を得ているが、現在のところ UNDP から日本 企業への具体的な協力についての要請はない。 日本としては、6 月の訪問に関する支払いを済ませた上で、その後の対策については協力 することを UNDP に伝えてある。 また、その他の中小企業に対するプロジェクトとしては、ワークショップを開催するこ ととなっていたが、インド政府および UNDP からは開催の連絡がない。 <プロジェクトの概要> プロジェクトの目的 金属洗浄用 CTC 使用の全廃(比較的大きな 4 企業の 9 工場について) 執行委員会承認 2003 年 7 月(第 40 回基金執行委員会) 金額 CTC の生産・消費の全廃のための総額は 5200 万ドル。 そのうち日本分 500 万ドル(実施を UNDP へ委託)、世界銀行分 3810 万ドル、フランス分 300 万ドル、ドイツ分 200 万ドル、UNIDO 分 390 万ドル。 62 4-3.アフリカ(CFC チラー転換デモプロジェクト) 本プロジェクトは、2006 年 4 月に承認された、カメルーン、エジプト、ナミビア、ナイ ジェリア、セネガル、スーダンの 6 カ国の CFC チラー転換のデモンストレーションプロジ ェクトである(AFROC:African fund project for replacement of chillers)。UNIDO がリ ード IA となり、フランス、ドイツ、日本が拠出している。 日本企業のチラー機器の採用の可能性があることから、日本は 70 万ドル拠出しているが、 本プロジェクトは、モントリオール基金以外の協調融資が必須となっており、基金以外の ファイナンスシステムの構築が必要なため、外部資金の承認に手間取り、プロジェクトの 実行が遅れていた。日本も、外部資金獲得の試みとして JBIC(国際協力銀行)からの融資 を検討したが、JBIC の融資基準に合致せず融資はされなかった。 2009 年になって、FGEF(French Global Environment Facility) からの融資の合意がな され、プロジェクトがようやく動き出している。基金以外のファイナンスシステムの導入 について、エジプトでは 2010 年に UNIDO とエジプト国立銀行との間で合意がなされたが、 他の国では現地金融機関との交渉が続くなど、依然として課題は多い。 <プロジェクトの概要> プロジェクトの目的 アフリカ 6 カ国における CFC チラー削減 執行委員会承認 2006 年 4 月(第 48 回基金執行委員会) 金額 200 万ドル(モントリオール基金分) そのうち日本は 70 万ドル(実施を UNIDO に委託) 最低協調融資要求額 477,876 ドル 協調融資機関 FGEF 63 5.その他 5-1.UNIDO から5名が来日し日本企業を見学 2009 年 10 月に UNIDO から 6 名が来日し、日本の先進的な HCFC 代替技術等を見学したが、 その評判が良かったことから、2010 年 5 月に UNIDO から別の 5 名が来日し、日本企業の技 術を見学した。 (1)来日メンバー 来日した 5 名の役職は以下の通りである。 役職 役職補足 Deputy Director and Unit Chief Solvents and Fumigant Unit, in 次長、洗浄・燻蒸チーフ charge of Libya, Syria, Jordan, Tunisia Foam expert, in charge of Pakistan, Sudan, Congo 発泡エキスパート Officer in Charge of 冷凍空調チーフ代理 Refrigeration Unit, in charge of Nigeria, Argentina, India Solvent, HPMP Cameroon, Niger, Kenya 洗浄、HPMP Young Professional, in charge of Algeria (Destruction 新人職員 Project) (2)スケジュール 日 活動/訪問先 ホテル 5/17(月) 来日 ホテルメトロポリタン丸ノ内 移動 東京→犬山市 5/18(火) 13:00 アサダ(犬山市) 移動 犬山市→東京 同上 移動 東京→足利市 10:30 アキレス(足利市) 5/19(水) 移動 足利市→大泉町 14:00 三洋電機(大泉町) 同上 移動 大泉町→東京 64 5/20(木) 10:00 東京エコリサイクル(江東区) 同上 5/21(金) 10:00 エー・エス・ケー(川口市) 同上 5/22(土) 帰国 5-2.NOU2名を JICA セミナーに招聘 2010 年 3 月に経済産業省と UNIDO の共催により開催された HCFC 代替技術セミナーの資金 が約 1 万ドル残ったことから、その資金を利用して、2011 年 1 月に JICA が主催した「オゾ ン層保護・地球温暖化防止セミナー」に、途上国のオゾン層保護に携わる政府関係者を招 聘した。 招聘にあたっては、日本との間に環境・エネルギー協力イニシアティブが締結されたマ レーシアに個別に参加を要請するとともに、基金執行委員会の会議場外等でパンフレット を配布し参加を募った。この結果、マレーシアとバーレーンの政府関係者 1 名ずつ計 2 名 がオブザーバーとして JICA 研修に参加した。 (JICA 経由の正規の参加者はタイ 1 名、スリ ランカ 2 名) <スケジュール> 月日(曜) 時間 講義/見学/行事 場所 講師/見学先 ブリーフィング TIC JICA プログラムオリエンテーション TIC JICA、METI オゾン室、 1/16(日) 来日 1/17(月) 9:00-12:00 13:30- 14:30 JICOP 1/18(火) 9:00-10:40 11:00-12:00 講義 1:わが国の「フロン関連政策」 TIC METI オゾン室 講義 2: 「モントリオール議定書」と「京 TIC 産業技術総合研究所 都議定書」 14:00-17:00 インセプションレポート発表および TIC ディスカッション 1/19(水) 9:00-10:00 講義 3:冷凍空調分野における代替技 TIC 日本冷凍空調工業会 TIC ウレタンフォーム工 術と導入施策 10:20-11:20 講義 4:発泡分野における代替技術と 導入施策 業会 移動 TIC→三洋電機㈱(群馬県大泉町) 15:00-15:30 講義 5:ノンフロン冷凍機技術につい て① 65 大泉町 三洋電機㈱ 15:30-16:30 見学 1:冷凍・空調機製造サイト① 大泉町 三洋電機㈱東京製作 所 移動 群馬県大泉町→宿泊ホテル(足利市) 足利市泊 1/20(木) 移動 宿泊ホテル→アキレス㈱(足利市) 9:30-10:00 講義 6:ノンフロン発泡技術について 足利市 アキレス㈱ 足利市 アキレス㈱足利工場 ① 10:00-11:00 見学 2:ノンフロン発泡サイト① 移動 アキレス㈱→㈱エー・エス・ケー(埼玉県川口市) 13:30-14:30 講義 7:洗浄分野における代替技術と 川口市 日本産業洗浄協議会 川口市 ㈱エー・エス・ケー 導入施策 14:30-15:00 講義 8:ノンフロン洗浄装置について ① 15:00-16:00 見学 3:ノンフロン洗浄装置製造サイ 川口市 ト① 移動 ㈱エー・エス・ケー→TIC 1/21(金) 9:30-10:30 講義 9:日本のフロン回収の現状 TIC 日本冷凍空調設備工 業連合会 10:50-11:50 講義 10:日本のフロン破壊技術 TIC 産業技術総合研究所 江東区 東京エコリサイクル 移動 TIC→東京エコリサイクル㈱(江東区) 14:30-15:00 講義 11:家電リサイクルについて ㈱ 15:00-16:00 見学 4:家電リサイクル工場 江東区 東京エコリサイクル ㈱ 移動 東京エコリサイクル㈱→TIC 1/22(土)- 23(日) : 休日 1/24(月) 移動 TIC→環境総研中部㈱(愛知県春日井市) 13:00-13:30 講義 12:フロンの再生、破壊 春日井 ㈱環境総研中部 市 13:30-14:30 見学 5:フロン再生・破壊プラント 春日井 ㈱環境総研中部 市 移動 ㈱環境総研中部→アサダ㈱(愛知県犬山市) 16:00-16:30 講義 13:フロン回収機の種類と用途 犬山市 アサダ㈱ 16:30-17:30 見学 6:フロン回収実務 犬山市 アサダ㈱犬山工場 移動 犬山市泊 66 1/25(火) 移動 宿泊ホテル→旭有機材工業㈱ (愛知県扶桑町) 9:30-10:00 講義 14:ノンフロン発泡技術について 扶桑町 旭有機材工業㈱ 扶桑町 旭有機材工業㈱愛知 ② 10:00-11:00 見学 7:ノンフロン発泡サイト② 工場 移動 旭有機材工業㈱→TIC 1/26(水) 移動 TIC→㈱前川製作所(茨城県守谷市) 10:30-11:00 講義 15:ノンフロン冷凍機技術につい 守谷市 ㈱前川製作所 守谷市 ㈱前川製作所守谷工 て② 11:00-12:00 見学 8:冷凍・空調機製造サイト② 場 移動 ㈱前川製作所→TIC 1/27(木) 9:30-10:30 講義 16:日本の技術を用いたプロジェ TIC クトの可能性 PM チセンター) アクションプラン作成 TIC アクションプラン発表 TIC 15:00-16:30 評価会 TIC 16:30-17:00 閉講式 TIC 17:00-18:00 閉講パーティー TIC 1/28(金) 13:00-15:00 元 UNIDO(㈱旭リサー 1/29(土) 帰国 ※TIC:Tokyo International Center (JICA 東京国際センター) 67