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研究報告 Al-Zn合金めっきの変色に関する研究

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研究報告 Al-Zn合金めっきの変色に関する研究
安治川技報
Vol.8(2002)
研究報告
Al-Zn合金めっきの変色に関する研究
通夫*・森下
博昭*
Prevention
of
上久保
A
Study
for
Blacking
of
Al-Zn
Alloy
Galvanizing
Michio UEKUBO,Hiroaki MORISHITA
Abstract: The prevention from blacking of Al-Zn alloy galvanizing was studied.
In the first place, the actual condition of discoloration was researched. Next the exposure test of using the
temporary rust prevention and the compound contained siloxane were evaluated. Then the exposure test of
surface treatment steel on the market was studied.
As the results of four tests, the following matters were concluded.
(1)The blacking for Al-Zn alloy galvanizing occurs extremely on grinding by grind stone.
(2)The ferrous compound contained in the Al-Zn alloy galvanizing layer was considered one of causes.
(3)The siloxane compounds was effective for prevention of blacking of Al-Zn alloy galvanizing.
Key
words : blacking of Al-Zn alloy galvanizing ; the compound contained siloxane ; grinding by grind stone ;
ferrous compound
1.緒言
暴露試験により黒色化の調査を行った。
溶融亜鉛めっきの耐食性は一般の生活環境では高い耐食
性を示すが,塩害地や濡れて乾燥しにくい環境では,比較
2.1
試験方法
(1)試験材
的早い時期に腐食することがある。このような環境では高
鋼板70×150×4.5t(SS400)に合金めっ
い防錆力が求められ,高耐食性Al-Zn合金めっきが開
きを行い,無処理,ヤスリがけ,グラインダー処理の3種
発されてきた。しかし高い耐食性の反面,Al-Zn合金
の処理を行った。グラインダー処理は#40のディスクペ
めっきは指触部,グラインダー処理部,ヤスリがけした場
ーパー,回転数2000rpmで研削した。
所が環境条件によっては黒色化することがある。
(2)試験方法
本報はAl-Zn合金めっきの黒色化に関して暴露試験
弊社屋上(大阪市西淀川区)で屋外暴露を行い,明度(マ
により,黒色化の実態調査および防止について検討を行っ
ンセル値)測定により黒色化の調査を行った。測定装置は
たので報告する。
ミノルタ製色彩色差計CR200を使用した。
2.黒色化の調査
値が10に近くなるほど明るく,0に近くなるほど暗い色
明度とは色の明るさを示し,0~10段階で示され,数
を示し,黒色化が進むとともにマンセル値は次第に小さく
Al-Zn合金めっき(以下合金めっき)を行い,屋外
*
なる。
安 治 川 鉄 工 ( 株 ) 技 術 研 究 所 ( Engineering Research Laboratory , AG AJIKAWA corp.,4-11-88 Takeshima
Nishiyodogawa-ku
OSAKA JAPAN)
Vol.8(2002)
安治川技報
2.2
試験結果
明度の測定結果よりグラインダー処理のみと比較すると
3種の処理を行った箇所の明度経時変化を Fig.1 に示す。
劣るが,一次防錆剤Eが優れていることが認められた。
10
Table 1.一次防錆剤
一次防錆剤
明度(マンセル値)
8
6
4
合金メッキ
合金メッキ+ヤスリ
2
合金メッキ+グラインダー
0
0
5
10
暴露期間(日)
15
20
A
キレート系
B
ノンクロム,フッ化物含有
C
モリブデン酸
D
リン酸鉄系
E
シリカ系
F
表面活性剤
G
リン酸系
H(塗料)
Fig.1. 3種の処理の明度経時変化
内容
シリコンアクリル系塗料
・膜厚は No.1~7は1μm 以下,No.8のみ約 50μm
グラインダー処理を行ったものは7日後に明度が7.0
から4.0まで低下し,黒色化した。ヤスリがけ部は,無
処理のものと同様の明度変化を示した。
Table 2.塗布直後の外観変化
一次防錆剤
以上の結果,グラインダー処理部の黒色化が激しいこと
をふまえて各種試験を行った。
3.黒色化防止試験(その1)
合金めっきグラインダー処理部の黒色化防止のため各種
一次防錆剤を用いて試験を行った。
3.1
試験方法
(1)試験材
内容
A
塗布直後に茶色に着色
B
塗布直後に薄く茶色に着色
C
塗布直後にまだらに茶色に変色
D
塗布直後変化なし,その後黒色化
E
変化なし
F
塗布直後黒色化
G
塗布直後黒色化
H
変化なし
鋼板70×150×4.5t(SS400)に合金めっ
きを行い,回転数2000rpm,#40のディスクペー
Table 3.3日後の明度(マンセル値)
パーでグラインダー処理を行い試験材とした。
一次防錆剤
明度(マンセル値)
E
6.8
H
6.1
無処理
7.8
(2)一次防錆剤
使用した一次防錆剤および塗料を Table 1 に示す。処理
方法はすべて液温,物温ともに常温で浸漬処理を行った。
なお,塗料は厚膜時の変色を調べるため行った。
(3)評価方法
外観の目視観察を行い,着色のなかった一次防錆剤E,
塗料Hは明度測定を行った。測定装置は,ミノルタ製色彩
3.3
考察
この試験では一般溶融亜鉛めっき用一次防錆剤を用いて
色差計CR200を使用した。
試験を行った。
3.2
以外はpH値が2~4と酸性であったことが変色の原因と
塗料 H 以外は水系で電解質をもつもので一次防錆剤E
試験結果
(1)外観
塗布後の外観観察結果を Table 2 に示す。
考えられる。また,合金めっきの研磨時に表面にあらわれ
る物質との反応も変色の原因と考えられる。
塗布直後および3日後の変色状態から一次防錆剤Eと塗
料Hが変色防止に有効と考えられた。
(2)明度
3日後の明度の測定結果を Table 3 に示す。
試験の結果,無処理時の明度値との差が小さい溶剤Eな
どのシリカ系材料が有望と考えられ,次の試験を行った。
安治川技報
3.黒色化防止試験
(その2)
4.2
Vol.8(2002)
試験結果
Table 4 に示す条件で処理直後,処理剤Lおよび処理剤
シリカ系材料は耐候性に優れ,めっき面の密着性にも優
れるため,一次防錆剤以外の処理剤とともに評価試験を行
った。
4.1
Kは黒色化および干渉膜を発生したため試験から除外した。
Table 5 および Table 6 に,それぞれグラインダー処理
部およびグラインダー未処理部の外観経時変化を示す。
Table 4.処理剤
試験方法
処理剤
(1)試験材
鋼板70×150×4.5t(SS400)を合金めっき
し,回転数2000rpm,#40のディスクペーパーで
グラインダー処理部と未処理部をつくり,試験材とした。
(2)処理剤
Table 4 に示す処理剤で処理を行った。
(3)試験方法
処理1週間後に弊社屋上(大阪市西淀川区)で屋外暴露試
験を行った。
(4)評価方法
外観の目視観察および明度測定を行った。測定装置はミ
ノルタ製色彩色差計CR200を使用した。
内容
乾燥条件
I
シリカ系処理剤
常乾
J
無機系処理剤
100℃到達
K
ハイブリッド系処理剤
100℃到達
L
ポリオレフィンウレタン系一次防錆剤
常乾
M
ハイブリッド系溶剤型塗料
80℃×10 分
N
セラミックス系溶剤型塗料
80℃×10 分
O
シリコン系化合物+コロイダルシリカ
常乾
P
シリコン系化合物(溶剤)
110℃×1分
Q
シリコン系化合物(水分散)
110℃×1分
・物温,液温はすべて常温
Table 5.外観観察結果(グラインダー処理部)
処理剤
初期
8日後
15日後
30日後
I
変化なし
黒色化
黒色化
黒色化
J
薄く灰色
全面黒く,斑点あり
黒色化,一部黄変
黒色化,底部黄変
M
透明,少し灰色
全体黒っぽい
まだらに黒色化
灰色化,一部黒色
N
変化なし
多少黒色化
僅かに黒色化
灰色化
O
変化なし
多少黒色化
僅かに黒色化
灰色化
P
薄く灰色
白っぽく曇る
僅かに黒色化
灰色化,汚れ付着
Q
薄く灰色
黒くくすむ
まだらに黒色化
灰色化,斑点有り
黒色化
黒色化,干渉膜有り
黒色化,青紫の干渉膜
無処理
-
Table 6.外観観察結果(グラインダー未処理部)
処理剤
初期
8日後
15日後
30日後
I
白くくすむ
まだらに斑点有り
ブランクと同じ
ブランクと同じ
J
白くくすむ
変化なし
ブランクと同じ
ブランクと同じ
M
白くくすむ
光沢有り
変化なし
ブランクより白い
N
白くくすむ
斑点有り,光沢減少
膜メクレ部ブランクと同じ
はじきあとなくなる
O
白くくすむ
光沢有り
ブランクと同じ
白色化
P
灰色にくすむ
光沢有り
白色化
汚れ発生
Q
白くくすむ
僅かに黒色化
ブランクと同じ
多少灰色化
多少灰色化
多少灰色化
多少灰色化
無処理
-
安治川技報
Vol.8(2002)
Table 5 より処理剤N,O,Pを用いた場合,黒色化が
防止されていることが認められた。
低下し,最高で処理剤Iの7.3,他はすべて7以下であ
った。
Table 6 よりグラインダー未処理部では,処理剤J,I,
Fig.3.より,グラインダー未処理部で無処理以上の明度
Mで無処理と変わらない外観が得られた。また,処理剤 O
を確保したのは処理剤Oのみで,他は無処理と同程度,処
でも無処理と変わらない外観であった。処理剤Pでは汚れ
理剤Pは汚れが付着したため明度が低下した。
が発生したが,これは撥水性の材料であるためと考えられ
る。
4.3
グラインダー処理有無の双方ともに黒色化を抑制してい
たものは処理剤Oのみであった。
考察
合金めっきの黒色化は,黒色化の程度が少ない一般溶融
亜鉛めっきと比較すると,高濃度で含まれるアルミニウム
グラインダー処理部および未処理部の明度変化を Fig.2
および Fig.3 に示す。
あるいはマグネシウム成分が原因と考えられ,アルミニウ
ム合金,マグネシウム合金がめっき被膜中に存在する鉄と
酸素の反応を促進し,黒色化するものと考えられる。これ
は,アルミニウム化合物,マグネシウム化合物,亜鉛化合
9
物に黒色系のものが無いことによる。従って,鉄と酸素の
I
明度(マンセル値)
8
J
7
M
た,合金めっき表面とグラインダー処理面とでの黒色化の
N
速度の違いは,合金めっき中の鉄の分布によるものと考え
O
6
P
Q
5
反応を起こりにくくする事が黒色化の抑制方法となる。ま
られ,EPMAによる合金めっき被膜の断面写真によれば
1)
,鉄成分は表層部に少なく,内部で多くなっている。
無処理
そのため,合金めっきの黒色化防止には次の方法が考え
られる。
4
0
10
20
30
暴露期間(日)
Fig.2. グラインダー処理部の明度経時変化
①
鉄の酸化を防止する。
②
鉄を酸化鉄以外の塩に反応させる
鉄分の酸化を防止する方法は,シリコン系化合物,キレ
ート剤など活性端部を酸素と結合する前に鉄に対して反応
させる方法で,この方法では鉄が塩の形にならない方法で
9
安定させるもので結合するものが分解することで酸化が進
8
I
明度(マンセル値)
J
M
7
N
6
鉄を酸化鉄以外の塩に反応させる方法は,不溶性の鉄塩
をつくる物質と塩を形成させるもので,ヒ化,ふっ化,り
O
ん化等が考えられ,黒色化する前に白色系の化合物に積極
P
的に反応させるものであるが,候補になるものは危険物が
Q
5
む。
無処理
多く実現は難しい。
そこで鉄を塩以外のもので安定化させる方法が有力と考
4
0
10
20
30
暴露期間(日)
Fig.3. グラインダー未処理部の明度経時変化
Fig.2 より最も優れた黒色化防止能力をもつものは処理
剤O,Pであったが,30日後の明度は6.5および6.
4で,明度6以上確保していたものはこれ以外に処理剤M,
Nでこれらはすべて溶剤型塗料でシリコン系化合物であっ
た。処理剤Qもシリコン系化合物であるが水系であるため
亜鉛と反応が起こって,明度が5.5まで低下したと考え
られ,その他の水系塗料(処理剤I,J)も同様に,明度
は5以下であった。また,グラインダー処理直後,無処理
では明度8.2であったが,各種処理を行った事で明度が
えられる。試験の結果からもシリコン系化合物の黒色化防
止能が優れていた。
ここまでの考察は合金めっきの高濃度アルミニウムある
いはマグネシウムの存在が黒色化を促進させていると仮定
したもので,その確認のため以下の試験を行った。
5.各種高アルミニウム含有
合金めっき材の黒色化調査
高アルミニウム含有およびマグネシウム含有合金めっき
材各種の黒色化を屋外暴露試験で評価した。
安治川技報
5.1
試験方法
Vol.8(2002)
行われていると考えられる。
(1)試験材
Table 7 に示す表面処理鋼板を使用した。なお,大きさ
(2)グラインダー処理部の明度経時変化
Fig.4 に明度変化を示す。
は70×150×0.8tに切断した。
Table.7.表面処理鋼板
鋼板
10
組成
R
6%Al-3%Mg-Zn
S
11%Al-3%Mg-1%Si-Zn
T
Zn,Mg その他
U
7%Al-Zn
V
5%Al-1%Mg-Zn
R
S
T
U
V
明度(マンセル値)
8
6
4
2
(2)
試験方法
試験材の中央50mm 幅の位置にグラインダー処理を行
0
0
い,屋外暴露(大阪市西淀川区)を行った。グラインダー
5
10
処理は回転数2000rpm,#40のディスクペーパー
で処理を行った。また,組成について皮膜を20%王水に
15
20
暴露期間(日)
25
30
Fig.4. 各種合金めっきの明度経時変化
溶解させ,原子吸光分光光度法により定量分析を行った。
(3)
評価方法
Fig.4 より,高アルミニウム含有鋼板(R,S,U,V)
明度(マンセル値)の経時変化を調査した。測定装置は
ミノルタ製色彩色差計CR200を使用した。
は30日間暴露後すべて明度が4.6以下に低下し,特に
鋼板Uは明度が2.9まで低下した。また,アルミニウム,
マグネシウムの含有量が最も少ない鋼板Tは明度低下が最
5.2
試験結果
も少なく,30日後5.5であった。
(1)皮膜組成の分析結果
Table.8 に分析結果を示す。
5.2
考察
試験の結果,黒色化の最も激しいのは鋼板Uで以下鋼板
鋼板
膜厚
μm
Table.8.皮膜組成分析結果
V,S,R,Tの順で,これは皮膜組成に含まれるアルミ
成分(%)
ニウムの含有量に比例して黒色化が進んでいた。また,マ
Al
Mg
Ni
Cr
Fe
R
11
5.2
2.3
0.00
0.053
2.0
S
11
9.5
2.8
0.43
0.028
1.8
T
61
0.3
0.4
0.07
0.006
1.6
U
74
10.1
0.0
0.00
0.002
9.2
V
59
10.1
0.7
0.00
0.001
4.7
グネシウムの影響は,この試験では明らかにならなかった。
6.まとめ
一連の試験の結果,次の事が認められた。
①
Al-Zn合金めっきの黒色化は,無処理,ヤスリが
け,グラインダー処理すべてで発生するが,特にグライ
ンダー処理部で著しい。
・Cd,Snはすべての皮膜で検出されなかった。
②
黒色化の防止には,黒色化の原因と考えられる鉄を塩
Table.8 より以下の事がわかった。
以外のもので安定させる方法が有効で,シリコン系化合
①
物の黒色化防止能が優れていた。
鋼板R,S,Vは高アルミニウム-マグネシウム合
金めっきで,鋼板Uは高アルミニウム合金めっき,鋼
板Tは溶融亜鉛めっきに近いと考えられる。
②
鋼板R,S,Tは鉄分の量が2%以下と少ない事か
ら,合金化反応はほとんど起こっていないと考えられ
る。
③
7.結言
鋼板R,Sはクロムが検出され,クロメート処理が
Al-Zn合金めっきの黒色化防止について各種試験を
行った。黒色化の防止能に優れた処理剤も確認できたが,
これらの材料を用いても黒色化は必ず進行した。今後はど
安治川技報
Vol.8(2002)
の程度の黒色化が望まれているのか黒色化防止仕様の設定
を行う必要があると考える。
文
1)小端
献
高行,佐藤 正康:安治川鉄工建設(株)技術研究所
次研究報告,5(1999),p.24
年
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