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奈良市もてなしのまちづくり条例(仮称)検討委員会 第 2 回会議録

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奈良市もてなしのまちづくり条例(仮称)検討委員会 第 2 回会議録
奈良市もてなしのまちづくり条例(仮称)検討委員会 第 2 回会議録
1
日時
平成 19 年 12 月 21 日(金)午前 10 時から午前 11 時 30 分
2
場所
奈良市役所
3
出席者
【委 員】 村上良雄委員長、根田克彦副委員長、﨑山昌彦委員、中野聖子
委員、中山徹委員、町田正委員
(欠席 佐野純子委員、中尾征夫委員)
【市職員】 政策監(まちづくり担当)、市長公室長、企画部長、市民生活
部長、都市整備部長、その他関係部・課職員及び事務局
4
会議事項
· 委員アンケートについて報告
· 意見交換
5
会議資料
キャンベラの間
·
奈良市もてなしのまちづくり条例(仮称)検討委員会第2回会議次第
·
委員アンケート回答一覧
·
委員アンケート結果
·
ワーキンググループアンケート回答一覧
·
ワーキンググループアンケート結果
·
平城遷都 1300 年記念事業に向けての「文化観光集客都市づくり」について(提言)
·
奈良市都市経営戦略会議 協働型社会形成部会報告書(提言)
·
奈良市ポイ捨て防止に関する条例
·
奈良市都市景観条例
·
奈良市屋外広告物条例
·
奈良市都市景観形成基本計画 概要版
·
古都奈良にふさわしい屋外広告物
1
6
議事の要旨
(1) 根田委員紹介
事務局より根田克彦委員(第 1 回会議は欠席)を紹介。
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)の挨拶】
· 前回の会議録を読んで、市長はどちらかと言えば観光を中心とする条例
を考えているように見受けられたが、委員の方々の発言を見ると、より
広い形で作ろうとしているように感じた。私はイギリスの都市を研究し
ているのだが、イギリスの都市のマスタープランには、たいていレジャ
ーとレクリエーションという項目があり、そこで市民のための観光整備
を扱っている。観光というものは考えてみると、一番使うのは市民なの
だから、より広い形で扱ってもいいと思う。どういう形で作るにせよ、
いいものを作りたいと思っているので、非力ながらご協力したい。
(2) 委員アンケート報告
事務局より第 1 回の会議において委員に依頼したアンケートの結果につい
て説明。
[事務局]
· 「委員アンケート回答一覧」については、委員アンケートの回答を設問
ごとに原文のまま表にまとめた。次に「委員アンケート結果」について
は、委員アンケートの内容を精査し、テーマ・論点ごとに集約した。
· また、庁内のワーキンググループの職員にも委員と同様のアンケートを
実施し、
「ワーキンググループアンケート回答一覧」
「ワーキンググルー
プアンケート結果」にまとめた。
· その他の関連資料として、奈良市都市経営戦略会議からの市長に対する
二つの提言及び「もてなしのまちづくり」の中でもまちの美観に関わる
市の条例・計画を併せて用意した。なお、「奈良市都市経営戦略会議」
は奈良市の重要課題や将来に向けてのまちづくりを検討するために設
置した会議で、学識経験者や企業経験者など 11 名で構成されている。
今年度中に観光戦略に関する提言と、近隣コミュニティ形成に関する提
言をいただく予定になっている。
2
(3) 意見交換
■ もてなしのまちづくり条例検討の議論の範囲・工程について
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· この委員会の目標として時期の問題がある。あと何回ぐらい委員会が開
催できるのかによって議論のスピードを考えないといけない。意見を見
ると、観念的な部分、ソフトの部分、ハードの部分がある。中にはポイ
捨てのことについて触れている意見もある。この委員会の議論の中で、
そういう規制を含めて条例化しようということになれば罰則について
も議論しなくてはならない。ただ、2010 年(平成 22 年)1月までに条
例を施行することを目指すとすると、罰則を入れるには制定から施行ま
で半年程度の周知期間は必要になる。その前に、パブリックコメント手
続を行うとすると、平成 21 年の 1 年ぐらいは時間がかかるように思う。
[企画部長]
· 歩きタバコの規制について、ポイ捨て防止条例で、三条通りの北側、近
鉄・JR 奈良駅の北側を美化重点区域としていて、そこに基本的に歩き
タバコの規制をする方向で、現在検討している。大阪市は世界陸上を目
標にして規制したが、奈良市は平城遷都 1300 年を目標に思っている。
歩きタバコの規制などの条例については別に委員会があり、整合性をと
る必要があるが、別の条例の動きになると考えている。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· そういうことなら、あと1年くらいかけて、平成 20 年の年末を目途に
我々が提言する中身をまとめるというスピードでいいだろう。2 か月に
1 回くらい委員会を開くとして、あと 6 回くらいになる。自由に討論す
る会議があと 2、3 回あった方がいいと考えている。来年の末を目途に
ということは、議論によってはそれにこだわらない。罰則などを設けな
ければ年を越えて、平成 21 年に入っても間に合うという気がするが、
とりあえず議論を進めて、目標は平成 20 年の年末までに何らかの提案
をするという方向で進めたい。
· 今日はフリートーキングとして、我々が検討すべき事項について皆様方
の意見を聞くという進め方としたい。
3
■ 委員アンケートの内容について
【﨑山委員(市民公募)】
· 1 番の「もてなしのまちづくりとはどのようなものか」ということだが、
「奈良から世界へ発信する理想的なまちづくり」ということで、だいぶ
ん抽象化した。基本的に市民の方々がそういうことを自覚して住んでい
るという凛としたイメージ、日本の鑑をみるような習慣や、誠実さを誇
りとした市民がまちに息づいていて振る舞いに現れているようなイメ
ージを持っている。奈良に住んでいる方々には奈良の良さを知らないで
外から指摘される方が多いので、まず奈良に住んでいる私たちが奈良に
住んで誇りと誠実さを持っていけば、見てすばらしい市民だと思われる
のではないかと思い、そのように市民の自覚を促したらどうかという意
味で回答した。
· 2 番の「もてなしのまちづくりを進めるためには」ということで、三段
階のプロセスを回答した。
「ひとづくり」、やはりまちづくり、まちを良
くしていくためには、大阪・神戸・京都に比べるとやはり奈良には、奈
良から外へ出ている人はいっぱいいるが、奈良の地に足をつけて奈良の
ために動いているという人材がもう一つ少ないのではないか。まずそう
いう人材を育成して足がかりをつける。そしてその人材のもとで、奈良
に行きたいという仕組みをつくり、それが大きく面となって、まちづく
りへと発展していくものというイメージを持っている。条例として言葉
で単に謳うだけではなく、まちに息づいているものにしたい。
· 3 番の「奈良市が特に力を入れなければならないことは何か」というこ
とだが、私は「奈良市」を行政のイメージではなく、「奈良市民」が特
に力を入れなければならないことは何かということで考えた。時間をか
けて子どもの教育から変えていく。「教育」に重点を置いて、子どもと
大人がそれぞれ奈良に根づいてきた歴史・文化などを共生して教育のあ
り方をもう一度再検討して取り組んでいけば、人づくりの根幹にもなる。
· 基本的には 2 番で答えた三段階のプロセスを特に重点を置いて、まちづ
くりが熟成していく段階が必要ではないか。
【中野委員(ホテルサンルート奈良 専務取締役)】
· 「もてなしのまちづくりとはどのようなものか」という質問に対して、
テーマ的に「好循環を生み出すこと」ということで書いた。やはりまず
住民が自分のまちに対して誇りをもっているという環境があること、そ
ういう人がいるところでは魅力的な物事がつくりだされるであろうと
4
·
·
いうこと、そこで初めてそれを魅力に思ってよそから来る方がいて、
「も
てなし」が問われ、その「もてなし」が良ければまた一から好循環が始
まっていく、という仕組みづくりだと感じている。
春日若宮おん祭りの日は学校が休みになるが、先生方はどのように言っ
て子どもたちをおん祭りのまちに送り出しているのか。自分を振り返る
と、小学校の時に学校の先生から詳しいことを教えてもらった覚えはな
いが、「おん祭りのまちの様子を絵に描きなさい」「作文を書きなさい」
などの宿題があって、休みはおん祭りのために充てるという明確な指示
が出ていたと思う。どういうお祭りかを私は祖父や父から聞き、奈良に
住んでいる子どもとして「大事にしないといけないお祭りなのだな」と
いうことを教えてもらって大きくなった。しかし、例えば休みだから大
阪に遊びに行ってはいないかと思うと、細かいことだが、教育環境の中
でははっきりとした意図をもった指導をしないといけない。やはり子ど
もの時から郷土の歴史を知ると非常に腑に落ち、身体で覚えていくこと
はたくさんある。そうして知ったことは、よそからお見えになった方に
対しても自信をもって答えられる。岸和田の例で、だんじり祭りの日に
は東京に住んでいても岸和田に帰って祭りに参加するということは、本
当に誇りを持っている市民がたくさんいるということだと思う。奈良に
はそれ以上のことがたくさんあると思うので、当たり前のところから見
直していくことが必要なのではないのか。
市がこれから進めるにおいて特に必要なのは、やはりメリット感、「も
てなしに力を入れるとどういう効果が現れるのか」を整理し続ける必要
がある。
「観光に関することは観光事業者が頑張ればいい」
「奈良であま
り観光が良くないのは観光事業者が悪いからだ」と言われる場面がある。
確かに私たち観光事業者の努力は必要なのだが、観光は非常に総合的な
ものなので、ホテル・旅館、物販、観光資源である寺社仏閣だけが頑張
ればいいのではない。観光事業を一つ成功させようとするといろいろな
事業者の協力があり、ホテルに着くまでの道すがらも全部観光客にとっ
ては観光資源になるので、まち全体で取り組まないといけない問題であ
る。「もてなし」というキーワードで、総合的なものであることを提示
し続けていくのがよい。
【中山委員(奈良女子大学生活環境学部 准教授)】
· 「もてなし」は、ハードの面、ソフトの面、いろいろな面にわたってい
くが、最終的には「もてなしの心」を持った市民の育成を中心に据えな
いとだめだ。どれほど形を整えても市民がそうならなければ実態が伴わ
5
·
·
·
·
ないので、そういう心を持つ市民をどう育てていくのかが中心にないと
いけない。ただ、項目をたくさん並べるのもいいと思うのが、あまり網
羅的にしても、例えばもてなしの心を持った市民とはどういうものか目
標を示していく場合、たくさん示してもよくわからないので、具体的に
わかりやすい目標を二つ三つ設定し、それに向けて進めていく形が市民
の育成という点ではいい。
フランスは非常に観光のまちで、例えばパリの改札口へ行ってよくわか
らなくて困っていると、必ず地元の人が声をかけてくれる。しかも一
人・二人だけではなく、わかるまで声をかけ続けてくれる。近鉄奈良駅
で同じようなことは恐らく起こらない。国民性の違いかもしれないが、
外国から人が来て困っていたら声をかけることが当たり前になってい
るのはすごい。それが教えられてしているのか、自然となったのかはわ
からないが、例えば目標として困っている外国人を見かけたら気軽に声
をかけることなどが普通にできる市民が育っていくだけでも、奈良のイ
メージが変わるのではないか。
特に力を入れないといけないことは、専門が都市計画なので、ややハー
ドのことで考えると、奈良のまちの特性から「歩く観光」は非常に重要
だ。奈良公園と西ノ京は若干離れているが、中心部になると歩くという
ことが重要だ。世界遺産、国宝その他の観光資源の点で見ると、日本で
はもちろん、諸外国と比べても奈良は非常に優れた位置にある。ただ
個々の資源ではなく、まち全体を見た場合、ならまちとしてはある程度
まちとしての整備が進んでいるが、それ以外の場所、例えば奈良の中心
部で他から来て駅を降りても「奈良のまちに来たなあ」というイメージ
がすぐ出るかというと厳しい。まち全体としてどうしていくのかという
問題がある。
また、歩くということを考えると、物理的に歩きやすい環境にすると同
時に、歩いて楽しいという雰囲気にしないと、どれほど距離が短くても
歩かないと思う。確かにお金をかければ良くできるが、お金をかけなく
ても、例えば最近あちこちで花を植えているまちが多いが、外を歩いて
いる人が見られる花にするだけでもまちのイメージが変わるので、歩い
て楽しいまちを市民がつくれる形にすべきではないか。
ドイツのライプツィヒだと思うが、立派な教会で地元の少年の合唱を1
ユーロぐらいで聴くことができた。恐らく地元の子どもにとってそこで
歌えることが重要なのだと思うが、聴く者にしてもいい経験だと思う。
お金をかければもちろんいろいろなことができるが、市民のもてなしは
創意工夫でいろいろなことが奈良でもできるのではないかと感じた。
6
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)】
· 皆様の意見を見ると、「まちに対する愛着を市民に持たせるにはどうし
たらいいのか」、「観光客への対応をどうするか」、それから観光整備を
大きくとらえて、「まちづくりの中で観光整備をハード的な面とソフト
的な面を含めた形でどうするか」の三つがキーポイントになるのではな
いか。その中心となるのは、「まちを良くしようとする人々をどのよう
に育成するか」という方策で、それらをある程度盛り込んでいく形の条
例にすればいいと今のところは感じている。
· 方策なのだが、フリートーキングでまず徹底した話をすることも一つの
やり方ではあるが、もう一つ、似た条例としていろいろなまちに観光条
例があるので、それを検討して何を付け加えるべきかなどを検討する時
間もあっていい。それから、私もいくつか条例を見たが、観光条例には
罰則規定はなく、要綱とどう違うのかというものが結構多い。条例は本
来罰則規定までいってほしいという気がするが、いろいろな形の条例が
あってもいいのかもしれない。
【町田委員(市民公募)】
· 1 番の「もてなしのまちづくりとは」で考えているのはやはり市民参加。
私が一番心配しているのは、行政のための行政にしてはいけないという
こと。あくまでも市民のメリットを提示していく、ある程度網羅的には
なるけれど、より明確化し、何本かの柱にしてわかりやすく簡潔に市民
のメリットの話をするということが必要ではないか。あくまでも「市民
の市民による市民のためのもてなし」ということを書いた。あとは、
「古
都奈良のブランディング」、消費者に対しては色々イメージがあると思
うが、条例として情報を発信していくことによって、奈良はこういった
ことを発信しているというアピールの意味も大きい。
· 2 番の「もてなしのまちづくりを進めるために必要なこと」で「市民の
コンセンサス」と書いたが、要は市民参加を徹底するということ。「市
民が主役である」ということを言わなくてはならない。地域の商工業者、
例えば会議に来ていただいてお話をしていただくことがあってもいい。
· 3 番の「奈良市が特に力を入れなければならないこと」は、議論を喚起
したいということで書いたのだが、現状、県の統計では、日帰りのお客
様と宿泊のお客様が 9~10 対1とあり、これをどうしていくか、日帰り
客に特化するという選択肢もあり得るし、また宿泊客を増やしていくと
いうこともある。現状としては大きな資本も取り入れて、宿泊客に対す
7
·
るケアを積極的に推進していかなければいけない。それがどういう方法
がいいかという問題もあるが、議論としては避けて通れない部分なので
書いた。
「奈良市が力を入れなければならないこと」については、地域の取り組
みを積極的に学んでいくということと、彦根市のイメージキャラクター
のプロモーションも非常にお手本になるので、費用対効果を見極めなが
らやっていく必要があるのではないかということを書いた。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· 1 番の「もてなしのまちづくりとは」では「顔の見える間柄の人を世界
中にたくさん持つこと」と抽象的に書いた。私は奈良県立大学でボラン
ティア論を担当していて、今年は 2 回生が対象で 100 人ぐらいいるが、
第 1 回の授業の時に「正倉院の現物を見たことがあるか」「依水園・吉
城園へ行ったことがあるか」と聞くと一人もいない。奈良教育大で担当
している講座の学生に聞いても誰もいない。正倉院は圧倒的な迫力に感
動を覚えるが、そういうものが身近にあるのに、全国から来て奈良に住
んでいる人が行ったことがない。これは何故なのか。奈良にそれだけの
魅力がないということはない。若い人たちには「奈良大好き人間」にな
ってほしいが、奈良に住んでいる学生がそのような状態となると、一日
だけ観光に来る人たちなら、よく言われるように「大仏さんを見に行っ
て春日大社へ行って興福寺を見て帰る」ぐらいの一日になってしまうの
かと思うと残念だ。是非仕事などを通じて知り合った人、つきあい始め
た人に「奈良大好き人間」「奈良の応援団」になってもらう、奈良を知
ってもらう、そのためにおいしい料理屋などお勧めの場所に連れて行く、
そういう間柄の人をいかに増やすかということではないか。
· 2 番の「もてなしのまちづくりを進めるために必要なこと」も同じだが、
特定多数の人、「あの人が奈良に来た時には是非一緒に酒を飲みたい」
という間柄の人をどうつくるか、「あの人はどうしているかな」と気に
なる間柄の人をどれだけ増やすことができるかに尽きる。
村上委員長よりワーキンググループの職員に対してもアンケートの内容に
ついて発言するよう要請。
[ワーキンググループの職員]
· 1 番の「もてなしのまちづくりとは」では、
「もてなし」とは非日常の世
界、例えばどこかへ旅した時に、旅館の女将が地域にゆかりのある芝居
8
·
·
をしてくれたり、旅館の番頭さんが朝から伝統的なまちなみを案内して
いただいたが、非日常の世界を体験できたような気がした。これは訪れ
た場所が思い出に残るという観点で書いた。
2 番の「もてなしのまちづくりを進めるために必要なこと」では、やは
り奈良でしか体験できないことを実感できる仕組み。地域をよく知って、
その魅力を伝えていくことをアピールできる人を増やしていきたいと
いうことと、まちを歩いて不快な思いをさせない、いいまちだと思って
もらえる仕組みづくりが必要。歩きたばこはやはり危険だ。そういうこ
とも考えて美しいまちづくりをする、そういう奈良の良いところを知っ
ていただきたい。
3 番の「奈良市が特に力を入れなければならないこと」では、市民がも
てなしの心を持っていろいろな人に接することが一番大切で、市民運動
を展開することにつなげたい。それにはやはり市の職員が市民運動のリ
ーダー、またはサポーターとなれたらいい。
[ワーキンググループの職員]
· 来られた方が心地よくいられる空間が提供される状態をつくらないと
いけない。それは提供される側がうれしいということは当然あるが、そ
れを提供して相手に喜んでもらえる経験は提供する側にもうれしいこ
とで、それが繰り返される中で、全体的な心地よさが醸し出されていく。
そういったまちづくりをするためには、具体的な事例を紹介して、もて
なしをすることはお互いが気持ちいいと思えることが大切だ。
· ただ、行政がどんどん進めてしまうのではなく、わかりやすく市民の皆
様に伝えるということも必要。市としては、まず市民の心を高めていく
ことに力を注ぐ必要がある。あまり理念や理論を大上段に提示されても、
単に「温かく迎えましょう」などだけではどう行動すればよいのかがわ
かりにくい。「こういったことならできる」ということを一人でも多く
の方に感じてもらうのが早道になる。
· また、商店街の自転車走行や歩きたばこの禁止を提案した。自転車が猛
スピードで走っていて、初めて奈良を訪れた方がもし危険な目に遭うと、
奈良全体のイメージを壊すことになる。大人も子どもも老人も障がい者
もゆっくりと過ごしてもらえることが、ゆったりした心地よいもてなし
のまちにつながるのではないか。
9
■ 「文化観光集客都市」について
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· 都市経営戦略会議の提言のタイトルに「文化観光集客都市」という言葉
を使っている。奈良市には「奈良国際文化観光都市建設法」という特別
な法律があって、それに基づいて奈良市でいろいろな事業をしていると
思うが、その「奈良国際文化観光都市」という名称を使わずに「文化観
光集客都市づくり」としているのは、何か意図があるのか。それからこ
の法律によって奈良市が執行する建設事業は、かなりウェートを占めて
いるものなのか。
[事務局]
· 「国際文化観光都市建設法」は昭和 25 年に制定された法律で、奈良を
国際観光都市として整備することを目的にしている。当時は下水道や都
市計画等について法律がまだ整備ができていなかったため、この法律の
下で奈良を発展させていくために優遇措置を受けて整備してきた。しか
し、その後各法律等が整備されて、そうした個別の法律によって他都市
と同様に、奈良は都市として整備をしていて、現在ではこの「国際文化
観光都市建設法」に基づいて実施をしていることはほとんどない。
· 「文化観光集客都市」は今後奈良がどういう方向へ進んでいくかという
一つのテーマとして取り組んでいる。この奈良市都市経営戦略会議では、
このテーマで、平城遷都 1300 年に向けて多くの方に来ていただき、満
足していただくためにどのようなことをしたらいいかについて具体的
な施策を検討していただいた。ただ、この「文化観光集客都市」は平城
遷都 1300 年の先まで、奈良を発展させていく一つのキーワードとし、
それに基づいて様々な施策を各部門で取り組んでいくことになる。
■ 今後の議論の進め方について
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· この委員会の進行について、せっかく委員の皆様が集まって議論するの
だから、議論そのものが楽しいものでなければだめだ。それから、楽し
い議論でできるものは楽しいもの、もちろん条例あるいは要綱でも文言
ができたところから一人歩きするものなので、それで市民の皆様方にも
楽しんでもらえるような、あるいは奈良を訪れる人たちが楽しめるよう
なものになればと願っている。
10
·
·
先程、根田さんより委員の方々の意見から、「市民の側がどうなのか・
市民がどうするか」「奈良に来られる観光客の人たち向けについてどの
ように考えるのか」、それらを裏打ちするような「まちづくり、ハード
をどうするか」の大きく三つに整理していただいた。それから、もう一
点、全国の観光関連の条例を参考に議論をしたらどうかという提言をも
らった。
「もてなし」というのは、どうしても抽象的な文言が多いので、条例に
するなら定義が必要になる。
「市民を育成する」
「もてなしの心をもつ市
民をどう増やすのか」ということでも、具体的にどういうことを考える
市民を増やすのか、そこが一番肝心な話だ。そこをどう議論を深めてい
くかという問題がある。議論の進め方についても、皆様方の意見をいた
だきたい。具体的な文言をつくるまでにかなり時間がかかるが、その文
言をまとめるのに委員会の場だけではなく、誰か考えて文書化すること
が必要になる。それを事務局にさせるのは酷なので、委員のどなたかが
その役割を担うことが必要になるかとも考える。
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)】
· 先程の私の発言の補足になるが、皆様の意見を見ると、最終的に必要な
のはまちをよくしようとする心を育てるという方策、もしくはどういう
ものが「もてなし」なのかという理念が必要。さらにその理念は「市民」
が「もてなし」をどう考えるかということと、それから「事業者」そし
て「市」がどう考えるのかという三者の理念が必要だと思う。もう一つ、
実際に「もてなし」をするためにはどうしたらいいのかということを具
体的に示す部分がやはり必要で、それも「市」に対して何をすべきか、
「市民」に対して何をすべきか、そして「事業者」に対して何をすべき
か、ということを示す部分、基本的にはこの二つが必要。
· 観光条例では、市がすることとして、観光まちづくりのマスタープラン
を作るとか、市長のマスタープランの中に条例をどのように位置づける
か、ということを書いたものが多かったと感じる。ゼロから作るのは厳
しいので、何かたたき台がいる。他の条例などをいくつか見て、勉強会
を開けば、自然と文章はできあがってくる。
【町田委員(市民公募)】
· 自分もたたき台が必要だと思っている。個別の罰則条例が他で進行して
いるなら、こちらの条例はより楽しくてチャレンジできるような、ある
程度何本柱かにしてわかりやすいものにしたい。たたき台としては高知
11
などいろいろあると思うが、より話題になりそうな挑戦的なもの、奈良
独自のものを発信していきたいと考えているので、個別の罰則条例を気
にしなくてもいいなら、かなり斬新なものができる気がする。
[企画部長]
· 基本的には「もてなし」という大きな考え方を条例化していきたい。一
方、周辺整備として、奈良市都市経営戦略会議でも提言いただいており、
例えばもてなしのまちづくりを進めていくためのポイ捨てや歩きタバ
コの規制は、周辺整備の条例として実施していくこととし、他にもアダ
プト制度など、具体的にはそれぞれに要綱などで仕組みとして定めたい
と考えている。この委員会の中心は具体的な罰則よりも「もてなしのま
ちづくり」の幹の部分になると思う。
· 今まで条例は「しなければならない」というものがほとんどだったが、
最近の傾向として、何々の役割などの言葉を使った条例が増えてきてい
る。例えば他市でユニバーサルデザインに関する条例があるが、これは
まちとしてユニバーサルデザインを広めていこうという考えの下、「市
民の役割」「行政の役割」「企業の役割」を定めている。
· 奈良の特色を出すには、やはり条例の前文で、奈良というのは他のまち
とは違うということを、奈良のもてなしをきちっと謳うという形にする
ことが、一番のキーになるのではないかと思う。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· 私は罰則を設けてでも規制が必要だと思っていることがある。例えば、
すぐに実現できることではないが、奈良公園一帯は車の乗り入れを完全
に規制をするということ。排気ガスを減らすということであれば、市の
登録事業者は市役所に来る時には例えばハイブリッド車や電気自動車
でないと乗り入れを認めないなどの規制はできると思う。どういう議論
になるかはわからないが、是非残したいものをきっちり残すための規制
というのは必要になってくるのではないか。
· 条例は棚の中に飾っておくものではないので、それを実際に生かすため
の方策をその中に取り込むことが一番肝心だと思う。他の都市で例があ
るので奈良市もしているのかもしれないが、例えば市外の著名人に観光
親善大使等の名刺を渡して配ってもらうこともよい。それから奈良市で
まちかど博物館などをつくっているが、佐野さんの意見にもコンテスト
とあったが、例えば自分のお勧めのスポット、目に見える所だけでなく、
いい匂いのする所、いい音が聞ける所などを持ち寄って、話題性がある
12
·
もので取り上げていけば、条例にも光が当たる。そうすれば、市民の皆
様にも、観光客たちにも知っていただくことにつながる。そういう密接
性をもったものにしないとだめだ。そのための具体的な取り組みの中で
こうしたことをするということが必要なことではないか。
理念の部分をどうするか、具体的な取り組みをどうするかについて、た
たき台は必要だが、たたき台を全部事務局で作れと言うのはやめた方が
いい。委員の皆様にお願いしたいのだが、自分がお気に入りのまちの観
光条例を一つ選び、自分の意見を加えて持ち寄るというのはどうか。観
光条例、あるいはまちづくりに関する条例、ハードの面の条例、市民主
体ということで最近盛んな自治基本条例も、市民がどう関わるのかとい
う基本的な事項に踏み込むこともよい。それを委員一人ひとりどこか一
つ「これがお勧めだ」という条例を選んで、次回に持ち寄ることとした
い。もちろん理念と具体的な取り組みについてもアイディアは出してい
ただきたい。一番苦労するのは理念をどのように文章化するかで、かな
り悩む部分だと思う。事務局も参考にしたい他市の条例を選んで、何故
お勧めなのかという意見を添えていただきたい。他の委員と同じ条例を
取り上げても、それぞれ視点が違うかもしれないので構わない。一人で
二つ以上挙げていただくのでも構わない。次回の会議の前に出していた
だいて、事務局に整理をお願いしたい。
【﨑山委員(市民公募)】
· 条例で理念を文章化して前文で謳うことは賛成だが、どこにもない条例
にしたいとかねてから思っていて、あるべき 20、30 年後、もっと言え
ば 100 年後の奈良市の絵を見据えた「もてなしのマップ」という地図を、
もてなしのまちづくり条例に付けられたらいいと考えている。例えば地
図を子どもが見て、「ここにこういうものがあって、ここは車では入ら
れないようになっている」といったことがわかるようにしたい。
· 学園前や富雄の方には、ほとんど旧市街を知らない人が多い。また奈良
市も、都祁や針まで広くなっている。「もてなしマップ」を作り、ビジ
ュアル化し、スクリーンに映し出して、プレゼンテーションをしたらよ
い。現状の地図や食べ歩き地図などはどこでも売っているが、未来予想
的に「このようにもてなしをしたら、こういう奈良市になる」という地
図、子どもたちにも理念をわかっていただくためにビジュアル化して、
例えば「こういうお祭りをここでやっていますよ」「燈花会はこのエリ
アでやっている」「奈良の遷都祭はこれから国営公園化でこうなってい
く」ということを表した「もてなしのマップ」を条例の最後に加えてい
13
ただきたいと思う。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· いい提案だと思う。付け加えると、
「奈良市もてなしのまちづくり条例」
と言うと、どうしてもエリアが奈良市域に限定される。しかし、隣の市
町村にも優れた公園などがあり、そこに住んでいる人たちもいる。そう
いう意味では、広域的に考える必要がある。古いもの、大事にしたいも
のと言えば、例えば、大和高原地域がある。その延長線上ですぐお隣が
天理。今でも氷室神社ではおもしろいことがされている。また、新しい
ものでも、周辺に奈良先端科学技術大学院大学がある。「もてなし」に
つながるかわからないが、例えば国立国会図書館関西館には貴重な資料
が残っていて、財産だという気がする。線を引いて考えるのはあまり好
きではないので、広域的に考えられたらいい。
■ 観光への意識付けについて
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)】
· 委員長の話では、学生が奈良の名所をほとんど目にしていないというこ
とだが、うちの学生も全然行ってない。学生もいろいろと忙しく、それ
でもあえて行きたい所と考えると、観光の動機づけがないと学生は動か
ない。普通の観光でも同じだが、奈良へ来て、見てみようと思うような
「観光地のストーリー」が必要だ。奈良へ来て、こう回ればこういうこ
とがわかるということをもっとアピールしていかないといけない。こう
いういい情報が得られるという利益がわかれば彼らも動く。条例には関
係ないが、奈良市の観光でストーリーがつくる場所があればいいと思う。
【中山委員(奈良女子大学生活環境学部 准教授)】
· 理念について、奈良市の条例なので、呼びかける対象は「市民」と「事
業者」と「行政」そのものになる。だから、市民がどうするかというこ
とが当然中心になる。ただ、同時に今のストーリーの話にも関係するが、
奈良として観光を進める以上は、もてなしの対象として、観光に来る人
にも、「こういう観光客であってほしい」ということを示すのがよい。
奈良に来る以上は当然ポイ捨てをする人は困るわけだし、もてなしの対
象は何でもかんでもではなく、もっとプライドを高くもって、「こうい
う人にもっと観光に来てほしい」
「こういうふうに学んで帰ってほしい」
「そのかわりそういう人を奈良としては全面的に受け入れて、市民ぐる
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みで歓迎したい」というメッセージ性を入れたらどうか。
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)】
· やはりストーリーがあって、その結果こういうことが分かるということ
を示すと、それに興味を持つ人が集まってくる。ならまちなどでは、日
曜日に大きなカメラやキャンバスを持った、いかにも教養がありそうな
おじいさんやおばあさんが集まっている。ストーリーを作り、そうした
人が集まってくるという観光地にしていけば楽しい。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· いろいろな問題に関心がある人に対応して、きっちりメッセージが送れ
るテーマ性をもったストーリーは必要だ。
【中野委員(ホテルサンルート奈良 専務取締役)】
· 学生の方だけでなく、住んでいる方も観光地をあまり見ていないと思う。
西側に住んでいる方には他府県からの転入者が非常に多いので、例えば
「ようこそ奈良へ引っ越していらっしゃいました、つきましてはこの日
は無料でガイドツアーがありますので一緒に行きませんか」といった、
転入者の方に対する受け入れ、「もてなし」もしていくと非常にいいと
いつも思っている。住んでいるのに知らないのはもったいないというこ
とをもっと言っていけばいい。
[市長公室長]
· 参考までに、職員採用試験で受験者に何故奈良市を志望したのかと聞く
と、半分は観光の仕事をしたいからと言う。合格者にどういう部署で仕
事をしたいかと聞くと、85%を超えて観光と答える。
· もう一つ、係長・課長昇任試験の面接官で、奈良の観光の質問をすると、
古都奈良の世界遺産の 8 資産群をきちんと答えられない職員がほとんど
だった。そういう現状なので、職員研修の中で、職員自らが奈良を好き
になって、知ってもらうという取り組みをしていきたいと考えている。
■ 市民等への情報発信について
【﨑山委員(市民公募)】
· 条例化するまでに市民の方々に公表して、パブリックコメント手続をす
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ることになるし、インターネットで議事録も公開されている。パブリッ
クコメント手続は奈良市文化振興条例の検討の時に経験したのだが、こ
れについて、市民からの意見、反応、関心度はどれくらいになるものか。
[企画部長]
· 現実にもてなしのまちづくりに関する条例を、観光と別に、作っている
市町村は、まだ無いと思う。観光のもてなしの分野はあるが、市民を対
象にしたもてなしにまで範囲を広げたものはまだどこもないので、この
反響がどれくらいになるかは今のところわからない。
【﨑山委員(市民公募)】
· 逆にそれを利用して、もてなしのまちづくり条例を作っているというこ
とをニュースとして発信すればいい。奈良市はインターネットの更新度
が早いので、市民への情報発信をどんどんしていき、市民の関心度を高
める中で、この議論を高めていくことができたらいいと思う。また「市
役所の中でやってることだ」という意識ではなくて、例えばインターネ
ットでの見出しで奈良市のホームページのもてなしのまちづくりの少
し大きいバナーを作るとか、何か目立った形で発信を続けていけばもっ
と市民の関心度も上がっていくのではないか。
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· いいアイディアだと思う。また、ちょっと意見がほしいポイントを整理
して、ホームページで市民に意見を求めるということもよい。
【根田副委員長(奈良教育大学教育学部 教授)】
· 「もてなし」という形でやるとしたら、どこまで考えるかということも
いずれ出てくる。「いいまちをつくりたい」という思いは、皆様共通だ
と思うが、では「いいまちとは何なのか」という問題が当然出てくる。
もっとアピールとして、どういうまちをつくるかというスローガンを人
目のひくものにすれば、より人目をひく条例になるという気はする。
■ 次回の会議の予定等について
【村上委員長(奈良 NPO センター 副理事長)】
· 次回の委員会は 2 月の 21 日木曜日の 10 時とする。資料の提出時期は、
事務局と調整して連絡する。
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