Comments
Description
Transcript
大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 : 平成16年度から平成20年度に長崎大学附属図書館が実施した学生 懇談会の過程と成果 Author(s) 志波原, 智美; 郷原, 正好; 長澤, 多代; 柴多, 一雄 Citation 大学図書館研究. 86号, pp.47-62; 2009 Issue Date 2009-08 URL http://hdl.handle.net/10069/23021 Right This document is downloaded at: 2017-03-29T12:15:15Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 大学図書館 における学生のニーズ を反映 させ た 学習支援環境 の構築 : 6年度か ら平成 2 0年度 に長崎大学附属 図書館が 平成 1 実施 した学生懇談会の過程 と成果 志 波 原 智 美 ,郷 原 正 好 , 長 揮 多 代 ,柴 多 一 雄 抄録 :近年, 日本の大学 において,学生の希望や意見 を大学の運営 に反映 させ ることの重要性が指摘 される 6年度か ら平成 20年度 に実施 した学生懇談会 に ようになった。本稿の 目的は,長崎大学附属図書館が平成 1 おいて明 らかになった学生の希望や意見 をもとに,附属図書館 の学習支援環境 を整備 して きた過程 とその成 果を報告す ることである。施設 ・設備,資料,サービスなど多方面にわたって学習支援環境 を整備 した結果, 学生の利用満足度が高 まった り,附属図書館の利用者数が年々増加 した りしていること,更には,学生が よ り発展的なサービスを期待するようになっていることが明 らかになった。 キーワー ド :学習支援環境,学習支援機能,学生懇談会,長崎大学附属図書館,大学教育改革 はじめに 国立大学の法人化後,大学の運営 は,各大学の特 色や個性 を反映 させて,長期的には 6年間の中期 目 標 ・計画,短期的には年度 目標 ・計画に沿 って,敬 育,研 究,社会貢献に取 り組む もの となった。その 中で,学生の希望や意見 ( 以下,ニーズ とい う) を 大学の運営 に反映 させ ることの重要性が政策面にお いて も指摘 されるようにな り,在学生や卒業生 を対 象 として実施 した懇談会やアンケー ト調査の結果 を 大学の運営や教育活動 に反映 させ る動 きが見 られる ようになった 1)。 本稿 の 目的は,長崎大学附属図書館 ( 以下,附属 図書館 とい う)が,学生のニーズをその運営 に反映 させ るため に学生懇談会 を実施 した経緯,平成 1 6 年度か ら平成 20年度 に実施 した学生懇談会 におい て明 らかになった学生のニーズ,そ してこのニーズ をもとに学習支援環境 を整備 して きた過程 とその成 果を報告す ることである。 全体 は 6章か らなる。第 1章では,学生支援の概 要,大学図書館が実施す る学生のニーズの把握の現 状 を整理 して示す。第 2章では,附属図書館の概要 と学生懇談会の実施の経緯及びその運営体制 につい て説明す る。第 3章では,学生懇談会 によって明 ら かになった学生のニーズ とこれを学習支援環境の整 備 ・充実 に結 びつけた取 り組みの全容 を説明す る。 第 4章では,グループ学習室及び開館 日 ・開館時間 に焦点 をあて,整備 ・充実のプロセス とその成果 を 説明す る。第 5章では附属図書館 における学習支援 環境の整備 を可能にした要因を説明 し,第 6章では 今後の課題 を述べ る。 1. 「学生中心の大学」への転換 1. 1 学生の立場 に立った大学づ くり 学生のニーズを大学の運営 に反映 させ ることの重 要性 は,政策面で も指摘 され支援 されている。平成 1 2年 6月に大学 における学生生活の充実に関す る調 査研究協力者会議が出 した 「 大学 における学生生活 の充実方策 について ( 報告):学生の立場 に立 った 大学づ くりを目指 して」 2) では,1 8歳人口の減少 を 背景 として,大学間の学生獲得競争が激化すること, 各大学 はそれぞれの特色 を生か した教育のあ り方 を 検討す る必要があることを指摘 し,その中で 「 大 学 はより学生の視点に近い位置に立 ち,学生に対す る教育 ・指導の充実やサー ビス機能の向上 に努める 「 学生中 こと」が重要 になると述べている。 また 心の大学」への転換 を図るとい う観点か ら,大学教 育 においては,大学で教育 を受ける学生の希望や意 見 を,適切 に大学の運営 に反映 させ ることが重要で ある」 とも指摘 している。 そ して,文部科学省 は,平成 1 9年度 ・平成 20年 度に 「 新たな社会的ニーズに対応 した学生支援 プロ グラム」 ( 学生支援 GP)3) として,学生支援 に関す る多様 な取 り組みを支援 している 4)。 , ,「 1. 2 大学図書館が実施する学生のニーズの把握 学生のニーズを大学の運営に反映 させ ることの重 要性が指摘 される中で,これを図書館 の運営 に反映 させ ようとす る取 り組み も見 られるようになった。 その現状 について,国立の大規模大学及び中規模大 学 を対象 とする独 自の調査の結果をもとに説明する5) ( 表 1) 。 47 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 表 1 図書館に関する学生のニーズを把握する方法 調査大学 国立の大規模大学 ※旧帝国大学 ( 7大学) 実施内容 実施大学 図書館サービスに関するアンケー トの実施 学生懇談会の実施 4大学 ( 北海道大,東北大,東衷大,名古屋大) 2大学 ( 名古屋大,九州大) 図書館勤務の学生アル サービスに関する意見収集 バイ トからの図書館 2大学 ( 東衷大,名古屋大) 学生ニーズ調査結果の利用形態 国立の中規模大学 6 ※医学部を有する ( 1 学部以上の大学 7大学) ・予算要求に利用 3大学 ・図書館サービスの改善に利用 6大学 学生懇談会の実施 7大学 ( 信州大,神戸大,山口大,岡山大,義 学生懇談会の実施 ( 分館) 医学部学生 との懇談の実施 ( 分館) 2大学 ( 長崎大,鹿児島大) 崎大,鹿児島大,涜球大) 2大学 ( 金沢大,涜球大) 図書館サービスに関するアンケー トの実施 媛大,長崎大,熊本大,鹿児島大,涜球大) 9大学 ( 信州大,広島大,山口大,香川大,餐 図書館勤務の学生アルバイ トからの図書館 9大学 ( 山形大,千葉大,信州大,広島大,山 サービスに関する意見収集 口大,愛媛大,長崎大,鹿児島大,洗球大) 学生ニーズ調査結果の利用形態 ・予算要求に利用 8大学 ・図書館サービスの改善に利用 1 5大学 旧帝 国大学等の大規模大学 (7大学)では, ア ン ケー ト調査 によって学生のニーズ を明 らかに してい 区,片淵地区 とい う長崎市 内の 3地区に分散 してい る大学 があ る こ とが わか った (4大学)。 これ は, 学生懇談会 を実施 して図書館 に関す る学生のニーズ 部,環境科学部,水産学部),坂本地 区には 2学部 を明 らかに した り (2大学),図書館 でアルバ イ ト があ り,各学部 は関連す る研 究科 を もつ。附属 図書 をす る学生か ら図書館 サー ビス等 に関す る感想 を得 館 としては,文教地区に中央 図書館があ り,坂本地 区に医学分館,片淵地区に経済学部分館がある。 た り (2大学)す る取 り組み よ りも多い。 6学部以上かつ医学部 を有す る中規模大学 ( 1 7大 教育学部,薬学部,工学 る。文教地区には 5学部 ( ( 医学部,歯学部),片淵地区 には 1学部 ( 経済学部) 長崎大学 は,その運営方針 に 「 学生顧客主義」 を 学)では,学生懇談会 を実施 して図書館 に関す る学 生 のニーズを明 らかにす るのは 7大学であった。 こ 掲 げてい る。平成 15年 3月 には,学 長 ( 当時 は, 斎藤寛学長)が,学生のニーズに直接耳 を傾 けるた れ は, 図書館 で アルバ イ トをす る学生 か ら図書館 サー ビスに関す る感想 を得 た り (9大学),図書館 懇談会後 の学長 の コメ ン トとして サー ビスに関す るア ンケー ト調査 を実施 した り (9 話す るのは,学生紛争以来,初 めての ようである」, 大学)す るの と同程度である。 「 学生参加 の もと,学生が持 つ能力 を最大 限 に伸 ば す こ とので きる大学 を作 る ことが重要 である」7 )が 以上 よ り,限 られた範 囲ではあるが,何 らかの方 法 によって学生のニーズ を明 らか に しようとしてい る大学図書館が少 な くない ことがわかった。 め に,各学部 の卒業生 の代表者 と懇談会 を行 った。 ,「自ら学生 と対 あった。長崎大学では,国立大学の法人化以前 にも, 学長 自身の提案 によって,学生 のニーズ を反映 させ る大学道営の試みが始 まっていた。 2. 長崎大学附属図書館 と学生懇談会 2. 1 長崎大学の概要 600名 の学士 課程 の学 生 ,約 長 崎 大学 は,約 7, 1 , 400名の大学院生,約 1 , 1 00名の教員,約 1 , 400名の 職員か らなる 6) 。 キ ャンパ スは,文教地区,坂本地 48 2. 2 長崎大学附属図書館 の運営方針 附属 図書館 では,中期 目標 ・計画の 「 教育の実施 体制等 に関す る目標」 「 学生- の支援 に関す る 目標」 学生 として 「 教育環境 の整備 に関す る基本方針」 「 , , 大学図書館研究 LXXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) へ の学習支援 に関す る基本方針 」 8) を掲 げ,附属 図 書館 の利用状況 と学生のニーズを的確 に把握 した上 長1 2 )である。司会 は図書館情報学 を専攻す る大学教 育機能開発 セ ンターの教員である。学生懇談会では, で教 育 の充 実及 び活性化 のための支援 ,学生 の修 学 ・生活のための支援 に取 り組 むことを 目指 してい る。 最初 に,参加 した学生が 自己紹介 をす るとともに附 平成 1 6年度の計画 には,「 学生 と学長,学生 と図 書館長及 び分館長,その他各学部での懇談会 を計画 ここか ら,蔵書の充実,開館 時間の延長,施設 ・ 設備面の改善 な ど,多様 なニーズがあることが明 ら 的に開催 」 9)す ることを設定 し,平成 1 7年度 よ りこ か になった。 中央 図書館 で実施 した学生懇談会 は, れを本格 的 に実行 している。具体的 には,医学分館 各分館 で実施 した もの とは異 な り,参加 した学生 の 属性が,文系 と理系 , 1年生か ら大学院生 までな ど 及び経済学部分館 における学生懇談会,中央 図書館 のある文教地区にある各学部の学生懇談会 を開催 し 属 図書館 に関す るニーズ を述べ ,次に, ここで学生 が提示 したニーズ を全員で検討 した。 多様であった。所属す る学部や学年が異 なることに た後 に,文教地区全体 の学生懇談会 を開催す る とい よって学習のパ ター ンや必要 と考 える資料 の種類が う仕組み を構築 した。 これによって,附属 図書館 に 関す る学生 のニーズ を全学的に把握す るための体制 異 なるために,学生 の間で,お互いのニーズ を理解 が整 った と言 える。 で きず議論が深 まらない とい う場面 も見 られた。 平成 1 5年度及 び平成 1 6年度 に実施 した学生懇談 会 において明 らか になったニーズについては,附属 2. 3 学生懇談会の実施の経緯 学生懇談会の始 ま りは,平成 1 5年度 に医学分館 , 経済学部分館 において各分館長が学生懇談会 を実施 したことである。 医学分館 では,各学年か ら 1名ずつ選 出 した計 6 名の学生 を学生図書委員 に任命 している。学生 図書 委員の役割 は,グビロが丘文庫 とい う同窓生が寄贈 した資料や卒業生か らの寄付金 によって購入 した図 書 を中心 とす る文庫 の選書 と運営 を支援す ることで ある。平成 1 5年 1 1月 に,学生図書委員 と医学分館 長,医学分館 の医学情報係長,電子情報係長が,学 生用 図書の選書 10 ) やグビロが丘文庫 の運用 について 約 1時間の懇談会 を行 った。その後,附属 図書館全 体の運営 について 自由に意見交換 をす る中で,学生 のニーズ と して,資料 の管理,資料 の充実,貸 出期 間の延長,学生のニーズ を収集す る箱 の設置 な どが あることが明 らかになった。 経済学部分館では,同 じ時期 に,経済学部分館長 が大学 院生 を含 む 5名の学生 を対象 として約 1時間 の懇談会 を行 った。 ここでは,研究室 に貸 出 された 資料の利用 ,蔵書検索や文献検索 ,施設や蔵書 に関 するニーズが明 らかになった。そ して,経済学部分 館長 と情報サー ビス課長がその場で これ らのニーズ への対応 の可能性 について回答 した。 ここでは,平 成1 5年 7月 よ り実施 していた開館 時 間の延長 ( 20 時か ら21時 30分へ の変更)や この学生懇談会 を開 催 した ことについて,学生が評価 していることもわ かった1 1 ) 0 図書館 の関係者が実現 の可能性 を即座 に検討 し,可 能だ と判断 したニーズについては速やかに実現 させ た 13)。 2. 4 学生懇談会 の運営 5年度及 び平成 1 6年度 に 附属 図書館 で は,平成 1 各館で実施 した学生懇談会の結果 をもとに,平成 1 7 年度 よ り総合 的 な年 間のスケ ジュール を設定 して, 学生懇談会 を実施す るように した。 医学分館及 び経済学部分館 における学生懇談会の 実施方法等 については,司会等 について も分館長が 行 うな ど従来 どお り各分館長の主導 によって実施す るように している。 参加対象 となる学生 を選 出す る方法 は,医学分館 では,学生図書委員 ( 医学部,歯学部,医歯薬学総 合研究科の中か ら各学年 1人)への依頼である。経 済学部分館では,分館 の運営委員会 の委員 による推 薦等である。参加す る学生やその推薦者 との事務連 絡及 び議事録 の作成 な ど事務 的 な業務 を担 うのは, 医学情報担当,経済情報担 当の図書館員である。 中央 図書館 では,学生懇談会 を開催 して 2年 目に なる平成 1 7年度か ら,文教 地 区全体 で実施す る学 生懇談会の前 に,学部毎 に学生懇談会 を実施す るこ ととした。 この ような仕組みに した理 由は,同 じ学 部の学生であれば,学習方法,学習の時間帯 ,必要 とす る資料 な どに共通す る部分が多 く,相互の理解 や共感が得 られやすいのではないか と予想 したため 平成 1 6年 1 2月 には,中央 図書館 に とって第 1回 である。 また, この相互理解や共感が得 られること によって,個 々の学生が 自分の経験や考 えを率直に となる学生懇談会 を実施 した。参加者 は,中央図書 館 と同 じ文教地区にある 5学部か ら選出 された計 1 3 提示 しやす くなって活発 な意見交換 となること,多 くの学生が参加す るためによ り幅の広 いニーズが明 名 の学生 , 図書館 長 ,文教 地 区委員協議会 の委員 らかになることを期待 したためである。 49 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 この仕組みによって実施 した結果,期待 していた 効果 に加 えて,同 じ学部の先輩 と後輩 という認識 に よって より興味深 く質問や意見交換がで きることが 以上が,第 2回の学生懇談会 ( 平成 1 7年度) の ために変更 した主な点である。その他の運営 につい わかった。 また,文教地 区全体 の学生懇談会では, 参加者がそれぞれ各学部の代表 とい う自覚 を強 く ある。ただ し,事務的な作業 について,第 1回の学 生懇談会の ときには試行的な行事 として課長が執 り 持 っていたために,他の参加者 と異 なる意見であっ 行 ったが,平成 1 7年度か らは主査 5- 6名 による ワーキ ンググループを組織 して,連絡調整や記録作 成 などを行 っている。 て も,各学部の学生懇談会 における議論 に裏打 ちさ れた意見 を臆せずに提示 し,話題の幅が広がるとい う効果があった。 各学部における学生懇談会の開催 については,各 学部が選出する図書館委員会の委員である教員に図 書館長が要請 した。実施方法等 については,各学部 の図書館委員の裁量に任せているために,学部が独 自に任命 した図書委員等が計画 ・実施する学部 もあ る。 参加対象 となる学生の選出の方法 は,中央図書館 のある文教地区では,学部によって, また,実施年 度 によって も異 なる。工学部では,各学科の図書館 委員が参加者 を推薦す るなど,全学科か ら学生が参 加す るような仕組みになっている。教育学部では, 学士課程 と大学院課程の各学年か ら 1- 2名が参加 す るようにしている。薬学部 と水産学部では,実験 等が多 く参加者の選出が困難であるために,事前 に アンケー ト調査 などによって意見 を収集 して,学部 で実施す る学生懇談会 の代 わ りにす ることもあっ た。その場合 には,図書館委員が推薦 した学生が こ のア ンケー ト調査の結果 を持 って文教地区の学生懇 8年度 ま 談会 に参加 した。環境科学部では,平成 1 では学部の学生支援 を担当す る教員 に学生懇親会の 実施 を委嘱 していたが,平成 1 9年度以降は図書館 委員が直接実施するようになった。参加する学生は, 実施担 当教員の直接の呼びかけによ り集 まる当初の 形か ら,平成 2 0年度 には学部内の複数の教員の呼 びかけによ り集 まる形 に変わっている。全体的に学 生懇談会の参加者は,図書館委員か ら依頼 を受けた 教員か らの呼びかけによって集 まった学生が多いよ うである。 各学部が主催する学生懇談会の会場 として各学部 が所管する会議室等 を使用することが多いが,附属 図書館 内にある会議室 を使用することもある。また, どの会場 において も,記録 をとった り,学生による 図書館 サー ビス に関す る質問 に答 えた りす るため に,約 2名の図書館員が陪席 している。 各学部が主催する学生懇談会の数週間後 に,文教 地区全体の学生懇談会 を開催 している。全体の学生 懇談会の参加者 は各学部が主催す る学生懇談会の参 加者の中か ら選出された代表 (2名程度) を中心 と しているが,他の学生が参加する場合 もある。 50 ては,2. 3で紹介 した第 1回の学生懇談会 と同様 で 2. 5 実施のスケジュール 7年度の学生 学生懇談会 を年間行事 とした平成 1 懇談会 の実施 のスケ ジュールは下記 の とお りであ る。 1 0月 7日 1 0月 1 7日 1 0月 1 8日 1 0月 2 0日 1 0月 2 0日 1 0月24日 11月2 4日 医学分館の学生懇談会 経済学部の学生懇談会 工学部の学生懇談会 教育学部の学生懇談会 薬学部 ・水産学部合 同の学生懇談会 環境科学部の学生懇談会 文教地区の学生懇談会 1 0月以降に学生懇談会 を実施す る理由は,前期の 授業,試験,夏季休業期 を経て,それぞれの学習 と 生活 の シー ンにおける図書館利用 の経験 をもとに, 学生 自身がニーズを把握で きる時期であると考 える ためである。 2. 6 運営上の要点 学生懇談会の運営 について図書館長が重視 したこ , とは 「図書館長が学生懇談会 の場 で具体 的な対応 を約束す る」 ことであった。学生 にニーズをたずね るだけでな く,決定権のある図書館長が,学生懇談 会の場で 「グループ学習室 を設置する」 「開館時間 を延長す る」 などの実行 を約束す ることが重要であ , る と考えた。そのために,情報管理部門,情報サー ビス部門の図書館員 ( 当初は各課長)が各 1名列席 して,学生懇談会の場で,図書館長か ら予算の確保 やサービスの改善について直接指示 を受ける体制 を 整 えた。医学分館,経済学部分館 において も,分館 長がそれぞれの権限の もとで対応で きることを答 え た1 4 ) 0 2. 7 進行上の工夫 中央図書館 ( 文教地区全体)の学生懇談会 におい て,学生の 自由な発言 を引 き出すために,司会,茶 菓の用意,列席者について特別の配慮 をした。 平成 1 6年度か ら平成 1 9年度 までの司会 は図書館 大学図書館研究 LXXXVI ( 2009. 8) 情報学 の専 攻教 員が担 当 した。 そ の理 由は,大 学 図 業務 を担 当す る図書館 員 が列席 す る こ とに よって学 書館 が提供 す る学 習活 動 の支援 につ いて個別 の事例 生 の 自由 な意見 を妨 げ る こ とを懸念 し, これ を避 け を超 えた一定 の見解 を持 ってい るためであ る。また, た。 更 には, 図書館 員 の席 を司会者 と対 角 の位 置 に 附属 図書館 の所属 で はないため に中立 的 な立場 で学 設 け る こ とに よって学 生 の視 界 か ら列 席 者 を遠 ざ 生 のニーズ に耳 を傾 け られ る こ と,管理職 にあ る図 け,圧迫感 を与 えない よ うに した。 書館 関係 者 と比べ て学生 と歳が近 か ったため に学 生 を萎縮 させ ない こ とを期待 したためであ る。 茶菓 を用 意 した理 由 は,学生懇談会 か ら,会 議 の 3. 学生懇談会 にお け る学生 の ニ ーズ と附属 図書館 の対応 ような堅苦 しい雰 囲気 を払拭 し,茶 話会 の気 分 で 自 由な発言 を引 き出す こ とをね らったためであ る。 学 生懇談会 にお い て明 らか にな った学生 のニーズ が妥 当であ る と判 断 した時 には,可 能 な範 囲で速 や 列席者 につ いて は,図書館 関係 者 の数 を限定 した。 か に実現 させ た。 また,運用 面 で工 夫 をす る こ とに 図書館 長,図書館 委員会 の委員代 表 の教員 に加 えて, よって対応 で きる と判 断 したニ ーズ につ いて は, 図 進行記録 と図書館 サ ー ビスの細 か い点 を確 認す るた 書館 長 の指示 の もとに直 ち に実現 させ た ( 表 2) 0 め に約 2名 の図書館 貞 が 陪席 す るが , これ以上 が列 学 生懇談会 に よって明 らか になった学生 のニーズ 席 しない こ ととした。 また, 日常 的 にカウ ンターで は,施設 ・設備 ,資料 ,サ ー ビス に分類 す る こ とが 平成 15年度∼ 20年度) 表 2 学生懇談会の開催一覧,および主な改善事例 ( 実施館の略称 :【 中】中央図書館,【 医】医学分館,【 経】経済学部分館,【 全 】 3館共通 年度 日程 学生懇談会開催 ( 参加学生数) 改善事例 ( 実施順) H1 5 l l . 1 3 【 医】医学分館 (6名) 【 経】書庫内の禁帯出図書の館外貸出の一部実施 【 経】書架案内の改善 ( 主題の表示) l l . 2 6 【 経】琴済学部分館 計 2( 回 5名) ( 11名) 【 医】要望箱の設置 経】貴重資料 ( 武藤文庫)展示室の設置 H1 6 1 2. 1 3 【 中】中央図書館 ( 1 3名) 【 医】日曜 .祝 日開館の開始 ( 1 0:0 0- 1 7:0 0 ) 【 全】学生希望図書制度の改善 ( 予算増,スピー ドアップ) 【 医】貸出冊数 .期間の改善 ( 冊数 :3冊- 5冊,期間 :1週間- 2週間) 【 経】貸出冊数の改善 (3冊- 5冊) 【 中】【 医】貴重資料展示室の設置 【 中】グループ学習室の設置 ( 利用可能人数 :約 6名) 1 . 2 5 【 医】医学分館 ( 計52 名) 回 ( 1 8名) 【 全】シラ バス掲載図書の網羅的な 購入 中】パソコンの増設 ( 31台- 5 2台) H1 7 1 0 . 7 1 0 . 1 7 1 0 . 8 1 0 . 2 0 1 0 . 2 0 1 0 . 2 4 【 医】医学分館 (9名) 【 経】経済学部分館 (7名) 【 中】工学部 (9名) 【 中】教育学部 ( 1 0名) 【 中】薬学部 .水産学部 ( 2 0名) 【 中】環境科学部 (3名) . 【 全】ミニサイズの開館カレンダーの配布開始 【 全】学生用図書の充実 ( 予算増額) 【 中】サービスカウンターの改善 【 中】開館時間の延長 ( 9:0 0-2 0:0 0-9:0 0 . -21:4 5 ) 【 中】書庫内の図書の貸出手続の簡略化 【 中】冷房時間の延長 ( 1 7:0 0-21:0 0) 【 中】コイン式複写機 ( プリンター兼用)の増設 【 全】携帯電話による蔵書検索サービスの開始 【 全】web,携帯電話による貸出状況確認サービスの開始 【 全】お知らせメールサービスの開始 【 中】グループ学習コーナーを整備 ( メディアサロン内,24席) 【 全】パソコンの増設 ( 中央図書館 52台- 70台,医学分館 8台-22台,経済 o合 学部分館 6台- l 中】中央図書館計( 7 11 回 名) ( 6 9名) 【 医】グループ学習室の設置 ( 利用可能人数 :約20名) l l . 2 4 【 H1 8 1 0 . 1 7 1 0 . 3 0 1 0 . 3 0 1 0 . 31 1 0 . 31 1 2 . 1 2 【 医】医学分館 ( 1 0名) 【 経】経済学部分館 (6名) 【 中】環境科学部 (6名) 【 中】教育学部 ( 1 0名) 【 中】工学部 (7名) 【 中】中央図書館 (9名) 【 全】中央図書館及び 2分館間の資料配送サービスの開始 【 全】学生用図書の充実 ( 予算増額) 【 中】シラバス掲載図書の購入冊数の変更 :各 1冊から2冊へ 【 中】休業期の土日祝日開館の実施 ( 1 0:0 0- 1 7:0 0) 【 中】開館時間の延長 ( 9:0 0-21:4 5-8:4 0-21:4 5 ) 【 全】Web,携帯電話による貸出予約サービスの開始 【 経】開館時間の延長 ( 9:0 0-21:4 5-9:0 0-22:1 5 ) 【 経】 トイレの改修,多目的 トイレの設置 【 経】グループ学習スペースの設置 ( 利用可能人数 :約 1 2名) 51 大学 図書館 にお け る学生 のニーズ を反映 させ た学 習支援 環境 の構 築 【 医】視聴覚 コーナーの充実 【 医】古い医学書の撤収 と新刊書の重点的な購入 【 全】背 ラベル-の著者記号の採用,全館の様式の統一 【 中】利用希望のある研究室所蔵図書の学生用図書 としての購入 【 中】AVコーナーの充実 (2人用席の増設, 機器更新) 計 6回 ( 4 8名) 約 1 0名,小 一約 5名) ) (2階部分) 【 経】空調設備の改修 H1 9 1 0. 2 0 1 0. 2 5 1 0 . 2 6 1 0 . 31 1 0 . 31 l l . 2 8 【 中】薬学部 (4名) 【 中】環境科学部 (4名) 【 医】医学分館 (9名) 【 中】教育学部 ( 1 0名) 【 中】工学部 (6名) 【 経】経済学部分館 (6名) 【 全】利用者用プリンターのオンライン出力方式への変更 【 中】軽雑誌 コーナーの再整備 ( ソファの配置等によるリフレッシュ空間化) 【 全】学生希望図書制度の改善 (1名あた り単年度 3冊- 5冊) 【 経】開館時間の延長 ( 9:0 0-2 2:1 5-8:40-2 2:1 5 ) 【 中】ライブラリーラウンジの新設 ( グループ学習向け ミーティングテープ ル :3 2席,_ カウンタ一席 :1 2席,ラウンジ席 :9席) 【 経】 日曜 日の開館時間の延長 ( 1 3:0 0-1 7:0 0- 1 0:0 0-1 7:0 0 ) 【 中日 経】試験期における土 日の開館時間の延長 ( 1 0:0 0-1 7:0 0⊥1 0:0 0 ∼1 8:3 0 ) 【 中】試験期間中における閲覧席の臨時的増設 . 【 全】学生希望図書制度の改善 ( 用紙の改善,We b受付の開始) 1 6:0 0-21:0 0 ) 【 中】暖房時間の延長 ( 【 医】開館時間の延長 ( 9:0 0-21:0 0-8:4 0-21:0 0 ) 【 中】利用希望のあった研究室図書の学生用図書 としての購入 【 中】【 医】DVDソフ トの充実 ( 中央飴約 1 7 0タイ トル,医学分館約4 0タイ トル) 【 中】【 経】図書の貸出更新の制限の緩和 ( 更新 1回のみ- 2回まで可) 1 2. 1 4 【 中】中央図書館計( 7 7 回 名) ( 46名) 【 中】増床による閲覧席の増加 ( 約1 0 0席) 中】選書 ツアーの実施 H2 0 ll . 9 l l . 1 2 l l . 1 9 l l , 2 6 1 2 . 4 1 2 . 1 6 1 2 . 1 7 1 2 . 1 9 【 医】医学部医学科 ( 1 0名) 【 経】経済学部分館 ( 1 0名) 【 医】歯学部 (6名) 【 医】医学部保健学科 (6名) 【 中】薬学部 (4名) 【 中】工学部 ( 1 0名) 【 中】教育学部 (8名) 【 中】中央図書館 (8名) 【 経】DVD閲覧可能なパソコンへの更新 .増設 (4台) 【 中】DVD ドライブの館内貸出の実施 【 中】開館時間の延長 ( 8:4 0-21:45-8:4 0-2 2:0 0) 【 中】土 日祝 日の開館時間の延長 ( 1 0:0 0-1 7:0 0-1 0:0 0-1 8:3 0) 【 経】【 医】書庫の照明の改善 【 中】【 経】長期休業期間中における貸出冊数の引 き上げ (5冊-l o仲) 【 医】開館時間の延長 ( 8:4 0-21:0 0-8:4 0-2 2:0 0 ) 【 医】土 日祝 日の開館時間の延長 ( 1 0:0 0-1 7:0 0-1 0:0 0-1 8:3 0 ) 1 8:3 0,休業期 1 0:0 0-1 7:0 0) 【 中】学生の貸出冊数上限の引 き上げ ( 開架図書 と書庫内の図書の合計 5冊開架図書 5冊 +書庫内の図書 1 0冊) 【 全】若手職点による図書館ブログの開設 【 中】館内におけるテーマ展示の開始 【 経】DVDソフ トの充実 ( 約8 0タイ トル) 【 経】グループ学習スペースへの情報 コンセ ン トの設置 【 医】【 経】AV機器の更新 .増設 【 中】【 経】空調設備の更新 ( 中央図書館本館,経済学部分館 1階部分) 【 中】外階段の改修 ( 手す り,防護板の設置) 1 . 1 4 【 中】環境科学部計( 9 9回 名) ( 71名) 【 経】祝 日お よび休業期における日曜 日の開館の実施 ( 通常期 :1 0:0 0H1 5年度∼H2 0年度計 3 3回 ( 2 6 3名) 学生懇談会の開催および改善事例 については 『 和華蘭の窓 :長崎大学附属図書飴報』に報告 している No. 94 ( 2005年 3月),No. 95・96 ( 2006年 1月),No. 99 ( 2006年 11月),No. 1 00 ( 2007年 2月),No. 1 03 ( 2008年 2月), No . 1 0 5・1 0 6( 2 0 0 9年 2月) , で き る 。3 . 1以 降 で そ の 詳 細 を説 明 す る。文 中 の ( ) 中央 図書 館 , 平 成 1 9年 度 ・医 学 分 館 ) とい う ニ ー 内 の 年 度 は 学 生 の ニ ー ズ が 明 らか に な っ た 年 度 , ズ が あ っ た 。 これ を実 現 す る た め に, 中央 図書 館 に 〔 〕 内 の 年 度 は これ を実 現 に結 び つ け た 年 度 で あ 隣 接 して 建 築 さ れ た 放 送 大 学 と長 崎 大 学 の 合 築 棟 る。 (4階 建 て ) の 2階 部 分 ( 457m2) を 附 属 図 書 館 の 閲 覧 ス ペ ー ス と して利 用 す る こ とに した。そ の結 果 , 3. 1 施 設 ・設 備 関係 の ニ ー ズ とそ の対 応 約1 00席 分 の 閲 覧 座 席 を 中央 図 書 館 に増 や す こ とが 施 設 ・設 備 関係 の主 な ニ ー ズ と して , 座 席 数 , グ 9年 度 〕。 更 に, 中央 図 書 館 で は , 読 で きた 〔 平成 1 ル ー プ学 習 の た め の場 ,複 写 機 ・プ リ ン ター , パ ソ 験 期 間 中 に , 会 議 用 の机 や椅 子 を転 用 して , 一 時 的 コ ンに 関 す る もの が あ る。 に座 席 を増 設 す る よ うに した 〔 平成 1 9年 度 〕。 座 席 数 に つ い て ,「試 験 期 間 中 は座 席 が 足 りな い 6年 度 ∼ 平 成 20年 度 ・ の で 増 設 して ほ しい」 ( 平成 1 52 また ,「グ ル ー プ で 学 習 で きるス ペ ー ス が ほ しい」 ( 平成 1 7年 度 ・医 学 分 館 ),「分 館 内 に グ ル ー プ学 習 大学図書館研究 LXXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) 室がほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・経済学部分館) とい う ニーズ も明 らかになった。 これ を実現す るために, 中央図書館 では,法令 資料室 ( 1 7m2) をグループ 学習室 ( 利用可能人数 :約 6名) として利用で きる ように整備 した り 〔 平成 1 6年度〕,閲覧室の一部 を 改装 してグループで学習で きる空間を整備 した りし た 〔 平成 1 7年度〕。 また,医学分館 にグループ学習 室 を新設 した り 〔 平成 1 7年度〕,経済学部分館 にグ ループ学習スペース を整備 した りした 〔 平成 1 8年 度〕。 グループ学習のための場 については,4 . 1で詳 しく述べ る。 パ ソコンについて ,「イ ンターネ ッ トに接続 され たパ ソコンを増や してほ しい」 ( 平成 1 6年度 ・中央 図書館) 「 パソコンが古いので,新 しくしてほしい」 , ( 平成 1 7年度 ・中央図書館),「 US B対応のパ ソコン にしてほ しい」な どのニーズがあった。 これを実現 するために,中央図書館 では,学生用のパ ソコンを 管理 している情報 メデ ィア基盤セ ンターの協力 を得 て 21台のパ ソコンを増設 した 〔 平成 1 6年度〕。その 後,同セ ンター による契約更新 の際 に, これ らの ニーズを勘案 して,図書館 内で利用で きるパ ソコン B対応 の機種 に更新 す る とともに,その数 を をUS 約1 . 5倍 に増設 した ( 中央図書館 :5 2台-7 0台,医 2台,経済学分館 :6台- l o合) 学図書館 :8台-2 〔 平成 1 7年度〕。 , 複写 複写機 ・プ リンター関係 のニーズ として 「 機 を増設 してほ しい」 「3階に複写機 を設置 してほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書館) 「オ ンラインで 出力で きるプリンターを設置 してほ しい」 ( 平成 1 8 年度 ・中央図書館)な どがあった。 これを実現す る , , ために,中央図書館では,生協 と協議 して既設のコ イン式複写機 ( プリンター兼用) 1台に加 えて,雑 誌の閲覧 コーナーに近い場所 にある情報 コンセ ン ト ルーム ( 1 36m2) にコイ ン式複写機 を設置 した 〔 平 成1 7年度〕。 また,図書館 内の学生用 プリンターへ の出力方式 を,それまでの専用パ ソコンか ら出力す るス タン ドアロンの方式か ら,学生用パ ソコンか ら 直接オ ンラインで出力する方式 に変更 した 〔 平成 1 9 年度〕。 , 夜 間の開 施設 ・設備関係の他 のニーズ として 「 館時の冷暖房 を入れる時間 を延長 してほ しい」 ( 平 ∴ 成1 7年度 ・平成 1 8年度 ・中央 図書館) 「夏 に冷房 が入っていて も ( 特 に 2階の)閲覧室が大変暑いの で,改善 してほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・平成 1 8年度 ・ , 経済学部分館 ) 「トイ レの音 や臭 いが気 になる」 ( 平成 1 5年度∼平成 1 7年度 ・経済学部分館) などが あった。これ らに対応す るために,中央図書館では, 冷房 を切 る時間を 1 7時か ら21時に延長 した 〔 平成 17年 度〕。 また,文教地 区の集 中ボ イ ラー方式 に 拠 っていたために附属図書館独 自の運用がで きず対 応が遅れた暖房 について も,集中ボイラーの廃止 に 伴 う暖房の館内設備への切 り替 えを機 に,1 6時か ら 21時に延長 した 〔 平成 1 9年度〕。経済学部分館では, 故障 していた空調機 を更新 した り 〔 平成 1 8年度〕, トイ レを改修 した りした 〔 平成 1 8年度〕。 3. 2 資料関係のニーズ とその対応 資料 関係の主なニーズ として,蔵書の充実,学生 用の希望図書制度,AV資料 に関す るものがある。 蔵書の充実に関するニーズはどの学生懇談会にお いて も顕著であった。主 なニーズ として 「 蔵書の 充実が最 も重要だ と思 う」 ( 平成 1 6年度 ・中央図書 鰭) 「 授業で課題が出た時に利用 で きる図書の冊数 が少 ない」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書館) 「 研究室 に しか所蔵 されていない図書 を図書館 にも置いてほ し い」 ( 平成 1 6年度 ・平成 1 7年度) 「 ベス トセラーが ほ しい」 ( 平成 1 7年度∼平成 2 0年度 ・中央図書館), 「図書が古 い」 ( 平成 1 5年度∼平成 20年度 ・全館) がある。学生が利用で きる図書 を増やすために,シ ラバスに掲載 された図書 を優先的に購入する制度 を 確立 した り 〔 平成 1 6年度〕, シラバスに掲載 された 図書 の購入冊数 を 1冊か ら 2冊 に変更 した りした 8年度〕。 また,研究室貸 出の図書 に関す る 〔 平成 1 ニーズに対応するために,利用 申 し込みがあった図 書 を学生用 図書 として購入 して開架 図書 とした り 〔 平成 1 8年度〕,ベス トセ ラーに関す るニーズに も 対応で きるように学生希望図書 (リクエス ト)制度 6年度〕。 また,図書が を充実 させた りした 〔 平成 1 古い とい う問題 を解決するために,学生用図書費 を 増額 した。平成 1 7年度 には,中央 図書館 に配架す る図書 の受 け入れ冊数 を前年度 までの 1 , 528冊か ら 3, 077冊- と大 幅 に増加 させ ,平成 18年度 には, 4, 382冊- と更に増加 させた 〔 平成 1 7年度∼平成 1 8 年度〕。医学分館では,教員の協力 を得 て開架書架 か ら古い医学書 を撤収 し,撤収 した旧版の図書 に代 わる最新版の図書や新刊書 を重点的に購入 して配架 す ることによって,開架書架の図書 を更新 した 〔 平 成1 8年度〕。 学生希望図書制度 に関す るニーズ として 「 学生 希望図書の即時購入の上限 (1名あた り単年度 3冊) をな くしてほ しい」 ( 平成 1 8年度 ・中央図書館,経 済学部分館)があった。 これについては,予算 を増 額 し,即時購入の上限を 1名あた り単年度 5冊 に変 更 した 〔 平成 1 9年度〕。 また 「リクエス トを記入 す る用紙が堅苦 しい」 ( 平成 1 9年度 ・中央 図書館) とい う意見があったので, リクエス ト用紙の タイ ト , , , , , , 5 3 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 ルやデザインを明る く親 しみやすい ものに変更 した で きる冊数 を増や してほ しい」 ( 平成 1 7年度,平成 〔 平成 1 9年度〕。 19年度 ・経済学部分館 ,平成 18年度 ,平成 19年 度 ・中央 図書館 ),「貸 出期 間 を長 くしてほ しい」 ( 平成 1 5年度 ・医学分館 ,平成 1 8年度,平成 20年 度 ・中央図書館),「 借 りた図書 をどの館で も返却で きるようにしてほ しい」,「中央図書館 と両分館の間 で資料 を配送 してほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書 鰭,経済学部分館) な どがあった。医学分館 では, 図書の貸出冊数の上限は 3冊であ り,貸出期間は 1 週間以内であった。 これ を中央 図書館 と同 じ5冊, 2週間以内に引 き上げた 〔 平成 1 6年度〕。続いて経 済学部分館で も,貸出冊数の上限を 3冊か ら 5冊 に 引 き上 げた ( 貸 出期 間は以前か ら 2週 間であった) 〔 平成 1 6年度〕。その後 の改善 については,貸 出冊 数,貸出期 間 ともに現状 を適当 とする意見 もあった ために慎重に検討 していたが,中央図書館 における 書庫 内図書 につ いて,開架 図書 とは別 に 1 0冊借 り られるように した 〔 平成 20年度〕。更 には,中央図 書館 と経済学部分館 で は夏休 み等 の長期休業期 に 他 に,「資料 の配列 をわか りやす くしてほ しい」 ( 平成 1 5年度 ・経済学部分館 ほか多数) とい うニー ズがあった。 これに対応するために,背 ラベルに記 載する請求記号 として,分類記号 に加 えて 2段 目以 下に表示す る記号が各分館等で異なっていたが,全 館 において分類記号 と日本著者記号表による著者記 号 を使用するように統一 した 〔 平成 1 8年度〕。 AV資料 に関す る主 なニーズ として,「医学系 ド キ ュメ ンタリーの映像 資料 が ほ しい」 ( 平成 17年 度 ・医学分館),「映画 の DVDを充実 してほ しい」 ( 平成 1 8年度 ・中央 図書館),「ビデオ ・DVDの機 器 を増加 してほ しい」 ( 平成 1 7年度∼平成 1 9年度 ・ 医学分館)がある。 これを実現す るために,中央図 書館では,映画, ドラマ, ドキュメンタリー,教養 番組 などの DV D資料 を充実 させた り,DVD・VHS 視聴用 のモニターやプレーヤーを更新 した り, 2名 で利用で きる AVブースを増設 した りした 〔 平成 1 8 年度〕。経済学部分館 ,医学分館 について も,年度 毎 に館 を定めて重点的にソフ トを充実 させた り,機 器 を更新 した りした 〔 平成 1 9年度∼平成 20年度〕。 限って,開架 図書 の貸 出冊数の上 限を 5冊か ら1 0 冊 に引 き上げた 〔 平成 20年度〕。 また,中央図書館 と両分館で貸 出 ・返却資料 を配送することについて は,新着図書 ・雑誌の配送の システムや学内便 を活 3. 3 サービス関係のニーズ とその対応 サー ビス関係の主なニーズ として,開館 日 ・開館 bや携帯電話 を利用 した 時 間,貸 出サー ビス ,We サービスに関するものがある。 開館 日 ・開館時間に関 しては,「 夜遅 くまで開館 してほ しい」 ( 平成 1 6年度 ・中央図書館 ,平成 1 7年 度 ・経済学部分館 ほか),「 1限 目が始 まる前 に開館 してほ しい」 ( 平成 1 7年 ・中央図書館 ほか),「 休業 期の土 日も開館 してほ しい」 ( 平成 1 7年 ・中央図書 鰭),「で きれば 24時間開館 に してほ しい」 ( 平成 1 8 年度 ・医学分館 ほか)な ど,常に多 くのニーズがあ る。開館 時間の延長 については,平成 1 5年度か ら 段 階的 に実施 してい る。平成 21年 4月現在 では, 学期期 間中の月曜 日か ら金曜 日 ( 祝 日を除 く) につ いては,中央図書館 ,医学分館 では 8時 40分か ら 22時 まで,経済学部分館 では 8時 40分か ら22時 1 5 分 までを開館時間 としている。土 ・日 ・祝 日,休業 期の開館時間について も,3館 とも延長 をしている。 開館時 間の延長の詳 しい経緯 については 4. 2で述べ る。 また,「図書館 の開館 時間の予定表 を小 さい紙 に印刷 して配布 してほ しい」 ( 平成 1 6年度 ・中央図 書館) とい うニーズに対応す るために,A4サ イズ だった開館 カレンダーを,財布 などに入れやすい ミ ニサイズにして配布するようにした 〔 平成 1 7年度〕。 貸 出サー ビス関係 のニーズ として,「 一度 に貸 出 用 してサービスを開始 し, 3つの図書館の どこにお いて も他館の資料の貸出 ・更新 ・返却がで きるよう にした 〔 平成 1 8年度〕。 We bや携帯電話 を利用 したサー ビス関係 のニー 54 ズ として,「 携帯電話 によるサー ビス を充実 させ て ほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書館),「 携帯電話へ メールで図書館 関係 のお知 らせが届 くとよい」 ( 平 成1 7年度 ・中央図書館),「 webか ら図書 を予約で きるようにしてほ しい」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書館) などがあった。そ こで,携帯電話か ら蔵書検索 をで きるようにし 〔 平成 1 7年度〕,We bや携帯電話か ら 自分が借 りてい る図書や予約 の状況が確 認で きる 「 貸出状況確認サービス」を導入 した 〔 平成 1 7年度〕。 また,図書館か らのお知 らせ を配信する 「 お知 らせ メールサービス」 を開始 し 〔 平成 1 7年度〕,We bや 携帯電話か ら貸出予約がで きるように した 〔 平成 1 8 年度〕。 これ以外 に,「 職員がいつ も忙 しそ うで声 をかけ に くい」 ( 平成 1 6年度 ・中央図書館 ほか),「 職員 に 笑顔があった らいい」 ( 平成 1 7年度 ・中央図書館), 「月 ごとのテーマ展示 な どがあ る とよい」 ( 平成 1 8 年度 ・中央図書館),「 新 しい設備やサービスについ て しっか りと広報 してほ しい」 ( 平成 1 9年度 ・中央 図書館,経済学部分館 ほか) など,職員 と利用者 と の距離感,広報 に関する問題が明 らかになった。 こ 大学図書館研究 L XXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) の状況 を改善するために,中央図書館のサー ビス部 門では,職員が 自席で待機す る従来の体制か らロー テー シ ョンによって参考調査用のカウンター と貸出 用のカウンターの両方で常時利用者 を待 ち受ける体 制 に変更 した 〔 平成 1 7年度〕。 また,若手の職員の 企画 による中央図書館 内の ミニテーマ展示 を実施 し たり 〔 平成 2 0年度〕,ブログによる情報発信 を開始 ニーズに十分 に応 えているとは言 えない。そのため 7年 1 2月 に, 中央 図書館 の入 口付 近 に に,平成 1 あ った旧雑誌 閲覧室 をメデ ィアサ ロ ンとして改装 し,サ ロ ン内の一角 にある閲覧席 ( 2 4席分) をグ ループ学習 コーナー として会話や相談がで きるよう に した。 この部屋 には,パ ソコ ンコー ナー ,AV コーナー,新聞 コーナー等があるために,多様 なメ デ ィアの情報 を利用 しなが らグループワークがで き 0年度〕,サー ビス部門だけで した りして1 5 )〔 平成 2 な く,学生 との接点を日常的に持たない管理部門の 職員 も含 めて,利用者 との距離 を縮めるための方策 を模索 している。 多 いために,静寂 を要 しない空間 としてグループ学 習のための場 とす ることに問題はない と考 えた。だ 4. 学習支援環境の改善の事例 が,利用状況 を観察すると,複数名が利用 で きる閲 覧机 を 1人で利用する学生が多いためにグループで 第 4章では,第 3章で列挙 した学生のニーズ とそ の対応 の うち, グループ学習 のための場及 び開館 まとまって席 を確保するのが難 しい,グループ毎の プライバ シーを確保するのが難 しいなどの問題が明 日 ・開館時間に焦点をあてて,その改善のプロセス と成果 を説明する。 らかにな り,グループ学習のための場 として有効 に 利用で きないことがわかった。 4. 1 改善の事例 :グループ学習のための場 中央図書館 に続いて,分館のグループ学習のため の環境 を整備 した。平成 1 7年 1 0月 には,医学分館 にグループ学習室 ( 利用可能人数 :約 2 0名) を設 4 . 1 . 1 学生のニーズに対応 した最初の取 り組み 平成 1 6年度 よ り,各館 の学生懇談会 において明 , らか になった共通のニーズ として 「グループ学習 がで きる場所がほ しい」 「その設備 を充実 させてほ , しい」がある。 これを実現す るために,各館 はとも に,グループ学習のための場 を整備 した。 る場 となった。 また,パ ソコンの操作音等の音源が 置 した。医学分館 2階の旧視聴覚室 ( 5 4m2) を転 用 したのである。平成 1 8年 9月 までの 1年 間の利 用 は,3 3 9組 ( 1 , 3 2 4名)で,中央図書館 のグループ 学習室 よ りも多 く利用 されている。平成 1 8年 1 2月 中央 図書館 では,平成 1 7年 3月 に,館 内の閲覧 室 に隣接す る旧法令資料室 ( 1 7m2) をグループ学 に は,経 済 学 部 分館 に グ ルー プ学 習 スペ ー ス ( 2 2m2,利用可能人数 :約 1 2名) を設置 した。2階 の 旧新 聞閲覧 コーナーにパ ーテ- シ ョンを取 り付 習室 として利用することとし,新 しい ドアを設置 し, 会議室等で使用 していた机 と椅子 を転用す ることに け,新 しくミーティングテーブル,椅子,ホワイ ト ボー ドを購入 してグループ学習用 に改装 した。平成 よって整備 をした。 この部屋 は,壁面の 3万には法 令資料の書架があるために狭 くなってお り,椅子 も 6脚 しかな く 1グループしか利用で きなかった。グ ルー プ学習 のための理想 的な場 であ る とは言 えな 1 9年度には6 3組 ( 3 3 5人)の利用があったが,他の かったが,附属図書館が学生のニーズに対応 してい る姿勢 を示す ことが先決であると考 え,最小の予算 と期 間で可能な方法 を選択す ることにより,学生懇 談会で明 らかになったニーズを同一年度内に実現す るこ とがで きた。平成 1 7年度 にこの部屋 を利用 し たのは 2 6 7組 ( 1 , 0 6 4名)で, まず まずの利用があっ た とい うことがで きる。だが,利用 した学生の指摘 によ り,部屋が狭い,空調がない, 1室だけでは十 分ではない とい う問題が明 らかになった。特 に, ド アで仕切 られた学習室に空調がなかったために,扇 風機や電気 ス トーブを貸出 して対応 していたが,壁 調が ない こ とを知 って利用 をあ きらめ る学生 も多 かった。 中央 図書館 において利用で きるグループ学習室が 1室 だけで,そ こに空調が ない状態で は,学生 の 館 と比べて,利用率はやや低いと言える。 以上の ように,学生のニーズをもとに, まずは中 央 図書館,各分館 ともにグループで学習す るスペー ス を確保 した。 この状態で,各館の使用状況 を観察 した り,翌年度以降の学生懇談会 において学生か ら 意見 を得た りす ることによって,学生 による評価 と 更 なるニーズを明 らかにし,これをもとに次の整備 方針 を検討 した。 4. 1 . 2 学生のニーズに対応 した更なる取 り組み 中央図書館では,メディアサロンにおける学生の 行動 を観察す ることによって,グループが集 ま りや すい場づ くりを考える必要があると考 えた。そこで, 8年度 に予定 していた放送大学 との合築 によ 平成 1 るフロア増設の ときに,学生 自身が 自由に空間を設 計で きるライブラリーラウンジ ( 1 0 7m2) を設置 し た。 このラウンジでは,窓際のカウンタ一席以外 の テーブル と椅子 をすべてキャスター付 きに し,複数 5 5 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 のテーブルを組み合 わせてグループで学習や相談が らか になった。 これ を実現す るために,平成 1 8年 で きるようにした。 また,閲覧室内の一角にある応 接セ ッ トでグループ学習 を した り話 し込んだ りす る 1 2月に可動式の間仕切 りを設置す る工事 をして, 2 つのグループ学習室 として利用 で きるように した。 36m2) の部屋 で,約 1 0名が利 ひ とつ は Lサイズ ( 用で きる。 もうひとつは, Sサイズ ( 1 8m2) の部屋 で,約 5名が利用で きる。 また,グループ学習室で パ ソコ ンを使用 したい とい うニーズがあったため に,各部屋 に情報 コンセ ン トを設置 した。その結果, 9年度の利用者 は 6 7 6組 ( 3, 1 97名),平成 2 0年 平成 1 度の利用者は 6 7 7組 ( 3 , 5 2 4名) と,有効に活用 され るようになった。 経済学部分館 では,平成 1 8年度 にグループ学習 スペースを設置 した ときに,電源,ホワイ トボー ド, ス ク リー ン,ハ ブを整備 した。平成 1 9年度 には, 情報 コンセ ン トも設置 した。 この学習スペースがあ ま り利用 されなかったために,スペースの有効利用 を考 えて,グループ学習室 として利用 されない時間 帯 には,情報 コンセ ン トコーナー として利用で きる ように した。ただ,同分館 は非常 に狭隆なため,平 成 20年 8月以降には,学習スペ ースが一時的に図 書 日録 の遡及入力の作業スペース として使用 され, 現在 はグループ学習用のスペースがない状態 となっ ている。 学生が多かったこと,学生懇談会で 「 館内に くつろ 8年度 ・中央図書館) と げる空間がほ しい」 ( 平成 1 い う意見 があった こ とを考慮 して, ラウ ンジ用 の テーブル とソファーを 2セ ッ ト整備 した。 この ラウ ンジがオープ ンしたのは平成 1 9年 6月 であるOオープン直後 には利用す る学生は一部に限 られていたが,徐 々に多 くの学生が利用するように なった。1 5時の時点における在席者数の 1か月の累 計 は,平成 1 9年 6月は 3 28名,平成 20年 6月は 6 59 名であった。館内の他の空間 とは明 らかに異 なる活 気 のあ る賑 わいがあ り,「 友 人,仲 間 と話 したい」 とい う学生がラウンジを利用す るようになった。朝 か ら待 ち合わせて学習す る学生のグループも見 られ る。 ラウンジの設置 によって,図書館内に静 と動の ゾーニ ングがで きたといえる。 一方,最初 に設置 したグループ学習室の利用 につ いて,平成 1 9年度 には 234組 ( 1 , 004名) とほぼ前 年並 み の利用 が あ ったが ,平 成 20年度 には 92組 ( 41 7名) に激減 している。その理由 として,学生の 学年進行 による入れ替わ りによ り,入学時か らライ ブラリーラウンジを利用す ることが一般的になって きたために,必ず しも快適な環境であるとは言 えな いグループ学習室 を利用 しようとす る学生が減った こ とが ある と考 え られ る。多 くの学生が ライブ ラ リーラウンジを利用す るようになっているが,各 グ ループのプライバ シーを確保す る必要性 を指摘する 学生 も多い。 また,カウンターには,1 0名程度でグ ループ学習 をしたい とい う学生の相談 も多 く寄せ ら れた。1 0名程度 とい うのは,長崎大学 における初年 次の必須科 目である 「 教養セ ミナー」のクラスのサ イズ と同 じである。 このセ ミナーでは,グループで 調査 ・発表する機会が与 え られている。そのために, 空調 とパ ソコンを利用 で きる環境 を備 えた約 1 0名 のグループが利用で きる区切 られた学習室の整備が 必要であると考えた。 これを実現するために,平成 21年 2月に,情報 コンセ ン トルームの一部を間仕切 りして,新 たなグループ学習室 ( 約2 0m2) を設置 した。 また,ニーズ として挙 が っていたホワイ ト ボー ドについて もグループ学習室用の備品 として購 入 して, この学習室 に整備 した。今後 は,利用 しや すい予約方法など,グループ学習室の よりよい運用 のあ り方を検討する必要があると考えている。 医学分館 では,平成 1 8年度 の学生懇談会 におい て,「グループ学習室 に仕切 りを設 け, 2グループ で利用 で きるように してほ しい」 とい うニーズが明 56 4. 2 改善の事例 :開館 日 ・開館時間 学生懇談会では,その開始時 よ り開館 日の増加, 開館時間の延長に関するニーズが多 くあった。 附属 図書館 では,学生懇談会 を開始 した平成 1 5 年度には,すでに開館時間を延長 していた。具体的 には,中央図書館で休業期以外 の 日曜 ・祝 日開館 を 実施 した り,経済学部分館 で平 日の夜 間開館 を 20 時か ら21時 3 0分 に延長 した り, 日曜開館 ( 1 3時か ら1 7時 まで) を試行 した りしていた。 また,医学 分館 は 21時 まで開館 してお り,医学分館 の分室で ある病院図書室の 2 4時間開館 を実現 させていた。 中央 図書館 では,平成 1 6年度の学生懇談会 にお いて,「 2 0時の閉館時間 ( 平 日) を21時か 2 2時に繰 り下 げて ほ しい」 とい うニーズが あ った。 また, 「 土曜 ・日曜 ・祝 日の閉館時間を2 0時か 21時に繰 り 下げてほ しい」,「 試験期間中の開館時間を 9時か ら 8時か 8時 30分 に繰 り上 げてほ しい」 とい うニー ズを得た。 これ らのニーズに応 えるために,中央図 7年 2月の試験期 間中に閉館 時間 書館 では,平成 1 を繰 り下 げる とい う試行 を した後 に,平成 1 7年 4 月か ら平 日 ( 休業期 を除 く) の閉館 時間を 2 0時か ら21時 4 5分に繰 り下げた。 平成 1 7年度の学生懇談会で も, ひ き続 き,朝 の 開館時間の繰 り上げ,土 ・日 ・祝 日の開館時間の延 大学図書館研究 LXXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) 長,試験期の開館時間の延長,休業期の土 ・日 ・祝 日開館 に関す るニーズが明 らかになった。そ こで, 平成 18年 4月には,平 日の開館 時 間 を 9時か ら 8 時40分 に繰 り上 げ,休業期 の土 ・日 ・祝 日開館 を 開始 した。 平成 18年度の学生懇談会では,土 ・日の開館 時 間の延長 ( 1 8時か 1 9時頃まで),朝の授業前 の開館 (8時 ごろ),平 日深夜 の開館 ,24時 間開館 な どの ニーズ が あ った。平 成 19年 7月 には,試験 期 の 土 ・目について閉館時間を1 8時 30分 まで繰 り下げ, 平成 20年 7月には休業期 を除 く土 ・日 ・祝 日の開 館の時 間帯 を1 0時か ら1 8時 30分 まで に延長 した。 また,平 日 ( 休業期 を除 く)の開館の時間帯 を 8時 4 0分か ら22時までに延長 した。 平成 20年度の学生懇談会では,朝 の開館 時間に ついて 「 平 日の朝 は もう少 し早 く開館 してほ しい」, 「 土 ・日 ・祝 日も 8時40分か ら開館 してほ しい」 な どのニ ー ズが 明 らか になった。夜 間 につ い て は, 「 夜の1 2時 まで開館 してほしい」 「 試験期の開館時 間 を延 長 して ほ しい」 な どの意見 が 出 る一方 で, 「 夜 間延長 は もう充分」 との意見 にうなず く参加者 も多かった。 , 医学分館 では,平成 16年 4月か ら日曜 ・祝 日に も開館 していた ( 1 0時か ら1 7時 まで)。平成 1 6年度 に医学分館 で開催 した学生懇談会では,開館時問の 延長が高 く評価 されていることが明 らかになった。 ここでは,更なる開館時間の延長 に関す るニーズは なかったために,学生のニーズに十分 に対応 した と い うこ とがで きる。その後,平成 1 8年度,平成 1 9 年度の学生懇談会では,土 ・日 ・祝 日の開館時間の 延長 に関す るニーズが明 らかになったために,平成 20年 1 0月か ら,土 ・日 ・祝 日の開館時間帯 を1 0時 か ら1 8時 30分 までに延長 した。平成 20年度の学生 懇談会では,試験期 間中の土 ・日 ・祝 日について夜 間まで開館 しては しい という更なるニーズが明 らか になっている。なお,医学分館 については,国家試 験の受験者 の学習 を支援するために,学期中 と春季, 夏季等 の長期休業期の区別 をせずに,一年 を通 して 開館時間を延長 している。 経済学部分館では,経済学部の 「 夜 間主 コース」16) への対応 とい う特別の事情 をもっている。 このコー スの授 業 の時間帯 は 18時か ら21時 10分 までであ る。そのために,経済学部分館では, これ までに も 21時 45分 まで開館 していたが,平成 1 7年度 ・平成 1 8年度の学生懇談会 において 「 夜 間主 コースの学 生のため に,開館 時間帯 を30分程度延長 してほ し い」 とい うニーズがあることが明 らかになったため , 下げた。 , また,平成 1 8年度の学生懇談会では 「 社会人の 大学院生のために, 日曜 日について も土曜 日と同様 に午前中か ら開館 してほ しい」 など, 日 ・祝 日の開 館時間に関す るニーズが明 らか になった。そ こで, 平成 20年 1 0月か ら,それ までには休館 としていた 祝 日と,休業期の 日曜 日を開館することとして,開 館 の時 間帯 も10時か ら18時 30分 まで に延長 した ( 休業期 は1 0時か ら1 7時 まで)0 以上のように,開館 日を増や し,開館時間を延長 した結果,平成 1 5年度 にお ける中央図書館 の年 間 の開館 日数 は308日,開館 の総時間は2, 967時 間で あったが,平成 20年度には,開館 日数は348日,総 開館時間は3, 784時間 となった。その結果,入館者 数は年 々増加 し,貸出冊数 も全体的に少 しずつ増加 していることが明 らかになった1 7 )( 表 3,図 1- 2) 。 5. 学習支援環境の整備 を可能に した要因 5. 1 学長 と附属図書館長の リーダーシップ 平成 1 4年 1 0月に就任 した学長 ( 当時) は,平成 1 5年 4月の図書館長の交替 にあたって,学部の持 ち 回 りであった従来の図書館長の人事 を廃 し,工学部 の岡林隆敏教授 を任命 した。その理由 として,岡林 教授がそれ までに附属図書館の研究開発室の室員 と して青写真 デー タベースの開発 に積極的に取 り組ん でいた ことがある。学長は,岡林教授 を図書館長 と して任命 した時に,附属図書館の改革を強 く指示 し た。更 には,学長 は,5. 2で説明す るように,新 た な予算枠 を設置す ることによって,附属図書館 にお ける学習支援環境の整備 を支援 した。 岡林館長が着任する以前の図書館運営では,図書 館長は,図書館職にある事務部門の管理職が作成 し た改善案 を運営委員会 に諮 って承認 を受け, これを 受けた図書館員が図書館の業務 を遂行 していた。だ が,岡林館長は,図書館内外 において広 くリーダー シップを発揮 し,附属図書館 内の課題 に直接 関与 し て解決 した り,新 たなプロジェク トを推進 した りし た 18) 0 そのひとつが,学生懇談会 を実施 し,図書館長が 学生のニーズに直接耳 を傾 けることであった。そ し て,ここで明 らかになったニーズについて図書館長 がその場で学生 に対応 を約束 し,図書館貞 に指示 を することであった。更には,図書館長命によ り各学 部の図書館委貞 に各学部の学生懇談会の開催 を要請 す るなど,教員の力 を図書館の運営に広 く活用す る ことであった。 に,平成 1 8年 4月か ら閉館時間を22時 1 5分 に繰 り 57 大学図書館 における学生のニーズを反映 させた学習支援環境の構築 表 3 長崎大学附属図書館のサー ビス と利用状況の推移 5年度∼平成 20年度の年間開館 日数 ・総開館時間 ・入館者数 ・貸出冊数) ( 平成 1 館名 年度 平成 1 5年度 平成 1 6年度 平成 1 7年度 平成 1 8年度 平成 1 9年度 平成 2 0年度 中央図書館 開館時間 開館 日数 入館者数 2, 98 0時間 3 09日 28 4, 83 7名 3 , 1 31時間 33 2日 29 7 , 3 0 9名 3 , 35 9時間 3 2 4日 31 9, 61 9名 3, 6 8 6時間 3 3 2日 2 89 , 3 9 8名 3 , 7 36時間 35 4日 3 6 7, 6 57名 3 , 7 8 4時間 3 4 8日 3 8 2, 6 3 2名 貸出冊数 36 , 9 63冊 35 , 20 5冊 3 5, 5 80冊 3 4, 46 3冊 37 , 0 21冊 3 8 , 1 51冊 開館時間 開館 日数 入館者数 3, 2 29時間 2 9 0 日 1 04, 2 0 7名 3 , 5 9 7時間 3 4 5名 日 11 2, 5 7 0 3, 61 6時間 3 4 8名 日 1 1 5, 9 4 9 3, 6 2 6時間 3 4 日 1 23 , 0 77 5名 3, 6 9 5時間 3 5 0名 日 1 1 7 , 8 8 6 3 , 8 90時間 3 4 5名 日 1 20 , 4 3 5 貸出冊数 1 2 , 889冊 1 3 , 99 5冊 1 4, 6 8 8冊 1 5 , 2 48冊 1 5, 5 93冊 1 6 , 3 9 4冊 開館時間 開館 日数 入館者数 3, 09 4時間 3 0 0 日 49, 2 3 8名 3, 2 23時間 3 1 7名 日 5 5 , 9 4 2 3, 2 47時間 3 1 5名 日 48 , 1 4 2 3 , 33 7時間 3 1 9名 日 5 0, 8 9 9 3 , 46 4時間 3 1 5名 日 61 , 04 3 3, 6 4 7時間 3 2 5名 日 6 4, 2 7 3 貸出冊数 8 , 1 91冊 8 , 35 5冊 6 , 67 3冊 6 , 91 7冊 6 , 67 7冊 6 , 83 2冊 3館平均 開館 日数 開館時間 0 0日 3, 1 03 1 時間 3 3 1日 3, 31 7 時間 3 2 9日 3 , 407 時間 3 3 3日 3, 5 5 0 時間 3 4 0日 3 , 6 3 2 時間 3 3 9日 3 , 7 7 4 時間 3館合計 入館者数 43 8, 2 82名 46 5 , 821名 483 , 71 0名 4 63 , 3 7 2名 5 46 , 5 86名 5 6 7 , 3 40名 医学分館 経雰蒜部 鯛 脚 棚 脚 淵 御 脚 御 霊 。。 喜 帝 中央 図書館 I l医学 分館 . _ F ] 腰 帯羊 部 5 1年 。 H1 5 日1 6 日1 7 日1 8 日19 H20 図 1 年間の稔開館時間の推移 【中】入館者 【医】入館者 【 綾】入館者 【 全】入館者 【中】貸出冊 【医】貸出冊数 室 【 経】貸出冊数 , 【全】貸出冊数 H15 H16 日1 7 日18 日19 日20 図 2 入館者数 と貸出冊数の推移 58 大学図書館研究 LXXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) 5. 2 予算の共通経費化 学習支援環境 を整備す るためには,予算の裏づけ が不可欠である。法人化以前 には,附属 図書館 は, 単独で予算が割 り当て られるのではな く,各学部等 に割 り当て られた予算か ら必要分 を移替 されること によって運営費 を得ていた。 この方法では,附属 図 書館の裁量 によって予算 を使用で きないために,新 事業 を開始するのは難 しかった。だが,法人化以降 には,附属 図書館 にも予算が直接割 り当て られるよ うにな り,独 自の事業 を展 開す ることがで きるよう になった。そのために,学習支援環境の整備のため に予算 を使用することがで きた。 また,学長裁量経費 によって,学習支援環境 を整 備するために更なる予算が配分 され,グループ学習 室 ,AVコーナーな ど多 くの施設 ・設備 を整備す る ことがで きた。 これは,長崎大学の執行部が,文部 科学省か らの道営交付金が減額 されるとい う状況の もとで教育水準 を落 とさない方法 を考え,学生か ら 強いニーズのある学生用図書の充実,図書館の開館 時間の延長 を実現 させ ることが重要であると判断 し たためである19)。そ して,附属図書館 における学習 学生学 支援環境 を整備す るため,平成 17年度 に 「 習環境支援経費」の新規計上 を決定 した。 資料費 について も,学生用の図書費 を学部の予算 か らの移替で賄 っていた時には,予算 に応 じた推薦 枠 を学部に戻 して選書 を依頼 していたために,学生 自身が希望する図書 を購入する費用が充分 になかっ た。 しか し,学生用図書費が附属図書館の予算 とし て配分 されるようになったために,学部の枠 にとら われることな く,学生 にとって必要な資料 を効率的 に収集することがで きるようにな り,学生の リクエ ス トにも十分に応 えられるようになった2 0 ) 。 6. 今後の課題 以上のように,附属図書館では,学生懇談会 にお いて明 らかになった学生のニーズを取 り入れて学習 支援環境 を整備 して きた。その結果,図書館の利用 に関する学生の満足度が高 まった り,グループ学習 のための場 をは じめ とする附属図書館の利用者が増 えた りしていることが明 らかになった。更には,学 生懇談会 において,学生が より発展的なサービスを 期待す るようになっていることも明 らかになった。 より発展的なニーズの例 として,24時間開館,貸出 冊数の上限の引 き上げ,飲食用スペースの設置,漢 帯電話の利用スペースの設置 な どがある。今後 も, 多様 な学生のニーズを取 り入れて学習支援環境 を整 備 しなが ら,次に示す課題 に取 り組むことが重要 に なると考えている。 ● 発展的なニーズ-の対応策 を検討する ● 附属図書館が計画 している取 り組みに関する学 生のニーズを把握する ● ● ● 効果的な広報のあ り方 を検討する 学生のニーズへの対応の積み重ねによって学生 志向のサービス を提供す る機 関であるとい う信 頼 を獲得する 附属図書館 における学習支援環境の整備が学習 成果に与 える影響 を分析す る まずは,「 発展的なニーズへの対応策 を検討する」 について,具体的には,試験期 における座席の増設, 中央図書館 におけるグループ学習室の設備及び運用 方法の改善,飲食用 のスペースの設置 について必要 性 を検討することなどである。その理由は,発展的 なサービスについて学生懇談会で検討 した時に,学 生間において賛否両論の意見があることが明 らかに なったためである。学生のニーズを根拠 にして学習 支援環境 を整備す るためには,学生懇談会において 得たニーズにどれだけの支持があるのかを明 らかに することが必要 になる。そのために,学生懇談会 と 併せて,学生 を広 く対象 としたア ンケー ト調査 を実 施 し,そのニーズに多 くの支持が得 られることを確 認 した上で実現 に結びつけることが望 ましい と考 え ている。 次 に,「附属図書館が計画 している取 り組みに関 する学生のニーズを把握する」 について,すでに提 供 しているサービスだけでな く,計画中のサービス について も事前 に学生のニーズを明 らかにすること が重要であると考 えている。附属図書館の建物 は老 朽化 が進 んでいる。 中央 図書館 が建 設 されたの は 1 971年,経済学部分館 は 1 972年,医学分館 は 1 978 年である。今後 は,建物 自体の改築が必要 になると 考えられる。建物の改築時に新 たな学習支援環境の コンセプ トを決める際に も,何 らかの方法によって 学生のニーズを反映 させ ることが重要 になる。その ために,特定のテーマに特化 した学生懇談会やア ン ケー ト調査 を実施 して事前 に学生のニーズを明 らか にしてお くことが必要 になると考 えている。 次 に,「 効果的な広報のあ り方 を検討す る」 につ いて,学生懇談会 に参加す る学生はこれまでは主に 図書館委員である教員の推薦等によって選出 してい たが,公募等により希望す る学生が広 く参加で きる 体制 を整備することが必要 になると考 えている。平 成1 9年度 ・平成 20年度 には,中央図書館 の学生懇 談会 に参加する学生 を附属図書館 内及び学部の掲示 板 にポス ターを掲示 した りチ ラシを配布 した りして 募集 をした。だが,応募者 を得 られなかった。選書 59 大学図書館における学生のニーズを反映させた学習支援環境の構築 ツアーなどのイベ ン トについて も,ポス ターの掲示 たい-ん重要である。1998年に出された大学審議会 やチ ラシの配布,ホームページ上の案内などによっ の答 申 「 21世紀 の大学像 と今後 の改革方策 につい て募集 しているが,多 くの学生が競 って応募す るも のではない。学生懇談会 について も選書 ツアーにつ て :競争的環境の中で個性が輝 く大学」では, 1単 いて も,参加 した学生 に実施 した事後 アンケー トで は高い評価 を得ているので,学生がいったん参加す れば附属図書館が提供するサー ビスや対応 に満足感 を得 る可能性が高いことがわかっている。附属図書 館 のサービスを理解 し活用 して もらうために, まず は附属 図書館が主催するイベ ン ト等への参加者 を増 やす ことが重要である。効果的な公募の方法や広報 のあ り方 を検討することが重要 な課題のひとつであ ると考 えている。 学生 のニーズ-の対応 の積み重ね によっ 次 に,「 位 あた り教室 内外 における 45時間の学習時間を確 保す るとい う単位の実質化 を実現す るために,アク ティブ ・ラーニ ングを導入 した り,履修登録の上限 を設定 した り,成績評価基準 を厳格化 した りするこ とに加 えて,授業 ( 教室)外の学習環境である 「 図 書館 など学習環境 を整備する」 ことの必要性 を指摘 している。 これは,単 なる座席数の増加ではな く, サービスなどその運用 も含めた広い学習支援の環境 を整備す ることによって授業 ( 教室)外学習の実質 化 を支援す る必要性 を指摘 した ものであ る と言 え る。 て学生志向のサー ビスを提供する機関であるとい う 附属図書館 では,学生のニーズを反映 させなが ら 信頼 を獲得する」 について,学生懇談会の参加者 を 授業 ( 教室)外学習の実質化 に重要になる学習支援 始め として,附属図書館が学生志 向のサービスを提 供す る機関であるとい う学生か らの信頼 を得 ること 環境 を多面的に整備 して きた。だが,整備 した学習 支援環境が どれほど学習成果 を向上 させたのかを検 が重要 になる。 これまでに,学生のニーズを反映 し た改善の中で最 も小 さなもののひとつは前述 の学生 証するのはこれか らである。附属図書館 における学 希望図書の リクエス ト用紙の改善であった。学部が 主催す る学生懇談会 において,ある学生が 「 学生希 望図書 の用紙が堅苦 しくて書 く気 になれない」 とい う発言 をした。そこで,附属図書館 では, リクエス ト用紙 の タイ トルを 「 学生希望図書購入 申込書」か ら 「 学生希望図書 リクエス ト用紙」 に変更 し,枠線 の色 を黒か らマゼ ンダに変更 し,小 さなイラス トを 挿入 した。記入内容の変更はない。 この様式の変更 に要 した時間は試案の作成 を含めて 1, 2時間であ る。同年度の文教地区の学生懇談会 に学部の代表 と して出席 して,配布 されたリクエス ト用紙 を見たそ の学生 は 「自分の意見が本当に実現す ると知 って嬉 しい」 と喜んだ。 学生懇談会 に参加 した学生は,この ような対応の 積 み重 ねによ り,「 学生懇談会 における発言 は図書 館 に受 け入れ られている」,「 学生のニーズによって 図書館 を変 えることがで きる」 とい う認識 を持つ よ うになっているようである。だが,学生懇談会の参 加者が少 ないことか ら,多 くの学生が この認識 を持 つには至 っていないのが現状である。附属図書館が 学生志 向のサー ビスを提供する機関 としての信頼 を 得 るためには, まずは学生懇談会に参加 した学生 を は じめ とす る一人ひとりの満足度の向上 を目指 して これを積 み上げてい くことが重要である。 最後 に,「附属図書館 における学習支援環境 の整 備が学習成果に与 える影響 を分析する」 ことは,大 学図書館 における学習支援環境の整備が教育の質の 保証 に貢献す ることを証明す ることになるために, 60 習支援環境の整備 をさらに進めなが ら,これ と学習 成果の関係 を分析することが今後の最重要課題であ る。 これを明 らかにした ときにこそ,大学教育の質 の保証 に大学図書館が貢献 していることを証明す る ことがで きると考えている。 注 ・参考文献 1)例 として,長崎大学 「学生 と学長 との懇談会」 『 CHOHO』Vol . ll ,2 0 05 . 4,p. 6 7 . 2)大学における学生生活の充実に関する調査研究協 力者会議 「 大学における学生生活の充実方策につ いて ( 報告):学生の立場に立った大学づ くりを目 指 して」 ( 2000. 6. )ht t p: //www. next . go. j p/b_ me nu/ s hi ngi /c hous a /ko ut ou/01 2 /t ous hi n/0 0 06 01 . h t m ( 最終確認 :2009. 4. 2 9. ) 3)ht t p: //www. j as s o. go. j p/gakusei si en_gp/gaku最終確認 :2009. 6 . 27 . ) s e i s i en_gp_r e s ul t h2 0. ht ml( 共剣的コミュニティ形成 4)例 として,筑波大学の 「 による学生支援 :学生 ・教職員が一体 となった新 t p: //www. たな自主的活動の創生」がある.ht j a s s o . go. j p/gakus e i s i e n_gp/doc ume nt s /t s ukuba _p_ 最終確認 :2009. 6 . 2 7. ) pl . pdf( 5)郷原正好が,2008年 6月に実施 した国立の24大学 を対象 とする電子メールによる 「 学生 との懇談会 に関するアンケー ト調査」にもとづいている。 6)平成 21年 5月 1日現在 「 長崎大学のいま」ht t p: // www. nagas aki u. ac. j p/gui dance/guLmai n. ht ml ( 最終確認 :2009. 6 . 2 2) 7)長崎大学 「 学長メッセージ :長崎大学 と 「 学生顧 客 主義 」 」ht t p: //www. nagasaki u. ac. j p/gui dance/message/message15. ht ml( 最終確認 : 大学図書館研究 LXXXVI( 2 0 0 9 . 8 ) 2 0 0 9 . 3 . 2 . ) 8)国立 大 学 法 人 長 崎 大 学 中期 目標 ht t p: //w w w . naga s a ki u. a c . j p/pl a n/c huki /c huki mo kuhyo 2 0 . pdf ( 最終確認 :2 0 0 9 . 3 . 2 . );国立大学法人長崎大学中期 計画 ht t p: //www. nagas aki u. ac. j p/pl an/c huki / 最終確認 :2 0 0 9 . 3 . 2 . ) c huki ke i ka ku2 0 . pdf( 6年度国立大学法人長崎大学年度計画 ht t p: / / 9)平成 1 www. nagasaki u. ac. j p/pl an/chuki /h16nendo ke i ka ku. pd f( 最終確認 :2 0 0 9. 3 . 2. ) 1 0)附属図書館全体の学生用図書費は3つの館 に配分 さ れ る。毎年実施 していることで はないが,医学分 館 では,配分 された学生用 図書費の一部 を用 いて 学生図書委員が選書する。 ll) 「図書館 における学生 との懇談会報告 『 和華蘭の 」 窓 :長崎大学附属図書館報 』 ,No . 9 4,2 0 0 5 . 3,p. 5 6 . 用語説明〕文教地区委員協議会の委貞長 :図書館 1 2) 〔 委員の うち,中央 図書館 のあ る文教 キャンパスに ある部局か ら選出された委貞の代表 として,館長, 分館長 とともに附属図書館執行部 を形成する。 1 3) 「図書館 における学生 との懇談会報告 」「学生懇談 和華蘭の窓 :長崎大学 会 の意見 ・要望 に応 えて 『 」 附属図書館報』No . 9 4,2 0 0 5 . 3,p. 4 6 . 1 4 )岡林 隆敏 「利用者か ら信頼 される新 しい時代 の大 和華蘭の窓 :長崎大学附属図書 学図書館づ くり 『 」 館報』No . 9 4,2 0 0 5 . 3,p. 2 3 . 1 5 )「ぶ らりらいぶ らり :長崎大学図書館 ブログ」ht t p: / / nul i b. bl o g7 . f c 2 . c o m/ ( 最終確認 :2 0 0 9 . 6 . 2 3 ) 1 6 )長 崎大 学 経 済学 部パ ンフ レ ッ ト,p. 15.ht t p: // www. ec on. naga s a ki u. ac. j p/i nt r oduc t i on/book1 e t _0 9 . pd f( 最終確認 :2 0 0 9 . 6 . 1 5 ) 8年度の減少 は,工事 に よる部分的 な閉館 , 1 7 )平成 1 騒音等によるもの と考えられる。 , 1 8 )例 として 『 長崎大学附属図書館 あ り方懇談会報告 書 』2 0 0 6,2 3 p. 1 9 )斎藤寛 「勉強環境 を高め ます !:「学生顧客主義」 をかかげる大学 としての苦渋の選択 」『大学の窓か ら』2 00 7,長崎文献社 ,p. 1 7 81 79 .( 長崎文献 ライ 0 3 ) ブラリー,0 2 0 )柴多一雄 「 学生用図書の新 しい収書方法 について」 93, 『 和 華 蘭 の窓 :長 崎大 学 附属 図書 館 報 』No. 2 0 0 4 . 1 2,p. 1 2 . <2 0 09 . 5 . 3 受理 しぼはら ともみ 長崎大学附属図 書館事務職員 ( 図書館員),ごうは ら まさよし 信州 大学 附属 図書館副館長 ( 事務担 当), なが さわ た よ 三重大 学 高等教育創 造開発 セ ンター准教 授 , しぼた かずお 長崎大学附属図書館館長> 61 大学図書館 における学生のニーズ を反映 させた学習支援環境の構築 SHIBAHARA Tomoni, GOHARA Masayoshi, NAGASAWA Toyo, SHIBATA Kazuo SHI BAI I ARAT o moni ,GOHARAMa s a yos h i ,NAGASAWAT oyo ,SHI BATAK az uo on nt thehe The Reform Student Oriented Learning Environments ini University Libraries : Based TheR e f or mtoward t owar dS t ude nt Or ie nt e dL e a ni r ngE nvi r o nme nt s nU ni ve r s i t yL i br ri a e s: Ba s e do of f Student Focus Group Interviews Conducted by yN Nagasaki University Library from to o Results Re s u l t so St ude nt Foc l l SG r ol l PI n t e r vi e wsC onduc t e db a ga s aki t J ive m r s i t yL i br ryf a rom2004 2 0 0 4t 2008 2 0 0 8 Abstract: InI recent years, the importance ofo reflecting students' expectations and opinions into university Abs t r ac t : nr e c e n tye a r s , t he i mpo r t a nc e fr e 乱e c t i ngs t ude nt s ' e xpe c t a t i o ns a ndo pi ni o ns i nt o uni ve r s i t y in Japan. The purpose ofo this report is tot explain thehe process and thehe results operations has been pointed outu o pe r a t i o ns ha s be e np o i nt e do ti n J a pa n . The pur po s e ft h i s r e po r ti s o e xpl a i nt pr o c e s s a ndt r e s u l t s on students' expectawhich the university library has changed the learning support environment based whi c ht heuni ve r s i t yl i br a r yha sc ha nge dt hel e a r ni ngs uppo r te nvi r o nme ntba s e do ns t ude nt s 'e xpe c t a student focus interviews conducted by Nagasaki University Library between tions and opinions through t i o nsa ndo pi ni o nst hr o ughs t ude ntf o c usi nt e r vi e wsc o nduc t e dbyNa ga s a kiUni ve r s i t yLi br a r ybe t we e n 2004 andnd2 2008. As the results ofo renovations tot thehel learning support environment ini areas such as s facili2 0 0 4a 0 0 8 .As t her e s ul t s f r e no va t i o ns ot e a r ni ngs uppo r t e nvi r o nme nt na r e a s s uc ha f a c i l i ties, materials and services, student satisfaction levels increased as sd didi thehen number ofo library users each t i e s ,ma t e r i a l s a nds e r vi c e s ,S t ude nt s a t i s f a c t i o nl e ve l s i nc r e a s e da dt umbe r f l i br a r yu s e r se a c h year. Furthermore, it was clear that students have come to expect even more innovative services. ye a r . Fur t he r mo r e , i twa sc l e a rt ha ts t ude nt sha vec o met oe xpe c te ve nmo r ei nno va t i ves e r vi c e s . Keywords: learning support environments / / learning support systems / /S student group interviews / / Ke ywor d s :l e a r ni ngs uppo r te nvi r o nme nt s l e a r ni ngs uppo r ts ys t e ms t ude nfocus tf o c us gr o upi nt e r vi e ws Nagasaki University Library / university education reform Na ga s a k iUni ve r s i t yL i br a r y/ uni ve r s i t ye duc a t i o nr e f o r m 6262