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日本音楽の海外進出の現状と課題

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日本音楽の海外進出の現状と課題
2014/10/21 JCS2014(Tokyo International Music Market) セミナー
『海外展開のキーマンに聞く、日本音楽の海外進出の現状と課題』
Introducing Japanese Music Overseas: Issues and Potentials
―
司会(道島) ―
みなさん、おはようございます。PROMIC の道島と申します。朝早くからお越しいただきまして、あ
りがとうございます。今年の TIMM のセミナーは、アソジアの横澤さんをモデレーターに、YAZ NOYA
さん、山田蓉子さんをスピーカーにお迎えしてお届けします。特に決まった落としどころというのが別
にあるわけではなくて、横澤さんはアジア、YAZ さんはアメリカ、山田さんはヨーロッパと、それぞれ
のテリトリーというかエリアがございますので、最新の状況を交えてお話をお伺いしたいというふうに
思います。
それでは、早速ですが、横澤さん、よろしくお願いいたします。
―
横澤 ―
皆様、おはようございます。本日は朝も早よから、かくも大勢の皆様、足をお運びいただきまして、誠
にありがとうございます。私は今回モデレーターを務めさせていただきます、アソジアの横澤と申しま
す。よろしくお願いいたします。
PROMIC 発表の今回のセミナーのタイルトですが、
「海外展開のキーマンに聞く、日本音楽の海外進出
の現状と課題」となっております。この十数年、インターネットの普及と進化に伴い、世界中の音楽産
業の構造変化として、従来のパッケージセールスを中心とした著作権型ビジネスから、ライブ、コンサ
ート等、興行を中心とした本人稼働型ビジネスに変化してきていることは、皆さんもご存じと思います。
それに伴い、活動の場を日本に限らず、海外にも広げている日本のアーティストが増えてきていること
も、皆様はさまざまなところで目に、また、耳にされていることと思います。先週末もシンガポールで
a-nation があったりとか、先週の金土も台湾で T.M.Revolution があったりとか、とにかく、何か、ア
ジアのどこかに日本のアーティストが行っているような状況が今はあります。
最近では、日本人アーティストの海外での活動や展開の数が増え、大小さまざまな事例があり、全てを
把握することは容易ではありませんし、また、個々のアーティストの海外展開の目的や実施背景や収益
構造が異なりますので、何をもって成否を判断するのかも、外目には分からないのが正直なところです。
現地のニーズに基づくものであるのか、日本サイドから切り込んでいったものであるのか、種まきの段
階であるのか、刈り取りの段階なのか、長期的展望を伴うものなのか、はたまた単発の日本向けの話題
づくりなのか等々、日本人アーティストの海外展開は規模も目的も多様化しており、一概に「こうすれ
ばこうなる」という方程式にまとめて語ることは難しいと思われます。
そんな中、本日ですが、南米も含めて北南米、ヨーロッパ、アジアの 3 つの地域で、日本人アーティス
トの本人稼働ビジネスに携わる方に、それぞれの地域の市場動向や、日本人アーティストの活動状況や
問題点、ご提案などを忌憚なくお話しいただき、ご参加の皆様には、その中から関わられるアーティス
トの目的に合ったやり方やステップの踏み方を感じ取っていただければいいかなというセミナーにな
っております。
ここで、本日のパネラーのご紹介をさせていただきたいと思います。北南米に関してお話をいただく
YAZ NOYA さんです。
―
YAZ ―
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2014/10/21 JCS2014(Tokyo International Music Market) セミナー
『海外展開のキーマンに聞く、日本音楽の海外進出の現状と課題』
Introducing Japanese Music Overseas: Issues and Potentials
こんにちは、YAZ です。
―
横澤 ―
YAZ NOYA さんは、ソニーミュージックの洋楽ディレクターのご出身です。その後、渡米されて、日
本のアーティストの海外マネージメントや、レコード会社を立ち上げられて、J-ROCK の CD を発売さ
れるなどされてきました。現在は、ご自身の会社で L’ Arc~en~Ciel、X JAPAN、この間、10 月 11 日
にマディソン・スクエア・ガーデンをやったばかりですね。あと、YOSHIKI、モーニング娘。などの
ワールドツアーを手掛けられています。
ヨーロッパに関してお話を伺うのは山田蓉子さんです。
―
山田 ―
よろしくお願いいたします。
―
横澤 ―
山田さんは、タワーレコードのフリーペーパー『bounce』の編集部ご勤務のあと、フランス政府の外郭
団体の日本支部で、フランス音楽の日本への輸出業務をされました。現在はパリにお住まいで、音楽コ
ーディネーター、音楽ライター、通訳などをなさっていらっしゃいます。最近だと、アジカン=ASIAN
KUNG-FU GENERATION、きゃりーぱみゅぱみゅ、Perfume、ONE OK ROCK、BABYMETAL な
どを幅広く手がけられています。
そして、アジアに関しては、僭越ながら私、横澤のほうでお話をさせていただきたいと思います。
では、早速、お二人からお話を伺いたいと思います。思うことを含めて何でもおっしゃっていただくフ
リータイムでございますので、よろしくお願いします。まず、YAZ NOYA さんからお願いいたします。
―
YAZ ―
はい。懐かしい顔もたくさんいまして、ご無沙汰しています。YAZ です。ご紹介にあずかりましたが、
もともとはソニーミュージックジャパンのほうで洋楽の担当をしておりまして、30 歳を機にアメリカの
ほうに渡りまして、日本のアーティストの海外への売り込み、またはそのツアーに関してのコーディネ
ーション、プロジェクトマネジメントを担当させていただいております。
最近でいきますと、アーティスト、歴史がいろいろ、もう十数年、長いのですけれども、渡米してから
もう 20 数年経ちますが、歴史は長いものの、そもそも、本当に 20 数年前は、日本のアーティストが海
外に行くということすら、考えられなかった時代だと思います。それが本当にインターネットの普及に
よって、海外が非常に近くなりました。反対に、そこに関して問題点もいろいろ生まれてきています。
ただ、それが、垣根が非常に低くなっているということも、皆さん、ご存じだと思います。
ソニーミュージックの中にアンティノスマネージメントというのがありまして、そこに入りまして、そ
こから T.M.Revolution、それから、Puffy AmiYumi などの海外展開をまず仕掛けまして、その前に、
一番最初は小室哲哉さんですね。小室哲哉さんの海外のマネジメントを行いまして、そこから一つずつ、
海外の一歩一歩をスタートし、まず、マーケティングで、「どんな人たちに日本の音楽がウケるのだろ
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うか」、
「ニッチマーケットはどこにあるのだろうか」、そういうことを試行錯誤して今に至ったという
ことになります。
私は 10 年前に、約 10 年前にソニーを退社いたしまして、自分の会社をやって、その頃から X JAPAN、
そしてモーニング娘。
、ハロー! プロジェクト全般ですね。それと、今回、ちょっとお見せしたいので
すが、初音ミクさんとか、あとはアニメコンベンションに対するアーティストブッキング、JAM Project
さん、そういうのも含めまして、フリーで個々のアーティストを手掛けております。L’Arc~en~Ciel
の前回のワールドツアーのツアーマネージャーもさせていただきました。今、横澤さんからご紹介いた
だいた、北米、南米という区切りがありますけれども、私自身、ロサンゼルスに住んでいますが、北米、
南米という区切りではなくて、どちらかというと、大きなアーティストに関しては、グローバルなワー
ルドツアーのレベルでお仕事をさせていただいております。
これから問題点、それからいいところ、悪いところに関してのお話というのもこれからさせていただく
として、ご挨拶程度に、やってきた、ほかほかの、マディソン・スクエア・ガーデンの X JAPAN のシ
ョーを、できたてのほやほやの映像がありますので、どんな感じだったかだけ、皆さんに見ていただき
たいなと思いますので、すみません、最初の部分だけかけていただいてよろしいですか。
(X JAPAN の映像の音声 00:09:07~00:12:45)
少しだけ見ていただきましたけれども、相当、大変な迫力で、お金もかかっております。実は、このコ
ンサートは、本当にプランされてから、ここまでいくのに 9 カ月の年月がかかっています。
「MSG でス
タートしたい」という構想から、これ、約 1 年半かかってこの状態になったという、非常に長い年月を
かけて構想が練られました。このコンサートは、実は、ドキュメンタリーフィルムのコンサートになり
ます。今後、このフィルム、この映像がドキュメンタリーフィルムとして、来年あたり公開される予定
になっていますけれども、その構想がスタートしたのが約 1 年半前です。これだけの大きなコンサート
をやるには、やはり、それだけの時間と労力がかかっていて、全てのマーケティングプラン、それから
プロダクションプランが全て MSG に集約された形で、ここの 1 年半を過ごしてきたと言っても過言で
はないかと思います。
この X JAPAN のマディソン・スクエア・ガーデンの前に、実は YOSHKI、ドラムの YOSHIKI のソロ
の「YOSHIKI CLASSICAL」というツアーが約 2 カ月、ワールドツアーを行いまして、こちらのほう
は、どちらかというと MSG の前哨戦、X JAPAN の前哨戦という形で、一つ、マーケティングプラン
として構築されたわけですけれども、X JAPAN に行く前に、YOSHIKI が自分のクラシカルアルバム
をつくって、そのプロモーションを自分で行って、世界ツアーを回りながら、それが最終的に X JAPAN
に続くという、非常に長いスパンを持ったマーケティングプランをつくった集大成が、今、見ていただ
いたこの形になったということです。これが集大成の終わりではなくて、実はこれがスタートで、ここ
からまた新しいドキュメンタリーフィルムへの公開につながるという、非常にクリエイティブな大きな
ビジョンを持ったプロデューサーでありアーティストである YOSHIKI が、今後のビジョンを完全に頭
の中に描いたマディソン・スクエア・ガーデンの映像だったということで、これは多分、今日、お話し
できる話題の中の、「アメリカツアーを、世界ツアーをやった。その次に何がありますか?」という、
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皆さんに考えていただく意味での一つの大きなスタディ・ケースになるのではないかと思います。
もう一つご紹介したいのは、非常にまたこれは新しいマーケティングのツールとして、非常に面白いア
ーティストとして、本当に一昨日終わったばかりなのですけれども、初音ミクがあります。初音ミクと
いえばバーチャルアイドル、ホログラムのアイドル、ボーカロイドということで、皆さん、もうすでに
ご存じだと思いますけれども、初音ミクが今回、ロサンゼルスとニューヨークでコンサート、プラス、
こちらは「ミクエキスポ」というふうに題しまして、コンサートだけではなくて、エキシビション、ア
ート・エキシビションを同時に行いました。コンサートをロサンゼルスではノキアシアター、大体 5000
ぐらいのキャパが 2 日間、それから、ニューヨークでは大体 2500 ぐらいのキャパ、こちらがハマース
タイン・ボールルームというものなのですが、こちらで 2 日間、こちらも完全にソールドアウトですね。
この近くでアート・エキシビションを行いまして、ここで初音ミクというのは、いろいろなアーティス
トたちが自分たちでつくれるアイドル、自分たちがアートもつくれる、曲もボーカロイドによってつく
れるアイドルということで成り立っていますので、皆さんがそこに集まって自分たちでつくるアイドル
というものを、そこのエキシビションでみんなが楽しんでいけて、その人たちがそのままコンサートに
来るという、非常に新しい形をつくりました。
これが非常に新しい世界になっていまして、実は、アメリカに「デビッド・レターマン」という大きな
トークショーがありますが、こちらのほうで取り上げられた映像がございますので、こちらのほうもち
ょっとご覧いただいてよろしいでしょうか。切り替えていただいてよろしいですか。
(初音ミク映像音声 00:17:08~00:18:50)
はい、ありがとうございました。「デビッド・レターマン」というのは、非常にアメリカで言うと、日
本で言うと何でしょうね。トークショー。朝のワイドショー、違う、夜のワイドショー……、何でしょ
うね。夜、アメリカでは結構トークショーをやっているのですが、これはかなり、数ミリオンの人たち
がネイションワイドで見るものなのですが、「デビッド・レターマン・ショー」としても、こういうバ
ーチャルアイドルというのは初めての登場で、実は、YouTube での音楽ゲストというのが毎回入るので
すが、再生数が音楽ゲストの中で今、歴代の 2 位です。それぐらい注目度が非常に高くて、初音ミクの
この「デビッド・レターマン・ショー」が終わったあとに、実は CBS のイブニングニュース、普通の
報道番組からも取材のオファーがきたり、かなり、通常の J-ROCK、J-POP ではない、全く違った日本
の違うカルチャーとしてのとらえられ方というのが、ここで成功したと思います。
今、X JAPAN、初音ミクと、全く違う日本のアーティストのお話をさせていただきましたが、もう一つ、
今月、10 月の頭に「モーニング娘。’14」
、こちらのほうをやはりニューヨークでやらせていただきまし
た。
こちらのほうは、非常にまたこちらも印象深い……、ごめんなさい、こちらのほうは映像がないのです
が、98%が海外の方です。日本人がツアーで来た、または日本人の方が本当にキャパの中、1600 人ぐ
らいのキャパだったのですが、多分、20 人ぐらいでした。ほとんどが現地の方、または世界各地から集
まった方たちで埋められていたと。
これは、今、3 つアーティストをご紹介したのは、非常に興味深い話として、全てマーケットが違う、
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それから、全てマーケティングのやり方が違う、全てターゲットが違うのですね。モーニング娘。の場
合は、ハロー!プロジェクトというのがありまして、これは Berryz 工房とか、それからモーニング
娘。’14、℃-ute、いろいろなアイドルグループがアップフロントの中にいますけれども、彼らが今まで、
過去 4 年ぐらいかけて、かなりいろいろなアニメコンベンション、それから小さなイベント、世界中の
イベントに参加をして、コミュニティづくりをしっかり行ってきた、これが大きなコンサートの成功の
きっかけになりました。
ハロー!プロジェクトを支援する団体というのがしっかりありまして、これが世界各地、本当にどこで
コンサートをやっても、必ず来ます。この人たちが世界的な、ファンクラブではないのですけれども、
自発的にパーティを行ったりとか、自発的に自分たちで宣伝をしようという人たちが必ずいて、その人
たちがちゃんとコミュニティをつくって、ハロー!プロジェクトが外でやると、必ず応援をするという
コミュニティができてくれています。これは、自然発生的にきちんと組織はされているのですけれども、
これはやはりマネジメントが海外に対して非常にチャレンジングであった、それから、どんなところに
関しても、きちんと、細かいコンベンションであっても、細かいイベントであっても、どんどん自分た
ちのアーティストを外に出していくんだという大きな使命があった、その集大成がこのモーニング娘。
のニューヨークの公演の大成功につながったと思っています。
X JAPAN に関しては、皆さん、いろいろ報道などでもうご存じだと思いますけれども、X JAPAN に関
しては、過去、大きなワールドツアーも何回もやっていますし、プロモーションに関してはかなり世界
レベルで、本当に相当なプロモーションを行っています。YOSHIKI 本人も、Twitter、facebook、かな
りの数、自分で動いていますし、これはアーティスト本人がファンと一番近いところにいる例ではない
かと思います。非常に大きな組織が動いていますし、大きな人たちも動いていますけれども、その以前
に、やはり、アーティスト自身がファンとつながるという、この一番ベーシックなところですね。日本
人のアーティストがファンとつながるということはなかなか難しいと思うのですが、一番成功した例で
はないかと思っています。
最後に、初音ミクなのですけれども、初音ミクもこれは全く違うマーケットとして見られておりまして、
アニメマーケットでもない、コミックマーケットでもない、音楽マーケットでもない、これはどこのマ
ーケットかというと、コミュニティマーケットだと思っています。ここにいるコミュニティというのは、
自分たちでものをつくりたい、自分たちで何かを express したい、だけれどなんかできないもどかしい
人たちが、ここの、初音ミクのコミュニティにいることによって、自分たちの発言の場が与えられるの
だという、そういう一つのちゃんとしたコミュニティをつくってあげた一番大きな成功例ではないかと
思っています。それによって自分たちが絵を描いた、それによってみんながそこに集まる、自分たちが
曲をつくってみた、それがみんなの中で認められる、今まで 40 何年間、友達が一人もいなかった人た
ちが、ここのコミュニティに入ったら、実は同じ興味を持っていた人たちがいっぱいいた、それって、
すごくニッチマーケットだと思うのですけれども、今や、そのニッチマーケットが、どこのニッチマー
ケットをどれだけ大きく育てるのかというのが、これが多分、成功の鍵ではないかと思っています。
それからもう一つ、この 3 アーティストに共通していえることは、これは多分、みなさん同じだと思う
のですが、日本人アーティストの場合、やはり、一番ビジネスになるのはマーチャンです。これは間違
いないです。これは、今、音楽ビジネスが、ほぼ、パッケージが、パッケージはもうマーチャンダイズ
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の一つ、これはパッケージがあって、そこにサインをするものというふうに見られています。
ただ、T シャツ、それから、本当にグッズですね。これに関しては、コンサートに来る per head が一
人頭 25 ドルと、本当に大変な売り上げになるわけで、これも多分、アーティストがいろいろなところ
に回ると、小屋の人たちが「また記録を塗り替えた」、
「また記録を塗り替えた」と言うぐらい、とにか
くグッズの販売数が大変な数を示しています。なので、これはコンサートとか CD とか、こういう分散
化したものではなく、一つのパッケージとして、「じゃあ、どこでお金を儲けられるのか」というのは
絶えず頭の奥にないと、コンサートをやっただけでは、多分、recoup できません。ただ、何かをやった
だけでは recoup できません。でも、それが 360 度重なった時に、これから違うライセンスがグッズで
あるのかもしれないしという、それは本当に、さっき横澤さんがおっしゃった、「次の段階に何を求め
ますか」という、絶えずそれを考えていくことが、多分、海外での成功の鍵になると思います。
ちょっと長くなりましたが、また質問などあれば。
―
横澤 ―
はい、ありがとうございました。今、聞いただけでも、結構、目からウロコみたいなお話もありました。
では、続きまして、山田さんのほうでお願いいたします。
―
山田 ―
はい。ご紹介ありがとうございます。山田蓉子と申します。私はまだまだ、本当に YAZ さんに比べて
全然ヒヨコでございまして、フランスに渡ったからまだ 5 年の新人でございます。具体的には「コーデ
ィネーター」というふうに申し上げておりますけれども、CREATIVEMAN という、日本のプロモータ
ーの海外スタッフをフリーランスでやらせていただいています。そして、CREATIVEMAN の仕事以外
も、プロジェクトによってはフリーランスという立場でやらせていただいています。ちなみに、
CREATIVEMAN の案件に関しては、やはり日本に事務所がありますので、邦楽の担当の人間から、
「今、
日本ではこんなアーティストが熱いよ」
、
「今、マネージメントさんはこんなアーティストをしているよ」
という情報が来て、そこからスタートすることが多いです。
去年、一昨年で、私が関わらせていただいたツアー、アーティストのヨーロッパツアーをざっと、ざっ
くりとご紹介させていただくと、きゃりーぱみゅぱみゅさん、ASIAN KUNG-FU GENERATION、
Perfume、
POLYSICS と the telephones のダブルヘッドライナーのヨーロッパツアー、
ONE OK ROCK、
そして、
今年はきゃりーぱみゅぱみゅのヨーロッパツアー、そして BABYMETAL のヨーロッパツアー、
これは 7 月にやったものと、これから 11 月にやったもの、2 回あるのですけれども、やらせていただ
いております。
ちょっと、軽く、ONE OK ROCK のヨーロッパツアーがドキュメンタリーフィルムとして日本でも公
開されたものを、少しだけご覧いただければと思います。
(ONE OK ROCK ヨーロッパツアー音声 00:28:11~00:28:58)
ありがとうございます。という感じで、私が関わらせていただいたものの一番成功例といいますか、一
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番大きなものが、やはり ONE OK ROCK かなと思います。そして、本当に YAZ さんにくらべてまだま
だ新人ということで、もう少し新人らしいお話を今回はさせていただければなと思っております。私が
関わらせていただいたプロジェクトの、
「順を追ってこんな感じで構築していっております」というお
話をしながら、その段階ごとで「こんなやり方があります」ということを、皆さんに少しお話させてい
ただければと思います。
まずは、海外に進出される、今回集まっていらっしゃる皆さんは経験豊富な方も非常に多くていらっし
ゃるので、私などが言うまでもないことも多いかと思いますけれども、まずは海外進出の第一歩は「パ
ートナー探し」かと思います。
昨今では、アーティストが、ご本人が、もちろんマネージメントさんがいらっしゃっても、ご自分で本
当に現地まで出向いて、それこそ 1 カ月ぐらい滞在しながらバーを回って「やらせてほしい」というふ
うに直に交渉してやられる、とても力を持った、気合いの入ったアーティストさんもいらっしゃるので
すけれども、マネージメントさん、レーベルさん、音楽出版社さんなど、いわゆる環境が整っていらっ
しゃるアーティストに関しては、日本人、日本に近いコーディネーターであるとか、あとは日本のプロ
モーター、最近ですと、もちろん CREATIVEMAN だけでなく、H.I.P さんなんかも非常に熱心に海外
をやってらっしゃるのですけれども、そういった日本のプロモーターと組むというのも一つのアイデア
だと思います。
そして、この日本のプロモーターと組む利点というのは、海外進出、海外でのツアーで、1 回目から利
益を出すというのは、やはり、なかなか難しいと思うのですね。そうなった時に、
「どうやって budget
の帳尻を合わせていくか」ということを一緒に考えられるのが、日本国内でもプロモーターとしてやっ
ている会社だと思うのですね。国内のツアーであるとか、フェスティバルであるとか、そういったとこ
ろとまるっとまとめて、海外ツアーも全部まとめた budget でみることによって、まとまった、あまり
持ち出しにならないような形での計算ができやすいというのも、一つの利点かなというふうに思います。
そして、そういった形でパートナーが見つかって、「実際にツアーを組みました」というふうになった
時に、まず、ツアーを準備していくに当たり、例えば、私なんか、コーディネーターというか、間に入
って、日本のツアマネさんからいただいた、制作担当の方からいただいたステージプロットであるとか、
テクニカルライダーであるとか、そういったものを会場、もしくはプロモーターとやりとりしながらつ
くり上げていくわけなのですけれども、ここでまず最初にぶつかる難しさといいますか、よくあること
が、先程挙げさせていただいた日本のアーティストは皆さん、日本ではすごくしっかりした環境でツア
ーをやってらっしゃる方ばかりで、そして、結構大きな会場でやってらっしゃる方が多いのですね。そ
うなると、どうしてもその規模での制作のイメージでプロットなどを送っていただくと、会場の人間が
「うーん、なんだ、これは。これはうちではできないよ。アリーナクラスだよ」というのが、まず返っ
てきてしまうことが多いのですね。なので、海外の箱とどうやって合わせて、とはいえ、やはりそのア
ーティストのポテンシャル、アーティストの力を消さない形でどれだけ最大限、少し日本よりもサイズ
ダウンしたものに合わせていけるかという、まず、その制作段階での舞台監督さんなのか、ツアマネさ
んなのか、そこでのまずは準備というのがなかなか必要になってくるかなと思います。そこで、どこま
で妥協できるのかという問題が出てくると思うのです。
たとえば、去年、私が関わらせていただいた Perfume の公演なんかは、皆さんもご存じの通り、いわ
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ゆるプロジェクションマッピングという、非常にホットなテクニックを使った、ビジュアル的にも非常
に印象深いパフォーマンスなのですけれども、プロジェクションマッピングだけではなく、Perfume は
映像ありきの、というか、映像も込みでのパフォーマンスということで、やはり、妥協できない点もあ
るのですね。そうなった時に、妥協できない、この妥協できないことが必然であるということが分かっ
た場合には、心置きなく現地のコーディネーターなりツアマネなりというところをお使いいただいて、
現地と交渉をすることです。その時の利点は、日本なりの観点を持ちながら、海外の人とのニーズとい
うか、できることとか、あとは「こうやってやると、実は話が通るんだよ」ということが現地の人間は
分かっていることが多いので、そこを大いに利用していただきつつ、なんとか妥協ができない点に関し
ては諦めずにやっていただくということが必要になってくるかなとは思います。
とはいえ、そうなった時に、事前の準備はもちろん、やはり日本のメーカーさん、日本のアーティスト
さんをやらせていただくと、海外のプロモーターがみんな口をそろえて、「本当に日本の人は下準備に
きちんと時間をかける」というか、
「細かいところまで問い合わせがあって、そこをきちんと詰めない
と、話が前に進まないんだよね」というのを、よくいわれるのですけれども。
ただ、だんだん細かいところを詰めていくと、「OK、OK」という返事が海外の人から返ってくるよう
になってくるという、ちょっと罠がございまして。
「OK、OK」が返ってきて、
「あ、OK なのかな」と
思って行くと、当日、どんでん返しが待っているということが、残念ながら結構ございまして。そうな
った時に、やはり私も日本人ですので、100%日本人で、ずっと日本で育ってきましたので、日本人と
しての「臨機応変」というのがなかなか、つくりあげてきたコンサートで、「我々は準備万端だけれど
も、現場に行ったらそうなっていなかった。準備万端ではなかった」という時の、
「じゃあ、現場対応」
という、その臨機応変さというか、柔軟さというか、トラブルに強くなる心というか、そこでどうやっ
てなんとか乗り切るかというのが、やはり現場での強さといいますか、海外での必須条件といいますか、
そういったものになってくるのかなというふうに思っております。
そして、あともう一つ、例えば、海外のコーディネーターなりプロモーターなりが見つかった時に、
自分の会社ではぜひこのアーティストを推したいのだけれども、向こうの反応が、必ずしも「あ、この
アーティストをやりたい」というふうにどうしてもかみ合わない場合ももちろん出てきてしまうと思う
のですね。先程、YAZ さんが挙げられていたビッグアーティストは、やはり海外でも非常にニーズのあ
るアーティストだと思うのですね。どういったところが海外の、私なんかが付き合いのあるヨーロッパ
のプロモーターがほしがるアーティストなのかというのを、最後にご紹介したいと思います。もろちん、
アニソンであるとか、ビジュアル系であるとか、特化したジャンル、J-POP の非常に特殊なジャンルは
もちろんニーズはあります。なので、そことはまたちょっと違ったジャンルでのアーティストが、どの
あたりが求められているのかというのをちょっとお話ししたいと思うのですけれども。
まず、先程の YAZ さんのアーティストのような、日本で大成功を収めているアーティスト、私が関わ
ったものに関しては、きゃりーぱみゅぱみゅさんとか、ONE OK ROCK とか、 Perfume とかになると
思うのですけれども、実はこの 3 アーティストも、それぞれ日本で成功をしているそのタイミングが違
っております。Perfume に関しては、何年越しかな、5 年越しぐらいのお話で、念願かなって、やっと
2013 年に実現しました。ONE OK ROCK に関しては 3 年越しです。きゃりーさんは、リクエストがき
たその年というか、リクエストがきた時にもうすぐできたという状況になっています。
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それぞれ、本当に違うのは、例えば Perfume は、念願というのがお客さんからも伝わってきます。幸
いに、3 アーティストともソールドアウトになったのですけれども、
Perfume は待望感が強かったです。
そして、ONE OK ROCK は、私がお話を始めた時は、まだ日本でも武道館前の段階だったのですね。
ですので、日本での大ブレイクと、それから海外公演というのがばっちりタイミングが合ったという、
非常にまれなケースかなというふうに思います。それもあって、先程ご覧いただいた映画、あれはヨー
ロッパツアーと、それからアジアツアーを収めたドキュメンタリーフィルム、先程の X の映画などもそ
うなのですけれども、そういった形で、今、一番、頂点に上り詰めつつあるアーティストの、その本当
に今の瞬間を切り取ったという、なかなか貴重なフィルムだと思いますし、貴重な機会だったのかなと
いうふうに思います。
そして、きゃりーに関しては、やはり、マネージメントさんの非常に迅速なというか、本当に「buzz
がきてるな」と思った瞬間にもう出発するという、日本……、私も日本人なので、日本人としてはなか
なか珍しいというか、本当に「構想何年」というのが非常に多いパターンから考えると、非常に迅速な、
「あ、やる? うん? やりたい? じゃあ、行こう」みたいな、そういう、ほぼ見切り発車に近いの
ではないかぐらいの感じでやられて、そして成功するという、「やってみたらできた」パターンという
のでしょうか、そういったことがいえるかなと思います。
そして、2 つ目の海外でほしがられるパターンというのが、音楽的には洋楽仕様、日本で言うと、この
洋楽的な音楽なのだけれども、洋楽ではあり得ない日本的な要素が含まれているものです。私が関わっ
たものの中では BABYMETAL、POLYSICS、東京スカパラダイスオーケストラなどもそうですね。あ
とは、私は全く関わっておりませんが、PASCALS という、元たまの方がやってらっしゃる、日本でも
非常にニッチなバンドなのですけれども、音楽的には洋楽……、洋楽のロックとはまたちょっと違うの
ですけれども、洋楽耳で聴いても、J-POP だとは判別しがたい音楽というのがあると思います。
BABYMETAL に関しては、もちろん「アイドルちゃん」なのですけれども、そのバックのミュージシ
ャンが本当にゴリゴリであるというのを、海外の人が目にすると、「なんだ、こりゃ?」ということに
はなると思うのですね。メタル人口というのは非常にどこの国にもありますけれども、やはり、ほかの
国ではなかなかちょっと発想が出てこないようなプロジェクトというか、アーティストだと思うのです。
POLYSICS に関しても、我々日本人にとっては、彼らがものすごくエキセントリックなアーティストと
はとらえていなかったのですけれども、音楽的には洋楽的な音楽をやってらっしゃるというのは、もち
ろん、皆さんもご同意いただけると思うのですけれども、外国人が見た時に、衣装の感じとか、甲高い
声なのか、それともステージングなのか、彼らのことを称して、いわゆる「インターナショナルな音楽
をやっている」
、
「エキセントリックだ」
、
「日本的だ」、
「あんなにエキセントリックなものは、ほかの国
にはないよね」というのが、外国のプロモーターからの意見だったりするわけなのです。例えば、スカ
パラなんかも、スカは本当に世界共通の音楽なので、そこでまたちょっと日本的な、違ったテイストを
持っているという、洋楽の中に日本的なものを……、外国人から見た「日本的なもの」というのは、た
だ、どこで入れ込むべきなのかというのはなかなか難しいのですけれども、パターンとしてはそういう
ものがあるということです。
そして、3 番目のパターンとしましては、洋楽のバンドと同じ体制、同じ目線で海外マーケットに挑む
というパターンがあると思います。これは全く私が関わっているものではないのですけれども、例えば
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Crossfaith というバンドがあります。彼らは、一回目のツアーから非常にたくさんの国、そんなに大き
なライブハウスではないのですけれども、小さな箱を、ヨーロッパを非常にたくさん回りました。そし
て、そのツアー自体は、もうほぼ自力といいますか、マネージャーさんも非常に英語が堪能でいらっし
ゃったりとか、メンバーも英語がそれなりにできる方もいらっしゃったりという、
「海外に乗り込んで、
自分たちでなんとかやりこなすぞ」ということを、恐らく、本当にもとから考えてやってらしたのでは
ないかなというふうに、外から見ていても見受けられるような、そして、それを続けることによって、
昨日、昨日と言いますか、先日、フランスのほうのプロモーターで、Crossfaith をやっているプロモー
ターは、
「多分、次に Crossfaith が来る時は、フェスに売り込めると思う」というところまできている
ということを考えると、地道にやっていって、そして結果が出ていくという、本当に洋楽のアーティス
トと同じような体制で挑むということが、3 つ目に挙げられるかなと思います。
この辺で私のプレゼンテーションを終了させていただきたいと思います。
―
横澤 ―
はい、山田さん、ありがとうございました。全員終わったあとに、皆さんからの質問、質疑応答とかお
受けいたしますので、もうちょっとお待ちいただければなと思います。
僭越ながら、続きまして、私のほうからアジアのほうにと思います。私の経歴ですが、簡単にこんな感
じで、ポニーキャニオンにいる時から海外畑です。上海、台湾、そして「ロックレコード」という台湾
資本の会社におりまして、そのあと、自分で会社をやっていくということになります。
アジアと言っても広いのですけれども、大きくは台湾、香港、中国の中華圏、それとシンガポール、マ
レーシア、インドアネシア、タイ、フィリピンとかの東南アジア、東アジアでは単一言語、単一民族の
韓国とかありますけれども、音楽市場としてはそれぞれ違います。その中でも、私としては大きなビジ
ネスフィールドが中華圏。つまり、台湾、香港、中国本土なのですけれども、やはり中国というのが一
番、ビジネスのダイナミズムが圧倒的に違う、大きいということです。
私が今のアソジアという会社をつくったのも、中国の、音楽に限らないトータルなエンターテイメント
市場がものすごいスピートで発展しているとか、あと、昔から知っている台湾とか香港のアーティスト
やマネージメント、音楽関係者が、みんなビジネスのフィールドを中国にシフトしていたりとか、韓流
とか欧米のアーティストが中国に押し寄せてきているのに、なぜかニーズがないわけでもないのに、日
本のアーティストが来ていない、この中国のマーケットの変化に組み込まれていない、乗ってきていな
いというのを感じたためです。つまり、パッケージ型のビジネスから、ここにありますけれども、中国
では、台湾とか香港のアーティストもみんな、「来たよ。やったよ。ちょうだいね」と、本当に日銭の
世界と言ったら失礼ですけれども、その世界でずっとやってきていると。それに、日本人をどうにか組
み込めないかなというのが私の考えで、アソジアをつくりました。
この辺のアーティストをやっておりますけれども、それでは最近の映像を見ていただければと思いま
す。すみません、お願いします。映像があまりきれいでないので、ごめんなさいなのですが。
(間
00:47:00~00:47:19)小野リサ北京公演映像
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『海外展開のキーマンに聞く、日本音楽の海外進出の現状と課題』
Introducing Japanese Music Overseas: Issues and Potentials
今年の 1 月 1 日に北京の工人体育館でやったものですね。360 度の円形ステージでやらせていただきま
した。
(映像音声 00:47:40~00:47:55)
今年のバレンタインデーですね。毎年、バレンタインデーは上海で、この規模のをやっているのですけ
れども、8000 人……
(映像音声 00:48:06~00:48:19)小野リサ上海公演映像
今、歌っているのは、中華圏の人が誰でも知っている「フェィ・ウォン」の曲で、こういう曲を中国語
で歌ったりしています。
(映像音声 00:48:28~00:49:05)中孝介北京公演映像
あと、中孝介君というアーティストがいるのですけれども、
(映像音声 00:49:10~00:49:29)
これも、中華圏の人たちが誰でも知っている「童話」という曲を彼とオーディエンスが歌っていると。
(次に「それぞれに」という中孝介の持ち歌をオーディエンスだけが大合唱するシーンで:)
これは自分の持ち歌を中国の人たちが覚えて歌っているということです。
こう見ると、中君、歌わないアーティストみたいに見えますね。オーディエンスに歌わせちゃうアーテ
ィストですかね。
(映像音声 00:49:55~00:50:13)
あと、ジャズですけれども、ピアニストの上原ひろみちゃんも、うちのほうでやらせていただいていま
す。
(映像音声 00:50:19~00:50:29)
彼女はご存じのように、1 年のほとんど欧米にいて、アジアに割いてくれる時間というのも少なく、そ
の中のほとんども日本になりますので、海外、特にアジアでのツアーというのは、なかなかとりにくい
ですね。単発ではちょこちょことやります。来月も上海公演とかもありますし。
(映像音声 00:50:46~00:51:06)
これは今年初めて上海でやったシンプルライフという、もともと台湾で 2006 年からやっているイベン
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トの上海バージョンですね。こういう万博の会場跡地で、4 つのステージをつくって、3 日間やったフ
ェスティバルです。そこに中君を今年、日本人としては一人ですけれども、出させていただいたと。
(映像音声 00:51:28~00:51:40)
これも、中国の人だったら誰でも知っている「青蔵高原」という曲を、中君の独特のヴォイスでカバー
しているというものですね。
こういうような業務をやらせていただいています。ほかには、例えばここにありますけども、ウェイウ
ェイ・ウーさんの上海凱旋公演をやらせていただいたりとか、お手伝いという意味では、香港アジアポ
ップミュージックフェスティバルですとか、今のシンプルライフの台北、上海、両方のアドバイザーと
いうかをやらせていただいたりしております。
小野さんに関しては、今年もこれからまだまだ続きまして、このあと、11 月、12 月で、あと年明けま
で、全部で 17、もう、3 終わっていますので、14 公演、中国でやっていくということになります。
今、お二人にお話を伺った欧米のマーケットとはちょっと違いまして、アジアにおいては、昔から日本
の音楽というのは過去から影響力がありまして、それが変化してきていると。そういう欧米になかった
事象を経てきて、それが今、アジアでのビジネスになっているということで、今のビジネスの origin、
可能性にもなっているので、それをちょっとご紹介します。
まず、90 年代、香港とか台湾のアーティストが日本の楽曲をものすごたくさんカバーしました。現地
で曲が不足していたのでしょうかね。日本の楽曲を正式に音楽出版ビジネスを通じて広東語とか北京語
でカバーしました。これがものすごく今になって、ジャブとして効いているところがあります。これは
そのまま中国にも影響を及ぼしている状況です。
90 年代後半から 2000 年頭ぐらいには、
台湾に哈日ブーム
(はにちブーム=日本の文化を求めるブーム)
というのがありましたので、台湾の若者が日本のポップカルチャー全般に憧れて、その中で音楽も聴く
ことに。J-POP はオリコンのチャートのまんま聴かれたということですね。この時には、原版ライセン
スビジネスを中心に、日本の CD が発売されまくりました。ライセンシーがアーティストをプロモーシ
ョンで招聘して、売れ行きが良ければコンサートにもなりました。
2000 年後半からは、台湾や香港でも CD マーケットが縮小して、日本からの原版ライセンスビジネス
も激減しました。原版ライセンシーも、アーティストをお金かけてまで呼ばずに、インターネットで得
られる情報、能動的に探される情報というのは、やはりアニメ関係が主流となり、J-POP の影が薄れて
いってしまいます。同じ条件の中でも、韓国のソフト産業支援の国策とか、民間であった All Korea 体
制を受けて、韓流ドラマの影響とかで、K-POP が台頭し始めて、徐々に J-POP に代わって市場を凌駕
していきます。
2000 年の後半以降、世界、欧米から、今までに来なかったアーティストが来たりするということも含
めて、アジア各地のライブマーケットが右肩上がりで広がっていきます。
CD マーケットが存在した日本でも、同様にライブビジネスがパイを広げていきます。個々のアーティ
スト単位で以前から海外展開に動いていたアーティストもいるのですけれども、業界的にというか、
「日
本の市場がこうだから海外に目を向けよう」となったのは、ここ最近、数年の話だと思います。こうで
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Introducing Japanese Music Overseas: Issues and Potentials
すね。海外から見れば、日本の音楽というのはアニメ関連、男女のアイドルグループ、あとボカロ、先
程の初音ミクさんなどがそうですけれども、そういった印象が強い中で出始めていったという感じです
ね。
アジア各地のライブマーケットなのですけれども、ローカルのアーティストとインターナショナルなア
ーティストが入り乱れて、なだれ込むように公演を行った結果、総じて、今は演目供給過多の状態とい
われています。ユーザーがえり好みをする買い手市場化していて、かつて鉄板といわれた韓流アーティ
ストでさえ一杯になりません。プロモーターにとっては、限られた一部のアーティストしか儲からない
状況です。今はもう、各地のライブマーケットというのは最盛期を過ぎて、安定期に入ったのではない
かと言っている方が僕の周りでは多いですね。日本でもそうかもしませんけれども。
日本のアーティストというのは、そんな中で海外で奮闘しているわけですけれども、日本の音楽市場が
しっかりしていた、パッケージのマーケットが残っているだけに、海外を意識する時期が遅れたのかな
というふうに考えます。展開が早いこの時期に、外のマーケットの変化に対しては、他国の反応と比べ
ると、若干、乗り遅れた感じもしていますね。
そういった中で、私が思うことというのをいくつかお話しします。まず、出ていける人が出ていってほ
しいなというのがありますね。アジアにおける J-POP の歴史にヒントがあるのですけれども、80 年代、
90 年代に影響を及ぼした日本の音楽に影響を受けた人たちが、今、現地においては富裕層になっている
現実もあって、香港や台湾とか韓国などでは、当時、カバーをされた曲を持っているアーティストのコ
ンサートにニーズがあります。去年、うちのほうで安全地帯をやったりとか、今年だったら香港で五輪
真弓さんがやったりとか、そういったアーティストのレベルではありますね。この辺の人たちはすでに
大御所なので、なかなか海外に出ていこうというモチベーションもないのではないかということもあり
まして、非常に残念ながら、首を縦に振っていただく方もなかなかいないという状況ですが、出ていけ
るアーティストさんが出ていって、J-POP のマーケットをまたもう一回盛り上げていただければなとい
うふうに思います。
次に、出ていく意志を持ってほしいということですね。マネージメントさんのレベルで海外展開のお話
をさせていただく時に、うちとしてはアーティストさんとかマネージメントさんに海外で活躍、活動し
たい、ストレートに言うと、海外で儲けたいという意志があるのかどうかというのがキーになります。
意志のない方たちと一緒にやっても点だけで終わってしまうということになりますので、その先、線と
か面になっていかないということになると思います。全般的に日本のアーティストに、もっと海外での
キャリアづくりに積極的に、どん欲になってもらいたいなというところです。
レコード会社レベルとか、マネージメントレベルで海外を考える時に、最初から海外を意識したアー
ティストづくりをしてもいいのではないかと思います。見つける、育てる、プロデュースする、商品化
するという、この辺まで一貫して海外を意識した戦略に基づいてアーティストづくりをしていくという
ことが必要かなと思いますね。これは、韓流のアーティストなどを見ているとわかりますが、皆さんが
ご存じの通りです。
次、ローカライズですね。この話をいつもすると、66 年にビートルズが来た時に、「ビートルズは日本
語で挨拶も、歌も歌わなかったぞ」と言うのですけど、私は海外展開をする中において、それぞれのマ
ーケットに対して、現地化という意味でのローカライズは必要だと思っています。また K-POP の話に
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なりますけれども、彼ら、彼女たちは日本に来たら日本語で歌い、中華圏に行ったら中国語であいさつ
し、歌っていますので、その辺に彼らの覚悟とか、努力とか、あと、そういうのが先程言ったアーティ
ストとしての意志の表れであり、マネージメントとしては戦略の賜物だと思います。
今、ビデオで見ていただいたように、小野リサにしても、中君にしても、そういう意味ではローカライ
ズしていただいていて、それが現地での彼、彼女のベーシックなニーズを少なくともキープ、あるいは
それ以上昇華させていく原因になっているのは、もう、これは確実です。
次に、今、山田さんもちょっとおっしゃっていましたけれども、制作面でのローカライズという意味で
のカスタマイズですね。プロモーションでも、興行でも、海外に踏み出す際には現地でできるサイズへ
のカスタマイズをすることも必要だと思います。まず、やりましょう、できるようにしましょうという
ことで、コストをそぎ落とした海外向けのシフトを現地で受けてくれる側の採算に合わせてつくってい
くというのも、こちら側の努力として必要かなと。プロモーターさんとかは、長期のパートナーシップ
を組まない限り、「ああ、儲からなかったね。もう、次、ないね」ということは結構ありますので、若
干でもこちらがコストダウンして、次、また続くようにしてもらうということは必要だと思います。
ちょっと苦言になるのかもしれないのですけれども、日本が世界に誇る文化というのは、アニメとかボ
カロとかいろいろありますけれども、その中でも特にアニメに関して言うならば、海外への楽曲認識の
切り口としてはとても強力だと思います。ただ、あまりにも今の海外での音楽展開というのは、アニメ
というキーワードに頼り過ぎているのかなという気もします。そこから先、切り口としてアニメを使っ
たあと、アーティスト単位で認識されていくように展開していかなければいけなのではないかなという
ふうに思います。ほかにもやり方はあると思いますし、例えば、元に戻ればカバーを推進していくこと
もそうだと思いますし、今言ったように、出ていけるオリジナルのアーティストが出ていくということ
もありだと思いますし。
今、経産省のクール・ジャパン戦略とか、それに基づいた J-LOP の施策とか、日本もコンテンツの海
外展開支援を実施しているのですけれども、韓国の政府が早くからコンテンツの海外展開支援をしてい
て、その結果、韓流ドラマ、K-POP の海外での成功があったのですけれども、海外を見ていると、民
間でも All Korea 体制というのが見られたのです。例えば、中国で韓国製品のテレビのコマーシャルに
は全部 K-POP のアーティスト。韓国のアーティストが出て、曲が使われているとか、家電量販店のテ
レビのコーナーでは、
サムソンとか LG のテレビに映っているのは全部韓国のアーティストだったとか、
そういうのがどうやったらできたのかちょっと分かりませんけれども、鶏・卵の話じゃないですけれど
も、価値があったからそうなったという前に、そういう形で価値をつくっていったともいえるのですね。
だから、日本の民間もそういったふうに海外では All Japan 体制でできればなというところですね。
国の支援もあって、間接的には業界団体の支援もあったりして、いろいろと海外で日本人のアーティス
トのお披露目の機会が増えているのですけれども、そこに出るアーティストの選定に関しては、アーテ
ィスト個人レベルではその先も海外展開を続ける意志を持っていて、マネージメントレベルだったら海
外への戦略を持っていて、費用をかけるに値するアーティストであってもらいたいなと思います。公的
支援を利用した展開にしても、自腹で行くにしても、ニーズづくりのためにこっちから仕掛けていく種
まきの段階ですから、特に有効な展開をするべきだと思います。くれぐれも海外から「J-POP の展開は
カモネギ施策だ」と思われないようにしていただきたいとも思っています。
「誰々さん、どこどこ公演、
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大成功」
、
「海外でも大人気」といった日本向けの話題作りの宣伝費に終わらないでいただきたいなと思
うところであります。
すみません、勝手なことばかり申してきましたけれども、今のところのアジアの状況に関してお話しさ
せていただきました。
時間はまだまだあるのですけれども、今回、3 人共通して同じ意見とかということよりは、皆さん、3
人の経験なり現状という中から、皆さんに質問をしていただいて答えていきたいなと思っております。
何かご質問等ございましたら挙手よろしくお願いいたします。積極的によろしくお願いします。
******************** 約 30 分間 質疑応答 ********************
―
横澤 -
では、このような感じで、みなさん、ありがとうございました。特にまとめることはございません。何
か感じ取っていただければなと思います。長きにわたり、ありがとうございました。
―
司会(道島) ―
では、お三方に、もう大きな、大きな拍手をお願いします。
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