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ヴェルディ《ラ・トラヴィアータ》におけるヴィオレッタ像 ―実在の人物と小説

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ヴェルディ《ラ・トラヴィアータ》におけるヴィオレッタ像 ―実在の人物と小説
ヴェルディ《ラ・トラヴィアータ》におけるヴィオレッタ像
―実在の人物と小説から探る―
A study on the character of Violetta in the opera of La Traviata by G.Verdi
with special reference to her model and the related novel.
音楽文化研究科 音楽表現専攻 1000-081016 宮川美生
本研究では、ジュゼッペ・ヴェルディ(Verdi, Giuseppe 1813~1901)のオペラ《ラ・
(1853 作曲、初演)におけるヴィオレッタ・ヴァレリー
トラヴィアータ La Traviata》
(Violetta Valery)の人物像について明らかにする。
第 1 章では、まず、オペラの原作となったアレクサンドル・デュマ・フィス(Duma-fils,
Alexandre 1824~1895)の小説『椿を持つ女 La Dame aux camellias』における登場人
物や作者についてまとめた。次に、この小説の主人公マルグリット・ゴーティエ
(Marguerite Goutier)のモデルとなった実在の人物マリー・デュプレシ(Duplessis,
Marie 1824~1847)についての記録を調べ、そこから読み取れる人物像を推察した。さら
に、ヴェルディとオペラ《ラ・トラヴィアータ》における登場人物についてまとめた。
第 2 章は、2-1 で小説とオペラのそれぞれのあらすじを比較した。2-2 では、ヴィオ
レッタの人物像を浮き彫りにするために重要だと思われる場面として、第 2 幕第 5 景に絞
り、小説の当該箇所と比較しながら分析した。その結果、オペラと小説では細かなエピソ
ードの内容はほとんど一致しているのに対し、物語の筋と劇の展開が大きく異なっている
こと、オペラでは原作よりも重要な人物としてジェルモンが描かれていること、ヴェルデ
ィのオペラでは登場人物の心理的な駆け引きと心情変化に焦点を合わせ、物語の展開を凝
縮することにより各場面のドラマ性が高く描かれていることが明らかになった。
以上の分析と考察から、ヴィオレッタは芯が強く、潔く、誇り高い精神を持っていると
同時に、感受性が強く繊細で、心優しく、非常に信仰深い面も持ち合わせている女性であ
ると考えられる。また、ヴェルディの意図を汲み取ったことによって、ヴェルディの描い
たヴィオレッタの人物像をより理解し的確に表現することが、良い演奏に繋がるのではな
いかと考える。
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