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神経細胞におけるAccell siRNAを用いたRNAi実験

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神経細胞におけるAccell siRNAを用いたRNAi実験
Application Note
DharmaconTM
RNAi, Gene Expression & Gene Editing
トランスフェクション試薬での siRNA 導入が難しい
神経細胞における RNAi 実験
はじめに
神経芽腫細胞や初代神経細胞は、 がんや神経発達に関する
基礎研究用あるいは神経変性病研究用のモデル細胞系とし
て広く使用されています。 しかし、 神経芽腫細胞や初代神経
細胞の多くについて、 リピッドベースのトランスフェクション試薬
による核酸導入効率が低いという問題があり、 siRNA を用い
た RNAi 実験が困難です。
Dharmacon Accell siRNA ( 以 下、 Accell siRNA) は、 ト
ランスフェクション試薬を用いずに細胞に導入できる siRNA で
す。 Accell siRNA には特殊な化学修飾が施されたヌクレオチ
ドを導入しており、 結果として、 さまざまな細胞に受動的に取
り込まれます。 従来のトランスフェクション試薬による導入が困
難であった細胞での実験例も増えつつあります。
本アプリケーションノートでは、 Accell siRNA の神経細胞への
導入事例として、 神経芽腫細胞 IMR-32 および初代神経細
胞における Accell siRNA を用いた p53 遺伝子の発現抑制を
ご紹介します。 p53 は DNA 損傷やストレスに対する細胞応答
を制御するがん抑制タンパク質です。 p53 は転写因子として
働き、 細胞周期 ・ DNA 修復の制御や、 DNA が修復不可能
な損傷を受けた場合のアポトーシス誘導など多彩な機能を担
います (図 1)。
図 1 さまざまなストレスに対する細胞応答を仲介する p53
細胞に各種ストレスを与えると、 核内の p53 タンパク質量が急増
し、 細胞周期停止 ・ DNA 修復を制御する遺伝子 (p21Waf1/
Cip1、 GAD45α、 14-3-3α) やアポトーシスを制御する遺伝子
(Bax、 Apaf1、 Casp-9) の発現が制御されます。
神経芽腫細胞におけるターゲット mRNA の効率
的なノックダウンを実現
神 経 芽 腫 細 胞 IMR-32 へ Accell siRNA を 導 入 可 能 か 調
べ る た め に、 Accell siRNA を 細 胞 に 投 与 し た 際 の GAPD
(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase) および
p53 遺伝子の発現抑制の効率と細胞生存率を評価しました。
IMR-32 では野生型の p53 が発現しており、p53 遺伝子をノッ
クダウンした場合に DNA 損傷応答への影響が解析できます。
Pool (NTC)、p53 mRNA をターゲットとする Accell siRNA を、
Accell siRNA delivery media (AM) 中で IMR-32 細胞に導
入しました。 導入 72 時間後にターゲット mRNA のノックダウン
効率および細胞生存率を評価しました (図 2)。 Accell GAPD
Control Pool お よ び p53 mRNA を タ ー ゲ ッ ト と す る Accell
siRNA が、 細胞生存率を下げることなくターゲット mRNA を
Accell GAPD Control Pool (GAPD)、 Accell Non-targeting
効率的にノックダウンすることを確認しました。
71-3771-11
p53 遺伝子の発現抑制による、 DNA 損傷薬処
理後の IMR-32 細胞生存率の上昇
p53 は、 DNA の損傷に反応して G1/S チェックポイントを誘
導したり、 アポトーシスを誘導したりして細胞周期を停止させ
る機能を持ちます (1, 2)。 カンプトテシン (Camptothecin)
といった DNA 損傷薬を化学的感受性のあるヒト神経芽腫細
胞株に投与すると、 急速かつ激しいアポトーシスが起こります。
また、 ヒトパピローマウイルス type16 E6 タンパク質あるいはド
ミナントネガティブ型変異体 p53 (R175H) を用いた p53 の
機能抑制によって、 野生型 p53 を持つ細胞株において薬剤
誘導性のアポトーシスが阻害されます (3)。
Accell siRNA を用いた p53 遺伝子の発現抑制によって同様
の阻害が起こるのか調べるために、 Accell コントロール siRNA
Pool および p53 mRNA をターゲットとする Accell siRNA を
IMR-32 細胞に導入しました。 導入 48 時間後に DNA 損傷
薬であるカンプトテシンをさまざまな濃度で添加し、 さらに 24
時間培養したあとに細胞生存率を評価しました (図 3)。 p53
mRNA をターゲットとする Accell siRNA の導入によってカンプ
トテシン誘導性の細胞死が阻害されることを確認しました。
カンプトテシン処理による p53 およびその下流
ターゲット p21 の誘導に関するハイコンテント分析
細胞内における p53 タンパク質の蓄積量は、 ユビキチン化お
よびそれに引き続いて起こる 26S プロテアソームによる分解に
よって、 通常は低く抑えられています。 しかし、 細胞がストレ
スにさらされると、 p53 のユビキチン化は抑制され、 p53 は
核に蓄積し活性化と安定化が起こります (4)。 活性化された
p53 は転写因子として機能し、 細胞周期停止 ・ DNA 修復を
制御する遺伝子やアポトーシスを制御する遺伝子の発現を制
御します (図 1) (5)。
Cellomics Multiplexed p53 and p21 Detection Kit
(Thermo Scientific) を用いて Accell siRNA による p53 遺
伝子の発現抑制の影響を調べました。 具体的には、 p53 お
よびその下流ターゲット p21 タンパク質の核への蓄積量をモニ
ターしました。 この結果、 IMR-32 細胞は培養プレートへの接
着が不十分であり、 ハイコンテント分析を行うためには緩やか
図 2 IMR-32 細 胞 に お け る Accell siRNA を 用 い た タ ー ゲ ッ ト
mRNA の効率的なノックダウン
1 µM の Accell コントロール siRNA Pool (GAPD、 NTC) および
p53 mRNA をターゲットとする Accell SMARTpool siRNA (p53
pool) あるいは Accell individual siRNA (p53 siRNA1、 p53
siRNA2) を、 Accell siRNA delivery media 中で IMR-32 細胞
に導入しました。 導入 72 時間後に、 p53 および GAPD のノック
ダウンおよび細胞生存率を評価しました。 全てのサンプルについ
て 3 回の導入実験を行いました。
な固定が必要であることがわかりました。 IMR-32 細胞の接
着性は、 通常の Accell siRNA の導入条件では低いことがわ
かりました。
高 濃 度 の 血 清 は Accell siRNA の 導 入 を 阻 害 す る た め、
Accell siRNA delivery media (AM) は血清を含みません。
したがって、 長時間の無血清条件に感受的な細胞株あるいは
アッセイにおいては、 細胞生存率の低下などの問題が生じる
図 3 カンプトテシン処理後の IMR32 細 胞 生 存 率 の p53 ノ ッ ク
ダウンによる上昇
1 µM の Accell コントロール siRNA
Pool (GAPD、 NTC) および p53
mRNA をターゲットとする Accell
SMARTpool siRNA (p53 pool)
あるいは Accell individual siRNA
(p53 siRNA1、 p53 siRNA2) を、
Accell siRNA delivery media 中
で IMR-32 細胞に導入しました。 導
入 48 時間後に DNA 損傷薬である
カンプトテシンをさまざまな濃度で添
加しました。 導入 72 時間後に、 位
相差顕微鏡による細胞観察 (A) お
よび resazurin アッセイ (B) によっ
て細胞生存率を評価しました。
2
図 4 低濃度の血清を含む Accell siRNA delivery media (AM)
と Accell siRNA を用いた、 IMR-32 細胞におけるターゲッ
ト mRNA の効率的なノックダウン
1 µM の Accell コントロール siRNA Pool (GAPD、 NTC) および
p53 mRNA をターゲットとする Accell SMARTpool siRNA (p53
pool) あるいは Accell individual siRNA (p53 siRNA1、 p53
siRNA2) を、 AM あるいは 2 % のウシ胎児血清を含む AM 中で
IMR-32 細胞に導入しました。 導入 72 時間後に、 p53 および
GAPD のノックダウンを評価しました。
発現抑制によって、 カンプトテシン処理をしても細胞周期が停止
しなくなることが示唆されました。 以上の実験から、 神経芽腫細
胞 IMR-32 において、 Accell siRNA を用いた p53 遺伝子の発現
抑制によってカンプトテシン処理による p53 依存性の DNA 損傷
応答が阻害されることを明らかにしました。
おそれがあります。 そのような場合、 3 %までの濃度の血清
を A に添加することで、 Accell siRNA の導入効率を下げる
ことなく問題を解決できる場合があります。 IMR-32 細胞の
場合は、 2 %の血清を AM に添加することによって、 ターゲッ
ト mRNA のノックダウン効率を下げることなく (図 4) 細胞の
接着性と固定を著しく改善することができました。
続いて、 カンプトテシンによる p53 および p21 タンパク質の誘
導が、 Accell siRNA による p53 遺伝子の発現抑制によって
どのような影響を受けるかを調べました。 予備実験から、 4
µM のカンプトテシンによる 18 ~ 22 時間の処理が、 IMR-32
細胞における p53 および p21 タンパク質の誘導に最適である
ことが分かりました。
Accell GAPD Control Pool ( GAPD )、 Accell Nontargeting Pool (NTC)、 p53 mRNA を タ ー ゲ ッ ト と す る
Accell siRNA (SMARTpool あるいは individual siRNA) を
IMR-32 細 胞 に 導 入 し ま し た。 Accell siRNA の 導 入 52 時
間後に 4 µM のカンプトテシンを添加し、 さらに 20 時間培
養しました。 Accell siRNA の導入 72 時間後に細胞を固定
し、 Cellomics Multiplexed p53 and p21 Detection Kit
(Thermo Scientific) を用いて p53 および p21 タンパク質
を染色しました。 イメージングサイトメーターを用いて、 細胞
核に局在する p53 および p21 タンパク質の蛍光強度の平均
値を測定しました (図 5A)。 カンプトテシン処理による p53 お
よび p21 タンパク質の誘導は、 p53 遺伝子の発現抑制によっ
て阻害されることが分かりました。
カンプトテシン処理による p53 および p21 タンパク質の誘導に
p53 遺伝子の発現抑制が与える影響をより詳細に解析するため
に、 Accell Non-targeting pool (NTC) あ る い は p53 mRNA
をターゲットとする Accell SMARTpool siRNA を導入した 500 個
の細胞について、 核の Hoechst 染色強度を p21 および p53 タ
ンパク質の染色強度に対してプロットしました (図 5B)。 Accell
siRNA による p53 遺伝子の発現抑制によって p53 および p21
タンパク質の染色強度が著しく低下したことから、 p53 遺伝子の
初代培養皮質ニューロンへの Accell siRNA 導
入時の培養培地の検討
初代培養皮質ニューロンは培養条件に対して極めて感受的で
す。 そこで、 Accell siRNA 導入時の培養条件がニューロンの
viability に与える影響を調べました。 発生 18 日目のラット胎
仔から取り出した初代培養皮質ニューロン (6) を in vitro で
4 日間培養したのち、 以下①~④のいずれかの培地で 48 時
間さらに培養しました。
培地① Neurobasal media (以下、 NB)
培地② Accell siRNA delivery media (以下、 AM)
培地③ B27 ( サ プ リ メ ン ト ) を 添 加 し た Accell siRNA
delivery media (以下、 AM + B27)
培地④ Neurobasal media と Accell siRNA delivery
media と の 50 : 50 の 混 合 培 地 ( 以 下、 NB +
AM)
その後、 ニューロンの viability を MTT アッセイにより評価しま
した (図 6)。 培地② AM、 および培地③ AM + B27 におい
ては、 培地① NB で培養した場合と比べて viability が低下
しました。 しかし、 培地④ NB + AM で培養したニューロンの
viability はそれほど低下しませんでした。 そこで、 NB と AM
の混合比を変えて培養条件をさらに検討しました。
発生 18 日目のラット胎仔から取り出し in vitro で 4 日間培
養した初代培養皮質ニューロンに、 NB と AM を異なる比率
で混合した培地中で、 1 µM の Accell Non-targeting pool
(NTC) を導入しました。 48 時間後、 NTC で処理したニュー
ロンの viability を顕微鏡観察 (図 7A ~ D) および MTT アッ
セイ (図 7E) により評価しました。 初代培養皮質ニューロン
を培地② AM で培養した場合、 viability は著しく低下しまし
た (図 7A, E)。 NB と AM を異なる比率で混合した培地中で
培養した場合、 NB のみで培養した場合と比べて、 細胞の形
態に大きな変化は観察されませんでした (図 7B ~ D)。 AM
の混合量が多いほどニューロンの viability は低下しましたが、
50% までであれば viability はそれほど低下しませんでした。
3
図 5 ハイコンテント分析 : カンプトテシン処理後の p53 遺伝子の発現抑制による p21 および p53 タンパク質発現量の低下
次に、 NB と AM を異なる比率で混合した培地が、 Accell
siRNA 導 入 に 与 え る 影 響 を 調 べ ま し た ( 図 7F)。 Accell
GAPD Control Pool (GAPD) の導入によって、 全ての培地
条件において GAPD mRNA の発現量が著しく低下しました。
AM の混合量が多いほどノックダウン効率は高くなりました。
以上の培養条件の検討結果に基づき、 以降の Accell siRNA
導入実験は NB と AM との 50 : 50 の混合培地 (至適培地)
を用いて行いました。
Dy547 で標識した Accell GAPD siRNA (1 µM) を、 至適
培地中で初代培養皮質ニューロンに導入し、 48 時間培養し
ました。 細胞を固定後、 共焦点顕微鏡で観察しました。 ほと
んど全てのニューロン細胞への Accell siRNA 導入が確認で
きました (図 8A, B)。 また、 神経細胞体の細胞質および神
経突起への siRNA の局在が観察されました (図 8C, D)。
(50:50)
IMR-32 細胞への Accell siRNA の導入 52 時間後に 4 µM のカンプトテシンを添加しました。 カンプトテシン処理 20 時間後 (Accell
siRNA の導入 72 時間後) に細胞を固定し、 Cellomics Multiplexed p53 and p21 Detection Kit を用いて p53 および p21 タンパク
質を染色しました。 (A) は Accell siRNA を導入した細胞の核に局在する p53 および p21 タンパク質の蛍光強度の平均値を、 (B) は
Accell Non-targeting pool (NTC) および p53 をターゲットとする Accell SMARTpool siRNA (p53 pool) を導入後カンプトテシン処理
した細胞 (500 個) における Hoechst 染色強度を p53 および p21 タンパク質の染色強度に対してプロットした結果です。
図 6 初代培養皮質ニューロンへの Accelll siRNA 導入時の培
養培地の検討 (その 1)
発生 18 日目のラット胎仔から取り出した初代培養皮質ニューロ
ンを in vitro で 4 日間培養したのち、 異なる 4 種類の培地で 48
時間培養しました。 MTT アッセイによりニューロンの viability を
評価しました。
4
図 7 初代培養皮質ニューロンへの Accelll siRNA
導入時の培養培地の検討 (その 2)
発生 18 日目のラット胎仔から取り出し in vitro
で 4 日間培養した初代培養皮質ニューロンに、
Neurobasal media (NB) と Accell siRNA
delivery media (AM) を異なる比率で混合した培
地中で、1 µM の Accell Non-targeting pool(NTC)
あるいは Accell GAPD Control Pool (GAPD) を導
入し、 48 時間培養しました。 NTC で処理した細胞
の位相差顕微鏡観察像 : AM 中 (A)、 NB と AM
との 50 : 50 の混合培地中 (B)、 NB と AM との
75 : 25 の混合培地中 (C)、 NB 中 (D)。 細胞の
viability は MTT アッセイにより (E)、 ノックダウン効
率は GAPD mRNA の発現量を測定することにより評
価しました (F)。
培地 Accell siRNA
成分 delivery media
Neurobasal
media
A
100 %
0%
B
50 %
50 %
C
25 %
75 %
D
0%
100 %
p53 遺伝子の発現抑制による β アミロイドペプ
チドの神経毒性の抑制
アルツハイマー病の主な原因物質である β アミロイドペプチド
は、 神経細胞のアポトーシスを引き起こします。 また p53 は、
β アミロイドペプチドによる神経毒性発現のメディエーターとし
て知られています (7)。 そこで、 初代培養皮質ニューロンに
Accell siRNA を導入し p53 遺伝子の発現を抑制することに
よって β アミロイドペプチドの神経毒性を抑制できるかを調べま
した。
図 8 初代培養皮質ニューロンへの Accelll siRNA 導入の確認
発生 18 日目のラット胎仔から取り出し in vitro で 4 日間培養し
た初代培養皮質ニューロンに、 Neurobasal media (NB) と
Accell siRNA delivery media (AM) との 50 : 50 の混合培地
中で、 Dy547 で標識した Accell GAPD siRNA (1 µM) を導入し、
48 時間培養しました。 細胞を固定後、 共焦点顕微鏡 (Zeiss
LSM510) で観察しました。 siRNA が神経細胞体および神経突
起に局在することが確認できました。
赤色 : Dy547 で標識した Accell GAPD siRNA (1 μM)、 青色 :
Hoechst 染色された核、 スケールバー : 10 µm
p53 mRNA をターゲットとする Accell siRNA の導入により、
p53 mRNA の 発 現 レ ベ ル が 60 % 以 上 低 下 し ま し た ( 図
9A)。 Accell siRNA 導入開始から 48 時間後に、 さまざま
な濃度の β アミロイドペプチドをニューロンに添加し、 48 時間
後 ( 図 9B)、 72 時 間 後 ( 図 9C) の viability を MTT ア ッ
セイにより評価しました。 NTC siRNA を導入した場合と比べ
て、 p53 遺伝子の発現を抑制した初代培養皮質ニューロンの
viability は有意に向上しました。 β アミロイドペプチドの添加
濃度が高くなるにつれ、 p53 遺伝子の発現抑制による β アミ
ロイドペプチドの神経毒性の抑制効果は低下しました。 最も高
い抑制効果を得られたのは、 5 µM の β アミロイドペプチドを
添加した場合でした。 以上の実験から、 Accell siRNA を用い
た p53 遺伝子の発現抑制によって、 β アミロイドペプチドの神
経毒性が抑制されることを、 初代培養皮質ニューロンにおい
て明らかにすることができました。
5
図 9 p53 遺伝子の発現抑制による、 β アミロイドペプチド添加後の初代培養皮質ニューロンの viability の向上
発生 18 日目のラット胎仔から取り出し in vitro で 4 日間培養した初代培養皮質ニューロンに、 Neurobasal media (NB) と Accell
siRNA delivery media (AM) との 50:50 の混合培地中で、 1 µM の Accell Non-targeting pool (NTC) あるいは p53 mRNA をター
ゲットとする Accell SMARTpool siRNA を導入しました。 導入開始から 48 時間後に p53 mRNA のノックダウン効率を評価しました (A)。
Accell siRNA 導入開始から 48 時間後に、 さまざまな濃度の β アミロイドペプチドをニューロンに添加し、 48 時間後 (B)、 72 時間後 (C)
の viability を MTT アッセイにより評価しました。 **p < 0.01、 #p < 0.05、 t-test
まとめ
リピッドベースのトランスフェクション試薬による siRNA 導入効
率が低いといわれる神経細胞においても、 至適化された条件
で Accell siRNA を用いることによって RNAi 実験が十分可能
であることが明らかになりました。
実験材料および方法
細胞培養
IMR-32 細胞は ATCC から入手し、 推奨された培地条件で
培養しました。 ハイコンテント分析用に細胞の固定を改善する
ために、 細胞は CollagenIV でコートした 96 ウェルプレートに
播きました。 ラット皮質ニューロンは、 Banker および Goslin、
Brewer の改良プロトコールに従って、 発生 18 日目のラッ
ト胎仔から取り出しました。 ニューロンは、 B27 を添加した
Neurobasal media (NB) 中 で 4 日 間 培 養 後 に、 siRNA
を導入しました。
IMR-32 細胞への Accell siRNA の導入
IMR-32 細 胞 を 96 ウ ェ ル プ レ ー ト の 各 ウ ェ ル に 20,000 個
播 き、 一 昼 夜 接 着 さ せ ま し た。 IMR-32 細 胞 に 投 与 し た
Accell siRNA は 以 下 の 通 り で す : Accell Non-targeting
pool (コード番号 : D-001910-10)、 Accell GAPD Control
Pool ( コ ー ド 番 号 : D-001930-10)、 ヒ ト p53 遺 伝 子
(Accession #NM_000546) を タ ー ゲ ッ ト と す る Accell
siRNA SMARTpool ( コ ー ド 番 号 : E-003329-00) お よ
び Accell individual siRNA ( コ ー ド 番 号 : A-003329-22、
A-003329-23)。 Accell siRNA は、 Accell siRNA Delivery
Media (コード番号 : B-005000-100、 AM) 中で終濃度 1
μM にて使用しました。 細胞から培地を取り除き、 100 μl の
delivery mix (Accell siRNA と AM の混合液) を各ウェルに
加えました。 ハイコンテント分析用に細胞の固定を改善するた
めに、 AM に 2 % の血清を添加しました。 細胞は 37 ℃、 二
酸化炭素 5 %にて 72 時間培養後、 ターゲット mRNA のノッ
クダウンや細胞生存率の評価に使用するか、 ハイコンテント分
析用に固定を行いました。
初代培養ラット皮質ニューロンへの Accell siRNA の導入
発生 18 日目のラット胎仔から取り出し in vitro で 4 日間培
養した初代培養皮質ニューロンに、 NB と AM を異なる比率
で混合した培地中で、 1 µM の Accell siRNA を導入し、 48
時間培養しました。 初代培養ラット皮質ニューロンに投与し
た Accell siRNA は以下の通りです : Accell GAPD Control
siRNA ( コ ー ド 番 号 : D-001930-03)、 Accell Nontargeting siRNA #1 (コード番号 : D-001910-01)、 Accell
Non-targeting pool (コード番号 : D-001910-10)、 ラット
p53 遺伝子 (Accession #NM_030989) をターゲットとす
る Accell siRNA SMARTpool (コード番号 : E-080060-000020)。 Accell siRMA 導入 48 時間後 (推奨プロトコールで
は 72 時間後) に、 ターゲット mRNA のノックダウンを評価し
ました。 細胞への取り込みの検討実験には、 Dy547 標識した
Accell GAPD Control siRNA および Accell Non-targeting
siRNA を使用しました。 表現型の解析には、 in vitro で 4 日
間培養した初代培養皮質ニューロンに、 NB と AM を 50:50
の比率で混合した培地中で、 1 µM の siRNA を導入しました。
48 時間後、 さまざまな濃度の β アミロイドペプチド 1 ~ 42
(Californian peptides) を添加し、 さらに 48 ~ 72 時間培
養しました。 処理後の細胞の viability を MTT アッセイにより
評価しました。 β アミロイドペプチド 1 ~ 42 は先に記載の方
法で調製しました (9)。
Cell viability アッセイ
IMR-32 細 胞 の viability は resazurin ア ッ セ イ に よ り 評 価
し ま し た。 Resazurin は、 Acell siRNA の 導 入 か ら 72 時
間後に終濃度 25 μg/ml にて細胞に添加しました。 細胞を
インキュベーターに戻し、 1 ~ 3 時間培養しました。 プレー
ト は Wallac VICTOR 2 プ レ ー ト リ ー ダ ー (Perkin Elmer
6
Life Sciences) で 分 析 し ま し た ( 励 起 530 nm、 蛍 光
590 nm、 露光 1 秒)。 皮質ニューロンの viability は、 先
に 記 載 の 方 法 に よ り、 3-(4, 5-dimethylthiazol-2-yl)-2,
5-diphenyltetrazolium bromide (MTT) アッセイにより評
価しました (10)。
ハイコンテント分析
Accell siRNA の導入 52 時間後に 4 µM のカンプトテシンを
添 加 し、 さ ら に 20 時 間 培 養 し ま し た。 Accell siRNA の 導
入 72 時間後に細胞を 4 % パラフォルムアルデヒドで固定し、
Cellomics Multiplexed p53 and p21 Detection Kit を用い
て p53 および p21 タンパク質を染色しました。 イメージング
サイトメーターを用いて細胞を解析しました。 細胞核に局在す
る p21 および p53 タンパク質の蛍光強度を、 各 siRNA につ
き 3 連(ウェル)で測定しました。 各ウェルについて 8 つのフィー
ルド (フィールドあたり 100 細胞以上) を分析しました。 分析
に用いたパラメーターはチャネル 1 の Mean Object Average
Intensity お よ び チ ャ ネ ル 2 お よ び 3 の Mean Average
Intensity です。 ArrayScan VTI HCS Reader によって算出
された数値データは vHCS Discovery Toolbox を用いて評価
しました。
共焦点顕微鏡観察
共焦点顕微鏡観察のために、 Hoechst nuclear dye を添
加した 4 % パラフォルムアルデヒドで細胞を固定しました。
LSM510 confocal microscope (Zeiss) を用いて画像を取
得しました。
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Dharmacon Accell siRNA について詳しい情報はこちら >> www.gelifesciences.co.jp/dharmacon
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