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針葉樹における材積表と 針葉樹における材積表と 細り表の自動調製

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針葉樹における材積表と 針葉樹における材積表と 細り表の自動調製
卒業論文
針葉樹における材積表と
細り表の自動調製システム
An automatic system for constructing
volume and taper tables in coniferous species
平 成 12 年 度
森林計画学分野
賀 藤
正 治
卒 業 論 文
( 平 成 12 年 度 )
針葉樹における材積表と細り表の自動調製システム
賀
藤
正
目
次
治
Ⅰ . 緒 言 .......................................................................... 1
Ⅱ.二変数材積式の理論的誘導
........................................ 4
1.
は じ め に ............................................................... 4
2.
誘 導 .................................................................... 5
3.
資 料 と 方 法 ........................................................... 8
4.
結 果 と 考 察 ......................................................... 13
5.
お わ り に ............................................................. 17
Ⅲ . 相 対 幹 曲 線 式 の 推 定 方 法 の 理 論 的 誘 導 ..................... 19
1.
は じ め に ............................................................. 19
2.
誘 導 .................................................................. 20
3.
資 料 と 方 法 ......................................................... 21
4.
結 果 と 考 察 ......................................................... 22
5.
お わ り に ............................................................. 26
Ⅳ . 材 積 表 と 細 り 表 の 自 動 調 製 シ ス テ ム ........................ 27
1.
は じ め に ............................................................. 27
2.
シ ス テ ム の 構 成 .................................................. 28
3.
お わ り に ............................................................. 36
Ⅴ . 結 言 ........................................................................ 41
摘 要 ........................................................................ 45
Summary .................................................................... 48
引 用 文 献 ................................................................... 51
謝 辞 ........................................................................ 54
付属資料
Ⅰ
緒 言
森林経営において,主な利用の対象となる幹部の材積と細りを正
確に把握することは極めて重要である。しかし,立木のままの状態
で幹材積と細りを測定することは一般に困難である。そこで,立木
のままでも比較的容易に測定できる樹高と胸高直径から,間接的に
幹材積と細りを推定できるように,地域単位で主要な樹種ごとに二
変数材積表と細り表が調製されている。森林経営者は,所有する林
木の幹材積と細りをこれらの表によって評価でき,森林経営におけ
る意思決定のための 1 つの指針を得ることができる。
材 積 表 の 歴 史 は 古 く ,海 外 に お い て は ,す で に 19 世 紀 以 前 か ら 調
製 さ れ て き た ( 南 雲 ら , 1981)。 初 期 の 材 積 表 調 製 で は , 材 積 式 を 採
用しなかったため,数十万本という膨大な数の資料を収集する必要
があった。しかし,材積式が利用されるようになると,以前と比較
してはるかに少ない資料数で材積表が調製できるようになった。
わが国においても,材積表の調製は積極的に進められてきた(例
え ば , 林 野 庁 計 画 課 , 1970a; 1970b) が , 細 り 表 に つ い て は あ ま り 調
製されていないのが現状である。このような状態をもたらした最大
の原因としては,材積表と細り表をそれぞれ個別のものとして調製
する方法が採用されてきたことがあげられる。材積表と細り表は,
相対幹曲線式を用いることによって一連のものとして調製できる
( 梶 原 , 1992)。 梶 原 ( 1973b) は , 京 都 府 立 大 学 大 野 演 習 林 内 の ス
ギ同齢単純林を対象として,相対幹曲線式に基づく林分細り表を調
製 し た 。 南 雲 ら ( 1981) は , 東 京 大 学 千 葉 演 習 林 内 の ス ギ 同 齢 単 純
-1-
林を対象として,相対幹曲線式に基づく二変数材積表を調製した。
ま た , 高 田 ( 1987) は , 前 橋 営 林 署 管 内 の ス ギ 同 齢 単 純 林 を 対 象 と
して,相対幹曲線式に基づく利用材積推定システムを作成した。一
方 , 山 本 ( 1991) は , 東 京 大 学 農 学 部 附 属 秩 父 演 習 林 内 に お け る ス
ギ,ヒノキ,サワラおよびカラマツの同齢単純林を対象として,幹
材積,相対幹曲線式および径級別本数分布を推定できるシステム収
穫 表 を 作 成 し た 。 さ ら に , 梶 原 ( 1992) と 梶 原 ら ( 1996) は , 奈 良
県のスギ同齢単純林と岐阜県今須のスギ・ヒノキ択伐林を対象とし
て,相対幹曲線式に基づく二変数材積表,形数表および細り表を調
製した。
これまでの研究において,材積表と細り表の調製に用いられる材
積式と相対幹曲線式の係数は,限られた樹種や地域を対象として求
められている場合が少なくない。このような材積式と相対幹曲線式
は収集した資料に強く依存するため,その適用範囲は資料を収集し
た地域,樹種および成育段階に限定される。
今後,材積表や細り表の有用性をさらに高めていくためには,使
用する材積式や相対幹曲線式の適合度を高めるだけでなく,他の地
域や樹種への転用が容易になるように配慮することも重要である。
そのためにも,限られた樹種や地域の資料より経験的に求められた
係数のできるだけ少ない理論的な材積式と相対幹曲線式が望まれる。
また,実用に供されている材積表や細り表は,地域,樹種および
直径階ごとに調製されているため,必然的に表の数が膨大な量とな
らざるをえない。したがって,標準地調査より得られた樹高と胸高
直径の資料から,幹材積と細りを計算する作業が煩雑になるという
問題が生じる。このような問題を解決する上で最も有効な方法の 1
-2-
つとしては,標準地調査より得られた資料をコンピュータ上で処理
し,幹材積と細りに関する必要な情報だけを任意に抽出できるよう
なシステムの開発が考えられる。これによって,森林経営者は所有
する林木の幹材積と細りを容易に把握できるようになる。したがっ
て,このようなシステムは森林経営において非常に有用であるとい
える。
そこで本研究では,森林経営における意思決定を支援するツール
の 1 つとして,針葉樹を対象とした材積表と細り表の自動調製シス
テムを開発することを目的とした。まず,針葉樹を対象とした新し
い二変数材積式を理論的に誘導し,その適合度をスギとヒノキの資
料を用いて検証した。次いで,樹高,胸高直径(あるいは胸高断面
積)および幹材積から,相対幹曲線式における係数を推定する方法
を理論的に誘導し,その推定精度を検証した。そして,誘導した二
変数材積式と相対幹曲線式の推定方法に基づく材積表と細り表の自
動調製システムを開発した。さらに,開発したシステムの有効性と
限界について考察した。
-3-
Ⅱ
1.
二変数材積式の理論的誘導
はじめに
森林経営において,立木の幹材積を把握することは極めて重要で
ある。しかし,立木のままで直接的に幹材積を測定することは一般
に困難である。そこで,立木のままでも比較的容易に測定できる樹
高と胸高直径から間接的に幹材積を推定できるように,地域単位で
主要な樹種ごとに二変数材積式(あるいは二変数材積表)が調製さ
れ て い る ( 例 え ば , 林 野 庁 計 画 課 , 1970a; 1970b)。
しかし,これらの二変数材積式は,多大な時間と労力をかけて収
集した多数の資料から経験的に決定される複数の係数を含んでいる。
したがって,作成された材積式は収集した資料に強く依存すること
になり,その適用範囲は資料を収集した地域,樹種および成育段階
に限定される。また,経験的に作成された材積式の場合,式の両辺
で次元が異なり,式自体の意味が不明確なものも少なくない。さら
に,樹高と胸高直径との間に多重共線関係が存在する場合,係数が
不安定になる可能性がある。多数の資料から経験的に係数を決定す
る必要がなく,様々な地域,樹種および成育段階の立木に対して適
用できる理論的な二変数材積式が望まれる。しかし,経験的に決定
される係数を含まない理論的な二変数材積式は,現在のところほと
んどみられない。
そこで本章では,針葉樹における二変数材積式を理論的に誘導す
る こ と を 目 的 と し た 。ま ず ,樹 高 ,胸 高 直 径( あ る い は 胸 高 断 面 積 )
-4-
お よ び 幹 材 積 か ら , K UNZE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 に お け る 係 数 を 推 定 す
る2つの方法を示した。次いで,これらの方法によって推定される
係数が互いに等しいと仮定することによって,新しい二変数材積式
を理論的に誘導した。そして,誘導した材積式をスギとヒノキの資
料に適用し,その適合度を検証した。さらに,誘導した材積式の仮
定と関数形に基づいて,この材積式の特徴について考察した。
2.
誘
導
樹 高 h を 1 と す る 梢 端 か ら の 相 対 高 を x( 梢 端 が 0, 地 際 が 1),
相 対 高 x に お け る 幹 の 現 実 直 径 を d x と 記 述 す る 。 ま た , 相 対 高 0.9
に お け る 現 実 直 径 d0.9 を 基 準 直 径 と し , 基 準 直 径 に 対 す る 相 対 半 径
を y( = d x /2d 0 . 9 )と 記 述 す る 。い ま ,[1]式 に 示 す よ う な K U NZE 式 を
相対幹曲線式として採用する。
[1]
y 2 = ax b
こ こ で , a と b は 係 数 で あ る 。 相 対 幹 曲 線 式 の 定 義 よ り , [1]式 は 必
ず ( 0.9, 0.5) を 通 る 。 こ の 条 件 を [1]式 へ 代 入 す る と 次 式 を 得 る 。
[2]
a= (10/9) b /4
胸 高 形 数 を f と す る と , 樹 高 h, 胸 高 断 面 積 g お よ び 幹 材 積 v と の
間に次式が成り立つ。
[3]
g= v/fh
こ れ よ り , 胸 高 に お け る 現 実 直 径 の 平 方 db2 は ,
[4]
d b 2 = 4v/π fh
となる。
ス ギ( Cryptomeria japonica D. Don),ヒ ノ キ( Chamaecyparis obtusa
-5-
Endl.),ア カ マ ツ( Pinus densiflora)お よ び カ ラ マ ツ( Larix leptolepis
Gord.)と い っ た わ が 国 に お け る 主 要 な 針 葉 樹 の 場 合 ,相 対 高 0.7 に
お け る 正 形 数 λ 0 . 7 は ,樹 種 ,地 域 ,密 度 管 理 お よ び 成 育 段 階 の 違 い
に 関 係 な く ほ ぼ 0.7 前 後 の 値 で 安 定 し て い る ( 梶 原 , 1974; 1983;
1984a; 1984b; 1984c; 1987a; 1987b; 1987c, 上 野 , 1978; 1983, 王・魚 住 ,
2000)。こ の 傾 向 は ,わ が 国 の 針 葉 樹 の み な ら ず ,海 外 の 針 葉 樹 に お
い て も 認 め ら れ る( 梶 原 , 1974; 1987c, 王 ら , 1998)。し た が っ て ,相
対 高 0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 は 0.7 で 安 定 し て い る と 仮 定 で き る 。
すると,正形数の定義より次式を得る。
[5]
v/(π d 0 . 7 2 h/4)= 0.7
こ れ よ り , 相 対 高 0.7 に お け る 現 実 直 径 の 平 方 d 0 . 7 2 は ,
[6]
d 0 . 7 2 = 40v/7π h
と な る 。 d b と d 0 . 7 は と も に 正 値 を と る の で , [4]式 と [6]式 よ り ,
[7]
db= α d0.7
を得る。ここで,αは胸高形数 f の関数であり,次式によって与え
られる。
[8]
α = 7/10f
胸 高 h b ( =1.2m) の 相 対 高 φ は 樹 高 の 関 数 と な る 。
[9]
φ = 1− h b /h
こ の と き ,[1]式 は( 0.7, d 0 . 7 /2d 0 .9 )と( φ , d b /2d 0 . 9 )の 2 点 を 通 る と
考えて良いので,
[10]
(d 0 . 7 /2d 0 . 9 ) 2 = a(7/10) b
[11]
(d b /2d 0 . 9 ) 2 = aφ b
を 得 る 。 [7]式 と [10]式 を [11]へ 代 入 し , b に つ い て 解 く と ,
[12]
b= 2logα /log (10φ /7)
-6-
と な る 。[2]式 か ら 分 か る よ う に ,係 数 a は 係 数 b の み に 依 存 し て い
る。また,係数 b を推定するために必要となるαとφは,それぞれ
胸高形数と樹高の関数となっている。したがって,樹高,胸高直径
( あ る い は 胸 高 断 面 積 ) お よ び 幹 材 積 が 与 え ら れ る と , [2]式 と [12]
式 に よ っ て K UN ZE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 に お け る 係 数 が 推 定 で き る こ
とになる。
同 様 に , わ が 国 に お け る 主 要 な 針 葉 樹 の 場 合 , 相 対 高 0.5 に お け
る 正 形 数 λ 0 . 5 は ,λ 0 . 7 ほ ど で は な い が ,幼・ 若 齢 の 成 育 段 階 を 除 く
と,樹種,地域,密度管理および成育段階の違いに関係なくおおむ
ね 1.0 前 後 の 値 で 安 定 し て い る ( 梶 原 , 1969; 1974; 1983; 1984a;
1984b; 1987a)。 そ こ で , 相 対 高 0.5 に お け る 正 形 数 λ 0 . 5 は 1.0 で 安
定していると仮定すると,正形数の定義より次式を得る。
[13]
v/(π d 0 . 5 2 h/4)= 1.0
こ れ よ り , 相 対 高 0.5 に お け る 現 実 直 径 の 平 方 d 0 . 5 2 は ,
[14]
d 0 . 5 2 = 4v/π h
と な る 。 d b と d 0 . 5 は と も に 正 値 を と る の で , [4]式 と [14]式 よ り ,
[15]
db= β d0.5
を得る。ここで,βは胸高形数 f の関数であり,次式によって与え
られる。
[16]
β = 1/f
[1]式 は ( 0.5, d 0 . 5 /2d 0 . 9 ) を 通 る と 考 え て 良 い の で ,
[17]
d 0 . 5 /2d 0 . 9 = a(5/10) b
を 得 る 。 [16]式 と [17]式 を [11]式 へ 代 入 し , b に つ い て 解 く と ,
[18]
b= 2logβ /log 2φ
となる。係数 b を推定するために必要となるβとφは,それぞれ胸
-7-
高 形 数 と 樹 高 の 関 数 と な っ て い る 。し た が っ て ,樹 高 ,胸 高 直 径( あ
る い は 胸 高 断 面 積 ) お よ び 幹 材 積 が 与 え ら れ る と , [2]式 と [12]式 だ
け で な く ,[2]式 と [18]式 に よ っ て も K UN ZE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 に お け
る係数が推定できることになる。
い ま , [2]式 と [12]式 お よ び [2]式 と [18]式 に よ っ て 推 定 さ れ た 相 対
幹 曲 線 式 が ,同 じ 相 対 幹 形 を 表 現 し て い る と 仮 定 す る 。す な わ ち ,2
つの方法によって推定された相対幹曲線式の係数 b が互いに等しい
と 仮 定 す る と , [12]式 と [18]式 よ り ,
[19]
2logα /log (10φ /7)= 2logβ /log 2φ
を 得 る 。 [8]式 と [16]式 を [19]式 へ 代 入 し , f に つ い て 解 く と ,
[20]
f= 1/(2φ ) δ
となる。ただし,δは次式によって与えられる定数である。
[21]
δ = log (7/10)/log (5/7)≒ 1.060
[4]式 と [20]式 よ り f を 消 去 し , v に つ い て 解 く と ,
[22]
v= π d b 2 h/4(2φ ) δ
と な り , [9]式 と [21]式 を [22]式 へ 代 入 す る と 次 式 を 得 る 。
[23]
v= π d b 2 h/4{2(1− h b /h)} 1 . 0 6 0
こ の [23]式 は , 幹 材 積 v を 従 属 変 数 , 樹 高 h と 胸 高 直 径 d b を 独 立 変
数とする二変数材積式に他ならない。以下,この二変数材積式を理
論的材積式と記す。
3.
資料と方法
3.1. 対 象 林 分 と 調 査 方 法
鳥取大学農学部附属蒜山演習林に成立するスギとヒノキの同齢単
-8-
純 林 そ れ ぞ れ 10 林 分 ( 計 20 林 分 ) を 対 象 と し た 。 対 象 林 分 の 概 況
を表Ⅱ−1 に示す。
対 象 林 分 に お い て 0.02ha の 円 形 プ ロ ッ ト を 1 つ ず つ 設 定 し た 。プ
ロット内に生存するスギとヒノキ全立木の樹高と胸高直径(地上高
1.2m で の 直 径 )を 測 定 し た 。測 定 後 ,幹 が 通 直 で 健 全 と 思 わ れ る 個
体 を 5 本 ず つ 資 料 木 と し て 伐 倒 し た 。各 資 料 木 に つ い て ,樹 高 を 0.1m
括 約 で , 十 分 位 の 相 対 高 に お け る 直 径 と 胸 高 直 径 を 0.1 ㎝ 括 約 で そ
れ ぞ れ 測 定 し た 。 た だ し , 根 張 り の 影 響 を 避 け る た め , 相 対 高 1.0
( 地 際 ) に お け る 直 径 は 測 定 し な か っ た 。 資 料 木 の 概 要 を 表 Ⅱ − 2a
と 表 Ⅱ − 2b に 示 す 。
表Ⅱ−1
対象林分の概況
Table Ⅱ − 1 General description of each stand
p lo t
co mp artmen t
species
a
b
c
d
e
f
g
h
i
j
k
l
m
n
o
p
q
r
s
t
1
1
1
2
5
5
6
7
7
7
8
8
8
9
10
10
11
12
16
17
C. jap onica
C. obtusa
C. obtusa
C. japonica
C. obtusa
C. obtusa
C. obtusa
C. japonica
C. obtusa
C. obtusa
C. japonica
C. obtusa
C. obtusa
C. obtusa
C. japonica
C. japonica
C. japonica
C. japonica
C. japonica
C. japonica
stand age
(yr)
46
23
36
45
29
37
34
37
27
39
39
39
38
39
29
31
30
42
44
22
* ; 平 均 ±標 準 偏 差
* ; mean±S.D.
-9-
tree height*
(m)
19.7±3.5
10.6±0.6
14.5±1.1
19.5±4.4
10.7±0.8
13.5±0.6
14.1±1.0
21.2±2.7
10.5±1.3
16.8±0.8
21.1±2.9
12.2±1.4
15.0±1.0
16.0±0.9
10.9±1.6
15.3±1.8
10.1±1.5
22.6±2.1
21.0±1.3
17.8±1.2
dbh*
stand density
(cm)
(trees/ha)
29.2±8.8
900
16.7±2.2
1,300
18.2±3.9
1,850
29.8±11 .6
800
15.2±2.0
2,300
19.1±3.8
2,050
18.0±3.2
1,550
30.7±7.0
1,050
17.0±4.1
1,900
27.0±4.0
750
32.9±7.5
850
18.4±4.8
2,000
21.8±4.1
1,750
24.0±4.9
1,350
15.7±3.6
2,700
22.2±4.5
1,500
15.7±3.7
2,750
41.6±6.5
450
29.0±4.5
800
26.1±3.6
950
表 Ⅱ − 2a
Table Ⅱ − 2a
tree n o .
a1
a2
a3
a4
a5
d1
d2
d3
d4
d5
h1
h2
h3
h4
h5
k1
k2
k3
k4
k5
o1
o2
o3
o4
o5
p1
p2
p3
p4
p5
q1
q2
q3
q4
q5
r1
r2
r3
r4
r5
s1
s2
s3
s4
s5
t1
t2
t3
t4
t5
tree height
(m)
19.8
20.3
19.0
20.4
19.4
20.3
21.4
17.6
20.6
17.9
21.5
21.8
20.0
21.4
19.9
19.1
21.5
20.3
20.5
20.9
14.9
11 .9
11 .6
13.0
15.2
16.8
15.0
17.0
16.8
15.4
11 .6
12.0
13.3
13.2
12.1
18.2
21.7
20.6
21.0
20.7
21.1
20.5
21.1
19.8
20.8
18.4
17.3
16.4
17.5
17.8
資料木の概要(スギ)
List of sample trees (Cryptomeria japonica)
dbh
(cm)
stem vo lu me
(m 3 )
25.3
27.8
22.3
25.6
27.0
25.5
29.0
24.8
25.0
26.8
26.4
26.0
31.5
22.7
28.8
25.7
24.7
25.5
24.5
23.6
25.4
16.9
19.2
18.5
20.4
22.6
19.4
22.5
20.8
20.7
19.2
17.6
27.3
23.6
19.4
26.0
27.8
27.2
26.8
27.0
27.0
26.2
27.3
24.5
21.8
23.9
21.0
22.7
19.1
24.0
0.505
0.557
0.359
0.568
0.521
0.512
0.696
0.437
0.544
0.530
0.611
0.598
0.745
0.487
0.623
0.571
0.554
0.550
0.527
0.488
0.372
0.122
0.176
0.203
0.241
0.329
0.225
0.340
0.307
0.268
0.156
0.143
0.349
0.276
0.164
0.513
0.677
0.596
0.600
0.660
0.643
0.567
0.633
0.484
0.407
0.411
0.309
0.350
0.272
0.445
- 10 -
λ 0.7
0.737
0.673
0.718
0.816
0.761
0.688
0.731
0.697
0.771
0.832
0.673
0.715
0.811
0.763
0.879
0.752
0.660
0.768
0.819
0.751
0.794
0.698
0.692
0.776
0.706
0.670
0.662
0.713
0.696
0.654
0.684
0.610
0.685
0.693
0.676
0.777
0.757
0.769
0.842
0.817
0.691
0.742
0.782
0.763
0.786
0.796
0.718
0.731
0.702
0.702
λ 0.5
1.049
1.210
1.160
1.104
1.212
1.061
1.005
1.033
1.039
1.045
0.992
1.032
1.211
1.004
1.332
1.055
0.969
1.194
1.174
1.016
1.126
1.064
0.985
0.895
1.075
1.139
1.097
1.103
1.022
1.011
1.011
0.929
1.144
1.215
1.057
1.109
1.212
1.164
1.175
1.016
1.032
1.053
1.141
1.077
1.064
1.183
1.024
1.076
0.969
0.972
表 Ⅱ − 2b
Table Ⅱ − 2b
tree n o .
b1
b2
b3
b4
b5
c1
c2
c3
c4
c5
e1
e2
e3
e4
e5
f1
f2
f3
f4
f5
g1
g2
g3
g4
g5
i1
i2
i3
i4
i5
j1
j2
j3
j4
j5
l1
l2
l3
l4
l5
m1
m2
m3
m4
m5
n1
n2
n3
n4
n5
資料木の概要(ヒノキ)
List of sample trees (Chamaecyparis obtusa)
tree height
(m)
11 .6
11 .4
12.4
12.8
11 .4
15.5
14.4
14.8
16.2
16.1
11 .6
11 .2
12.1
11 .7
12.3
14.2
14.3
14.5
14.2
14.2
14.3
14.9
15.0
14.7
16.1
12.2
11 .7
11 .2
11 .5
11 .5
17.9
15.3
16.8
16.0
17.6
13.5
13.4
13.7
14.0
13.8
14.9
15.4
16.1
16.2
16.8
17.9
17.0
17.6
16.8
16.5
dbh
(cm)
stem vo lu me
(m 3 )
17.0
17.2
18.3
18.5
14.7
23.4
18.1
21.5
22.3
18.3
17.4
16.0
17.3
16.9
16.7
22.0
20.6
19.6
19.6
22.8
21.0
21.0
23.8
22.0
23.3
17.2
19.2
17.5
17.9
19.0
27.5
23.0
28.4
27.5
25.3
22.2
25.5
20.6
23.8
19.5
21.1
24.5
24.2
29.3
24.7
29.3
28.7
26.2
27.2
25.6
0.122
0.125
0.145
0.170
0.100
0.336
0.185
0.272
0.308
0.217
0.128
0.108
0.135
0.129
0.129
0.269
0.246
0.221
0.214
0.298
0.263
0.259
0.358
0.281
0.361
0.134
0.157
0.125
0.121
0.136
0.493
0.318
0.507
0.462
0.446
0.248
0.299
0.209
0.294
0.200
0.254
0.350
0.394
0.521
0.402
0.612
0.507
0.491
0.474
0.455
- 11 -
λ 0.7
0.629
0.667
0.662
0.645
0.620
0.651
0.738
0.723
0.630
0.672
0.688
0.602
0.657
0.642
0.642
0.752
0.699
0.705
0.673
0.642
0.723
0.669
0.665
0.696
0.647
0.684
0.644
0.674
0.603
0.651
0.860
0.725
0.745
0.727
0.698
0.670
0.669
0.680
0.661
0.696
0.686
0.695
0.694
0.854
0.678
0.776
0.693
0.650
0.749
0.760
λ 0.5
1.069
1.079
1.126
1.002
0.904
1.039
1.032
1.084
1.121
1.033
1.045
1.035
1.055
1.028
1.042
1.071
0.986
1.006
1.010
0.969
1.028
1.054
0.899
1.013
0.943
1.095
1.094
1.001
10106
1.243
1.273
1.087
1.226
1.075
1.054
1.070
1.109
1.149
1.098
1.077
1.126
1.063
0.963
1.197
0.951
1.058
1.097
0.985
1.159
1.071
3.2. 解 析 方 法
できるだけ正確に資料木の幹材積を求めるため,まず,各相対高
に お け る 相 対 半 径 を , [24]式 に 示 す よ う な 5 次 の 相 対 幹 曲 線 式 に よ
って回帰した。
[24]
y= qx 5 +rx 4 +sx 3 +tx 2 +ux
こ こ で , q, r, s, t お よ び u は い ず れ も 係 数 で あ る 。
次 い で ,[24]式 の 回 転 体 と し て 求 め た 相 対 材 積 θ を ,樹 高 方 向 に h
倍 , 直 径 方 向 に d0.9 倍 だ け 拡 大 す る こ と に よ っ て , 資 料 木 の 現 実 幹
材 積 v o を 推 定 し た ( 梶 原 , 1983)。
1
[25]
2
θ=π ⌠
⌡ y dx
0
[26]
v o = θ hd 0 . 9 2
そして,理論的材積式と近畿・中国・石川・福井地方におけるス
ギ と ヒ ノ キ の 二 変 数 材 積 式 ( 林 野 庁 計 画 課 , 1970b; 以 下 , 経 験 的 材
積式と記す)によって資料木の幹材積を推定した。スギとヒノキの
経 験 的 幹 材 積 式 は , [27]式 と [28]式 に よ っ て そ れ ぞ れ 与 え ら れ る 。
[27]
log v= − 4.19207+1.82696log d b +0.99227log h
[28]
log v= − 4.31101+1.83546log d b +1.10655log h
さ ら に , 理 論 的 材 積 式 と 経 験 的 材 積 式 に よ っ て 推 定 し た 幹 材 積 ve
の 現 実 幹 材 積 vo に 対 す る 誤 差 を 比 較 し た 。 2 つ の 材 積 式 に よ る 幹 材
積 の 推 定 誤 差 を 表 現 す る 測 度 と し て , 標 準 誤 差 Se と 相 対 誤 差 Re を
求めた。
Σ (v e − v o ) 2 /n
[29]
Se=
[30]
Re= 100(v e − v o )/v o
ここで,n は標本数であり,本章ではスギとヒノキのいずれにおい
- 12 -
て も 50 と な る 。 ま た , 推 定 し た 幹 材 積 v e と 現 実 幹 材 積 v o と の 間 の
有 意 差 を paired t 検 定 に よ っ て 解 析 し た 。
4.
結果と考察
4.1. 材 積 式 の 適 合 度
資 料 木 の 樹 高 は , ス ギ で 18.1±3.2m( 平 均 ±標 準 偏 差 , 以 下 も 同
様 ),ヒ ノ キ で 14.3±2.0m の 範 囲 に 分 布 し て い た( 表 − 2a,表 − 2b)。
資 料 木 の 胸 高 直 径 は , ス ギ で 24.1±3.3 ㎝ , ヒ ノ キ で 21.7±3.9 ㎝ の
範囲に分布していた。資料木の樹高と胸高直径は,それぞれ林分の
平均樹高と平均胸高直径よりも大きい傾向がみられた。これは幹が
通直で健全と思われる個体を資料木として選定したためと考えられ
る 。 相 対 高 0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 は , ス ギ で 0.736±0.057, ヒ ノ
キ で 0.687±0.053 の 範 囲 に 分 布 し て お り , い ず れ の 資 料 木 に お い て
も 0.7 に 近 い 値 を 示 し た 。ま た ,相 対 高 0.5 に お け る 正 形 数 λ 0 . 5 は ,
ス ギ で 1.081±0.088,ヒ ノ キ で 1.062±0.077 の 範 囲 に 分 布 し て お り ,
1.0 よ り も や や 高 い 値 を 示 し た 。
理 論 的 材 積 式 と 経 験 的 材 積 式 に よ っ て 推 定 し た 幹 材 積 ve と 現 実 幹
材 積 vo と の 関 係 を 図 Ⅱ − 1 に 示 す 。 理 論 的 材 積 式 に よ っ て 推 定 し た
幹 材 積 の 標 準 誤 差 と 相 対 誤 差( 平 均 ±標 準 偏 差 )は ,ス ギ で 0.028m 3
と 1.543±7.114%, ヒ ノ キ で 0.025m 3 と 8.402±7.300%で あ っ た 。 理
論 的 材 積 式 に よ っ て 推 定 し た 幹 材 積 ve と 現 実 幹 材 積 vo と の 間 で ,
ス ギ に お い て は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た が( p= 0.692),ヒ ノ キ に
お い て は 認 め ら れ た 。( p< 0.01)。
誤差が生じた原因としては,いずれの資料木においても,相対高
- 13 -
1.000
’
»
C. Japonica
C. obtusa
’
»
0.500
v emp
v
theo
»
’
0.000 »
0.000
0.500
図Ⅱ−1
Fig.Ⅱ − 1
*
1.000 0.000
Observed stem volume (m3 )
0.500
1.000
推定された幹材積と現実幹材積との関係
Relationship between estimated and observed stem volumes
ve mp と vt he o は , そ れ ぞ れ 経 験 的 材 積 式 と 理 論 的 材 積 式 に よ る 幹 材 積
の推定値を表す。
*
v e mp and v t h e o mean the stem volumes estimated by empirical and theoretical
volume equations, respectively.
0.7 と 0.5 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 と λ 0 . 5 が ,そ れ ぞ れ 0.7 と 1.0 に 等 し
くなかったことが挙げられる。また,相対幹曲線式として採用した
K UNZE 式 で は 係 数 の 数 が 2 つ と 少 な い た め , 資 料 木 の 相 対 幹 形 を 十
分 に 表 現 で き な か っ た 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 さ ら に は , [2]式 と [12]
式 お よ び [2]式 と [18]式 に よ っ て 推 定 さ れ る K UN ZE 型 の 相 対 幹 曲 線 式
が,必ずしも同じ相対幹形を表現していないことも影響しているか
もしれない。
これに対し,経験的材積式によって推定した幹材積の標準誤差と
相 対 誤 差( 平 均 ±標 準 偏 差 )は ,ス ギ で 0.057m 3 と − 9.226±6.147%,
- 14 -
ヒ ノ キ で 0.015m 3 と 2.537±6.017%で あ っ た 。理 論 的 材 積 式 の 場 合 と
は 異 な り ,経 験 的 材 積 式 に よ っ て 推 定 し た 幹 材 積 v e と 現 実 幹 材 積 v o
と の 間 で , ス ギ に お い て は 有 意 差 が 認 め ら れ た が ( p< 0.01), ヒ ノ
キ に お い て は 認 め ら れ な か っ た( p= 0.888)。す な わ ち ,ス ギ に 対 し
ては理論的材積式の方が高い適合度を示したが,ヒノキに対しては
経験的材積式の方が高い適合度を示した。したがって,本章での検
証結果だけでは,理論的材積式と経験的材積式の適合度の優劣は結
論できない。しかし,わが国においては,現在のところ経験的材積
式が広く実用に供されている。このような現状から判断すると,ス
ギにおいては理論的材積式の方が高い適合度を示した検証結果は,
本章において誘導した理論的材積式が実用に耐えられるだけの適合
度を備えている可能性を示唆していると考える。
4.2. 材 積 式 の 特 徴
本 章 で は ,相 対 高 0.7 と 0.5 に お け る 正 形 数 の 安 定 性 を 仮 定 し て ,
新 し い 二 変 数 材 積 式 を 理 論 的 に 誘 導 し た 。 既 存 の 研 究 ( 梶 原 , 1974;
1983; 1984a; 1984b; 1984c; 1987a; 1987b; 1987c, 上 野 , 1978; 1983, 王
ら , 1998, 王 ・ 魚 住 , 2000) か ら 判 断 す る と , 相 対 高 0.7 に お け る 正
形 数 λ 0 . 7 に つ い て は , 成 育 に 伴 う 変 化 は 認 め ら れ ず , 0.7 前 後 の 値
で安定していると仮定して問題ないと考えられる。しかし,相対高
0.5 に お け る 正 形 数 λ 0 .5 に つ い て は , 相 対 幹 形 が 安 定 し た 以 降 の 成
育段階においては安定しているが,それ以前の成育段階では,成育
に 伴 っ て 徐 々 に 低 下 す る( 梶 原 , 1983; 1984a; 1984b)。こ の 相 対 幹 形
が安定するのは,地域や樹種の違いに関係なく,おおむね樹高が約
14m に 達 し た 時 期 で あ る と 報 告 さ れ て い る ( 梶 原 , 1983; 1984a;
- 15 -
1984b)。よ っ て ,樹 高 が 約 14m 以 下 の 相 対 幹 形 が 安 定 し て い な い 幼・
若齢の立木に対して理論的材積式を適用した場合,相対的に大きな
幹材積の推定誤差が生じる可能性がある。しかし,森林経営的な観
点から見た場合,幹材積を正確に把握することが重要になるのは,
主に立木が利用可能な径級に達した以降の段階であり,幼・若齢の
段階における幹材積の推定誤差はあまり重要でないと思われる。し
たがって,この問題点は,理論的材積式の有効性を必ずしも否定し
ないと考える。
理 論 的 材 積 式 を 用 い て ,成 育 に 伴 う 胸 高 形 数 の 変 化 を 表 現 で き る 。
す な わ ち , [9]式 と [21]式 を [20]式 へ 代 入 す る と ,
[31]
f= 1/{2(1− h b /h)} 1 . 0 6 0
と な り , 胸 高 形 数 を 樹 高 の み の 関 数 と し て 記 述 で き る 。 [31]式 よ り
得られる樹高と胸高形数との関係を図Ⅱ−2 に示す。胸高形数は樹
高 10m 前 後 ま で 急 激 に 下 降 す る が , そ の 後 に お い て は 安 定 し , [31]
式 に お い て h→ ∞ と し た 場 合 の 極 限 値 ( 0.480) に 漸 近 す る よ う な 形
で , 緩 や か に 下 降 し て い く 傾 向 が 図 か ら 読 み 取 れ る 。 梶 原 ( 1969)
によると,胸高形数が樹幹の大きさ,特に樹高に従属して変化する
こ と は 周 知 の 事 実 で あ る と さ れ て お り , 吉 田 ( 1930) は , 樹 高 と 胸
高形数との関係が双曲線によって近似できると述べている。また,
胸 高 形 数 は 0.45∼ 0.57 の 範 囲 に 分 布 す る ( 梶 原 , 1969), 0.45∼ 0.50
の 範 囲 に 最 も 多 く 分 布 す る( 西 沢 , 1972),あ る い は 0.50 に お お む ね
近 い 値 を 示 す ( 本 多 , 1975) と い わ れ て い る 。 さ ら に , 南 雲 ・ 箕 輪
( 1990) は , 胸 高 形 数 が 樹 高 の 関 数 と し て 表 さ れ , 樹 高 が 高 ま る に
つ れ て 胸 高 形 数 が 下 降 し て い く こ と を K UNZE の 幹 曲 線 式 を 用 い て
理 論 的 に 示 し て い る 。 [31]式 か ら 得 ら れ る 樹 高 と 胸 高 形 数 と の 関 係
- 16 -
10
1
0.1
0
図Ⅱ−2
Fig.Ⅱ − 2
10
20
30
Total tree height (m)
40
理論的材積式に基づく樹高と胸高形数との関係
Change in breast height form-factor with total tree height
based on the theoretical volume equation
( 図 Ⅱ − 2)は ,こ れ ら の 報 告 に 整 合 す る 。ま た ,東 海 地 方 の 地 位 2 ,
3等地に成立するスギ林分を対象として胸高形数の経年変化を解析
し た 結 果( 上 野 ,1983)に よ る と ,胸 高 形 数 は 樹 齢 5 年 か ら 15 年 に
か け て 急 激 な 下 降 傾 向 を 示 す が , 20 年 以 降 は か な り 落 ち 着 き , 40
年 な い し 45 年 で 一 旦 極 大 に な っ た 後 ,暫 時 下 降 傾 向 を 示 し た と 報 告
さ れ て い る 。 し か し , 上 野 ( 1983) の 描 い た 図 か ら 判 断 す る と , 40
年 な い し 45 年 で 一 旦 極 大 に な る 前 後 で の 胸 高 形 数 の 変 化 は ,極 め て
小 さ い と 考 え ら れ る 。 上 野 ( 1983) の 報 告 に お い て , 樹 齢 と 樹 高 と
の関係が示されていないため直接には比較できないが,図Ⅱ−2 に
示 し た 樹 高 と 胸 高 形 数 と の 関 係 は , 上 野 ( 1983) の 解 析 結 果 に 対 し
- 17 -
ても矛盾しないものと思われる。以上の結果は,理論的材積式の妥
当性を示唆していると考える。
5.
おわりに
本 章 で は ,針 葉 樹 に お け る 新 し い 二 変 数 材 積 式 を 理 論 的 に 誘 導 し ,
その適合度を検証した。その結果,この理論的材積式は実用に耐え
られる適合度を備えている可能性が示唆された。また,この材積式
の関数形は,既存の幹形に関する研究成果に対して矛盾しないと考
えられた。そこで,以下の章では,本章で誘導した理論的材積式を
二変数材積式として採用する。
- 18 -
Ⅲ 相対幹曲線式の推定方法の理論的誘導
1.
はじめに
利用材積の推定や採材方法の決定において,立木の幹形を相対幹
曲線式によって表現することは非常に有効である。相対幹曲線式を
推定するためには,樹幹の上部直径を測定する必要があるが,立木
のままの状態で上部直径を正確に測定することは困難である。
そ こ で ,立 木 の ま ま の 状 態 で 相 対 幹 曲 線 式 を 推 定 す る た め に ,様 々
な 方 法 が 示 さ れ て き た 。 南 雲 ら ( 1981) は , 東 京 大 学 千 葉 演 習 林 内
の ス ギ 同 齢 単 純 林 を 対 象 と し て ,吉 田 式 と K UNZE 式 の 係 数 を 林 齢 か
ら 推 定 す る 方 法 を 示 し た 。 ま た , 高 田 ( 1987) は , 前 橋 営 林 署 管 内
の ス ギ 同 齢 単 純 林 を 対 象 と し て ,B EH RE 式 と K UN ZE 式 の 係 数 を 樹 高
と 胸 高 直 径 か ら 推 定 す る 方 法 を 示 し た 。 さ ら に , 山 本 ( 1991) は ,
東京大学農学部附属秩父演習林内におけるスギ,ヒノキ,サワラお
よびカラマツの同齢単純林を対象として,3 次の相対幹曲線式(吉
田式)における係数を林齢から推定する方法を示した。一方,梶原
( 1992) は , 奈 良 県 の ス ギ 同 齢 単 純 林 を 対 象 と し て , 樹 高 に 伴 う 相
対 幹 形 の 変 化 を R IC HARDS 関 数 に よ っ て 回 帰 し ,5 次 の 相 対 幹 曲 線 式
に お け る 係 数 を 樹 高 か ら 推 定 す る 方 法 を 示 し た 。ま た ,梶 原 ら( 1996)
は,岐阜県今須のスギ・ヒノキ択伐林を対象として,同様の方法に
よる相対幹曲線式の推定方法を示した。
しかし,これらの相対幹曲線式の推定方法は,いずれも経験的に
誘導されたものであり,理論的に誘導されたものではない。したが
- 19 -
って,他の樹種や地域を対象として,これらの推定方法を転用する
場合,多くの資料木を伐倒し,上部直径を測定することによって,
相対幹曲線式における係数の推定式を改めて求め直さなくてはなら
ない。他の樹種や地域への転用を容易にするためにも,相対幹曲線
式を推定する方法としては,経験的に誘導されたものではなく,理
論的に誘導されたものが望まれる。
そこで本章では,単木の樹高,胸高直径(あるいは胸高断面積)
お よ び 幹 材 積 か ら , B EHRE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 を 推 定 す る 方 法 を 理 論
的に誘導し,その推定精度を検証した。
2. 誘
導
樹 高 h を 1 と す る 梢 端 か ら の 相 対 高 を x( 梢 端 が 0, 地 際 が 1),
相 対 高 x に お け る 幹 の 現 実 直 径 を d x と 記 述 す る 。 ま た , 相 対 高 0.9
に お け る 現 実 直 径 d0.9 を 基 準 直 径 と し , 基 準 直 径 に 対 す る 相 対 半 径
を y( = d x /2d 0 . 9 ) と 記 述 す る 。 い ま , [32]式 に 示 す よ う な B EHRE 型
の式を相対幹曲線式として採用する。
[32]
y= x/(m+nx)
こ こ で , m と n は 係 数 で あ る 。 相 対 幹 曲 線 式 の 定 義 よ り , [32]式 は
必 ず ( 0.9, 0.5) を 通 る ( 梶 原 , 1973a; 1978)。 こ の 条 件 を [32]式 に 代
入すると次式を得る。
[33]
m= 0.9(2− n)
Ⅱ 章 と 同 様 ,相 対 高 0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 は ,0.7 で 安 定 し て い
る と 仮 定 す る と , db と d0.7 は と も に 正 値 を と る の で ,
[34]
db= α d0.7
- 20 -
を得る。ここで,αは胸高形数 f の関数であり,次式によって与え
られる。
[35]
α = 7/10f
胸 高 h b ( =1.2m) の 相 対 高 φ は 樹 高 の 関 数 と な る 。
[36]
φ = 1− h b /h
こ の と き , [32]式 は ( 0.7, d 0 . 7 /2d 0. 9 ) と ( φ , d b /2d 0 . 9 ) の 2 点 を 通
ると考えて良いので,
[37]
d 0 . 7 /2d 0 . 9 = 0.7/(m+0.7n)
[38]
d b /2d 0 . 9 = φ /(m+φ n)
を 得 る 。[34]式 と [37]式 を [38]式 へ 代 入 し ,m と n に つ い て 整 理 す る
と,
[39]
(α /φ − 10/7)m+(α − 1)n= 0
と な る 。 [33]式 と [39]式 よ り m を 消 去 す る と ,
[40]
n= (180φ − 126α )/(20φ − 63α +70α φ )
を 得 る 。 ま た , [40]式 に よ り 推 定 さ れ る n を [33]式 へ 代 入 す る と m
が 推 定 で き る 。[35]式 と [36]式 か ら 明 ら か な よ う に ,α と φ は そ れ ぞ
れ胸高形数と樹高の関数となっている。したがって,樹高,胸高直
径 ( あ る い は 胸 高 断 面 積 ) お よ び 幹 材 積 が 与 え ら れ る と , B EHRE 型
の相対幹曲線式における係数が推定できることになる。
3. 資 料 と 方 法
3.1.
資料
Ⅱ章と同様,鳥取大学農学部附属蒜山演習林内に成立するスギと
ヒ ノ キ の 同 齢 単 純 林 そ れ ぞ れ 10 林 分 ( 計 20 林 分 ) で の 伐 倒 木 ( 表
- 21 -
Ⅱ − 2a, 表 Ⅱ − 2b) を 資 料 と し て 用 い た 。
3.2.
解析方法
ま ず , Ⅱ 章 で 誘 導 し た 理 論 的 材 積 式 ( [23]式 ) を 用 い て 資 料 木 の
幹材積を推定した。
次 い で ,実 測 し た 樹 高 と 胸 高 直 径 お よ び 推 定 し た 幹 材 積 の 値 よ り ,
誘 導 し た 方 法 に し た が っ て , B EHRE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 に お け る 係 数
を推定した。
そして,実測した樹高と胸高直径および推定した相対幹曲線式の
係 数 を [38]式 に 代 入 す る こ と に よ っ て ,相 対 高 0.9 に お け る 直 径 d 0 . 9
を 推 定 し た 。 推 定 し た 相 対 幹 曲 線 式 を 直 径 方 向 に d0.9 倍 だ け 拡 大 す
ることによって,十分位の相対高における直径を推定した。
さ ら に , 推 定 し た 直 径 de の 実 測 し た 直 径 do に 対 す る 誤 差 を 比 較
し た 。直 径 の 推 定 誤 差 を 表 現 す る 測 度 と し て ,標 準 誤 差 Se と 相 対 誤
差 Re を 求 め た 。
Σ (d e − d o ) 2 /n
[41]
Se=
[42]
Re= 100(d e − d o )/d o
ここで,n は標本数であり,本章ではスギとヒノキのいずれにおい
て も 50 と な る 。
4. 結 果 と 考 察
各相対高における十分位直径の標準誤差を図Ⅲ−1 に示す。スギ
についてみると,十分位直径の標準誤差は,相対高の違いに関わら
ず 1cm 前 後 の 値 で 安 定 し て い た 。ま た ,ヒ ノ キ に つ い て み る と ,十
- 22 -
分 位 直 径 の 標 準 誤 差 は , 相 対 高 が 0.1 と 0.2 の 樹 幹 上 部 で そ れ ぞ れ
1.705cm と 1.806cm と 大 き か っ た が , 相 対 高 が 高 ま る に つ れ て 徐 々
に 低 下 し , 相 対 高 が 0.5 以 下 で は 1.2cm 以 下 と な っ た 。
一 方 ,十 分 位 直 径 の 相 対 誤 差( 図 Ⅲ − 2)は ,ス ギ に つ い て み る と
相 対 高 が 0.1 の 樹 幹 上 部 で は 19.077±37.041%( 平 均 ±標 準 偏 差 ,以
下 も 同 様 )と 大 き か っ た が ,相 対 高 が 0.2 以 上 の 部 分 で は す べ て ±4%
以下であった。ヒノキについてみると,十分位直径の相対誤差は,
相 対 高 が 0.1 の 樹 幹 上 部 で 71.784±50.016% と 大 き か っ た が , 相 対
高 が 高 ま る に つ れ て 徐 々 に 低 下 し , 相 対 高 が 0.3 以 上 の 部 分 で 12%
以 下 , 相 対 高 0.5 以 上 の 部 分 で は 5% 以 下 と な っ た 。 い ず れ の 樹 種
においても,相対誤差が特に大きかった部分は樹幹の上部であり,
樹幹の下部における相対誤差はあまり大きくなかった。
0.0
Æ
ü
C. obtusa
C. japonica
Æ
ü
Æ
ü
0.5
ü
Æ
ü
Æ
ü
Æ
ü
Æ
ü
Æ
ü
Æ
ü
Æ
Æ
ü
0
0.5
1
1.5
2
0
0.5
1
1.5
2
Standard error of estimated diameter (cm)
図Ⅲ−1
Fig.Ⅲ − 1
各相対高における十分位直径の標準誤差
Standard error of estimated diameter for each relative height
- 23 -
X
L
0.0
L
X
X
L
C. japonica
C. obtusa
L
L
L X L
L
X
LXL
L X L
LXL
LXL
X
L
L
0.5 LXL
LXL
LXL
LXL
L
XL
L
XL
X mean
L
X
L
L
X
L
L ±1 σ
L
X
L
L
X
L
L
-30
0
30
60
90
120
150
-30
0
30
60
90
120
150
Relative error of estimated diameter (%)
図Ⅲ−2
Fig.Ⅲ − 2
各相対高における十分位直径の相対誤差
Relative error of estimated diameter for each relative height
誤差が生じた理由としては,いずれの資料木においても,相対高
0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 が 0.7 に 等 し く な か っ た こ と が あ げ ら れ る 。
ま た , B EHR E 型 の 相 対 幹 曲 線 式 で は , 係 数 の 数 が 2 つ と 少 な い た め
に,曲線式の自由度が低くなることも推定誤差に影響を及ぼしてい
る と 思 わ れ る 。さ ら に は ,理 論 的 材 積 式 に よ る 幹 材 積 の 推 定 誤 差( 図
Ⅱ − 1, 2) も 影 響 し て い る か も し れ な い 。 し か し , 相 対 幹 曲 線 式 を
用いた利用材積の推定や採材方法の決定において問題となるのは,
主として樹幹の下部における推定誤差であると考えられる。したが
って,樹高,胸高直径(あるいは胸高断面積)および幹材積から相
対幹曲線式を推定する方法は,十分実用に耐えられる精度を備えて
いるといってよい。
本章で誘導した方法は,単木の相対幹曲線式を推定しようとする
ものである。しかし,同一林分内における相対幹形の変動はあまり
- 24 -
大 き く な い ( 梶 原 , 1984b; 1985)。 加 え て , 相 対 幹 曲 線 の 形 は , 樹 幹
の 大 き さ と 無 関 係 に 同 一 林 分 で は 近 似 し て い る ( 梶 原 , 1972)。 し た
がって,この方法は,単木の相対幹曲線式だけでなく,林分の平均
的 な 相 対 幹 曲 線 式 , す な わ ち 林 分 相 対 幹 曲 線 式 ( 梶 原 , 1973b) の 推
定にも応用できる可能性がある。
これまで,相対幹曲線式を推定するために様々な方法が示されて
き た ( 梶 原 , 1992, 梶 原 ら , 1996, 南 雲 ら , 1981, 高 田 , 1987, 山 本 ,
1991)。し か し ,こ れ ら の 方 法 で は ,限 ら れ た 樹 種 や 地 域 を 対 象 と し
て係数が求められている場合が少なくない。相対幹曲線式の推定方
法の有用性をさらに高めていくためには,推定精度を高めるだけで
なく,他の樹種や地域への転用が容易となるように配慮することも
必要である。そのためにも,相対幹曲線式の推定方法としては,限
られた樹種や地域の資料より経験的に求められた係数のできるだけ
少ない理論的な方法が望まれる。
本章で誘導した相対幹曲線式の推定方法において,経験的に仮定
し た 係 数 は , 相 対 高 0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 だ け で あ り 極 め て 少 な
い 。 針 葉 樹 の 場 合 , 相 対 高 0.7 に お け る 正 形 数 の 樹 種 , 地 域 , 密 度
管 理 お よ び 成 育 段 階 に よ る 変 動 は 小 さ い ( 梶 原 , 1974; 1983; 1984a;
1984b; 1984c; 1987a; 1987b; 1987c, 上 野 , 1978; 1983, 王 ら , 1998,
王 ・ 魚 住 , 2000)。 し た が っ て , こ の 方 法 は , 経 験 的 に 仮 定 し た 係 数
の少ない理論的な方法であり,様々な地域の針葉樹に対して適用で
きる可能性が高いといえる。また,相対幹曲線式の推定において必
要となる変数は,単木の樹高,胸高直径(あるいは胸高断面積)お
よび幹材積といった,成長モデルの基本的な推定量のみである。さ
らには,Ⅱ章で誘導した理論的材積式を用いるならば,推定に必要
- 25 -
な変数は樹高と胸高直径だけでよいことになる。以上のことから,
本章において誘導した方法は,既存の成長モデルやシステム収穫表
( Konohira, 1995)に 対 し て 容 易 に 適 用 で き る の で ,相 対 幹 曲 線 を 推
定する上で最も有効な方法の1つであると考える。
5. お わ り に
本章では,樹高,胸高直径(あるいは胸高断面積)および幹材積
か ら B EHR E 型 の 相 対 幹 曲 線 式 を 推 定 す る 方 法 を 理 論 的 に 誘 導 し ,そ
の推定精度を検証した。その結果,この推定方法は十分実用に耐え
られる精度を備えていると考えられた。そこでⅣ章では,Ⅱ章で誘
導した理論的材積式とⅢ章で誘導した相対幹曲線式の推定方法を用
い る こ と に よ っ て ,材 積 表 と 細 り 表 の 自 動 調 製 シ ス テ ム を 開 発 す る 。
- 26 -
Ⅳ . 材積表と細り表の自動調製システム
1. は じ め に
林木の幹材積と細りを把握するために,地域単位で主要な樹種ご
とに二変数材積表(あるいは二変数材積式)と細り表が調製されて
いる。森林経営者は,これらの表により,所有する林木の幹材積と
細りを評価できる。その手順は以下の通りである。まず,標準地調
査の結果より,直径階別本数分布を求める。次いで,樹高曲線を決
定し,各直径階の平均樹高を推定する。そして,二変数材積表(あ
るいは二変数材積式)を用いて各直径階の平均幹材積を推定する。
さらに,立木の樹高と胸高直径の値から,細り表を用いて幹の細り
を推定する。
これらの計算の大半は,現在も森林経営者の手作業によって行わ
れている。また,実用に供されている材積表や細り表は,地域,樹
種および直径階ごとに調製されているため,必然的に表の数が膨大
とならざるをえない。このため,幹材積と細りの計算は,多大な時
間と労力を必要とする煩雑な事務作業の1つとなっている。このよ
うな問題を解決する方法としては,標準地調査より得られた資料を
コンピュータ上で処理し,林木の幹材積と細りに関する必要な情報
だけを任意に抽出できるシステムを開発することが考えられる。
そこで本章では,Ⅱ章とⅢ章で誘導した理論的な二変数材積式と
相対幹曲線式の推定方法に基づく材積表と細り表の自動調製システ
ムを開発することを目的とした。
- 27 -
2. シ ス テ ム の 構 成
2.1. シ ス テ ム の 概 要
本 シ ス テ ム は ,標 準 地 調 査 に よ る 樹 高 と 胸 高 直 径 の 測 定 結 果 か ら ,
対象林分の主要な諸量を林分表としてとりまとめ,また,その林分
の幹材積と細りを評価するために必要なだけの二変数材積表と細り
表を調製することを目的としている。
図Ⅳ−1
システムのフローチャート
Fig.Ⅳ − 1 Flowchart of the system
- 28 -
図Ⅳ−1 にシステムのフローチャートを示す。以下,このフロー
チャートにしたがって,鳥取大学農学部附属蒜山演習林の 9 林班い
小班のヒノキ同齢単純林で得られた標準地調査の結果(表Ⅱ−1 の
プ ロ ッ ト n) を 用 い な が ら , シ ス テ ム の 具 体 的 な 流 れ を 説 明 す る 。
な お , シ ス テ ム の 開 発 に は , Microsoft Visual Basic 6.0 を 使 用 し た 。
プログラムのリストとマニュアルは,付属資料に記載してある。
2.2. 初 期 設 定 の 入 力
ツールバーの「データ入力」ボタンをクリックすると,まず,図
Ⅳ−2 に示すような初期設定入力画面が表示される。この画面にお
い て ,デ ー タ 名 ,年 月 日 ,標 準 地 面 積 ,樹 種 お よ び 林 齢 を 入 力 す る 。
次に,各直径階の平均樹高を推定するための樹高曲線式を相対成長
式,座屈式および井上式から選択する。これらの樹高曲線式につい
て は , 2.3 節 で 詳 し く 述 べ る 。 そ し て , 以 上 の 入 力 と 選 択 が 終 了 す
図Ⅳ−2
Fig.Ⅳ − 2
初期設定画面
Screen image of initial setting
- 29 -
ると,画面中の「データ入力へ」ボタンをクリックし,次のデータ
入 力 画 面 へ と 進 む 。ま た ,入 力 を 取 り 消 し た い 場 合 に は「 取 り 消 し 」
ボタンをクリックする。
2.3. 樹 高 曲 線
樹高曲線は,以下の 3 つの式から選択できる。
( 1) 相 対 成 長 式
相対成長式は次式によって与えられる。
[43]
h= γ d ω
ここで,γとωは係数であり,標準木の樹高と胸高直径の値から最
小自乗法によって決定される。この相対成長式は,係数の数が他の
2 式 よ り も 多 く 自 由 度 が 高 い た め ,3 つ の 樹 高 曲 線 の 中 で 最 も 適 合 度
が高いと考えられる。
( 2) 座 屈 式
長 柱 の 座 屈 理 論( McMahon, 1973)に 基 づ い て 誘 導 さ れ た 式 で ,[42]
式 に よ っ て 与 え ら れ る 相 対 成 長 式 の べ き 指 数 ω を 2/3 に 固 定 し た も
の に 等 し い( 山 本 , 1985)。係 数 γ は 最 小 自 乗 法 に よ っ て 決 定 さ れ る 。
( 3) 井 上 式
座 屈 式 と 同 様 , 相 対 成 長 式 の べ き 指 数 ω を 2/3 に 固 定 し た も の で
あ り ,係 数 γ は 平 均 樹 高 H m と 平 均 胸 高 直 径 D m か ら 次 式 に よ っ て 推
定 さ れ る ( 井 上 , 2000)。
[44]
γ = H m D m -2 / 3
この式は,他の 2 つの推定方法と比べると適合度が多少劣るが,平
均樹高と平均胸高直径といった成長モデルにおける基本的な推定量
から係数が推定できる。したがって,この式は様々な成長モデルに
- 30 -
対 し て 容 易 に 適 用 で き ( 井 上 , 2000), 将 来 , こ の シ ス テ ム を シ ス テ
ム 収 穫 表( Konohira, 1995)と リ ン ク さ せ る 上 で 都 合 が 良 い と 考 え ら
れるので,樹高曲線の1つに加えた。
2.4. デ ー タ の 入 力
デ ー タ 入 力 画 面( 図 Ⅳ − 3)で は ,標 準 地 調 査 に よ る 樹 高 と 胸 高 直
径の測定結果を入力する。すなわち,樹高と胸高直径の測定値(樹
高 に つ い て は 標 準 木 の み で 良 い )を 入 力 し ,
「 入 力 」ボ タ ン を ク リ ッ
クする作業を標準地内の立木本数分だけ繰り返す。なお,ダイアロ
グ ボ ッ ク ス 中 の 樹 木 番 号 ( Tree no.) に つ い て は ,「 入 力 」 ボ タ ン を
クリックすると自動的に変化するようになっている。全ての立木の
測定値について入力が終了すると,
「 入 力 終 了 」ボ タ ン を ク リ ッ ク す
る。このボタンをクリックすると,入力したデータの一覧が表示さ
れ ( 図 Ⅳ − 4), デ ー タ の 入 力 ミ ス を 確 認 で き る 。 デ ー タ を 修 正 す る
際には,ツールバーの「データの修正」ボタンあるいは入力データ
一 覧 画 面 の「 デ ー タ 修 正 」ボ タ ン を ク リ ッ ク し ,デ ー タ 修 正 画 面( 図
Ⅳ − 5)を 表 示 さ せ る 。こ の 画 面 に お い て ,修 正 し た い 樹 木 番 号 お よ
び樹高と胸高直径の測定値を入力し,
「 修 正 」ボ タ ン を ク リ ッ ク す る
とデータを修正できる。
図Ⅳ−3
Fig.Ⅳ − 3
データ入力画面
Screen image for inputting data
- 31 -
図Ⅳ−4
Fig.Ⅳ − 4
Screen image of the list of input data
図Ⅳ−5
Fig.Ⅳ − 5
入力データ一覧画面
データ修正画面
Screen image for modifying data
さらに,標準地調査の結果を保存するツールとしても活用できる
ように,データ名,年月日,標準地面積,立木本数,樹種名および
林齢を初期設定画面より取り込み表示できる。
2.5. 林 分 表 の 作 成
ツールバーの「林分表」ボタンをクリックすると,標準地の林分
表 が 表 示 さ れ る ( 図 Ⅳ − 6)。 林 分 表 に は 直 径 階 ご と の 平 均 樹 高 , 単
- 32 -
図Ⅳ−6
Fig.Ⅳ − 6
林分表画面
Screen image of stand table
木材積および本数が表示される。また,これらの情報の他に,林分
の基本的な情報として,平均胸高直径,平均樹高,林分密度および
林分材積が表示される。
林分表の作成手順は以下の通りである。まず,入力したデータよ
り,直径階別の本数分布を 2 ㎝括約でカウントする。次いで,初期
設定入力画面で選択した樹高曲線によって各直径階の平均樹高を推
定 す る 。 そ し て , Ⅱ 章 で 誘 導 し た 理 論 的 材 積 式 ( [23]式 ) に よ っ て
各 直 径 階 の 平 均 幹 材 積 を 推 定 す る 。さ ら に , 林 分 表 に 表 示 し た 値 か
ら ,平 均 胸 高 直 径 ,平 均 樹 高 ,林 分 密 度 お よ び 林 分 材 積 を 計 算 す る 。
2.6. 材 積 表 の 調 製
林分表を表示した状態で,ツールバーの「材積表」ボタンをクリ
- 33 -
ッ ク す る と , 理 論 的 材 積 式 ( [23]式 ) に 基 づ く 二 変 数 材 積 表 が 調 製
で き る ( 図 Ⅳ − 7)。 直 径 に つ い て は , 標 準 地 調 査 に よ る 測 定 値 の 存
在 す る 範 囲 が 1cm 括 約 で 表 示 さ れ る 。樹 高 に つ い て は ,最 小 直 径 階
の 平 均 樹 高 よ り も 1m 低 い 値 か ら 最 大 直 径 階 の 平 均 樹 高 よ り も 1m 高
い 値 ま で の 範 囲 が 1m 括 約 で 表 示 さ れ る 。 こ れ ら の 範 囲 に お け る 全
ての樹高と胸高直径の組み合わせについて,理論的材積式に基づい
て幹材積が計算される。
図Ⅳ−7
Fig.Ⅳ − 7
材積表画面
Screen image of volume table
2.7. 林 分 細 り 表 の 調 製
林分表を表示した状態で,ツールバー内の「細り表」ボタンをク
リ ッ ク す る と , B EH RE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 ( [32]式 ) に 基 づ く 林 分 細
り 表 が 調 製 で き る ( 図 Ⅳ − 8)。
一般に,林分内における相対幹曲線式の変動は小さく,安定して
い る と 考 え ら れ て い る ( 梶 原 , 1984b; 1985)。 し た が っ て , 林 分 の 平
- 34 -
図Ⅳ−8
Fig.Ⅳ − 8
細り表画面
Screen image of taper table
均 胸 高 直 径 ,平 均 樹 高 お よ び 平 均 幹 材 積 を [33]式 と [40]式 に 代 入 す る
ことによって推定した林分相対幹曲線式が,全ての直径階に適用で
き る 。直 径 に つ い て は ,材 積 表 と 同 じ く デ ー タ の 存 在 す る 範 囲 が 1cm
括約で表示される。また,樹高については,初期設定で選択した樹
高 曲 線 よ り 求 め た 各 直 径 階 の 平 均 樹 高 が 1m 括 約 で 表 示 さ れ る 。 そ
して,林分相対幹曲線式と表中に示した胸高直径と樹高より推定さ
れ た 各 地 上 高 に お け る 直 径 が , 地 際 か ら 1m 間 隔 で 表 示 さ れ る 。
2.8. 保 存 機 能 と 印 刷 機 能
入力データや調製した二変数材積表と細り表をより有効に活用で
き る よ う に ,保 存 と 印 刷 の 機 能 を 付 け 加 え た 。入 力 デ ー タ の 一 覧 表 ,
林 分 表 , 材 積 表 お よ び 細 り 表 の 印 刷 結 果 を 図 Ⅳ − 9∼ 12 に 示 す 。 印
刷の方法は,以下の通りである。まず,印刷したい画面をクリック
し , ア ク テ ィ ブ 状 態 に す る 。 次 い で , ツ ー ル バ ー の 「印 刷 」ボ タ ン を
- 35 -
クリックする。すると,ユーザーが使用しているプリンターの印刷
設定画面が表示され,通常と同様の操作によって,指定した表を印
刷できる。
また,このシステムでは,入力データさえ与えられれば林分表,
材積表および細り表を即座に表示できる。したがって,保存できる
ウィンドウは入力データの一覧のみとした。入力データの一覧を保
存するには,入力データ一覧の画面をアクティブ状態にし,ツール
バ ー の 「保 存 」ボ タ ン を ク リ ッ ク す る 。 す る と , Windows で 使 用 さ れ
ている保存ダイアログボックスが表示され,通常と同様の操作によ
って,入力データが保存できる。
3. お わ り に
本章では,針葉樹を対象とした材積表と細り表の自動調製システ
ムを開発した。このシステムによって,現在手作業で行っている立
木材積と細りの評価は自動化される。また,標準地調査の結果によ
る樹高と胸高直径の測定値が存在する範囲のみを表示しているため,
材積表と細り表は必要最低限になっている。したがって,幹材積と
細りを評価するための煩雑な事務作業は,このシステムによって大
幅に簡略化されると考えられる。
- 36 -
図Ⅳ−9
Fig.Ⅳ − 9
入 力 データの印 刷 例
Print image of input data
- 37 -
図 Ⅳ − 10
Fig.Ⅳ − 10
林 分 表 の印 刷 例
Print image of stand table
- 38 -
Fig.Ⅳ − 11
材積表の印刷例
Print image of volume table
図 Ⅳ − 11
Fig.Ⅳ − 12
細り表の印刷例
Print image of taper table
図 Ⅳ − 12
Ⅴ.
結
言
本研究では,まず,針葉樹における二変数材積式を理論的に誘導
し,その適合度を検証した。次いで,相対幹曲線式における係数の
推定方法を理論的に誘導し,その推定精度を検証した。そして,誘
導した二変数材積式と相対幹曲線式の推定方法に基づく材積表と細
り表の自動調製システムを開発した。
このシステムの有効性としては,次の4点があげられる。
1)
論理性
システムに用いられている理論的材積式と相対幹曲線式の推定方
法は,ともに経験的に誘導されたものではなく,理論的に誘導され
たものである。したがって,既存の二変数材積式や相対幹曲線式の
推定方法にみられるような,式の両辺での次元の矛盾や多重共線関
係による係数の不安定性といった論理性に関する問題は克服される。
2)
普遍性
既存の材積表と細り表では,調製のための資料を収集した地域,
樹種および成育段階に適用範囲が限定されていた。しかし,本研究
において理論的材積式と相対幹曲線式の推定方法を誘導する際に用
いた仮定は,地域,樹種および成育段階の相違を問わず,針葉樹一
般 に 広 く 認 め ら れ る 傾 向 で あ る 。し た が っ て ,開 発 し た シ ス テ ム は ,
様々な地域の針葉樹に対して適用できる普遍性を具備している可能
性が高く,既存の材積表と細り表における適用範囲の限界に関する
問題は克服されるものと考えられる。
- 41 -
3)
適合性
Ⅱ章の結果より,誘導した理論的材積式は,既存の経験的材積式
( 林 野 庁 計 画 課 , 1970b) に 劣 ら な い 適 合 度 を 具 備 し て い る こ と が 明
らかになった。また,Ⅲ章の結果より,誘導した相対幹曲線式の推
定方法によって,樹高,胸高直径および幹材積のみの情報から,梢
端付近を除く樹幹の細りを高い適合度をもって推定できることが示
された。
現在のところ,わが国の森林経営の現場においては,経験的材積
式が広く実用に供されている。また,利用材積の推定や採材方法の
決定において問題となるのは,主として樹幹の下部における推定誤
差であり,梢端付近における細りの推定誤差はあまり重要でないと
考えられる。したがって,開発したシステムによって,十分実用に
耐えられるだけの適合性をもって林木の幹材積と細りを推定できる
ものと推察できる。
4)
実用性
開発したシステムでは,標準地調査による樹高と胸高直径の測定
結果を入力すれば,対象とする林分の幹材積と細りを評価するため
に 必 要 な だ け の 材 積 表 ,細 り 表 お よ び 林 分 表 が 自 動 的 に 調 製 さ れ る 。
従来,幹材積と細りを評価する作業は,主に森林経営者の手作業に
よって行われており,多大な時間と労力を必要とする煩雑な事務作
業の1つであった。しかし,開発したシステムによって,このよう
な煩雑な事務作業は大幅に簡略化される。
また,このシステムにおいて必要な入力値(樹高と胸高直径の測
定値)は,成長モデルにおける最も基本的な推定量であり,全ての
成長モデルにおいて必ず含まれている。したがって,このシステム
- 42 -
は,様々な成長モデルに対して容易に適用でき,既存のシステム収
穫表とリンクさせることも十分に可能である。このシステムをリン
クさせたシステム収穫表は,林木の量的な面(樹高,胸高直径およ
び幹材積)だけでなく質的な面(細り)も推定できる成長予測シス
テムとして有効であろうと考えられる。したがって,本研究で開発
したシステムは,極めて高い実用性を具備していると判断できる。
一 方 ,こ の シ ス テ ム の 問 題 点 と し て は ,次 の 2 点 が あ げ ら れ よ う 。
1) 検証例の不足
本研究では,鳥取大学農学部附属蒜山演習林内に成立するスギと
ヒノキの同齢単純林において収集した資料を用いて,理論的材積式
と相対幹曲線式の推定方法の適合度を検証した。その結果,収集し
た資料に対して,理論的材積式と相対幹曲線式の推定方法は,いず
れも十分実用に耐えられる適合度を備えていることが示された。
誘導の過程において経験的に定まる係数が全く含まれていない点
から判断すると,異なる地域や樹種の針葉樹に対しても同様の適合
度を示す可能性が示唆される。しかし,様々な地域の森林経営にお
いて,今後,このシステムが有効に活用されていくためには,異な
る地域や樹種の針葉樹についても,理論的材積式と相対幹曲線式の
推定方法の適合度を検証しておく必要がある。そして,幹材積と細
りの推定誤差の大きさを把握しておくことによって,このシステム
が信頼できるものとして有効に活用されるものと考えられる。
以上のことより,今後においては,異なる地域や樹種の針葉樹の
資料を用いて,誘導した理論的材積式と相対幹曲線式の推定方法の
適合度を検証することが重要な課題の1つになるであろう。
- 43 -
2) システムの機能拡張
このシステムでは,林木の幹材積と細りが推定できるので,当然
のこととして,利用材積の推定や採材方法の決定に関する機能を加
えることも十分に可能である。今後,森林経営における意思決定を
支援するツールとして,開発したシステムの有効性をさらに高めて
いくためには,これらの機能も加える必要がある。
また,このシステムを各地の森林経営の現場に提供し,できるだ
け多くの経営者から意見や感想を収集することによって,より使い
易いシステムへと改良・拡張していくことが望まれる。しかし,一
般に言えることであるが,開発したシステムに何らかの改良・拡張
の余地が生じることは当然の帰結であり,その問題を解決していく
過 程 に お い て ,シ ス テ ム の 完 成 度 は 徐 々 に 高 ま っ て い く も の で あ る 。
したがって,この問題点は,開発したシステムの有効性を決して否
定するものではないと考える。
経営者の勘と経験に基づいて行われてきた古典的な森林経営も重
要であるが,科学的根拠の明確なシステムが加われば,より合理的
な森林経営が可能になる。上述した有効性からも明らかなように,
このシステムの科学的根拠は明確であり,既存の材積表と細り表に
おける論理性や普遍性に関する問題を克服できる。したがって,森
林経営者は,より合理的な森林経営を行うための判断材料をこのシ
ステムによって容易に得られるであろうと考えられる。
以上のことより,本研究において開発した材積表と細り表の自動
調製システムは,森林経営における意思決定を支援する上で最も有
効なツールの1つであると筆者は信じる。そして,森林経営の現場
において,このシステムが広く有効に活用されることを強く望む。
- 44 -
摘
要
森林経営において,幹材積と細りを正確に把握することは極めて
重要であり,地域単位で主要な樹種ごとに様々な材積表と細り表が
調製されている。しかし,これらの表に用いられる材積式と幹曲線
式 は ,限 ら れ た 樹 種 や 地 域 の 資 料 よ り 経 験 的 に 求 め ら れ て い る た め ,
その適用範囲は資料を収集した樹種や地域に限定される。また,既
存の材積表や細り表では表の数が膨大なため,幹材積と細りを評価
する作業が煩雑である。理論的な材積式と幹曲線式を用いて,幹材
積と細りに関する必要な情報だけを任意に抽出できるシステムを開
発することは,これらの問題を解決する上で最も有効な方法の 1 つ
であろうと考えられる。そこで本研究では,針葉樹を対象とした二
変数材積式と相対幹曲線式の推定方法を理論的に誘導し,これらの
式に基づく材積表と細り表の自動調製システムを開発することを目
的とした。
まず,針葉樹における新しい二変数材積式を理論的に誘導した。
相 対 幹 曲 線 式 と し て K UNZE 式 を 採 用 し た 。既 存 の 研 究 成 果 に 基 づ い
て , 相 対 高 0.7 と 0.5 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 と λ 0. 5 は , そ れ ぞ れ 0.7
と 1.0 で 安 定 し て い る と 仮 定 し た 。 こ れ ら の 仮 定 よ り , 相 対 幹 曲 線
式の係数を推定する 2 つの方法を誘導した。これらの方法によって
推定される係数は,互いに等しいと仮定した。その結果,次の二変
数 材 積 式 が 得 ら れ た ; v= π d b 2 h/4{2(1− h b /h)} 1 . 06 0 。 こ こ で , v は 幹
材 積 , d b は 胸 高 直 径 , h は 樹 高 , h b は 胸 高 ( = 1.2m) で あ る 。 こ の
- 45 -
材 積 式 を ス ギ と ヒ ノ キ 各 50 本 の 資 料 に 適 用 し た 。推 定 さ れ た 幹 材 積
の 平 均 相 対 誤 差 と 標 準 誤 差 は ,ス ギ で 1.543±7.114%と 0.028m 3 ,ヒ
ノ キ で 8.402±7.300%と 0.025m 3 で あ っ た 。標 準 誤 差 と 相 対 誤 差 の い
ずれにおいても,誘導した材積式と既存の材積式との間で明らかな
差は認められなかった。
次いで,針葉樹における相対幹曲線式の新しい推定方法を理論的
に 誘 導 し た 。相 対 幹 曲 線 式 と し て B EHR E 型 の 式 を 採 用 し た 。既 存 の
研 究 成 果 に 基 づ い て ,相 対 高 0.7 に お け る 正 形 数 λ 0 . 7 は ,0.7 で 安 定
し て い る と 仮 定 し た 。 B EHRE 型 の 相 対 幹 曲 線 式 に お け る 係 数 は , 樹
高,胸高直径(あるいは胸高断面積)および幹材積によって推定で
きた。誘導した相対幹曲線式の推定方法をスギとヒノキの資料に適
用 し た 。 梢 端 付 近 の 樹 幹 上 部 を 除 く と , 相 対 誤 差 が ±10% 以 内 , 標
準 誤 差 が ±1.5cm 以 内 の 適 合 度 で 幹 の 細 り を 推 定 で き た 。
そして,針葉樹における材積表と細り表の自動調製システムを開
発 し た 。こ の シ ス テ ム は ,標 準 地 調 査 に よ る 樹 高 と 胸 高 直 径 の 測 定 結
果から林分の主要な諸量を林分表としてとりまとめ,また,対象林
分の幹材積と細りを評価するために必要なだけの二変数材積表と細
り表を調製することを目的としている。このシステムでは,標準地
調査の結果を入力すると,まず,直径階別本数分布,平均樹高,平
均幹材積,林分材積および林分密度などの主要な諸量を示した林分
表が作成される。次いで,誘導した二変数材積式と相対幹曲線式の
推定方法に基づいて,標準地における樹高と胸高直径の測定値が存
在する範囲についての二変数材積表と細り表が自動的に調製される。
- 46 -
さらに,開発した自動調製システムの有効性と限界について考察
し た 。こ の シ ス テ ム の 有 効 性 と し て は ,次 の 4 点 が あ げ ら れ る 。
(1)
このシステムで採用した二変数材積式と相対幹曲線式の推定方法は
理論的である。
( 2 )地 域 ,樹 種 お よ び 成 育 段 階 に 依 存 せ ず ,様 々 な
針葉樹に対して適用できる。
( 3 )幹 材 積 と 細 り を 高 い 適 合 度 で 推 定
できる。
( 4 )幹 材 積 と 細 り を 評 価 す る 煩 雑 な 事 務 作 業 が 自 動 化 さ れ
る。以上のことより,本研究において開発した材積表と細り表の自
動調製システムは,森林経営における意思決定を支援する上で最も
有効なツールの1つであると考えられる。今後においては,二変数
材積式と相対幹曲線式の推定方法の適合度をさらに検証する必要が
あ る 。ま た ,開 発 し た シ ス テ ム を よ り 有 効 な も の へ と 改 良・拡 張 し て
いくことも重要である。
キーワード : 材 積 表 , 自 動 調 製 シ ス テ ム , 針 葉 樹 , 正 形 数 , 相 対 幹
曲線式,二変数材積式,細り表,林分表,
- 47 -
Summary
Accurate estimation of stem volume and taper is the most critical information
required by forest managers, and hence various types of volume and taper tables
have been constructed. The volume and taper equations used for these tables,
however, are either empirical or experimental, so the applicability of these tables will
be restricted for a specific region and species. The large number of these tables will
also make the office work for evaluating volume and taper complicated. As one of
the most effective methods for resolving these problems, the development of an
automatic system for providing information about volume and taper based on
theoretical volume and taper equations will be desired. The objectives of this study
are: 1) to derive the two-way volume equation and the method for estimating relative
stem taper curve in coniferous species theoretically; and 2) to develop an automatic
system for constructing the volume and taper tables in coniferous species based on
the derived theoretical equation and method.
First, a two-way volume equation in coniferous species was theoretically
derived. The KUNZE equation was used as a relative stem taper curve. Based on
previous studies, assuming that the normal form-factors at 0.7 and 0.5 in relative
height were steady at 0.7 and 1.0, respectively. By these assumptions, two methods
for estimating coefficients of the relative stem taper curve were derived. Assuming
that coefficients estimated by these method were equivalent to each other, we
obtained the following two-way volume equation; v=πdb2h/4{2(1− hb/h)}1.060,
where v: stem volume; db: diameter at breast height; h: total tree height and hb: breast
- 48 -
height (=1.2m). The volume equation was fitted to 50 Cryptomeria japonica D. Don
and 50 Chamaecyparis obtusa Endl. data. Mean relative error was 1.543% for C.
japonica and 8.402% for C. obtusa. Standard error of estimated stem volume was
0.028
for C. japonica and 0.025
for C. obtusa. No clear differences in the
accuracy and precision were observed between derived and previous volume
equations.
Second, a method for estimating relative stem taper curves in coniferous
species was theoretically derived. The BEHRE equation was used as a relative stem
taper curve. Based on previous studies, assuming that the normal form-factor at 0.7
in relative height was steady at 0.7. The coefficients of the BEHRE’s relative stem
taper curve can be estimated from total tree height, diameter at breast height (or basal
area) and stem volume. The method was fitted to C. japonica and C. obtusa data. In
both species, mean relative and standard errors of estimated upper diameter were less
than ±10% and less than ±1.5cm, respectively, except on the upper stem around
the tip.
Third, an automatic system for constructing volume and taper tables in
coniferous species was developed. The objectives of the system were: 1) to prepare
the stand table that indicates major characteristics of a target stand; 2) to construct
the volume and taper tables required only for evaluating stem volume and taper of
the stand. The procedures of the system were as follows: First, the height and
diameter measured in the sample plot were inputted, and the stand table that
indicated diameter distribution, mean height, mean stem volume, stand volume and
stand density etc. was constructed. Next, the volume and taper tables for the range of
- 49 -
height and diameter measured in sample plot are constructed based on the derived
volume equation and method for estimating taper curve.
Fourth, the usefulness and limitations of the developed system were discussed.
The usefulness of the developed system were: 1) The two-way volume equation and
the method for estimating relative stem taper curve used in the system were derived
not empirically but theoretically; 2) The system can be applied to various coniferous
species, independent of the region, species and growth stage; 3) Both stem volume
and taper can be estimated with high accuracy and precision; 4) The developed
system will make the complicated office work for evaluating stem volume and taper
simply, and can be simply applied to various types of system yield tables. In
conclusion, the author believes that the developed system in the current study will be
one of the most effective systems for supporting the decision making in forest
management.
key word: automatic construction system, coniferous species, normal form-factor,
relative stem taper curve, stand table, taper table, two-way volume equation, volume
table
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引 用 文 献
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- 51 -
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- 53 -
謝
辞
本研究を進めるにあたって,終始温かいご指導,ご助言を頂いた
黒川泰亨先生と井上昭夫先生には深く感謝いたします。
また,鳥取大学農学部附属蒜山演習林の職員の方々ならびに森林
計画学研究室の学生諸氏には,現地調査において多大なご協力を頂
きました。ここに厚くお礼申し上げます。
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