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1 概要 2 目次

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1 概要 2 目次
集中力管理
著:江本あやえもん
1 概要
本書では読み手の集中力を管理して、読み手を疲れさせずに長時間でもプレイできるよ
うな、集中力管理のテクニックを示します。
なお、本書では未説明の用語などがいくつか出てきます。それらについては拙著「シナ
リオの設計図――良質なシナリオを、より早く構築するヒント」もしくはクリストファー・
ボグラー著「夢を語る技術〈5〉神話の法則―ライターズ・ジャーニー」内で説明されてい
る十二のステージについて理解していると、理解することができるかと思います。
2 目次
1
概要 ................................................................
................................................................................................
................................................................................
................................................ - 1 -
2
目次 ................................................................
................................................................................................
................................................................................
................................................ - 1 -
3
読み手の集中力................................
集中力................................................................
...............................................................................................
............................................................... - 2 -
3.1
集中力の大切さ .......................................................................................................... - 2 -
3.2
ハリウッド映画に見る人間の集中力.......................................................................... - 2 -
3.3
ゲームや小説での集中力............................................................................................ - 3 -
4
集中力管理................................
集中力管理................................................................
................................................................................................
......................................................................
...................................... - 4 -
4.1
イントロ部分の集中力管理 ........................................................................................ - 4 -
4.2
集中力の緩和方法:「笑い」 ...................................................................................... - 4 -
4.3
集中への誘い:危険への接近 .................................................................................... - 4 -
4.4
セントラル・クライシス、クライマックスでの集中力............................................. - 4 -
4.5
音楽や絵による集中の発散 ........................................................................................ - 5 -
5
まとめ&
まとめ&あとがき ................................................................
...........................................................................................
........................................................... - 5 -
3 読み手の集中力
3.1 集中力の大切さ
どんなに感動できる物語でも、どんなに緊迫したシリアスシーンでも、読み手の集中力
がその時点でなければ感情移入できず、全てが無駄に終わってしまいます。
予想される失敗例を、以下に列挙してみます。
面白いだろうと思って、次から次へとハプニングやトラブルを起こして、最後の肝心
なクライマックスで読み手が疲れていて、面白くなくなってしまうという失敗。
イントロ部分で衝撃的なシーンを挿入したものの、日常世界とは異なりすぎてその後
は読み手が感情移入できなくなってしまうという失敗。
盛り上げが足りず、いきなりクライマックスの緊迫シーンが出てきて、読み手が戸惑
って感情移入できなくなる。緊迫感についていけなくなるという失敗。
これらを引き起こす原因は、読み手の集中力と書き手の集中力の差から起こります。読
み手がどれぐらいの集中力を保っているのかを把握でき、そして集中させたり集中を緩和
させたりすることができれば、書き手にとってこれらの問題を解決することができるよう
になるでしょう。
そこで、読み手の集中力管理
集中力管理が必要になります。
集中力管理
3.2 ハリウッド映画に見る人間の集中力
ハリウッド映画を時間単位に再生してみたら、大体同じような時間で物語の区切りが訪
れることを発見するでしょう。
黄金パターンとしては、30分ぐらいで一つの緊迫シーンが終わり、1時間ぐらいのと
ころでボーカル曲が入って少しリラックスムードになり、そこから盛り上がっていって、
ラストは2時間か長くとも2時間半ぐらいの長さで映画が終わります。
時間軸による三幕構成を考えると、次のような構成で成り立っています。
第1幕
第2幕
第3幕
時間軸
0h
0.5h
1 ~1.2h
-2-
2 ~2.5h
映画を見る際の人間が持続できる集中力の限界は、大体2時間~2時間30分の長さで
す。それ以上長くすると、観客の集中力がもたないために感情移入できなくなってしまう
危険が高くなります。
また、緊迫したシーンが続くアクション映画ほど上映時間が短い傾向にあります。2時
間以上続くものはまれではないでしょうか。というのは、アクションが多く緊迫感が持続
するシナリオであればあるほど、集中力が長くもたないということです。逆に恋愛映画な
ど、あまり起伏が激しくないものは2時間30分ぐらいにしても集中力が持続する傾向に
あるようです。
3.3 ゲームや小説での集中力
ちょっとした規模のあるゲームや小説においては、映画のように2時間半以内で物語を
終わらせるわけにはいかないことが多々あります。5時間や10時間のプレイ時間ともな
ると、より高度な集中力管理を用いなければ、最も感動できるクライマックスで、集中力
が切れていたという状態になりかねません。
そこで、例えプレイヤーが10時間ぶっ続けでプレイしたとしても、それでも集中力を
途切れさせない集中力管理が必要になります。
では、どのように構成すればよいのでしょうか。
結論から言うと、ゲームでは1時間30分ぐらいの周期で三幕構成を区切ってゆきます。
ゲームにおいてはテキストに換算すると100
100KB(
100KB(原稿用紙
KB(原稿用紙にぎっしり
原稿用紙にぎっしり詰
にぎっしり詰めて125
めて125枚
125枚
ぐらい)
ぐらい)が1時間ぐらいの
時間ぐらいの時間
ぐらいの時間に
時間に相当します。ただしボイスありのゲームでは1時間分の
相当
文章量はもう少し少なくなり、逆に小説ではもう少し多くなるでしょうから、注意が必要
です。
第1幕
第2幕
第3幕
第1幕
…
時間軸
0h
0.4h
0.8h
1.5h
このような集中力管理の事情もあり、小説は原稿用紙300枚~350枚ぐらい(改行
や空白を含んだ状態)が一般的な一冊の長さになっているのでしょう。同時に、ゲームの
世界では600KB前後(1つの幕を1.5時間とした時の換算)ぐらいが1キャラ一区
切りの文章量となっています。
さらにゲームで超長編になる場合、その600KBをさらに1つの幕とし、全体で2.
4MBぐらいが1つのきりのよいまとまりになると思います。
-3-
4 集中力管理
4.1 イントロ部分の集中力管理
イントロ部分で、戦闘シーンや衝撃シーンを与えることで、観客を急激に物語に惹きつ
けるという技法があります。この場合、集中力の持続時間はせいぜい5分、長くても10
分程度でしょう。それ以上すると、逆に日常世界からかけ離れた世界観だと認識されて感
情移入ができなくなる危険が高くなるでしょう。
ハリウッド映画では、最初の衝撃シーンは最大3分となっているようです。3分後には、
Ordinary World に入る傾向にあります。
4.2 集中力の緩和方法:「笑い」
集中力を緩和させて、読み手をリラックスさせる方法としては、次の二つの方法が効果
的です。
お笑いシーンを挿入する
ほのぼのとしたシーンを挿入する
笑いは人の緊張を緩和し、リラックスさせる効果があります。第一関門が終わり次のセ
ントラル・クライシスまでは、第一関門の後にお笑いを盛り込むことでそれまでの緊張感
を発散させ、本番のセントラル・クライシスに集中させることができるようになります。
4.3 集中への誘い:危険への接近
それまでお笑いシーンだったのに、突然クライマックスなどの緊張するシーンを挿入し
ても、観客の心の準備ができていないために緊張感についていけない場合があります。そ
のために、危険への接近(Approach to the Inmost Cave)を挿入することによってゆっく
りと緊張感を上げてゆくとよいでしょう。
例を以下に示します。
最後の敵との戦いという緊迫感を出すための方法
×(失敗しそうな方法) いきなり最後の敵が奇襲してくる。
○(よい盛り上げ方法) 敵の根城に侵入し、闇のだんだんと奥深くに進入してゆく。
4.4 セントラル・クライシス、クライマックスでの集中力
セントラル・クライシスやクライマックスにおける集中力の持続時間は、長くて30分
です。それ以上続ける場合は15分から20分間隔で緊張状態を最低1~3分程度は一時
緊張状態を中断し、できるだけ集中力を解放させることが必要です。ただしセントラル・
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クライシスやクライマックスでの無謀なお笑いは、全体の緊張感を壊してしまう危険性も
あるために注意する必要があります。
4.5 音楽や絵による集中の発散
小説では難しいでしょうが、ゲームのように絵や音楽を使うことができる媒体では、第
一関門後の集中力緩和や、危険への接近(Approach to the Inmost Cave)の段階で集中力
をほぐしておきたい場合などに、音楽を使ってリラックスさせることが可能です。特にボ
ーカル曲などは効果的でしょう。
これらを効果的に使った作品例として、昔のディズニー映画の「美女と野獣」などがあ
ります。これらは歌や踊りを交えてくつろいだ時間を作り出すことに成功しています。
5 まとめ& あとがき
以上で、集中力を管理する必要性と、その方法を説明しました。
短編では考慮する必要はないでしょうが、長編を作る際には必要になってくると思いま
す。
この技術により、少しでも貴方の作品にとって糧となれば幸いです。
ありがとうございました。
二〇〇八年 六月十六日 江本あやえもん
「集中力管理」
Ver. 1.00
発行日:2008 年 6 月 17 日
著者:江本あやえもん
発行:http://circlemebius.sakura.ne.jp/aya/
© Ayaemon Emoto, 2008
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