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卵母細胞の減数分裂の制御機構

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卵母細胞の減数分裂の制御機構
説卵母細胞の減数分裂の制御機構佐藤英明
哺 乳類 の卵 母 細胞 の 減 数 分 裂 は 胎 仔 期 に 始 ま り, そ の 過 程 は個 体 が 成 熟 す る ま で長 期 間
I
に わ た って 進 行 す る 。 この 長 い 期 間 の ほ とん ど は 第1分 裂 の 前 期 の 後 半 で 休 止 して い る。
減 数 分 裂 の 開 始 と 休 止 が ど の よ うに して 誘 起 され る のか は長 い 間 不 明 で あ った が,
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卵 母 細 胞 の体 外培 養 法 が 確 立 さ れ る とと もに 解 析 的 な 研 究 が 進 め られ,
最 近,
減 数 分 裂 の 開始 ・
休 止 お よ び再 開 始 に 関 与 す る 因 子 が 解 明 され つ つ あ る。 本 稿 で は, 哺 乳 類 の卵 母 細 胞 の減
数 分 裂 の調 節 因子 と そ の 制 御 機 構 に つ い て 研 究 の 現 状 を 紹 介 す る 。
は じめ に
減数 分 裂 は一 般 に2回 の連 続 した 有 糸 分 裂
育 を 終 え た 卵 母 細 胞 は, 脳 下 垂 体 か ら放 出 され る性 腺 刺
か らな り, 染 色体 数 の半 減 化 を も た らす 。 染 色 体数 の 半
激 ホル モ ン^<*1>
(ゴ ナ ド トロ ピ ン ; gonadotropin)
減 化 の過 程 で は相 同染 色 体 が 対 合 し, それ に伴 って 交 叉
して減 数 分 裂 を再 開 始 す る。 減 数 分 裂 の再 開 始 は形 態 学
が 起 き, ま た2娘 染 色 体 が 動原 体 部 で 付 着 し分 離 しな い
的 に は 光 学 顕 微 鏡 下 で の 染 色 体 の 凝 縮 や 卵 核 胞 の 消失
に反 応
こ とな ど, 体 細 胞 分 裂 とは 異 な る 分 裂 様 式 が 観 察 され
(卵 核 胞 崩 壊 ; germinal
る^<1)>。
この よ うな減 数 分 裂 の過 程 に つ い て は 多 くの生 物
と して 観 察 され,
種 で そ の 現 象 の記 載 が な され て き た が, 哺 乳 類 に つ い て
(anaphase
も分 裂 様式 の 観察 の み な らず, 医 学 や 畜産 学 的 課 題 の 解
出 し, 第2分 裂 中 期 (metaphase
明, あ る い は そ の人 為 的 制 御 とい う観 点 か ら さ ま ざ まな
動 きは 再 び 休 止 す る^<5)>。
第2分 裂 は 受 精 に よ っ て再 開 し,
検 討 が な され て き て い る^<2∼4)>。
一 般 に性 腺 の原 基 の 中 に 入 り込 ん だ 原 始 生 殖 細 胞 は,
第2極 体 を 放 出 して減 数 分 裂 は 完 了 す る。
vesicle breakdown
第1分 裂 中期 (metaphase
; GVBD)
I), 後 期
I), 終 期 (telophase I) を経 て第1極 体 を放
II) へ 達 して染 色 体 の
哺 乳 類 の卵 母細 胞 の減 数 分 裂 の 制 御 機 構,
と くに減 数
さ か ん に細 胞 分裂 を く り返 して数 を増 す 。 この 増 殖 期 の
分 裂 の開 始 ・休 止 ・再 開始 の機構 に 関 して は長 い間 不 明
細 胞 を卵 原 細 胞 と よぶ が, 哺乳 類 に お い て 卵 原 細 胞 は 胎
で あ った が, 性 腺 や 卵 母 細 胞 の体 外 培 養 法 が 確 立 され る
仔 期 の後 半 あ る い は 出生 直 後 に細 胞 分 裂 を や め て 減 数 分
と と もに 解 析 的 な 研 究 が すす み, そ の メ カ ニ ズ ムが 解 明
裂 を開 始 し, 卵 母 細 胞 と よばれ る よ うに な る。 減数 分 裂
され つ つ あ る。 本 稿 に お い て は マ ウ スを 中 心 に哺 乳 類 の
の 前 期 (prophase)
に お い て染 色 体 は一 連 の 特 有 な 変 化
を 示 す が, 細 糸期 (leptotene), 接 合 糸 期 (zygotene),
太 糸 期 (pachytene)
を 経 て複 糸 期 (diplotene)
卵 母 細 胞 の減 数 分 裂 の開 始 ・休 止 お よび 再 開 始 に関 す る
最 近 の 研 究 の 概 要 を紹 介 す る。
に達 す
る と, 染 色 体 の変 化 は先 に進 む こ とな く休 止す る。 そ の
.
研
究
方
法
後, 卵 母 細 胞 は発 育 を開 始 す る と と もに卵 母細 胞 特 有 の
構 造 へ と分 化 し, 大 き な核, す なわ ち卵 核 胞 (germinal
哺乳類 の卵母細胞 の減数分 裂に関す る解析は, 主 とし
vesicle ; GV)
を もつ よ うに な る。 成 熟 卵 胞 内 に あ る 発
Eimei
京都大学農学 部畜産 学教室 (〒606京 都市左京 区北白川追分町)[Department of Animal Science, Faculty ofAgriculture, Kyot
Sato,
【減数分裂】【卵母 細胞】 【
生殖 系列】 【
哺乳類】
て in vitroでの培 養方 法を用いて なされ ている。減数分
24
蛋 白 質
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表1.
核 酸
酵 素
Vol. 35 No.
9
(1990)
本文 中で略記 した用語
減数分裂誘起因子 と卵成熟誘 起物質は略記の仕方が同じなの
で注意が必 要。
裂 の開 始 に 関 す る検 討 は主 と して性 腺 の器 官培 養 に よ る
が, 減 数 分 裂 の再 開始 につ い て は 以下 の3つ の方 法 で検
討 され て い る。 第1は 卵 胞 か ら分 離 した卵 母細 胞 を種 々
の 条 件 下 で 培 養 す る も の で あ る。 分 離 され る もの の 中 に
は 卵 丘 細 胞 (cumulus
cell) を もた な い ものや 卵 丘 細 胞
に 囲 まれ た もの が あ る (図1)。 こ の方 法 は ホル モ ンの刺
図1.
マ ウスの卵母細胞
卵胞を針で破る と, 卵丘 細胞に囲まれた卵 母細胞 (A) や
卵丘細胞を もたない卵 母細胞 (B) が分離され る。卵 母細胞
には核小体を もつ大きな核 (卵核胞) が 観察 され る。このよ
うな卵母細胞を用いて, 体外培養 下で減数分 裂の休止 と再開
始の調節因子や制御機構 の解 析が行なわれ ている。
激 な しに卵 母 細 胞 が 体 外 で減 数 分 裂 を再 開 始 す る こ とを
発 見 した Pincus
と Enzmann^<6)>の 研 究 に端 を発 す る も
分 裂 を 休 止 した の ち, 減 数 分 裂 期 に は い る が, 減 数 分
の で あ り, 卵 母 細 胞 の減 数 分 裂 の再 開 始 に影 響 す る因 子
裂 の始 ま る時 期 は雌 雄 で異 な っ て い る。 す なわ ち雌 性 生
の解 析 に用 い られ てい る。 第2は 卵 胞 構 成 細 胞 と卵 母 細
殖 細 胞 は胎 仔 期 に減 数 分 裂 を開 始 す る^<7)>。
一 方, 雄 性 生
胞 を一 緒 に培 養 した り, 卵 胞 構 成 細 胞 を 培 養 した の ち の
殖 細 胞 の減 数 分 裂 は性 成 熟 後 に始 ま る^<8)>。XX型 とXY
培 養 液 で卵 母 細 胞 を 培 養 す る も ので, 卵 胞 構 成 細 胞 の影
型 の胚 を 胞 胚 期 (blastocyst) に 融 合 して つ くった キ メ
響 を分 析 的 に検 討 す るの に 用 い られ て い る。 第3は 器 官
ラ マ ウス で は 精 巣 が 形 成 され るが,
培 養 法 とも い うべ き もの で, 卵 母 細 胞 を 含 む 卵 胞 ご と体
XX型
そ の精 細 管 の 中 で
外 で培 養 す る方 法 で, 卵 胞 の 外 か ら卵 母 細 胞 に 影 響 す る
で も精 細 管 内 に組 み 込 まれ なけ れ ば 卵 母 細 胞 に分 化 し,
因 子 の解 析 に適 して い る。
減 数 分 裂 を 開 始 す る^<10)>。
性 腺 組 織 に雌 雄 の細 胞 が 混 在 す
生殖 細 胞 は 生存 で き な い^<9)>。
またXY型
生殖細胞
る性 腺 キ メ ラ の観 察 に よ り減 数 分 裂 開 始 の機 構 も検 討 さ
II.
減 数 分 裂 開 始 の調 節 因子
れ て きて い るが, 卵 巣 組 織 内 の雌 性 生 殖 細 胞 の減 数 分 裂
開 始 の割 合 に比 べ 精 巣 組 織 内 で は きわ め てそ の比 率 が 低
生殖細胞は特定 の時期 に分裂活動 を中止 して少 しの間
くな る こ とが 示 され て い る^<11)>。
こ の よ うな こ とか ら減 数
*1 性 腺 を標 的 と し, そ の機 能 を 刺 激 す る ホ ル モ ンで 卵 胞 刺 激 ホ ル モ ン (FSH)
1526
と黄 体 形成 ホ ル モ ン (LH)
が あ る。
卵母細胞の減数分裂の制御機構
卵母細胞の減数分裂 の調節因子
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表2.
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a) 減数:分裂誘起因子
b) 卵成熟誘起物質
分 裂 開 始 の機 構 は生 殖 細 胞 自身 の分 化 の み な らず, 性 腺
質 の 細 胞 が 索 状 に伸 び て つ く られ た 卵 巣網 (rete ovarii)
組 織 の影 響 も大 き い と推 察 され る。
の 存在 下 で 培 養 す る と, 妊 娠15日
器 官 培 養 法 に よ っ て も胎 仔 卵 巣 の減 数 分 裂 が 体 外 で観
以 前 の卵 巣 に お い て
も減 数 分 裂 の 開 始 が 観 察 され る^<13)>。
また, 雄 性 生殖 細 胞
察 され る。 しか し減 数 分 裂 の始 ま る前 に卵 巣 を取 り出 し
を卵 巣網 近 傍 に 移 植 す る と 減 数 分 裂 を 開 始 す る^<13)>こ
と
て 培 養 す る と減 数 分 裂 は 誘 起 され ず, 生 殖 細 胞 は退 行 す
か ら, 卵 巣 網 が減 数 分 裂 の開 始 に重 要 な役 割 を果 た して
る。 す な わ ち ハ ム ス タ ーを 例 に とる と, 妊 娠15日
い る と推 察 さ れ る。 こ の よ うな実 験 結 果 を背 景 と して,
以前
の 胎 仔 卵 巣 を 培 養 して も減 数 分 裂 は誘 起 され な い^<12)>。
ま
減 数 分 裂 開 始 の調 節 因 子 が 検 索 され, 減 数 分 裂 誘 起 因 子
た 性 腺 刺 激 ホ ル モ ンな どを 添 加 して もな ん ら の作 用 も 示
(meiosis-inducing
さ ない^<12)>。
一 方, 胎 仔 卵 巣 も皮 質 と髄 質 か らな る が, 皮
因 子 (meiosis-preventing
substance
; MIS)^<14)>と
減数分裂 阻止
substance
; MPS)^<14)>が 同 定
1527
26
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 35
No. 9
(1990)
さ れ て い る。
こ の よ うな こ とか ら, 卵 巣 に お け る減 数 分 裂 の開 始 は
卵 巣 網 か ら分 泌 さ れ るMISに
よ り誘 導 され る^<15)>と
考え
られ て き て い る。 さ ら にMISは,
胎 仔 卵 巣 のみ な らず
成 熟 個 体 の卵 巣 の 卵 胞 液 (follicular fluid)か らも分 離 さ
れ て い る。 卵 胞 液 のMISは
分 子 量5K以
下 の脂 質 様 因
子 で あ る^<16)>。
精 巣 にお い て減 数 分 裂 の開 始 が 雌 よ り遅 れ
る の は, セル ト リ細 胞 (Sertoli cell) がMPSを
産 生分
泌 す る こ とに 原 因 す る^<14)>。MPSの 詳 しい性 状 は今 の と
こ ろ不 明 で あ る 。
図2.
III.
減 数 分 裂 の 休 止 と再 開 始
卵 母 細 胞 の 減 数 分 裂 は前 期 の後 半 (複 糸期) で そ の分
体 外 培 養 下 で の 卵 母 細 胞 の 減 数 分 裂 再 開 始 (卵 核
胞 崩 壊) に 及 ぼ すcAMP誘
導 体 (dbcAMP)
響^<24)>
dbcAMPは
マ ウス の卵 母 細 胞 に 対 して100μM程
い卵核胞崩壊抑制作用を示す。
の影
度で強
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裂 を休 止 す るが, 減 数 分 裂 の休 止 期 間 は細 胞 質 の発 育分
化 に要 す る 時 間 に対 応 す る^<17)>。
体 外 培 養 の系 を も とに し
て い る研 究 者 も多 い 。 問 題 は 卵 母 細 胞 のcAMPの
供給
て減 数 分 裂 の休 止 や再 開始 に影 響す る 因 子 が 同 定 され て
源 が ど こか と い う こ と にあ る。 す な わ ち, 卵 母 細 胞 の
き て い るが, 同 定 され た調 節 因 子 は主 と して発 育 を終 え
cAMPレ
た卵 母 細 胞 を 用 い た系 で 明 らか に され た もの で あ る。 こ
囲 の卵 丘 細 胞 か ら の供 給 に よ り調 節 され てい る のか とい
れ らの 調 節 因 子 が 卵母 細 胞 の発 育分 化 の全 過 程 に お い て
う点 で あ る。
機 能 して い るか ど うか に つ い て は 今後 の 課 題 と して 残 っ
ベル は卵 母 細 胞 自身 が 調 節 して い る の か,
周
卵 丘 細 胞 と 卵 母 細 胞 は 互 い に 突 起 を伸 ば し, 透 明帯
て い るが, 以 下 に 今 まで に報 告 され た 調 節 因 子 とそ れ ら
(zona
の 作 用 機 序 につ い て 紹 介す る 。
部 位 で は ギ ャ ップ結 合 (gap
pellucida) を貫 通 して 直 接 接 触 して い る。 接 触
junction)
を 形 成 して い
る^<26,27)>。
また 卵 丘 細 胞 ど う しも ギ ャ ップ結 合 で接 着 して
1.
減 数 分 裂 の 休 止 と 再 開 始 に 影 響 す る 細 胞 内調 節 因
送 あ る い は そ の利 用 の 面 で 共 同 して い る と も 推 察 され
子
細 胞 内 調 節 因 子 に つ い て は ヒ トデ や 魚 類 な ど の 下 等 動
物 で 明 ら か に さ れ た も の と ほ ぼ 同 じ も の,
イ ク リ ッ ク ア デ ノ シ ン3',
sine3',
い る こ とか ら, 卵 丘細 胞 と 卵 母 細 胞 は 低 分 子物 質 の 輸
5'-monophosphate
5'-一
リ ン酸
す な わ ち,
(cyclic
; cAMP)^<18,19)>,
サ
adeno
カル シ ウ ム ・
カ ル モ ジ ュ リ ン^<20∼22)>,
卵 成 熟 促 進 因 子 (maturation-pro
motingfactor
; MPF)^<23)>が
で 哺 乳 類 で はcAMPに
同 定 さ れ て き て い る。 こ の 中
関す る研 究 が進 ん で い る。
細 胞 内 調 節 因 子 と し てcAMPが
重 要 な はた らき を し
て い る こ と は 周 知 の 事 実 で あ る が,
先 立 ち 卵 母 細 胞 内cAMPレ
cAMPの
減 数 分 裂 再 開始 に
ベ ル は 低 下 す る^<18)>。
また
誘 導 体 ジ ブ チ リル サ イ ク リ ッ ク ア デ ノ シ ン3',
5'-一 リ ン酸
(dibutyryl
phosphate;
dbcAMP)
cyclic
adenosine
3',5'-mono
は 体外培 養下において 減数分 裂
の 再 開 始 を 顕 著 に 抑 制 す る^<24)>
(図2)。
さ ら にcAMPの
る^<28,29)>。
こ の よ うな こ とか ら, 減 数 分 裂 の 休 止 と再 開 始
の細 胞 内調 節 因子 を考 え る うえ で, 卵 丘細 胞 と卵 母 細 胞
の形 態 的 ・機 能 的 つ な が りを 考 慮 す る こ とが 必 要 で あ
る。
Dekel
と Beers
は^<30,31)>卵
丘 細 胞 のcAMPが
卵母細胞
の減 数 分 裂 の 休止 に 関与 して お り, 性 腺 刺 激 ホ ル モ ンは
卵 丘 細胞 と卵 母細 胞 の 形 態 的 結 合 を 阻 害 し, cAMPの
移 動 を低 下 させ る こ とに よ り減 数 分 裂 の 再 開 始 を 誘 起 す
る と報 告 して い る。 しか しな が ら, 卵 母 細 胞 のcAMPレ
ベ ル の 上 昇 は 卵 丘 細 胞 のcAMPレ
ベ ル の上 昇 に連 動 し
な い こ とが 明 らか に され て い る^<32)>。
また, 卵 母 細 胞 自身
アデ ニル 酸 シ クラ ー ゼを 有 し, cAMP産
こ とか ら, 卵 母 細 胞 のcAMPは
生能 を もつ^<33,34)>
卵 母 細 胞 自身 が 産 生 し
て い る と考 え る のが 妥 当 で あ る。
産 生 酵 素 の 活 性 を 促 進 し た り, 分 解 酵 素 の 活 性 を 抑 制 し
た りす る こ と に よ り減 数 分 裂 の 再 開 始 は 抑 制 さ れ る^<25)>。
以 上 の よ う な こ と か ら, 卵 母 細 胞 内cAMPレ
ベルの
低 下 が 減 数 分 裂 再 開始 の 直 接 的 な 引 き金 で あ る と 考 え
1528
2.
減数 分裂 の休止 と再 開始 に影響す る卵巣 内因子
A.
減数 分裂 の休止 を誘 起す る因子
卵母細胞 を卵胞 ごと培養 しても減数分裂 の再 開始 は誘
卵母細胞 の減 数分裂の制御機 構
27
か しな い の か は 研 究 者 に よ っ て 結 果 が 一 致 して い な い
が, 移 動 しな い とい う考 え が 有 力 に な って きて い る^<32)>。
ま た卵 胞 刺 激 ホ ル モ ン (follicle-stimulating hormone
FSH)
;
は, マ ウス や ブ タ の 卵 丘 細 胞 を もつ 卵 母 細 胞 に対
して, 弱 い なが ら も一 時 的 な 卵 核 胞 崩壊 抑 制 作用 を示 す
が, 卵 丘 細 胞 を もた な い もの に対 して は そ の よ うな 作 用
は 示 さ ない^<32)>。
さ らにFSHは
卵 丘 細 胞 のcAMPレ
ベ
ル を上 昇 させ る^<32)>。
これ ら の事 実 は, 卵 丘 細 胞 がcAMP
依 存 の調 節 系 に よ り卵 母 細 胞 に関 与 し, cAMPと
異な
る ギ ャ ップ結 合 通 過 性 の 減 数 分 裂 再 開始 抑 制 因 子 の 産 生
な い し活 性 化 を行 な って い る こ とを 示 唆 して い る。 卵 胞
液 を 低 濃 度 のdbcAMPと
と も に 培 養 液 に加 え, 卵 母
細 胞 を培 養 す る と, 顕 著 な減 数 分 裂 再 開 始 抑 制 作 用 を 示
す^<37,38)>。
こ の よ うな こ とか ら, 卵 胞 液 にcAMP増
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子 (cAMP-potentiating
強因
factor) と も よぶ べ き因 子 の存
在 が推 定 され, 近 年 そ の分 離 が試 み られ て い る。Eppig
らの グル ー プ^<39)>は
本 因子 を ヒポ キ サ ンチ ン (hypoxanth
ine)と
報 告 し, Miller
(adenosine)
と Behrman^<40)>は ア デ ノ シ ン
と報 告 して い る 。
筆 者 らは 卵 胞 液 の 中 にcAMPに
類 似 した 物 質 が あ る
の で はな いか と考 え, 卵 胞 液 の 凍 結 乾 燥 粉 末 の エ タ ノー
ル 抽 出液 を 出発 材 料 と して マ ウ ス卵 母 細 胞 の減 数 分 裂 再
図3.
体 外培養下での卵母細胞の核の動 き
開 始 に抑 制 的 な作 用 を示 す 物 質 を検 索 した。 エ タ ノール
卵胞か ら分離 した卵母細胞 (A, B) を体外で培養す ると自
然に減数分裂を再開始 し, 卵核胞を崩壊す る。卵母細胞周囲
の卵丘細胞には減数分裂再開始抑制作用はない。卵胞 ごと分
抽 出物 質 を Dowex
1-x8の
させ た と ころ0.1N
HClで
離す ることもで きるが, 卵胞を培養 してもそ の中の卵母細胞
の核 の動 きに変化はみ られない。 しか し, 卵胞 の外側か ら性
裂 再 開始 抑 制 作 用 が 認 め られ た^<41)>
(図4)。
腺刺激 ホルモ ン (LH) を作 用させ る と, 卵胞 の 中の卵母細
胞は減数分裂を再開始す る。 このよ うな実験か ら, 卵胞 の中
に減数分裂の再開始を抑え る因子 の存在 が推 定され, その後
カ ラム に か け, HClで
溶出
溶 出 され る分 画 に 強 い 減数 分
そ の後, 活 性
因 子 の 単離 を試 み, 活 性 因 子 は サ イ ク リ ック アデ ノ シ ン
多 くの実験が行 なわれ てきている。現在 までに, 卵胞液や顆
粒膜細胞か ら複数 の抑制 因子が分離 され てきている。
起 さ れ な い が, 卵 胞 か ら分 離 した 卵 母 細 胞 を 単独 で 培 養
す る と減 数 分 裂 の再 開始 は 自然 に誘 起 され る^<35)>
(図3)。
この よ うな 実験 か ら, 卵 胞 内 に 卵 母 細 胞 の 外 側 か ら作 用
して 減数 分 裂 の再 開 始 を 抑 制 して い る因 子 が 存 在 す る と
推 察 され る^<36)>。
卵胞内では 卵母細胞は 卵丘細胞 に 包 ま
れ, 顆 粒 膜 細 胞 (granulosa
cell) 層 に接 着 し, 卵 胞 液 に
浸 潤 した 状 態 で存 在 して い るが, 卵 胞 液 と顆粒 膜 細 胞 か
ら抑 制 因 子 が 分 離 され て きて い る。
a.
cAMP増
図4.
強因子
前 述 した よ うに, 卵 母 細 胞 内cAMPレ
ベル が 減 数 分
卵 胞 液 分 画 の卵 母 細 胞 の 減 数 分 裂 再 開 始 に 及
ぼ す 影 響^<41)>
ウ シ の卵 胞 液 凍結 乾 燥 粉 末 の エ タ ノー ル 抽 出 物 を Dowex
1-x8の
カ ラ ムに か け, まず0.01Nの
塩 酸 で 溶 出 させ, 次
裂 の休 止 に関 与 して い る こ とは ほ ぼ確 か と考 え られ る。
に0.1Nの
で は どの よ うにそ の レベル が 調 節 され て い るか が 次 の 問
ウ ス卵 母 細 胞 を 培 養 した と こ ろ, 0.1N塩
酸分画に抑制作用
が認 め られ た 。 ま た 培 養 液 に50μMのdbcAMPを
添加す
題 で あ る。 卵 丘 細 胞 のcAMPが
る と, 0.1N塩
卵 母 細 胞 に移 動 す る の
塩 酸 で 溶 出 した 。 そ れ ぞれ を 培 養 液 に 溶 か して マ
酸 分 画 の 抑 制 作 用 は よ り増 強 した 。
1529
28
蛋 白 質
図5.
核 酸
3', 5'-ピ ロ リ ン 酸 (cyclic adenosine
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cAPP)
No.9
(1990)
強 因 子^<39∼41)>
共 存 す る と, 強 い 減 数 分 裂 再 開始 抑 制作 用 を示 す 。
3', 5'-pyrophos
が きわ め て そ れ に 近 似 した 物 質 で あ る
こ とを 認 め て い る^<41)>
(図5)。
Eppig
Vol. 35
卵 胞 液 か ら分 離 され たcAMP増
これ らは 体 外 培 養 下 でdbcAMPと
phate;
酵 素
れ た 卵母 細胞 は 自然 に 減 数分 裂 を 再 開 始 す るが, 卵 丘 細
胞 に包 まれ た卵 母 細 胞 を顆 粒 膜 細 胞層 に接 着 して培 養 す
る と, 減 数 分 裂 の再 開 始 は顕 著 に抑 制 され る こ とが認 め
ら の グル ー プ は さ らに研 究 をす す め, 卵 丘細 胞
ゐ れ た^<48)>。
しか し顆粒 膜 細胞 層 と離 して培 養 した り, 顆
や 卵 母 細 胞 は ヒポ キサ ンチ ンや ア デ ノ シ ンを取 込 み 代 謝
粒 膜 細 胞 の “conditioned medium”
す る こ と, ヒポ キ サ ンチ ンは グ ア ニル 化 合 物 や キサ ンチ
抑 制 作 用 は認 め られ なか った^<48)>。
ン化 合 物 に 代謝 さ れ て 減 数 分 裂 再 開 始 抑 制 作 用 を 発 揮 す
を調 製 して調 べ て も
こ の よ うな 現 象 を も とに して, 筆 者 は顆 粒 膜 細 胞 の抑
る こ とな どを 明 らか に して い る^<43)>。
これ らはcAMP分
制 作 用 の作 用 様 式 を 以 下 の よ うに考 えた 。顆 粒 膜 細 胞 は
解 酵 素 ・ホ ス ホ ジエ ス テ ラ ーゼ の 活 性 を 抑 え て 卵 母 細 胞
抑 制 因 子 を 産 生 ・分 泌 し, 抑 制 因 子 を顆 粒 膜 細 胞 自身 の
内 のcAMPレ
ベ ル を高 め て い る と考 え られ て い る^<32)>。 表 面 に 結 合 す る。 抑 制 因 子 は 接 着 とい う機 構 を通 して卵
また プ リ ン代 謝 関連 酵 素 の 阻害 剤 を マ ウス に 投 与 し,
in vivoに お い て も これ らの化 合 物 が 減数 分 裂 の 休 止 に
関 与 して い る こ とを示 して い る^<43)>。
b.
母 細 胞 に 作 用 す る。 そ こ で, 細 胞 表 面 物 質 の抽 出 に適 し
た10mMTris-HCl,
1M尿
素, 5mM
EDTAを
採 用 して
顆 粒 膜 細胞 か ら抑 制 因 子 の分 離 を 試 み た 。 抽 出 液 をSe
卵 母細 胞 成 熟抑 制 因子
phadexG-25に
卵 胞 液 そ の も の に減 数 分 裂 再 開 始 抑 制 作 用 の あ る こ と
(1.5∼6K)
よ り溶 出 した と ころ, 比 較 的 低分 子量
の分 画 に可 逆 的 な抑 制 作 用 が 認 め られ た^<48)>。
は古 くか ら知 られ て いた が, 研 究 者 間 で の結 果 に相 違 は
そ の後, 逆 相 系 の高 速 液 体 ク ロマ トグ ラ フ ィー に よ り精
あ る も の の, 卵 胞 液 か ら抑 制 因 子 (卵 母 細 胞 成 熟 抑 制 因
製 を進 め,
子, oocyte maturation
本 物 質 を減 数 分 裂 休 止 因子 (meiosis-arresting
inhibitor ; OMI)
が 分 離 され,
ほぼ 単 離 した 分 画 を 得 て い る^<49,50)>。
筆者 は
と よん で い る^<48)>。
またMAFは
factor ;
部 分 的 に精 製 さ れ てい る^<44,45)>。
本 因 子 は こ の分 野 で も っ
MAF)
ヘ パ リ ンな い し
と も有 名 な 因 子 で あ るが, 活 性 の 種 特 異 性 は低 く, OMI
ヘ パ ラ ン硫 酸 に分 子 的 な親 和 性 を もつ が, そ れ ら に結 合
は エ ー テル で抽 出 されず, 活 性炭 に も吸 着 せ ず, 熱 に安
したMAFの
活 性 は低 下 す る^<50)>。
定 で あ り, ト リプ シ ン処 理 に よ って 活 性 の 消 失 す る分 子
d.
量2K以
哺 乳 類 の 生 殖 道 の 発 生 に お い て ミュ ー ラ ー管 (中 腎 傍
下 の ペ プ チ ドとされ て い る^<46)>。
また部分的に精
製 され たOMIの
活 性 は, 、OMI分
子 に対 して つ く られ
た 抗 血 清 の処 理 に よっ て低 下 す る^<47)>。
c.
減 数 分 裂 休 止 因子
ミ ュー ラ ー 管 抑 制 因 子
管, Mullerian
duct)
は, は じめ は 雄 ・雌 と もに 現 わ れ
る。 しか し, 雄 で は 性 の 分 化 と と もに 退 化 し, 雌 だ け
発 生 を継 続 して 卵 管 や 子 宮 に 発 達 す る。 雄 に お い て ミ
卵 巣 に お け る卵 母 細 胞 の減 数 分 裂 再 開 始 の過 程 を組 織
ュー ラー管 が 退 行 す る の は 胎 仔 期 精 巣 の セ ル ト リ細 胞
学 的 に観 察 す る と, 減 数 分 裂 の再 開 始 の過 程 で卵 丘 細 胞
か ら分 泌 され る 因 子 (ミ ュ ー ラ ー管 抑 制 因 子, Mullerian
に包 まれ た 卵 母 細 胞 と顆 粒 膜 細 胞 層 との接 着 様 式 に 変 化
inhibitory factor ; MIF)
が 認 め られ る^<48)>。
ブ タ の系 を用 い て in vitro に お い て 卵
子 量144Kの
胞 内 の構 築 を再 構 成 して 調 べ た と ころ, 卵 丘 細 胞 に包 ま
と74K)
1530
糖 蛋 白質 で,
の作 用 に よ る^<51)>。MIFは
分
2つ の サ ブユ ニ ッ ト (70K
か らな っ て い る^<52)>。
胎 仔 期 の卵 巣 に は存 在 しな
卵母細胞 の減数 分裂の制御機構 29
い が, 成 熟 卵 巣 に はわ ず か な が らMIF活
性 が認 め られ
培 養 す る と, LHサ
ー ジ に 感 作 した 卵 胞 の 中 の卵 母 細 胞
る^<53)>。MIFは免 疫組 織 学 的 に顆 粒 膜 細 胞 に 同 定 され,
に のみ 減 数 分 裂 の再 開 始 は観 察 さ れ る^<68)>。
また, 培 養 卵
卵胞 液 に も存 在 す る こ とが 確 認 され て い る^<54,55)>。
最 近,
胞 にLHやhCGを
MIFに
は ラ ッ トの卵 母 細 胞 の 減 数 分 裂 再 開 始 を 抑 制 す
る作 用 の あ る こ とが 明 らか に され て い る^<56)>。
作 用 させ る と, 卵 核 胞 は 崩壊 す る^<69)>。
しか し卵 母 細 胞 は 透 明帯 の厚 い膜 に 囲 まれ て お り, 卵 母
細 胞 や そ れ を 取 り囲 む 卵 丘 細 胞 のLHレ
セ プ タ ー の数
は顆 粒 膜 細 胞 に 比 べ て顕 著 に少 な い^<30)>こ
とか ら, LHが
B.
減 数 分 裂 の再 開 始 を誘 起 す る 因子
卵 母 細 胞 に 直 接 作 用 す る とは考 え られ な い 。
生殖 器 か らは さ ま ざ ま な生 理 活 性 物 質 が分 離 され て い
る が,
そ の 中 の 多 くが 卵 胞 に も 同定 され て い る。 それ
らの 卵 母 細 胞 に対 す る 影 響 が 調 べ られ,
(epidermal
growth
Database Center for Life Science Online Service
ン (prostaglandin
factor ; EGF)
; PG)
この よ うな こ とか ら, 減 数 分 裂 の再 開 始 誘 起 機 構 を 明
らか に す るた め の次 の問 題 点 は, 性 腺 刺 激 ホル モ ンが 卵
上皮成長 因子
胞 内 で どの よ うな 経 路 を経 て卵 母 細 胞 に 作 用 す るか と い
や プ ロス タ グ ラ ン ジ
う こ とで あ る。 上 述 した よ うに, 卵 母 細 胞 は 抑 制 因 子 に
に 卵 母 細 胞 の 減 数 分 裂 再 開始
よ りそ の 減数 分 裂 の再 開 始 が 抑 え られ て い る こ とか ら,
誘 起 作 用 が 認 め られ て い る。 す な わ ち, EGF^<57,58)>や
LHの
PG^<59)>を培 養卵 胞 に作 用 させ る と, 卵 胞 内 の卵 母 細 胞 は
効 とす るか とい う こ と にな る。 す なわ ちLHは
減 数 分 裂 を 再 開始 す る。 この うちEGFに
どの よ うに作 用 して 抑 制 因 子 の作 用 を 無効 とす るか が 問
関す る 研究
作 用機 序 は 当 然, 抑 制 因 子 の作 用 を どの よ うに 無
ど こ に,
が, 最 近 急 展 開 をみ せ て き て い る。EGFはEGFレ
セプ
タ ー の ア ンタ ゴニ ス トと して機 能 して い るMIFの
減数
卵 母細 胞 は 卵 丘 細 胞 に 囲 まれ て い る^<71)。
また卵胞液や
分 裂 再 開 始 抑 制 作 用 を 中 和 す る^<20)>。
また 前 述 した よ う
顆 粒 膜 細 胞 な どか ら分 離 され た 減 数 分 裂 再 開始 抑 制 因 子
に, ヒポ キサ ンチ ンは卵 母 細 胞 に対 して減 数 分 裂 再 開 始
の作 用 は 多 くの 場 合, 卵 丘 細 胞 を通 して そ の効 果 を 発 現
抑 制 作 用 を 示 す が, ヒ ポキ サ ン チ ンの作 用 に対 す る トラ
して い る^<72)>。
一 方, 卵 丘 の構 築 や 機 能 がLHの
題 とな る。
作用 に よ
ンス ホ ー ミ ン グ成 長 因 子, 血 小 板 由来 成 長 因 子, 神 経 成
り変 化 す る こ とが 明 らか に され て き て お り, 最 近 で は
長 因 子, イ ンス リン様 成 長 因 子, 線 維 芽 細 胞 成 長 因 子,
LHに
イ ンス リンお よびEGFな
能 力 の変 化 が 減 数 分 裂 再 開 始 の誘 起 要 因 と考 え られ る よ
とこ ろ, EGFに
ど の成 長 因 子 の影 響 を調 べ た
そ の 活 性 を 中 和 す る 作 用 が あ った と の
こ とであ る^<61)>。
な お卵 巣 で は, 性 腺 刺 激 ホル モ ンの作 用
に よ り顆 粒 膜 細 胞 のEGFレ
セ プ タ ー活 性 が 高 ま る の
で, 性 腺 刺 激 ホ ル モ ンの 作 用 はEGFを
介 して い る と考
え る こ と も可 能 で あ る^<62)>。
よ り誘 起 され る 卵 丘 の機 能 変 化,
と くに 物質 輸 送
うに な っ て き て い る。
卵 丘 の物 質 輸 送 能 力 に は, 卵 丘 細 胞 の結 合 装 置 や 細 胞
間 隙 が 関 係 して い る。 そ の よ うなこ とか ら, LHの
作用
に伴 う卵 丘 細 胞 の結 合 装 置 の 動 態 や, 卵 丘 細 胞 間 の構 造
の変 化 を 明 らか にす る こ とが, 減 数 分 裂 再 開 始 の機 構 解
明 の カギ とな る。
3.
減数分裂再開始の制御機構
A.
卵 母 細 胞 の減数 分 裂 の再 開 始 は, 性 腺刺 激 ホ ル モ ン,
と くに そ の1つ で あ る 黄 体 形成 ホ ル モ ン (luteinizing
hormone
; LH)
の刺 激 に よ り誘 起 され る^<63)>。
す な わ ち,
卵丘 の分化
卵 丘 細 胞 と卵 母 細 胞 は互 い に 突起 を 伸 ば し, 透 明帯 を
貫 通 して直 接 接 触 して い る^<26,27)>。
接 触 部 位 で は ギ ャ ップ
結 合 を 形 成 し, 低 分 子 物 質 に よる情 報 の交 換 が 行 な え る
ウサ ギ な どの 交 尾 排卵 動物 で は 交 尾刺 激 に よ り脳 下垂 体
構 造 にな っ て い る^<26,27)>。
また 卵 丘細 胞 ど う しも ギ ャ ップ
前 葉 か ら放 出 され るLHの
ピ ー クに 対 応 して 減 数 分 裂
結 合 で接 着 して い る^<26,27)>こ
とか ら, 卵 丘 細 胞 と卵 母 細 胞
の再 開 始 が観 察 され る^<64∼66)>。
ま た絨 毛 性 性腺 刺 激 ホ ル モ
は 低 分 子 物 質 の輸 送 あ る い は そ の利 用 の面 では 単 一 構 造
ン (human
投
と も考 え られ る。 こ の よ うな結 合 装 置 の 存 在 が, 卵 母 細
βサ ブユ ニ
胞 の 外 側 か ら卵 母 細 胞 に作 用 す る 因 子 の 機 能 発 現 を 容 易
chorionic gonadotropin
; hCG)
与 に よ って もそ の再 開 始 は誘 起 され, LHの
ッ トの 抗 血 清 の 投 与 に よ ってLHの
やLHの
作用 は 打 ち 消 され
る^<67)>。
さ らに, 性 腺 刺 激 ホル モ ンの減 数 分 裂 再 開 始誘 起
に して い る と の考 え が 有 力 とな っ て き て い る。
今 まで に同 定 され た 物 質 の 中 で, cAMPやcAMP増
作 用 は 卵胞 の 培 養 実 験 に よっ て も 確 か め られ て い る 。
強 因 子 な どは 結 合 装 置 を通 過 して卵 母 細 胞 に 作 用 し うる
LHサ
可 能 性 が あ る。 こ の こ とは, 減 数 分 裂 の 再 開 始 の誘 起 が
*2
ー ジ^<*2>の
見 られ た 前 後 の個 体 か ら卵 胞 を分 離 して
黄 体 形 成 ホ ル モ ン (LH)
に よ り支 配 され,
が 下 垂 体 か ら一過 性 に 大 量 に 放 出 さ れ る現 象 。LHの
放 出 は 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン放 出ホ ル モ ン (GnRH)
自然 排 卵 動 物 で は これ が 周 期 的 に 起 こる 。
1531
30
蛋 白 質
卵 母 細 胞 ・卵 丘 細 胞 複 合体
核 酸
(cumulus-oocyte
酵 素
Vol. 35
No. 9
(1990)
complex)
に お け る結 合 装 置 の 消 失 に よ る抑 制 因 子 の 移 動 阻 害 を 通
して も可 能 とな る こ とを も意 味 して い る。 減 数 分 裂 再 開
始 に際 して, LHの
作 用 を 受 け た 卵 丘 は 短 時 間 の うち に
急 激 な形 態 変 化 を 示 す^<73)>。
す なわ ち, 卵 丘 細 胞 の配 列 は
乱 れ, 卵 丘 細 胞 間 に 物 質 が 蓄 積 し, 卵 丘 は 膨 張 した よ う
す を示 す 。 卵 丘 の膨 張 に よ って 卵 母 細胞 の 物 質 取 込 み 能
は 著 し く低 下 す る^<74)>。
減数 分裂 再 開 始 に 伴 う突 起 や ギ ャ
ップ結 合 の動 態 を電 子 顕 微 鏡 で観 察 した り, ギ ャ ップ結
合 通 過 性 の 色素 (Lucifer yellow CH)
注 入実 験^<75)>に
より
検 討 した と ころ, 減 数 分 裂 の再 開始 を誘 起 した も ので は
突 起 が 退 縮 し, ギ ャ ップ結 合 も消 失 す る こ とな どが 観 察
され た^<76)>。
そ こで 問 題 とな るの は, い つ, そ の ギ ャ ップ
結 合 が 消 失 す るか とい う点 で あ る。
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こ の点 に 関 して 多 くの検 討 が な さ れ て きた が, 卵 母 細
胞 と卵 丘 細 胞 の間 に み られ る ギ ャ ッ プ結 合 の数 の 減 少 の
時期 につ い て は, 研 究 者 の 間 で 意 見 が一 致 す るに 至 って
い な い 。 ギ ャ ップ結 合 装置 の減 数 あ る い は 消 失 が, 減数
分 裂 の再 開 始 に先 行 す る^<77)>の
か, しな い^<78,79)>の
か は,
さ
ら に 検 討 を 必 要 と して い る。
一 方, 卵 丘 と顆粒 膜 細 胞 層 の構 築 に注 目 して観 察 す る
と, 減 数 分 裂 の再 開 始 に先 行 して そ の構 築 に 大 きな 変化
が 観 察 され る^<80)>
(図6)。 す な わ ち, そ の全 体 の形 態 を観
察 す る と, 性 腺 刺 激 ホ ル モ ンの作 用 を受 け た卵 胞 で は短
時 間 の うち に卵 胞 内 に 突 出 した 卵 丘 が観 察 され る よ うに
な る。 また, 顆 粒 膜 細 胞 層 と接 着 す る卵 丘 細胞 数 は, 性
腺 刺 激 ホル モ ンの作 用 を受 け る と急 激 に減 少す る 。 この
急 激 な 減 少 は減 数 分 裂 の再 開始, す なわ ち 卵核 胞 の 崩 壊
に 先 行 す る^<80)>。
ま た, 接 着 面 に お け る細 胞 の形 態 変 化 は
著 しい 。 さ らに こ の接 着 面 に は グ リ コス ア ミノ グ リカ ン
を主 体 とす る細 胞 間 物 質 の蓄 積 も顕 著 で あ る^<80)>。
この接
着 面 に お け るギ ャ ップ結 合 の観 察 はす す ん で い な い が,
全 体 的 な 組 織 構 造 の観 察 か らす る と, 性 腺 刺 激 ホル モ ン
の 作 用 を 受 け た 卵 胞 に おけ る接 着 面 に は相 対 的 に広 い問
源 が 認 め られ る よ うに な る こ とか ら, 減 数 分 裂 の再 開始
に 先 行 して 結 合 装 置 の数 は極 度 に減 少 す る も の と推 察 さ
れ る。 す な わ ち, 卵 丘 と顆粒 膜 細 胞 層 の接 着 面 に お け る
細 胞 数 の 減 少 や, そ の接 着 面 にお け る結 合 装 置 の減 数 が
減 数 分 裂 の再 開 始 に先 行 して観 察 され る。 筆 者 は この よ
図6. マ ウスの卵胞の組織構 築
性腺刺激ホルモン (FSH, LH) を投与す ると組織構築に 変
化が現われ る。FSHを 投与 する と卵 胞は大 きく発育す る。 こ
の ような卵胞 を グラーフ卵胞 とよぶ が, グラー フ卵 胞の中で卵
母細胞 はその周囲を卵 丘細胞 に取 り囲まれ, 卵 丘細胞は顆粒膜
細胞 に連続 している (A)。LHを
投与す る と卵母細胞は 卵胞
腔 内に突出する ようになる (B)。 突出 した細胞集団 (卵丘)
と顆粒膜細胞 層 とのつなが りはやや 不連続 とな り, 接 着面には
間隙 が認 め られる よになる。 さらに時 間が経過す ると卵核胞が
消える (卵核 胞崩壊) と ともに凝 縮 した クロマチンが観察され
る ようになる (C)。 卵 丘の細 胞は顆粒膜細胞 と明瞭に 区別 さ
れ る ようになる とともに, 卵丘 と顆粒膜細胞 層 との接 着面の細
胞 の配列は極 度に乱れ, 細胞間隙 は大 き く広がる。 この細胞間
隙 には グ リコスア ミノグ リカンが 蓄積す る。
うな 卵胞 構 築 の 特 定 の部 位 に 誘 起 され る構 造 変 化 が 制 御
機 構 を考 え る うえ で カ ギ とな る と思 って い る。
B.
卵 丘 の グ リコ ス ア ミノグ リカ ン
が よ り卵 母 細 胞 に そ の効 果 を発 現 しや す くな る^<48)>。
この
よ うな こ とか ら, 物 質 移 動 を 円滑 にす る な ん らか の 機構
分 子 量 か ら考 え てギ ャ ッ
が 卵 丘 の細 胞 間 に あ る と考 え られ る。 ま た卵 丘 細胞 間 に
プ 結 合 を通 過 す る とは 考 え られ な い が, 卵 丘 の あ る ほ う
グ リ コス ア ミノ グ リカ ンが 蓄 積 す る と, そ の物 質 輸 送 能
筆 者 らの分 離 したMAFは,
1532
卵 母細胞の減数分 裂の制御機構 31
力 が 阻害 され る と考 え られ る。MAFは
グ リコ ス ア ミノ
グ リカ ンに分 子 的 な親 和 性 を もつ が, と く にヘ パ リンな
る のか も しれ な い が,
い しヘ パ ラ ン硫 酸 に結 合 して そ の 活性 を 無 効 とす る^<50)>。
ら^<87,88)>は,
卵 丘 細 胞 のcAMPに
こ の よ うな こ とか ら, 性 腺 刺 激 ホ ル モ ンに 反 応 して, 卵
止 作 用 が あ る と 考 え て い る。 す な わ ち, 卵 母 細 胞 に は
丘 と くに卵 丘 と顆粒 細 胞 層 の 界面 に蓄 積 す る グ リコス ア
詳 細 は不 明 で あ る。 また
Dekel
cAMP産
卵 母 細 胞 の減 数 分 裂 休
生 能 は な い 。 卵 丘 細 胞 で 産 生 さ れ たcAMP
ミノ グ リカ ンが ヘ パ リン様 の もの で あ れ ば, 顆 粒 膜 細 胞
が 卵 丘 細 胞 と卵 母 細 胞 の接 着 部 位 の結 合 装 置 (ギ ャ ッ プ
で産 生 され たMAFの
結 合) を通 過 し, 卵 母 細 胞 へ 移 行 し, 減 数 分 裂 の再 開始
活 性 は 卵 丘 の ほ うへ 伝 達 され な
くな る と推 察 され る。 そ こで筆 者 は, 卵 巣 組 織 と くに 卵
を 抑 制 して い る。LHの
丘 の グ リコス ア ミノ グ リカ ン の分 子 種 を 問 題 と して い
し, cAMPの
る。 卵 巣 組 織 に はヒ アル ロ ン酸,
細 胞 はcAMPの
デル マ タ ン硫 酸,
Database Center for Life Science Online Service
過 性 の抑 制 因子 の 産 生 や 結 合 装 置 の 維 持 に 関 係 して い
コ ン ドロイ チ ン硫 酸,
ヘ パ リ ン様 因子 な どが 存 在 し, そ の
作 用 に よ りギ ャ ップ結 合 が 消 失
移 行 が 不 可 能 とな る。 こ の こ とに よ り卵 母
作 用 か ら解 放 さ れ て 減 数 分 裂 を再 開始
す る と い うも の で あ る。 こ の考 え は, 卵 丘 細 胞 のcAMP
多 くが 卵 丘 に も 分 布 して い る こ とが 明 らか に され て い
が ギ ャ ップ結 合 を通 っ て卵 母細 胞 へ 移 動 す る こ とや, ギ
る^<81,82)>。
卵 丘 の膨 張 につ れ て, ヒ アル ロ ン酸 や ヘ パ リン
ャ ップ結 合 がLHの
様 因子 の蓄 積 量が 増 加 す る^<83,84)>。
ヘ パ リンは 卵胞 細 胞 の
る こ と を前 提 と して い る。 この よ うな 前 提 に は, 最 近明
細 胞 膜 に親 和 性 を も っ て い る^<85)>こ
とか ら, 卵 巣 組 織 の ヘ
らか に な った 事 実 と相 違 す る 点 もみ られ る こ とか ら, さ
パ リ ン様 因子 は卵 丘 に も結 合 す る と考 え られ る。 事 実,
らに 修 正 が 必 要 と思 わ れ る。
ヘ パ リ ンは卵 丘 に多 く結 合 す る^<84)>。
C.
仮
b. LHが
説
影 響 に よ り卵核 胞 崩 壊 以 前 に消 失 す
卵 丘 と顆 粒 膜 細 胞 層 の 接着 面 ヘ グ リコ ス ア
ミ ノグ リカ ン を蓄 積 さ せ る
以上 述 べ て きた よ うに, 減 数 分 裂 の再 開始 は顆 粒 膜 細
筆 者 ら は顆 粒 膜 細 胞 か ら 減 数 分 裂 再 開 始 抑 制 因 子
胞 で産 生 され る抑 制 因子 に よ り抑 制 され て い る。 ま た,
(MAF)
この抑 制 はLHに
る^<89)>
(図7)。顆
よ り解 除 さ れ る。 この よ うな減 数分 裂
再 開 始 の誘 起 機 構 を解 くカ ギ はLHに
よ り誘 起 され る卵
を 同定 し, MAFを
中 心 に 考 え を 展 開 して い
粒 膜 細 胞 はMAFを
粒 膜 細 胞 表 層 に配 置 され る。MAFの
産 生 し, MAFは顆
作用は卵丘細胞 を
丘 の変 化 に あ る。 上 述 した よ うに減 数 分 裂 の 休 止 と再 開
通 して顆 粒 膜 細 胞 と卵 母 細 胞 とが接 着 す る こ とに よ り発
始 に は多 くの 因子 が 関 係 して い る。 そ れ らは相 互 に 関 係
現 して い る。 性 腺 刺 激 ホル モ ンの作 用 に よ り, 卵 丘細 胞
を も ち なが ら制 御 機 構 を成 立 させ て い る と思わ れ る が,
と顆 粒 膜 細 胞 層 の接 着 面 に グ リコス ア ミノ グ リカ ン, と
い まだ 同定 され た す べ て の因 子 を包 括 した 統 一的 な考 え
くに ヘ パ リン様 因 子 が 蓄 積 す る と, ヘ パ リン様 因 子 に よ
は な い。 同定 され た 個 々 の因 子 を 中心 に, そ れ ぞ れ の 研
ってMAFの
移 動 が 抑 え られ る と と も にMAFの
活性
究 者 が さ ま ざ ま な考 え を提 出 して い る。cAMP増
が 中 和 され る。 この よ うに して卵 母 細 胞 はMAFの
作用
強因子
につ い て は化 学 構 造 も 明 らか に され て い る が, LHが
ど
の よ うにそ れ ら の活 性 を 無 効 とす るか につ い て は 明確 で
か ら 解 放 され, 減 数 分 裂 を 再 開始 す る とい うも の で あ
る。
は な い。 しか しそ の他 の因 子 の研 究 の 中か らい くつか の
c.
仮 説 が 出 され て き て い る。 詳 細 な 点 につ い て は最 近 明 ら
MIFは顆
MIFとEGFに
よる制御
粒 膜 細 胞 に 同定 され,
体 外 培 養 下 で 卵 母細
か に され て きた 事 実 と一 致 しな い こ ともみ られ るが, 以
胞 の 卵 核 胞 崩 壊 抑 制 作 用 を示 す^<56)>。
性 腺 刺 激 ホ ル モ ンの
下 に そ の2,
作 用 はEGFを
a.
LHが
3を 紹 介 す る。
卵 母 細胞 と卵 丘 細 胞 の 間 の結 合 装 置 に影 響
する
Tsafriri ら^<86)>は
卵 胞 液 か らOMIを
分 離 し, OMIを
中
心 に考 え を 展 開 して い るが, 顆 粒膜 細 胞 で 産 生 され た
OMIは
介 して発 現 す る。 す な わ ち, 性 腺 刺 激 ホ
ル モ ンの 作 用 に よ り 卵 胞 内 のEGFの
作用発 現が 高 ま
り, EGFレ
セ プ タ ーの ア ン タ ゴ ニ ス トと して 機 能 して
い るMIFの
卵 核 胞 崩 壊 抑 制 作 用 を 中 和 す る とい うも の
で あ る^<60)>。
卵 丘 細 胞 を 通 して 卵 母 細 胞 に作 用 す る。LHは
卵 母細 胞 と卵 丘 細胞 の接 着 部 位 の結 合 装 置 を 消 失 させ る
こ とに よ り, OMIの
そ の結 果,
OMIの
え て い る。OMIも
卵母 細 胞 へ の 作 用 を 無 効 に す る。
お わ りに
減 数 分 裂 の 再 開 始 の機 構 に関 して も っ とも
作 用 か ら卵 母 細胞 は解 放 され る と考
よ く研 究 のす す ん で い る動 物 種 は ヒ トデ と思 わ れ る。 ヒ
そ の分 子 量 か ら して結 合 装 置 通 過 性
トデ に お い て脊 椎 動物 の脳 下 垂 体 か ら分 泌 され る性 腺刺
は な い と思 わ れ る。OMIは
卵 丘 に作 用 して結 合 装 置通
激 ホル モ ンに相 当す る ホ ル モ ンは, 神 経 (放 射 神経) 組
1533
32
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 35 No.
9
(1990)
ニ ンは卵 母 細 胞 め表 面 に 作 用 し, そ こ に存 在 す る1-メ
チル ア デ ニ ンの レセ プ タ ー^<92)>と
反 応 して卵 母 細 胞 内 に
MPFを
生 成 させ, こ のMPFが
卵核 胞 に 作用 して, そ
の崩 壊 を誘 起 し, 減 数 分 裂 を再 開 始 させ る^<93)>。
ヒ トデ に
お い て は哺 乳 類 で 同定 され て い る よ うな減 数 分 裂 再 開始
抑 制 因 子 は知 られ て い な い。 以 上 の よ うな ヒ トデ に お け
る減 数 分 裂 再 開 始 の機 構 は, カ エル や 魚 類 に お い て も 同
様 で あ る こ とが 確 か め られ て い る。 哺 乳 類 に お い て ヒト
デのGSSに
相 当す る性 腺 刺 激 ホル モ ンお よび卵 母 細 胞
内 で卵 核 胞 に作 用 す るMPFの
が, MISは
存 在 は 確 認 され て い る
い ま だ 同定 され て い な い。 哺 乳 類 に お い て
性 腺 刺 激 ホル モ ンは卵 母 細 胞 を減 数 分 裂 再 開 始 抑 制 因子
の作 用 か ら解 放 す る と考 え られ て お り, 減 数 分 裂 再 開 始
誘 起 機 構 の基 本 的 な点 に お い て考 え を異 に して い る。 哺
乳 類 で考 え られ て い る機 構 が特 殊 で あ る のか, い ま だ研
Database Center for Life Science Online Service
究 の進 展 が 不 十 分 で あ る のか, あ る い は相 互 に補 完 しあ
うも の で あ る のか, 今 後 の研 究 課 題 と考 え られ る。
文
献
(文献番 号を太字に した ものは特に 重要 な文献で あることを示す)
1)
Moens,
pp.
2)
P. B.:
1-17,
Brackett,
B.
Donawick,
3)
4)
5)
図7.
減 数分裂休止因子 (MAF)
の研 究の過程 で発表 し
た減数分裂 の休止 と再 開始の機構に関すう作業仮説^<89)>
細い矢印はMAFの
移動を表わ し, 太い矢印はMAFの
作
用 の方 向を示 しでい る。顆 粒膜細胞 で産生 されたMAFは
そ
の細胞周辺に配置 され る。卵丘細胞 と接触す ると, そ の作用は
卵母細胞に伝わ る (上)。性腺刺激ホルモ ン, と ぐにLHが 作
用す ると卵丘細胞周辺にヘパ リン様因子が蓄積 し, それに よっ
てMAFの
移動が抑 え られ る とともに活性 も中和 され る (下)。
このことに よ りMAFの 活 性は卵母細胞に届かな くなる。す な
わち卵母細胞は卵丘細胞周 辺のヘパ リン様 因子 に よってMAF
の作用か ら解放 され る。
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; GSS)
で あ る^<90)>。GSSは 卵 巣 内 の
卵 母 細 胞 を 取 り囲 む 卵 胞 細 胞 に 作 用 し て,
誘起物質
(maturation-inducing
(gamete-
substance
成 ・分 泌さ せ る 。 ヒ トデ に お け るMISは,
; MIS)
を生
1-メ チ ル ア
デ ニ ン で あ る こ と は よ く 知 ら れ て い る^<91)>。1-メチ ルア デ
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