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特集 阪村機械製作所 100216.indd

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特集 阪村機械製作所 100216.indd
ねじ製造技術の進歩
阪 村 芳 一
㈱ 阪村機械製作所
ねじは自然発生のものであり、紀元前 287 ∼ 212 年にアルキメデスが「ね
じ」揚水器を発明してから、人類の「ねじ」製造技術の進歩が始まった。
大きく普及したのは、鉄砲の発明による「尾栓のねじ」である。本稿では、
ねじの歴史及び製造技術の進歩を概説する。
1.はじめに
“ねじ”の原点は何かというと、実は水素原子「H」
状況ができてきた訳である。何十億年も前に、宇宙
ハイドロゲンで原子番号 NO.1 の元素である。水素
からの贈物としての隕石が当社に飾ってある。
原子は陽子・中性子・電子でできている。ボルト・
“ねじ”はビックバン以来の爆発のスパイラルの
座金・ナットは同じ構成である。原子が結合して分
渦巻が原点となっている。
子となり、自己複製機能をもった DNA で人間の体
フランスでは、自然界に発生した渦巻状植物「ツ
を含め、すべてつながっている。
タ」を「ビス」と発音して“ねじ”を表している。赤ちゃ
百五十億年も前に宇宙がビックバンで大爆発し、
んからだんだん大人に成長してくると声や顔が親に
爆発物の引力で、飛び散らずに大宇宙に放射線上
似てくる。それと同様でいくら嫌だといっても、遺
に拡がり、スパイラル状に銀河系が形式され、その
伝子の法則で、七十兆の遺伝子が体中に活動し、顔
ひとつに太陽系が出現、他の星とともに地球もクル
や形ができる様に私達人間は、自分の力で生きてい
クルとねじのように太陽の回りを回る軌道をつくっ
るのではない。御先祖様の DNA 力で生かされてい
た。決して神の意思でなく、理論でこういう宇宙の
るのである。
2.ねじの歴史
「ねじ」は紀元前より機械要素として人類に貢献
していた。紀元前 287 ∼ 212 年にアルキメデスは「ね
じ」揚水器を発明し、水車を用いて水の汲み上げに
成功している。1450 年には、ヨハネス・グーテン
ベルグが「ねじ」を用いて活版印刷機を発明し、神
は教会にいるのではなく、「皆さんの心の中にある」
と聖書を印刷物にして宗教革命を引き起こし、「お
ねじ」の力を示した。
しかし、大きく全世界に普及したのは、鉄砲の発
明による“尾栓のねじ”であった。日本では 1953 年
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SOKEIZAI
Vol.51(2010)No.2
図 1 ヨハネスの「ねじ」活版印刷機
特集 ねじ製造技術の進歩と動向
に種子島に漂着した“ポルトガルの鉄砲”が最初で
あり、堺にて尾栓ねじの量産が始まった。
1851 年ねじ転造機が英国で発明され、1928 年昭
和天皇の即位式に眞島安太郎氏が天覧に供している
等、色々な人たちの努力によりねじは今日の発展を
むかえているのである。
図 2 めねじの製造法
図 3 ねじ転造機械と製作された色々なねじ
3.フォーマーの誕生
ボルトのブランク圧造は 2 度打ちヘッダー(ダブ
て加工硬化を与え、頭部を圧造し均一な加工硬度を
ルヘッダー)を主として用いていた。
与えられる。
1955 年 に 阪 村 機 械 に て 短 軸 サ ポ ー タ ー つ き
図 5 に示すとおり、ダブルヘッダーでは軸部が素
“フォーマー”が発明され図 4 に示すとおり、フォー
材のままなので、頭部のみが加工硬化し、不安定な
マーでは多段圧造工程が計られるため、軸部を絞っ
ボルトブランクの成形となる。
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図 4 フォーマーにて加工した均一な加工硬化の
ボルトブランク 図 5 ダブルヘッダーにて加工した不安定な
ボルトブランク 4.メカ機構による閉塞鍛造金型の開発
フォーマーで加工した均一なボルトブランクで
ピードが 30 本 / 分に対し、メカの場合は 120 本 / 分
も、ねじを施すと最初のねじ谷の切尖部に集中応力
と 4 倍以上の高速化が計られるため低コストボルト
がかかり破断する。そのため切削加工にて図 6 に示
ブランクの圧造成形に採用された。
すように加工をしていた。
図 7 はメカ式閉塞鍛造法によるボルトブランクの
この切削工程を除去し、ファイバーフローを切ら
圧造成形図である。
ずに塑性加工する方法として、メカ機構をもった閉
このメカ式閉塞鍛造金型は図 8 に示すトリポード
塞鍛造金型を阪村機械にて発明した。
等の自動車部品の圧造にも用いられている。
従来の閉塞鍛造は油圧を用いていたため圧造ス
図 6 ねじ部の集中応力を除去したボルト
図 8 トリポードを圧造成形するメカ式閉塞鍛造金型
図 7 メカ閉塞鍛造によるボルトブランク成形図
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Vol.51(2010)No.2
特集 ねじ製造技術の進歩と動向
5.ねじブランクを成形するフォーマーの応用
フォーマーの特徴は、多段工程如に各ステーショ
社ではねじ転造を組み合わせた FR フォーマーを開
ンを分けて塑性加工を施せることである。図 9 は色々
発した。
な塑性加工とその組み合わせたイラストである。当
図 9 色々な塑性加工法
6.FR フォーマーの誕生
FR フォーマーは色々な塑性加工を組み合わせて
最終工程で“ねじ”転造加工を正確に行う機械であ
る。最大の特長はセットスクリュー、スタッドスク
リュー等の頭部が成形されてないブランクを毎分
200 本以上のスピードでねじを転造できる点にある。
ノックアウトでの飛び出しがなく、ねじ転造が
終った時点にて、品質検査が施され、良品のみが排
出される。図 10 は切断、圧造、転造、検査の工程図
である。
図 10 FR フォーマー(切断、圧造、転造、検査)
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7.FR フォーマーの応用
FR フォーマーは据付面積が少なく、下記の長所
面方向からの加工を行いながら、ねじ転造も行うと
をもっている。
いう画期的なアイボルト FR フォーマーである。
①中間在庫がないので省スペースを実現。貴重な
経営資源である空間を有効に生かせる。
②圧造と転造をフォーマー内で同期加工するの
で、コンベアーやシュート、ホッパーでの詰ま
りや落下がなく、安心して無人生産が行える。
③圧造時に発生した変形熱を自然放熱することな
く直ちに転造するため、熱変位による不良が発
生する心配がない。
図 11 は従来機との据付スペースの対比である。
FR フォーマーにて熱処理まで完結されるシステム
が阪村機械で発明された。図 12 はそのシステムの図
である。テンパー温度にて熱処理後転造が施される
ため、脆性の向上、遅れ破壊の防止の創造等と強力
なボルトが誕生した。そのテスト結果を図 13 に示す。
写真 1 は 90 ターン金型を阪村機械は発明し、側
写真 1 90 ターン金型を用いたアイボルト用 FR フォーマー
図 11 従来機と据付スペースの対比
図 12 ボルト成形と同時に熱処理加工を施せる FR フォーマー
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特集 ねじ製造技術の進歩と動向
図 13 脆性の向上と遅れ破壊の防止のテストデータ
8.超高精度フォーマー
素材に塑性加工の負荷をかけると、負荷の大小が
図 14 は C の各金型と B のパンチがロボットにて
そのまま熱エネルギーに変わる。
上下に脱着され、そのため F の打痕防止コンベアが
熱は金型の膨張と共に、クーラントオイルの化学
金型に密着して設けられる。
反応から超高精度にボルトブランクができあがらな
また、自動制御機能をもった温度計は、金型内部
い。そのため阪村機械では写 真 2 に示すように角金
の温度まで測定表示する。
型を発明し、各ステーションごとにクーラントオイ
ルにて金型温度管理を行った。
写真 2 各工程に分けられた角金型
図 14 角金型が上下に脱着されるため、密着して
設けられた打痕防止コンベア F 9.ナットフォーマーの発明(タッピングフォーマー)
当社では色々なナットにタッピン
グ加工まで施して完成品として排出
するナットフォーマーを発明した。
図 15 は M 6 のナットの完成まで
の工程図である。
ナットの製造ラインは図 16 のとお
り約半分に縮小される。
図 15 M6 のナット。完成までの成形工程図
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図 16 ナット製造ラインの比較
10.まとめ
ボルト、ナットのねじ製品生産システムについて
今年の 4 月にドイツにて開催される見本市には 10
最近の進歩と総論について述べたが、我々機械メー
秒にて段替えができるフォーマーを出品予定であ
カーはまだまだ開発すべき問題がある。
る。1 秒でも早くとねじ機械の段替えについて努力
図 17 はワッシャー、ナット、ボルトのスクラップ
を行い、業界に奉仕いたしたく思っている。
レスにて圧造する方法を示しているが、100 セット
でも 200 セットでも微量、多品種の生産をこの方法
で行わなくてはならない。
図 17 ワッシャー・ナット・ボルトをスクラップレスにて圧造する方法(PAT.P)
株式会社阪村機械製作所 〒 613 - 0035 京都府久世郡久御山町下津屋富ノ城 46
TEL. 0774 - 43 - 7007 FAX. 0774 - 44 - 5190 http://www.sakamura.org 8
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