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キャプティブ保険
別添資料2 キャプティブ保険 沖縄県名護市 国際情報通信・金融特区推進室 -1- 目 次 3 1. キャプティブとは 2. キャプティブの歴史 3. 海外におけるキャプティブの現状 4. 国内企業のキャプティブ設置状況 5. キャプティブのメリット 6. キャプティブを利用している日系企業へのヒアリング 5 6 8 10 13 (参考資料) 資料1 世界のキャプティブ設立地の最低資本金等一覧表 16 資料2 『金融テクノロジー開発特区におけるキャプティブの規制並びに監督体制 18 資料3 キャプティブ保険に関する経済波及効果 22 -2- 1. キャプティブとは 「キャプティブ保険会社」とは、「親会社が所有する専属の保険子会社」をいう。 キャプティブ(captive)とは「捕らわれの」、「捕虜の」、「支配下に置かれた」という 意味である。保険で使われる場合は、「親会社専用の」もしくは「専属の」という 意味で使われている。 図1 キ ャ プ テ ィ ブ 保 険 会 社 (保 険 子 会 社 )の 実 例 ( 1 9 9 5 年 決 算 : シ ン ガ ポ ー ル ) シンガポ ー ル 国 内 保 険 料 :5億 円 (推 定 ) 親 会 社 (商 社 ) 国 内 の 保 険 会 社 保 険 料 : 1億 2千 万 円 支 払 い 保 険 金 : 2千 4百 万 円 -3- 子 会 社 (キ ャ プ テ ィブ 保 険 会 社 ) 設 立 : 1986年 資 本 金 :1 0 億 2 千 万 円 1995年 利 益 :約 2 千 万 円 (1) 元受キャプティブの場合、保険会社を通さず直接企業から保険契約を引き 受ける(図2)。 (2) 再保険キャプティブの場合、保険会社は被保険者(企業)から引き受けた 保険の一部をキャプティブ保険会社に委託し、キャプティブ保険会社は保 険会社からの契約の一部を再保険として引き受ける(図3)。 さらに、キャプティブ保険会社は自らのリスクマネジメントのために必要なリス クヘッジ(再保険)を手配していく。引き受けた保険契約の事故が少なければ、 キャプティブ保険会社には保険引き受け利益が発生する。 図2 元受キャプティブ :直接企業からの保険契約を受ける。 元受保険料 企業 (元受契約) 再保険料 キャプ (再保険契約) ティブ 保険金支払 再保険 会社 再保険金回収 会社運営の業務委託(再保険の手配等) キャプティブ・ マネジメント会社 図3 再保険キャプティブ :元受保険会社からの再保険を引き受ける。 再保険料 元受保険料 企業 (元受契約) 元受保険会社 保険金支払 (再保険契約) 再保険 キャプティブ 再保険金回収 会社運営の業務委託(再々保険の手配等) キャプティブ・ マネジメント会社 再々 保険金回収 再々 保険料 再々保 険会社 -4- 2. キャプティブの歴史 ・1950 年にバミューダにて免税会社法(Exempted Companies Act)の下で「キャ プティブ」が法人化された。 ・1960 年代後半から有利な立地条件や規制・租税環境のもと米国企業を中心と した多数のキャプティブ保険会社が創設された。 ・1980 年代半ば頃、米国では損害責任訴訟の激増と賠償判決額の急騰により、 巨大多国籍企業でさえも賠償責任保険の引受が困難になった。そこで、巨大 企業34社が出資し自身のリスクのみを引き受けるキャプティブ(エース損害 保険)を作った。 ・ 1992 年の米国フロリダ州を襲ったハリケーン・アンドリューの損害により、自 然災害リスクの引受市場のキャパシティは減少し、再保険料が高騰した。米 国中心としたブローカー、投資家、再保険会社により財物異常災害再保険の 引受に特化した新会社が設立された。 ・ また、保険会社だけでは十分ではない引受能力の解消策として、保険リスク を証券化したあらたなノウハウも見いだされ、保険と金融の融合が本格化す ることとなった。 -5- 3. 海外の現状 キャプティブは、規制緩和の進んだ欧米において大手企業の80%以上が活 用している。日系のグローバル企業が海外において、キャプティブを活用してい る。 全世界におけるキャプティブ保険会社は約 4,500 社(表1)あり、その保険料収 入は全世界の企業分野保険料の 20%以上、約 2 兆円(表2)に達している。そ のほとんどは、英領バミューダ島やシンガポール、アイルランド、ハワイ等の 国々に設立され、欧米大企業の自社内リスクマネジメントツールとして大いに活 用されている(表3)。 表1 全世界キャプティブ数 19 82 19 年 83 19 年 84 19 年 85 19 年 86 19 年 87 19 年 88 19 年 89 19 年 90 19 年 91 19 年 92 19 年 93 19 年 94 19 年 95 19 年 96 19 年 97 19 年 98 19 年 99 20 年 00 20 年 01 年 5,000 4,5114,628 4,278 4,500 3,966 3,795 4,000 3,600 3,397 3,500 3,1503,175 3,006 2,7602,794 3,000 2,603 2,458 2,500 1,998 1,796 2,000 1,599 1,500 1,0891,1431,261 1,000 500 0 Captive Insurance Company Directory より抜粋 -6- 表2 キャプティブ市場規模 兆円 14.00 12.00 10.00 8.00 6.00 4.00 2.00 0.00 12.48 9.40 3.00 1.40 1.40 1.80 9.90 10.40 4.50 4.10 1.90 1.80 1995年 1996年 1997年 5.40 4.50 2.10 総収入保険料 投資資産 資本および剰余金 1998年 1999年 Captive Insurance Company Directory より 抜粋 表3 381 370 273 237 184 178 173 73 54 ケ ミュ ー ダ イ マ ン バ 島 ー モ ン ト州 ガ ー ル ン ジ ク ー セ ブ ン リ ブ テ ル ィッ グ バ シ ル ュ バ ・バ ドス ー ジ ン 諸 ア 島 イ ル ラ ン ド マ ン 島 ハ ワ シ イ 州 ン ガ ポ ー ル 1,600 1,405 1,400 1,200 1,000 800 535 600 400 200 0 バ 件数 主要設立地別キャプティブ数 設立地 (Best's Captive Directory 2001 年版) -7- 4. 国内企業のキャプティブ設置状況 日系企業の約 80 社が海外においてキャプティブを設立している。新しいリス クマネジメントの手法として注目はされているが、国内においてグローバルなキ ャプティブ保険会社が設立できないため、現在の日本の経済規模から妥当とさ れている 1,000 社にはほど遠い現状となっている(表4)。 規制緩和の進んだ欧米では、大手企業の80%以上が活用しているキャプティ ブであるが、まだ日本ではキャプティブの特徴や優位性がフルに生かされてい ない現状にある。最近では国内でも危機管理(リスクマネジメント)の意識を高め ている企業が海外にキャプティブを設立し、保険業務に乗り出している(表5)。 表4 キャプティブ数および経済規模・比較 アメリカ・日本・英国の GDP 比 アメリカ・日本・英国のキャプティブ数 1,400 5,000 1,295 4,500 4,500 1,200 4,000 1,000 3,500 3,000 (社) (兆円) 800 619 2,400 2,500 600 2,000 1,500 400 1,000 184 200 500 500 77 0 0 アメリカ 日本 英国 全世界 -8- アメリカ 日本 英国 表5 キャプティブを保有している主な日本企業 No. ドミサイル 企業名 バミューダ トヨタ自動車ディ-ラ-、サントリ-、神原汽船、東京海上、 ニッセイ同和損害保険、損保ジャパン、藤沢薬品、 スバル自動車、川崎汽船、ナビックスライン、 本田開発/本田自動車、三菱商事、大阪商船三井船舶、 ソニ-株式会社、三井住友海上火災保険、商産、 近畿日本ツーリスト、住友商事、日本石油、 トーメン株式会社、ブリジストンタイヤ シンガポール 丸紅、オリックス、出光興産、アルプス電気、三井物産、 ヤマハ発動機、住友商事、住友化学工業、日本航空、 花王、エプソン、東急観光、日商岩井 3 アイルランド 東京海上、日本煙草、武富士、日立、東燃、 ジャパンエナジ-、三井住友海上火災保険、三井物産、 日本航空、横河電機 4 ハワイ 近畿日本ツーリスト、平和株式会社、米国日産自動車、 京屋(ハワイ)、米国矢崎総業、シテイズン時計 5 ガーンジー 6 マン島 7 ラブアン 8 ルクセンブルグ 9 バーモント トヨタ自動車、川崎モーター 10 アリゾナ州 日産自動車 11 ケイマン 12 香港 伊藤忠商事 13 アイオア州 トヨタ自動車 14 スイス 1 2 損保ジャパン、日本海洋掘削、日新火災海上保険、 サンスタ-、全日空、東京電力 商工ファンド、日本郵船 日本旅行、東京海上 コスモ石油、大阪商船三井船舶 東京海上 ピツァーラ -9- 5. キャプティブのメリット (1)分散されたポートフォリオの構築 企業は火災リスク、賠償責任リスク、労災リスク等の多種多様なリスクをかか えている。関連の小さいリスクをキャプティブに出再することにより、分散効果が 十分図られたポートフォリオが構築できる。 一般的に、小規模施設・設備を多数抱えている、海外進出している、あるいは、 多角経営を進めているなど、企業の多様なリスクを抱えているほど、分散効果 が効いたポートフォリオの構築を期待することができる。 従って、安定した損害率により、保険料の安定化も図られる。 図4 キャプティブのリスク負担能力を 超える部分については、再々保 険などでヘッジ 火 P 災 キャプティブでリスク負担する ポートフォリオ 賠 労 償 災 L 個々のリスクに対する 保険カバー - 10 - (2)キャッシュフローの向上 従来、保険会社に支払われていた保険料を自社子会社であるキャプティブに 還流させることにより、グループ内に資金を内部留保させることが可能になり、 グループ内キャッシュフローの向上が図られる。さらに、損害発生の状況如何に よっては、アンダーライティング収益(支払事故が予想より少なかった場合に得 られる収益)、運用益(保険料を運用して得られる収益)を挙げることができる。 図5 再保険 再保険 キャプティブ キャプティブ 元受 元受 保険会社 保険会社 保険料:1 億円 保険料:3,750 万円 保険金額:10 億円 3,750 万円 50% 再々 再々 保険会社 保険料:2,750 万円 出再限度額:5 億円 比例 再保険 5 億円 xs 1 億円 2,750 万円 2,750 万円 2,750 万円 2,750 万円 3,750 万円 ( Q/S ) 出再 1,000 万円 1,000 万円 超過損害額再保険 1,250 万円 1,250 万円 手数料 25% 手数料 25% 親会社への配当および 剰余金として積立 5,000 万円 - 11 - (3)保険料の安定化と入手困難な保険の確保 保険市場は、需要と供給、市場全体の保険成績推移などによって大きく変動 し、ソフト化(保険料の低減)、ハード化(保険料の高騰)を繰り返す。平常時にお いても企業ニーズを満たす保険が必ずしもすべて保険市場から入手できるわけ ではなく、ハード・マーケットの状況下では、これまで市場から入手できた保険の 購入が不可能となることや、料率の高騰により入手が困難になることがある。そ こで、企業が共同で資金を出し合い、市場で入手不可能な保険を得る目的でキ ャプティブを設立することがある。 また、企業のリスクの中には、通常の手法では保険会社が引き受け困難なも のがある(リコール、生産物賠償等)。そのようなケースでは、結果的に、企業が リスクを自己負担することが求められ、企業経営にとって重要な不確定要因とな る。そこで、キャプティブを活用することにより、海外再保険マーケットへの直接 的なアクセスを確保し、企業の自己責任の下、自社で抱えるリスクの実態に応 じた保険を入手することが可能となる。 (4)企業のリスクマネジメント情報の蓄積と統合化 日本企業の場合、本来統合されているべきリスク情報が社内のあちらこちら に分散しているケースが常態で、キャプティブの設立を通じて、当該企業の保有 するリスクと保険等により移転するリスクの情報を統合化できるメリットは、経営 の近代化・合理化が求められている現在、決して無視できない意義がある。 (5)ロスコントロールマインドの醸成 リスクマネジメント情報の統合化により、過去の損害がどれだけ発生し、保険 金がいくら支払われたかを分析できるようになると、損害の発生を防止・低減さ せるロス・コントロールマインドが醸成される。ロス・コントロールは、ソフト・ハー ド両面の防災活動(※)、製品・サービスの安全向上に始まり、ひいては業務分 野そのものの取捨選択など、広く企業活動にかかわってくる。発生損害の防止 や低減、リスクコストの節約、ひいては企業活動そのものの指針策定などにつ なげることができる。 (※)防災訓練を定期的に行うことや、消化設備(スプリンクラー、消火栓等) の点検・整備等により、損害の発生を最小限に食い止める。 (参考文献・資料) 1.再保険研究会「本邦および海外主要国における再保険事業の概要ならびに規制の動向」 03年6月 財団法人 損害保険事業総合研究所 2.「新しいリスクマネジメント」 株式会社 損害保険ジャパン HP(http://www.sompo-japan.co.jp/) - 12 - 6. キャプティブを利用している日系企業へのヒアリング 既にキャプティブを所有している大手5社について、キャプティブニーズについて 下記の通りヒアリングを行った。 要旨 1.日本企業のキャプティブニーズは、根強いものがある。 → 大手電力会社のキャプティブ設立は、日本企業の間でも話題になっており、他 企業が追随する可能性もある。 2.日本企業は、リスクマネジメントのためにキャプティブを活用しようとしている。 → 内外保険料の差を抜く従来型のキャプティブから、設立理由が変わってきた。 3.シンガポール、ダブリンの法人税が25%以下となったため沖縄が注目されている。 → すでに、他に移転したキャプティブ、もしくは移転を検討しているキャプティブが ある。沖縄も制度が整えば代替地となりうる。 4.日本企業は、沖縄に期待しており、制度が整えば真剣に検討するとしている。 → キャプティブに関連する制度が整うのが検討の大前提。 5.キャプティブの管理については、国が管理することを望む企業もあり、沖縄県・名護 市の管理を希望する企業もある。 ① キャプティブの動機は? ・ 米国の生産物賠償責任保険をキャプティブを利用し手配するために設立。 ・ リスクマネジメントの有効な道具としてキャプティブを活用していく。キャプ ティブの利益のみを狙っているわけではない。 ・ 保険料コスト引き下げ。 ・ 将来的に、キャプティブの活用により、新しいタイプの保険を考えていきた い。たとえば、未付保リスク・特殊リスク(例えば環境汚染賠償責任など)に 対し、キャプティブを活用し対応するなど。 ② 「金融特区」でキャプティブが可能となった場合、金融特区でのキャプティブ設 立を検討されますか? →全社、「検討する」との回答。主なものとして以下のような意見があった。 ・ バミューダなみのインフラ・条件が整うならば、本格的に検討する。 ・ キャプティブは制度として、しっかりしていることが前提。「キャプティブは、 - 13 - 規制がないから、自由にできる」といったような「裏技」的なやり方ではなく、 しっかりした制度の下で検討したい。 ・ 名護のキャプティブに対する法律・規制等の前提条件がはっきりすること が必要。 ・ 中長期的に考えても、近いところがいい。(沖縄は近い) ・ 金融庁からの「特定の者を対象とするキャプティブはいまでもできる」という 回答は知らなかった。これを知っていたら、沖縄を選んでいただろう。元受 キャプティブなら問題ないし、これを沖縄につくることは、有効だと思う。 - 14 - 参考資料 資料1「世界のキャプティブ設立地の最低資本金等一覧表」 資料2「『金融テクノロジー開発特区』における キャプティブの規制並びに監督体制」 資料3「キャプティブ保険に関する経済波及効果」 沖縄県名護市 国際情報通信・金融特区推進室 - 15 - 資料1 世界のキャプティブ設立地の最低資本金等一覧表 No. キャプティブ設立地 1 バーモント州 VERMONT 2 ハワイ州 HAWAII 3 ニューヨーク州 NEW YORK 4 5 ダブリン DUBLIN シンガポール SINGAPORE 6 スイス SWITZERLAND 7 ルクセンブルグ LUXEMBOURG 8 バミューダ BERMUDA 9 ガーンジー GUERNSY 最低資本金等 資本金に関する規定 最低資本金額: ピュアキャプティブ:US$250,000(30,250,000 円) 最低資本金額: ピュアキャプティブ US$250,000(30,250,000 円) (全額、州保険委員会委員長による承認要) 最低資本金額: US$250,000(30,250,000 円) 最低資本金額: 元受:EUR2,000,000(260,000,000 円) 再保:EUR635,000(82,550,000 円) 最低資本金額: S$400,000(27,600,000 円) ソルベンシー: ・ 会社マージン:株及び内部留保に対して最低 S$400,000 ・ 保険ファンド・マージン:プラスの資金内部留保 最低資本金額: CHF1,000,000(89,000,000 円) 組織資金が資本の 20%~50%で最低額 CHF 200,000 ソルベンシー: 20% 再々保険料のみ 50%までソルベンシー・マージン算定目的 のため控除される。 最低資本金額: EUR1,225,000(159,250,000 円) ソルベンシー: 10% 最低資本金額: B$120,000(14,520,000 円) ソルベンシー: ・B$6,000,000 まで未満は 保険料:資本比率=5:1 ・B$6,000,000 以上 保険料:資本比率=10:1 最低資本金額: £100,000(19,600,000 円) ソルベンシー: 最初の£5,000,000 まで純保険料の 18% それ以上は 16% - 16 - 10 マン島 ISLE OF MAN 最低資本金額: 一般 :£150,000(29,400,000 円) 再保険:£100,000(19,600,000 円) 元受 :£50,000(9,800,000 円) ソルベンシー: 「自己保有リスク」£50,000 以上 £2,000,000 まで純保険料の 10% それ以上は 5% (ご注意)為替については以下のレートを使用した。 ・ 1£=196 円 ・ 1S$ =69 円 ・ 1US$=121 円 ・ 1EUR =130 円 ・ 1B$=121 円 ・ 1CHF =89 円 - 17 - 資料2 「金融テクノロジー開発特区」におけるキャプティブの規制並びに監督体制 1. 準拠法:地方公共団体等の定めるところによる。 (1) 最低資本金額:3,000 万円とする。 (2) ソルベンシーマージン:資本金+剰余金の合計が次のいずれの額も上回ることとする。 ① 正味保険料の 20% ② 支払準備金総額の 15% 2. 目的 ・海外に設立されたキャプティブを我が国に呼び戻す。 ・新設キャプティブの受け皿となる。企業のリスクマネジメントに寄与する。 3. 具体的監督方法 (1) 監督官庁:地方公共団体等。 (2) 監督組織:①、②、⑤、⑥は行政。③、④は民間+行政。 ① 監督局長:1名。 ② 事務局長:1 名。実務責任者。 ③ 諮問委員会:事務局長に対する支援を行う。 (10 名~15 名程度。キャプティブ関連の専門家、関係者を構成員とする委員会。 マネジメント会社、会計事務所、法律事務所、銀行他、関係機関。) ④ 認可委員会:上記諮問委員会の下部機関。キャプティブ設立の認可の可否について、 意見具申を行う。(5 名~10 名程度。諮問委員会との兼任。 ) ⑤ 審査グループ:キャプティブ許認可の担当。通年の監督、毎年の届け出審査の担当。 ⑥ 開発グループ:キャプティブ関連の、研究、調査を行う。キャプティブドミサイル としての発展に貢献する。 ⑤ ① 監督局長 ② 事務局長 ③ Advisory Committee (諮問委員会) ④ Admission Committee(認可委員会) 審査グループ ⑥ - 18 - 開発グループ キャプティブ保険会社に対する監督・規制 1.バミュ-ダ 準拠法:Insurance Act 1978, Segregated Accounts Act 2000 監督官庁:大蔵大臣(Minister of Finance)/ 会社登録官(Registrar of Companies) バミュ-ダ金融庁(Bermuda Monetary Authority) 保険監督官(Supervisor of Insurance) 諮問・勧告機関:保険諮問委員会(Insurance Advisory Committee) 保険法の下では ROC を主たる監督権者と定めていた。その後の法改正により保険業に対 する監督責任と権限は MOF から独立の政府機関である BMA(金融機関の安定と健全性促 進を目的に 1969 年に設立)に移管され、それに伴い BMA は金融サ-ビス分野に関する全 面的な監督権限を付与される事となった。バミュ-ダ政府の方針は、保険業界の自律的運 営にあり、立法面にもその影響が現れている。 なお、保険者の認可や規制面での業務を統括する責任者として SOI が任命され、BMA 取 締役 11 名に含まれている。更に、MOF/BMA に対する諮問・勧告機関として保険業界、専 門家、政府機関で構成する IAC が任命され、その下部委員会はバミュ-ダ法と保険実務面 を定期的に点検し勧告を行う。特に、保険認可委員会(Insurance Admission Committee) の役割は重要であり、保険者の新規登録申請の審査の為、毎週会合を持つ。 キャプティブ保険会社の設立に関する許認可権限 Minister of Finance (MOF) ― Registrar of Companies (ROC) ― Bermuda Monetary Authority (BMA) ― Supervisor of Insurance (SOI) 事前申請書の受理,登録証明書の発行 ― Insurance Advisory Committee (IAC) 事前申請書の審査 会社名の登録,設立証明書の発行 正式申請書の受理,承認 - 19 - 2.ガ-ンジ- 準拠法:Insurance Business (Guernsey) Law 1986 Protected Cell Companies Ordinance 1997 Guernsey Financial Services Commission 監督官庁:ガ-ンジ-金融サ-ビス委員会 保険局 Insurance Division 組織図 長官 保険局長 保険局次長 キャプティブ保険 PCC 国内保険 生命保険 ガ-ンジ-の金融業務は、1987 年の金融サ-ビス委員会法に基づき設立され 1988 年に 業務を開始した GFSC によって監督されている。委員会の法的役割は保険業法の管理運営 にあり、ガ-ンジ-の金融センタ-としての評価を守り高める為の規制実施をその任務と する。保険業の規制は、業界自体の自己規制に重点を置き、特にオフショア-(キャプテ ィブ)保険者への規制は主として彼らのマネジャ-を通じて行われる。保険局長は保険者 の代表者との定期的接触を通して彼等の事業運営が委員会の方針、基準に合致しているこ とを確認することが出来る。 保護セル保険会社 PCC は、通常のキャプティブ保険会社と同様 - 20 - GFSC により監督される。 3.ラブアン 準拠法:Offshore Insurance Act 1990 監督官庁:ラブアンオフショア金融サ-ビス庁 Labuan Offshore Financial Services Authority (LOFSA) LOFSA はラブアンオフショア金融サ-ビス庁法に基づき、独立の監督機関として設立され、 1996 年 3 月に活動を開始した。その目的は、ラブアンをオフショア金融サ-ビスセンタ- として開発、促進すること、秩序ある開発の為の国家目的、政策および重点策とオフショ ア金融サービスの管理、運営を発展させることにある。LOFSA はその機能を果たす為に必 要な凡ての事を履行する権限を与えられている。 LOFSA 組織図 金融サ-ビス庁 長官 事務局長 マーケティング・コミュニケーション部 政策・事業開発部 経営管理部 会社登録課 行政部 金融サービス課 情報テクノロジー課 - 21 - 資料3 キャプティブ保険に関する経済波及効果 企業がキャプティブを活用し、リスクマネジメントを行うことについて我が国は、欧米 諸国に比べて遅れている。そこで、先進的地域の規制や監督を参考に我が国独自の規制や 監督の方法を採用し、キャプティブを制度化することは、我が国企業のリスクマネジメン トの向上に大きく貢献できる。また、国内において資本が蓄積され、我が国企業の競争力 ひいては金融経済の再生に大きく寄与するものと考える。 ここでは、はじめにキャプティブ保険制度が我が国で認められた場合のキャプティブ数 および雇用者数を算定し、続いて国内におけるキャプティブ保険の市場規模の予測、さら に沖縄県内キャプティブ保険に関する経済波及効果を算出する。 1. キャプティブ数および雇用者数の算定 ○全世界で米国企業のキャプティブ数は約 2,400 社と推計される。 GDP(国内総生産)比較で、日本は米国の約 1/2 であり、GDP比率でキャプティブが 設立されると考えると、1,200 社のキャプティブが日本企業によって設立される。 5,000 4,500 1,400 4,500 1,295 1,200 4,000 1,000 3,500 (兆円) (社) 3,000 2,400 2,500 2,000 1,500 800 619 600 400 1,000 500 500 77 0 0 全世界 アメリカ 日本 英国 アメリカ 世界のキャプティブ数(2000 年) ※ 184 200 日本 英国 経済規模(国内総生産 2000 年) 日本は海外に保有する日本企業のキャプティブ数 ○ 全世界で英国企業のキャプティブ数は約 500 社と推計される。 経済規模は、日本は英国の約 3 倍であり、この観点かれすると約 1,500 社が、日本企業に よって設立される。 このように経済規模からは日本企業によって 1,200 社~1,500 社のキャプティブが設立さ れると考えても不自然ではない。 一方、 - 22 - ○ 「沖縄国際情報金融特区設置調査業務」(平成 13 年度名護市委託事業)報告書によると、 企業担当者へのアンケート結果集計では、キャプティブ保険を「実施している」 、「実施 に向けて検討中」、「実施していないが大いに検討したい」は合わせて約 90%である。東 証一部上場企業は約 1,500 社、この 90%がキャプティブを設立すると 1,350 社となる。 ○ 米系大手損保および米系大手ブローカー・日系大手損保にヒアリングしたところによる と「沖縄金融特区に 500 社以上のキャプティブが設立されると見込んでいる」という回 答で一致している。 以上により、沖縄金融特区において設立されるキャプティブの数は 500 社と設定した。 キャプティブの雇用に関しては、キャプティブ本体、マネジメント会社、会計事務所、法 律事務所等を合計して 1 社あたり 2 名とすると、500 社のキャプティブに対して 1,000 名 の雇用が見込まれる。ちなみに米国バーモント州においては 527 社のキャプティブがあり、 従業員の総数は 1,300 人(1 社平均 2.47 人)である。 2. 国内におけるキャプティブ保険の市場規模予測 シンガポールで設立された我が国企業 6 社のキャプティブ保険会社の収支サンプルを基 に、6 社平均値から算定した。 市場規模予測結果 500 社 ① キャプティブ保険会社数: ② 資 金: 487 × 500 = 2,435 億円 ③ 保険料収入: 258 × 500 = 1,290 億円 ④ 支払保険金: 31 × 500 = 155 億円 ⑤ 利 23 × 500 = 115 億円 本 益: 日系企業6社のキャプティブ保険会社収支サンプル(シンガポール:1996 年) (単位:百万円) No. 1 2 3 4 5 6 業種 メーカー 商社 サービス 石油 サービス メーカー 資本金 816 1,020 136 476 340 136 保険料収入 157 124 140 728 272 124 支払保険金 当期利益 48 24 0 64 51 0 合計 2,924 1,545 187 6 社平均 487 258 31 ※ シンガポール政府ROC(The Registry of Companies and Business)1996 年公表資料より - 23 - -16 19 7 49 37 44 140 23 3. 沖縄県内キャプティブ保険に関する経済波及効果の算出 経済波及効果算出結果(10 年間) ① 生産誘発額: 436 億円 ② 就業者誘発: 4,542 人(キャプティブ関連 1,000 人は含まない) 雇用者数の推定よりキャプティブ関連の粗利益額を設定、これに基づき経済波及効果を 算定した。 各フェイズ の雇用者数 キャプティ ブ関連の 粗利益額 人件費の算定 経済波及効果 ① 雇用者数、人件費及び粗利益額 □ 雇用者数:1,000 人 □ 人件費: ・ 職員の構成(A社事例による) 取締役 1 担当役員 1 シニア会計員 4 会計事務 4~5 10.5(人) ・ 給与 取締役 792×1 = 792 担当役員 792×1 = 792 シニア会計員 594×4 = 2,388 会計事務 400×4.5 = 1,800 5,722 → 平均 549(千円/月) したがって、 人件費: 1,000 人× 549 × 1.5 × (注1) 17 × (注2) 1.13 = (注3) (注1) 毎月勤労調査による全産業と金融保険との格差 (注2) 民間給与の実態(17 ヶ月=12 ヶ月+5 ヶ月) (注3) 法定福利厚生費 - 24 - 15,819,435 千円 □ 経済効果の算定(キャプティブ関連粗利益額) キャプティブ関連粗利益額 = 人件費 ÷ 人件費率 = 15,819,435 千円 ÷ 0.60 = 26,365,725 千円 (注4) (注4) 元受損害保険会社 31 社合計より算出(ただし、損害調査費を含む) ② 経済波及効果の算定 経済波及効果を次の計算式及びデータを用いて算定した。 I.モデル式 △ X=△X1+△X2+△X3 粗利益額の経済効果 -1 △ X1=(I―(I-M)A) (I-M)△FC -1 △ X2=(I―(I-M)A) (I-M)Ckw△X1 -1 △ X3=(I―(I-M)A) (I-M)Ckw△X2 △ X:生産誘発(三次の波まで測定) △ X1:第一次生産誘発 A:投入係数表 X2:第二次生産誘発 I:単位行列 M:移輸入行列 X3:第三次生産誘発 FC:最終需要(消費) -1 (I―(I-M)A) :逆行列 C:民間消費支出構成比(列ベクトル) k:消費転換係数(スカラー) w:雇用所得比率(列ベクトル) 就業者誘発は就業係数(当該業種就業者/当該業種生産額)より計測。(就業者と は自営業及び家族労働も含む雇用者) Ⅱ.使用データ 1.「平成 7 年沖縄県産業連関表」(32 部門)平成 12 年 10 月、沖縄県企画開発部 2.「県民所得統計書」平成 11 年度、沖縄県企画開発部 3.「沖縄県市町村民所得」平成 11 年度、平成 14 年 3 月、沖縄県企画開発部 4.「平成 14 年度版インシュアランス損害保険統計号」平成 14 年、(株)保険研究所 参考文献 1.土井英二・浅利一郎・中野親徳「はじめよう地域産業連関分析」日本評論社、1996 年 - 25 -