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果樹 [PDFファイル/5.88MB]
1
Ⅰ
イチジク黒葉枯病の発生生態と防除対策
平 成 19 年 7 月 に イ チ ジ ク「 と よ み つ ひ め 」を 導 入 し た ほ 場 で イ チ ジ ク 黒 葉 枯 病
に よ る 葉 柄 の 褐 変 や 落 葉 が 生 じ た 。平 成 20 年 以 降 は 各 地 で 発 生 が 認 め ら れ て い る 。
1.イチジク黒葉枯病の発生生態(図1)
イ チ ジ ク 黒 葉 枯 病 の 発 生 は 、6 月 下 旬 か ら 7 月 上 旬 の 梅 雨 時 期 に 増 加 し 始 め 、7
月 下 旬 か ら 8 月 に 急 増 し 、 10 月 頃 ま で 続 く ( 図 2 )。 越 冬 伝 染 源 は 、 主 枝 や 主 幹
に形成された陥没病斑(写真①)や凍霜害等により被害を受けた枝幹部で拡大し
た 黒 褐 色 の 病 斑( 写 真 ② )で あ る 。伝 染 源 上 に 作 ら れ た 胞 子 は 風 雨 に よ り 飛 散 し 、
葉に発病する。まず、葉柄や葉脈に茶褐色の小斑(写真③)から水浸状ににじん
だ黒褐色の紡錘形の病斑(写真④)が発生する。この紡錘形病斑は進展し、葉柄
で は 全 体 に 病 斑 が 拡 大 し( 写 真 ⑤ )、葉 脈 で は 葉 の 枯 れ 込 み を 生 じ 、葉 が 枯 死 に 至
る( 写 真 ⑥ )。こ の よ う な 病 斑 上 に は 胞 子 が 作 ら れ 、伝 染 源 に な る 。葉 が 枯 れ る と 、
葉 柄 基 部 や 果 梗 ま で 病 原 菌 が 達 し 、褐 変 す る( 写 真 ⑦ )。葉 柄 基 部 の 病 斑( 写 真 ⑨ )
は拡大して枝幹病斑になり、翌年の伝染源になる。幼果期に感染すると褐点病斑
を 形 成 し 、収 穫 期 に 拡 大 し て 、赤 黒 色 の 小 円 形 病 斑( 写 真 ⑩ )や 腐 敗 果( 写 真 ⑪ )
になる。収穫直前の果実に感染すると速やかに腐敗させる。腐敗果はのちに乾腐
し、ミイラ状(写真⑧)になる。
1
2
図1
40
2009年
2010年
2011年
35
30
25
20
15
10
5
図2
イチジク黒葉枯病の発生推移
2
10/19
10/5
9/21
9/7
8/24
8/10
7/27
7/13
6/29
6/15
0
6/1
発病葉率(%)
イチジク黒葉枯病の発生生態
3
写真①
主枝に形成された陥没病斑
写 真 ②
凍 害 か ら 侵 入 し た と
思われる黒褐色の病斑
写真③
葉柄上にみられる茶褐色の
写真④ 黒褐色の紡錘形の病斑
小斑
写真⑤
葉脈の病斑を中心とした葉
身の枯れ込み症状
3
4
写真⑦
褐変した葉柄基部と褐変
し離層が形成された果梗
写真⑥ 葉脈 、葉 柄 の褐変を伴 う葉枯
れ症状
写真⑧
ミイラ状果実
写真⑨
1年枝における芽枯れ症
状
写真⑩
収穫果上の小円形病斑
写真⑪
4
腐敗果
5
2.発生推移と気象の関係
本病は初発前から防除することが重要であるが、初発日は気象条件の違いによ
り年次間で大きく異なる。そこで、気象条件と本病の初発日と発生量との関連性
を 調 査 し た 。そ の 結 果 、気 温 20℃ 以 上 の 積 算 降 水 量 と 初 発 日 と の 間 に は 高 い 正 の
相 関 が 認 め ら れ 、 5 月 1 日 を 基 点 と し て 、 気 温 20℃ 以 上 の 降 水 量 の 積 算 が 50mm
に 早 く 達 す る ほ ど 、 初 発 日 は 早 く な る ( 図 3 )。 ま た 、 本 病 は 初 発 が 早 い ほ ど 、 8
月 下 旬 ~ 9 月 上 旬 の 発 生 は 多 く な る( 図 4 )。す な わ ち 、 5 月 以 降 、早 く か ら 20℃
を超える降雨が多い年は、発病が早く、多発しやすい。
8/4
y = 0.86x +6月14日
R² = 0.884
7/25
初 7/15
発
日 7/5
6/25
6/15
5/6
5/16
5/26
6/5
6/15
6/25
7/5
気温20℃以上の降水量の積算が50mmを超えた日
気 温 20℃ 以 上 の 積 算 降 水 量 と 初 発 日 の 関 係
図3
注 1 ) 図 中 の 相 関 式 の う ち 、 y は 初 発 日 、 x は 5 月 1 日 を 基 点 と し た 20℃ 以 上 の
時 間 降 水 量 を 積 算 し て 、 50mm を 超 え た 日 を あ ら わ す 。
注 2 ) 2009 年 ~ 2014 年 に の べ 8 ヶ 所 の と よ み つ ひ め 露 地 栽 培 ほ 場 の 初 発 日 を 調
査。
注3)平均気温、降雨量は調査地点から最寄のアメダスデータを使用。
50.0
R² = 0.7563
40.0
30.0
(
8
下
~
9
上
% の
発
病
葉
率
20.0
)
10.0
0.0
6/15
6/25
7/5
7/15
7/25
8/4
初発日
図4
初発日と 8 月下旬~9 月上旬の発病葉率の関係
5
6
3.防除対策
露 地 栽 培 に お け る 、耕 種 的 防 除 技 術 と 薬 剤 防 除 体 系 を 確 立 し た( 表 1 )。薬 剤 の
防除効果を安定させるために耕種的防除技術は特に重要である。伝染源である枝
幹部の病斑や枯死枝の切除、削り取りやビニル等による被覆を行い、病斑の拡大
や 胞 子 飛 散 を 抑 制 す る ( 表 2 , 図 3 )。 病 斑 部 の 表 皮 と 皮 層 お よ び そ の 下 の 数 mm
の褐変組織を削り取ると胞子形成を抑制する。なお、木質部まで完全に除去する
と 癒 合 が 良 い( 表 2 ,図 3 ,4 )。凍 霜 害 や 日 焼 け に よ る 枯 れ 込 み や 樹 勢 の 低 下 は
枝幹部の病斑の進展を助長するので、防寒対策や日焼け対策を行う。主枝を決め
る時や新しく苗を植え付ける時には、芽枯れのない健全なものを選択する。生育
期では、発病葉や罹病果は伝染源になるので、発病部を切除する。本病にはアミ
ス タ ー 10 フ ロ ア ブ ル や ト ッ プ ジ ン M 水 和 剤 の 効 果 が 高 く 、 6 月 ~ 7 月 に 3 回 程 度
散布する。
なお、本病害は降雨により広がるため、施設化が最も有力な防除対策である。
表1 「とよみつひめ」の総合的病害防除技術
月
旬
薬剤名 ・ 耕種的防除
11月
防寒対策
病斑の切除
~
枯死枝の切除
3月
日焼け対策
4月
病斑の切除
コサイド3000加用
6月 上旬
クレフノン
6月 中旬 アミスター10フロアブル
6月 下旬 ダコニール1000
7月 上旬 アミスター10フロアブル
罹病葉・果の除去
7月 下旬 トップジンM水和剤
8月
アンビルフロアブル
9月
10月
* 太字の薬剤は本病に効果が高い
6
7
各処理区上の病斑数と処理後に分生子が形成された病斑数(3 樹合計)
表2
1 年生枝上の病斑数
胞子
3)
2 年生枝上の病斑数
癒合程度
4)
調査数
胞子
癒合程度
確認数
不良
不良
中
6
0
6
良
5
0
5
深削り区
6
0
2
4
1
1
無処理区
8
6
-
-
10
4
2)
上枝上の
調査数
確認数
浅削り区
3 年生以
-
中
良
10
1
-
病斑数
-
9
-
10
注1)朝倉市一般農家圃場で病斑削除試験を実施。
2 ) 2012 年 5 月 11 日 に 「 浅 削 り 区 」 で は 病 斑 の 褐 変 し た 表 皮 と 皮 層 お よ び そ
の 下 数 mm を 削 除 し , 木 質 部 に 褐 変 を 一 部 残 し た 。「 深 削 り 区 」 は 木 質 部 ま
で 完 全 に 削 除 し た 。な お 、両 区 と も 、健 全 な 皮 層 と 木 質 部 の 間 に あ る 褐 変 し
た形成層は取り除かなかった。
3 )10 月 10 日 に 削 除 部 の 癒 合 程 度 と 削 除 部 に 形 成 さ れ た 分 生 子 の 有 無 を 調 査 。
4)癒合程度
不良:カルスの形成がわずか
が盛り上がっている
中:カルス形成が良好で形成層
良:傷口が完全にふさがっている
25.0
発病度 浅削り
a
発病度 深削り
発 20.0
病
度
・ 15.0
発
病
葉
率 10.0
発病度 無処理
発病率 浅削り
a
発病率 深削り
発病率 無処理
b
ab
b
(
a
%
ab
)
b
b
5.0
0.0
7/23
図5
8/24
9/26
10/26
越冬病斑の削除による発病抑制効果
注 ) 発 病 率 に つ い て 、 Tukey-kramer HSD 検 定 に よ り 、 同 一
符号間には有意差がない。
7
8
(
五
月
)
処
理
直
後
(
十
一
月
)
処
理
五
ヵ
月
後
無処理
図6
浅削り
1 年 生 枝 上 の 病 斑 に お け る 削 除 程 度 と 10 月 の 癒 合 程 度
8
深削り
9
Ⅱ
イチジク株枯病の発生生態と防除対策
1.現在までの発生経過
本 病 は 1 9 8 1 年 に 愛 知 県 で 報 告 さ れ た 病 害 で 、本 県 で は 1 9 9 0 年 に 行 橋 市 ,豊
津 町 で 初 発 生 が 確 認 さ れ た 後 , 急 激 に 発 生 地 域 が 拡 大 し 、 2016 年 6 月 現 在 、
本 病 の 発 生 県 は 33 府 県 に 及 ん で お り 、 全 国 の イ チ ジ ク 産 地 に ほ ぼ 蔓 延 し た 状
況となっている。
2.病徴と被害および診断法
1)病徴及び被害
本 病 に 感 染 し た イ チ ジ ク は ,定 植 3 ~ 5 年 目 頃 よ り 株 の 片 主 枝 又 は 全 体 の 新
梢 が 萎 ち ょ う し( 写 真 1 ),さ ら に 進 行 す る と 下 葉 が 黄 化 し た り 枯 れ 込 み が 見
ら れ ,最 後 に は 早 期 落 葉 す る 。イ チ ジ ク 成 木 の 主 幹 基 部 に は ,紡 錘 形 の や や 凹
ん だ 病 斑 が 観 察 さ れ る こ と が 多 く ,こ の よ う な 病 斑 の 表 皮 下 は 形 成 層 か ら 木 質
部深くまで黒褐色に変色している(写真2)。また,感染した苗木や幼木は、
その根基部が腐敗、枯死し、容易に引き抜くことができる。
写真1
主枝の萎ちょう症状
写真2
発病による主枝の木質部褐変
2)診断法
ア)罹病樹の簡易診断法
褐 変 し た 病 斑 部 の 表 皮 を ビ ニ ル 袋 等 に 入 れ ,軽 く 水 を 含 ま せ て 湿 室 条 件
と し , 25 ~ 30 ℃ で 一 週 間 保 持 す る 。 病 斑 部 の 表 面 に 長 さ 1 ~ 2 mm の 黒
い 髪 毛 状 の 子 の う 殻 と 淡 黄 色 の 胞 子 塊( 写 真 5 )を 生 じ れ ば 本 病 と ほ ぼ 診
断できる。
本 病 と 類 似 し た 病 害 と し て ,① 白 紋 羽 病 は 地 下 部 の 主 幹 や 根 の 表 面 に 白
色 の 菌 糸 が 見 ら れ る ,② 疫 病 は 病 斑 部 が 軟 化 腐 敗 す る ,③ 胴 枯 病 は 病 斑 上
に亀裂や小黒点が見られることで区別できる。
9
10
イ)汚染土壌診断法
汚 染 土 壌 の 有 無 を 推 定 す る 方 法 と し て 、イ チ ジ ク 切 り 枝 を 利 用 し た 診 断
法 が あ る( 図 1 )。土 壌 を ビ - カ - に 採 集 し ,滅 菌 水 を 分 注 し て 湿 潤 状 態
と し , イ チ ジ ク の 切 り 枝 を 土 壌 に 突 き 刺 し て 25~ 30℃ に 保 持 す る ( 写 真
3 ) 。 7~ 10 日 後 に 切 り 枝 と 土 壌 と の 境 界 付 近 に 形 成 さ れ る 子 の う 殻 の 有
無 に よ り ,肉 眼 で 診 断 が 可 能 で あ る( 写 真 4 )。土 壌 中 か ら の 株 枯 病 菌 の
検出感度が高く、現地で可能な診断法として有効である。
土壌採取
検定
1~2週間
土 壌 : 100g
切 り 枝 : 5~ 10 本
温 度 : 20~ 30℃
湿 度 : 約 100%
反 復 : 1~ 2 反 復
土 壌:2 0 0 g 以 上
場所:表層土
図1
判定
切り枝と土壌との境
界 付 近 に 、株 枯 病 菌 の
子のう殻が形成され
れば陽性
イチジク株枯病の土壌診断の手順
写真3 切り枝を利用した土壌診断状況
写真4 土壌との境界に形成された子のう殻
3.病原菌の形態と分類学的位置
本菌は菌糸,分生胞子,子のう胞子
を 作 る が , 大 き な 特 徴 は 長 さ 1 ~ 2 mm
の子のう殻を病斑部に裸出して形成す
ることである(写真5)。子のう殻は
黒 色 で ,子 の う 果 は 長 い 頸 部 を 有 し( 写
真6),その先端には飾毛があり,飾
毛開口部から淡黄色塊状の子のう胞子
を噴出する(写真7)。また,分生子
梗の先端から内生的に2種類の胞子を
10
写真5
株枯病菌の子
のう殻頸部
写真6
株 枯 病 菌 (大 )サツマ
イモ黒 斑 病 菌 (小 )
11
作 る こ と も 本 菌 の 特 徴 で ,一 つ は 無 色 単 胞 で 桿 状 の 分 生 胞 子( 写 真 8 ),他 の
一 つ は 球 形 ま た は 卵 円 形 で ,成 熟 す る と 褐 色 ~ オ リ - ブ 色 を 呈 す る 厚 膜 胞 子 で
ある(写真9)。
写真7 子のう胞子
写真8 分生胞子
写真9 厚膜胞子
イ チ ジ ク 株 枯 病 菌 ( Ceratocystis ficicola)
4.伝染
本菌の伝染経路としては,罹病苗の持ち込みが最も多いと思われる。
罹 病 樹 の 病 斑 上 に 形 成 さ れ た 分 生 胞 子 や 厚 膜 胞 子 が 雨 水 に よ っ て ,周 辺 の 土 壌
を汚染し、一旦土壌が汚染されると,再度無病苗を定植しても発病する。
ま た 、 ア イ ノ キ ク イ ム シ ( Euwallaacea interjectus) に よ っ て 虫 媒 伝 染 し 、
( 写 真 10) 株 枯 病 菌 を 鞘 翅 に 保 菌 し , 樹 勢 の 低 下 し た 樹 や 付 傷 部 が あ る 主 枝
及 び 主 幹 部 に 穿 孔 す る こ と に よ り ( 写 真 11) , 本 病 を 伝 染 す る 。 本 種 の 分 散
及 び 穿 孔 時 期 は ,3 月 中 旬 ~ 5 月 上 旬 と 7 月 中 旬 ~ 8 月 中 旬 の 2 回 で あ る( 図
3 )。本 菌 は イ チ ジ ク 樹 体 内 を か な り 移 動 し 、主 幹 地 際 部 に 病 斑 が あ る 樹 で は
病 斑 部 か ら 1 ~ 1.5m 上 方 ま で , 主 枝 の 付 傷 部 か ら 発 病 し た 樹 で は , 病 斑 部 か
ら 上 下 に 菌 が 移 行 し て い る 場 合 が 多 い ( 図 2 、 写 真 12、 13) 。
写 真 10
アイノキクイムシ成虫
写 真 11 穿 孔 し た ア イ ノ キ ク イ ム シ に よ る 虫 糞
11
12
写 真 12 主 枝 の 付 傷 部 に お け る 褐 変 状 況
図2
株枯病罹病樹の木質部褐変
状況と菌の進展状況
図 3
写 真 13
地際部における褐変状況
イチジク切り枝へのアイノキクイムシ成虫の穿孔時期
穿孔虫数:切り枝 1 本当たりの穿孔数
12
13
5.防除対策
1)未発生地での予防対策
本 病 の 伝 染 経 路 と し て は ,罹 病 苗 の 持 ち 込 み が 最 も 多 い と 思 わ れ る の で ,健
全 苗 の 確 保 が 最 も 重 要 な 対 策 で あ る 。ま た ,過 去 に 発 病 が 認 め ら れ ,土 壌 が 汚
染 さ れ て い る 可 能 性 が 高 い 圃 場 で は 育 成 し な い 。最 も 確 実 な 予 防 法 は ,未 発 生
地 の 健 全 樹 か ら 穂 木 を 採 っ て 非 汚 染 土 壌 で 自 家 育 苗 し ,未 発 生 地 で 栽 培 を 再 開
す る こ と で あ る 。ま た ,キ ク イ ム シ 類 に よ る 虫 媒 伝 染 を 防 ぐ た め ,主 枝 を 傷 付
け な い 棚 栽 培 を 導 入 す る こ と も 有 効 な 予 防 法 と 考 え ら れ る 。イ チ ジ ク 栽 培 地 域
に お い て ,一 旦 ,株 枯 病 菌 を 保 菌 し た キ ク イ ム シ 類 の 密 度 が 上 昇 し て し ま う と ,
本 病 の 根 絶 は 難 し い こ と か ら ,未 発 生 地 域 に お い て は ,罹 病 苗 の 持 ち 込 み に よ
る 苗 伝 染 を 防 止 す る と と も に ,本 菌 を 保 菌 し た キ ク イ ム シ 類 の 遠 隔 地 か ら の 飛
来による伝染についても十分注意する必要がある。
2)発病地における対策
本 病 は 一 旦 発 生 す る と 蔓 延 が 急 激 で あ る の で ,発 病 樹 は 発 見 次 第 ,根 ま で 含
め て 堀 り 上 げ 除 去 焼 却 す る 。ま た ,本 菌 に よ る 土 壌 汚 染 は ,発 病 樹 の 根 部 付 近
の 土 壌 を 除 き , 表 層 か ら 深 さ 15cm ま で の 比 較 的 浅 い 範 囲 に と ど ま っ て い る こ
と か ら ,汚 染 表 土 を 除 去 後 ,無 病 土 を 客 土 す る こ と も 有 効 な 対 策 で あ る 。こ の
よ う な 防 除 対 策 を 実 施 後 に 無 病 苗 を 定 植 し ,定 植 時 及 び 生 育 期 の 4 月 か ら 9 月
に か け て 1 か 月 間 隔 で 6 回 ,ト リ フ ミ ン 水 和 剤 5 0 0 倍 液 を 1 株 当 り 1 ㍑ か ん 注
する必要がある。
さ ら に ,株 枯 病 菌 を 保 菌 し た キ ク イ ム シ 類 の 穿 孔 を 防 止 す る た め 、移 動 分 散
時 期 直 前 の 3 月 中 旬 ~ 4 月 上 旬 と 7 月 上 旬 ~ 8 月 中 旬 の 2 回 ,主 幹 地 際 部 や 主
枝 の 付 傷 部 に ガ ッ ト サ イ ド S を 塗 布 す る( 3 週 間 残 効 が あ る )。特 に ,台 風 な
ど で 樹 が 裂 け た り ,夏 期 の 高 温 で 蒸 散 が 激 し く な り 樹 勢 が 衰 え る と キ ク イ ム シ
類 が 穿 孔 し や す く な る の で 注 意 が 必 要 で あ る 。な お ,平 年 に 近 い 気 温 の 年 で あ
れ ば ,3 月 下 旬 と 梅 雨 明 け 直 後 の 7 月 中 旬 に 前 述 の 薬 剤 を 塗 布 す る こ と が ,キ
クイムシ類の穿孔防止と薬剤の残効性向上を考えると最適と考えている。
3)イチジク株枯病抵抗性台木品種「キバル」の特性と利用上の注意
福岡県農林業総合試験場ではイチジク株枯病に対してほ場抵抗性を示すと
ともに、連作ほ場においても樹勢低下が少なく安定生産が得られる台木品種
「 キ バ ル 」 を 開 発 し 、 2013 年 3 月 9 日 に 品 種 登 録 ( 第 21596 号 ) さ れ た 。
「 キ バ ル 」は 夏 果 の み が 着 生 し 、花 托 内 に は 雄 花 と 雌 花 が 着 生 す る フ ィ ッ グ
型に区分され、果実の食味は劣り、食用には適さない。
13
14
2005 年 に 株 枯 病 発 生 ほ 場 に お い て 、 作 土 を 入 れ 替 え ず に 「 キ バ ル 」 台 と 自
根 の「 桝 井 ド ー フ ィ ン 」を 各 3 樹 定 植 し 、生 育 、収 量 と 果 実 品 質 を 調 査 し た 結
果 、自 根 の 2 樹 は 2 0 0 9 年 ま で に 株 枯 病 に よ り 枯 死 し た( デ ー タ 略 )。
「キバル」
台 樹 の 新 梢 径 は 、自 根 樹 と 同 等 か や や 大 き か っ た 。収 量 は 自 根 樹 と 比 較 し て 3
年 と も 多 か っ た 。果 重 、糖 度 、着 色 割 合 は 、自 根 樹 と の 間 に 一 定 の 傾 向 は 認 め
ら れ な か っ た( 表 1 )。こ れ ら の こ と か ら 、
「 キ バ ル 」台「 桝 井 ド ー フ ィ ン 」は 、
株枯病発生ほ場において、作土を入れ替えずに連作しても樹勢低下が少なく、
一 般 的 な 「 桝 井 ド ー フ ィ ン 」 並 み の 収 量 20~ 28 ㎏ /樹 ( 2.5~ 3.5t/10a) と と
も に 自 根 樹 と 遜 色 な い 果 実 品 質 が 得 ら れ る こ と 明 ら か と な っ た 。 ま た 、「 と よ
み つ ひ め 」の「 キ バ ル 」台 樹 と 自 根 樹 に お い て も 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た( デ ー
タ 略 )。
苗 植 え 付 け 後 の 地 際 部 か ら の 感 染 が 多 い イ チ ジ ク 株 枯 病 に つ い て 、抵 抗 性 台
木 を 利 用 す る 場 合 、感 染 部 位 か ら 接 ぎ 木 部 位 ま で の 距 離 が 長 い ほ ど 穂 木 品 種 の
株 枯 病 発 病 の リ ス ク を 低 減 で き る こ と か ら 、 地 上 部 に 出 る 台 木 の 長 さ は 25 ㎝
以 上 が 望 ま し い 。ま た 、台 木 の 地 上 部 が 埋 ま る 過 度 な 客 土 や 深 植 え 、草 刈 り 等
による台木の損傷は、株枯病感染のリスクを高めるため注意が必要である。
「 キ バ ル 」台 接 ぎ 木 苗 は 、許 諾 契 約 者 の 全 国 農 業 協 同 組 合 連 合 会 福 岡 県 本 部
( JA 全 農 ふ く れ ん ) 及 び 福 岡 県 苗 木 農 業 協 同 組 合 が 販 売 を 行 っ て お り 「 キ バ
ル」台木のみでは販売していない。
表 1 株 枯 病 発 生 ほ場 における「キバル」台 樹
の生 育 ,収 量 および果 実 品 質
調査年
2007年
2008年
2009年
果重
着色割合
糖度
(g)
(%)
(Brix)
20.4
87.0
65.0
15.5
18.6
9.4
88.3
59.0
15.7
キバル台 16.5
22.8
92.5
65.0
15.3
16.9
12.9
92.4
58.0
15.0
キバル台 18.9
28.6
99.8
68.0
15.9
20.0
84.6
69.0
16.7
台木の
区分
新梢径
(㎜) (㎏/樹)
キバル台 21.1
自根
自根
自根
収量
16.3
注)穂木「桝井ドーフィン」
14
15
Ⅲ
1
キウイフルーツかいよう病の発生生態と防除対
策(暫定)
特徴
キ ウ イ フ ル ー ツ か い よ う 病 は Ps e ud om o na s s yr i ngae p v ac t ini di a e ( 以 下 P
sa) に よ る 細 菌 病 で 、 葉 の 褐 点 、 新 梢 枯 死 や 樹 体 枯 死 を 引 き 起 こ す 。 本 病 原 菌
に は 、 病 原 性 の 異 な る 5 系 統 ( P s a 1 ~ 5 系 統 ) が 存 在 す る 。 P s a1 系 統 は 従 来 か ら
日 本 で 発 生 し て い た 系 統 で あ る 。 Psa2及 び 4系 統 は 国 内 の 発 生 報 告 は 無 い 。 Psa
3 系 統 は 中 国 、イ タ リ ア 他 欧 州 諸 国 、ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド な ど で 発 生 し て お り 、病
原 性 が 強 い と 報 告 さ れ て い る 。 Psa5系 統 は 近 年 、 佐 賀 県 で 確 認 さ れ た 系 統 で 、
病 原 性 は 比 較 的 弱 い 。 P sa 1 系 統 と P s a 3 系 統 の 病 原 性 や 発 生 生 態 の 相 違 は 不 明 で
あ る が 、 葉 の 病 徴 を 観 察 す る と 、 Psa1系 統 で は 葉 の 斑 点 の 周 囲 に 黄 色 の ハ ロ ー
が 大 き く 形 成 さ れ る が 、 P s a3 系 統 で は 小 さ い か ほ と ん ど 形 成 さ れ な い 。
Ps a 3 系 統 は 平 成 2 6 年 5 月 に 国 内 で 最 初 の 発 生 が 確 認 さ れ 、 平 成 2 8 年 5 月 3 1 日 現
在 で 本 県 を 含 む 計 15都 県 で 発 生 が 確 認 さ れ て い る 。
2
発生生態
本 病 原 菌 の 樹 体 内 で の 生 育 適 温 は 10~ 20℃ で 、 10℃ 以 下 で も 活 動 す る が 、 2
5℃ を 超 え る 高 温 時 で は 増 殖 が 極 め て 低 下 す る 。 す な わ ち 、 病 原 菌 は 春 秋 期 に
増加し、冬期でも少なからず存在するが、夏期に極めて低密度になる。
本 病 に 感 染 し た 場 合 、 樹 液 流 動 が 始 ま る 2月 頃 か ら 、 皮 目 や 剪 定 痕 な ど の 傷
か ら 病 原 菌 を 含 む 樹 液 が 漏 出 し 、 気 温 が 上 が る 6月 ご ろ ま で 続 く 。 樹 液 が 流 れ
出た跡は暗赤色に変色する(写真1)。病原菌は発芽前から樹体の傷口に感染
するとともに、発芽間もない新梢を枯死させる(写真2)。また、ガクや花弁
を褐変させ(写真3)、葉に特徴のある角斑を形成する(写真4)。葉の病斑
か ら は 病 原 菌 が 漏 出 し 、 次 々 に 葉 に 第 二 次 感 染 を 繰 り 返 す 。 平 均 気 温 が 20℃ 近
く ま で 上 昇 す る 5月 ご ろ か ら 、 菌 の 増 殖 が 低 下 し 始 め 、 5月 下 旬 ~ 6月 に は 極 め
て 低 く な る 。25℃ を 超 え る 7月 ~ 9月 に は 最 低 に な り 、 病 勢 は 衰 え る が 、気 温 が
2 0 ℃ を 下 回 る 1 0 月 頃 か ら 再 び 菌 の 増 殖 が 活 発 に な る 。病 原 菌 の 漏 出 は 落 葉 期 ま
で続き、漏出した病原菌は落葉痕や傷口から樹体内に感染する。
本 病 に よ る 被 害 に は 品 種 間 差 が 認 め ら れ て お り 、一 般 的 に 、緑 色 系 品 種 の「 ヘ
イ ワ ー ド 」な ど の A c ti n id i a d e li c io s a よ り 、黄 色 系 品 種 の A. ch i ne n s is が 被 害
を受けやすい。
15
16
写真1
2 年 枝 か ら の 樹 液 の 漏 出( P s a3 系 統 に 感 染 し た レ イ ン ボ ー レ ッ ド 。以 下
の写真も同様)
写真2
新梢枯死
写真4
葉の病徴
写真3
16
蕾の病徴
17
3
防除対策
本病の感染経路は風雨による自然感染と、受粉作業や器具の使いまわし、苗
木の移動などによる人為的な感染と考えられる。
1)薬剤防除
病原菌は傷口や柔らかい組織から侵入するため、管理作業などで傷が生じる
と き や 、生 育 が 旺 盛 な 発 芽 か ら 新 梢 生 育 期 を 中 心 に 予 防 的 に 薬 剤 防 除 を 行 な う 。
(1)樹液流動期から出蕾前までは銅水和剤を中心に登録薬剤を定期的に散布
する。出蕾後は銅水和剤あるいは抗生物質剤を定期的に散布する。なお、
銅水和剤は薬害が出やすいので、薬剤の選定等に注意する。また、抗生物
質剤は残効が短いため、防除適期を外さないように注意するとともに、耐
性菌発生のリスクが高いため、同一系統の連用は避ける。
(2)収穫後~落葉期に銅水和剤を中心に定期的に散布する。
(3)剪定痕は病原菌の漏出場所や感染場所になるため、すべての剪定痕に癒
合剤を塗布する。また、剪定後に銅水和剤を中心に登録薬剤を散布する。
*具体的な散布時期は防除暦を参照。
2)耕種的防除
(1)感染確認後の伐採
周囲への感染拡大を防止するため、本病に弱い中国系品種では、感染樹お
よびその隣接樹の伐採を基本とする。伐採に当たっては、伐採した枝葉等は
細菌の飛散を防止するため、速やかに焼却またはビニル等で覆う。切り株は
ひこばえが発生しないように処理して、ビニル等で覆い、ビニルが隠れるま
で 土 を か ぶ せ る 。な お 、感 染 樹 発 生 園 の 生 産 者 と 県 ・ J A の 関 係 機 関 で 発 生 状 況
と伐採等の防除対策について十分に話し合いを行う。
(2)感染部位の切除
「ヘイワード」のように比較的耐病性の品種で、症状が軽い場合、発病部
位を中心とした切除により、発症を軽減させる方法もある。具体的には、
発 病 部 か ら 前 年 の 枝 の 基 部 に 遡 っ て 切 除 し 、塗 布 剤 で 保 護 を 行 な う 。な お 、
主幹まで樹液の漏出が確認される場合は伐採を行なう。
(3)防風施設及び雨よけ施設の設置
感 染 拡 大 を 防 止 す る た め 、防 風 施 設 お よ び 雨 よ け 施 設 の 設 置 は 有 効 で あ る 。
3)園地の管理
(1) 衛生管理
器具や人への病原菌の付着による伝染を防ぐため、園地内の衛生管理を
17
18
行う。
ア )園 地 に 出 入 り の 際 は 、手 や 泥 を 落 と し た 靴 底 を 7 0 % エ タ ノ ー ル 等 で 消 毒 す
る。
イ )ハ サ ミ や の こ ぎ り な ど の 管 理 器 具 は 園 地 ご と に 決 め ら れ た も の を 用 意 し 、
樹 ご と に 200ppm以 上 の 濃 度 の 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 又 は 70% エ タ ノ
ールを用いて消毒して使用する。
ウ)園地から立ち去る前に、服、帽子、靴など、体に付いた植物残渣を取り
除く。
エ)収穫かご等に植物残渣を混入させない。
オ)発生園の花粉は利用しない。前年からの罹病が疑われる場合は貯蔵花粉
も利用しない。
(2)資材に対する留意点
苗木、穂木、花粉等の生産資材については、感染のおそれのある資材を
使用しないよう、安全を確認された資材を購入する。購入先や購入日、資
材の量が後日確認できるよう、必ず記帳する。
*なお、本内容については、本病に関する新たな知見を踏まえ、随時見直しを
行う。
18
19
Ⅳ カキ炭疽病の発病診断に基づいた効率的防除体系
カ キ 栽 培 の 主 要 病 害 は 炭 疽 病 、落 葉 病 類 、う ど ん こ 病 が あ る が 、最 重 要 病 害 は
炭 疽 病 で あ る 。炭 疽 病 は 早 い と き は 4 月 下 旬 か ら 新 梢 に 発 生 し 、収 穫 期 の 果 実 ま
で 発 生 す る た め 、防 除 期 間 は 非 常 に 長 い 。慣 行 防 除 体 系 で は 4 月 下 旬 か ら 9 月 上
旬 ま で 、 月 あ た り 2 回 、 年 間 10 回 程 度 の 薬 剤 散 布 を 行 う 。 そ こ で 、 慣 行 防 除 体
系 の 半 分 の 防 除 回 数 を 目 標 と し た 効 率 的 防 除 体 系 を 確 立 す る た め 、減 農 薬 栽 培 の
現 地 実 証 試 験 を 5 年 間 行 い 、こ の 結 果 か ら 、前 年 の 被 害 果 率 、6 月 の 結 果 枝 の 発
病 枝 率 、7 ,8 月 の 発 病 果 率 に 応 じ た 効 率 的 防 除 体 系 を 作 成 し た( 図 1 )。こ の
防 除 体 系 に 従 え ば 少 発 ほ 場 の 防 除 回 数 は 年 間 5 回 で す み 、県 の 減 農 薬 ・ 減 化 学 肥
料認証制度に対応できる。
1.発病診断に基づいた効率的防除体系のポイント
( 1 )薬 剤 防 除 は 、天 気 予 報 の 最 高 気 温 と 最 低 気 温 の 和 が 40℃ 以 上 で 降 雨 が 予 報
さ れ る 日 の 直 前 か ら 開 始 す る ( 図 1 の ① ) 。 カ キ 炭 疽 病 は 平 均 気 温 20℃ 程
度の降雨時に越冬病斑で胞子が多量に形成され始める。
( 2 )前 年 10 月 の 発 病 果 率 が 3 %未 満 の ほ 場 で は 4 月 下 旬 か ら 5 月 下 旬 の 防 除 は
デランフロアブルの2回散布で十分な効果がある。しかし、発病果率が3%
以 上 の ほ 場 で は 3 回 散 布 が 必 要 で あ る( 図 1 の ② )。前 年 被 害 が 少 な い ほ 場
は越冬菌量が少なく、当年の結果枝への感染圧が低い。
( 3 )6 月 上 旬 の 結 果 枝 の 罹 病 枝 が み ら れ な い ほ 場 は 月 1 回 の 防 除 で 十 分 な 効 果
が あ る 。 し か し 、 発 病 枝 率 が 0.5%以 上 ( 成 木 1 本 あ た り 数 本 ) の ほ 場 は 散
布 間 隔 を 狭 め 、 20 日 に 1 回 の 防 除 が 必 要 で あ る ( 図 1 の ③ ) 。 枝 病 斑 は 強
力 な 伝 染 源 に な る た め 、発 病 さ せ る と 、後 の 防 除 が 困 難 に な る 。徒 長 枝 、二
次 伸 長 枝 や 遅 伸 び す る 枝 は 6 月 以 降 も 感 染 し や す い た め 、不 要 な 枝 は 切 除 す
る 。効 率 的 な 防 除 の た め に は 、適 切 な 栽 培 管 理 に よ り 樹 勢 を 安 定 さ せ る 必 要
がある。
( 4 ) 7 月 中 旬 の 発 病 果 率 が 0.5%以 上 ( 図 1 の ④ ) 、 8 月 下 旬 の 発 病 果 率 が 1 %
以 上 ( 図 1 の ⑤ ) の ほ 場 は 散 布 間 隔 を 20 日 に 1 回 に 狭 め る 。 結 果 枝 の 罹 病
枝 が ほ と ん ど み ら れ な い ほ 場 は 感 染 圧 が 低 く 、通 常 、7 月 、8 月 の 発 病 果 は
少 な い 。こ の 時 期 に 発 病 果 が 見 ら れ る ほ 場 は 、越 冬 菌 量 が 多 い か 罹 病 枝 に よ
る第二次伝搬が頻繁に起きているため、感染圧が高い。
( 5 )9 月 上 旬 以 降 に 薬 剤 散 布 を 行 う 場 合 、散 布 後 累 積 降 雨 量 が 100mm を 超 え た
ら 、再 散 布 す る( 図 1 の ⑥ )。ス ト ロ ビ ー ド ラ イ フ ロ ア ブ ル 等 の 使 用 基 準 の
収穫前使用日数の短い薬剤はデランフロアブルやジマンダイセン水和剤に
19
20
比べると、残効が短い薬剤が多い。
( 6 )例 年 、9 月 末 に は 平 均 気 温 が 20℃ 以 下 に な り 、病 勢 は 緩 慢 に な る が 、年 に
よ っ て は 10 月 で も 気 温 が 高 く 、 感 染 が 拡 大 す る こ と も あ る 。 防 除 開 始 の 目
安 と 同 様 に 、 天 気 予 報 の 最 高 気 温 と 最 低 気 温 の 和 が 40℃ 以 上 で 降 雨 が 予 報
される日まで防除を行う。
2.注意事項
( 1 ) カ キ 炭 疽 病 の 調 査 は 1 ほ 場 あ た り 300 枝 ( 果 ) 以 上 実 施 す る 。
( 2 )カ キ 炭 疽 病 に 効 果 が 高 い デ ラ ン フ ロ ア ブ ル や ジ マ ン ダ イ セ ン 水 和 剤 は 薬 剤
使用基準の収穫前使用日数が長いので注意が必要である。
( 3 )こ の 防 除 体 系 で 落 葉 病 類 や う ど ん こ 病 の 同 時 防 除 は で き る が 、灰 色 か び 病
の同時防除はできない。
図1生育時期とカキ炭疽病の発病診断に基づいた効率的防除体系
(富有・松本早生富有)
20
2
21
Ⅴ ナ シ 赤 星 病 に お け る DMI 剤 耐 性 菌 の 発 生 と 防 除 対 策 ~ 薬
剤防除、発生予察、中間宿主~
ナ シ 赤 星 病 は ナ シ 栽 培 に お け る 重 要 病 害 の 一 つ で 、 こ れ ま で DMI 剤 に よ る 防 除
や中間宿主の伐採により、発生を抑えてきたが、近年一部の産地で多発するよう
に な っ た 。 こ の よ う な ほ 場 の 中 に は 、 防 除 適 期 に DMI 剤 を 散 布 し て い る に も か か
わらず、減収を伴う発生が見られる場合もあり、耐性菌の発生が疑われた。そこ
で 、 現 地 の 発 生 調 査 や 耐 性 菌 検 定 を 実 施 し た と こ ろ 、 DMI 剤 耐 性 菌 の 発 生 が 確 認
さ れ た 。 こ の た め 、 本 病 防 除 に は DMI 剤 以 外 の 系 統 が 必 要 に な る が 、 こ れ ら の 剤
は DMI 剤 よ り 防 除 効 果 が 劣 る た め 、 発 生 予 察 と 予 察 に 基 づ く 適 期 防 除 を 行 な わ な
ければならない。発生予察は春先の平均気温から中間宿主のビャクシン類上の冬
胞子堆の発芽最盛期を予測し、さらに、冬胞子堆を観察して得られた実測値で補
足して、実施している。また、薬剤防除以外の多発要因として、近年、ナシ栽培
地周辺にも住宅地が造成されることが増え、代表的な中間宿主である「カイズカ
イブキ」と同種や同属の様々な庭木が植栽され、これらが中間宿主となり発生を
助 長 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ こ で は 、 DMI 剤 感 受 性 検 定 の 結 果 お よ び 予 察 法
とここ数年、病害虫防除所で実施した予測値と実測値を紹介する。また、中間宿
主について、これまでの研究を整理したので、併せて紹介する。
1
DMI 剤 感 受 性 検 定
これまでに、ナシ赤星病薬剤耐性菌の報告が無く、薬剤感受性検定の室内検
定法が確立されていないため、ナシあるいはビャクシンを用いた生物検定法で
行った。ナシ葉上に形成されるさび胞子はビャクシン類にのみ感染し、ビャク
シ ン 上 に 形 成 さ れ る 小 生 子 は ナ シ に の み 感 染 す る 。 平 成 25 年 に 県 南 の 主 産 地
と 場 内 か ら ナ シ 罹 病 葉 を 採 取 し 、 あ ら か じ め DMI 剤 の ス コ ア 顆 粒 水 和 剤 と ル
ビ ゲ ン 水 和 剤 を 散 布 し た「 カ イ ヅ カ イ ブ キ 」に さ び 胞 子 を 接 種 し た 。そ の 結 果 、
対照の茨城県採取菌に対するスコア顆粒水和剤とルビゲン水和剤の防除効果は
非常に高かったが、本県採取菌に対するスコア顆粒水和剤の防除効果はやや低
く 、ル ビ ゲ ン 水 和 剤 の 防 除 効 果 は 非 常 に 低 か っ た( 第 1 図 )。さ ら に 、冬 胞 子 堆
が着生している「カイヅカイブキ」を用いた生物検定を実施した結果も同様で
あ っ た ( デ ー タ 略 )。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 少 な く と も 県 南 の 主 産 地 で DMI 剤 耐
性菌が発生していることが明らかになった。さらに、試験場内ほ場で本病に登
録 の あ る 薬 剤 の 防 除 効 果 を 調 査 し た 結 果 、 生 物 検 定 の 結 果 と 同 様 に DMI 剤 の
スコア顆粒水和剤とルビゲン水和剤の防除効果が低かった。一方、ジチオカー
バ メ ー ト 剤 の ト レ ノ ッ ク ス フ ロ ア ブ ル や SDHI 剤 の フ ル ー ツ セ ー バ ー の 防 除 効
21
22
果 は 高 か っ た 。 ほ 場 試 験 で も DMI 剤 の 防 除 効 果 は 低 い た め 、 他 系 統 剤 を 中 心 に
した防除体系による防除をしなければならない。なお、今回効果が確認された
DMI 剤 以 外 の 薬 剤 の 効 果 は DMI 剤 が 本 来 有 し て い た 効 果 ほ ど 高 く な い と 考 え ら
れるため、予察情報に基づいた適期防除を心がける必要がある。
120
スコア顆粒水和剤
ルビゲン水和剤
100
防
除
価
80
60
40
未
試
験
20
未
試
験
0
久留米市
第1図
筑後市
八女市
筑紫野市
つくば市
ナ シ か ら 採 取 さ れ た 赤 星 病 菌 に 対 す る DMI 剤 の 防 除 効 果
注 )2013 年 6 月 に ナ シ 罹 病 葉 を 採 取 し 、胞 子 懸 濁 液 を 調 整 後 、ス コ ア 顆 粒 水 和
剤 4000 倍 と ル ビ ゲ ン 水 和 剤 4000 倍 を あ ら か じ め 散 布 し た カ イ ヅ カ イ ブ キ 苗 に
接 種 し た 。 2014 年 3 月 に 発 病 程 度 を 調 査 し 、 防 除 価 を 算 出 し た 。
100
2014
80
2015
60
防
除 40
価
20
未
試
験
0
スコア顆粒水和剤
ルビゲン水和剤
フルーツセーバー
トレノックフロアブル
×4000
×4000
×2000
×500
第2図
ナシ赤星病に対する各種薬剤の防除効果
注)試験は病害虫部試験場内ほ場で実施した。
22
23
2
発生予察
本病はビャクシン上の冬胞子堆が膨潤し、その冬胞子から生ずる小生子によ
ってのみ感染が起こりナシでの二次感染は起こらない。そのため、本病を的確
に防除するには、ビャクシンからナシへの感染時期を把握することが重要であ
る。ビャクシンからの小生子飛散ピークの予測法として、次のようなものがあ
る。
(1)冬胞子堆発芽最多期予想の回帰式による予測
3月3~6半旬の平均気温を下記の回帰式に代入することにより、4月1
日起算とした小生子飛散ピークを予測することができる。
○ Y = 59.726- 4.952X ( 福 岡 園 試 、 1970)
Y:4月1日起算の最多期までの日数
X:3月3~6半旬の平均気温
(2)水浸法によるビャクシン上の冬胞子堆膨潤状況の把握
ビ ャ ク シ ン か ら の 小 生 子 飛 散 ピ ー ク は 、 冬 胞 子 堆 の 膨 潤 率 が 80% 以 上 で 、
成 熟 度 が 60 程 度 の 時 期 で あ る 。
ア)調査時期
3月中旬~4月下旬
イ)調査方法
ビ ャ ク シ ン か ら 、 冬 胞 子 堆 付 着 小 枝 を 100 個 程 度 採 集 し 、 30
分間水浸後、 写真1に基づき膨潤程度を観察し、冬胞子堆の膨潤率と成
熟度を算出する。
膨 潤 率 = ( (A+ B+ C+ D)/ 調 査 病 斑 数 ) ×100
成 熟 度 = ( (4A+ 3B+ 2C+ D)/ (4×調 査 病 斑 数 )) ×100
<冬胞子堆膨潤程度>
A:冬 胞 子 堆 が 外 観 的 に 完 全 に 膨 張
B:一 部 未 膨 潤 冬 胞 子 堆 を 残 す
C:約 50%未 膨 潤 冬 胞 子 堆 を 残 す
D:一 部 膨 ら む
E:す べ て 無 膨 潤 で あ る
写真1
ビャクシン上における赤星病の冬胞子
23
24
表1
回帰式による小生子飛散ピークの予測と水浸法によるビャクシン類での
ナ シ 赤 星 病 菌 冬 胞 子 堆 の 成 熟 状 況 ( 筑 紫 野 市 : 2014 年 ~ 2016 年 )
予測(回帰式)
実測(水浸法)
小生子飛散ピーク
調査時期 膨潤率(%) 成熟度
2014年
4月2日
2015年
4月3日
2016年
4月3日
3月下旬
4月上旬
4月中旬
3月上旬
3月中旬
3月下旬
4月上旬
4月中旬
3月上旬
3月中旬
3月下旬
4月上旬
75
99
100
34
70
94
98
100
2
52
96
95
44
81
94
10
27
46
76
93
1
14
45
76
注 1 ) 小 生 子 飛 散 ピ ー ク 予 測 日 は 、「 4 月 1 日 起 算 の 冬 胞 子 堆 発 芽 最 多 期 予 想 の 回 帰 式 」( 福 岡 園 試 ) か ら
算出した。
注 2 ) 水 浸 法 に お け る 膨 潤 率 が 80% 以 上 で 成 熟 度 60 程 度 に な っ た 時 期 お よ び 数 値 を 枠 で 示 し た 。
3
中間宿主
冬 胞 子 を 形 成 す る 世 代 は ビ ャ ク シ ン 属 ( Juniperus ) に 属 す る ビ ャ ク シ ン ( J.
chinensis ) の 品 種 「 カ イ ズ カ イ ブ キ 」 に 寄 生 す る こ と が 有 名 で あ る が 、 こ の ほ
かにも、
「 オ ウ ゴ ン タ マ イ ブ キ 」や「 ハ イ ビ ャ ク シ ン 」、 J. scopulorum の 品 種「 ス
カイロケット」に寄生することが知られている。近年、洋風建築の増加でコニフ
ァー(針葉樹の総称・外来種の園芸用品種を指すことが多い)が良く植栽されて
い る が 、そ の 中 に は ビ ャ ク シ ン 属 に 属 す る も の が あ り 、
「 ス カ イ ロ ケ ッ ト 」の よ う
に寄生が確認されているものもある。コニファー類の品種の寄生性の検討を千葉
県 農 林 総 合 セ ン タ ー が 実 施 し て い る 。 そ の 結 果 、 ア メ リ カ ハ イ ビ ャ ク シ ン ( J.
horizontalis )8 品 種 、セ イ ヨ ウ ネ ズ( J. communis )9 品 種 、ハ イ ネ ズ( J. conferta )
2 品 種 、 サ ビ ナ ビ ャ ク シ ン ( J. Sabina ) 3 品 種 は 寄 生 さ れ る こ と が な か っ た が 、
ビ ャ ク シ ン 、 ハ イ ビ ャ ク シ ン ( J. chnensis var procumbens )、 フ ィ ツ ェ リ ア ナ ビ
ャ ク シ ン ( J. pfitzeriana )、 コ ロ ラ ド ビ ャ ク シ ン ( J. scopulorum )、 エ ン ピ ツ ビ
ャ ク シ ン( J. virginiana )は 品 種 間 で 冬 胞 子 に 対 す る 感 受 性 が 異 な り 、一 部 の 品
種で感受性が高いものがあった。
24
25
Ⅵ QoI 剤 ( ス ト ロ ビ ル リ ン 系 薬 剤 ) 耐 性 ブ ド ウ 病 害
の発生と防除対策
1
ブドウ褐斑病
近年、ハウス・トンネル栽培のピオーネや巨峰を中心にブドウ褐斑病が多発傾
向にある。これらの栽培体系でも本病の防除適期である開花期から幼果期には効
果 が 高 い と さ れ て い る QoI 剤 ( ス ト ロ ビ ル リ ン 系 薬 剤 ) が 使 用 さ れ て い る 。 し か
し 、本 系 薬 剤 は 近 縁 属 菌 の ナ ス す す か び 病 菌 等 で 耐 性 菌 の 発 生 が 確 認 さ れ て お り 、
本 病 で も 耐 性 菌 の 発 生 が 危 惧 さ れ て い る 。そ こ で 、主 要 産 地 か ら 2007 年 に 褐 斑 病
菌 を 採 取 し 、QoI 剤 の 耐 性 菌 検 定 を 行 っ た 。そ の 結 果 、県 内 6 市 9 ほ 場 61 菌 株 全
てが耐性菌であった(第1表)。また、この耐性菌を用いてブドウ苗に防除試験
を 行 っ た と こ ろ 、 ア ミ ス タ ー 10 フ ロ ア ブ ル は 効 果 を 示 さ な か っ た 。
以 上 の 結 果 よ り 、 県 内 の ブ ド ウ 栽 培 ほ 場 で は ア ミ ス タ ー 10 フ ロ ア ブ ル が 実
用 濃 度 で も 効 か な い 耐 性 菌 が 広 く 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 QoI 剤 に
対 す る 耐 性 菌 は 一 般 的 に 交 差 抵 抗 を 示 す た め ,ア ミ ス タ ー 1 0 フ ロ ア ブ ル 耐 性
菌 は ス ト ロ ビ ー ド ラ イ フ ロ ア ブ ル な ど の QoI 剤 に も 耐 性 を 示 す と 考 え ら れ
る 。こ の よ う な 耐 性 菌 が 発 生 し て い る ほ 場 で は 他 系 統 剤 に よ る 防 除 が 必 要 で
あ り 、 特 に 、 DMI 剤 が 有 効 で あ る ( 第 2 表 ) 。 な お 、 DMI 剤 も 耐 性 菌 発 生 の
リ ス ク が あ る た め 、 ジ マ ン ダ イ セ ン 水 和 剤 や オ ー ソ サ イ ド 水 和 剤 80 な ど の
保護殺菌剤と併用して、リスク管理を行なう必要がある。
第1表
ア ミ ス タ ー 10 フ ロ ア ブ ル に 対 す る ブ ド ウ 褐 斑 病 の 感 受 性 ( 2007 年 )
採取地
直方市A
直方市B
飯塚市
嘉麻市
黒木町A
黒木町B
上陽町
朝倉市A
朝倉市B
島根県/
MAFF237623
千葉県/
MAFF305180
栽培品種
巨峰
ピオーネ
ピオーネ
ピオーネ
巨峰
巨峰
巨峰
ピオーネ
ピオーネ
栽培体系 調査菌株数 耐性菌株数 感受性菌株数
ハウス
6
6
0
ハウス
3
3
0
ハウス
8
0
8
ハウス
8
8
0
ハウス
8
8
0
トンネル
8
8
0
ハウス
6
6
0
ハウス
8
8
0
ハウス
6
6
0
ヨーロッパ系 1996年分離
1
0
1
ヨーロッパ系 1956年分離
1
0
1
注)分離菌株を用いた寒天希釈平板法による感受性検定を行った。島根県と千
葉 県 分 離 菌 株 は QoI 剤 が 使 用 さ れ る 以 前 に 分 離 さ れ た 菌 で 、感 受 性 菌 で あ る 。
25
26
第2表
ブドウ褐斑病菌に対する各種薬剤の防除効果
薬剤名
2
耐性菌(朝倉A)
感受性菌(O34)
2009年
2010年
2010年
発病度 防除価 発病度 防除価 発病度 防除価
オンリーワンフロアブル
13
87
-
-
-
-
インダーフロアブル
-
-
8
92
4
93
アミスター10フロアブル
98
2
67
15
8
水処理
100
79
87
63
ブドウべと病
平 成 22 年 は 開 花 前 後 の 降 雨 が 多 く 、 露 地 栽 培 を 中 心 に べ と 病 が 早 期 多 発 し た 。
開花前後は晩腐病や灰色かび病などの防除適期でもあり、これらの病害に効果が
高 い QoI 剤 が 頻 繁 に 用 い ら れ て い た 。 本 病 に は QoI 剤 耐 性 菌 の 報 告 が あ り 、 本 病
多 発 の 要 因 と し て 、 感 受 性 の 低 下 が 疑 わ れ た 。 そ こ で 、 2011 年 に 主 要 産 地 か ら べ
と病菌を採取し、本系統薬剤に対する耐性菌検定を遺伝子診断で実施した。その
結 果 、県 内 主 要 産 地 8 圃 場 計 24 菌 株 と 場 内 圃 場 4 菌 株 す べ て の 菌 株 が 耐 性 菌 で あ
っ た( 第 2 表 )。さ ら に 、耐 性 菌 が 発 生 し て い る 場 内 ほ 場 で 2011~ 2013 年 に 薬 剤
防 除 試 験 を 実 施 し た 結 果 、 QoI 剤 の ア ミ ス タ ー 10 フ ロ ア ブ ル の 防 除 効 果 は 低 く 、
他系統剤のカルボン酸アミド系剤のレーバスフロアブルやその系統を含む混合剤
のカンパネラ水和剤の防除効果は優れ、ペンコゼブ水和剤の防除効果も認められ
た(第3表)。
QoI 剤 は 開 花 前 後 か ら 幼 果 期 に べ と 病 、 灰 色 か び 病 、 晩 腐 病 な ど を 同 時 防 除 が
でき、汚れも少ない優れた薬剤として使用されてきたが、現在では、べと病に対
しては防除効果が期待できない。本病に防除効果が高く、幼果期に汚れの少ない
他 系 統 の 剤 ( QiI 剤 ( ラ ン マ ン フ ロ ア ブ ル 、 ラ イ メ イ フ ロ ア ブ ル ) や カ ル ボ ン 酸
アミド剤(レーバスフロアブル、ベトファイター顆粒水和剤など)はべと病専用
剤であるため、他病害を防除するには追加散布が必要である。なお、これらの薬
剤にも海外では耐性菌の報告があるため、ローテーションで使用する。
26
27
第3表
県 内 主 要 産 地 で 採 取 さ れ た ブ ド ウ べ と 病 菌 の QoI 剤 耐 性 菌 検 定 結 果
( 2011 年 )
採取地
品種
栽培体系
発生状況
採取日
調査
防除実績 菌株
数
3
3
3
3
4
3
2
3
3
3
5
3
2
3
1
3
4
4
1
1
耐性
菌株
数
3
3
3
3
3
3
3
3
4
0
1
朝倉市
ピオーネ 無加温ハウス
8月8日
中
久留米市①
巨峰
露地
8月3日
中
久留米市②
巨峰
露地
8月3日
中
八女市①
巨峰
無加温ハウス
8月9日
多
八女市②
巨峰
トンネル
8月9日
多
大牟田市
巨峰
露地
8月8日
多
飯塚①
巨峰
露地
8月9日
多
飯塚②
ピオーネ トンネル
8月22日
多
試験場内圃場
巨峰
露地
7月28日
多
感受性菌(山梨県)
耐性菌(山梨県)
注) 葉1枚から採取された菌を1菌株とした
注) 防除実績はH23年度のうち罹病葉採取時までの期間にストロビルリン系剤を使用した回数
第4表
QoI 剤 耐 性 べ と 病 菌 発 生 圃 場 に お け る 各 種 薬 剤 の 防 除 効 果
薬剤名(希釈倍率)
ペ ン コ ゼ ブ 水 和 剤 ( 1,000 倍 )
発 病 葉 率 ( 平 均 ±標 準 偏 差 ) ( % )
2011 年
a)
d)
b)
2013 年
c)
5.7±7.4 ab
2.0±2.0 a
- e)
0.3±0.6 a
-
-
-
0.0±0.0 a
ア ミ ス タ ー 10 フロアブル( 1,000 倍 )
92.7±5.0 b
45.7±36.1 bc
85.3±11.0 b
無散布
86.7±1.2 b
80.3±27.1 c
98.0±0 b
レ ー バ ス フロアブル( 3,000 倍 )
カ ン パ ネ ラ 水 和 剤 ( 1,000 倍 )
0.0±0.0 a
2012 年
注 a) 2011 年 6 月 3, 13, 24 日 , 7 月 8 日 に 散 布 し , 7 月 14 日 に 調 査 し た
b) 2012 年 5 月 30 日 , 6 月 11, 20 日 , 7 月 9, 26 日 に 散 布 し , 8 月 6 日 に 調 査 し た
c) 2013 年 6 月 5, 14, 24 日 , 7 月 8, 22 日 に 散 布 し , 9 月 10 日 に 調 査 し た
d) 表 中 の 同 じ 文 字 は 5% 水 準 で 有 意 差 は な い 。 ( Tukey-Kramer 検 定 )
e) - は デ ー タ な し 。
27
28
Ⅶ ナ シ 黒 星 病 菌 の DMI 剤 感 受 性 と DMI 剤 と 保 護 殺 菌 剤 の 混
用効果
1
ナ シ 黒 星 病 菌 の DMI 剤 感 受 性
1980 年 代 に 登 場 し た ス テ ロ ー ル 生 合 成 系 の 脱 メ チ ル 阻 害 剤 ( DMI 剤 ) は ナ シ 黒
星 病 に 優 れ た 防 除 効 果 を 示 し て き た 。 2007 年 に 本 県 産 の ナ シ 黒 星 病 菌 に 対 す る
DMI 剤 の 防 除 効 果 を 調 査 し た 結 果 、 ス コ ア 顆 粒 水 和 剤 で 防 除 効 果 が 維 持 さ れ て い
たが、アンビルフロアブルとインダーフロアブル、特にルビゲン水和剤で効果低
下 が 確 認 さ れ た 。 そ の 後 も DMI 剤 は 基 幹 防 除 剤 と し て 使 用 さ れ 続 け た た め 、 2015
年 に 再 度 効 果 試 験 を 実 施 し た 。そ の 結 果 、各 種 DMI 剤 の 防 除 効 果 は 2007 年 よ り 低
下 し 、 薬 剤 耐 性 が 発 達 し て い た 。 一 方 、 ユ ビ キ ノ ー ル 還 元 酵 素 阻 害 剤 ( QoI 剤 )
の ス ク レ ア フ ロ ア ブ ル の 防 除 効 果 は 高 か っ た ( 図 1 )。
2
DMI 剤 と 保 護 殺 菌 剤 の 混 用 効 果
現 在 、DMI 剤 の 防 除 効 果 を 維 持 す る た め 、他 系 統 剤 と の 混 用 が 推 奨 さ れ て い る 。
スコア顆粒水和剤では混用する薬剤により防除効果に影響を受けることが知られ、
ベルクート水和剤との混用は防除効果が上がるが、キノンドーフロアブルやある
種の殺虫剤では防除効果が低下する。これまで知見の無かったアンビルフロアブ
ルやインダーフロアブルの混用効果について検討した結果、アンビルフロアブル
に ベ ル ク ー ト 水 和 剤 あ る い は ユ ニ ッ ク ス 顆 粒 水 和 剤 47 お よ び イ ン ダ ー フ ロ ア ブ
ル に ベ ル ク ー ト 水 和 剤 を 混 用 し た 場 合 、単 剤 よ り 防 除 効 果 が 向 上 し た( 表 1 )。さ
ら に 、栽 培 ほ 場 で も 開 花 前 後 か ら 開 花 20 日 後 に 使 用 す る DMI 剤 に ベ ル ク ー ト 水 和
剤 を 混 用 す る と 防 除 効 果 が 向 上 し た ( 表 2 )。
今 回 の 調 査 に よ り 、 本 県 の ナ シ 黒 星 病 菌 の DMI 剤 耐 性 が さ ら に 発 達 し て い る こ
とが明らかとなった。今後、ナシ黒星病に対する薬剤防除を安定して継続するた
めに、以下の点に留意する必要がある。
3
DMI 剤 と QoI 剤 の 年 間 使 用 回 数
① DMI 剤 は 薬 剤 耐 性 が 発 達 し て い る も の の 、 浸 透 性 が あ る た め 、 防 除 効 果 は 保
護殺菌剤より優れる。今後も使用を続けるためには、他系統剤との混用の上、春
季防除で年 2 回、全体でも年 3 回以内の使用にとどめる。
② QoI 剤 は 防 除 効 果 が 優 れ る も の の 、 薬 剤 耐 性 発 達 リ ス ク が 高 い た め 、 他 系 統
剤との混用の上、春季防除で年 1 回、全体でも年 2 回以内の使用にとどめる。
28
29
120
100
80
防
60
除
価 40
20
0
2007
2015
×4000
2007
2015
×2000
スコア顆粒水和剤 アンビルフロアブル
図1
2007
2015
×10000 ×8000
インダーフロアブル
2007
2015
×4000
2015
2015
×4000 ×3000
ルビゲン水和剤 オンリーワンF スクレアF
福岡県の複数の栽培園地から採取されたナシ黒星病菌に対する各種薬剤の
防除効果
1)脚注は上から、黒星病菌採取年、希釈倍率、薬剤名。薬剤名の F はフロアブ
ルを示した。
2 ) 薬 剤 処 理 後 に 0.2~ 2.5×10 5 個 /ml の 分 生 子 を 接 種 し 、 接 種 28 日 後 調 査 し た
発 病 度 か ら 防 除 価 を 求 め た 。 な お 、 2007 年 と 2015 年 の 無 処 理 の 平 均 発 病 度 は
そ れ ぞ れ 62.5 と 24.1 で あ っ た 。
3 ) 2007 年 は 8~ 9 ほ 場 の 平 均 値 。 2015 年 の ス コ ア 顆 粒 水 和 剤 と ア ン ビ ル フ ロ ア
ブ ル は 14 ほ 場 の 平 均 。 他 の 剤 は 4 ほ 場 の 平 均 を 示 し た 。
4)エラーバーは標準偏差を示した。
29
30
表1 ナシ黒星病に対する各種DMI系剤と保護殺菌剤の混用効果
2007年
供試薬剤
2008年
希釈倍率
防除価
希釈倍率
防除価
単剤
2,000
69
1,000
79
+ベルクート水和剤
1 ,5 0 0
97
1 ,0 0 0
87
-
-
2,000
97
単剤
10,000
58
-
-
+ベルクート水和剤
1 ,5 0 0
84
-
-
ベルクート水和剤
1,500
84
1,000
66
スコア顆粒水和剤(DMI)
4,000
98
4,000
99
アンビルフロアブル(DMI)
+ユニックス顆粒水和剤47
インダーフロアブル(DMI)
1 )試 験 年 次 の 栽 培 圃 場 か ら 採 取 し た 黒 星 病 菌 分 生 子 を 1~ 5×10 5 個 /ml に 調 整
し 、 平 成 19 年 は 薬 剤 散 布 1 日 後 、 平 成 20 年 は 4 日 後 の 「 幸 水 」 苗 に 接 種 し
た。
2 ) 接 種 28 日 後 の 発 病 度 か ら 防 除 価 を 算 出 し た 。
3 ) 2007 年 と 2008 年 の 無 処 理 の 防 除 価 は そ れ ぞ れ 、 61 と 27 で あ っ た 。
4 )ユ ニ ッ ク ス 顆 粒 水 和 剤 47 の 開 花 直 前 の 散 布 は 花 弁 に 薬 害 を 起 こ す こ と が あ
る 。 ま た 、「 新 興 」 で 落 葉 を 起 こ し た 事 例 が あ る 。
表2 ナシ黒星病に対するベルクート水和剤とDMI系剤の混用散布を用いた体
系の防除効果(2008年)
栽培体系
調査日
6月6日
7月25日
発病葉率(%)
発病果率(%)
DMI系剤使用回数
(混用回数) 2)
開花前後
幼果期
雨よけ
試験区
0.3
4.7
3 (3)
1 (1)
栽培
慣行区
0.3
8.7
3 (1)
1 (0)
露地
試験区
3.7
6.1
3 (2)
1 (0)
栽培
慣行区
5.4
22.9
3 (0)
2 (0)
1) 雨よけ栽培は朝倉市、露地栽培はうきは市の現地ほ場で実施し、「幸水」
を調査した。試験期間中、降雨が多く、多発条件下の試験となった。
2) DMI系剤使用回数のうちベルクート水和剤と混用した回数を括弧内に示し
た。
3) 発病葉率は各区3樹、1樹200葉、発病果率は各区3樹、1樹100果を調査した。
4) DMI系剤耐性の発達を抑制するため、使用回数は原則3回以内にするべき
であるが、本年は多発条件下であったため、DMI系剤に他系統の薬剤を混用
し、耐性菌発達リスクの減少を努めた上で、DMI剤を4回使用した。
30
31
Ⅷ
果樹力メムシ類の生態と防除対策
1.加害種
果 樹 を 加 害 す る カ メ ム シ 類 と し て 全 国 的 に は 30 数 種 が 知 ら れ て い る が 、
そ の 中 で 発 生 が 多 い の は チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ 、ク サ ギ カ メ ム シ 、ツ ヤ ア オ
カ メ ム シ の 3 種 で 、時 と し て ア オ ク サ カ メ ム シ 、ホ ソ ヘ リ カ メ ム シ 、オ オ ク
モ ヘ リ カ メ ム シ が 加 害 す る こ と が あ る 。ま た 、南 日 本 地 域 で は 亜 熱 帯 に 分 布
するミナミアオカメムシやミナミトゲヘリカメムシによる加害も多い。
福 岡 県 に お い て 加 害 を 確 認 し た 果 樹 カ メ ム シ の 種 類 は 第 1 表 の よ う に 16
種で、果樹の種類により多少加害種の差はあるが、上記3種の発生が多い。
第1表
福岡県において果樹で加害を確認したカメムシ類
種 類 名
チャバネアオカメムシ
クサギカメムシ
ツヤアオカメムシ
カキ
●
○
●
ナシ
●
●
○
アオクサカメムシ
△
△
△
ホシハラビロヘリカメムシ
△
△
△
マルカメムシ
△
△
オオクモヘリカメムシ
△
△
ホソヘリカメムシ
△
シラホシカメムシ
△
マルシラホシカメムシ
△
モモ
●
●
○
△
ブドウ
△
△
△
△
ホソハリカメムシ
△
ミナミトゲヘリカメムシ
○
○
エサキモンキツノカメムシ
△
ヒメナガカメムシ
△
イチモンジカメムシ
△
ウスミドリカスミカメ
△
●:加害が多い
ミカン
●
○
●
△
○:加害を認める
31
△:稀に加害する
ウメ
●
○
○
32
2.各種果樹での寄生加害経過
(1)カ キ
カ キ ヘ の 飛 来 は 越 冬 密 度 の 高 い 年 に は 蕾 ~ 開 花 期 に す で に 見 ら れ る 。こ
の 時 期 、チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ に よ る 被 害 は な い が ク サ ギ カ メ ム シ は 蕾 を
落 下 さ せ る 。そ の 後 、落 花 期 に 入 る と 他 の 植 物 へ と 移 動 し 、カ キ 園 で は 見
ら れ な く な る が 、7 月 に な る と 再 び カ キ 園 へ の 飛 来 が 多 く な り 、加 害 が 始
ま る 。7 ~ 8 月 の 早 期 に 加 害 を 受 け る と 、加 害 部 が 指 で 押 し た よ う に 水 浸
状 と な り 、エ チ レ ン の 作 用 に よ っ て ヘ タ と 果 実 の 間 に 離 層 を 生 じ 、多 く は
加 害 後 2 ~ 3 日 で 落 果 す る 。9 月 以 降 に な る と 加 害 を 受 け て も 落 果 は ほ と
ん ど な く な る が 、や が て 加 害 部 が 凹 状 と な り 、そ の 部 分 の 果 肉 は ス ポ ン ジ
状 に な る な ど 、著 し く 品 質 を 損 な う 。な お 、西 村 早 生 で は 他 の 品 種 と 異 な
り 、8 月 に 加 害 を 受 け て も あ ま り 落 果 せ ず 、収 穫 期 に は 加 害 部 が 赤 褐 色 と
な り 、そ の 下 の 部 分 が え ぐ ら れ た よ う に な る 。ま た 、概 し て 渋 柿 は 甘 柿 に
く ら べ 被 害 が 少 な い 傾 向 に あ る が 、そ れ で も 大 発 生 の 年 に は 多 大 の 被 害 が
発生する。
(2)ナ シ
ナ シ ヘ の 飛 来 は 開 花 時 か ら 見 ら れ 、そ の 後 、収 穫 時 ま で の 長 期 に わ た り
加 害 を 受 け る が 、本 格 的 な 飛 来 は 7 月 以 降 で あ る 。全 期 間 を 通 じ ナ シ で は 、
加 害 さ れ て も カ キ の よ う に 落 果 す る こ と は な い が 、幼 果 時 の 加 害 で は 加 害
部 が ひ ど く 陥 没 し た 変 形 果 と な る 。収 穫 期 に 近 い 果 実 へ の 加 害 で も 加 害 部
が 浅 く 凹 む な ど 、い ず れ の 時 期 の 加 害 に よ っ て も 著 し く 外 観 品 質 を 損 な う
こ と に な る 。一 般 に 無 袋 栽 培 の 被 害 が 多 い が 、有 袋 栽 培 で も 被 袋 前 は も ち
ろ ん 、収 穫 期 近 く に は 、果 実 の 肥 大 に と も な っ て 、袋 と 果 実 と が 密 着 し て
くるので、袋の上からも加害する。
(3)カンキツ
カ ン キ ツ で は 開 花 時 よ り 飛 来 し 盛 ん に 花 や 蕾 を 吸 汁 す る が 、通 常 の 発 生
量 で あ れ ば こ の 時 期 の 吸 汁 は ほ と ん ど 実 害 が な い 。し か し 、発 生 量 が 極 め
て 多 い 年 は 落 葉 や 落 花 を ま ね く こ と が あ る 。ミ カ ン で の 被 害 は 早 い 年 で は
8 月 中 旬 、通 常 の 年 で は 9 月 中 旬 に な り 早 生 温 州 が 少 し 黄 色 み を 帯 び た 頃
か ら 多 く な る 。し か し 、発 生 量 が 極 め て 多 い 年 に は 6 月 下 旬 に 加 害 さ れ る
ことがある。
ま た 、成 熟 期 が 早 い ハ ウ ス ミ カ ン で は 6 ~ 7 月 に 加 害 を 受 け る 。気 温 が
高 い 早 い 時 期 に 加 害 を 受 け た 果 実 は 、斑 に 早 期 着 色 し 、や が て 離 層 を 生 じ
落 果 す る 。 し か し 、 10 月 中 旬 以 降 に な っ て 気 温 が 低 下 し た 時 期 に 加 害 を
受 け る と 、そ の ま ま 落 果 せ ず 、そ の う ち 果 面 に 褐 色 斑 が あ ら わ れ 腐 敗 し や
す く な る も の も あ る が 、外 観 が 全 く 変 わ ら な い 果 実 も 多 い 。た だ 、い ず れ
の 被 害 果 で も 剥 皮 す る と 加 害 部 の 皮 と 果 肉 が く っ つ い た り 、ア ル ベ ド の 部
分 が 褐 変 し 、そ の 下 の 果 肉 が ス ポ ン ジ 状 と な っ た り し て お り 、品 質 を 低 下
さ せ る う え 、腐 敗 し 易 く な る な ど の 被 害 を 与 え る 。一 般 に 早 生 温 州 で は 被
害 が 多 く 、特 に 着 色 が 早 い 樹 は 集 中 的 に 加 害 を 受 け る 傾 向 に あ る た め 、早
生温州や普通温州のなかに極早生種が混植されていると被害が集中する
こ と が 多 い 。ま た 、一 般 に 中 晩 生 柑 橘 の 被 害 は 少 な い が 、伊 予 柑 で は 加 害
例 が 多 く 、発 生 が 極 め て 多 い 年 に は ネ ー ブ ル や 清 見 、日 向 夏 で も 加 害 を 受
けることがある。
32
33
(4)その他果樹類
カ メ ム シ が 加 害 す る そ の 他 の 果 樹 と し て 、モ モ 、ス モ モ 、ウ メ 、ブ ド ウ 、
ビ ワ 、キ ウ イ フ ル - ツ 、リ ン ゴ な ど 多 く の も の が あ り 、さ ら に 特 殊 な 例 で
は ク リ で も 被 害 を 認 め て い る こ と か ら 、加 害 程 度 の 差 は あ る も の の カ メ ム
シが加害しない果樹はないといってもよい。
3.発生生態
(1)越 冬
主 要 3 種 の カ メ ム シ は い ず れ も 成 虫 態 で 越 冬 す る が 、越 冬 す る 場 所 は 種
類 に よ っ て 異 な る 。チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ は 主 と し て 常 緑 広 葉 樹 林 の 落 葉
下 、ツ ヤ ア オ カ メ ム シ は 常 緑 広 葉 樹 の 樹 冠 内 、ま た ク サ ギ カ メ ム シ は 作 業
小 屋 の 中 や 大 木 の 樹 皮 下 で あ る 。な お 、越 冬 中 の チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ は
体色全体が周りの落葉と同じ暗褐色を呈している。
(2)餌植物
果樹を加害するカメムシ類は果樹園内で繁殖することはほとんどなく、
果 樹 園 外 の 各 種 植 物 で 増 殖 し た 成 虫 が 逐 時 飛 来 し て 加 害 す る 。広 食 性 で あ
り 、各 種 の 果 樹 の 他 に 多 数 の 植 物 を 吸 汁 す る 。現 在 ま で 福 岡 県 内 で 野 外 で
の 生 息 を 確 認 し た 植 物 は 第 2 ~ 7 表 の と お り で 、チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ は
成 虫 が 49 科 109 種 で 、 幼 虫 は 19 科 27 種 で あ る 。 ま た 、 ツ ヤ ア オ カ メ ム
シ で は 成 虫 が 2 3 科 3 3 種 、幼 虫 は ヒ ノ キ と ス ギ 及 び コ ブ シ の 3 科 3 種 だ け
で あ る 。 ク サ ギ カ メ ム シ で は 他 県 で の 確 認 も 含 め て 、 成 ・ 幼 虫 で 27 科 51
種以上の植物上での生息が記録されている。
これらの多くの植物の中で、栽植面積とカメムシの嗜好性から考えて、
主 た る 繁 殖 源 と な っ て い る の は ヒ ノ キ と ス ギ で あ る 。そ の た め 、両 種 植 物
の結実量の多少がカメムシの発生量や果樹の被害量に大いに影響するこ
とになる。
33
34
第2表チャバネアオカメムシ成虫の生息植物
科
マキ
スギ
ヒノキ
ヤマモモ
ブナ
ニレ
クワ
モクレン
ボロボロノキ
アケビ
メギ
クスノキ
アブラナ
バラ
ハイノキ
エゴノキ
モクセイ
キョウチクトウ
ナス
ゴマノハグサ
ノウゼンカズラ
マメ
ミカン
センダン
トウダイグサ
ウルシ
モチノキ
カエデ
ブドウ
アオイ
マタタビ
アオギリ
ツバキ
グミ
ウコギ
ツツジ
カキノキ
アヤメ
クロウメモドキ
ムラサキ
スイカズラ
キク
イネ
ヤシ
リュウゼツラン
ヤマノイモ
ゴマ
アカネ
種
イヌマキ
スギ
ヒ ノ キ ネズ サワラ
ヤマモモ
シラカシ イチイガシ クヌギ クリ アカガシ イタジイ ツブラジイ(コナラ)
エノキ
クワ(イチジク)
(シキミ) (ユリノキ) コブシ
ボロボロノキ
アケビ
ナンテン
クスノキ
(アブラナ)
ナシ モモ オオシマザクラ ヤマザクラ ミザクラ ソメイヨシノ
ウメ ビワ リンゴ スモモ タチシャリンバイ ユスラウメ
コデマリ オオカナメモチ カジイチゴ ナカバノモミジイチゴ
ウシコロシ クサイチゴ
ハイノキ ミミズバイ (クロキ)
エゴノキ
ネズミモチ ヒイラギ キンモクセイ
テイカカズラ
(ピーマン)(クコ) (ジャガイモ)(トマト)
キリ
キササゲ
モリシマアカシヤ フジ クズ ササゲ ネムノキ ニセアカシヤ
ミカン類 カンキツ類
センダン
ナンキンハゼ
ハゼノキ ヤマウルシ
ウメモドキ クロガネモチ イヌツゲ モチノキ
ヤマモミジ
ブドウ (ノブドウ)
ムクゲ タチアオイ フヨウ
キウイフル一ツ
アオギリ
サカキ ツバキ(サザンカ)
トウグミ アキグミ
タラノキ キヅタ ヤツデ コシアブラ
ヨドガワツツジ シャシャンボ ネジキ サツキ
カキ
アヤメ
ナツメ
チシャノキ
サンゴジュ ニワトコ コバノガマズミ
(ヒメムカシヨモギ)
グレインソルガム
シュロ
(キミガヨラン)
ヤマノイモ
(ゴマ)
ヘクソカズラ (クチナシ)
( 注 ) 太 字 は生 息 数 の 多 い 植 物
(
34
) は稀 に み られ る 植 物
35
第 3表
チャ バネアオ カメムシ幼 虫 の 生 息 植 物
科
種
スギ
ス ギ
ヒノキ
ヒ ノ キ ネズ サワラ
クワ
クワ イチジク
メギ
ナンテン
バラ
(ナシ)(ユスラウメ)
ミカン
ミカン類
トウダイグサ
ナンキンハゼ
ウルシ
ヤ マ ウ ル シ ハゼノキ
モチノキ
ウ メ モ ド キ イヌツゲ
ブドウ
ブドウ
アオイ
タチアオイ ムクゲ
アオギリ
アオギリ
カキノキ
カキ
モクセイ
ヒ イ ラ ギ ネズミモチ
ゴマノハグサ
キリ
スイカズラ
サンゴジュ
ノウゼンカズラ
キササゲ
イネ
グレインソルガム
アヤメ
(注)太字
アヤメ
は老齢幼虫を認める(
)は 稀 に 老 令 幼 虫 を 認 め る 植 物
は若令幼虫のみで老令幼虫を認めない
35
36
第4表
ツヤアオカメムシ成虫の生息植物
科
種
スギ
スギ
ヒノキ
ヤマモモ
ヒノキ
ヤマモモ
ブナ
イタジイ ツブラジイ アカガシ イチイガシ
ニレ
エノキ
バラ
ナシ ウメ (モモ) (サクラ)
マメ
(クズ)(モリシマアカシア)
ミカン
トウダイグサ
ウルシ
モクレン
アオギリ
ミカン類
カンキツ類
ナンキンハゼ
ハゼノキ
コブシ
アオギリ
ウコギ
コシアブラ
ツツジ
(ヨドガワツツジ)
カキノキ
カキ
ハイノキ
ハイノキ クロキ
エゴノキ
エゴノキ
モクセイ
ネズミモチ ヒイラギ
ムラサキ
(チシャノキ)
ゴマノハグサ
スイカズラ
クワ
ニワトコ
クワ
ボロボロノキ
(注)太字
キリ
ボロボロノキ
は生息数の多い植物 (
第5表
)は 稀 に み ら れ る 植 物
ツヤアオカメムシ幼虫の生息植物
科
種
スギ
スギ
ヒノキ
ヒノキ
モクレン
コブシ
(注)太字
は老齢幼虫を認める植物
36
37
第6表
クサギカメムシ成虫の生息植物
科
種
スギ
スギ
ヒノキ
ヒノキ
マツ
マツ類
ブナ
イチイガシ、クリ
クワ
クワ、イチジク
アブラナ
アブラナ
ナシ、モモ、サクラ類、ウメ、リンゴ、オウトウ、ビワ、ノイバラ、
モミジイチゴ、カジイチゴ、ナワシロイチゴ、オランダイチゴ、キイチゴ
バラ
エンドウ、インゲンマメ、ダイズ、アズキ、ササゲ、クズ、ヌスビトハギ、ハリエンジュ
マメ
カエデ
ヤマモミジ
カキノキ
カキ
モクレン
コブシ
ゴマノハグサ
キリ
ノウゼンカヅラ
キク
キササゲ
ゴボウ
スイカズラ
ナス
タニウツギ、ウグイスカズラ
イヌホオズキ
ウコギ
グミ
ウド、タラノキ
グミ類
ブドウ
ブドウ、ノブドウ
ウルシ
ウルシ、ヤマウルシ
ニシキギ
ミカン
マユミ
ミカン類、カンキツ類
ユキノシタ
ガクウツキ
ヒユ
ノゲイトウ
アカザ
アカザ
カバノキ
ハンノキ、ヤシャブシ
イネ
トウモロコシ、ムギ類
第7表
クサギカメムシ幼虫の生息植物
科
スギ
ヒノキ
マメ
モクレン
ゴマノハグサ
ノウゼンカズラ
種
スギ
ヒノキ
クローバー、インゲンマメ、ダイズ
コブシ
キリ
キササゲ
クワ
コウゾ
シソ
クサギ
37
38
(3)年間の発生経過
チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ の 生 活 模 式 図 は 第 1 図 に 示 し た と お り あ る 。落 葉
下 で 越 冬 し た 個 体 は 、4 月 に な る と 越 冬 場 所 を 離 脱 し て 次 々 と 好 適 な 餌
と な る 各 種 の 植 物 の 新 梢 、花 、果 実 な ど を 吸 汁 し な が ら 移 動 す る 。果 樹 以
外 で 春 ~ 初 夏 に か け て 特 に 生 息 数 が 多 い の は 、ヒ イ ラ ギ 、キ リ 、ク ワ 、ヤ
マ ウ ル シ 、シ イ 、カ シ 、ヤ マ モ モ 、サ ク ラ で あ る 。ま た 、夏 ~ 秋 に か け て
生 息 数 が 多 い 植 物 に は ヒ ノ キ 、ス ギ 、サ ワ ラ 、キ サ サ ゲ 、サ ン ゴ ジ ュ 、ネ
ズ ミ モ チ 、キ リ 、ハ ゼ 、タ ラ ノ キ が あ る 。た だ し 、キ リ の 他 は い ず れ も 果
実 が 結 実 し た 樹 だ け に み ら れ る 。ま た 、上 記 の 植 物 の う ち キ リ 以 外 は い ず
れも幼虫が発育する。
チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ の 場 合 、産 卵 は 5 月 下 旬 頃 か ら 見 ら れ る が 、こ の
時 期 に 産 卵 す る の は 第 1 次 産 卵 植 物 の ク ワ 、サ ク ラ 、ヒ イ ラ ギ 、ヤ マ ウ ル
シ な ど 限 ら れ た 植 物 で 、成 虫 ま で 発 育 す る 個 体 は 極 め て 少 な い も の と 思 わ
れる。主たる繁殖植物であるヒノキ、スギでの産卵は6月からである。
(11~3月)
(4~6月)
(7~10月)
落 葉 下
ヒイラギ、キリ、クワ、
ヤマウルシ、シイ、カシ、
ヤマモモ、サクラ
スギ、ヒノキ、キリ、
サンゴジュ、ハゼ、
タラノキ、キササゲ、
サワラ、ネズミモチ
ナシ、ミカン(花)、スモモ、
ウメ、モモ、カキ(花)
ナシ、カキ、ミカン
(10~11月)
シイ、カシ、ヒサカキ、マキ
第1図
チャバネアオカメムシの生活環模式図
な お 、ス ギ 、ヒ ノ キ 樹 上 で カ メ ム シ の 成 ・ 幼 虫 が 見 ら れ る 時 期 は 年 に よ
り 大 き な 変 動 が あ る 。ヒ ノ キ で 調 査 し た 結 果 に よ る と 、8 月 中 旬 か ら ほ と
ん ど 見 ら れ な い 年 が あ る 一 方 、 10 月 ま で 樹 上 に 多 く の 成 ・ 幼 虫 が 見 ら れ
る 年 も あ り 、ヒ ノ キ 上 の 生 息 状 況 と 果 樹 の 被 害 の 多 少 と の 間 に 深 い 関 係 が
ある。
卵 か ら 次 世 代 の 成 虫 に な る ま で の 期 間 は 温 度 に よ り 差 が あ る が 、夏 期 の
温 度 で は 約 30~ 40 日 で あ る 。 ま た 、 成 虫 の 産 卵 は 幼 虫 期 に 感 知 し た 長 日
条 件 で の 日 長 に 反 応 し 、そ の 臨 界 日 長 は 8 月 中 旬 ご ろ の 約 1 3 .5 時 間 で あ
る 。従 っ て 、産 卵 開 始 時 期 と 幼 虫 の 発 育 期 間 お よ び 日 長 反 応 か ら チ ャ バ ネ
ア オ カ メ ム シ の 年 間 の 発 生 回 数 を 推 定 す る と 、第 2 図 の よ う に 1 ~ 2 回 が
38
39
ほ と ん ど で 、最 大 で も 3 回 と な る 。た だ し 、成 虫 の 生 存 期 間 は 約 1 年 も あ
り 、そ の う え 次 々 と 産 卵 す る の で 各 世 代 の 虫 が 混 発 し て お り 、世 代 の 明 確
な区別はできない。
ツ ヤ ア オ カ メ ム シ の 発 生 経 過 に つ い て は 明 ら が で な い が 、主 に ス ギ と ヒ
ノ キ で 幼 虫 が 繁 殖 す る こ と を 考 慮 す る と 、最 大 年 2 回 で 、ほ と ん ど は 1 回
の発生であると思われる。
39
40
発育態
11
<越冬世代>
成 虫
~4月
+++
5
+++
6
7
+++
+++
8
9
10
<第1世代>
卵
( ○ ○ ○ ○ )● ● ● ● ●
幼 虫
(- - )- - - - - -
成 虫
(+ + )+ + + + + + + + + +
→→越冬
<第2世代>
卵
(● ● )
●●● ●●●
幼 虫
-
--- --- --
成 虫
+ +++ +++→
→越冬
<第3世代>
卵
(● ● ● )
幼 虫
(- - - - )
成 虫
(+ + )→
→越冬
+:成虫
○:第1次産卵植物のクワ、サクラ、ヒイラギなどでの産卵
●:主たる繁殖植物のヒノキ、スギでの産卵
-:幼虫
( ): 発 生 が 少 な い こ と を 示 す
第2図チャバネアオカメムシの年間発生模式図
4 ~ 5 月 に ク サ ギ カ メ ム シ が 多 く 採 集 さ れ る 植 物 と し て は イ チ イ ガ シ 、マ
ツ 、サ ク ラ 、ス ギ な ど が あ り 、こ れ ら の 樹 木 が 越 冬 明 け 後 の 成 虫 の 主 要 な 餌
植 物 に な っ て い る と 思 わ れ る 。室 内 飼 育 に よ る と 、越 冬 成 虫 の 産 卵 は 5 月 末
から始まるが、多くは6月以降で、6月中旬から7月上旬にピークとなる。
こ の 時 期 の 野 外 で の 増 殖 植 物 は ク サ ギ 、キ リ 、エ ン ド ウ な ど で 、7 月 中 旬 以
降になると、スギ、ヒノキで幼虫が認められる。
ク サ ギ カ メ ム シ の 成 虫 は 日 長 14 時 間 45 分 以 下 (福 岡 県 で は 8 月 1 半 旬
に 相 当 )に な る と ほ と ん ど 産 卵 し な く な る の で 、 福 岡 県 で の 発 生 回 数 は 年
1 回 が 基 本 で 、 一 部 2 回 と 考 え ら れ る 。 (第 3 図 )。
40
41
発育態
~4月
5
6
7
8
9
11
<越冬世代>
成 虫
+++ +++ +++ +++ ++
<第1世代>
卵
○ ○○○ ○○○ ○
幼 虫
--- --- --- -
成 虫
+++
+++ +++
→→越冬
<第2世代>
卵
○○○
幼 虫
-- --- --
成 虫
++ ++
→
越冬
+:成虫
○:卵
-:幼虫
第3図 クサギカメムシの年間発生模式図
10
+
→
(4)活動の日周性
果樹を加害するカメムシ類は夜行性で、日没後~ 1 時間が最も盛んに飛
翔し、加害する。
昼 間 で も 果 実 を 吸 汁 す る こ と が あ る が 、通 常 は 葉 の 陰 や 果 実 と 果 実 の 隙
間 な ど に 潜 ん で い る 。そ の た め 、昼 間 カ メ ム シ を 果 樹 園 で 見 か け た 場 合 に
は 、夜 に は 数 倍 の も の が い る と 考 え て よ い 。但 し 、気 温 が 低 下 す る 9 月 中
旬以降になると昼間にも移動し吸汁する。
第 8 表 キ リ 下 お と り 法 に よ る カ メ ム シ の 時 刻 別 飛 来 消 長 (1989)
種 名
調査日
9 : 0 0 11 : 0 0 1 3 : 0 0 1 5 : 0 0
17:00 19:00 日 中 *
チャバネアオカメムシ 9 / 4
10/ 9
クサギカメムシ
ツヤアオカメムシ
9/4
10/ 9
9/4
10/ 9
197
54
17
10
9
36
3
25
3
21
9
4
12
61
9
0
1
19
1
0
0
5
2
0
1
9
0
0
0
5
0
0
0
6
0
0
0
5
2
0
1
14
* 13:00 と 15:00 に 採 集 さ れ た 虫 数 の 合 計 。
(5)飛翔距離
カ メ ム シ の 飛 翔 能 力 は 非 常 に 高 い 。移 動 距 離 は 周 辺 の 環 境 条 件 や カ メ ム
シ の 飢 餓 の 程 度 な ど に よ り 異 な る も の と 思 わ れ る 。農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場
で の フ ラ イ ト ミ ル に よ る カ メ ム シ の 飛 翔 実 験 に よ る と 、一 日 に 平 均 5 ㎞ 近
く 飛 ぶ こ と が 可 能 で あ る 。ま た 、大 発 生 時 に は 沖 合 数 キ ロ の 釣 り 船 の 明 か
りに多数のチャバネアオカメムシが飛来した事例がいくつも報告されて
いる。
(6)集合フェロモン
カ メ ム シ で は 、集 合 フ ェ ロ モ ン に よ る 他 個 体 の 誘 引 現 象 が あ る 。集 合 フ
ェ ロ モ ン の 存 在 が 確 認 さ れ て い る カ メ ム シ は 、チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ 、ツ
ヤ ア オ カ メ ム ン 、ミ ナ ミ ア オ カ メ ム シ 、イ チ モ ン ジ カ メ ム シ 、ホ ソ ヘ リ カ
メ ム シ 、ア シ ビ ロ ヘ リ カ メ ム シ で 、い ず れ も 雄 の 成 虫 が 多 数 の 同 種 類 の 雌
41
42
雄 の 成 虫 を 誘 引 す る 。チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ の 集 合 フ ェ ロ モ ン は 福 岡 農 総
試と農水省農業環境技術研究所等を中心とした共同研究により化学成分
が 明 ら か に な り 平 成 7 年 に 単 離 合 成 さ れ た 。こ の 集 合 フ ェ ロ モ ン は 同 種 の
み な ら ず 、果 樹 加 害 性 カ メ ム シ 類 の ツ ヤ ア オ カ メ ム シ 、ク サ ギ カ メ ム シ お
よびチャバネアオカメムシの寄生性天敵類であるマルボシヒラタヤドリ
バエ、クロタマゴバチ類を誘引する。
(7)天 敵
チャバネアオカメムシの捕食性天敵としては、各種クモ類、カマキリ、
サシガメ類が見られる。
寄生性天敵としては成虫に寄生するマルボシヒラタヤドリバエおよび
3 種 の 卵 寄 生 蜂 が 確 認 さ れ て い る 。マ ル ボ シ ヒ ラ タ ヤ ド リ バ エ は カ メ ム シ
の 体 内 で 幼 虫 越 冬 し 、年 間 約 5 世 代 を 繰 り 返 す 。寄 生 率 は 場 所 に よ る 変 動
が 大 き く 、 高 い 場 合 に は 40% ~ 50% に な る こ と も あ る が 、 平 均 約 5 % で
ある。
卵 寄 生 蜂 の 寄 生 率 は ヒ ノ キ で の 産 卵 初 期 に は 低 い が 、8 月 に な る と 6 0 %
以上の卵塊が寄生されている。
糸状菌やウイルス、バクテリアなどの天敵微生物類の発生も見られる。
福岡農総試においてはチャバネアオカメムシに病原性を持つ糸状菌8株、
ウイルス1株を分離している。
4.発生予察法
果 樹 を 加 害 す る カ メ ム シ 類 は 前 述 の よ う な 複 雑 な 発 生 生 態 を 持 ち 、発 生 時
期 や 発 生 量 の 変 動 が 極 め て 大 き い 。し か し 、発 生 時 期 や 発 生 量 の 変 動 が 大 き
く 、突 発 的 な 発 生 を す る 害 虫 こ そ 発 生 予 察 の 必 要 性 が 高 く 、正 確 で 迅 速 な 情
報 の 提 供 が 要 望 さ れ る 。現 在 ま で に 確 立 し た 果 樹 カ メ ム シ 類 の 発 生 予 察 法 に
は次のようなものがある。
(1)越冬密度調査
チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ は 主 と し て 落 葉 の 下 で 越 冬 し て い る が 、前 述 の よ
う に 体 色 が 周 り の 落 葉 と よ く 似 た 暗 褐 色 に 変 化 し て い る う え 、脚 を ち ぢ め
て 動 か な い の で 、野 外 で の 発 見 は か な り 困 難 で あ る 。し か し 、一 定 面 積 の
落 葉 を 集 め 、 11 ㎜ 目 の フ ル イ に か け て 持 ち 帰 り 、 室 内 で 調 査 す る フ ル イ
法により、簡便で正確な調査が出来る。
越 冬 調 査 の た め に 落 葉 を 集 め る 場 所 は 、チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ の 越 冬 に
適 し た 南 向 き 斜 面 の 常 緑 広 葉 樹 林 が よ い 。調 査 は 大 部 分 の 個 体 が 落 葉 中 に
生 息 し て い る 11 月 下 旬 ~ 3 月 に 行 な う 。
ク サ ギ カ メ ム シ は 、リ ン ゴ 箱 ト ラ ッ プ や 簡 易 小 屋 ト ラ ッ プ を 作 成 し 、集
まった個体数を調査する。
ツ ヤ ア オ カ メ ム シ は 主 に 常 緑 広 葉 樹 の 樹 上 で 越 冬 し て い る の で 、大 型 捕
虫網により払い落し調査をする。
い ず れ の カ メ ム シ 類 の 越 冬 量 も 場 所 に よ る 密 度 差 が 大 き い の で 、な る べ
く 多 く の 地 点 で 調 査 を 実 施 す る と と も に 、毎 年 同 一 場 所 で 調 査 を 継 続 す る
こ と が 大 切 で あ る 。越 冬 密 度 を 調 査 す る こ と に よ っ て 、7 月 末 頃 ま で の 果
樹の被害量を予測できる。
42
43
(2)予察灯による調査
前 記 の 3 種 カ メ ム シ は 、い ず れ も 強 い 走 光 性 が あ る の で 、予 察 灯 に 誘 殺
される。予察灯の誘殺数を7月下旬を境として前期と後期とに分けると、
前 期 に 誘 殺 が 多 い 年 に は モ モ 、ウ メ 、ス モ モ 、ナ シ で 被 害 が 多 く 、後 期 に
多 い 年 に は カ キ と ミ カ ン で の 被 害 が 多 い 傾 向 に あ る 。カ キ の 被 害 量 は 第 4
図 の よ う に 7 月 下 旬 ~ 8 月 下 旬 の 誘 殺 量 と の 間 に 高 い 正 の 相 関 が あ り 、こ
れ を 利 用 す る こ と に よ っ て 正 確 な 被 害 量 の 予 測 が で き る 。し か し 、予 察 灯
での誘殺数増加時期と果樹園への飛来時期は必ずしも一致しない場合も
あ る の で 、予 察 灯 だ け で は 果 樹 園 へ の 飛 来 時 期 は 予 察 し 難 い 。新 成 虫 の 果
樹園飛来時期は後述のヒノキ球果の口針鞘数調査により予察する。
カ
キ
被
害
果
率
100
90
80
(%)
70
60
Y=0.03X+3.74
R=0.94
50
40
30
20
10
0
7月下旬~8
0
1000
2000
3000
4000
月下旬のチャバネ
とツヤアオの合計
誘殺虫数
第4図
カキ果実の被害とカメムシ類の誘殺虫数との関係
(3)指標植物の調査
前述のように果樹カメムシは時期によって多く生息する植物の種類が
異 な っ て い る の で 、野 外 で の 発 生 密 度 を 知 る た め に は 時 期 別 に 対 象 と す る
植 物 を 変 え な が ら 追 跡 調 査 し な け れ ば な ら な い 。普 遍 的 に 果 樹 カ メ ム シ 類
が多く集まり、指標植物として適当とされるのは第9表のとおりである。
各 地 の 指 標 植 物 上 で の 密 度 調 査 を 実 施 す る こ と に よ り 、カ メ ム シ が 果 樹 園
に 侵 入 す る 前 に 発 生 の 動 向 を 知 り 、適 切 な 対 策 を 講 じ る こ と が 出 来 る 。特
に 新 成 虫 の 発 生 動 向 を 知 る た め に は 、7 月 以 降 の ヒ ノ キ 、ス ギ 樹 上 に お け
る生息動向を把握することが重要である。
な お 、カ メ ム シ の 生 息 数 は 場 所 に よ る 差 が 大 き い の で 、な る べ く 多 く の
地点で調査し、面における密度の推移を知ることが大切である。
43
44
第9表
月
5-6
7-8
サ
ク
ミ
キ
ヒ
ツ
ヤ
ヒ
ス
サ
キ
チャバネアオカメムシの時期別指標植物
樹種名
主な生息部位
クラ
ワ
カン
リ
イラギ
ツジ
マモモ
ノキ
ギ
ンゴジュ
リ
果
果
花
新
果
花
果
球
球
果
新
実・新梢
実・新梢
葉
実
。新梢
実・新梢
果
果
実
葉
(注)◎:特に寄生を多く認める
△:わずかに寄生を認める
発育態
成虫
幼虫
◎
△
◎
〇
◎
-
◎
△
◎
◎
〇
-
〇
△
◎
◎
◎
◎
◎
〇
◎
△
卵
△
〇
-
△
〇
-
△
〇
〇
〇
△
○:寄生を認める
-:寄生を認めない
(4)ヒノキ球果の豊凶による果樹の被害量の予察
チャバネアオカメムシの増殖源であるヒノキ球果の豊凶はカメムシの
発 生 量 を 大 き く 左 右 す る 。ヒ ノ キ は 前 年 の 夏 に 花 芽 分 化 す る た め 、冷 夏 長
雨の翌年に球果が少なく、高温干ばつの翌年には多数結実する傾向があ
る 。球 果 の 結 実 量 は 以 前 ま で は 規 則 正 し く 隔 年 お き に 豊 凶 を 繰 り 返 し て い
た が 、近 年 は 異 常 干 ば つ や 冷 夏 長 雨 の 影 響 を 受 け 、隔 年 結 果 性 が 崩 れ て お
り 、特 に 長 雨 の 年 の 翌 年 は 結 実 量 が 極 少 と な る 傾 向 に あ る 。ま た 、カ メ ム
シ に よ る 被 害 は 、ヒ ノ キ の 球 果 の 結 実 量 が 極 多 ~ 多 の 年 に は 少 な く 、少 な
い 年 に 多 発 す る 傾 向 に あ る 。た だ し 、結 実 量 が 極 端 に 少 な い 年 は 被 害 も 少
な く な る と い う よ う な 複 雑 な 関 係 が あ り 、こ の 事 か ら あ る 程 度 長 期 の 被 害
量 の 予 察 が 可 能 で あ る (第 10 表 )。
44
45
第10表 ヒノキ球果の豊凶とチャバネアオカメムシの発生・カキの被害の関係 (年次別)
誘殺数 (頭) (筑紫野市 )
被害度 (カキ)
越冬数
ヒノキ
年次
頭/㎡
球果量
前期
後期
合計
発生型
西村 松本 早秋 富有
1984
0.4
多
338
4,984
5,322
後期
0.7
3.7
-
2.0
1985
2.5
少
5,583 41,807 47,390
後期
16.6
12.4
- 12.5
1986
1.1
中
1,896
3,246
5,142
後期
2.3
2.8
-
4.3
1987
2.1
やや多
2,222
1,979
4,201
無峰
2.0
3.0
-
2.8
1988
2.3
極少
1,408
412
1,820
前期
1.6
1.5
-
0.7
1989
0.4
中
120
2,819
2,939
後期
3.9
4.8
-
2.7
1990
2.1
やや多
8,381 118,069 126,450
後期
10.8
12.6
- 16.8
1991
5.5
〃
2,441
1,691
4,132
無峰
1.5
7.5
-
7.0
1992
1.3
極少
3,406
708
4,114
前期
2.6
5.0
-
2.6
1993
0.1
やや多
86
140
226
無峰
1.1
0.2
1994
1.3
極少
3,353
200
3,553
前期
1.9
0.6
-
2.2
1995
0.1
極多
23
1,076
1,099
後期
0.02
1.0
-
1.4
1996
14.8
少
36,490
5,717 42,207
前期
9.4 13.4
- 11.2
1997
0.2
やや少
68
106
174
無峰
0.2
0.3
-
0.8
1998
0.5
〃
7,132 66,781 73,913
後期
0.7
5.8
-
5.5
1999
0.6
やや多
2,434
5,917
8,351
後期
1.5
4.2
-
3.6
2000
1.3
少
14,277
1,149 15,426
前期
3.1
2.9
-
2.5
2001
0.1
多
109 57,137 57,246
後期
0.2
5.5
-
6.1
2002
4.6
中
54,330
4,430 58,760
前期
9.1 15.2
-
9.6
2003
0.3
やや多
31
2,439
2,470
後期
0.1
2.0
-
2.3
2004
4.7
極少
88,235
4,238 92,473
前期
4.4
9.2
-
6.4
2005
0.1
多
51
1,846
1,897
後期
2.4
0.8
-
2.0
2006
1.8
やや多
8,178 12,037 20,215
後期
9.1
20
-
8.7
2007
1.1
極少
1,019
2,634
3,653
後期
1.3
3.8
-
0.4
2008
0.5
やや多
2,349 11,930 14,279
後期
9.6 14.1
-
6.4
2009
1.3
少~やや少
1,049
3,113
4,162
後期
0.4
0.2
-
1.3
2010
2.0
やや少
1,820
7,889
9,709
後期
0.6
1.5
-
1.9
2011
0.7
中
1,633
9,936 11,569
後期
0.4
1.1
-
0.1
2012
3.2
少
17,249
3,417 20,666
前期
1.2
0.4
-
0.6
2013
0.7
中
- 58,212 58,212
後期
3.2
4.4
-
7.4
2014
4.8
中
13,530
2,648 16,178
前期
2.3
-
-
3.5
2015
0.9
やや少
363
442
805
無峰
0.6
-
0.1
0.8
2016
0.8
やや少
285
9,763
10,048
後期
1.8
-
0.1
0.4
注①越冬量は県内平均値、被害度(収穫前調査)は朝倉農林管内の平均値
注②誘殺量は予察灯による誘殺量 前期:4~8月3半旬、後期:8月3半旬~10月
注③被害度={(N 1×1+N 2×3+N 3×5)/(調査果実数×5)}×100
N 1:吸汁痕数1~2の果実、N 2:吸汁痕数3~4の果実、N 3:吸汁痕数5以上の果実
注④2013年誘殺数(筑紫野市)は、予察灯故障のため4月1日~8月5日までデータなし
45
46
80
100
1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 7 7 7 7 7
6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 9 8 7 6 5
カキ果実の被害度
年 ヒノキ球果
0
20
40
60
度 の豊凶
少
多
少
多
中
中
極少
多
少
多
少
中
多
極少
やや多
やや多
やや多
極少
やや多
極少
極少
少
やや多
やや少
やや多
少
多
並
やや多
少 台風による落果等のため調査未実施
多
やや多
極少
やや多
やや少
やや少 調査未実施
中
少
中
中
やや少
やや少 ヘタムシ等による落果のため調査未実施
第5図
ヒノキ球果の豊凶とカキ果実の被害程度
注)①被害度の算出法は第10表の注③に同じ
② 8 1 年 ま で は 旧 園 芸 試 験 場 、そ れ 以 降 は 福 岡 農 総 試 場 内 の 無 防 除
園 に お け る 約 200 果 の 被 害 度 を 示 す 。
③04年、10年と16年は調査未実施
46
47
(5)ヒノキ球果の口針鞘による果樹園への飛来時期の予察
カ メ ム シ に 加 害 さ れ た ヒ ノ キ 球 果 に は「 口 針 鞘 」ま た は「 唾 液 鞘 」と よ
ば れ る 吸 汁 痕 が 残 る 。口 針 鞘 は カ メ ム シ が 吸 汁 す る 際 に 出 し た 消 化 液 が 固
ま っ た も の で 、白 色 ~ 黄 白 色 の 針 状 の 物 質 で あ る 。カ メ ム シ 類 は 、球 果 が
餌 と し て 不 適 に な る と そ の 場 か ら 離 脱 し 果 樹 園 に 飛 来 す る 。カ メ ム シ の 加
害を受けていない球果は越冬に入るまで餌として好適な条件を満たして
お り 、加 害 さ れ る こ と に よ っ て 不 適 に な る 。そ こ で 、球 果 の 口 針 鞘 数 を 調
査することにより、カメムシ類がヒノキを離脱する時期が予測できる。
こ れ ま で の 研 究 に よ り 、 ヒ ノ キ 球 果 1 果 当 た り の 口 針 鞘 数 の 平 均 が 25
本を超えると多くの成虫はヒノキを離脱することが明らかになった。ま
た 、 平 均 口 針 鞘 数 が 25 本 を 越 え る 日 は 、 次 式 を 用 い て ほ ぼ 推 定 で き る 。
Y=54.17-3.776X+0.01937X 2。Xは7月下旬の1
果 当 た り 平 均 口 針 鞘 数( 本 )。7 月 下 旬 の 調 査 日 に Y( 日 )を 加 え た 値 が
口 針 鞘 数 が 25 本 を 超 え る 日 で あ る 。
( 6 )積 算 温 度 法 に よ る チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ の ヒ ノ キ で の 発 育 開 始 時 期 の
予測
主要増殖源であるヒノキでチャバネアオカメムシ幼虫が発育を始める
時 期 は 年 次 に よ り 異 な る こ と が 知 ら れ て い る 。発 育 開 始 時 期 の 早 晩 は ヒ ノ
キ 上 で の 年 間 世 代 数 を 決 定 す る 大 き な 要 因 の 一 つ で あ り 、発 育 開 始 時 期 を
予 測 す る こ と は 予 察 上 重 要 で あ る 。各 時 期 の ヒ ノ キ 球 果 を 用 い た チ ャ バ ネ
ア オ カ メ ム シ 2 齢 幼 虫 の 飼 育 試 験 を 数 年 間 実 施 し た 結 果 か ら 、発 育 開 始 時
期 が 予 測 で き る よ う に な っ た 。2 月 1 日 か ら の 平 均 気 温 ( 0 ℃ 以 上 ) の 積 算
値 が 約 2,650 日 度 を 超 え る と ヒ ノ キ 球 果 で チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ 2 齢 幼
虫が発育可能になる。
第 11 表
ヒノキ球果でチャバネアオカメムシ2齢幼虫が
発育を開始する時期と積算温度
調査年次
発育開始月日
2月1日からの積算温度
1995 年
7 月 14 日
2,659 日 度
1996 年
7 月 15 日
2,646
1997 年
7月 9日
2,672
1998 年
7月 6日
2,670
1999 年
7 月 12 日
2,721
注 ) 農 総 試 場 内 の ヒ ノ キ を 供 試 し 、 約 5日 間 隔 で 調 査 し た 。
47
48
第7図
ヒノキ球果の口針鞘数と樹上の新成虫数の関係
図 中 の 折 れ 線 は 口 針 鞘 数 ( 縦 線 は SD) 、 棒 は 新 成 虫 数 を 表 す 。
48
49
(7)夏季の降雨日数によるカキの被害量の予測
カキの被 害 量 とカメムシ類 の幼 虫 の増 殖 期 である7月 ~8月 の降 雨 日 数 の関
係 を み る と 、 降 雨 日 数 が 少 な い 年 に は 被 害 が 多 発 す る 傾 向 が あ る ( 第 8 図 。筑 紫
野 市 、 1982~ 2000)。
カ
キ
の
被
害
度
100
80
60
40
20
0
5
10
15
20
25
30
35
7月~8月の降雨日数(1mm以上)
第8図 夏期の降雨日数とカメムシによるカキの被害との関係
(8)チャバネアオカメムシの集合フェロモンによる予察
栄養状態の良いチャバネアオカメムシ雄成虫は集合フェロモンを放出
し 、同 種 の 雌 雄 成 虫 お よ び 幼 虫 、ツ ヤ ア オ カ メ ム シ や ク サ ギ カ メ ム シ を 誘
引 す る 。誘 引 さ れ る の は 栄 養 蓄 積 の 不 十 分 な 固 体 で あ り 、そ の 誘 引 消 長 は
果樹園への飛来消長と概ね一致する。集合フェロモンは合成が可能とな
り 、 平 成 10 年 度 か ら ポ リ エ チ レ ン チ ュ ー ブ に 封 入 し た も の が チ ヤ バ ネ ア
オ カ メ ム シ の 誘 引 剤 と し て 供 給 さ れ て い る 。こ の 誘 引 剤 は 夏 季 の 高 温 期 で
も約1カ月間有効である。
表 12
果樹カメムシ類に対する各種予察法とその適用
予察法
カメムシ発生量 果樹の被害量
果樹園への飛来時期
越冬量調査
◎ ( 4~ 7 月 )
◎ ( 4~ 7 月 )
△ ( 4~ 7 月 )
予察灯
★
★(飛来開始後)
×
集合フェロモントラップ
★(飛来開始後) ★
★
組
み
合
わ
ヒノキ樹上個体数調査
◎
×
△
せ
る
と
◎
ヒノキ球果上の口針鞘
×
×
◎ ( 8~ 9 月 )
◎:高精度に予測できる △:大まかには予測できる
×: 予 測 で き な い
★:現状を把握できる
49
50
5.防除対策
(1)薬剤防除
カ メ ム シ 類 は 園 外 か ら 飛 来 し 、果 実 を 加 害 す る の で 防 除 薬 剤 は 速 効 的 に
作 用 し な い と 被 害 の 軽 減 に は つ な が り に く い 。ま た 、長 期 間 に わ た り 次 々
に 飛 来 す る た め 、残 効 が 短 い 薬 剤 は 頻 繁 に 散 布 を し な け れ ば な ら ず 、農 家
の 労 力 的 負 担 が 大 き い 。そ の た め 、カ メ ム シ 類 の 防 除 に は 、速 効 的 で 、し
かも残効が長い薬剤が求められる。
現 在 あ る 殺 虫 剤 の 中 で 、こ の よ う な 条 件 を 満 た す 薬 剤 と し て は 、合 成 ピ
レスロイド系およびネオニコチノイド系殺虫剤がある。虫体散布を行う
と 、多 く の 有 機 リ ン 系 殺 虫 剤 で も 速 効 的 な 効 果 が 認 め ら れ る が 、残 効 が 短
い た め 、実 用 的 に は 合 成 ピ レ ス ロ イ ド 系 薬 剤 よ り 劣 る 。薬 剤 の 残 効 期 間 は
気 象 条 件 や 散 布 時 期 に よ り 異 な り 、一 概 に 何 日 と は 言 え な い 。本 県 に お い
て カ キ で 行 っ た チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ に 対 す る 殺 虫 力 の 残 効 試 験 で は 、最
も 長 い マ ブ リ ッ ク 水 和 剤 、 テ ル ス タ ー 水 和 剤 及 び MR. ジ ョ ー カ ー 水 和 剤
が 10 日 程 度 の 残 効 性 を 認 め た 。 ま た 、 同 じ 合 成 ピ レ ス ロ イ ド 系 薬 剤 で あ
る ア グ ロ ス リ ン 水 和 剤 、パ ー マ チ オ ン 水 和 剤 は 、マ ブ リ ッ ク 水 和 剤 に は や
や 劣 る も の の 3 日 ~ 7 日 の 残 効 性 が あ っ た 。こ れ に 対 し 、有 機 リ ン 系 殺 虫
剤 で あ る ス ミ チ オ ン 水 和 剤 は 1 日 程 度 の 残 効 性 で あ っ た 。ま た 合 成 ピ レ ス
ロ イ ド 系 薬 剤 は 、殺 虫 濃 度 以 下 に な っ て も 吸 汁 防 止 作 用 を 発 揮 す る た め 現
地 で は 長 期 間 の 被 害 防 止 効 果 が あ る 。ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 系 殺 虫 剤 の カ メ ム
シ に 対 す る 活 性 は 、主 に 吸 汁 阻 害 効 果 と し て 現 れ 、殺 虫 活 性 は 一 般 に 低 い 。
本 系 統 の 薬 剤 の 中 に は 、合 成 ピ レ ス ロ イ ド 系 殺 虫 剤 の 中 で 最 も 長 期 の 残 効
を期待できる剤と、同等かそれ以上の残効が期待できる剤もある。
し か し 、合 成 ピ レ ス ロ イ ド 系 及 び ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 系 薬 剤 は カ メ ム シ に
対 し 高 い 効 果 を 有 す る 反 面 、天 敵 類 に 対 す る 影 響 も 大 き い の で 、カ イ ガ ラ
ムシ類やハダニ類のリサージェンスを引き起こすことがある。
ま た 、カ メ ム シ の 種 類 に よ っ て 薬 剤 の 効 果 が 異 な る の で 注 意 が 必 要 で あ
る 。た と え ば 、チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ に 効 果 の 高 い マ ブ リ ッ ク 水 和 剤 は ク
サ ギ カ メ ム シ に は や や 劣 り 、ア グ ロ ス リ ン 水 和 剤 、テ ル ス タ ー 水 和 剤 な ど
が 比 較 的 効 果 が 高 い よ う で あ る 。 (第 13 表 )
50
51
第 13
チャバネアオカメムシに対する各種薬剤の効果
平成28年度8月2日現在
分
登 録 の 有 無
類
薬 剤 名
接触効果
残効性
ナシ
カキ
ミカン カンキツ
モモ
マ ブ リ ッ ク 水 和 剤 20
A
A
○
○
○
○
マブリックEW
A
A
○
○
○
○
テルスター水和剤
A
A
○
○
○
○
テルスターフロアブル
A
A
○
○
○
○
合
MR.ジ ョ ー カ ー 水 和 剤
A
A
○
○
○
○
成
アーデント水和剤
A
B
○
○
ピ
アグロスリン水和剤
A
B
○
○
A
B
レ
〃
乳剤
イカズチWDG
A
B
○
ロ
アディオン乳剤
A
B
○
フロアブル
A
B
○
ド
サイハロン水和剤
A
B
○
系
パーマチオン水和剤
A
B
○
○
ロディー水和剤
A
B
○
○
ロディー乳剤
A
B
ス カ ウ ト フロアブル
A
C
○
○
ス ミ チ オ ン 水 和 剤 40
A
C
○
○
A
C
○
○
有
機
〃
〃
乳剤
○
○
○
○
○
ス
イ
キウイフルーツ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
リン
エ ル サ ン 水 和 剤 40
A
C
○
○
系
スプラサイド水和剤
A
C
○
○
ネ
ス タ ー ク ル・ ア ル ハ ゙ リ ン 顆 粒 水 溶 剤
B
A
○
○
○
○
オ
モスピラン顆粒水溶剤
B
A
○
○
○
○
ニ
モスピランSL液剤
B
A
コ
アクタラ顆粒水溶剤
B
A
○
○
○
○
チ
ダントツ水溶剤
B
A
○
○
○
○
○
ノ
アドマイヤーフロアブル
B
A
○
○
○
〃
水和剤
B
A
○
○
ド
〃
顆粒水和剤
B
B
○
○
ベストガード水溶剤
B
B
○
バリアード顆粒水和剤
B
B
○
A
A
他
キラップフロアブル
(注 )( 接 触 効 果 )
○
○
○
イ
系
○
○
○
○
○
A :散 布 1 日 後 に ほ ぼ 100% の 死 虫 率
B :散 布 1 日 後 に 生 存 虫 が あ る
( 残 効 性 ) A :5 日 以 上 、 B :3 日 以 上 、 C :1 ~ 2 日 、 D :1 日 以 下
(登録の有無)カンキツ:ミカンを除く
51
52
第 14 表
ク サ ギ カ メ ム シ と チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ に 対 す る 薬 剤 の 効 果 (1992 年 )
死虫率(%)
供試薬剤名
濃度
3時間後
24 時 間 後
(倍 )
クサギ
チャバネ
クサギ
チャバネ
アグロスリン水和剤
2,000
100
テルスター水和剤
2,000
100
マブリック水和剤
2,000
44
スミチオン水和剤
1,000
95
無
処
理
-
0
注 )ベ ル ジ ャ ー 用 網 筒 に 入 れ 、 直 接 散 布 し た 。
100
100
90
100
0
100
100
78
100
0
100
100
100
100
0
(2)物理的防除
現 在 、カ メ ム シ 類 に 対 す る 防 除 の 主 流 は 薬 剤 防 除 で あ る が 、農 薬 散 布 回
数 の 削 減 は 社 会 的 要 求 で あ り 、そ れ に 対 応 す る た め に も 物 理 的 防 除 法 の 併
用は重要である。吸蛾類による被害防止用の黄色蛍光灯やナトリウム灯
( 波 長 域 の ピ ー ク 580~ 600nm の 光 ) は チ ャ バ ネ ア オ カ メ ム シ を 忌 避 さ せ
る が 、ク サ ギ カ メ ム シ 、ツ ヤ ア オ カ メ ム シ に は 効 果 が な い 、チ ャ バ ネ ア オ
カ メ ム シ に 対 す る 忌 避 効 果 も 100% で は な い 等 の 問 題 点 が あ る た め 、 薬 剤
防 除 と 併 用 す る 必 要 が あ る ( 第 14 表 ) 。 ま た 、 果 樹 園 全 体 を 4 mm 目 の 網
で被覆するとカメムシ類による被害を減らすことができる。
第 14 表
大 発 生 年 に お け る 黄 色 灯 の 効 果 (平 成 2 年 )
調 査 園
調 査 園 数
カキの被害果率
黄 色 灯 設 置 園
10
7 .0 (% )
1)
無 設 置 園
10
1 8 .6
2)
無 設 置 園
153
2 4 .9
1)黄 色 灯 設 置 園 周 辺 の 慣 行 防 除 園 、 2)県 下 各 地 の 慣 行 防 除 園
52
53
Ⅸ フジコナカイガラムシの発生生態と防除対策
1.形態的特徴
本種はカキ、ナシ、ブドウ、カンキツ、イチジクなど様々な果樹を加
害するが、福岡県では主にカキの重要害虫となっている。本種と同じコ
ナカイガラムシ類でカキに寄生する害虫としては、オオワタコナカイガ
ラムシ、ミカンヒメコナカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、マツモ
トコナカイガラムシが知られている。オオワタコナカイガラムシは体が
粉 状 物 質 で 覆 わ れ て な く 、体 長 が 本 種 の 数 倍 あ る の で 容 易 に 区 別 で き る 。
ミカンヒメコナカイガラムシは尾端の突起が長い点に注意すれば区別で
きる。マツモトコナカイガラムシは卵の色が紫である。クワコナカイガ
ラムシとはやや区別しにくいが尾端の突起物がやや長い点が異なる。
図1
フジコナカイガラムシ成虫
雄は飛翔能力がある。微小なため野外での確認は困難
約 0.1mm
図2
産卵中の雌
図3
白 色 の 卵 嚢 内 に は 約 800 の 卵
ふ化幼虫
ふ化直後は体表のロウ物質が無い
2.発生生態
雌 は ふ 化 後 、3 齢 幼 虫 を 経 て 成 虫 と な る が 、雄 は 2 齢 幼 虫 と な っ た 後 、
繭 を 作 り 、 蛹 を 経 て 成 虫 と な る 。 雌 の 発 育 日 数 は 25℃ で 卵 か ら 成 虫 ま で
約 32日 、 産 卵 前 期 間 約 14日 で あ る 。 発 育 零 点 と 有 効 積 算 温 度 か ら 、 本 種
は通常年3回の発生であるものと思われるが、近年の温暖化により年4
回の発生もあり得る。このような年には秋期に被害が急増する。
本 種 は 主 に 1 , 2 齢 幼 虫 で 越 冬 す る 。越 冬 場 所 は 粗 皮 下 、枝 の 切 り 口 な
53
54
どであるが、樹の地下部に作られたアリの巣の中で越冬し、そのまま春
以降も寄生し続けるケースも見られる。3月下旬頃の暖かい日には膨ら
み始めた芽の付近で本種が見られることもあるが、本格的な越冬場所か
らの離脱は通常4月中~下旬ころである。越冬場所を離脱した成・幼虫
は葉柄基部や落下しなかった鱗片内に寄生する。花蕾が生長するとガク
内に寄生することが多く、幼果期以降は果実のヘタ下に寄生し、被害を
も た ら す 。第 1 世 代 幼 虫 は 6 月 上 中 旬 頃 か ら 、第 2 世 代 幼 虫 は 8 月 上 旬 頃
から出現する。第3世代幼虫は9月下旬頃から発生し、そのまま越冬す
る。
分散は主に歩行と若齢幼虫の風による飛散によって行われるものと思
われる。
3.被害
被害は主に果実に発生する。寄生する成・幼虫の分泌物に雑菌が繁殖
し果実表面が煤けた状態(すす病。図4)になって被害に気づくことが
多い。すす病は、発生が多い樹では7月から見られることもあるが、着
色期以降に発生することが多い。また、すす病が発生しなくとも、被害
痕は早期から着色し、成熟期にはやや盛り上がった火膨れ状の症状を呈
する(図5)。また、「太秋」の試験では、フジコナカイガラムシの加
害によりエチレン生成量が増加し早期軟果が助長される可能性が示唆さ
れている。
図4
すす病
図5
黒色のすすは拭くと取れる。
火ぶくれ症
被害はヘタ周辺に見られる。幼果期の被
害は果実肥大に伴い赤道部に移動する。
4.防除対策のポイント
(1)薬剤散布方法の改善
本種に対する防除薬剤の効果が低いという声もあるが、今のところ
薬剤抵抗性を獲得した事例はなく、散布された薬剤と接触すれば死亡
する。本種の防除効果は薬剤散布方法とタイミングによって決まる。
本種が多発する最大の原因は「防除のむら」である。この事は本種が
最初に樹の一部で増加した後、全体的に広がることからも明らかであ
る。薬剤の「かけむら」がないよう十分な薬量を丁寧に散布すること
54
55
が最も重要である。さらに、薬剤は高圧で果実に吹き付けなければヘ
タの隙間に潜む本種に到達せず、果実表面にわずかに付着する程度の
散布では効果が低い。また、整枝剪定にも配慮し、枝の重なりをなく
す よ う 工 夫 す る 。 ス ピ ー ド ス プ レ ー ヤ (SS)に よ る 防 除 で は 死 角 が 出 来
な い よ う 走 行 経 路 を 見 直 す 。 特 に SSが 旋 回 す る 園 の 端 な ど は 死 角 と な
りやすいので、付属の噴霧機などを用いて補正散布を行う。それでも
「 か け む ら 」が 出 る よ う な ら 冬 期 に 樹 形 を 改 良 す る 必 要 が あ る 。な お 、
園内の露出した根から生じたひこ生えや間伐樹にも本種が寄生してい
るのでこれらの防除も徹底する。
薬 剤 防 除 は 越 冬 明 け の 4 月 と 第 1世 代 幼 虫 期 の 6 月 上 中 旬 に 重 点 的
に 実 施 す る 。第 2 世 代 以 降 は 果 実 の 生 育 に よ り ヘ タ の 隙 間 が ほ と ん ど な
くなること、齢期が乱れることなどにより防除効果が上がりにくい。
散布適期は薬剤感受性が最も高い若齢幼虫期であるので、圃場内の発
育ステージを観察しながら散布する。現在、フジコナカイガラムシの
発生予察用性フェロモン剤が販売されており、粘着トラップと組み合
わせたフェロモントラップを用いて防除適期を予察することができる。
すなわち、4月上旬頃からカキ園にフェロモントラップを設置し、数
日間隔で雄成虫の誘殺数を調べることで、越冬世代成虫の発生ピーク
が把握できる。誘殺数が最も多かった日を基点としてフジコナカイガ
ラムシの発育速度と日平均気温(アメダス平年値)を用いた有効積算
温度法により、6月の防除適期である第一世代の1齢幼虫発生ピーク
が予測できる(図6)。なお、比較的齢期が揃っている第1世代幼虫
期 に お い て も 越 冬 成 虫 の 産 卵 時 期 に 幅 が あ る た め 、 約 10日 間 隔 で 連 続
散布することが望ましい。
表1
ス ピ ー ド ス プ レ ー ヤ ( S S ) 散 布 の 死 角 樹 に お け る 効 果 の 低 下 ( 1995年 )
6月中旬
調査場所
7月中旬
10月上旬
寄生虫数
寄生枝
寄生虫数
寄生果
寄生果
すす果
(頭 / 枝 )
率 (%)
(頭 / 果 )
率 (%)
率 (%)
率 (%)
3.5
42
17.5
83
88
61
40.0
SS散 布 樹
0.8
50
2.5
70
24
4
1.6
手散布樹
2.3
38
0.2
10
13
2
0.4
SS散 布 の
死角樹
被害度
① S 散 布 区 は 150リットル/10aを 5 月 上 旬 、 6 月 中 旬 、 7 月 上 旬 、 中 旬 、
8 月 上 旬 、 下 旬 の 6 回 散 布 ( 但 し 、 8 月 下 旬 は 300リットル/10aを 手 散 布 )
② 手 散 布 区 は 400リットル/10aを 5 月 上 旬 、 6 月 中 旬 、 下 旬 の 3 回 散 布
55
56
図6
齢幼虫発生ピークの算出方法
注 ) 雄 成 虫 誘 殺 ピ ー ク 日 以 降 の 有 効 積 算 温 度 ( 日 平 均 気 温 - 8.1) の 和 が 225日 度 に
達 し た 日 が 産 卵 ピ ー ク 、 そ の 翌 日 以 降 の 有 効 積 算 温 度 ( 日 平 均 気 温 - 10.7) の 和 が 11
2日 度 に 達 し た 日 が 1 齢 幼 虫 発 生 ピ ー ク 。
(2)耕種的防除の実施
肥料袋などを利用した誘殺バンドを作成し越冬虫を誘い込む。遅く
と も 10月 下 旬 ま で に バ ン ド を 樹 幹 部 に 設 置 し 、 3 月 下 旬 ま で に 外 し て
処分する。
冬期の粗皮剥ぎも有効である。地際部の樹皮下でも多くの成・幼虫
が越冬しているので、この部分まで丁寧に剥皮する。これらの対策に
より越冬密度を下げることが可能である。
樹皮は、産卵や成・幼虫の生息場所にもなるので、粗皮剥ぎは春季
以降の密度抑制にも有効である。
(3)天敵の保護
本種が増加したもう一つの原因として、果樹カメムシ類等の防除に
用いる合成ピレスロイド系薬剤や有機リン系薬剤などの多用が本種の
天敵類に悪影響を与えていることが考えられる。本種には寄生蜂類や
タマバエ類、カゲロウ類などの天敵類が存在し、長期間殺虫剤を散布
していないカキ園では本種の発生が少ない。
県内における調査では、寄生性天敵8種と捕食性天敵5種が確認さ
れ た( 表 2 )。フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ク ロ バ チ( 図 7 。以 下 、ク ロ バ チ )、
ベ ニ ト ビ コ バ チ は フ ジ コ ナ 1 , 2 齢 幼 虫 に 、フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ト ビ コ バ
チ(図8。以下、トビコバチ)、フジコナヒゲナガトビコバチは主に
3 齢 お よ び 成 虫 に 、ツ ノ グ ロ ト ビ コ バ チ は 主 に 2 , 3 齢 幼 虫 に 寄 生 す る 。
以上の寄生蜂は単寄生であったが、クワコナカイガラトビコバチ(図
9 ) は 多 寄 生 で あ る 。 タ マ バ エ 類 ( 図 10) は フ ジ コ ナ の 卵 の み を 捕 食
し て い る よ う で あ る が 、 カ ゲ ロ ウ 類 ( 図 11) 、 テ ン ト ウ ム シ 類 ( 図 12)
56
57
は卵から成虫まで捕食する。これらの天敵のうち採集数が多かった種
は 、 寄 生 蜂 で は ク ロ バ チ 、 捕 食 者 で は タ マ バ エ 科 の 1 種 ( D. hirtico
rnis) で あ っ た 。
約 1mm
図7
フジコナカイガラクロバチ
羽 化 時 に 約 5 0 0 個 の 成 熟 卵 を 持 ち 、条 件 が
良 け れ ば 数 日 中 に 生 み つ く す 。野 外 の 発 生
図8
フジコナカイガラトビコバチ
フジコナカイガラムシの体液摂取で得た
栄養で体内の卵を成熟させる。
消長はフジコナカイガラムシと同調する。
図9
図 10
クワコナカイガラトビコバチ
タマバエ類
フジコナカイガラムシのマミー1個から
幼 虫( 左 )が フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ム シ の 卵 を
複数の成虫が羽化する。
食 べ る 。フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ム シ 多 発 後 に 発
生し、急激にフジコナの密度を抑制する。
図 11
カゲロウ類の幼虫
図 12
フジコナカイガラムシを捕食してい
るオオタツマアカヒメテントウの幼虫
57
58
表2
カキ園で採集されたフジコナカイガラムシの天敵
天
敵
の
種
類
採集場所
筑紫野市
朝倉町
吉井町
+++
+++
+++
++
-
++
+
++
-
4)フジコナヒゲナガトビコバチ Leptomastix dactylopii
+
-
-
Anagyrus subnigricornis
+
-
-
-
-
+
+
-
-
-
-
+
+++
+++
+++
+
+
++
++
+
+
1.寄生性天敵
1)フジコナカイガラクロバチ
Allotropa subclavata
2)フジコナカイガラトビコバチ Anagyrus fujikona
3)クワコナカイガラトビコバチ
5)ツノグロトビコバチ
Pseudaphycus malinus
6)Ophelosia属 寄 生 蜂 の 1種
7)クロツヤコバチ科 の
Ophelosia sp.
1種
Leptomastidea rubra
8)ベニトビコバチ
2.捕食性天敵
1)タ マ バ エ 科 の
1種
Diadiplosis hirticornis
2)タ マ バ エ 科 の
1種
Trisopsis sp.
3)スジクロヒメカゲロウ
Sympherobius domesticus
4)オオタツマアカヒメテントウ
Scymnus rectus
+
-
-
5)ムツボシコナカゲロウ
Spiloconis sexguttata
-
-
+
注 ) +++: 多 い , ++: や や 多 い , +: 少 な い , - : 採 集 さ れ ず
栽培園において天敵類だけで本種の被害を抑えることはできないが、
薬剤防除の効果が上がりにくい第2世代以降も活動している天敵類を保
護・活用することにより本種の被害を低減できるものと思われる。
土着天敵を活用するためには、カキ害虫の防除体系に天敵に悪影響を
与える殺虫剤の使用を控える必要がある。天敵の活動を阻害しない防除
体系を構築するため、フジコナの天敵として重要な種と考えられるクロ
バチ成虫を用いカキで使用される主な薬剤の影響を調査した。
風 乾 後 の 薬 液 と の 接 触 で は ス ミ チ オ ン 水 和 剤 40等 の 有 機 リ ン 系 、 MR.
ジョーカー水和剤等の合成ピレスロイド系、アドマイヤー水和剤等のネ
オニコチノイド系殺虫剤ではほとんどのクロバチが死亡した。これに対
し 、ア プ ロ ー ド 水 和 剤 等 の I G R 系 殺 虫 剤 、B T 剤 と の 接 触 で は ほ と ん ど 死 亡
しなかった。殺菌剤ではジマンダイセン水和剤でやや高い死亡率がみら
れたが、他の2剤はほとんど影響がなかった。
風乾後の薬液との接触で影響の大きかった薬剤を中心に実施した結果、
薬剤により影響持続期間は大きく異なることが判明した。合成ピレスロ
イ ド 系 殺 虫 剤 の M R . ジ ョ ー カ ー 水 和 剤 、ア ー デ ン ト 水 和 剤 お よ び ネ オ ニ コ
チノイド系殺虫剤のスタークル顆粒水溶剤、アクタラ顆粒水溶剤、アド
マ イ ヤ ー 水 和 剤 は 少 な く と も 16日 以 上 影 響 が 持 続 し た の に 対 し 、 ス ミ チ
オ ン 水 和 剤 40は 4 日 で 、 有 機 リ ン 系 の ス プ ラ サ イ ド 水 和 剤 、 ネ オ ニ コ チ
ノ イ ド 系 の モ ス ピ ラ ン 水 溶 剤 は 10~ 13日 で 影 響 が な く な っ た 。
58
59
表3
カ キ で 使 用 す る 薬 剤 が フジコナカイガラクロバチ成 虫 に 及 ぼ す 影 響
薬
1.
剤
名
希釈倍率
死亡率
悪影響期間
ス ミ チ オ ン 水 和 剤 40
1000倍
100%
< 5日
スプラサイド水和剤
1500倍
100
< 10
トクチオン水和剤
800倍
100
< 17
オルトラン水和剤
1500倍
100
MR.ジ ョ ー カ ー 水 和 剤
2000倍
100
> 18
アーデント水和剤
2000倍
100
> 18
アグロスリン水和剤
2000倍
100
モスピラン水溶剤
2000倍
100
アクタラ顆粒水溶剤
2000倍
48.9
> 17
スタークル顆粒水溶剤
2000倍
70.9
> 17
アドマイヤー水和剤
1000倍
ベストガード水溶剤
2000倍
95.7
-
アプロード水和剤
1000倍
7.1
-
アタブロンSC
4000倍
0
-
1000倍
3.5
-
2000倍
0
<1
殺虫剤
1) 有 機 リ ン 系
-
2) 合 成 ピ レ ス ロ イ ド 系
-
3) ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 系
100
< 10
> 18
4) I G R 系
5) B T 剤
チューリサイド水和剤
6)
ジアミド系
フェニックス顆粒水和剤
7)
その他
コルト顆粒水和剤
2.
2000倍
22.0
<1
500倍
18.6
-
ラリー水和剤
2000倍
11.4
-
ストロビードライフロアブル
3000倍
殺菌剤
ジマンダイセン水和剤
0
-
注 )1 .死 亡 率 は ハ チ を 放 飼 し た 試 験 管 壁 に 処 理 後 風 乾 し た 薬 剤 へ の 接 触 試 験 の 数
値 。但 し 、ア ク タ ラ 顆 粒 水 溶 剤 と ス タ ー ク ル 顆 粒 水 溶 剤 は 薬 剤 処 理 後 風 乾
し た カ キ 葉 と の 接 触 試 験 の 数 値 。フ ェ ニ ッ ク ス 顆 粒 水 和 剤 と コ ル ト 顆 粒 水
和 剤 は 日 本 農 薬 株 式 会 社 に よ る 試 験 で 、薬 剤 処 理 1 日 後 の カ キ 葉 と の 接 触
試 験 の 数 値 。 ( 2000年 、 2003年 )
2 .影 響 期 間 は 薬 剤 を 散 布 し た 野 外 の カ キ 葉 と の 接 触 試 験 で 補 正 死 亡 率 が 25%
以下になるまでの期間(-は未調査)。
59
60
(4)土着天敵を活用したフジコナ防除を中心としたカキ害虫の
IPMモ デ ル
カキで最も問題となる害虫はフジコナであるが、他に重要な害虫と
してカキミガ(カキノヘタムシガ)、ハマキムシ類、カメムシ類があ
る。また、近年はハスモンヨトウをはじめとした突発的に発生するマ
イナー害虫も増加している。土着天敵を活用したフジコナ被害対策を
中 心 と し た カ キ 害 虫 の IPM体 系 を 構 築 す る 際 に も こ れ ら の 害 虫 に 対 し
て十分配慮しなければならない。そこで、カキ害虫を主な加害部位と
発生頻度によって分類し、果実に対するリスクを重視した防除体系を
開 発 し た ( 図 13) 。 そ の 要 点 は 、 発 芽 前 の 耕 種 的 防 除 法 ( 粗 皮 削 り )
の実施、発芽期から6月中下旬までの薬剤防除をフジコナ重点とし、
第1世代の幼虫密度を低く抑えること、7月以降はカキミガを中心と
したフジコナ以外の害虫防除を重点とし第2、第3世代のフジコナに
対する薬剤防除は実施せず、土着天敵で増殖を抑制することである。
従 っ て 、 防 除 薬 剤 は 天 敵 に 対 す る 影 響 の 少 な い IGR系 殺 虫 剤 を 中 心 に 、
影響があっても持続期間の短いものを採用した。しかし、カメムシや
マイナー害虫が突発的に発生し、体系の薬剤だけでは対応できない場
合 は 状 況 に 応 じ て 薬 剤 で 追 加 防 除 を 実 施 す る こ と と し た 。ま た 一 方 で 、
実用的な体系にするためには防除コストも考慮する必要があり、効率
的な薬剤の選択と防除回数の削減により体系全体の薬剤費が慣行防除
体系以下となるよう設定した。
図 13
フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ム シ 防 除 に 土 着 天 敵 を 活 用 す る カ キ の IPM体 系
□ : フジコナカイガラクロバチに 対 す る 影 響 が 強 い 順 に 赤 、 橙 、 黄 、 緑 、 青
60
61
県内のカキ産地にある農家圃場を用いて土着天敵の活用によるフジ
コ ナ 防 除 を 中 心 と し た カ キ 害 虫 の IPM体 系 の 効 果 実 証 試 験 を 平 成 15~ 1
7年 に 実 施 し た 。 IPM区 で 実 施 し た 冬 期 の 粗 皮 削 り は 越 冬 幼 虫 の 密 度 を
大きく低下させるだけでなく発芽後もフジコナの隠れ家を減らすため
薬 剤 防 除 の 効 果 も 高 く な り 第 1 世 代 幼 虫 の 密 度 抑 制 に 有 効 で あ っ た 。I
PM体 系 区 に お け る 収 穫 時 期 の フ ジ コ ナ 被 害 果 率 は い ず れ の 年 も 慣 行 防
除 体 系 区 よ り 少 な か っ た 。 春 先 か ら 気 温 が 高 く 空 梅 雨 で あ っ た 平 成 17
年 は 全 般 的 に フ ジ コ ナ が 多 発 し 、 慣 行 防 除 区 の 被 害 果 率 は 34.0% と 多
か っ た 。 IPM体 系 区 で も 他 の 年 に 比 べ る と 発 生 が 多 く 、 被 害 果 率 は 12.
7 % と な っ た が 、慣 行 防 除 区 の 半 分 以 下 で あ っ た 。フ ジ コ ナ 以 外 の 害 虫
で は 、 平 成 17年 に ハ マ キ ム シ 類 に よ る 果 実 被 害 が や や 多 か っ た が 、 慣
行防除区と差はなかった。カキミガやスリップス類の被害は試験期間
を 通 し 両 区 共 に 少 な か っ た 。IPM体 系 区 で は 、ク ロ バ チ 、ト ビ コ バ チ に
寄生されたフジコナのマミーおよび卵塊に潜り込んだタマバエ類の幼
虫が観察され、バンドトラップで採集したフジコナ若齢幼虫に対する
ク ロ バ チ の 寄 生 率 は 33.3~ 40.0% で あ っ た 。 天 敵 は 概 ね 第 2 世 代 以 降
に多くみられたが、早い年には7月からクロバチの寄生によってマミ
ー化した幼虫が散見された。
IPM体 系 の 殺 虫 剤 散 布 回 数 は 年 間 11回 ~ 9 回 と 慣 行 防 除 体 系 に 比 べ
て 2 ~ 4 回 少 な か っ た 。 散 布 し た 殺 虫 剤 の 薬 剤 費 を 1 回 10a当 た り 400
リ ッ ト ル で 試 算 し た と こ ろ 、 慣 行 防 除 区 で は 年 間 約 21,700円 ~ 23,500
円 で あ っ た の に 対 し 、I P M 体 系 区 で は 約 1 7 , 0 0 0 円 ~ 2 0 , 4 0 0 円 と 、平 均 で
約 2,500円 少 な く 経 済 的 に も 優 っ た 。
表4
フジコナカイガラムシに 対 す る 天 敵 活 用 型 防 除 体 系 ( IPM体 系 ) の 効 果
試験年度
区
散 布 回 数 (回 )
薬 剤 費 (円 /10a)
被 害 果 率 (%)
2003
IPM
11
19,902
6.0
慣行
13
21,703
14.3
IPM
9
16,952
4.7
慣行
13
23,552
11.1
IPM
9
20,432
12.7
慣行
11
22,495
34.0
2004
2005
* 薬 剤 費 は 1 回 10a当 た り 400リットル散 布 で 計 算
(5)殺虫剤樹幹塗布法
粗皮を削ったカキ樹の主幹部に浸透移行性を有するネオニコチノイ
ド 系 殺 虫 剤 の ス タ ー ク ル( ア ル バ リ ン )顆 粒 水 溶 剤 を 塗 布 す る 方 法 で 、
樹液の移動を利用して殺虫剤の有効成分を主幹部から樹内に浸透させ、
枝葉に寄生するフジコナカイガラムシを防除できる。
従来の薬剤散布法では、①防除適期であるふ化幼虫発生時期を把握
61
62
する必要がある、②散布ムラが生じる、③樹皮下などに寄生した害虫
に薬液が付着しにくい、④周囲に薬液が飛散する、等の問題があった
が、この方法ではこれらの問題を軽減できる。
処理は、カキでは発芽前から発芽期(1~3月)、ブドウでは幼果
期 ( 収 穫 30日 前 ) ま で に 行 う 。 粗 皮 削 り の 程 度 が 浅 い と 殺 虫 剤 の 成 分
が 浸 透 せ ず 防 除 効 果 が 劣 る の で 、粗 皮 は 十 分 に 削 る 必 要 が あ る( 図 1 4 )。
なお、粗皮削り後塗布するまでに7日以上経過すると効果が劣る場合
があるので、塗布は粗皮削り後できるだけ速やかに行う。
写真1
写真3
粗皮削り
粗皮削りの程度
写真2
樹幹塗布
(左:深削り、右:浅削り)
写真右では削り方が浅く、薬剤が十分に浸透せず効果が劣る。
写真左(網目模様が残らない)程度に十分削ることが重要である。
62
63
100
寄 75
生
虫
率 50
(
%
)
浅削り
深削り
25
0
5/24
図 14
6/2
粗 皮 削 り 程 度 が フ ジ コ ナ カ イ ガ ラ ム シ の 防 除 効 果 に 及 ぼ す 影 響 ( 2006年 )
* 処 理 日 : 5 月 15日 、 ふ 化 幼 虫 接 種 日 : 5 月 23日
63
64
Ⅹ カンキツのミカンハダニ薬剤感受性検定
1
目的
カ ン キ ツ 類 を 加 害 す る ミ カ ン ハ ダ ニ は 、薬 剤 感 受 性 の 低 下 が 懸 念 さ れ て い る 。
そこで、薬剤感受性の低下を適宜把握するため、検定を実施する。
2
検定方法
ミ カ ン ハ ダ ニ は 、 平 成 27 年 7 月 8 日 に 県 内 4 か 所 ( A 地 区 ~ D 地 区 ) の ウ
ンシュウミカン園(露地)で採集した。雌成虫をウンシュウミカンのリーフ
デ ィ ス ク ( 2 ㎝ × 2 c m ) に 1 枚 あ た り 5 頭 ず つ 接 種 し 、2 日 間 産 卵 さ せ た 。7 月 1
0 日 に 雌 成 虫 を 除 去 し た リ ー フ デ ィ ス ク を 10 秒 間 各 薬 液 に 浸 漬 し 寒 天 平 板 上
に 静 置 し 、 7 月 17 日 に ふ 化 状 況 と ふ 化 幼 虫 の 生 死 を 調 査 し た 。 な お 、 こ れ ら
の 検 定 は 、 26℃ の 条 件 下 で 実 施 し た 。
検 定 結 果 は 、 以 下 の Abbott の 補 正 式 を 用 い て 算 出 し た 。
補正死虫率(%)
= (対 照 区 生 存 虫 率 - 処 理 区 生 存 虫 率 )÷対 照 区 生 存 虫 率 ×100
3
供試薬剤及び処理濃度
カンキツにおけるミカンハダニ薬剤検定は、従来 3 倍希釈濃度で実施して
いるが、今回は常用濃度についても実施した。
供試薬剤名
バロックフロアブル
カネマイトフロアブル
コロマイト水和剤
スターマイトフロアブル
オマイト水和剤
常用濃度(倍) 3倍希釈濃度(倍)
2000
6000
3000
6000
6000
750
2250
注 1)バ ロ ッ ク フ ロ ア ブ ル は 、 平 成 25 年 の 検 定 で 3 倍 希 釈 濃 度 で の 薬 剤 感 受 性 が 低 下 し て い た た め
常用濃度で実施。
注 2)オ マ イ ト 水 和 剤 は 、 平 成 25 年 に 実 施 し て な か っ た た め 、 3 倍 希 釈 濃 度 と 常 用 濃 度 で 実 施 。
4
検定結果
バロックフロアブル、コロマイト水和剤、スターマイトフロアブルは、いず
れ の 地 区 で も 補 正 死 虫 率 が 高 く 薬 剤 感 受 性 が 高 か っ た 。カ ネ マ イ ト フ ロ ア ブ ル
は、A 地区と D 地区で高く薬剤感受性が高かったものの、B 地区と C 地区では
低く薬剤感受性が低かった。
オマイト水和剤の 3 倍希釈濃度における補正死虫率は、C 地区以外では低く
薬 剤 感 受 性 は 低 か っ た 。し か し 、オ マ イ ト 水 和 剤 の 常 用 濃 度 で の 補 正 死 虫 率 は 、
64
65
全地区で高く薬剤感受性は高かった。
表1
カ ン キ ツ に お け る ミ カ ン ハ ダ ニ の 薬 剤 感 受 性 検 定 結 果 (平 成 27 年 )
薬剤名
補正死虫率(%)
供試濃度
A地区
B地区
C地区
D地区
100
100
94.7
100
100
98.5
96.7
100
バロックフロアブル
6000倍
2000倍(常用)
カネマイトフロアブル
3000倍
87.9
47.8
57.8
92.9
コロマイト水和剤
6000倍
100
100
100
100
スターマイトフロアブル
6000倍
100
81.6
100
100
オマイト水和剤
2250倍
750倍(常用)
20.5
95.8
42.0
86.7
71.2
97.1
30.0
95.3
注 1)バ ロ ッ ク フ ロ ア ブ ル は 、 平 成 25 年 の 検 定 で 3 倍 希 釈 濃 度 で の 薬 剤 感 受 性 が 低 下 し て
いたため常用濃度区を設定。
注 2)オ マ イ ト 水 和 剤 は 、 平 成 25 年 に 実 施 し て な か っ た た め 3 倍 希 釈 濃 度 、 常 用 濃 度 区 を
設定。
注 3)補 正 死 虫 率 = ( 対 照 区 生 存 虫 率 - 処 理 区 生 存 虫 率 ) ÷対 照 区 生 存 虫 率 ×100
注 4 ) 7 / 8 に ミ カ ン ハ ダ ニ 雌 成 虫 を ミ カ ン リ ー フ デ ィ ス ク に 5 頭 ず つ 接 種 し た 。2 日 間 産 卵 さ
せ た 後 、雌 成 虫 を 除 去 し た リ ー フ デ ィ ス ク を 薬 液 に 浸 漬 し 7 日 後 に ふ 化 状 況 と ふ 化 幼 虫
の生死を調査。
注 5)対 照 区 は 、 イ オ ン 交 換 水 で 処 理 。
100
80
バロックフロアブル
60
(
補
正
死
虫
率
40
)
%
20
カネマイトフロアブル
コロマイト水和剤
スターマイトフロアブル
オマイト水和剤
0
平成15年
図
平成17年
平成19年
平成21年
平成23年
平成25年
平成27年
カ ン キ ツ に お け る ミ カ ン ハ ダ ニ の 各 種 薬 剤( 3 倍 希 釈 濃 度 )
に対する感受性検定結果(補正死虫率)の年次推移
注 1)実 施 地 区 は 、 年 に よ り 異 な る 。
65
66
Ⅺ 果樹病害虫の発生消長
カンキツ病害虫の発生消長
生育相
発
展
開
緑
芽
葉
花
化
期
期
4
期
期
果
実
肥
大
期
7
着
色
始
め
収
穫
始
め
10
3
5
6
8
9
11
12~2
月
病
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
害虫名
かいよう
葉
病(ネー
ブル・晩 果
柑類)
感染時期
感染時期
実
葉
黒点病
備考
感染時期
果
感染時期
実
葉
そうか病
感染時期
果
感染時期
実
ミカンハダ
←冬期マシン油散布
発生時期
ニ
チャノキイロ
アザミウマ
ヤノネ
カイガラム
シ
ゴマダラ
カミキリ
果実加害
期
第2世代
第1世代
←産卵期
第3世代
幼虫発生
期
成虫発生
期
ふ化幼虫
発生期
ロウムシ類
66
67
カキ病害虫の発生消長
生育相
発
展
開
芽
葉
花
期
期
4
期
5
生
理
落
果
6
花
芽
分
化
着
色
始
め
収
穫
始
め
落
葉
始
め
11
3
7
8
9
10
12~2
月
病
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
害虫名
うどんこ
葉
病
枝
炭疽病
春枝
新梢が硬化するまで
夏枝
備考
感染時期
感染時期
果
感染時期
実
角斑落
葉病
葉
円星落
葉病
葉
感染時期
感染
発病
灰色かび病
(秋王・西村
早生)
フジコナ
カイガラム
シ
発生発病
時期
ふ化幼虫
発生期
チャノコカク
モンハマキ
成虫発生
期
カキノヘタム
シガ(カキミ
ガ)
クロフタモンマダ
ラメイガ(カキノ
キマダラメイガ)
成虫発生
期
成虫発生
期
幼虫発生
期
オオミノガ
カキクダ
アザミウマ
感染発病
時期
葉(越冬世代)
果実(第1世代)
葉・果実
加害期
67
68
ブドウ病害虫の発生消長
生育相
月
萌新
梢
芽伸
長
期始
め 4
3
開
袋
花
か
期
5
け
6
着
色
始
め
7
収
穫
始
め
8
9
10
落
休
葉
眠
期
期
11
備考
12~2
病
害虫名
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
枝
病
感染時期
葉
感染時期
膨
黒とう病
果
感染時期
実
べ と 病 葉
感染時期
灰色かび病
感染時期
褐斑病 葉
感染時期
苦
腐
病
感染時期
房
枯
病
感染時期
晩
腐
病
感染時期
チャノキイロ
アザミウマ
加 害 期
ブドウトラ
カ ミ キ リ
成虫発生
期
コウモリガ
類
キマダラコウモリガ
コウモリガ
成虫発生
期
成虫発生
期
ク ビ ア カ
ス カ シ バ
68
69
ナシ病害虫の発生消長
脱
生育相
苞
期
月
病
害虫名
3
鱗
苞
脱
落
開
花
期
新
梢
伸
長
4
新
梢
伸
長
停
止
5
6
収
穫
始
め
7
8
9
10
落
休
葉
眠
期
期
11
備考
12~2
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
黒斑病 葉
(二十世
紀 ・ 新 果
水
)
実
感染時期
感染時期
腋花芽(越冬場所)
葉
黒星病
感染時期
果
感染時期
実
枝
輪紋病
感染時期
果
感染時期
実
赤星病葉
感染時期
心腐病
感染時期
炭疽病
発生時期
ナミハダニ
発生時期
カンザワハ
ダニ
発生時期
マツモトコナ
カイガラム
シ
ナシホソガ
(ナシノカワ
モグリ)
ふ化幼虫
発生期
成虫発生
期
ナシヒメシン
クイ
成虫発生
期
ニセナシ
サビダニ
発生時期
69
70
モモ病害虫の発生消長
生育相
月
病
害虫名
3
満落展新
梢
開果葉伸
長
期期期期
4
袋果
実
か肥
大
け期
5
早
生
収
穫
始
め
6
中
生
収
穫
始
め
7
8
9
10
落
休
葉
眠
期
期
11
備考
12~2
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
縮葉病 葉
感染時期
せん孔
葉
感染時期
枝
感染時期
細菌病
いぼ皮
病
黒
星
病
感染時期
灰
星
病
感染時期
モ
モ
ハモグリガ
幼虫発生
期
ウメシロカイ
ガ ラ ム シ
ふ化幼虫
発生期
モモノゴマ
ダラノメイガ
成虫発生
期
コスカシバ
成虫発生
期
ハ ダ ニ 類
成虫発生
期
70
71
キウイフルーツ病害虫の発生消長
発
生育相
芽
期
月
病
害虫名
3
花
蕾
出
現
期
4
新
梢
伸
長
期
開果
実
花肥
大
期期
5
収落休
穫葉眠
6
7
8
9
10
期期期
11
12~2
備考
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
果実軟腐病
感染時期
かいよう病
感染時期
花腐細菌病
すす斑病
環状はく皮
腋芽への感染
果実
葉 若葉に感染
感染時期
感染時期
灰色かび病
感染時期
クワシロカイ
ガラムシ
ふ化幼虫
発生期
コガネムシ類
成虫発生
期
チャノコカク
モンハマキ
幼虫発生
期
キイロマイコ
ガ
幼虫発生
期
キクビスカ
シバ
幼虫ふ化
期
71
72
イチジク病害虫の発生消長
展
生育相
着
果
始
め
葉
期
月
病
害虫名
3
4
5
収
穫
始
め
6
7
8
収
穫
終
わ
り
9
10
備考
11
12~2
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
葉
疫
病
感染時期
果
感染時期
実
さび病
感染時期
そうか病
感染時期
黒葉枯病
(とよみつひ
め)
感染時期
キボシ
カミキリ
成虫発生
期
クワカミキリ
成虫発生
期
アザミウマ
類
成虫発生
期
イチジクヒト
リモドキ
幼虫発生
期
カ ン ザ ワ
ハ ダ ニ
発生時期
ウメ病害虫の発生消長
生育相
月
開
発
花
芽
期
2
期
収
穫
始
め
3
4
5
落
葉
備考
期
6
7
8
9
10
11
病
害虫名
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
黒
病
星
感染時期
ウメシロカイ
幼虫発生
期
ガ ラ ム シ
成虫発生
期
コスカシバ
72
73
スモモ病害虫の発生消長
生育相
月
開満新
梢
花
開伸
始
長
め期期
3
4
収
穫
始
め
5
6
落
葉
備考
期
7
8
9
10
11
12~2
病
害虫名
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
黒
病
感染時期
ふくろみ病
感染時期
灰 星 病
感染時期
ウメシロカイ
ガ ラ ム シ
幼虫発生
期
コスカシバ
成虫発生
期
斑
クリ病害虫の発生消長
発
生育相
芽
月
3
期
4
開新
梢
花伸
長
期期
5
収
穫
6
7
8
期
9
備考
10
11
12~2
病
害虫名
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
炭そ病
果
実
感染時期
モ モ ノ
ゴマダラノメイガ
成虫発生
期
シロスジ
カミキリ
成虫脱出
産卵
成虫脱出・
産卵期
クリタマバチ
成虫発生
期
ネ ス ジ
キノカワガ
成虫発生
期
73
74
Ⅻ
病害虫防除暦
1.カ
キ
[ 松本早生富有・富有 ]
散
布
時
期
休眠期 ~ 3月下旬
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
フジコナカイガラムシ※
クロフタモンマダラメイガ※
4月
5月中旬 ~ 下旬
(開 花 期 )
フジコナカイガラムシ
炭疽病
炭
うどんこ病
疽
病
ハマキムシ類
炭
疽
落葉病類
病
落葉病類
6 月 上 旬 (落 花 期 )
カキノヘタムシガ
フジコナカイガラムシ
ハマキムシ類
炭
6月中旬 ~ 下旬
疽
病
落葉病類
フジコナカイガラムシ
うどんこ病
ハマキムシ類
7月上旬 ~ 中旬
(梅 雨 期 )
8月上旬
炭
疽
病
うどんこ病
落葉病等
フジコナカイガラムシ※
ハマキムシ類
ロウムシ類
カキノヘタムシガ
ハマキムシ類
8月下旬
うどんこ病
炭
疽
病
フジコナカイガラムシ※
9月上旬 ~ 下旬
炭
疽
病
角斑落葉病
7 月 ~ 10月
カメムシ類
※の病害虫については農薬代替技術あり(「IPMの推進」参照)
74
75
[ 西村早生・早秋・太秋・秋王 ]
散
布
時
期
休眠期 ~ 3月下旬
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
フジコナカイガラムシ※
クロフタモンマダラメイガ※
4月
5 月 中 旬 (開 花 期 )
6 月 上 旬 (落 花 期 )
フジコナカイガラムシ
炭疽病
炭
灰 色 か び 病 ( 西 村 早 生 、早
疽
病
ハマキムシ類
秋、秋王)
アザミウマ類
うどんこ病
炭
ハマキムシ類
疽
病
落葉病類
カキノヘタムシガ
フジコナカイガラムシ
炭
6月中旬 ~ 下旬
疽
病
落葉病類
フジコナカイガラムシ
うどんこ病
ハマキムシ類
7月上旬 ~ 中旬
(梅 雨 期 )
炭
疽
病
うどんこ病
落葉病類
フジコナカイガラムシ※
ハマキムシ類
8月上旬
カキノヘタムシガ
ハマキムシ類
8月下旬 ~ 9月上旬
炭
疽
病
角斑落葉病
うどんこ病
フジコナカイガラムシ※
7 月 ~ 10月
カメムシ類※
※の病害虫については農薬代替技術あり(「IPMの推進」参照)
75
76
2.カンキツ
[ 温州ミカン ]
散
布
時
期
基幹防除対象病害虫
12月 下 旬 ~ 1 月 中 旬 又 は
補正防除対象病害虫
ミカンハダニ
3 月 中 下 旬 (発 芽 期 )
3月下旬 ~ 4月上旬
そうか病
(発 芽 前 ~ 発 芽 期 )
5月上旬(開花期)
訪花害虫
5月中下旬
黒点病
アブラムシ類
そうか病
チャノキイロアザミ
灰色かび病
ウマ
(落 花 直 後 )
チャノホコリダニ
黒点病
ミカンハダニ
そうか病
6月中下旬
チャノキイロアザミウマ
ミカンサビダニ
カイガラムシ類
黒点病
ミカンハダニ
カイガラムシ類
7月上中旬
ロウムシ類
チャノキイロアザミウマ
黒点病
8月下旬~9月上旬
チャノキイロアザミウマ
ミカンハダニ
ミカンサビダニ
9 月 ~ 10月
ミカンハダニ
収 穫 前 (20日 前 後 )
貯蔵病害
褐色腐敗病
6月中旬~7月
ゴマダラカミキリ成虫※
8 月 中 旬 ~ 10月
カメムシ類
※の病害虫については農薬代替技術あり(「IPMの推進」参照)
76
77
[ 不
散
布
時
期
知
火 ]
基幹防除対象病害虫
12月 下 旬 ~ 1月 中 旬 又 は
補正防除対象病害虫
ミカンハダニ
3月 中 下 旬 ( 発 芽 期 )
3月 下 旬 ( 発 芽 前 )
かいよう病
4月 下 旬 ( 開 花 前 )
かいよう病
5月 中 旬 ( 開 花 期 )
訪花害虫
5月 下 旬
黒点病
かいよう病
6月 上 旬
カイガラムシ類
ミカンハダニ
6月 中 下 旬
黒点病
かいよう病
7月 上 旬
カイガラムシ類
黒点病
ロウムシ類
7月 中 旬
8月 下 旬 ~ 9月 上 旬
ミカンハダニ
ミカンハダニ
黒点病
かいよう病
9月 ~ 10月
ミカンハダニ
収 穫 前 ( 20日 前 後 )
貯蔵病害
褐色腐敗病
6月 中 旬 ~ 7月
ゴマダラカミキリ成虫※
※ の 病 害 虫 に つ い て は 農 薬 代 替 技 術 あ り(「 I P M の 推 進 」参 照 )
77
78
3.ナシ
[ 幸水・豊水](無袋)
散
布
時
期
3月下旬 ~ 4月上旬
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
黒星病
赤星病
黒星病
赤星病
(脱 ぼ う 期 )
(り ん ぼ う 脱 落 期 )
4 月 上 旬 (開 花 初 期 )
コナカイガラムシ類
チャノコカクモンハマキ
4月中旬(開花後)
4月下旬
ニセナシサビダニ
黒星病
輪紋病
赤星病
アブラムシ類
クワオオハダニ
黒星病
5月上旬 ~ 下旬
赤星病
輪紋病
アブラムシ類
5月下旬~6月上旬
6月上旬 ~ 下旬
7月上旬 ~ 下旬
ニセナシサビダニ
輪紋病
炭疽病(豊水)
黒星病
ナシヒメシンクイ※
コナカイガラムシ類
ナシマルカイガラムシ
輪紋病
黒星病
ナシヒメシンクイ※
炭疽病(豊水)
ハダニ類
ナシグンバイ
ナシホソガ
8月中旬 ~ 下旬
うどんこ病
黒星病
胴枯病
9月上旬~下旬
ナシグンバイ
モンクロシャチホコ
6月下旬 ~ 収穫期
10月 ~ 11 月
カメムシ類
黒星病
※の病害虫については農薬代替技術があり(IPMの推進)
78
79
[ 二十世紀](有袋)
散
布
時
期
3月下旬 ~ 4月上旬
基幹防除対象病害虫
黒斑病
補正防除対象病害虫
赤星病
(脱 ぽ う 期 )
黒星病
(り ん ぽ う 脱 落 期 )
4 月 上 旬 (開 花 初 期 )
チャノコカクモンハマキ 赤星病
コナカイガラムシ類
黒斑病
アブラムシ類
4月中旬 ~ 下旬
(満 開 期 )
赤星病
クワオオハダニ
(小 袋 か け 前 ) 黒 斑 病
5月上旬
(小 袋 か け 直 前 )
5月中旬
(大 袋 か け 直 前 )
5月下旬~6月上旬
6月上旬 ~ 下旬
7月上旬
黒斑病
赤星病
アブラムシ類
黒星病
黒斑病
うどんこ病
ニセナシサビダニ
黒斑病
輪紋病
コナカイガラムシ類
ナシマルカイガラムシ
黒斑病
ナシグンバイ
ナシホソガ
7 月 中 旬 (梅 雨 明 け )
ハダニ類
8月上旬 ~ 中旬
9月上旬 ~ 下旬
(収 穫 直 前 )
ナシグンバイ
黒斑病
ナシグンバイ
(収穫期) うどんこ病
黒星病
79
モンクロシャチホコ
80
4.ブドウ
[ 巨峰 ](露地)
散
布
時
期
4月中旬 ~ 5月上旬
(新梢伸長開始期)
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
枝膨病
黒とう病
べと病
5 月 中 旬 (開 花 直 前 )
灰色かび病
5月下旬
枝膨病
(開 花 初 期 ~ 開 花 期 )
灰色かび病
黒とう病
べと病
晩腐病
晩腐病
6月上旬 ~ 中旬
枝膨病
(小 豆 粒 大 ~ 大 豆 粒 大 )
黒とう病
べと病
チャノキイロアザミウマ
べと病
6月下旬 ~ 7月上旬
枝膨病
(袋 か け 後 ) (梅 雨 明 け 前 ) 褐 斑 病
7月中旬 ~ 8月上旬
べと病
(梅 雨 明 け )
褐斑病
(収 穫 前 )
ハダニ類
9 月 (収 穫 後 )
べと病
10月 上 ・ 中 旬
ブドウトラカミキリ
80
81
[ 巨 峰 ] (被 覆 栽 培 )
散
布
時
期
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
5 月 上 旬 (開 花 直 前 )
灰色かび病
褐斑病
5月中旬
褐斑病
うどんこ病
(開 花 初 期 ~ 開 花 期 )
5月下旬 ~ 6月上旬
(小 豆 粒 大 ~ 大 豆 粒 大 )
チャノキイロアザミウマ
晩腐病
ハダニ類
褐斑病
うどんこ病
チャノキイロアザミウマ
6月中旬 ~ 7月上旬
べと病(被覆除去後)
(袋 か け 後 ~ 梅 雨 明 け 前 ) 枝 膨 病
うどんこ病
褐斑病
チャノキイロアザミウマ
7月中旬 ~ 8月上旬
べと病(被覆除去後)
(梅 雨 明 け ~ 収 穫 前 )
9 月 (収 穫 後 )
べと病
10月 上 ・ 中 旬
ブドウトラカミキリ
81
うどんこ病
82
5.イチジク
[ とよみつひめ ](露地)
散
布
時
期
4月下旬 ~ 5月上旬
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
そうか病
(萌芽展葉期)
5月下旬~6月中旬
(新 梢 伸 長 期 )
黒葉枯病
フジコナカイガラムシ
疫病
アザミウマ類
6 月 下 旬 ~ 7月 中 旬
(果 実 肥 大 開 始 期
~果実肥大中期)
黒葉枯病
疫病
カミキリムシ類
ハダニ類
7月下旬
(収 穫 前 )
黒葉枯病
疫病
黒かび病
さび病
8 月 ~ 10月
さび病
黒葉枯病
(収穫期)
黒かび病
疫病
ショウジョウバエ
82
83
[ とよみつひめ ](施設)
散
布
時
期
4月中旬~6月中旬
(果 実 肥 大 開 始 期
基幹防除対象病害虫
ハダニ類
補正防除対象病害虫
フジコナカイガラムシ
アザミウマ類
~果実肥大中期)
6 月 下 旬 ~ 7月 中 旬
カミキリムシ類
7月上旬
黒かび病
(収 穫 前 )
さび病
8 月 ~ 10月
さび病
ハダニ類
黒かび病
(収穫期)
ショウジョウバエ
83
84
[ 蓬莱柿 ](露地)
散
布
時
期
4月上旬 ~ 4月中旬
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
そうか病
(萌芽展葉期)
5月上旬~5月下旬
そうか病
アブラムシ
(新 梢 伸 長 期 )
6月上旬~中旬
6 月 中 旬 ~ 7月 中 旬
(果 実 肥 大 開 始 期
~果実肥大中期)
フジコナカイガラムシ
そうか病
疫病
アザミウマ類
カミキリムシ類
ハダニ類
7月下旬
(収 穫 前 )
黒かび病
疫病
さび病
ハダニ類
8 月 ~ 10月
黒かび病
(収穫期)
疫病
さび病
ショウジョウバエ
84
85
6.キウイフルーツ
[ レインボーレッド]
散
布
時
期
1月
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
かいよう病
(剪定後)
2月
かいよう病
カイガラムシ類
(樹液流動開始)
3月
かいよう病
(発芽前)
4月上旬~4月下旬
(新 梢 伸 長 期 )
4月下旬~5月上旬
(開 花 期 )
5月中旬~6月上旬
(果 実 肥 大 期 )
かいよう病
花腐細菌病
キクビスカシバ
かいよう病
灰色かび病
かいよう病
果実軟腐病
クワシロカイガラムシ
6月中~下旬
(夏期伸長期)
果実軟腐病
キイロマイコガ
7月上旬~7月中旬
果実軟腐病
(夏期伸長期)
クワシロカイガラムシ
8月下旬
果実軟腐病
クワシロカイガラムシ
9月下旬
灰色かび病
(収穫期)
10月下旬
11月下旬~12月
かいよう病
かいよう病
(落葉期)
85
86
[ ヘイワード]
散
布
時
期
1月
基幹防除対象病害虫
補正防除対象病害虫
かいよう病
(剪定後)
2月
カイガラムシ類
(樹液流動開始)
3月
かいよう病
(発芽前)
4月上旬~5月上旬
(新 梢 伸 長 期 )
かいよう病
花腐細菌病
キクビスカシバ
5月中~下旬
かいよう病
(開 花 期 )
灰色かび病
クワシロカイガラムシ
6月上~下旬
(果 実 肥 大 期 )
7月上~中旬
(夏期伸長期)
8月下旬
果実軟腐病
キイロマイコガ
果実軟腐病
クワシロカイガラムシ
果実軟腐病
クワシロカイガラムシ
11月上旬
灰色かび病
(収穫期)
11月下旬~12月
かいよう病
(落葉期)
86
かいよう病
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