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2014年度統合報告書を掲載いたしました。

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2014年度統合報告書を掲載いたしました。
100%の治療効果を追求するヘルスケア・イノベーター
株式会社カイオム・バイオサイエンス
証券コード:4583
2014年4月1日∼2014年12月31日
統合報告書
CHIOME
Bioscience
Integrated Report
2014
Our Vision
「統合報告書フレームワーク」準拠の表明
For the Benefit of
All Humankind
株式会社カイオム・バイオサイエンス 代表取締役社長として、本レポートが、国際統合報告評議会より2013
CONTENTS
Top Interview
変革に向けた新たなステージへ ………………………………………… 2-13
Our Resources
カイオムの重要な知的資本
年12月に公表された
「統合報告書フレームワーク」
を現段階で可能な限り踏まえたうえで、以下の視点に基づき
作成されていることをここに表明いたします。
本レポートは、株式会社カイオム・バイオサイエンス、及びグループ各社における
事業活動を組織横断的な視座で捉え、長期的な価値創造力を示す重要な事項を、
100%の治療効果を追求するヘルスケア・イノベーター
すべて誠実に掲載しています。
●
●
本レポートの作成においては、代表取締役社長が掲載すべき重要な事項を決定し、
完全ヒトADLib ®システムの開発に成功
担当業務執行取締役が作成しています。
2014
年
■ アライアンス
アライアンスの基本的な考え方 ……………………………………………20
複数の企業・団体との提携…………………………………………………20
アライアンス獲得のための取り組み ………………………………………22
当期の主な動きと今後の展望 ……………………………………………22
わずか数週間でヒトに投与可能な抗体を
創出可能な技術を創製しました。
2015年5月1日
株式会社カイオム・バイオサイエンス
代表取締役社長
藤原 正明
2018
年
2023
年
■ 人財
多様にして優れた人財の確保と育成 ………………………………………23
「まじめやけどおもろい」人が集う会社………………………………………23
人事評価と連動した社員行動指針 ………………………………………24
研修・教育 …………………………………………………………………24
ワーク・ライフ・バランス………………………………………………………25
社員紹介……………………………………………………………………25
パンデミック感染症への対応
完全ヒトADLib ®システムにより、
ワクチンを代替します。
「究極のオーダーメイド医療」を実現
Risk Management
個々の患者さんに最適な抗体を迅速に提供し、
革新的治療を実現します。
Corporate Governance
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Our Mission
36
新たな医療を待ち望む世界中の人々のために
●
我々は、遺伝情報の多様性に基づく新たな創薬技術を持続的に創造する。
●
我々は、革新的医薬品を創出する。
●
我々は、医療に革新を起こす。
■ 「ADLib®システム」とは?
独自の画期的な抗体作製技術 ……………………………………………14
抗体医薬品と従来の医薬品
(低分子医薬品)
の違い ……………………14
ADLib®システムと既存の抗体作製法との違い……………………………15
ADLib®システムの概要と特徴 ……………………………………………16
完全ヒトADLib®システムの実用化 ………………………………………17
ADLib®システムと
「完全ヒトADLib®システム」の違い ……………………18
®
ADLib システムの資産価値の最大化 ……………………………………18
さらなる技術革新の追求……………………………………………………18
パンデミック感染症への優れた対応能力 …………………………………18
優れた技術を守る特許戦略 ………………………………………………19
当期の主な動きと今後の展望 ……………………………………………19
Corporate Information
Statement
■ リスク・マネジメント
リスクの想定と把握…………………………………………………………26
リスクによる損失の未然防止、回避、極小化 ………………………………27
知的財産の保護……………………………………………………………27
情報セキュリティ……………………………………………………………27
■ コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方 …………………………28
「価値創造」
と
「監査監督」の両面からガバナンスを強化 …………………28
取締役 ……………………………………………………………………30
監査役 ……………………………………………………………………30
社外役員からのメッセージ …………………………………………………31
内部統制……………………………………………………………………32
内部統制報告制度への対応 ………………………………………………32
コンプライアンス体制 ………………………………………………………32
内部通報制度の構築と運用 ………………………………………………32
6年間の業績サマリー………………………………………………………33
組織図/従業員数…………………………………………………………34
会社情報/株式情報
……………………………………………………35
「統合報告書フレームワーク」準拠の表明 …………………………………36
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Statement of Integrated Reporting Framework Standards
1 37
Top Interview
変革に向けた
ー。
新たなステージへ
BRIDGE TO THE INNOVATION
カイオム・バイオサイエンスは「ADLib®システム」により多様な抗体を迅速に創出して、
代表取締役社長
新規医薬品の開発につなげることにより、新しい治療法を必要とする患者さん及び
農学修士・獣医師
御家族のお役に立ちたいと願って設立されました。
Q.1
ば、副作用の心配もなく100%の治療効果が得られるはずです。未だ治療法が見
世界には、未だ有効な治療法のない疾病が数多くあります。
また、治療法が
どのような社会的課題を
あっても残念ながら現時点では、誰にでも100%の治療効果があるという医薬品
解決したいと考えていますか?
はありません。患者さんは自分の病気に対する効果や副作用の有無が不明確な
つかっていない病気に対する特異的な抗体を迅速に作製し、患者さんに投与す
ることが可能になり、病巣をピンポイントで攻撃することにより副作用の可能性を
低くできる。
この究極のオーダーメイドとも言える治療で医療に変革をもたらした
まま治療を受けざるを得ないというのが実情です。抗体医薬品の投与により、
が
い。
その想いがカイオム設立の原点です。
ん細胞だけを消滅させることは理論上は可能ですが、全員に有効なわけではあ
すでに、抗体の攻撃力を増すために抗体に毒素を付けるといった技術も実用
りません。ADLib®システムによる抗体作製基盤技術が確立すれば、
その患者さん
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
(注1)抗原
異物の表面に存在しており、生体内に入
ると抗体をつくらせる原因となる物質。
異種のタンパク質や毒素、微生物が抗
原となりうる。
2
の治療に必要な抗体を、
わずか10日程度で作ることができるのです。既存の医
薬品では効果がない治療、
あるいは手術が不可能ながんを投薬で小さくしたう
えでの摘出手術が可能になるのです。
実は、私が起業するきっかけになったのは身内の病気です。妻と父ががんに、
化されています。
こうした先進技術も積極的に取り入れながら、従来の医療では
Q.2
対応できなかった病気の治療を行っていきたいと考えています。
(注2)抗体
体内に細菌やウイルスといった異物が
侵入した時、それに対応してつくりださ
れ、その異物に対してのみ反応するタン
パク質。特定の異物にある抗原に結合し
て、様々な働きでその異物を生体内から
除去する分子。
そして母がC型肝炎を患いました。母は副作用に耐えて頑張ったにもかかわらず
カイオムの
肝炎は治らず、逆に後遺症が残る結果となってしまいました。高額な医療費を支
目指すところについて
存の限られた医薬品の中から最適と思われるものを選択し投与できる、
という段
払っても期待した効果が得られないばかりか、副作用や後遺症に苦しむリスクに
教えてください。
階にすぎません。
(注3)抗体医薬品
人の体にもともと備わっている免疫とい
う防御システムを利用して、がん細胞や
病原体(ウイルスなど)の細胞表面の目
印となる抗原をピンポイントで狙い撃ち
にする画期的な医薬品。
方を大きく変える必要性を強く感じました。
そんな折、従来の技術では抗体を作
品を困難抗原からでも短期間に作製することを可能にする他に類を見ない
製できなかった抗原
に対する様々な抗体を短期間に作製できるという
ADLib®システムをもっています。
その競合優位性を最大限に活かしながら個々の
ADLib®システムに出会い、完全なヒトの抗体(注2)も自在に作れる可能性があると
患者さんに最適な抗体を提供し、
「100%の治療効果を実現する究極のオーダー
いう話を聞いて、
これなら現在の医療を変えることができるのではないかと思っ
メイド医療」
というビジョンを実現して人々の健康に貢献したいと考えています。
そ
たのです。一人ひとりの身体に最適な抗体医薬品
して、社会への貢献を通じて企業自らも成長することを目指しています。
曝される。私自身医療に携わりながら何もできない無力感を痛感し、医療のあり
(注1)
を作製することができれ
(注3)
医療も個別化の時代が来ると言われていますが、今の段階ではあくまでも既
カイオムはヘルスケア・イノベーターとして、一人ひとりの身体に最適な抗体医薬
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
事業を通じて
3
Top Interview
Q.4
戦略とビジネスモデル
Q.3
ビジョン達成に向けての
当社では、
3つのビジネスを展開しています。一つ目の創薬アライアンス事業は
あらためて、
究極のオーダーメイド医療の実現というビジョンを実現するための戦略として
長期戦略は
は、
まず当社の競争優位の源泉であるADLib システムの完成度を一層高めて
どのようなものですか。
行くことが重要だと考えています。当社単独で実現するのではなく、国内外の製
ビジネスモデルを
共同研究を通じて創薬に繋げて行くものです。製薬企業などが特定の病気に対
教えてください。
してその原因物質まで把握している場合、共同研究の形でその原因物質に対し
て抗体を作製し、有効な医薬品の開発に繋げていきます。
®
二つ目は基盤技術ライセンス事業です。ADLib®システムを使用できるライセン
薬企業や研究所などとの共同研究や技術導出といった形で研究開発を行い、
スを持っているのは当社のみなので、
これをサブライセンスとして製薬企業に提
それぞれの顧客ニーズを確実に満たすことでADLib システムの有用性を広く認
供し、各社で独自に医薬品開発に役立てていただくものです。
®
めていただくことが必要です。
また、先鋭的な関連技術を組み合わせて、
より高付
そして三つ目がリード抗体ライセンスアウト事業です。
これは、自社で抗体を作
加価値で効率的なリード抗体の創生を可能とするべく、ADLib システムを核とし
製し、様々な抗体の薬効データとともに製薬企業に販売していくものです。
アカデ
た創薬ネットワーク
の構築にも取り組みます。
これまで医薬品が提供できな
ミアでは、基礎研究の中で様々な候補物質(病気の原因)
を発見しています。通
かった難治性疾患
や稀少疾病
常、
こうした候補物質を扱って医薬品開発の機会を得るのは実績も経営資源も
®
(注4)
(注5)
を足掛かりに、革新的な医薬品を待ち望
(注6)
む多くの患者さんに少しでも早く治療薬を提供していくことを目指しています。
豊富な大手製薬企業ということになるのですが、
そうした大手企業が保有する既
ADLib システムの特徴を最大限に活かすための戦略として、現行の医療制度
存の抗体作製技術では抗体ができない候補物質がたくさんあります。
このような
の見直しを求め、医療に関わる人々の理解が得られるよう働きかけていくことも
抗体を当社の技術で作製し、治療用としての可能性が確認できた段階でライセ
必要です。現行の医薬品承認審査制度では、個々の薬品について承認取得が
ンスアウトを行います。
®
必要となっており、
この承認審査には通常長い時間がかかります。
しかし、
もし、医
薬品を作製する方法としての認可が取得できるようになれば、ADLib®システムの
特性を活かし、パンデミック感染症などの緊急時にも迅速に抗体を作製し対応
することが可能になります。
ビジネスモデル
(3つのコア事業)
抗体医薬品の研究開発支援及び研究開発等を実施
Apple創業者のスティーブ・ジョブズは、iPodとiTunesを組合わせることで音楽
配信のルールそのものを変えました。同じことを我々は医療で実現したいのです。
現行の薬事法のルールでは、動物を使った非臨床試験の段階で安全性が確認
【研究】
されてからヒトに対する臨床研究が行われるので実用化までには約10年という
他の産業でも起こってきたように画期的な技術の誕生によって医療のルールを
変えることは可能だと考えています。
この難関なハードルを乗り越えていくために必要となるものは、ADLib®システ
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
(注4)創薬ネットワーク
ADLib ®システムをコアに据え、他の創
薬 技 術を連 携させて構 築した創 薬プ
ラットフォーム。
4
(注5)難治性疾患
症例数が少なく、原因不明で、治療方法
が確立しておらず、生活面への長期にわ
たる支障がある疾患(厚生労働省による
研究事業で指定されている疾患)。
(注6)稀少疾病
患者数が少ない病気のこと。患者数が
少ないことにより、治療法や治療薬の開
発が進まない、患者さんのネットワーク
が形成されにくいという一面がある。た
だし、稀少疾患の概念は時代や地域に
よって変化する。
ムを用いた抗体作製実績であると考えています。昨年は、富士レビオ㈱から
ADLib®システム由来の抗体を用いた診断キットが発売されました。一方、
カイオム
ではパンデミック感染症対応を実現するための実績やパイプラインの拡充も積極
的に進めています。昨年発表したインフルエンザウイルスやエボラウイルス病のウイ
抗原、抗体の事業化権利
ADLib®システム
(創薬基盤技術)
を保有
【研究】
基盤技術ライセンス事業*
(ADLib®システムのライセンス)
研究用 抗体
【抗体】
間で作製に成功したことへの反響も大
リード抗体ライセンス
アウト事業(抗体)
きく、国内外の公的機関等からも問合
ついて交渉が始まっています。
このパン
【ADLib®システム】
【抗体】
ルス抗原に反応性を示す抗体を短期
せなどをいただき、
さまざまな可能性に
当社
* 製薬企業等が抗原を保有
リード抗体ライセンスアウト事業に
おいて生じる取引
着手金、成功報酬、ロイヤルティ
デミック感染症対応がビジョンに向け
た2番目のマイルストーンです。
【¥,$,€】
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
既存のルールが変わらないままではこうした利点を活かすことができませんが、
創薬アライアンス事業*
(研究支援+抗体)
【抗原】
製薬企業等
過程をすべてすっ飛ばして治療を行える可能性があると私は考えているのです。
大学・公的研究機関
長い時間がかかってしまいます。当社の完全ヒトADLib®システムなら、
これらの
【抗体】
5
Top Interview
Q.6
カイオムのビジネスフィールド
Q.5
既存の医薬品の治療効果改善や、有効な治療薬がない稀少・難治性疾患へ
抗体医薬品市場の
の対応、
そしてさらに高い安全性へのニーズが高まる中、新薬研究開発の成功
状況について教えてください。
(注7)低分子医薬品
段階的な化学合成の工程を経て生産さ
れる医薬品。これらは、分子量が小さな
化合物である。
課題はどのようなものですか?
られた抗体をヒト型抗体へと変換するもの、
もう一つが「ファージ・ディスプレイ法」
低分子医薬品
る、
またどうしても抗体が取れない抗原があるといった問題点があります。一方、
とは異なる、
ヒトの免疫機能を利用した抗体医薬品に注目が
集まり、多くの製薬企業がこの分野に参入してきています。世界の医薬品市場の
当社の独自基盤技術であるADLib®システムは、
これらの従来の課題を解決す
規模はおおよそ100兆円ですが、
その中で抗体医薬品の市場規模は約6兆円、
る画期的な技術です。困難抗原への対応力、迅速性など、従来の方法に比べて
ほぼ6%を占めています。世界の医薬品売上高の上位10品目を見ても、抗体医
も圧倒的な競合優位性を保持していると言えます。
しかしADLib®システムにもま
薬品は5品目を占め、中には年間1兆円を超える売上をあげている製品もありま
だまだ課題はあります。昨年は完全ヒトADLib®システムを構築し、直接完全なヒト
す。
また、現在市場で販売されている
の抗体を作製することに成功しましたが、今後は継続的にレベルアップさせてい
抗体医薬品は50品目程度しかありま
くことが重要な課題です。
まずは完全ヒトライブラリの多様化、高品質化を最優先
せんが、開発途上のものが300から
課題として取り組んでいます。
そのほかにも高品質な抗体作製の新規技術開発、
400品目あると言われており、
これらが
獲得した抗体を最適化する先進的な関連技術を持つ企業との共同研究にも積
順次市場に出てくると考えると、抗体
極的に取り組み、継続的な技術改良を重ね、本格的な事業化、収益化へと繋げ
医薬品市場はこれまでの年2桁の成
ていきます。
長をさらに将来に向けても継続してい
くものと見込まれます。
ADLib®システムと既存法の比較
完全ヒトADLib®システムの構築により、圧倒的な競合優位性を確立
●
2015年には市場規模約627億ドルに達すると推定される。
ADLib®システム
マウスハイブリドーマ
ファージ・ディスプレイ
通常の実験室で可能
動物飼育施設が必要
組換えDNA実験施設が必要
無限の可能性
制限あり
制限あり
対応可
一部対応可
一部対応可
期間(セレクション)
約10日
約6ヶ月
2.5∼3.5ヶ月
自動化
可能
不可
可能
完全ヒト抗体
実用化レベル ▶ 本格実用化
実用化
実用化
施設
多様性
困難抗原
*
■
■
■
■
■
■
■
■
■
60,000
50,000
40,000
Onco
I&I
Other
CNS
ID Musc
Endo
Resp
CV
: 競争優位性のある技術
* 困難抗原 : 抗体を作るのが難しい抗原
Q.7
30,000
20,000
抗体医薬品市場の中で
10,000
0
04
05
06
07
08
09
10
11
12
※Onco : がん、I&I : 自己免疫疾患、Other : その他、CNS : 中枢神経、ID : 感染症、Musc : 筋骨格
Endo : 内分泌、Resp : 呼吸器、CV : 循環器
出所:Datamonitor社「Monoclonal Antibodies Market Analysis Update
(2011年)
」
13
14
15
16
抗体医薬品が注目を集め、
ますます多くの製薬企業が抗体医薬品開発に参
カイオムはどのように
入している中、実は従来の抗体作製技術で医薬品として開発されているターゲッ
自らをポジショニング
トはせいぜい数10種類にすぎません。
つまり、従来の技術では抗体が作製できな
していくのですか?
いターゲットが数多くあるということです。ADLib®システムでは、従来技術では作
製できない抗体が創生できるため、
これまでにない全く新しい市場を創り出すこ
とが可能です。私たちは、他社が既に対応している疾病領域ではなく、他の誰も
着手していない新たな医薬品分野でビジネスを展開していこうと考えています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
抗体医薬品の世界市場は、年間10%ずつ成長と見込まれている
70,000
で、大腸菌に感染するウイルスに抗体の一部を発現させ、
その中から良い抗体を
選択する技術です。
これらには、取れる抗体の種類が限られている、時間がかか
●
Sales ($m)
う
「マウスハイブリドーマ法」
で、
これはマウスに抗原を投与して抗体を作製し、得
(注7)
年間約10%の成長が見込まれる抗体医薬品
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
そしてカイオムにとっての
確率は低下傾向にあると言われています。
そうした状況において近年は、従来の
抗体医薬品市場の将来予測
6
従来の抗体作製技術には、大別して二つの方法があります。一つはマウスを使
抗体医薬品、
7
Top Interview
Q.9
カイオムの収益構造
Q.8
カイオムの収益構造
について教えてください。
将来に向けて、
まず、
3つの事業ラインそれぞれに安定収入部分と成功報酬部分があります。
創薬アライアンス事業では、共同研究開始時の着手金と共同研究開発費という
収益構造はどのように
センスに興味を持つ国内外の企業との間で技術評価試験の実施や技術ライセ
なっていきますか。
ンススキームの交渉を始めていますが、大手製薬企業に使っていただくことがで
きれば、安定収入の確保が可能になると同時にADLib®システムの性能が広く認
形で安定収入を獲得し、
さらに一定の成果が出た段階でマイルストーン収入(注8)
知されることにも繋がり、事業拡大を加速することができると考えています。現在
を、
そして成果物が上市された後にはロイヤルティという形で成功報酬を得られる
の中期経営計画では、2016年度において完全ヒトADLib®システムの技術導出
形になっています。現在、中外製薬グループとの間で同事業を進めており、当社の
が本格化し、基盤技術ライセンス事業からの収入が飛躍的に増加するものと見
売上の大部分を占めております。
込んでいます。
今後の創薬アライアンス事業においては、完全ヒトADLib システムも用いた抗体
また、
その間にも当社独自での抗体作製を進め、
パイプライン(注9)を充実させる
®
作製を進めていく予定です。
べく力を入れていきます。中長期的には付加価値の大きいリード抗体ライセンスア
基盤技術ライセンス事業では、契約一時金のほか、技術使用料が安定収入と
ウト事業を伸ばし、創薬主体の企業としてロイヤルティ収益の増大を目指します。
なり、
さらに一定の成果が出た段階でマイルストーン収入を、成果物が上市された
医薬品の開発には通常長い年月と費用がかかり、
かつ成功確率が低いため
後にはロイヤルティを成功報酬として受取ります。現在は富士レビオ㈱が技術導
に大きなリスクを伴います。当社では基盤技術ライセンス事業などからの安定収
出先となっていますが、ADLib システム由来の抗体を用いた診断キットが昨年
入を積み重ねると同時にリード抗体ライセンスアウト事業においても、当面は早期
最終製品として上市され、
ロイヤルティ収益が発生しています。同社ではこれを今
に回収することを目的として、臨床に入る前でのライセンスアウトをしていくことで、
後のグローバル戦略の柱として位置づけているため、
さらなるロイヤルティ収益の
確実な収益化を目指しています。
®
拡大が期待できるものと考えています。
(注8)マイルストーン収入
導出後の医薬品開発の進捗に伴い、そ
の節目ごとに受領する収入のこと。
昨年来、完全ヒトADLib®システムのレベルアップを重ねながら、基盤技術ライ
また、現行の臨床試験(注10)では、例えば30%から40%への効果の改善を図る
リード抗体ライセンスアウト事業は、当社が非臨床試験まで、つまり臨床前まで
場合、統計学的な優位性を証明するには多くの患者さんによる臨床データを用
の薬効確認フェーズを行って抗体の有効性を確認した後に導出し契約一時金
いての統計解析が必要となり、数百億円の費用がかかるばかりでなく十分な数
を得ますが、非臨床の段階で導出する事で、
リスクを低く抑えながら上市後のマイ
の患者さんに臨床試験に参画して頂くことも大変です。今後医療の個別化が進
ルストーン収入とロイヤルティを得ることを期待しています。当社のパイプラインで
展すれば、特定のターゲットを持っている人のみを選別して臨床試験を行うこと
は現在、抗セマフォリン3A抗体について導出に向けた疾患モデル動物での薬効
が主流になると考えられます。
より少ない登録症例数で、費用面でも工程面でもよ
試験が進行中です。
り少ない負担で臨床試験を行うことができるようになれば、当社のようなベン
現時点では、当社の収入の約9割が創薬アライアンス事業からの収入で、基盤
チャー企業には大きなチャンスになると考えています。
技術ライセンス事業からの収入が残りの1割程度となっています。
事業別収益モデル
財務バランスを考慮した価値創造経営実現の為の戦略
8
成功報酬
創薬アライアンス事業
着手金
共同研究開発費
マイルストーン
ロイヤルティ
基盤技術ライセンス事業
契約一時金
技術使用料
マイルストーン
ロイヤルティ
リード抗体ライセンスアウト事業
契約一時金
マイルストーン
ロイヤルティ
(注9)パイプライン
研究開発から承認・発売にいたるまでの
開発品(医療用医薬品候補)
を指す。
(注10)臨床試験
新薬開発だけでなく、薬の効果の追跡
調査の実施、既存の薬の別の効能を調
査・確認など、人(患者や健康な人)に対
して行なう治験をかねた全ての試験の
こと。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
安定収入
9
Top Interview
Q.10
カイオムの重要な
経営資源は何ですか?
高めていきますが、
すでにリード抗体ライセンスアウト事業ではこれを投入し、
パイ
プライン拡充のための抗体作製プロジェクトを進めているほか、候補企業への技
術導出活動も開始しています。2015年度は、技術導出及びリード抗体の導出を
実現し、
いよいよ本格的な事業化フェーズへと移行していきます。
6つの経営資源(財務、製造、人的、知的、社会関係、自然資本)
のうち、最も重
要な経営資源は2つの知的資本です。
そのひとつは、勿論、起業のきっかけとも
当期の活動の概況としましては、創薬アライアンス事業において、中外製薬グ
なったADLib システムです。
これは従来とは全く異なる画期的な技術で、他の方
ループとのビジネスが順調に推移しているほか、㈱リブテックが創生した2つのが
法ではできない多様な抗体を迅速に作製し、新たな医薬品市場を切り開いて行
ん治療用抗体の共同研究、並びに導出活動を行っております。
®
くことが可能となります。昨年は、最大の弱点と思われていた、獲得抗体がトリの抗
リード抗体ライセンスアウト事業では、横浜市立大学五嶋研との共同研究の成
体であるという点を克服し、最初からヒトの抗体が作製できる完全ヒトADLib シ
果である抗セマフォリン3A抗体の炎症性疾患とがん領域における有用性の検
ステムが完成しました。
そしてライブラリ
証試験が進行中です。
さらに、名古屋市立大学植村研、横浜市立大学竹居研と
®
の多様化、高品質化を始めとして継続
(注11)
の新規抗体作製のための共同研究も開始しました。
的に完成度を高める努力を積み重ねています。
ADLib システムの基本特許については、理化学研究所と当社が50%ずつ権
基盤技術ライセンス事業では、完全ヒトADLib®システムの改良を行うと同時に
利を保有しており、日本を始め世界の主要市場で基本特許の登録が完了してい
候補先企業への営業活動を開始したことに加え、
オリジナルADLib®システムの
ます。関連特許についても適時国内外での取得を進め、世界でカイオムが独占的
技術導出先である富士レビオ㈱からADLib®システム由来の抗体を用いた診断
に事業を行うことができる体制を整えています。
キットの販売に伴うロイヤルティを受領することができました。同社では新たな診
®
断キット創出に向けた研究開発が継続しているため、
さらなるロイヤルティの増加
もうひとつの知的資本は、
アライアンスです。当社は、通常の創薬ベンチャーとは
が期待できます。
異なり、一つひとつの医薬品開発だけに注力するのではなく、抗体作製の技術そ
のものでも勝負することができるため、複数の企業からキャッシュを獲得すること
外部環境についても少し触れておきますと、正に典型的なオーダーメイド医療
により、失敗のリスクを抑えることが可能です。
この技術を核としてアカデミアやグ
の一つと言える再生医療で、理化学研究所多細胞システム形成研究センター網
ローバル製薬企業、
バイオベンチャーなど多数の提携先とアライアンスを組み、効
膜再生医療研究開発プロジェクトのプロジェクトリーダーである高橋政代博士が
率的なターゲット抗原の獲得や高機能抗体の獲得、創薬にかかるさらなるリスク
患者さんの皮膚由来のiPS細胞から網膜細胞を作り、患者さんに戻すということ
の低減ができることが、大きな特長です。
を実現されています。
これにより再生医療によるオーダーメイド医療に対する法律
次に重要な経営資源は人的資本です。当社には様々な経験とスキルを持った
が整備されつつあり、日本が世界で最先端のオーダーメイド医療を実現できる場
優秀な人財が集まっていますが、
カイオムを
「まじめやけどおもろい会社」
にした
所としてグローバルでの注目を集めています。
これはADLib ®システムを用いて
いという想いから、当社では「まじめ軸」
と
「おもろ軸」
をベースとした独自の人事
オーダーメイド医療の実現を目指す私たちにとっては想像以上の大きな追い風だ
評価を行っています。
これは、自らがチャレンジして社会を変えて行こうという創業
と考えています。
の思いを評価の形にしたものです。例えばおもろ軸ではとかく自分の研究分野に
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
10
強みを持つ人を巻き込んでやってみようといった考え方を評価し、常にチャレン
ジをしていく人にどんどんチャンスを与えます。
そうした会社であることで、技術や
事業、会社の成長を促進し、社会に貢献して行くことを目指しています。
なお、当社は製造資本はあまり必要ではなく、社会関係資本、自然資本の影
響もほとんどありません。
次のマイルストーンである
パンデミック感染症対策については、
「感染症対応に向けた抗体作製プロジェ
パンデミック感染症への
クト」
を立ち上げ、ADLib®システムの感染症に対する対応能力を証明するための
対応の状況はいかがですか。
取り組みを強化しています。昨年10月には複数のインフルエンザウイルスの抗原
に、
そして12月には西アフリカの一部の地域において感染者が急激に増大した
エボラウイルス病のウイルス抗原に結合する抗体の作製を短期間で実現しました。
カイオムの現状と将来
Q.11
長期的な目標に向けて、
Q.12
当社は、
ビジョンである究極のオーダーメイド医療の実現目標を2023年に置い
現在の状況をどのように
ています。2013年度末に、
まずビジョン達成の第一のマイルストーンであった完全
捉えていますか?
ヒトADLib®システムの構築に成功し、2014年度はそのライブラリの多様性向上な
どを重ねてきました。
システムの改良については、今後もさらに継続して完成度を
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
籠りがちになってしまう技術者に対して、
ひとりではできないことを自分には無い
(注11)ライブラリ
各々の細胞が、それぞれ異なる抗体を生
み出すDT40細胞のコレクション。様々
な情報資料を収集・保管し、多種多様な
ニーズを持っている利用者への情報提
供を行なう図書館に例えて、DT40細胞
のコレクションをライブラリと呼びます。
11
Top Interview
今後は既に獲得できた抗体をリード候補抗体として開発を行うとともに、
さらに
売上高については、2015年度は、創薬アライアンス事業における完全ヒト
新たな抗体作製プロジェクトを順次実施してパイプラインの拡充を積極的に進め
ADLib®システムによる試験的契約の獲得と、抗セマフォリン3A抗体の導出によ
ます。
また、
こうした成果を受けて国内外の公的機関等とも交渉が始まっており、
共
る売上を見込んでいます。
これを契機として2016年度には本格的な完全ヒト
同研究などの可能性も模索しているところです。当社のビジョン実現にむけての
ADLib®システムの技術導出、複数のリード抗体の導出を展開し、飛躍的な売上
取り組みを成功させる鍵となる米国を中心とした事業展開を加速させていきます。
の増大を見込んでいます。
人口増加によって人間の活動範囲がどんどん広がって行くなかで、今後も全く
事業費用については、完全ヒトADLib®システムの技術改良、複数のパイプライ
未知のウイルスが出てくることは想像に難くありません。
しかも、
ウイルスは年々変
ン創出のための創薬研究と他社との共同研究を含めた非臨床試験等の開発費
化していく可能性があるため、今年開発した薬品が来年も効くとは限りません。迅
用を見込んでいます。人件費については、今後の事業の拡大に対応すべく適切
速に抗体を作製できる当社の技術があれば、抗体医薬品を早期に投入すること
な要員計画を構築していくことを前提に、
オペレーションの効率化、技術の標準
ができるので、
こうした緊急時には特に、大いに社会に貢献できるものと考えてい
化及び社外機能の有効活用を継続的に行います。
ます。
設備投資については、費用対効果を十分に勘案しつつ、研究開発計画と連動
し合理的な研究開発投資を継続的に行っていきます。
なお、米国における研究
Q.13
収益化に向けた
拠点の設立を今年度に行います。
こうした前提に基づいて、2016年度には売上高として34億円を計画していま
まずはライブラリの多様化、高品質化などにより完全ヒトADLib システムの改
®
ADLib®システムなど
善を続けながら複数の製薬企業との検証契約を目指します。高品質化というこ
導出促進のための取り組みを
とでは、作製した抗体を分析して最適化する体制も整ってきました。
こうした技術
教えてください。
により付加価値の高い抗体作製にも取り組んでいきます。
さらに、
そのほかの先
鋭的な周辺技術を持った企業との提携にも注力しています。
2年前から始まった
Biotecnol Ltd.との提携では、抗原を認識する手を3つ持つ分子を作製できると
いうTribody 技術を取り入れることで、例えば、
がん細胞を特異的に認識して、
TM
攻撃能力を高めるような高機能な抗体医薬品の開発が期待できます。
このよう
にADLib システムと組み合わせることでさらにリード抗体の付加価値を高めら
す。2014年度は、完全ヒトADLib®システムの導出に向けたシステムの改善に注力
するとともに、興味をもっていただいている企業に向けて営業活動を開始したほ
か、
リード抗体の創出において、炎症性疾患及びがん領域における抗セマフォリ
ン3A抗体の有用性検証試験を実行し、一部に有望な成果を得ることができまし
た。2015年度は引き続きこれらの活動を継続し、年度内にも技術導出及びリード
抗体の導出を実現できるよう努めます。
また、新たに始まった共同研究や照会を
いただいている案件についても、適切な経営資源の投下によりこれを積極的に
推し進め、連続的なパイプライン創出につなげていきます。
®
れるような先鋭技術を持つ複数の機関と積極的にアライアンスを組んで、
ADLib システムを核とした創薬ネットワークを構築することを目指しています。
®
昨年富士レビオ㈱がADLib システム由来の抗体を用いた診断キットを上市
®
したことで、
この成功事例が業界でも注目され、複数の照会が入って来ていま
す。
これらをしっかりと実績に結びつけ、
カイオムと一緒にやりたい、
カイオムの存
在が欠かせない、
と言われるようになるよう鋭意努力しています。
関連技術を保有する企業とのアライアンスが不可欠です。
そうした技術獲得を目
的としたアライアンス機会の発掘及び連携を深めるための投資資金及びそれに
付随する諸費用に加え、国内研究拠点の管理業務及び研究に関する設備投資
資金、
またパンデミック感染症対応実現のための研究開発費等へこの資金を充
当社社外取締役の太田邦史(くにひろ)
が発明した、極めて高いポテンシャル
を有するADLib®システムの事業化とさらなる発展を目指して設立以来、当社は
2014年度から2016年度までの3年間を対象期間とした中期経営計画では、
技術改良への先行投資期間としての2014年度を踏まえ、
より完成度の増した完
全ヒトADLib®システムでの事業展開を2015年度以降に見込んでいます。創薬ア
ライアンス事業及び基盤技術ライセンス事業において、顧客候補である国内外
の製薬企業に対する本格的な契約獲得活動を行い、2016年度からは、本格的
な研究開発投資の回収フェーズに入ることを見込んでいます。
まずは計画策定
の前提について説明します。
今年で10周年を迎えます。2013年度の完全ヒトADLib®システム構築の成功に続
き、
ライブラリの多様化、高品質化などの改良、
さらに複数のパートナーとの共同
研究進展と、私たちは目の前の課題に取り組み、次々と、
そして着実にその成果
を積み上げてきました。
2015年度はこれまでの成果をもとに高付加価値ビジネスへと転換を図る正念
場との認識に立ち、全社一丸となってビジョンの達成に邁進します。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
12
る技術革新を追求するためには、当社単独での研究開発に加え、独自の優れた
の上記費用を確保することができました。
Q.14
状況を教えてください。
増資による2,004百万円の資金調達を行いました。
ビジョン実現に向けたさらな
当していきます。今回の増資により、健全な財務基盤を維持しつつ2017年度まで
中期経営計画と業績
中期経営計画の
なお、昨年12月、複数の有望なパイプライン構築を推進することを目的として、
13
Our Resources
カイオムの重要な知的資本
「ADLib®システム」とは?
ADLib ® system
独自の画期的な抗体作製技術
ADLib®システムと既存の抗体作製法との違い
ADLib®システムは、抗体医薬品の作製において、これま
が可能で、しかも1/4から1/6という短い時間で抗体を
一般的に用いられている抗体の作製法には、
マウスに抗
抗体として開発するため、
scFvまたはFabをIgGへ変換
で不可能とも言われていた「多様性」
「迅速性」、そして
作製することを可能にしたシステムです。さらに従来の方
原を投与して抗体を作る
「マウスハイブリドーマ法」
と大
する必要性が生じます。
しかし、IgGへの変換には労力と
「困難抗原への対応」の全てを解決する、世界初の画期
法では作製が困難だった抗原を認識し、機能性がある抗
腸菌に感染するウイルス
(ファージ)
に多様な抗体の一
時間が必要であり、IgG変換後に生物活性が低下するな
体を作り出すことも可能です。
部を発現させる
「ファージ・ディスプレイ法」
の2つが存在
どの問題が発生するケースも報告されています。
分かりやすく言い換えると、様々な種類の抗体を作り出
します。
これに対して、
ADLib®システムは、
細胞の持つ生体独自
せることで、従来の方法よりも多くの病気に対応すること
マウスを使用するマウスハイブリドーマ法は、
「免疫寛容
の多様化メカニズムを利用するものであり、
マウスハイ
(=自己の構成成分に対して免疫反応を示さない状態。
ブリドーマ法の課題である生体の免疫系の制限から独立
つまり、
自分を構成している抗原に対して免疫系が反応し
し、抗原の種類を選ばない優れたシステムです。
また、抗
ないため、抗体がつくられない)」
という制限があるため、
体を産生するDT40細胞は、
ファージディスプレイ法で
こうしたタンパク質に対する抗体作製は大変困難です。
得られる抗体断片とは異なり、IgG(IgGキメラADLib®、
ファージ・ディスプレイ法では、
得られる抗体断片
(scFv:
完全ヒトADLib®)のフォーマットで抗体を得ることがで
一本鎖抗体、Fab:抗原結合性フラグメント)
は、医薬品
きます。
的な技術です。
抗体医薬品と従来の医薬品(低分子医薬品)の違い
抗体医薬品は、人の体にもともと備わっている免疫とい
することが期待されます。
う防御システムを利用して、がん細胞や病原体(ウイル
そして、本来体内にあるタンパク質であるため害が少な
スなど)の細胞表面の目印となる抗原をピンポイントで
く、安全性の高さ、これまで治療法がなかった病気への
狙い撃ちにする画期的な医薬品です。従来の医薬品と
治療効果が期待できることなどから、医薬品市場で熱い
は異なり、薬剤としての標的がはっきりしているため、狙
注目を浴びています。
い撃ちした標的だけを攻撃し、想定外の副作用を軽減
■ 従来の抗体作製技術との比較(当社作成)
多様性における技術の優位性
ADLib®システム
14
分類
【アレルギー・免疫】
病名
関節リウマチ ● クローン病 ● キャッスルマン病 ● 喘息 ● 腎臓移植後の急性拒絶反応
● がん ● 大腸がん ● 乳がん ● 急性骨髄性白血病
●
【が ん】
●
大腸がん ● 乳がん ● 急性骨髄性白血病
【感染症その他】
●
新生児・幼児の感染発生抑制 ● 加齢黄斑変性症
マウス
ハイブリドーマ法
自律的なライブラリの多様化
ファージ・
ディスプレイ法
免疫寛容の回避
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
■ 抗体医薬品が使われている主な病気
15
Our Resources
ADLib®システムの概要と特徴
完全ヒトADLib®システムの実用化
専門的には「試験管内で、免疫によらない仕組みで多様な完全抗体が得られるモノクローナル抗体作製システム」と
カイオム・バイオサイエンスは、2014年3月、ADLib®シ
今後、完全ヒトADLib®システムの性能がさらに向上し、
いうものであり、このシステムを当社では「ADLib®システム」
(Autonomously Diversifying Library:自律多様化
ステムをさらに発展させ、DT40細胞の抗体遺伝子をニ
薬効検証でこれまでにないほどの高い効果が証明され
ライブラリ)
と呼んでいます。
ワトリのものからヒトの抗体遺伝子に置き換えることで、
れば、将来の治療用抗体の開発に大きなインパクトを与
完全ヒト抗体をつくりだすライブラリ
(完全ヒトADLib®)
えることになります。特に2018年のビジョン達成像とし
の構築に成功しました。同年5月には特許の出願も完了
て描いていた「パンデミック感染症への対応」は、完全
しています。この完全ヒトADLib®システムの完成は、直
ヒトADLib®システムの完成を受けて、さらなる加速化を
接人に用いることができるヒト抗体を短期間で作製する
見込んでおり、ビジョンの前倒し達成も視野に入れてい
ことが可能になったことを意味します。
ます。
完全ヒトADLib®システムでは、複数の抗原に対して特
創業以来、当社が掲げる事業ビジョンの最終的な達成
異的な抗体を獲得できることが確認されています。さらに
像である「100%の治療効果を追求するヘルスケア・イ
取得した抗体の中には困難抗原に対する抗体も含まれ、
ノベーター」を実現する上で、この完全ヒトADLib®シス
臨床的にも大きな意義を持つ可能性もあり、技術確立後
テムの進化が大きな役割を担うと考えています。
特徴
1
多様な抗体を持つ細胞ライブラリ
TSA処理
DT40細胞
DT40細胞のもつ様々な抗体を生み出すメカニズムの活性化をトリ
組換え活性化
コスタチンA(TSA)という薬剤で処理することでコントロールしま
す。こうして作り出された多種多様な細胞集団(ライブラリ)は冷凍
保存しており適宜使用が可能です。
短期間での抗体作製
特徴
2
ターゲットに反応する抗体を短時間で選択
抗体選択
30 分
特異的モノクローナル
IgM / IgG 抗体獲得
市販の磁気ビーズと特定のターゲット
(抗原)
を結合させたものをラ
磁石
抗原
N
培養 1 週間
使って回収します。ここまでの工程は、30分程度です。その後、抗原
S
磁気ビーズ
に特異的に反応する抗体を産生するDT40細胞を培養液の中で培
はニワトリ型の抗体であるため、ヒト型の抗体に変換したものが医薬
品候補抗体となります。
磁石
N
S
3
磁気ビーズ
ターゲット
(抗原)
を
特異的に認識する抗体
抗体産生
DT40細胞
困難抗原への対応
ADLib®システムでは、これまでの方法では抗体取得が困難であっ
た抗原に対する抗体(病原毒素・病原体・自己抗体等に対する特異
完全ヒトADLib®システムの構築
⇒事業化フェーズへの移行開始
抗原発現細胞
複数回膜貫通型
タンパク質
ADLib®
combo
オリジナル
ADLib®
2003/07
2008/04
ADLib®
axCELL
2009/10
lgGキメラ
ADLib®
2011/09
完全ヒト
ADLib®
プロトタイプ
2013/06
完全ヒト
ADLib®
継続的な技術改良・
先鋭技術との融合
養します。なお、オリジナルのADLib®システムでは、取得した抗体
■ ADLib®システムの進化の歩み
技術価値レベル
イブラリの中に投入し、抗原と結合したDT40細胞を別の磁石を
特徴
も引き続き機能向上を図るための改善を続けています。
2014/03
抗体等)
を作製できます。
すれば、従来の技術では抗体の取得が難しい医薬品の有望なター
ゲットである複数回膜貫通型タンパク質(GPCR等)に対する抗体
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
の取得にも成功しています。
16
http://www.chiome.co.jp/technology/adlib.html#axCELL
2014年
●
完全ヒトADLib®システムの開発成功 ● 数週間でヒトに投与可能な抗体を創出
2018年
●
パンデミック感染症への対応 ● 完全ヒトADLib®システムにより、ワクチンを代替
2023年
●
目指す姿
「究極のオーダーメイド医療」を実現 ● 個々の患者さんに最適な抗体を提供
100%の治療効果を追求するヘルスケア・イノベーター
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
■ 事業ビジョン達成へのロードマップにおける完全ヒトADLib®システムの役割
例えばADLib®システムの応用技術であるADLib®axCELLを使用
17
Our Resources
ADLib®システムと
「完全ヒトADLib®システム」の違い
従来のADLib®システムではニワトリの細胞でトリ抗体
る人工遺伝子に置換してADLib®システムを作動させる
を取得したうえで、
トリ抗体からヒト抗体に変換していま
ことで、人に用いることのできるヒト抗体を直接作製す
したが、今回完成した「完全ヒトADLib ®システム」で
ることが可能になりました。
■ 完全ヒトADLib®システム構築からビジョン実現への布石
事業化フェーズへの移行と戦略抗体の策定
完全ヒトADLib®システム
は、ニワトリ細胞の抗体をつくる遺伝子をヒト抗体をつく
ADLib®システムの資産価値の最大化
当社は、積極的なアライアンスによって、
自社のみでは
ス・導出することで、広く使われて業界をリードする技術
困難なレベルの技術革新を追い求め続ける一方、戦略
(いわゆる世界標準)
になることを目指しており、その結
的な特許出願による技術の模倣防止に努めることで、世
果として認知度が向上し、
ライセンス収入や医薬品の売
界初の独自技術であるADLib システムの資産価値の
上ロイヤルティ収入などの増加につなげていくことが、
最大化を図っています。
最終的には当社の利益に繋がるという考えを基本姿勢
ADLib システムを核とする独自技術を他社にライセン
としています。
®
高付加価値リード抗体の創製を目指し、先鋭技術を保有
ています。TribodyTM技術とは、一つの分子に3つ以上
する世界の製薬企業とアライアンスを組み、共同技術
の抗原認識部位を搭載することができるという技術で、
開発を行っています。例えばBiotecnol, Ltd.とのアラ
これにより、患者さんの抵抗力を上げながらがん細胞を
イアンスにより、同社が保有するTribodyTM技術を利用
攻撃するというような、複数の作用を持つ次世代抗体医
することで、より効果の高い抗体医薬品の開発に努め
薬品の開発が可能となります。
パンデミック感染症への優れた対応能力
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
●
パイプライン拡充のための抗体作製PJへ実践投入
●
基盤技術ライセンス事業
●
多様性の向上、導出活動の開始
●
パンデミック感染症対応
未充足の新興感染症をターゲットとした
戦略抗体の作製開始
●
究極のオーダーメイド医療実現
未充足の稀少・難治疾患をターゲットとした
戦略抗体の検討開始
(注12)Active Sonar…カイオムのビジョン実現に向けたビジネスをドライブするリード抗体等を指す。
優れた技術を守る特許戦略
さらなる技術革新の追求
18
リード抗体ライセンスアウト事業
製薬企業にとって、特許が非常に重要な経営資源であ
分認識し、戦略的な特許出願を行っています。
ることは言うまでもありません。医薬品の開発は、通常
日本を始め米国、欧州、中国といった世界の主要市場に
初期の探索研究から臨床を経て販売に至るまで高額の
おいて、ADLib®システムについての基本特許の登録は
費用と長い時間がかかるリスクの高いものですから、そ
完了しており、さらに関連特許についても適時国内外で
の重要性は他の産業と比較しても高くなっています。研
の出願を進め、当社が独占的に事業展開を行える体制
究開発に重点を置く当社においても、その重要性を十
の確立に努めてまいります。
当期の主な動きと今後の展望
ADLib®システムの持つ「多様性」と「迅速性」、抗体医
ルスやエボラウイルス各々の抗原の部分タンパク質に
当期は、完全ヒトADLib®システムの完成度をライセン
すでにリード抗体ライセンスアウト事業に投入してパイ
薬品の「安全性」や「特定のターゲットへの選択的な攻
対する抗体を短期間で作製することに成功しました。今
ス候補企業の期待に応えられるレベルまで向上させる
プライン拡充のための抗体作製プロジェクトを進めてい
撃性」といった特長は、感染症対応にも大きな力を発揮
後もこの領域での開発を行うとともに、さらに新たな抗
ため、ライブラリの多様性向上などの改善に注力しまし
るほか、導出先候補企業への技術導出活動も精力的に
することができます。カイオムでは、インフルエンザウイ
体作製プロジェクトを展開していきます。
た。2015年度以降も、ライブラリの多様化・高品質化を
開始するなど、安定的な事業化へ向けて新たな一歩を
さらに追求し、本格的な技術導出を目指します。
踏み出しています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
®
●
ビジョン実現に向けた戦略抗体(Active Sonar)(注12)
19
Our Resources
1
カイオムの重要な知的資本
アライアンス
Alliance
創薬企業とのアライアンス
ADLib ®システムを利用した創薬支援及び自社にお
る抗原認識部位を持つ抗体の作製が可能になると
ける研究開発による抗体医薬品創出を行っていま
いった、当社と提携企業双方にとって多くのメリットが
す。従来の抗体作製技術では攻略できない抗原に対
あり、Win-Winの関係のもとで、社会から期待されて
する抗体作製や従来の方法で得られる抗体とは異な
いる抗体医薬品の開発を加速させています。
現在の主なアライアンス事例
●
中外製薬グループ(2013∼)
●
富士レビオ㈱(2010∼)
過去の主なアライアンス事例
●
抗体医薬品創薬のための共同研究
アライアンスの基本的な考え方
Glaxo Group Limited(2012∼2013)
PILOT-STUDY AND OPTION AGREEMENT
ADLib®システムに係わる実施許諾及び
共同研究開発
カイオムは、重要な経営戦略として、
「交差と交流」とい
し、提携先の多様な人々と課題やアイデアを共有しなが
う考え方に基づき、他の企業や機関等と連携して事業を
ら、グローバル規模で当社ならではのユニークな事業体
効率的に展開する「アライアンス」を進めています。
制を構築していきたいと考えています。さらに、アライア
当社は世界の主要な国で特許が成立しているADLib
®
システムという画期的な独自技術を独占的に抱え込ま
ンスを通じて社外の技術やノウハウを学び、当社の知的
資本の充実へ積極的に活用していきます。
●
がん治療用抗体の共同研究
2
ず、一企業の枠を超えてアライアンスを積極的に推進
複数の企業・団体との提携
ADLib®システムを核としてアカデミア(大学・研究機関
品の開発を行うことが可能となっています。アカデミア
等)や製薬企業、バイオベンチャーなど多数の提携先と
等との緊密な関係を活かして、有望な複数のパイプライ
アライアンスを組むことで、効率的なターゲット抗原の
ン構築や付加価値の高い抗体作製に注力するととも
獲得や高機能抗体の獲得、創薬にかかる長い時間と多
に、新たなパイプラインの創出にも積極的に取り組んで
大な費用の軽減など、リスクの低減を図りつつ抗体医薬
います。
㈱ヤクルト本社(2011∼)
アカデミア等とのアライアンス
ターゲット抗原の獲得や技術革新を目的として、大学
疾患に対する効果が確認された場合、その発明につ
や研究機関と提携し事業拡大を図っています。各大
いて当社とアカデミアが共同で出願を行い事業化の
学や研究機関が持つ特異的な抗原遺伝子情報を入
権利を獲得することで、当社の知的財産の拡大にも
手し、これに対応する抗体を作製します。
繋がっています。
アカデミア等とのアライアンスは、共同研究によって
現在の主なアライアンス事例
●
●
横浜市立大学(五嶋研)
●
Biotecnol Ltd.
抗セマフォリン3A抗体のさらなる適応疾患領域拡大
TribodyTM技術とADLib®システムとの組み合わせに
と高付加価値抗体創出への取り組みを継続
よる次世代リード候補抗体創出への取り組みを継続
東京大学(高橋研)
First in classの膜蛋白ターゲットに対する治療用抗
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
ターゲット
(抗原)
獲得
20
アカデミア等
研究用抗体の提供
● 特許戦略サポート
対価
● 必要な実験材料
●
●
体作製を実施中
●
●
次世代ADLib®システム
開発に関する知見
●
●
共同研究費
コンサルタント料
抗体医薬品開発、
診断薬開発
製薬企業等
3
技術開発に係るアライアンス
ADLib®システムの多様化メカニズムの解明、抗体の
有する企業・アカデミア等との提携を行い、効果的か
多様化レベルの解析等、より基礎的かつ高度な専門
つ効率的な課題解決を図っています。
性を要求される分野において、それぞれの専門性を
技術
革新
アカデミア等
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
各抗体事業のサービス
● 抗体事業化の権利
抗原及び抗原発現細胞
(抗原遺伝子)の提供
●
21
Our Resources
アライアンス獲得のための取り組み
有効なアライアンス獲得のためには、ADLib®システム
また、目前にある危機に対してもADLib®システムが有
の継続的な改善・発展を図ることにより、その魅力を常
効であることを訴求するため、エボラウイルスやインフ
に新鮮なものとして提携先の目に映るようにすることが
ルエンザといったパンデミックを引き起こしかねない感
大切です。そのため2014年3月に「完全ヒトADLib®シ
染症に有効な抗体作製に成功するなど、パンデミック感
ステム」を実用化した後も、アライアンス候補先の期待
染症への対応能力を証明する取り組みを強化していま
に応えるレベルへ向上させるための研究を継続してい
す。
カイオムの重要な知的資本
人財
Talent
ます。
22
多様にして優れた人財の確保と育成
2014年は完全ヒトADLib®システムの改善を続けなが
進しております。診断薬分野の大手企業である富士レビ
100%の治療効果を追求するヘルスケア・イノベーター
するためには、それぞれが異なる属性と個性を持ち、さ
ら複数の製薬企業等との検証的契約を目指した活動を
オ㈱が、ADLib システムから取得した抗体を使用した
を目指すカイオムにとって、
「多様性」は人財という側面
まざまな角度から技術に対するアイディアを出すことが
開始いたしました。BIO等のカンファレンスでの講演や
診断薬キットを販売しており、当社は売上高に応じたロ
で欠かせないファクターです。社員それぞれの能力がい
できる人財を揃えることは極めて重要です。当社が自ら
One on Oneミーティング等での営業活動を実施し、
イヤルティ収益を計上しております。
くら高くても、全員が同じ考え方しかできなければ、患者
「優秀な人財が集まった会社」と自負する所以はここに
2015年度に入り秘密保持契約下での営業活動を進め
2015年2月には川崎市殿町キングスカイフロントのナ
一人ひとりの症例や悩みに合わせたオーダーメイド医療
あります。この「多様にして優れた人財」へのこだわり
ております。
ノ医療イノベーションセンター(iCONM)に新研究所を
は実現できません。
は、カイオムが目指す企業像である「まじめやけどおも
また、当社のビジョンであるパンデミック感染症対応を
設立することを決議いたしました。同研究所では当社の
未知のウイルスや急速に広まるパンデミック感染症と向
ろい会社」という言葉に集約されています。
目的とした研究開発では、インフルエンザウイルスや
リソースを集約し抗体作製から薬効試験までをワンス
き合い、決して成功率の高くない新しい抗体医薬を開発
エボラウイルスの抗原の部分タンパク質に反応性を示
トップで実施するとともに、他機関とのオープンイノベー
す抗体の作製が短期間で成功いたしました。ADLib
ションによる創薬力の強化も視野に入れております。
®
®
システムはウイルスによる感染症の脅威である変異に
2015年度以降は、
「完全ヒトADLib®システム」の完成
対しても迅速に抗体作製できる優位性を有していると
を踏まえて、特に喫緊のグローバル課題となっている
考えております。
「パンデミック感染症」に対し、その技術的優位性を積
既存のビジネスでは主に中外製薬㈱及び同社の海外子
極的にクライアント候補先へ提案することでアライアン
会社であるChugai Pharmabody Research Pte.
スの充実を図り、新たな市場拡大に繋げていきたいと考
Ltd.との契約に基づく研究開発活動を中心に事業を推
えています。
「まじめやけどおもろい」人が集う会社
カイオムを「まじめ」やけど「おもろい」会社にしたい、と
付いているのです。
の創業時からの社長の想いが、今日のカイオム・バイオ
人の健康と生命に関わり、技術そのものが商品と言える
サイエンスに見られる風通しの良い企業風土を作り上
当社にとって、そのコアとなる技術をさらに磨き上げて
げてきました。私たちは、真剣に議論するときは役職に
いくため、仕事に対して「まじめ」で高い倫理観をもって
関係なく各自の意見を戦わせます。そして、互いへの信
いることは必然のものです。同時にチャレンジすること
頼と尊重に基づき、一人ひとりが持てる力を最大限に発
を楽しめたり、他の人の意見を「おもろい」と受け入れら
揮して高い目標を追いかける。そんな土壌が当社には根
れたりする柔軟性も貴重な能力だと考えています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
当期の主な動きと今後の展望
23
Our Resources
ワーク・ライフ・バランス
人事評価と連動した社員行動指針
「倫理性と透明性」、
「進化と創造」、
「交差と交流」とい
カイオム社員の誓い十か条
う三つの社是は、医療業界にイノベーションを創出する
私たちにとって非常に重要な意味を持つとともに、社員
一人ひとりがその個性と能力を遺憾なく発揮できる企
1. 私は、明確で正しい目標をもつ!
業風土の醸成に密接に結びついています。社是は単な
2. 私は、常に本質を追究する!
るお題目ではなく、
「カイオム社員の誓い 十か条」とい
3. 私は、常に挑戦し続ける!
う社員の行動指針にまで落とし込まれています。この行
4. 私は、実績を積み重ねることによって
もに、キャリアデザインの支援や仕事と家庭を両立でき
うことは大きな損失になります。大きなライフイベントに
る職場環境づくりに取り組んでいます。
よる私生活での変化があっても引き続き仕事を継続で
高岩 亜希[技術開発部]
中村 沙織[経営企画部]
妊娠が分かった際、
「必ず復帰しよう!」と
システム課に所属し、社内ITシステム等
思いました。子供をもつ女性社員は他に
のサポート窓口としての業務を行ってい
もいましたが、これまで出産・育児休暇を
ます。フレックスタイム制度を活用して早
取得したのちに復職した女性社員がいな
朝出勤することで、その日に実施すべき
て、従業員が常にチャレンジスピリットをもって仕事に臨
6. 私は、議論を成長の機会と捉える!
むことができる仕組みを構築しています。世の中が大き
7. 私は、積極的に貢献する!
く変化する中で、私たちも常に進化し、変化をチャンス
8. 私は、成熟した社会人となる!
日があっという間に過ぎていき、仕事と家庭の両立に悩むこともあ
として捉える組織となるため、現在、人事制度や行動指
9. 私は、交差交流に努める!
りますが、その分、時間の使い方が上手くなりました。実験が忙しく
現在、家庭と仕事を両立しつつ、カイオムの意思決定を迅速にす
針の見直しを行い、さらなる成長を目指しています。
10. 私は、倫理性・透明性に基づいて行動する!
なると帰宅が遅くなったり、子供と過ごせる時間が少なくなってしま
るために必要なシステム導入や効率的な研究データの共有等の
かったため、私が後に続く道を作ろうと
業務を他の社員が出社する前に前倒しし
思ったのです。実際、復職してみると、毎
て終わらせているため、日中にトラブルが
発生しても余裕を持って一日の業務を遂行することができます。
うこともありますが、夜や週末は密度濃く過ごすことができるの
業務に関わる事ができる為、大きなやりがいを感じています。これ
で、働く励みになっています。フレックスタイム制度を利用して子供
からも縁の下の力持ちとして、創薬に携わっていきたいと思って
の送り迎えをしていますが、そこでのコミュニケーションの時間も
います。
楽しみのひとつです。同僚の先輩パパさんにも色々とアドバイスを
もらい、これからも基礎研究チームの一員として日々学び続け「究
極のオーダーメイド医療」の実現に貢献したいと思っています。
当社では優秀な人財を確保すると共に、社員の持つ能
に必要なコミュニケーション力(相互理解)、我々がめざ
力を最大限に引き出し束ねることが当社のビジネスを推
す組織の在り方や個々のミッションなどについて、職位
進する上で必要不可欠と考えています。また、個人の
や部門を超えて議論し学んでいます。また、チームで話
キャリアプランという観点で社員のモチベーション向上
し合った『これから挑戦したいこと』が具体的な活動目
にも寄与するため、当社では積極的に教育や研修を実
標となり、経営課題を解決しうる3つの研究テーマが実
施しています。
際に会社のプロジェクトとして採用されています。こうし
当社の研修の特長として座学中心ではなく、研修の成
た自らの提案が経営課題の解決につながっていくこと
果が即実践できるように実際に業務で使用できるような
で、社員のモチベーションや責任感を高め新しい成果を
リアルケースを用いた研修を行っています。
生み出す土壌となっています。
2014年度は外部から講師を招いて「組織開発」をテー
社員個々の成長を促しチャレンジへの熱意を引き出すこ
マにプロジェクトマネジメント研修を実施しました。全5
とは、当社が成長するための源泉の一つとなると考えて
回に渡り実施された研修では、価値を創出するための
おり、今後も積極的に人財育成への投資も行っていきま
プロジェクトマネジメントの考え方、チームビルディング
す。
社員紹介
当社では、年齢や性別を問わず、ビジョンに向かって自ら
門性・能力をもった人財のうち、当社の企業価値の源泉
歩んでいける人財を積極的に登用しています。多様な専
である研究活動をリードする高度専門職を紹介します。
羽仁 俊夫
中崎 有恒
[薬理研究部課長]
[技術開発部シニアリサーチャー]
ADLib®システムで作製した医薬品候補
現在は抗体ライブラリの高性能化・多機
抗体の薬効薬理を評価するグループで、
能化をめざした研究を行っています。
「究
主に動物試験の評価を担当しています。
極のオーダーメイド医療」を実現するた
医薬品候補抗体の効果を確かめる試験
めには、当社プラットフォームを拡充・拡
を行いながら、抗体のあらゆる可能性を
大すること、すなわちさらなるライブラリ
引出すことにより、
“革新的な医薬品創出”
の実現を目指していま
の多様性とともにスクリーニングから生産段階での迅速性を獲得
す。このグループの課長として、多様な専門性や特技を持っている
することが求められています。多様な人材がいる環境の中での
仲間が生き生きと働きやすい環境を作り出し、業務に集中して、最
日々の研究業務に、長年アカデミアで腫瘍の免疫学・細胞生物学
速でゴールにたどり着けるような研究活動の場を整備していくこと
に携わってきた経験が役に立っているという手応えを実感してい
も私の大きなやりがいです。
ます。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
がライフステージの変化を理由に戦力から離脱してしま
5. 私は、常に当事者として物事に取り組む!
研修・教育
24
きるよう、仕事とプライベートのメリハリを尊重するとと
成長する!
動指針は人事評価の要素としても取り込まれており、
「まじめ軸」と「おもろ軸」による8項目の評価と相まっ
多様な人財を強みとしている当社にとって、優秀な社員
25
Risk Management
リスクによる損失の未然防止、回避、極小化
リスク・マネジメント
Risk Management
リスクの想定と把握
把握したリスクに対しては、それぞれのリスクによりもた
るリスクに対してコンプライアンス意識の浸透を進める
らされる損失を未然に防止または回避、極小化するた
ことで損失の未然防止に努めています。さらに、事業全
め、社内にさまざまなリスク管理の仕組みを構築し、適
体にわたるリスク管理として、監査役会による実効性の
切に運用することとしています。
あるモニタリング強化などを図っています。
市場動向の変化や技術革新、契約、提携、法規制による
一方で、大地震等の自然災害や著しい為替変動など、
影響など、企業としての対応力が問われるリスクについ
一企業の努力では避け得ない突発的なリスクに対して
ては、そのリスクの顕在化による損失を未然に防止する
は、当社の経営及びステークホルダーの皆様に与える
仕組みの構築を進めています。具体的には、市場変化や
マイナス影響を極小化することを念頭に、制度整備や
技術革新に関わるリスクに対して常に新しい価値を追
対応マニュアル等の作成に注力しています。
い求める企業風土の醸成を、法令や公正な取引に関す
■ リスク顕在化による損失の未然防止、影響の極小化を図る仕組み
当社では、ビジョンの実現に向けて事業戦略を進めてい
握できていないリスクについても、投資者の判断にとっ
くうえで、当社の経営及びステークホルダーの皆様に重
て重要であると判明したものから適宜、情報開示を行っ
当社は、経営危機に直面したときの対応について「危機
の取締役、監査役、各部門本部長・部長を参加メンバー
大な影響を及ぼす可能性のあるリスクに対応するため、
てまいります。なお、本項の記載内容は当社株式の投資
管理規程」を制定し、経営危機が発生した場合には、直
として、全社的・総括的なリスク管理の報告及び対応策
当社を取り巻くリスクを客観性のある尺度により想定
に関する全てのリスクを網羅するものではありません。
ちに対策本部を設置することとしております。また、当社
検討の場と位置づけております。各部門ディレクターは
し、
「事業環境に由来するリスク」
「事業内容に由来する
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、
では、コンプライアンスリスク、風評リスク、オペレー
担当部門の業務活動におけるリスク管理を行うととも
リスク」
「その他のリスク」という3つのカテゴリーにまと
発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方
ショナルリスク、災害リスク等様々な事業運営上のリス
に、不測の事態が発生した場合には、代表取締役社長
めて把握しています。
針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本
クについて、
「リスク管理規程」を制定し、コーポレート
へ報告するとともに、全社的に検討が必要な事項は、事
当社の事業・経理の状況等に関する事項のうち、投資者
項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行わ
本部長を議長とする事業戦略会議において、随時審議・
業戦略会議に上程して審議を行うこととなっておりま
の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えてい
れる必要があると考えています。
検討を行うこととしております。事業戦略会議は、常勤
す。
るリスクは下記に示す通りです。あわせて、現状では把
知的財産の保護
事業環境に由来するリスク
●
●
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
最も重要な資産を「知的財産」としている当社にとって、
断利用されるリスクを回避し、当社の知的財産として事
当社の研究開発の成果として生み出される知的財産を
業の拡大に最大限活用します。
●
特許権に関するリスク
●
経営管理体制に関するリスク
もって事業展開の自由度や技術的優位性を確保するこ
また、同時に他社(他者)が保有する知的財産について
成長に関するリスク
●
特定の技術への
●
社外取締役太田邦史の
とが、事業リスクの回避という点で何よりも重要なポイ
は、その権利を尊重し、決して侵さないことを実践する
利益相反行為に関するリスク
ントであると認識しています。
ことで、公正取引やコンプライアンスの面から当社のブ
●
特定の取引先への
●
過年度の経営成績に
独自の発明や新たな技術は、適切な時期に迅速・確実に
ランドに傷がつくことを未然に防止します。
依存に関するリスク
技術革新に伴う
●
他社との競合に関するリスク
●
法的規制による
●
抗体医薬品開発における
依存に関するリスク
●
複数の製薬企業との
●
提携先に影響されるリスク
フェーズ・ゼロ試験の実施に
●
関するリスク
収益計上に関するリスク
●
事業計画の前提に関する
影響に関するリスク
●
その他のリスク
抗体医薬品市場の
当社技術の陳腐化リスク
26
事業内容に由来するリスク
海外取引に伴う法規制、
取引慣行、為替に関するリスク
関するリスク
●
関係に伴うリスク
リスク
新株式発行による
国内外にて権利化することで、当社の技術が他社に無
株式価値の希薄化に
関するリスク
●
営業機密の漏洩に
情報セキュリティ
関するリスク
●
自然災害等の発生に
関するリスク
カイオムは、当社の持つ技術情報や業務情報、お取引
針を定めてWebサイトに公開するとともに、情報セキュ
先や従業員の個人情報など、さまざまな機密情報を保
リティに細心の注意を払った経営を実践しています。さ
有しています。これらの情報が外部へ漏洩したり、目的
らに、日々進歩するIT関連技術に対応できるよう、セ
外に使用されたりすることを防ぐため、個人情報保護方
キュリティレベルの維持・向上に取り組んでいます。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
※本項記載の将来に関する事項は、本冊子発行日現在において当社が判断したものです。
27
Corporate Governance
a 取締役会
コーポレート・
ガバナンス
Corporate Governance
取締役5名(うち社外取締役2名)で構成され、当社の
業務執行を決定し、取締役の業務執行を監督する義務
を有しています。社外取締役として、ADLib ®システム
の発明者である太田邦史、大手製薬企業において抗体
医薬品の開発に携わった川口勉の両名を選任。より広
い視野からの意思決定と専門的な知見に基づいた経営
監視を可能とする体制となっています。
b 監査役会
監査役3名(うち社外監査役3名)で構成され、経営と執
コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
行からは独立した立場で、取締役の職務の執行を含む
会社全体の事業活動の監査を行います。
具体的には、株主総会や取締役会への出席、取締役・従
る企業を目指しています。そのため、健全性と透明性が
めに、
「我々は、遺伝情報の多様性に基づく新たな創薬
確保された迅速な意思決定を可能とする体制の整備を
技術を持続的に創造する。」
「我々は、革新的医薬品を
進めるとともに、コンプライアンスの徹底を含む内部統
創出する。」
「我々は、医療に革新を起こす。」との企業
制の強化を図ることを、コーポレート・ガバナンスの基本
ミッションのもと、株主、顧客をはじめ、お取引先、地域
的な考え方としています。
社会、従業員など全てのステークホルダーから信頼され
「価値創造」と
「監査監督」の両面からガバナンスを強化
当社のガバナンス体制の特徴は、取締役の業務執行を
対して、社会的・客観的に合理的な判断が可能な社外取
監督するとともに企業の価値創造を担う取締役会と、監
締役を迎えています。一方、監査役会は、3名すべてが
査を担う監査役会は、それぞれの役割を十分に果たす
社外監査役で構成されており、財務、会計、医薬品会社
ために、各分野に精通したプロフェッショナル人材を配
経営などそれぞれ専門が異なる監査経験の豊富な方に
しているところにあります。
お願いすることで、適法性や妥当性を適切に評価いた
取締役会には、当社の保有する技術や事業の専門性に
だいています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
のほか、常勤の社外監査役1名は、重要な会議への出席
や研究所への往査等実効性のあるモニタリングを行い
ます。
c 経営会議
d 役員報酬の決定方法等
各部門担当取締役及び執行役員、研究所長で構成。適
取締役及び監査役の報酬等の決定については、株主総
宜開催し、経営方針と事業内容の検討、経営状況の掌
会で総額の決議を得ています。各役員の報酬について
握と進捗管理、重要事項の精査・検討を行っています。
は、取締役については取締役会で決定し、監査役につ
いては監査役会で決定しています。
【経営体制図】
株主総会
選任・解任
会計監査人
■ 経営体制
28
業員・会計監査人からの報告収受等法律上の権利行使
取締役は、毎月1回の定例の取締役会を、必要に応じて
るほか、取締役会に出席し迅速かつ公正な監査体制を
臨時取締役会を開催し、迅速かつ効率的な経営監視体
とっています。また、執行役員制度を導入し業務執行の
制をとっています。監査役は定期的に監査役会を開催す
責任が明確となる体制をとっています。
選任・解任
連携
選任・解任
取締役会
監査役会
(5名のうち社外取締役2名)
(3名のうち社外監査役3名)
連
携
連携
監査
選定・解職
報告
監査
代表取締役社長
内部監査室
指示
内部監査
報告
各部門
指示・助言
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
カイオムは、新たな医療を待ち望む世界中の人々のた
29
Corporate Governance
社外役員からのメッセージ
取締役
代表取締役社長
執行役員CEO
農学修士・獣医師
藤原 正明
中外製薬㈱、プライスウォーターハウスクー
パースコンサルタント㈱(現・日本アイ・ビー・エ
ム㈱ )、クインタイルズ・トランスナショナル・
ジャパン㈱データマネジメント部ディレクターを
経て、2005年2月当社設立
取締役
執行役員CFO 清田 圭一
(コーポレート担当取締役)経営学修士
サンド薬品㈱(現・ノバルティスファーマ㈱)、
㈱ジェネティック農産 代表取締役社長、㈱ニ
ムラ・ジェネティックソリューションズ 代表取
締役社長を経て、現任
取締役
小林 茂
執行役員COO-CTO
(研究開発・事業担当取締役)工学修士
協 和 発 酵 工 業 ㈱( 現・協 和 発 酵 キリン ㈱ )、
K y o w a H a k k o U K L t d . 社 長 、K y o w a
Pharmaceutical, Inc.(現・Kyowa Hakko
Kirin Pharma, Inc.)社長を経て、現任
太田 邦史
川口 勉
逵 保宏
朝日 義明
社外取締役 太田 邦史
常勤社外監査役 逵 保宏
岡村 憲一郎
ADLib®システム発明に携わった者として、研究・開発・運営方針
株主・担当官庁・従業員など複数のステークホルダーの期待を認
に対する助言や技術提案、アイデアの提供等を行うとともに、ア
識し、コンプライアンス向上への貢献を基本として、会社の長期
カデミアなどにおける最新技術動向をできるだけわかりやすく説
的健全成長を主眼に、
“発信する”監査を目指します。
「妥当性監
明し、常にカイオムの企業価値向上を意識して助言を行うように
査」が定着し、取締役の業務執行の効率性向上に関連して経営
しています。藤原社長、清田取締役、小林取締役、川口取締役、
のリスクテイクを支援する監査姿勢も求められます。前職での30
逵監査役との積極的な意見交換を行っているほか、他の社外役
余年の医薬品開発経験と4年間の監査役経験を活かし、経営業
員とも情報の共有を通じて取締役会への助言などに活かすよう
績の厳正な評価や実効的な経営体制構築などについても、経営
にしています。
陣と率直な対話を維持して投資者と経営を繋ぐパイプ役を志向し
ます。
社外取締役 太田 邦史
社外取締役 川口 勉
理学博士
薬学博士
独立行政法人理化学研究所・太田遺伝システム
制御研究室・准主任研究員を経て、現在、東京
大学大学院総合文化研究科教授。ADLib®シス
テム発明者
中外製薬㈱創薬研究推進部長・創薬研究本部
長・医 薬 事 業 本 部 副 事 業 本 部 長( 取 締 役 )、
Harvard Medical School客員講師、ワイズセ
ラピューティクス㈱監査役、サミット・グライコリ
サーチ㈱取締役、当社監査役を経て、現任
30
社外常勤監査役 逵 保宏
過去40数年間医薬品についての研究と開発事業および企業経
これまでに培った資本市場及び企業法務に関する知識や経験、
営に取り組んできた経験と、2008年に参画以来当社の内外事
多くの会社のコンサルティングで習得したノウハウ等を活かし、
情に精通してきたことが、社外取締役として私に期待される所以
社外監査役かつ独立役員という立場から、客観的に会社を見る
であろうと認識しています。バイオベンチャーは一つの選択方針
ように努めるとともに、当社の企業価値向上のために役立てた
がその後を左右しかねない世界。当社が本邦バイオベンチャー
いと考えています。社外監査役としての期待に応えるとともに、
の成功例となることを何よりも願っている一人として、他の役員
会社の成長と発展を積極的に支援していく方針です。
とも緊密に連携し、現状把握と意見提供に努めています。
社外監査役 朝日 義明
工学博士
日本学術振興会奨励研究員、東北大学電気通
信研究所文部教官助手、中外製薬㈱執行役員
製品戦略部長、㈱中外臨床研究センター代表取
締役社長、中外製薬㈱常勤監査役を経て、現任
社外監査役 朝日 義明
社外監査役 岡村
憲一郎
公認会計士
東 京 証 券 取 引所 、日本 合 同ファイナンス ㈱
(現・㈱ジャフコ)を経て、ジーピーシー㈱代表
取締役社長
かえで会計アドバイザリー㈱ 代表取締役
㈱東京国際会計 代表取締役 税理士法人 かえで税理士法人 代表社員
社外監査役の当社との関係性
社外監査役 岡村 憲一郎
社外監査役の朝日義明氏、岡村憲一郎氏は、それぞれ
に事業や仕事を持ち、また他の会社の監査役を兼任し
ておりますが、それらの会社と当社との間に利害関係は
なく、高い独立性を保持していると考えています。川口、
朝日、岡村の3名は東京証券取引所が定めた独立役員
として届け出ております。
最近は日本の会計基準も国際化が進んでおり、IFRS(国際財務
報告基準)を任意適用する企業も増えてきました。このような状況
も踏まえながら、会社の経営成績や財政状態を実態に即して適切
に開示していく財務報告のあり方について監督・助言していきた
いと考えています。透明性ある財務報告の仕組みの構築が、経営
陣による適切な経営アクションにつながるものと信じています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
監査役
社外取締役 川口 勉
31
Corporate Governance
内部統制
コンプライアンス体制
取締役会において、内部統制の基本的な考え方の策定
決議事項の筆頭で定めた「取締役・使用人の職務執行
及び内部統制を強化するための体制づくりを行ってい
が法令及び定款に適合することを確保するための体
ます。取締役会は、内部統制の機能維持に対する責任
制」では、
「3. 全使用人に法令・定款の遵守を徹底する
を負うとともに、その有効性を評価・検証する責任を負っ
ため、コーポレート担当取締役を責任役員として、その
ています。同時に監査役会において、内部統制が有効
責任のもと、コンプライアンス規程を作成するとともに、
に機能しているかの監視を行っています。
全使用人が法令・定款等に違反する行為を発見した場
合の報告体制としての内部通報制度を構築する。」とい
6年間の業績サマリー
(単位:千円)
2014年
12月期
2010年
3月期
2011年
3月期
2012年
3月期
2013年
3月期
2014年
3月期
¥380,815
¥463,184
¥633,197
¥324,127
¥434,962
¥277,759
販売管理費
420,227
495,570
427,035
617,874
969,814
1,054,317
うち研究開発費
209,752
245,407
177,981
309,437
442,591
574,529
営業損失
(201,504)
(231,213)
(7,266)
(413,160)
(708,815) (865,583)
経常損失
(202,660)
(237,470)
(42,904)
(424,813)
(706,340) (883,352)
当期純損失
(164,400)
(180,233)
(44,417)
(426,890)
(757,554) (863,269)
資本金
554,500
779,500
1,027,996
1,213,090
3,348,737
4,434,685
純資産
323,211
592,978
1,045,552
1,037,894
4,559,143
5,839,466
総資産
865,735
876,017
1,265,866
1,296,734
5,012,804
6,257,267
売上高
(9ヵ月間)
う項目を掲げており、コンプライアンスを維持するため
の体制づくりに取り組む姿勢を示しています。
内部統制報告制度への対応
内部通報制度の構築と運用
2008年度から適用された金融商品取引法に基づく内
コンプライアンス違反に関する情報を収集し、不正・違
部統制報告制度への対応として、当社が業務の適正を
反行為の未然防止や早期対処を図ることを目的に、内
確保するための体制づくりについて、2013年度の取締
部通報制度の構築を進めています。経営者に直接通報
役会において決議いたしました。
ができるシステムのほか、社外に委託した通報体制も検
具体的には、コンプライアンス、リスクマネジメント、業
討しています。通報制度の運用開始後は、プライバシー
務の有効性と効率、財務報告の信頼性など11の分野に
を厳守するとともに、通報者が不利益な扱いを受けるこ
ついて議論を行い、それぞれの決定事項を文書にまと
とのないよう、適正に対応していきます。
めています。
この決議の内容は、当社Webサイトよりダウンロードで
きる「コーポレート・ガバナンス報告書」や2014年度の
投資家の皆さまにも情報開示を行っています。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
▼決議した事項の概要は当社ホームページでご確認いただけます。
http://www.chiome.co.jp/images/ir/governance/cg20000100.pdf
32
営業キャッシュ・フロー
4,006
投資キャッシュ・フロー
(264,687)
財務キャッシュ・フロー
269,617
(195,289)
(48,867)
(373,258)
(552,425) (789,326)
(85,664)
(3,813)
(114,786)
(189,296) (618,833)
383,420
419,269
1株当たり純損失(円)
(15.71)
(15.85)
(3.03)
1株当たり純資産(円)
(70.49)
(71.32)
63.26
463,473
4,102,996
2,130,818
(39.62)
(42.36)
57.09
223.17
264.79
(25.48)
売上高研究開発費
比率(%)
55.1
53.0
28.1
95.5
101.8
206.8
自己資本比率(%)
37.3
67.7
82.6
76.3
89.8
92.9
注1)2014年3月期より連結財務諸表を作成しております。
注2)2014年12月期は、決算期変更にともなう経過期間として、2014年4月1日から2014年12月31日の9ヵ月間となっております。
注3)当社は、2013年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行い、また、2014年4月1日付で1株につき2株の割合で株式分割を行い
ましたが、第6期(2010年3月期)の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純損失金額、1株当たり純資産額を算定しております。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
「第11回定時株主総会招集ご通知」に掲載するなど、
33
Corporate Governance
Corporate Information
組織図/従業員数
会社情報/株式情報
■ 当社組織図
代表取締役社長
取締役
取締役
(社外)取締役
(社外)取締役
(社外)監査役
(社外)監査役
(社外)監査役
(2015年5月1日現在)
藤原 正明
清田 圭一(コーポレート担当)
小林 茂(研究開発・事業担当)
太田 邦史
川口 勉
逵 保宏
朝日 義明
岡村 憲一郎
執行役員CEO
執行役員CFO
執行役員COO・CTO
執行役員CBO
藤原 正明
清田 圭一
小林 茂
関 誠
■ 会社情報 (2014年12月31日現在)
……………… 株式会社カイオム・バイオサイエンス
会社名
…………… Chiome Bioscience Inc.
英語表記
………………… 2005年2月8日
設立
従業員数……………… 46名
……………… 4,434,685千円
資本金
本社・研究所 ………… 〒151-0071 東京都渋谷区本町三丁目12番1号 住友不動産西新宿ビル6号館
TEL : 03-6383-3561(代表)
株主総会
…………… 独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の研究開発支援及び研
事業内容
監査役会
究開発等
取締役会
沿革
………………… 2005年2月に設立した当社は、独立行政法人理化学研究所と創薬基盤技術である
ADLib®システムの実用化を目的として共同研究契約を締結し、研究活動開始以降、中外製
社長 執行役員CEO
薬株式会社との共同研究契約締結を端緒として、ADLib®システムを核とした抗体医薬品
藤原 正明
の研究開発支援等の事業を展開しています。
内部監査室
研究開発本部
執行役員COO・CTO 研究開発本部長
小林 茂
事業本部
執行役員CBO 事業本部長
■ 株式情報
コーポレート本部
執行役員CFO コーポレート本部長
関 誠
清田 圭一
■ お問い合わせ先
……… 東京証券取引所マザーズ市場
株式上場市場
2011年12月20日に上場
研開
企画室
基盤研究
推進室
証券コード …………… 4583
決算期
研究所長
村上 孝司
……………… 毎年12月31日
……… 毎年3月
定時株主総会
株主名簿管理人
技術
開発部
抗体
創薬部
薬理
研究部
■ 従業員の状況(連結)
セグメントの名称
抗体
事業部
事業
開発部
財務
経理部
総務
法務部
経営
企画部
人事部
…… 三井住友信託銀行株式会社
電話、FAX、ホームページの
メールフォームにて
お問い合わせを受け付けています。
TEL : 03-6383-3746
FAX : 03-5302-1311
http://www.chiome.co.jp/contact/
東京都千代田区丸の内一丁目
4番1号
■ 当社ホームページのご案内
(2014年12月31日現在)
従業員数
34
リード抗体ライセンスアウト事業
30[26]
基盤技術ライセンス事業
全社(共通)
計
16[8]
46[34]
(注)
1. 従業員数は就業人員であります。
2. 従業員数欄の[外書]は、臨時従業員(人材会社からの派遣社員を含
んでおります)の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります。
3. 当社は、各事業に関する業務がそれぞれ密接に関連しているため、
同一の従業員が複数の事業に従事しております。
4. 全社(共通)は、事業開発や総務及び経理等の管理部門の従業員で
あります。
トップページ
http://www.chiome.co.jp/
投資家情報トップページ
http://www.chiome.co.jp/ir/
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
創薬アライアンス事業
35
Statement of Integrated Reporting Framework Standards
Our Vision
「統合報告書フレームワーク」準拠の表明
For the Benefit of
All Humankind
株式会社カイオム・バイオサイエンス 代表取締役社長として、本レポートが、国際統合報告評議会より2013
年12月に公表された
「統合報告書フレームワーク」
を現段階で可能な限り踏まえたうえで、以下の視点に基づき
作成されていることをここに表明いたします。
本レポートは、株式会社カイオム・バイオサイエンス、及びグループ各社における
事業活動を組織横断的な視座で捉え、長期的な価値創造力を示す重要な事項を、
100%の治療効果を追求するヘルスケア・イノベーター
すべて誠実に掲載しています。
●
●
本レポートの作成においては、代表取締役社長が掲載すべき重要な事項を決定し、
完全ヒトADLib ®システムの開発に成功
担当業務執行取締役が作成しています。
2014
年
わずか数週間でヒトに投与可能な抗体を
創出可能な技術を創製しました。
2015年5月1日
株式会社カイオム・バイオサイエンス
代表取締役社長
藤原 正明
2018
年
2023
パンデミック感染症への対応
完全ヒトADLib ®システムにより、
ワクチンを代替します。
「究極のオーダーメイド医療」を実現
年
個々の患者さんに最適な抗体を迅速に提供し、
革新的治療を実現します。
36
新たな医療を待ち望む世界中の人々のために
●
我々は、遺伝情報の多様性に基づく新たな創薬技術を持続的に創造する。
●
我々は、革新的医薬品を創出する。
●
我々は、医療に革新を起こす。
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Chiome Bioscience Inc. ¦ Integrated Report 2014 ¦
Our Mission
37
株式会社カイオム・バイオサイエンス
〒151-0071 東京都渋谷区本町三丁目 12 番1号
住友不動産西新宿ビル6号館 TEL : 03-6383-3561( 代表)
http://www.chiome.co.jp/
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