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579 - 日本ロケット協会

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579 - 日本ロケット協会
A PUBLICATION OF JAPANESE ROCKET SOCIETY
2013-11
579
MAINICHI ACADEMIC FORUM Inc., 1−1−1 Hitotsubashi, Chiyoda-ku, Tokyo 100−0003, Japan ©2013, Japanese Rocket Society
マイケル・ホプキンス宇宙飛行士の助けを借りてトノメータ
若田宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船打上げ
ー(眼圧測定器)で自身の眼を検査しました。
日本時間11月19日午後 9 時17分、「きぼう」日本実験棟か
ら、超小型衛星 3 基が放出されました。放出されたのは、
11月 7 日13時14分(日本時間)、国際宇宙ステーション第
38/39次長期滞在クルー(ミハイル・チューリン、リチャー
JAXAが公募し、東京大学/ベトナム国家衛星センター/
ド・マストラキオ、若田光一宇宙飛行士)が搭乗するソユー
(株)IHIエアロスペースが開発した地球撮影を行うピコド
ズ宇宙船(37S/TMA-11M)が、カザフスタン共和国のバイ
ラゴン、NASAが公募して米国企業が開発したArdusat-1と
コヌール宇宙基地からロシアのソユーズロケットにより打ち
Ardusat-Xの 3 基です。「きぼう」船内実験室のエアロック
上げられました。同日19時27分(日本時間)に、国際宇宙ス
から船外に搬出させた小型衛星放出機構を「きぼう」ロボッ
テーション(ISS)の「ラスヴェット」(ロシアの研究モジュ
トアームで所定の放出方向に移動し、衛星搭載ケースのロッ
ール 1 )へのドッキングに成功しました。同日21時44分(日
クを解除して超小型衛星を放出しました。
日本時間11月20日午後 4 時58分、「きぼう」日本実験棟か
本時間)にハッチが開けられ、クルーが ISSに入室しました。
若田宇宙飛行士は地上の家族やJAXA理事長奥村直樹氏と交
ら、4 基目の超小型衛星が放出されました。放出された衛星
信しました。
は、NASAエイムズ研究センターが開発したTechEdSat-3で
す。通常の超小型衛星を3基つなげたほどの大きさがあり、
日本時間11月 9 日午後11時34分に船外活動が開始され、5
時間50分にわたり実施されました。船外活動を担当したオレ
Exo-brakeと呼ばれるブレーキ機構の軌道離脱技術実証を行
ッグ・コトフ、セルゲイ・リザンスキー両宇宙飛行士は、米
います。
11月21日、若田宇宙飛行士は「デスティニー」
(米国実験棟)
国時間 8 月22日に第36次長期滞在クルーにより実施された船
外活動の作業の続きとして、カメラのプラットフォームと船
で進行中の流体物理実験のひとつである毛細管実験を行いま
外活動作業用プラットフォームの整備作業を行いました。今
した。毛細管実験は、将来の宇宙船の水と燃料の供給系の開
回の船外活動では、若田宇宙飛行士らが搭乗したソユーズ
発のために液体が微小重力環境でどのような挙動を示すか観
TMA-11M宇宙船で運んだソチオリンピックのトーチをISS
察する実験です。
11月22日、若田宇宙飛行士はNASAのSprint実験のため、
の船外に持ち出すパフォーマンスも行われました。
11月11日には、第36 /第37次長期滞在クルーとしてISSに
右足に超音波測定装置を装着してエクササイズを行い、自動
滞在していたフョードル・ユールチキン、カレン・ナイバーグ、
ガイダンスに従って超音波スキャンによる筋量の計測を行い
ルカ・パルミターノ宇宙飛行士の 3 名が、ソユーズTMA-
ました。Sprint実験は、長期滞在クルーを被験者として、高
09M宇宙船に搭乗し、地上に帰還しました。ソユーズTMA-
負荷・短時間の運動で、筋萎縮や骨量の減少を最小限に抑え
09M宇宙船は、日本時間11月11日午前 8 時26分に分離し、コ
るプログラムを開発するための実験で、この検査は長期滞在
トフ宇宙飛行士をコマンダーとする第38次長期滞在が開始さ
中の筋量の変化を記録するために行われるものです。
11月25日、若田宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)
れました。
のキューポラ(観測窓)に超高感度 4 Kカメラの設置作業を
11月12日、若田宇宙飛行士は、リチャード・マストラキオ、
マイケル・ホプキンス両宇宙飛行士とともに、水再生システ
行いました。キューポラは、地球側に面する 7 枚の窓と国際
ム(Water Recovery System : WRS)のタンクの交換作業か
宇宙ステーション(ISS)のロボットアーム(Space Station
らこの日の作業を始めました。WRSは、ISS船内の空気から
Remote Manipulator System: SSRMS)の操作盤などを備え
除湿によって集めた凝縮水と尿を飲料水として再生するシス
CONTENTS
○ New Crew Launches to ISS… ……………………… 1
○ Running Feature Ariticle… ………………………… 2
○ Epsilon Rocket Feature Article(3)
………………… 3
○ Domestic News………………………………………… 3
○ Overseas News………………………………………… 4
○ President's Column …………………………………… 5
○ Board Meeting Minutes……………………………… 6
テムです。
11月13日、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する若田宇
宙飛行士は、NASAが実施するOcular Healthと呼ばれる眼
の機能障害を調べる実験を行いました。これまでISSに長期
滞在した宇宙飛行士の間で、視覚に変化が生じた事例が見ら
れたことから、Ocular Healthは、その根本的な原因を調べ
て対策を開発するために行われています。若田宇宙飛行士は、
1
た小型ユニットです。
心臓自律神経活動に及ぼす影響を評価します。
11月27日、若田宇宙飛行士は、JAXAの「長期宇宙飛行時
若田宇宙飛行士の帰還予定は、2014年 5 月14日となってお
における48時間心臓自律神経活動に関する研究」(Biological
り、ISSに約 6 ヶ月滞在する予定です。ISS滞在の後半となる
Rhythms 48)実験のため、携帯型のホルター心電計を身に
第39次長期滞在においては、日本人初となるコマンダー(船
つけました。この実験は、長期宇宙滞在が睡眠覚醒リズムと
長)を務めることになっています。
という話になりました。Hは宇宙研の衛星には大きすぎるし、
連載特集記事
かといって複数打ち上げは難しい。惑星間飛行は打ち上げの
ロケット口伝鈔(くでんしょう)4
ウィンドウがあるからです。
では単独のロケットが必要だね、という話に進み、ロケッ
トは液体と固体のどちらがいいか。小さければ固体のほうが
○「非常勤」、「非公開」に危惧-宇宙政策委員会
安そうだねと。NASDAも固体の経験を積んでいるが、宇宙
有田;先生は2003年4月から宇宙開発委員会の委員、委員長
研には実績も長年の蓄積もあるから宇宙?がやるのが妥当だ
を合計 6 年 9 ヶ月務められました。そのご経験から、現在の
と。それでM-Vが実現できたわけです。
宇宙政策委員会についてどのようにご覧になっていますか?
林:背景と実績、さらに手順をふんだ議論で実現できたわけ
松尾:此のことは、「宙の会」のレターにも書きましたので
ですね?
くどくは言いませんが、非常勤で非公開というところは気に
松尾:そう。宇宙開発委員会では周りはほとんど科技庁で、
なっています。私自身隅から隅まで知っているというタイプ
文部省所属の僕が発言すると、緊張が走るように見えた時代
ではありませんでしたが、広範囲にわたる宇宙開発をカバー
でした。科技庁には宇宙を担当する課が 3 つあったが、文部
するにはそれなりの時間と努力が必要ではないでしょうか。
省は一つの課が宇宙研など90以上の研究所を抱えていまし
事務局がいかに正しく導いたとしてもです。常勤 3 人の宇宙
た。多勢に無勢で喧嘩にもならない。でも科技庁の担当課長
開発委員会時代、結構忙しかったですよ。
が理性的、別な言い方では理屈で勝負できる人で、冷静な議
論の結果、そういう結論になったのです。
非公開については、その必要がある場合もあることは認め
ますし、オープンにすると揚げ足を取られてものが言いにく
○リーダーとして。「耳を傾ける」「褒める」、「不満でなく具
くなる側面があるのも確かです。だからと言って、非公開に
体例を」
すれば本音だけを言うわけではない、皆さんそれぞれの背景
を背負っているのですから。原則公開のほうが平均してメリ
有田:ところで先生は宇宙研所長として、個性豊かな方たち
ットも大きいと思います。例えば、公開だったのでGXでは
をまとめてこられました。3 機関統合後、現場のエンジニア
透明性が高く論理的な議論ができました。
には大変さもあるようですが、アドバイスをお願いします。
松尾:僕はロケット屋ではありません。優秀なスタッフが揃
あと、研究開発にとっては内発性が重要です。これをきち
んと担保するような上部構造であって欲しいと思います。
っていて、任せていればよかった。敢えて言うなら聞く耳を
林:では、誰がどうするべきでしょう
持ち、聞いたことに対する判断力はあったと思います。
松尾:「これがやりたい」という思いは現場にはあるはず。
有田:強面の高野先生も、松尾先生に「高野君のロケット、
現場からあがってきたものを正しく斟酌して取り上げていく
いいところを飛んでいるぞ」と褒められて嬉しかったと書い
ことが事務局にとって重要だと思います。
ておられました。
松尾:時々いいことを言うらしい(笑)。工学実験衛星ひて
○省庁の垣根を超えて
んの1990年の打ち上げ時、油圧ポンプが起動せず、発射25秒
有田:その昔、省庁間の枠を超えた事例としては、固体ロケ
前に非常停止したことがあります。止めたのはTVC班の安
ットの直径の制約を外した話がありますね。
田君で、処置が正しかったのかものすごく気にしていました。
松尾:宇宙研のロケットは1966年に、直径 1. 4メートルを超
間違って止めると一日 1 千万円ぐらいの経費がかかるし、偉
えないという制限がかけられました。当時、文部省と犬猿の
い人たちが大勢見ている前で恥をかくことになる。でも僕が
仲だった科技庁が宇宙開発委員会の事務局を担当していて、そ
「お前、よく止めたな」と言ったらしくて、本人は気が楽に
の制限をなかなか外さなかった。それが1989年、宇宙開発政
なったと。
策大綱で解除になりました。当時はずいぶんきちんとした手
林:失敗したときは、しゅんとしている人たちに何か声をか
順をふんで、科技庁も理性的な対応をしてくれたと思います。
けるんですか?
有田:どのように進められたのでしょうか?
松尾:しゅんとしている暇はないよね(笑)。失敗したとき
松尾:背景としては当時、アメリカがスペースシャトル・チャ
は何も言わない。事実は事実だから。解析結果をもって宇宙
レンジャーの事故後、科学衛星が死屍累々だった時に、日本
開発委員会で話をするのが自分の役目。被告の側に座ってね。
はM-3SⅡ型を毎年のように打ち大きな成果を上げていた。月
林:3 機関統合も松尾先生が宇宙研所長時代でした。
に行ったしX線観測もした、ハレー彗星探査では惑星間空間
松尾:日本中が「統合」と言っていた時期でね。正直いう
を自在に飛び回った。その成果を認めてもらった上で、もう
と時間がほしかった。月探査機「かぐや」がまともに動き
少し大きなロケットでさらに成果をあげたいと主張しました。
出していた頃で、ああいうプロジェクトでお互いの気心が
すると、ロケットを大きくするのはいいが、旧NASDAで
知れていればもっとスムーズにできたと思います。育ちが違
大型のHロケットが見えているのになぜHで上げないのだ、
うからね。宇宙研は規則は無ければないほうがいい、一方、
2
旧NASDAは規則はきちんとするほうがいいと。おそらく旧
松尾:欧州宇宙機関の長官が「一度、ロケットの打上げを止
NASDA系の人はそれなりにサボり方がわかっていて、逆に
めたらどんなにみんなが困るかわかるだろう」と言っていま
宇宙研はナイーブすぎて欲求不満がたまるみたい。摩擦は末
したね。測位、地球観測、サイエンスの成果が得られなくな
端で起こっているはずです。でもせっかく一緒になったなら、
る。でも宇宙開発の最大の効果は、産業振興や国民生活の利
ちゃんとやったほうがいい。不満を言うだけでなく、具体的
便性の向上もさることながら、ナショナルプレステージ、
「国
な例を集めろと伝えてあります。
としての誇り」だと思います。技術を持ち、科学の成果をあ
有田:最後に、宇宙輸送システムは社会に何をもたらすか、
げ、人類の知識の量を増やすために日本が貢献している、と
お考えをお聞かせください
いう誇りではないでしょうか。(完)
一方抵抗があったのは、ことの軽重に関わらず案件が持ち
イプシロンロケット特別寄稿( 3 )
込まれる「不具合対策会議」、宇宙研の人にはなじみのない、
イプシロン試験機打上げを経験して
ルール、手順書の「マニュアルの類」でしょうか。不具合対
策会議については、役割分担と進め方が定型化されていて、
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
影響の程度や範囲が比較的大きい不具合事象に対してはとて
イプシロンロケットプロジェクトチーム 徳留 真一郎
も効率の良い対処手段であると感じました。特につくばや種
子島勤務の20〜30代の若いメンバーがとてもしっかり対応し
私がつくばに着任した2010年の春、イプシロンロケット試
験機の開発はまだ机上のプランでしかなく、開発のメンバー
ていて、ちょっとした感動をもらいましたね。しかしながら、
も体制も進め方も新しく、射場は未定、スケジュールも厳し
よくわかった人同士で迅速に対処して結果だけ報告してくれ
い中で多くの困難が予想されていました。それから紆余曲折
ればよいような問題(と私は感じた)まで、その場に持ち込
を経て2011年 1 月に射場が内之浦に決定し、その後の関係者
んでくることには閉口しました。なぜこんな軽微な問題まで
の大変な努力によって何とか計画から 5 日遅れで最初の打上
持ってくるのかと質問したところ、「それがルールだから」
げ日 8 月27日を迎えることができたのです。青空を背景にラ
という回答が異口同音に帰ってきます。
「何かあった場合に」そこに至った経緯を辿れるようにする、
ンチャ上に屹立するイプシロンを見たときは感慨一入でした。
今回のキャンペーンは、熟練したなじみのメンバーで実験
気になったことはとりあえず対策会議にかける、また責任の
班を編成し、使い慣れた地上設備を運用していたMロケット
所在を明確にするために各責任者のサインが入った記録を残
の時代のそれとは全く異なるものでした。固体ロケット開発
すことがマニュアル化されています。スピードよりも、もし
史上初めて、内之浦作業が初めての旧NASDAメンバーと旧
もの場合を想定した細やかな証拠記録を優先するのがM-V
NASDA方式の進め方が初めての宇宙研メンバーが一緒にな
までの実験機と実用機であるイプシロンの違いなのでしょうか。
って新しい体制を敷き、新しい機体と地上設備を新しいレギ
必ずしも熟練者だけで作業しているわけではない作業の現
ュレーションの下で運用したのです。何もかもが新しかった
場では、迅速に作業を進めるためにある程度のマニュアル化
ため、打上管制隊各系の横の連携作りや作業インフラの整備
が必要と思います。しかし細かすぎるマニュアルは思考を硬
に苦労する場面もありましたが、さすがお互いにプロ、何と
直化させるものです。イプシロンは進化し発展し続ける実用
かしちゃいまいした。
ロケットとして位置づけられていますので、今後、それを運
用するチームは自在に応用できるくらいに技術の中身を理解
私自身まず用語やルールを覚えるところから始めなけれ
してマニュアルを最小化してゆく必要があるでしょう。
ばなりませんでしたが、6 月初めの射場作業開始から打上げ
私は、「ほかの誰よりもすごいことを素早くやってみせる」
までの約 3 ヶ月という期間は、新しいメンバーと体制で新し
い課題に取り組むのにちょうど良い長さであったと感じまし
ところにJAXAの価値があると考えています。そのために
た。2005年の夏に、何もないところから 3 ヶ月で実現できた
は、現場で判断を下す技術者の技量を、達人のレベルに上げ
ペンシルロケット水平発射再現実験の成功が想い起されます。
てゆかなければなりません。マニュアルを最小化してスピー
新米「ロケット班長」として隊に加わった私にとって、推
ドを上げるために、「その場に踏みとどまり技術を進化/深
進、アビオニクス、構造、地上支援系、射場設備、飛行安全
化(Evolution & Excellence)させること」が大事なのだと
など、守備範囲と調整の範囲が広かったことは大変ためにな
改めて感じました。
りました。専門外の分野について最初はちんぷんかんぷんで
「すごいこと」は、高尚な目標を共有した熟達者のチーム
したが、打合せなどを重ねていくと何となく分かるようにな
による自律的な研究活動(Exploration)によって成し遂げ
るものですね。初号機特有の不具合が頻発していつも時間に
られると理解しています。イプシロンロケットの開発と運用
余裕が無かったはずなのに、初歩的な内容の質問でも各分野
が、そんなスカンクワークス的活動形態によって行われるよ
の専門家から懇切丁寧に答えてもらえたことが、キャンペー
うに教育(Education)し変革してゆくことを、私の次の中
ン初心者の私にはとても有難かった。
期目標にしたいと思います。
台などの特別公開があり、午前と午後の 2 回、イプシロン打
国内ニュース
ち上げ責任者だった森田泰弘プロジェクトマネージャーの講
演会も開催されます。コントロールセンターの公開、宇宙服
10日(日)、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所で、今
レプリカの試着体験、撮影なども。観測所は「日本の宇宙開
年 9 月に打ち上げられた新型ロケット「イプシロン」の発射
発の父」と呼ばれる糸川英夫博士が1962年に開設、太平洋を
3
望む丘陵地に設置され、美しい景観も自慢の発射場として知
シロンは12年ぶりに開発された国産ロケット。組み立て工程
られています。(11/9 西日本新聞)
の簡素化や人工知能による自動点検などでコストや作業の大
幅な削減を実現。シンプルに打ち上げられるシステムを構築
堀江貴文元ライブドア社長が創業した事業会社SNS社(東
した点などが評価されました。国際宇宙ステーションの日本
京)と、NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC,
実験棟「きぼう」も10年度の金賞に選ばれています。(11/18
札幌)などは11日午前、十勝管内大樹町で、菓子の広告を目
朝日新聞)
的とした道産液体燃料ロケットとハイブリッドロケットの発
射実験を行い、成功しました。HASTICによると、広告など
川崎重工業は18日、岐阜工場(岐阜県各務原市)で設計・
の商業目的の民間開発ロケット打ち上げは国内初。実験は菓
部品製造し、播磨工場(兵庫県播磨町)で組み立てた大型ロ
子メーカー江崎グリコの委託で行われ、同社は商品にちなん
ケット「H 2 A」23号機の衛星格納部(フェアリング)を種
で、毎年11月11日を「ポッキー&プリッツの日」と設定。記
子島宇宙センターに向けて出荷したと発表、打ち上げを執行
念イベントとしてポッキーとプリッツの形をしたロケット
する三菱重工業に納入します。JAXAなどが開発した降水量
で、高度1111mを目指しました。午前11時11分頃にポッキー、
などを観測する衛星を打ち上げるロケットに搭載、2013年度
午後 0 時11分頃にプリッツを発射、いずれも十数秒で機体は
内の打ち上げを予定。長さ10.2m、直径3.7mまでの大きさ
高度約 1 kmに到達し、その後にパラシュートが正常作動し
の衛星を搭載できるとのこと。川重はこれまでH2Aロケッ
地上に落下しました。SNS社は将来的に宇宙事業参入を目指
ト向けに22機分のフェアリングを納入しました。 (11/19 しており、2011年から大樹町でロケット発射実験を続けてい
日経産業新聞)
ます。(11/12 北海道新聞)
JAXAは26日、新型固体燃料ロケット「イプシロン」1 号
IHIは2015年度をめどに人工衛星事業に参入、農作物の生
機で 9 月に打ち上げた惑星観測衛星「ひさき」が正常に稼働
育管理や資源探査に使う高性能の超小型衛星を開発し、国産
することを確認し、本格運用を始めると発表しました。運用
小型ロケット「イプシロン」で打ち上げます。打ち上げ費用
は2014年までの予定。 (11/27 毎日新聞)
込の衛星の価格を従来の 5 分の 1 程度の10億円以下に抑え、
JAXAは、ロケット発射時の噴射による音響を大幅に抑え、
国が中心だった衛星利用を国内外の企業に広げます。JAXA
が開発し、IHIが製造するイプシロンは 1. 2tの打ち上げ能力
搭載した衛星に伝わる振動を減らす技術の開発に成功しまし
があり、同社は衛星を10基ほど受注して 1 基のイプシロンで
た。衛星の耐性条件緩和にもつながり、製造価格の低下も期
まとめて打ち上げることで、顧客 1 社あたりの打ち上げ費用
待されます。9 月14日に打ち上げられた新型固体ロケット・
も引き下げるとのこと。(11/14 日本経済新聞)
イプシロン初号機では、前身のM 5 ロケットにはなかった特
殊な形状のコンクリート製トンネル「煙道」を射場に設置、
JAXAの奥村直樹理事長は14日の記者会見で、当面は宇宙
噴射による音響を煙道に逃し、衛星への影響を少なくしたほ
飛行士の新規の採用を見送る方針を明らかにしました。国際
か、ロケット上昇後の音響も、角度をつけた煙道の屋根にあ
宇宙ステーション(ISS)の運用が決まっているのは2020年ま
てることでさらに減少させました。M 5 で147デシベルだっ
で。宇宙滞在が未経験の飛行士が 3 人おり、この 3 人を宇宙
た音響は、イプシロンの実測データでは132デシベルになりま
に送ることを優先する考えを示しました。
(11/15 読売新聞)
した。これにより、音による振動は10分の 1 以下に抑えられ
たとのこと。新技術は2014年度にも開発が始まる大型基幹ロ
ケットH3(仮称)にも応用される予定。(11/26 南日本新聞)
室蘭工大の学生有志でつくる「学生宇宙開発機構」
(SARD)
は17日、室蘭岳山麓総合公園(室蘭市香川町)で、手作り小
型ロケットの発射実験を行いました。機械航空創造系学科で
海外ニュース
宇宙に関心の高い 1 〜 3 年生17人が、航空宇宙分野の知識や
技術取得を目指しロケットを研究、炭素繊維強化プラスチッ
ク製全長 60 cm、直径約 6 cmのロケットを 3 基用意。製作費
11月 5 日、インド宇宙研究機関(ISRO)は、同国初の火星
は18万円で、大学などからの助成やアルバイトをして賄いま
探査ミッション「Mars Orbiter Mission(MOM)」のPSLV-
した。計算上は200mまで上昇する能力がありましたが、2 度
C25ロケットによるサティシュ・ダワン宇宙センターからの
目の発射までは点火の失敗などで高さ10mにも届かず、日没
打上げに成功しました。(11/5 ISRO)
直前の 3 度目の実験でやっと100mに到達。実験は小型カメ
11月18日、米United Launch Alliance(ULA)社は、アト
ラを搭載し、上空から室蘭を一望する映像を撮影する目的で
行いましたが、カメラの不具合で映像は撮影できませんで
ラス5/401型ロケットによるNASAの火星大気ミッション
した。3 年の堀尾宗平代表(20)は「機体の完成度や発射の
「MAVEN(Mars Atmosphere and Volatile Evolution)」 の
打上げに成功しました。(11/18 ULA)
精度を高め、将来的には大型化したい」と話していました。
(11/18 北海道新聞)
11月20日、米オービタル・サイエンシズ社(OSC)は、米
JAXAが開発し、今年 9 月に打ち上げに成功した新型固体
国防総省の打上げ関連システム技術実証ミッション「ORS-
燃料ロケット「イプシロン」が、2013年度のグッドデザイン
3」となる、ミノタウロス 1 ロケットによる米空軍の小型衛星
賞(日本デザイン振興会主催)の金賞に選ばれました。イプ
「STPSat-3」及び、NASAの第 4 回ナノサテライト教育打
4
宇宙のまがり角
(13)
く、飛行機に乗るように切符を買って一般の人が誰でも
行ける世界にするにはどうしたらよいか、と言う命題で
稲谷 芳文
す。後者は世界のエネルギ問題と環境問題の解決のため
に、という今の宇宙の仕事のスコープやスケールとは全
今回から少し宇宙旅行の話をします。前回は、イプシ
く異なる規模と性格のものです。年に 1 回か 2 回しか飛
ロン初号機打ち上げを機に、世の中の周辺状況がどう
ばない、しかも一回で捨てている今のロケットに較べた
なっているかと言うことについて少し述べてみました。
らどちらもとんでもない高頻度大量輸送の世界です。偶
何事もそれが時代を先導しているのか、時代遅れになっ
然ですがアメリカでも90年代は、シャトルの次を見て何
ているのかは、世の中の進み方や周辺状況との相対関係
を輸送需要と見定めるか、のスタディが、ボーイングな
で決まる、とも言いました。
どインダストリの主導で行われています(例えばCSTS
ところが世の中というのはなかなか思ったように前に
(Commercial Space Transportation Study))。その輸送
進まない、というのも現実で、シャトルが切り開こうと
需要の中身に「宇宙旅行」と「発電衛星」などが位置づ
した未来は、その通りには全く切り開けなかったし、古
けられています。
くさい使い捨てロケットの世界にまた逆戻り、と言うの
が現実でしょう。このあたりのことはこの連載のはじめ
さてこの宇宙旅行の勉強をどうやって実行するかとい
の頃の 2 〜 3 回目あたりにシャトルの夢と現実、あるい
う話になったのですが、我々は、この糸川先生の始めた
はシャトルの退役の風景というようなことで少し書きま
日本ロケット協会、と言う学会プラットフォームを持っ
したが、もう少し振り返って考えてみたいと思います。
ているので、宇宙研ではなくここに研究会を作って、ボ
ランティア活動として行いました。まずは研究会のメン
冷戦の状況の中で、ロケットという宇宙輸送のシステ
バ構成です。この面でも長友先生には勝てません。当時
ムの技術そのものが競争の手段であり、同時に目的でも
では戦後唯一の民間輸送機であるYS11の開発に重要な
あった時代は、それで何をやるのだと言うことは少々棚
役割を果たされた川崎重工の磯崎弘毅さん、富士重工
上げにしても、それ自身で冷戦の相手を凌駕できるので
の鳥飼鶴男さんを重鎮として、重工各社から若手のボラ
あれば、実行のための投資は無制限とは言わないが、か
ンティアを数人、それに現麻布大学で当時宇宙研にいた
なりの規模で資源投入がなされた時代でした。今はそう
パトリックコリンズさんらと我々で研究会を構成し、中
でない時代の状況であるのなら、では何をすれば未来を
盤以降では戦後の航空機の耐空性の制度整備に大きな貢
切り開けるのであるか?と言うのが我々に課された命題
献をされた船津良行さんにも入っていただき、ロケット
であるのでしょう。
の技術の次のゴールをあぶり出すための活動を始めまし
た。また途中からは日本航空協会のプラットフォームも
1980年代の後半から90年代は、実はそう言う冷戦構造
借りて、エアラインやパイロットの方々ともいろんな議
から次の新たな状況へのトランジションの時代の始まり
論をさせてもらい、どーんとぶっ放して全て捨てるロ
であって、我らが長友先生は、その頃の宇宙研の周りの
ケットしか知らない我々にとって、誠に刺激的で、貴重
環境変化のためか、残りの人生を考えたのか、20世紀の
かつ有意義な時間を過ごすことが出来ました。
終わりから21世紀への転換をどうするのであるか、と言
うようなことにいろいろ考えを巡らしていました。ここ
普通の宇宙の仕事だったらまずミッション定義からで
はどういうものを作ったら世の中の役に立つか、と言う
すが、ここではコリンズさん達がやったマーケットリ
ような視点に切り替えて、ゴールのイメージを具体化す
サーチから始めました。エアラインがやっているように
るような仕事をしてはどうか?とか日本のロケットも使
「切符を買ったら宇宙旅行に行けます。一枚いくらだっ
い捨ての世界では実用になってきたので、21世紀まで後
たら自分でお金を出して行きますか?」からです。ここ
何年、と言う時点で、今後のロケットの方向性をどっち
では詳細は省きますが、この調査から出発して、桁で言
の方へ持って行くのだ?あらまほしき研究の方向は?と
うと大体100万円で切符を売り出すことができれば、日
言うような議論でした。実際は長友先生との会話は、議
本だけで年間100万人の旅客がいて、年間収入 1 兆円以
論と言うよりもっと一方的なものでしたが……。
上の事業ができる、と言う結果が出ました。
ロケット自身が自己目的化するのでなく、それで何を
運ぶのだ、と言うところから入るべき、と、出てきたの
「ほほぉー、稲谷くん、こういうロケットを作ったら
が宇宙への輸送の目的としての「宇宙旅行」と「太陽発
年収 1 兆円か。金出す人が出て来たらどうしよう」……
電衛星」でした。要するに次の時代のロケット屋として
「先生、なかなか誰も何も言って来ませんね」「そーかこ
は、それを使って何をするのか、をまずはよく考えよ
っちから金集めに行くか」「集めてできなかったら夜逃
う。なぜならそこからこそロケットの次の目標が決まる
げですかね?」「詐欺師ペテン師の仲間入りだな……」
のだから、と言うことです。前者の旅行は今の宇宙飛
ある日の長友先生との会話です。「観光丸」のスタート
行士のように非常に限られた少数の人が行く話ではな
はまあこんな感じでした。
5
上げプロジェクト(ELaNa(Educational Launch of Nano-
11月21日、ISCコスモトラス(Kosmotras)社 は、 ロ シ ア
satellite)-IV)等に基づくキューブサット計28基の打上げに
のYasny射場から、RS-20型ドニエプルロケットによるアラ
成功しました。(11/19 OSC)
ブ首長国連邦(UAE)の小型地球観測衛星「Dubaisat-2」等、
24機のペイロードの同時打上げに成功しました。そのう
11月20日、中国は、長征 4 Cロケットによる、地球観測
ちの 1 機には日本のウェザーニューズ社の北極海観測用超
衛 星「 遥 感19号(Yaogan-19)」 の 太 原 衛 星 発 射 セ ン タ ー
小 型 衛 星「WNISAT-1」 が 含 ま れ て い ま す。(11/21, ISC
からの打上げ及び軌道投入に成功しました。(11/20 NASA
Kosmotras, ウェザーニューズ, Tech-On!)
Spaceflight.com)
11月22日、ユーロコット・ロンチ・サービシズ社(本拠地
ドイツ)は、ロシアのプレセツク射場から、ロコット/ブリーズ
日本ロケット協会理事会 議事録
KMロ ケ ッ ト に よ るESAの 地 球 磁 場 観 測 衛 星 群「Swarm」
3 機(A、B、C) の 同 時 打 上 げ に 成 功 し ま し た。(11/22,
日 時:2013年11月21日(木) 14時より
場 所:(株)IHI本社(豊洲) 会議室
出席者:稲谷、淺田、木内、有田、吉田、野田、永田、野副、
金丸、笠原、野中、姫野、嶋田、渡邊、駒
Eurokot)
11月25日、中国は、長征 2 Dロケットによる酒泉衛星発射
センターからの、技術実証衛星「試験 5 号(Shiyan-5)」の
1.報告事項
⑴ 前回理事会の議事確認
資料に基づき内容確認、了承。
⑵ ロケットニュースの発行状況等、新コラム「ロケット口
伝鈔」について
資料 1 に基づき報告された。ニュースは順調に発行中。有
田コラム「口伝妙」の第 4 回に向けて準備中。口伝妙は連載
後にまとめてモノグラフとして出版することを想定。
⑶ JSTSおよびモノグラフ発行状況について
資料 2 に基づき報告された。JSTSは 2 号分( 1 年分)の
発行遅れとなっている状況。キャッチアップを進めている。
JSTSはJ-stageに登録されているのでWebからの閲覧が可
能。モノグラフ「セルゲイ・コリョリョフ伝記」は約630項
で間もなく発行の見込み。
⑷ Webページ更新状況
資料 3 に基づき報告された。ロケットニュースバックナン
バーのアーカイブ化を推進中。アーカイブ情報を会員向けに
どのように開示するか今後検討する。
⑸ IAF総会報告
資料 4 に基づき報告された。
⑹ ISCOPS準備状況について
資料 5 に基づき報告された。会場は西安とし、開催日程の
第一候補は2014年 5 月28〜30日となっている。間もなく開催
のお知らせ(First Announcement and Call for Papers)を
展開する計画。
⑺ 第 6 回宇宙旅行シンポジウムの準備状況
これまで隔年開催としてきたが、情勢に遅れをとらないた
めにも開催時期をこれにこだわることなく進める方針として
いる。今後、関係者との調整を進め、早期開催を視野に計画
を策定する。
打上げに成功しました。(11/25 新華社)
11月25日、ロシアは、プログレス(Progress)補給船M-21M
の打上げに成功しました。同補給船には合計2398kgの貨物
が搭載されています。(11/25 NASA)
11月28日、米スペースX(SpaceX)社は、予定されていた、
ケープカナベラル空軍ステーションからのファルコン 9 ロケ
ットによる通信衛星運用企業SES社の静止通信衛星「SES-8」
の打上げを延期しました。打上げ直前にエンジンの不調が
検出されたため。スペースXの初の静止衛星打上げ。(11/28
SpaceX)
《編集室より》
より良い紙面作りのため、会員の皆様の建設的なご意見や
投稿希望の原稿等をお待ちしておりますので、今後ともよろ
しくお願いします。また、日本ロケット協会では、下記公式
ホームページ及び、Facebookにおいてニュースのリンク先
等の情報を更新しております。
公式ホームページのURL http://www.jrocket.org/
FacebookのURL
https://www.facebook.com/JpnRocketSociety
ロケットニュースと合わせてご覧頂ければ幸いです。
▶ロケットニュース編集担当理事 嶋田 徹
2.審議事項
⑴ 会計状況について
資料 6 について報告および支出内容の審議を行った。モノ
グラフの発行費用は630項500部とした場合に予算80万円に対
して97万円の支出となる見込み。これは 2 分冊化よりもコス
ト低減になるとして検討した結果であることを踏まえ、この
出版計画および経費について了承。
口伝妙原稿料については、ライターへの支払いを 2 万円/
回とした場合、年間24万円となることについて審議した。原
稿執筆料としては交通費等の実費を含め妥当という見解であ
り、予算20万円に対して 4 万円の支出増は会計上問題ない範
囲であることから、当該原稿料の支出について了承。
3.その他
特になし
〒252-5210 神奈川県相模原市中央区由野台 3−1−1
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
e-mail:[email protected]
No. 579
ロケットニュース
発 行 ©2013
日本 ロケット協会
編集人 嶋 田 徹
発 売 三 景 書 店
印 刷 愛 甲 社
以上
6
平成25年11月30日発行
(定価 300円) 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋 1-1-1
パレスサイドビル2F
株式会社 毎日学術フォーラム
TEL 03-6267-4550 FAX 03-6267-4555
〒101-0038 東京都千代田区神田美倉町 1
大松ビル
振替・東京 171960 Phone 03-3252-2149
〒161-0031 東京都新宿区西落合1-26-6
Phone 03-3952-4466
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