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超高速・超低雑音InP HEMT IC技術

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超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
Ultra High Speed and Ultra Low Noise InP-Based HEMTs
あらまし
りん
化合物半導体インジウム燐(InP)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)は,電
流利得遮断周波数(fT)が500 GHzを超えるなど世界最速性能を有するとともに,100 GHz
での雑音指数が2 dBを切るなど超低雑音性能を示す。そのため,InP HEMTは,従来のガ
ひ
リウム砒 素系HEMTでは実現が困難であった,ミリ波帯(30-300 GHz)を利用した大容
量通信や高精度高感度センサ,光通信など超高速信号処理システムを実現するキーデバイ
スとして期待されている。本稿では,最新のトランジスタ形成技術と高速化技術を紹介す
る。また,このトランジスタ技術を用いた応用例として,94 GHz帯パッシブイメージセ
ンサと準ミリ波帯(23-29 GHz)ウルトラワイドバンド(UWB)レーダを紹介する。超
高速・超低雑音InP HEMTの利用により,センシングおよび通信装置の高性能化が図られ,
様々な社会基盤を支える高度センサネットワークシステムの形成に貢献していくと考えら
れる。
Abstract
InP-based high electron mobility transistors (HEMTs) exhibit a record current cutoff
frequency of beyond 500 GHz and a super low noise figure of less than 2 dB even at 100 GHz.
Consequently, they are regarded as key devices for next-generation wired/wireless
communication systems and precision sensors. This paper describes some fabrication
techniques that enhance device uniformity for large-scale integration and provide the
frequency response required for high-speed operation. It then describes two sensors that
have been developed using our InP-based HEMTs: a 94 GHz passive image sensor and an
ultra wide band radar operating in the quasi-millimeter waveband of 23 to 29 GHz. By
improving the performance of sensors and transceivers, InP-based HEMTs will accelerate
the realization of advanced sensor network systems that support various social
infrastructure services, for example, security, disaster-prevention, and transportation.
中舍安宏
(なかしゃ やすひろ)
基盤技術研究所先端デバ
イス研究部 所属
現在,超高速・超高周波
デバイス・MMICの研究
に従事。
260
川野陽一
(かわの よういち)
基盤技術研究所先端デバ
イス研究部 所属
現在,超高速・超高周波
デバイス・MMICの研究
に従事。
高橋 剛
(たかはし つよし)
佐藤 優
(さとう まさる)
基盤技術研究所先端デバ
イス研究部 所属
現在,超高速・超高周波
デバイス・MMICの研究
に従事。
基盤技術研究所先端デバ
イス研究部 所属
現在,超高速・超高周波
デバイス・MMICの研究
に従事。
FUJITSU.58, 3, p.260-266 (05,2007)
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
ま え が き
InP HEMT集積化・高速化技術
セキュリティ,防災,交通安全,社会基盤システ
HEMTの高速特性,低雑音特性を向上させるに
ムの信頼性強化などの観点から,環境や状況の変化
は,内部(チャネル)を走行する電子の速度(また
を感知するセンシング技術に対する注目が高まって
は 電 子 移 動 度 ) を 高 く す る 必 要 が あ る 。 InP
いる。センシングのための媒体としては,主として
HEMTの断面構造を図-1に示す。InP HEMTの特
電波,光,超音波,磁気などが利用されている。中
長は,GaAsに比べて2倍以上電子速度が大きい
でも電波センサは,着衣に隠された不審物のイメー
In0.53Ga0.47As{In/(In+Ga)組成比53%}をチャ
ジングや,霧中あるいは壁越しでの物体の位置検出
ネルに用いることにある。In0.53Ga0.47Asは,In組
など,ユニークな応用が期待できる。イメージ画像
成が高いため,InP基板とは格子整合して安定な結
の高解像度化や位置検出の高精度化には,センサに
晶となり良好な電気性能が得られる。一方,GaAs
用いるデバイスの高速化,低雑音化が課題となって
基板上では格子不整合により結晶歪 みが生じ,電
いる。
気性能が劣化する。InP基板上に作製され,チャネ
高電子移動度トランジスタ(HEMT)(1)は高速性,
ひず
ルにInGaAs,電子供給層にInAlAsを用いたHEMT
低雑音性に優れており,今日のセンシング技術や通
をInP HEMTと呼んでいる。結晶成長には有機金
信技術を支えている。身近な所では,衝突防止用
属化学気相成長法(MOCVD)を利用する。図-1に示
(2) 衛星放送用受信装置などに使
76 GHz車載レーダ,
したHEMT構造を用いることで,室温で9000 cm2/Vs
ひ
われている。現在主流のHEMTはガリウム 砒 素
以上の電子移動度が得られる。
InP HEMTの高速化・高周波化には,ゲート電
(GaAs)をベースとしているが,高性能センサ実
現には,さらなるデバイス性能の向上が求められる。
りん
極の微細化と同時にゲート抵抗の低減が有効である。
インジウム燐(InP)を用いたHEMTは,電流利
ゲート電極は,電子線描画装置による開口,
得遮断周波数が500 GHzを超えるなど世界最速性
Ti/Pt/Au蒸着・リフトオフにより形成する。典型的
能を有する (3) とともに,100 GHzでの雑音指数が
なゲート長は0.13μmである。ゲート抵抗を低減す
2 dBを切るなど超低雑音性能を示し,従来のGaAs
るため,従来は,図-1に示すようなT型構造として
系HEMTや微細Siデバイスの性能を大きく上回る。
ゲート電極の断面積を大きくしていた。ところが,
そのため,著者らは,InP HEMTの高速性・低雑
ゲート長を微細化すると,T型ゲートの上部電極と
音性を生かした光通信用デジタル集積回路など,高
下部微細電極との接合部が細くなり,上部電極が
度社会基盤の構築を目指したデバイス,集積回路に
関する研究を進めている。これまでに,周波数帯域
はく
剥 離するという問題が生じていた。これを解決す
るために,図-1に示すように電極が細る部分をなく
が100 GHzを超える分布型増幅器 (4) や144 Gbps多
重化回路などの超高速集積回路 (5) を開発し,InP
HEMTの高速・高周波特性を実証してきた。この
技術をセンサに応用することにより,これまでにな
い高性能化が期待できる。
本稿では,まず,最新のトランジスタ形成技術と
高速化技術を紹介する。つぎに,このトランジスタ
従来の構造(T型)
開発した構造(Y型)
ゲート
ソース
ドレイン
技術の応用例として,物体自体の放射するミリ波微
弱電波を検知する94 GHzパッシブイメージセン
サと物体までの距離を検出する準ミリ波帯(23-
InAlAsバッファ層
29 GHz)ウルトラワイドバンド(UWB)レーダ
InP基板
n-InGaAsキャップ層
InP停止層
n-InAlAs電子供給層
InGaAsチャネル層
の概要を述べる。
図-1 InP HEMTの断面構造
Fig.1-Cross sectional view of InP HEMTs.
FUJITSU.58, 3, (05,2007)
261
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
(6) Y型電極構造の採用
したY型電極構造を開発した。
も,寄生容量増加分の1/2が取り除かれている。空
により,トランジスタの高速特性・高周波特性を維
洞構造の適用により,スタティック分周器を構成し
持しつつ,チップ内均一性と安定性を向上させるこ
たときの最大動作周波数が79 GHzから90 GHzへ約
とができた。その結果,40 Gbpsクロック再生回路
14%向上することを確認した。ゲート長短縮に並
やクロック同期機能付き多重化回路など1000トラ
び,空洞構造は回路の高速化に有効である。
ンジスタを超える集積回路への応用が可能になった。
つぎに,さらなる高速化のために行った配線層間
絶縁膜の影響を低減する試みについて述べる。
配線層間絶縁膜には,高速動作に有利な低誘電率
ミリ波帯パッシブイメージセンサ応用
本章では,InP HEMTを用いたミリ波帯パッシ
ブイメージセンサへの応用例を紹介する。
(ε=2.8)のベンゾシクロブテン(BCB)を用いて
パッシブイメージセンサとは,物体自身から放射
いる。従来構造では,ゲート電極周囲にもBCBが
される微弱な電波を受信することにより物体の画像
てん
充填 されるため,寄生容量が増加してトランジス
を得るものである。可視光や赤外線では見えないも
タの高周波特性が低下するという問題があった。こ
のを可視化する新しい目となる装置で,セキュリ
の問題を改善するため,図-2に示すように,ゲート
ティや防災活動への利用が期待されている。イメー
電極周辺のBCBを除去する空洞(CAVE)構造を導
ジセンサは電波の波長が短いほど高い分解能が得ら
(7)
入した。
れる。ミリ波と呼ばれる30-300 GHzの電波は,つ
以下に空洞構造の形成方法の概略を示す。空洞構
造を形成する領域に,あらかじめ特殊な樹脂を充
ぎに述べる点でイメージセンサに適すると考えら
れる。
填しておく。つぎにこの樹脂を覆うようにBCB層
(1) 波長が1∼10 mmと短く高分解能が得られる。
間膜を形成する。さらにソース・ドレイン各電極上
(2) 薄い壁,衣服,炎などを透過するため,物体
部にコンタクトホールを形成する。コンタクトホー
越しに人体などをイメージングすることがで
ルは充填用樹脂にも接続されるようにしておく。そ
(8)
きる。
して,樹脂が可溶な溶剤をコンタクトホールを通し
(3) 商用利用が進んでいない未開拓周波数帯のた
て流し込み,樹脂を溶解させ排出する。その結果,
め,妨害波を放射する無線局が少ない。
ゲート電極周辺にはBCB層間膜のない空洞構造が
反面,短波長になるほど大気減衰が大きくなり,
イメージング可能な距離が短くなる。ところが,ミ
形成される。
空洞構造の導入により,ゲート電極の寄生容量を
リ波帯でも94 GHz,140 GHz,220 GHzなどいく
大幅に減らすことができた。とくに,ゲート・ドレ
つかの周波数では,大気減衰が周辺の周波数と比べ
イン間の層間絶縁膜による容量増加分をほとんど取
て小さくなることが知られている。中でも94 GHz
り除くことができた。同様にゲート・ソース間容量
帯は大気減衰が少なく,「第2の電波の窓」として
知られる。この領域の周波数を利用することにより,
数キロメートル先にある物体の高精度なミリ波画像
配線メタル
二層目BCB層間膜
配線メタル
を取得することが可能となる。そのため,著者らは
ミリ波結像レンズ
一層目BCB層間膜
小型平面
アンテナ
ソース
空洞
ゲート
ドレイン
0.13 μm
低雑音増幅器
(LNA)
信号
処理部
ミリ波集積回路(MMIC)
図-2 空洞(CAVE)構造
Fig.2-Cave structure in InP HEMTs.
262
図-3 パッシブイメージセンサのブロック図
Fig.3-Block diagram of passive imaging system.
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10
25
8
20
6
15
4
10
2
55
00
0
80
(a) 低雑音増幅器のチップ写真
利得 (dB)
雑音指数 (dB)
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
85
90
95
周波数 (GHz)
100
(b) 低雑音増幅器の雑音,利得特性
図-4 試作した低雑音増幅器の電気的特性
Fig.4-Electrical performance of our LNA MMIC.
94 GHz帯を利用したパッシブイメージセンサの開
発を進めている。
図-3に示すように,パッシブイメージセンサでは,
物体からのミリ波信号がミリ波結像レンズで集電さ
れ,小型平面アンテナへと入力される。ついで,低
雑音増幅器(LNA)と検波器で構成されるミリ波
集積回路(MMIC)において,増幅,直流変換さ
(a)ミリ波写真
(b)可視
れて,物体の等価電圧が出力される。これをX-Y方
向に走査することで2次元画像を取得する。以下,
センサの心臓部とも言えるInP HEMT LNA MMIC
について詳細に説明する。
図-5 人体のミリ波イメージング例
Fig.5-Example of millimeter-wave image of human
body.
LNAでは,受信したミリ波信号をLNA自身が発
生させる雑音を可能な限り低減して増幅させる必要
損失素子のみを用いて,安定性と低雑音性の両立が
がある。センサの受信信号強度は熱雑音と同等で非
(9) また,配線には不要放
可能な設計手法を開発した。
常に微弱なため,LNAには高い信号増幅率と低雑
射が少ない薄膜マイクロストリップ線路を採用し,
音性が求められる。具体的には94 GHz帯における
不要放射に起因する回路の不安定動作が起こりにく
電力増幅度を30 dB以上,雑音指数を5 dB以下にし
い構造とした。評価結果は図-4(b)に示すよう
なければ,意味のある画像取得が困難になる。現在
に,89-99 GHz(帯域10 GHz)において雑音指数
のGaAsやSiトランジスタ・MMIC技術では,トラ
3.5-4.3 dB,利得23±1 dBと,低雑音かつ高利得な
ンジスタ単体の最小雑音指数が大きく,この要求を
特性を得ることができた。
満たすことができない。そこで,超低雑音性を有す
るInP HEMTを用いてLNAを開発した。
ゲート長0.13μmのInP HEMTを用いて試作した,
今回開発したLNA2段(全利得40 dB)と検波器
を用いて94 GHz帯パッシブイメージセンサを試作
した。本イメージセンサで得られた人体画像を図-5
LNAのチップ写真と評価結果を図-4に示す。回路
に示す。白色部分は受信したミリ波電力の多い部分
はソース接地トランジスタとゲート接地トランジス
で人体に相当している。一方,黒色部分は背景に相
タを組み合わせたカスコード増幅器を4段接続した
当する。人体と背景は明らかに分離できており,今
構成としている。通常,カスコード増幅器は発振防
回試作したパッシブイメージセンサによりミリ波画
止のため抵抗を使って安定化を図るが,この抵抗が
像を取得できていることを示している。今後は受信
雑音源となって低雑音性が得られない。著者らは無
器を多素子アレイ化し,画像取得に要する時間の短
FUJITSU.58, 3, (05,2007)
263
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
を得るには,時間幅330 ps以下の信号が必要となる。
縮を図る。
なお,本研究は総務省の戦略的情報通信研究開
従来は,送信パルスを生成するために,UWB帯域
発推進制度(SCOPE)の助成を受けて実施されて
の中心周波数(26 GHz)を持つ正弦波をスイッチ
いる。
によってON/OFFする手法を採っていた。しかし,
この方法ではOFF時の信号の漏れ出しの抑圧と
準ミリ波帯UWBレーダ応用
ON/OFF切替え速度との両立が難しいという問題が
本章では,InP HEMTを用いた準ミリ波帯(2329 GHz)UWBレーダ,とくに技術的な核となる
あり,時間幅の短い送信パルスを生成することが難
しかった。
RFフロントエンドについて述べる。
著者らは,送信パルスの時間幅短縮のために,従
UWBレーダではパルス状信号を物体に放射し,
来と異なるアプローチで開発を行った。準ミリ波帯
反射した信号を検出し,往復に要した時間から距離
UWBに適合した帯域通過フィルタ(BPF)にイン
を算出する。パルス状信号の時間幅に相当する距離
パルス信号を入力し,その出力を送信パルスとして
が誤差となる。そのため,距離を正確に測定するた
(10) 理想インパルスは直流から無限大の周波
用いる。
めには,パルス状信号の時間幅をできるだけ短くす
数まで平坦な信号スペクトルを示す。これをBPF
ることが必要となる(図-6)。例えば5 cmの分解能
でマスクすることでBPFの帯域通過特性と同形状
のスペクトルを持つ送信パルスが生成される。した
がって,BPFの帯域通過特性を適切に設計するこ
被検出物体
送信
とで,UWBの特徴を有効に利用できる。
ス
パル
InP HEMTはほかのトランジスタに比べ高速動
作に優れているため,より理想インパルスに近いパ
ルスの生成が可能となる。著者らはInP HEMTに
送信部
よる論理積型インパルス生成器(IG)で半値幅
9 psという極短パルスの生成に成功した(図-7)。
受信部
これは,半導体トランジスタによるパルスとしては
分解能
(11) これを準ミリ波帯BPFに入力す
世界最短である。
ることで,時間幅320 psの送信パルス波形の生成に
図-6 UWBレーダシステム
Fig.6-Ultra wide band radar system.
入力クロック
成功した。これにより,空間分解能5 cmの測距
インパルス
IG
送信パルス
BPF
IG
320 ps
10 mV/div
インパルス出力
送信パルス
200 ps/div
0.8 V
9 ps
図-7 送信パルス生成手法
Fig.7-RF signal generation through impulse generator (IG) and band pass filter (BPF).
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超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
IG
BPF
PA
利得:15±0.1 dB
飽和出力:8 dBm
40 mW
9 ps
0.7 W
挿入損失:1.85±0.1 dB
ON/OFF比:>35 dB
90 mW
S/H
S/H
SW
π/2
S/H
データ保持長:3 ns
0.9 W
LNA
利得:40±1 dB
雑音指数:1.9 dB
40 mW
図-8 RFフロントエンドを構成するチップセット
Fig.8-Chipset for RF front end of UWB radar.
レーダの実現が可能となる。
帯パッシブイメージセンサと準ミリ波帯UWBレー
今回試作したRFフロントエンドを構成するチッ
ダについて述べた。パッシブイメージセンサは,雑
プセットを図-8に示す。IGやBPFのほかに,送信
音指数3.5 dB,利得23 dBの超低雑音増幅器を用い
パワーアンプ(PA)
,送受信切替えスイッチ(SW)
,
て人体画像の取得に成功した。UWBレーダは,世
低 雑 音 ア ン プ ( LNA ), サ ン プ ル ホ ー ル ド 回 路
界最小幅9 psインパルス発生器などの使用により距
(SH)などを試作した。PAやSWは広帯域にわたり
離分解能5 cmを実現した。
平坦な特性を示すよう分布型増幅器とし,PAの利
今後,高精度高感度センシング技術を用いたセ
得変動幅,およびSWの挿入損失は帯域内で±0.1 dB
キュリティシステムの整備が随所で進み,高度化す
以下を実現した。また,UWBレーダでは,極めて
る情報通信システムと融合していくと考えられる。
微弱な電力(-41.3 dBm以下)で測距しなければな
InP HEMTによるセンサおよび通信装置の高性能
らないため,受信アンプには高い利得と低い雑音指
化を推進し,セキュリティ・防災・交通など社会基
数が求められる。試作したLNAはソース接地型回
盤を支える高度センサネットワークの形成に貢献し
路の5段構成とし,1チップで利得40 dB,雑音指数
たい。
1.9 dBを実現した。
このチップセットを用いてレーダ装置を試作し,
電波暗室で性能試験を行った。その結果,5 cm∼
10 mの距離を5 cm分解能で測距することに成功し
参 考 文 献
(1) 三 村 高 志 ほ か : HEMT − 開 発 経 緯 と 現 状 .
FUJITSU,Vol.36,No.4,p.346-354(1985).
た。今後は,1チップ化による装置の小型化を行う。 (2) 大橋洋二ほか:76 GHzシングルチップMMIC高周
また,通信機能を付加した複数のレーダによって物
波ユニットの開発.富士通テン技報,Vol.20,No.1,
体を測位する,室内監視システムの実現を目指す。
p.23-31(2002)
.
なお,本研究は独立行政法人情報通信研究機構と
す
et
al.
:
Pseudomorphic
In0.52Al0.48As/In0.7Ga0.3As HEMTs with an Ultrahigh
の共同研究の成果である。
む
(3) Y. Yamashita
び
fT of 562 GHz.IEEE Electron Device Lett.,Vol.23,
No.10,p.573-375(2002)
.
富 士 通 発 の 基 盤 デ バ イ ス の 一 つ で あ る InP
(4) S. Masuda et al.:An Over 110-GHz InP HEMT
HEMTに関し,Y型ゲート電極の導入による高集積
Flip-chip Distributed Baseband Amplifier with
化技術とゲート電極周辺の空洞化による高速化技術
Inverted Microstrip Line Structure for Optical
を紹介した。また,最近の応用例として,94 GHz
Transmission Systems.IEEE GaAs IC symposium
FUJITSU.58, 3, (05,2007)
265
超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
(8) K. Mizuno et al.:New Applications of Millimeter-
Tech. Digest,2002,p.99-102.
(5) T. Suzuki et al. : Design and InP HEMT
Technology for ultra-high speed digital ICs with
beyond 80-Gbit/s operation.IEEE CSIC symposium
Tech. Digest,2004,p. 211-214.
Technology
for
High-Speed
Microwave Symposium,2005,p.629-632.
(9) 廣瀬達哉ほか:94 GHz帯パッシブイメージセンサ
の開発.電子情報通信学会技術研究報告 ED Vol.106,
(6) N. Hara et al.: Highly Uniform InAlAs- InGaAs
HEMT
Wave Incoherent Imaging . IEEE International
No.403,p.35-40(2006)
.
Optical
(10)Y. Kawano et al.:RF Chipset for Impulse UWB
Communication System ICs.IEEE Trans. Semiconductor
Radar Using 0.13- μm InP-HEMT Technology .
Manufacturing,Vol.16,No.3,p.370-375(2003).
IEEE Trans. Micro. Theory and Tech. , Vol.54 ,
(7) K. Makiyama et al. : Improvement of CircuitSpeed of HEMTs IC by Reducing the Parasitic
Capacitance.Technical Digest 2001 Int. Electron
p.4489-4897(2006)
.
(11) 富士通プレスリリース.
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2006/06/13-1.html
Devices Meetings,2003,p.727-730.
266
FUJITSU.58, 3, (05,2007)
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