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パネルディスカッション

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パネルディスカッション
市民とともに創る 住みよいまち 深川 人口/26,007人 世帯/11,467世帯 面積/529.23km2
【道の駅「ライスランドふかがわ」】
平成15年、国道12号と国道233号の交差点角地にオープン。
道の駅の機能のほかに、お米ギャラリー、情報コーナー、
農産物直売所などを備え、「米のまち深川」の魅力を発信
しています。
【「国見峠」から見た田園風景】
深川は、米のほか、そば、果樹、花きなどの生産が盛ん
な道内有数の農業都市です。また、大学、農協、行政が
連携して「新規就農サポートシステム」を立ち上げ、新
規就農を促進しています。
【マルチメディアの推進】
深川市は、総務省の「電子自治体推進パイロット事業」
「高
速無線システム実証実験」に参画するなど、まちづくりに
マルチメディアを積極的に活用しています。
【都市と農村との交流】
「ライスランド構想」の4つの里の一つ「アグリ工房まあ
ぶ」では、都市との交流が積極的に展開されています。
また、「元気村・夢の農村塾」では、本州からの修学旅行
生を中心に農業体験希望者を受け入れています。
【戸外炉(トトロ)峠】
夜景や四季折々の景色が人気のスポット。地元のまちおこ
しグループが整備した「北斗七星、カシオペヤ座、白鳥
座」などの夜景プラネタリウムを楽しむことができます。
【アートホール東洲館】
JR深川駅横の経済センター2階にある美術館。
深川ゆかり
の書家小川東洲さんのギャラリーでは、書や掛け軸、すず
りなどが展示され、画家の故松島正幸さんのギャラリーで
は、100号の油彩画や淡彩画などが展示されています。
会 議 会 場 か ら
「主催者代表挨拶」 河野深川市長
「基調講演」太田原北海学園大学教授
「パネルディスカッション」パネラー各位
「学会セミナー」佐藤馨一学会副会長
「テーマ解説」淺川北海道都市地域学会会長
「パネルディスカッション」太田理事
「まとめ」平澤企画委員長
「学会セミナー」河西学院大助教授
Ⅰ 会 議 日 程 ……………………………………………………………
1
Ⅱ 出演者等プロフィール ……………………………………………………
2
Ⅲ 主催者代表挨拶 ……………………………………………………………
9
Ⅳ テ ー マ 解 説 ……………………………………………………………
10
Ⅴ 基 調 講 演 ……………………………………………………………
11
Ⅵ パネルディスカッション …………………………………………………
14
Ⅶ ま と め ……………………………………………………………
48
Ⅷ 次期開催地挨拶(メッセージ) …………………………………………
50
Ⅸ 北海道都市地域学会セミナー ……………………………………………
51
Ⅹ 北海道都市問題会議開催経過 ……………………………………………
59
(敬称 略)
第1日目/10月6日(水)
9:30 ∼10:00 受
付
10:30 ∼10:40 開 会 ・主催者代表挨拶 深川市長 河 野 順 吉
・テーマ解説 北海道都市地域学会会長 淺 川 昭一郎
10:40 ∼12:00 基 調 講 演 :
「食と農のあるまちづくり」
■講 師 北海学園大学経済学部 教授 太田原 高 昭
12:00 ∼13:30 昼
食
13:30 ∼16:40 パネルディスカッション
「農業を基軸とした新しい都市の創成∼新農業都市の提案∼」
(15:00∼15:10 休 憩)
北海道都市地域学会理事 太 田 清 澄
コーディネーター
コメンテーター
16:40 ∼16:50 ま
め
北海道都市地域学会理事・企画委員長 平 澤 亨 輔
16:50 ∼17:00 次期開催地挨拶
札幌市長 上 田 文 雄
17:00 閉
と
深川市長 河 野 順 吉
会
第2日目/10月7日(木)
8:15 ∼10:15 市内施設見学
10:30 ∼11:30 北海道都市地域学会セミナー
第一部:「農業都市における生活交通の確保方策とその課題」
■講 師 北海道大学大学院工学研究科 教授 佐 藤 馨 一
11:40 ∼12:40 第二部:「農業におけるコミュニティ・ビジネスの可能性」
■講 師 札幌学院大学商学部助教授 教授 河 西 邦 人
−1−
出演者等プロフィール
基調講演
食と農のあるまちづくり
北海道大学農学部卒業
北海道大学大学院農学研究科単位取得
1939年生まれ
1968 北星学園大学経済学部講師
1971 北海道大学農学部助手
1977 農学博士(農業経済学)
北海道大学助教授
1990 北海道大学農学部長
大学院農学研究科長
2003 北海道大学名誉教授
北海学園大学教授(経済学部)
北海学園大学経済学部
教授 ●主な活動状況
農業経済を中心に北海道産業を長年にわたり研究。日本
協同組合学会会長、スローフード&フェアトレード研究会
座長等を歴任し、現在北海道農業顧問、北海道地域農業研
究所長、北海道スローフード協会代表等を努める。
●主な著書
1978 「地域農業と農協」日本経済評論社
1986 「明日の農協」(共著)農文教
1992 「系統再編と農協改革」農文教
1999 「農業経済学への招待」(共編著)日本経済評論社
2001 「リポート・中国の農協」(共著)家の光協会
●その他の経歴
1996∼1997 日本協同組合学会会長
1999∼2000 日本農業経済学会会長
●専門分野
農業経済学、地域経済学
●主な公職等
日本学術会議会員
北海道農業顧問
北海道地域農業研究所長
生活協同組合コープさっぽろ会長
北海道スローフード協会代表
●主な所属学会
日本農業経済学会
日本協同組合学会
日本地域経済学会
−2−
パネルディスカッション
コーディネーター
北海道大学農学部卒業
独立行政法人都市再生機構顧問
北海道都市地域学会
理事 1947年生まれ
1971∼1993 日本住宅公団(現 独立行政法人都市再生機構)
1993∼1998 (株)たくぎん総合研究所 調査研究部部長
1998 (株)都市みらい整備センター 計画部参与
1998∼2004 (社)北海道まちづくり促進協会 専務理事
2004∼ 独立行政法人都市再生機構 技術監理担当顧問
(社)北海道まちづくり促進協会 顧問
●主な活動状況
北海道東海大学芸術工学部 非常勤講師
中小企業総合事業団認定タウンマネージャー
北海道水産林務部 グリーンコーディネーター
NPO北海道花ネットワーク 理事
NPOマイストリート 理事
「IBM北海道会議」メンバー
●主な著書・論文
「ランドスケープハンドブック」(共著)鹿島出版会
「造園工学」(共著)地球社
「公共事業は誰れのものか」(共著)中央公論新社
「まちづくりからみた地域連携」北海道まちづくり促進協
会研修会テキスト
●その他の経歴
1981 日 本 住 宅 公 団 海 外 派 遣 選 抜 職 員 と し て 欧 米 で
フィールド調査研究に従事
1985 日本造園学会賞受賞(つくば研究学園都市における
「みどりの系の構築」)
●専門分野
都市地域開発計画、技術士(建設部門:都市及び地方計画)
●主な所属学会
日本造園学会
北海道都市地域学会
−3−
パネルディスカッション
話題提供
関心と共感と参加と情熱
小 松 正 明
●掛川市助役
北海道大学農学部農学科卒業
●主な活動状況
2002年4月よりわが国最初の生涯学習都市
宣言や新幹線駅誘致などまちづくりで知られ
る掛川市の助役として赴任。掛川市が2002年11
月に実施したスローライフ月間を支える。2004
年7月に発足した「NPO法人スローライフ掛
川」顧問。
●専門分野
公園緑地、まちづくり
1958年生まれ
1982 北海道開発局札幌開発建設部国営滝野すずらん丘陵公園事務所
1985 国営滝野すずらん丘陵公園事務所工務課施設管理係長
1987 国営滝野すずらん丘陵公園事務所工務課計画係長
1988 建設省都市局公園緑地課係長
国際花と緑の博覧会推進室に併任
大臣官房国際レジャー博覧会参加推進室に併任
1989 関東地方建設局国営常陸海浜公園工事事務所調査設計課長
1992 北海道開発局建設部道路計画課開発専門官
1995 建設省都市局公園緑地課長補佐
1996 関東地方建設局国営アルプスあづみの公園工事事務所長
1999 北海道開発局札幌開発建設部国営滝野すずらん丘陵公園事務所長
2001 北海道開発局旭川開発建設部旭川河川事務所長
2002 掛川市助役
●主な所属学会
日本造園学会
パネルディスカッション
話題提供
グリーン・ツーリズムでまちおこし
橋 本 信
●拓殖大学北海道短期大学環境農学科教授
北海道大学文学研究科博士課程単位取得
1949年生まれ
1987 北海道拓殖短期大学農業経済科助教授
2000 拓殖大学北海道短期大学環境農学科教授
●主な活動状況
1995 北空知圏振興協議会海外研修団団長
1996 深川市地域おこしセミナー運営委員長
1996∼2002 地域づくりネット・深川輝人工房代表
1997 「アグリ工房まあぶ」運営協議会副会長
2002∼2004 深川グリーン・ツーリズム研究会会長
2004 「元気村地域づくり研究所」事務局長
●主な論文等
1996 「元気村づくりヨーロッパ研修報告書」
北空知圏振興協議会
1997 「知覚における人間的意識の経験」
拓殖大学論集227号
1998 「時代の暴力と民衆の論理」唯物論研究年報第4号
青木書店
2000 「地域おこしは人おこし」月刊社会教育
2000年11月号
2003 「日本におけるグリーン・ツーリズムの現状と
可能性」拓殖大学論集250号
●その他経歴
2000 空知民衆講座副理事長
2002 新規就農サポートセンター運営委員
●専門分野
哲学、民衆史運動論、グリーン・ツーリズム論
●主な所属学会
日本倫理学会
北海道哲学会
社会文化学会
−4−
パネルディスカッション
話題提供
「元気村・夢の農村塾」の取り組み
渡 辺 滋 典
●元気村・夢の農村塾 副塾長
北海道立深川東商業高校卒業
1956年生まれ
●主な活動状況
1983 アメリカ農業留学(野菜を主に農業実習)
1984 就農。現在は花卉栽培を主にして経営
農協青年部活動を経て、深川グリーン・ツー
リズム研究会活動に参加
「いきいき元気村発信隊」に参加
2002 「元気村・夢の農村塾」設立に参画
●その他の履歴
深川市農業委員
パネルディスカッション
話題提供
都市農業から農業都市へ
加賀屋 誠 一
●北海道大学大学院工学研究科教授
北海道大学工学部土木工学科卒業
1947年生まれ
1970 北海道開発庁北海道開発局土木試験所勤務
1975 北海道大学工学部助手
1977 北海道大学大学院環境科学科助手
1984 北海道大学大学院環境科学研究科教授
1995 北海道大学工学部助教授
1997 北海道大学大学院工学研究科教授
●主な活動状況
地域計画、環境計画、流域管理計画、都市計画、
まちづくり、住民参加システム、交通計画、都心交
通行動分析などの研究教育に従事
●主な著書
2002 「送迎交通の実態とTDMの心理的方策による削減可能性に関する研
究」土木計画学研究、論文集「土木学会Vol.19(4)」P813∼822
2003 「都心交通ビジョン情報提供が市民認識の変化に与える影響評価」日本
地域学会「地域学研究第33巻1号」P1∼18
2003 「札幌市東北部における水災害時のネットワーク交通容量変化に関す
る研究」日本自然災害科学会「自然災害科学Vol.21№4」P401∼415
2003 「歩きながら考える英国のみち その1」北の交差点Vol.14P25∼28
2004 「歩きながら考える英国のみち その2」北の交差点Vol.15P25∼27
●専門分野
交通計画、地域計画、戦略的環境評価、ファジィ理論
●その他の経歴
北海道都市計画審議会副会長
北海道建設紛争審査会委員
北海道開発局石狩川開発建設部入札監視委員会委員
札幌市都心交通計画策定委員会委員長
小樽市都市計画審議会会長
JICA国別研修「都市計画・土地区画整理事業」コース講師
●主な所属学会
土木学会(全国大会委員会委員長
日本地域学会(常任理事)
RSAI(国際地域学会会員)
日本環境共生学会(理事)
北海道都市地域学会(監事)
−5−
パネルディスカッション
話題提供
都市と農業の共生 ∼グリーン・ツーリズムとスローフードの視点から∼
林 美香子
●フリーキャスター
北海道大学農学部卒業
●主な活動状況
1976 札幌テレビ放送アナウンス部入社
1985 フリーキャスターとして活動開始
・現在の担当番組
FM北海道「MIKAKOマガジン」パーソナリティー
・公式行事、イベント等の司会
「全国緑の愛護大会」
(皇太子殿下ご臨席)
「札幌コンサートホール・キタラ」オープニング式
典など
・シンポジウム、フォーラム等の出演
「環境フォーラム」コーディネーター
「農村景観シンポジウム」コーディネーター
「食観光シンポジウム」コーディネーター
「グリーン・ツーリズムフォーラム」基調講演など
●主な著書等
「ワーキングマザーの元気なBOOK」北海道新聞社
「楽楽おかずとおやつ」北海道新聞社
「ハーブティーを飲みながら∼北の大地のレシピ&
エッセイ」共同文化社
「ウイークエンドクッキング」道新スポーツ連載中
●その他の経歴
北海道文化財団評議委員
北海道住宅対策審議会委員
農林水産省「食と農の応援団」メンバー
「スローフード&フェアトレード研究会」代表
●専門分野
地域づくり、グリーン・ツーリズム、スローフード
●主な所属学会
日本建築学会
コメンテーター
河 野 順 吉
●深川市長
北海道立深川農業高等学校卒業
1938年生まれ
●主な役職
深川市長(平成6年10月から。現在3期目)
北海道市長会副会長、全国市長会理事
北海道高速道路建設促進期成会副会長
北海道治水・砂防・海岸事業促進同盟会長
全道広域圏監事
財団法人北海道青年会館会長
財団法人北海道地域活動振興協会理事長
北海道田園委員会委員
−6−
北海道都市地域学会セミナー
演 題
農業都市における生活交通の確保方策とその課題
佐 藤 馨 一
●北海道大学大学院工学研究科教授、北海道都市地域学会副会長
北海道大学工学部土木工学科卒業
1944年生まれ
1967 建設省入省
北海道開発局土木試験所出向
1973 小樽開発建設部小樽道路事務所
1975 文部省へ出向
北海道大学工学部土木工学科助手
1979 工学博士(北海道大学)
1985 北海道大学工学部土木工学科助教授
1992 北海道大学工学部土木工学科教授
1997 北海道大学大学院工学研究科教授(都市環境工学)
●主な論文
1977 「非線形交通流モデルに関する研究」土木学会論文報告集
1991 「北海道新幹線の整備目標とその課題」交通学研究
1999 「PFI方式による新交通システムの整備計画に関する
研究」都市計画論文集
●主な著書
1989 「土木工学序論」コロナ社
1990 「北海道道路史(構造規格編)」北海道道路史
調査会
2000 「国土を創った土木技術者たち」鹿島出版会
●主な公職
国土交通審議会北海道開発部会専門委員
北海道地方交通審議会委員
日本道路公団北海道地区入札監視委員会委員
北海道運輸交通審議会委員
北海道総合開発委員会委員
札幌市都市計画審議会委員
札幌市環境審議会委員
−7−
北海道都市地域学会セミナー
演 題
農業におけるコミュニティ・ビジネスの可能性
河 西 邦 人
●札幌学院大学商学部助教授
茨城大学卒業
早稲田大学大学院修士課程修了
青山学院大学大学院博士課程単位取得
1960年生まれ
1988 カウンティナットウエスト証券会社アシスタント
アナリスト
1990 クレディスイス投資顧問アナリスト
1997 札幌学院大学商学部専任講師
1998 札幌学院大学商学部助教授
2003 札幌学院大学大学院地域社会マネジメント研究科
兼任
●主な活動状況
2001∼ 株式会社イーライフ監査役
2002∼ 特定非営利活動法人北海道NPOバンク理事
2003∼ 財団法人北海道中小企業総合支援センター
「事業可能性評価委員会」委員
2003∼ 財団法人北海道地域総合振興機構「空知地域振興
計画策定調査検討委員会」委員
2004∼ 特定非営利活動法人北海道UR総合研究所理事長
●主な著書
2001 「現代企業の成長戦略∼ニッチ・トップシェア企業への挑戦」(共著)
2002 「コミュニティ・ビジネスの豊かな展開」(監修)
2004 「第三セクターが陥る4つの罠」月刊地方自治研修6月号
●その他の経歴
2001∼2002 北海道自治政策研修センター「アカデミー政
策研究」リーダー
2002∼2003 北海道「商工業振興審議会創業支援専門部
会」委員
2002∼2003 北海道「コミュニティビジネス・モデル事業
計画評価検討委員会」委員
2002∼ 北海道自治政策研修センター講師
2003∼2004 北海道「協働型政策検討システム推進プロ
ジェクト∼コミュニティ・ビジネスによる地
域活性化策」リーダー
2004 北海道「コミュニティ・ビジネス・モデル創
出業務プロポーザル」審査委員
2004 中小企業大学校三条校講師
●専門分野
経営戦略論、経営組織論、起業論
●主な所属学会
組織学会
日本経営教育学会
−8−
主 催 者 代 表 挨 拶
深川市長 河 野 順 吉 皆様、おはようございます。深川市長の河野でございます。
開会にあたり、北海道都市地域学会、北海道市長会、深川市を代表して一言ご挨拶を申しあ
げます。
本日は、全道各地から、首長様、議会議員の皆様、さらには、日ごろからまちづくりに強い
関心をお持ちの市民の皆様など多数のご参加をいただき、このように盛大に開催できますこと
に、心からお礼を申しあげます。
ご参加いただきました皆様に、心よりご歓迎を申しあげます。
北海道都市問題会議は、今年で2
9回目を迎えましたが、本市では、初めて開催させていた
だくものでございます。
本日まで会議の開催にご尽力を賜りました、北海道都市地域学会の淺川会長様をはじめ役員
の皆様、さらに、北海道市長会の田中事務局長様以下事務局の皆様に、心から深く感謝を申し
あげます。
さて、長引く景気の低迷や、国の三位一体の改革などにより、道内の各自治体は、かつてな
い大変厳しい状況に直面しております。
こうした中で、住民一人ひとりが、郷土に誇りと愛着を持ちながら、いきいきと働き、安心
して暮らすことができる、個性豊かな地域社会を構築していくためには、将来の地域を支える
ひとづくりや、コミュニティーの形成に向けた住民との協働、「産・学・官」の連携を一層推
進していくことが不可欠となっております。
また、ひと・ものの積極的な交流を図るとともに、安全・安心で活力ある地域づくり、地域
の恵まれた環境を次の世代へ引き継ぐための施策の推進に努めていかなければならないと考
えているところでございます。
本市は、道央と道北を結ぶ交通の要衝に位置し、石狩川や雨竜川の流域に肥沃な田園地帯が
広がる、農業を基幹産業とする地方都市でございます。
こうした地域特性を踏まえ、米のまちをアピールする「ライスランド構想」や、地域情報化
のための「マルチメディア構想」をまちづくりの柱として、安全・安心な農業、都市と農村と
の交流、電子自治体構築に向けた取り組みなどを積極的に推進しております。
こうした本市の取り組みにつきましては、午後のパネルディスカッションの中で紹介させて
いただきたいと考えております。
この後、北海道都市地域学会の淺川会長様から詳しいお話がございますが、今回の都市問題
会議は「農業を軸とした新しい都市の創成∼新農業都市の提案∼」をテーマに開催いたします。
また、北海学園大学経済学部教授の太田原先生から「食と農のあるまちづくり」と題した基
調講演をいただきます。
太田原先生のお話を切り口に、午後のパネルディスカッションでは、パネリストの皆様から
の話題提供や、本日参加いただきました皆様からのご質問やご意見によって、活発な議論が展
開され、有意義な会議になることを期待しております。
さらに、明日は、北海道都市地域学会セミナーが開催されますが、地域の課題に即した内容
が用意されており、地域住民のほか自治体職員にとりましても、大変貴重な研修の場になるも
のと期待しております。
終わりになりますが、本日の会議開催にあたり、快く講演をお引き受けいただきました太田原
先生をはじめ、コーディネーター、パネリストの皆様方に心より感謝を申しあげますとともに、
今回の会議が、参加をいただきました皆様お一人お一人の今後のまちづくりの実践に向けて、有
意義なものとなりますことを心よりご祈念申しあげ、開会のご挨拶とさせていただきます。
本日は、誠にありがとうございました。
−9−
(開会あいさつ)
テ ー マ 解 説
農業を軸とした新しい都市の創成∼新農業都市の提案
北海道都市地域学会会長 北海道大学農学部教授 淺 川 昭一郎
日本の都市では多くの場合、市域に農地や農業集落を含んでいます。一般に、そこでの農地
は産業としての都市近郊農業の場であると共に、都市に貴重な自然や防災空間を提供し、景観
や市民農園などレクリエーションの場となる生産緑地として位置付けられてきました。しかし、
これは主として大都市の視点からのものであって、広範囲の農業地域を含み、農業サービス施
設や農産物の集積地として発達した市街地を有する中小都市での農業・農地の意味はこれにと
どまらず、都市の成立に大きくかかわるものと思われます。
情報化が進み、車の普及により交通条件が飛躍的に改善されたなかで、農業地域でも都市的
生活様式が普及し生活の質が求められています。また、食の安全と安定供給が求められ、農産
物の生産と消費との結びつきに関したさまざまな交流が始まっており、新たなアグリビジネス
の展開も期待されています。そこでは、産業としての農業の再確立と自然との共存、地場産業
の発展と形成、開かれたコミュニティの再形成、地域文化の醸成と発信など、多くの課題があ
ります。
農業を基盤とし、この面で多くの実績を積み重ねている深川市で開催される今回の北海道都
市問題会議では、①安全・安心な農業、国際競争力をもった強い農業、スローフード・フェア
トレード、グリーンツーリズムなど、「農」を取り巻く課題と潮流の変化、②人口の減少と少子
高齢化、逼迫する財政問題、市町村合併、地方分権化への対応と市民主導のまちづくりをせま
られている北海道「都市」の課題を考え、③「農」をキーワードとして地域情報化をふまえた新た
な「都市と地域」の創成を提案したいと考えています。
基調講演をお願いする北海学園大学の太田原高昭先生には、「食」と「農」から“まちづく
り”について広い立場からお話いただき、パネルディスカッションでは、各パネリストのご専
門や活動に関した貴重な話題をベースとして、コメンテーターや会場からの質疑やご意見も交
えた活発な討議を期待しております。
また、翌日には、「新農業都市」に関した交通問題とコミュニティビジネスについての「北海
道都市地域学会セミナー」が開催されます。併せてご参加いただき討議を深めていただければ
幸いです。
(テーマ解説 淺川昭一郎)
− 10 −
基 調 講 演
「食と農のあるまちづくり」
北海学園大学経済学部 教授 太田原 高昭 1 農業の多面的機能をまちづくりに生かす
(1)まちづくりと農業
これまで、どの自治体でも都市計画や地域振興計画を作成する際に、当然のように人口の増
加または維持を前提にしてきた。ところがそのうちの農業計画については、経営規模の拡大に
よる近代化計画になっており、したがって農家の減少をみこんだ計画だった。
現実には人口増の計画は達成されず、農家の減少は目標以上に進んで、それが農村部の人口
減と購買力の低下をもたらし、市街地商店街の疲弊につながった。まちづくり計画中での農業・
農村についての考え方を抜本的に見直す時期にきている。
(2)農業の多面的機能への注目
これは「農業の多面的機能」を見逃していたからである。農業の多面的機能とは、食糧を生
産する機能の他に国土保全機能、環境や景観の創造機能、レクレーションや教育の場としての
機能など「外部経済」に属する機能を目指すが、従来はもっぱら農業予算の獲得やWTO交渉
などの方便と考えられていて、それをまちづくりに生かす発想がなかったのではないか。
(3)スローフード運動に取り組んで
現在、大きくひろがっているスローフード運動には三つの目的がある。①地域の伝統的な食
べ物と食文化を大切にする(地産地消)
、②すぐれた食材を提供する小生産者(農民、漁民、
加工職人)を大切にする、③子供たちを含めた消費者への食についての教育を進める(食育)。
これはそのままこれからのまちづくり、地域づくりの課題とも重なり、上記の多面的機能と
も重なる。北海道はすでに自治体として「スローフード宣言」をしており、市町村においても
まちづくりの理念としてスローフードの考え方を取り入れてはどうか。
2 地産地消を推進する
(1)「三里四方の旬の味」
以下、スローフード運動の三つの目的に即して、その考え方とまちづくりへのヒントを述べ
たい。地産地消については昔は当たり前の話で、京料理の極意として「三里四方の旬の味」と
いうことばがあるように、新鮮な地場の旬のものが尊重されていた。
保存技術や流通手段の発達によって広域流通が一般化し、大量の外国産を含めて季節感のな
い食生活となったが、最近の消費者の中にはふたたび地場志向に回帰する動きがみられる。そ
れと共に、地場産品が地元で入手できないことへの不満も高まってきた。
(2)広域流通と地場流通
北海道は食糧自給率19
0%を誇る食糧移出地域であるから、広域流通を大切にしなければな
らないが、それがもたらした歪みにも留意する必要がある。完熟トマトやブルームレスきゅう
りのように、味よりも流通戦略を優先した品種が市場を制覇している。
広域流通と並んで地場流通の仕組みを作り出すことによって、地元に隠れている本当に味の
− 11 −
(基調講演 太田原高昭教授)
良い在来品種を復活させることができる。そのことによって消費者の食生活に本当の豊かさを
取り戻すことが出来るし、地元の農業者に新しい市場を開拓することにもなる。
(3)地域の伝統的な食文化
それは地域の伝統的な食文化を発掘し、育てていくことにもつながる。あまり伝統がないと
いわれる北海道でも「室蘭の焼鳥」や「美唄中村のとりめし」などが話題になっている。道で
もこうした地域の食文化を発掘する事業をスタートさせる。
このような取り組みは、地元のすぐれた食材やそれを生み出す農業への関心を高め、郷土へ
の誇りを育てることになる。さらにそれが地域外にも知られ、人を呼び込むことになれば、地
域経済の「内発的発展」をもたらすことになろう。
3 小農経営と中小企業を守る
(1)地域活性化とは何か
これまで地域活性化の方法として企業誘致やリゾート開発など、外部資本に依存する「外発
的発展」が志向されたが、この道はバブル崩壊と共に崩壊した。これからの地域活性化は地域
内の人と資源に依存し、それを活用する「内発的発展」によらなければならない。
わが国には「報徳の道」という地域振興思想がある。それは身近にある人や資源に有用性
(徳)を見いだし、それに感謝して活かす(報)というもので、
「内発的発展」を説いた古典
といえよう。まさに古きをたずねて新しきを知るである。
(2)農業者の先進的取り組みと波及効果
道内にもすぐれた「内発的発展」の事例が多数育ちつつある。網走管内小清水町では、町内
の原生花園に美しいユリがあることからユリの特産地を目指し、そのデモンストレーンョン施
設として「小清水リリーパーク」を開園した。これが観光客をよび、国道筋から離れているた
め地元客しか利用しなかった商店街の売上が大きく伸びている。
空知管内幌加内町ではソバによる町起こしが成功し「世界ソバ祭り」には同町人口の 10 倍
の人が集まる。各地の農村女性の農産物加工の起業も、今では無視できない数の雇用を実現し
て北海道経済に貢献するようになった。
(3)産業クラスターの具体像
道経連の提唱によって始まった「産業クラスター」も各地で取り組まれるようになった。上
川管内下川町では地元の豊富な森林資源を活かして、素材生産だけでなく、木材の高次加工に
取り組み、森林組合を中心にした「森林クラスター」が形成されている。
江別市では春蒔小麦の「初冬蒔き」技術の完成をバネに製粉、製パン、ラーメンなど「小麦
クラスター」というべき企業集積がみられる。これらは農林業と中小企業が一体となり、地元
資源を地域活性化に活かしている好例であり、そこでの自治体の役割も大きい。これからの自
治体のまちづくり計画のモデルとなりうるものである。
4 食農教育に取り組む
(1)地域の子供を健全に育てることは自治体の基本的任務であるが、そこにはゆるがせに出
来ない問題が生じつつある。子供や青少年の食生活の乱れもそうした問題の一つである。「い
じめ」や「切れる子供」の多発は、食生活にも大きな原因があることが最近の研究で分かって
きており、本格的な対策が必要となっている。
(基調講演 太田原高昭教授)
− 12 −
これまで食生活の基本的な知識やしつけは家庭教育の中でなされてきたが、そうした教育力
を失った家庭もみられるようになり、地域ぐるみの「食育」が注目されている。
(2)学校教育を食農教育の場に
学校教育における食育としては学校給食のありかたがまず問われよう。現行の「品目別入札
方式」では食材そのものがコストダウンの対象とされるから、安い外国産品が多用され、安全
性や「食べ残し l の問題が出てくる。
学校給食に「地産地消」の考え方を取り入れ、子供に食材を通じて地域農業への関心を育て
るなど学校給食の改革には名寄市などの先駆的な試みがある。食材納入の既得権などむずかし
い問題もあるが、自治体や教育委員会が率先して取り組むべき課題であろう。
(3)「食育基本法」と地域ぐるみの取り組み
もともと「日本型食生活」は長寿の基盤として世界的に注目された経緯があり、それが混乱
している現状は政府も放置しえず、
「食育基本法」を準備していると言われる。道においても
「食育に関するガイドライン」が作成されている。
しかし法律や条例だけでは食育の実践は進まない。地域ごとに異なる歴史や農林漁業の実際
に即して、地域全体で知恵を出し合って食育の中身を創造的に作り出していかなければならな
い。こうしたことがこれからのまちづくりの大きな課題になるのである。
− 13 −
(基調講演 太田原高昭教授)
パネルディスカッション
★話題提供「関心と共感と参加と情熱」
掛川市助役 … 15
★話題提供「グリーン・ツーリズムでまちおこし」
拓殖大学北海道短期大学環境農学科教授 … 19
★話題提供「元気村・夢の農村塾」の取り組み
元気村・夢の農村塾副塾長 … 26
★話題提供「都市農業から農業都市へ」
北海道大学大学院工学研究科教授 … 28
★話題提供「都市と農村の共生∼グリーン・ツーリズムとスローフードの視点から∼」
フリーキャスター … 32
◆パネルディスカッション要録
コーディネーター 北海道都市地域学会理事 … 36
深川市長 … 46
◆コメンテーターからの発言
(パネルディスカッション)
− 14 −
「農」を取り巻く現状
「農」を取り巻く要素としては、農地と農村と農業、そして人と関係としての農家と農民、
そしてそれらを総合したものとして、農業があげられる。これらは相互に関係しあっていて、
「農」を都市との関係で語る場合は、これらのどの「農」もついて論じているのか、その「農」
を守り育てるのか、という視点が必要である。
都市と農村との関係は、農地の土地
利用だけが問題なのではないし、農村
だけの問題でもない。都市と農村が相
互に、経済問題の解決も含めなくては、
土地問題も解決しない。
農村経済を支える農産物そのものが
安定的な高収益をあげるためには、今
日ブランド化戦略によって「個性化」
を目指さなくてはならない時代になっ
た。製品のブランド化も重要だが、今
日トレーサビリティの問題がクローズ
アップされるようになり、原産地のブ
ランド化も現実味を帯びている。
農家と農民と農地を守るには「規模拡大」とその延長の「協業化」が必至である。つまり、
農地の所有と利用を分けて考えなければならないのだ。日本の農業は、小規模農家が一家に一
台ずつ農業機械を一セット取りそろえ、しかもそれらは年にほんの短い期間しか使われないと
いう不効率を内包している。それらは全て、農地に対する執着心が原因であるが、適切な地域
指導によって、農地を法人等に預けて土地使用料を受け取るということで、小規模農地を大規
模な農地に再編することが必要なのである。
平成 17 年 4 月に掛川市と合併をする大東町には、農事組合法人大東農産があるが、ここで
は 7 名の人間で 147 ヘクタールの水田を借りて、大規模な米作を行っている。地主は全部で
430 名にも及ぶのだが、もう 30 年以上も前に農村工業導入を指向したときから、農家の中で向
上勤めを主に行うような農家からは積極的に土地を貸与して地域でとりまとめるような行政
からの指導を行っていて、それが今日の見事なまでの土地の集約化を果たしている。先例はあ
るのである。
農民と農村、農業を救うには市民と一体となった生産地即消費地という環境作りが必要であ
る。自分の町で収穫したものは自分たちが誇りを持ってありがたく食べるという文化を作り上
げて、その上で食べきれないものを他の地域にお裾分けをするという考えを持つべきである。
遠くから来るものほどありがたがるという風潮には敢然と反旗をひるがえすべきである。
しかし今日の少子高齢化の進展や過疎による集落の機能喪失により、どうしても守れない農地や
林地も多くでることだろう。そういった場所については、公有化も検討せざるを得ないだろう。
− 15 −
(パネルディスカッション)
農への参入促進
今年話題になったプロ野球への新規参入問題と同様に、農業が活性化するためには農業を担
える団体や個人の新規参入が必要である。
現在の農政は土地や業としての農業を守る観点から、参入に農家資格を必要としていて、こ
れが新規参入の大きな障害となっている。
何の場合でもそうだが、農業にあっても真の担い手には、「資格」と「やる気」と「能力」
が求められる。ともすれば現役の農業従事者でもやる気や能力が欠如した者もいるようで、こ
の面での質の向上を図らなくてはならない。
農地を効率的に利用して、活力ある農業を展開できる、三位一体の人材が必要
また、これからの高齢化社会や、団塊世代のリタイア社会においては、農業の担い手候補と
して、年金を手にしながら金銭ではない生き甲斐を求める人たちの人数も増加することが予想
され、そうした人たちの受け入れ先として、農業は格好の分野の一つと考えられる。
したがって、このような人たちへの受け入れのための準備が求められる。
農地と土地利用
農村と農地を、土地利用と土地保全という観点からみると、現在の法体系は土地を農業側か
らみた「農地法」「農振法」と、都市側からみた「都市計画法」の体系がある。
バブル時期に横行した、土地の無定見な開発は一段落したものの、バブル経済による土地の
虫食い的売買や地域や自治体の賛同を得ることのない開発行為を、国の法律体系が規制や対応
できないと言うことに対しては反省の必要がある。
憲法に保障された私有財産権と、土地の公共性という側面をどのように調整するか、という
ことに対して、現在の行政は現実的にはあまりにも無力である。
景観や雇用、経済活動など様々な影響を及ぼす開発行為に対して、良好な地域の発展という
観点からは、もっと規制の面を強くしなくてはならない。
これらの、住民の自覚と合意を求める手続きとして、掛川市の「生涯学習まちづくり条例」
や穂高町の「穂高町まちづくり条例」など、いくつかの地方自治体によって試みられている
「まちづくり条例」は、極めて先駆的かつ示唆に富む。
(パネルディスカッション)
− 16 −
現代に通じる報徳思想
さて本市には江戸時代末期の村落経営の偉人二宮尊徳(幼名金次郎)の実践活動を今に引き
つぐ社団法人大日本報徳社の本部があり、現在の掛川市長榛村純一氏は、報徳の考えをまちづ
くりに取り入れたユニークな都市経営を行っている。
二宮尊徳は神奈川県小田原市生まれで、幼少時の「負薪読書」像は全国の小学校に置かれた
ことでよく知られている。彼は自分自身が経済的に苦労する中で、権力側からではない、百姓
の側に立った独特の農村経営哲学に至ったのだが、この実践理念が後に報徳思想として知られ
るようになったのである。
二宮尊徳の報徳思想、報徳哲学は四つの徳目で表される。すなわち、
「至誠」、「勤労」、
「分
度」、
「推譲」である。
至誠とは、文字通り誠実に、正直に、真面目に生きると言うことで、
「勤労」も同じく、一
生懸命労働をするということで、働かずして益は得られないことを教えている。
「分度」というのは今日ちょっと耳馴れない言葉だが、「天分を測度する」ということ
で、自分の分限を知り、分をわきまえる、という生き方を説くものである。
そして「推譲」は、分をわきまえたつつましやかな生活をすれば、ある程度はお金も貯まる
だろうけれど、そうして得た余裕のお金については、世のため社会のため地域のために、すす
んで差し出しなさい、という奉仕を求める精神である。
現代に通じる報徳思想、その 2
もう一つ、尊徳が言ったと言われることに「経済なき道徳は寝言であり、道徳なき経済は犯
罪である」という言葉がある。前段は、道徳を説いてそのことで世の中を動かそうとしても、
経済という実体が伴わなければ、その考えは絵空事と同じであって、現実味を帯びたものでは
ないということを教えている。
そして後者は逆に経済で世の中を動かそうとするときに道徳というものを常に心に保ってお
かないと、お金があれば何でもできるという拝金思想につながってしまう、ということである。
今でも掛川にある社団法人大日本報徳社の事務局のある敷地には、本物の経済門と道徳門が
建っており、市の観光のスポットとしても貴重な存在になっている。
− 17 −
(パネルディスカッション)
北海道における報徳運動
さて、明治期には尊徳の薫陶を受けた多くの弟子達がその志を持って地方に赴き、この報徳
仕法の実践によって救われた村々は多い。そしてその内の何人かは北海道へも訪れて、初期の
北海道開拓に力を尽くしてくれていたのである。
その代表が大友亀太郎である。彼は函館で一仕事をした後に札幌へ入り、現在の札幌の将来
の発展を確信し、石狩川から茨戸川へ登り、そこから現在の札幌中心部に至るところまでを舟
運で開発するために、運河となる堀を作ったのである。
それは当大友堀と呼ばれたが、その一部が今でも札幌テレビ塔の下を流れる創成川である。私自
身、大友亀太郎の名前だけ走っていたが、彼が報徳の人だということは掛川で得た知識である。
また、十勝の豊頃町には伊豆松崎町生まれの依田勉三が入植し、今の十勝農業の基礎を築いた。
さらに戦後、疲弊した道内の農村漁村を立ち直らせるためにも報徳運動が沸き上り、あの雪
印乳業ももともとは酪農業における報徳運動からできたということも知った。
農村のみならず、これからの社会を救う一つの哲学として、報徳の意味を我々は再度、思い
返すことが有用なように思われる。有用なように思われる。
掛川市の取り組み
掛川市では昭和 54 年に全国初となる「生涯学習都市宣言」を行って以来、生涯学習をまち
づくりの根幹に据えた都市経営を行ってきた。
その結果、30 億円市民募金による新幹線新駅の建設や本格木造による掛川城の再建などを着
実に行い、農・工・商がバランスのとれたまちづくりを行うことができた。
最近では、「歩行文化・スローライフ・報徳文化都市宣言」を行い、よりよく生きるための
術を行政として示している。
スローライフのまちづくり
また平成 14 年には「スローライフ」を掲げ、スローペース、スローウェア、スローハウス、ス
ローフード、スローインダストリー、スローエイジング、スローエデュケーション、そしてそれらの
総合としてのスローライフを提唱し、身近な問題をスローを切り口に考えてもらう施策を展開した。
このなかに、スローインダストリーとしてゆっくりゆったりと、ものが生産される農林業の
重要性と、
「地産地消」など食を考える、スローフードの考えが盛り込まれている。
(パネルディスカッション)
− 18 −
関心と共感と参加と情熱
いずれにしても、これからの地域経営は、自立した住民と一体となって進められなくてはな
らず、まず問題に関して世間の関心を呼ぶことが重要で、その関心を共感に結びつけ、参加を
促し、最後には地域が情熱を持って取り組んでくれるような動きにしたいものである。
課題は山積だが、本会議もそれらに対して貢献されるよう期待するものである。
1.グリーン・ツーリズムとの出会い
(1)私の「グリーン・ツーリズム」との出会い
私は、所属する拓殖大学北海道短期大学環境農学科で「グリーン・ツーリズム概論」と「グ
リーン・ツーリズム実践論」を担当しています。2000(平成 12)年度に開設された、全国的に
も珍しい「グリーン・ツーリズム概論」を担当するようになったのは、私が地域の仲間たちと
グリーン・ツーリズムに取り組んでいることがあったからです。
また、哲学を研究している私がグリーン・ツーリズムに関わりを持つようになったのは、地
域と大学の密接な連携から始まった事業によるものです。
1995(平成 7)年に、北空知の 1 市 5 町(深川市、妹背牛町、秩父別町、北竜町、沼田町、
幌加内町)でつくる広域圏の組織「北空知圏振興協議会」が海外研修事業を始めました。拓大
の教員が団長となって、役場職員 2 人が副団長に、6 市町の住民から公募選出の 15 人が団員に
なって、北空知の地域づくりのための研修事業を始めたわけです。
1 市 5 町の枠を越えた仲間づくりをすることがねらいでしたが、その第 1 回目の海外研修事
業は、ドイツの農家民宿の体験と視察を中心とする「グリーン・ツーリズム」を研修テーマに
していました。ドイツ視察研修が中心だと言うことで、ドイツ哲学を研究している私に団長の
役目がまわってきたのです。拓大は、その 3 年前に地域の多大な支援を受けて、深川市内で校
舎を移転・新築しました。私自身も、地域のために何かお役に立ちたいと考え、深川市が 1994
(平成 6)年に始めた「地域おこしセミナー」という人材育成事業に中心的に関わっていたと
いうことが、「ドイツが中心」という要因以外に、団長を任された要因であったと思います。
それ以来、地域の仲間とグリーン・ツーリズムに取り組むこととなり、4 年前からは大学の
− 19 −
(パネルディスカッション)
授業でも教え、私の 2 年ゼミナールのテーマにもしています。このような私の経験からお話を
したいと思います。
(2)地域のグリーン・ツーリズムとの出会い
研修テーマであるグリーン・ツーリズムというのは、私も研修団メンバーにとっても、全く
耳慣れない言葉でした。そこで、当時まとまった紹介をしていた唯一の本『グリーン・ツーリ
ズム』を研修団のテキストとして採用しました。
実際にドイツなどの西欧諸国のグリーン・ツーリズムを視察したことのある人や、グリーン・
ツーリズムに取り組んでいる人の話を聞きたいということで、まず、蘭越町で農家民宿を始め
た佐々木寅雄さんを講師としてお呼びしました。
次に、実際に農家民宿を体験したいということで、十勝の帯広・新得・鹿追を視察し、「大
草原の小さな家」に宿泊体験をしました。
私たちの研修団 18 名の 3 分の 2 の 12 名が農業者でしたが、十勝で出会う農業者がそろいも
そろってそれぞれの形で「農業生産+α」を熱心に追求し、実践していることが新鮮な驚きで
した。
1991(平成 3)年に開設した「観光農園にしかみ」の高橋俊一さんの話はその一つの典型で
した。
「農業生産+αを追求するようになったきっかけは、道職員のヨーロッパ視察報告書を
見たのが始まりで、それには農家と都市の人が接する場を作ることが必要である。その表現方
法は、ファームイン、農業体験、体験農園、ファームレストランといろいろある」と話してい
たことが印象的でした。
また、北海道ツーリズム大学事務局長をしている武田耕次さんには、当時の「鹿追ファーム
イン研究会」について話してもらい、刺激を受けました。
「国際競争力をつけるために経営規
模を大きくしようとしているが、本当に勝てるのか? 100 ヘクタールまで規模拡大したら、鹿
追町 385 戸の農家は 100 戸になってしまう。残りの農家は離農することになる。これでは過疎
になり、地域は成り立たない。これでよいのかということで、農業と農家の在り方を見直し、
自分たちで売る努力などを通して自立することが必要である」と力説し、稲作地帯の北空知に
も身に染みて共感できる話でした。
十勝視察で私たち研修団が感じたことは、「大草原の小さな家」オーナーの中野一成さんが
後に語った、次の言葉に示されているように思います。
「農業者から見たグリーン・ツーリズムは、農業の付録で勝負することである。古い農業と
新しい農業があって、古い農業が本来の農業であるが、この古い農業を応援し、ピーアールす
るのが新しい農業であり、グリーン・ツーリズムである」
(3)地域でのグリーン・ツーリズムの取り組み∼深川の事例
私自身がグリーン・ツーリズムの取り組みに本格的に関わり始めたのは、1996(平成 8)年
でした。北空知海外研修の成果を報告書にまとめながら、十勝やドイツの視察で学んだことを
私の住む深川市で具体化できるチャンスを、地域の仲間とともに「深川グリーン・ツーリズム
研究会」を立ち上げて模索していました。絶好のチャンスが到来しました。当時、深川市が計
画していた音江山麓の「都市と農村交流センター」について、これを私たちのテーマのモデル
ケースとして位置づけました。この「交流センター」に対するソフト・ハードの両面からの提
(パネルディスカッション)
− 20 −
言を作成して市役所に提出したことがきっかけとなって、「アグリ工房まあぶ」という名称で
1997(平成 9)年に開設した「交流センター」の体験プログラムづくり策定事業を委託された
のです。
私たちは、かなりの危機意識を持ちながら取り組みました。
「あこがれの北海道」のイメー
ジぴったりの十勝の農村景観もなく、富良野や美瑛のような知名度もなく、キャッチフレーズ
も浮かばない。いわば苦肉の策で、
「北育ち元気村」という広域農協連の語句にヒントをもら
い、「ちょっと元気村体験事業」という名称を交流体験事業の名称にしました。
ファームインやファームレストランもない、しかも都市農村交流施設もない、稲作地帯の深
川で何ができるか?メンバーと関係者に米農家、リンゴ農家、バラ農家がいました。9 月下旬
の時期に深川でできることは何でもやろうということになりました。同時に、受け入れる私た
ちも楽しめる考え方を重視し、以下のように表現しました。
「何よりも重要なのは『交流センター』を私たち深川に住む者自身が楽しめるセンターにす
ることであると考えます。住民自身が楽しめる体験を通して交流することが都市と農村の交流
を持続的に拡大させるうえで決定的です。このためには、深川の暮らし・農村の生活そのもの
が楽しめるものであり、暮らしを楽しむことのできる、地域づくりが必要です。そういう地域
づくりの重要な一環として『交流センター』づくりを位置づけることが大切だと考えます」
交通費のみの自己負担で無料の体験ツアーとし、募集活動を大々的に行い、募集活動によっ
て知名度アップをねらうこともしました。そして、参加者の定員を 24 名として、参加者との
交流を深めることを重視しました。
実際の参加者 26 名は、186 名の申込者の中から選ばれたことの自覚をもって、極めて積極的
にそれぞれのメニューを体験しました。私たちも含めて参加者全員が「ちょっと元気村体験」
に満足してくれるという結果を得ることができました。
その体験は、共通必修として「りんご狩り体験」
(これは私たちがオーナーとなった「つが
る」3 本からりんごをもぎとる体験)、選択メニューとして「米米コース体験」(このコースの
最大の人気メニューはコンバイン試乗で、もちつきや空き缶による米炊きも人気)、
「アップル
パイづくりコース」(このコースは加工体験の面白さと楽しさを十二分に味わうコース)、
「バ
ラコース」
(バラ園でバラの花を摘み、フラワーアレンジメントを体験したうえに、バラ風呂
に入浴、
「人生に二度ない最高の贅沢」)、「カヌー試乗体験」(鷹泊湖で初めて試乗体験)、
「ロ
グハウス組み立て体験」(全員が自らの家を建てる快感)という形で 1 泊 2 日を使い切るもの
でした。
この元気村体験事業の成果として、私たちのグリーン・ツーリズムの取り組みは、農業体験
を基本にすえると定めました。この基本があってはじめて、加工体験やアウトドアライフのプ
ログラムが生きてくると考えています。これらの体験交流プログラムが本当に心の触れ合うも
のであってこそ、都市と農村の交流センターである「アグリ工房まあぶ」は、多くの人びとに
生き生きと活用されるものになると実感したのです。
参加者の感想がこのことを物語っています。「物や情報があふれる社会で、大切に育てられ
たものを収穫する体験。この中で、人の心のつながりを感得することによって、ふるさとの実
感を体験し、おのずと心がいやされる貴重な経験」でした。これが顔のよく見える交流の中で
培うべきグリーン・ツーリズムの基本的在り方です。
このことは、北空知の 38 戸の農家がメンバーになっている「元気村・夢の農村塾」(2002 年
− 21 −
(パネルディスカッション)
3 月結成)に現在受け継がれています。
2.北海道のグリーン・ツーリズムについて
(1)地域特性を生かした北海道のグリーン・ツーリズム
北海道には農業に特色のある地域が形成されており、この農村地域の特色を生かしたグリー
ン・ツーリズムの展開が可能であり、実際に行われています。
北海道の地域農業の姿は、
「稲を中心に野菜、畑作物との複合化が進んでいる道央・道南圏
の稲作地帯と、畑作と畜産の並立する十勝・網走地域の畑酪地帯と、酪農主体の宗谷、根室、
釧路地域の酪農地帯に大きく区分」
《相馬暁著『いま農業が面白い』
(北海道新聞社 1998 年)168
頁》することができます。グリーン・ツーリズムの展開は、この地域特性に対応した形態を
取っていると見ることができます。
ファームインが最も盛んな地域は「畑作と畜産の並立する」十勝・網走地域であり、ファー
ムインの軒数も北海道全体の半分を占めています。それに次いで多いのが富良野・美瑛地域で
す。これらは、畑作地帯の美しい景観を見せている所で、北海道の中では、全国的に知られた
観光地である点も共通しています。このような点が、ファームインの展開に有利であることは
言うまでもありません。
こうして、十勝・網走地域と富良野・美瑛地域は、その地域特性を生かして、ファームイン
を拠点とする滞在型・体験型のグリーン・ツーリズムを展開しています。
他方、道央・道南圏の稲作地帯は、農場を交流拠点とするグリーン・ツーリズムの展開が見
られます。道が 1997 年度から開始した「ふれあいファーム」制度は、農場を交流拠点とする
グリーン・ツーリズムの展開形態の一つと見ることができます。2002 年現在、12 のエリアに
区分されている「ふれあいファーム」の過半が、道央・道南圏の稲作地帯に集中しています。
これらの地域、とりわけ空知管内に特徴的なことは、農家レストランと農産物の直売および
農業体験などが多様な形で展開されているとともに、それぞれが地域経営型の都市農村交流施
設を持っていることです。
この地帯の多くは、北海道の大都市、札幌市から日帰りの距離にあり、その点では、札幌圏
をにらんだファームレストランの展開が好都合であるとともに、地域経営型・農業体験型のグ
リーン・ツーリズムを展開する条件に恵まれていると見ることができます。
(2)グリーン・ツーリズムの展開事例∼体験的報告
①滞在型グリーン・ツーリズムの拠点としてのファームイン
年間 200 万人の観光客が訪れる観光地・富良野では、グリーン・ツーリズムが、ファームイン
を拠点に展開されています。ファームインは十勝と同様に、北海道有数の観光地に立地する優位
性を背景に、農業・農村への理解と共感を直接の交流によって広める拠点となっています。
富良野におけるグリーン・ツーリズムの展開の特徴は「富良野ファームイン研究会」の活動
に示され、その特徴の第一は、ネットワークの重視です。
富良野ファームイン研究会は、1995(平成 7)年に「バーバリアン牧場」「ファームイン池
田」
「星人の宿ペンション和田」の 3 軒で設立され、1998(平成 10)年に「コテージゆうゆう」
が加入し、富良野市内で 4 軒。1999(平成 11)年には、中富良野町の「ファームイン富夢」
「ペンション&レストラン自然舎」が加わり 6 軒構成となり、「会員の提携、情報交換、開業
(パネルディスカッション)
− 22 −
支援、農業体験等の事業」を行っています。また、1999(平成 11)年には、美瑛・富良野農村
ホリデーネット(上川南部地域の美瑛 6、上富良野 1、中富良野 8、富良野 9、南富良野 2、占
冠 3 に住む会員 29 人)を結成しました。
2002(平成 14)年には、美瑛・富良野・新得町のファームインのネットワークを構築し、
320 名規模の修学旅行生の農業体験と宿泊を受け入れるまでになっています。
修学旅行生の農業体験と宿泊の受け入れのシステムづくりは富良野で先行し、1999(平成 11)
年に富良野ファームイン研究会で修学旅行生を受け入れ、2001(平成 13)年には、美瑛・富良
野農村ホリデーネットで修学旅行生を 200 名規模で受け入れ、2002(平成 14)年には、美瑛・
富良野・新得町のネットワークで修学旅行生を 300 名規模で受け入れています。
もう一つの特徴は、個性的なファームインという点です。富良野には「向こうからお金と情
報を持ってきてくれる」都市住民がたくさんいます。このような人々との交流が成り立つ
ファームインはそれぞれに個性的です。それぞれのファームインが「富良野ファームイン研究
会のメンバーとはライバル同士であり、その中でオンリーワンであり続けること」に努めてい
ます。
例えば、牧場民宿「ファーム・イン・バーバリアン牧場」は、酪農業から民宿業に転換した
所で、オーナーの佐藤剛一さんは次のように言います。
「1995(平成 7)年 2 月に旅館業の許可を取った。翌年 10 月には酪農をやめ、30 頭の牛を
500 万円、牛乳の枠代を 500 万円で売った。ファームインは金がかかり、1000 万円の投資をし
た。1996(平成 8)年に「るるぶ」で宣伝し、客が増えた。都市住民の潜在的ニーズに着目し
ていたので、いけると思っていた。現在、法人経営でやっているが、年間 1600 人の客で粗収
入は 1000 万円になる。ロマンがなければ仕事はできない。ロマンだけでは飯が食えない。現
在、搾乳牛 1 頭、育成牛 2 頭、他の牛 3 頭の計 6 頭を飼っているが、民宿経営が主で、牛飼い
は従である。富良野スタイルのファームインは、富良野農業の基幹作物がタマネギで、補完作
物がメロンだとすると、基幹作物としての農業に対して、補完作物の役割となる。補完作物と
してのファームインは引退農家の役割である」
「農村ホリデー ペンション&レストラン自然舎」の岩浪岳士さんは、新規就農をした両親
と協力しながら、ファームインとファームレストランを 5 年前に始めた人で、強気な発言が印
象的です。
「地元に戻ってきて、母と父が農地を 5 町買って、その 1 町を借りて産直を始めた。
産直のお客を泊めるためにペンションを始め、日帰りの人のためにレストランを始めた。この
商売(商売:農家・商人)の魅力はお客と話ができ、自分で決めた値段で売れることだ。農産
物の値段は 1 グラム 1 円が基本原則で、100 グラム 100 円の単位ですべて売っている。客層は
地元ではない。すべて地元外から来る。一番の宣伝は口コミで、それ以外は当てにならない」
「ファームイン池田」は、生産と生活が一体となった農業への理解を広め、人と交流できる
ファームインを目指している。農家民宿は経営の柱ではなく、産直の固定客をつかむ役割をし
ているように思われます。
②地域経営型グリーン・ツーリズムの拠点としてのファームレストラン
グリーン・ツーリズムは、都市農村交流の一つの形態です。その取り組みの中で、食と農を
結ぶための仕組みの一つとしてファームレストランがあります。
「スローフード」と「地産地消」をキーワードに、食と農を多様に結びつける地域づくり活動
− 23 −
(パネルディスカッション)
が大切になっていますが、そのためのいろいろな仕組みとネットワークをどう作っていくのか
が一つの焦点となっています。その意味でも、空知管内のファームレストランの役割が注目さ
れます。私が地域の人と学生たちと一緒に訪ねたことがある 3 つのファームレストランでの話
を紹介したいと思います。
「ファームレストラン ハーベスト」(仲野満さんの話)
仲野満さんは、鹿追町の「大草原の小さな家」などをモデルにしてレストランを開業しました
が、
「ファームレストラン」という名称を付けた道内第 1 号であるという自負を持っています。
現在、年間 6 万 5 千人のお客さんがあり、客単価 1 人当たり平均千円で、スタッフは 17 ∼
18 人でやっています。口コミとマスコミの宣伝で広がっているので、インターネットなどを通
じた宣伝は考えていないと言います。
開業のきっかけは、まずログハウスを建てたかったということにあるのですが、冬の農閑期
を使って 4 年がかりでログハウスを完成させました。すでに 15ha の畑作を経営していたので、
妻の千秋さんがレストランを経営し、満さんは主に冬に関わり、無理をしないでやっていくの
が継続の秘訣だと言います。
一時は、コスト削減方式でレストラン経営をしようとしましたが、良い食材と良い環境で良
いものを提供するという「大盤振舞式経営」を今は基本にしていると言います。コストをかけ
ないとお客さんに満足してもらえないし、都会にはない環境と食をお客さんの要望に応じて提
供することが大切です。満さんによると、素人だからできることがあって、手間をかけること
で勝負することが大事だと言います。
レストラン経営と農業経営は確かに両立が難しいけれども、現在はレストランを最優先にし
ており、自己都合ではないやり方が大切だと言います。土や作物は声をあげないが、お客さん
は声をあげ、文句を言う。畑作経営も最大時 15ha であったのが 2ha に縮小し、産直とレスト
ラン食材のみに限定しています。
今後は、リンゴジュースの加工原料を生産する農場として、今後ますます活用していきたい
と考えています。というのも、リンゴジュースの原料として出荷すると、1 kg 500 円のリン
ゴが、加工を委託してレストランで売ると 2 万円になって、高付加価値化を実現することがで
きるからです。
ハーベストは、景色に恵まれていると言われるが、景色ではなく景観が良いのであり、景観
を良くする努力が大切で、それは、どこの農村地帯でもできるはずであると言います。また、
あらゆる物を可能な限り地元から買うことが地産地消の大切なポイントで、食材のみならず、
設備・備品すべてにわたって、地元から買うことにしています。
また、近くにクレスガーデンというレストランが開業したときには、はじめは競合すると
思ったが、差別化を図るという意味でハーベストの独自性を出すことができ、ライバルの出現
はよい刺激になっていると言います。
クレスガーデン(干場一正さんのお話)
仲野農園の仲野勇二さんの紹介で長沼町に新規就農をした。干場さんは、1999 年 62 歳でラ
ルズを退職し、5ha の農地を取得し、2 棟のハウスなどでハーブの栽培と景観作物としての花
の栽培などを手がけ、将来は、2 つのため池を活用したビオトープ風のガーデンづくりを目指
しています。
レストランは 2000 年に開業し、ハーブガーデンをはじめとして農園全体が 1 つの景観とし
(パネルディスカッション)
− 24 −
て活用されています。夜時間も含めた平均の客単価は 1500 円で、
長沼町のランチの平均は 1200
円、ハーベストは 1000 円、クレスは 1300 円という形で住み分けをしていると考えています。
ファームレストランの形態としては、ハーベストのように奥さんが料理の責任者として家族
経営で行くのか、クレスのようにプロの料理人を雇って経営するのかの 2 つのやり方があり、そ
れは、それぞれの事情に応じて選択すべきものだと考えています。いずれにしても、北海道の
ファームレストランは、夏場にお客が集中し、いわば夏場の稼ぎで冬場を埋めているのが現状
です。
レストランの食材は、地元調達を徹底しており、自家栽培で調達できない食材は、主に長沼
町の直売所を利用しています。長沼町には 4 つの直売所があり、お互いに切磋琢磨しており、
直売所で売る農産物は、農家が自慢する最高の品質のものばかりで、長沼町の直売所の人気の
秘密はその品質の良さにあると言えます。
中村農園(中村豊さんのお話)
中村豊さんには直売所で話を伺うことができた。アメリカの農業視察の際にカリフォルニア
州のファームレストランを見て、農業を理解してもらうために来てもらう場を自分で作る必要
があると感じてきたと言います。
そこで、直売所を設けて、交流の場としてカフェなどを考えていたが、息子さんが料理の研
修をしてくれたので、レストランで行くことにしました。そのため、長沼町の仲野満さん、由
仁町の大塚さんのところまで話を聞きに行き、経営の見通しを持って開業することにしたと言
います。
しかし、レストラン開業は難事業であったと言います。資金繰りに道庁まで交渉に行って半
年もかかり、予定より遅れて 2001 年開業となったのです。今回の増築に関する資金繰りは 1
カ月で解決し、ファームレストランに対する対応が変わったと実感していると言います。
直売所は無人のため、すべてセルフサービスで、お客さんは直売所に掲示されている単価を見
て、自ら収穫し、代金を代金箱に入れていきます。年間 4 千人から 5 千人が直売所の客数です
が、1 人当たりの単価を 500 円と計算してはじき出した数字なので、正確な数はつかめていな
いということです。
レストランは年間 1 万人で、スタッフは、剛さん夫婦 2 人とパート 2 人で、将来はパートを
3 人にして 3 万人の客が目標。モットーは「こだわるな」で、有機栽培や減農薬の農産物提供
のこだわりが以前はあったが、現在は、自然体で継続することが一番と考えています。宣伝に
は金をかけず、テレビに 5 回出演し、新聞などの報道もあって、今年は、年間 1 万 5 千人程度
に増えると見込んでいると言います。
今後は、地元農産物を使ったメニューを増やしていくとともに、田舎らしいのんびりさの長
所をもっと生かせるようにしたいと考えています。というのも、札幌・苫小牧からのお客さん
が多く、車が来ない静かなところだから良いという評判なので、360 度見渡す限り遮るものが
ないという景観を大事にしたいからです。
③ふれあい農業体験としてのグリーン・ツーリズムの展開∼「そらちDEい∼ね」
ふれあい農業体験の事例は、枚挙にいとまがないほどですが「そらちDEい∼ね」の展開方向
が注目されます。この方向性は、とりわけ学校教育と連携して展開されると考えられます。修
学旅行生を受け入れる「ファームステイ」が今後さらに増大することが予想されます。農業体
− 25 −
(パネルディスカッション)
験とファームステイを内容とする修学旅行が、2003 年度から持続的に増加していき、これが地
域経営型・農業体験型のグリーン・ツーリズムの今後の重要な柱になると思われます。
修学旅行生のファームステイを受け入れる経験は、生徒が農家のありのままの生活を体験する
ことが一番大切なことであり、成功の継続の秘訣が、高校生と農家の人との対話を大切にする
ことである、ということを示すものと考えられます。農村の生活を通じて、地域の農業・農村
への共感と体験的理解がはぐくまれていく絶好の機会になるわけです。
3.「グリーン・ツーリズムでまちおこし」について
(1)農業に元気がない時代に、元気になるキッカケがグリーン・ツーリズム:地域の農業と
農村社会にあるさまざまな資源を人と人との交流に活用することがグリーン・ツーリズム
の取り組みになります。
(2)農業と無縁の食生活を見直し、食と命を大切にするキッカケがグリーン・ツーリズム:
農業の営みを何らかの形で体験することによって、食と命の結びつきへの体験的理解がは
ぐくまれ、食と命を大切にするキッカケになります。それは、食と農の架け橋を農業生産
の現場から創り出すことになります。
(3)グリーン・ツーリズムは「人と人との交流」ということ:このような食と農の架け橋を
人と人の対話・交流として実現することが、グリーン・ツーリズムの主要な役割です。
(4)グリーン・ツーリズムで元気な「まちおこし」
: 交流し合う人々が元気になることがグ
リーン・ツーリズムのねらいであり、人が元気になるところでこそ「まちおこし」が活発
になります。
◆主な活動内容
平成 14 年 3 月、将来を担う子供たちに農業を理解してもらいたいという思いから、農業体
験受入組織「元気村・夢の農村塾」を 19 戸で立ち上げ、全国の高校生などの受入を開始しまし
た。受入は体験に見合う料金を受け取り、1 回 3 ∼ 4 人 / 戸の受入で、体験時の保険など安全
面への配慮もしています。
平成 14 年は 7 回 292 人、平成 15 年は 13 回 556 人の受入を実施しました。全国から体験に
訪れる子供たちは、土に触れ、食物や農村の自然を通し、食べることの大切さを学んでいます。
平成 16 年は 35 戸で、16 回約 1,000 人の受入を予定しています。農村塾では交流の種を全国に
播いています。
◆目的及び理念
1.「元気村・夢の農村塾」設立目的
農村では、農家戸数の減少や就業者の高齢化、合わせて米価の下落や農産物の価格低迷が続
き、地域全体が低迷している状況です。
(パネルディスカッション)
− 26 −
このような中で「ふれあいファ−ム」登録農家を中心に農場看板を上げ、
「生産物に責任を
持ち、消費者と積極的に交流する」ことを目的に、農業者 19 戸により平成 14 年 3 月組織を設
立し、6 月から受入を開始しました。
2.「元気村・夢の農村塾」活動理念
・農業体験及び交流を通し、農業への理解を得る
・将来を担う子供たちに「食農教育の場」を提供することで、農業が命をはぐくむ産業とし
て「命の教育・心の教育」であることを伝える
・体験はボランティアではなく経営の一部として位置付けし、体験料金を設定する
・受入は 1 戸の農家が対応できる範囲で 1 回 3 ∼ 4 人とする
※ふれあいファ−ムは、北海道農村振興条例に基づき、平成 9 年度より道民が気楽に訪れ、農
業を理解する農場を「ふれあいファ−ム」として登録し、体験や見学の場を提供しています。
◆実践活動
1.高校生を中心とした子供たちの農業体験受入と交流
平成 14 年度は、
地元クラ−ク記念国際高等学校の受入を中心に実施しました。体験ほ場で、
は
だしでの田植えと鎌で稲刈り体験を実施。生育期間を通して、高校生はほ場を観察し、稲に米
が実る過程と籾になるまでを実体験しました。体験した高校生たちは「食べ物を作る大変さ」
と「植物が成長する素晴らしさ」を味わっていました。子供たちは、福岡や大阪など全国から
修学旅行、総合学習の場として農場を訪れ「豊かな自然環境」で「農作業」を体験し、農家も
子供たちから改めて「自然の中で作物を育てる農業の良さ」を再認識し、農業人としての誇り
を深めています。
体験内容は、受入農家個々がその日のメニュ−を組み立て、
「野菜の手入れ」
「採花」など各
農場で 3 ∼ 4 人ずつ体験や交流をし、「トマトってこんなに甘いの?」と農村の旬を味わい、
農村では当たり前の風景に感動していました。
体験学校からの口コミなどで話題が広がり、平成 16 年の交流回数は 16 回、およそ 1,000 人
以上の子供たちが、北空知の水稲地帯を訪れるようになっています。
2.住んで良し・訪れて良し、魅力ある地域づくりへの展開
農村地域全体が魅力あふれる地域になることは、住んでいる農業者が地域に対し誇りや感動
を持つことです。収穫した果実で豊かな生活をし、交流活動でも小果樹を活用することを目的
に、水稲地帯で生育するブル−ベリ−、ハスカップ、プル−ン、プラムなどの小果樹を植栽し
ました。
都市住民とのより一層の交流活動を展開するため、快適な環境づくり、魅力ある地域づくり
のために取り組んでいます。
◆地域の人々の参加、外部とのつながり
1.体験受入が北空知一円の農家へ広がり
設立当初、会のネ−ミングを決める時、北空知全体で受け入れることを想定し、北空知全体
の農産物のブランド名「元気村」を使い「元気村・夢の農村塾」としました。
3 年目を迎える平成 16 年、会員は北空知一円に広がりました ( 深川市、妹背牛町、秩父別町、
北竜町 )。
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(パネルディスカッション)
2.体験交流活動が地域で都市交流活動としての位置付けに
体験交流活動が都市交流活動の拠点組織として位置付けされ、深川市、JA など、都市農村
交流センタ−「アグリ工房まあぶ」の関係機関も積極的に支援をしています。
3.「元気村・夢の農村塾」を核として「そらち de い∼ね」受入ネットワ−ク化へ
の展開
修学旅行受入の場合、1 回の受入が 200 ∼ 300 人前後と多く、元気村・夢の農村塾だけでは
対応できない状態になり、空知管内のリ−ダ−が中心となって、空知全体で体験受入をネット
ワ−ク化し、平成 16 年 3 月「そらち de い∼ね」を設立しました。
平成 16 年は 6 回、関西方面などの修学旅行生を中心に受け入れる予定です。「元気村・夢の
農村塾」では、安全対策や受入ノウハウを提案し、積極的に 6 回の受入を準備しています。
◆成果
1.悩みなどを持っている子供たちが体験交流活動を通して、
「人生の目標を見つけた」という
礼状が農業者に届き、改めて農業が持っている教育力を実感し、農業者自身が農業に誇りと、
交流に対する意欲をみせています。
2.体験を通し全国から参加する子供たちや親との交流活動が継続されるようになってきてい
ます。
3.作物や土にじかに触れることにより、子供たちは食べることと農業がつながっていること
を体験を通し学び、将来を担う子供たちに農業の大切さを伝えています。
4.交流活動を経営の一部として位置付けし、農業者も体験する子供たちとの交流により元気
をもらっています。
5.組織で取り組んでいるため、体験者に満足いく対応が提供できるようになり、口コミで体
験校が増えています。
6.交流活動を通して地域を元気にするため、会員同士の情報交換も盛んに行われるようにな
りました。
7.北空知に全国から体験に訪れる子供たちが増えることにより、地域全体に交流活動の輪が
一層広がりをみせ、地域活性化の一助になっています。
ここでの都市とは、多様な機能が集積した空間形態と定義して以下の議論を進めていく。
1.都市農業と農業都市
近年、都市近郊における農地では、様々な変化が起きている。一言で言えば、農業機能の多
様化と都市農業の普及である。従来の農業機能をまとめると、最初にあげられるのは新鮮で良
質な農畜産物の供給である。これは農業本来の目的であるし、旬の食材の供給といった視点で
は、今後も重要であるといえる。次に自然環境や緑地空間の保全に関わる機能である。これは、
(パネルディスカッション)
− 28 −
農業における水源涵養や農地による緑地環境確保の効果である。また土や緑に親しめる場を提
供することによって、自然への親しみや文化資源の提供も可能となる。さらに、災害に対する
農地による減災効果、例えば水害を軽減する遊水地としての役割などは防災に寄与できる農地
の役割である。
一方、現在の問題として考慮しなければならないものとして、農業者の高齢化と後継者不足
による農業そのものの維持がある。また農産物の生産から流通間での構造の高度化に関する問
題も重要な検討課題である。さらに、近年は、それらの問題解決における一つの方法としても
考えられるが、市民と農業の多面的な結びつきによる都市農業の普及という視点も考えていく
必要がある。
このような農業機能の見直しを考えると、新しい農業形態とはどういうものか、またそれを
維持するための社会的な位置づけをどう考えるかということに焦点を当てる必要がある。前述
したように、農業は、その生産に関わる機能と共に、環境保全や、防災機能の役割を有する。
したがって、それらの機能を推し進めていくための新しい発想が必要である。たとえば、新し
い生産と流通のための農業のビジネス化を促進するハイテク型農業あるいは産消連携型農業、
環境保全のための循環型農業システムの構築、農業の社会システム化を実現する環境保全型農
業などが今後考えられる農業のイメージである。
そのような新しい視点を実現するための都市としての位置づけをここでは考えてみる。
都市とは多様な機能が集積した空間形態という定義をすでに行ったが、現状の農業という産
業を持つ都市を考えてみることがここでは重要である。すなわち都市と農業の共存が可能かど
うかを考えてみることで、農業都市の構築可能性が把握できるといえる。都市機能からみた農
業機能の評価ということになると、以下のような項目があげられるであろう。
1)持続的成長機能:ゼロエミッション型・クリーンエネルギー活用型
2)情報機能:ハイテク型(バイオテクノロジー・高度情報通信技術)
3)高度経済機能:生産から販売への一体型
4)コミュニケーション機能:まちづくりと市民参加型システム
5)グローバル機能:国際交流と貢献型農業システム
6)福祉機能:教育・福祉・医療の高度化システムを持ったコミュニティづくり
これらの項目は、新しい形での都市形成に重要な役割を持つものであり、産業としての農業
が上記の役割を持ち、それらを持ち合わせた都市が形成されていくことによって農業都市が成
立するということができる。
次に、国土交通省の若手によって提案された将来の国土像をとりまとめたものから、関連す
る情報について 2,3 紹介する。
最初の図は、美しく元気なふるさとの創造という目標の中での農業都市創造の目的部分であ
る。ここでは農と関わる生活を通じ人間らしさを取り戻すことが基本理念として提案され、都
市と農村の関わり方、農村の役割とその空間の保全を考えなければならないとしている。その
結果、農村が活気づく、農業が元気になる、資源循環型の社会が実現されるという成果を生む
ことを期待している。
次の図は、循環型まちづくりという目標の部分である。持続可能な都市生活を目指すために
は、生活循環システム、森林の維持・活用、自然エネルギーの活用といった部分システムが必
要であり、農業が果たす役割の大きさ、都市との共生・一体化の重視が必要であることが期待
− 29 −
(パネルディスカッション)
されている。
さらに次の図は、3 世代先の
新・田舎暮らしというタイトル
の目標の部分である。ここでは
都市と農村の敷居をなくし、バ
リアフリー化を目指している。
これらの図はいずれも、上記で
まとめた農業都市と軌を一に
した考え方ともいえるであろ
う。
(パネルディスカッション)
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2.都市計画と都市田園計画法
日本と英国の地域づくり制度の違いを略述する。まず大きな違いは、都市と農村の計画にお
いて統一された法律や体系的開発方法を持ち合わせているか否かである。英国では、長年都市
田園計画法にもとづいて、都市、農村の共通の計画システムを用いている。日本の場合は、都
市と農村の整備に伴う法律等が別々に存在しており、一体化したまちづくりが難しい面がある。
英国では、もともと農村と都市双方での居住システムを有している場合が多く、例えば、ロン
ドンという都市に、地方の富裕な農民が住宅を持つというケースがポピュラーであった。この
ような面でも、都市と農村に対する見方の違いが大きい。
英国でみられる農村生活の楽しみ方も独特のものがあり、農村の文化、景観への配慮として
の風景庭園の建設、さらにパブリックフットパスや、グリーン・ツーリズム、B&Bなど古く
から農村でのオープン性がその伝統として維持されている。
また田園都市(ガーデンシティ)の思想もいまだに都市の計画に反映されており、それに基
づいた新しい都市の創出もある。しかしながら、田園都市は、緑の中に都市を計画するもので
あり、産業として農業を強く意識したものではない。一方、都市田園計画法における農村計画
は、農村における地域計画を目指したものであり、農業都市づくりに大きな寄与しているとい
うことができる。
3.どうしたら農業都市をつくれるか
このテーマに関してまず第 1 に、地域計画の重要性があげられる。農業都市になる必要条件
としては多様な機能をできるだけ持ち合わせることであり、地域計画を総合的に作成できるか
ということであると思う。地域環境をどう創造するかという課題を解決するためには、そのよ
うな総合計画をいかに構築するか、具体的には、農業都市という箱庭をどのようにつくってい
くかのプロセスが必要である。紹介した図は前述した国土交通省の計画における国土交通省で
議論された国土将来像のイメージの一例である。
農業による都市システム管理の例としては、秋田県大潟村にみられる農業経営があげられる。
ここでは、企業経営者の育成がおこなわれ、冷温倉庫・精米・炊飯工場などの一体化したプラ
ントにより、1.5 次産業が実践されている。そして、流通面でも力を注ぎ、全国での消費者会
員制度を作り、個人会員 5 万人、法人 7,200 社と契約している。無洗米はここから生まれ、
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(パネルディスカッション)
さらに発芽玄米の開発なども行われ、年商 60 億円を稼いでいる。
ライバルは同業者ではなく、食
品医療品会社として、経済機能の充実を目指している。農業としてしての生き方の例としては
興味あるまちである。
さらに、もし農業都市をできるだけ都市計画として計画しようとする場合、例えば、都市計
画法と農業振興法との一体化、国土交通省と農林水産省のバリアがない新しい形の農業都市特
区の創出の提案をしたい。もしこのようなまちづくりが可能であれば、高度情報化を導入した
IT農業都市の実現が可能であると考える。たとえば、以下に示す図は、十勝地区における農
村型地域情報ネットワーク計画を検討した結果である。これによると、自治体、ケーブルテレ
ビ会社、農業主体のサーバーモールサイト運営会社のそれぞれのグループが協力することに
よって、責任を分割した、講堂情報システムの構築が可能であることが示された。もし農業都
市特区を実現する場合には、このように国土交通省等で配備した地域情報ネットワークを活用
させていただくことによって、予想できないような創発的なまちづくりの可能性を考えること
ができる。
● 農業との関わり
農林水産省「食と農の応援団」メンバー、
「スローフード & フェァトレード」研究会代表を
つとめ、フードジャーナリストとしても活動しています。
今日は、スライドを提示しながら話を進めていきます。
● グリーンツーリズムへの関心
北海道の農村の素晴らしさの一つに、都市住民にとっての癒しの場・教育の場としての役割
があげられます。
農村でゆったり過ごす「グリーン・ツーリズム」に関心を持ち、これ迄道内やヨーロッパの
ファームインを沢山訪ね歩きました。NPO「北海道ツーリズム大学」の理事や「そらち DE い
∼ね」アドバイザーも歴任しています。その中から鹿追・新得の事例をご紹介します。
最初は、鹿追町のファームイン、中野一成さんのログハウスです。
(パネルディスカッション)
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次は、新得町で放牧型酪農の傍ら「つっちゃんと優子の牧場の部屋」を経営している湯浅優
子さんのファームインです。素朴なサイン看板、建物の外観、室内(宿泊室)の様子です。
湯浅さんは「北海道スローフードフレンズ」という会をたちあげ、牧場は「酪農教育ファー
ム」の認証を受けています。受け入れる宿泊客は僅か一組のみですが、訪れた方は、農村のの
どかさと食べ物を生産している現場を見て感動します。
ともに食事をしながら、その食べ物がどのようにして都会に運ばれるのかなどを語り合うこ
とによって、農業への理解が深まります。リピーターが多く、数年先までの予約が入っている
そうです。
● 都市と農村の共生・融合
次に農村の多面的機能の利活用の事例をご紹介します。
皆さんもよくご存知の、六花亭が経営している中札内美術村です。目立つサインや看板はなく、
柏林の中に美術館があります。古い石蔵を移築するなど自然に溶け込んだ美しい景観が見事です。
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(パネルディスカッション)
真狩村にあるマッカリーナの外観と朝食の写真。有名な中道シェフのレストランで、食事の
おいしさはもちろんですが、農村地帯に立つ雰囲気の良さも人気を呼んでいます。
帯広の市街地にある「北の屋台」です。冬でもにぎわい、収穫期には夕市も開かれます。都
市と農村の共生にこだわり、地元で取れる食材を使ったメニューを提供しています。次の写真
は地元で作っている 4 色のトマトのサラダです。そこでしか味わえない「食」を提供すること
で観光客にも人気があります。
幕別町にある「スノーフィールドカフェ」です。この施設は冬の間だけ十勝の畑の中に出現
します。外観は普通のビニールハウスですが、内部はご覧の通り本格的なレストランです。切
り取られたガラス窓越しに十勝の雄大な雪景色を眺めながら本格的な料理を楽しむことがで
きます。
● スローフード運動の精神
スローフード運動はイタリアで始まり、作家の島村菜津さんが 2000 年に書かれた「スロー
フードな人生!」で日本中に広まりました。北海道では 2003 年 1 月に「北海道スローフード
協会」が設立され、イタリアスローフード協会の理事であるジャコモ・モヨーリ氏の講演が行
われました。最後の写真はその時のイベントで出された料理です。
(パネルディスカッション)
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スローフード運動の活動は多彩ですが「質のよい物を提供してくれる小さな生産者を大切に
しましょう」、
「子供たちを含めた味の教育(食育)・五感の教育を大切にしましょう」、「放っ
ておけば無くなりそうな地域の味を守りましょう」が三本柱です。
地域を愛する運動→地域づくり→地域再生・地域経営
その運動の主役は地域に住む住民であり消費者です。個人個人が自分と農業、地域、環境と
の関係を見直し、地域を愛する心を育てます。見捨てられそうになっている食材を見直し、地
域の文化を見直し、本当に美味しい地元の旬の食材を使った食事を楽しむことで雇用を創出し
地域を活性化させる運動でもあります。
消費者である市民が直接かかわる食の再生、農の復権、地域づくりの継続的な実践活動です。
女性にも積極的に参加をしていただき「愛食運動」や、「食の地元学」を重ねていただければ
と思います。
この場に金融関係の方が来ておられないのは本当に残念ですが、農家民宿のような小規模な
開発への投資を支援していただきたい。また、赤や黄色のけばけばしいのぼり旗の宣伝が目立
つ施設ではなく、北海道らしい場の空間デザインを重視した質の高い景観づくりを行っていく
ことが重要だと考えます。
最後に、ファーマーズマーケットの事例視察などの際、農協や市町村の皆さんの反応で気に
なることなのですが、最初からやれない理由を探すのではなく、ぜひ、やる気をもって視察に
行っていただきたいと思います。
− 35 −
(パネルディスカッション)
Ⅰ 「テーマ解説」
パネルディスカッションに先立ち、改めて太田原先生の基調講演等を踏まえて、コーディ
ネーターとしての立場から「テーマ解説」を行った。以下はその要約である。
Ⅰ― 1 <テーマの基本要因>
① 北海道の地域自律のためのグランドデザインに産業としての農業は不可欠であると考え
ているが、後継者不足、耕作放棄地の無秩序な増大等の課題が北海道においても顕在化して
いる。
② 今日的な日本の課題の一つとして、カロリーベースで 40%を割り込んでいる食料自給率問
題がある。
③ 現在 WTO 農業交渉と「食料・農業・農村基本法」の中間論点整理の段階に直面しており、
「農業」問題は大きく注目されている。
この背景の下に、例えば「NHK 土曜フォーラム・食料自給率を考える」
、「農政改革と農地、
農業用水等の資源の行方(北海道開発局主催)」、「オーライ!ニッポン北海道シンポジウム
<グリーンツーリズム>(オーライ!ニッポン会議)
」等の農業をめぐるシンポジウム等が
頻繁に開催されている。
④ 上記潮流の中で、今回「都市問題会議」を政策の軸に「農業」と「IT」がある深川市で開
催し、議論の展開が出来ることは、非常にタイムリーであると理解している。
⑤ ただし、昨年の函館市開催の都市問題会議の主題が「都市観光」であり、観光問題ではな
くあくまでも都市問題として捉え考える場であったように、今回も「農業都市」というテー
マのもとの議論であり、既に数多く実施されている農業関連のパネルディスカッションとは
基本スタンスの違うことを明確にしておきたい。
Ⅰ― 2 <都市・地域問題としての命題>
このようにあくまでも都市サイドに立ったシンポジウムとして位置づけられるものであり、
この中で一定の成果を得るためのパネルディスカッションとしたいので、大きく議論の軸がぶ
れないようにしたい。
従って、<都市・地域問題としての命題>として都市側が遡及する基本テーマと構成要素に
ついて、私の評価軸に沿って提示させていただき、パネリストの皆さんにはこれを以後の議論
展開の軸にしていただきたい。
A 基本テーマ:北海道の地方都市の活性化・自立(自律)性の構築を目指すプログラムづくり
B 構成要素
1 タウンブランドの構築
都市・地域が活性化し、自律性を高めていくためには、都市間競争力のある強い個性を創り
出していく必要がある。
(パネルディスカッション)
− 36 −
実現のための方策の一つとして、タウンブランドの構築が有効かつ不可欠である。
特に、タウンブランドに求められるものは構成力と発信力である。
例えば
① ドイツ・フライブルグの「環境首都」としての位置づけと環境政策によるまちづくりの推進
② フランス・ストラスブールの環境政策推進のシンボルとしての LRT の運行
③ 北イタリアの小さな地方都市が発信する伝統産業をベースにした新たな「イタリアン・ビ
ジネスモデル」等については、是非注目し参考にしてもらいたい。
北海道においても、私自身が関った一例として稚内市の「みなとまちづくり」がある。
基本テーマは港湾地区と市街地の融合であり、都市の活性化・自律化のために「港湾(みな
と)
」の持つ国際性や交流性といった機能を都市地域(市街地)に導入・貫入させるプランに
ついて、既存法の枠組みを超える個別法の運用で具体化を図ろうとする試みである。
2 サスティナビリティの追求
基軸は①「サスティナブル・デベロップメント」
②「サスティナブル・シティ」の枠組み
に拠る。 ①「サスティナブル・デベロップメント」= 1992 年国連環境開発会議−環境と開発
に関するリオ・デジャネイロ宣言
②「サスティナブル・シティ」= 1996 年 EU 委員会都市環境グループ・EU レポート
さらに、日本における論理的サポートとして、以下の著書の中に当該の理論展開がある。
・レスター ブラウン「エコ・エコノミー」
・宇沢弘文 「社会的共通資本としての都市」
・岡部明子「サスティナブル・シティー都市からシティ・リージョンへ」
・森地茂 ほか「21 世紀型としの条件―都市と農村の交流」
テーマのキーワードを読み解くのに有効であるので、参考にして欲しい。
この命題の具体化のために私なりに整理したものが、図− 1「サスティナブル・デベロップ
メントの構造」である。
① 内発的発展
※ これは太田原先生の基調講演の中でも指摘があった要因であり、共通の認識であったこ
とに意を強くした部分である。
② 社会的共通資本=制度資本・自然資本・インフラ資本
③ 環境の国家・社会契約
④ コンパクト・シティ
⑤ 地域コミュニティの再生(サスティナブル・コミュニティ)等である。
(各要因の概略説明―省略)
− 37 −
(パネルディスカッション)
図− 1
3 市町村合併
要点は、私見であるが、
① 道州制を前提もしくはパイロット的デザインとする新たな地域再編としてとらえるべき
である。
② 合併か広域連携か、地域あるいは機能により明確な色分けが不可欠と考える。
4 「中心市街地の活性化」
あえて避けてきた命題等への遡及が必須である。
① 「土地・建物の所有と利用の分離」
② 「市民の成熟化と市民ファンド」
③ 「TIF の導入」
(TIF =タックス・インクリーメント・ファイナンシング)
(各要因の概略説明―省略)
Ⅰ― 3 <農業問題としての命題>
一方において、都市サイドからの理論展開の大前提として、「農業」が少なくとも従前のよ
うに強くなること、あるいは求められる役割の中で完全に機能してもらう必要がある。
その条件・要因が満たされてはじめて、両者が同一化し、共通の仕組み・仕掛けを共有する
方策を議論することが可能となる。
(パネルディスカッション)
− 38 −
今回の議論の中では、先ず最初にこの「農業」について、それぞれの分野の人、特に今日の
シンポジウムに参加した多くの都市サイドに関係する人が、正確な知識や現在の潮流を的確に
理解することから始まると思う。
そこで、先ず「農業」をとりまく最近の議論・キーワードの中で私なりに注目する点につい
て 4 点提示したい。
これについてもパネリストの皆さんの今日の議論展開の軸に据えていただきたい。
① 「農業」については「農」という枠組み(概念)=総合的価値で展開を図る必要がある。
「農」:Ⅰ農業 Ⅱ農村 Ⅲ農地 Ⅳ農家 Ⅴ農民
(概略説明―省略)
② 農業の多面的機能
農業地域の代替評価額=約 7 兆円
(森林地域の代替評価額=約 39 兆円)
③ 「農業地域はこの地域の人間(農民)だけでは守れない」
(農業関連シンポジュームでの発言)
④ 「最近の農業関連のシンポジウム等には他分野の人の参加が顕在化している(生源寺)
」
(表− 1 参照)
表− 1 農業・農村の多面的機能の計量評価
機 能
評
価
の
概
要
評価額(億円/年)
全 国
中山間地域
洪水防止機能
水田及び畑の大雨時における貯水能力(水田 52 億m 3、畑
8 億m 3)を、治水ダムの減価償却及び年間維持費により評
価した額
28,789
11,496
(40%)
水質源かん養機能
水田のかんがい用水を河川に安定的に還元して再利用に寄与
する能力(638 m 3/ 秒)及び水田・畑の地下水かん養量(37
億m 3)をそれぞれ利水ダムの減価償却費及び水価割安額(地
下水と上水道との利用料の差額)により評価した額
12,887
6,023
(47%)
土壌浸食防止機能
農地の耕作により抑止されている推定土壌浸食量(5,300 万
トン)を、砂防ダムの建設費により評価した額
2,851
1,745
(61%)
土壌崩壊防止機能
水田の耕作により抑止されている土砂崩壊の推定発生件数
(1,700 件)を、平均被害額により評価した額
1,428
839
(59%)
有機性廃棄物処理機能
有機性廃棄物の農地への還元量(都市ゴミ 6 万トン、し尿
86 万 kl、下水汚泥 23 万トン)を、最終処分経費により評価
した額
64
26
(41%)
大気浄化機能
水田及び畑による大気汚染ガスの推定吸収量(SO2 4.9 万ト
ン、NO2 6.9 万トン)を、排煙脱硫・脱硝装置の減価償却
及び年間維持費により評価した額
99
42
(42%)
気候緩和機能
水田による夏期の気温低下能力(平均 1.3℃)を、冷房電気
料金により評価した額
105
20
(19%)
保険休養機能
(文化的機能)
水田による夏期の気温低下能力(平均 1.3℃)を、冷房電気
料金により評価した額
22,565
10,128
(45%)
合 計
68,788
30,319
(44%)
(参考)農業粗生産額(1996 年)
104,676
38,494
(37%)
資料:農林水産省農業総合研究所「農業・農村の公益的機能の評価検討チーム」による試算
(1998 年)
− 39 −
(パネルディスカッション)
Ⅱ 「パネルディスカッションの枠組みと進行」
全体を 3 つのラウンドに分けて議論を進めたい。
第 1 ラウンド
① 今日参画していただいたパネリストは、「農業」ではなく「農」という概念の認識知、も
しくは暗黙知のなかで、それぞれの分野で活動を展開していると捉えている。
先に「農」という概念について私の考え方を述べたが、再度それぞれの立場で「農」とい
う概念についてのコメントをしていただきたい。
② その上で現在の活動実態や活動軸となる考え方について自己紹介的なコメントをいただ
きたい。
③ 以上に対してコーディネーターからパネリストのコメントに対して質問および議論を展
開したい。
第 2 ラウンド
パネリストの活動展開の中にあって、都市(地域)の立場および農業(地域)の立場、それ
ぞれのポジションから、自らの評価される部分および改善すべき部分についてコメントしてい
ただきたい。合わせて相対のポジションのパネリストに対して何かしらの希望があれば出して
いただきたい。
以上に対して、コーディネーターからパネリストのコメントに対して質問および議論を展開
したい。
この中から最近よく言われるようになった「都市と農村の交流」レベルでの評価=課題の分
析を通して、これに拘束されない新たな枠組みが必要になるのではないかという点を視座に議
論を進めていきたい。
第 3 ラウンド
第 1、第 2 ラウンドの議論展開の一つの到達点として、具体的フィールドについて、深川市
もしくは農業を主産業とする都市・地域を想定し、その都市・地域の未来像について出来るだ
け具体的に提言してもらいたい。
(パネリストとの議論・意見交換ー 省略)
Ⅲ 「パネルディスカッションの展開」
パネルディスカッションの第 3 ラウンドでは、具体的フィールドとして深川市もしくは農業
を主産パネルディスカッションの第 3 ラウンドでは、具体的フィールドとして深川市もしくは
農業を主産業とする都市・地域を想定し、未来像についてより具体的に提言することとしてい
たが、パネリスト間での議論を更に深化・展開させることと具体的提言を出しやすいように、
第 3 ラウンドの冒頭において私案としてのテーマに関わるコメントとイメージ図を提示した。
Ⅲ― 1 <具体像の構築>
北海道の地方都市におけるタウンブランドの構築、サスティナビリティの追求等 4 つの命題
(パネルディスカッション)
− 40 −
の具現化のアプローチとして、あくまでも北海道の有する特性を考慮した場合、
「農」の持つ
サスティナビリティを導入する地域構造の構築を指向することに優位性があると判断される。
近年の潮流である「都市と農村の交流」に留まらない枠組み、即ち「都市と農村の対立」の
時代から、2000 年施行の「地方分権一括法」を契機に大きくシフトしつつあるといわれる「都
市と農村の交流」をさらに展開させた『既存のテリトリー内部の更新と高質化が問われる局面
の移行(生源寺)』による、都市と農村の同一軸による融合(フュージョン)を図る地域構造
を構築していくことを目指したい。
Ⅲ― 2 <地域構造構築の実現に向けての段階的戦略>
― A機能論∼B空間論∼C具現化に向けた戦略論
A 機能論
A− 1 都市軸の農村への展開
① 休日を取れる労働の仕組み=企業的人事管理(都市機能)
② 生活機能を犠牲にした職住近接から生活機能集積地区での居住にシフト
=散村形態から集村形態へ=通勤という概念の発生(都市機能)
→道路整備=流通への応用(都市機能)
③冬季間の利活用 例:冬のスポーツ合宿地
通年化の概念の発生(都市機能)
④都市の余剰人的資源の活用=労働力調整(都市機能)
⑤生産品の販売 マーケティング・情報化・IT 活用(都市機能)
⑥土地利用計画=都市地域の特性であるゾーニング制度の導入
A-2 農村軸の都市への展開
① 入会権、コモンズ、「惣」・「結い」等の農村系コミュニティシステムを都市地域の地域コ
ミュニティの再生の契機とする
② 農地の市街地への貫入=公共緑地以外の「みどり空間」の創出
③ 農業=総合的産業として位置づける認識知への意識改革
B 空間論
上記機能論から導き出される空間像は 図― 2 と 3 である。
図で表現される基本構造は次の 2 点である。
① 市町村合併により地域構造、特にそれぞれのまちの中心核の改変(再構築)は不可欠とな
る。この機会に従来の行政界および都市地域、農業地域の区分にとらわれず、地域全体を一
つのエリアとして土地利用のゾーニングを試行する。
② 市街地のコンパクト化を図り、これにより生じる既往の市街化区域の隣辺部(アーバン・
フリンジ)および市街化調整区域、農業地域を一体的に網羅した土地利用ゾーニングを試行
する。
(図の詳細説明は省略)
− 41 −
(パネルディスカッション)
(パネルディスカッション)
− 42 −
− 43 −
(パネルディスカッション)
C 具現化に向けた戦略論
C− 1 法体系の再構築
現在は 2 つの地域の個別法、すなわち都市計画法と農振法とこれを補完する自治体の条例で
対応しているのが実態である。
注目すべき事例には掛川市や長野県穂高町「まちづくり条例」等があるが、これらを補足展開
していくことによって、上記 B の①、②の 空間構造を計画し、具現化していく必要がある。
更に併行して、最終的にはイギリスの「タウン・アンド・カントリー・プランニング・アク
ト(都市農村計画法)」に準じる法体系の整備を目標としていくことが不可欠である。
■長野県 穂高町の例
松本市の北、景勝地として有名な安曇野に位置する人口約 3 万人の町。
北アルプスを望む田園風景は、住民にとって生活の原風景であるばかりでなく重要な観光資
源ともなっていました。
しかし、都市計画の用途指定がない郊外部などで農地の虫食い的な開発が進み、景観に影響
を及ぼし始めたことから、土地は私有財産であっても高い公共性の元に利用されるべきものと
いう理念に基づいて「穂高町まちづくり条例」が制定されました。
都市計画とは別に、この条例に基づいて土地利用調整基本計画が定められ、町内を 9 つのゾー
ンに分けて立地可能な用途を詳細に決めています。
表− 2
章
総 則
まちづくり施策
まちづくり審議会
まちづくり推進地区
開発事業の手続き
雑 則
穂高町まちづくり条例の構成
条
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
(パネルディスカッション)
内 容
条例制定の目的
用語の定義
まちづくりの基本理念
町の責務
町民の責務
土地所有者・事業者の責務
適用区域
「調整基本計画」の策定
具体的な施策の策定
まちづくり審議会
まちづくり推進地区の指定
まちづくり協議会
地区単位の「まちづくり基本計画」の策定
適用の対象となる事業
開発事業の協議申請書の提出
開発事業に対する指導・勧告
協議申請書の事前公開
説明会の開催
開発事業承認申請書の提出
穂高町開発事業審査会
承認前における開発事業の変更手続き
開発事業の承認
開発事業の承認後の町と事業者の協定の締結
開発事業の承認後の開発事業内容の変更
工事の着手
後期の変更、工事の中断
工事完了の届出
工事完了時の検査
事業者から町への報告義務、町の立ち入り調査
不服の申し立て
罰則…違反者の公表
表彰
規定外事項の町長への委任
− 44 −
住民参加
戦略・目標
●
遵守制度
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
C− 2 都市再生モデルとしての位置づけ
当然個別法の一元化等には相当な困難が予想される。
この場合においても時間軸を考慮する必要があることから、都市再生モデルとしての位置づ
けを指向し、あくまでも北海道における地方都市の都市・地域再生モデルとしてのグランドデ
ザインを策定していくというストーリー展開を図る必要がある。
そのプロセス・具体像を全国、特に中央に対してアピールすることは現在の道州制の議論に
直結する枠組みとしてとらえられると考えることが出来る。
Ⅳ 「総括(まとめのコメント)」
Ⅳ― 1 各パネリストに対するコメント
全体を通して、非常に多くの貴重な意見をいただいたと感じているが、特に私自身の中では、
以下の発言・キーワードが強い印象をもって記憶されている。
林 さん:地域力・スローフード
加賀屋さん:クリチバ(ブラジル)の環境政策と都市計画 ・農業都市の定義
小松さん:私と同一の評価軸であった「農」の機能分類・農村コミュニティ ・スローライフ
・政策と人材
「夢の農村塾」渡辺さん:
体験農業に参加する高校生に対しの第一声=「今からの野菜の摘花は経済行為への参加だ
よ!」という認識の埋め込み=育農
橋本さん: グリーンツーリズムの推進も人間(人材)こそが重要(ソフトの価値)
Ⅳ― 2 議論された都市と農村の交流や融合の具現化に向けては、私案として提示したような
急激かつ外圧的なゾーニングの導入等では無く、総体として地域の人材の育成や意識改革が根
幹であるという意見の方が大きかった事も事実ではあったが、総括として私からは時間軸を考
えると大胆なブレークスルーが求められるのではないかということを再度敢えて提言したい。
Ⅳ― 3 北海道都市地域学会は多分野の人で構成され、かつ学際的な機能を持つ稀有な組織で
あると理解している。
是非この「農業都市」というテーマを学会を軸に産官学そして市民と共に追求していきたい。
フィールドとしてまたモデルとしてここ深川市と連携していくことに大きな可能性を感じ
ている。
Ⅳ― 4 従って、本日のシンポジウムで議論展開が図られた枠組みの実現に向けて、深川市を
中心に北海道都市地域学会が連携し、今後も継続的な活動をしていくことを宣言し、これを
以って「深川アピール」として位置づけたい。
以 上
− 45 −
(パネルディスカッション)
【深川市のまちづくりについて】
今回のテーマは「農業を軸とした新しい都市の創成」でございますので、農業を中心に、本
市の取り組みの一端を紹介させていただきたいと思います。
本市は、ご案内のとおり、肥沃な農地と良好な気候条件を活かして、米のほか、そば、野菜、
果樹、花きなどの生産が盛んな、道内有数の農業都市でございます。
しかし、高齢化や後継者不足、担い手対策、環境に配慮した農業への取り組みなど多くの課
題も抱えております。
このため、農業者や農業者団体が主役の「売れる農産物」の安定生産や、安全・安心で良質
な農産物の提供、担い手の育成、都市と農村の交流などについて、農業者、農業機関・団体、
行政が一体となって取り組んでおります。
この地域は、開拓以来、米を中心とした農業の歴史を刻んでまいりましたが、これからも、
米づくりを中心とした農業の推進を基本に、まちづくりを進めていきたいと考えております。
こうした地域の個性をまちづくりに生かすため、本市では、平成 8 年度に「ライスランド構
想」を策定いたしました。
この構想は、米、稲、田園の利用・展開をテーマに、
「四つの里づくり」を通して、深川の
歴史や風土を基盤とした地域の活性化を図るプロジェクトで、昨年 7 月には、三つ目の里とな
る、いざないの里「道の駅ライスランドふかがわ」をオープンさせました。
この施設は、道の駅の機能のほかに、
「米のまち深川」の情報の発信、もみから精米になる
までの過程が見られる体験コーナーや、地元農産物の提供、物産品販売などを行っており、開
館以来、多くのテレビや雑誌などでも道内有数の道の駅として紹介いただき、来館者はオープ
ン 1 年余りで 100 万人を突破し、現在にあっては約 170 万人になるなど、多くの方にご利用い
ただいております。
これからも、深川の魅力、農業がもつ良さを広くご理解いただくため、積極的な情報発信に
努めていきたいと考えております。
このほかの里としては、平成 9 年にオープンさせた深川市都市農村交流センター「アグリ工
房まあぶ」を拠点に、周辺のまあぶオートキャンプ場、戸外炉(トトロ)峠、観光農園などと
連携し、地域内外の多様な交流を進めている「ふれあいの里」、旧小学校校舎を改修し平成 11
年にオープンさせた交流促進施設「ほっと館・ふぁーむ」と、画家の高橋要さんのアトリエ、
ギャラリーなどがある「向陽館」を拠点に、農村地域の芸術文化と地域内外住民との交流を進
めている「ぬくもりの里」がございます。 さらに、この「ライスランド構想」でも主体をな
す「都市と農村の交流」につきましては、「アグリ工房まあぶ」を拠点に市民が主体となって、
田植え・稲刈りなどの農業体験、農産物の加工体験などグリーン・ツーリズムが積極的に展開
されており、一昨年には、グリーン・ツーリズムの活動に携わってきた農業者グループが中心
となって、
「元気村・夢の農村塾」が設立されております。
元気村・夢の農村塾では、本州からの修学旅行生を中心に全国各地から、農業体験希望者を
受け入れていただいておりまして、これらのことを通して、都市住民との交流が深まり、都市
(パネルディスカッション)
− 46 −
部の消費者に深川の農業を理解いただくことが、交流人口の増加、安全で安心な農産物の販路
拡大と農家所得の確保につながるとともに、これからの農業都市として、体験型観光の面にお
いても、大変重要なことだと考えております。
また、担い手の育成につきましては、拓殖大学北海道短期大学、道内各地の研修ファーム、
農協・行政などが連携して、就農の相談から実践的な研修、実際の就農までを一貫してサポー
トする「新規就農サポートシステム」を平成 14 年に立ち上げ、優れた担い手となる経営者の
育成確保に取り組んでおります。
このシステムでは、就農希望者は、夏の期間、希望する地域の研修ファームで農業実習を行
い、冬の期間は、大学で農業経営や農業技術などを学び、2 年間の研修終了後、農協のあっせ
んによって就農するものです。
今後この取り組みをさらに広げ、農業内外からの就農を促進し、農業の維持・発展と農村の
活性化を図っていきたいと考えております。
また、スローフードにつきましては、本市におきましても、深川市男女平等参画推進協議会
の皆さんが中心になって、地元の安全・安心で良質な農産物を地元の消費者に食べていただこ
うと、3 年前から「愛食祭」を実施されております。
地道な活動かもしれませんが、こうした活動を通じて、消費者の方に地元の農産物が安全・安心
であることをご理解いただき、地産地消を推進していくことも大変重要なことだと考えております。
本市では、高度情報化社会に対応し、市民の皆さんが豊かさと潤いを実感できるまちづくり
のため、マルチメディアを積極的に推進しております。
これまで、「自治体ネットワーク」「地域イントラネット」などの情報基盤整備や、全国で 9
つの協力自治体の一つとして総務省の「電子自治体推進パイロット事業」に取り組むとともに、
同じく総務省の「高速無線システム実証実験」などを実施しております。
ITを積極的に活用して、農業・農村の情報を発信し、消費者との信頼関係を構築し、全国
との結びつきを深めていきたいと考えております。
パネリストの皆様からの話題提供や農業都市の将来像への貴重なご提言、参加者の皆様との
意見交換によって、本日のパネルディスカッションは、農業を取り巻く課題や、新しい農業都
市づくりなどについて考える、大変貴重な機会となったと実感しております。
改めて、今回の会議を開催させていただきましたことに深く感謝を申しあげたいと思います。
北海道は、四季が明確であることが大きな魅力ですが、石狩川流域に豊かな田園地帯が広が
る農業都市・深川も、春には春の、夏には夏の、そして秋、冬とそれぞれの良さがございます。
将来とも米を基本としたまちづくりがこの地域の基本であり、これからも北海道の米の主産
地として、また、多様な農産物の供給基地として、地域の特性を活かし、「食料・環境・暮ら
しを守り育む」まちづくりが必要だと考えております。
また、農業は、豊かな環境を保全していく大切な手段であり、豊かな農村地域として発展し
ていく可能性は大変大きいと考えております。
本日のパネルディスカッションでのご論議を参考にさせていただき、これからも消費者が求め
る安全・安心に応えるクリーン農業の推進、トレーサビリティーの確立、農産物の付加価値を高
める取り組みなど、本市の基幹産業である農業の振興に努めてまいりたいと思います。
本日お集まりいただきました皆様の今後ますますのご協力をよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
− 47 −
(パネルディスカッション)
ま と め
北海道都市地域学会企画委員長 札幌学院大学経済学部教授 平 澤 亨 輔
今回のテーマは北海道に多くみられる農業地域の中にある都市のあり方を考えようという
問題意識から「農業を軸とした新しい都市の創成∼新農業都市の提案」が選ばれた。
まず、北海道都市地域学会に浅川会長から簡単なテーマの解説があった。田園都市などの例
を挙げながら、北海道には農業を主たる産業とした都市があり、そうした都市を例として取り
上げ、農村と都市の融合、新しい農業都市という概念を確立することが重要だと述べた。
その後に北海学園大学経済学部の太田原教授から基調講演があった。太田原教授は、効率性
重視の社会の見直しや農業の持つ外部性を重視することが重要である。大規模な農業や広域的
な流通ばかりでなく、地産地消などもすすめ、中小企業や小農の育成をはかることが必要であ
り、それは内発的発展にもつながる。またスロー・フード運動にみられるような安全性や文化
も重視しなくてはいけないと述べられた。そのほかに食教育により子供の食を見直していく必
要があると述べられた。
続いて午後にシンポジウムが開催され、まず深川市長から深川市の現状と取り組みが簡単に
紹介され、米作りを中心とした農業を中心にまちづくりを行う「ライスランド深川」構想やグ
リーン・ツーリズム、
「元気村・夢の農村塾」のことなどが簡単に述べられた。
続いてコー
ディネーターの太田氏からテーマの解説があり、① 北海道の農業が、いろいろな問題を抱え
ている。今日のシンポジウムは、これまでなされてきた議論とは明らかに異なる視点、すなわ
ち都市サイドにたって、都市・地域が持続可能な自立をしていくための視点に立った議論を展
開させたい。②持続可能な都市・地域の自立のためには「交流」の概念を更に超えた「融合」
の概念と仕組みが必要ではないか。具体的には農業振興法と都市計画法の個別法の隘路を「ま
ちづくり条例」等の条例で補完している。法制度の側面においてすら融合がなされなければな
らない、などの考えが述べられた。
まず深川市の拓殖短大の橋本信教授から深川市でのグリーン・ツーリズムの実践例が報告さ
れた。農業生産ばかりでなく、プラスアルファが必要であるという観点から地元の代表と「ア
グリ工房 まあぶ」を立ち上げ、収穫やカヌーの体験、組立ログハウスなどの試みが行われた。
それがさらに本業に跳ね返り、拓殖短大の環境学科にグリーン・ツーリズム概論という科目を
開講するまでになった。
(まとめ 平沢 亨輔)
− 48 −
続いて地元の「元気村・夢の農村塾」の渡辺氏からその取り組みが紹介された。農業を体験
した高校生が心の癒しを得た例などが紹介された。このほかに他地域から農業に就農した方の
経験などが語られた。
続いてフリーキャスターの林美香子氏から、スライドを用いながらグリーン・ツーリズムの
紹介があった。また、スローフード運動について単に食べる運動ではなく、地域を愛し、地域
を育てる運動であり、都市と農村の交流というだけでなくそれ以上のものを目指していると述
べられた。また農村景観を大事にしてほしいと述べられた。
掛川市の小松助役は、農業を考える場合に、農地、農民、農業、農村、農家、農協という観
点から考えなくてはいけないと述べ、農業を助けるためには個性化を行う必要があり、農家と
農民という点では規模拡大、また担い手が少ない現状では、協業化が必要である。また生産消
費地化や、農地の公有化が考えられなくてはならないと述べた。
北海道大学の加賀屋誠一教授からは農業都市のあり方について循環型システムの考え方を
紹介した。また現在、都市は都市計画法、農地は農振法で規制されているが、都市と農村を同
じ法律で考える必要があるのではないかと述べられた。
こののち、議論が行われたが、一つの中心的な議論は、都市は都市計画法で規制され、農地
は農振法で規制されており、この二つを統一的に計画し、都市と農村を融合できないかという
ものであった。この点では、コーディネーターの太田氏と小松助役の間に考え方の違いが見ら
れた。
また、これらの議論の中で、「人づくり」が重要であると認識させられた。やはり、地域を
支え、活性化していくには「人」の活動が必要であり、それを支える「人」をいかに育成して
いくかが重要なポイントである。
− 49 −
(まとめ 平沢 亨輔)
次 期 開 催 地 挨 拶 ( メ ッ セ ー ジ )
札幌市長 上 田 文 雄 次期会議を開催させていただくことになりました札幌市の市長であります上田でございます。
本来であれば、そちらの会場に赴きまして、皆様に御挨拶を申し上げるところではございま
すが、市議会日程の都合などのためによんどころなく、失礼をさせていただきました。
誠に申し訳なく存じますが、ご容赦をお願い申し上げますとともに、次期会議を開催させて
いただきます私どもの想いを述べさせていただきます。
この北海道都市問題会議は、今回で二十九回目を迎えますが、これまでその時々において、
私ども自治体が抱える様々な問題や課題について、議論が交わされ、その成果がまちづくりに
活かされてきたという意味で、大変意義深い会議であると認識しております。
このたび、そのような会議を開催市であります深川市様を始め、北海道都市地域学会や北海
道市長会の皆様が連携されて、準備や運営にご尽力をいただき、心から敬意を表させていただ
きます。
私どもは、来年度、第三十回という節目に当たる時期に開催させていただくことになり、大
変光栄なことと受け止めております。
来年も皆様方、各都市にとりまして、意義深い会議となりますように、北海道都市地域学会
や北海道市長会の皆様にいろいろと御教示いただきながら、開催市としてできる限りの準備を
進めさせていただきます。
皆様を心から歓迎申し上げたいと考えておりますので、来年は多くの皆様が札幌にお越しい
ただき、会議に参加してくださいますようお願い申し上げます。
皆様のお越しをお待ちしております。
(次期開催地挨拶)
− 50 −
北海道都市地域学会セミナー
第一部 新農業都市における生活交通の確保方策とその課題
北海道都市地域学会副会長 北海道大学大学院工学研究科教授 佐 藤 馨 一
第二部 農業におけるコミュニティ・ビジネスの可能性
札幌学院大学商学部助教授 河 西 邦 人
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【第一部】
「新農業都市における生活交通の確保方策とその課題」
北海道都市地域学会副会長 北海道大学大学院工学研究科教授 佐 藤 馨 一 1.はじめに
わが国は人口停滞期に入り、今後、減少していくことは確実であり、これに伴いスプロール
化を防ぐ市街化調整区域が存在意義を失いつつある。さらに都市施設の再配置やゾーニングの
見直しが必要となり、都市計画の枠組は大幅に変えて行かなければならない。本文は北海道に
おける人口減少下のまちづくりのために「新農業都市」のコンセプトを提案し、そこにおける
生活交通の確保について考察したものである。
2.新農業都市のコンセプト
都市の成立要因として「交通結節点」や、「防衛拠点」であることが指摘されている。これ
らの都市は成立時から第三次産業的であり、食糧品や建設資材などは他地域から運ぶことを前
提にしていた。これまで都市と農村が区別されてきたのは、食糧生産が農地=農村のみで行わ
れ、農業は都市機能に付随するものではない、と考えられてきたことによる。しかしヨーロッ
パの都市と異なり、日本では都市と農村のしきいが明確でなく、城壁のような境界線は存在し
ない。
北海道の都市(市政執行)の多くは農業が主要産業となっており、36.1 万人の人口を有する
旭川市の工業出荷額は 2300 億円、これに対して農業生産額は 1631 億円(平成 13 年度)に達
している。また人口 2.7 万人の深川市の工業出荷額は 108 億円、農業生産額は 127 億円であり、
農業が主産業であることを示している。
都市計画の用途地域に商業地域、工業専用地域はあるが、農業専用地域はない。また市街化
調整区域で農業活動をすることは認められているが、そこでは宿泊施設等の立地は認められて
いない。この制約が都市計画法と農業地域振興法によるものならば、人口減少下社会の実態に
合わせてこの法律を変える必要がある。
宗教活動の本拠地を有し、それを支える人々が住む都市は宗教都市と呼ばれ、市域内に大規
模な工場施設を有する都市は工業都市と呼ばれている。この論理からすると農業を主産業とし、
農業に従事する人々が生活する都市は「新農業都市」と呼ぶべきではなかろうか。
3.サポート交通システムによる生活交通の確保
地方都市における公共交通機関、とくにバス交通の利用者は大幅に減少しており、平成 15
年度から施行された規制緩和政策によって不採算路線の休廃止が進んでいる。これまでバス交
通に関して数多くの実態分析や採算性に関する研究が行われてきた。しかしバス交通が起死回
生する妙案はなく、なかでも農業を中心産業とする地域では住民の減少と高齢化、自家用車の
普及のためにバス交通の持続はほとんど絶望的である。
このため筆者らは、新農業都市における生活交通を確保する方策として図-1 に示す「サポー
ト交通システム」を提案してきた。
(セミナー)
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図-1 サポート交通の仕組み
(1) サポート交通システムの仕組み
サポート交通システムは「サポートする人(送迎してあげる人)
」
、
「サポートされる人(送迎
してもらう人)
」
、
「運営団体(コーディネーター)によって構成される。サポートを希望する人
は目的地と時間を運営団体へ連絡し、それを受けた団体はサポートのできる人を探し出し、サ
ポート交通の依頼を行う。サポートするが了解したとき、サポートされる人にそれを連絡する。
サポート交通システムは以下の原則に基づいて運営される。
[ サポート交通システムの基本原則 ]
・サポートされる人はふだん自家用車を利用出来ない人とする。
・送迎に際して、直接的な金銭の授受は行わない。 ・サポート交通の対象は買い物や通院などの交通とし、通勤や娯楽目的の交通は取り扱わない。
・サポート交通システムは同一生活圏内(原則として自治体)で運営する。
図-2 はサポート交通システムの策定プロセスを示したものである。
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図-2 サポートシステムの策定プロセス − 53 −
(セミナー)
(2) サポート交通システムの課題
平成 15 年 11 月、士別市においてサポート交通に関する意識調査を行った。その結果、以下
に示す問題点のあることが明らかになった。
・他人の車に乗ること、または他人を自分の車に乗せることのわずらわしさ
・相手のマナー(喫煙など)が悪いおそれがある
・急にキャンセルすることや遅刻するおそれがある
・突然の予約に対応できるか、という心配 ・何かトラブルに巻き込まれるのではないか、という心配
・交通事故の発生による責任問題
・料金が無料であることへの抵抗感
4.終わりに
士別市における意識調査と需要推計を行った結果、参加意思のある人が多数おり、サポート
交通システムの成立する可能性は十分ある。このとき実費程度の費用負担することが成功の鍵
となる。サポート交通システムを運営するためにマネジメント組織の設立が必要であり、ボラ
ンティアや NPO との連携が不可欠である。
また事故が起きたときの補償制度も十分に整備しな
ければなければならない。
図-3 は士別市におけるサポート交通システムの導入可能性をまとめたものである。
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図-3 士別市におけるサポート交通の導入可能性
生活交通の確保はサポート交通の経費を誰が負担するかにかかっている。地域住民や交通事業
者の負担はもはや限界に達しており、国土交通省のバス事業補助金では新農業都市の生活交通を
維持できない。それゆえ国土交通省の補助金のみならず、農水省の補助金を新農業都市の生活交
通確保のために活用することも検討する必要がある。道州制の実現によって省庁間の壁が取り除
かれたとき、そこには新しい都市が、すなわち新農業都市が誕生していることを夢みたい。
(セミナー)
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【第二部】
「農業におけるコミュニティ・ビジネスの可能性」
札幌学院大学商学部助教授 河 西 邦 人 1 コミュニティ・ビジネスと農業
コミュニティ・ビジネスとは地域社会へこだわり、地域の資源を活用しながら、地域の課題
解決という社会貢献をビジネスと両立させながら達成していく経済活動、と定義されている。
通常のビジネスが経営者、従業員、顧客、取引先といった利害関係者の私益のバランスを取り
ながら遂行されるのに対して、コミュニティ・ビジネスは前述の利害関係者に加え、地域社会
も考慮する。コミュニティ・ビジネスは地域の自然、人、モノ、資金、文化、情報といった資
源を活用し、地域内外の消費者へ提供することでビジネス化するため、地域資源を地域住民が
地域課題解決という視点で再評価し、地域資源の活用で地域の問題を解決していく。そのプロ
セスの中で地域社会が変革する、社会運動的な特性も持つ。
日本の農業の大きな課題は、農業の衰退である。その原因には、生産者と消費者の乖離があ
る。そこで、コミュニティ・ビジネスの視点を取り入れ、農業の存在意義を国民が共有する社
会運動的な側面を持たせ、農業の活性化を図っていく、新たな政策が必要になる。
数多くの事例を調査した結果、コミュニティ・ビジネスは地域の成功の鍵として、地域から
の支援の獲得、消費者との互恵関係の形成があげられる。コミュニティ・ビジネスは儲かるこ
とをするのではなく、地域に必要な事業を行うため、収益性が低いこともある。
低収益性を克服するためには、事業者の経営上の工夫はもちろん、行政からの補助金、ボラ
ンティアからの労力提供、住民からの寄附、といった地域の支援を得たいところだ。また、コ
ミュニティ・ビジネスが消費者を固定客にし、長期にわたって収益をあげるビジネス・モデル
を作ると共に、地域内外の消費者から積極的に応援してもらえる互恵関係を形成したい。農業
分野においてコミュニティ・ビジネスを行う場合も、これらの成功のポイントから外れるべき
でない。
地域からの支持獲得と地域内外の消費者との互恵関係形成に必要なのが、生産者と消費者を
直接結びつける産消協働である。大量生産と大量消費を前提に、生産と流通の分化による経済
効率化を追求する農業ビジネスではなく、生産者とその地域が消費者と個別に結びつき、経済
効率よりも価値を重視する農業コミュニティ・ビジネスが、現在の農業の衰退を救うであろう。
生産者が消費者と結びつくチャネルを作り、農産物を消費者へ販売するだけでなく、生産者と
消費者の双方向的交流により、顧客の囲い込みとブランド・ロイヤルティの創出、農産物加工
や飲食提供、体験観光や宿泊、といった周辺事業への多角化による付加価値の取り込み、生産
者が消費者と交流することで得られる生産者としてのやりがいや事業の革新の創出といった
効果が期待できる。
2 農業分野のコミュニティ・ビジネス事例
農業におけるコミュニティ・ビジネスの展開は、垂直型の展開と水平型の展開がある。垂直
型の展開は価値を産出するプロセスに従って、コミュニティ・ビジネスを展開していく。生産
者が農産物を加工したり、その加工物を提供するレストランへ参入したりするのが典型的なコ
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(セミナー)
ミュニティ・ビジネスの垂直型展開である。水平型の展開は、農産物生産というレベルで、消
費者に対して農業体験をさせるようなコミュニティ・ビジネスである。
図 1 農業のコミュニティ・ビジネスの展開
ここで、コミュニティ・ビジネスの垂直型と水平型展開を行い、農事組合法人と有限会社の
グループで 20 億円以上の売上高をあげるようになった、
「もくもく手づくりファーム」の事例
を紹介しよう。もくもく手づくりファームは大阪と名古屋という大都市の中間にあたる三重県
伊賀市阿山町(現在は伊賀市)にある。もくもく手づくりファームは、伊賀豚を使ったハム工
房から始まった。畜産連合会で営業を行っていたメンバーもいたことから、常にマーケティン
グを意識した事業展開を行った。消費者の希望から始まったソーセージの加工体験が評価され、
その消費者たちがハム工房の固定客になっていった。安全で美味しい手づくりのハムやソー
セージが評判になり、次第に観光客が立ち寄るようになった。観光客向けの加工体験や飲食
サービスを提供することで、観光農園化し、農事組合法人は成長した。現在は地域の環境に配
慮した循環型の農業、農業人材の育成、休耕地の活用、小規模農家への直産販売所の提供、と
いうような地域社会へ貢献し、地域と共に歩んでいくコミュニティ・ビジネスの展開を行って
いる。
次に行政が主導してコミュニティ・ビジネスの場や仕組みを作った 4 事例を紹介したい。ま
ず、愛媛県内子町の第三セクター経営の農産物直販所、
「内子フレッシュパークからり」。内子
町が 1992 年から推進していた農業活性化施策の一環として、
小規模農家の余剰自家消費農産物
やはねものを直販所で販売することにし、1997 年、「内子フレッシュパークからり」を開業し
た。小規模農業者にとって新たな収入源になったこと、インターネットを活用した出品者の農
業者への売上情報の提供などの経営上の工夫などもあって、参加する農業生産者は 300 人以上
に拡大し、内子フレッシュパークからりの手数料収入も 4 億円を超えるまでになった。生産者
が消費者と交流することから、農産物の生産だけでなく、梅干し、ジャム、パンといった加工
品生産販売へ垂直型展開をし始めた農業生産者もいる。また、農産物の直販だけでなく、農家
の高齢主婦が調理するレストランや加工物体験教室などへも事業展開し、コミュニティ・ビジ
ネスの展開を行っている。
岐阜県明宝村(現在は郡上市)では、農家の主婦たちが生活改善運動の中で地元のトマトを
(セミナー)
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使ったケチャップを開発し、明宝村役場がそのケチャップ生産を事業化するため、第三セク
ターと工場を作り、主婦達の活動を支援することで事業を成長させた。明宝村のハムを生産、
販売する第三セクターや、道の駅の営業力を活用しながら、ケチャップを特産物に仕立て上げ
た。明宝レディースは村の雇用の場を生み出し、村の知名度を上げた。また、明宝レディース
は村にあるスキー場へ地元の食材を中心に郷土料理を楽しませるレストランを出店し、コミュ
ニティ・ビジネスを垂直的に展開している。
高齢化と狭い農地から農業の発展を見いだせなかった長野県飯田市千代地区は観光で活路
を切り開いた。行政からの働きかけで 1996 年から農業研修生を受け入れたが、農業研修生の
指摘で千代地区の農業生産者は地域の新たな価値に気づいた。1997 年に行政の仲立ちで農業や
農家の生活を体験させる、修学旅行生向けの農家民泊や農業体験教育を始めた。飯田市は第三
セクター南信州観光公社を設立して全国へ営業を行う一方、役所内部にグリーンツーリズム推
進室を設置し、受け入れ農家側の組織化を図っている。その結果、年間の農業体験旅行客が 1
万 7 千人までに達し、長期的に農家で働きながら楽しむワーキングホリデー、農業後継者を育
てる南信州あぐり大学院などの事業展開を行っている。
宮崎県綾町のコミュニティ・ビジネスは、有機農業を核にして、地域の循環型経済システム
を構築し、展開していくものである。行政が昭和 40 年代から有機農業を推進し、1987 年に生
ゴミ堆肥施設を作り、翌年には生態系を守りながら農業を推進するという条例を制定した。有
機農業を徹底したことで消費者の支持を獲得し、農業生産者と消費者という交流から農業コ
ミュニティ・ビジネスが生まれた。また、本物を作る地域というイメージが形成され、木工や
染め物といったコミュニティ・ビジネスが地域の中で創出されていった。
3 農業のコミュニティ・ビジネスによる地域活性化
農業へコミュニティ・ビジネスの視点を取り入れ、農業と地域を活性化するための戦略は、
まず、地域内循環を創出し、地域を活性化し、地域からの支持を獲得することである。農業は
地域の生態系の中で重要な役割を果たしている。地域内の農業が起点になり、農産物・農産加
工品の提供からゴミのリサイクルといった地域内循環を構築する。こうした生態系の循環を構
築できれば、農業が地域の必要不可欠なパートナーとなり、地域社会からの支持を獲得できる
ようになる。宮崎県綾町がこうした地域経営の戦略の成功事例である。
図 2 コミュニティ・ビジネスによる地域の経済システムの改革
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(セミナー)
地域内循環で地域を活性化し、支持を獲得する一方、地域経済活性化のためには地域間循環
を形成することである。地域間循環の場合、地域外の消費者へ地域が産出した価値を提供し、
対価を取ることで、地域外経済を取り込む。農業を地域の資源として、安全な農産物の提供、
農業体験などの価値提供を通じ、地域外の反復的消費を掘り起こす。反復的消費により農業生
産者へ経済的恩恵を与える。加えて、地域間の交流も増え、新しい知恵や資源が地域外から流
入し、地域内の資源と相互作用を起し、革新が創出される。結果として地域と地域の農業を活
性化することになる。
1 つのコミュニティ・ビジネスが成功すると、その垂直的、水平的な周辺事業で新たなビジ
ネスチャンスが生まれる。すなわち、農業が地域の基幹産業であれば、農業分野のコミュニ
ティ・ビジネスが周辺事業を生み、地域のビジネスクラスターを創出していく。
農業のコミュニティ・ビジネスが地域内と地域間の循環を構築し、コミュニティ・ビジネス
のクラスターが創出されると、消費者の固定化とそれによる地域ブランドを育てることになる。
地域ブランドを確立することで、他地域との差別化を図り、経済価値創出と地域住民の活性化
による持続的な地域づくりにつながると考える。
(セミナー)
− 58 −
北海道都市問題会議開催経過
開
催
市
テ
ー
マ
第 1 回
滝
川
市 広域行政の現状と問題
行政と住民参加
昭和 49 年 9 月 30 日・10 月 1 日
第 2 回
北
見
市 魅力ある都市づくり
昭和 50 年 10 月 7 日・ 8 日
第 3 回
札
幌
市 転換期に立つ都市行政の課題
昭和 51 年 11 月 5 日・ 6 日
第 4 回
根
室
市 地域政策と新しい都市像
昭和 52 年 11 月 11 日・12 日
第 5 回
芦
別
市 都市経営における生活環境の整備
昭和 53 年 11 月 10 日・11 日
第 6 回
旭
川
市 地方都市の冬季政策
昭和 54 年 11 月 16 日・17 日
第 7 回
札
幌
市 うるおいのある都市環境の整備
昭和 56 年 11 月 11 日
第 8 回
帯
広
市 活力ある都市の創造
昭和 57 年 11 月 5 日・ 6 日
第 9 回
室
蘭
市 都市の活性化と産業振興
昭和 58 年 11 月 1 日・ 2 日
第 10 回
北
見
市 都市開発における今日的課題と展望
昭和 59 年 10 月 25 日・26 日
第 11 回
登
別
市 特色ある地方都市の建設
昭和 60 年 11 月 21 日・22 日
第 12 回
滝
川
市 民間活力の導入とまちづくり
昭和 61 年 10 月 24 日・25 日
第 13 回
旭
川
市 都市と情報化社会
昭和 62 年 11 月 6 日・ 7 日
第 14 回
函
館
市 交流ネットワーク時代の都市づくり
昭和 63 年 8 月 31 日・ 9 月 1 日
第 15 回
美
唄
市 手づくりのまちづくり
平成元年 11 月 21 日・22 日
第 16 回
紋
別
市 魅力ある地方都市を求めて
−真の創造は地方でこそ−
平成 3 年 11 月 21 日
第 17 回
砂
川
市 地方都市とアメニティ
平成 4 年 10 月 2 日・3 日
第 18 回
留
萌
市 交流時代のまちづくり
−未来へのシナリオ−
平成 5 年 10 月 1 日・2 日
第 19 回
江
別
市 パブリックデザイン
−地域の顔・まちの顔を考える−
平成 6 年 10 月 31 日・11 月 1 日
第 20 回
釧
路
市 次世紀まちづくりへの戦略
平成 7 年 10 月 23 日・24 日
第 21 回
伊
達
市 個性のある地域福祉社会をめざして
平成 8 年 10 月 24 日・25 日
第 22 回
富 良 野 市 環境を育てる
∼リサイクルとまちづくり∼
第 23 回
稚
内
市 みんなで創るまちづくり
人づくり、しくみづくりを考える
第 24 回
芦
別
市 人間尺のまちづくり∼安定型社会に向けた 平成 11 年 10 月 28 日・29 日
まちの再生手法を考える∼
第 25 回
苫 小 牧 市 「新しい世紀のまちづくり」
−市民と行政の協働
平成 12 年 10 月 19 日・20 日
第 26 回
網
走
市 「新しい世紀のまちづくり」
−市民と行政の「協創」
平成 13 年 10 月 16 日・17 日
第 27 回
小
樽
市 まちづくりのルネッサンス
∼交流と文化、そして豊かさ∼
平成 14 年 10 月 24 日・25 日
第 28 回
函
館
市 都市は蘇るか
∼地方都市の再生と未来∼
− 59 −
開
催
日
平成 9 年 10 月 30 日
平成 10 年 10 月 27 日・28 日
(開催経過)
第29回北海道都市問題会議記録
編集・発行
北
海
道
市
長
会
〒 060-0004
札幌市中央区北 4 条西 6 丁目
TEL 011-241-2803・FAX 011-241-2805
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刷
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