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第13回

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第13回
平成28年度前期
内容:
11. モータ・発電機
モータの種類
基礎電気工学
直流モータ
回転原理,整流子とブラシによる転流,極数,
界磁による分類,特性,電磁石を使用するモータ,
永久磁石を使用するモータ,コアレスモータ 第13回
交流モータ
単相交流と三相交流,回転磁界,構造,誘導モータ,
同期モータ 井上 真澄
制御を必要とするモータ
ブラシレスモータ,ステッピングモータ
発電機 モータの種類
モータ: 動きを与える装置。動力発生装置。
動力源と回転原理による分類
【電動モータ】
《電磁気の作用を利用》
<直流モータ>
[整流子,ブラシを必要とするモータ]
・直巻モータ ・分巻モータ
・複巻モータ ・永久磁石型モータ
[制御を必要とするモータ]
・ブラシレスモータ ・ステッピングモータ
<交流モータ(単相,三相)>
・誘導モータ ・同期モータ
《電磁気の作用以外を利用》
・超音波モータ ・静電モータ
【非電動モータ】
・油圧モータ(ベーンモータ,歯車モータ,など)
・空気圧モータ(ベーンモータ,歯車モータ,タービン型エ
アーモータ(歯医者の小型エアーグラインダ),など)
[この他,広い意味では蒸気機関や内燃機関も]
→ 以降は電動モータを扱う
直流モータ
ここでは,整流子,ブラシを必要とするモータを取り扱い,その他の制御を必
要とするモータは別途取り扱う。
回転原理
・固定子(stator)が作る磁界(界磁という)の中で,コイルを備えた回
転子(rotor)を回転させる。
・回転子に備えられるコイルや鉄心をまとめて電機子(armature)という。
・整流子(commutator)とブラシ(brush)という機構が重要な役割を果たす。
1巻きのコイルのコイル片に働く力による説明
B:磁束密度
v:コイル(の磁束を横切る部分)
の動く速度
φ:磁界に垂直な面に対してコイル
がなす角度 1つのコイル片に働く力F: F = IBl [N]
2つのコイル片に働く力によりコイルに発生するトルクT:
T = 2 Fr |sinφ | [ Nm] = Fd | sinφ | [ Nm] = IBld | sinφ | [ Nm]
(回転軸からコイル片までの距離をrとして,r = d / 2)
F sin φ
r
F
電流の経路:
電源→ブラシB1→整流子C1→コイル片1→コイル片2→整流子C2
→ブラシB2→電源
φが180度を越えると(360度まで)
電源→ブラシB1→整流子C2→コイル片2→コイル片1→整流子C1
→ブラシB2→電源
角速度ω [rad/s]で回転しているときに発生する起電力e:
1つのコイル片に発生する起電力e’は e′ = Bl v | sinφ | = Bl rω | sinφ |
v = rω
(∵ )
コイルに発生する起電力は
e = 2Blrω | sinφ |= Bldω | sinωt |
整流子とブラシによる転流
磁気の吸引力と反発力による説明
(原理の説明より)回転の途中で電流の流れる向きを切り換える(転流)
必要有り
→ 整流子とブラシで行う。
弱点:・摩耗のため定期的なブラシ交換が必要
・摩耗で発生した粉による接触不良を防ぐため清掃などの保守作業が必要
・転流時にブラシと整流子が離れて電流が途切れた瞬間に逆起電力により
スパイク状の高電圧が発生し,火花放電が起こることがある。これによ
り電気ノイズも発生する。
・ブラシと整流子が擦れ合うことによる機械的ノイズ(騒音)が発生しや
すい。
コイル1巻きや鉄心の突起が2つのみの場合(2スロット)
止まったときの角度により,トルクが働かない,あるいは整流子
の切れ目にブラシが来て電流が流れない場合がある(この位置をデッ
ドポイント(死点)という)。
3スロットにする
角度によるトルクの変動も大きい 。
→ 異なる角度のコイルをつなぐ
1つのコイルの場合
角度の異なる3つのコイルの場合
極数
3コイル合計
コイル合計
コイルA-a
コイル
コイルC-c
コイル
コイルB-b
コイル
2極 4極
電磁石を使用するモータ
界磁による分類
・電磁石使用:直巻モータ,分巻モータ,複巻モータ,他励モータ
・永久磁石使用:永久磁石形(小型)モータ,コアレスモータ
《直巻モータ》
電機子と界磁コイルが直列
・・・電機子電流と界磁電流が等しく,ほぼ負荷電流に等しい
特性
モータにかけている電圧(端子電圧)V [V],電機子電流Ia [V],電機子
抵抗ra [Ω],回転速度n [s-1],極の磁束Φ [Wb]の関係:
V = ra I a + knΦ
(k: 起電力定数)
(直巻の場合は直巻巻線の抵抗をrs [Ω]として,上式のraを(ra + rs)に変更)
ここで,knΦ はモータが回転することで発生する逆起電力E0 [V]
( )
E0 = knΦ
よって,回転数は
n=
V − ra I a
kΦ
(直巻の場合は上式のraを(ra + rs)に変更)
機械的出力PM [W],回転角速度ω [rad/s],トルクT [Nm]の関係:
PM = ωT = E0 I a
よって,トルクは
T=
PM E0 I a knΦI a kΦI a
=
=
=
ω
ω
2πn
2π
トルクは電機子電流と界磁の磁束密度に比例
→ 負荷電流のほぼ2乗に比例
回転速度は電源電圧にほぼ比例,界磁の磁束密度に反比例
(負荷電流に反比例)
→ 回転速度が低いときはトルク大,回転速度が高くなるとトルク小
→ 始動時に大きなトルク
負荷の増減によって回転速度が変化 → 変速度モータ
無負荷だと高速回転になって危険
電車,クレーンなどで使用
《分巻モータ》
《複巻モータ》
電機子と界磁コイルが並列
・・・電機子電流と界磁電流の合計がほぼ負荷電流に等しい
電機子と直列の直巻界磁コイルと並列の分巻界磁コイルを備える
・・・直巻モータと分巻モータの特性を兼ね備える
和動複巻モータ・・・2種類のコイルの界磁が同じ方向
分巻モータより始動トルクが大きく,直巻モータのよ
うに無負荷で異常な高速回転になることがない。
電源電圧が一定なら界磁電流は一定,電機子電流は負荷の大きさにほ
ぼ比例
→ トルクは負荷電流にほぼ比例
電源電圧が一定ならば負荷の大きさが変化しても回転速度があまり変
化しない
→ 定速度モータ
クレーン,エレベータ,工作機械などで使用
(現在あまり利用されていない)
差動複巻モータ・・・2種類のコイルの界磁が逆方向
《他励モータ》
速度が一定に保たれるが,始動トルクが小さく,負荷の変動で
回転が不安定になりやすい。
電機子と界磁コイルの電源が独立
負荷電流によって電機子電流が変化しても界磁電流が変化しない
ほとんど使われない
界磁電流を調整して回転速度の制御が可能
直流分巻モータの特性に似ているが,電源が独立しているため制
御自由度が高いが,設備が複雑
永久磁石を使用するモータ
コアレスモータ
永久磁石形(小型)モータ
電機子コイルに鉄心(コア)を使用せず,回転子の慣性モーメント
が小さい
(原理的に巻線で界磁を作ることは可能だが,永久磁石型で小型の
ものがほとんど)
→ 機械時定数が小さく,応答性が高い
→ 始動,加減速,停止,逆転を繰り返す用途に適する
鉄心がある場合より界磁の磁束密度が小さいため,トルクが小さい
(トルクを大きくするには強力な磁石が必要)
界磁に電力を必要としないので効率が高い
構造が簡単なため,構造がコンパクト。
界磁コイルを巻く必要がないのでコストを下げられる。
永久磁石による界磁のため,界磁は一定。
→ トルクは電機子電流に比例,回転速度は電源電圧にほぼ比例
→ 様々な特性が直線的に変化するため制御しやすい。
交流モータ
回転磁界
単相交流と三相交流
単相交流
電圧が1つの正弦波で表される交流(正弦波でなくても周期的
に極性と電圧が変化するものも広い意味で交流)
巻数や大きさなどの性能が等しいコイルを,中心から見た位置が120度
間隔になるように配置して,それぞれのコイルに三相交流を流す。
→ 合成磁界は,大きさを保って方向が中心位置の周りで回転する
回転磁界になる。
三相交流
同じ周波数で同じ電圧の3つの単相交流が周期が1/3(位相では120度)
ずれた状態で一組になっているもの
誘導モータ
構造(誘導モータ,同期モータ)
[回転原理]
アルミニウム板の上で図のように磁石を移動
→ 誘導電流としてうず電流が発生
うず電流の方向:
移動方向の前方・・・磁束密度が高くなるのでそれを打ち消す(磁束
を減らす)方向
移動方向の後方・・・磁束密度が低くくなるのでそれを打ち消す(磁
束を増やす)方向
→ 磁石の直下ではうず電流の向きが同じ(図の手前方向)
→ 磁束と電流の関係から,アルミニウム板は右方向に電磁力を受ける
これを利用して,円板状のアルミニウム板の周囲で磁石を移動させる
と,円板は磁石の移動方向と同じ方向に回転(アラゴの円板)。
空き缶の周りで磁石を回転させると空き缶が回転。
誘導モータでは磁石を回転させる代わりに,コイルを使った回転磁
界を用い,導体の回転子に流れる誘導電流と回転磁界の相互作用で
回転子が回転。
回転子の基本構造
[特徴]
回転子が銅(あるいはアルミ)と鉄のみ(磁石を持たない)
負荷電流,トルクとすべりの関係は以下の図の通り
回転する交流磁界で銅(あるいはアルミ)に誘導電流が流れる
→ 誘導電流と回転する磁界の相互作用で回転子が回転
構造が簡単で低コスト,堅牢。
ある程度回転磁界に遅れて回る。
[特性]
回転子が回転磁界と同じ速さで回転したら誘導電流は発生しない
→ 回転子の回転速度は回転磁界の回転速度(同期速度)より
遅くなる
・・・回転子にすべりが生じているという
一般的な誘導モータではすべり0.3付近が最大トルク
すべりSは次のように表される。
S=
NS − N
NS
0 < S <1
( )
実際に運転に使用するのは最大トルクよりすべりの小さい領域
(NS:同期速度,N:回転子の回転速度)
周波数を下げると界磁を作る励磁電流は大きくなる(∵コイルのリア
クタンスが周波数に比例する)ため,磁束密度を一定にするには電圧
も下げる必要がある。
→ (電圧)/(周波数)を一定に保って電圧,周波数を変化させる
(V/f制御)ことによりトルク特性曲線が平行移動する(平行推
移という)。
[単相誘導モータ]
身近な家電製品などでよく使われている。
単相交流では回転磁界は発生しない
回り始めてしまえば回転する
始動時に回転磁界を作る工夫が必要
→ 回転数を変化させてもトルクを一定に保つことができる。
→ ・二つのコイルで二相回転磁界を作る
主コイルと始動コイルで磁界の位相差が生じるのを利用
<分相始動単相誘導モータ>
電圧と周波数の制御により,速度,トルクなどの特性を制御できる。
→ VVVF(variable voltage variable frequency)制御(可変電圧可変
周波数制御)
<コンデンサ始動単相誘導モータ>
・磁束の経路の一部にリング状の短絡コイル(くま取りコイル)
を設ける
<くま取りコイル型単相誘導モータ>
回転が始まったら始動コイルは切り離される
コンデンサ始動では回転を始めた後でもコンデンサを接続した
まま運転するものもある(コンデンサモータ)(モータの力率
が良くなる)
同期モータ
[位相特性]
[回転原理]
回転速度は界磁の回転速度(同期速度)。
止まっている状態からいきなり同期速度で回転ないため,始動時に
は工夫が必要。
(始動用モータの使用,半導体による周波数制御,など)
永久磁石型同期モータは誘導モータより効率が高い。
負荷の大きさにより,回転子の磁石の方向が回転界磁の磁束方向よ
り角度δだけ遅れて回転(δを負荷角という)。
送電線路の受電端に設置して送電線電流の位相や大きさを調整し,
送電線の定電圧送電を行うことができる。
制御を必要とするモータ
発電機
ブラシレスモータ
モータ・・・電気的エネルギー → 機械的エネルギー の変換
直流モータの整流子とブラシを半導体で置き換えた構造
半導体素子による駆動回路で動かす
用途:ハードディスク駆動用モータなど
外転型(アウタ・ロータ): 回転子コイルをそのまま固定子として利
用して,外側の磁石とヨーク(カバー)
が回転
内転型(インナー・ロータ): 外側のヨークに電磁石を取り付けて固定
子とし,内側に永久磁石の回転子を配置
同じ構造で,機械的に回転軸を回すと,電磁誘導により
機械的エネルギー → 電気的エネルギー の変換ができる
発電機
直流発電機(他励,分巻,直巻,複巻,永久磁石型)
巻線で界磁を作るものは,始動時には残留磁界により電機子に
誘導起電力を生じ,界磁電流が流れると電圧が上昇して行く。
交流発電機(誘導発電機,同期発電機)
ステッピングモータ
磁極の吸引を半導体で切り換えながら回転トルクを得る。
入力パルス信号の数に応じて回転。
誘導発電機は励磁電流を流す必要がある。
(単独運転はできない。交流電源系統と接続して同期速度より
速く回転させることにより電源側に電流供給する発電機とな
る。)
(詳しくは別の章で取り扱う)
同期発電機は単独運転もできる。
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