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東アフリカで導入が進む キャピタル・ゲイン税
東アフリカで導入が進む キャピタル・ゲイン税 2014年9月18日 調査部 竹原 美佳 1 本日の内容 キャピタル・ゲイン税とサブサハラのフロンティア 地域における探鉱開発モデル ウガンダ・モザンビークにおける最近の導入事例、 再導入を検討するケニアの状況 キャピタル・ゲイン税への対応に関する考察 2 アフリカにおける原油・天然ガス資源の分布 ウガンダ ケニア (石油) モザンビーク (天然ガス) 3 キャピタル・ゲイン税とは? Capital gains tax(キャピタル・ゲイン税) 譲渡収益(capital gain)に対する課税 譲渡収益を事業所得の一部と見なし、非居住者に対しても課税 資源国による導入の目的:地下資源からの利益最大化 課税率(%) ウガンダ モザンビーク ケニア 備考 30% 2005年以降油田発見 2010年所得税法改正 32% 2010年以降深海ガス田発見 2012年所得税法改正 再度導入予定 1985年課税停止(30%) 2012年以降油田発見 石油法改正中 4 キャピタル・ゲイン税とサブサハラフロン ティアの探鉱開発モデル [開発の主体] スーパーメ ジャー、中 堅独立系 [探鉱の主体] 中小独立系 中小独立系が探鉱を行い、開発を中堅・スーパーメジャーに 引き継ぐサブサハラフロンティアの探鉱開発モデルに異変? 5 参考:アフリカにおけるフロンティア 6 ウガンダ:2005年以降油田発見(中小独立系)、 スーパーメジャー、中国企業開発に参加 【ウガンダにおける石油開発】 2002年以降北西部陸上アルバート リフト堆積盆地3鉱区(EA1、EA2、 EA3A)で複数油田発見 確認・推定埋蔵量:約17億バレル 投資決定:2015末/16年(見込み) パイプラインプレFEED、開発コンセ プトの検討などを実施中 出所「活発化する東アフリカ・リフト 堆積盆の探鉱」JOGMEC石油天然 ガスレビュー2010年9月 生産開始予定:2018~2020年頃 目標生産:20~23万バレル/日 7 ウガンダ~ケニア (Lokichar経由Lamu)原油 輸出パイプライン: 約1,300km 石油貯蔵ターミナル: Hoima、Lokichar、ラム ウガンダ:Capital Gain税、製油所問題等 により開発遅延 2010年1月 Heritageは3鉱区権益を売却 2010年7月 ウガンダ政府、TullowとHeritageの資産買収承認(Tullow Oilによる Heritage課税分立て替え) 2011年3月 TullowはTotal・CNOOCに3鉱区権益各33.3%売却(合意) 2012年2月 ウガンダ政府、PS契約を承認 2013年4月 ウガンダ政府、製油所建設で事業者と基本合意 2013年9月 ウガンダ政府、Kingfisher油田(EA3)開発承認 2014年1月 ウガンダ政府と上流事業者(Tullow、Total、CNOOC)はウガンダの油 田総合開発計画に関する主要条件で合意 2014年5月 ケニア、ウガンダ、ルワンダはウガンダ~ケニア(Lokichar経由Lamu) 向け石油輸出パイプラインの運営委員会設置で合意(6月、FS・基本設計監理ア ドバイザー公募) (ウガンダ、ケニア上流事業者は同運営委員会との協力について合意) 2014年6月 ウガンダ政府、製油所建設で韓国SK、露RT Global をショートリスト 9 ウガンダの石油産業における適用事例 対象資産 買収合意時期 合意額 売り手 買い手 課税額 Block EA1、 2010年1月 EA2、EA3A 14.5億ドル (50%) Heritage Tullow 3.13億ドル Block EA1、 2011年3月 EA2、EA3A 29.4億ドル (66%) Tullow 4.72億ドル →4.07億ド ル(未決) CNOOC Total 10 ウガンダ:Capital Gain税(CGT)を巡る係争 ~2009年 ウガンダ 税務当局 CGT課税 2010年 2011年 2012年 2013年 買収② Tullowに 4.72億ドル 買収① Heritageに 3.13億ドル ②のCGT Tullow1.42億ドル 支払い ①のCGT Tullow立替 CGT 支払い ウガンダ 政府承認 2014年 買収①承認 買収① (結審) PS契約承認 (12年2月) EA2 PSA 保留 Tullow →Heritage に返還請求 Tullow勝訴 (14年7月) Tullow、ウガンダ 国税不服審判所 (TAT)に申し立て 買収② (進行中) TAT裁定(7月) →課税4.07億 ドルに Tullowは裁判所ならびに国際投資紛争解決センター(ICSID)への提訴を検討 事業承認から生産開始の主な流れ 政府事業 承認 基本設計 (FEED) 投資決定 (FID) 設計調達 建設(EPC) ファイナンス 生産開始 土地収用 インフラ 社会、環境 12 モザンビークの石油産業における適用事例 対象資産 買収合意時期 合意額 売り手 買い手 課税額 Area1 (8.5%) 2012年6月 19億ドル Cove Energy PTT 2.4億ドル Area4 (20%) 2013年3月 42.1億ドル Eni CNPC 4億ドル+ 発電所 Area1 (10%) 2013年6月 24.7億ドル Videocon ONGC/ Oil India 2.27億ドル Area1 (10%) 2013年8月 26.4億ドル Anadarko ONGC 5.2億ドル 13 モザンビーク:2010年以降北部深海 でガス発見(中堅、スーパーメジャー) 【モザンビークにおける天然ガス 開発】 2010年以降北部Rovuma堆積盆 2鉱区(Area1、Area4)でガス田 発見 Area1(推定埋蔵量):50~70Tcf Area4(原始埋蔵量):80Tcf 2014年8月:新石油法可決 LNG計画 Area1:1期500万トン×2トレイン (Area4:FLNG) 投資決定:2014年末(見込み) 14 ケニア:2012年以降油田発見(中小独立系)、 探鉱活性化 【ケニアにおける石油開発】 2012年以降、北西部陸上South Lokichar堆積盆地において複数 の油田発見 推定資源量:約6億バレル 投資決定:2015末/16年(見込み) 石油法:改正中 キャピタル・ゲイン税:導入を検討 15 キャピタル・ゲイン税への対応 キャピタルゲイン税のあり方 キャピタル・ゲイン追求型の企業と、部分的な売却は行う が、その国に腰を据えて開発に携わる企業は同列に扱う べきなのか? ビジネスと資源国の発展におけるバランス モザンビークにおけるEniの事例(キャピタル・ゲイン課 税を現金とインフラ投資で物納)はモザンビーク政府のよ る国の発展追求とビジネスのバランスを追求する柔軟性 のあらわれか? 16 キャピタル・ゲイン税への対応 企業: 対資源国:周辺国の事例研究、適切なアドバイザー選定の上、 交渉 対自国政府:法的な投資環境整備支援の働きかけ 政府 投資環境整備への支援 (例:2013年6月、日・モザンビーク投資協定) 投資促進(ビジネス)と相手国の発展のバランス アフリカへの投資促進 17 まとめ 資源国におけるキャピタル・ゲイン税導入の目的は自国 の地下資源からの利益の最大化にある模様。 サブサハラでフロンティア地域における中小独立系と中 堅・スーパーメジャー分業体制が同税適用により崩れ、 探鉱の停滞につながるか? ウガンダではキャピタル・ゲイン税適用を巡り係争や開発 が遅延。 モザンビークではキャピタル・ゲイン税適用を巡る係争は 起きておらず、税制変更の過渡期には現金と物納という 興味深い事例あり。政府の投資促進(ビジネス)と国の発 展のバランスを追求する柔軟性を示す一例か。 資源国が周辺国を参考に法改正やキャピタル・ゲイン税 を導入しようとする動きに対し、企業も周辺国の事例を研 究し、適切なアドバイザーを選定の上、資源国と交渉を 行うことが有効と思料。 18