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農薬販売者の手引き
農薬販売者の手引き 平成25年5月 岐阜県病害虫防除所 - 1 - 目 第1 農薬の販売にあたって 第2 農薬の取扱い 第3 農薬の安全・適正使用について 第4 農薬管理指導士とは 第5 農薬をめぐる最近の情勢 次 資料編 ○農薬販売に関する事務取扱行政機関 ○農薬販売の届出に係る様式 農薬販売届(新規) 様式第1号 農薬販売届(変更) 様式第1号の2 農薬販売届(廃止) 様式第1号の3 農薬販売届 添付書 様式第2号 ○農薬受払帳の参考様式 ○岐阜県農薬安全使用に係る指針 - 2 - 第1 1 農薬の販売にあたって 届出 農薬取締行政の基本は、農薬について登録制度を設け、農薬の販売および使用の規制等を行う ことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用を確保することにあります。 農薬販売者は、定められた様式(様式第 1 号)により、販売所ごとに都道府県知事に届出が義 務づけられています。届出後は、各販売店ごとに農薬販売届出済証が発行されます。 ○届出に必要な書類一覧(提出先:病害虫防除所) 種 様式 類 第1号 ・ 販売開始 新規 ・ 販売所の増設 様式 様式 第1号の2 第1号の3 様式第2号 (添付書) ○ ○ ○ ○ 旧・届出済証 届出時期 ※1 開始日まで ・ 販売所の住所変更 ・ 代表者の住所変更 ・ 代表者の変更 ※2 変更 ・ そ の 他 届 出 事 項 の (○) ※3 ○ ○ ※4 変更 2週間以内 ・ 販売の中止 ・ 会社統合で別法人 となる場合 廃止 ・ 個人→法人に変わ る場合 ※5 ○ ○ ※4 ※1:届出が遅れた場合は、遅延理由書(様式は自由)が必要。 ※2:個人商店において代表者が替わる場合は、旧代表者名で廃止届を提出した後、新代表者名で 新規届を行う。 ※3:住所変更および販売に関する内容に変更が生じた場合に必要。 ※4:旧・農薬販売届出済証の原本を紛失した場合は、届出済証紛失届(様式は自由)が必要。 ※5:個人から法人になる場合は、個人で廃止届を提出した後に、法人として新規届を行う。 2 届出様式の記載要領等 届出にあたっては、以下の事項に従って所定の様式に記入し、正本1部を病害虫防除所まで提 出してください。 提 岐阜・西濃・中濃・東濃地域 岐阜県病害虫防除所(本所) 〒501-1152 岐阜市又丸729 農業技術センター内 TEL (058)239-3161 (直) (飛騨地域の届出も受け付けます) 出 先 提 出 飛 騨 地 域 岐阜県病害虫防除所飛騨支所 〒506-8688 高山市上岡本町7-468 飛騨総合庁舎内 TEL (0577)33-1111(代) - 3 - 郵送、 持ち込み 方 法 (1) 農薬販売届(新規および販売所の増設) (様式第 1 号および様式第2号) 新規に農薬販売を開始する場合に、販売所ごとに届出を行います。また、販売所を増設し た場合も、新規の届出に準じます。 (ア) 申請者の住所及び氏名 申請者の住所、氏名(法人にあってはその名称及び代表者の氏名)、電話番号等を記入 し、押印します(法人にあっては代表者印)。 (イ) 販売を行う販売所所在地、販売所名、電話番号等を記入します。 (ウ) 農薬販売開始年月日欄に、販売を開始する年月日を記入します。 (エ) 農薬販売届添付書(様式第2号) 販売所の業種区分、農薬の保管管理状況等を記入し、販売届に添付します。 申請者の住所、氏名及び販売を行う販売所名を記入し、該当項目を○で囲みます。 ○ 新規に農薬販売を開始する場合(例) <法人の場合> 申請者 住 氏 所 名 岐阜市薮田南2-1-1 株式会社 岐阜県 代表取締役 岐阜 太郎 印 ← 代表者印 (法人の場合にあってはその名称及び代表者の氏名) 郵便番号 500 - 8570 電話番号( 058 )272 - 1111 *代表者印は、登記されている代表者の丸印とします(角印は不要) <個人の場合> <個人の場合> 申請者 住 所 氏 名 岐阜市薮田南2-1-1 岐阜 太郎 印 (法人の場合にあってはその名称及び代表者の氏名) 郵便番号 500 - 8570 電話番号( 058 )272 (2) 農薬販売届(変更) - 1111 (様式第 1 号の 2) 現在、届出を行っている内容に変更があった場合に届出を行います。 (ア) 各項目については、<変更前>に(1)新規の場合と同様に記入し、変更のない項目について は、<変更後>欄に「変更なし」と記入します。 (イ) 変更の項目については、<変更前>と<変更後>を併記します。 (ウ) 発行されている農薬販売届出済証(原本)を添付します。 - 4 - (エ) 販売所所在地が変更となった場合は、農薬販売届添付書(様式第2号)を添付します。 ○販売所名が変更になる場合(例) 販売所所在地 <変更前> 販 売 所 名 岐阜市薮田南2-1-1 <変更後> 変更なし <変更前> 株式会社岐阜県 岐阜県庁店 <変更後> 株式会社岐阜県 岐阜支店 郵便番号 500 - 8570 電話番号( 058 )272 - 1111 (農薬販売届出済証番号) 第 (3) ○○○○ 農薬販売届(廃止) 号 (様式第 1 号の 3) 農薬の販売を中止する場合に届出を行います。 (ア) 各項目については、(1)新規の場合に準じます。 (イ) 販売を廃止した販売所所在地、販売所名、農薬販売届出済証番号等を記入します。 (ウ) 販売を廃止した年月日を記入します。 (エ) 発行されている農薬販売届出済証(原本)を添付します。 (4) 農薬販売届(再発行) (様式第 1 号の 2) 農薬販売届出済証を紛失した場合、農薬販売届(変更)(様式第1号の2)を以下のよう に修正し、届出済証紛失届を添付して届出を行います。 (ア) 各項目については、(2)変更の場合に準じます。 (イ) 届出書の標題を「(変更)再発行」と修正します。 (ウ) 変更の項目については、<変更前>欄には現在の届出内容を記入し、<変更後>欄には「変更 なし」と記入します。 ○再発行の場合(例) *再発行の場合は、<変更後>欄に「変更なし」と記入 農薬販売届(変更)再発行 販 売 所 名 <変更前> 株式会社岐阜県 <変更後> 変更なし - 5 - 岐阜県庁店 ○届出済証紛失届(任意様式で、以下のことを記載して提出願います。) ① ② ③ ④ 3 紛失理由 今後、紛失しないことを明記 代表者名及び代表者印の押印 提出日 帳簿の備え付けおよび記帳 農薬販売者には、農薬取締法に基づき帳簿(受払帳)の備え付けが義務づけられています。帳 簿には、全ての農薬(普通物、毒物、劇物を問わず)について、種類ごとに受入数量および払出 数量を記載しなければなりません。 帳簿はその日ごとに記入し、少なくとも3年間は保存する必要があります。 農林水産省の登録農薬には、「農林水産省登録第○○○○号」と登録番号が入っています。 例:家庭用の除草剤、家庭菜園用の殺虫剤・殺菌剤、ハンドスプレー式の殺虫剤(衛生害虫 用を除く)・・・など 取り扱い商品について、一度確認してください。 (1) 農薬受払帳の例 以下の様式は参考様式であり、必要な情報が管理できれば、様式・方法は問いません。 (例)POS システム、パソコンの表計算ソフト、商用帳簿、大学ノートで手書き管理など 品目 スミチオン乳剤 ※1 月日 受入・出払先 ※2 受入数量 9. 1 ○○○商会(株) 10 . 5 売上 2 8 .10 売上 3 5 10. 1 売上 1 4 . 2 店内で使用 ※4 1 3 . 5 ○○○商会(株) 規格 500ml 数量単位 出払数量 残高 ※3 コード 在庫数量 備考 10 7 店内の園芸商品に使用 10 11. 1 10 棚卸・倉庫保管 ※1:農薬の種類・規格ごとに管理し、各品目ごとに数量を把握できるようにする。 ※2:普通物に関しては、払出先の記録は不要。 ※3:各品目の残高数を帳簿上で管理し、実際の数量と照合する。 ※4:帳簿の目的は数量管理であるため、店内での使用や無償譲渡した場合についても記録が必要。 - 6 - (2) 水質汚濁性農薬の販売に関して シマジン剤(除草剤)は、水質汚濁性農薬として指定されています。これらの農薬について は、譲渡先および譲渡数量を記録する必要があります。 シマジン剤は普通物ですが、販売にあたっては、譲渡先および譲渡数量を記録してください。 品目 シマジン 規格 100g 数量単位 出払数量 残高 コード 月日 受入・出払先 受入数量 在庫数量 備考 9. 1 ○○○商会(株) 10 . 5 岐阜太郎(売上) 2 8 岐阜市○○○ .10 大垣次郎(売上) 3 5 大垣市○○○ 10. 1 ○○○商会(株) 10 5 10 毒物、劇物の譲受書と同様に、購入者に記入してもらっても構いません(押印は必要ありません)。 例) シマジン譲受書 譲受年月日 譲 受 人 平成19年 9月 5日 氏名 岐阜 太郎 住所 岐阜市○○○ 譲受数量 4袋(400g) (毒物、劇物の譲受書を流用してもよい。) 水質汚濁性農薬とは 一定の地域でまとまって使用すると水質を汚濁するおそれが高い農薬は、水質汚濁性農薬と して指定されています。都道府県によっては、使用地域が制限されている場合があります。 現在登録されている水質汚濁性農薬:シマジン剤(平成25年4月現在) (なお、以前指定されていた「マリックス剤」は、平成24年3月から使用禁止になりましたので、 ご注意下さい。) - 7 - (3) 毒物、劇物に該当する農薬の販売に関して 毒物および劇物に該当する農薬の販売に関しては、毒物及び劇物取締法に基づき、以下の記 録を書面で5年間保存する必要があります。 (1)毒物または劇物の名称及び数量 (2)販売又は授与の年月日 (3)譲受人の氏名、職業及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事業所の所在地) ・業者間の取引 販売側で書面に所定事項を記入すればよい。 ・使用者への販売 購入者が所定の事項を記入し、押印する。 劇物及び毒物譲受書 譲受年月日 譲 受 人 平成19年 9月 5日 氏名 岐阜 太郎 住所 岐阜市○○○ 職業 農業 譲受数量 印 4袋(400g) - 8 - 第2 1 農薬の取扱い 農薬取締法による農薬の定義 農薬取締法において「農薬」とは、以下のように定義されています。 第1条の2 この法律において「農薬」とは、農作物 ※1(樹木及び農林産物を含む。以下「農作 物等」という。)を害する薗、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以 下「病害虫 ※2」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤 ※3(その薬 剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるもの を含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤そ の他の薬剤をいう。 2 前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。 3 この法律において「製造者」とは、農薬を製造し、又は加工する者をいい、「輸入者」と は、農薬を輸入する者をいい、「販売者」とは、農薬を販売(販売以外の授与を含む。以下 同じ。)する者をいう。 ※1:人が栽培している植物の総称を指し、その栽培目的、肥培管理状況は問わない。一般の農作 物、観賞用の植物、ゴルフ場や公園の芝、街路樹のほか、肥培管理のほとんど行われていな い山林樹木なども該当する。 ※2:病菌、害虫、鳥獣、雑草などが含まれる。農作物に害を与えない不快害虫、衛生害虫は含ま ない。 ※3:展着剤など。 2 無登録農薬の取扱いの禁止 農薬販売者および使用者は、登録番号(農林水産省登録第○○○○号)など、法令で規定され た表示が、その容器または包装になされている登録農薬を取り扱わなければなりません。 登録農薬は、農作物、人畜などに対する影響について厳正な検査が行われ、あらゆる面からそ の安全性が確認されています。 無登録農薬の販売および使用に関しては、重い処罰が科せられます(農薬取締法第 17~19 条)。 違反内容 3 罰 則 販売に係る義務違反 3年以下の懲役(自然人) 使用に係る義務違反 100万円以下の罰金(自然人)、1億円以下の罰金(法人) 3年以下の懲役 100万円以下の罰金 有効期限切れ農薬の取扱い 農薬は品質の確保の観点から、最終有効年月がラベルに表示されています。有効期限を過ぎた ものは、効果が十分得られなかったり、農作物や人畜に対して思わぬ被害を与える可能性があり ます。有効期限については日頃から注意し、期限が切れたものは販売しないようにしてください。 4 適正な保管・管理など 事故や事件を防止するためにも、農薬の適正な保管・管理に努めなければなりません。 - 9 - (1) 農薬の保管・管理について ・肥料その他の農業資材と区別して保管・管理する。 ・毒物または劇物に該当するもの、防災上危険なものは、「毒物及び劇物取締法」および「消 防法」に従い、適正に保管・管理する。 ・特に保管上注意すべき事項については、農薬のラベルに記載されているので熟読する。 (2) 農薬の運搬・配達について ・毒物および劇物、危険物について、その運搬に関する基準が設けられている場合があるため、 関係法令を確認する。 ・破損や流出などに注意し、事故防止を図る。 ・購入者に農薬を届ける際は、必ず責任のある人に手渡し、留守の場合は玄関先などに野積み にしない。 万一、運搬中や保管中に事故や盗難などがあった場合は、速やかに警察署など関係機関に連 絡し、危害防止に努めてください。 5 虚偽の宣伝等の禁止 農薬の販売にあたっては、有効成分の含有量や効果などについて虚偽の宣伝を行うことは禁じ られています。また、農薬ではない農業用資材については、農薬の効果をうたって販売を行って はいけません。 6 農薬でない除草剤の販売について 農薬取締法に基づく登録を受けていない非農耕地専用と称する除草剤は、農耕地で使用するこ とはできません。このような除草剤の販売にあたっては、購入者が誤解するような販売方法は避 ける必要があります。なお、農薬でない除草剤を農耕地で使用すると、登録農薬の使用に係る義 務違反として、罰せられます。 (1) 除草剤の農薬登録の有無について ジェネリック品 ※ と呼ばれる格安の除草剤がありますが、これらは農薬登録を受けているも のと、農薬登録を受けていない非農耕地専用のものがあります。 ※:特許が切れた薬品で、安く製造販売されている商品。 (2) 農耕地では使用することができない旨の表示 ・農薬でない非農耕地専用除草剤を販売する場合、販売者は店内の見やすい場所および商品の 容器または包装に「この除草剤は農薬として使用することができない」旨の表示が必要とな ります。 - 10 - 農薬でない除草剤の表示義務について 農薬取締法の改正により、平成16年から農薬でない除草剤の販売にあたっての表示義務が 定められました。 ○農薬との混在陳列は避ける 他物質と農薬の販売場所は明確に分離してください。 ○購入者の誤解を招くような表記は避ける 「○○農薬と効果は同等」、「○○農薬と同一成分で安い!!」など、登録農薬と同様で あるかのような誤解を生じさせる表記は避け、購入者が誤って購入し、農耕地で使用するこ とのないようにしてください。 ○購入者への説明 購入者に対して、農耕地では使用できない旨を説明してください。 7 特定農薬(特定防除資材)の販売について 改正農薬取締法では、新たに無登録農薬の製造や使用を禁止したため、農作物の防除に使用さ れる薬剤や天敵で、その安全性が明らかなものまで農薬登録を義務づける過剰規制とならないよ う、特定農薬(特定防除資材)という仕組みが作られました。 (1) 特定農薬に該当する防除資材 以下の資材を防除目的で使用する場合は農薬として扱われ、販売にあたっても一般農薬と同 様の扱いが必要となります(農薬販売の届出、帳簿の記入など)。 ・天敵(使用場所と同一の都道府県内で採取されたもの) ・重曹 ・食酢 - 11 - 第3 農薬の安全・適正使用について 農薬使用者には、農薬を安全かつ適正に使用する責務があります。また、農薬には、農薬使用基 準が定められており、それに違反した場合には罰則が科せられることがあります。そのため、販売 者も農薬使用者に課せられる責務を十分認識し、販売窓口においては農家など農薬の購入者に対し て、その取り扱いについて適切に助言することが望まれます。 1 農薬使用者の責務 平成 14 年の農薬取締法改正により、農林水産省・環境省令として「農薬を使用する者が遵守 すべき基準」(農薬使用基準)が定められ、違反した場合には罰則が科せられることとなりまし た。 農薬使用基準では、農薬の使用に関して次に掲げる責務を有すると規定されています。 ・農作物等に害を及ぼさないようにすること。 ・人畜に危険を及ぼさないようにすること。 ・農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となって人畜に被害 が生じないようにすること。 ・水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとならないようにすること。 ・公共用水域の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚染に係る水(その汚濁により汚染される水 産動植物を含む)の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること。 2 農薬を使用する者が遵守すべき基準(農薬使用基準) 農薬は、食品として利用される農作物に使用されるため、農作物に付着した農薬を摂取しても 人の健康に影響がない量として、各作物ごとに農薬の残留基準が定められています。これを超え ないためには、試験で確認された使用方法(使用作物、時期、濃度、回数)を守る必要があり、 この使用方法は農薬の容器に貼り付けられたラベルや包装に記載されています。 (1) 表示事項の厳守 食用及び飼料の用に供される農作物等に対して農薬を使用する場合、次の事項に違反すると、 その使用者は罰則の対象となります(農薬取締法第 12 条 3 項)。 ① その農薬に適用がない作物へは使用しないこと。 ② 定められた使用量又は濃度を超えて使用しないこと。 ③ 定められた使用時期(収穫前日数等)を守ること。 ④ 定められた総使用回数以内で使用すること。 (農業、家庭菜園を問わず、全ての農薬使用者が対象) - 12 - (2) 農薬使用者の努力義務 以下の項目は、努力義務として定められています。 ① ② ③ ④ 有効期限切れ農薬を使用しないこと。 農薬を使用した日や場所、作物、農薬の種類や量を記帳すること。 航空散布や住宅地周辺での散布で、農薬が飛散しないようにすること。 水田で使用する農薬の止水期間を守ること。 ⑤ 土壌くん蒸剤の被覆時期を守り揮散防止に努めること。 (3) 農薬使用計画書の提出 以下に該当する農薬使用者は、農薬使用計画を農林水産大臣に提出することが義務づけられ ています。 ・くん蒸による農薬使用者(自ら栽培する農作物等にくん蒸により農薬を使用する者は除く) ・航空機を用いた農薬使用者 ・ゴルフ場の農薬使用者 3 農薬の取扱い方法などの助言 農薬購入者に対して、防護衣やマスクなどの着用や農薬ごとに定められた使用方法の遵守、使 用後の余った農薬の保管・管理を適切に行うよう、十分な注意喚起を行ってください。 (1) 使用目的・使用方法などの助言 農薬購入者がどのような目的(使用場所・対象作物など)で使用するのか十分に把握し、そ れに応じた適切な農薬を販売することが重要です。購入者に対して適切な助言を行うためには、 常日頃から販売する農薬の特性を十分に知っておくことが重要です。 (2) 販売時の注意点 ・散布する作物に適用のない農薬を勧めたり、効果などについて過大な宣伝を行わないでくだ さい。 ・農薬には水質の汚濁を生じる恐れが高いものや、カイコやミツバチなど有用昆虫に影響する ものがあり、その使用場所が規制されているものがあります。 - 13 - 第4 農薬管理指導士とは 農薬使用管理責任者など、農薬の取り扱いについて指導的役割を果たすべき者のうち、一定の基 準を満たす者を、各都道府県において「農薬管理指導士」として認定しています。 岐阜県では、農薬販売者が農薬管理指導士の認定を取得することを勧めています。 1 農薬管理指導士の任務 農薬管理指導士は、以下に掲げる事項を中心に、他の農薬販売者、農家、ゴルフ場の農薬使用 者などに指導・助言を行い、農薬の安全かつ適正な使用の推進にあたることが求められています。 ① 農薬の特性を踏まえた適正な使用 ② 農薬使用に伴う人畜に対する危被害防止及び環境の保全 ③ 農薬使用基準の厳守 ④ 農薬の適正な保管・管理 ⑤ 毒物又は劇物に指定された農薬の適正な取り扱い及び安全使用 ⑥ 事故例が多いことなどから特に注意を必要とする農薬の安全使用 ⑦ 県が定めた指針などに基づいた病害虫・雑草の防除 2 農薬管理指導士の資質 農薬管理指導士は、農薬取締法など関係法規、農薬の特性、農薬の適正使用方法、病害虫・雑 草の発生生態や防除に関することなど、農薬全般に対する十分な知識を有することが求められま す。また、農作物などの安定的な生産に不可欠な農薬が、いかにしてその安全性が確保されてい るか理解したうえで、農薬の適正使用に関する認識を深めなければなりません。 - 14 - 第5 農薬を取り巻く情勢 農薬は、農作物など病害虫の防除において有効な手段ですが、それが周辺に飛散すると、人など に健康被害を及ぼすおそれがあります。また、平成 18 年より残留農薬基準のポジティブリスト制 度が施行され、近隣作物への農薬飛散についても、これまで以上に注意を払う必要が出てきました。 農薬販売者も、農薬取り巻く昨今の情勢について、どのようなことが課題となっているか認識し、 購入者に対して適切に助言していくことが望まれます。 1 新しい農薬残留基準制度について (1) 残留農薬のポジティブリスト制度 農作物の残留農薬については、食品衛生法に基づき残留農薬基準が設定されています。平成 18 年5月 29 日から改正食品衛生法が施行され、その基準が大きく変わりました。 農薬と作物の残留基準の組み合わせ ○従来の基準 農作物/農薬 ○ポジティブリスト制度施行後 農薬A 農薬B 米 1.0 5.0 小麦 1.0 キャベツ 0.5 コマツナ 0.5 2.0 (ppm) (凡例) 基準なし 農作物/農薬 農薬A 農薬B 農薬C 農薬D 米 1.0 5.0 0.01 0.01 小麦 1.0 0.5 0.01 0.01 キャベツ 0.5 2.0 0.01 0.01 コマツナ 0.5 1.0 0.01 0.01 ○○○ 0.01 0.01 0.01 0.01 △△△ 0.01 0.01 0.01 0.01 残留基準 暫定基準 一律基準 基準なし:新制度以前は、特定の組み合わせにしか基準がなかった 残留基準:新制度以前から基準のあったものは、そのまま移行したものが多い 暫定基準:国際基準等、参考にできる基準があるものは、当面それらを適用させた 順次見直し、残留基準値が設定される 一律基準:国内外に基準がないものは、一律に0.01ppmが適用された ※ppm:100万分の1を基準とする割合の単位(100万分率) 1ppm = 0.0001% これまでは、残留農薬基準が設定された農薬と農作物の組み合わせのみについて、基準を超過 した場合、その農作物の流通が禁止されていました。しかし、ポジティブリスト制度施行後は、 全ての農薬と農作物の組み合わせについてその基準が設けられました。 - 15 - (2) 農薬の残留基準値超過を防ぐには 農薬は、農薬使用基準に従い正しく使用すれば、残留農薬基準を超えて残留することはあり ません。しかし、近接ほ場で使用した農薬が周辺作物に飛散し付着した場合や、使用者の不注 意などによりその基準値を超過する可能性があります。このため、農薬使用者は以下の点に十 分注意を払う必要があります。 ○農薬の飛散防止 (ア)散布前 ・病害虫や雑草の発生状況を十分把握し、農薬散布の必要性について事前に検討する。 ・共同防除など広域で散布を実施する場合は、地域の作付マップを作成し、予め散布除外 ほ場や散布注意箇所を把握する。 ・明らかに近接作物への飛散が懸念される場合は、事前に周辺栽培者との連携を図り、防 除計画や収穫時期について連絡調整を行う。 ・近接作物への飛散が懸念されるほ場では、その作物に農薬登録があるまたは残留農薬基 準が高く設定されている農薬を選定する。 ・粒剤など飛散しにくい剤型の使用が可能ならば、剤型を変更する。 ・寒冷紗など遮蔽物の設置やドリフト低減ノズルの利用など、散布機の種類や条件、品目 に応じて適切な飛散低減対策を検討する(低減効果や作物への付着量は、事前に感水紙 で確認する)。 (イ)散布時 ・風の強さや風向きの変化に十分注意し、風が強い時(風速3m以上)や風下に近接作物 がある場合など、近接作物への飛散の恐れがある場合は、直ちに作業を中止する。 ・適正な圧力で散布し、ほ場の境界ではノズルを内側に向けるなど、基本的な注意事項を 厳守する。 ・適正な散布量で散布する(散布した液が作物から滴り落ち始める程度)。 ・目的とする作物にできる限り近くから正確に散布する。 (ウ)散布後 ・近接作物へ飛散した恐れがある場合は、直ちに栽培者に連絡を行うとともに、飛散を受 けた作物の農薬登録や収穫日、出荷日について情報を収集し、必要な場合は残留農薬検 査を受ける。 ・農薬使用履歴は必ず記帳し保管する。 ○ラベル記載事項の厳守(誤った使用方法は、農薬取締法にも違反します) ・必ず適用のある作物に使用する。作物グループ名が不明な場合は、必ず病害虫防除所や 各地域の農業普及課等に確認する。 ・定められた使用量または濃度を超えない。 ・使用時期(収穫前日数)を厳守する。 ・定められた総使用回数以内で使用する(有効成分ごとの回数)。 ・ラベルの記載事項に従うこと(散布方法など)。 - 16 - ○その他の注意事項 防除機の洗浄不足が原因で、次回の散布時にタンク内やホースに残った農薬が散布され、 残留農薬基準を超過した事例があります。使用後は、タンク、ノズルやホース内に残った薬 液がないか確認し、丁寧に洗浄を行いましょう。また、後片づけが終わったら、直ちに手や 防除衣を洗い、作物に不要な農薬が付着しないよう、十分に注意しましょう。 2 住宅地等における農薬使用について 近年、住宅地周辺等で使用された農薬の飛散が原因で、地域住民や子ども等が健康被害を訴え る事例が多くなっています。 【国】平成25年4月26日 25消安第175号・環水大土発第1304261号 農林水産省消費・安全局長 環境省水・大気環境局長 通知 住宅地等における農薬使用について 農薬は、適正に使用されない場合、人畜及び周辺環境に悪影響を及ぼすおそれがある。特に 、学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地(市 民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等(以下「住宅地等」という。)において農薬を使用す るときは、農薬の飛散を原因とする住民、子ども等の健康被害が生じないよう、飛散防止対策 の一層の徹底を図ることが必要である。(以下略) (1) 農薬使用の回数と量の削減 (ア)病害虫や雑草の早期発見に努める 観察や見回りなどを行い、病害虫の早期発見に努めましょう。発見が遅れると、すでに 病気や害虫、雑草が蔓延し防除が困難になります。また、期待された薬剤効果が得られな い恐れがあります。 (イ)農薬のスケジュール散布をやめる 病害虫の発生や被害を確認しないまま定期的に農薬を散布する、いわゆるスケジュール 散布は止めましょう。 (ウ)病害虫に強い作物や樹木、品種についての検討 作物や樹木は、その種類や品種によって病害虫の発生程度が大きく異なります。病害虫 に強い作物や樹木、品種を選びましょう。 (エ)適切な土作りや施肥の実施 病害虫の発生は、ほ場環境や土壌条件の違いによりその発生程度は大きく異なります。 - 17 - ほ場の排水条件や肥料の投下量、土壌のpH条件などを適正に保ち、病害虫の発生しにく い栽培環境作りに努めましょう。 (オ)農薬以外の物理的防除を優先 特に公園等においては、害虫の捕殺や被害部位の除去などを優先し、やむを得ない場合 にのみ農薬による防除を行いましょう。また、住宅地周辺の農地や家庭菜園などにおいて は、防虫網など物理的防除の活用を積極的に行いましょう。 (2) 農薬を使用する場合に守るべきこと (ア)飛散しない農薬の選択 誘殺、塗布、樹幹注入剤や粒剤など、飛散の少ない農薬を活用しましょう。やむを得ず 農薬を散布する場合は、必要最小限の散布に努めましょう。 (イ)農薬の飛散防止に最大限配慮する 農薬の散布は、無風か風が弱いときに行いましょう。特に、近くに学校・通学路がある 場合は、子ども等がいない早朝に散布を行うなど十分注意しましょう。また、散布に際し ては、飛散の少ない剤型や飛散を抑制するノズルを使用したり、動力噴霧器の圧力を上げ すぎないようにし、散布作業中は常に風向きやノズルの向き等に注意しましょう。 (ウ)ラベル記載された内容に従って使用 農薬取締法に基づいて登録された農薬を使用する。また、散布に際しては、そのラベル に記載された使用方法および使用上の注意事項を守って使用しましょう。 (エ)事前に十分な周知を行う 農薬を散布する場合は、事前に周辺住民へ十分な周知を行いましょう。また、近隣に学 校・通学路がある場合は、学校や保護者等にも連絡しましょう - 18 - 資 料 ・農薬販売に関する事務取扱行政機関 ・農薬販売の届出に係る様式 ・農薬受払帳の参考様式 ・岐阜県農薬安全使用に係る指針 - 19 - 編 農薬販売に関する事務取扱行政機関 1 病害虫防除所 事務内容 農薬取締法関係の事務を取り扱っている。 ①農薬販売者の届出受理に関する事務 ②農薬販売者の業務報告徴収に関する事務 ③農薬販売者の指導取締(立入調査)に関する事務 ④農薬販売者の研修会など指導に関する事務 2 保健所 事務内容 毒物及び劇物取締法関係の事務を取り扱っている。 ①毒物劇物営業所の登録に関する事務 ②毒物劇物営業所の報告徴収に関する事務 ③毒物劇物営業所の指導取締に関する事務 3 所轄区域及び機関名 機関 区域 岐阜市 羽島市・各務原市 岐南町・笠松町 本巣市・瑞穂市 山県市・北方町 保 健 所 岐阜市保健所 TEL(058)252-7191 岐阜市都通2-19 岐阜保健所 TEL(0583)80-3002 各務原市不動丘1-1 岐阜県健康科学センター内 岐阜保健所本巣・山県センター TEL(058)213-7269 岐阜市薮田南5-14-53 ふれあい福寿会館6階 TEL(0584)73-1111 大垣市・海津市・養老町・ 西濃保健所 大垣市江崎町422-3 西濃総合庁舎内 垂井町・関ヶ原町・神戸町 ・輪之内町・安八町 揖斐川町・大野町 池田町 病 害 虫 防 除 所 病害虫防除所(本所) 岐阜市又丸729 農業技術センター内 TEL(058)239-3161(直) ※飛騨地域の届出も受付 けます。 西濃保健所揖斐センター TEL(0585)32-1530 揖斐郡揖斐川町上南方1-1 揖斐総合庁舎内 関市・美濃市 関保健所 TEL(0575)33-4011 美濃市生櫛1612-2 中濃総合庁舎内 中濃保健所 TEL(0574)25-3111 美濃加茂市・可児市 美濃加茂市古井町下古井大脇2610-1 坂祝町・富加町・川辺町・ 可茂総合庁舎内 七宗町・八百津町・白川町 ・東白川村・御嵩町 郡上市 多治見市・瑞浪市 土岐市 中津川市・恵那市 高山市・飛騨市 白川村 下呂市 中濃保健所郡上センター TEL(0575)67-1111 郡上市八幡町初音1727-2 郡上総合庁舎内 東濃保健所 TEL(0572)23-1111 多治見市上野町5-68-1 東濃西部総合庁舎内 恵那保健所 TEL(0573)26-1111 恵那市長島町正家後田1067-71 恵那総合庁舎内 飛騨保健所 TEL(0577)33-1111 高山市上岡本町7-468 飛騨総合庁舎内 飛騨保健所下呂センター TEL(0576)52-3111 下呂市萩原町羽根2605-1 下呂 総合庁舎内 - 20 - 病害虫防除所飛騨支所 高山市上岡本町7-468 飛騨総合庁舎内 TEL(0577)33-1111(代) 参考様式 農薬受払帳の参考様式 No. 品目 月日 規格 受入・出払先 受入数量 数量単位 出払数量 残高 - 21 - コード 在庫数量 備考 【農薬受払帳の記入例】 ※農薬受払帳は、3 年間の保存が義務づけられています(農薬取締法第 10 条)。 ○普通物、毒物、劇物の全農薬が対象 品目 スミチオン乳剤 ※1 月日 受入・出払先 ※2 受入数量 9. 1 ○○○商会(株) 10 規格 500ml 数量単位 出払数量 残高 ※ 3 在庫数量 備考 10 . 5 売上 2 8 .10 売上 3 5 10. 1 売上 1 4 . 2 店内で使用 ※4 1 3 . 5 ○○○商会(株) コード 7 店内の園芸商品に使用 10 11. 1 10 棚卸・倉庫保管 ※1:農薬の種類・規格ごとに管理し、各品目ごとに数量を把握できるようにする。 ※2:普通物に関しては、出払先の記録は不要。 ※3:各品目の残高数を帳簿上で管理し、実際の数量と照合する。 ※4:帳簿の目的は数量管理であるため、店内で使用したり、無償譲渡した場合についても記録が 必要。 ○水質汚濁性農薬(シマジン)の販売に関して (1)販売店側が、販売先を記録する場合 品目 シマジン 規格 100g 受入数量 数量単位 出払数量 残高 コード 月日 受入・出払先 9. 1 ○○○商会(株) . 5 岐阜太郎(売上) 2 8 岐阜市○○○ .10 大垣次郎(売上) 3 5 大垣市○○○ 10. 1 ○○○商会(株) 10 在庫数量 備考 10 5 10 (2)購入者(譲受人)に記入してもらう場合 譲受年月日 譲 受 人 シマジン譲受書 平成19年 9月 5日 氏名 岐阜 太郎 住所 毒劇物の譲受書のように、購入者が記入してもか まいません。押印は必要ありません。 岐阜市○○○ 譲受数量 4袋(400g) (毒物及び劇物の譲受書を流用してもよい。) - 22 - 岐阜県農薬安全使用に係る指針 策定平成15年10月27日 岐阜県農林水産局 最終改正平成19年6月4日 岐阜県農政部 第1 趣旨 農薬の安全かつ適正な使用及び適切な保管管理の徹底は、農産物の安全性の確保及び農業 生産の安定のみならず、県民の健康の保護及び生活環境の保全の観点からも極めて重要であ る。 一方、「ぎふ農業・農村振興ビジョン」においては、安全・安心な農産物を供給するため、 「総合的病害虫・雑草管理(IPM)」の考えを取り入れた生産方法の導入を推進すること としている。IPMとは、化学農薬による防除、生物的防除、耕種的防除、物理的防除など 多様な防除手段の中から経済性を考慮しつつ適切な手段を選択して、総合的に病害虫・雑草 を管理する手法である。本県では既に「ぎふクリーン農業」(化学合成農薬と化学肥料を慣 行栽培に比べてそれぞれ30%以上削減した栽培)の推進を図る中で化学農薬の代替となる 技術普及を進めており、今後も新たな技術開発を含め、IPMを取り入れた生産方式の推進 を図る。 このような中、安全・安心な農産物を供給し、生活環境の保全を確保するため、農薬使用 にあたっての留意事項をとりまとめた指針を策定する。 第2 指針の対象者 この指針では、農薬使用者、農薬使用委託者、農薬の散布を行う土地・施設等の管理者(市 民農園の開設者を含む。)、殺虫、殺菌、除草等の病害虫防除の責任者(以下「農薬使用者 等」という。)を対象とする。 家庭菜園や芝等に農薬を使用する者も該当する。 第3 定義 1 この指針において「農作物等」とは、人が栽培する植物の総称を指し、その栽培目的、肥 培管理の状況を問わない。稲、野菜、果樹の他、飼料作物、観賞の目的で栽培している樹 木、盆栽、草花、ゴルフ場や公園の芝、街路樹も含む。肥培管理がほとんど行われていな い山林樹木も該当する。 2 この指針において「農薬」とは、農作物等を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他 の動植物又はウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生 理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。また、 防除のために利用される天敵も該当する。 第4 農薬使用者等の責務 農薬使用者等は、農薬の使用に関し、次に掲げる責務を有することを常に自覚し、農薬の - 23 - 使用を行うものとする。 1 農作物等に害を及ぼさないようにすること。 2 人畜に危険を及ぼさないようにすること。 3 農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となって人畜に被害 が生じないようにすること。 4 農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因とな って人畜に被害が生じないようにすること。 5 水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとならないようにすること。 6 公共用水域(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する 公共用水域をいう。)の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水(その汚濁により汚 染される水産動植物を含む。)の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにするこ と。 第5 農薬使用に係る安全確保のための基本的事項 農薬使用者等は「農薬取締法」等関係法令を遵守するとともに、以下の事項の遵守に努め るものとする。なお、これに関する具体的事項については別に記載する。 1 一般的な留意事項 ①農薬取締法に基づいて登録された農薬を使用すること。 ②定期的な防除は廃し、病害虫の発生状況を踏まえて防除を行うこと。 ③農薬安全使用に関して最新の知識、技術を身につけるよう、県等が実施する研修会等 に積極的に参加すること。 ④生物的防除や耕種的防除などを組み合わせ、化学農薬の散布回数や量の削減に努める こと。 ⑤不慮の事故や事件を防止するために農薬の適正な保管管理を行うこと。 ⑥病害虫の防除を実施する際に、別記1に示す基本的事項を念頭に実施するよう努める こと。 2 安全・安心な農産物確保のための留意事項 ①食用、飼料用、非食用農作物にかかわらず、農薬取締法に基づいて登録された、防除対 象の農作物等に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(使用回数、使用 量、希釈倍率、使用時期等)及び使用上の注意事項を守って使用すること。なお、稲発 酵粗飼料用稲については「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル(稲発酵粗飼料推進 協議会編)」によること。 ②種苗を用いて農産物を生産する場合には、種苗生産段階において使用された農薬の有効 成分及び使用回数が表示されているので、農薬のラベルに表示されている有効成分の総 使用回数から当該種苗に表示されている使用回数を引いた回数を超えて農薬を使用しな いこと。 ③最終有効年月を過ぎた農薬を使用しないよう努めること。 ④農薬の使用状況等が把握できるよう、次の事項について帳簿に記載し、3年程度保管す - 24 - ること。 (ア) 農薬を使用した年月日 (イ) 農薬を使用した場所 (ウ) 農薬を使用した農作物等 (エ) 使用した農薬の種類又は名称 (オ) 使用した農薬の単位当たりの使用量又は希釈倍数 (カ)農薬を使用したときの気象条件(風の強さ)等 ⑤調査研究等で明らかに内分泌攪乱作用が認められた物質を成分とする農薬や毒性の強い農 薬については可能な限り使用しないよう努めること。 3 生活環境保全のための留意事項 ①学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地 (市民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等(以下「住宅地等」という。)における病 害虫防除にあたっては、農薬の飛散が周辺住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがな いよう、別記1及び別記2の事項を遵守すること。 ②水田において農薬を使用するときは、農薬のラベルに記載されている止水に関する注意 事項等を確認するとともに、必要な措置を講ずること。 ③土壌において被覆を要する農薬を使用するときは、農薬を使用した土壌から当該農薬が 揮散することを防止するために必要な措置を講ずること。 ④航空機(航空法第2条第1項に規定する航空機をいう。)及び無人ヘリコプターを用い て農薬を使用するときは、農薬を使用する区域における、風速及び風向を観測し、対象 区域外に農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講ずること。 4 その他留意事項 ①水棲動植物及び蚕、みつばち等有用昆虫に対する影響が少ない薬剤を選定するとともに、 関係者との情報交換に努めるなど、危害防止に十分配慮すること。 ②農薬の飛散による周辺農作物への影響防止対策の徹底を図るため、別記3、別記4及び 別記5に示す農薬使用前、使用中及び使用後に注意すべき具体的事項を遵守すること。 ③農薬使用者は、農薬のラベルに記載されている使用上の注意事項を確認して、マスクや 防除衣などの保護具を着用するなど十分な防備を行い、自らの安全確保に努めること。 附則 この指針は、平成15年10月27日から施行する。 この指針は、平成15年11月5日から施行する。 この指針は、平成19年6月4日から施行する。 - 25 - 別記 農薬使用に係る安全確保のための具体的事項 1 基本的事項 ①農薬使用者等は、病害虫やそれによる被害の発生の早期発見に努め、病害虫の発生や被 害の有無に関わらず定期的に農薬を散布するのではなく、病害虫の状況に応じた適切な 防除を行うこと。 ②農薬使用者等は、病害虫に強い作物や品種の選定、病害虫の発生しにくい適切な土づく りや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防虫網等による物理的防除の活用等により、 農薬使用の回数及び量を削減すること。特に公園等における病害虫防除に当たっては、 被害を受けた部分のせん定や捕殺等を優先的に行うこととし、これらによる防除が困難 なため農薬を使用する場合(森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)に基づき周辺 の被害状況から見て松くい虫等の防除のための予防散布を行わざるを得ない場合を含 む。)には、誘殺、塗布、樹幹注入等散布以外の方法を活用するとともに、やむを得ず 散布する場合には、最小限の区域における農薬散布に留めること。 ③農薬使用者等は、農薬散布は、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない 天候の日や時間帯を選び、風向き、ノズルの向き等に注意するとともに、粒剤等の飛散 が少ない形状の農薬を使用したり農薬の飛散を抑制するノズルを使用する等、農薬の飛 散防止に最大限配慮すること。 2 住宅地等における使用 ①農薬使用者及び農薬使用委託者は、農薬を散布する場合は、事前に周辺住民に対して、 農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類について十分な周知に努めること。特に、 農薬散布区域の近隣に学校、通学路等がある場合には、当該学校や子どもの保護者等へ の周知を図り、散布の時間帯に最大限配慮すること。公園等における病害虫防除におい ては、さらに、散布時に、立て看板の表示等により、散布区域内に農薬使用者及び農薬 使用委託者以外の者が入らないよう最大限の配慮を行うこと。 ②農薬使用の段階でいくつかの農薬を混用する、いわゆる現地混用を行う場合は、農薬使 用者等は次の点に注意すること。 ・農薬に他の農薬との混用に関する注意事項が表示されている場合は、それを厳守するこ と。 ・試験研究機関がこれまでに行った試験等により得られている各種の知見を十分把握した 上 で、現地混用による危害等が発生しないよう注意すること。その際、生産者団体が 発行している「農薬混用事例集」等を必要に応じて参考とし、これまでに知見のない農 薬の組合せで現地混用を行うことは避けること。特に有機リン系農薬同士の混用は、厳 に控えること。 3 使用前 ①対象とする病害虫や雑草の発生状況を十分に把握し、農薬散布の必要性について事前に - 26 - 検討を行うこと。 ②近接作物の位置を必ず確認すること。共同防除など広域で散布を実施する場合は地域の 作付けマップを作成し、予め散布除外ほ場や飛散注意箇所を把握すること。 ③明らかに近接作物への飛散が懸念される場合は、事前に周辺栽培者との連携を図り、防 除計画や収穫時期についての連絡・調整を行うこと。 ④近接作物への飛散が懸念されるほ場での農薬選定に当たっては、その作物に農薬登録が あるまたは一律基準以外の基準が設定されている農薬を選定すること。 ⑤粒剤など飛散しにくい剤型の使用が可能な薬剤では、剤型の変更を行うこと。 ⑥寒冷紗などの遮蔽物設置やドリフト低減ノズルの利用など、散布機の種類や条件、品目 に応じて適切な飛散低減対策を検討すること。なお、低減効果や作物への付着量は、事 前に感水紙で確認できる。 ⑦ノズルの目詰まりやホースの接続など散布機を点検し、十分に洗浄がなされているか確 認するとともに、マスクや防除衣など必要な保護具を準備すること。 ⑧農薬の使用に当たっては、容器の表示事項等をよく読んで、安全かつ適正に使用するこ と。また、使用に関し不明な点がある場合は、農薬販売店や病害虫防除所、農業改良普 及センター等県関係機関等に確認すること。 ⑨事故や事件等を防止するために、毒物又は劇物に該当する農薬のみならず、全ての農薬 について、安全な場所に鍵をかけて保管する等農薬の保管管理には十分注意すること。 また、農薬を他の容器(清涼飲料水の容器等)へ移し替えないこと。 ⑩散布前後の気象状況に十分注意を払い、大雨等により降雨量が多くなる恐れがある場合 には、農薬の使用を控えること。 4 使用中 ①隣接住宅の窓が開いていないか、洗濯物や布団が干していないかに注意すること。 ②農薬散布地域周辺に車がないか十分注意すること。 ③風の強さや風向きの変化に十分に注意し、風が強い時(風速3m以上)や近接作物が風 下になる場合など、近接作物への飛散の恐れがある場合は直ちに作業を中止すること。 なお、風速3mとは「顔に風を感じる、小枝が動く」程度である。 ④散布機の圧力は適正にし、ほ場の境界ではノズルを内側に向けるなど、基本的な注意事 項を遵守すること。 ⑤適正な散布量で散布すること。(散布した液が作物から滴り落ち始める程度) ⑥目的とする作物にできる限り近くから正確に散布を行うこと。 ⑦育苗箱、ペーパーポット等に農薬を使用する際は、使用農薬が周囲にこぼれ落ちないよ う慎重に防除を実施すること。 ⑧水田において農薬を使用するときは、農薬のラベルに記載されている止水に関する注意 事項等を確認するとともに、止水期間を1週間程度とし、止水期間の農薬の流出を防止 するために必要な水管理や畦畔整備等の措置を講じるよう努めること。また、水田周辺 の養魚池における淡水魚等の被害及び河川、水道水源等の汚染の防止等に最大限配慮す ること。 ⑨土壌くん蒸剤の使用に当たっては、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、 - 27 - 防護マスク等の防護装備の着用、施用直後のビニール等での被覆等を確実に実施するこ と。特に、クロルピクリン剤については、使用場所、周辺の状況に十分配慮して防除を 行うこと。 ⑩土壌くん蒸剤の施用後は、速やかに被覆することを徹底するとともに、施用と同時にビ ニール等で被覆する技術やテープ剤、錠剤等を使用した簡便な施用技術も活用すること。 特に、ビニールハウスをはじめとする施設等のなかにおいてクロルピクリン剤等の土壌 くん蒸剤を使用する場合は、次の事項を遵守すること。 ・施設内での作業中は、出入口、天窓、側窓等を開け通気を行う。 ・施用作業後は直ちに密閉し、臭気が残っている期間は施設内に入らない。 ・くん蒸後の作業でハウス内に入る場合には、臭気が無くなったことを確認してから十 分換気した後に入室する。 5 使用後 ①使用残りの農薬を不注意に廃棄したり、不要になった農薬を放置したりすると、思わぬ 事故を引き起こすことがあるので、その処理に当たっては関係法令を遵守して適正に行 うこと。また、散布に使用した器具及び容器を洗浄した水は、河川等に流さず、散布む らの調整等に使用すること。特に、種子消毒剤等農薬の廃液処理に当たっては、周辺環 境に影響を与えないよう十分配慮した処理を行うこと。 ②近接作物へ飛散した恐れがある場合は、直ちに栽培者に連絡を行うとともに、飛散を受 けた作物の農薬登録や収穫日、出荷日について情報を収集し、必要な場合は残留農薬検 査を受けること。 ③使用後の散布機はタンク、ノズルやホース内に残った薬液がないか確認し、丁寧に洗浄 を行うこと。 ④後片づけが終わったら、直ちに手や保護具を洗い、作物に無用な農薬が付着しないよう にすること。 - 28 -