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ITU-T SG16札幌会合報告
グローバルスタンダード最前線 ITU-T SG16札幌会合報告 た な か きよし† 1 ま つ お しょうへい† 2 田中 清 /松尾 翔平 †1 おおむろ ひとし† 2 さ か や せいいち † 3 /大室 仲 /坂谷 精一 †2 †3 NTTサービスエボリューション研究所 /NTTメディアインテリジェンス研究所 /NTTネットワークサービスシステム研究所 2014年 6 月30日 か ら 7 月11日 の 日 程 で,ITU-T SG16(International Telecommunication Union Telecom ITU-T SG16(マルチメディア) 課題20:全体調整 munication Standardization Sector WP1(マルチメディアシステム) 課題 1 , 2 , 3 , 5 , 21:テレビ会議システムやテレプレゼンス等 Study Group 16)会合が札幌コンベ WP2(マルチメディアサービスと アクセシビリティ) 課題13(IPTV) ンションセンターにて開催されまし 課題14(デジタルサイネージ) た.ここでは,SG16札幌会合の成果 課題26(アクセシビリティ) を報告するとともに,併催されたサ 課題25, 27, 28:IoT,ITS,e-Health WP3(メディア符号化と信号処理) SG16会合の成果 課題 6(映像符号化) JCT-VC, JCT-3V 共催 イドイベントについても紹介します. ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11(MPEG) 課題10(音声符号化) 課題 7 , 15, 16, 18:信号処理等 SG16はマルチメディア関連の国際 図 1 SG16の構成と主な検討課題 標準となるITU勧告を策定していま す. 3 つのWP(Working Party)か ら構成され,さらに研究テーマごとの 課題に分かれて議論されています(図 1) .報告するSG16札幌会合は,今会 期(2013〜2016年)の第 3 回目の会 合であり,24カ国232名が参加して開 催されました(写真 1 ) .コンセント された勧告草案が67件で,大きな進捗 があった会議となりました.以下, NTTが貢献した課題について審議状 況を報告します. ■IPTV 日本が主導的に取り組んできた 写真 1 会場となった札幌コンベンションセンター IPTVの基本仕様については,これま でに勧告化作業が完了しましたが, IPTVに関する課題13では最近はス 本会合ではNTTからもセカンドス いて用語整理を行った技術文書 マートTVというキーワードを包含し クリーンサービスなどに用いられるデ HSTP.IPTV-Gloss(2)が完成し,発行 て,マルチスクリーン,マルチデバイ バイス発見の検討を加速するため, 合意されました. ス利用型のサービス,リモコン以外の ユースケースの提案と勧告草案を分か ■デジタルサイネージ 音声やジェスチャ,タッチパッドと りやすくするための説明図の追記提案 デジタルサイネージはITU-Tでは いった操作インタフェースに関する検 を実施しました.また,スマートTV 新しい研究課題であり,今会期から課 を含むIPベースのTV型サービスにつ 題14として設立されました.前会期で (1) 討が行われています . 44 NTT技術ジャーナル 2014.12 日本からの提案に基づき勧告化され 緊急通報システムの検討成果に基づく に 14 kHz帯域(SWB: Super Wide たデジタルサイネージの基本勧告 ものです. 今回の寄書では, アプリケー Band)に 拡 張 す る 方 式 の 標 準 化 に H.780 にはサービス上の要求条件や ションレイヤにおいて必要となる情報 2007年から取り組んできました.ス IPTVベースのアーキテクチャが記載 (データ)の仕様と,これらの勧告化 ケーラブル符号化とは,従来の方式に されていますが,現在はさらに応用 に向けた活動提案が行われました. よる符号データに音声帯域を広げるた (3) サービスの観点からの検討が進められ ています. 今会合では,日本企業から主体的に 会合での議論の結果,勧告化推進に めの符号データ(帯域拡張符号デー ついては合意が得られ,今回の提案内 タ)を追加して伝送する方式で,再エ 容をベースとした新規の作業項目 ンコードなしに従来の方式と相互接続 作業項目提案を実施し,作業を主導的 (H.ACC-RDE)を立ち上げたうえで, できることが特長です(図 2 ) .SWB に進めてきたデジタルサイネージの災 詳細仕様について今後検討が進められ 拡張は,2010年11月にG.711.1 Annex 害時利用に関する勧告草案H.785.0 ることとなりました. Dとして承認された後,浮動小数点演 がコンセントされ,またインタラク ■音声符号化 算実装(Annex E)やステレオ拡張 (4) ティブサービスに関する技術文書 (5) (Annex F)の標準化を進めてきまし 課題10では音声符号化の検討が行 HSTP.DS-UCIS も発行合意されま われています.NTTは電話音声(3.4 した. kHz帯域)用コーデックとして広く利 今会合では,前会合までに作成され ■アクセシビリティ 用 さ れ て い るG.711の 拡 張 で あ る たAnnex Fの浮動小数点演算実装の勧 7 kHz帯域(WB: Wide Band)スケー 告案に対して,NTTとHuawei Tech- 課題26では,マルチメディアサービ * ス ・ システムのアクセシビリティ に た(表) . (6) ラブル音声符号化G.711.1 を,さら nologiesから固定小数点実装との相互 関する検討が行われています.今回の 会合では,聴覚 ・ 言語機能障がい者か 50 Hz パワ らの緊急通報を可能とするシステムに ついて,NTT共著の寄書 2 件が提案 14 kHz 7 kHz 3.4 kHz 300 Hz されました. この提案は,TTC(Telecommuni- 電話 音声 cation Technology Committee: 情 報 広帯域 音声 14 kHz帯域 音声 周波数帯域 通信技術委員会)の「緊急通報アクセ シビリティワーキングパーティ(EmCall WP) 」 (WPリ ー ダ: 加 納 貞 彦 符号データ の構造 電話帯域 符号データ (64 kbit/s) G.711 早稲田大学名誉教授)にてNTTを含 14 kHz帯域拡張 広帯域拡張 符号データ 符号データ (16∼32 kbit/s) (16∼32 kbit/s) G.711.1 む通信キャリアや緊急通報にかかわる ベンダ ・ サービス提供会社,消防庁, 障がい者団体参加のもと議論が行われ G.711.1Annex D端末 G.711.1 Annex D G.711符号データのみ抜き出す G.711.1D符号データ G.711符号データ 従来電話 ている,携帯電話 ・ スマートフォンを 用いた聴覚 ・ 言語機能障がい者向けの * アクセシビリティ:高齢者や障がい者を含む誰 でもサービスやシステムを支障なく利用可能に すること. ゼロ詰め 符号データ変換 図 2 スケーラブルなビットストリーム構成 NTT技術ジャーナル 2014.12 45 グローバルスタンダード最前線 表 G.711.1の拡張 時 期 名 称 符号化の内容 2010年11月 Annex D 14 kHz帯域拡張符号化(固定小数点演算) 2012年 9 月 Annex E Annex Dの浮動小数点演算実装 2012年 9 月 Annex F 14 kHz帯域ステレオ拡張符号化(固定小数点演算) 今会合で合意 Annex G Annex Fの浮動小数点演算実装 接続性に関する客観評価試験結果の寄 ク単位でコピーして効率良く圧縮する 書を提出し,レビューして相互接続性 技術や出現頻度の高い色の組み合わせ に問題がないことを確認,コンセント と色マップ情報に分解して圧縮する技 しました.本勧告案はG.711.1 Annex G 術などが濃密な審議を経てブラッシュ として標準が成立する予定です. アップされ,SCCの性能改善が進め ■映像符号化 られました.10月会合以降も引き続き プとショーケースの模様について紹介 SCCの審議が進められる予定です. します. 映像符号化を検討する課題6 (VCEG) ,およびISO/IEC JTC 1 / SC 29/WG11(MPEG) の 2 つ の グ 日本への招致 写真 2 ワークショップ風景(藤田所長) ■ワークショップ 2014年 7 月 1 日午後に小ホールに て,SG16札幌会合に併催するローカ ループによる共同検討部会JCT-VC (Joint Collaborative Team on Video SG16会合の日本への招致は,2013 ルイベントとして,ワークショップ Coding)の第18回会合が2014年 6 月 年11月 6 日に総務省からITU-Tマル (Workshop on Multimedia technolo 30日から 7 月 9 日の期間で開催され コム ・ ジョンソン事務局長宛に招待状 gies)が開催されました.本ワーク ました.参加人数は約140名で,入力 が発出されたことを受け,同 8 日の ショップは後述する展示会と連動する 寄書数は約340件でした.次世代高能 SG16プレナリ会合にて正式に決定し かたちで,SG16会合ホストである日 率 映 像 符 号 化 規 格H.265 /HEVC ました.会合の実施 ・ 運営を円滑に行 本企業によって企画されました.ワー (High Efficiency Video Coding)の拡 うため,スポンサ企業により日本開催 クショップは,展示会の出展物の紹介 張規格の策定が進行し,具体的には 支援委員会が構成されました.準備作 を中心とした技術紹介を行う技術講演 HEVCのスケーラブル拡張規格である 業や現地対応のために作業部会が構成 セッションと,プラチナスポンサによ SHVCの最終的な仕様が確定しまし され,実施にあたりました.NTTグ る基調講演セッションから構成されま た. 4 月会合にて仕様が確定したレン ループもプラチナスポンサとして,こ した.NTTからは, 藤田敏昭NTTサー ジ拡張規格RExtと本 7 月会合にて確 れらの委員会に参加し,会合実施をサ ビスイノベーション総合研究所長によ 定した多視点映像向け拡張規格MV- ポートしました. る基調講演(写真 2 )と 8 Kを見据え (7) HEVCと合わせて, 3 種類の拡張規格 がHEVC 2nd Editionとして各国投票 たUHDTVサービスのロードマップと サイドイベント に進むことになりました. H.265/HEVCエンコーダ技術に関す る技術講演を実施しました. また,PC上の画面をキャプチャし SG16札幌会合に併催するかたち また招待講演では,室蘭工業大学教 た 人 工 映 像 向 け の 拡 張 規 格Screen で,さまざまな会合やイベントが行わ 授でNTTシニアアドバイザの岸上順 Contents Coding(SCC)の規格草案 れました.ここでは,日本開催支援委 一教授から「Beyond the content dis も発行されました.画面内にてブロッ 員会によって企画されたワークショッ tribution, and its technology」という 46 NTT技術ジャーナル 2014.12 Media Transport(MMT) を 用 い た ロバスト伝送技術です. 4 K映像を十 字分割して 4 つのハードウェアエン Kinect×3 コーダで符号化し,高いロバスト耐性 を有するNTT提案のLow Density Gen モニタ (自由視点画像表示) erator Matrix(LDGM)符号を用い てストリームを高信頼に伝送します. 多くの見学者からさまざまなご意見 (a) 多視点映像とデプスマップを用いた自由視点テレビ をいただいており,前者は見学に訪れ た上川陽子総務副大臣(当時)からの 実用化への期待の声や,カメラのない 4K エンコーダ 位置の映像が見られて面白いとの評価 MMT-BOX ソフト エンコーダ 4 K画像 パケットロス 発生器 受信 4 K画像 デコーダ ×4 (b) MMT FECを用いた高信頼 4 K H.265/HEVCリアルタイム伝送 図 3 展示風景 をいただきました.後者は 4 K映像の リアルタイム処理が実現できることに 対する評価(JCT-VC議長および会合 参加者)や, 8 K映像に対する対応要 望の声などが挙がっていました.連日 数多くの国内外会合参加者,関係技術 者,政府要人,報道関係者が訪れてお り,大変盛況な展示会でした. ■参考文献 テーマでメタデータに関するITU-T (8) (9) からは「多視点映像とデプスマップを 勧告F.750 とH.750 の相似性,およ 用いた自由視点テレビ 」と「MMT び近年のメタデータの重要性やメタ FECを 用 い た 高 信 頼 4 K H.265/ データの今後の方向性について解説し HEVCリアルタイム伝送」という 2 種 ていただきました. 類のデモを出展しました(図 3 ) . ワークショップへの参加者は81名 前者は複数台のカメラ,およびデプ で,うち56名は当日会議が開催されて スセンサを用いて取得した多視点映 いたSG16会合,およびJCT-VCへの 像とデプスマップから自由視点映像 参加者でした. をリアルタイムで合成する技術です. ■ショーケース 独自の合成技術により,センサノイズ 標準化完了または検討中の技術を広 を含む疎なデプスから欠損のない自由 く一般にアピールするため,展示会 視点映像をリアルタイムで合成表示で (Showcasing on Cutting edge of きます. Multimedia Technologies) が 7 月 1 後者は 4 K映像のHEVCリアルタイ 日から 4 日間開催されました.NTT ムハードウェア処理技術と,MPEG (1) 田中: “スマートTVに関する標準化動向,” NTT技術ジャーナル, Vol.26, No.4, pp.48-50, 2014. (2) http://www.itu.int/pub/T-TUT-IPTV-2014-GLOSS (3) Recommendation ITU-T H.780:“Digital signage: Service requirements and IPTVbased architecture,” Geneva, Switzerland, Jun 2012. (4) Recommendation ITU-T H.785.0:“Digital signage: Requirements of disaster information services,” Geneva, Switzerland, Oct. 2014. (5) http://www.itu.int/pub/T-TUT-DS-2014UCIS (6) Recommendation ITU-T G.711.1:“Wideband embedded extension for ITU-T G.711 pulse code modulation,” Geneva, Switzerland, March 2008. (7) Reco m m en d a t io n ITU-T H.265:“Hig h efficiency video coding,” Geneva, Switzerland, April 2013. (8) Recommendation ITU-T F.750:“Metadata framework,” Geneva, Switzerland, Feb. 2005. (9) Recommendation ITU-T H.750:“High-level specification of metadata for IPTV services,” Geneva, Switzerland, Oct. 2008. NTT技術ジャーナル 2014.12 47