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台湾知財ニュース(18年3月号)

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台湾知財ニュース(18年3月号)
台湾知財ニュース(18年3月号)
・液晶パネル特許訴訟
台湾大手奇美電子が勝訴
東京地裁、日本半導体エネ研に 1000 万円の賠償金と訴訟費用九割負担を
命じる
・台湾銘茶産地等の不正商標登録
・液晶テレビ特許訴訟
無条件で和解成立
諸機関の協調介入で無償使用が可能に
シャープと台湾家電大手 TECO の対戦に終止符
共存共栄目指す
・フィリップス、ドイツ CeBIT で台湾出展 CD-R を押収 特許争訟に火種
台湾開催セミナーでも知財局 CD-R 特許強制実施決定を批判
・フランス化粧品商標訴訟
ランコム請求棄却、最高行政裁判所
❏液晶パネル特許訴訟 台湾大手奇美電子が勝訴
東京地裁、日本半導体エネ研に 1000 万円の賠償金と訴訟費用九割負担命令
台湾の液晶パネル大手、奇美電子は、日本半導体エネルギー研究所が特許権侵害とい
った不実の情報をマスコミを通じて流布したことで、同社商業上の信用を毀損されたと
して半導体エネ研を相手取り損害賠償等を求めていた裁判で、東京地裁は 24 日、奇美
電子に特許侵害の事実がないことを確認し、半導体エネ研による一方的な情報流布で奇
美電子に損害を与えたとして、同研究所に対し、1000 万円の賠償金支払いと訴訟費用の
九割負担を命じる判決を言い渡した。
奇美電子法務責任者は、「日本企業でない奇美電子に勝訴を言い渡した東京地裁の判
決で、尊重されるべき日本司法の公平性が証明された。」とのコメントを発表している。
半導体エネ研は 2004 年、2005 年に相次いで東京地裁で西友グループ、オンラインシ
ョップ「バイ・デザイン」、iiyama 株式会社が販売していた奇美電子製造液晶パネル搭
載のディスプレーやテレビの販売差止と製品回収を求める訴訟を起こした。これを受け
て、西友百貨店と iiyama はを奇美電子製造液晶パネルを搭載した製品を全面的に回収
することになった。昨年、奇美電子による特許無効審判請求について、特許庁は係争特
許を無効とする審決を下したのに続いて、東京地裁も半導体エネ研が主張する特許権を
無効とする判決を下しており、さらに本件においても、東京地裁は、半導体エネ研がマ
スコミを通じて一方的に奇美電子が同研究所の特許権を侵害したなどと不実な情報を流
したことが、不正競争と奇美電子の商業上の信用に対する誹謗中傷にあたるとして、奇
美側の賠償請求を認めた。
1
台湾企業の製品が特許権を侵害したとして外国企業からの提訴が相次ぐなか、台湾企
業が日本で起こした特許権無効確認訴訟で勝訴判決を受けたのは今回が初めてのことだ
けに、奇美電子だけでなく、産業界にとっても大変な朗報になるに違いない。
自由時報 2006.03.29 ほか
(解説)
ここ数年、韓国のライバル会社のみならず、フランスやアメリカの研究機関、これま
で台湾に製造技術を供与し、密接な提携関係にあった日本企業までが、特許侵害訴訟を
通じて台湾メーカーの市場参入を排除しようとしている。台湾パネルメーカーが世界市
場でシェアを拡大するにつれ、技術的先発企業側からの特許戦略的な攻勢は一段と強ま
っている。そうした中で、台湾企業は訴訟回避のため、不利益なライセンス条件を強い
られ、高額な特許実施料を支払わされていた。
このような情勢において、台湾パネルメーカーは自主技術開発を強化促進していく必
要があることを認識し、自主技術の蓄積に努めている。例えば、台湾液晶最大手の友達
光電が 10 億元(約 30 億円)の資金を投入して、技術研究開発センターを設置するほか、
米特許数の最も多い IBM から 170 件のパネル関連特許を取得し、シャープとクロスライ
センスを結ぶなどして、特許数を急速に増やしている。奇美電子が日立製作所とのクロ
スライセンスの対象になった特許はなんと千件にも及んでいるという。統計によると、
液晶パネル関連発明に係る米特許が年間 3,000 件のペースで増えている。アメリカ企業
自身では液晶パネルを製造しないため、これらの特許をもつ企業や研究機関から特許を
買収することによって、技術の蓄積をより速く実現できる。
液晶テレビに搭載されるパネルの世界市場の九割を、韓国のサムスン、LG.PHILIPS、
台湾の友達光電、奇美電子、日本のシャープが占めている。そのうち、友達光電と奇美
電子は自社ブランドの液晶テレビを販売していないため、韓国のサムスン電子と折半出
資で薄型テレビの基幹部品である液晶パネルの第七世代工場を建設するソニーをはじめ、
シャープも同二社から液晶パネルを調達している。世界先発企業の信頼を得たことは、
奇美電子、友達光電の技術的進展の実態を反映していることの証といえよう。
❏台湾銘茶産地等の不正商標登録
諸機関の協調介入で無償使用が可能に
台湾地域ブランドが中国で不正に商標登録されていることが昨年末頃に明るみに出た。
座視できない問題と事の重大さに気が付いて、本腰を入れて対応する構えになってきた
という感もあるが、ここにきて行政院農業委員会をはじめとする諸政府機関が積極的な
行動を起こした。
1 月 5 日、立法委員(国会議員)が公聴会を開いたに続いて、農業委員会が同月 17 日
に対策連絡会議、25 日に中国事務を所管する行政院「大陸委員会」が農業委員会、知的
財産局、貿易局、海峡交流基金会等諸関連機関を集め、対策における役割分担について
協議した。
2
新内閣発足後、経済部(経済産業省に相当)部長が変わり、新しく就任した「黄営
杉」部長はこの問題の進展及び経済部所轄機関における処理状況を非常に重視し、知的
財産局に全力を尽くして取り組むよう指示している。
聯合報 2006.03.29
(解説)
銘茶産地が不正に商標登録されたことは、正当な権利をもつ台湾業者の中国市場進出
を制限、排除する可能性があり、また銘茶以外の農産物等台湾特産物を狙うケースがま
すます増えるであろうと、市場アナリストが農業経済の発展に警鐘を鳴らしている。
不正登録発覚当初、商標所管庁としての知的財産局の対応の立ち遅れと消極的な姿勢
を非難する声もあったが、最近、知的財産局は頻繁にプレス発表を通じて同局における
不正商標登録問題の取扱いをアピールしている。
次に知財局が打ち出す様々な施策を紹介する。
1. 知的財産局のホームページ上で不正登録された銘茶産地関連商標を公表する。
2. 中国商標評審委員会に不正登録商標の取消しを申立てる台湾区製茶工業同業公会
(組合)を訪れ、法律問題に関しての意見を提供する。
3. 中国での不正商標登録に関する問題集を作成し、ホームページに掲載する。
4. 農業委員会との協力により、中国で登録をした商標権者と商標権の移転或いは使
用許諾契約の締結の可能性について協議したところ、現段階では、「阿里山」商
標について権利者が台湾の茶農家や製茶会社に無償で使用させることに同意する
という結果が得られた。このほか、「梨山」、「日月潭」について中国で商標登
録を受けている業者によると、中国で両商標を使用する台湾企業を商標権侵害で
告訴したことはなく、共同使用を認めたに等しいという。
5. 台湾の有名な地域ブランドについて、中国商標事務に精通する業者に依頼し、中
国で商標登録されることがないか、長期的に監視を続ける。
6. 原産地の産地名を如何にして証明商標に登録するか、正確な産地表示方法などを
農協や漁協に指導する。
❏液晶テレビ特許訴訟
無条件で和解成立
シャープと台湾家電大手 TECO の対戦に終止符
共存共栄目指す
台湾家電大手、東元電機(以下、TECO)は 22 日、世界最大手液晶テレビメーカー、
シャープとの間に和解が成立したことにより、双方が全ての告訴を取り下げ、賠償も請
求しないと発表し、二年近くにわたる液晶テレビを巡る泥沼の特許攻防劇に終止符が打
たれた。
東元は 2005 年 4 月 12 日に同社の日本子会社「三協」を通じてシャープを相手取り不
正競争防止法違反で 2 億円余の賠償金及び新聞への謝罪広告掲載を求める裁判を起こし
た。台湾家電メーカーの日本大手企業に対する初めての提訴であるだけに、これから日
本市場への新規参入を狙う同業者から事件の先行きが注目され、日本でも話題となった。
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2004 年 6 月、シャープは TECO 製 20 型液晶テレビ搭載の液晶パネルには同社所有の
LCD 画素欠陥修正技術に係る特許権が無断で使用されているとして、東京地裁に係争テ
レビ販売禁止の仮処分を申立てた。2005 年 2 月 16 日の最終尋問で担当裁判官から仮処
分申立ての根拠となる特許権が無効であるとの心証開示があった後、シャープは仮処分
申立てを取り下げるとともに、東京地裁に同特許をめぐる侵害訴訟を起こした。4 月 21
日、特許庁からシャープが仮処分を申立てた際に主張した特許権を無効とする審決が出
された。裁判所と特許庁が相前後して係争特許を無効にする判断を示したにもかかわら
ず、シャープは一方的に特許権が侵害されたことを主張し、税関における TECO 製液晶
テレビの輸入差止めなど事実無根の情報をマスコミに流して TECO の商業上の信用を著
しく毀損した。
経済日報 2006.03.23
(解説)
世界市場において液晶テレビの売上げは好調な伸びが期待されているなか、競争か協
力か、メーカー各社間の相互補完的な連携をする動きが目立ち始めている。市場の変動
に伴い、当初は特許訴訟により競合関係にあったライバル同士も市場優位性を獲得する
ために協力しあう関係を強めたほうが互いにプラスになるといった思惑が働き、今まで
の戦略を転換させ、法廷外で話し合いを進め、シャープと TECO は如何なる賠償も求め
ず、無条件で告訴を取り下げることで合意したというのが、今回の事例である。
シャープは’05 年第 4 四半期の生産能力不足で、液晶テレビ市場首位の座をソニーに
明け渡しそうな様相となっている。首位奪還のために、小型液晶テレビ用パネルを台湾
メーカーから調達しなければならなくなり、26、32 型液晶テレビ用パネルを、従来から
業務提携関係のある廣輝から発注するほか、2 月に奇美電子と 5 年間のクロスライセン
ス契約、さらに今回の裁判において係争特許をめぐって争っていた台湾パネル最大手の
友達光電(訴訟相手方は TECO だったが、事実上のターゲットは TECO テレビ搭載パネル
のメーカーである友達光電)とも液晶テレビ関連特許のクロスライセンスを結ぶことに
なった。
また、無条件で和解するということからすれば、双方は今後、共存共栄を目指すとい
う共通認識を達成していることもうかがえる。
いうまでもなく、シャープと TECO の連携関係へのアプローチを競合他社が無視する
わけがない。ソニーは、’05 年第 4 四半期で韓国サムスン電子との協力により、シャー
プから首位の座を奪ったものの、シャープと同じく、小型液晶テレビの供給不足問題に
直面している。東芝、パナソニックも同様である。シェアを維持するには液晶パネル供
給源の確保が大前提であり、台湾パネルメーカーは日本液晶テレビ市場争奪戦における
大きなチャンスを迎えている。
4
❏フィリップス、ドイツ CeBIT で台湾出展 CD-R を押収 特許争訟に火種
台湾開催セミナーでも知財局 CD-R 特許強制実施決定を批判
3 月、ドイツハノーバーで開催されるセビット(CeBIT)国際情報通信技術見本市に出
展する台湾光ディスクメーカー、国碩の CD-R 製品がフィリップスの申立てにより押収
される羽目になった。フィリップスと国碩の対決は三年にわたってアメリカで行われて
きたが、米 ITC(アメリカ国際貿易委員会)はフィリップスの国碩製品の米市場への輸
入販売差止申立てを特許権の濫用であるとして棄却した。しかし、昨年 9 月、米連邦控
訴巡回裁判所(CAFC)が ITC の見解を翻し、再調査を命じる判決を言い渡しており、最
終的にどちらが勝つかは見通しがつかない。
今までの争いはアメリカが中心だったが、今回は国碩製 CD-R が販売されていない西
ヨーロッパのドイツに戦場が移り、フィリップスの動きには警告と見せしめ的な意味が
強いとみられ、現場に居合わせた国碩の幹部は、今回の出展の目的は DVD プレーヤーや
DVD ライター新商品販促であるとして、フィリップスの乱暴な手法を非難した。
2004 年 7 月、台湾知的財産局がフィリップス所有 CD-R 特許について国碩による強制
実施許諾請求を許可したことで、フィリップス側は「合理的商業条件」と「相当な期間
内」についての認定は市場機能に委ねるべきであって、政府がするものではない、とこ
のほど開催されたセミナーで再び知財局の決定を批判した。同決定への不服申立ては現
在審理中。
フィリップスの CD-R 特許は中国とインドに保護されていないため、特許料を払わず
に済むということで両国に生産拠点をシフトしているメーカーも多い。
経済日報 2006.03.12 ほか
(解説)
今年 1 月 19 日、フィリップスは CD-R ライセンス供与について「Veeza」という新し
い方式を導入する考えを示した。最近、フィリップスは同社とラインセンス契約を結ん
でいる台湾メーカーと積極的に新方式の導入をめぐり交渉を行っているが、ライセンシ
ー側は詳細な営業情報をライセンサーのフィリップスに提供するほか、過去に遡っての
出荷量、販売先までの報告をしなければならないことから、これまでのところ、新方式
への切り替えに応じる業者はいない模様だ。
「Veeza」を受け入れるなら、現在の CD-R 一枚当たり 0.045 ドルから 0.025 ドルへと、
つまりライセンス料 44%カットの特典が受けられる。但し、出荷するたびに LSCD とい
うライセンス証明が必要となる。なお、ライセンス証明の出荷 CD-R への記載等により、
税関をはじめ、貿易会社や小売商等が、特許実施許諾を受けたうえで製造された CD-R
かどうかを区別することができ、出荷量の報告漏れや虚偽報告を防ぐというメリットも
ある。
国碩は知財局の CD-R 強制実施許諾決定を勝ち取ったが、強制実施は国内市場への供
給に限定される。しかし、台湾国内市場の CD-R 年間消費量は 2 億 5000 万枚とみられ、
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国碩一社だけで 2 億 1000 万枚を製造している。ところが、市販の CD-R 製品には国碩製
のものは滅多に見られず、同社製の CD-R はほとんど海外へ輸出していると見られる。
したがって、フィリップスから CD-R ライセンス供与を受けている台湾メーカーが出荷
量について虚偽の報告をし、特許実施料の負担軽減を図っていたとフィリップスはみて
おり、「Veeza」の導入に乗り出したということらしい。
❏フランス化粧品商標訴訟
ランコム請求棄却、最高行政裁判所
1998 年 9 月、台湾企業「迪施雅国際公司」(以下、D 社)は化粧品、クレンジングロ
ーション、マスク、アロマオイルなどを指定商品に「photogenic」(以下、係争商標)
について商標登録を受けている。ところが、フランス化粧品会社ランコムは、係争商標
は同社がオリジナルな発想で創り出した登録商標「PHOTOGENIC」(以下、引用商標)と
同一で、また「PHOTOGENIQUE」に類似するとして、商標不登録事由に該当し、知的財産
局に異議を申立てたが、異議不成立とされ、最高行政裁判所まで争っていた。
ランコムは引用商標が世界各国で商標登録を受けており、D 社はランコムと業務上取
引関係があるために引用商標が存在することを知り、それを意図的に襲用したと主張す
るが、台湾最高行政裁判所は、それを立証できなかったランコムの主張を認められない
として、ランコムの請求を棄却する判決を下した。
ランコムによると、同社は化粧品や香水などのブランド品として世界に名を馳せる大
手企業であり、ランコム(Lancome)の商標を付けた商品は海外で人気売れ筋商品であ
り、台湾でも化粧品として大きな存在である。ランコムは 1996 年に引用商標を創り出
し、翌年からアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国で次々と商標として出願し、
登録されている。
一方、知的財産局は、「D 社がどのようにして引用商標の存在を知ったかについての
説明がなく、引用商標が使われた化粧品が内外に販売されている証拠も提出しなかった。
まして「photogenic」は英語で写真写りがよいという意味で、オリジナルな文字の組み
合わせとは言えない」と反論した。
工商時報 2006.03.30
(解説)
まず、商標法施行細則第 15 条第 1 項により、二つの商標が類似するかどうかを判断
するには、一般的知識や経験をもつ消費者が商品購入の際に通常の注意を払って混同誤
認を引き起こすおそれがあるかどうかによる。そして著名な商標又は標章とは、客観的
な証拠によって当該商標又は標章が関係事業者又は消費者に広く認識されていると認定
されたものをいう(第 31 条第 1 項)。
次に、ランコムは化粧品や香水で世界的に有名な大手企業だが、著名商標として消費
者に広く認識されているのは「Lancome」であり、引用商標については、どこの国で商
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標登録を受けているかを記載する一覧表を除き、引用商標が実際に使用されている証拠
若しくは商品販売関連情報などを一切提出しておらず、引用商標が台湾国内の化粧品業
界や消費者によく認識されている著名商標であるとはとうてい認定できない。
また、ランコムは引用商標を D 社より先に使用していた、つまり先使用の状況に加え、D
社が如何にしてその商標の存在を知ったかを証明しないままでは、商標法第 37 条第 14 号
により、他人が先に同一商品又は類似商品に使用する商標と同一又は類似の標章について、
契約、地縁、業務上の取引その他の関係にあったことにより、引用商標の存在を知り得た
ため、係争商標に係る出願が不登録事由に該当するとの主張を認める理由がなく、当然の
ことながら、D 社が意図的にランコムの引用商標にただ乗りしたと証明するには無理であ
るとした。
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