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センターニュース6号 - 福祉環境工学科 メカトロニクスコース

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センターニュース6号 - 福祉環境工学科 メカトロニクスコース
目
次
総合科学研究支援センタ-次長挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
機器分析部門登録機器一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
機器分析部門登録機器支援組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
共同利用機器学内マップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
新規登録機器の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
平成 16 年度共同利用実績のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
平成 16 年度第1回講演会の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
平成 16 年度第2回講演会の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
第7回九州・山口地区機器・分析センタ-会議報告・・・・・・・・・・・17
行事報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
機器分析部門からのお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
1
独立行政法人化後の機器分析分野の将来
総合科学研究支援センター次長 機器分析分野長
大久保
利一
平成16年4月に国立大学が独立行政法人化されて,大分大学もこの1年間独立行政
法人としての種々の取り組みをしてきました。1年を経過してこれからいよいよ本格的
に国立大学法人としての道をたどることになると思われます。総合科学研究支援センタ
ーの機器分析分野は,旧大分大学機器分析センターをもとに,平成15年10月の大分
大学,大分医科大学の統合に伴って改組され総合科学研究支援センターの一分野となり
ました。総合科学研究支援センターの今後の発展にその一分野として貢献するとともに,
機器分析分野自体のこれまでの課題と今後の発展を考えると,この数年間が重要な時期
であると考えられます。
機器分析分野は,機器分析部門の一部門から構成され,機器分析分野長,専任教員,
専任技術職員からなります。機器分析分野は,その成り立ちから主に旦野原キャンパス
を活動の拠点としていますが,機器分析分野としての建物は現在ありません。独立法人
化後の大分大学における機器分析分野の課題を考えると,多くの課題が山積みされてい
るといっても過言ではないでしょう。
大分大学の機器分析部門には,約30の機器が登録されています。これらの殆どは,
実質的に機器を使用されている教員の方に登録をお願いして,実績を報告していただい
ています。そのため共同利用の実績を上げるのは,人員の面および費用の面からも課題
が多く,実績が上がっていないのが現状です。
独立法人化の研究費などの減少から教員が大学からの研究費で分析機器の維持・管理
することが困難になることも想定されます。機器が故障して修理費が高い場合,それを
使用している教員または研究室ではその修理費が払えず高額な機器が使えなくなるよ
うな事態が他大学でも起こっていると聞きます。また,今後時代に要求される最先端の
分析機器をどのように導入していくのかなど多くの課題が考えられます。
機器分析分野としては,これまでの設置の意義を考慮に入れて,研究および共同研究
の活性化を図り,将来の機器分析分野のあり方を検討していく必要があると考えられま
す。これらは,総合科学研究支援センターだけでなく,独立行政法人化後は,大学の執
行部および事務部門の理解と協力が重要であり,機器分析部門の課題を執行部に伝える
有効な方策を考える必要があると考えています。
現在機器分析分野としての実質はきわめて細々としたものであり,機器分析分野の将
来は,学内の皆さんのご協力とご理解にかかっているといえます。今後より一層のご支
援をお願いするしだいです。
2
総合科学研究支援センタ-機器分析部門登録機器一覧
No.
機
器
名
型
式
設置年
度
1
ラマン分光システム
T-64000
平成 3
2
パルスYAG励起色素レ-ザ-装置一式
Spectra-Physics
平成 4
3
走査型電子顕微鏡(SEM)
日立 S-800
平成 4
4
ニュ-ラルネット多次元波形解析システム
AS4080/30GX 外
平成 5
5
三次元モデル計測解析システム
東京精密三次元粗さ計ほか
平成 5
6
全自動蛍光X線分析装置
PW1480
平成 5
7
電界放射型電子顕微鏡
日立 S4500,日立 S2250N
平成 6
8
三次元機構解析装置
デンケン SLP3000
平成 6
9
ガスクロマト質量分析システム
HP5989B
平成 8
10
万能試験機
島津
平成 8
11
電子スピン装置
日本電子 JES-FEIXG
平成 8
12
立体映像制作演示システム
MORQVEE 8500/3D
平成 9
13
高機能生産シミュレ-トシステム
ダイヘンテック
平成 10
14
プラズマ・燃焼マルチ計測誘起蛍光ラディカル解析
装置
Lavision Plasma Master
平成 10
15
インテリジェント振動・音響解析システム
PSV-200-IJ
平成 11
16
光CT計測装置
浜松ホトニクス C4334-02
平成 11
17
引張・圧縮-ねじり2軸複合疲労試験機
島津サ-ボパルサ
平成 11
18
歩行解析装置(フォ-スプレ-トシステム)
キスラ-9286A
平成 11
19
集積回路開発解析システム
TLA714,1633
平成 11
20
透過型電子顕微鏡(TEM)
日立 H-7500
平成 11
21
共焦点レ-ザ-顕微鏡
キ-エンス VK-8500
平成 13
22
サ-モカップルウェルダ-
ハイマックス
平成 14
23
体圧分布測定装置
FSA
平成 14
24
3D イメージキャプチャ(形状計測装置)
日本電気エンジニアリング
Danae-R (CC-3302)
平成 14
25
三次元ビデオ動作解析システム
DKH 社製 FrameDIASⅡ
平成 14
26
デジタルマイクロスコ-プ
キ-エンス VHX-100
平成 15
27
微小材料試験システム
インストロン
平成 15
28
ホットディスク法熱物性測定装置
京都電子工業 TPA-501
平成 16
3
TCW
総合科学研究支援センタ-機器分析部門登録機器支援組織
No.
機
器
名
支援代表者
電 話
メ-ルアドレス
1
ラマン分光システム
岡元保憲
7955
[email protected]
2
パルスYAG励起色素レ-ザ-装置一式
濱本 誠
7809
[email protected]
3
走査型電子顕微鏡(SEM)
武井雅宏
7575
4
ニュ-ラルネット多次元波形解析システム
秋田昌憲
7837
[email protected]
5
三次元モデル計測解析システム
宮川浩臣
7770
[email protected]
6
全自動蛍光X線分析装置
藤井弘也
7562
[email protected]
7
電界放射型電子顕微鏡
伊藤正実
7983
[email protected]
8
三次元機構解析システム
宮川浩臣
7770
[email protected]
9
ガスクロマト質量分析システム
伊藤正実
7983
[email protected]
10
万能試験機
佐藤嘉昭
7932
[email protected]
11
電子スピン装置
石川雄一
7907
[email protected]
12
立体映像制作演示システム
宇津宮孝一
7872
[email protected]
13
高機能生産シミュレ-トシステム
津田吉廣
7774
[email protected]
14
プラズマ・燃焼マルチ計測誘起蛍光ラディカル
解析装置
大久保利一
7829
[email protected]
15
インテリジェント振動・音響解析システム
劉 孝宏
7775
[email protected]
16
光CT計測装置
田中 充
7850
[email protected]
17
引張・圧縮-ねじり2軸複合疲労試験機
後藤真宏
7772
[email protected]
18
歩行解析装置(フォ-スプレ-トシステム)
池内秀隆
7944
[email protected]
19
集積回路開発解析システム
肥川宏臣
7875
[email protected]
20
透過型電子顕微鏡(TEM)
高濱秀樹
7574
[email protected]
21
共焦点レ-ザ-顕微鏡
今戸啓二
7769
[email protected]
22
サ-モカップルウェルダ-
今戸啓二
7769
[email protected]
23
体圧分布測定装置
今戸啓二
7769
[email protected]
24
三次元ビデオ動作解析システム
池内秀隆
7944
[email protected]
25
3D イメージキャプチャ(形状計測装置)
大西謙吾
6145
[email protected]
26
デジタルマイクロスコ-プ
今戸啓二
7769
[email protected]
27
微小材料試験システム
今戸啓二
7769
[email protected]
28
ホットディスク法熱物性測定装置
今戸啓二
7769
[email protected]
※学外からのご利用に関しては地域連携推進機構(TEL 097-554-7378, FAX 097-554-7413,
E-mail:[email protected]
)にご相談下さい.
4
15
26
新規登録機器の紹介
【装置】ホットディスク法熱物性測定装置
【仕様】京都電子工業社製 TPA-501
測定原理
2個の試料でセンサを挟み込み,電流加熱した場合の試料
の温度上昇曲線から熱特性を評価する
測定温度範囲-50 ~50°
MS Windows 上で動作する計測制御ソフト付き
【概要】固体または液体の熱伝導率,熱拡散率および熱容量を測定します.
【利用例】熱物性を測定することで熱エネルギ-の流れを解析する
【予想される利用者】機械系,医療系,建築系,材料系などで熱に関連する研究をし
ている教職員、学生
7
平成16年度共同利用実績のまとめ
No.
機
器
名
総時間
回数
1
ラマン分光システム
79
9
2
パルスYAG励起色素レ-ザ-装置一式
0
0
3
走査型電子顕微鏡(SEM)
4
ニュ-ラルネット多次元波形解析システム
5
三次元モデル計測解析システム
6
全自動蛍光X線分析装置
7
電界放射型電子顕微鏡
8
三次元機構解析装置
0
0
9
ガスクロマト質量分析システム
0
0
10
万能試験機
0
0
11
電子スピン装置
0
0
12
立体映像制作演示システム
26
11
13
高機能生産シミュレ-トシステム
0
0
14
プラズマ・燃焼マルチ計測誘起蛍光ラディカル解析装置
192
48
15
インテリジェント振動・音響解析システム
0
0
16
光CT計測装置
0
0
17
引張・圧縮-ねじり2軸複合疲労試験機
101
32
18
歩行解析装置(フォ-スプレ-トシステム)
283
58
19
集積回路開発解析システム
0
0
20
透過型電子顕微鏡(TEM)
105
25
21
共焦点レ-ザ-顕微鏡
77
24
22
サ-モカップルウェルダ-
0
0
23
体圧分布測定装置
4.5
3
24
3D イメージキャプチャ(形状計測装置)
29
11
25
三次元ビデオ動作解析システム
283
58
26
デジタルマイクロスコ-プ
15
6
27
微小材料試験システム
73.5
23
*
地域共同研究センタ-で管理している
-
230
64
69.5
22
0
0
-
8
-
身体運動の計測と解析
東京医科歯科大学生体材料工学研究所
1.
1.1
石田明允
ようにオイラー角はベクトル量ではないが、そ
の角速度はベクトル量となり、ϕ , θ ,ψ は図1
肩関節の回旋運動
回旋運動
のように表わされる。これを用いれば上腕骨の
上腕骨と体幹との相対運動の中で特に上腕
長軸(x軸)回りすなわち回旋の角速度ωはベ
クトル合成により ω= - ϕ sinθ+ ψ となる。
骨の長軸回りの回旋運動を取り上げて説明す
る。それは肩関節運動の中でも重要な意味を持
つ回旋運動が、これまで十分に考慮されてこな
かったという理由による。そこで筆者らによる
これを積分すれば回旋量が得られるが、特別な
場合としてZ軸を含む面内では ϕ = 0 、XY面内
回旋運動の定義をその考え方を基に説明し、実
ではθ= 0 となり、いずれの場合も ωx=ψ す
際の計測例と回旋運動の意義を考察する。
なわち回旋量はψ2-ψ1となる。
上腕骨の体幹に対する運動をオイラー角で
表すために、右肩が原点の場合、体幹に基準座
標系をXを右方に、Zを上方に、Yを前方にと
る。また上腕骨にはその長軸をxとする運動座
標系を考える。ある時刻t1でオイラー角が(φ1,
θ1,ψ1)であったとし、時刻t2で(φ2,θ2,ψ2)
に変化したとする。ここでψ1やψ2は上腕骨の
長軸回りの回転すなわち回旋を表わす量であ
る。では時刻t1からt2の間の回旋量はψ2-ψ1と
してよいであろうか。ここでは姿勢角だけを扱
うので、体幹の基準座標系O-XYZと上腕骨座標
系o-xyzの原点は一致しているとして話を進め
図1
回旋角速度ベクトル
る。x軸の運動がZ軸を含む面内(矢状面や前額
1.2
面など)やXY面内(水平面)に限られている場
上で定義した回旋量を用いて中川* は以下のよ
合にはこれは正しそうに見える。
うな計測を行った。上肢の下垂位で母指が前方
最大循環運動における回旋運動
ところが Codman のパラドックスとして知ら
を向く肢位から運動を開始し、肩関節を内前方
れている肩関節運動に関する現象がある。これ
から後方に向けて可能な限り大きく回転運動
は初期肢位として上肢が下垂位で母指が前方
させ再び初期肢位に戻る。これを最大循環運動
を向く肢位から運動を開始し、前額面内で上肢
と呼ぶことにする。この運動では上肢の先端は
が垂直になるまで挙上する。次に矢状面内で前
肩関節を中心として上肢長を半径とする球上
方に降ろして下垂位に達する。ところでこの最
に閉曲線を描く。
終肢位では母指は後方を向き初期肢位と比べ
そこでこの閉曲線に囲まれた部分の表面積
てψには 180゜の変化が生じている。しかしな
と全球表面積の比を3次元可動率と定義する
がら実際には 180゜の回旋は生じていない。
と、3次元可動率と回旋量は強い相関があり、
大きな3次元可動率を得るためには内旋量も
このような不都合を除くために、筆者らはオ
イラー角の角速度に戻り、これを積分して回旋
大きい必要があることがわかった。
量を求める方法を提案した。よく知られている
*中川照彦,日整会誌 64-12,1990
9
ピーク値は増大する傾向が得られた(図2)。
2.直立時の足関節インピーダンスと安定性
2.1
研究の背景
これまでにわれわれは直立姿勢を維持して
open-small
20
15
10
10
足関節角度を入力として足関節モーメントを
5
5
0
0
出力とする姿勢制御器の伝達関数を実験で求
-5
-5
いるときの足関節回りの筋の受動的粘弾性や
-10
めた。これらの結果を開眼と閉眼で比較すると、
0
10
30
40
50
close-small
20
閉眼時の方が粘弾性が高く、また伝達関数のゲ
20
-10
15
インも増加していた。すなわち足関節が硬くな
10
10
5
5
っていたと言える。後で説明するようにこの状
0
0
-5
-5
-10
増加する方向に作用する。 いっぽう揺れる車
10
図2
の中で立っているような日常生活の経験から
20
30
10
40
50
-10
20
30
40
50
40
50
close-large
0
10
20
30
time in 10*sec
突発的外乱に対する足関節モーメント
の応答
は閉眼時の方が開眼時に比べて特に突発的な
この結果から次のような可能性が考えられ
外乱に対しては安定性が低いと思われる。
2.2
0
0
20
15
態はフィードバック制御系としての安定性を
open-large
20
15
る。すなわちタスクの困難さの増大により、姿
勢制御系のループゲインが増大するとフィー
加振台を用いた実験
ドバック制御系としての安定性は増加するが、
上述の現象の原因を確かめるために加振台
いっぽう突発的外乱時に発生する足関節モー
を用いて実験を行った。この装置は被験者を乗
メントのピークも増加する。足関節モーメント
せた床反力計を水平方向に加振するもので、こ
は床反力作用点と足関節の距離に体重を乗じ
れにより加速度外乱(モーメント外乱)を与える
た量であるから、過大な足関節モーメントが必
ことができ、また足関節モーメントを計測でき
要になると作用点は足底面からはずれ、足を踏
る。
み出すか何かにつかまるかして転倒を防がな
開眼と閉眼および加速度の振幅が大と小の
ければならない。
組み合わせ4条件で、被験者には予測できない
ようにランダムな加速度を与えて、足関節角度
2.3
と足関節モーメントを計測した。各条件で4回
の試行を行い、これを平均した結果を解析した。
その結果、開眼時より閉眼時の方が、外乱振幅
モデルによる検討
足関節モーメントのみを操作量とする1自由
度の倒立振子モデルと制御器としては比例+
微分にムダ時間を考慮したフィードバック系
が小より大で足関節角度の振幅が小となって
モデルを構成して、制御器のゲインKを増加さ
いた。すなわち与えられたタスクが困難になる
せて外乱加速度から足関節モーメントまでの
ほど、姿勢制御系のループゲインは増大してい
ゲイン特性Gを計算した。
ると考えられる。
その結果、Kが小のときのGをGs、Kが大
次に加速度を入力とし、足関節モーメントを
のときのGをGbとすると低周波域ではGs
出力とする伝達関数をシステム同定により求
>Gbだが、高周波域ではGb>Gsであった。
めた。そして得られた伝達関数に1周期分の正
これは突発的外乱に対する足関節モーメント
弦波が突発的に入力されたときのモーメント
の応答を求めた。するとタスクが困難なほど、
10
の応答をよく説明している。
九州シンクロトロン光研究施設の現状と先端的利用研究計画
鎌田 雅夫
佐賀大学シンクロトロン光応用研究センター
シンクロトロン光が観測されからほぼ半世紀になり、いまやシンクロトロン光は、理学、工学、
農学、医歯学、薬学など多くの研究分野で必要不可欠な光源になっている。また、シンクロトロ
ン光は産業基盤技術としても将来の新規産業の創出や産業の高度化にも有用な光源として利用
されつつある。しかしながら、九州地域には今までシンクロトロン光施設が存在しなかった。そ
こで九州地域に将来の科学技術と学術研究ならびに産業の発展に向けたシンクロトロン光施設
を建設したいという希望が十数年前から沸き起こり、佐賀県立九州シンクロトロン光センター
Photon Flux (photons/sec/mrad/0.1%BW)
(鳥栖市弥生が丘)として実現することとなった。
1015
1014
SPring-8
1013
1012
Saga-ring
偏向電磁石部
1011
1010
109
Saga-ring
5T ウイグラー
108
107
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
106
Photon Energy (eV)
図1.九州シンクロトロン光源のスペクトル分布
九州シンクロトロン光源は、シンクロトロン光の特徴である、①広いエネルギー領域に渡る連
続性、②特に軟 X 線領域の高強度性のみならず、③硬 X 線領域でも高輝度であり、④指向性、偏
光性に優れ、⑤パルス性などにおいても優れた性能を発揮するものと期待され、また、ウイグラ
ーやアンジュレーターなどの挿入光源も利用可能な設計となっている。シンクロトロン光は、光
速に近い相対論的な電子が加速度運動する際に発生する光であるので、遠赤外線から X 線領域ま
での広いエネルギー範囲をカバーする連続的な光源である。光の臨界エネルギーは、電子エネル
ギーの3乗に比例するので、電子エネルギーが大きいほど高エネルギーのシンクロトロン光が得
られる。電子エネルギーが大きくなるとシンクロトロンが大きくなり、それに付随して排気装置、
電源などの数も増加するので、施設規模も巨大化し、予算規模が格段に大きくなる。したがって、
九州シンクロトロン光源では性能と財政面を考慮して電子エネルギーや施設規模が決定された。
すなわち、加速器は、入射器としてのライナックと加速・蓄積用電子リングから成り、電子リン
11
グは、周長 75.6 m とコンパクトでありながら、電子エネルギーが 1.4 GeV、エミッタンスが 25.5
nmrad となっている。また、挿入光源のために長さ約3 m の直線部を持っている。5Tー7.
5T のウイグラー利用の場合、エミッタンスは 46.6 nmrad に増加するが、臨界エネルギーは5
(7.5T)の場合、6.5(9.8 )KeV になり、大きさが Spring-8 と比べて約 1/20ながら、軟
X線領域での光束では同程度である。このように九州シンクロトロン光は、多くの優れた特性を
有しているので、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、材料工学、環境応用など、多方面の
分野において、有力かつ将来性ある手法であり、九州地域の産業に対する幅広い応用ならびに大
学や研究機関の学術・応用研究などにおける多くの利用が期待されている。
また、設置主体である佐賀県は、シンクロトロン光事業の推進に当たって、地域産業の高度
化と新規産業の創出、優秀な頭脳の集積、多様な産学官連携拠点の形成、先端科学技術を担う人
材の育成、科学技術への理解の促進などを掲げている。そのため、自治体と大学間の連携協力体
制の基で、産学官共同研究や地域の各大学による共同研究など、多様な交流・連携が期待されて
いる。特に、シンクロトロン光を活用した先端的な学術研究・科学技術発展や開発・分析を行う
人材養成や教育において、大学の協力が望まれている。
佐賀大学は当初から本計画の推進に貢献してきたが、佐賀県知事からの協力要請に応えて、
平成13年6月にシンクロトロン光応用研究センターを学内処置で設置し、シンクロトロン光計
画に組織的に全面的に協力するための体制を整えた。平成15年度からは省令化施設として、九
州大学からの流動定員を含めた体制で正式に発足し、学術的立場からシンクロトロン光事業を推
進している。また、九州地域のシンクロトロン光利用における学術的かつ地域共同センター的な
役割に対する期待に応えるために、平成14年には佐賀大学と九州沖縄地域の国立大学関係学部
と協力覚書が締結され、現在大学間協定へと発展しつつある。また、アジアを中心とする国際連
携の中核拠点、産官学連携拠点、ならびに世界最高水準の学術研究拠点としての役割を果たすこ
とを目指している。
九州シンクロトロン光研究施設には、現在3本の県有ビームラインの建設が進行中で、完成が
間近である。また、佐賀大学はナノスケール表面界面ダイナミクス研究用のビームラインを設置
済みで、現在最終調整を行っている。佐賀県有ビームライン3本は、佐賀大学、九州大学、九州
工業大学、福岡大学をはじめとする大学関係者ならびに産業界の研究者・技術者から成るチーム
によって設計整備が行われ、それぞれVUV,軟X線、硬X線を利用した、物作りBL,軟X線
利用BL,硬X線利用BLとして完成される。
ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの最近のめざましい技術革新に伴い、より高度で
新規な特性を持った材料の開発が活発に行われている。それに伴い、高度な分析評価技術が要求
されている。放射光は通常の実験室で用いる種々の光源と比べて多くのメリットを有するため、
材料を分析・評価する手段として大きなツールの一つといえる。軟X線利用BL2には、光電子
分光や放射光の専門家以外でも使いやすく、材料設計、開発、研究に携わる人々も利用し易い光
電子分光装置が設置される。これにより物質表面の電子状態や化学状態、組成などの知見を得ら
12
れ、また、光電子の検出角度を変化させることにより、非破壊での深さ方向分析が出来ることに
設置場所
(ビームラインNo.)
エネルギー範囲
測定手法
BL9(県有)
10∼50 eV
白色光
照射による薄膜創製
エッチングによる材料加工
BL12(県有)
40∼1000 eV
光電子分光
XAFS
BL15(県有)
2.1∼10 keV
XAFS
回折散乱
イメージング
BL13
(佐賀大専用)
30∼800 eV
高分解能光電子分光、
レーザーとの組み合わせ実験、
産業利用
研究教育用
表1.現在整備中のビームライン
約60m
ナノテク・エレクトロニクス
新素材開発ゾーン
県有物作りBL
分析解析ゾーン
県有軟X線利用BL
佐賀大学表面界面ダイナミクスBL
約40m
県有X線利用BL
学際研究ゾーン
ライフサイエンスゾーン
図2.ビームライン配置図
なる。さらに光子エネルギーが可変であるため、光電子の脱出深さを変えた測定が可能となるの
で、光電子の検出角度を変化させた測定と合わせて、精度が高い深さ方向の分析・評価が可能と
なると期待している。ま た 、ビ ー ム ラ イ ン B L 2 が カ バ ー で き る 40-1000( +α)eV 領 域
に は 、今 日 産 業 的 に も 大 変 有 用 な Li, C, N, O な ど を 含 ん で い る 。XANES 分 析 で は 、空
軌道を直接プローブするため局所的な化学状態の情報が得られるとともに、偏光特性
13
を利用して軌道成分の観測が可能であるので、局所構造の立体配置や配向に関する情
報 を 直 接 得 る こ と が 可 能 で あ る 。 EXAFS 分 析 で は 原 子 の 周 囲 の 局 所 構 造 を 決 定 で き る
ので、溶液、アモルファス試料や生体試料をはじめとする多くの新物質の構造が決定
できる。したがって、多様かつ多種類の材料の局所構造及び状態分析を行い、基礎か
ら応用分野にまたがる産学双方に有用な物質開発など、多岐の分野にわたる最先端研
究 開 発 が 可 能 に な る と 期 待 し て い る 。 し た が っ て 、 広範囲で高分解能の測定によって、各
種材料表面の電子状態や化学結合状態の解明が可能となり、ウェハー表面の酸化や劣化、有機化
合物の劣化、さらに有機 EL 界面などが測定でき、基礎的な学術研究や応用開発的研究、ならび
に産業利用などに有用な多くの物質・表面の評価・分析と新しい物質開発、にとって必須のビー
ムラインとなることが期待される。これらは、産業利用などを目的に、汎用的な使途を念頭にし
つつ、大学研究者の利用も視野に入れ、偏向部からのシンクロトロン光を利用したものとなって
いる。
一方佐賀大学ビームラインでは、偏向部からのシンクロトロン光利用とともに、アンジュレー
タ光利用も考慮した最先端学術研究を念頭にして設計が行われた。たとえば、電子エネルギーが
1.4GeV、周期長84mm、周期数24のプラナーアンジュレーターとした場合には、光量
や輝度は、偏向部に比べて2桁以上大きくなると期待され、30-800 eV あたりの極端紫外線領域
をカバーする。
17
18
10
10
10
16
(1)
3rd
(1)
5th
14
2
10
13
10
10
15
10
14
10
2
Flux (phs/s/mrad/0.1%BW)
(1)
1st
15
10
Undulator
λu=84mm, N=24
(1)
Mini.Gap=30mm 1st(1) 3rd (1)
5th
17
10
Brilliance (phs/s/mrad/mm /0.1%BW)
Undulator
λu=84mm, N=24
Mini.Gap=30mm
16
12
10
Bending Magnet
B=1.46T, R=3.2m
11
10
10
10
9
10
8
12
B1(5°)
10
11
10
Bending Magnet
B=1.46T, R=3.2m
10
10
9
10
10
7
10
B2(4°)
13
10
8
-2
10
-1
10
0
10
1
10
2
10
3
10
4
10
5
10
10
-2
10
-1
10
Photon Energy (eV)
0
10
1
10
2
10
3
10
4
10
5
10
Photon Energy (eV)
図3.アンジュレーター計算値
図4.光学マウント
分光システムは、広範囲、高強度、高分解能、低迷光、安定な動作、小さなスポットなどの要
望を満たすことが求められている。これらを一つの光学マウントで満たすのは容易ではない。広
い範囲をカバーするには、高次光の混入対策が不可欠である。そこで、斜入射系と直入射系の複
合マウントを採用し、斜入射用にはラミナー型回折格子を用いた(図4参照)。また、通常の直
入射系のカバーするエネルギー範囲を広げるために多層膜コートを採用し、現在その多層膜作成
と評価実験を行っている所である。図5は、一次光に対する二次、三次光の割合を計算したもの
であるが、通常数%から十%と言われているのに比べて、広い範囲で1%以下の高純度を達成し
ている。40-50eV では高次光抑制が斜入射系では期待できない結果となっているが、直入射系で
14
は問題にならないくらいに抑制されている。一方、高分解能を実現するためには収差を低減する
ことが必要となる。そのため、球面鏡の曲率半径を大きくした長尺の分光器を作ることにした。
これは、シンクロトロン光が高指向性の光であるために実現できる方式である。また、回折格子
は、不等間隔平面回折格子を特注して作成中である。これにより、図6に示したように、分解能
が 10,000 以上 40,000 近くの分光性能が期待される。さらに、後置鏡には小スポットを得るため
にKB方式という集光システムを採用した。具体的な設計ならびにパラメータなどは光線追跡計
算に基づき、分解能、光量、高次光の抑制などの期待される性能を評価した。
図5.一次光に対する高次光の割合
図6.分解能ならびに光量
試料分析槽には、高分解能光電子分光装置を導入した。表面界面の分析を念頭にした設計であ
るので、他に低電子線回折装置、イオンスパッター、X線、高輝度ヘリウムランプ、試料冷却装
置などが付随されている。また、シンクロトロン光のパルス性とレーザーのパルス性を組み合わ
せた時間分解光電子分光を行い、表面界面におけるダイナミクスの解明に取り組むつもりである
ので、フェムト秒チタンサファイヤレーザーを隣接のクリーンブース内に設置する。電子バンチ
長は 100ps 程度と期待されるので、レーザーと組み合わせることで 100ps までの時間分解測定が
可能になる。また、電子回路による同期ゲート回路を有しており、ナノ秒以上の時間範囲での時
間分解光電子分光が可能である。さらに角度分解能に優れているので、運動量に対するエネルギ
ー分散曲線の測定が容易であるなどの特徴を有している。
本システムは九州シンクロトロン光センターのBL13に設置済みで、これを用いた半導体表
面研究や有機物の光誘起現象研究などの光利用に向けた性能チェックが進行している。また、佐
賀大学は、本ビームライン以外に、半導体ナノテクノロジー、バイオ・医用、環境・エネルギー
材料、タンパク質工学などに向けたビームライン提案を行うと共に、将来発展のための技術開発
研究を進めている。
現在光源の最終調整とビームラインの完成が急ピッチで進行する一方、利用に向けて地元産業
界を含めた組織整備も進んでいる。また、今後の利用に向けた計画も検討されつつある。詳細は
佐賀大学ならびに九州シンクロトロン光センターのホームページを参考されたい。
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図7.九州シンクロトロン光センターのBL13に設置した佐賀大学ビームライン概要
図8.
BL13に設置した佐賀大学表面界面用ビームライン
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第7回
九州・山口地区機器・分析センタ-会議報告
総合科学研究支援センタ- 機器分析部門 今戸啓二
平成 12 年4月に省令化された旧機器分析センタ-ではあるが,小泉内閣の構造改
革による国立大学の法人化と国家財政健全化の流れの中で,未だに建屋の無い状態で
あり,しばらくはこの状態が続くものと思われる.本会議は平成 10 年に九州工業大
学において第一回が開催されたことに始まり,これまで会議の開催された6つ大学に
おいては全て実体としてのセンタ-が存在していたが,本学では未だバ-チャルであ
るため,少し気後れしての開催となった.国立大学法人としては初めての本会議は,
年末の慌ただしさの始まる平成 16 年 12 月 10 日に VBL セミナ-室において午後 2:30
から加藤征治総合科学研究支援センタ-長からの挨拶と本センタ-の簡単な紹介に
始まり,大賀一也センタ-次長を議長として 17:00 まで開催された.参加者は本学を
含め 10 大学 23 名に事務から島谷学術協力課長が参加した.会議の詳細は議事録に譲
るとして,会議全体の印象は,大学が法人化されたことに伴うセンタ-への研究費や
運営費の大幅な減少に話題の集中した感があった.もちろん参加大学のすべてがその
ように減少したわけではないが,そのような大学は例外であり,大多数の大学が厳し
い財政運営を今後強いられるようである.従来横並びであった地方の国立大学も,法
人化後は生き残りをかけて知恵を出す必要に迫られる予感がした.そこで宮崎大学の
保田先生から本会議を構成する大学で科研費を共同申請しようとの提案がなされ,次
回当番校の山口大学がその取り纏めをするようになったことはこれまでの会議にな
かった特筆に価する成果と考えている.生き残りをかけた競争だけでなく,共存共栄
する観点からこのような協力関係を強化発展していくことは今後大変重要なことと
思われる.師走の夕暮れは早いため,写真撮影を早めに済ませ,会議での議論は途中
のコ-ヒ-ブレイクからさらにヒ-トアップして,予定した時間内では不十分な感じ
さえした. 閉会後は生協の二階で懇親会となり,旧交を温めることができて大変有
意義な会議となった.
第 7 回九州・山口地区機器・分析センタ-会議参加者
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行
事
報
告
総合科学研究支援センタ-運営委員会
第1回運営委員会
日時:平成 16 年 9 月 16 日(木)18:00~19:30
場所:狭間キャンパス病院第一会議室
【審議事項】
1.平成 15 年度センタ-の決算について
2.平成 16 年度センタ-予算について
3.その他
報告事項
1.平成 17 年度概算要求について
2.平成 16 年度学長裁量経費について
3.その他
大分大学総合科学研究支援センタ- 連絡会
日時:平成 16 年 10 月 21 日(木)14:00~16:00
場所:狭間キャンパス総合科学研究支援センタ- センタ-長・会議室
【審議事項】
1.ホームペ-ジの立ち上げについて
2.学内共同利用施設等管理委員会ワ-キンググル-プ関連
現状調査-活動状況「年次計画」
アンケ-ト調査内容
○報告事項
1.平成 16 年度河北医科大学訪問団の学内(センタ-)視察について
平成 16 年 11 月 22 日(月)(13:45~14:30 予定)
2.その他
平成 16 年度大分大学開放イベント
日時
平成 16 度 11 月 7 日(日) 10 時~16 時
場所
工学部福祉環境工学科棟5階501号室
テ-マ 自分の肌を観察しよう
日時
平成 16 度 11 月 7 日(日) 10 時~16 時
場所
工学部福祉環境工学科棟 4 階 410 号室
テ-マ 身近に存在する放射線・放射能
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学外会議
第 8 回国立大学機器・分析センタ-会議
日時:2004 年 11 月 12 日
場所:名古屋工業大学講堂2階会議室
時間:14:00~17:00
文部科学省研究振興局機関課研究支援係長 戸部精侯 挨拶
【議 事】
1. 国立大学法人化によるセンタ-会議設立趣意書の改定と快速の改訂
2. 国立大学法人化の対応と将来について
3. 機器・分析センター会議の今後のあり方について
4. その他
第 7 回九州・山口地区機器・分析センタ-会議
日時:平成 16 年 12 月 10 日(金)14:30~17:00
会場:大分大学 VBLセミナ-室
【審議事項】
1. 改組独法化後の旧機器分析センタ-の現状および問題点について
2. 独立法人後のセンタ-間の協力体制について
3. 次々回開催校について
4. その他
機器分析部門講演会
1回目
日 時:平成 17 年 1 月 28 日(金)14:50~
会 場:大分大学地域共同研究センタ-セミナ-室
講 師:東京医科歯科大学教授
石田明允 氏
演 題:身体運動の計測と解析
2回目
日 時:平成 17 年 2 月 7 日(月)13:10~
会 場:大分大学地域共同研究センタ-セミナ-室
講 師:佐賀大学シンクロトン光研究センター 副センター長
鎌田雅夫 教授
演 題:九州シンクロトロン光施設の現状と最先端利用計画
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機器分析部門講習会
1 回目
平成 16 年 10 月 12 日
内容 小型材料試験機・デジタルマイクロスコ-プ・共焦点レーザー顕微鏡
の取り扱い方
参加者 2 人
2 回目
平成 16 年 10 月 14 日
内容 共焦点レーザー顕微鏡の取り扱い方
参加者 3 人
3 回目
平成 16 年 10 月 18 日
内容 小型材料試験機の取り扱い方
参加者 2 人
4 回目
平成 16 年 10 月 22 日
内容 共焦点レーザー顕微鏡・デジタルマイクロスコ-プ・三次元粗さ計の
取り扱い方
参加者 3 人
機器分析部門からのお知らせ
教育用機材の貸出しについて
機器分析部門では講演会や教育用のために下記の備品を取り揃えています.まだ機
材は十分ではありませんが,学会等で必要な場合は今戸(内線 7769)または永利(内
線 6145),三浦(内線 7173)までお知らせ下さい.
機器分析センタ-短期貸出し用教育機材一覧
品 名
型 式
デジタルカメラ
Nikon Coolpix990
ビデオカメラ一式
ソニ- DCR-VX2000
液晶プロジェクタ-
エルモ EDP-4600
ビジュアルプレゼンタ-
エルモ HV-500XG
オ-バ-ヘッドプロジェクタ-
エルモ HP-A305
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