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社会資本投資の便益評価・事業妥当性評価 に関する研究

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社会資本投資の便益評価・事業妥当性評価 に関する研究
社会資本投資の便益評価・事業妥当性評価
に関する研究
江守 昌弘1・天野 光歩2・武藤 慎一3・
山口 大輔4・加藤 千恵5・森山智6・木村 達司7
1技術士(総合技術監理・建設部門)
株式会社建設技術研究所 東京本社道路・交通部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: m-emori@ctie.co.jp
2技術士(総合技術監理・建設・環境部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社河川部
(〒330-0071 さいたま市浦和区上木崎1-14-6 CTIさいたまビル)E-mail: mt-amano@ctie.co.jp
3博士(工学) 山梨大学大学院 医学工学総合研究部 工学学域 社会工学システム工学系
(〒400-8599 甲府市武田四丁目3-11 B-3号館4階)E-mail: smutoh@yamanashi.ac.jp
4技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社道路・交通部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: d-yamagc@ctie.co.jp
5技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社河川部
(〒330-0071 さいたま市浦和区上木崎1-14-6 CTIさいたまビル)E-mail: c-katou@ctie.co.jp
6技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社河川部
(同上)E-mail: s-moriym@ctie.co.jp
7技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所
(〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-15-1)E-mail: [email protected]@
我が国の公共事業評価制度は,事業毎の投資効率や必要性等の評価が主であるが,これらの評価手法は,
便益が発生する地域を対象とした評価にとどまっており,地域全体の問題として捉える評価にはなってい
ない.また,社会資本というのはそれぞれの資本単独による便益だけでなく,複数分野の資本の組み合わ
せの総体として便益が発生するものである. 社会的合意形成を図りつつ社会資本整備を円滑に推進する
には,こうした地域全体の問題として捉えた評価や社会資本を総体として評価する手法が必要である.
本論文では,こうした課題を解決するため,発生ベースの便益だけでなく,帰着ベースの便益を評価す
る必要があると考え,そのための評価手法として「空間的応用一般均衡(Spatial Computable General
Equilibrium: SCGE)モデル」の有効性に注目した.このモデルを活用した道路事業の便益評価および氾濫
による損失便益の評価のケーススタディを通じて,今後の便益評価のあり方を考察したものである.
Key Words : public value, road projects, flood control projects, infrastructure evaluation, SCGE
model
1. はじめに
軽減期待額を「治水経済調査マニュアル(案)」に基づ
き計上されている.また,道路事業では「走行時間短縮
便益」,「走行経費減少便益」,「交通事故減少便益」
が計上されている.これらの評価手法は,便益が発生す
る地域での効果を評価できるが,それらが地域社会にど
う関わりを持つのかを理解することは難しい.また,現
行の評価制度では,それぞれの事業単独での効果を評価
することになっているが,河川事業や道路事業等のそれ
ぞれの社会資本整備が組み合わさった結果として将来の
地域社会がどのような姿になるのかを地域住民に示すこ
とが難しい.これらの問題を解消することが,事業評価
我が国の公共事業における新規事業採択時評価や再
評価の手法は,河川・ダム事業,道路事業,港湾整備事
業,都市公園事業等,それぞれの事業分野に応じた評価
手法が採用されている.これらの手法は事業毎の投資効
率や必要性等の評価はできるが,いずれも便益が発生す
る地域を対象とした評価(発生ベースの便益評価)とな
っているため,それぞれの事業による便益や影響を地域
全体の問題として評価することが困難である.例えば,
河川やダムの事業評価では,事業実施による年平均被害
19
氾濫ブロックごとに氾濫計算を実施し,発生確率毎に被
害軽減額が算定されている.これらを基に期待値(年平
均被害軽減期待額)を算出し,これに残存価値を加えて
総便益としている.ここで,被害額を算出する項目とし
て,直接被害として,一般資産被害(家屋,家庭用品,
事業所資産等),農作物被害,公共土木施設被害を計上
し,間接被害として,営業停止損失,家庭における応急
対策費用,事業所における応急対策費用が計上されてい
る.
に対する信頼性を高め,社会的合意形成を図りつつ公共
事業を円滑に進める上で重要な課題である.
本研究では,こうした問題意識の下で,現行の国内
外の評価手法をレビューするとともに,「公共性」や
「公共的価値」の概念を改めて整理し,これらを踏まえ
ての統一的な便益評価手法を開発することにより国内外
の社会資本の戦略的な整備と管理の適切な意思決定に資
するものとした.
2. 社会資本便益の現状と課題
(1) 我が国の道路分野と河川分野の事業評価手法
a) 道路事業の事業評価手法について
道路事業の費用便益分析の流れを図-1 に示す.
道路事業の費用便益分析は,ある年次を基準年とし,
道路整備が行われる場合と,行われない場合のそれぞれ
について,一定期間の便益額,費用額を算定し,道路整
備に伴う費用の増分と,便益の増分を比較することによ
り分析・評価を行うものである.道路の整備に伴う効果
としては,渋滞の緩和や交通事故の減少の他,走行快適
性の向上,沿道環境の改善,災害時の代替路確保,交流
機会の拡大,新規立地に伴う生産増加や雇用・所得の増
大等,多岐多様に渡る効果が存在する.それらの効果の
うち,十分な精度で計測が可能でかつ貨幣価値化が可能
である「走行時間短縮」,「走行経費減少」,「交通事
故減少」の項目について社会的余剰を計測することによ
り便益を算出する方法がとられている.
図-2 治水事業の費用便益分析の流れ
このように治水事業では,氾濫による想定被害額が
便益として評価されているが,こうした被害額だけでな
く,想定される被害の状況を人的被害(想定死者数,孤
立者数),医療・福祉施設等の被害,防災拠点施設の被
害,交通途絶による波及被害,ライフラインの機能停止
による波及被害等の指標で評価する試行が平成 25 年度
より進められている.
なお,河川事業では,治水事業の他,環境整備事業
があるが,この事業の便益評価は,仮想市場評価法
(CVM),旅行費用法(TCM),代替法等が用いられてお
り,CVM が採用されている例が多い.
(2) 海外における便益評価手法
本研究では,海外(英,米,蘭)における事業評価
の事例について,文献調査や現地関係者へのヒヤリング
により情報を収集し,評価手法を検討する上での基礎資
料とした.以下に情報収集の結果を示す.
a) 海外の治水事業の評価について
現在の我が国と海外(英・米・蘭)の事業評価を比較
したものを表-1 に示す.評価項目の内,直接被害の資
産,農作物および公共土木施設は 4 カ国とも共通してい
るが,人的被害についてはイギリスのみ便益として計上
されている.また,間接被害については,企業の営業停
止は日・米・英で便益に計上しているが,その他の項目
図-1 道路事業の費用便益分析の流れ
b) 河川・ダム事業の事業評価手法
河川・ダム事業の内,治水事業に関わる費用便益分
析では,図-2 に示すように事業が実施された場合と実
施されなかった場合の氾濫による想定被害額を算定し,
それぞれの被害額の差分を被害軽減額として,これを便
益としている.氾濫による想定被害額を算定する場合に
は,計画規模の洪水及び発生確率が異なる流量規模で各
20
の各種事業の組み合わせの総体として機能が発揮される
ものであるため,社会資本への投資の妥当性評価は,そ
れぞれの事業単独の評価だけでなく,各種事業の相乗効
果によって生み出される便益を評価することが望ましい.
そうした意味で,JICA による「DR2AD モデル」1)は,防災
投資による経済効果を定量的に評価する実用的なモデル
として注目されている.「DR2AD モデル」は,将来にわ
たって被害と復旧を経験しながら経済成長を遂げていく
姿を現実的かつ定量的に表現することが可能である.ま
た,個々の家計や企業の行動(消費,投資,資産保有,
利益最大化等)を考慮したモデルとなっており,各世帯
の生活水準の向上や企業の付加価値の向上を表現できる.
具体的には,防災投資により貧困層の財形成が可能とな
るとともに,家屋や家財の投資等を通じて被害を軽減す
ることや教育水準の向上による生産性の向上等が考慮さ
れている.社会資本整備により経済成長を図る新興国等
では,それぞれの事業が国家の経済成長にどのように寄
与するかが国の意思決定の重要な要素となっていること
から,このモデルの有効性は高いと考えられる.
は国によって異なる.4 カ国の内,イギリスが最も多い
評価項目を便益に計上しており,環境やリクリエーショ
ンへの影響も取り込んでいるのは特徴的である.なお,
我が国でも環境便益評価が実施されているが,それは対
象事業が治水事業ではなく環境整備事業である.
表-1 日本と英・米・蘭の治水事業評価項目の比較
分類
直接
被害
間接
被害
日本
アメリカ
イギリス
オランダ
一般資産被害(住宅、家庭用品)
◎
◎
◎
◎
一般資産被害(事業所建物、設備)
◎
◎
◎
◎
一般資産被害(農漁家建物、設備)
◎
◎
◎
◎
農作物被害
◎
◎
◎
◎
公共土木施設被害
◎
◎
○
◎
人的被害
■
■
○
○
営業停止被害(家庭)
×
△
○
×
営業停止被害(事業所)
◎
△
○
○
応急対策(家庭・事業所)
◎
○
○
×
応急対策(行政、水防)
×
○
○
○
交通途絶による波及被害
■
○
○
○
ライフライン切断による波及被害
■
×
○
○
営業停止波及被害
■
×
△
×
医療・社会福祉施設
■
○
○
○
△
△
地下空間(地下街・施設、地下鉄)
■
水害保険、耐水費
×
△
×
×
×
生産性向上
×
○
×
×
環境への影響
×
×
○
×
レクリエーションへの影響
×
○
○
×
◎:便益算出において必ず考慮する項目 ○:便益算出において必要に応じて考慮する項目
△:便益算出においてマニュアル等への掲載があるがほぼ考慮しない項目 ■:便益に算出しないが定量的に評価している項目 ×:考慮しない項目
3.社会資本便益の捉え方
b) 海外の道路事業の評価について
道路事業についても,我が国と諸外国では事業評価
項目に違いがある.直接効果に関わる主要 3 項目(走行
時間の短縮,走行費用の減少,交通事故の減少)は,調
査で情報を得た 5 カ国(日,独,新西蘭,英,仏)とも
共通しているが,日本以外の 4 カ国では,環境へのイン
パクトの削減や経済効果に関する指標も導入しているの
が特徴的である.
イギリス,オランダ,ニュージーランド等では,
「所要時間の信頼性向上」について関心が高まっている
とともに,貨物輸送では特に重要な項目となっている.
また,イギリスでは「雇用創出」の他にも,試行的
に「蓄積の経済性」や「不完全競争状態にある産業の産
出量増加」といった効果も便益として計測している.
近年,プローブ技術やデータ等の蓄積によって定量
的で詳細な観測が可能となり,信頼性向上に関する施策
の評価が可能となってきている.今後,所要時間計測の
信頼性向上の実務的な便益計測手法が確立されることが
期待されるところである.
c) 経済成長を考慮した評価手法について
上記 a),b)で示したように,諸外国の事業評価には
環境へのインパクトや経済効果に関する指標も取り込ま
れていることが特徴的である.我が国では環境へのイン
パクトを便益として計上する手法(CVM 等)はあるが,
経済効果を便益に計上する手法や制度は確立されていな
い.社会資本というのは本来,道路,河川,都市計画等
(1) 公共的価値とは何か
上記 2.で述べた社会資本便益の評価方法の現状を踏
まえ,改めて公共性とは何か,また,その公共性という
概念に基づく公共的価値とは何かをレビューした上で現
状の問題点を整理し,本研究の新たな社会資本便益評価
モデルの方向性について論じる.公共性という言葉の意
味には,「広く社会一般に利害や正義を有する性質」
(広辞苑第五版),「広く社会一般の利害にかかわる性
質.また,その度合い」(大辞泉),「広く社会一般に
利害・影響を持つ性質.特定の集団に限られることなく,
社会全体に開かれていること.」(大辞林)と表現され
ているように,「広く社会一般」,「利害・影響」,
「開かれている」といった要素が含まれている.
公共性とは,特定の誰かにではなく,全ての人々に
関係する共通の利益,財産および規範であり,公共の福
祉,公益および公共の秩序といった概念で表現されるの
が一般的である.さらに,誰に対しても開かれている空
間や情報(公然,情報公開,公園等)といった側面を有
している.また,公共性は,国家や政府等が法や政策を
通じて国民に対して行う活動(公共事業,公共投資,公
的資金等)が歴史上の大方の概念であったが,近年は
NPO 等の新しい公共性の担い手が急速に台頭している.
ここで留意しておきたいのは,公共性は,「共通
性」のみならず,「独自性」を持つ多種多様な人々の構
成体,文化的・歴史的多様性を持つ地域として捉えられ
21
る必要があることである.また,社会にとって有用であ
るが,個人や企業にとって利潤の上げ難い部門を対象と
する公共事業や公共政策が非効率な経済行動を生み出す
側面がある.
さらに,公共性について考える場合は,誰もがアク
セスしうる「公共空間」という概念に対して,閉じた領
域である「共同体」という概念と合わせて考える必要が
ある.「共同体」は統合によって必要な価値を構成員が
共有する空間であり,特定の利害関係を有する限定され
た空間ではあるが,この共同体の規模が大きければ「公
共空間」という概念と区別しにくくなることに留意する
必要がある.
次に,このような公共性を担保するための活動がど
のような「公共的価値」を生み出すのか,その評価の考
え方について論じる.
広く社会一般の社会的ニーズは,民主的な意思決定
の手続きを経て政策や事業に反映されるが,その価値は
必ずしも共通の尺度・言語で計られるわけではない.公
共的価値を論ずる上で,市場経済や市場の共通言語(貨
幣)を持ち出す場合,貨幣という共通言語はあくまで価
値の間の質的差異を評価することはできるが,価値観,
言葉の交換ではないことに留意する必要がある.
また,公共的価値とは物質的な財ではなく,基本的
な「潜在能力」であり,すべての人,すべての世代に便
益を与えるという方向性がはっきりしているものである.
そうした意味で公共的価値というのはストックの価値で
ある.
このような公共的価値を評価する際には,公共性が
広く社会一般の「共通性」のみならず地域の文化や生活
様式等の「多様性」も含まれるため,公共的価値の評価
は画一的な評価だけでなく地域や事業の特性に合った評
価が必要となってくることに留意する必要がある.さら
に,公共的価値は,社会的ニーズに合っているかどうか
も重要な視点であり,その社会的ニーズは民主的な意思
決定の手続きを通じて公共政策等により実現されるべき
である.この民主的な意思決定の手続きにおいて「大衆
社会」の問題に直面する.
「大衆社会」というものは「傲慢性」や「自己閉鎖
性」を有しており,公共性を実現する公共政策に否定的
意識が働く.公共政策や公共事業の実施が長期的には社
会的便益を増進するものであっても,短期的,個人的な
不利益をもたらすものもあることが要因の一つである.
また,「大衆社会」に「社会的秩序」を持たせるこ
とが重要である.その方策は,「構造的方略」と「心理
的方略」である.前者は,法的規制等によるもの,後者
は個人の行動を規定している信念・態度・責任感・信
頼・道徳心・良心等の個人的な心理的要因に直接働きか
22
けるもの(例えば「リスクコミュニケーション」等)で
ある.
(2) 現行の社会資本便益評価の課題
上記(1)で述べた公共性や公共的価値の観点から,現
行の指針に基づく公共事業評価の問題点を考察する.
まず,現行の事業評価はストックの評価であり,す
べての世代に便益を与えるという点では問題ない.次に,
誰もがアクセスできる公共空間を対象としており,公共
的な共通の言語(貨幣価値)で評価している点では大き
な問題は無いと考えられる.
さらに,公共性や公共的価値を考える上で重要な
「共通性」,「公平性」および「多様性」の観点からみ
ると,現行の評価手法には次のような課題があると考え
られる.
a) 共通性および公平性の説明や評価が必要
現行の指針に基づく公共事業評価は主に「発生ベー
ス」の評価であることから,発生した地域のみの便益と
なっているおり,この便益が地域社会全体の共通の利益
につながること,地域全体の問題であることが定量的に
示されていない.
b) 地域の特性,地域の多様性を考慮した評価が必要
地域特性に応じた便益変化のメカニズムが定量的に
示されていない.例えば,浸水被害が発生した場合,浸
水域だけでなく周辺地域へ被害が波及するとともに,そ
うした影響を地域全体でバックアップしなければならな
い.その際,どこの地域に被害が及び,どこの地域から
バックアップできるか,どこの防災力を特に強化すべき
か,というような地域の意思決定に必要な情報が十分提
供されない.
(3) 「公平性」や「多様性」を踏まえた評価方法の充
実
評価の「公平性」や地域の「多様性」の観点からみた
課題を踏まえると,今後の社会資本の便益評価は,個々
の事業による効果を地域全体の問題として捉え,地域の
政策等の意思決定のための情報を提供するために,「発
生ベース」の便益評価だけでなく,地域全体への「帰着
ベース」の評価手法を実用化することが重要と考える.
そこで注目したのは,基本的な理論やデータ入手・
処理方法についてある程度標準化が進んだ包括的便益測
定手法であり,便益が及ぶ空間を明示的に扱う「空間的
応用一般均衡(Spatial Computable General Equilibrium
:SCGE)モデル」である.このモデルを社会資本便益に
用いる意義は大きく次の3点にあると考える.
 地域の経済活力を表す代表的な指標である「GRP」
(地域版 GDP)を測定できる.また,地域の経済を
支える各産業部門それぞれの便益を計測できると
ともに,企業間,家計と企業間,あるいは地域間
の便益構造を計測できる.これらにより,地域の
生活や産業の特性を反映させた評価が可能となる.
 どのような地域単位(都道府県,地域圏,国家,
グローバル等)で意思決定をするかによって評価
対象範囲を任意に設定できる.(ただし,基本的
な統計データが整備されている地域単位でないと,
便益計測に多大な労力を要する場合もある.)
 河川や道路等の分野の異なる事業や同じ分野の
個々の事業の便益を,社会全体の問題として扱う
ことができる統一的な手法である.
なお, 「空間的応用一般均衡(SCGE)モデル」やその
他「応用都市経済モデル」等の手法による「帰着ベー
ス」の便益評価の研究は古くから進められており,こう
した帰着ベースの便益評価を公共事業評価へ取り入れよ
うという議論が幅広く行われている.例えば,武藤6)は
農山村活性化策,水質改善対策および防災対策(東日本
大震災の被害等)に対して,SCGEモデルを適用して多面
的に便益を評価している.高木ら7)や中嶌ら8)による災害
の被害評価の研究事例もある.これらの事例から,本研
究が目指す公共性や公共的価値を考慮した便益評価の展
開に有効な手法であると期待できる.
ここで著者らが主張したいのは,本研究では,この
モデルにより単に社会資本の経済効果を評価しようとい
うものではない.地域住民の主要な行動メカニズムの一
つとして財・サービスや労働・資本の取引市場のメカニ
ズムを当てはめ,社会資本整備の便益が地域全体にどの
ように波及していくか,地域の社会経済の構図がどのよ
うに変化していくかをできるだけ具体化していくことを
重視している.これにより,様々な職業に就いている
様々な地区に住む住民一人ひとりが,自身の職業や地区
へ波及する便益を理解するのを助けることになると考え
られる.ただし,大衆社会の「傲慢性」や「自己閉鎖
性」から,帰着便益の評価は無用な反発を招く可能性も
あることには留意しておく必要がある.
域を有していることから,道路事業と河川事業の便益評
価を試行するのに適している.また,公共投資効率の低
さから公共事業の必要性に関する批判が少なくない我が
国の現状を踏まえ,農山村部を有する地域への公共投資
の必要性を考察する上でも有効である.
■主な対象地域市町:
甲府市,笛吹市,山梨市,甲州市,中央市,昭和町
■人口:385,775 人(H25,H26 時点)
■世帯数:165,968 世帯(H25,H26 時点)
図-3 ケーススタディの対象領域
(山梨県甲府市周辺地域を 9 ゾーンに分割)
b) 評価モデルの概要
【モデルの概念】
SCGEモデルの概念図を図-4に示す.(図-4は農山村部
と都市部の2つのゾーンのイメージを示しているが,本
ケーススタディでは9ゾーン設定している.)
このモデルの特徴は,地域間産業連関表をベースと
していることにより,中間投入(産業間での生産物の取
引)を考慮した全ての経済活動を捉えることが出来る点
にある.9つのゾーンそれぞれを「労働・資本市場」や
「財・サービス市場」として捉え,あらゆる財・サービ
スおよび労働や資本などの生産要素に対して需要と供給
がバランスし,市場均衡が成立することを前提としたモ
デルである.このモデルに道路整備や氾濫のインパクト
を条件として与えることにより便益を算定する.
4.新たな便益評価手法の提案
(1) ケーススタディによる SCGE モデルの適用
a) 対象地域
ここでは,SCGE モデルを用いて山梨県甲府市周辺地
域を対象に道路事業と氾濫インパクトの便益計測のケー
ススタディを行った.対象地域の概要を図-3 に示す.
この地域は農山村部と都市部が隣接しており,一次
産業から三次産業まで幅広い産業構造を有しているとと
もに,都市部では洪水による災害ポテンシャルが高い地
図-4 SCGEモデルの概念図(2ゾーンのイメージ)6)に加筆
23
⑤さらに地域合成中間財[3]に対し産業別の中間財投入
量を決定する.
⑥一方,合成業務交通に関しては目的地選択を行う.
⑦なお,業務交通時間は労働時間の一部として投入され
るものとする.
⑧合成生産要素については労働と資本を考慮し,
⑨それらは他地域からも投入される.
なお,本ケーススタディでは,平成17年度産業連関表
の取引基本表(108部門)を元に23部門の産業区分に分
類して評価した.
【家計の行動モデル】
ここで,家計の行動モデルの概念図を図-5に示す.
①まず,家計は総利用可能時間(余暇時間と移動時
間)と資本を提供して所得を得る.
② ①では,より高い所得が得られるよう提供地を
選択する.
③ ①で得た時間所得と資本所得に域外からの所得
移転を加えて税金を差し引いたものが可処分所得と
なり,これを制約として財消費を行う.その際,ま
ず合成消費財[1]と合成時間消費の消費量を決定し,
④ それぞれ農山村部と都市のどちらから消費する
かを決定する.
⑤ 合成消費財の消費には貨物運輸投入が必要であ
るとする.
⑥ そうして決定される合成消費財[2]に対して産業
別の財消費量を決定する.
⑦ また合成時間消費に対しては,合成対個人サー
ビスと合成余暇の消費量を決定する.
⑧ 合成対個人サービス消費地の選択を行う.
⑨ 合成対個人サービス消費には合成私事交通が必
要であるとする.
⑩ 合成私事交通消費からは,私事交通に係わる旅
客運輸と私事交通時間の各消費量が決定される.
図-6 企業の行動モデル概念図6)
c) SCGEモデルの基本条件
SCGEモデルの基本条件を以下に示す.
①経済均衡,すなわち需要と供給のバランスから市場価
格および財の需給量が決定される.
②企業は,生産技術制約下で利潤最大化行動(費用最小
化行動)をとる.
③家計は,所得制約下で効用最大行動(支出最小化行
動)によって財消費を行うものとする.
ここで補足するが,現実の経済では均衡状態になるこ
とはなく,また,全ての企業や家計が効用最大化行動を
とるとは限らない.本モデルで表現するのは,時々刻々
変化する「複雑な経済状況を代表する経済システム」で
ある.こうした代表的な経済システムの解析には,恣意
的な要素が入る余地がほとんどなく,社会資本の便益評
価には都合が良い手法であると考える.
d) 計算条件
氾濫インパクトおよび道路整備の条件は次の通り.
【氾濫インパクト】
ここでは,対象地域を流れる笛吹川の破堤氾濫によ
る被害軽減を想定する.まず,事業を実施しない場合
(without)として,富士川直轄河川改修事業の事業評
価監視委員会資料10)に示されている笛吹川の河川整備計
画の対象規模の洪水における浸水範囲に該当するゾーン
の資本投入効率が低下することを想定した.すなわち,
浸水により資本が損傷することによる生産の減少を,資
本の投入効率の低下により表現したものである.ここで
本来なら,浸水範囲に存在する各部門の産業人口や事業
図-5 家計の行動モデル概念図6)
【企業の行動モデル】
次に,運輸部門を含む企業の生産行動モデルの概念
図を図-6に示す.
①企業は,まず合成中間財[1]と合成生産要素の投入量
を決定し,
②合成中間財[1]に対し,合成中間財[2]と合成業務交通
の投入量を決定する.
③この内,合成中間財[2]は農山村か都市のどちらから
投入するかを決定する.
④ただしそれには貨物運輸投入が必要であるとし,
24
所等の条件を当てはめるのが望ましいが,本研究では便
宜上,浸水範囲面積/ゾーン面積の比により各ゾーンの
資本投入効率が低下すると仮定した.また,河川改修を
実施した場合(with)として,この浸水範囲が無くなる
こととなる.
【道路整備】
図-3 に示すように,山梨環状道路を整備することに
よって,周辺地域の混雑緩和,甲府市内の通過交通の排
除を図ることを想定する.これにより,県内の主要地域
間の連携が強化され,山梨県内における地域経済の活性
化を期待することができる.
ゾーン間所要時間の算出は,H22交通センサスの混雑
時旅行速度を用いて次のように設定した.
 旅行速度を推計のVmaxの値を用いた場合⇒所要時
間の短縮ほぼ無し
 H22センサス混雑時旅行速度を用いた場合⇒推計に
比べ所要時間の短縮あり(新山梨環状道路:
80km/h,センサス対象外道路:30 km/h)
道路整備によるゾーン間所要時間の短縮は,自家輸送
部門を含む旅客・貨物運輸企業の労働と資本の投入効率
を向上させることを想定した.これは,所要時間短縮が,
人あるいは物を輸送する運輸企業の,実際の移動に投入
される労働および自動車等の資本の節約につながる点を
表現したものである.
e) 計算ケース
計算ケースは,表-2の通りであり,「氾濫あり」,
「道路整備」および「道路整備+氾濫あり」のインパク
トを与えたケースを設定した.
表-2
Case NO.
Case1
Case2
Case3
Case4
便益算定の計算ケース
氾濫
無(現状維持)
あり
無
あり
笛吹川の氾濫による損失便益算定結果(実質GRP変化)
を図-7に示す.ここで,「実質GRP変化」とは,氾濫の
無い状態の価格で評価したGRPの変化額を意味する.本
対象地域全体の損失便益(実質GRP変化額)は,約133億
円/年であることがわかった.直接浸水被害を受ける甲
府市南部,笛吹市,峡南,中央市・昭和町および峡北だ
けでなく,他のゾーンでも損失便益が波及していること
がわかる.直接被害を受けない甲府市中部の損失便益は,
被害を受けるゾーンの便益に比べて決して小さい値では
ない.また,比較的浸水範囲が小さい峡北の損失便益も
浸水範囲が大きい中央市・昭和町に比べて引けを取らな
い値となっていることが興味深い.
次に,産業別の実質GRP変化額(図-8)を見ると,一
般機械や電気機械部門の損失便益が比較的大きく,その
他の部門にも若干ではあるが幅広く損失便益が広がって
いる.また,家計の余暇時間の損失も大き
い.
図-7
氾濫によるゾーン別損失便益
(氾濫被害によるゾーン別の実質GRP変化量)
道路整備
無(現状維持)
無
あり
あり
ここで注目したいのは,建設,商業,情報通信等の
部門では損失便益が発生しない結果となっていることで
ある.浸水により被害を受け,労働・資本市場が縮小し
た分をこれらの部門が経済をバックアップしていると解
釈できる.また,別の見方をすれば,被害を受ける部門
f) 計算結果
【氾濫による損失便益(Case2-Case1)】
産業別実質GRP変化(百万円/年)
1,500
1,000
甲府市北部
甲府市中部
500
甲府市南部
0
笛吹市
‐500
‐1,000
山梨市
・甲州市
東部
・富士北麓
峡南
‐1,500
‐2,000
‐2,500
‐3,000
中央市
・昭和町
峡北
図-8
氾濫被害による産業別実質GRP変化(百万円/年)
25
わち,東部区間の整備は,家計の余裕時間を増加させる
効果が極めて大きいといえるのである.また,余暇を除
いて産業別に比較すると,製造部門では電気機械の実質
GRP変化が大きい.しかし,一般機械はある程度は増加
しているが,その他工業製品はあまり増加していない.
これらの部門は,財生産量が増加したため実質GRPも増
加しているものと思われたが,財生産量の増加が必ずし
も付加価値の増加につながっていないといえる.その代
わりに,商業,不動産,公共サービスの実質GRP変化が
増加している.これらの部門は,生産量が大きく増加し
ているわけではないため,東部区間整備による効果を,
非常に効率よく実質GRP変化につなげたものと評価でき
る.
は,産業連関のつながりがあるため,サプライチェーン
としての被害が生じる一方,建設,商業,情報通信部門
などはあまり他の産業部門に従属せずに操業できること
がこの地域のこの浸水被害の特徴であると解釈できる.
さらに解釈を加えると,こうした実質GRPの低下は,
概ね実質所得の変化を表していることから,浸水被害は
直接被害を受けた範囲だけでなく,周辺地域も含めて,
それぞれの産業に従事する人々の賃金や雇用の変化にも
つながる指標である.
これまでの治水事業の評価では,直接被害を受ける
範囲の直接被害額や一部の間接被害額でしか示されなか
った.これに対して,上記のように,地域の特性を反映
させたより具体的な被害シナリオ(便益帰着シナリオ)
に展開させることがSCGEモデルによる評価の最大のメリ
ットである.
【道路整備による便益(Case3-Case1)】
道路整備(新山梨環状道路東部区間整備)による地
域別の帰着便益算定結果(実質GRP変化)を図-9に示す.
本対象地域全体の便益(実質GRP変化額)は,約392億
円/年であることがわかった.地域別の帰着便益を比較
すると,中央市・昭和町,峡北,甲府市中部の順で大き
くなっている.一人あたり便益は,中央市・昭和町,甲
府市南部,甲府市中部,そして峡北の順となっている.
新山梨環状道路東部区間が直接通過していない甲府市中
部の便益が3番目に大きくなっているのは興味深い結果
といえる.これは,甲府市中部は中央市・昭和町および
峡北へのトリップの増加が比較的大きいことに起因する.
また,甲府市中部の各財生産量の増加も大きく,甲府市
中部は予想より東部区間整備による効果を享受している
ことがわかる.
次に,地域別・産業別の実質GRP変化の結果を示した
ものが図-10である.図-10から,余暇に係わる変化量が
突出して大きいことがわかる.これは,東部区間整備に
より時間短縮効果が発現し,その結果実質的な余暇消費
額が大幅に増加した結果を表すものと考えられる.すな
図-9 道路整備によるゾーン別帰着便益算定結果
(道路整備によるゾーン別の実質GRP変化量)
【道路整備+氾濫インパクト(Case4-Case1)】
Case3に示すように道路が整備された本対象地域に
Case2と同じ氾濫インパクトが加わった場合の便益計算
結果を図-11に示す.この結果の見方として大きく次の2
点が考えられる.
一つは,図-7(氾濫による損失便益)と図-11の比較
から,もし環状道路を整備して地域の経済力を強くして
おけば,氾濫被害を受けても地域全体でみれば現状より
産業別実質GRP変化(百万円/年) 2,000
甲府市北部
甲府市中部
甲府市南部
笛吹市
山梨市・甲州市
東部・富士北麓
峡南
中央市・昭和町
10,000
峡北
1,500
8,000
1,000
6,000
500
4,000
0
2,000
0
‐500
‐2,000
‐1,000
図-10 道路整備による産業別実質GRP変化(百万円/年)
26
ることにより,直接浸水する範囲の被害だけでなく,
周辺地域へ波及する被害を評価できること,浸水に
よりどのような産業がサプライチェーンとして被害
を受け,どのような産業が地域の経済被害をバック
アップできるかを評価できることがわかった.
今後の展開として,本稿で提案した評価モデルを公共
事業評価へ適用するために次のような課題に取り組む必
要がある.
本稿の氾濫被害の損失便益は,一定の仮定を設けた試
算結果である.SCGE による評価の考え方を現行の河川
事業評価の仕組みに導入するには,初期条件として与え
たゾーン別資本投入効率の低下率を現行の治水経済評価
における直接被害指標値に相当する値を設定する方法
(被害関数等)を検討する必要がある.これにより過去
の事業評価結果との整合性を考慮しつつ新たな評価手法
へシフトすることが可能である.また,ここでは一つの
洪水流量条件での浸水被害を扱ったが,発生確率規模別
の洪水流量条件でそれぞれの帰着便益を計測し,期待値
を算出する必要がある.さらに,SCGE モデルは年便益
を計測する手法であるため, SCGE モデルを動的に扱う
実務的・簡易的な方法、もしくは、動学モデルにより検
討することが考えられる。
さらに,本研究により,環状道路の整備が,氾濫イ
ンパクトが発生しても地域全体からみた便益をプラスに
維持できる効果を有するという試算結果を得た.このこ
とから,今後の気候変化による大規模洪水のリスクに対
して,道路と堤防の一体整備による事業の効率化や水害
に強い地域づくりの方策を提案していくことが可能とな
る.
図-11 道路整備に氾濫インパクトを与えたケースの
ゾーン別帰着便益算定結果
もプラスの便益を維持できるという見方ができる.
二つ目は,図-9(道路整備による便益)と図-11 の比
較から,もし氾濫しても冠水しない諸元で環状道路を整
備しておけば,氾濫により便益を損失してもこの程度維
持できるという見方ができる.
5.結論
本稿では,我が国の制度上の社会資本便益評価手法
の課題を公共性および公共的価値の観点から考察し,
「空間的応用一般均衡(Spatial Computable General
Equilibrium:SCGE)モデル」を道路事業の便益計測と氾
濫による損失便益計測に応用することにより社会資本の
効果を地域全体の問題として捉えることを試みた.
得られた主要な成果は,以下のとおりである.
a) 現行制度の社会資本便益評価手法は,事業の必要
性や投資効果の説明には有効であるが,公共性や公
共的価値の観点から「公平性」や「多様性」の側面
での評価に課題がある.
b) 「公平性」や「多様性」の観点からの評価,すな
わち,社会資本の効果を地域全体の問題として捉え
るには「発生ベース」に加え「帰着ベース」の便益
評価が必要である.
c) 「帰着ベース」の便益を評価する手法として SCGE
モデルを採用し,道路事業および河川事業への適用
性が高いことがわかった.
d) 道路事業の便益評価に SCGE モデルを適用するこ
とにより,整備した道路が通過する地域だけでなく,
その他の地域への波及効果(帰着便益)も予想以上に
大きいことがわかった.また,道路整備により効率的
に付加価値を高めることが予想される地域や産業部門
を予測することが可能であることがわかった.
e) 氾濫による損失便益の評価に SCGE モデルを適用す
謝辞:本研究に際し,国土文化研究所池田駿介所長には,
便益評価のあり方に関する有益な助言を賜りました.ま
た,山梨大学福地良平様にはモデル構築等の支援を賜り
ました.さらに,イギリスおよびオランダの治水当局の
方々にはヒヤリングにおいて有効な情報をいただきまし
た.ここに記して,深く感謝申し上げます.
参考文献
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Development “DR2AD Model VERSION 1.0” Disaster Risk Reduction
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用いた治水対策の経済評価,河川技術論文集,Vol.7,423-428,
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10) 富士川直轄河川改修事業. 関東地方整備局事業評価監視委
員会. ( 平成2 5 年度第6 回). 国土交通省関東地方整備局,
2013.12. http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000085282.pdf,
(参照 2014-12-14).
(2014. 12. 19 受付)
A STUDY ON THE BENEFITS EVALUATION
OF SOCIAL CAPITAL INVESTMENT
Masahiro EMORI, Mitsuho AMANO, Shinichi MUTO,Daisuke YAMAGUCHI,
Chie KATO, Satoshi MORIYAMA and Tatsushi KIMURA
Public project evaluation system of our country, it is an evaluation that targets the areas where benefits
will occur, not in the evaluation to capture as of the entire regional issues. In addition, the social capital
that is not only benefits of each of the capital alone, are those that benefit is generated as a whole
combination of the multi-disciplinary capital. To smoothly promote the development of social capital
while reducing the social consensus, it is necessary to approach to evaluate the evaluation and social
capital that was taken as these of the entire regional issues as a whole.
In this paper, to solve these problems, it captures the social capital as of the entire regional issues, as a
method to capture the multiple of social capital in the whole, Spatial Computable General Equilibrium:
was focused on the validity of the SCGE model. Through case studies of road projects and flood control
projects utilizing this model, we discussed the way of future benefit evaluation.
28
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