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第18章 予備設計 18.1 設計条件

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第18章 予備設計 18.1 設計条件
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第 18 章
第18章
予備設計
予備設計
18.1 設計条件
18.1.1 水文条件
シマンゴ‐2 発電計画のための低水流出解析は 16.4 節で行われている。
今回の予備設計に関係
する水文条件を以下の表に掲げる。
項目
単位
2
流域面積
km
平均河川流量 (1973-1993)
m3/s
常時流量(95%頻度)
取水堰
調整池
発電所
444
0.9
920
17.71
=
=
3
10.05
=
=
3
m /s
永久構造物設計洪水(200 年確率)
m /s
1,341
15.2
1,939
工事用設計洪水(2 年確率)
m3/s
456
5.2
659
222,000
450
=
年間流砂量
3
m /yr
18.1.2 河川維持用水
取水堰において、洪水時を除く通常時の河川水はほとんど全て発電用に取水される。
しかし、
3
堰下流河道の必要最少水量を維持するために、取水堰から下流へ 0.39 m /sの水を放流する。 こ
の放流量は流域面積 100km2 当り 0.2m3/s という規準を満たすよう決められた。
ただし取水堰下
流 1 ㎞の地点での流量である。この規準はスマトラで進行中の幾つかの発電プロジェクトで採用
されているものである。 取水堰下流 1 ㎞の区間で、合計流域面積が 22 ㎞ 2 という比較的大きな
支流 2 本が流れ込んでおり、その支流からの流入量が 0.50m3/s(95%頻度)と見積もられる。 取水
堰からの放流量(0.39m3/s)と合わせて 0.89m3/s となり基準を満たす。
18.1.3
発電用最大使用流量
発電所は 1 日の4時間はピーク発電、残り 20 時間はオフピーク発電を行う。 オフピーク時間帯
の出力は河川流量の多寡による。しかし、前節 17.3 で述べたように、調整池容量の限界を考慮し
て最大使用流量は 32 m3/s に決められる。 この流量以下の河川流量が取水堰にて取水される。
水路構造物はこの流量を対象に設計される。
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18 - 1
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予備設計
18.2 主要土木構造物
18.2.1 取水堰
取水堰はマサン川(シアヌーク川)とグントゥン川との合流点から約 1 ㎞下流に位置する。 この位
置は下記の点を考慮して決められた。
•
河床および両岸にかなり堅硬な岩が露頭している。 基礎状況が良いので取水堰や沈砂池
構造物の施工が容易になりコストを低くできる。
•
民間業者が進めているグントゥン小水力計画の発電所がマサン-2 取水堰予定地の 150m上
流に位置する。 マサン-2 取水堰を上流に移すとグントゥン発電計画を妨害することにな
る。
取水堰は越流式余水吐きを備えたコンクリート堰である。
この標高は取水のための常時満水位(FSL)と見なされる。
での堰高は 7m である。
余水吐きの越流頂は標高 344m で、
現河床の標高は 337m 前後なのでそこ
この高さは取水口での呑み込み水深を確保するために必要な高さであ
る。
設計洪水(1,341m3/s)における余
余水吐きの越流幅は下流の自然河道幅に合うよう 40m とする。
水吐きの越流水深は 6.0mとする。 これは上流急勾配河川からの接近流速を加味した予備的計算
によって求めた。 堰上流の設計洪水位は従って標高 350.0m となる。 洪水吐きの流量曲線を図
18.2.1 に示す。
Masang-2
Intake Weir H-Q Curve
355
200-yr flood
= 1,341 m3/s
Elevation (m asl)
350
Intake Weir Spillway H-Q
345
Spillway crest El. 344.0 m
340
Intake Weir Tailwater H-Q
River bed El. 337 m
335
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
Discharge (m3/s)
出典:調査団
図 18.2.1
取水堰余水吐きの流量曲線
基岩の深さが深くないので、堰の非越流部もコンクリートで築造する。
非越流部堤頂標高はコ
ンクリート堰であることを考慮して決める。 風波による這い上がり高を計算すると 0.3m である。
安全性のための付加高を 0.5m とする。 非越流部堤頂標高(Z)は次式によって 351.0m と計算され
る。
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Z = 設計洪水位 + 0.3 + 0.5 = 351.0 + 0.8 = 351.8 m
≒
予備設計
351.0m
堰の左岸側に 5.0m 幅の土砂吐き門を設ける。 水門の敷高は取水口前面に溜まった土砂を排出す
るため標高 339.0m とする。 水門の上下流は土砂排出がスムースに行われるよう急勾配のコンク
リート水路とする。
水門としては運転操作ゲートと点検用ストップログが備えられる。
らの開口部寸法は幅 5.0m x 高 4.0m である。
ができる。
それ
3
満水位時にゲートを全開すると約 120m /s の放流
その排水効果により上流水位が短時間で下がり、堆積した土砂が自然河川流入量に
よってスムースに押し流され排出されると考えられる。
河川維持用水放流設備は取水堰ではなく沈砂池下流の側壁に設ける。
沈砂前の河川水には磨耗
を速める砂が多く含まれているので、砂による放流管やバルブの磨耗を最小限にするために沈砂
池下流のこの位置が選ばれている。
取水口を閉じた場合は放流設備から放流できないが、河川
水は自然に取水堰を越流して下流に放流される。
取水堰の予備設計は付属図面(番号 M-011)に示されている。
18.2.2 取水設備および沈砂池
取水口は取水堰の左岸側に設ける。 取水口先端には固定式除塵スクリーン(除塵機付き)が設けら
れる。 取水口の水深は川からの流砂呑み込みを出来るだけ減らすため 3.0m と浅くした。 除塵
スクリーンの開口部寸法は呑み込み流速が最高で 1.0 m/s となるように決める。 最大使用流量が
32.0 m3/s なので開口部の幅を 2 門合計で 11.0mとする。
取水された水は 2 条の開水路と制水門
を経由して沈砂池に導かれる。 2 条の制水門開口部寸法をそれぞれ幅 3.8 m x 高 4.3 m とし、敷
高標高を 340.2 m とする。
沈砂池は 2 条の矩形断面の池である。
2 条の池を採用することにより、沈殿した砂の排出を 1
条づつ行うことができるので、排砂作業中でも継続して発電運転が可能である。
沈砂地の通過
流速は最大使用流量時でも 0.3m/s に抑える。 沈砂すべき砂の粒径は一般的な例に基づき 0.5mm
以上とする。
沈砂池の寸法は以下の計算式によって求める。
L > A
ここに,
h
u
v
L=
必要な沈砂池長さ (m)
Α=
沈砂池内の流れの乱れを考慮した係数
h -=
沈砂池水深 (m)
v=
砂の沈降速度、粒径によって変わる (m/s)
u=
沈砂池内の水流通過流速
(=0.3 m/s)
池の水深‘h’は底部排砂門が排砂作業中に下流河道の流れに水没しないよう 5.6m とする。
粒径
が 0.5mm の場合、砂の沈降速度‘v’は 0.07m/s である。 係数‘A’は一般的な例を参考にして 2 とす
る。 よって、沈砂池の必要長さは 48m となる。 沈砂地内の通過流速を 0.3m/s 以下に抑えるた
めの流水断面積は 106.7 m2 (= 32.0/0.3)である。 池の深さは 5.6m なので池の幅は 2 条合計で 19m
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となる。
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即ち 1 条 9.5m の池を 2 条設けるものとする。
沈砂池下流の接続カルバートの流下能力を超える水量は沈砂地の両側壁を越流させて排除する。
側壁の天端は FSL と同じ標高 344.0m とする。
沈砂用の池の下流端には一条づつの排砂ができ
るようストップログが備えられる。
沈砂池の底に沈殿した砂は、各条の池の下流端底部に設けられた排砂門から定期的に川へ排砂す
る。
排砂門の開口部寸法は 1.5m x 1.5m とする。
河川維持用水放流管設備は 2 条のパイプと制水弁から成り、沈砂池下流水路の川側の壁に設けら
れる。
各条で 0.39m3/s を放流できるようパイプ径を 0.3m とする。
取水設備と沈砂池での水頭損失は合計 0.2m と見積もられる。 予備設計された取水設備と沈砂池
は付属図面(番号 M-012)に示されている。
18.2.3 接続カルバート
接続トンネルは沈砂池下流端から接続トンネ入り口まで伸びる長さは 1.06 ㎞の箱型断面のコンク
リート水路である。
流れは開水路流である。
水路の上面は水路沿いの斜面から土砂や枯葉が
流れ込むのを防ぐためコンクリートで蓋をする。
的に土で埋め戻すという工法で施工される。
カルバートは掘削した溝の中で築造し、最終
内部断面寸法は幅 3.75m x 高 4.15m で、水路勾配
3
は最大使用流量 32.0 m /s を流せるよう 1/1,200 とする。 最大水深(等流水深)は 3.75m であり、そ
の時でも水面とカルバート天井面との間に 0.4m の空間が残る。
カルバートはその下流端で支流のバンバン川を跨がなくてはならない。
そのため 4 本の橋脚で
支えられた 60m長さ(3 x 20m)の箱型断面コクリート橋を造る。 橋のすぐ下流でカルバートは接
続トンネルに直結される。
18.2.4 接続トンネル
接続トンネルはカルバート下流端から中間調整池まで伸びる開水路トンネルであり、長さは
1.63km である。
断面は内圧が低いので経済的な標準馬蹄形断面とする。
直径は前節 17.3(4)
3
で選ばれたように 3.9m とする。 トンネル勾配は最大 32.0m /s の流量を流せるよう 1/700 とする。
トンネル内の水深は最大 3.38m(等流水深)で、トンネル天井と水面の間に高さ 0.38m の空間が残る。
沈砂池から中間調整池までの水頭損失は出口ロスも含め合計 3.9m と見積もられる。 調整池側ト
ンネルの出口には、調整池斜面の浸食を防止するため 12m 幅のコンクリート開水路を設け標高
329.4m まで延ばす。
トンネルルートの大部分は比較的堅硬な岩の中を通ると予想される。
工事中の支保として鋼製
支保工や金網張りの吹付けコンクリートはいくつかの短い弱層部以外は不要と予想される。
トンネルのルートおよび代表断面は付属図面(番号 M-010)に示されている。
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18.2.5 中間調整池
前節 17.3(5)に述べたように、中間調整池の必要有効貯水容量は 322,000m3 である。
調整池の満
水位は、最大使用流量時の取水口から接続トンネル出口までの全水頭損失を勘案して標高 339.9m
とする。
中間調整池は自然の小川を盛土堤で堰止め、更に小川周辺の地山を掘削して造成される。
止め位置は、できるだけ貯水量が大きくなるような位置を選んだ。
10m とする。
堰き
池の利用水深は最渇水期で
掘削によって池の面積は 2ha 増える。
掘削によって増える部分も含めた調整池の貯水容量・湛水面積曲線を図 18.2.2 に示す。
Wtaer Surface Area (ha)
7
6
5
4
3
2
1
0
0.5
0.6
0.7
350
345
FSL = 339.9
Elevation (m)
340
335
MOL = 329.9
330
Volume
325
Area
Active Storage 0.322
320
315
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
Storgae Volume (MCM)
出典:調査団
図 18.2.2
中間調整池の貯水容量・湛水面積曲線
調整池内の水位はピーク発電時とそれに続くオフピーク発電時の水使用状況に応じて変動する。
最大水位変動は 10m と想定されるが、そのような水位変動は渇水年に稀にしか起こらない
調整池への流入土砂量は 100 年間で 45,000m3 と推定される。
調整池は MOL 以下の部分にその
土砂量を溜める貯留スペースを持っている。
小川を堰止める構造物は中央コア型ロックフィル式の盛土堤である。 基礎は風化岩である。 調
整池貯留スペース増加のために掘削した岩塊は一部盛土堤築造材料として使われる。
調整池は時によって 1 日の水位変動が大きくなり、その影響で池周辺の斜面が場所によって滑る
ことが懸念される。
そのため斜面安定を目的として、池周辺の斜面に水抜き用水平孔を設ける
ことを今回計画している。
しかし、斜面安定対策については将来の調査において詳細検討を行
う必要がある。
中間調整池の設計洪水流入量(200 年確率)は 15.2m3/s と見積もられている。 取水口から接続トン
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ネルを通って調整池へ流入する流量は最大 32.0 m3/s である。 合計流入量は最大 47.2m3/s(=15.2 +
32.0)である。
設ける。
この流量を下流に流すことが出来るよう堰止め盛土堤の右岸に越流式余水吐きを
その越流頂は標高 339.9m で満水位に一致させ、越流幅を 25m とする。
3
きは 1.0m の越流水深で 47.2m /s を放流する能力がある。
この余水吐
よって、調整池の設計洪水位は標高
340.9m である。
堰き止め盛土堤の堤頂標高は設計洪水位、風波高、安全付加高、粘土コア保護厚さを考慮して決
める。 風波による這い上がり高は 0.35m と見積もられる。 安全付加高は盛土形式なので 1.5m
とする。
粘土コア保護層厚さを 0.25m とする。
拠って、堤頂標高(Z)は次式から 343.0m と計
算される。
Z = 設計洪水位 + 0.35 + 1.5 + 0.25 = 340.9 + 2.1 = 343.0 m
将来の調整池抜水を可能にするため、盛土基礎最深部に底部放流管を設置する。
基礎上に川筋方向に沿って設けるコンクリートカルバートの中に設置する。
放流管は堤体
カルバートは内幅
2.2m x 高 2.5m の D 字形断面で工事中の仮排水にも利用される。 放流管は径 0.4m とし、盛土堤
の中心線上に設ける閉塞コンクリートからカルバート下流端まで敷設する。
管の上流端付近に
制水弁を設け、下流端に流量調節弁を設置する。
中間調整池関連の構造物を付属図面(番号 M-013 および M-014)に示す。
18.2.6 導水路トンネル
導水路トンネルは中間調整池から調圧水槽までの延長 4.55km のトンネルで、流れは圧力式である。
内水圧が比較的高いのでトンネル断面は円形とする。
内径は前節 17.3(4)で経済径として選ばれ
た 3.75m を採用する。
トンネルの上流端には調整池から水を取り込むための取水塔が設けられる。
クリーン(除塵機付き)と制水門が設置される。
1.0m/s になるよう幅 5.5m x 高 5.9m とする。
取水塔には除塵ス
除塵スクリーンの開口部寸法は流速が最高で
取水塔直下流のトンネルの敷高は、調整池が最低
水位の時でもトンネル内へ空気が吸い込まれないよう十分な水深をとって標高 322.0m とする。
調圧水槽位置でのトンネルの敷高は、水槽内水位が最低に下がっても空気がトンネル内に混入し
ないよう標高 305.0m とする。
最大使用流量時の水頭損失は、トンネル内摩擦損失、取水塔流入損失・スクリーン損失などを含
み合計 8.9m である。
地質調査の結果、トンネルは部分的な弱層を除き殆どの区間は堅硬な岩を通過すると想定される。
従って工事中の支保は、弱層部で鋼製支保工や金網付吹き付けコンクリートが必要だが、殆どの
区間はロックボルトや薄い吹き付けコンクリートの支保で十分と考えられる。
トンネルルート平面図およびトンネルの代表断面は付属図面(番号 M-010)に、取水塔は付属図面
(番号 M-014)にそれぞれ示されている。
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18.2.7 調圧水槽
導水路トンネルの終端、即ち水圧管路へ繋がる前に調圧水槽を設ける。
調圧水槽は水撃作用に
よって起こる導水路内の過大な圧力上昇を防ぎ、水車の負荷急変に応じて水量の補給吸収を行う
目的を持っている。
形式は垂直円筒型で底部に制水口を設ける。
水槽の直径は、予備的なサージング水面振動解析を行い、8.5m を最適径として選定した。 計算
された最高水位は標高 361.2 m、最低水位は標高 316.3m である。
水槽天端は標高 364m とし、
水槽下のトンネル敷高を標高 305m とする。水槽の高さは 59m となる
18.2.8 水圧管路
水圧管路は地形を考慮して地表式を採用する。
水圧鋼管は、調圧水槽からすぐ下流の部分は水
平トンネルの中に埋設し、その出口から発電所までの区間は地表斜面を掘削して設けた溝の中に
設置する。 鋼管の直径は調圧水槽から発電所近くの Y 分岐までは前節 17.3(4)で選定したように
3.1m とする。 Y 分岐は発電所中心から 25m の位置に設ける。 Y 分岐で分かれて発電所の水車
入り口までの 2 条の鋼管はそれぞれ直径 1.8m とする。 調圧水槽に近い上段の水平部は 190m 長
さで標高 304m のトンネル内に埋設される。
開削溝の中に据え付けられる鋼管に沿って点検用
の階段通路を設ける。
水圧管路は付属図面(番号 M-015)に示されている。
18.2.9 発電所
発電所は 26MW の主機 2 台を格納する地上式建物で、マサン川と支流のアラハンパンジャン川と
の合流点から 300m 下流のマサン川左岸に位置する。 そこでの通常の河川水位は標高 141m と推
定され、河岸標高は約 150m である。
選定された位置は地表面が比較的緩やかで広いので発電所と開閉所用地として適当と判断する。
河岸の崖に堅い石灰岩が露頭しており、地質的に発電所の基礎としても良好と判断する。
発電所建屋は鉄筋コンクリート造りである。
る。
主機 2 台とそれに付属する多くの機器が格納され
主機組立て室・制御室・事務室なども建屋内に設けられる。
で掘削された開水路である。
計画である。
放水路は発電所から河岸ま
発電所基下部工事中は放水路上の基岩を仮締め切り堤として残す
150kV 屋外開閉所は発電所構内の東側に設置される。
発電所の放水位は暫定的に標高 142.0m とする。
発電所の水車中心標高を 140.0m とする。
設
計洪水(200 年洪水)時の放水路水位を標高 149m と推定し、発電所構内地盤面を標高 150m とする。
洪水位を含む河川水位については、将来詳細調査によって見直しが必要である。
発電所のレイアウトを付属図面(番号 M-016)に示す。
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18.2.10 プロジェクト概要
マサン‐2 水力開発計画の予備設計結果概要を次の一覧表に示す。
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予備設計
マサン‐2発電計画 予備設計概要
Description
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
Location
Hydrology
Catchment area
Average annual runoff at intake
95% dependable runoff
Intake Weir
Type
FSL=Weir crest elev.
Height (overflow section)
Active storage volume
Intake & Sand Trap
Intake Type
Sand trap type
Max. discharge diverted
Connection Culvert
Type
Internal section size x Length
Connection Tunnel
Type
Connection tunnel, diameter x length
Intermediate Pond
Type
FSL
MOL
Water surface area
Gross storage volume
Active storage volume
Drawdown
Headrace Tunnel
Type
Headrace tunnel, diameter x length
Surge Tank
Type
Diameter x Height
Penstock
Type
Steel pipe diameter x length
Pipes after Y-branch
Powerhouse
Type
Building structure
Tailrace
Tail water level
Generating Equipment
Installed capacity (total)
Number of units
Gross head below pond
Rated head
Max. plant discharge
Peaking oeration time
Annual energy production
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Unit
Principal Features
West Sumatra Province
km2
m3/s
m3/s
444
17.71
10.05
El. m
m
Ungated concrete weir
344.0
7
None
m3/s
Horizontal inlet with screen
Double settling basins
32.0
m
Concrete flume with box section (free flow)
W3.75 x H4.15 x L 1,060
m
Horse-shoe section, free flow type
D3.75 x 1,630
El. m
El. m
ha
MCM
MCM
m
Creek excavated and closed by embankment
339.9
329.9
4.0
0.50
0.322
10.0
m
Circular section, presuure flow tunnel
D3.75 x 4,550
m
Vertical cylindrical shaft
D8.5 x 59
m
Surface type
D3.1 x 677
D1.8 m x 17 m x 2 nos
El. m
Above-ground type
Reinforced concrete
Open Channel
142.0
MW
nos.
m
m
m3/s
hr/day
GWh
52
2
197.9
178.8
32.0
4
240
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予備設計
18.3 水門鉄管構造物
水門鉄管構造物には鋼製ゲート、ストップログ、除塵スクリーン、バルブ、水圧鋼管などが含ま
れる。
それらの操作装置、吊り上げ装置、油圧機構、除塵機なども含まれる。
ただし、発電
機器としての水車およびその付属装置や入り口弁は含まれない。
予備設計された水門および鉄管類を以下に列挙する。
寸法、幅 x 高(m)
(1)
11
5.5 x 3.5
2
9
3.8 x 4.3
2
9.8
3.8 x 4.3
1
9.8
1.5 x 1.5
2
9
4.2 x 3.8
2
3.8
φ0.3
2
5
3.75 x 4.15
1
5
3.75 x 5.0
1
4.75
φ0.4
1
40
φ0.4
1
40
φ0.5
1
40
沈砂池、下流端隔離用ストップログ
形式:ロープ巻上スライド式パネル
(8)
1
沈砂池、排砂路制水ゲート
形式:電動スピンドルゲート
(7)
5.0 x 4.0
取水工、入口水路ストップログ
形式:ロープ巻上スライド式パネル
(6)
11
取水工、入口水路制水ゲート
形式:ロープ巻上ローラーゲート
(5)
1
取水工、除塵スクリーン
除塵機付き
(4)
5.0 x 4.0
取水堰、排砂門ストップログ
形式:ロープ巻上スライド式パネル
(3)
作用水圧(m)
取水堰、排砂ゲート
形式:ロープ巻上ローラーゲート
(2)
数量
沈砂池、放流管およびバルブ
形式:鋳鋼スピンドルバルブ
(9)
接続カルバート、入口制水ゲート
形式:ロープ巻上ローラーゲート
(10) 接続トンネル、出口ストップログ
形式:ロープ巻上スライド式パネル
(11) 調整池、底部放流管制御バルブ
形式:油圧駆動鋼製バルブ
(12) 調整池、底部放流管保守用バルブ
形式:油圧駆動鋼製バルブ
(13) 調整池、底部放流管
形式:通廊内敷設鋼管
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予備設計
(14) 水圧鋼管
φ3.1
1
静水圧 221
φ1.8 - 1.6
2
静水圧 221
3.5 x 1.8
2
形式:地上式
(15) 発電所、ドラフトチューブストップログ
形式:ロープ巻上スライド式パネル
14
18.4 電気機器
18.4.1 一般
Masang-2 発電所は、中間調整池、流れ込み式、日負荷調整 4 時間ピーク対応可能な発電所で、
基準有効落差 178.8m、使用水量 32m3/s、最大出力は 52MW である。
発電所内には、単機出力 26MW の立軸フランシス水車、発電機容量 28.1MVA の 3 相同期発電
機、圧油装置、圧縮空気装置、給排水装置、並列用遮断器等の開閉装置、制御装置、所内変圧器、
天井クレーン並びに隣接する屋外開閉所に主要変圧器および高圧開閉装置が設置される。
18.4.2 単機出力及び台数
一般的に水車・発電機の最適単機出力は、電力系統への影響、開発投入時期、輸送制限など
により決定するが、より大型の単機出力は経済的にスケールメリットがある。
しかしながら本計画においては下記の項目を勘案の上、決定した。
a.
投入ユニット容量に対する電力系統への影響
b.
輸送ルート・重量制限
c.
製作技術レベル
d.
保守運用の信頼性と柔軟性
e.
乾季と雨季における流量変動
a.項の 投入ユニット容量に対する電力系統への影響については、2010 年現在のスマトラ島の電
力系統容量が 3,600MW であるので、26MW×2 台もしくは 52MW×1 台共に当該の発電機が事故等
により脱落した場合でも、連係する電力系統に多大な影響を与えることはない。よって投入ユニ
ット容量に対する制限は特にない。
b.項の輸送ルート・重量制限については、電気機器の最重量物は 1 台案の場合の主要変圧器で
約 60tと推定される。現状、発電所計画地点の近郊まで既設舗装道路および工事用道路が整備さ
れる予定であるので、輸送ルート、重量制限についても問題になることはないが、今後の詳細設
計時において橋梁の補強あるいは付け替え工事の必要性について再度調査をする必要がある。
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予備設計
c.項の製作技術レベルに関しても、本計画は一般的な容量であるので、世界の主要電気機器製
作者において 1 台案、2 台案ともに製作可能である。
d.項の保守運用の信頼性と柔軟性に関しては、1 台が停止状態(故障、定期点検)にあってもう
1 台にて運転が可能であるので、2 台案が有利である。
最後の e.項については乾季と雨季の流量の変動が大きいために雨季においては問題にならない
が、乾季には流量が減少するために 1 台案では定格容量の 30%以下での運転が続くことになる。
その結果として水車のキャビテーション、振動の問題が発生する。よって 2 台案が有利である。
上記検討結果から、保守運用の信頼性、柔軟性および乾季と雨季の流量変動を考慮して、単機
出力は 26MW、2 台案を採用することとする。
18.4.3 水車
(1)
水車出力
水車出力は定格有効落差 178.8m、定格使用水量 16m3/s の条件の基、一台あたりの出力は下記の
通りとなる。
Pt = 9.8 × Hn × Qt × ηt
= 9.8 × 178.8 × 16.0 × 0.926
˙=. 26,000 kW
ここで、
Pt : 水車定格出力(kW)
Hn : 基準有効落差(m)
Qt : 1台あたりの定格使用水量(m3/s)
ηt : 水車効率(%)
(2)
水車形式
一般に、水車形式は、落差と水車出力の関係で決められる。本計画の落差と水車出力を考慮して、
立軸フランシス水車とする。
(3)
ランナー材質
ランナー材質は、高耐磨耗材として、13Cr.4Ni ステンレススチールを仕様する。また、フランシ
ス形水車のランナーやウェアーリングの表面には、水質の内容によっては、コーティング(ソフ
トまたはハード)を施す。このコーティング方法は、詳細設計において仕様することとする。
(4)
水車据付レベル
水車中心は、吸出し高さ(Hs)に基づき決められる。Hs はランナーのキャビテーション係数により
決定されるが、キャビテーション係数は水車の適用比速度に関係する。これらの関係を検討して
Hs は約(-)2.38m を得た。従って水車中心は EL:140.00m とする。
(5)
有効落差
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予備設計
有効落差は総落差(192.9m)から管路の摩擦損失等を差引いて得られる。計算の結果、摩擦損失を
含む損失水頭は 14.1m、よって有効落差は 192.9-14.1=178.8m となる。
(6)
水車ランナー・サイズ
水車ランナーの大きさは水車の体格と重量を知るために設計する。解析結果からランナー入口径
約 1.7m、重量約 4t となる。しかし、実際の製作設計の段階では、水車製作者からの設計値のオ
ファーを受けることとする。
(7)
定格回転数
フランシス水車の適用比速度は、一般的に、Ns:70~300m-kW である。経験値からの基準有効落
差―比速度の関連を、コンピュータ計算により求めた結果は Ns:123m-kW を得た。
この比速度
-1
を基に定格回転数を求めると 500min となる。
(8)
水車吸気装置
水車ランナー、ドラフトチューブなどへの吸気用パイプシステムの要否は詳細設計時に検討する。
(9)
水圧鉄管と入口弁
水圧鉄管は 1 条で、途中分岐して 2 台の水車に接続される。入口弁は複葉弁(バイプレーン弁)
で、弁の口径は約 1.6m となる。
18.4.4 発電機
発電機の型式は縦軸、3 相交流同期発電機で定格容量は 28.1MVA、90%遅れ力率とする。
(1)
発電機型式
発電機の型式については、回転数および発電機容量から選定されるが、本計画の容量、回転数
(500min-1)を考慮して普通型発電機とする。
(2)
発電機容量
発電機の定格容量は、水車最大出力、力率および発電機効率から計算される。
Pg = Pt × ηg / p.f (kVA)
= 26,000 × 0.973 / 0.90
˙=. 28,100kVA
ここで、
Pg : 発電機定格容量(kVA)
Pt : 水車定格出力(kW)
ηg : 発電機効率(%)
p.f : 力率(%)、遅れ
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予備設計
上記より、発電機の定格容量は 28,100kVA とする。
(3)
絶縁種別および冷却方式
発電機の回転子および固定子の巻線は F 種絶縁とし、冷却方式としては、閉鎖風道循環型とし、
水冷熱交換器(エアクーラー)により冷却する。
(4)
発電機仕様
主な発電機の仕様は次のとおりである。
回転方向
発電機上方からみて、半時計方向
定格速度
500min-1
定格容量
28.1MVA
定格力率
0.90
定格電圧
11.0kV
定格周波数
50Hz
励磁方式
ブラシレス励磁方式
18.4.5 その他の機器
(1)
圧油装置
入口弁操作用および調速機用として各号機毎に圧油装置を設置する。装置は圧油ポンプ(常用、
予備)、圧油タンク、集油槽、漏油槽、制御盤などから構成される。
(2)
圧縮空気装置
発電機ブレーキ用、圧油タンク補給用および所内一般用として常用、予備とそれぞれ設置する。
(3)
給排水装置
水車・発電機の各軸受、発電機本体の冷却用、圧油装置の冷却用として給水装置を設置する。
取水はドラフトチューブより給水ポンプにて行われ、ストレーナ、サンドセパレータを経由して
各所へ給水される。
また発電所内の漏水を排出するために、発電所の最下部の排水ピットを設け、排水ポンプによ
り漏水を所外へ排出する。
(4)
並列用遮断器
一般に発電機と系統との接続方式には変圧器の低圧側にて接続する低圧同期方式と変圧器の高
圧側にて接続する高圧同期方式があるが、本計画の発電機容量、遮断器製作技術の進歩、所内電
源の確保の容易さを勘案した結果、低圧同期方式とする。
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(5)
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制御装置
水車、発電機、主要変圧器、補機、送電線、配電盤の運転制御は一人制御方式とし、発電所内
に設置される制御室から制御される。
(6)
所内変圧器
水車、発電機、主要変圧器などの主機の運転に必要な補機の電源、発電所内の照明・換気装置
などの電源のために所内の電源が必要である。そのために主要変圧器の低圧側に所内用変圧器が
接続され、電源の供給を行う。
(7)
天井クレーン
主巻の吊り上げ荷重は、据付機器の最大重量により選定され、一般的に発電機回転子が最重量
機器になる。
本計画では最大荷重のものとして発電機回転子(約 47t)が想定される。
18.5 屋外開閉所と送電線
18.5.1 屋外開閉所
(1)
主要変圧器
主要変圧器は水車発電機 1 台に対して 1 台が運用上からも望ましいが、近年における変圧器の
信頼性向上および建設費削減を勘案して、水車発電機 2 台に対して主要変圧器を 1 台とする。
設置場所については発電所建屋に隣接した屋外開閉所に設置することとする。主要変圧器の形
式は3相式で、輸送制限、効率、据付スペースを考慮して設計される。尚、本計画の輸送重量は
最大 100t(トレーラー重量含む)であり、現地への輸送は可能と見込まれる。
下記に主要変圧器の主な仕様を示す。
– 定格電圧
– 定格容量
– 定格周波数
– 設置場所
– 冷却方式
(2)
:1 次 11.0 kV
:2 次 150 kV
:1 次 56.2MVA
:2 次 56.2MVA
:50 Hz
:屋外開閉所
:OFAF(送油風冷式)
150kV 屋外開閉機器
150kV 屋外開閉機器は主要変圧器と同じく発電所建屋に隣接する屋外開閉所に設置する。
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予備設計
また屋外開閉機器のタイプについては従来式とガス絶縁開閉装置があるが、設置スペースと建設
費を考慮して、経済的に有利な従来式とする。
150kV 屋外開閉機器は 150kV 母線、断路器、遮断器、保護継電器用および計測用 CT, VT,サポー
ト碍子、架線、屋外鉄溝から構成される。
図 18.5.1 に発電機、変圧器、母線、送電線までを含めた全体の Single Line Diagram を示す。
図 18.5.1
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単線結線図(Masang-2)
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18.5.2 送電線
図 18.5.2
Masang-2 と送電線建設計画の位置関係
a) 適用電圧階級
総発電容量及び発電機定格容量から 150kV 以上での系統アクセスが妥当である。
b) 系統アクセスポイント
系統アクセスの検討に際し、RUPTL に示される既存流通設備、及び流通設備計画から系統アクセ
ス方法を選定し、以下の 4 つの観点から優劣を判断した。距離、地形については、相対的な評価
を行い、環境面(森林区分、自然保護区等)、系統運用に関しては、不可となる要因がある場合にの
み評価する。
表 18.5.1
観点
候補
送電線建設懸案
自然保護
森林区分
住民負担
◎
◎
×
-
-
-
○
-
◎
○
-
◎
×
-
-
-
◎
-
○
○
-
◎
-
○
○
-
4
追
加
Inc.(Maninjau –Simpang Empat T/L)
(自然保護区迂回(保全林地域通過)ルート)
38kms
5
追
加
Inc..(Maninjau –Simpang Empat T/L)
(自然保護区迂回(無制約区域通過)ルート)
54kms
3
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系統運用
地形
100kms
2
環境面懸案
距離
Inc.(Maninjau –Simpang Empat T/L)
(Masang 川沿岸敷設ルート)
GI Padang Luar
(幹線道路近傍施設ルート)
GI Simpang Empat
(Masang 川沿岸敷設ルート)
1
送電線設計比較
34kms
○
80kms
△
◎
◎
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6
追
加
GI Simpang Empat
(自然保護区迂回ルート)
第 18 章
×
◎
120kms
-
○
○
予備設計
-
評価 : 良 ◎→○→△→△△→× 不良
i)
送電線建設
上記候補 1~3 の送電線延伸建設を想定した場合、送電線ルート(最短距離もしくは、地図よ
り大まかに確認できる延伸可能な最短ルート延長)は、Masan 川を川沿いに送電線延伸し
Maninjau-Simpang Empat 間 150kV 送電線への距離が最も近く、候補 1 のルート長を基準単位
とした場合、候補 2(GI Padang Luar へのアクセス)は 2.2 倍、候補 3(GI Simpang Empat へのア
クセス)は 3 倍と予想される。また、本候補 1 は里側に下るルートであるため、他の候補と比
べて工法が一元化され簡単である。
送電鉄塔建設に係る地形は GI Padang Luar へのアクセスの場合、比較的近傍に整備された道
路が Bukit tinggi 方面へ抜けているため、資材運搬、及び巡視ルート確保の点でメリットがあ
るが、山間部の起伏が数多くあり、メリットを十分に享受するには及ばない。候補 3、GI
Simpang Empat へのアクセスの場合は、直線的な経路ではなく、Maninjau-Simpang Empat 間
150kV 送電線分岐接続と同様、Masang 川を下りその度、Masang 川北側の山肌に沿って Simpang
Empat へ接続することを想定し、◎とした。
ii) 環境面
Power House 予定地は、Agam 県(Kabupaten Agam)と Pasaman 県(Kabupaten Pasaman)の県境に
位置し、Agam 県側に建設される。Masan 川は、Agam 県、Pasaman 県を分ける県境の川とな
っており、河川自体は Pasaman 県に属する。最短ルートとなりうる Masang-2 発電所から
Masang 川沿いに里側に送電線を延伸しようとした場合、Batastinjaulaut 山、Sinanggamaur 山
及び Masang 川一帯の自然保護区を横断することとなり、現実的に考えてこのルートによる送
電線建設は不可能である。よって、自然保護区を避け迂回して Maninjau-Simpang Empat 150kV
送電線へ分岐接続するルートを検討対象に加える。今回のルートゾーンとしては、手続きは
必要なものの保護林を通過するルートと保護林をも通過させないルートを候補 4、5 としてゾ
ーン検討対象に加えた。
iii) 系統運用
Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へ接続するルートゾーンのうち、保護林区域を通過し
て接続する候補(候補 4)と森林区分上無制約な区域を通過するルート(候補 5)、及び候補 5 に
準じて GI Simpang Empat への系統アクセスする候補(候補 6)は各々表中の値のように距離が
増加する。ただし、Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へ接続する場合は、里側へ出てし
まえば、ほぼ平坦な地形であり、鉄塔基礎、及び鉄塔構造に関してはほぼ標準設計のまま建
設 が 可 能 で あ ろ う か ら 、 亘 長 距 離 以 上 に GI Padang Luar へ の 系 統 ア ク セ ス よ り
Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へ環境上無制約なルートを選定する方が費用面におけ
る優位性が高いと考えられる。
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予備設計
需給バランスの観点から比較すると、RUPTL より、GI Simpang Empat の 2019 年時ピーク需
要は 45.3MW である。Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線に最大約 40MW の発電電力が分
岐連系することになると、本出力は GI Simpang Empat にて大部分を消費される。また GI
Padang Luar に関しても、2019 年ピーク電力が 66MW であり、需要の大部分を本水力ポテン
シャルにて吸収できる。
電力品質の観点から比較した場合、
本水力ポテンシャルが GI Padang Luar に接続した場合は、
GI Payakumbuh から GI Padang Luar 向きの潮流が減少するのみであり、電圧も 275kV/150kV
変電所である GI Payakumbuh が GI Padang Luar と電気的距離が近く問題ないものと推測でき
る。逆に末端系統となる GI Simpang Empat の至近に水力発電所が連系することにより、GI
Simpang Empat の電圧は改善されるであろう。この点で、Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電
線に分岐接続するメリットは大きい。
適用送電線種と保護継電システムの観点から見ると、GI Padang Luar との系統アクセスに関し
ては、並行 2 回線を建設する。Potential の定格容量からみて、標準仕様となっている 1HAWK,
2cct、 保護継電システムに関しても距離継電器、地絡方向継電器で問題ない。一方、
Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へ分岐接続する場合は、以下の 2 方式が考えられる。
¾
4 回線π分岐接続
¾
2 回線π分岐接続
¾
分岐接続
4 回線π分岐接続は物理的に線路が増えるため建設費用としては増大するが、現状の
Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線の保護継電器システムを変更することなく建設が可能
である。2 回線π分岐接続は、逆に建設費用は前者に比べ 2 回線分少ないため安価であるが、
系統運用面において、Potential-GI Simpang Empat 150kV 送電線間が故障停止すると、Potential
の出力が GI Maninjau 経由となるため、効率的でないばかりか Potential の一次母線電圧が GI
Maningua – GI Simpang Empat – Potential と電気的距離が若干遠くなる関係から、無効電力補償
を行う必要がある点が危惧される。特に GI Simpang Empat を起点に前記北端方面の Grid 延伸
を検討するする場合は、問題が顕在化し易い。また、分岐接続の場合は 3 端子運用となり、
他端子保護可能な保護継電器システムに変更する必要がある。Potential site と GI Maninjau が
電源端子となりうるため、キャリア型継電器保護システムを導入する必要があり、系統運用
が若干複雑化する。現状インドネシアにおける系統運用では、他端子運用を行っていないた
め、この導入に当たっては、系統運用者の業務増大等を勘案して導入すべきである。
よって、前述のように西 Sumatra 州北端方面 Grid 延伸を想定するのであれば、送電鉄塔 1 基
で 4 回線設置できる仕様とし、当初は、2 回線π分岐接続で運用を行う、もしくは、標準鉄
塔(1 基 2 回線設置)を建設し、北端方面 Grid 延伸を想定する際に新たに送電線を建設し 4
回線π分岐接続としても良い。当然、北端方面の Grid 延伸を視野に入れないのであれば、2
回線π分岐接続で問題ない。尚、本分岐接続方式に適用する送電線種は、Maninjau-Simpang
Empat 線が 1HAWK, 2cct であり、同種でよい。
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予備設計
以上を踏まえ、Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へ分岐接続(保護林区域通過,無制約区域通
過)と GI Padang Luar 系統アクセスに関して、ルートゾーンを含む詳細を検討した1。
GI Simpang Empat
GI Simpang Empat
GI Simpang Empat
Potential site
Potential site
Potential site
Masang‐2
Masang‐2
Masang‐2
GI Maninjau
4 回線π分岐接続
GI Maninjau
GI Maninjau
2 回線π分岐接続
図 18.5.3
分岐接続
接続形式
c) ルートゾーン
下図に水力ポテンシャルサイト – GI Padang Luar 間、及び Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線
への分岐接続ルートゾーンを示す。ルートゾーンとは、送電線建設設計における上流設計部分で
あり、比較的詳細な地図上で送電線建設可能なルートを模索する手法である。
図 18.5.4 ルートゾーン
1
本検討の目的は、圧倒的なメリット及び合理性が享受されない限り、一意に解を求めるのではなく、可能性のあ
る候補全てに対して検討することにある。
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予備設計
送電線・送電鉄塔技術的観点
水力ポテンシャルサイトと GI Padang Luar にはおよそ 750m の高低差があり、Bukit Tinggi 方
面への直線ルート上には Ladangatas、Batasarik、Galanggang 山が連なっている。
ルートソーンの選定においては、両地点、及びその間の地形を鑑み、川沿いの両岸斜面の比
較的傾斜が緩やかな部分(斜面傾斜角 30°以下)及び、上昇・下降(上昇・下降傾斜角 35°
以内/200m)を勘案してゾーンに選定した。実質的なルートとしては、本ルートゾーンの上端、
下端を採るものと想定される。
水力ポテンシャルサイトから Maninjau-Simpang Empat 150kV 送電線へのルートは里側へ下る
ルートとなり、高低差 100m 程度と推測されるが途中経路のゾーンとして最大標高 550m、つ
まり高低差にして 400m 弱の山越えを採った。これに関しても前述同様の斜面傾斜角、上昇・
下降傾斜角にて選定している。尚、山を下りた後以降は、水田地帯を通過し、Simpang Empat
–Maninjau 線と極力最短ルートをとる。
ii) 環境社会配慮的観点
自然保護区等の致命的な建設阻害要因を避けた本ルートゾーン選定において、保護林区域を
通過する送電線延伸ということより、当該区域における開発面積を最小限とする必要があり、
現場地勢を十分に調査・検討する必要がある。また、一部、生産林区域を通過する可能性が
あり、補償に対しても配慮が必要である。
また、プランテーション等の大規模な耕作地は見当たらないものの、集落が幾つか存在する
ため、土地収用、日照障害等居住地近隣に送電線を建設する場合は一定の配慮が必要である。
また近隣に多少の居住区域があれば、送電線建設後、送電線保守のためのモニターを任せら
れる可能性があるため、居住地区からの距離には検討を要す。本ゾーン内を総合すると景勝
地等もなく、景観的問題は発生しない。
今回の Pre-FS において、ルートゾーンとして複数の選択肢を用意した。今後の詳細なルート選定
において時節にあったルートを選定すればよいが、本調査における費用算出には、候補 5 自然保
護区迂回(無制約区域)ルートを採用した。
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水力開発マスタープラン調査
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第 19 章
第 19 章
施工計画と事業費積算
施工計画と事業費積算
19.1 事業実施計画
マサン‐2水力発電事業(以下“本事業”と言う)は、本マスタープラン調査における枠組みの
中で流れ込み式開発形態のプレ F/S を実施すべきであると提案された。 本事業の主要構造物は、
1) 取水堰, 2) 取水口と土砂吐, 3) 接続管渠, 4) 接続トンネル, 5) 中間調整池, 6) 導水路, 7) 調圧
水槽, 8) 鉄管路, 9) 発電所, 10) 放水路, 11) 開閉所, 及び 12) 送電線で構成される。 表 19.1.1 に
工事項目を整理した。 アクセス道路、準備工、河川切り替えなども本章で取り上げた。図 M-100
に提案する仮設備とアクセス道路のレイアウトを示す。
表 19.1.1 工事項目(Masang-2)
Category
Civil Works
Structure/Equipment
Intake Weir, Intake, Sand Trap, Connection Culvert, Connection Tunnel, Intermediate
Pond, Headrace Tunnel, Surge Tank, Penstock Line, Powerhouse, Tailrace, Switchyard,
Transmission Line
Hydro-Mechanical
Gates, Valves, Trash rack, Stoplogs, River Outlet Steel Pipes and Valves, Penstock Pipe,
Works
Draft Tube Gate
Electro-Mechanical
Turbines, Generators, Main Transformers, Control Equipment, Switchgear, Transmission
Works
Line
2011 年を開始年とした本事業の全体実施工程を図 19.1.1 に示すように提案する。マサン‐2 水力
発電所の運転開始は 2017 年 11 月で策定する。本事業は、建設実施前準備期間に 3 年間、建設工
事実施に 3 年間、合計 6 年間を要すると見込まれる。提案した時期に発電運転を開始するために
は、2014 年の建設工事着工が望まれる。
必要となる事業実施項目は、次のように整理される:
¾
事業実施資金調達
¾
事業実施の可能性調査と追加現場調査
¾
環境影響評価調査
¾
用地取得、補償と再定住
¾
コンサルタント調達
¾
入札設計・入札図書作成
¾
入札資格審査、入札、入札評価、落札業者決定
¾
建設工事実施・施工監理・環境マネジメント
事業に係る更なる調査及び建設工事の実施に必要な資金源として日本 ODA 資金の充当が期待さ
れる。本事業は、インドネシア国の電力公社(PLN)が実施機関として責任を持って実施するよう、
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水力開発マスタープラン調査
19-1
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第 19 章
施工計画と事業費積算
提案する。
建設工事は、国際競争入札によって選ばれたコントラクターが実施する。FS 調査、入札設計、建
設工事施工監理のために技術コンサルタントの雇用が予定される。本体工事の建設期間を短縮し
て 2017 年 11 月の商業運転開始に合わせる目的で、現場のアクセス道路は、本体工事と切り離し
インドネシア政府資金を用いて先行実施を計画する。施工業者は、インドネシア国内競争入札に
より選ぶものとする。
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水力開発マスタープラン調査
19-2
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
図 19.1.1
Description
I Preconstruction Activities
1 Pre-feasibility Study
2 Financial arrangement
- Foreign loan nego & agreement
- Indonesia national budget
3 Supplemental survey
4 EIA
5 Land acquisition/re-settlement
6 Publication of approved EIA result
7 Procurement of consultant
8 Detailed design & tender documents
Preparation
9 PQ for ICB tender
10 International tender & evaluation
11 Contract award
II Construction, Masang-2
1 Site access road by local fund/tender
2 Mobilization/Preparatory works
Unit
Q'ty
-
-
-
-
-
-
-
LS
LS
2010
7
8
9 10 11 12 1
Year 1 (2011)
2
3
4
5
6
7
8
全体実施工程(Masang-2)
Year 2 (2012)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
施工計画と事業費積算
7
8
Year 3 (2013)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
8
Year 4 (2014)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
8
Year 5 (2015)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
8
Year 6 (2016)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
8
Year 7 (2017)
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12
L/A
36 mths
3 Civil works
1) River diversion woks
-
LS
2) Intake weir, intake, sand trap
-
LS
3) Waterway, connectioin culvert, W3.75xH4.25
flow to right channel
m
1060
Waterway, connection tunnel , horse-shoe, D3.75m
m
1,630
2-heading, excavation: 140 m/mth
Waterway, connection tunnel , horse-shoe, D3.75m
m
1,630
2-heading, concrete, arch & wall: 240 m/mth, invert: 1000 m/mth
Waterway, connection tunnel , horse-shoe, D3.75m
m
1,630
Waterway, intemediate pond, water surface area
Waterway, headrace tunnel, circular, D3.75m
ha
4.5
m
980
2-heading, excavation: 140 m/mth
Waterway, headrace tunnel, circular, D3.75m
m
3,570
4-heading excavation: 280 m/mth
Waterway, work adit for headrace tunnel
Waterway, headrace tunnel, circular, D3.75m
m
500
1-heading excavation: 70 m/mth
m
4,550
Waterway, headrace tunnel, circular, D3.75m
m
4,550
-
LS
4) Surge tank (D8.5m)
5) Penstock, surface, D3.1m
m
677
6) Powerhouse, above ground, RC
-
LS
7) Tailrace channel, open
8) Switchyard
-
LS
-
LS
lot
1
4 Hydromechanical works
5 Generating equipment
lot
1
6 Transmission line, 150 kV
km
54
-
LS
7 Tests & cmmercial operation
: Wet season
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水力開発マスタープラン調査
flow to left channel
flow to sand flushin sluice
backfill grout: 800 m/mth
4-heading, arch & wall concrete:480m/mth, invert: 2000 m/mth
backfill grout: 800 m/mth
OHTC
procurement
installation
19-3
2011 年 8 月
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第 19 章
施工計画と事業費積算
19.2 施工計画と工事工程
19.2.1 施工計画
(1)
工事範囲
プレ FS で設計されたマサン‐2HEPP の主要工種とその工事数量を表 19.2.1 に整理する。
表 19.2.1 主要工種と工事数量(Masang-2)
Work item
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
Quantity
Access road
- Access road, new 4m carriage way
- Existing road improvement
- Bridge
Preparatory works
Environmental mitigation works during construction
Diversion weir, intake and sand trap
- Excavation
- Concrete, mass
- Concrete, structural
- Foundation grouting, 10mx50 nos.
Connection culvert, L 1,060 m
- Excavation
- Earth backfill
- Concrete
Connection tunnel, L 1,630 m
- Excavation, open
- Excavation, underground
- Tunnel support
- Concrete lining
Intermediate pond, water surface area 4.5ha
- Excavation for storage space
- Excavation for structural foundation
- Dike embankment, rock fill
- Slope stabilize cover concrete, below El 343
- Slope stabilize drain holes, below El. 343
- Cut slope sodding, above water
- Cut slope shotcrete, above water
- Foundation grouting, 10mx100 nos.
- Concrete, open structures
Headrace tunnel L4,730 m and surge tank
- Excavation, open
- Excavation, tunnel
- Excavation, shaft
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19-4
: 14.2 km
: 1.5 km
: 2 sets
: LS
: LS
: 66.000 m3
: 7,000 m3
: 12,900 m3
: 500 m
: 243,,000 m3
: 30,000 m3
: 10,200 m3
: 3,600 m3
: 32,200 m3
: LS
: 13,200 m3
: 840,000 m3
: 150,000 m3
: 325,000 m3
: 2,200 m3
: 5,000 m
: 9,000 m2
: 3,000 m2
: 1,000 m
: 5,400 m3
: 11,300 m3
: 94,000 m3
: 4,700 m3
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
(9)
(10)
(11)
(12)
(2)
第 19 章
- Tunnel support
- Concrete lining
- Consolidation grouting
- Work adit, L 500 m
Penstock line, powerhouse, tailrace and switchyard
- Excavation, open, penstock
- Excavation, open, powerhouse
- Earth backfill
- Concrete, penstock line
- Concrete, powerhouse
- Architectural finish & utility
Steel and mechanical works
- Sand flushing gate, 5mx4m, 1 no.
- Sand flushing stoplog, 5mx4mx, 1 no.
- River outlet valves, D0.3m slide valve, 2 nos.
- Intake trash rack
- Intake gate, 2 nos.
- Intake stoplog, 1 no.
- Sand drain gate, 2 nos.
- Settling basin, end stoplog
- Culvert inlet stoplog gate
- Connection tunnel outlet stoplog
- Pond river outlet steel pipe, D0.5mx110m
- Pond river outlet emergency valve, D0.4m
- Pond river outlet service valve, D0.4m
- Draft tube stoplog, 2 nos.
- Penstock pipe, D3.4m
Generating equipment and switchyard equipment
- Turbines
- Generator
- Control equipment
- Others
Transmission line
- Transmission line, 150 kV
施工計画と事業費積算
: LS
: 28,900 m3
: 23,000 m
: LS
: 64,000 m3
: 83,000 m3
: 10,000 m3
: 4,100 m3
: 9,000 m3
: LS
: 30 tons
: 20 tons
: LS
: 14 tons
: 50 tons
: 25 tons
: 6 tons
: 22 tons
: 32 tons
: 27 tons
: 13 tons
: LS
: LS
: 21 tons
: 1,010 tons
: 1 lot
: 1 lot
: 1 lot
: 1 lot
: 54 km
現場の状況
既存アクセス路
建設工事対象地域は、西スマトラ州パダン市北方 90km、マニンジョウ湖北方約 15kmに流れる
マサン川上流域である。対象地域へのアクセスは、パダン市、ブキッテインギ、パレンバイアン
を通過する既存州道が利用できる。
地形
現場は、標高 140m~344mの山岳高地である。マサン川源流は、ブキッテインギに近いミナンカ
バウ高地であり、北流後に西へと流れを変えてインド洋に注いでいる。
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水力開発マスタープラン調査
19-5
2011 年 8 月
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第 19 章
施工計画と事業費積算
気象・水文
事業対象地域の月間と年間の平均雨量は、各々299mm と 3,661mm である。ブキッテインギ、マニ
ンジョウ、ジャンバック及びコタバルの記録によれば、日雨量 5mm 以下の日数は、年間 250 日で
ある。雨季は 10 月から 4 月である。平均気温は、最高 31oC、最低 22 oC である。
地質
堰・取水口計画地点には石灰岩が分布している。導水トンネルラインでのボーリング調査にて地
表より深さ 19m より凝灰岩或いは凝灰岩質角礫岩が確認され、特に深さ 40-55mで CL-CM 級岩
盤が認められており、トンネルレベル付近(地表より 100m)では、CM級以上の岩盤が期待でき
る。中間調整池周辺に分布している石灰岩が破砕をうけているが支持力上の問題は、ない。漏水
に対する基礎処理を施せば基礎岩盤として適当である。
プロジェクトエリア内には複数の石灰岩原石山やマサン川の河床砂礫などが確認され、コンクリ
ート骨材やロックフィル材料として採取が可能であり量・質ともに使用予定量を満たすと考えら
れる。
建設資源
建設工事用の資機材調達先は、主に以下の地域となる予定である。
Labor force
1) Skilled
2) Semi-skilled
3) Common
: Bukittinggi, Padang and Jawa
: Bukittinggi, Padang
: Project site
Materials
1) Cement
2) Reinforced steel bar
3) Shaped steel, H, I
4) Concrete aggregates
5) Fuel and lubricants
: Padang
: Jawa, Sumatra
: Jawa
: Project site
: Bukittinggi
Plant/Equipment 1) Earthmoving equipment
2) Tunneling equipment
3) Concreting
4) Crane
: Bukittinggi, Padang, Jawa
: Import
: Bukittinggi, Padang, Jawa
: Bukittinggi, Padang, Jawa
資機材輸送
海上輸送資機材の荷捌きは、トルックバヤル港(パダン港)となる。同港は、25t、45t吊りク
レーン、40tトレーラ、2-5tフォークリフト他、十分な荷捌き設備を有する。荷揚げされた資
機材は、パダン、ブキテインギ、パレンバイン経由の州道を利用して現場に搬入される。
(3)
年間稼動日数
工事の年間稼動日数は、日曜日・祭日・ハリラヤ休日・降雨休止日(日雨量5mm以上で土工、コ
ンクリート工は休止)を考慮して次のように予定している。
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水力開発マスタープラン調査
19-6
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第 19 章
明かり土工事・コンクリート工事
:250 日
トンネル工事
:296 日
施工計画と事業費積算
1 日の作業時間は、午前 8 時~午後 5 時とし、昼食時間 1 時間とし、月曜日~土曜日の週間労働
時間は、48 時間で計画する。
(4)
準備工事
工事用道路
幅員4mの工事用道路を下記のように計画し、図 M-100 に示す。工事用道路は、インドネシア業
者により建設または改良する計画とする。
道路
AR1 新規, 取水堰側左右岸
AR2 新規, 上流側左岸
AR3 新規, 左岸、コトテインギ村
AR4 新規, 左岸中間調整池と土捨場 3
AR5 新規, 左岸、コトテインギ村-発電所
AR6 新規, 左岸、AR5-作業坑口
AR7 新規, 左岸、発電所- マサン川
AR8 新規, 右岸、州道-発電所
AR9 新規, 右岸、州道-発電所
橋梁
BR1 新規, 取水堰直下流
BR2 新規, 発電所側
土捨場
掘削総量は、約 150 万m3 と見積もられる。掘削土は、コンクリート骨材、道路敷材、低地の埋
め立てなど、有効利用を図るものとする。余剰土は、図 M-100 に示した SB1~SB9 に運搬捨土す
るものとする。
ベースキャンプとプラントヤード
コントラクターのキャンプ及びプラント敷地は、左岸側、コトテインギ村近くを予定する。これ
らに必要な敷地面積は、約 2ha と見積もる。
(5)
仮設備
建屋、プラント、試験室、修理工場、倉庫、爆薬保管庫などの仮設備を計画する。
コンクリートプラント
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19-7
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第 19 章
施工計画と事業費積算
プロジェクトで必要なコンクリートは、総量約 10 万m3 と見積もられる。プロジェクトサイト近
辺で生コンクリート工場が操業していないことより、コントラクターは自家生産設備を用意する
ものとする。プラントの混錬容量は、月間のピーク打設量に合わせて決定する。
骨材プラント
コントラクターは、コンクリート骨材を外部業者よりの調達とするか、原石山を開発して自家生
産を行うか、判断を行うものとする。原石山候補地を図 M-100 に示す。骨材プラント容量は、ピ
ークコンクリート打設量に合わせて計画を行うものとする。
水供給システム
コントラクター事務所、キャンプ、プラント、修理工場、トンネル工事などに必要な水は、マサ
ン川、支流、渓流よりポンプアップ給水を行う計画とする。飲料水は、沢水湧水を処理、給水を
行う。
電力供給システム
取水堰、中間調整池、作業坑口、発電所付近には公共電力が、未配電である。コントラクターは、
自家発電機とするか、公共電力線より延伸給電か、計画するものとする。
圧縮空気供給システム
トンネル掘削は、油圧機構式ドリフターで計画されることより、供給が必要な圧縮空気量はさほ
ど多くはない。圧縮空気が必要な機械類は、移動式空気圧縮機より供給する。
換気システム
トンネル作業で発生する汚濁空気は、作業員の呼気、発破、及びデイーゼルエンジンである。掘
削ズリは、デイーゼルトラック搬出が計画されることより、最大汚濁源となる。換気システムの
設置が必須である。次期調査時に必要な換気量を算定するものとする。
トンネル内排水システム
トンネル内湧水・出水・漏水は、下記方法での排水を計画する。:
Site
Connection tunnel
Headrace tunnel
Powerhouse
Intake
Drainage method
Gravity from pond side portal and pump up from
intake side
Gravity from the work adit and surge tank side
tunnel portal, and pump up from the work adit and
pond side tunnel portal
By pumping-up
By pumping-up
通信システム
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19-8
2011 年 8 月
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施工計画と事業費積算
内・外線電話、モバイル電話、無線機などの通信手段を計画する。
(6) 主要土木工事
取水堰・取水口・土砂吐
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type of weir
Un-gated concrete weir
- Type of intake
Screened horizontal inlet
- Type of sand trap
Double settling basins
- Height, overflow section
- Foundation excavation
4m
66,000 m3
- Mass concrete
7,000 m3
- Concrete, structural
12,900 m3
- Foundation grouting, 10mx 50 nos.
500 m
- Hydro-mechanical works
1 lot
取水堰、取水口及び付属構造物工事は、マサン川に仮締切堤を設け河川の流れを下記 3 段階に分
けて切り替えて行う明かり工事での施工を計画する。
1st stage: 河川内に仮締堤を設けてマサン川の流れを右岸側に構築した水路に流し、左岸側の構造
物を建設する。左岸取水堰の一部は、第2段階の水路として利用できるような計画とし、
一部マスコンクリートは第 3 段階で打設する。
2nd stage: 同様に河川内に仮締堤を設けてマサン川の流れを左岸側に設けた水路に流し、右岸側の
構造物を建設する。
3rd stage: 河川の流れを土砂吐ゲートと水路に替え、左岸マスコンクリートの残り部分を打設する。
取水堰や関連構造物工事は、21tブルドーザ、1.2m3 バックホウ、15t ダンプトラックなどを用い
て施工する予定である。岩掘削用に 800kg 級ジャイアントブレーカの投入を考慮する。コンクリ
ート工事は、コンクリートプラント、3m3 コンクリートバケット、30tクローラクレーン、3m3
アジテータトラックなどでの施工を予定する。第 1 段階~第 3 段階の施工をそれぞれ 33 ヶ月工期
で計画する。
接続ボックスカルバート
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type of channel
Free flow box culvert
- Size of channel
W3.75m x H4.25m
- Length of channel
1,060 m
- Excavation
243,000 m3
- Concrete, structural
10,200 m3
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19-9
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第 19 章
施工計画と事業費積算
本工種の施工は、12tブルドーザ、0.6m3 バクホ、10tダンプトラック、3m3 アジテータトラッ
クなど標準的機械を用いて 2~3 パーテイ作業班の平行作業で実施する計画とする。工事は、2 乾
季を挟んで実施予定である。
接続トンネル
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type
Free flow tunnel, horse-shoe
- Tunnel diameter
D3.75 m
- Length of tunnel
1,630 m
- Excavation, tunnel
32,200 m3
- Tunnel lining concrete
13,200 m3
本接続トンネルは、全線に亘って全断面、穿孔・発破の在来方式で掘削予定である。
地質状況
に合わせて、上・下部ベンチカット方式も一定区間で採用を予定する。地質状態の把握と地下水
予測の為面よりのパイロット坑の穿孔を推奨する。作業坑は計画しない。
掘削は、上向きと下向き方向の2切羽でドリルジャンボを投入して実施する。各切羽の標準進捗
率は、月間 70mで計画する。トンネル支保工は、スチールリブ、吹き付け工、金網工、ロックボ
ルト、フォアポーリング(先行補強工)を予定する。予期せぬ大量出水に備えて排水設備を計画
する。
全線掘削貫通後にトンネルのコンクリ巻き立てを行う。月間進捗率は、スチールスライデイング
型枠を用い、アーチと壁部 120m、インバート 500mで計画する。巻き立て、後バックフィルグラ
ウト施工する。
中間調整池
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type of pond
Excavated natural creek
- Water surface area
4.5 ha
- Gross storage volume
0.4 MCM
- Excavation, storage space
840,000 m3
- Excavation, structural foundation
150,000 m3
- Dike embankment, rockfill
325,000 m3
- Cut slope protection
LS
- Foundation grouting, 10mx100 nos.
1,000 m
- Concrete, open structures
5,400 m3
中間調整池の土工事は、コンクリート作業に先行して実施し、12t ブルドーザ、0.6m3 バックホウ、
10tダンプトラックなど標準的機械を投入して、2~3作業班により平行作業で施工する計画と
する。大量土工事となる掘削工事の時間当たり標準進捗率は、20 ヶ月工期を予定して 230m3 で
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第 19 章
施工計画と事業費積算
計画する。中間調整池工事は、2 乾季を挟む工期で計画する。
導水路、調圧水槽, 及び排水トンネル
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type of headrace tunnel
Pressure flow tunnel, circular
- Tunnel diameter and length
D3.75 m, L4,550 m
- Type of surge tank
Vertical shaft
- Surge tank diameter and height
D8.5 m
- Type of drain tunnel
Horse shoe
- Drain tunnel diameter and length
D3.6 m, L100 m
- Excavation, open
11,300 m3
- Excavation, tunnel
94,000 m3
- Excavation, shaft
4,700 m3
- Tunnel lining concrete
28,900 m3
- Consolidation grouting
23,000 m
(導水路)
導水路トンネルは、全線に亘って全断面、穿孔・発破の在来方式で掘削予定である。
地質状況
に合わせて、上・下部ベンチカット方式も一定区間で採用を予定する。トンネル中間地点に約 500
m長の作業坑を設け、下記の方法と工程で導水路トンネルを掘削する予定である。
第 1 段階:500mの作業坑掘削と平行して本坑を掘削する。本坑は調整池側より下向き方向(切羽
-a)及び調圧水槽側より上向き方向(切羽-b)とし2切羽で実施する。
第 2 段階:500m作業坑の貫通後、4切羽での施工に切り替え、それぞれ下向き、上向きに本坑を
掘削する。
地質状態の把握と地下水予測の為面よりのパイロット坑の穿孔を推奨する。掘削は、上向きと下
向き方向の切羽でドリルジャンボを投入して実施する。各切羽の標準進捗率は、月間 70mで計画
する。長さ 500mの作業坑は 7 ヶ月で貫通予定である。作業坑と平行作業の本坑は、2切羽で 7
ヶ月間に 980m長を掘削する。本坑の残り 3,570mは4切羽を用いて 13 ヶ月で貫通させる計画と
する。第 2 段階の掘削は4基のドリルジャンボを投入する。トンネル支保工は、スチールリブ、
吹き付け工、金網工、ロックボルト、フォアポーリング(先行補強工)を予定する。予期せぬ大
量出水に備えて排水設備を計画する。
トンネル支保工を含む掘削作業は下記順序での施工を予定する。
発破孔穿孔
2ブーム油圧式ホイールジャンボでの穿孔を計画する。穿孔速度は毎分1.3~1.5mを予定
する。
爆薬装填
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19-11
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第 19 章
施工計画と事業費積算
爆薬装填と導火線結線は、3名の発破士で実施する。爆薬量は1m3当たり2kgを予定す
る。
発破と換気
切羽よりドリルジャンボを退避させた後、電気式導火線に着火、発破を行う。発破後の
換気は20分間を予定する。
ズリ出し
換気後、6トンダンプトラックへのズリ積み込みは、0.4m3バケット装着のサイドダン
プ積込機を予定する。トンネル底幅は3.5mである。坑内でのダンプトラック走行に支障
が無いように切広げ部を設ける予定である。
吹き付け
ズリ出し後、スチールファイバ強化コンクリートをアーチ部、壁部に厚さ約10cmで吹
き付け施工する。コンクリートプラントで混連した生コンクリートは3m3トラックミキ
サで切羽付近に運搬する。
ロックボルト
径25mm、長さ2.5mのロックボルトを指定された間隔で施工予定である。フルボンドロ
ックボルトとセメントミルクで施工予定である。ロックボルト孔はトンネルホイールジ
ャンボで穿孔予定である。
鋼支保工
H‐150鋼支保工は3トン油圧クレーンで建て込む計画とする。
日当たり進捗は 3.5mで計画、3回発破を行い、各回 1.0~1.5mの穿孔長とする。トンネル排水は
重力式及びポンプ排水で計画する。
全線掘削貫通後にトンネルのコンクリ巻き立てを行う。月間進捗率は、スチールスライデイング
型枠を用い、アーチと壁部 120m、インバート 500mで計画する。巻き立て、後バックフィルグラ
ウトを施工する。
側壁とインバート部は全線 25cm のコンクリートで巻きたてる。アーチ部と側壁施工後にインバ
ート部のコンクリート打設を行う。コンクリート作業はトンネル中心より外側に向けて施工を行
う。コンクリートは 4.5m3 トラックミキサで運搬、時間打設量 60m3 のコンクリートポンプを用
いた打設を計画する。打設後、ロックとコンクリートライニングの隙間にバックフィルモルタル
を充填する。
(調圧水槽と排水トンネル)
調圧水槽の施工に先行して排水トンネルを施工する。施工方法は、接続トンネルの施工に準じて
行う。垂直シャフトの掘削は排水トンネルの貫通後に開始する。排水トンネルを利用して調圧水
槽下部より上向きにパイロット孔を施工する。その後、小型掘削機を用いてシャフトの切り広げ
を行う。この掘削ズリは、パイロット孔に落とし込み、排水トンネル経由、土捨て場に捨て土す
る。シャフト掘削に続いてコンクリート工を実施する。
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水力開発マスタープラン調査
19-12
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第 19 章
施工計画と事業費積算
鉄管路と発電所
(鉄管路)
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Type of penstock
- Steel pipe diameter and length
- Pipes after Y-branch
- Excavation, open, penstock
- Concrete、penstock
- Excavation, powerhouse
- Concrete, powerhouse
- Architectural finish and utility
Surface penstock
D3.1 m, L677 m
D1.8 m x 17 m x 2 nos.
64,000 m3
4,100 m3
63,000 m3
9,000 m3
LS
山岳傾斜部の鉄管路の掘削は、小型のブルドーザやバックホ機械と人力を用いての施工を計画す
る。施工の安全を確保するためにウィンチの使用を計画する。
(発電所)
地上式発電所の主要構造物は、1)発電所、2)放水路、及び3)スイッチヤードである。水平軸
式フランシスタービン2基を本発電所に据付ける。発電所工事は、16 トンブルドーザ、0.6m3 掘
削機、10 トンダンプトラック、3m3 アジテータトラック、60 m3/hr コンクリートポンプ車などの
一般的な施工機械を投入して実施予定である。
発電機器の据付け時期を守るために、2016 年4月末までに吊り上げ能力 50 トン級の天井走行ク
レーンを設置する計画とする。2 基のタービンやその他の水力機械は、主にこの天井走行クレー
ンを用いて設置する。マサン-2 発電所は、2 ヶ月間の乾式及び湿式試験後、2017 年 11 月初めに商
業運転を開始する計画とする。
(7)
水力機械工事
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
1) Sand flushing gate (SFG), 5mx4m
2) Sand flushing stoplog, 5mx4m
3) River outlet valves, D0.3m slide valve
4) Intake trashrack
5) Intake gate
6) Sediment stoplog
7) Sand drain gate
8) Settling basin, end stoplog
9) Culvert inlet stoplog gate
10) Connection tunnel outlet stoplog
11) Pond river outlet steel pipe, D0.5mx110 m
12) Pond river outlet emergency valve, D0.4m
13) Pond river outlet service valve, Do.4m
14) Draft tube stoplog
15) Steel penstock, D3.1 m
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
19-13
1 set
1 set
2 sets
1 set
2 sets
1 set
2 sets
1 set
1 set
1 set
1 lot
1 lot
1 lot
2 sets
1 lane
30 tons
20 tons
LS
14 tons
50 tons
25 tons
6 tons
22 tons
32 tons
27tons
13 tons
LS
LS
21 tons
1,010 tons
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
施工計画と事業費積算
図 19.1.1 に水力機械工事の工程表を示す。本工程表は、2014 年 10 月の工事契約締結と、設計、
製作、輸送及び据付けの各期間を想定している。鉄管路の設計、製作及び輸送期間は合計 18 ヶ月、
据付け期間は 15 ヶ月を見込んでいる。据付け工事は、トラッククレーン、クローラクレーン、ダ
ンプトラック、ウィンチなどの施工機械と人力での実施を予定する。
(8)
電気機械工事
本工事主要工種の技術的特徴とその工事数量は次のとおりである:
- Turbine , Horizontal Francis type
- Generator, 3-phase, synchronous
- Transformer
- Auxiliary equipment
- Panels
2 sets
2 sets
1 lot
1 lot
1 lot
図 19.1.1 に電気機械工事の工程表を示す。本工程表は、2014 年 10 月の工事契約締結と、設計、
製作、輸送及び据付けの各期間を想定している。電気機械の設計、製作及び輸送期間は合計 18 ヶ
月、据付け期間は 15 ヶ月を見込んでいる。電気機械工事の最大重量物は、約 120 トンのトランス
であり、注意深い輸送と据付工事の実施が求められる。タービン及び補機類の据付け工事は、主
に天井走行クレーン及び人力での施工を計画する。据付け及び試運転は合計 17 ヶ月で計画する。
本発電所の運転開始時期は、2017 年 11 月で計画する。
(9)
送電線
容量 150kV、総長 54kmの送電線は、シンパンアンパットとマニンジョウ間の既設送電線に接続
予定である。送電線用鉄塔は基礎部分 100m2、350m間隔で建設予定である。
19.2.2 建設工事工程
(1)
建設順序
橋梁 2 基を含む合計 15kmのアクセス道路建設は、本体工事に先行してインドネシア国予算を用
いてローカル業者による施工を提案する。アクセス道路工事は、2014 年 5 月に着工、17 ヶ月工期
での竣工を計画する。導水路工事の予定着工日を確実にするため、AR3, AR5 及び AR6 ルートの
工事に施工の優先度を与える計画とする。土木工事は、取水堰、接続カルバート、接続トンネル、
中間調整池、導水路、調圧水槽、鉄管路、及び発電所の各工区でほぼ平行して実施する計画とす
る。
(2) 工事工程
本事業の実施総工期は、6 年間で計画する。建設工事期間は 3 年間とし、工事着手前の 3 年間は
F/S 調査、環境影響調査、入札設計、及びその他の事前準備期間として計画する。 建設工事期間
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水力開発マスタープラン調査
19-14
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
施工計画と事業費積算
は 36 ヶ月、2014 年 11 月着工、2017 年 11 月の運転開始を計画する。工事のクリチカルパスは、
トンネル長 4,550mの導水路工事期間 33 ヶ月と考えられ、各工区の標準進捗率と工期は次のよう
に予定している。
Work item
Work period
Monthly progress
Work adit of 500 m, excavation, 1 heading
7.0 months
70 m/month
Main tunnel, 980 m, excavation, 2 headings
7.0 months
140 m/month
Main tunnel, 3,570 m, excavation, 4 headings
13.0 months
280 m/month
Main tunnel, 4,550 m, arch & wall concrete, 4 parties
10.0 month
480 m/month
Main tunnel, 4,550 m, invert concrete, 4 parties
1.0 month
4,000 m/month
Main tunnel, 4,550 m, backfill grout, 4 parties
2.0 months
3,200 m/month
19.3 予備的事業費積算
19.3.1 積算の前提条件
Masang-2 水力発電事業の積算は下記する前提条件と仮定のもとに実施している。
„
積算基準年:2010 年
„ インドネシアの会計年度:1 月~12 月
„ 為替交換レート: US$ 1.0 = Rp. 9,000.0 = JPY 82.0
„ 下記項目について外貨分と内貨分に分けて積算
¾
付加価値税を含む建設費
¾
用地買収費、保障費及び移転費用
¾
実施機関の総務・管理費
¾
技術経費
¾
価格上昇および物理的変更に係る予備費
„ 建設費は、環境モニタリング、汚水処理費、塵埃・騒音対策費、森林使用料、植樹生産
物補償費、その他建設工事期間中に環境に関して発生が予想されるネガテイブな事象に
対応するための費用を含む。
„ 環境影響予測に係る費用は人月ベース、エンジニアリング費で積算。
„ 用地買収・補償費は、移転計画策定費用とそのモニタリング費用を含む。
„ 積算結果は外貨分 US$, 内貨分 Rp.に分けて表示。
„ 土木工事で採用した施工単価は、インドネシア国で最近実施された、または実施中の他
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水力開発マスタープラン調査
19-15
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
施工計画と事業費積算
水力発電事業で採用されている施工単価や東南アジアの水力発電事業施工単価などを
参考にして積算。
„
水力機械工事と電気機械工事のコストは、国際競争入札や類似事業のコストを参考にし
て積算。
„ 請負業者の間接費と利益は施工単価に含めて積算。
„ インドネシア国付加価値税 10%は、内貨分に含めて積算。
„ 用地買収・移転費用は、インドネシア国で 2009 年実施された IPP 事業やその他資料を参
考にして積算。
„
実施機関の総務・管理等費用は、付加価値税を除いた直接工事費の 5%で積算。
„
エンジニアリング費は、人月ベースで積算。
„
物価上昇率は、外貨分年間 1.3%、内貨分年間 5.0%で積算。
„
物理的予備費は、全コスト項目の 10%で積算。
„
積算結果は、外貨分 38%、内貨分 62%。
„
年間支出計画は積算事業費ならびに事業工程に基づき作成。
19.3.2 施工単価
Simanggo-2 水力発電事業の積算で採用した施工単価を表 19.3.1 の金額入り数量表に示す。
19.3.3 事業費
Sinmanggo-2 水力発電事業の積算結果を表 19.3.2 に、年支出計画を表 19.3.3 にそれぞれ示した。
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水力開発マスタープラン調査
19-16
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
表 19.3.1
No.
Construction Work Items
I CIVIL WORKS
I.1 Diversion Weir, Intake and Sand Trap
1) Excavation, all classes
2) Earth backfill
3) Concrete, mass
4) Concrete, structure w/form
5) Re-bar
6) Foundation grouting (10mx50nos.)
7) Miscellaneous, 10% of 1) to 6)
8) River diversion works, 20% of 1) to 7)
Subtotal I.1
I.2 Connection Culvert (Free flow, L1,060 m)
1) Open excavation, all classes
2) Earth backfill
3) Concrete, structure w/form
4) Re-bar
5) Miscellaneous, 10% of 1) to 4)
Subtotal I.2
I.3 Connection Tunnel , free flow (L1,630m)
1) Open excavation, all classes
施工計画と事業費積算
金額入り数量表(Masang-2)
Unit
Qquantity
m3
m
m3
66,000
9,000
7,000
m3
t
m
-
12,900
920
500
LS
LS
US$ 1.0 =
9,000 Rp.
4 hr peak
kW
52,000
Unit Rates, Pre-FS2011
Amount, Pre-FS2011
Total, FC+LC
FC (US$)
LC (Rp.)
Total (US$) FC (US$)
LC (Rp.)
(US$ mil.)
3.6
4.0
30.0
30.0
6
30.0
27,060
16,280
630,000
1,080,000
15,828,792
630,000
6.6
5.8
100.0
150.0
1,764.8
100.0
237,600
36,000
210,000
387,000
5,520
15,000
0
316,595
1,207,715
1,785,960,000
146,520,000
4,410,000,000
13,932,000,000
14,562,488,640
315,000,000
4,317,204,864
6,648,495,491
46,117,668,995
0.44
0.05
0.70
1.94
1.62
0.05
0.48
1.06
6.33
1.61
m3
243,000
3.6
27,060
6.6
874,800
6,575,580,000
m3
30,000
4.0
16,280
5.8
120,000
488,400,000
0.17
m3
t
-
10,200
1,220
LS
30.0
6
1,080,000
15,828,792
150.0
1,764.8
306,000
7,320
0
1,308,120
11,016,000,000
19,311,126,240
4,916,418,624
42,307,524,864
1.53
2.15
0.55
6.01
m3
3,600
3.6
27,060
6.6
12,960
97,416,000
0.02
2)
3)
4)
5)
m3
m3
m3
t
-
32,200
LS
400
13,200
280
LS
22.6
813,600
113.0
30.0
51.0
6
1,080,000
1,071,000
15,828,792
150.0
170.0
1,764.8
727,720
509,404
12,000
673,200
1,680
0
1,936,964
26,197,920,000
1,964,844,000
432,000,000
14,137,200,000
4,432,061,760
9,704,117,664
56,965,559,424
3.64
0.73
0.06
2.24
0.49
1.08
8.27
m3
840,000
3.6
27,060
6.6
3,024,000
22,730,400,000
5.55
2) Excavation, structural foundation
3) Dike embankment, rockfill
m3
150,000
3.6
27,060
6.6
540,000
4,059,000,000
0.99
m3
325,000
1.1
91,065
11.2
357,500
29,596,125,000
3.65
4) Slope stabilize cover conc, below El.343
5) Slope stabilize drain holes, below El.343
6) Cut slope sodding, above water
m3
m
2,200
5,000
44.0
10.0
0.3
1,584,000
180,000
24,300
220.0
30.0
3.0
96,800
50,000
2,700
3,484,800,000
900,000,000
218,700,000
0.48
0.15
0.03
8.0
30.0
30.0
6
288,000
630,000
1,080,000
15,828,792
40.0
100.0
150.0
1,764.8
24,000
30,000
162,000
1,620
0
4,288,620
864,000,000
630,000,000
5,832,000,000
4,273,773,840
11,118,637,884
83,707,436,724
0.12
0.10
0.81
0.48
1.24
13.59
Excavation, underground
Tunnel support, 20% of 2)
Concrete open structures
Concrete lining
6) Re-bar
7) Miscellaneous, 15% of 1) to 6)
Subtotal I.3
I.4 Intemediate pond (Water surface area 4.5 ha)
1) Excavation for storage space
7) Cut slope shotcrete, above water
8) Foundation grouting (10mx100nos.)
9) Concrete, open structure
10) Re-bar
10) Miscellaneous, 10% of 1) to 9)
Subtotal I.4
I.5 Headrace Tunnel, Work Adit & Surge Tank
1) Excavation, open
2)
3)
4)
5)
m2
9,000
m2
m
3,000
1,000
3
m
t
-
5,400
270
LS
m3
11,300
3.6
27,060
6.6
40,680
305,778,000
0.07
Excavation, underground
m3
94,000
22.6
813,600
113.0
2,124,400
76,478,400,000
10.62
Excavation, shaft
Tunnel support, 20% of 2)
Concrete, open structures
m3
-
4,700
LS
51.0
1,071,000
170.0
m
2,400
30.0
1,080,000
150.0
239,700
1,487,080
72,000
5,033,700,000
5,735,880,000
2,592,000,000
0.80
2.12
0.36
m3
t
m
-
28,900
970
23,000
LS
51.0
6
13.5
1,071,000
15,828,792
283,500
170.0
1,764.8
45.0
1,473,900
5,820
310,500
0
5,754,080
30,951,900,000
15,353,928,240
6,520,500,000
29,213,820,936
172,185,907,176
4.91
1.71
1.04
3.25
24.89
6) Concrete lining
7) Re-bar
8) Consolidation grouting
9) Miscellaneous, 15% of 1) to 8)
Subtotal I.5
I.6 Penstock Line, Powerhouse, Tailrace, S'Yard
1) Excavation, open penstock
2) Excavation, open powerhouse
3) Earth backfill
4) Concrete, penstockline
5) Concrete, powerhouse
6) Re-bar
7) Architectural finish & utility, 15% of PH
8) Miscellaneous, 10% of 1) to 7)
Subtotal I.6
Subtotal I.1 to I.6
I.7 Environmental mitigation cost during
Construction, 1% of Subtotal I.1 to I.6
Subtotal I.7
Subtotal I (I.1 to I.7)
II STEEL & HYDRO-MECHANICAL WORKS
1) Sand flushing gate, 5mx4m, 1no.
2) Sand flushing stoplog, 5mx4m, 1 no.
3) River outlet slide valves, D0.3m, 2 nos.
4) Intake trashrack
5) Intake gate, 2 nos.
6) Intake stoplog, 1 no.
7) Sand drain gate, 2 nos.
8) Settling basin, end stoplog
9) Culvert inlet stoplog gate
10) Connection tunnel outlet stoplog
11) Pond river outlet steel pipe, D0.5mx110m
12) Pond river outlet emergency valve, D0.4m
13) Pond river outlet service valve, D0.4m
14) Draft tube stoplog, 2 nos.
15) Penstock pipe, D3.1m
Subtotal II
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
3
m3
64,000
3.6
27,060
6.6
230,400
1,731,840,000
0.42
m3
83,000
3.6
27,060
6.6
298,800
2,245,980,000
0.55
m3
10,000
4.0
16,280
5.8
40,000
162,800,000
0.06
m3
4,100
30.0
1,080,000
150.0
123,000
4,428,000,000
0.62
m3
t
-
9,000
790
LS
30.0
6
1,080,000
15,828,792
150.0
1,764.8
-
LS
270,000
4,740
0
0
966,940
15,462,439
154,624
9,720,000,000
12,504,745,680
5,924,373,852
4,542,019,953
41,259,759,485
442,543,856,668
4,425,438,567
1.35
1.39
0.66
0.50
5.55
64.63
0.65
154,624
15,617,063
4,425,438,567
446,969,295,234
0.65
65.28
147,000
84,000
42,000
49,000
245,000
105,000
25,200
92,400
156,800
113,400
54,600
35,000
35,000
88,200
3,888,500
5,161,100
567,000,000
324,000,000
162,000,000
189,000,000
945,000,000
405,000,000
97,200,000
356,400,000
604,800,000
437,400,000
210,600,000
135,000,000
135,000,000
340,200,000
14,998,500,000
19,907,100,000
0.21
0.12
0.06
0.07
0.35
0.15
0.04
0.13
0.22
0.16
0.08
0.05
0.05
0.13
5.56
7.37
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
30
20
LS
14
50
25
6
22
32
27
13
LS
LS
21
1,010
4,900.0
4,200.0
18,900,000
16,200,000
7,000.0
6,000.0
3,500.0
4,900.0
4,200.0
4,200.0
4,200.0
4,900.0
4,200.0
4,200.0
13,500,000
18,900,000
16,200,000
16,200,000
16,200,000
18,900,000
16,200,000
16,200,000
5,000.0
7,000.0
6,000.0
6,000.0
6,000.0
7,000.0
6,000.0
6,000.0
4,200.0
3,850.0
16,200,000
14,850,000
6,000.0
5,500.0
19-17
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
III GENERATING EQUIPMENT
1 Turbine
2 Generator
3 Control equipment
4 Others
Subtotal III
IV TRANSMISSION LINE
1 Transmission line, 150 kV
Subtotal IV
Subtotal, I to IV
V PREPARATORY WORKS
(10% of Subtotal I to IV)
Subtotal V
VI SITE ACCESS
1 Access roads
(1) AR1, new gravel, right bank, cultivated land
(2) AR2, new gravel, left bank, bush/shrubs
(3) AR3, new gravel, left bank, bush/shrubs
(4) AR4, new gravel, left bank, bush/shrubs
(5) AR5, new gravel, left bank, bush/shrubs
(6) AR6, new gravel, left bank, bush/shrubs
(7) AR7, new gravel, left bank, bush/shrubs
(8) AR8, new gravel, right bank, bush/shrubs
(9) AR9, improve asphalt, along Kototinggi vill
2 Bridge
(1) BR1, new and permanent near intake site
(2) BR2, new and permanent near PS site
Subtotal VI
TOTAL, I to VI
%
lot
lot
lot
lot
1
1
1
1
km
54
-
LS
123,750,000
55,000.0
km
km
km
km
km
km
km
km
km
15.7
1.0
0.7
3.5
0.5
3.5
2.0
1.0
2.0
1.5
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
1,800,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
3,420,000,000
810,000,000
200,000.0
380,000.0
380,000.0
380,000.0
380,000.0
380,000.0
380,000.0
380,000.0
90,000.0
m2
300
0.0
13,500,000
1,500.0
m2
300
0.0
13,500,000
1,500.0
表 19.3.2
Item
Project Cost Items
No.
I Construction cost
1 Preparatory works
2 Civil works
3 Hydro-mechanical works
4 Generating equipment
5 Transmission line
6 Site access roads
Subtotal-1
Value Added Tax (PPn)
Subtotal-2
II Land acquisition & resettlement cost
III Administration of executing agency
IV Engineering services cost
Subtotal-3
V Price contingency
Subtotal-4
VI Physical contingency
Grand total
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
41,250
施工計画と事業費積算
9,360,000
7,290,000
7,290,000
5,310,000
29,250,000
9,360,000,000
7,290,000,000
7,290,000,000
5,310,000,000
29,250,000,000
10.40
8.10
8.10
5.90
32.50
2,227,500
2,227,500
52,255,663
5,225,566
6,682,500,000
6,682,500,000
502,808,895,234
50,280,889,523
2.97
2.97
108.12
10.81
5,225,566
50,280,889,523
10.81
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
48,159,000,000
1,800,000,000
2,394,000,000
11,970,000,000
1,710,000,000
11,970,000,000
6,840,000,000
3,420,000,000
6,840,000,000
1,215,000,000
8,100,000,000
4,050,000,000
5.35
0.20
0.27
1.33
0.19
1.33
0.76
0.38
0.76
0.14
0.90
0.45
0
0
57,481,230
46
4,050,000,000
56,259,000,000
609,348,784,758
54
0.45
6.25
125.19
事業費(Masang -2)
FC (US$)
Cost total
LC (Rp.)
5,225,566
50,280,889,523
15,617,063
446,969,295,234
5,161,100
19,907,100,000
29,250,000
29,250,000,000
2,227,500
6,682,500,000
0
56,259,000,000
57,481,230
609,348,784,758
0
112,667,985,255
57,481,230
722,016,770,013
44,000
18,807,300,000
0
56,333,992,628
2,885,000
5,690,000,000
60,410,230
802,848,062,641
4,466,052
219,624,057,059
64,876,282 1,022,472,119,700
6,041,023
80,284,806,264
70,917,305 1,102,756,925,964
19-18
Total, FC+LC
Million US$
10.8
65.3
7.4
32.5
3.0
6.3
125.2
12.5
137.7
2.1
6.3
3.5
149.6
28.9
178.5
15.0
193.4
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 19 章
表 19.3.3
Item
No.
FC portion
Construction Cost
VAT
II Land Acquisition & Resettlement Cost
III Administration of Executing Agency
IV Engineering Services Cost
I
Sub Total - 1
Price Contingency <1
% p/a
=
(Base year 2013 of L/A)
Sub Total - 2
VI Physical Contingency <2
Total
LC portion
I Construction Cost
VAT
II Land Acquisition & Resettlement Cost
V
1.3
1
Notes
<1
<2
<3
Year 2
2013
Year 3
2014
Year 4
2015
Year 5
2016
Year 6
2017
0
0
2,366,951
9,707,342
25,191,946
20,214,992
44,000
0
2,885,000
0
0
419,000
35,200
0
199,500
8,800
0
668,100
0
0
599,400
0
0
599,400
0
0
399,600
60,410,230
4,466,052
419,000
5,992
234,700
6,756
3,043,851
132,286
10,306,742
601,142
25,791,346
1,892,655
20,614,592
1,827,222
64,876,282
6,041,023
70,917,305
424,992
41,900
466,892
241,456
23,470
264,926
3,176,137
304,385
3,480,522
10,907,883
1,030,674
11,938,557
27,684,000
2,579,135
30,263,135
22,441,814
2,061,459
24,503,273
609,348,784,758
112,667,985,255
18,807,300,000
IV Engineering Services Cost<3
Sub Total - 1
Price Contingency <1
% p/a
(Base year 2013 of L/A)
=
Sub Total - 2
VI Physical Contingency <2
Total
Total FC+LC equivalent US$ mil.
Year 1
2012
57,481,230
III Administration of Executing Agency
V
年支出計画(Masang-2)
Cost Total (mil.)
FC (US$)
LC (Rp)
Disbursement items
施工計画と事業費積算
56,333,992,628
0
0
4,509,497,110
15,927,468,068
5,690,000,000
600,000,000
205,000,000
1,141,000,000
1,404,000,000
802,848,062,641
219,624,057,059
5.0
1
1,022,472,119,700
80,284,806,264
1,102,756,925,964
193.4
0
0 68,887,387,682 231,183,287,434 224,365,425,361 84,912,684,281
0
0
9,018,994,220 31,854,936,135 45,109,293,584 26,684,761,316
0 15,045,840,000
3,761,460,000
0
0
0
600,000,000 15,250,840,000
33,000,000 1,719,532,210
22,554,646,792 13,342,380,658
1,404,000,000
936,000,000
87,318,339,011 280,369,691,637 293,433,365,738 125,875,826,255
15,139,908,505 66,463,562,944 89,177,251,653 47,090,801,746
633,000,000 16,970,372,210 102,458,247,517 346,833,254,581 382,610,617,391 172,966,628,001
60,000,000 1,525,084,000
8,731,833,901 28,036,969,164 29,343,336,574 12,587,582,625
693,000,000 18,495,456,210 111,190,081,418 374,870,223,744 411,953,953,965 185,554,210,626
0.5
2.3
15.8
53.6
76.0
45.1
1.3% for FC and 5.0% for LC per annum
10% of subtotal - 2
Feasibility Study not included.
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
19-19
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
第20章
事業性評価
事業性評価
20.1 はじめに
本章では 2 種類の分析、すなわち経済分析と財務分析、を行って本事業への投資から得られる便
益を評価する。経済分析では当該事業の国家経済に与える効果を定量化する。これに対し財務分
析では事業実施主体が得るであろう利益を試算する。事業がフィージブルとなるためには、経済
的に効率的であると同時に財務的に持続可能でならねばならない。
経済分析と財務分析は共に「割引き法(DCF 法)」を用い金銭価値で解析が行われるが、費用と
便益の定義が異なる等、両分析は同一ではない。経済分析は本事業が国民の経済福祉に与える影
響全体を量ろうとするものである。一方、財務分析は本事業に必要な総支出とその結果得られる
利益を議論するものである。
20.2 経済分析
20.2.1 経済分析の方法
2 種類の電力を比較することで経済分析は行われる。すなわち、当該水力プロジェクトにより供
給される電力と当該水力プロジェクト以外の発電所(代替発電所)から供給される可能性のある
電力の比較である。前者の発電原価が経済的により廉価であれば水力利用の合理性が確認できる。
インドネシアにおける一般的な代替発電所のタイプは、ベースロード発電を担う i)石炭火力発電
所、発電パターンに自由度の高い ii) 天然ガス利用ガスタービン、および iii) ディーゼル(HSD)利
用ガスタービンである。
最適化検討の結果、当該水力は日調整機能を有する設備容量 52 MW の流れ込み式水力発電所とし
て開発するのが最も開発効率が高いことが判っている。この開発計画は、1 日当たり 24 時間の電
力供給が可能な 22.5 MW ベースロード発電および 1 日当たり 4 時間の電力供給が可能な 29.5 MW
ピーク発電に相当する。1 日当たりの発電パターンを図化すれば図 20.2.1 に示すおりである。こ
の発電パターンは、2 種類の代替発電所を組み合わせた場合と同等の価値がある。すなわち、28.1
MW1ベースロード発電所と 33.2 MW ピーク発電所の組み合わせである。表 20.2.1 で比較されると
おり、石炭火力発電所は最も廉価なベースロード電源であり、ベースロードを担う代替発電所と
見なすことができる。同様に、表 20.2.2 から明らかなように天然ガス利用ガスタービン発電所が
ピークロードを担う代替発電所として最も相応しい。ただし、ここで言う代替発電所は概念上の
電源であり、必ずしも 28.1 MW あるいは 33.2 MW の設備容量を有する具体的な発電所が特定され
1
効率の違いにより、代替発電所と水力発電所の発電能力は同一でない。詳細は「経済便益」で後述する。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-1
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
ている必要はない。
t
P = 52 MW, t = 4 hours
E P ÷ 365
E = EP + EB
PP
P
PB
E B ÷ 365
12
0
図 20.2.1
24
Hours
E = E P + E B = 240 GWh/year
24P − E ÷ 365 = 29.5 MW
PP =
24 − t
E P = 365 PP t = 43 GWh/year
E ÷ 365 − tP = 22.5 MW
24 − t
E B = 24 × 365PB = 197 GWh/year
PB = P − PP =
マサン-2 水力発電プロジェクトの標準的な日発電パターン
表 20.2.1
ベースロード発電所の発電原価
項目
単位
1.
単位建設費
US$/kW
2.
建設期間
Yrs
3.
建設期間中の建設費比率
4.
プロジェクト寿命
5.
年間固定維持管理費用率
6.
容量費用(Capacity Cost)
7.
燃料費用
8.
熱効率
9.
燃料使用量
MMBTU/kWh
10.
単位燃料費
US$/kWh
11.
ロス
天然ガス
石炭
600
1,300
2
2
40%, 60%
40%, 60%
Yrs
20
20
2.5%
2.0%
US$/Year
79.01
165.38
US$/MMBtu
6.000
3.459
0.260
0.300
0.013
0.011
0.079
0.039
0.020
0.090
所内利用ロス
0.010
0.070
送電線ロス
0.010
0.020
計画外停止
0.070
0.080
計画停止
12.
設備利用率*
13.
発電原価
0.100
0.120
98.00%
91.00%
8.795
6.009
US¢/kWh
z 理論上の最大値を仮定
z 10%割引率
出所: RUPTL 2010-19(PLN)に基づく調査団の検討値
表 20.2.2
ピークロード発電所の発電原価
項目
単位
1.
単位建設費
US$/kW
2.
建設期間
Yrs
3.
建設期間中の建設費比率
4.
プロジェクト寿命
5.
年間固定維持管理費用率
6.
7.
容量費用(Capacity Cost)
Fuel Price
8.
熱効率
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
Yrs
US$/Year
US$/MMBtu
20-2
天然ガス
石炭
600
550
2
2
40%, 60%
40%, 60%
20
20
2.5%
2.5%
79.01
14.448
72.43
14.448
0.260
0.310
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
項目
単位
9.
燃料使用量
MMBTU/kWh
10.
単位燃料費
US$/kWh
11.
ロス
天然ガス
石炭
0.013
0.011
所内利用ロス
0.079
0.159
0.020
0.020
0.010
0.010
送電線ロス
0.010
0.010
計画外停止
0.070
0.070
計画停止
12.
設備利用率*
13.
発電原価
0.100
0.100
25.00%
25.00%
11.482
19.210
US¢/kWh
事業性評価
z 1 日当たり 6 時間ピークを仮定
z 10%割引率
出所: RUPTL 2010-19(PLN)に基づく調査団の検討値
20.2.2 経済分析における仮定
本経済分析では以下を仮定する。
(1) 評価期間は、建設期間 4 年、商業運転期間 50 年、合計 54 年とする。
(2) 土木構造物の寿命は商業運転期間と同じ 50 年とする。土木構造物以外の施設(機電、送
電線等)の寿命は 30 年とする。運開後 30 年を経過した時点で、土木構造物以外の施設は
全て更新するものとする。残存価値は考慮しない。
(3) 全ての費用と便益は 2011 年の米国ドル(US$)表示とする。将来の物価上昇は考慮しな
い。為替レートは図 20.2.2 から 2011 年の推定値 Rp. 9,000/US$を用いる。
(4) 本分析では割引率として年率 10%を仮定する。この仮定は、最小の内部回収率であっても
事業投資が可能となるように、マージナルな代替プロジェクトの経済内部回収率あるいは
投資機会費用を念頭に置いて決定された。
12,000
11,500
11,000
Rp/US$
10,500
10,000
9,500
9,000
8,500
8,000
01
02
03
05
06
07
09
10
Year
出所: PACIFIC Exchange Rate Service
図 20.2.2
為替レートの推移
20.2.3 経済費用
20.2.3.1 事業開発費用
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-3
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
経済費用は財務費用から計算されるが同一ではない。経済分析は国家経済の視点から費用の
価値を量ろうとするものである。このため、財務費用に対して、調整あるいは削除を行って、
政府介入の影響あるいは市場構造の特殊性を排除する必要がある。本経済分析では、標準変
換係数 0.9 を用いて国際価格相当に調整、下表のように財務—経済変換を行うものとする。
表 20.2.3
財務
財務—経済変換
FC
LC
合計
経済
0.44
0.07
0.51
フィージビリティー
検討
土木工事
20.84
61.50
82.34
発電機器
29.25
3.25
32.50
フィージビリティー
検討
FC
LC
合計
0.00
0.00
0.00
土木工事
20.84
55.35
76.19
発電機器
29.25
2.93
32.18
その他の建設工事
7.39
2.95
10.34
その他の建設工事
7.39
2.66
10.05
付加価値税(VAT)
0.00
12.52
12.52
付加価値税(VAT)
0.00
0.00
0.00
土地収用
0.04
2.09
2.13
土地収用
0.04
1.88
1.92
管理
0.00
6.26
6.26
管理
0.00
0.00
0.00
エンジニアリング
2.47
0.57
3.03
エンジニアリング
2.47
0.51
2.98
予備費
6.00
8.91
14.91
予備費
6.00
6.33
12.33
物価上昇
物価上昇
4.46
24.40
28.86
70.89
122.52
193.41
FC
LC
平均
フィージビリティー
検討
0.00
0.00
0.00
土木工事
1.00
0.90
0.93
発電機器
1.00
0.90
0.99
合計
変換係数
その他の建設工事
1.00
0.90
0.97
付加価値税(VAT)
0.00
0.00
0.00
土地収用
1.00
0.90
0.90
管理
0.00
0.00
0.00
合計
0.00
0.00
0.00
65.99
69.66
135.65
除外する
エンジニアリング
1.00
0.90
0.98
単位: 百万ドル
予備費
1.00
0.71
0.83
VAT 管理費用は予備費に含まれない
物価上昇
0.00
0.00
0.00
FC:外国通貨、 LC:現地通貨
合計
0.93
0.57
0.70
出所:調査団
ここに、フィージビリティー検討費用など事業実施が開始される前に発生した事業準備費用
(sunk costs)は経済事業開発費用(資本支出=CAPEX)に含まれないものとする。管理費用
は、本事業が実施されなくとも発生する費用であり、経済分析ではカウントしない。物価上
昇に対する予備費も、本経済分析の議論対象外であり、ゼロと見なす。
経済事業開発費用は 4 年間の建設期間に、20%、35%、35%、および 10%の比率で支出される
ものと仮定する。
20.2.3.2 運転維持管理費用
本経済分析では、運転維持管理費用(OPEX)も経済価値で表される。運転維持管理費用は 3
種類の費用から構成される。すなわち、実際の発生電力量に無関係な i)固定運転維持管理費、
実際の発生電力量により増減する ii)変動運転維持管理費、加えて施設の更新やリハビリなど
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事業性評価
定期的に発生する iii)大規模修繕費用、である。
(1) 固定運転維持管理費
固定運転維持管理費(固定費)は日常の発電行為に必要となる運転・維持・管理費用である。
過去の事例から、固定費は年間当たり土木建設費の 0.5%、土木以外では施設費用の 1.5%と仮
定する。
(2) 変動運転維持管理費
変動運転維持管理費(変動費)として、地方政府により徴収される kWh 当たり 5 ルピアの水
使用量を考慮する。
(3) 大規模修繕費用
大規模修繕費用は、実質上、非土木設備の更新費用であり、水車および電気関連機器が対象
となる。これらの設備は 30 年毎に更新されるものとし、それぞれ更新に掛かる期間は 1 年間
とする。
20.2.4 経済便益
20.2.4.1 経済便益の概念
当該水力発電所が開発されなかった場合でも、伸び続ける需要を満たすためには代替発電所
からの電力供給が必要となる。経済便益は、代替発電所の建設と発電に必要な機会費用の回
避と捕らえることができる。代替発電所の建設に掛かる費用は設備便益(the capacity benefit)、
代替発電所の発電に掛かる費用はエネルギー便益(the energy benefit)と定義される。
20.2.4.2 設備便益
設備便益は、代替発電所を開発し、かつ需要を満たすべく発電できる状態に同代替発電所を
維持するために必要な費用の回避である。
水力発電所は代替発電所とは異なる性能を持つ。水力はエネルギー消費が少ないので、代替
発電所と比べて所内電力消費量が少ない。しかしながら、水力発電所は電力需要地から遠い
のが一般的である。このため、水力の送電ロスは代替発電所と比べて大きい。総合すると、
同一の設備容量を持つ水力発電所と火力発電所から得られる利用可能な電力量は同一とはな
らない。この違いを調整するため、設備容量(kW)調整係数の導入が必要となる。
kW 調整係数
= sH × aH × mH × t H
sA × aA × mA × t A
= 0.997 × 0.995 × 0.980 × 0.950 =1.252 (石炭火力)
0.930 × 0.920 × 0.880 × 0.980
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事業性評価
= 0.997 × 0.995 × 0.980 × 0.950 =1.126 (天然ガス利用ガスタービ
0.990 × 0.930 × 0.900 × 0.990
ン)
ここに
sx: 所内電力利用係数 = 1– 所内電力利用ロス
稼動係数
= 1– 計画外停止ロス
a x:
= 1–計画停止ロス
mx: 維持管理係数
送電係数
= 1– 送電線ロス
t x:
x:
H は水力、 A は火力を表す
したがい、22.5 MW のベース発電容量を有する水力発電所は、28.1 MW(22.5 MW x 1.252)
の設備容量を持つ石炭火力発電所と同等と計算される。また、水力の 29.5 MW ピーク発電は
設備容量 33.2 MW(29.5 MW x 1.126)の天然ガス利用ガスタービン発電所と同等と見なすこ
とができる。
20.2.4.3 エネルギー便益
エネルギー便益は、代替発電所が電力エネルギーを供給する機会費用である。
既に議論されたように、性質が異なるため、水力と火力では利用可能な電力エネルギーが異
なる。調整には、以下に示すとおり、電力エネルギー(kWh)調整係数が必要となる。
kWh 調整係数
= sH × tH
sA × tA
= 0.997 × 0.950 = 1.039 (石炭火力)
0.930 × 0.980
= 0.997 × 0.950 = 0.966 (天然ガス利用ガスタービン)
0.990 × 0.990
当該水力発電所が担う年間 197 GWh のベースロード発電は、代替発電所である石炭火力発電
所の発生電力量 205 GWh(197 GWh x 1.039)と同等となる。また、当該水力発電所のピーク
発電年間 43 GWh は、天然ガス利用ガスタービン発電所が年間 42 GWh(43 GWh x 0.966)発
電する場合に等しい。
20.2.4.4 資源枯渇費用
代替火力発電所は化石燃料の採掘・採取を伴う。化石燃料は、埋蔵量という形で初めは大量
に存在するものの、採掘が進めばいずれ枯渇するのは避けられない。本経済分析では、資源
枯渇費用を看過せず、資源枯渇を伴わない本水力プロジェクトの経済便益のひとつとして考
慮することとする。資源枯渇費用は下式で定義できる。
Dt =
ここに
( PT − Ct )(1 + r ) t
(1 + r )T
時刻 t における資源枯渇費用
Dt =
PT = 時刻 T における代替燃料費用
Ct = 資源採掘費用(全年に亘り一定と仮定する)
r = 割引率
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事業性評価
資源が完全に枯渇する時刻
T=
表 20.2.1 及び表 20.2.2 に示される天然ガス価格および HSD 価格を見ると、共に国際価格に達
していると判断できる。これは、天然ガスおよび原油においてインドネシアが既に輸入が輸
出を上回る純輸入国になっている事実と符合する。したがい、これら 2 種の燃料に関しては
資源枯渇費用を考慮しない。しかし、表 20.2.1 に示される石炭価格は国際価格に達してはお
らず、資源枯渇費用を考慮する必要がある。
JCOAL によれば、インドネシア石炭の採可埋蔵量は 2008 年時点で 187 億トンである。一方、
同年の採炭量は年間 3.66 億トンに達している。これらの数値から、インドネシアの石炭は 51
年で枯渇する可能性があるとの単純計算が成り立つ。自国の石炭が枯渇した場合、かつて日
本が経験したように、輸入炭が代替燃料となる可能性が高い。インドネシアにおける現在の
石炭調達費用をトン当たり 70 ドル、日本における石炭輸入費用(CIF)をトン当たり 83.3 ド
ル2と仮定すれば、インドネシア石炭の資源枯渇費用は現時点でトン当たり 0.103 ドル、石炭
が枯渇する時点で 13.300 ドルと試算される。同試算に用いた数値を表 20.2.4 に示す。
表 20.2.4
資源枯渇費用計算に用いた諸数値
採炭埋蔵量
18,700.00
採炭量
365.61
枯渇までの年数
million ton
million ton
51.15
years
現在の採炭費用
70.00
US$/ton
熱量
5,100
kcal/kg
代替燃料
輸入炭
現在の代替燃料価格
83.30
US$/ton
枯渇時点での代替燃料価格
83.30
US$/ton
割引率
0.10
p.a.
出所: 調査団
資源枯渇費用を含む石炭費用は図 20.2.3 に示すように推定される。なお、将来の実質石炭価
格は図 20.2.4 に示されるように上昇幅が極めて小さい。したがい、本経済分析では、将来の
国際石炭価格は現在の価格と実質上同一と仮定することとする。
資源枯渇費用は本経済分析のベースケースでは考慮外とする。これは、計算された資源枯渇
費用が小額であることと、過去に行われた水力発電事業のフィージビリティー検討に資源枯
渇費用は含まれておらず、経済指標等を比較する際の混乱を回避するための配慮である。代
わりに、後述する感度分析の中で資源枯渇費用を考慮したケースを取り上げ、資源枯渇の可
能性が本プロジェクトに与える影響を定量化することとする。
2
日本財務省の貿易データベース(http://toukei-is.com/get_pdf/?p=30101&f=00)によると、最新の燃料炭 CIF 価格はトン当
たり 9,520 円、$114/ton 相当である。日本における標準的な燃料炭の単位熱量約 7,000 kcal/kg とインドネシアの
単位熱量 5,100 kcal/kg から、石炭価格はトン当たり 83.3 ドル相当と推定される。
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85
PT
Coal Price (US$/ton)
80
75
Ct
70
65
Source: Study Team
2065
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2025
2020
2015
2010
60
Years
図 20.2.3
資源枯渇費用を考慮した石炭価格
180
Nominal CIF
Thermal Coal CIF (US$ per metric ton)
160
Past Records
Projection
Real CIF
140
120
100
80
Source:
Study Team based on
METI, Japan, for past records,
Energy Outlook 2010, IEA, for future projection
60
40
20
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
0
Years
図 20.2.4
IEA Energy Outlook 2010 に基づく将来石炭価格の見通し
20.2.4.5 地球温暖化ガス排出量削減に伴う便益
本水力プロジェクトでは CDM (clean development mechanism) の適用が考えられるので、二酸
化炭素排出量削減(CER = Certified Emission Reduction)便益を以下のとおり考慮する。
CO2 排出係数
= 0.743 tCO2/MWh3
予想 CER 価格
= 12.5US$/tCO2
可能 CER 便益
= 有効発生電力量 x CO2 排出係数 x CER 価格
= 221.6 GWh/year x 0.743tCO2/MWh x 12.5 US$/tCO2
= 2.06 US$M/year
CER 便益は、感度分析におけるベースケース+CDM で別途議論する。
20.2.5 経済分析
本経済分析では、プロジェクトがもたらす経済的な価値を 3 種類の主要指標で定量評価する。す
なわち、純現在価値(ENPV)、 経済内部回収率(EIRR)、および便益-費用比率(B/C)である。これら
3
DNA Indonesia に基づく。 http://dna-cdm.menlh.go.id/Downloads/Others/KomnasMPB_Grid_Sumatera_JAMALI_2008.pdf
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3 種の指標はすべて経済費用と経済便益を変数として算出される。
DCF 法に基づく経済分析は表 20.2.6 に示される経済フローに集約できる。主要指標は以下のとお
りである。
ENPV = US$19.2 mill.
B/C = 1.15
EIRR = 12.0%
20.2.6 経済感度分析
変化し得る条件設定が経済指標に与えるに影響の度合いを量るため、以下の 5 ケースに対して感
度分析を行った。具体的には、+資源枯渇費用、+CDM、– 10%年間発生電力量、+10% CAPEX &
OPEX、および–10% 燃料費、である。
感度分析結果によると、いずれのケースでも経済性は十分に高く、本プロジェクトの経済的実施
可能性が確認できた。感度分析結果を表 20.2.5 にまとめる。
表 20.2.5
経済指標
解析ケース
B/C
ENPV
EIRR
備考
ベースケース
1.15
19.2
12.0%
ベースケース
+資源枯渇費用
1.15
19.7
12.0%
資源枯渇費用をベースケースに便益として追
加
+ CDM
1.27
34.5
13.4%
CER 便益をベースケースに追加
– 10%年間発生電力量
1.00
0.5
10.1%
発生電力量 10%減
+ 10% CAPEX & OPEX
1.04
6.3
10.6%
費用 10%増
– 10% 燃料費
1.08
10.7
11.1%
燃料費 10%増
出所: 調査団
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表 20.2.6
Economic Analysis (Base Case)
1. Hydro General
Discount Rate
i
Construction Time
Life Time, Civil
Life Time, Non Civil
Evaluation Time
Installed Capacity
Annual Energy
Peaking Time
Station Use Loss
a
Transmission Line Loss
b
Forced Outage
c
Scheduled Outage
d
Implementation Cost, total
Implementation Cost, civil
Implementation Cost, non civil
Implementation Cost, others
Annual O&M Cost Ratio, civil
Annual O&M Cost Ratio, non civil
Annual O&M Cost
CER Emmission Coeff.
CER Unit Price
Annual CER
DCF 法に基づく経済フロー(ベースケース)
Masang-2
years
years
years
years
MW
GWh
hours
US$M
US$M
US$M
US$M
US$M/yr
tCO2/MWh
US$/CO2-ton
US$M/yr
t
10%
4
50
30
54
52
240
4
0.003
0.050
0.005
0.020
135.647
83.813
35.393
16.442
0.50%
1.50%
0.950
0.743
0.000
0.000
2. Alternative Thermal, Gas Turbine for Peak
P P MW
Installed Capacity
Unit Construction Cost
US$/kW
Construction Time
years
Life Time
years
Annual Fixed O&M Cost Ratio
Replacement Cost Ratio
kW Value Adjustment Factor
Capacity Value
US$/kW
Capacity Benefit
US$M
Fixed O&M Benefit
US$/yr
E P GWh
Annual Energy
Station Use Loss
a
Transmission Line Loss
b
Forced Outage
c
Scheduled Outage
d
Unit Price of Natural Gas
US$/MMBTU
Caloric Value
kcal/MMBTU
Thermal Efficiency
Heat Rate
kcal/MMBTU
Fuel Consumption
MMBTU/kWh
Fuel Cost
US$/kWh
Variable O&M Cost
US$/kWh
kWh Value Adjustment Factor
Energy Value
US$/kWh
Energy Benefit
US$M
29.523
600
2
20
2.50%
90%
1.126
74.490
19.943
0.499
43.104
0.010
0.010
0.070
0.100
6
252,000
26%
3,308
0.0131
0.0788
0.0040
0.9664
0.0800
3.4471
3. Alternative Thermal, Coal-Fired for Off Peak
P B MW
Installed Capacity
Unit Construction Cost
US$/kW
Construction Time
years
Life Time
years
Annual Fixed O&M Cost Ratio
Replacement Cost Ratio
kW Value Adjustment Factor
Capacity Value
US$/kW
Capacity Benefit
US$M
Fixed O&M Benefit
US$/yr
E B GWh
Annual Energy
Station Use Loss
a
Transmission Line Loss
b
Forced Outage
c
Scheduled Outage
d
Unit Price of Coal
US$/ton
Caloric Value
kcal/kg
Thermal Efficiency
Heat Rate
kcal/kWh
Fuel Consumption
kg/kWh
Fuel Cost
US$/kWh
Variable O&M Cost
US$/kWh
kWh Value Adjustment Factor
Energy Value
US$/kWh
Energy Benefit
US$M
22.48
1,300
2
20
2.0%
90%
1.252
173.339
36.573
0.731
196.896
0.070
0.020
0.080
0.120
70
5,100
30%
2,867
0.5621
0.0393
0.0008
1.0392
0.0417
8.2147
4. Economic Indicators
B/C = 1.15
ENPV = US$19.2 mill.
EIRR = 12.0%
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E P ÷ 365
E = EP + EB
PP
P
PB
E B ÷ 365
0
24 P − E ÷ 365
PP =
24 − t
E P = 365 PP t
12
24
Hours
E ÷ 365 − tP
PB = P − PP =
24 − t
E B = 24 × 365 PB
Cash Flow
Capacity
Energy
Year
CER
Peak Base Peak Base
0
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
1
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2
9.97 18.29
0.00
0.00
0.00
3
9.97 18.29
0.00
0.00
0.00
4
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
5
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
6
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
7
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
8
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
9
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
10
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
11
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
12
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
13
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
14
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
15
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
16
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
17
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
18
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
19
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
20
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
21
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
22
9.47 17.19
3.45
8.21
0.00
23
9.47 17.19
3.45
8.21
0.00
24
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
25
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
26
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
27
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
28
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
29
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
30
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
31
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
32
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
33
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
34
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
35
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
36
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
37
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
38
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
39
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
40
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
41
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
42
9.47 17.19
3.45
8.21
0.00
43
9.47 17.19
3.45
8.21
0.00
44
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
45
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
46
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
47
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
48
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
49
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
50
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
51
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
52
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
53
0.50
0.73
3.45
8.21
0.00
54
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
55
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
56
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
57
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
Σ 80.77 138.98 172.36 410.74 0.00
NPV 21.86 38.73 25.68 61.19
0.00
Ann
2.20
3.90
2.58
6.16
0.00
Total
Hydro Cost
Benefit Capital O&M Total
0.00 27.13
0.00 47.48
28.26 47.48
28.26 13.56
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
38.32
0.00
38.32
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89 35.39
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
38.32
0.00
38.32
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
12.89
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
802.84 171.04
147.47 121.24
14.83 12.20
0.00 27.13
0.00 47.48
0.00 47.48
0.00 13.56
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95 36.34
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
47.50 218.54
7.08 128.32
0.71 12.91
Net
-27.13
-47.48
-19.22
14.69
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
37.37
37.37
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
-23.45
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
37.37
37.37
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
11.94
0.00
0.00
0.00
0.00
584.30
19.15
1.93
Capacity in MW, Energy in GWh, Cost & Benefit in US$ mill.
20-10
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
20.3 財務分析
20.3.1 分析手法
財務分析は投資の妥当性を量ることを最終的な
ボックス 1
財務内部回収率
目標としている。将来の推定キャッシュフローを 財務的回収率はどの費用や支出に焦点を当てるかにより
変化する。本財務分析では、2 種類の財務内部回収率を取
現在価値で与える DCF 法を用いて解析を行う。 り扱う。FIRR (financial internal rate of return)と ROI (return
DCF 解析で算出された値が現在の投資費用より on investment)である。FIRR はプロジェクト全体のリター
ンを評価するのに対して、ROI は資本家のリターンを量る
も大きければ、投資に正当性があることになる。
ことを目的としている。
DCF 法から 2 つの重要な財務指標を得ることがで FIRR = 事業全体の財務内部回収率で資金調達費用は考
慮しない
きる。財務純現在価値(NPVP)および財務内部回収
率(FIRR)である。NPVP が事業採算の財務的現在
価値を与えるのに対して、FIRR は支出総額と収
= NPVP = 0 を与える割引率
NPVP = 事業から得られる純現在価値で、資金調達費用は
考慮しない
入総額の現在価値がバランスする回収率を表す。 ROI
= 投資に対する内部回収率
= NPVI = 0 を与える割引率
NPVI = 投資に対するリターンの純現在価値
20.3.2 財務分析における仮定
20.3.2.1 評価期間
評価期間は、準備期間 1 年、建設期間 4 年、商業運転期間 50 年、合計 55 年とする。建設は
2014 年に開始され、2017 年に完工するものとする。
20.3.2.2 通貨及び為替レート
本解析では通貨として米国ドル(USD)を用いる。
為替レートは Rp. 9,000/USD と仮定する。
20.3.2.3 物価上昇
本財務分析では、外貨費用の将来物価上昇率を OECD メンバー国におけるコア物価指数から
推定した。ここに、コア物価指数とは食品など価格変動の大きい品目を除いた物価指数であ
る。OECD メンバー国における最新のコア物価指数は年率平均で 1.3%の物価上を示している
ので、本プロジェクトの外貨部分の物価上昇率も年率 1.3%と仮定した。
表 20.3.1
OECD メンバー国における物価指数平均値
年
2005
2006
2007
2008
2009
2010
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
指数
100.00
101.92
104.04
106.31
108.15
109.54
20-11
年率
1.019
1.019
1.021
1.022
1.017
1.013
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
出所:1996 年から 2010 年は OECD Statistics
(http://stats.oecd.org/Index.aspx)。2011 年は調査団の
推定値。
内貨部分においてもコア物価指数から将来の物価上昇率を設定することとした。インドネシ
ア銀行によると、2010 年末のコア物価上昇率は、政府目標の年率 6.0%を僅かに下回る、年率
5.5%であった。本財務分析は全ての解析を米国ドル表示で行うので、為替変動の影響を考慮
する必要がある。至近 10 年間の対ドル為替レートを見ると、ルピアはおよそ年率 0.5%でそ
の価値を上昇させていることが判る。したがい、本財務分析ではルピア価値の対米ドル上昇
を考慮して、内貨部分は年率 5.0%で価格が上昇するものと仮定する。
18%
Core CPI
14%
7.0%
2.8%
4.3%
10.2%
7.4%
6.3%
6.0%
6.6%
6.7%
6.0%
6.6%
0.4%
2%
5.2%
4%
Not available
6%
6.5%
8%
6.9%
9.9%
10%
12.5%
Core CPI Average = 5.5% p.a.
12%
Not available
Price Escalation Rate (yera on year)
Source: Bank Indonesia
http://www.bi.go.id/web/en/Publikasi/Investor
17.1%
General CPI
16%
0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
Year
出所: Bank of Indonesia http://www.bi.go.id/web/en/Publikasi/Investor+Relation+Unit/
図 20.3.1
(1)
インドネシアにおける物価上昇率の推移
事業開発費用の物価上昇
本プロジェクトの事業開発費用(資本支出=CAPEX)は外貨と内貨の比率が 45:55 と試算さ
れている。したがい、CAPEX の物価上昇率は年率 3.32% (= 1.3% x 0.45 + 5.0% x 0.55)と推定
される。
(2)
運営維持管理費用の物価上昇
運営維持管理費用(OPEX)の大半は内貨で支出されるものと予想できるので、OPEX の物価
上昇率は内貨の物価上昇率と同一の年率 5.0%とする。
(3)
大規模修繕費用の物価上昇
大規模修繕、すなわち土木構造物以外の更新、は多くの外貨費用を含んでいる。費用の構成
は外貨と内貨の比率が 77.7:22.3 と試算されている。したがい、大規模修繕費用の物価上昇率
は年率 2.12% (= 1.3% x 0.777 + 5.0% x 0.223)と推定可能である。
20.3.2.4 割引率
本財務分析では年率 10%の割引率を使用する。
20.3.2.5 減価償却費
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-12
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
全ての施設および設備は減価償却するものとし、会計上の費用として取り扱う。償却方法は
SL 法とする。評価最終年では、会計上の残存価値を考慮するものとする。
20.3.2.6 租税
以下の租税を事業開発および運営期間中に考慮するものとする。なお、無税期間(tax holidays)
は仮定しない。
• 付加価値税(VAT)は事業実施主体(PLN)により全額支払われるものとする。
• 商業運転期間中、25%の企業所得税相当分が事業実施主体により支払われるものとす
る。
なお、地方政府が徴収する水使用料は運転維持管理費用の一部として別途考慮し、租税とし
ては取り扱わない。
20.3.2.7 最小回収率(Hurdle Rate of Return)
最小のリターンを表す FIRR の最小回収率は、事業実施主体の加重平均資本コスト(WACC)
とする。WACC は、ビジネス行為に対する資本注入に伴う費用で、借入れと出資、加えて節
税効果等も含んでいる。事業実施主体が PLN であると仮定すれば、WACC は表 20.3.2 で示さ
れるように 2.0%と計算される。
表 20.3.2
WACC の計算
項目
MDB0)
PLN
合計
a.
資金比率
75.00%
25.00%
100.00%
b.
名目資金調達費用
c.
税率
d.
3.40%
1)
12.55%
25.00%
25.00%
調整資金調達費用
2.55%
9.41%
e.
インフレーション率
1.30%
5.00%
f.
実質費用
WACC
1.23%
4.20%
0.93%
1.05%
g.
2)
1.98%
0)
国際開発援助銀行(アジ銀、世銀など)
1)
2009 年 5 月の 5 年スワップ= 2.7% +ADB スプレッド = 0.2% + 転貸金利 =
0.5%
2)
2010 年 PLN XI 社債 B、10 年もの、利回り年率 12.55%
d = b x (1 – c)
f = (1 + d) / (1 + e) – 1
出所: 調査団
なお、PLN が MDB からの融資を得られない場合、借入れ金利はインドネシア銀行の金利
6.75%が適用され、WACC は 3.8%となる。
20.3.3 財務費用
20.3.3.1 事業開発費用
表 20.2.3 で示したとおり本プロジェクトの事業開発費用(資本支出=CAPEX)は、フィージ
ビリティー検討費用を除いて、およそ 1.93 億ドルである。本財務 CAPEX は 7 年間に亘って
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-13
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
支出が予想さており、その年度別比率は、2011 年から順に 0%、0%、1.2%、8.2%、28%、39%、
23%、である。財務 CAPEX の内訳を表 20.3.3 に示す。
表 20.3.3
財務 CAPEX
(a) 資金調達費用を除く CAPEX 内訳
US$M
費用項目
FC
LC
土木工事
22.93
76.71
99.64
23.0%
77.0%
発電機器
32.18
7.15
39.33
81.8%
18.2%
機械および送電線
8.13
4.39
12.52
64.9%
35.1%
その他
2.76
9.81
12.57
22.0%
78.0%
運開前の物価上昇
合計
合計
FC
LC
4.46
24.40
28.86
15.5%
84.5%
70.45
122.45
192.90
36.5%
63.5%
(b)年度別予想支出
年
FC
LC
2012
0.00
0.00
0.00
2013
0.26
2.06
2.32
2014
3.48
12.35
15.83
2015
11.94
41.65
53.59
2016
30.26
45.77
76.04
2017
24.50
20.62
45.12
合計
70.45
122.45
192.90
0.0%
0.0%
1.2%
8.2%
27.8%
39.4%
23.4%
100.0%
合計
パーセン
ト
US$M
2011
0.00
0.00
0.00
FC = 外貨、 LC = 内貨
出所: 調査団
20.3.3.2 運転維持管理費用
値は異なるものの、運転維持管理費用(OPEX)は経済分析同様 3 費目から構成される。すな
わち、実際の発生電力量に無関係な i)固定運転維持管理費、実際の発生電力量により増減す
る ii)変動運転維持管理費、加えて施設の更新やリハビリなど定期的に発生する iii)大規模修繕
費用、である。
• 固定運転維持管理費
財務 CAPEX の 0.6%に相当、年間 110 万ドル
• 変動運転維持管理費
kWh 当たり 5 ルピアの水使用料および kWh 当たり 1.5 ル
ピアの潤滑油代。標準年では年間 10 万ドル相当。
• 大規模修繕費用
発電機器、機械設備および送電線の更新費用として、年
間換算現在価値 270 万ドル/年。この年間換算値は 5,840
万ドルの現在価格に年率 2.12%の物価上昇 30 年間分を
考慮して算出したもの。
2011 年価格で、OPEX 合計は年間 390 万ドル相当と試算される。
20.3.4 財務便益
20.3.4.1 売電価格
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-14
2011 年 8 月
ファイナル
ルレポート(メイン)
第 20 章 事業性評価
事
売電
電価格の設定
定は非常に重
重要である。
。現在の
PLN
N 電気料金は政府補助金
金注入の結果
果設定さ
れた
たもので、同料金をその
同
まま当該プロジェク
トの
の売電価格と
とすることは
は事業性を正
正当に量
る上
上で妥当性を
を欠くと言え
える。
本財
財務分析では
は、概念上の価格であるシ
シャドー
価格
格の導入を試
試みる。すな
なわち、最新
新の PLN
の発
発電原価推定
定値 US¢9.9445/kWh をシャドー価
格に
に設定する。この値は、PLN
P
の売電収
収入に中
央政
政府からの補
補助金を加え
えた値を売電
電量で除
した
たもので、詳細データは
詳
表 20.3.4 に示
示される
とお
おりである。このシャド
ドー価格は、表 20.3.5
で比
比較されるよ
ように PLN のジャワ-バ
バリ系統
出所: Oil Drum
m
にお
おける中電圧
圧発電原価よ
より若干高額
額だが、北
図 20.33.2
主要国
国の電力料金
金比較
スマ
マトラ系統に
における高電
電圧発電原価
価より十
分廉
廉価な価格で
である。加え
えて、同シャドー価格
は図
図 20.3.2 で比
比較されると
とおり、主要
要国の電気料
料金の中で標
標準的な値である。本財務
務分析で
は評
評価開始年で
である 2011 年の売電価格
年
格として US
S¢9.945/kWh を採用することとする。
。
表 20.3.4
売電収入
Rp T
US
S$M
399,018
4,335
499,810
5,534
58,232
6,470
633,246
7,027
700,735
7,859
766,286
8,476
844,250
9,361
900,172
10,019
N/A
N
N/A
年
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010*
2011*
N/A
N
N/A
PLN の売電収入と補助
助金
政府
府補助金
Rp T
US$M
M
4,7339
527
7
4,0997
455
3,4770
386
6
12,5111
1,390
0
32,9009
3,657
7
36,6005
4,067
7
78,5777
8,731
53,7220
5,969
9
55,1000
6,122
2
41,0000
合計
US$M
4,862
5,990
6,856
8,417
11,516
12,543
18,092
15,988
N/A
4,556
6
N/A
108,360
113,020
120,244
127,370
133,108
142,441
149,437
156,797
194,459
タリフ P
US¢/kWh
4.001
4.897
5.381
5.517
5.905
5.951
6.264
6.390
7.479
タリフ
タ
S
US¢/kWh
U
4.487
5.300
5.702
6.609
8.652
8.806
12.107
10.197
10.627
201,977
7.689
9.945
電力量
(GWh)
電力量 = PLN によ
より売電された
た電力量
bsidy
タリフ P = averagee electricity charrge without sub
タリフ S = electriciity charge with subsidy
*
20005 年から 20099 年まで 5 年間
間の“売電収入””および“タリフ
フ P”の傾向か
から推定した値
値
為替
替レート Rp.9,000/US$を用いてルピアをド
ドルに変換
出所
所: PLN および
びインドネシア
ア財務省データ
タに基づいて調
調査団が作成
表 20.3.5
1.
2.
3.
4.
地域
Nortth Sumatra
Soutth Sumatra
Bangka Briton
Wesst Kalimantan
JICA イン
ンドネシア国
水力開発マスタープラン調査
PLN の発電原
原価
高電圧
1,891
565
2,315
20-15
中電圧
圧
1,984 to 2,158
2
667 to 1,,164
2,4766
2,5466
R
Rp./kWh
低電
電圧
2,308 tto 2,603
860 too 1,433
2,9919
3,145
20
011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
5. Central and South Kalimantan
6. East Kalimantan
7. North Sulawesi
8. South Sulawesi
9. Maluku
10. Irian Jaya
11. NTB
12. NTT
13. Java-Bali
1,148
1,732
974
1,103
783
1,611
1,965
1,676
1,249
2,320
2,526
2,289
2,433
849 to 859
事業性評価
1,998
2,260
2,063
1,505
2,919
3,192
2,743
3,072
1,005 to 1,030
出所: MEMR 電力利用総局長通達 No.269-12/26/600.3/2008
事業実施主体が資金調達費用を負担しかつ妥当な利益を出すためには、売電価格の適切な上
昇が不可欠である。本財務分析では、物価上昇に起因する運営維持管理費用の上昇分のみを
売電価格に上乗せするものとする。
上述方針に基づき、売電価格の上昇率は年率 0.963% (2011 年の場合、年間維持管理費用÷売
電収入×維持管理費用の上昇率 = 3.9 US$M ÷ 20.8 US$M × 5.0%) と算出される。この結果、
2011 年の売電価格 US¢9.945/kWh は運開年である 2018 年には US¢10.615/kWh と計算される。
20.3.4.2 事業収入
本プロジェクトの事業収入は、売電価格と売電量の積から計算できる。商業運転初年度にあ
たる 2018 年の事業収入は以下のとおりである。
US$22.2 mill./年 = Rp. 0.10615/kWh x 209 GWh/年
ここに、209 GWh/年は年間発生電力総量から 12.93%のロス(所内電源ロス 3.00%および
送電線ロス 9.93%)を差し引いた値である。
地球温暖化ガス排出量削減便益 (CER 便益) は感度分析で取り扱う。前述の経済分析では試
算される CER 収益全額を便益としたが、財務分析では過大評価を避けるため全額を便益とは
見なしていない。これは、事業関係者間(すなわち CDM 事業者、事業ホスト、および政府)
で CER 収益の配分が行われるのが一般的なためである。本財務分析では CER 収益の 5 割が
事業実施主体に配分されるものと仮定する。したがい、CER 便益は以下のように計算される。
CO2 排出係数
= 0.743 tCO2/MWh
CER 価値
= 12.5US$/tCO2
CER 便益
= 0.5 x 有効発生電力量 x CO2 排出係数 x CER 価値
= 0.5 x 209 GWh/年 x 0.743tCO2/MWh x 12.5 US$/tCO2
= 0.97 US$M/年
20.3.5 財務分析
20.3.5.1 資金調達前キャッシュフロー
資金調達前キャッシュフローは、資金調達費用を含まない財務キャッシュフローである。
ただし、税金は考慮するものとする。資金調達前キャッシュフローは表 20.3.6 に示すよ
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-16
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
うになり、下記の主要財務指標を得た。
NPVP = –US$40.5 million
B/C = 0.77
FIRR = 6.6%
計算された FIRR は最小回収率 2.0%を上回るので、将来の事業実施主体となるであろう PLN
は本事業から利益を確保できる可能性が高い。しかしながら、NPVP は FIRR が 10%を下回る
ため負値を示しており、その利益はマージナルなものに留まると推定される。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-17
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
表 20.3.6
第 20 章
事業性評価
資金調達前財務キャッシュフロー
US$ million
Cost
CAPEX
O&M
Tax Sub-total
2011 -6
0.00
0.00
0.00
0.00
2012 -5
0.00
0.00
0.00
0.00
2013 -4
2.32
0.00
0.00
2.32
2014 -3
15.83
0.00
0.00
15.83
2015 -2
53.59
0.00
0.00
53.59
2016 -1
76.04
0.00
0.00
76.04
2017
0
45.12
0.00
0.00
45.12
2018
1
0.00
4.49
2.70
7.19
2019
2
0.00
4.64
2.72
7.36
2020
3
0.00
4.79
2.73
7.52
2021
4
0.00
4.95
2.74
7.70
2022
5
0.00
5.12
2.76
7.88
2023
6
0.00
5.29
2.77
8.06
2024
7
0.00
5.47
2.78
8.25
2025
8
0.00
5.66
2.81
8.47
2026
9
0.00
5.86
2.85
8.70
2027 10
0.00
6.06
2.88
8.94
2028 11
0.00
6.27
2.91
9.18
2029 12
0.00
6.49
2.94
9.43
2030 13
0.00
6.72
2.97
9.69
2031 14
0.00
6.95
3.00
9.95
2032 15
0.00
7.20
3.03
10.23
2033 16
0.00
7.46
3.05
10.51
2034 17
0.00
7.73
3.07
10.80
2035 18
0.00
8.01
3.09
11.10
2036 19
0.00
8.30
3.11
11.40
2037 20
0.00
8.60
3.12
11.72
2038 21
0.00
8.92
3.13
12.05
2039 22
0.00
9.25
3.14
12.39
2040 23
0.00
9.59
3.15
12.74
2041 24
0.00
9.95
3.15
13.10
2042 25
0.00
10.33
3.15
13.47
2043 26
0.00
10.72
3.14
13.86
2044 27
0.00
11.12
3.14
14.26
2045 28
0.00
11.55
3.12
14.67
2046 29
0.00
11.99
3.11
15.10
2047 30
0.00
12.45
3.09
15.54
2048 31
0.00
12.02
0.00
12.02
2049 32
0.00
13.44
2.72
16.16
2050 33
0.00
13.96
2.66
16.62
2051 34
0.00
14.51
2.59
17.10
2052 35
0.00
15.09
2.52
17.60
2053 36
0.00
15.68
2.44
18.12
2054 37
0.00
16.31
2.36
18.66
2055 38
0.00
16.96
2.26
19.23
2056 39
0.00
17.64
2.17
19.81
2057 40
0.00
18.36
2.06
20.42
2058 41
0.00
19.10
1.95
21.05
2059 42
0.00
19.88
1.83
21.71
2060 43
0.00
20.69
1.70
22.40
2061 44
0.00
21.55
1.57
23.11
2062 45
0.00
22.43
1.42
23.86
2063 46
0.00
23.36
1.27
24.63
2064 47
0.00
24.34
1.11
25.44
2065 48
0.00
25.35
0.93
26.28
2066 49
0.00
26.42
0.75
27.16
2067 50
-42.95
27.53
0.55
-14.88
Total
149.95
616.57
124.20
890.71
PV
122.89
37.26
15.74
175.89
Annu
12.34
3.74
1.58
17.67
NPVP = -40.48
FIRR = 6.63%
PV stands for a present value discounted by 10% p.a.
Annu stands for an annualized value of respective present value.
Year
Sales
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
22.18
22.39
22.60
22.81
23.03
23.24
23.46
23.68
23.90
24.12
24.35
24.58
24.81
25.04
25.27
25.51
25.75
25.99
26.23
26.48
26.73
26.98
27.23
27.49
27.74
28.00
28.26
28.53
28.80
29.07
0.00
29.61
29.89
30.17
30.45
30.74
31.03
31.32
31.61
31.90
32.20
32.51
32.81
33.12
33.43
33.74
34.06
34.37
34.70
35.02
1376.91
135.41
13.60
B/C =
Benefit
CER
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.77
Net
Benefit
GWh
Energy
Supply
Sub-total
0.00
0.00
0
0.00
0.00
0
0.00
-2.32
0
0.00
-15.83
0
0.00
-53.59
0
0.00
-76.04
0
0.00
-45.12
0
22.18
14.99
209
22.39
15.03
209
22.60
15.08
209
22.81
15.11
209
23.03
15.15
209
23.24
15.18
209
23.46
15.21
209
23.68
15.20
209
23.90
15.20
209
24.12
15.18
209
24.35
15.17
209
24.58
15.14
209
24.81
15.12
209
25.04
15.08
209
25.27
15.05
209
25.51
15.00
209
25.75
14.95
209
25.99
14.89
209
26.23
14.83
209
26.48
14.76
209
26.73
14.68
209
26.98
14.59
209
27.23
14.49
209
27.49
14.39
209
27.74
14.27
209
28.00
14.14
209
28.26
14.01
209
28.53
13.86
209
28.80
13.70
209
29.07
13.52
209
0.00
-12.02
0
29.61
13.45
209
29.89
13.27
209
30.17
13.07
209
30.45
12.85
209
30.74
12.61
209
31.03
12.36
209
31.32
12.09
209
31.61
11.80
209
31.90
11.48
209
32.20
11.15
209
32.51
10.79
209
32.81
10.41
209
33.12
10.00
209
33.43
9.57
209
33.74
9.11
209
34.06
8.61
209
34.37
8.09
209
34.70
7.53
209
35.02
49.90
209
1376.91
486.20
10,239
135.41
-40.48
–
13.60
-4.07
–
Cost = US¢8.5/kWh
Source: Study Team
発電原価は US¢8.5/kWh(総費用現在価値年間値÷年間倍電量)と計算される。発電原価の内
訳は下記のとおりである。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-18
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
表 20.3.7
年間値 (US$ mill.)
事業性評価
発電原価の内訳
CAPEX
OPEX
租税
合計
12.34
3.74
1.58
17.67
208.97
5.91
1.79
0.76
8.45
—
発電原価 (US¢/kWh)
電力量(GWh)
出所: 調査団
20.3.5.2 投資回収
前節の資金調達前キャッシュフローは融資を無視して事業全体のリターンを解析したもので
あった。現実には多くの場合、事業の実施には融資が必要となり、異なるキャッシュフロー
解析を追加する必要がある。すなわち、出資額と資金調達に掛かる費用の影響を考慮した事
業実施主体にとってのキャッシュフローで、投資回収率(Return on Investment もしくは ROI)
と呼ばれる内部回収率である。ROI 検討では、DSCR(デットサービスカバレッジレーシオ)
と LLCR(ローンライフカバレッジレーシオ)、2 種の指標を算出して融資返済に十分な事業
収益を期待できるかどうかも吟味する。ここに、DSCR はある年度における純事業収入と融
資返済予定額の比である。LLCR は融資返済期間全体に亘るキャッシュフローの健全性を返
済能力の視点から評価するものである。
表 20.3.8 に示す融資条件を仮定すれば、投資回収は DFC 法を用いて表 20.3.9 の結果を得るこ
とができる。純現在価値および投資回収率は下記のとおりである。
NPVI = US$19.1 million
表 20.3.8
銀行
二国間援助
機関
注) 1.
ROI = 15.0%
財務キャッシュフローにおける融資条件
金利(年率)
フロントエ
ンドフィー
コミットメント
フィー(年率)
1.90%
0.00%
0.75%
返済猶予
期間
7年
返済期間
25 年
融資比率
75%
フロントエンドフィーは融資契約締結時に 1 度だけ発生する。コミットメントフ
ィーは、未実行の融資予定額に対して課金される費用で融資の進捗と共に減額さ
れ、融資が完了した時点でゼロとなる。
2. 金利は JICA の中所得国に対する標準金利年率 1.4%にインドネシア財務省の転貸金
利年率 0.5%を加えた値を仮定する。
3. 返済猶予期間には建設期間 4 年が含まれる。
4. 保険は考慮しない。
出所: 調査団
長期的視点に立てば事業は財務的にフィージブルであると評価できる。投資回収に要する期
間は運開後 5 年である。しかしながら、運開後 30 年目の大規模施設更新年には売電収入が期
待できないため、本事業には同年の融資返済能力がない。ただし、全体としては事業に融資
返済能力が内在するので、例えば税引き後利益の 7%を毎年積み立てておけば、追加資金の投
入を行わずとも十分に大規模施設更新費用の捻出が可能となる。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-19
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
40
事業性評価
Tax
Interest
30
Principal
Revenue and Cost (US$ mill.)
O&M
20
Revenue
PAT
10
0
-10
-20
-30
Source: Study Team
2066
2063
2060
2057
2054
2051
2048
2045
2042
2039
2036
2033
2030
2027
2024
2021
2018
-40
Years
図 20.3.3
事業の収入と支出
上述の大規模施設更新目的の積み立てを仮定すれば、DSCR および LLCR は下記のように改
善できる。
最小 DSCR = 1.1 > 1.0
最小 LLCR = 2.6 > 1.0
DSCR と LLCR、共に十分な値を確保できるので、当該水力事業は財務的にフィージブルと
評価できる。年度別借入バランスを図 20.3.4 に示す。損益計算表を表 20.3.10 に示す。
14
DSCR w/o saving
DSCR with saving
LLCR
DSCR & LLCR
12
10
8
6
4
2
2048
2046
2044
2042
2040
2038
2036
2034
2032
2030
2028
2026
2024
2022
2020
2018
0
Source: Study Team
Years
図 20.3.4
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
借入れバランス
20-20
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
表 20.3.9
Year
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
2051
2052
2053
2054
2055
2056
2057
2058
2059
2060
2061
2062
2063
2064
2065
2066
2067
Total
PV
Annu
投資回収フロー
Cash Generation
Sales Residual
O&M
Interest
Repay
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2.09
0.00
0.00
0.00
0.01
0.00
14.28
0.00
0.00
0.00
0.05
0.00
27.12
0.00
0.00
0.00
0.74
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2.55
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
3.20
0.00
0.00
22.18
0.00
4.49
2.85
0.00
0.00
22.39
0.00
4.64
2.85
0.00
0.00
22.60
0.00
4.79
2.85
0.00
0.00
22.81
0.00
4.95
2.85
0.00
0.00
23.03
0.00
5.12
2.85
0.00
0.00
23.24
0.00
5.29
2.85
0.00
0.00
23.46
0.00
5.47
2.85
0.00
0.00
23.68
0.00
5.66
2.74
6.00
0.00
23.90
0.00
5.86
2.62
6.00
0.00
24.12
0.00
6.06
2.51
6.00
0.00
24.35
0.00
6.27
2.40
6.00
0.00
24.58
0.00
6.49
2.28
6.00
0.00
24.81
0.00
6.72
2.17
6.00
0.00
25.04
0.00
6.95
2.05
6.00
0.00
25.27
0.00
7.20
1.94
6.00
0.00
25.51
0.00
7.46
1.83
6.00
0.00
25.75
0.00
7.73
1.71
6.00
0.00
25.99
0.00
8.01
1.60
6.00
0.00
26.23
0.00
8.30
1.48
6.00
0.00
26.48
0.00
8.60
1.37
6.00
0.00
26.73
0.00
8.92
1.25
6.00
0.00
26.98
0.00
9.25
1.14
6.00
0.00
27.23
0.00
9.59
1.03
6.00
0.00
27.49
0.00
9.95
0.91
6.00
0.00
27.74
0.00
10.33
0.80
6.00
0.00
28.00
0.00
10.72
0.68
6.00
0.00
28.26
0.00
11.12
0.57
6.00
0.00
28.53
0.00
11.55
0.46
6.00
0.00
28.80
0.00
11.99
0.34
6.00
0.00
29.07
0.00
12.45
0.23
6.00
0.00
0.00
0.00
12.02
0.11
6.00
0.00
29.61
0.00
13.44
0.00
6.00
0.00
29.89
0.00
13.96
0.00
0.00
0.00
30.17
0.00
14.51
0.00
0.00
0.00
30.45
0.00
15.09
0.00
0.00
0.00
30.74
0.00
15.68
0.00
0.00
0.00
31.03
0.00
16.31
0.00
0.00
0.00
31.32
0.00
16.96
0.00
0.00
0.00
31.61
0.00
17.64
0.00
0.00
0.00
31.90
0.00
18.36
0.00
0.00
0.00
32.20
0.00
19.10
0.00
0.00
0.00
32.51
0.00
19.88
0.00
0.00
0.00
32.81
0.00
20.69
0.00
0.00
0.00
33.12
0.00
21.55
0.00
0.00
0.00
33.43
0.00
22.43
0.00
0.00
0.00
33.74
0.00
23.36
0.00
0.00
0.00
34.06
0.00
24.34
0.00
0.00
0.00
34.37
0.00
25.35
0.00
0.00
0.00
34.70
0.00
26.42
0.00
0.00
0.00
35.02
42.95
27.53
0.00
0.00
43.50
1,376.91
42.95
616.57
60.72
150.10
30.99
135.41
0.21
37.26
16.73
15.79
3.11
13.60
0.02
3.74
1.68
1.59
NPVI = 19.12
ROI = 14.96%
PV stands for a present value discounted by 10% p.a.
Annu stands for an annualized value of respective present value.
Invest
-6
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
事業性評価
20-21
US$ million
Benefit
Tax
Net
Sum
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
-2.10
-2.10
0.00
-14.33
-16.43
0.00
-27.86
-44.29
0.00
-2.55
-46.84
0.00
-3.20
-50.03
2.70
12.14
-37.90
2.72
12.18
-25.72
2.73
12.22
-13.49
2.74
12.26
-1.23
2.76
12.30
11.07
2.77
12.33
23.40
2.78
12.36
35.75
2.81
6.46
42.22
2.85
6.57
48.78
2.88
6.67
55.45
2.91
6.77
62.22
2.94
6.86
69.08
2.97
6.95
76.03
3.00
7.03
83.05
3.03
7.10
90.16
3.05
7.17
97.33
3.07
7.24
104.57
3.09
7.29
111.86
3.11
7.34
119.20
3.12
7.38
126.59
3.13
7.42
134.00
3.14
7.44
141.45
3.15
7.46
148.91
3.15
7.47
156.38
3.15
7.47
163.85
3.14
7.45
171.30
3.14
7.43
178.73
3.12
7.40
186.13
3.11
7.35
193.48
3.09
7.29
200.77
0.00
-18.14
182.64
2.72
7.45
190.09
2.66
13.27
203.36
2.59
13.07
216.42
2.52
12.85
229.27
2.44
12.61
241.89
2.36
12.36
254.25
2.26
12.09
266.34
2.17
11.80
278.13
2.06
11.48
289.62
1.95
11.15
300.77
1.83
10.79
311.56
1.70
10.41
321.97
1.57
10.00
331.97
1.42
9.57
341.54
1.27
9.11
350.64
1.11
8.61
359.26
0.93
8.09
367.35
0.75
7.53
374.88
0.55
49.90
424.78
124.20
424.78
–
15.74
19.12
–
1.58
1.92
–
Source: Study Team
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
表 20.3.10
事業性評価
損益計算表
US$ million
Year
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
2051
2052
2053
2054
2055
2056
2057
2058
2059
2060
2061
2062
2063
2064
2065
2066
2067
Total
PV
Annu
Revenue
-6
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
Interest
O&M Cost
Depreciation
PBT
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.01
0.00
0.00
-2.33
0.00
0.05
0.00
0.00
-15.88
0.00
0.74
0.00
0.00
-54.33
0.00
2.55
0.00
0.00
-78.59
0.00
3.20
0.00
0.00
-48.32
22.18
2.85
4.49
4.03
10.81
22.39
2.85
4.64
4.03
10.87
22.60
2.85
4.79
4.03
10.92
22.81
2.85
4.95
4.03
10.98
23.03
2.85
5.12
4.03
11.02
23.24
2.85
5.29
4.03
11.07
23.46
2.85
5.47
4.03
11.10
23.68
2.74
5.66
4.03
11.25
23.90
2.62
5.86
4.03
11.39
24.12
2.51
6.06
4.03
11.53
24.35
2.40
6.27
4.03
11.66
24.58
2.28
6.49
4.03
11.78
24.81
2.17
6.72
4.03
11.89
25.04
2.05
6.95
4.03
12.00
25.27
1.94
7.20
4.03
12.10
25.51
1.83
7.46
4.03
12.20
25.75
1.71
7.73
4.03
12.28
25.99
1.60
8.01
4.03
12.36
26.23
1.48
8.30
4.03
12.42
26.48
1.37
8.60
4.03
12.48
26.73
1.25
8.92
4.03
12.52
26.98
1.14
9.25
4.03
12.56
27.23
1.03
9.59
4.03
12.58
27.49
0.91
9.95
4.03
12.59
27.74
0.80
10.33
4.03
12.59
28.00
0.68
10.72
4.03
12.57
28.26
0.57
11.12
4.03
12.54
28.53
0.46
11.55
4.03
12.50
28.80
0.34
11.99
4.03
12.43
29.07
0.23
12.45
4.03
12.36
0.00
0.11
12.02
2.23
-14.36
29.61
0.00
13.44
5.30
10.88
29.89
0.00
13.96
5.30
10.63
30.17
0.00
14.51
5.30
10.36
30.45
0.00
15.09
5.30
10.07
30.74
0.00
15.68
5.30
9.76
31.03
0.00
16.31
5.30
9.42
31.32
0.00
16.96
5.30
9.06
31.61
0.00
17.64
5.30
8.67
31.90
0.00
18.36
5.30
8.25
32.20
0.00
19.10
5.30
7.81
32.51
0.00
19.88
5.30
7.33
32.81
0.00
20.69
5.30
6.82
33.12
0.00
21.55
5.30
6.28
33.43
0.00
22.43
5.30
5.70
33.74
0.00
23.36
5.30
5.08
34.06
0.00
24.34
5.30
4.42
34.37
0.00
25.35
5.30
3.73
34.70
0.00
26.42
5.30
2.99
35.02
0.00
27.53
5.30
2.20
1,376.91
60.72
616.57
223.73
283.00
135.41
16.73
37.26
22.81
-64.48
13.60
1.68
3.74
2.29
-6.48
PV stands for a present value discounted by 10% p.a.
Annu stands for an annualized value of respective present value.
Tax
PAT
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
-2.33
0.00
-15.88
0.00
-54.33
0.00
-78.59
0.00
-48.32
2.70
8.11
2.72
8.15
2.73
8.19
2.74
8.23
2.76
8.27
2.77
8.30
2.78
8.33
2.81
8.44
2.85
8.54
2.88
8.64
2.91
8.74
2.94
8.83
2.97
8.92
3.00
9.00
3.03
9.08
3.05
9.15
3.07
9.21
3.09
9.27
3.11
9.32
3.12
9.36
3.13
9.39
3.14
9.42
3.15
9.44
3.15
9.44
3.15
9.44
3.14
9.43
3.14
9.41
3.12
9.37
3.11
9.33
3.09
9.27
0.00
-14.36
2.72
8.16
2.66
7.97
2.59
7.77
2.52
7.55
2.44
7.32
2.36
7.07
2.26
6.79
2.17
6.50
2.06
6.19
1.95
5.85
1.83
5.50
1.70
5.11
1.57
4.71
1.42
4.27
1.27
3.81
1.11
3.32
0.93
2.80
0.75
2.24
0.55
1.65
124.20
158.80
15.74
-80.23
1.58
-8.06
Source: Study Team
DSCR
5.02
5.36
5.69
6.03
6.36
6.69
7.03
2.44
2.52
2.61
2.70
2.80
2.90
3.00
3.10
3.21
3.32
3.43
3.55
3.67
3.79
3.92
4.05
4.18
4.31
4.45
4.59
4.74
4.89
5.04
1.11
2.17
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
–
–
–
LLCR
1.73
1.70
1.66
1.62
1.59
1.55
1.51
1.47
1.48
1.49
1.51
1.52
1.54
1.55
1.58
1.60
1.63
1.66
1.70
1.74
1.80
1.86
1.94
2.04
2.16
2.33
2.54
2.85
3.32
4.11
6.71
12.49
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
–
–
–
20.3.6 財務感度分析
解析条件の変更に伴ってどのように財務指標が影響され得るかを検証するため感度分析を行った。
本財務分析では、以下の 5 ケースを検証する。すなわち, +CDM、– 10%売電価格、– 10%年間倍電
量、+10% CAPEX & OPEX、そして +1 年の完工遅延、である。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-22
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
表 20.3.11 に示されるとおり、解析条件が上述の範囲以内で変化しても財務指標は許容範囲内に収
まることが確認でき、本事業の持続可能性が確認された。
表 20.3.11 財務指標
感度分析
FIRR
US$M
ROI
US$M
0. ベースケース
6.6%
-40.5
15.0%
19.1
ベースケース
1. +CDM
7.0%
-36.4
15.9%
23.2
ベースケースに CDM 追加
2. –10%売電価格
5.6%
-50.6
12.5%
9.0
売電価格 1 割減
3. –10% 売電量
5.6%
-50.6
12.5%
9.0
発生電力量 1 割減
4. +10% CAPEX
5.8%
-54.5
12.8%
11.1
事業開発費 1 割増
5. 運開 1 年遅れ
6.2%
-47.0
13.4%
13.9
建設 1 年遅れ
US$M 対応列は純現在価値
出所:調査団
20.4 事業形態および資金計画
20.4.1 事業形態および資金計画の導入
水力開発には巨額の初期投資が必要である。公共セクタの予算には限界があるので、民間資金の
活用が期待される。しかしながら、より大きな自然条件リスクの存在や一般火力に比べて大きな
初期費用が必要など、水力開発には水力固有の問題がある。特に IPP では、大きなリスクと大き
な費用が投資家の投資意欲を殺ぎ、結果として水力事業の資金調達も困難なものとなっている。
現在(いくつかの例外はあるものの)水力開発は即ち公共事業のような状況にある。
官民連携(PPP)が期待される状況にある。官民連携は、公共セクタの財政負担を軽減し、同時に
インドネシアにおける民間投資を加速できる可能性がある。官民連携には下表で比較されるとお
り様々な形態があるが、本財務分析では本事業への適用が最も相応しい形態として、所謂「ハイ
ブリッド」もしくは「上下流分離」方式を選定するものとする。
表 20.4.1
効
果
①事業費削減効果
ハイブリッド
適用可能な官民連携事業形態
OBA
有償 BTO
ジョイントベンチャー
ファイナンス費用および保険費用において一定の削減効果が期待 公共セクターの関与度合
できる
いにより変化
水力特有の自然条件 民間が完工リスクを 100%担う必要がある 民間にとって十分なリス
② 民 間 投資家の リ
リスクのアンバンド ため、水力特有の自然条件リスクが民間に ク低減効果があるとは言
スク低減効果
リングが可能
残される
い難い
③ 公 的 資金投入 の 全て民間資金投入を伴うので、官民連携事業が成立すれば、1 事業あたりの公的資金投入額
最適化
の低減が可能となる。この結果、公的資金投入の最適化も可能となる。
ハイブリッド (垂直分離):
設計および建設を 2 セクターで分担する。
OBA (Output-Based Aid):
民間セクタが実際に提供する公共サービスに応じて、公共セクタが民間セクタを
支援する。
有償 BTO:
民間セクタが開発したインフラを公共セクタが有償で買い取る。
ジョイントベンチャー:
2 セクターで共同事業体を作る。
出所:スラウェシ島における最適電源開発計画調査、JICA、2008 年
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第 20 章
事業性評価
20.4.2 実施可能な官民連携事業形態の検討
事業リスクを関係者間で正しく配分しなければ事業の採算性と持続可能性は確保できない。これ
は、資金計画を立てる際の基本事項でもある。水力開発における民間投資では 4 つの主要リスク
が問題となる。すなわち、i) 資金調達リスク、 ii) 政治リスク、iii) 水文リスク、そして iv) 設計・
建設リスク、である。ここに、水文リスクは、 河川の流況が年間発生電力量、そして事業収入に
直結するので、商業リスクと同値と考えてよい。(民間投資を伴う)官民連携事業では、民間投
資家が許容できる程度に民間リスクが低減されていることが非常に重要である。下表は、民間投
資家の視点から、水力プロジェクトを発電所の上流と下流に分けた場合のリスク分析である。こ
こに、発電所要素とは文字通り発電所および関連施設を指している。発電所要素以外は、発電所
上流に位置する構造物を意味し、取水工とトンネルで代表される。
表 20.4.2
民間セクタのリスク低減効果
発電所要素
発電所要素以外
資金調達リスク
下記 3 リスクが適切に低減されるならば、本リスクは最小化可能である。為替変動リ
スクがある場合、事業権契約(売電契約)中で適切にリスクの低減が図られている必
要がある。
政治リスク
適正な事業権契約が締結されれば、政治リスクの軽減が可能となる。外貨交換や接収
に対する政府保証が付けば民間投資家の投資意欲をさらに大きくできる。
水文リスク
本リスクは実質上商業リスクと同一である。民間投資家は将来の河川流量に確信と責
任を持てないので、公共セクタが水文リスクを取るのが望ましい。
設計建設リスク
発電所周囲に限定すれば、予測不可能な
自然条件は限定的であり十分民間セク
タ内部で本リスクを取ることができる。
取水工とトンネルの自然条件を民間セク
タが予め完全に把握するのは非常に困難
である。
出所:調査団
上表から、本事業に適用可能な官民連携事業形態を考える上で下記の条件設定が可能となる。
• 為替変動リスクが適切に低減されているならば、民間セクタによる発電所開発は可能である。
• 発電所以外を民間セクタが開発するのは困難である。したがい、公共セクタが開発に責任を持つ
べきである。
• (上記 2 項のとおり)開発対象により民間セクタの判断が異なる可能性が高いので、プロジェクト全
体に対して同一の一般的事業形態(例えば、BOT や BLT)を当てはめるのは好ましくない。
• 民間セクタの関与を最大化するのであれば、確実性の高い官民連携事業形態は一般的事業形
態の複合とならざるを得ない。すなわち、i) 発電所部分では BOT 型の民間資金ベース開発、ii)
発電所以外では従来型公共事業、そして iii) 事業の運営段階では民間による運営維持管理契
約(O&M Contract)型である。
• 上記条件を満足するものとして、DBFO(design-build-finance-operate)事業形態を挙げることがで
きる。
したがい、本財務分析では、マサン 2 水力事業の最適官民連携事業形態は DBFO であるとの結論
に至る。表 20.4.3 に本事業に DBFO 形態を採用した場合に期待される官民それぞれの役割分担を
示す。
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第 20 章
表 20.4.3
事業性評価
期待される官民役割分担
民間セクタ (発電所)
PLN (発電所以外)
設計段階
従来型 PLN 事業として、PLN が全責任を持って計画と設計を行う。
建設段階
PLN により調達された DBFO コントラクタが
発電所に限定して、詳細設計、建設、および資
金調達を行う。
運営段階
DBFO コントラクタが PLN との事業契約に基づき、発電所以外の構造物も含めて全施設の運営維
持管理を行う。DBFO コントラクタへの支払いは、発生電力量と直結しないサービス料(コスト&
フィー)型が望ましい。
PLN が発電所以外の建設を行う。同時に、PLN
は施主として DBFO コントラクタを監理する。
出所:調査団
表 20.3.6 で示した事業全体の資金調達前キャッシュフローを、2 セクタ分に分割すれば表 20.4.5
のようになる。ひとつは公共セクタである PLN のキャッシュフロー、もうひとつは民間セクタで
ある DBFO コントラクタのキャッシュフローである。キャッシュフローの分割に当たり、以下の
仮定を設けた。
• 官民連携事業形態は垂直分離方式の DBFO 型とする。
• CAPEX は、公共セクタが建設を担う発電所以外部分として 126.3 百万ドル、民間セクタが建設を
担う 発電所部分として 66.6 百万ドルを仮定する。詳細を表 20.4.4 に示す。
• PLN からの支払いは DBFO コントラクタに適切な利益を与え得るものとする。民間セクタに対して
13%の FIRR を仮定する。
• DBFO コントラクタにより全施設の日常運営維持管理が行われるものとする。
• DBFO 契約期間は建設期間 3 年に商業運転期間 25 年を加えた合計 28 年とする。契約終了後
は PLN が事業運営者となることを仮定する。
• 両セクタ共に納税義務をはたすものとする。
表 20.4.4
官民連携における費用分担
US$M
民間部分
FC
LC
合計
FC
LC
鉄管路、発電所建屋、放流工、スイッチヤー
ド
0.97
4.58
5.55
17.4%
82.6%
機械および水車
5.16
2.21
7.37
70.0%
30.0%
発電機器
29.25
3.25
32.50
90.0%
10.0%
送電線
2.23
0.74
2.97
75.0%
25.0%
付加価値税
0.00
4.84
4.84
0.0%
100.0%
予備費
3.76
1.56
5.32
70.6%
29.4%
物価上昇
3.03
4.98
8.01
37.9%
62.1%
民間合計
44.40
22.17
66.57
66.7%
33.3%
FC
LC
US$M
公共部分
全体建設費
民間部分費用
公共合計
FC
LC
合計
70.45
122.45
192.90
36.5%
63.5%
-44.40
-22.17
-66.57
66.7%
33.3%
26.05
100.28
126.33
20.6%
79.4%
出所:調査団
上述の DBFO 型官民連携事業形態は適切に官民の役割設定がなされているが、必ずしも財務的持
続可能な事業を約束するものではない。実際、表 20.4.5 に示すとおり公共セクタのリターンは大
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事業性評価
幅に減少する可能性が高い。FIRR は 3.6%に落ち込む。この値は第 20.3.27 節で試算した代替 WACC
(インドネシア銀行の金利で PLN が資金調達した場合の資金調達費用)3.8%を下回ることになる。
なお、仮に民間セクタの最小回収率を不適切に下げた場合(公共セクタの回収率は上昇するが)
民間投資家は投資意欲を失って官民連携事態が成立しなくなる点に留意を要する。
表 20.4.5
Public Sector
Year
CAPEX
2011
0.00
2012
0.00
2013
2.32
2014
15.83
2015
50.39
2016
42.17
2017
15.61
2018
0.00
2019
0.00
2020
0.00
2021
0.00
2022
0.00
2023
0.00
2024
0.00
2025
0.00
2026
0.00
2027
0.00
2028
0.00
2029
0.00
2030
0.00
2031
0.00
2032
0.00
2033
0.00
2034
0.00
2035
0.00
2036
0.00
2037
0.00
2038
0.00
2039
0.00
2040
0.00
2041
0.00
2042
0.00
2043
0.00
2044
0.00
2045
0.00
2046
0.00
2047
0.00
2048
0.00
2049
0.00
2050
0.00
2051
0.00
2052
0.00
2053
0.00
2054
0.00
2055
0.00
2056
0.00
2057
0.00
2058
0.00
2059
0.00
2060
0.00
2061
0.00
2062
0.00
2063
0.00
2064
0.00
2065
0.00
2066
0.00
2067
-42.95
Total
83.38
PV
83.02
Annu
8.34
Source: Study Team
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
ハイブリッド DBFO 型官民連携財務キャッシュフロー
OPEX
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
10.33
10.72
11.12
11.55
11.99
12.45
12.02
13.44
13.96
14.51
15.09
15.68
16.31
16.96
17.64
18.36
19.10
19.88
20.69
21.55
22.43
23.36
24.34
25.35
26.42
27.53
452.78
7.48
0.75
PPP
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
17.96
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
449.08
92.04
9.24
Tax
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2.45
2.50
2.55
2.61
2.66
2.71
2.77
2.82
2.88
2.93
2.99
3.05
3.11
3.16
3.22
3.28
3.34
3.40
3.46
3.52
3.59
3.65
3.71
3.78
1.80
3.31
3.28
3.24
3.19
3.15
0.00
2.70
2.64
2.57
2.50
2.42
2.33
2.24
2.15
2.04
1.93
1.81
1.68
1.55
1.40
1.25
1.08
0.91
0.72
11.27
137.31
15.76
1.58
US$ mill. Private Sector
US$ mill.
Benefit
Net
CAPEX
OPEX
Tax
PPP
Net
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
-2.32
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
-15.83
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
-50.39
3.20
0.00
0.00
0.00
-3.20
0.00
-42.17
33.87
0.00
0.00
0.00
-33.87
0.00
-15.61
29.51
0.00
0.00
0.00
-29.51
22.18
1.77
0.00
4.49
2.76
17.96
10.71
22.39
1.93
0.00
4.64
2.73
17.96
10.60
22.60
2.08
0.00
4.79
2.69
17.96
10.48
22.81
2.24
0.00
4.95
2.65
17.96
10.36
23.03
2.40
0.00
5.12
2.61
17.96
10.24
23.24
2.56
0.00
5.29
2.56
17.96
10.11
23.46
2.73
0.00
5.47
2.52
17.96
9.97
23.68
2.89
0.00
5.66
2.47
17.96
9.83
23.90
3.06
0.00
5.86
2.42
17.96
9.69
24.12
3.23
0.00
6.06
2.37
17.96
9.53
24.35
3.40
0.00
6.27
2.32
17.96
9.38
24.58
3.57
0.00
6.49
2.26
17.96
9.21
24.81
3.74
0.00
6.72
2.21
17.96
9.04
25.04
3.91
0.00
6.95
2.15
17.96
8.86
25.27
4.09
0.00
7.20
2.09
17.96
8.68
25.51
4.27
0.00
7.46
2.02
17.96
8.48
25.75
4.45
0.00
7.73
1.95
17.96
8.28
25.99
4.63
0.00
8.01
1.88
17.96
8.07
26.23
4.81
0.00
8.30
1.81
17.96
7.85
26.48
4.99
0.00
8.60
1.73
17.96
7.63
26.73
5.18
0.00
8.92
1.66
17.96
7.39
26.98
5.37
0.00
9.25
1.57
17.96
7.14
27.23
5.56
0.00
9.59
1.49
17.96
6.88
27.49
5.75
0.00
9.95
1.40
17.96
6.61
27.74
-2.34
0.00
10.33
1.30
17.96
6.33
28.00
13.97
28.26
13.86
28.53
13.74
28.80
13.61
29.07
13.47
0.00
-12.02
29.61
13.48
29.89
13.29
30.17
13.09
30.45
12.87
30.74
12.64
31.03
12.38
31.32
12.11
31.61
11.82
31.90
11.51
32.20
11.17
32.51
10.81
32.81
10.43
33.12
10.02
PPP: DBFO payments from PLN to DBFO
33.43
9.59
contractor.
33.74
9.13
34.06
8.64
Tax of the public sector includes 10%
VAT for DBFO payment.
34.37
8.11
34.70
7.56
35.02
39.18
1376.91
254.37
66.57
174.11
53.61
449.08
154.78
135.41
-62.89
39.87
30.32
12.33
92.04
9.52
13.60
-6.32
4.28
3.26
1.32
9.89
1.02
FIRR = 3.53%
FIRR = 13.00%
20-26
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 20 章
事業性評価
20.4.3 事業形態と資金計画の結論
本財務分析から以下の結論を得る。
• マサン 2 水力プロジェクトは、公共セクタの実施機関である PLN により開発運営されるべきであ
る。
• マサン 2 水力プロジェクトを開発する際の資金源としては、融資条件が良好な二国間(JICA 等)
もしくは多国間援助機関(アジ銀や世銀)が妥当である。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
20-27
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
第21章
環境調査
環境調査
21.1 はじめに
第 9 章での検討の結果選定された開発有望地点に関する「Pre-FS の計画精度向上」を目的と
し環境社会配慮面で「不可逆的な影響」がないか可能な限り確認するために、現地踏査、文
献調査および周辺住民へのインタビューをおこなった。「不可逆的な影響」とは以下の通り
定義する。
- 想定を大幅に超える大規模な住民移転が必要。
- 多数の Endangered species(動植物含む)が緩和策策定不可能な環境で生息している。(特
に Key species の大型哺乳類が生息しており、プロジェクトによる森林伐採で Habitat が消
滅し、周辺にほかの地域への移動を確保する回廊となる林分もない場合。)
- 少数民族をはじめとする「脆弱なグループ」が生活しており、プロジェクトによる移転
対象となった場合、移転先での不利益を被る可能性が考えられる。
なお本調査は現地環境コンサルタントに委託して行った。調査は 2010 年 10 月中旬から 11 月
中旬に実施され、JST の環境社会配慮団員も同行し、適宜指示を与えた。
21.2 環境スコーピング
21.2.1 初期現地踏査
優先プロジェクト選定のために行われた初期現地踏査を通じて確認された Masang-2 の現況
は以下の通りである。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-1
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
(1) 取水地点
-
調整池の予定地点周辺に数件の住居がありプロジェクトの影響を受ける可能性があ
る。
-
周辺の森林は生産林である。
写真 21.2.1 取水地点 1 ㎞上流の状況
(2) 発電所地点
-
周辺は生産林である。
-
林内では住民による林産物(ゴム、果物等)の収穫が行われている。
写真 21.2.2
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
発電所地点の 2 ㎞下流の状況
21-2
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
写真 21.2.3 ゴム
環境調査
写真 21.2.4 ドリアン(果樹)
(3) 全般
- サイトは西スマトラ州パサマン県に位置する。
- 減水区間の延長は約 6.4km。
- 減水区間での土地利用への影響についてはさらに調査が必要。
- サイトが生産林内に位置するため森林利用手続きが必要である。
21.2.2 初期環境スコーピング
現地踏査の結果に基づいて初期環境スコーピングを行った。結果は表 21.2.1 のとおりである。
項目
社会環境
Involuntary
Resettlement
段階
表 21.2.1
評価
P
B-
Daily life of people
in surrounding
areas
C
C
Local economy
such as
employment and
livelihood, etc.
C
C
C,O
C
Land Use
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
環境スコーピング(Masang-2)
備考
Involuntary resettlement at the proposed sites of intake and powerhouse site
is not expected. There is a possibility of involuntary resettlement due to
expand of existing road for access road though its impact is considered as
not significant.
Some temporal impact is expected on the people in surrounding area due to
noise and vibration caused by the construction activities. On the other hand,
positive impact such as improvement of convenience due to expansion of
road is expected. However, impact to local people on their water use and
land use is unknown at this stage.
Employment opportunity might be increased due to the project
implementation, and improvement of transportation condition will be
improved due to arrangement of access road. On the other hand, there
might be some negative impact to local economy due to project
implementation.
The water intake and power house of the Project will not disturb existing
21-3
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
Physical
community
division
Existing social
infrastructures and
services
第 21 章
環境調査
land use. However, the present status of land use of the section of water
recession (L: approx. 7.8km) was not confirmed.
Physical community division is not expected due to project implementation
including access road construction.
-
D
C,O
C
The poor,
indigenous and
ethnic people
Misdistribution of
benefit and damage
Local conflict of
interests
Water Usage or
Water Rights and
Rights of Common
Sanitation
C,P,O
C
-
D
There is no social infrastructure and service at the point of water intake and
power house. However, the present status of social infrastructures and
services in the section of water recession (L: approx. 7.8km) was not
confirmed.
It seemed that no ethnic minority lived around the project site. However,
further examination on the poor, indigenous and ethnic people through
socio-economic study will be necessary.
Misdistribution of benefit and damage is not expected.
-
D
Local conflict of interests due to project implementation is not expected.
C
Water use of Shimango River could not be confirmed in the field survey.
So, further confirmation is necessary.
C
B-
Hazards
(Risk),
Infectious diseases
C
B-
Cultural Heritage
自然環境
Topography and
Geographical
features
Soil Erosion
Groundwater
-
D
Some negative impacts on the local sanitary condition are expected, due to
the mobilization of construction work force and/ or workers’ site camps,
although the expected impacts will be temporary during the construction
stage.
Increment of risks are probably expected on infectious diseases among the
construction work force and/ or in the workers’ site camps, although the
risk increment will be temporary during the construction stage.
Cultural heritage is not located in/near the project site.
-
D
Topographical condition is stable, and therefore negative impact to
topography and geographical features is not expected.
C
C,O
BB-
There is a risk of soil erosion due to cutting and embankment.
There is a risk of recession of groundwater level due to construction of
tunnels.
It is expected that the project component or activity might cause some
change or impacts on hydrological conditions in and around the Project
area.
There is no impact to coastal zone.
According to IUCN classification, there are some possibilities of occurring
of endangered species in and around the Project area. In addition, there is a
possibility that generation of water recession section might affect aquatic
environment though its impact level is unknown at the current study level.
Therefore, further confirmation is necessary.
It is not expected that the Project will cause the significant change on the
regional meteorological condition.
Landscape will be changed in a certain extent due to construction of
necessary facility and transmission line.
Probability of increment of GHG emission is expected due to the operation
of heavy vehicles as well as traffic jam incidental to the construction works
at the construction stage. As for the operation stage, increment of GHG
emission would be expected related to operation and maintenance works of
facilities though its impact would not be serious.
Hydrological
situation
Coastal Zone
Flora, Fauna and
Biodiversity
B-
C,O
D
C
-
D
C,O
B-
Global Warming
C
B-
汚染管理
Air Pollution
C
B-
Water Pollution
C
B-
Meteorology
Landscape
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
Some negative impacts on air quality are expected due to operation of
heavy equipment/ vehicles as well as traffic jam incidental to construction
works, although the expected impacts will be temporary during the
construction stage.
There is a risk of temporal water pollution due to excavation and cutting as
well as wastewater discharge from worker’s camp during construction. In
21-4
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
Soil Contamination
Waste
C
D
B-
Noise and
Vibration
Ground Subsidence
Offensive Odor
C
B-
-
D
D
Bottom Sediment
C
B-
Accidents
C
B-
環境調査
addition, water pollution due to generation of water recession section might
be occurred at the operation stage.
Soil contamination due to project implementation is not expected.
There is a possibility that the construction work generates the construction
waste in the construction stage.
Temporal impact of noise and vibration during construction are expected.
There is no activity which causes ground subsidence.
There are no project components or activities which may cause the
offensive odor.
Although there is no activity to generate some impact to bottom sediment,
there might be some risk to downstream area due to flushing bottom
sediment.
There is a risk of accidents during construction work and transportation of
heavy vehicles.
Project Stage
P: Planning C: Construction O: Operation
Legend of Evaluation
A-: Serious impact is expected.
A+: Positive effect is expected.
B-: Some impact is expected.
B+: Positive effect is expected to a certain extent.
C-: Extent of impact is unknown. Further examination would be necessary. Impact may become clear as study
progresses.
D: No or negligible impact is expected. Further examination is unnecessary in EIA study.
出典:JICA 調査団
21.3 環境調査
21.3.1 調査項目
スコーピングの結果、B および C と評価されたパラメーターを中心に、現況を確認した。
(1) 社会環境
1) 社会経済状況
2) 土地利用
3) 水利用
4) 地下水利用
5) 住民の開発プロジェクトへの意識
(2) 自然環境
1) 動植物相
2) 森林区分
衛生、伝染病、景観、地球温暖化については B および C と評価されたが今回の調査の項目に
は含めなかった。次段階の EIA で確認することを提案する。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-5
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
21.3.2 調査方法及び調査対象地域
(1) 調査方法
1)
社会環境
Masang 川および支流の水利用および土地利用の現況について可能な限り目視にて確認を
行った。サイトへのアクセスが困難な場合は、地元住民等への聞き取り調査にて水利用
と土地利用の現況を確認した。恒久および仮設備建設候補地の土地利用および住民移転
の可能性についても、同様の手法を用いた。事業に対する意見に関しては、現在の調査
レベルおよび地域の慣習を考慮して、村長や主要人物など村の代表者へ限定した聞き取
り調査を実施した。
2)
自然環境
あらかじめ現地で得た情報をもとに踏査ルートを設定し、基本的に目視により、動植物
相を観察した。あわせて、地元住民に対してインタビューを行い、動植物の生息状況に
関する情報補てんに努めた。現地で同定不能な種については持ち帰り精査した。
調査対象地域および踏査ルートは図 21.3.1 に示すとおりである。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-6
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
出典:JICA 調査団
図 21.3.1 調査対象地域および踏査ルート
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-7
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
出典:JICA 調査団
図 21.3.2 現地調査にて訪問した村落
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-8
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
21.3.3 調査結果
(1) 社会環境
1)
社会環境の現況
Masang-2 のプロジェクト地域は、Agam 地域および Pasaman 地域の 3 村に位置する。各
村の基本情報を表 21.3.1 に示す。
Province
Regency
District
表 21.3.1 事業対象地域の基本情報
West Sumatra
Agam
Palembayan
Palupuh
Pasaman
Bonjol
出典:JICA 調査団
事業対象地域の行政情報について表 21.3.2 に示す。
表 21.3.2
No
1
2
3
4
5
6
Items
事業対象地域の行政情報
Villages
Ampek Koto
Nan Tujuah
Agam
Agam
Palembayan
Palupuh
8,551
8,509
Regency
District
Village Area (ha)
Number
of
7
community
Number
of
2
Community
in
Project Area
Name
of 1. Bamban
Community
2. Koto Tinggi
Limo Koto
Pasaman
Bonjol
2,424
13
5
4
1
1. Air Kijang
2. Sipisang
3. Bateh Sariak
4. Kuran-kuran
1.Batu Badinding
Selatan
出典:Monographic or Profile of the Nagari, 2009
事業対象地域の人口情報を表 21.3.3 に示す。
No
1
2
3
4
表 21.3.3 事業対象地域の人口情報
Name of Villages
Indicator
Ampek
Nan
Koto
Tujuah
Number of Population (unit: person)
4,614
5,480
a. Male
2,319
2,787
b. Female
2,295
2,693
Number of Population by Age Group (unit: person)
a. < 15
1,241
1,180
b. 16 - 60
2,664
3,421
c. > 60
709
879
Number of Household
1,229
1,328
Demography Indicators
a. Population Density (man/km2)
53.96
64.40
b. Number of Household Member
3.75
4.13
c. Dependency Ratio (%)
73.20
60.19
Limo
Koto
5,317
2,712
2,605
Total
1,712
3,427
178
1,193
4,133
9,512
1,766
3,750
Average
112.57
4.11
62.85
219.35
4.46
55.15
15,411
7,818
7,593
出典:Monographic or Profile of the Nagari, 2009
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-9
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
2)
第 21 章
環境調査
民族および宗教
事業対象地域では Minankabau 族が多数を占めており、Java 族および Batak 族は少数とさ
れているが、地域行政が少数とされているグループの人権を保護しており、また伝統的
および宗教的な慣習に基づく「Adat Basandi Sarak, Sarak Basandi Kitabullah」と呼ばれる
ルールに従ってコミュニティー間でコミュニケーションを取っている。従って、村長等
への聞き取り調査から、異なる民族または宗教による争いは発生していないことを確認
した。事業対象地域では、イスラム教徒が大多数を占めており、キリスト教徒は約 0.5%
とされている。
3)
行政制度
西スマトラ州における最小行政単位は村(Nagari)であり、各村には村長(Datuk)がい
る。各村の体制はほぼ同じであり、4~5 つの Jorong と呼ばれるコミュニティー(村の下
部組織に相当)により構成される。村長は村民により選出され、地元行政組織より任命
される。村長は、村民に対して行政サービスを提供する立場にある。各村には、宗教リ
ーダー、民族リーダー、社会リーダー、女性リーダーなどの慣習上のリーダーも存在す
る。
4)
経済活動
事業対象地域での主な産業は、稲作やプランテーションなどの農業であり、これらの産
業が主な収入源である。加えて、補完的収入として家畜の飼育も行っている。2009 年度
の統計書(Monographic or Profice of the Nagari)によると、調査対象地域における平均収
入はそれぞれ、Ampek Koto で約 Rp. 3,567,000/世帯/月、Nan Tujuah で約 Rp. 2,113,000/世
帯/月、Limo Koto で約 Rp. 3,642,000/世帯/月となっている。統計データに加えて、村長や
主要人物への聞き取り調査、および村内の状況を目視確認したところ、調査対象地域に
おける経済状況はやや普通から普通という状況と考えられる。
5)
文化財
西スマトラ州文化財保護局が 2009 年に発行した報告書では、調査対象地域内に文化財は
確認されなかった。
6)
公共施設
調査対象地域にはエラー! 参照元が見つかりません。に示す公共施設がある。事業実施
による公共施設の移設は発生しないが、村の主要道路付近で教会や学校などを確認した。
表 21.3.4
Public Facilities
調査対象地域における公共施設
Name of Villages
Nan
Ampek Koto
Tujuah
1. Education
a. Kindergarten
b. Elementary school
c. Junior high school
d. Senior high school
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
4
8
1
3
21-10
3
7
1
-
Limo
Koto
2
4
1
1
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
e. Informal (Moslem School)
2. Health
a. Local government clinic
b. Unit local government clinic
c. Integrated public service
3. Religion
a. Mosque
b. Private mosque
1
23
-
1
1
13
3
1
9
1
10
12
32
13
29
6
27
環境調査
出典:Monographic or Profile of the Nagari, 2009
7)
土地利用の現況
調査対象地域は、行政区分上、保護林(Hutan Lindung)および生産林(Hutan Produksi)
に跨っている。関連法令で定める森林利用については第 5 章で記述しているが、調査対
象地域内の保護林の現況は、プランテーションや小規模な田畑が点在する複合林であっ
た。調査対象地域内における構造物建設予定地の土地利用現況を図 21.3.3 および表 21.3.5
に示す。
Facility
Construction Plan
Intake
Regulation Pond
Powerhouse
Spoil Bank
Office/ Plant
Construction Road
表 21.3.5 調査対象地域内の土地利用現況
Necessary
Confirmed Land Use
Expected No. of
Area (ha)
Displaced
Household (HH)
1.5 - Secondary forest
0
- Plantation (sugar palm,
candlenut)
9.3 - Paddy field
0
- Mixed forest
- Plantation (rubber)
3.0 - Secondary forest
0
- Plantation (rubber, durian,
sugar palm)
19 - Plantation (rubber, durian,
0
cacao)
- Secondary forest
1.8 - secondary forest
0
- plantation (rubber, cacao,
candlenut)
30 - Secondary forest
0
- Plantation
- Paddy field
Location
(village)
Ampek Koto
Ampek Koto
Limo Koto
Limo
Koto
Koto,
Ampek
Ampek Koto
Limo
Koto
Koto,
Ampek
出典:JICA 調査団
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-11
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
第 21 章
環境調査
出典:JICA 調査団
図 21.3.3 土地利用
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-12
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
8)
第 21 章
環境調査
土地所有権
保護林や生産林と区分されている地域は通常公共用地であり、地元住民は森林利用者で
ある。しかし現状では、調査対象地域内の保護林や生産林は、地元コミュニティーの土
地(Tanah Ulayat:地元の民族/コミュニティーが所有する土地)と認識されている。保
護林や生産林以外の土地についても Tanah Ulayat と認識されている。
事業実施者は Tanah
Ulayat の取得が必要になる場合は、取得の対象となるコミュニティーの土地所有者、宗
教リーダーや他のコミュニティーメンバーより、用地取得に関する合意を得なくてはな
らない。
9)
水利用の現況
Masang 川における水利用の現況を取得堰の 3km 上流から発電所の 5km 下流区域におい
て確認した。確認した区間の水利用は沐浴と家庭消費用または補完的収入源としての魚
釣りを時折行う程度であり、専業漁民やラフティングなどの経済活動や灌漑用水、トイ
レとしての利用は目視および地元住民への聞き取り調査から確認されなかった。飲料水
や灌漑用水は Masang 川に注ぐ細流を使用している。
Masang 川は大小に関わらず様々な支流があるが、全ての支流は Masang 川へ注ぐもので
ある。この中で 5 つの支流について確認した。上流区間(取水堰から 3km 上流区間)に
は、Guntung 川と Batubegantung 川の 2 つの大きな支流がある。Guntung 川は 2011 年 1 月
現在建設計画中である小水力発電事業の水源として利用される予定であり、
Batubegantung 川では採砂が行われている。減水区間においては、Bamban 川、Belukar 川
および Sipisang 川の水利用現況を確認し、時折の沐浴や家庭消費用としての釣りが行わ
れていることを確認した。
10) 地下水利用の現況
地下水利用はないことを確認した。
11) 事業に対する地元住民の意識
村長および主要人物への聞き取り調査を調査対象地域内の各村で行った。聞き取り調査
では主に下記に示す項目について協議を行った。
a) 事業実施に対する賛成/反対等の意見
b) 事業実施に対する展望/意見
c) 事業対象地域内の水利用
d) 対象村落の社会経済状況
f) 対象村落における特筆すべき文化
g) 用地取得における慣例
村長および主要人物の意見の概要を以下に示す。
JICA インドネシア国
水力開発マスタープラン調査
21-13
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
-
第 21 章
環境調査
調査対象地域における電力は限られていることから、事業実施により地域の電力事
情が改善することを期待する。
-
事業実施により、地元住民の雇用機会の増大が期待される。
-
事業実施により道路アクセス状況が改善され、地域住民へ利益をもたらすことが期
待できる。
-
用地取得は地元の慣習に従うべきである。
12) 社会環境の要点
-
恒久構造物建設(取水堰、中間調整池、発電所)に必要な用地は合計 13.8ha、仮施
設(土捨場、事務所、建設道路)に必要な用地は合計 50.8ha であり、主な土地利用
は二次林、耕作地、プランテーション(ゴム、ドリアン、カカオなど)である。用
地取得は必要であるが、非自発的住民移転の発生は想定されない。
-
調査対象地域での主な収入源は稲作やプランテーションなどの農業である。
-
調査対象地域内の住民は Masang 川に生計を依存していないが、家庭消費用または補
完的収入としての釣りを Masang 川にて行う住民がいる。
-
調査対象地域内の主な収入源は稲作やプランテーション等の農作物である。事業実
施により田畑やプランテーションの一部が用地取得の対象となるが大規模ではない
ことから、住民の生計への影響は深刻ではないと考えられる。
-
調査対象地域は十分な雇用機会がないため、地元住民は事業実施による雇用機会の
増大や地域経済の改善を期待している。
-
地元住民は、事業実施による地域の道路状況改善や住民の生計改善を期待している。
-
事業実施により Tanah Ulayat の取得が必要となることから、地元住民への説明や事
業への参加促進が必要である。
(2) 自然環境
1)
植物相
調査対象地域は、植生構造、地形の特徴から大まかな以下の 5 つのタイプに分類される。
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水力開発マスタープラン調査
21-14
2011 年 8 月
ファイナルレポート(メイン)
a)
第 21 章
環境調査
自然林に近い二次林
小規模ではあるが、 Koto Tinggi 周
辺地域では、自然林に近い二次林が
みられる。優占種としては
Lithocarpus sp. ( ブ ナ 科 の 1 種 ) 、
Bischofia javanica (トウダイグサ科の
一種)、Ficus glomerata(クワ科の 1 種)
などである。
出典:JICA 調査団
b)
二次林
地形的には緩やかな傾斜地に成立し
ており、取水地点周辺で確認された。
優占する種としては Durio zibethinus
(ドリアン), Hevea brasiliensis(ゴム
ノキ), Lithocarpus sp. (ブナ科の 1 種)、
Bischofia javanica (トウダイグサ科の
一種)などである。
出典:JICA 調査団
c)
アグロフォレスト
アグロフォレストは、森林と経済的な
価値の高い農作物の耕作地が混在す
るタイプで Hevea brasiliensis(ゴム
ノキ), Areca catechu (ビンロウ)、 Theobroma cacao(カカオ), Aleurites
moluccana(トウダイグサ科の一種)、 Pangium edule(イイギリ科の 1 種), Cinnamomum burmannii(クスノキ科
の 1 種), Syzygium aromaticum(チョ
ウジ), Toona sureni (センダン科の 1
種), Arenga pinnata (サトウヤシ)な
どの森林の中に、Durio zibethinus(ド
出典:JICA 調査団
リアン)、Garcinia mangostana(マン
ゴスチン)、Artocarpus heterophylla(ジ
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21-15
2011 年 8 月
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第 21 章
環境調査
ャックフルーツ)、Lansium domesticum (ランサ), Syzygium aqueum (ローズアップ
ル)、Cocos nucifera (ココヤシ)などの果樹が栽培されている。 d)
混交耕作地
混交耕作地では、主に平地もしくはテラス状の土地では、水田周辺に Elettaria
cardamomum(カルダモン)、Cymbopogon nardus(レモングラス)などの香辛料、な
すび、トウガラシ、豆など)、Theobroma cacao(カカオ)、Cocos nucifera (ココヤ
シ)、Aleurites moluccana(トウダイグサ科の一種)、Areca catechu (ビンロウ)、
Saccharum officinarum(サトウキビ)などが混在して栽培されている。
Theobroma cacao
出典:JICA 調査団 e)
草地
Imperata cylindrical(イネ科草本)や低木が優占する地域である。
出典:JICA 調査団
現地踏査を通じて、合計 164 種の植物が確認された。(それぞれ Appendix 2 の 21.1
参照)ちなみに IUCN のレッドデータブックに記載のある種は確認されなかった。
2)
動物相
現地踏査を通じて、110 種の動物が確認された。これには哺乳類、鳥類、両生・爬虫類が
含まれる。(Appendix 2 の 21.2-5 参照)
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a)
第 21 章
環境調査
哺乳類
現地踏査では 7 種の哺乳類が直接確認さ
れ、11 種がインタビューによって間接的
に確認された。(合計 18 種)
直接確認した 7 種のうち、
以下の 3 種は、
IUCN のレッドデータブック(2010)に
おいて「絶滅危惧種 I 類(endangered)」
の記載がある。
マレーバクの足跡
出典:JICA 調査団
-
Presbytis melalophos(クロカンムリリーフモンキー) Hylobates agilis(クロテテナガザル) Tapirus indicus(マレーバク)
また以下の 2 種は IUCN のレッドデー
タブック(2010)において「絶滅危
惧種 II 類(vulnerable)」の記載があ
る。
-Macaca nemestrina(ブタオザル)
-Macaca fascicularis(カニクイザル)
出典:JICA 調査団
b)
鳥類
現地踏査では 43 種の鳥類が直接確認され、さらに聞き取りによってさらに 28 種の
鳥類が確認されたが、絶滅危惧種は含まれていない。
Alcedo menintin
Lonchura striata
出典:JICA 調査団
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c)
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環境調査
両生・爬虫類
主に二次情報と住民へのインタビューによって 20 種の両生爬虫類が確認されたが、
絶滅危惧種は含まれていない。
d)
魚類
マサン川で通常みられるのは、Cyprinidae 属(コイの仲間)および Gobiidae 属(ハ
ゼの仲間)の種である。シマンゴ川の特徴として川の流れが速く、河床が岩から構
成されており、このような環境を Cyprinidae 属、 Gobiidae 属の魚類が好むとされて
いる。
住民へのインタビューに基づくマサン川周辺でみられる魚種は Appendix 2 の 21.5 の
通りである。
この中には、Cyrinus carpio(コイの仲
間), Oreochromis mossambicus(モザン
ビ ー ク テ ラ ピ ア ) , Oreochromis
niloticus(ナイルテラピア), Puntius
binotatus(コイの仲間), Osteochilus
vittatus ( コ イ の 仲 間 ) 、 Clarias
batrachus(ナマズの仲間))などのよう
に住民が養殖していたり、村の市場で
Osteochilus vittatus 取引されといるものが含まれている。
特に Osteochilus vittatus については地元
出典:JICA 調査団
では自発的に禁漁区域を設け、資源保護
に努めている。
3)
森林区分
確認された森林区分図は図 21.3.4 のとおりである。ちなみに取水地点は限定的生産林で
あり、発電所地点は保護林内に位置していることが判明した。
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出典:JICA 調査団
図 21.3.4 森林区分
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環境調査
21.3.4 代替案の検討
本調査における基本概念は、事業計画の初期段階から技術的および経済的に実施可能なレベ
ルで、環境への影響を低減するための検討や配慮を実施することである。事業概要検討時に
おける主な検討事項を以下に示す。
-
恒久施設および仮施設の建設は、可能な限り保護林、居住地区、耕作地を避ける。
-
建設用道路の建設は、可能な限り居住地や耕作地を避ける。
-
送電線のルートは可能な限り保護林を避ける。
取水堰の場所については、机上検討および現地確認に基づき、代替案 A、B および C の 3 つ
の代替案について比較検討した。
-
-
表
代替案 A
取水堰は森林区分以外の
地域に位置している。
取水堰の両側は田圃に囲
まれていることから、比
較的広い田圃の取得が必
要である。
居住地域はない。
21.3.6
-
-
取水堰位置の代替案比較
代替案 B
取水堰は森林区分以外の 地域に位置している。
取水堰の左岸は田圃であ り、右側は複合林と小規模
プランテーションである。
居住地域はない。
-
代替案 C
取水堰は森林区分以外の
地域に位置している。
取水堰は小規模プランテ
ーションを含む複合林に
位置する。
居住地域はない。
出典:JICA 調査団
全ての代替案は同じ地域内に位置するため、自然環境状況に大差はない。社会環境状況を検
討すると、代替案 A は他の 2 つの代替案に比べて比較的広い田畑の取得を必要とするため、
もたらす影響が大きいと考えられる。表 21.3.6 に示す検討の結果、環境社会配慮面では、代
替案 C が最も影響が小さいと考えられる。
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21.3.5 考察
(1) 用地取得手続き
Masang-2 プロジェクト地域周辺の小水力プロジェクトでは、地域の慣習および地元住民の参
加により、
円滑に用地取得を実施した。Masang-2 は Tanah Ulayat 内に位置していることから、
次の調査段階で現地調査を行う前に地元住民との十分な協議が重要である。
(2) 世帯における社会経済状況の確認
必要面積は小規模であるが、事業実施による田畑やプランテーション等の用地取得が必要で
あることから、地元住民の生活手段の喪失や減少等の影響が想定される。用地取得と同様に、
事業実施により減水区間が発生することから、現地での目視や村長等への聞き取り調査から
影響の程度は深刻ではないと想定するが、減水区間で釣りを行っていた地元住民の生計や栄
養状況への影響が考えられる。
生計安定・回復に必要な補償や支援を検討するためには、事業実施による影響を適切に把握
する必要がある。そのために、事業対象地域の住民を対象とした収入源や資産損失の確認を
含む社会経済調査および栄養状況の詳細な確認を実施する必要がある。
(3) 動植物相
Masang-2 周辺では、以下の通り、IUCN のレッドデータリストに「絶滅危惧種」として記載
のある動植物が確認された。
動物:「絶滅危惧種I種(Endangered)」哺乳類3種( クロカンムリリーフモンキ
ー、クロテテナガザル、マレーバク)
「絶滅危惧種II種(Vulnerable)」哺乳類2種(カニクイザル、ブタオザル)
今回確認された「絶滅危惧種Ⅰ 類および II 類」の動物の生息地の特徴は以下の通りである。
表 21.3.7
種名
クロカンムリリーフモ
ンキー
クロテテナガザル
マレーバク
カニクイザル
ブタオザル
絶滅危惧種の生息状況
生息地の特徴
低地から丘陵地に成立するフタバガキ科の植物や常緑樹からなる森林
に生息するが、河畔でも見られる。地上30m程度の樹林内を好む。
主に熱帯雨林の樹冠内に棲むが、まれに地上にも降りる。主に果樹や
昆虫を餌とする。
主に東南アジアの低地熱帯雨林に生息する。
生息地は低地の自然林から二次林、河辺林およびニッパヤシの沿岸林
やマングローブ林に至るまで多様である。人間にも容易に適応し、耕
作地や集落周辺では有害動物とされている。(基本的に夜行性)
雑食性のサルで、主に森林を生息地とするが、耕作地や一般集落の庭
にも出現する。
出典:JICA 調査団
以上当該種の生息地の特徴を検討した結果、いずれの種も森林の存在に大きく依存している
ことがわかる。そのため、以下のような環境緩和策に基づいて、現状の森林をできる限り保
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第 21 章
環境調査
全することでプロジェクトによる環境影響は最小化できると考えられる。
- 施工に伴う森林の伐採は必要最小限とする。特に動物の移動に必要な回廊を確保するた
めにも、森林の連続性を分断しないように留意する。
- プロジェクトで建設したアクセス道路が密猟や不法伐採に利用されないように適切に管
理する。
- プロジェクトサイト周辺での必要に応じた植林実施。
- 地域住民を巻き込んだ環境保全活動の実施。
(4) 生物多様性保全の観点からの河川維持流量(環境流量)の検討
本 Pre-FS では、環境社会配慮の観点から、河川維持流量として、約 0.39m3/sec を採用し、当
該水量が取水地点より下流に流される予定である。Masang-2 では減水区間約 8km であるが、
取水地点直下で 1 本、また約 1 ㎞下流でさらに 1 本の支流があり、発電所までの減水区間で
河川水の補填が見込まれるため、河川環境に深刻な影響はないと考えられる。ちなみに減水
区間での灌漑利用や住民による生活用水の使用はないことを確認している。
最大使用流量
河川流量
維持流量
減水区間
: 32.0 m3/s
: 17.71m3/s (平均)、10.05m3/s (95%確率)
: 0.39 m3/s を堰から下流に放流
: 全長 8km、発電所の上流で AlahanPanjang 川と合流
(5) 森林利用手続き
既述のとおりプロジェクトは限定的生産林および保護林内に位置しており、以下の通り、森
林法に基づく森林利用の手続きが必要である。
1)
森林利用
林業以外の目的で森林地域を使用する場合、生産林もしくは保護林地域に限られる。
(1999 年法律第 41 号森林法)したがって保全林(Hutan Konservasi)内では森林生産以
外の目的では利用できないことになっている。
森林利用に関する法律(2010 年第 24 号法律)に森林以外の利用についての規定があり、
森林内で許される開発行為には、再生可能なエネルギーおよび発電所、送電線の建設な
どが含まれる。
2)
森林利用の手続き
森林利用は森林省大臣による森林利用許可承認に基づいておこない、森林利用の申請主
体は以下の通りである。
a. 関係省の大臣
b. 知事
c. 市長
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21-22
2011 年 8 月
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第 21 章
環境調査
d. 企業代表
e. 財団等の会長
本件の場合は MEMR が申請主体となるが、森林省内の手続きにはかなり長期間がかかるので
できるだけ早期に手続きを開始することが必要である。
(6) 発電所下流の水位変動
ピーク・オフピーク時に発電所下流で水位が変動する。本調査で発電所下流 5km の範囲で灌
漑の取水設備がないことを確認し、また比較的大きな川(AlahanPanjang 川)が減水区間で合
流することから、水位変動の影響は深刻ではないと判断される。しかしながら警報装置の必
要性につき次段階以降で検討すべきである。
21.3.6 結論および提言
LARAP 作成において検討が必要な事項
(1)
現地確認の結果から、事業実施には合計 64.6ha(恒久施設 13.8ha、仮施設 50.8ha)の用地取
得が必要となるが、非自発的住民移転の発生は想定されない。従って、事業実施による社会
環境への不可逆的な影響は想定されないと考えられる。しかし、プレ FS にて現地で収集・確
認した情報は限定的であるため、フィージビリティー調査など次の段階にて以下に示す項目
を確認・検討する必要がある。
1)
詳細な世帯調査の実施
事業実施による非自発的住民移転の発生の可能性は低いことをプレ FS にて確認したが、
用地取得または減水区間の発生による地元住民の生計への影響が想定される。従い、
LARAP 作成のための基本情報および事業実施による影響を検討のために、事業対象地域
における詳細な世帯調査の実施が必須である。確認が必要な項目を以下に示す。
i) 被影響住民数を特定するための人口センサス
ii) 事業実施により影響を受ける資産を確認するための資産目録調査
iii) 社会経済状況を確認するための全ての被影響住民に対する社会経済調査(本調査で
は、月収/年収、収入源、栄養状況、地元住民の釣りの状況と頻度、事業に対する展
望・意見を確認する)
プレ FS では非自発的住民移転は想定されないが用地取得が必要になる可能性があるた
め、先住・少数民族が用地取得対象者となる可能性もある。従って、資産目録調査およ
び社会経済調査にて、先住・少数民族の所有または使用の資産の有無に関する確認も必
要である。上記の調査により事業実施による影響が特定された段階で、生活改善計画を
含む補償政策の検討が必要である。また、事業対象地域への不法占拠者流入を防ぐため
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21-23
2011 年 8 月
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第 21 章
環境調査
に、人口センサス開始時に「Cut-off date1」を宣言することも必要である。
2)
LARAP 作成
日本政府が支援する事業において大規模な用地取得や非自発的住民移転が発生する場合
は、住民移転計画(Resettlement Action Plan:RAP)の作成が必要である。また、RAP 作
成においては、想定される影響を含む事業概要および補償政策について地元住民と適切
に協議しなくてはならない。
日本政府の支援にて Masang-2 プロジェクトを実施する場合、事業実施者である PLN に
よる用地および住民移転計画書(Land Acquisition and Resettlement Action Plan: LARAP)2の
作成が必要となる。第 8 章にて記述したように、PLN はドナー支援事業において、用地
取得および住民移転計画(Land Acquisition and Resettlement Action Plan:LARAP)作成の
経験がある。従って、最終的なレイアウトにおいて用地取得や住民移転が発生する場合
は、JICA ガイドライン(2010 年 4 月)および世界銀行 OP4.123を満たし、被影響住民と
の協議結果を反映した LARAP 作成が可能と考えられる。LARAP にて調査が必要な項目
の概要を表 21.3.8 に示す。
Table 21.3.8 LARAP にて検討が必要な事項
事項
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
事業概要
想定される影響
目的
社会経済調査
法的枠組み
事業実施枠組み
補償および支援の需給要件
8. 損失補償の試算
9. 移転方針
10. 移転地選定(*1)
11. 移転地整備計画(*1)
12. 環境保全対策(*1)
13. コミュニティーの参加
14. 受け入れ先との協調
15. 不服申し立て制度
16. 住民移転に責任を有する機関
17. 実施スケジュール
18. 費用と財源
19. モニタリングと評価
1
2
3
検討が必要な内容
事業の概要と事業対象地域
想定される影響と影響軽減に関する検討
LARAP 作成の目的
人口センサスや社会経済調査の調査結果概要
関連法令、国内法とドナー政策との乖離
用地取得・住民移転実施に関連する組織の組織力分析
移転が必要な人の定義および補償・支援の需給要件の定
義、Cut-off date の定義
再取得価格を決定するための評価方法、国内法による補償
が再取得価格に満たない場合の追加的な補償方法
補償およびその他の移転政策
移転地選定と選定理由
移転地先でのインフラ整備および社会サービスの提供計
画
移転地先の環境影響評価および環境管理計画の検討
用地取得・住民移転の計画から実施段階における住民参加
の戦略
受け入れ先コミュニティーとの協調を図るための方策
住民移転に関する不服に対するアクセス可能な制度の検
討
住民移転を実施する機関の枠組み検討
住民移転に係る全ての活動を実施するためのスケジュー
ル検討
住民移転にかかる全ての費用の算定
事業実施機関による住民移転のモニタリングと第三者機
OP4.12 では、Cut-off date は人口センサスを開始した日、または、人口センサス開始前に一般住民に対して事業
対象地域に関する情報を提供した日としている。
インドネシアにおけるドナー支援事業では、用地取得や住民移転が発生する場合、通常 LARAP を作成する。
JICA ガイドライン(2010 年 4 月)における用地取得・住民移転の基本概念は、世界銀行セーフガードポリシー
OP4.12 を参照している。従って、日本政府が支援する用地取得・住民移転が必要な事業は、JICA ガイドラ
インおよび世銀 OP4.12 の双方を満たす必要書類を作成する必要がある。
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21-24
2011 年 8 月
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環境調査
事項
検討が必要な内容
関による追加的なモニタリング
備考:*1 と印をつけた事項は移転地が必要な場合に検討が必要
出典:世界銀行 OP4.12 Annex A を基に JICA 調査団作成
現時点での調査レベルおよび入手可能な情報に基づいた、LARAP 作成のための TOR 案を
Appendix-2 に示す。次の調査段階で更なる検討が必要である。
(2) AMDAL にて検討が必要な事項
現地踏査の結果、Pre-FSを進めるうえで、プロジェクト実施による「不可逆的な環境影響」
はないと判断された。ただし、次のステップ(FS段階におけるAMDAL)では、以下の事項
を考慮する必要がある。
1)
より詳細な動植物の調査実施
今回の調査を通じて、IUCN のレッドデータリストに「絶滅危惧種I類もしくはII類」と
して記載のある動物5種が確認された。詳細な現地調査によって、確認される貴重種の
数がさらに増える可能性がある。
工事中ならびに運転時の適切な環境緩和策策定のためにも、追加的な現地調査が必要で
ある。貴重種だけでなく、地元の経済資源として扱われている種にも着目する必要があ
る。
2)
より詳細な水生環境の把握
特に「減水区間」における水位の変化に基づく水生生物への影響を把握するとともに、当
該河川における地域住民による内水面漁業の状況についてより詳細な確認が必要である。
3)
ステークホルダー協議の実施
今回は村長などに対する限定的なインタビューは行ったが、住民の総意を把握したとは言
えない。
FS段階ではSHMを実施して、プロジェクトに対するさまざまな住民の意向を適切に把握
することが必要である。住民はサイト内からだけでなく、発電所下流や送配電による裨益
者も加えることがのぞまれる。
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水力開発マスタープラン調査
21-25
2011 年 8 月
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