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福岡大学 佐々木ゼミA
部門番号 16 ドコモから見た携帯電話の市場 福岡大学 商学部 佐々木ゼミ A 松村 由起美 本村 亮 松尾 麻美 松竹 礼 山西 有起美 神野 佑紀 1 〈目次〉 1 はじめに 2 ドコモの経営と他社との競争関係 3 携帯電話の機能 5 4 スマートフォンの登場と影響 5 まとめ 2 第1章 はじめに 携帯電話とは近代経済において大きな成功を収めたビジネスであるのは言うまでもない。 5 日本での携帯電話産業は60年代に日本電信電話公社が 「無線呼び出し機(ポケットベル) 」 から始まった。70年代には車に備え付けの電話「自動車電話(セルラー式自動車電話サ ービス) 」 、 80年代には肩掛け型可搬無線電話 「ショルダーフォン(車外兹用自動車電話) 」 が登場したが、社会全体が必要とするサービスでは決してなかった。 しかし、1985年日本電信電話公社が民営化し電信電話株式会社(NTT)が誕生し9 10 0年代になる頃には、アナログ電話の延長線上にあった可搬電話機は『携帯電話』へと進 化していくのであった。 そこで、私たちは日本での携帯電話産業を支え続けてきた「NTT ドコモ」を通して、携 帯電話の付加機能の発生における市場や顧客ニーズへの影響、スマートフォンの登場と影 響について論じていく。 15 3 第2章 ドコモの経営と他社との競争関係 第2章では、最初にドコモの経営戦略による携帯電話産業の発展や進化をドコモの経営 5 と関連させて調べていていく。それを踏まえ携帯電話の市場シェアは常にトップに立つド コモの経営と他社通信企業の経営や関係を調べていく。 【1 ドコモの経営】 10 ドコモと携帯電話 日本の携帯電話市場は 1990 年代に急拡大した。 携帯電話市場が急拡大した理由として、第1に技術革新が進み、端末が軽量尐子化し、使 いやすくなったことが挙げられる。世代別で見てみると、1980 年代の第1世代では、初期 15 に自動車電話、後に携帯電話の元となるショルダーフォンが売り出されたが、持ち運ぶの には不便だったためあまり普及しなかった。しかし 1990 年代になると、容量 200cc の小 型携帯電話「mova」が開発され、2000 年代の第3世代では、世界初 W-CDMA 方式によ る次世代携帯サービスが拡大した。 第2はネットワークがよくなったことである。それまで電話機能だけであった携帯電話が、 20 ドコモのⅰモードによりメールやインターネットが出来るようになり利用者が大幅に増大 した。 第3は、料金の大幅値下げとマーケティング力である。1980 年代の基本料が月に 2 万円、 契約時に 20 万円もした。1990 年代は、新規加入料として 1 万弱、基本料金が 6800 とな り、2000 年代には新規加入料は廃止され、基本料金が 4500 円となる。現在も基本料、通 25 話料ともいっそうの値下げが進んでいる。 ドコモの戦略 現在では携帯電話の契約台数は 1 億台を突破し、国民一人当たり一台になっている。その 30 ため、今後は携帯電話市場が伸びることは考えにくい。契約台数の限界により、新規顧客 の奪い合いや料金の引き下げ競争も収益に影響しており、2008 年 3 月期決済によると、 KDDI とソフトバンクが増収基調を維持したのに対して、ドコモのみが減収となった。そ れには、ドコモの市場熟成の戦略として以前の新規顧客重視のマーケティングから、既存 顧客重視のマーケティングへ収益を維持する戦略へと転換したことも関係している。つま 35 り新規顧客が減尐しつつある状況下で無理に成長を追うのではなく、既存顧客を堅持し、 収益を維持しようとする戦略である。 4 市場が成熟期に移行したいま、新規顧客はほとんど存在しなくなった。無理に成長を志向 すると、他社と既存顧客を奪い合う消耗戦となるため、ドコモの戦略転換は、消耗戦から の撤退となる。 5 ドコモは営業的には苦戦をしているものの、財務面での優位性は依然として競合他社を圧 倒している。また、ドコモは大企業であり、5000 万人以上の既存顧客を抱え、昨年度に獲 得した新規顧客は 600 万人に過ぎないため、既存顧客重視のマーケティング戦略の妥当性 は高いといえる。 年代 第1世代 第2世代 第3世代 ~ 1980 年代 1990 年代 2000 年代 2010 年~ 初期:自動車電話 機種・ サ ー ビ ス 後にショルダー 容量 200 ㏄の 世界初 LTE を用いた 小型携帯電話 W-CDMA 方式によ ADSL 並みの速度 「mova」 る次世代携帯サー の Xi サービス フォン ビス ⅰモード登場 料金 基本料金:2 万円 新規加入料:1 万弱 基本料金:4500 円 基本料金、通話料と もいっそうの値下 契約時に 20 万円 基本料金:6800 円 げが進む 10 【2 ドコモと他社との競争関係】 iモードサービス登場前後の契約者数 15 ドコモの契約者数が多くなった理由としてiモードサービスの登場が挙げられる。iモー ドは1999年にサービスが開始し、2000年には、契約者数の全体の59%を占めた。 このときの au の契約者数は全体の25%、そしてソフトバンクモバイルの前身のJフォン が16%を占めた。 20 番号ポータビリティ制度の導入 5 番号ポータビリティ制度とは、2006年に導入された制度で携帯の電話番号を変更する ことなく他社に変更することのできる制度である。これにより携帯電話会社間での契約変 更の障害が減って、携帯会社の乗り換えが促進した。導入後は au のみ移転件数で増えた。 5 これはソフトバンクモバイルの切り替え手続きの停止などがあったため au のみ移転件数 が増えたのだ。ドコモから契約者が流れることが多く、その理由にドコモの料金設定が高 いことが挙げられる。 その後はソフトバンクモバイルの携帯料金設定や iPhone 発売の影響 が大きく移転件数が増えた。ドコモは苦戦していて2011年5月の新規契約から解約を 引いた純増数がイーモバイルを下回る4位になってしまった。これはスマートフォンの調 10 達の遅れなどが影響している。 スマートフォン登場後の契約者数 2008年7月にソフトバンクモバイルが iPhone3G を発売した。これにより 7 月の携帯電 15 話契約数は、ソフトバンクモバイルが21万5400件、ドコモが9万4000件、au が 1万7000件純増した。これを見てもわかるようにソフトバンクモバイルはスマートフ ォン市場で一歩リードした形になる。このままソフトバンクモバイルの一人勝ちが予想さ れた。しかし2011年に au から iPhone シリーズの iPhone4S が発売されることが決定 した。そのため Android および Windows Phone、iPhone の各スマートフォンを扱う唯一の 20 国内キャリアとなった。これによりソフトバンクモバイルの一人勝ちが難しくなった。ま たアンドロイド携帯で勝負しているドコモは厳しい戦いが予想される。 各社の料金設定とシェア率 25 現在、携帯電話の料金設定は多種多様なものが出てきて一概にどのキャリアが 1 番安いと は言えない。 しかしスマートフォンに限ればソフトバンクモバイルの iPhone が安いだろう。 これは、パケット料金が安いだけではなく、iPhone 本体自体の価格が安いことが理由だ。 スマートフォンの基本料金の一つの例として、ソフトバンクが5705円なのに対し、ド コモと au は6755円で1050円も高いのだ。これに携帯本体自体の差があり、ソフト 30 バンクモバイルが安い。 年度別の契約台数 各キャリア別の契約台数は[表1]を見てわかるようにどの携帯会社も年々契約台数を伸 35 ばしている。しかし近年は契約台数の伸びは緩やかになっている。 ドコモが携帯市場において、大きな割合を占めていることがよくわかる。しかし2002 6 年を境に年々市場シェアを占める割合が減ってきている。そして2010年には、50% をきっている。 [表1]年度別の契約台数 5 年度別携帯会社の契約台数 年度 ドコモの全 ドコモ au ソフトバンク 体の契約台 数に占める 割合 1998年 22328000 11053000 5615000 57% 1999年 27636000 13176000 7663000 57% 2000年 34218000 14320000 9468000 59% 2001年 39635000 15849000 11617000 59% 2002年 42874000 17317000 13322000 58% 2003年 45366000 19647000 14774000 57% 2004年 47914000 22359000 15211000 56% 2005年 50366000 24695000 15117000 56% 2006年 52214000 27226000 15497000 55% 2007年 53151000 29555000 17614000 53% 2008年 54156000 30550000 19999000 51% 2009年 55436000 31393000 21667000 50% 2010年 57210000 32527000 24400000 49% 7 第3章 携帯電話の機能 第 2 章では、ドコモの第 2 世代に大きく貢献した携帯電話の付加機能について、また独 自のシステムとして大きな成功の要因となった i モードは携帯電話産業にどの様な影響を 与えたかを論じる 【携帯電話と付加機能】 付加機能 帯電話の付加機能は時が経つ度に進化を続けている。発売当初は電話機能のみであっ た携帯電話も、i モードの誕生によりインターネットとの接続が可能になった。この携帯 電話でのインターネット利用の実現は、メール機能を初め多くの可能性が新たに発生した とも言える。さらに付加機能全体の話をするならば、カメラ機能、ワンセグ機能、お財布 携帯機能など様々な付加機能がある。さらに最近では、地球上自分の居場所がわかる GPS 機能など新たな付加機能が続々と登場している。機能面でもカメラ機能はすでにデジカメ に肩を並べるほどの高画質の画像、動画を撮影することができる。携帯のメーカー別売上 では、デザイン以外にもこの付加機能の性能の高さが消費者の購買意欲を左右すると言も 言えるだろう。携帯電話本来の付加機能であった電話機能を忘れさせるくらいの付加機能 が出てきており、各社力を注いで次なる付加機能、より性能を上げる努力をしている。そ れらの努力が売上を伸ばす一番の近道であろう。 新たな付加機能の登場が導いた成功の1例として「i モード」が挙げられる。 「i モード」 の登場は携帯電話が普及し始め伸び悩む携帯電話産業革新的に発展させた一因でもある。 i モードの成功 1999年2月からサービスを開始した i モードにより、今では携帯電話でメールやインタ ーネットを楽しむことが日常的になった。そして、インターネットアクセスから始まった i モードは、ケータイを人々の生活にとってなくてはならないツールへと変化させ、簡単 でいつでもどこでも使うことができる端末として、様々なサービスを生み出しながら進化 を続けてきた。 i モードの成功の要因として、顧客、コンテンツプロパイダー、ドコモの3者によるビジ ネスモデルが挙げられる。 これは、i モードがドコモを入り口とするポータルサイトと共通のプラットフォームの提 供や課金といった裏方に徹し、コンテンツプロパイダーはサイトの運営を行い、顧客は便 利なサービスや好みのコンテンツを提供するサイトのプロパイダーと契約し、毎月の会費 をドコモの通話料と一緒に支払うというシステムで、ドコモの収入は会費を徴収する手数 8 料(会費の 9%)と、顧客のデータ通信料(パケット代)となる。 この仕組みを行ったことによって、魅力のあるサイトが増えるとドコモもプロパイダーも 収入が増加し、利用者も満足を得られるという「win-win の関係」が生まれた。 さらに、会費を安く抑え、退会手続きをとらない限り契約が継続するという仕組みも絶妙 だった。サイトの月会費を 300 円という低価格に設定することで、顧客の多くが不満を持 たずに会費を払い続けた。この月額会費のビジネスモデルは、海外ではほとんど見られな い日本の携帯ビジネスの大きな特徴だ。 携帯ビジネスといえど、主役はそれを使う「人」である。携帯電話の場合、いつでも人の そばにあることが重要視される。i モードビジネスは、ユーザーが“自らの意志で持って いる”モノを使っているという、 “自分の意志”に重点を置いて開発されたことが功を奏し た。 i モードが社会に与えた大きな影響は、携帯電話を日本のインターネット接続機器の“主 役”にしたことである。 i モードが登場した 1999 年当時は、インターネットの普及率はそれほど高くない時代であ り、インターネットの接続にはパソコン、回線、接続機器をそろえ、インターネットプロ バイダーとの契約をし、設定を行うなど、多くのステップが必要だった。 i モードはこうした時期に、携帯電話からインターネットへ直接アクセスすることを可能 にするサービスとして登場した。操作も簡単であり、コンテンツはカテゴリ別に並んでい て、閲覧したい情報が一目で分かるようになっていることから、使い勝手の良さがインタ ーネットの裾野を広げていくきっかけとなった。 2001~2005 年のデータを見てみると、パソコンからのインターネット利用者は 5000 万人 から 6600 万人という伸び率に対して、携帯電話からの利用者は 2500 万人から 6900 万人 9 と大幅に増加し、パソコンからの利用者数を上回っている。 また、携帯電話からの利用者は学生を中心とした若年層、女性、パソコンに関連しない職 業の人々など、パソコンやインターネットの世界とは比較的縁の薄い層が利用する傾向が 強い。インターネットに対して積極的ではない“ごく普通の人々”をあっさりとネットの 世界に取り込んだという点からも i モードが与えた影響が大きいということがいえる。よ く使う i モードサービスの割合は、 「検索サイト」の利用がユーザーの約 92%となってい て、そのなかでも Yahoo や Google などのサイトの利用が 27%と最も多く、次いで情報・ 店舗検索が 21%、商品・ショッピングが 12%、着うた・着メロが 11%、画像が 9%、ゲ ームが 7%、ブログが 6%、動画が 5%となっている。 また、ドコモの経営に大きく貢献した機能が「メール機能」である。i モードが誕生す る以前は、現在の SMS(ショートメールシステム)に相当するキャリア独自のシステムで、 送受信可能文字数は最大全角 50 字、半角 100 字であったが、i モードが誕生して以後、250 字のテキスト送受信が可能になり、その後回線交換で写真を送ることができる i ショット、 メロディファイルや最大 5000 字のテキスト送受信、そして動画の送受信までもが可能と なった。これにより携帯電話は、 “通話”だけではなく“メール”をするためのツールへと 変化していった。 i モードの近年の契約者数推移をみてみると市場にスマートフォンという新しいカテゴ リが入り込んできたこともあり、2007 年は 4,760 万人、2008 年は 4,800 万人、2009 年は 4,850 万人、2010 年は 4,900 万人、2011 年 3 月は 4,810 万人となっていて、伸び率は横 ばいの状態から減尐傾向となっている。しかし、ドコモが生み出した画期的なシステムで ある i モードは、携帯電話や日常におけるコミュニケーションのあり方を大きく変えるほ どの影響を与え携帯電話産業成長の大きな一因となった。 10 第4章 「スマートフォンの登場と普及」 第4章は、近年成長が著しい「スマートフォン」がもつ影響も考える。まず、スマート フォンと従来の携帯電話の違を定義し、日本でのスマートフォン市拡大と「iPhon」登場 の関係性、またスマートフォン市場での「iPhon」に対しの NTT ドコモの対応を述べる。 【日本でのスマートフォンの登場】 スマートフォンとは スマートフォンは携帯情報端末(PDA)に携帯通信機能が付いたものとされ、音声通信な どの通信機能だけでなく本格的なネットワーク通信や搭載された OS に対応したアプリケ ーションソフトをダウンロードすることでユーザーによるカスタマイズが可能な高機能携 帯電話(端末)である。 NTT ドコモのスマートフォンは 2008 年秋以降に発売されてきた。もともとはビジネス 向けであったものが、近年、その利用者はビジネス目的だけでなく一般や個人向けへと特 徴を変えてきた。そして最新の機種に至っては、より便利で高度な機能(薄型で従来のも のよりも高速のデータ通信方式など)が搭載されている。スマートフォンと従来の携帯電 話の違いについては、上にも述べたようにスマートフォンは通常の携帯電話での音声電話 や電子メールの通信だけでなく、PC のそれに近いインターネット接続機能、携帯より大 容量で多様な音楽や動画に対応しており、従来のキーパッドではなく、主体をタッチパネ ルとマルチタッチを可能にしたマルチタッチスクリーンで直観的操作といわれる独特の操 作を行えることがあげられる。また、PC の機能も備えつつ手軽に移動でき、GPS 機能が ついているので場所の特定なども出来る。そして、自分の欲しい情報に関するアプリをダ ウンロードしカスタマイズ出来る点などがあげられる。 日本でのスマートフォンの登場 携帯電話が日本で登場したのは 1985 年に NTT がレンタルを開始した「ショルダーフォ ン」だと言われている。登場から 26 年がたった今、携帯電話は小型化、周波数のデジタ ル化、付加機能の追加、インターネット・E メールとの接続などの進化を続け、広く一般 に普及することとなった。そして、進化を続ける携帯電話に次の可能性を見出したのは「ス マートフォン」という新たなカテゴリの開拓であった。 「iPhon 登場までのスマートフォン」 2004 年にボーダフォンから発売されたノキア「Vodafone702NK」は日本で発売された 11 初めてのスマートフォンであった。この機種の特徴としては、携帯電話機能にパソコンの 補助や代用としてパソコンとの連携ができるとされており、i モード等を使いインターネ ットに接続するという当時の発想とは別に、携帯電話自身をインターネットに直接接続す る、携帯電話によるパソコンの機能の取り込みと連携というスマートフォンの概念の基礎 を作り上げた機種であった。しかし国内のキャリアはより広い顧客層の獲得し自社シェア 拡大のため普通の携帯電話(フューチャー・フォン)の高性能化、料金プランの値下げに よる顧客ニーズの実現を目指していたため、一部の顧客しか興味を持たないスマートフォ ンにあまり興味を持っていなかった。 2006 年 NTT ドコモから法人向けに国内販売を開始した「BlackBerry」は米国でビジネ スマンを中心に全米トップシェアを誇るスマートフォンであったが個人販売は行わなかっ たことなど日本キャリアのスマートフォンへの消極的な態度が見てとれる。 「iPhon 登場」 2007 年、米国で apple 社から「iPhon」が発売された。当時流行の最先端であった音楽 媒体「iPod 」やカメラなどの付加機能を搭載し、さらには操作面では斬新的なマルチタ ッチスクリーンによる直感的操作を可能にしたスマートフォンであり、スマートフォン= ビジネスマンと言う概念を打ち壊すきっかけとなった。瞬く間に全米でのシェアを拡大し た iPhon が日本で発売されたのは翌年 2008 年であった。 2008 年 7 月 11 日に「iPhon3G」が日本でもソフトバンクから発売された。発売以前か ら、新聞やネットで話題に上がっていた新機種とあり発売日当日から売り切れが発生する などの反響があった。 iPhon の登場は当時、蚊帳の外にあったスマートフォンというカテゴリに新たな可能性 を作り上げることとなったのは事実だが、問題点もあった。スマートフォンとは携帯電話 機能付き小型 PC であり、携帯電話ではないので、日本で普及しているフューチャーフォ ンの共有できない機能が多かった点が挙げられる。例えば、フューチャーフォンで利用し ているメールサービスにスマートフォンからメールを送った場合には、スパムメール対策 に携帯電話専用ドメインのみ受信を許可している携帯電話にはスマートフォンのメールを 受信することができない、スマートフォンからは携帯電話向けウェブサイトの閲覧ができ ないなどが挙げられる。当時の携帯電話の主流はフューチャーフォンであったため、スマ ートフォンはまだ各キャリアによる特別な対策を必要とする機種であった。 「iPhon 登場からのスマートフォン」 iPhon 発売を受けて、NTT ドコモは「BlackBerry」を個人向けに発売開始、日本発の グーグル社の OS「android」搭載したスマートフォン「HT-01A」を発売するなどの動き をみせたが、KDDI は興味を示さなかった。 2009 年 apple 社の新型携帯電話「iPhon3GS」は機能面の向上はもちろん、当時問題 12 となっていたフューチャーフォンとの不具合を改善、そしてソフトバンクが iPhon 専用の 料金プランを強化したことにより、 若者を中心に iPhon が爆発的に普及し始める。 さらに、 ソフトバンクは他社から iPhon への乗り換えに対し特典を付けるなど、他キャリアからの ユーザー引き抜きの強化も実施。 キャリア別シェア率、顧客契約数に大きな影響を与えた。 当時、NTT ドコモと au は日本ではスマートフォンが普及することは難しいと考えてい た。理由としては、日本の携帯電話は海外に比べその付加機能を独自に進化させた「ガラ パゴスケータイ」が主流であり、iPhon では補えない付加機能を標準装備するガラパスケ ータイ主導の市場形態が大きく変化することはないと予想していたからであった。しかし、 イレギュラーであったスマートフォン「iPhon3G」のヒットによる売り上げやシェア率の 激変は、無視できないものとなっていた。 NTT ドコモは 2010 年の Xperia 発売を契機にスマートフォン市場参入を開始し毎シー ズン新機種ラインナップにスマートフォンが登場するようになる。2011 年夏の新機種ライ ンナップではスマートフォンの新機種台数がフューチャーフォンの新機種台数を大きく上 回り、フューチャーフォン主流の時代からスマートフォン主流の時代への変化も感じさせ た。KDDI がスマートフォンを発売するのは NTT より一年遅れ 2011 年の IS シリーズ発 売がスマートフォン市場参入をスタートしたが大きく出遅れた形となった。 日本メーカーから発売されるスマートフォンも iPhon 発売以降大きく変化することとな る。 ビジネスに必要 PC 機能と携帯電話機能を搭載した従来のスマートフォンと違い、 2010 年以降の日本メーカーのスマートフォンの特徴は、FeliCa やワンセグ、赤外線などのガラ パゴスケータイが持っていた機能を標準装備した機種中心となっている。 【スマートフォンの種類】 「OS による差別化」 スマートフォンの登場からその市場において圧倒的シェアを占めているとされる 「iPhone」について、そして「iPhone」以外のスマートフォンとの異なる点について述べ る。 「iPhone」は 2007 年米国で Apple 社により発売された多機能携帯電話であり、日本 への参入は 2008 年でソフトバンクモバイルが「iPhone3G」を発売したことで実現した。 携帯電話には無い魅力を備え付けているスマートフォン人気のきっかけとなった。また、 iPod 機能が搭載されているという点も魅力的である。こうした「iPhone」とスマートフ ォンの違いは単純には OS の差とされている。「iPhone」は Apple 社製 PC 用 OS の携帯 版で「Apple Store」から自由にアプリを入手できる。そのシステムは非公開であり独占 された提供となっている。日本での販売においても、今までソフトバンクモバイルによる 独占された提供であったが、 「iPhone4S」が今年 10 月より KDDI からも発売されること となった。ドコモからはまだ「iPhone」導入の話題は無いことについては、 「iPhone」を 13 導入し、販売するにあたって Apple 社から制約が要求されることも関係していると考えら れる。ドコモのスマートフォンの OS のほとんどは「Android」で、グーグル社が開発し 誰にでも無償で提供され、そのシステムが公開されているため専門の知識があれば自由に 自分アプリが製作できることができまた「Android Store」にそのアプリが公開されれば 全世界の Android ユーザーがダウンロードすることも可能である点が大きな特徴的である が一方では、公開されたシステム、非管理のアプリなどセキュリティの面で不安が残る OS でもある。の日本では主要 3 キャリア全てで提供されている。 NTT ドコモのスマートフォン このようにスマートフォンの登場によりこれまでの携帯市場に新たな画期的なものがも たらされた。そうした中で NTT ドコモのスマートフォンの特徴を述べ、またどのような 対応、進化をしてきたのかを述べる。まず、NTT ドコモのスマートフォンはネット検索大 手、グーグル社のオープンな携帯向け基本ソフト(OS) 「Android」を搭載した“グーグ ル携帯”であり、ネット検索や、動画共有、地図検索などグーグル向けサービスが使いや すいといった特徴がある。ドコモではこのスマートフォンでの顧客満足度を高めることを 目指すため、iモードサービスのスマートフォン展開に注力している。他にも高速携帯電 話サービス「LTE」の拡大や、通信容量確保のために通信様式を組み合わせたネットワー ク整備で他社との差をつけたり、携帯電話を活用した個人向け健康サービス(健康促進・ 疾病予防支援など)まで事業領域を拡大し、今後スマートフォンにも対象端末を増やす方 針があり、携帯電話という領域を超えた新たな価値の提供を目指している。さらに、ワイ ヤレス充電「Qi」に対応かつ防水のスマートフォンの発売、今年 10 月には LTE サービス 「Xi」に対応したスマートフォン機種の発表が行われ、冬発売される。最新のサービスで は、スマートフォン向け機能制限サービス「あんしんモード」の提供も開始された。この ようにスマートフォン向けのサービスや機能はこの先もより多くより高度に便利になって いくと考えられる。 【これからのスマートフォン】 これからのスマートフォン スマートフォンが登場したことによってそれまでになかった画期的なものが携帯市場に もたらされ、今ではスマートフォン利用者は年々増加傾向にある。2011 年上半期には携帯 電話新規販売台数の約半数がスマートフォンとなり、スマートフォンによる新たな時代が 築かれつつある。 14 今後スマートフォンの普及が進むことで、 通話用途のみで携帯電話を使っていた消費者は、 スマートフォンでインターネットや電子メールを利用することが増え、日本市場でも、モ バイルインターネットサービスからインターネットに利用がシフトしていくと考えられる。 しかし、多くの通信帯域を使用するスマートフォンの急速な普及は、新たな問題として電 波不足を発生させ、通信方式の見直しも検討されている、また海外ではスマートフォンの 料金プランから定額性をなくすなどの動きもあり日本のキャリアも新たな経営プラン見直 しへの大きな決断を迫られることとなっている。 15 第5章 まとめ 携帯電話産業はいつどこにいても電話で通話をすることができるという便利さの追求 だけでなく、カメラでの撮影や音楽配信、ワンセグなど他の電子機器の機能を携帯電話の 中に取り込むことで進化をつづけてきた。この進化は、顧客が携帯電話と言う商品にたい していつも新しい発見をできるきっかけとなり、顧客は携帯電話に飽きることなくさらに 新たなニーズを発信し続け、そのニーズをメーカーが技術をもって実現していくという連 鎖がこの携帯電話産業の成功の鍵とも言える。 近年はさらにスマートフォンと言う新カテゴリが急成長を遂げたことにより携帯電話産 業の競争も激しさを増している。企業はいかにして顧客が求める携帯電話を作り上げるか がこの新しい競争の勝敗を分けることとなるだろう。 16