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平成26年度 研究実践中間報告

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平成26年度 研究実践中間報告
子どもが学ぶ楽しさを味わうことができる授業をめざして
~「調べる力」「考える力」「表現する力」を育成する社会科(生活科)授業の工夫~
鹿児島市立名山小学校
1
研究主題の設定理由
(1)
社会の要請
「知識基盤社会化」や「グローバル化」が進む中で,平成20年に改訂された学習指導要領で
は,児童に「生きる力」をはぐくむことを目指している。「生きる力」とは,確かな学力(知
育),豊かな人間性(徳育),健やかな体(体育)のことであり,これらの3つの側面から調和
的で一体的な教育が期待されている。
また,OECD(経済協力開発機構)のPISA調査など各種の調査からは,思考力・判断力・表現
力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用する問題に課題があるといわれており,子
ども自らが複数の事物を比較したり,関連付けたりしてその関係性を捉え,さらに,これまで
に身に付けている自分の思いや考えを活用して,豊かに表現する力を身に付けることが求めら
れている。
(2)
児童の実態
本校の児童の全国学力学習状況調査や鹿児島学力定着度調査,NRT 等の学力調査等の結果か
ら,どの教科においても,鹿児島県の平均通過率よりやや高いと言える。
社会科については,鹿児島学力定着度調査,NRT のどちらの平均通過率に対して5ポイント
以上上回っており,良好の結果と言える。しかし,これらの調査等の分析を行うと,社会的に
事象に関わる知識・理解については,身に付けさせたい事実・用語・語句等は十分に身に付い
ているといえるが,社会的な事象から自分の考えをまとめたり,資料から読み取ったことを表
現したりすることが十分身に付いているとはいえない。
さらに,児童の実態に迫るために,実態アンケートをとることにした。その結果からみると,
社会科に対しては,好意をもって学習に臨んでいる児童が多く,社会的事象について資料を用
いて調べたり,思考したことを表現したりする活動も意欲的に取り組んでいるという自己分析
を多くの児童がしている。
こうしてみると,
「自分の考えをまとめたり,資料から読み取ったことを表現したりすること」
については,学力調査等の分析結果と児童の自己分析に歪が見られる。児童は資料から読み取
ったことをまとめたり,表現したりすることができていると思っていても,実際は社会的事象
に対する調べ学習を行う際に,見方・考え方が十分でなかったり,重要な用語や語句を適切に
使うことができずに調べたことをまとめたりしていたことが考えられる。したがって,社会的
な事象に対する見方や考え方をより広げ深めるために,調べ活動や表現活動の工夫をしていく
必要があると考える。
本校の校区には多くの公共施設や文化施設,店舗や資料館などが点在している。児童は普段
の生活において,通学時にこれらの前を通ったり,何気なく利用したりしているが,本校校区
内がいかに鹿児島市民の日常の生活においての拠点となっているということには気付いていな
い。このような地域のよさについても社会科の学習を通して気付かせていきたい。
2
研究主題のとらえ方
子どもたちが学ぶ意味や楽しさを実感できる授業を実践していくには,「基礎的・基本的な知識
・技能の確実な習得」,「習得した知識・技能の活用(思考力,判断力,表現力)」という2つのこ
とを育成していく必要があると考える。
すなわち児童一人一人が自らの問題意識をもち,学習問題に対して解決の見通しを立て,それに
従って必要な情報を収集し,それらを活用・整理して問題を解決していく学習活動を構成していく
ことが大切であると考える。
-1-
3
めざす子ども像について
・問題意識をもち,社会的事象に対して主体的に関わりながら課題解決に臨む子ども。
・自分なりに調べたり,資料から読み取ったりしたことを整理することができる子ども。
・自分の考えを様々な情報と比較したり,関連付けたりしながら,自分の考えを見つめ直し,必
要な語句や情報を選択し,適切なに駆使しながら表現できる子ども。
・獲得した知識・理解,習得した技能をもとに,実生活に生かすことができる子ども。
学年部におけるめざす子ども像
低学年(生活科):①進んで活動を楽しみ,進んで次の活動を見つけて取り組む子ども。
②友だちのよさや自分のよさに気づくことができる子ども。
③気づいたことや分かったことを,分かりやすく相手に伝えることができる
子ども。
中学年(社会科):①社会的事象に興味をもつ子ども。
②意欲的に調べ,資料を正確に読み取ることができる子ども。
③説明したり,書き表したりする際,必要となる用語や語句を適切に用いて
表現できる子ども
高学年(社会科):①社会的事象に対して,必要となる資料を適切に集め,目的に応じて集めた
りすることができる子ども。
②資料から読み取れることを比較したり,関連付けたりしながら,社会的な
事象に対する見方・考え方を深めていくことができる子ども。
③調べて考えたことや分かったことを整理しながら,その考えを再構成させ
て論述できる子ども。
4
研究仮説及び研究内容
研究主題に迫るために以下の仮説を立て,研究を進めていくことにする。
仮説1
単元の導入において問題意識をもたせ,問題解決的な学習を積み重ねていくことで,
子どもたちは社会的な事象に対する見方や考え方を広げ深めていくのではないか。
研究内容1
子どもが問題意識をもち,継続しながら見方・考え方を育成するための手立て
(1)問題意識をもたせるための資料分析の工夫(社会科・生活科)
・単元構造図の作成について
・導入での資料の出合わせ方
・地域素材の教材化
(2)問題意識を継続させるための手立て(社会科)
・各学習過程における工夫
仮説2
資料の読みとり方のスキルを身に付けさせ,さらに資料の意図をつかませるような
手立てを授業に取り入れていくことによって,子どもたちは読み取ったことや説明し
たいことなどを適切に表現できるようになるのではないか。
研究内容2
見方・考え方を深め,表現力を高めるための手立て
(1)見方・考え方を深める手立て(社会科)
・資料の基本的な読み取り方を身に付けさせるための手立て
-2-
・資料の意図を読み取らせる手立て
・調べる視点の明確化
(2)表現力を高める手立て(社会科・生活科)
・キーワード資料の基本的な読み取り方を身に付けさせるための手立て
・表現の場の設定
5
研究の構想図
-3-
6
研究の実際
研究内容1 子どもが問題意識をもち,継続しながら見方・考え方を育成するための手立て
1 社会科
(1) 問題意識をもたせるための資料分析
① 単元構造図について
授業をデザインしていくときに,最も重要とな
るのが導入である。その導入段階において,わた
したちが,子どもたちに対して,社会的な事象を
どのようにして出合わせるかが,次時以降への子
どもの見方・考え方を広げ,深めることへとつな
がる。そのためには,「なぜ~なのか」「どうして
~なっているのだろう」という問題意識をもたせ
ることが大切である。
普段からこのような問いかけができるようにす
るためには,教師が提示する資料により多くの学
びの視点が含まれていることが必須である。その
ような資料を準備するためには,単元全体を分析
するためのツールが必要と考え,単元構造図を作
成した。この単元構造図を活用していくことで,
全体を見通すことができるようになり,これを基
にして子どもに問題意識をもたせる資料の分析が
より効果的に進むのではないかと考えた。
【図1:単元構造図例】
単元構造図の活用については,単元を通して以下のような活用できるよさがある。
単元構造図の活用のよさ
① 単元の導入で問題意識をもたせるための資料作成,資料選択に活用できる。
② 一単位時間において「調べさせたい事実」,
「考えさせたい内容」をふまえた授業づくり,
すなわち子どもにどんなことを学ばせるかということを明確にした授業作りに活用できる。
③ 知識として獲得すべき「用語・語句」を確認することができる。
④ 社会的事象を地域素材と関連させて指導計画を作成することができる。
②
問題意識をもたせる資料について(単元の導入段階)
問題意識をもたせるためには「どんな資料がよいのか」「どのように資料を提示すればよい
のか」という視点をもって,「活用する資料の在り方」と「資料の扱い方」について考えた。
(問題意識をもたせる資料の在り方)
・小単元のねらいにそってあり,切実感をもたせるような資料が望ましい。
・問題意識をもたせるためには,特に「考えさせたい内容」を中心とした資料が望ましい。
・その資料が子どもたちの「なぜ?」
「どうして?」を引き出すものであることが望ましい。
・その資料が,展開段階で活用されるようなものが望ましい。
・資料が何を表しているのか明確であるものが望ましい。
・地域素材を取り込んでいく。(活用できるもの)
【6年「世界とつながりの深い国々」
の小単元の導入時に使用した写真】
-4-
問題意識をもたせる資料の扱い方
・資料を見せ,考えさせたり,調べさせたりする際は,視点を明確にする。
・資料から読み取ってほしい情報を引き出すための発問を行うようにする。
・読み取った情報を,解釈,整理させることで,「なぜ?」につなげる。
・資料を基にして,学習問題と関連付けるようにする(つなぐ)。
・地域素材については,校区地図(探検マップ)を使って,所在の確認をする。
【写真:6年「世界とつながりの深い国々」】
③
(2)
地域素材の教材化
社会科を学ぶ上で,社会的な事象に対する切実さを感じさせながら,地域のよさも味わわ
せることは大切である。身近な素材を社会科,生活科の学習に取り入れていくことにより,
身近なレベルで問題意識をもつことが可能となる。
特に鹿児島県においては,南北600kmに渡り,様々な風土が残っていたり,多くの歴史的
な施設があったり,更には鹿児島の特産物が様々な場
所で作られていたりと,社会科の学習においては有効
に活用できる素材が大変多い。更に本校区の利便とし
て,校区内に多くの公共施設,店舗,歴史的な建造物
等が点在しており,社会科・生活科の学習を進めるに
あたっては地域素材として有効に活用できる。
そこで,フィールドワーク研修を行い,地域素材の
写真や情報を集め, データ化した「名山探検マップ」
を作成し,授業で活用できるようにした。
【図2:名山探検マップ】
問題意識を継続させるための手立て
小単元の導入段階でつかませた問題意識を,しっかりと小単元を通して意識を継続させなが
ら,問題解決を行っていくことが,子どもたちの社会的な見方・考え方を広げ,深めていくこ
とにつながる。そこで,ここでは,単元の学習過程の中に,子どもたちが問題意識を意識して
学習を取り組める手立てを講じていく。
① 小単元の学習問題の明示(板書の工夫)
単元の導入時に立てた小単元の学習問題にいつでも振り返ることができるように,毎時間
常に黒板に掲示をするようにする。これは,一単位時間の学習問題と小単元の学習問題のつ
ながりを意識させることにつながるとともに,本時で学んだことを学習問題と照合させるこ
とで,社会的な見方・考え方を深めつつ,小単元の中心概念に迫ることができる。
-5-
小単元の学習問題
命を守るために,○
一単位時間の学習問題
○や○○どんな働き
振
をしているのだろう
り
返
振り返る
まとめ
【図3:小単元の学習問題の明示板書イメージ】
②
【写真:学習問題を明示した板書】
まとめをつなぐ手立て(掲示物・ワークシートの工夫)
子どもは,一単位時間の学習を通して学んだことを学
習帳にまとめを書く。しかし,そのまとめが小単元の学
習問題とのつながりが見えにくいという課題があった。
そこで,一単位 時間のまとめを並記し,学んだこと,獲
得した知識をつなぐことができるように1枚の紙に整理す
ることにした。中学年では,教師と子どもと一緒に整理
し,掲示するようにした。高学年では,子どもが自分で
整理できるようワークシートにまとめるようにした。高
学年では,授業で使用した資料も掲示することにした。
このように整理することで,単元に対する問題意識を
無理なく継続することができる。さらに,子どもは単元
を通して学習したことが一目で分かるというよさを実感
し,自分たちで学んだことを関連付けながら中心概念に
迫ることができるよさも含んでいる。
【写真:まとめをつなぐ掲示物】
2
生活科
(1) 単元の指導計画について
社会科においては,「なぜ~なのか」「どうして~なっているのだろう」という問題意識をも
たせることが大切であり,このような問いかけを普段からできるようにするために,教師が提
示する資料に多くの学びが含まれていることが必須である。
生活科においては,子どもの思いにまかせて活動や体験をさせて終わるのではなく,探求的
な学習の前段階を学ぶ意識が必要になる。探求的な学習とは,問題の発見,予想,分析,概念
化といった過程を経ることである。そのためには,生活科においても「~したい」という子ど
もの思いや願いを基にしながら,社会科と同様に「なぜ?」「どうして?」の問いが求められ
るべきである。社会科や総合的な学習の時間が問題解決的な学習であるならば,生活科は子ど
もの思いや願いを基にした活動や体験を通して,子どもの気付きで構成される問題発見的な学
習の教科であるという認識が必要になってくる。
そこで,問題発見的な学習を進めるにあたって,指導過程において以下の点に留意した計画
を作成し活用することによって,問題意識をもたせるために資料分析に役立つのではないかと
考えた。
過程
指導上必要な要素
対象に関する既知を未知へとゆさぶる問い
導
入
既知・・・知っていること 「みえていること」
未知・・・まだ知らないこと「みえないもの」
-6-
キーワード
具体的な活動
や体験との出
会い
「板書の工夫」
ゆさぶり発問
比較・分類に
子どもの思考を活性化し,気付きが関連付けられることによっ よ る 探 求 的 な
て認識へと促される
学習の前段階
展
開
終
末
(2)
気付きを交流する話し合いの場の設定
気付きの質を
比較・分類・関連付けによる気付きの質の高まり
高める
知的側面とコミュニケーションによる感性・情緒面
「共有」
(互いの存在を認め尊重する,感じたことを言葉で表現) 「振り返り」
「繰り返し対
象にかかわる」
対象との(双方向の)かかわりについてのまとめ
「みえないもの」がみえてきたことについてのまとめ
自己の成長への気付き
今後の対象への働きかけ
「~したい」「次からは,~していきたい」「なぜ?」
新たな思いや願い,新たな問い
自己効力感
有能感
自己の可能性
への気付き
問題意識をもたせる資料(単元の導入段階)
生活科においては,前述の問題発見的な学習として進める際に,導入段階において,対象に
関する既知を未知へとゆさぶることで,問題への追究意欲を高めることができるのではないか
と考えた。生活科において,問題意識を継続してもち続け,また,追究意欲をもたせるために
取り上げるべき資料(教材)を以下のように考えた。
○
○
子どもの気付きを誘発するもの
身近でよく知っているもの,普段からかかわりのあるもの
(資料・教材に対する興味・関心をもって授業に臨むことができる)
○ 資料・教材の背景に「みえないもの」があり,それを「気付きの質を高める」ことに
よって,みせていくことができるもの
○ 繰り返しかかわることができる対象であること
(気付きの質を高めるための一要件)
【問題意識をもたせる資料例:2年「明日へジャンプ」】
【問題意識をもたせる資料例:2年「まちたんけん」】
-7-
研究内容2 見方・考え方を深め,表現力を高める手立て
1 社会科
(1) 資料の基本的な読み取り方を身に付けさせるための手立て
小学校の社会科学習では,社会的事象を具体的にとらえ,人々の生活との関連からその意味
を考えさせる学習が中心である。社会的事象を直接的に観察・体験させることが大切である。
しかし,全ての事象を直接的に体験・観察させることに限界があるので,間接的に体験したり
観察したりできるように教育的配慮したものが社会科における「資料」である。
資料を提示することによって,社会的事象に対する子どもたちの興味・関心が高まり,
学習への積極的な動機付けを行うことができる。子どもたちの思考力や判断力を高め,発
展させていくための具体的な手がかりになる。よって,資料が具体的で分かりやすく興味
深いものであればあるほど,それに刺激されて,子どもたちの調べ学習や話合いも深いも
のになり,活気に満ちた意欲的な学習になっていく。
①
資料の読み取り方の整理
基本的な資料である「グラフ」「写真・絵」「図」「地図帳」「分布図」「読み物資料」「教科
書」「資料集」の読み取り方を,共通理解していくことにした。
ア グ ラフ で 確認 する こ と
① 表題
題名 は 何で す か。何の こ とに つ いて 書い て あり ます か。
② 出典
どこ が 作っ た 資料 です か 。
③ 年度
年度 は いつ で すか 。い つ 調べ たデ ー タで す か。
④ 縦軸
縦軸 は 何を 表 して いま す か。 単位 は ?目 盛 りは ?
⑤ 横軸
横軸 は 何を 表 して いま す か。 単位 は ?目 盛 りは ?
イ
グラフの種類
【折 れ線 グ ラフ (主 に 変化 を 表す)】
グラ フ の読 み取 り 方
1 変化 な し
2 だん だ ん上 がっ て いる
3 急激 に 上が って い る
4 上が っ た後 ,下 が って い る
5 ○○ か ら急 に上 が って い る
6 だん だ ん下 がっ て いる
7 急激 に 下が って い る
8 下が っ た後 ,上 が って い る
9 ○○ か ら急 に下 が って い る
ウ 写真・絵
【 帯グラフ・円グラフ
(主に割合を表す)】
多いものは何ですか。
少ないものは何ですか。
多い順は。
エ 図
矢印があるときは,その向きがどの
ような意味をしているか考え,それぞ
れの関係をつかむ。
どんな人がいますか。
何をしていますか。
何がありますか。
何が起こっていますか。
周りの様子は。
数は? 場所は? 数は?
景色は? 季節は? 建物は?
オ
【棒グラフ(主に量を比べる)】
一番多いものは何ですか。
一番少ないものは何ですか。
地図帳
・地名を探すとき,ページをめくりながら探すと時間がかかる。そこで,「さくいん」
を使と早く探すことができる。
・地図記号は,目立つものを探す。その地域の主な土地の使われ方や産業が見えてく
る。
-8-
・縮尺を使って距離を調べたり,まわりの都道府県や市町村も調べたりする。
・地名や交通の様子から産業の特色を考える。
・統計のページより,地域の産業の特徴も分かりやすい。
カ
分布図
記号は何を意味していますか」
多いところはどんなところ」
なぜ,その場所に多いのかな」
理由も考えてみよう」
キ
読み物資料
「タイトルは何ですか」
「ものの名前や人物の名前,数字に注目しよう」
「分からない言葉には印をつけて質問したり,後で調べたりしよう。」
「大切なところは注意して読んで,思ったり気付いたりしたことはメモしよう」
「年表から変化のきっかけになることを探そう」
ク 教科書・資料集
「自分が調べようと考えている情報に関係あることを調べよう」
「一つの資料だけでなく,いくつかの資料を比べてその違いや関係について考えよう」
「資料から分かったことと自分の考えを区別して発表しよう」
「調べたりまとめたりするときに使った資料は,いつの資料かどこで集めたものかなどをはっ
きりとさせよう」
②
資料の効果的な活用(資料の意図を読み取らせる手立て)
授業において,資料が子どもの思考の流れに沿い,学びに役立つ資料となるために,その
質と量の検討が必要である。まずは,質的に,習得させたい知識や見方・考え方に子どもた
ちがたどりつけるような資料であるかどうかの吟味が必要である。授業の目標や子どもの実
態に照らして,資料の質を確保したい。また,量的には,一単位時間の中で活用する資料が
あまりにも多すぎると,資料の読み取りだけに終始して,思考する場面の確保が難しくなる。
学級の子どもの実態によって調整したい。以下,資料活用について例を示す。
授業の導入段階
問題発見の資料,ゆさぶりの資料,驚きの資料が効果的である。主に,子どもの興味・関
心を喚起し,問題を見付け出すために活用する。いかに,子どもに「あれ」「なぜだろう」
「おかしいなあ」「今までと違う」「すごい」「なるほど」「調べてみたい」などと思わせるこ
とがポイントになる。
【導入段階 資料提示例】
○ 工場の仕事(3年)実物資料→ボンタンアメ
ボンタンアメの箱に書いてある情報を読み取り,原料を混ぜて作ったものと実際の
製品を食べ比べてみる。「あれ,作ったものとは味が違う。工場で作った製品には,
何か秘密があるのでは?」という問題意識を高め,「ボンタンアメを作っている工場
に行って,その作り方や原材料の秘密について調べよう」という活動につなげていく。
○ 水産業(5年)グラフ資料
「寿司ネタクイズ」
「日本と世界の漁獲量グラフ」
「漁法別漁獲量グラフ」を提示し,
「日本は世界の中でも,魚の消費量が多い国なんだ。でも,沖合漁業が減少し,輸入
の割合が増えているんだな」という問題意識を高め,日本の漁業の現状や課題につい
て調べる学習につなげていく。
○ 江戸時代の文化(6年)写真等画像資料
江戸時代以前に作られた古地図と伊能忠敬が作った日本地図(伊能図)と比較し,
-9-
「なんて詳しい地図なんだ。どのようにして作ったんだろう」という,問題意識を高
め,江戸時代の文化の特徴やよさについて考える学習問題につなげていく。
授業の展開段階
調べるための根拠となる正確なデータを含む統計資料等を提示して,子どもの考えを補っ
たり,視点を転換させたりするような資料が効果的である。
【展開段階 資料提示例】
○ 学校のまわり(3年)
校区探検で調べたことや航空写真などの情報に基づき,「住宅地は平地に多い」
という考えをもったところで,他校区の地図や航空写真を提示し,山の斜面にも
住宅地が多いことなどの地形的な要因にも気付かせ,考えを補っていく。
授業の終末段階
学習を通して形成されてきた自分なりの社会的な見方・考え方をより一層普遍的な知識へ
と進化・発展させていくための,新たなきっかけを作り出すことができるような資料や,子
どもたちが調べたことをまとめるのに役立つ資料が効果的である。
【終末段階 資料提示例】
○ ごみの処理(4年)
鹿児島市のごみの埋立最終処分場の写真(10年前と現在)を提示し,「あれ,
ごみが増えてきている。このままでは,ごみの埋め立てができなくなる。どうしよ
う」と,問題意識をかき立て,ごみ処理について,自分たちにできる取組みを考え
る学習につなげていく。
(2)
言語活動の充実
社会的な見方・考え方を身に付けさせるためには,思考力・判断力・表現力の育成が重要で
ある。これらの能力の礎は「言語」である。これらの力を育成していくためには,言語活動の
とらえ方を共通理解をしておく必要があると考え,平成20年1月の中央教育審議会答申を踏ま
え,社会科における言語活動を「読み取り」「解釈」「説明」「論述」の四つに整理した。
言 語活 動
活 動の とら え 方と 工夫
社 会 的 事象 に 関 す る 事実 を 調 査 ・ 見学 や 地 図 , 統 計な ど の 各 種 の資 料 等 を 基
に 読み 取る 活 動の こ と
【 活動 例】・ 資 料か ら 必要 な情 報 を読 み取 る 。
読み取り
・ 資 料に 表 され てい る 事柄 の全 体 的な 傾 向
資料活用 ・疑問を感じたり,課題を発見できたりする資料を提示する。
・資料の見方(資料の輪郭,内容,内容分析)を学習させる。
表 現
・読み取りの視点を示したワークシートを工夫し,表現させる。
発 問
・「どのようなことが読み取れますか?」
社会的事象のもつ特色や意味,意義について各種の資料等を基に考察する活
動 のこ と
【 活 動例 】・資料から読み取ったデータを分析する。
・資料を基に様々な社会的事象のもつ意
味や意義を考察する。
解 釈
資料 活用
表 現
発
問
・自 分 の考 え の根 拠と な る事 実を 見 付け さ せる 。
・社会的事象のもつ意味や意義を記述させるワークシートを工夫
し , 表現 さ せる 。
・「 ど の よう なこ と が考 えら れ ます か。」
- 10 -
社会 的事 象 の特 色 や事 象間 の 関連 を各 種 の資 料 等を 基に 考 察し ,表 現
す る活 動の こ と
【 活動 例】・ 社 会的 事 象の 特色 を 他の 事象 と 比較 し たり
諸 資料 等 を基 にし て 考察 し, 表 現す る 。
・ 社 会的 事 象の 関連 に つい て, 因 果関 係 や目
的 と手 段 の関 係な ど から 考察 し ,説 明 する 。
説 明
・ 課 題 解 決 の た め の 根 拠と な る 資 料 を子 ど も に 収 集 ・ 選択 さ せ
資料 活用 る。
・社 会 的事 象 の特 色や 関 連な どに つ いて 思 考を 深め さ せた
り , 視点 を 変え させ た りで きる よ うな 資 料を 提示 す る。
・ 社 会 的 事 象 の 特 色 を 他の 事 象 と 比 較し 考 察 し た こ と を表 現 さ せ
表 現
る。
・ 社 会 的 事 象 の 関 連 に つい て , 因 果 関係 や 目 的 と 手 段 の関 係 な ど か
ら 考察 し たこ と を表 現さ せ る。
・デ ー タか ら グラ フを 作 成さ せ, 関 係を 確 認さ せる 。
発 問
・「 な ぜ ,こ のよ う にな って い ると 思 いま すか ? 」
社会的事象について自分なりの考えを各種の資料等を根拠に表現する活動の
こと
【 活動 例】・考えたことを自分の言葉でまとめる。
・自分が考えたことを伝え合うことによ
り,互いの考えを深めていく。
論
述
資料 活用
2
表
現
発
問
・ 社 会 的 事 象 に 関 す る 自分 の 考 え を 表現 す る た め の 根 拠に な る よ
う な 資 料 を 収 集 ・ 選 択 させ る 。 ま た ,活 用 し た 資 料 は 適切 で あ っ
た か , 活 用 の 仕 方 は 効 果的 で あ っ た かな ど 次 へ の 生 か し方 を 考 え
させ る 。
・ 社 会 的 事 象 に 関 す る 自分 の 考 え に つい て 諸 資 料 等 を 根拠 に 表 現
させ る 。
・
「こ の こと につ い てど のよ う に考 え ます か。」
生活科
(1) 見方・考え方を深める手立て(ワークの工夫)
生活科の学習において究極の目標は「自立への基礎を養う」ことであるが,その学び方とし
て,「気付きの質を高める」事が求められる。
気付きの質を高めるために以下の指導を充実させることが重要であると考える。
① 無自覚なものを自覚化させ,個別の気付きを関連付けられたものにする指導の充実
→「見つける」「比べる」「たとえる」などの多様な学習活動の工夫
② 気付きを比較したり,分類したり,関連付けたりして考え,より質の高い気付きを
生み出す指導の充実
→ 子どもが自らの気付きを振り返ったり,お互いに気付きを交流したりするような
活動の工夫
③ 比べ,似ているところや違うところを見つけ,次々に調べたいことを明らかにして
次の体験を行う指導過程の充実
→ 一人ひとりの気付きを全員で共有し,集団としての学習を高めるとともに個人の
さらなる探求心をはぐくむ工夫
④ 上記①②③の活動を繰り返すことや試行錯誤の中で気付きの質が高まる。
そこで,生活科の学習における見方・考え方を深める手立てとして,「気付きの質を高める」
- 11 -
ためのワークシートの工夫を充実させることが大切なのではないかと考えた。
子どもたちは,学習して得た情報や思考を様々な方法で表現する。表現の仕方を工夫するこ
とによって,より気付きの質を高めることができるのではないかと考えた。
以下に,一単位時間におけるワークシートの活用の例を挙げる。
自分なりの表現
で記入するもの
※
交流後に記入する
もの
交流・再考
新たな活動への思いや願い
【ワーク2】
気付きの概念化
※
動 作化 ・劇化 ・絵で
も構わない
気付きの自覚化
【ワーク1】
気付 きの高 まり
ふせん等を活用して,全体での
共有,比較・分類
これらのワークシートへの記入の際には,子どもたちがどのような思いや願いをもって記入
していくかによって,その自覚化の図られ方にも差が生じてくるものと考えられる。
「忘れたくないから記録しておく」
「友達と比べたいから記録しておく」
「友達や身近な人に知らせたいから書いて残しておく」
など,子どもたちに問いかけてから記入させることによって,
子どもたちの表現も充実するものと考えられる。また,一単位
時間の気付きが残されたワークシートも,単元を通して活動や
思考が継続したものであることに子どもたち自身が気付いてい
くことによって,さらにその気付きが価値付けされ,自分自身
の気付きの質や量の変化に気付き,自己効力感や有能感を育む
ことにつながり,探求的な学習の素地作りに役立つものと考え
る。そのためにも,まとめをつなぐ手立て(掲示物の工夫)に
あわせて,個人の気付きの蓄積も必要になるものと考える。
個人の活動や思考をポートフォリオ的視点でまとめ,自分自身
で振り返ることができるようなワークシートの蓄積の工夫が必
要であると考える。
(2)
生活科における言語活動の充実のとらえ方
平成20年中教審答申に「言語活動の充実」の6分類が示されている。その6分類とは,
① 体験から感じ取ったことを表現する。
② 事実を正確に理解し伝達する。
③ 概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする。
④ 情報を分析・評価し,論述する。
⑤ 課題について,構想を立て実践し,評価・改善する。
⑥ 互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる。
上記6分類の中でも,生活科においては①と⑥の実現に貢献するものであると考える。その
ことを踏まえ,生活科の各過程において考えられる言語活動とは主に以下のようなものが考え
られる。
- 12 -
過程
つ
か
む
活
動
す
る
言
語
活
動
例
○これまでの経験を書く。発表する。
○感想を書く。発表する。
○関連する絵本や資料などの読み聞かせを聞く。
【観察活動等】
○観察したことをカードに書く。(絵や言葉で)
・見付ける。
・比べる。
・たとえる。
○観察して思ったことや感想をカードに書く。発表する。
○観察して気付いたことを発表し合い,相互交流する。
→気付きの共有化,気付きの質を高める。
○関連する図鑑や本などを興味をもって読む。
○読んだことを簡単にまとめる。
○調べて分かったことを発表する。伝え合う。
【訪問活動等】
○施設訪問の際などに,適切な挨拶をする。
○訪問の際に,適切な言葉遣いで質問をしたり話したりする。
○訪問の際に,質問したいことをメモする。
○訪問の際に,質問して聞いたことを簡単なメモにとる。
○訪問して,思ったことた感想などをカードに書く。発表する。
○訪問して分かったこと,見たことなどを身振り・手振りの動作化をして教え合う。
○訪問して,気付いたことを発表し合い,相互交流する。
○訪問の連絡,依頼を適切にできる。
○どんな活動ができるか,どこで活動するかなど活動の内容について
話し合う。
【交流活動等】
○下級生(幼稚園児)に分かるように,パンッフレットを作る。
○交流活動の案内状を作る。
○活動の内容を分かりやすく伝える,教える。
振り
返る
・
生かす
○訪問,交流活動等のお礼の手紙を書く。
○観察,訪問などの活動を通して考えたことなどを劇にして表現する。
○下級生に分かるように,ガイドブックを作る。
○飼育・観察したことをもとに,図鑑を作る。
これらを考慮して,生活科の学習指導にあたって,まず「気付き」を生むような「具体的な
活動や体験」を構成することが重要であり,そこで生まれた「気付き」を言語などで表現する
ようにすることでその自覚化を図り,さらにはそれを話し合いなど他者と情報を共有化するこ
とで他者の視点を取り入れながら確かめていくようにすることで気付きを高めていくようにし
なくてはならない。
- 13 -
7
実践例
(1) 社会科研究授業(3年,6年)
【3年生】
社会科の授業を進める中で,子どもが学ぶ楽しさを味わうことができる社会科の授業づくり
を実践するために,以下の視点をで検証を行った。
①
②
③
授業で扱った資料が適切であったか。(研究内容2)
資料を読み取らせるための教師の発問,助言が適切であったか。(研究内容2)
読み取ったことを表現できる場は効果的であったか。(研究内容2)
ア
イ
単元名
第3学年「店ではたらく人」
単元の目標
○ 地域の人々の販売の仕事の様子に関心をもち,それらを意欲的に調べ,地域の販売の
仕事と自分たちとの生活とのかかわりを考えようとする。
【社会的な事象への関心・意欲・態度】
○ スーパーマーケットで働いている人の接客や店内,広告などにおける様々な工夫から,
安心・安全・買い物しやすさを届けるための店の人の願いや努力について考えたことを
言語などで適切に表現することができる。
【社会的な思考・判断・表現】
○ スーパーマーケットの店内を観察したり,働く人やお客さんにインタビューしたりし
て,スーパーマーケットにお客さんが集まる秘密を集め,読み取ったりまとめたりする
ことができる。
【観察・資料活用の技能】
○ スーパーマーケットで働く人々の買い物しやすさや人とのふれあい,安心・安全をお
客さんに届けるための工夫や努力を理解する。また,商品は,国内だけでなく,外国か
らも運ばれてくることを理解する。
【社会的事象についての知識・理解】
ウ 指導計画(総時数8時間)
過程
主な学習活動
教師の具体的な働きかけ
資料・キーワード
資 店の写真
つ 1 日頃,どんな店で買い物をす ・実態調査を兼ねて,よく行 ○
キ スーパーマーケット
か
るかを振り返り,どんな店があ
く店を発表させ,人数をグ ○
む
るかを話し合う。
ラフにして表す。
2
見
通
す
・
立
て
る
資 店の写真
調べてみたいことや疑問に思 ・学習問題,学習計画を立て, ○
資 買い物調べ
ったことをもとに学習問題をつ
家庭での買い物調べ調査を ○
くり,学習計画を立てる。
行わせる。
ワークシート
ニシムタで働く人は,どの
ような仕事をどのように工夫
しているのだろう。
3
資 質問カード
家の人の店の利用について質 ・買い物調べ調査を活用しな ○
問することを整理し,質問カー
がら,働く人に聞いてみた
ドをまとめる。
いことをまとめさせる。
資 見学メモ
4 ニシムタの見学に行く計画を ・見学をする際の視点を明確 ○
立て,見学メモをつくる。
にし,見学の効率化を図る
ようにする。
キ ニシムタ
5
見学計画を基にニシムタを ・見学のマナーを守るように ○
キ インタビュー
6 見学し,売り場の工夫を調べ
指導する。
○
キ 商品
7 る。また,ニシムタで働く人 ・上手に取材ができないグル ○
キ レジ
にインタビューをし,働く人
ープに同行し,助言を行う。 ○
の工夫について調べる。
資 写真資料
8
見学を通して,よく売れる ・見学を振り返らせ,写真や ○
- 14 -
9
るためにどんな工夫をしてい
るのかを調べる。(本時)
10
ニシムタで働く人がどんな仕
事をしているのかを調べる。
11
たくさんのお客さんが来る秘
密を探る。
12
品物はどこから運ばれてくる
のかを調べる。
13
スーパーマーケット以外の店
の特色について知り,わたした
ちの生活とのかかわりについて
考える。
14
前時で調べたことを新聞づく
りを通してまとめる。
調
べ
る
ま
と
め
る
・
広
げ
る
エ
資 ビデオ
ビデオ,個人取材メモを活 ○
キ 広告 ○
キ コーナー
用しながら,スーパーマー ○
キ 値段表示 ○
キ リサイクルコーナー
ケットの工夫について考え ○
キ
ることができるようにする。○ タイムサービス
資 写真資料
・お店のバックヤードで仕事 ○
資 ビデオ
をしている人たちの仕事に ○
キ バックヤード
ついても写真や取材資料を ○
キ 品質
キ 衛生
基に調べることができるよ ○
○
うにする。
資 ビデオ
・お客さんの願いについて考 ○
資 写真資料
え,ニシムタの見学を通し ○
キ ポイントカード
て見付けた工夫と関連付け ○
るようにする。
資 地図
・商品の産地を調べ,様々な ○
資 写真資料
地域とのつながりについて ○
資 地球儀
考えさせる。
○
キ 産地
・産地の位置を地図や地球儀 ○
で確認させる。
資 統計資料
・既習したスーパーマーケッ ○
資 写真資料
トの工夫と見付けた工夫を ○
資 各自の情報資料
比較させることで,相違点 ○
を明らかにさせ,それぞれ
の店の特徴をつかませてい
く。
資 学習ノート
・これまでに調べたことと, ○
キ 新聞づくり
生活に生かすことを考えさ ○
せながら新聞を作らせる。
本時の流れ
過程
主な学習活動,教師の具体的な働きかけ
1 スーパーマーケットの見学に行ったことを想起する。
つ
か
む
・ニシムタに何をするために見学をしに行ったの
かな?
・インタビューしたり,見学したりしていろいろ
なお店の工夫を見つけましたね。
・今日は,スーパーマーケットでは,どんな工夫
がされているのか,考えてみましょう。
見学して気づいた具体的な事実を,写真を活用して様子をよりよく思い出さ
せることで,資料の読み取り・解釈を行わせた。(読み取り・解釈)
2
本時の学習問題をたてる。
スーパーマーケットではどのような工夫をしているのだろう。
立
て
る
・
見
通
3
学習の進め方を確認する。
・.見学で自分たちが撮ってきた写真を基に,見
つけた工夫を発表する。
・見つけた工夫を自分たちなりの視点で,3つ
のグループに分ける。
- 15 -
す
学習の進め方を確認し,板書することで,子どもたちが活動の見通しをもつ
ことができるようにした。ここでは,子どもたち自身に資料の意図を読み取ら
せるために,3つのグループに仲間分けをさせた。(資料の効果的な活用)
4
見学を通して見つけた工夫を発表する。
・値段が分かるように,大きく書いてある。
・どこに何があるのか分かるように,看板がある。
・いろいろな種類の品物があった。
・品物がきれいに並べてある。
調
5
見つけた工夫を分類し,発表する。
べ
・値段は,お店の工夫じゃないかな。
・たくさんの種類の牛乳は,商品だね。
・お店の人は,笑顔であいさつしていたね。
・魚を切っている人がいたね。
る
子どもたちがまとめた3つの分類
【 も
の 】
【 看
板 】
【 人 】
店の様子が分かるように写真を掲示をし,資料等を根拠にしながら工夫を具
体的に発表させるようにした。そうすることで,店の工夫にしっかり目を向け
させるようにした。 (読み取り・解釈・説明・論述)
6
ま
と
め
る
・
広
げ
る
学習のまとめをする。
・今日分けたグループを使うと,スーパーマーケッ
トでは,もの・看板(お知らせ)・はたらく人の
工夫があることが分かるね。
・他にも工夫がたくさんありそうだね。
〈学習のまとめ〉
スーパーマーケットでは,もの・看板(お知らせ)・はたらく人のくふう
がある。
7
本時の学習をふり返り,次時の学習の見通しをもつ。
- 16 -
オ
成果と課題
指導計画,単元構造図が作成してあると,小単元の見通しをもちながら,教材研究を
行うことができる。
○ 導入段階で活用した資料が,本時の学習内容の問題意識をつかませるための資料とし
て効果的に使用され,その後の学習活動の深まりにつながった。
○ 子どもたちが見学で写してきた写真を基に,3つの仲間分けを行う作業では,子ども
たちが,写真から分類するための情報をたくさん読み取ることができていた。また,仲
間分けするにあたり,撮られた写真の意図を考察することができていた。
● 「調べる活動」においては,教師自身が子どもに明確に調べる視点を明確に示してか
ら活動に取り組ませる必要がある。
● 社会的な事象に対する見方や考え方をより広げ深めるために,調べ活動や表現活動の
工夫をしていく必要がある。
○
【6年生】
社会科の授業を進める中で,子どもが学ぶ楽しさを味わうことができる社会科の授業づくり
を実践するために,以下の視点をで検証を行った。
①
②
③
授業で扱った資料が問題意識をもたせるものであったか。(研究内容1)
資料を読み取らせるための教師の発問,助言が適切であったか。(研究内容1・2)
読み取ったことを基にして表現できる場は効果的であったか。(研究内容2)
ア
イ
単元名
第6学年「日本とつながりの深い国々」
単元の目標
○ 我が国とつながりが深い国の人々の生活の様子に関心をもち,進んで話を聞いたり,
関連する資料を収集したりして意欲的に調べようとする。
【社会的な事象への関心・意欲・態度】
○ 世界の人々と共に生きていくためには,異なる文化や習慣を理解し互いに尊重し合う
ことが大切であることについてを考え,表現することができる。
【社会的な思考・判断・表現】
○ 我が国とつながりが深い国の人々の生活の様子について,地図や写真,インターネッ
トなど各種資料から必要な情報を集め,文化や習慣,我が国とのつながりなどを読み取
り,図や表にまとめることができる。
【観察・資料活用の技能】
○ 我が国とつながりが深い国の人々の生活の様子を調べることを通して,文化や生活習
慣の多様さに気付き,世界の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を尊重し,
理解し合うことが大切であることがわかる。
【社会的事象についての知識・理解】
ウ
過程
主な学習活動
教師の具体的な働きかけ
資料・キーワード
資 日本と関係の深
つ 1 外国から入ってきた身のまわ ・生活経験や学習経験をもと ○
か
りのものや文化を出し合い,日
に,興味や関心のある国を
い国の写真
む
本とつながりの深い国について
出し合い,グループの中で
話し合う。
一つの国に決める。
資 )地球儀
見 2 グループで国を決め,その国 ・人々の生活を調べるときに,○
資 世界地図
通
の人々の生活の様子を調べる計
いくつか共通する視点を決 ○
資 日本と関係の深
す
画を立てる。(本時)
めて,4カ国を比べやすく ○
・
する。
い国の写真
立
日本とつながりの深い国の
(アメリカ,中国,韓国,
て
人々は,どのような生活をし
サウジアラビア)
る
ているのだろうか。
資 生活の写真
3~5
・日本と違うこと,似ている ○
資 時間割の例
自分たちが選んだ国の人々の
ことを意識させながら調べ ○
資 授業様子の写真
生活の様子について,ゲストテ
させる。
○
- 17 -
資 国旗の意味
ィーチャーに話を聞いたり,集
○
資 行事の写真
めた資料を活用したり,図書館 ・気候のグラフや地図,写真 ○
資 世界地図
で集めた資料を活用したりして
から,国によっては,日本 ○
資 日本の輸出入の
調べる。
と気候が大きく異なること ○
日本との結びつきについて,
をおさえさせる。
相手国割合
資 伝統的な衣装
集めた資料を活用して調べる。
○
資 行事・工業・世
6・7 調べたことを新聞やレポ ・第5学年の産業の学習や第 ○
広ま
ートを作成して発表する。
6学年の歴史の学習を想起
界文化遺産の写
げと 8 単元のまとめをして,自分の
させ日本との結びつきにつ 真
るめ
考えをまとめる。
いて,経済,文化,政治な
る
ど,多面的に捉えさせる。
エ
本時の流れ
過程
主な学習活動,教師の具体的な働きかけ
1 前時までの確認と本時の学習内容の概要をつかむ。
・アメリカと韓国について話し
合いました。
・なぜ,アメリカの小学生はス
クールバスで登校するのか調
べてみたくなりました。
つ
か
む
前時の学習と学習問題を想起させることで,問題意識の継続を図り,本時の
学習の見通しをもたせた。
2
立
て
る
・
見
通
す
本時のめあてをたてる
学習計画を立てて,調べたい国を選ぼう。
3
学習の進め方や資料について話し合う。
・前の時間は,アメリカと韓国の「なぜ」,「どう
して」と思ったことを書いたよ。
・今日も似たような学習をするんだね。
・「日本との結びつき」と「生活の様子」の2つの
視点で調べることをきめるんだね。
4
資料をもとに,つながりの深い国について話し合う。(サウジアラビア)
・どのようにして石油はつ
くられ,運ばれるのかな
・なぜ,このような服装な
のかな。
5
調
べ
る
資 料 を 基 に ,「 日 本 と の つ
な が り 」「 生 活 の 様 子 」 に つ
いて調べてみたいことを記述
させた。
資料をもとに,つながりの深い国について話し合う。(中国)
資料や中国出身の級友のス
・中国では,学校に行く途中
ピ ー チ を 基 に ,「 日 本 と の つ
に朝ご飯を食べます。
な が り 」「 生 活 の 様 子 」 に つ
・給食の牛乳は,温められて
いて調べてみたいことを記述
います。
させた。
- 18 -
6
調べる視点を話し合い,整理する。
・調べる視点は,「日本との結びつき」と「生活の
様子」の2つだね。
・「日本との結びつき」は,人との交流や貿易,文
化のことについて調べよう。
・「生活の様子」は,学校の様子,衣食住,習慣の
ことについて調べよう。
調べる視点を話し合い,整理することで,調べる活動が苦手な児童が視点を明
確にして調べられるようにした。その際,「日本との結びつき」「生活の様子」と
いう2つの大きな視点で整理した。
7
ま
と
め
る
・
広
げ
る
学習計画をたてて,調べるときの留意点を確認する。
・日本との結びつきを1つ,生活の様子から1つ選
んで調べるといいね。
・日本と外国の異なる点や似ている点を比べながら
調べよう。
8
調べたい国を1ヶ国選択する。
・どのようにしてアメリカか
らハロウィンが伝ってきた
のだろう。
・サウジアラビアの人達は,
白い服と黒い服を着ている
人が多いのはなぜだろう。
調べてみたい国を決める際は,選択した理由や調べる視点「日本との結びつき」
「生活の様子」にそって調べてみたいことを記述させた。
9
オ
本時の学習をふり返り,次時の学習の見通しをもつ。
成果と課題
○ 授業で扱った資料を基にして,「どうして」「なぜ」という問いを引き出すことができ,
問題意識をもたせることにつながった。
○ 調べる視点を「日本との結びつき」「生活の様子」の2つの明確にしたことで,子ども
一人ひとりが明確な問題意識をもつことができた。
○ 調べたいことを記述させる際,理由を明確にさせることで,子どもたちが事後の活動
の見通しをもつことができる表現をしていた。
● 準備した資料を以下に精選して授業で扱っていくかということを,授業作りの段階で
十分吟味していく必要がある。
● 問題意識をもたせるための発問・助言については,資料の意図をつかませていくため
の発言・助言を事前によく練る必要がある。
- 19 -
(2)
生活科研究授業
生活科の授業を進める中で,子どもが学ぶ楽しさを味わうことができる生活科の授業づくり
を実践するために,以下の視点をで検証を行った。
・授業で扱った資料が子どもの学習意欲を促進するものであったか。(研究内容1)
・表現できる場(カード,ワークシート)は効果的であったか。(研究内容2)
ア
イ
単元名
第2学年「明日へジャンプ」
単元の目標
○ 自分自身の成長に関心をもち,これまでの生活や成長を支えてくれた人々へ感謝の気持
ちをもつとともに,3年生からの自分自身への成長への願いをもって意欲的に生活しよう
とする。
【生活への関心・意欲・態度】
○ 自分自身の成長を振り返ったり,今の自分の様子と比べたりすることができるとともに,
その成長を自分なりの方法で表現したり,お世話になった人々に感謝の気持ちを伝える方
法を考え,表現したりする活動に取り組むことができる。
【活動や体験についての思考・表現】
○ できるようになったこと,役割が増えたことなどの自分の成長に気付くとともに,自分
の成長には様々な人々との関わりがあり,多くの支えがあったことに気付くことができる。
【身近な環境や自分についての気付き】
ウ 指導計画(総時数27時間)
小単元
主な学習活動
1 入学してから,自分たちがしてきたことを友達と話し合う。
大きくなった
2 入学してから,できるようになったことや役割が増えたことをワーク
自分のことを
シートに書く。
ふりかえろう
3 記録カードを見せながら,大きくなった自分のことを伝え合う。
4 友達のすごいところや,友達に何かしてもらった経験について話し合
う。【 本 時 】
す て き な こ と 5 友達のすてきなところをカードに書き,賞賛や感謝の言葉とともに,
を教え合おう
カードを手渡す。
6 保護者など,昔の自分を知っている人に自分のことを取材し,友達と
話し合う。
7 調べたり,教わったりしたことの中から,自分の成長を表すのに最適
大きくなった
な出来事を決める。
自 分 の こ と を 8 自分の成長を表現するのに適した方法を話し合い,まとめる方法を決
まとめよう
める。
9~ 15 自分の成長を作品にまとめて,その作品を発表し合う。
16 自分の成長を支えてくれた人について話し合う。
あ り が と う を 17 ~ 20 成長を支えてくれた人に,感謝の気持ちを伝える方法を考え準備
とどけよう
をする。
21 成長を支えてくれていた人に感謝の気持ちを伝えるとともに,彼らの
自分たちに対する思いを聞く。
す て き な 三 年 22・23 3年生の学校生活について,知っていることを話し合う。
生になろう 24・25 3年生の授業を見たり,3年生に聞いたりして,3年生でするこ
とを調べる。
26・27 3年生になったら挑戦したいことを話し合い,カードに書く。
- 20 -
エ
本時の流れ
過程
主な学習活動,教師の具体的な働きかけ
1 提示された写真を見て,話し合う。
思
い
や
願
い
を
も
つ
・
見
通
す
・○○さんは,いつも元気よく立ち止
まってあいさつができるんだね。
・○○さんは,城山登山競走であきら
めずに最後まで走ったね。
・○○さんは,できないときに助けて
くれたよ。
・○○さんは,「がんばって」と応援
してくれたよ。
2
本時のめあてをつかむ。
友だちのいいところを見つけよう。
友達のよいところを見つける視点になるように4つの写真を準備した。これ
らの写真を基に,他に友達の頑張っていることに気づかせることができるよう
にし,本時の活動に見通しをもたせるようにした。
3
どのような活動するのか学習の流れを確認する。
・友達のいいところを見つけるときには「行事」
「係活動」「当番」「授業」「休み時間」などの場
面で,「できるようになったこと」「がんばって
いたこと」などをカードに書くようにしよう。
・グループで「すてきなところシート」を完成させ
よう。
4
友達のすてきなところを「すてきなところカード」に書く。
・○○さんが,体育の授業のとき,前回りができなか
ったけど,練習してできるようになったよ。
か
わ
る
割り当てられた友達のよいところを書かせるために,できるだけどんな場面
でどんなことがあったか詳しく書くように助言をし,書けない子には,2学期
末に書いたワークシートや生活科ごよみを参考にして書かせるようにした。
5
活
動
を
深
め
①
②
グループで見つけた友達のすてきなところを話し合う。
見つけた友達のすてきなところを発表をする
もっといいところはないかと話し合い,
「すてきなところシート」を完成させる。
・○○さんは,こんなことも頑張っていたよ。
・□□さんのカードに書いていことは,私も書いたよ。
- 21 -
る
6
全体の場で発表する。
・ぼくたちの班では,
○○さんのいいとこ
ろは,「~ところ」
と,「~ところ」と
いうことを話し合い
ました。
活
動
を
振
り
返
る
【グループで完成させたワークシート】
これらの活動を通して,グループや学級全体で気付いたことを共有させるこ
とで,気づきをさらに深めさせるようにした。
7
活動を振り返り,ワークシートへ記入する。
次時は,まとめた「すてきなところ
シート」を,本人に賞賛や感謝の言葉
を添えて手渡す活動へとつながってい
く。
【子どもが記入した振り返りワークシート】
オ
成果と課題
導入時に活用した資料が,子どもたちに本時の活動の見通しをもたせるものとなった。
導入時に活用した資料が,子どもたちの書く活動の参考となり,教師の助言も適確で
あったことから,カードやワークシートの記述内容に深まりがみられた。
○ 友達と意見を交流させる活動を通して,自分の考えたすてきなところと友達が気づい
たすてきなところを照らし合わせて「すてきなところシート」を完成させていったこと
が,気づきや自分の見方や考え方を高めることができた。
● グループ活動を工夫したり,話し合う活動を充実したりして,子どもたち自身で気付
きの質を高めていくことができるような授業をしていく必要がある。
● 子どもたちに「~がしたい」という意欲溢れる活動していくためにも,その言葉を引
き出すような意図的な発問をしていく必要がある。
○
○
8
成果と課題
○
各小単元の構造図を作成したことで,子どもたちに考えさせたい内容や調べさせたい事実,用
語・語句など,指導するべき内容を精選することができ,学習指導に生かすことができた。(社会科)
○ 「調べ,考え,表現する」問題解決的な学習過程を行うことにより,教師自身が提示する資料
を十分吟味し,子どもたちに対して意図的に資料を示すことにより,子どもたちは問題意識を
もちながら,調べ活動を行うことができるようになってきた。(社会科・生活科)
○ 資料の読み取りや解釈や自分なりの考えを表現する活動を充実させることで,子どもたちの資
料活用能力や表現力の高まりつつある。(社会科・生活科)
● 社会的な事象に対する見方や考え方をより広げ深めるために,調べる視点を明確にして調べ活
動に取り組ませたり,調べたことを説明したり,論述させるなどの表現活動を小単元の中に効果
的に取りくませるよう,今後研究していく必要がある。(社会科)
● グループ活動を工夫したり,話し合う活動を充実したりして,子どもたち自身で気付きの質を
高めていくことができるような授業をしていく必要がある。(社会科・生活科)
- 22 -
- 23 -
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