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分生研ニュース 第41号(2009年5月発行)

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分生研ニュース 第41号(2009年5月発行)
1
東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌
5月号(第41号)2009.5
IMCB
Institute of Molecular and Cellular Biosciences
University
of Tokyo
The University
of Tokyo
目 次
所長のごあいさつ(秋山所長)……………………………… 1∼3
留学生手記(丁月曦)……………………………………………… 29
研究分野の紹介(生体有機化学研究分野)………………… 2∼5
ドクターへの道(林陽平)………………………………………… 30
受賞者紹介…………………………………………………………… 6
OBの手記(石田達也)……………………………………………… 31
着任のご挨拶(小川治夫、杉田和幸、石黒啓一郎)………… 6∼7
海外ウォッチング(羽鳥勇太)…………………………………… 32
転出・離任のご挨拶(大坪久子、津田岳夫、石北央)…… 7∼8
研究室名物行事(山形敦史)……………………………………… 33
平成20年(2008年)各研究分野業績発行物等一覧………… 9∼17
第24回バイオテクノロジー懇談会を開催…………………… 34∼35
平成20年度分子細胞生物学研究所技術発表会…………………… 18
国際会議に出席してみて……………………………………… 35∼36
おめでとう!大学院博士・修士課程修了者………………… 19∼20
所内レクリエーション……………………………………………… 37
次代のホープ達……………………………………………………… 20
知ってネット………………………………………………………37 38
Welcome to IMCB …………………………………………… 21∼22
お店探訪……………………………………………………………… 38
2008年度 分生研セミナー一覧……………………………… 23∼24
編集後記……………………………………………………………… 38
平成20年度科学研究費補助金採択一覧……………………… 25∼27
研究紹介(石黒啓一郎、石川稔)………………………………… 39
平成20年度受託研究・共同研究一覧……………………………… 28
研究最前線(発生分化構造研究分野、情報伝達研究分野)……… 40
所長のごあいさつにかわる座談会 分生研−清貧からのエクソダス
とある日、最近の分生研について所長(秋山)、副所長(多羽田)、事務長(貝田)の三人でとりとめのない会話を交わした。
秋 山:ここ10数年で分生研はすごく変わりましたね。アクティビティが非常に高くなって後に残るような良い仕事がいろいろでて
います。
多羽田:ちょっと思い浮かぶだけでも、細胞分裂、遺伝子発現制御、non-coding RNA、細胞骨格、シグナル伝達、神経系、幹細胞、
成人病、癌などいろいろな研究が行われていますし、構造生物学の分野では、放射光実験施設とリンクして東大の構造生物
学の中心としての機能を果たしています。
秋 山:ハイレベルな基礎研究と社会への成果の還元という二兎を追う…
多羽田:生命科学の分野では俗にいう三大誌(Nature, Science, Cell)に論文が出るかどうかで運命が決まるようなところがあって、
これはこれで問題があると思いますけど、ここ5年間で分生研からNatureに出た論文数は東大全体の1/3弱にあたります。
三大誌についてもここ10年で研究者1人当たりで一番多いですね。
秋 山:ここまでくるのに随分いろいろな改革がされてきました。学閥による人事やところてん人事をやめるのはもちろんですが、
教授よりも若い優秀な方を優先して採用して成果をあげてきました。若い人に独立した研究室を持ってもらって自由に研究
を進めてもらっています。多羽田さんもそこから教授になった一人ですね。
多羽田:はい。7年間あげるから良い仕事をしてください、仕事がでなかったら出て行ってくださいと言われました。かろうじて残
していただきましたが、緊張感がありました。
秋 山:当時は教授を頂点にした講座制が当たり前でしたから新しい試みでした。今、多くの大学で行われているテニュアトラック
制のさきがけでしたね。
多羽田:分生研はポストが少ないですが、やりくりして助教を増やしたのも良かったと思います。大学院大学になって助教のポスト
を減らして教授を増やしたわけですが、一般的に教授はデータ出しませんから。
秋 山:教授1―准教授1―助教1だと、実験をしたり学生に実験を教えたりするのが助教一人なんていうことになりかねません。短期
間にいろいろな変革を実現できたのは研究所の規模がちょうど動きやすい大きさであることをフルに生かせたからだと思います。
多羽田:機動力がある。それを生かして、最近は随分若い人を独立ポジションで採用して、とても良い成果が出ていると思います。
秋 山:事務組織も随分変わりましたね。積極的に研究をサポートしてくれる姿勢です。
貝 田:事務職員一人ひとりの意識も大きく変わってきています。管理的業務を規則どおりに遂行するということも重要ですが、ア
クティビティの高い研究をサポートするために、現在、なにが必要か、なにが求められているか、職員間で会話することが
普通のことになっています。分生研の特徴的なことは、職員の議論の中からでてきた良い発案について、教員の理解が得ら
れやすいことです。このようなことも、職員が積極的になる大きなきっかけとなっています。職員の間で今一番の話題は、
研究所の財源を確保することです。職員が資金獲得のために何かできないか、検討しているところです。
秋 山:何故か分生研は運営費交付金がひどく少ないですからね。おまけに毎年の削減でなかなか厳しい状況です。
2
図1.生体有機化学研究分野・旧8研
図2.生物応答調節剤
図3.人工植物ホルモン
図4.マルチテンプレート法
図5.ドラマタイプ法
3
貝 田:特に本館は老朽化していて、財務チームの職員が、修繕業務で走り回っているので、つい、今回の修繕費はいくらと聴いて
しまいます。このまま行くと来年あたりは、光熱費でだいぶ大分苦労することになると思います。
多羽田:研究棟の問題は長い間の懸案ですしね。
貝 田:アクティビティの高さを維持するためには、研究所として資金獲得のための努力をする必要があります。そのために現在、
広報活動に力を入れていて、記者発表、HPの充実、概要の刷新など、できることから少しずつはじめていますが、必要性は
わかっていても、いかに分かりやすく伝えるかということは難しいですね。
秋 山:資金も施設も貧弱ですが、良い成果がでているところをみると、やはり研究はお金や容れものだけではないとも言えます。
それから広報といえば、学生の皆さんにも分生研のことをもっと知ってもらう必要がありますね。最近は、事務が中心になっ
ていろいろな工夫をしてくれています。
貝 田:4月には、分生研の教員や院生と学部学生が直接自由に懇親会形式で話し会う機会を設けました。総務チームも様々な工夫
をして盛り上げるよう努力しています。
多羽田:分生研は学生教育にも熱心で、理学、農学、薬学、医学、工学、新領域の6研究科から大学院生を受け入れています。最先
端研究の場に入って一緒に研究することによってはじめて良い研究者が育つのだと思います。
貝 田:グローバルCOEに参加している研究室も多く、博士課程の学生にはRAとして給与を支給しています。また、分生研独自の
RA制度を昨年から始め、博士課程の全ての学生に対して、経済支援が行き渡るよう配慮しています。
秋 山:分生研では、本当に魅力ある最先端の研究が展開されていますから、是非熱意のある学生の方々に参加してほしいですね。
話を聞きたい方や相談事のある方は興味をもった研究室の教員にメールをしてくれれば対応します。大学院生だけでなく学
部生でも授業のないときなどに分生研に出入りして実験をしたりしている人もいます。
多羽田:まあ問題は山積とは言っても、こうやって現状に安住する事無く、新しいこころみを続けている限り、少しは楽観的になっ
てもいいのではないかな。目覚ましい活躍をする若い人もいますし。大学院生も含めて、若い人にとって魅力ある研究所を作っ
ていきたいですね。
副所長が明るい未来を夢想し始めたところで紙数が尽きました。いつの日にか続く…
研究分野紹介 生体有機化学研究分野
1.はじめに
本欄の執筆は2回目になります[前回は本ニュース第29号(2005.5)]。当時執筆した、研究の基本姿勢や
教育活動については大きな変化はありませんが、これまでの研究内容全般(一部については時折「研究最前
線」として本誌に紹介しました:第28、34、39号)をいくつかのキーワードで統一的に捉えられるようになっ
て来ました。これについては第4章に記述します。
この5年間について言いますと、本研究分野の運営を支えていただいた3名の教員[長澤和夫助教授(分
生研ニュース第17∼24号の編集委員長も務められました:第26号)、宮地弘幸准教授(第40号)、棚谷綾助手(第
33号)
]が転出・独立され、それぞれ研究室(東京農工大、岡山大、お茶の水大)を主宰されています。また、
䌝䌝孝介助教の転入(第36号)
・転出(理研、第39号)もありました。代わって、3名の教員[杉田和幸准教
授(第41号)
、青山洋史助教(第33号)、石川稔助教(第39号)]をそれぞれ第一三共、理研、明治製菓からお
迎えし、引き続き、分生研・生体有機のミッションを果たすべく、研究・教育活動を遂行しております。
一方で、前任の岩崎成夫名誉教授のご逝去[2007.9.6(第36号)]、といった悲しい出来事もございました。
分生研において教員の任期制が定着してきていますから、今後も本研究分野教員の転入・転出は同じよう
なペースで進むかと思います。このような状況の下で、あるいは「ニュース」という本誌の趣旨にはあわな
いかも知れませんが、生体有機化学研究分野の沿革を記述するのも全く無意味ではないと考え、最初に次章
で簡単に触れることにしました。
2.沿革(図1)
1953年に、我が国における微生物学の基礎応用両面における指導的役割を果たすべく、東京大学の附属設
置研究所として応用微生物研究所が設置されたそうです。1955年、同所内に発酵生産物部門が設けられて津
4
田恭介教授が着任され、同年、部門名が化学部門と改称されたとのことです。津田先生はフグ毒テトロドト
キシンの構造解析研究をはじめ、広く天然物有機化学を展開されました。1967年に、奥田重信教授が就任され、
引き続き天然物有機化学を展開されるとともに、脂肪酸生合成の有機化学を展開されました。次いで1988年
に、岩崎成夫教授が就任され、チュブリン重合阻害剤をはじめとする微生物代謝産物の天然物有機化学を広
く展開されました。この間、1993年に、応用微生物研究所がその研究対象をバイオサイエンス一般に演繹す
べく分子細胞生物学研究所に発展的に改組されたわけです。これに伴い、化学部門は、生体有機化学研究分
野に転換されました。1997年、橋本が教授に就任し、現在、基礎分子医薬化学研究を中心に展開しています(第
33号)
。
3.生理活性化合物の創製研究
本研究分野では、細胞の増殖・分化や生体恒常性・免疫応答などの高次生命現象の本質的課題を、有機化
学的に解明して学際的・基礎的・論理的基盤を確立し、次世代に向けて求められる医薬シーズの探索・開発
手法を確立することを主たる研究目的に据えています。特に、がんやメタボリックシンドロームなどの、従
来の選択毒性に基づいた医薬創製では対応がむずかしい多因子性難治性疾患を、生理的な再生が失敗した状
態と捉え、これを、例えばタンパク質のフォールディングや相互作用の異常といった、分子の動的な状態の
異常に還元し、これを正常化する活性化合物の創製手法を開拓し確立することを目指しています。
一方で、1990年代末、「すべてのタンパク質についてその機能制御を行なう小分子化合物を創製する」、「そ
してこれを用い、引き起こされるフェノタイプの変化の観察を行なうことで、そのタンパク質の機能を解明
する」
、という、ケミカルジェネティクスの分野が切り拓かれました。現在の創薬探索研究においては、化合
物ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニング(HTS)によるシーズ探索が一つの主要な地位を
占めていますが、ケミカルジェネティクスにおいてもHTSにおいても、保有する化合物ライブラリーの「質」
の善し悪しがその成否を決定する要因なはずです。
こうした状況の下に、これまでに核内受容体リガンドやサリドマイド様生理活性物質などに焦点を当てて、
様々な活性化合物を創製してきました(図2)。決して本研究分野単独での成果ではありませんが、2005年に
は難治性急性前骨髄球性白血病治療薬アムノレイク錠が発売され、2009年にはピューロマイシン感受性アミ
ノペプチダーゼ阻害剤(PAQ-22)並びに蛍光プローブ(DAMPAQ-22)を試薬として発売しました(図2)。
発売はだいぶ昔になりますが、種なし枇杷の育種などにも使われる人工植物ホルモンについて、その結合タ
ンパクの構造を解くような研究も行いました(図3)。
4.マルチテンプレート法とドラマタイプ法
上述のような生理活性化合物の創製研究を通じて、この数年、
「質」の良い化合物ライブラリーの創製法と
してマルチテンプレート法を、タンパク質の動的な状態を標的にした活性化合物創製法としてドラマタイプ
法を発信しています。
ヒトのタンパク質は5万∼7万種存在すると言われ、それらは様々なアミノ酸一次配列を持つドメイン構
造からなります。一次配列は多様ですが、それら各々の化学的性質を無視してトポロジカルな形(フォール
ド構造)だけに着目すると、わずか1000種ほどの立体構造に限られるとされています。ということは、ある
5
一つのフォールド構造に適合する(小分子)構造をテンプレート[活性化合物のコア部分となる共通基本母
核:スキャフォールド(scaffold)]に設定すれば、
(各フォールド構造が平均的にすべてのタンパク質に分散
しているとして)、50∼70種のタンパク質に対して親和性を有する化合物が創製できることになります。また、
1000種のテンプレートがあれば、それらですべてのタンパク質に対する親和性化合物がカバーできることに
なり、ケミカルジェネティクスの完成にも貢献しますし、当然その中には有望な医薬リード・シーズも含ま
れるはずです。各タンパク質に対する特異性は、当該タンパク質の化学的性質(アミノ酸一次配列)を考慮して、
設定したテンプレートに構造修飾を施せばよいというわけです(図4)。
ヒト生体内でのわかりやすい実例はステロイドホルモンで、それらの受容体のリガンド結合ドメインはア
ミノ酸一次配列の相同性が低い場合でも(高い場合は当然ですが)共通のステロイド骨格を有する化合物を
リガンドとしています。また、ホルモン以外にも強心配糖体をはじめ、数多くの生理活性ステロイドが知ら
れており、それらはそれぞれに特異的な薬物受容体に結合します。ステロイド骨格もそうですが、上で述べ
たテンプレートは往々にして、機能的・進化的・分布的に全く関連のないタンパク質群に共通であり得るため、
そのような母核構造を「マルチテンプレート」と呼ぶことにしています。
そのようなマルチテンプレート構造の設定法としては、フォールド構造を元にしてのin silico分子設計等が
一つの正攻法だろうと思いますが、しかし一方で、多岐にわたる、かつ興味深い生理活性を示す小分子生理
活性物質は、マルチターゲットである可能性が高く、それ自体が良好なマルチテンプレート構造を提示する
可能性があります。そのような小分子として、サリドマイドに着目した構造展開研究を遂行してきました。
ステロイドは天然が私たちに教えてくれるマルチテンプレートですし、サリドマイドは先達が残してくれた
マルチテンプレートである、というわけです。現在、いくつかの良好なマルチテンプレート骨格が、既存の
生理活性化合物の分子解剖によって抽出でき、抗ウイルス剤や細胞腫選択的増殖制御剤への展開を進めてい
ます。
一方、ドラマタイプ法は、小分子の結合によるタンパク質のフォールディング制御に着目した活性化合物
創製法です。小分子には、図5に示すようにタンパク質のフォールディングを制御してその機能を修飾する
力があります。タンパク質のフォールディング異常に基づくとされる疾病は、アルツハイマー病やハンチン
トン舞踏病、白内障、ゴーシェ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やマルファン症候群をはじめ数多く存在し
ます。それらの病因となる異常タンパク質の、小分子によるフォールディングの正常化は、関連する疾病の
治療戦略の一つになると考えています。
長い道のりでしょうが、研究室員全員、大学における基礎分子医薬化学研究の姿や本研究分野のミッショ
ンといったものを考えながら、様々な苦労はありながらも総じて充実した研究所生活をおくっております。
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受賞者紹介
青山 惇(生体有機化学研究分野/博士課程1年(発表当時は修士課程2年))
賞 名:平成20年度日本薬学会メディシナルケミストリーシンポジウムポスター賞
受 賞 日:平成20年11月28日
受賞課題名:配座固定を基盤とした核内受容体LXRの新規リガンド創製
青山 惇 さん
村田 拓哉(核内情報研究分野/博士課程1年)
賞 名:B.B.B.論文賞(日本農芸化学会英文誌)、日本農芸化学会
受 賞 日:平成21年3月27日
受賞課題名:RNA-Binding Protein Hoip Accelerates PolyQ-Induced
Neurodegeneration in Drosophila
加藤茂明教授 村田拓哉 さん
着任のご挨拶
高難度蛋白質立体構造解析プロジェクト 准教授 小川 治夫
4月1日より「高難度蛋白質研立体構造解析プロジェクト」の准教授として着任致しました小川と申します。
平成19年5月に生体超高分子研究分野の准教授として着任したばかりでありましたが、この度プロジェクトの立
ち上げのために異動となりました。
本プロジェクトは5年の時限ではありますが、2つの大きな使命を帯びております。1つ目は、
「膜蛋白質や
薬剤の複合体等、学術的・社会的に重要だが、立体構造解析が困難な蛋白質」を標的に構造研究を行うことです。
この様な研究はハイリスク・ハイリターンであるために、日本の大学では、なかなか推進することが出来ないの
が現状です。そこで専門的に取り扱う研究室を立ち上げ、こうした垣根を取り除くことを目的としております。
2つ目には、
「本プロジェクトを通して蓄積されるであろう高度な技術の継承」がありあます。膜蛋白質等の発現・
精製・結晶化には様々な知見や独自技術が必要になります。これらの継承には次世代の研究者の養成が不可欠で
あります。
現在、分生研には蛋白質の構造解析を主に行なう研究室として、生体超高分子研究分野と放射光連携機構の2つの研究室があります。特
に生体超高分子研究分野を中心に取り揃えられた研究環境は他に類を見ない充実したものです。この科学的に恵まれた環境を多いに利用し、
研究を進めて行ければと考えております。どうぞよろしくお願い致します。
生体有機化学研究分野 准教授 杉田 和幸
本年2月1日付けで、生体有機化学研究分野橋本研究室へ准教授として赴任いたしました。私は本学薬学部薬
化学教室を1987年に卒業しましたが、薬化学教室では、当時助手であった現在のボスである橋本先生らにつき、
レチノイン酸―酸分解反応の解析と分解物の構造決定を行いました。当時の教授首藤紘一先生は大のお酒好きで
ありますが、橋本先生もお酒がとても好きでありまして、週に5回飲むことも多くありました。
第一製薬へ入社した当初はβラクタム系抗菌抗生物質であるセフェム系薬および1-β-メチルカルバペネム系
薬の合成研究を行いました。その後1992年から1994年まで本学薬学系研究科柴崎正勝教授が率いるハードな研究
室へ国内留学し、発癌プロモーターであるホルボールエステル関連物質の合成と生物活性評価についての研究を
行い、1996年に学位を取得しました。ホルボールが有する3- 6- 7- 5員環がフューズしたチグリアン骨格は
美しく、その構築は大変でしたが非常に楽しいものでした。第一製薬に戻り、キノロン系合成抗菌薬の合成研究
に取り組んだ後、2000年から1年半米国サンディエゴのスクリプス研究所K. C. Nicolaou研究室に留学する機会
を得ました。そこでは、超原子価ヨウ素試薬を用いた新規反応の開発およびそのケミカルライブラリー構築への
適用と、big moleculeである天然有機化合物Apoptolidinの全合成を達成し、大いに有機化学を楽しむことができ
ました。帰国後は、スクアレン合成酵素阻害薬の合成研究ついで、第一三共となってからは分子標的薬の合成研究に取り組み、高脂血症
や動脈硬化発現メカニズム等についての知識、分子標的薬に関する見聞を得ることができました。
橋本研究室では、これまで学んできた有機合成および創薬の知識を充分に生かして、魅力的なMedicinal Chemistryを展開していきたい
と考えております。これまで企業に身をおいてきたためアカデミックの世界に関しては未熟者ですので、どうぞよろしくご指導のほどお
願い申し上げます。
7
染色体動態研究分野 助教 石黒 啓一郎
この度は僭越ながら、染色体動態研究分野の助教に着任致しました。本学大学院理学系研究科生物化学専
攻・坂野仁教授の指導のもと抗体遺伝子再編成の組換え酵素に関する研究で学位を取得後、米国Dana-Farber
Cancer Instituteで転写因子に関する研究を行っておりました。分生研に来て以来4年が経とうとしています。
この間に多くの先生方、同僚に支えられ、そしてまた斯くの如く恵まれた環境で研究を続けて行けることの喜び
を感じております。
くしくもドイツの社会学者マックス・ウェーバーの著書「職業としての学問」に出てくる一節が思い起こされ
ます。「若い学者にとって職業としての学問は就職および昇進において「僥倖」に支配されている。このような
状況で一つのことに没頭する苦痛に耐えられないものは学者に向いていない。だが、そのことは第一歩にすぎな
いのだ。
」そこでは、当時の大学制度において、職を得ることは思いもかけぬ偶然によって支えられていること。
また、同僚の就職や昇進をよそ目に己の精神を如何にコントロールし学問に没頭できるかが、職業としての学問
を続ける上での資質であると説いている。今から100年も前に記されたものであるが、不覚にもいまの自分を取
り巻く境遇と相重なるものが脳裏を過ぎるのであった。ポスドクとして研究を続けて歳を経るうちに、いつしか
研究を続けられることが当然ではなくなっている暗雲低迷な自分の立場に気づいたのであった。周りの同僚・学生たちが景気よく成果を
上げていくのを尻目に自分のメンタリティを保つことは正直辛いことでもあった。そして今、このように学問を職業としていけることの
幸運を思うと感慨深いものである。これは決して上がりではなく、研究者の第一歩として与えられたチャンスと肝に銘じる次第であります。
しかしながら、後はないという危機感はこれまでのポスドクの頃とは何ら変わるものではなく、苦痛に耐え研究に没頭する心構えと常に
批判にさらされる緊張感をもって努めて参る所存であります。どうかよろしくお願い致します。
転出・離任のご挨拶
ふたたび海図のない航海へ ∼分生研退任によせて∼
元染色体動態研究分野・講師 大坪 久子
退職に当たって何か書くようにと編集部に要請され、大変に困った。ありきたりの謝辞にはしたくないが、自分の研究者人生のエピソー
ドを書いていたら、これまたきりがない。散々悩んだ挙句、駆け出しの頃に絞って、思いつくままにまとめさせていただいた。理由は、
40年前の経験が今に続いていることを最近よく痛感するからである。若い読者には理解できないことも多いかも知れないが私のトレイル
を紹介します。
私の研究者としてのキャリアは九大薬学部から始まった。当時の九大薬学部は、東大薬学の流れを汲んで有機合成と天然物有機化学に
強い大学だった。戦後の混乱期に起きた下山事件の鑑定を担当された衛生裁判化学の 元教授がいられ、リアルでちょっと怖い講義は毎
回楽しみだった。私自身は、天然物有機化学(川崎敏男教授)に強く惹かれていた。当時最新のMASやNMRを駆使してヤマノイモから分
離したステロイド系アルカロイドの全構造決定、そしてその実証のための全合成実験の講義を手に汗を握る思いで聴いた。研究体系の美
しさは学部生であった私にも十分に伝わった。
ただ、私はその後、生涯の研究の方向として天然物有機化学を選ばなかった。理由は二つあった。
一つは当時予研(現在の国立感染研)から助教授として赴任してこられた堀内忠郎先生の分子遺伝
学の講義に、それまでに考えたこともなかった「DNAの構造と機能」という最新の分子生物学を垣
間見たことによる。中でもオペロン説の講義は提唱者のJacob, Monod, Lwoffがノーベル医学生理学
賞(1965年)をとった直後と言うこともあり、その新しい概念は十分に魅力的だった。そのこともあっ
て私は卒業研究、修士課程と堀内研に進むことになる。
旧来の薬学を選ばなかったもう一つの理由に、九大薬学部が、1960年代後半のある年、入試要項
に「女子学生は薬学には適さない。」という一条を入れたことがある。女子学生が増えたことに対
する学部側の懸念の現れだったのだろう。また、当時世間には「女子大生亡国論」なるものが吹き
荒れていた。さすがに、この条項は女子学生のみならず男子学生の反撥もあおり、学部始まって以
来の授業・実習放棄を経て撤回されるに至った。私はこの時、女性である自分が研究者としてやっ
ていくためには、女性差別がなく個々人の能力をきちんと評価できる指導者を選ばなければならな 九大薬学部時代、堀内研にて(右端
いと心に決めた。
が筆者、1967年当時)
さて、修士課程は堀内研に進んだ(1968年)が、実は、その殆どを築地の国立がんセンター研究所の西村 先生のラボで過ごすことになっ
た。その理由と経緯はここでは省くが、行なったのは「スピンラベル法による大腸菌tRNAの高次構造の研究」で、30年以上たった今でも
十分通用しそうな素晴らしいテーマであった。私は九大薬学部で作ってもらったラジカル試薬を用いて、西村研で単離された4チオウラ
シルを持つtRNA を標識し、その高次構造変化を同じがんセンターの別の部門のESR装置を使って測定するということをやった。まさに
海図のない研究者人生に乗り出したのであった。ここでの研究は、堀内先生の狙いがよかったことと西村先生や周囲のスタッフの皆さん
の助力のおかげで成功裏に終わった。今でも何かあると、私の脳裏には、狙い通りにラジカル試薬がtRNATyrの4チオウラシルに標識され
たことを示すDEAE-Sephadex カラムクロマトのパターンが浮かんでくる。小さな成功であったが、爾来私の中では、回帰すべき原点となっ
ている。
修士課程を終えて、経済的理由もあり、また、DNAの複製開始や組換え機構をきちんと勉強したいという希望もあって、当時NASA
から帰国されたばかりの、金沢大学がん研究所の吉川寛先生の研究室に助手としてとっていただいた(1970年)。枯草菌染色体の複製起
点近傍にマップされる高温感受性変異株の単離とマッピング、そしてそれをマーカーとして枯草菌染色体の二方向複製を証明し、論文は
Nature New Biologyに載った。この仕事が学位論文の中核となった。制限酵素の発見やDNA塩基配列決定法が世に出る数年以上も前のこ
とであった。
この金沢時代、後々私の生き方に影響を与えることになった経験がある。それは当時京大理学部助手でいられた坂東昌子先生主催の「京
大ふけんれん」夏合宿に参加したことであった。吉川先生の勧めで何の自覚もなく参加したのだが、それまで、点としての存在であった
女性研究者を群像としてみた初めての経験で、豊かで強烈な個性をもつ京大女性研究者の面々に反撥とともにうらやましさも抱いたもの
である。もっとも、この経験が実際に生きてくるのは、およそ30年後、数人の女性研究者とともに日本分子生物学会で初めて年会保育室
を立ち上げた時であった。「京大ふけんれん」に触れた経験は私の中で忘れもされず、長い間伏流となっていたようである。
8
金 沢 時 代、 縁 あ っ て 同 業 者 の 夫( 大 坪 栄 一、 当 時30才 ) と 出 会 い、 夫 の 米 国 で のAssistant
Professorとしての独立に伴って、私達はLong IslandにあるNew York州立大学Stony Brook校で小
さなラボを立ち上げた(1974年)。私達にとって、dual careerのスタートであり、私にとっては20
代後半から30代後半にかけて無我夢中で研究に打ち込めた9年間であった。Transposonの構造と機
能の研究で、文字通り、世界をリードする研究ができたのは幸せなことであった。Stony Brook時
代のexcitingな経験については、紙面の都合で割愛せざるを得ないが、去る3月に九州大学女性研
究者支援室発行のSOFReニュースに「今振り返る日米共同参画事情」と題して小文にまとめさせて
いただいた。興味のある方はお読みいただきたい。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/university/office/danjyo/jouhou/dynamic/essei5.htm)
そこには、私がpositive action にもdual career programにもさほど抵抗を感じず、今の日本でも女
性研究者を育てるためには上手に取り入れても良いのではと考える理由を述べている。当時のアメ
リカにおいてAffirmative actionが女性研究者を力づけ、大きく育てた事実を知っていることがその
背景にある。
Stony Brookキャンパスにて、吉川寛
先生、犬塚学氏、新井直子氏ととも
に(左から二人目が筆者、1980年頃)
さて、Stony Brookから日本に帰国して以来(1982年冬)
、20数年が過ぎて退任の日を迎えた。この間、私は研究と子育ての両立に苦し
い思いをしつつも、夫やスタッフ、院生達とともにトランスポゾンやレトロトランスポゾンも含む植物ゲノムの反復配列の研究を進めて
いった。40代になって研究費が結構潤沢に得られるようになったとき、困ったことのひとつに、乳飲み子の次男をかかえて、海外はもと
より国内の学会にも思うように出られないということがあった。その頃から私は女子院生に向かっ
て「子供を産むなら大学院時代に生め。そうすれば40代になったとき、思う存分研究が出来る‼」
と口を酸っぱくして言うようになる。ただ、今に至るまで、私の助言にしたがった院生は一人もい
ない。
分生研退職後、私は日本大学の女性研究者支援推進室に移った。どうやら、ふたたび海図のない
航海へ乗り出してしまったようだ。上述のSOFRe ニュースにも書いたとおり、女性研究者育成に
関してかかえる課題は、実は日本もアメリカも殆ど変わらないというのが正しい理解であろう。た
だ、女性の研究リーダー養成についてだけは大きく水をあけられており、私たちが学ぶべきことが
山ほどあるというのが、最近の私の印象である。このことについては、またどこかで稿を改めてお
伝えできたらと思っている。
2009年男女共同参画に関する米国
NSF-北海道大学・円卓会議にて(後
列右端が筆者)
最後に、分生研が、長い間、私に自由な活動の場を与えて下さったことに、この場をお借りして
心より感謝申し上げます。
生体超高分子研究分野 助教 津田 岳夫
3月末日に分生研を退職し、4月より学習院大学・理学部生命科学科の小島修一教授の研究室に助教として赴
任しました。分生研では、豊島近教授の研究室に7年間在籍させて頂きました。在籍中には、豊島先生をはじめ
研究室の皆様、事務部の皆様そして分生研の皆様にも大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼を
申し上げます。
在籍期間中、豊島研究室からカルシウムポンプの新たな中間体構造が、激しい競争の中で次々に報告されまし
た。世界トップレベルの研究に現場レベルで参加できたことは、イオンポンプの研究を学生から続けている私に
とっては、他では得ることができない貴重な経験になりました。その中で、私の課題である「銅イオンポンプの
ATP認識様式の解明」については、皆様のサポートのおかげで、まとめることが出来ました。学問以外で印象
深い出来事としては、ほぼ2年おきに研究室のスペースが拡張され、その度に部屋のアレンジに携われたこと、
でしょうか。
学習院大学では、小島先生のタンパク質と同時に銅イオンポンプの機能・構造研究も続ける予定です。イメー
ジとしてはありましたが、実際に学生さんや教職員の方とお話をすると、おっとりとした感じの方が多く、雰囲
気が大きく変わりました。私には適した所のような気もしますが、ここも任期付きポストですので、1stオーサーの論文を書くことに少し
力を入れねば、と実感しております。分生研の先生方には、今後とも引き続きご指導をよろしくお願い申し上げます。分生研の皆様の益々
のご活躍を心よりお祈りいたします。
生体超高分子研究分野 助教 石北 央
昨年12月末日に分生研を退職し、本年1月より京都大学 生命科学系キャリアパス形成ユニット 国際共同人材育成機構に赴任いたし
ました。分生研の研究者の皆様、そして、事務部の皆様にも大変お世話になりました。ここに御礼を申し上げます。
京都大学では、医学部キャンパス内で若手グループリーダという立場で独立な研究室を運営して研究することになりました。研究室を
運営するというのは初めての経験で毎日慌ただしい生活を送っています。そんな慌ただしさの中にも、心地よい陽の光がほどよく入るデ
スク脇の窓から、大きくひらけた青空に目を遣れば、研究への活力が自然とみなぎって参ります。
分生研では、今まで経験したことのないような研究環境で研究させていただいたのはもちろんのこと、研究室全体のアクティビティー
を高めるための信頼関係構築の重要性、科学者として安易な妥協をしないこと、そして正しいと信じたことを主張し続けること大切さ等、
PIとして独立する前に学べたことは私にとって代え難い大変意義深い経験でした。そのような機会を与えてくださった皆様に心より感謝
いたします。また、長年の海外生活で日本の事情に疎い私にとって何よりの収穫は、分生研在籍あるいは分生研出身者及びその関連で多
くの信頼・尊敬できる研究者仲間と知りあえたことです。ここでは私は教職員から学生まで分け隔てなくおつきあいさせていただきました。
今後はこの方たちとも自由に研究交流できる可能性もあるわけで、とても胸が弾みます。
分生研の皆様には、今後とも引き続きご指導をよろしくお願い申し上げます。最後に、分生研の皆様のますますのご活躍をお祈りいた
します。
9
平成20年(2008年)各研究分野業績発行物等一覧
〈分子遺伝研究分野〉
「原著論文」
Osanai, T., Imashimizu, M., Seki, A., Sato, S., Tabata, S.,
Imamura, S., Asayama, M., Ikeuchi, M. and Tanaka, K.:
ChlH, the H subunit of Mg-chelatase, is an anti-sigma
factor for SigE in Synechocystis sp. PCC 6803. Proc. Natl.
Acad. Sci. USA. 106, 6860-6865 (2009).
Fujiwara, T., Osami, M., Tashiro, K., Yoshida, Y., Nishida, K., Yagisawa, F., Imamura, S., Yoshida, M., Mori, T.,
Tanaka, Kan., Kuroiwa, H. and Kuroiwa, T.: Periodic
gene expression during the highly synchronized cell nucleus and organelle division cycles in the unicellular red
alga Cyanidioschyzon merolae. DNA Res. 16, 59-72
(2009).
Kobayashi, Y., Kanesaki, Yu., Tanaka, A., Kuroiwa, H.,
Kuroiwa, T. and Tanaka, K.: Tetrapyrrole signal as a cell
cycle coordinator from organelle to nuclear DNA replication in plant cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 106, 803807 (2009).
Imamura, S., Hanaoka, M. and Tanaka, K.: The plantspecific TFIIB-related protein, pBrp, is a general transcription factor for RNA polymerase I. EMBO J. 27, 23172327 (2008).
Hanaoka, M. and Tanaka, K.: Dynamics of RpaB-promoter interaction during high light stress, revealed by chromatin immunoprecipitation (ChIP) analysis in Synechococcus elongatus PCC 7942. Plant J. 56, 327-335 (2008).
Maruyama, S., Matsuzaki, M., Kuroiwa, H.,
Miyagishima,S., Tanaka, K., Kuroiwa, T. and Nozaki, H.:
Centromere structure highlighted by the 100%-complete
Cyanidioschyzon merolae genome. Plant Signal. Behav.
3,140-141 (2008).
Fujita, K., Tanaka, K., Sadaie, Y. and Ohta, N.: Functional analysis of the plastid and nuclear encoded CbbX proteins of Cyanidioschyzon merolae. Genes Genet. Syst. 83,
135-142 (2008).
Fujita, K., Ehira, S., Tanaka, K., Asai, K. and Ohta, N.:
Molecular phylogeny and evolution of the plastid and
cbbX genes in the unicellular red alga Cyanidioschyzon
merolae. Genes Genet. Syst. 83, 127-133 (2008).
Ohnuma, M., Yokoyama, T., Inouye, T., Sekine, Y. and
Tanaka, K.: Polyethyleneglycol (PEG)-mediated transient
gene expression in a red alga Cyanidioschyzon merolae
10D. Plant Cell Physiol. 49, 117-120 (2008).
「総説」
Hanaoka, M. and Tanaka, K.: Coordination of nuclear and
plastid gene expression in red and green plants. In Red
Algae in Genomic Age. Joseph Sechbach, David J. Chap-
man and Andreas Weber (eds.) Springer. (2008) (in press).
Osanai, T., Azuma, M., Amaya, Y. and Tanaka, K.:
Changes in transcript profiles in response to nitrogen
starvation in unicellular cyanobacteria. In Adaptive Gene
Regulations from Microorganisms to Organelles, Fujiwara, M.. Tanaka, K.. and Takahashi, H. (eds) Research
Signpost, Keralla, India. 15-36 (2008).
Imashimizu, M., Shimamoto, N. and Tanaka, K. : The
basal transcription machinery of cyanobacteria. In Adaptive Gene Regulations from Microorganisms to Organelles,
Fujiwara, M., Tanaka, K. and Takahashi, H. (eds), Research Signpost, Keralla, India. 1-14 (2008).
Osanai, T., Ikeuchi, M. and Tanaka, K.: Group 2 sigma
factors in cyanobacteria. Physiol. Plant. 133, 490-506
(2008).
〈染色体動態研究分野 渡邊研究室〉
「原著論文」
Sakuno T., Tada K. and Watanabe, Y.: Kinetochore geometry defined by cohesion within the centromere. Nature
458, 852-858 (2009).
Sakuno, T. and Watanabe, Y.: Studies of meiosis disclose
distinct roles of cohesion in the core centromere and pericentromeric regions. Chromosome Res. 17, 239-249 (2009).
Iwaizumi, M., Shinmura, K., Mori, H., Yamada, H., Suzuki, M., Kitayama, Y., Igarashi, H., Nakamura, T., Suzuki,
H., Watanabe, Y., Hishida, A., Ikuma, M. and Sugimura,
H.: Human Sgo1 Down-regulation Leads to Chromosomal
Instability in Colorectal Cancer. Gut. 58, 249-260 (2009).
Omran, H., Kobayashi, D., Olbrich, H., Tsukahara, T.,
Loges, N. T., Hagiwara, H., Zhang, Q., Leblond, G.,
O Toole, E., Hara, C., Mizuno, H., Kawano, H., Fliegauf,
M., Yagi, T., Koshida, S., Miyawaki, A., Zentgraf, H., Seithe, H., Reinhardt, R., Watanabe Y., Kamiya, R., Mitchel,
D.R. and Takeda, H.: Ktu/PF13 is required for cytoplasmic pre-assembly of axonemal dyneins. Nature. 456, 611616 (2008).
Eot-Houllier, G., Fulcrand, G., Watanabe, Y., MagnaghiJaulin, L. and Jaulin, C.: Histone deacetylase 3 is required for centromeric H3K4 deacetylation and sister
chromatid cohesion. Genes Dev. 22, 2639-2644 (2008).
Tanaka, K. and Watanabe, Y.: Chromatid cohesion: acethylation joins the sisters. Curr. Biol. 18, R917-R919
(2008).
Yamagishi, Y., Sakuno T., Shimura, M. and Watanabe, Y.:
Heterochromatin links to centromeric protection by recruiting shugoshin. Nature 455, 251-255 (2008).
10
〈染色体動態研究分野 大坪研究室〉
「原著論文」
Tsuchimoto, S., Hirao, Y., Ohtsubo, E. and Ohtsubo, H.:
New SINE families from rice, OsSN, with poly (A) at the
3 ends. Genes Genet. Syst. 83, 227-236 (2008).
Chen, H., Samadder, P.P., Tanaka, Y., Ohira, T., Okuizumi, H., Yamaoka, N., Miyao, A., Hirochika, H., Ohira, T.,
Tsuchimoto, S., Ohtsubo, H. and Nishiguchi, M.: OsRecQ1, a QDE-3 homologue in rice, is required for RNA
silencing induced by particle bombardment for inverted
repeat DNA, but not for double-stranded RNA. Plant J.
56, 274-286 (2008).
「総説」
Ohtsubo, H., Tsuchimoto, S., Xu, J-X., Cheng, C., Kondo,
M.Y., Kurata, N. and Ohtsubo, E. Rice retroposon, pSINE and its use for classification and identification of
Oryza species. In “Rice Biology in the Genomics Era” in
the Series: Biotechnology in Agriculture and Forestry, eds.
A. Hirai, T. Sasaki, Y. Sano, and H. Hirano, Springer,
Heidelberg, Germany (2008).
〈核内情報研究分野〉
「原著論文」
Fujiki, R., Chikanishi, T., Hashiba, W., Ito, H., Takada, I.,
Roeder, R.G., Kitagawa, H. and Kato, S.: GlcNAcylation
of a Histone Methyltransferase in Retinoic Acid-induced
Granulopoiesis. Nature 459, 455-459 (2009).
Yoshimura, K., Kitagawa, H., Fujiki, R., Tanabe, M.,
Takezawa, S., Takada, I., Yamaoka, I., Yonezawa, M.,
Kondo, T., Furutanim, Y., Yagi, H., Yoshinaga, S., Masuda, T., Fukuda, T., Yamamoto, Y., Ebihara, K., Li, D.Y.,
Matsuoka, R., Takeuchi, J.K., Matsumoto, T. and Kato, S.:
Distinct Function of Two Chromatin Remodeling Complexes that Share a Common Subunit, Williams Syndrome Transcription Factor. Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
(2009) (in press).
Imai, Y., Nakamura, T., Matsumoto, T., Takaoka, K. and
Kato, S.: Molecular Mechanisms Underlying the Effects of
Sex Steroids on Bone and Mineral Metabolism. J. Bone.
Miner. Metab. (2009) (in press).
Imai, Y., Kondoh, S., Kouzmenko, A. and Kato, S.: Regulation of Bone Metabolism by Nuclear Receptors. Mol.
Cell. Endocrinol. (2009) (in press).
Ohtake, F., Fujii-Kuriyama, Y. and Kato, S.: AhR Acts as
an E3 Ubiquitin Ligase to Modulate Steroid Receptor
Functions. Biochem. Pharmacol. 77, 474-484(2009).
Suzuki, E., Zhao, Y., Ito, S., Sawatsubashi, S., Murata, T.,
Furutani, T., Shirode, Y., Yamagata, K., Tanabe, M.,
Kimura, S., Ueda, T., Fujiyama, S., Lim, J., Matsukawa,
H., Kouzmenko, A., Aigaki, T., Tabata, T., Takeyama, K.
and Kato, S.: Aberrant E2F Activation by Polyglutamine
Expansion of Androgen Receptor in SBMA Neurotoxicity.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 106, 3818-3822 (2009).
Zhao, Y., Takeyama, K., Sawatsubashi, S., Ito, S., Suzuki,
E., Yamagata, K., Tanabe, M., Kimura, S., Fujiyama, S.,
Ueda, T., Murata, T., Matsukawa, H., Shirode, Y.,
Kouzmenko, A., Li, F., Tabata, T. and Kato, S.: Corepressive Action of CBP on Androgen Receptor Transactivation
in Pericentric Heterochromatin in a Drosophila Experimental Model System. Mol. Cell. Biol. 29, 1017-1034
(2009).
Kouzu-Fujita, M., Mezaki, Y., Mtsumoto, T., Yamaoka, I.,
Sawatsubashi, S., Yano, T., Taketani, Y., Kitagawa, H.
and Kato, S.: Coactivation of Estrogen Receptor b by Gonadotropin-induced Cofactor GIOT-4. Mol. Cell. Biol. 29,
83-92 (2009).
Tanabe, M., Kouzmenko, A., Ito, S., Sawasubashi, S., Suzuki, E., Fujiyama, S., Yamagata, K., Zhao, Y., Kimura,
S., Ueda, T., Murata, T., Matsukawa, H., Takeyama, K.
and Kato, S.: Activation of Facultatively Silenced Drosophila Loci Associates with Increased Acetylation of Histone H2AvD. Genes to Cells. 13, 1279-1288 (2008).
Zhao, Y., Lang, G., Ito, S., Bonnet, J., Metzger, E., Sawatsubashi, S., Suzuki, E., Le Guezennec, X., Stunnenberg,
H.G., Krasnov, A., Georgieva, S.G., Schüle, R., Takeyama,
K., Kato, S., Tora, L. and Devys, D.: A TFTC/STAGA
Module Mediates Histone H2A and H2B Deubiquitination, Coactivates Nuclear Receptors, and Counteracts
Heterochromatin Silencing. Mol. Cell. 29, 92-101 (2008).
Okada, M., Takezawa, S., Mezaki, Y., Yamaoka, I., Takada, I., Kitagawa, H. and Kato, S.: Switching of Chromatin-remodelling Complexes for Oestrogen Receptor-alpha.
EMBO Rep. 9, 563-568 (2008).
Yokoyama, A., Takezawa, S., Schüle, R., Kitagawa, H.
and Kato, S.: Transrepressive Function of TLX Requires
the Histone Demethylase LSD1. Mol. Cell. Biol. 28, 39954003 (2008).
Kimura, S., Sawatsubashi, S., Ito, S., Kouzmenko, A., Suzuki, E., Zhao, Y., Yamagata, K., Tanabe, M., Ueda, T.,
Fujiyama, S., Murata, T., Matsukawa, H., Takeyama, K.,
Yaegashi, N. and Kato, S.: Drosophila Arginine Methyltransferase 1 (DART1) is an Ecdysone Receptor Co-repressor. Biochem. Biophys. Res. Commun. 371, 889-893
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Ohtake, F., Baba, A., Fujii-Kuriyama, Y. and Kato, S.: Intrinsic AhR Function Underlies Cross-talk of Dioxins with
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Kouzmenko, A. P., Takeyama, K., Kawasaki, Y., Akiyama,
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Estrogen Receptor α and Adenomatous Polyposis Coli.
Genes to Cells. 13, 723-730 (2008).
Akimoto, C., Kitagawa, H., Matsumoto, T. and Kato, S.:
Spermatogenesis-specific Association of SMCY and
11
MSH5. Genes to Cells. 13, 623-633 (2008).
Kouzmenko, A. P., Takeyama, K., Kawasaki, Y., Akiyama,
T. and Kato, S.: Truncation Mutations Abolish Chromatin-associated Activities of Adenomatous Polyposis Coli.
Oncogene. 27, 4888-4899 (2008).
Matsumoto, T., Shiina, H., Kawano, H., Sato, T. and Kato,
S.: Androgen Receptor Functions in Male and Female
Physiology. J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 109, 236-241
(2008).
Murata, T., Suzuki, E., Ito, S., Sawatsubashi, S., Zhao, Y.,
Yamagata, K., Tanabe, M., Fujiyama, S., Kimura, S.,
Ueda, T., Matsukawa, H., Kouzmenko, A.P., Furutani, T.,
Takeyama, K. and Kato, S.: RNA-binding Protein Hoip
Accelerates PolyQ-induced Neurodegeneration in Drosophila. Biosci. Biotechnol. Biochem. 72, 2255-2261 (2008).
Asagiri, M., Hirai, T., Kunigami, T., Kamano, S., Gober
H.J., Okamoto, K., Nishikawa, K., Latz, E., Golenbock,
D.T., Aoki, K., Ohya, K., Imai, Y., Morishita, Y., Miyazono, K., Kato, S., Saftig, P. and Takayanagi, H.: Cathepsin K-dependent Toll-like Receptor 9 Signaling Revealed
in Experimental Arthritis. Science. 319, 624-627 (2008).
Sasagawa, S., Shimizu, Y., Kami, H., Takeuchi, T., Mita,
S., Imada, K., Kato, S. and Mizuguchi, K.: Dienogest is a
Selective Progesterone Receptor Agonist in Transactivation Analysis with Potent Oral Endometrial Activity Due
to its Efficient Pharmacokinetic Profile. Steroids. 73, 222231 (2008).
Honzawa, S., Yamamoto, Y., Yamashita, A., Sugiura, T.,
Kurihara, M., Arai, M. A., Kato, S. and Kittaka, A.: The
2alpha-(3-hydroxypropyl) Group as an Active Motif in Vitamin D3 Analogues as Agonists of the Mutant Vitamin D
Receptor (Arg274Leu). Bioorg. Med. Chem. 16, 3002-3024
(2008).
Yanase, T., Fan, W., Kyoya, K., Min, L., Takayanagi, R.,
Kato, S. and Nawata, H. : Androgens and Metabolic Syndrome: Lessons from Androgen Receptor Knock Out
(ARKO) Mice. J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 109, 254-257
(2008).
Iriyama, A., Fujiki, R., Inoue, Y., Takahashi, H., Tamaki,
Y., Takezawa, S., Takeyama, K., Jang, W. D., Kato, S.
and Yanagi, Y.: A2E, a Pigment of the Lipofuscin of Retinal Pigment Epithelial Cells, is an Endogenous Ligand
for Retinoic Acid Receptor. J. Biol. Chem. 283, 1194711953 (2008).
Fujita, H., Sugimoto, K., Inatomi, S., Maeda, T., Osanai,
M., Uchiyama, Y., Yamamoto, Y., Wada, T., Kojima, T.,
Yokozaki, H., Yamashita, T., Kato, S., Sawada, N. and
Chiba, H.: Tight Junction Proteins Claudin-2 and -12 are
2+
Critical for Vitamin D-dependent Ca Absorption between Enterocytes. Mol. Biol. Cell. 19, 1912-1921 (2008).
Takaki, H., Ichiyama, K., Koga, K., Chinen, T., Takaesu,
G., Sugiyama, Y., Kato, S., Yoshimura, A. and Kobayashi,
T.: STAT6 Inhibits TGF-beta1-mediated Foxp3 Induction
through Direct Binding to the Foxp3 Promoter, Which is
Reverted by Retinoic Acid Receptor. J. Biol. Chem. 283,
14955-14962 (2008).
〈分子情報研究分野〉
「原著論文」
Haraguchi, K., Ohsugi M., Abe, Y., Semba, K., Akiyama,
T. and Yamamoto, T.: Ajuba negatively regulates the Wnt
signaling pathway by promoting GSK-3b-mediated phosphorylation of b-catenin. Oncogene. 27, 274-284 (2008).
Nakamura, T., Hayashi, T., Nasu-Nishimura, Y., Sakaue,
F., Okabe, T.,Ohwada, S., Matsuura, K. and Akiyama, T.:
PX-RICS mediates ER-to-Golgi transport of the N-cadherin/b-catenin complex. Genes Dev. 22, 1244-1256 (2008).
Torisu, Y., Watanabe, A., Nonaka, A., Midorikawa, Y.,
Makuuchi, M., Shimamura T., Sugimura, H., Niida, A.,
Akiyama, T., Iwanari, H., Kodama, T., Zeniya, M. and
Aburatani, H.: A human homolog of Notum, over-expressed in hepatocellular carcinoma, is transcriptionally
regulated by b-catenin/TCF. Cancer Sci. 99, 1139-1146
(2008).
Itoh, R. E., Kiyokawa, E., Aoki, K., Nishioka, T., Akiyama, T. and Matsuda, M.: Phosphorylation and activation
of a Rac1/Cdc42 guanine nucleotide exchange factor Asef
in A431 cells stimulated by epidermal growth factor. J
Cell Sci. 121, 2635-2642 (2008)
Kouzmenko, A. P., Takeyama, K. I., Kawasaki, Y., Akiyama, T. and Kato, S.: Ligand-dependent interaction between estrogen receptor alpha and adenomatous polyposis
coli. Genes Cells. 13, 723-730 (2008)
Kouzmenko, A. P., Takeyama, K., Kawasaki, Y., Akiyama,
T. and Kato, S.: Truncation mutations abolish chromatinassociated activities of adenomatous polyposis coli. Oncogene. 27, 4888-4899 (2008).
Niida, A., Smith A. D., Imoto, S., Tsutsumi, S., Aburatani,
H., Zhang, M. Q. and Akiyama, T.: Integrative bioinformatics analysis of transcriptional regulatory programs in
breast cancer cells. BMC Bioinformatics. 9, 404 (2008).
Togo, N., Ohwada, S., Sakurai, S., Toya, H., Sakamoto, I.,
Yamada, T., Nakano, T., Muroya, K., Takeyoshi, I., Nakajima, T., Sekiya, T., Yamazumi ,Y., Nakamura, T. and
Akiyama, T.: Prognostic significance of BMP and activin
membrane-bound inhibitor in colorectal cancer. World J.
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Sagara, M., Kawasaki, Y., Iemura, S. I., Natsume, T.,
Takai, Y. and Akiyama, T.: Asef2 and Neurabin2 cooperatively regulate actin cytoskeletal organization and are involved in HGF-induced cell migration. Oncogene. 28,
1357-1365 (2009).
12
Niida, A., Smith A. D., Imoto, S., Aburatani, H., Zhang, M.
Q. and Akiyama, T.: Gene set-based module discovery in
the breast cancer transcriptome. BMC Bioinformatics. 10,
71 (2009).
Kawasaki, Y., Tsuji, S., Sagara, M., Echizen, K., Shibata,
Y. and Akiyama, T.: APC and Asef function downstream
of hepatocyte growth factor and phosphatidylinositol 3-kinase. J. Biol. Chem. (in press).
〈情報伝達研究分野〉
「原著論文」
Mori, Y., Higuchi, M., Hirabayashi, Y., Fukuda, M. and
Gotoh, Y.: JNK phosphorylates synaptotagmin-4 and enhances Ca2+-evoked release. EMBO J. 27, 76-87 (2008).
Higuchi, M., Onishi, K., Kikuchi, C. and Gotoh, Y.: Scaffolding function of PAK in the PDK1-Akt pathway. Nat.
Cell Biol. 10, 1356-1364 (2008).
Kawaguchi, D., Yoshimatsu, T., Hozumi, K. and Gotoh, Y.:
Selection of differentiating cells by different levels of delta-like 1 among neural precursor cells in the developing
mouse telencephalon. Development. 135, 3849-3858
(2008).
Oishi, K., Watatani K., Itoh, Y., Okano, H., Guillemot, F.,
Nakajima, K. and Goton, Y. Slective induction of
neocortical GABAergic neurons by the PDKI-Akt pathway
througn activation of Mash1. Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
in press (2009)
「総説」
森 靖典、後藤由季子:ストレス応答性MAPキナーゼファ
ミリーJNKの機能.蛋白質 核酸 酵素、53, 1252-1257 (2008).
平林祐介、後藤由季子:大脳皮質においてニューロンの数
を決定するメカニズム.細胞工学、28, 45-49 (2008).
樋口麻衣子、大西啓介、後藤由季子:スキャフォールド分
子PAKによるAktの選択的機能制御.実験医学、27, 540544 (2008).
桑原 篤、後藤由季子:Wntシグナル.炎症・再生事典 近刊
川口大地、後藤由季子:神経幹細胞の運命制御に関わるシ
グナル伝達.最新医学 近刊
〈細胞機能研究分野〉
「原著論文」
Negi, J., Matsuda, O., Nagasawa, T., Oba, Y., Takahashi,
H., Kawai-Yamada, M., Uchimiya, H., Hashimoto, M. and
Iba, K.: CO2 regulator SLAC1 and its homologues are essential for anion homeostasis in plant cells. Nature. 452,
483-486 (2008).
Takahashi, H., Matsumura, H., Kawai-Yamada, M. and
Uchimiya, H.: The cell death factor, cell wall elicitor of
rice blast fungus (Magnaporthe grisea) causes metabolic
alterations including GABA shunt in rice cultured cells.
Plant Signal. Behav. 11, 945-953 (2008).
Takahashi, H., Uchimiya, H. and Hihara, Y.: Difference
in metabolite levels between photoatotrophic and photomixotrophic cultures of Synechocystis sp. PCC 6803 examined by capillary electrophoresis electrospray ionization mass spectrometry. J. Exp. Bot. 59, 3009-3018 (2008).
Watanabe, H., Hatakeyama, M., Sakurai, H., Uchimiya,
H. and Sato, T.: Isolation of industrial strains of Aspergillus ozyae lacking ferrichrysin by disruption of the dffA
gene. J. Biosci. Bioeng. 106, 488-492 (2008).
Tsujimoto-Inui, Y., Naito, Y., Sakurai, N., Suzuki, H., Sasaki, R., Takahashi, H., Ohtsuki, N., Nakano, T., Yanagisawa, S., Shibata, D., Uchimiya, H., Shinshi, H. and Suzuki, K.: Functional genomics of the Dof transcription
factor family genes in suspension-cultured cells of Arabidopsis thaliana. Plant Biotech. 26, 15-18 (2009).
Yoda, H., Fujimura, K., Takahashi, H., Munemura, I.,
Uchimiya, H. and Sano, H.: Polyamines as a common
source of hydrogen peroxide in host- and nonhost hypersensitive response during pathogen infection. Plant Mol.
Biol. 70, 103-112 (2009).
Nagano, M., Ihara-Ohori, Y., Imai, H., Inada, N., Fujimoto, M., Tsutsumi, N., Uchimiya, H. and Kawai-Yamada,
M.: Arabidopsis Bax Inhibitor-1, with fatty acid 2-hydroxylation through cytochrome b5. Plant J. (in press).
Sakamoto, Y., Nakade, K., Nagai, M., Uchimiya, H. and
Sato, T.: Cloning of Lentinula edodes lemnp2, a manganese that is secreted abundantly in sawdust medium. Mycoscience. (in press).
Takahashi, H., Munemura, I., Nakatsuka, T., Nishihara,
M. and Uchimiya, H.: Metabolite profiling by capillary
electrophoresis mass spectrometry reveals aberrant putrescine accumulation associated with idiopathic symptoms of gentian plants. J. Hortic. Sci. Biotechnol. (in
press).
〈細胞形成研究分野〉
「原著論文」
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Sato, K., Kato, Y., Taguchi, G., Nogawa, M., Yokota, A.
and Shimosaka, M.: Chitiniphilus shinanonensis gen.
nov., sp. nov., a novel chitin-degrading bacterium belonging to Betaproteobacteria. J. Gen. Appl. Microbiol. 55,
147-153 (2009).
〈若手フロンティア研究プログラム 泊研究室〉
「原著論文」
Iwasaki, S., Kawamata, T. and Tomari, Y. Drosophila Argonaute1 and Argonaute2 employ distinct mechanisms
for translational repression. Mol. Cell. 34, 58-67 (Epub
2009 Mar).
〈若手フロンティア研究プログラム 末次研究室〉
「原著論文」
Takano, K., Toyooka, K. and Suetsugu, S.: EFC/F-BAR
proteins and the N-WASP-WIP complex induce membrane-curvature dependent actin polymerization. EMBO
J. 27, 2817-2828 (2008).
Higashida, C., Suetsugu, S. Tsuji, T., Monypenny, J. Narumiya, S. and Watanabe, N.: G-actin regulates rapid induction of actin nucleation by mDia1 to restore cellular
actin polymers. J. of Cell Science. 121, 3403-3412 (2008).
「総説」
末次志郎、高野和儀:細胞膜の形態を制御する分子群.蛋
白質核酸酵素 共立出版、53, 1326-1336 (2008).
「出版物」
末次志郎:第2章 4.細胞運動の定量法.がん転移研究
の実験手法 日本がん転移学会 編、172-182 (2008).
〈放射光連携研究機構生命科学部門〉
「原著論文」
Seto, A., Ikushima, H., Suzuki, T., Sato, Y., Fukai, S.,
Yuki, K., Miyazawa, K., Miyazono, K., Ishitani, R.,
Nureki, O. Crystallization and preliminary X-ray
diffraction analysis of GCIP/HHM transcriptional
regulator , Acta Crystallogr., F65, 21-24 (2009).
Sato, Y., Yoshikawa, A., Yamagata, A., Mimura, H.,
Yamashita, M., Ookata, K., Nureki, O., Iwai, K., Komada,
M., Fukai, S. Structural basis for specific cleavage of Lys
63-linked polyubiquitin chains , Nature, 455, 358-362
(2008).
Tsukazaki, T., Mori, H., Fukai, S., Ishitani, R., Mori, T.,
Dohmae, N., Perederina, A., Sugita, Y., Vassylyev, D. G.,
Ito, K., Nureki, O. Conformational transition of Sec
machinery inferred from bacterial SecYE structures ,
Nature, 455, 988-991 (2008).
「総説」
深井周也、佐藤裕介、吉川梓:「Lys63結合型ポリユビキチ
ン鎖の選択的切断の構造的基盤」羊土社 実験医学2月号
pp 4111-414 (2009).
18
平成20年度分子細胞生物学研究所技術発表会
生体超高分子研究分野 杖田 淳子
平成21年3月12日(木)、分生研本館1階会議
ね合わせる部分も多く、とても参考になりまし
室において平成20年度「分子細胞生物学研究所
た。また藤山氏の特別講演では、まだ私達にとっ
技術発表会」が行なわれました。本会は、分生
て馴染みの薄い、質量分析による蛋白質同定技
研に所属する技術職員の発表を通じて、研究所
術について原理から実用性まで、とても分かり
内外の情報、意見交換を目的として年に1度の
やすいスライドと共に丁寧に説明して頂き、新
ペースで開催しております。今年度は、4名の
たな知識を得られたことは非常に有意義でし
技術職員が代表として各自の職務、担当する研
た。技術的な内容に限らず、発表スタイルにつ
究課題について発表しました。また、特別講演
いても素晴らしいお手本を見せて頂きました。
として、(独)科学技術振興機構ERATO協力研
参加者の皆様には、多数の貴重なご質問、ご
究員の藤山(中村)沙理氏をお招きし、蛋白質
意見を頂き、技術職員一同、今後の研究活動の
同定法の最先端技術についてレクチャーを受け
中でそれらを生かし、更なる技術力向上に努め
ました。
て参りたいと思います。
当日は37名の教職員、学生の皆様にご参加頂
開催にあたり多大なご協力を頂いた宮島篤所
き、昨年同様、活気に溢れた雰囲気の中、活発
長、加藤茂明技術部長、素晴らしい講演をして
な意見交換がなされました。今年度の技術職員
下さった藤山氏と、全ての参加者の皆様に深い
の発表内容は、各自が担当する研究課題につい
感謝の意を述べますと共に、今回の発表会のご
て、実験手法上での創意工夫を紹介したものが
報告とさせて頂きます。
中心的であったため、お互いに自分の実験と重
19
おめでとう!大学院博士・修士課程修了者
染色体動態研究分野 渡邊研究室
修士課程
河合 悠
農学生命科学研究科
「ヒト体細胞分裂におけるAurora Bによるシュゴシンの局在制御機構の
解析」
染色体動態研究分野 大坪研究室
博士課程
平尾 嘉利
農学生命科学研究科
「NMRによる挿入因子IS1がコードするDNA結合タンパク質の高次構造
の解析」
核内情報研究分野
博士課程
横山 敦
農学生命科学研究科
「神経分化を制御するヒストン修飾因子複合体群の生化学的解析」
岡田 麻衣子
農学生命科学研究科
「新たな女性ホルモン受容体共役因子群の機能解析」
修士課程
西川 亜美
農学生命科学研究科
「ユビキチンリガーゼ活性を有する核内レセプターの探索と機能解析」
米澤 正祥
農学生命科学研究科
「性ホルモンに応答するY染色体遺伝子の網羅的探索とその機能解析の試
み」
金藤 紫乃
農学生命科学研究科
「骨組織特異的遺伝子欠損マウスを用いたエストロゲン受容体αの高次
機能の解明」
分子情報研究分野
博士課程
坂上 史佳
「RhoGAPタンパク質RICS/PX-RICSの機能解析」
理学系研究科
大野 陽子
農学生命科学研究科
「RNA結合タンパク質D8の個体レベルでの機能解析」
山角 祐介
「TGF-βシグナルにおけるD8の意義」
農学生命科学研究科
相良 将樹
理学系研究科
「癌抑制遺伝子APCに結合する新規グアニンヌクレオチド交換因子Asef2
の機能解析」
修士課程
桑原 慎太朗
「ストレスに応答するアポトーシス誘導の機構」
農学生命科学研究科
情報伝達研究分野
博士課程
桑原 篤
工学系研究科
「Wntシグナルによる大脳皮質神経系前駆細胞の運命制御メカニズムの
解明」
川口 大地
新領域創成科学研究科
「マウス大脳発生におけるNotch-Delta経路の機能解析」
修士課程
徐 源江
工学系研究科
「TCFファミリー転写因子による大脳新皮質神経系前駆細胞の運命制御」
鈴木 菜央
工学系研究科
「マウス大脳新皮質における神経系前駆細胞の発生時期依存的な運命制
御機構の解析」
森山 泰亘
「大脳新皮質発生におけるScratch1の機能解析」
工学系研究科
大城 洋明
新領域創成科学研究科
「ニューロンの成熟過程におけるgrobalなクロマチン状態の変化」
鬼原 里奈
新領域創成科学研究科
「PI3K-Akt経路によるインテグリンを介した接着構造の制御メカニズム
の解析」
細胞機能研究分野
修士課程
角田 智佳子
「シロイヌナズナ脂肪酸伸長酵素相同因子の機能解析」
理学系研究科
平林 孝之
新領域創成科学研究科
「葉緑体型NADリン酸化酵素改変植物のマイクロアレイ解析」
細胞形成研究分野
修士課程
伊藤 博光
「大腸菌外膜リポタンパク質BamBの機能解析」
寺崎 健士
「緑膿菌LolCDEのリポ蛋白質認識機構の解析」
農学生命科学研究科
農学生命科学研究科
機能形成研究分野
博士課程
宮岡 佑一郎
理学系研究科
「Functional analysis of cysteine-rich fibroblast growth factor receptor
(Cfr)」
鬼塚 和泉
理学系研究科
「肝非実質細胞の発生・分化機構と臓器形成における機能」
Development and differentiation of hepatic non-parenchymal cells and
their roles in organogenesis
陳 彦榮(Chen, Yen-Rong)
理学系研究科
「Studies on Mechanisms of Gene Regulation During Liver Development
in Mice」
生体超高分子研究分野 豊島研究室
修士課程
山田 邦永
農学生命科学研究科
「Saccharomyces cerevisiaeを使ったP型イオンポンプの発現系の構築」
生体超高分子研究分野 前田研究室
修士課程
篠崎 翠
農学生命科学研究科
「酵母アルカリストレス応答性Rim101経路を構成する膜タンパク質群お
よびアレスチン様タンパク質Rim8の機能解析」
生体有機化学研究分野
博士課程
薬学系研究科
臼井 伸也
「医薬化学を志向した新規銅錯体試薬の開発とthalidomide誘導体への応
用」
細田 信之介
薬学系研究科
「ステロイド代替骨格構造となるジフェニルペンタン骨格を用いた生理
活性物質の創製」
若林 賢一
薬学系研究科
「脂肪細胞分化におけるPPARγ標的遺伝子の網羅的同定とヒストン修飾
の解析」
修士課程
青山 惇
薬学系研究科
「コンフォメーション固定化による新規LXR選択的リガンドの創製」
迫 久美子
「γ-Carbolineを骨格とする新規抗HCV剤の創製研究」
薬学系研究科
三澤 隆史
薬学系研究科
「1 -Acetoxychavicol acetate(ACA)の構造展開とその生理活性評価」
創生研究分野
博士課程
二島 渉
新領域創成科学研究科
「二面角遷移に基づくタンパク質立体構造変化の解析方法」
莊 竣評(Chng, Choon-Peng)
新領域創成科学研究科
「分子動力学シミュレーションによる細菌べん毛繊維蛋白質のアン
フォールディング」
20
修士課程
原 真佐夫
新領域創成科学研究科
「ドッキング評価のための結合自由エネルギー計算」
高次機能研究分野
博士課程
菊池 亮
薬学系研究科
「アポトーシス阻害タンパク質Apollonによるcyclin Aの分解と細胞周期
制御機構の解析」
修士課程
松元 麻紀子
薬学系研究科
「アポトーシス阻害タンパクApollonとNek2Bの相互作用の解析」
小野寺 千晶
新領域創成科学研究科
「細胞死阻害因子FLIPLのリードスルー変異体EP-FLIPLの遺伝学的解
析」
永田 遼
新領域創成科学研究科
「アポトーシス阻害タンパク質ApollonとKLHL10によるカスパーゼ活性
亢進制御の解析」
高次構造研究分野
修士課程
竹内 聡
新領域創成科学研究科
次代のホープ達
染色体動態研究分野 渡邊研究室
修士課程卒
河合 悠(農学生命科学研究科):株式会社 ドリーム・アーツ
染色体動態研究分野 大坪研究室
博士課程卒
平尾 嘉利(農学生命科学研究科):(独)産業技術総合研究所
「ショウジョウバエLexAエンハンサートラップ 系統の作成とLexA発現
パターンの画像データベースの構築」
バイオリソーシス研究分野
博士課程
福永 幸代
農学生命科学研究科
「海棲無脊椎動物および海藻に共在する新規系統群細菌の分離とその系
統分類学的研究」
修士課程
山田 千早
農学生命科学研究科
「Phylogenetic and taxonomic studies on marine actinobacteria within
the suborder Micrococcineae」
(海洋環境から分離したMicrococcineae亜目に属する放線菌の系統分類学
的研究)
葉 馨文
農学生命科学研究科
「Taxonomic studies on Actinobacteria belonging to the suborder
Frankineae」
(Frankineae亜目に属するアクチノバクテリアの分類に関する研究)
金 星
農学生命科学研究科
「Phylogenetic studies on marine actinomycetes belonging to the genus
Pseudonocardia and Saccharopolyspora」
(Pseudonocardia属及びSaccharopolyspora属海洋放線菌の系統分類学的
研究)
◆ 分生研卒業生進路紹介 ◆
機能形成研究分野
博士課程卒
宮岡 佑一郎(理学系研究科):東京大学分子細胞生物学研究所助教
鬼塚 和泉(理学系研究科):東京大学分子細胞生物学研究所特任研究員
生体超高分子研究分野 豊島研究室
修士課程卒
山田 邦永(農学生命科学研究科):ファイザー株式会社
核内情報研究分野
博士課程卒
横山 敦(農学生命科学研究科):(独)科学技術振興機構ERATO研究員
岡田 麻衣子(農学生命科学研究科)
:
(独)科学技術振興機構ERATO研
究員
生体超高分子研究分野 前田研究室
修士課程卒
篠崎 翠(農学生命科学研究科):昭和シェル石油株式会社
修士課程卒
西川 亜美(農学生命科学研究科):JCB
米澤 正祥(農学生命科学研究科):大和証券(株)
金藤 紫乃(農学生命科学研究科):博士課程進学
生体有機化学研究分野
博士課程卒
臼井 伸也(薬学系研究科):大日本住友製薬
細田 信之介(薬学系研究科):帝人株式会社
前田 満将(薬学系研究科):帝國製薬
若林 賢一(薬学系研究科):花王
分子情報研究分野
博士課程卒
坂上 史佳(理学系研究科)
:東京大学分子細胞生物学研究所博士研究員
大野 陽子(農学生命科学研究科):デンカ生研株式会社
山角 祐介(農学生命科学研究科):東京大学分子細胞生物学研究所特
任研究員
相良 将樹(理学系研究科):武田薬品工業株式会社
修士課程卒
桑原 慎太朗(農学生命科学研究科):日本ユニシス株式会社
情報伝達研究分野
博士課程卒
桑原 篤(工学系研究科):住友化学株式会社
川口 大地(新領域創成科学研究科):東京大学分子細胞生物学研究所
特任研究員
修士課程卒
徐 源江(工学系研究科):トレンドマイクロ株式会社
鈴木 菜央(工学系研究科):博士課程進学
森山 泰亘(工学系研究科):富士通株式会社
大城 洋明(新領域創成科学研究科):博士課程進学
鬼原 里奈(新領域創成科学研究科):武田薬品工業株式会社
細胞形成研究分野
修士課程卒
伊藤 博光(農学生命科学研究科):持田製薬株式会社
寺崎 健士(農学生命科学研究科):(株)NTTデータ
修士課程卒
迫 久美子(薬学系研究科):東京海上日動あんしん生命保険株式会社
創生研究分野
博士課程卒
莊 竣評(Chng, Choon-Peng)(新領域創成科学研究科)
:Institute of
High Performance Computing(Singapore)
二島 渉(新領域創成科学研究科):東京大学分子細胞生物学研究所特
任研究員
修士課程卒
原 真佐夫(新領域創成科学研究科):日油株式会社
高次構造研究分野
修士課程卒
竹内 聡(新領域創成科学研究科):アステラス製薬
バイオリソーシス研究分野
博士課程卒
福永 幸代(農学生命科学研究科):(独)製品評価技術基盤機構バイオ
テクノロジー本部
修士課程卒
山田 千早(農学生命科学研究科):農学生命科学研究科博士課程進学
21
〈Welcome to IMCB〉 −新人紹介−
形態形成
新田 陽平 理学系研究科 修士1年
徳田 周子 理学系研究科 修士1年
市之瀬敏晴 理学系研究科 修士1年
高次構造
岩野 正晃 博士研究員
竹村 伸也 学振特別研究員
写真:左から竹村(在アメリカ)、岩野
写真:左から新田、徳田、市之瀬
生体超高分子(前田研)
吉田佐央里 農学生命科学研究科 修士1年
陳 佳文 農学生命科学研究科 修士1年
生体超高分子(豊島研)
三村 久敏 助教
米倉慎一郎 特任研究員
清水 友子 技術補佐員
写真:左から陳、吉田
写真:左から米倉、三村、清水
核内情報
写真:前列左から藤木、田中、辻、肥塚、戸田、加藤、橋場
後列左から于、関根、木村、横山、岡田、山本、田辺
機能形成
宮岡佑一郎 分子細胞生物学研究所 助教
江波戸一希 理学系生物化学研究科 修士1年
廣瀬 恵一 分子細胞生物学研究所 特任研究員
鬼塚 和泉 分子細胞生物学研究所 特任研究員
加藤 英徳 新領域メディカルゲノム研究科 修士1年
谷貝 知樹 理学系生物化学研究科 修士1年
和田 将治 新領域メディカルゲノム研究科 修士1年
佐久 拓弥 新領域メディカルゲノム研究科 修士1年
稲垣 冬樹 医学系研究科外科学専攻 博士1年
写真:後列左から宮岡、江波戸
中列左から廣瀬、鬼塚、加藤、谷貝
前列左から和田、佐久
辻 直也 農学生命科学研究科 修士1年
戸田 康裕 農学生命科学研究科 修士1年
肥塚真実子 農学生命科学研究科 修士1年
橋場 和華 農学生命科学研究科 博士1年
于 太永 農学生命科学研究科 博士1年
加藤 裕美 農学生命科学研究科 博士1年
田中 修 農学生命科学研究科 博士1年(委託博士)
藤木 亮次 助教
山本 陽子 特任研究員
関根 弘樹 特任研究員
木村 周平 学振特別研究員
田辺 真彦 ERATO研究員
横山 敦 ERATO研究員
岡田麻衣子 ERATO研究員
22
創生
若井 信彦 新領域創成科学研究科 修士1年
原田 和幸 新領域創成科学研究科 修士1年
山守 優 新領域創成科学研究科 博士1年
郭 皓 学術研究支援員
Burri, Raghunadha Reddy 学術研究支援員
西原 泰孝 学術研究支援員
二島 渉 学術研究支援員
事務部
矢野 雅彦 専門員
古原 聡美 一般職員
写真:前列右から若井、原田、山守、西原
後列左からBurri、郭、二島(右上)
情報伝達
赤岩 慧 工学系研究科 修士1年
田中 和哉 工学系研究科 修士1年
韓 英讃 工学系研究科 修士1年
山崎 権彦 新領域創成科学研究科 修士1年
写真:左から古原、矢野
写真:左から赤岩(喜)、韓(怒)
、
田中(哀)、山崎(楽)
若手フロンティア研究プログラム(末次研)
千住 洋介 特任研究員
大久保宇啓 理学系研究科博士1年
写真:左から大久保、千住
分子情報
髙橋 理那 理・生物化学 修士1年
春田 諒 理・生物化学 修士1年
前田 七奈 農・応用生命工学 修士1年
松井 真弓 農・応用生命工学 修士1年
写真:前列左から、春田
後列左から、髙橋、松井、前田
若手フロンティア研究プログラム(泊研)
染色体動態(渡邊研)
包 明久 メディカルゲノム専攻 博士1年
Kwak Pieter Bas メディカルゲノム専攻 博士1年
深谷 雄志 メディカルゲノム専攻 修士1年
小林 真希 メディカルゲノム専攻 修士1年
依田真由子 研究所研究生
浅岡 浩平 農学生命科学研究科 修士課程1年
進 寛明 理学系研究科 修士課程1年
渋谷 大輝 農学生命科学研究科 修士課程1年
写真:左から浅岡、進、渋谷
写真:左からPieter、包、深谷、小林、依田
23
2008年度 分生研セミナー一覧
2008年5月1日
2008年6月24日
竹内 純 先生
Professor Malcolm G. Parker
東京工業大学グローバルエッジ研究院
Imperial College London, UK
「組織特異的クロマチン構造変換複合体と心臓形成、
「Transcription Regulation of Target Gene by the
心疾患」
Co-repressor RIP140」
2008年5月27日
2008年7月8日
澁谷 浩司 先生
丸山 一郎 先生
東京医科歯科大学難治疾患研究所
「NLKによる頭部形成制御」
(独)沖縄科学技術研究基盤整備機構
沖縄科学技術大学院大学 先行研究プロジェクト
「細胞膜受容体活性化機構の普遍性⁉」
2008年6月5日
Shioko Kimura, Ph.D.
2008年7月12日
Endocrinology Section Laboratory of Metabolism,
Derek van der Kooy, Ph. D.
Center for Cancer Research,
Department of Molecular Genetics, University of
National Cancer Institute
Toronto
「Secretoglobin(SCGB)3A2:a novel growth
「Clonality, Self Renewal and Differentiation of
factor that promotes lung development」
Mouse and Human Neural Stem Cells」
2008年6月5日
2008年7月15日
Dr Flemming Cornelius
太田 信哉 博士
Department of Biophysics, Aarhus University
Wellcome Trust Center for Cell Biology, the
「FXYD regulation of shark Na, K-ATPase.
University of Edinburgh, UK
Structural and functional interactins」
「Defining the complete protein composition of
mitotic chromosomes」
2008年6月23日
鶴田 文憲 博士
2008年7月16日
Department of Neurobiology, Stanford University
Dr Jack Keene, Ph. D.
School of Medicine
Duke University Medical Center, Department of
「神経系における電位依存性カルシウムチャネルの
新たな役割」
Molecular Genetics and Microbiology
「Dynamic Coordination of Gene Expression by
RNA Operons」
2008年6月23日
Dr Làszlò TORA
2008年8月20日
IGBMC, FRANCE
Professor Gerard Karsenty
「Towards the understanding of the regulation of
RNA Polymerase Ⅱ transcription in a chromatin
Columbia University, Medical Center
「Reciprocal regulation of bone and energy
environment」
metabolisms」
2008年6月24日
2008年8月20日
Professor Michael G. Rosenfeld
Professor Roger Bouillon
Haward Hughes Medical Institute, University of
Katholieke Universiteit Leuven
California, San Diego
「Vitamin D and Health from mice to Human」
「DNA repeats and non-cording RARs as
components of nuclear architectural regulation of
2008年8月21日
gene expression programs」
吉村 昭彦 博士
CW3_A5297D23.indd 23
2009/07/27 9:34:01
24
慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室 教授
「サイトカインシグナルの制御と発がん」
2008年12月16日
岡田 典弘 教授
東京工業大学大学院 生命理工学研究科
2008年9月30日
Stephanie S. Watowich, Ph.D.
「哺乳動物の脳はレトロトランスポゾンの挿入に
よって作られた?」
Associate Professor, Director
Program in Immunology, Department of
2008年12月24日
Immunology University of Texas MD Anderson
片岡 幹雄 博士
Cancer Center
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科
「Immunoregulatory roles for STAT3 and STAT5」
教授
「イェロープロテインの構造と光反応:低障壁水素
2008年9月30日
結合の直接観察とその役割」
Wei Cao, Ph.D.
Structure and phtoreaction of photoactive yellow
Associate Professor,
protein: Direct observation of low barrier hydrogen
Department of Immunology,
bond and its roles.
University of Texas MD Anderson Cancer Center
「Mechanisms Controlling type Ⅰ Interferon
Responses by Plasmacytoid Dendritic Cells」
2009年1月8日
小川 治夫 准教授
東京大学分子細胞生物学研究所 生体超高分子研究
2008年10月14日
岡村 勝友 博士
Eric Lai Laboratory
分野
「GCase受容体の構造解析:膜を隔てた信号伝達機
構の解明、医療への応用へ向けて」
Department of Developmental Biology, SloanKettering Institute
「ショウジョウバエにおける内在性siRNA」
2009年2月13日
花田 智 先生
(独)産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門
2008年10月15日
生物資源情報基盤研究グループリーダー
由良 敬 教授
「難培養・未培養細菌の分離または遺伝情報の獲得」
お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科
研究院 先端融合部門 先端融合系
「RNA editing in plant organelles: Correlation
between editing sites and protein threedimensional structures」
2009年2月24日
児玉 孝雄 特任教授
大阪大学免疫学フロンティア研究センター
「ATPのエネルギーとは何か? 水を主役とした生
体エネルギー変換」
2008年10月31日
川上 泰彦 博士
Assistant Professor
Stem Cell Institute and Department of Genetics,
Cell Biology and Development, University of
Minnesota
「Molecular and genetic mechanisms regulating
vertebrate limb development and regeneration」
2008年12月15日
Dr Jerry L. Workman, Ph.D.
Stowers Institute for Medical Research
「Investigation of nucleosome functions in
transcription regulation」
25
平成20年度科学研究費補助金採択一覧
●文部科学省科学研究費補助金
□特別推進研究
渡邊 嘉典 教授
染色体動態研究分野
染色体の均等分裂と還元分裂の違いを作る分子機構
65,260千円
豊島 近 教授
イオン輸送体の構造生物学
生体超高分子研究分野
127,933千円
□特定領域研究
武山 健一 講師
核内情報研究分野
性ステロイド受容体による転写制御を介した脳の性分化機構
の解明
9,500千円
北尾 彰朗 准教授
創生研究分野
生体超分子立体構造・機能解析のためのシミュレーション法
開発
9,600千円
加藤 茂明 教授
発癌における核内受容体機能の解析
核内情報研究分野
8,800千円
秋山 徹 教授
がん細胞の異常増殖の分子機構
分子情報研究分野
83,000千円
後藤 由季子 教授
情報伝達研究分野
がん化におけるプロテインキナーゼの機能
14,200千円
宮島 篤 教授
肝細胞のがん化における分化制御の異常
機能形成研究分野
10,400千円
橋本 祐一 教授
生体有機化学研究分野
がん増悪因子を制御する抗癌剤の創製
8,600千円
末次 志郎 講師
若手フロンティア研究プログラム
トランスポートソームにおけるリン脂質の役割 13,200千円
深井 周也 准教授
放射光連携研究機構
Yipタンパク質ファミリーの結晶構造解析
3,300千円
城地 保昌 助教
創生研究分野
分子シミュレーションで探るABCトランスポーターの膜輸
送動力発生機構
3,200千円
前田 達哉 准教授
生体超高分子研究分野
酵母カルパインホモログCpl1の活性制御機構の解析 3,200千円
大竹 史明 助教
核内情報研究分野
リガンド依存性ユビキチンリガーゼの機能制御機構の解明
3,400千円
平林 祐介 助教
情報伝達研究分野
大脳皮質神経系前駆細胞の発生時期依存的なニューロンタイ
プの転換機構
4,000千円
城地 保昌 助教
創生研究分野
実空間と逆空間で探る生体分子の集団運動と局所運動の相関
1,800千円
深井 周也 准教授
Exocyst複合体の再構成と構造解析
放射光連携研究機構
3,300千円
北川 浩史 特任講師
若手研究者自立促進プログラム
炎症シグナルによる未知核内受容体転写抑制メカニズムの解明
3,400千円
三村 久敏 助教
放射光連携研究機構
膜蛋白質のコンフォメーション特異的な結晶化を可能にする
抗体断片の開発
2,200千円
高田 伊知郎 助教
核内情報研究分野
液性因子によるエピジェネティクス制御機構の解析 2,400千円
平林 祐介 助教
情報伝達研究分野
ニューロン数決定におけるWntシグナルによる増殖と分化の
カップリングメカニズム
3,000千円
内藤 幹彦 准教授
高次機能研究分野
Apollonによる細胞周期制御因子のユビキチン化と細胞分裂
期の制御
2,900千円
□新学術領域研究(研究領域提案型)/計画研究
多羽田 哲也 教授
形態形成研究分野
ショウジョウバエの記憶形成回路の構造および機能発現の分
子基盤
59,280千円
□基盤研究
後藤 由季子 教授
情報伝達研究分野
神経幹細胞の運命転換における核クロマチンの「グローバル
な」状態変化の意義
18,070千円
加藤 茂明 教授
核内情報研究分野
骨代謝制御因子としての核内ステロイド受容体群の機能
17,160千円
□基盤研究
堀越 正美 准教授
発生分化構造研究分野
ヌクレオソーム構造変換機構を介した染色体機能領域形成機構
4,420千円
細胞形成研究分野
21,300千円
北尾 彰朗 准教授
創生研究分野
サブミリ秒領域で探る超異方的ダイナミクスとフラストレー
ションの蛋白質機能への役割
4,290千円
堀越 正美 准教授
発生分化構造研究分野
クロマチンレベルにおける遺伝子発現制御機構解析に基づく
癌化機構の解明
5,900千円
多羽田 哲也 教授
形態形成研究分野
神経細胞が形成されるメカニズムを明らかにする新たなモデ
ルの提唱
7,800千円
内藤 幹彦 准教授
高次機能研究分野
細胞死阻害タンパク質の機能解析とがん治療への応用
5,500千円
徳田 元 教授
細胞形成研究分野
細菌リポ蛋白質を選別し膜局在化を司るシステムの分子メカニ
ズム
6,630千円
多羽田 哲也 教授
形態形成研究分野
脳機能を生み出すゲノム情報発現の統合的理解を探る
4,600千円
橋本 祐一 教授
生体有機化学研究分野
マルチテンプレート手法とドラマタイプ手法に基づく生物応
答調節
5,980千円
徳田 元 教授
大腸菌エンベロープ形成機構の解明
26
秋山 徹 教授
新規Dlgシグナル伝達経路の解析
分子情報研究分野
1,690千円
川崎 善博 助教
神経突起伸長におけるAPCの機能解析
分子情報研究分野
1,560千円
内宮 博文 教授
細胞機能研究分野
分子シグナル解析によるストレス抵抗性植物の育種基盤
6,630千円
平林 祐介 助教
情報伝達研究分野
大脳発生におけるニューロン分化期の長さを決定するメカニ
ズム
2,080千円
□基盤研究
増田 リリア(中川リリア)博士研究員
高次構造研究分野
ショウジョウバエの幼虫キノコ体において匂い識別学習に関
わる神経回路の機能研究
1,820千円
青山 洋史 助教
生体有機化学研究分野
タンパク質の行動制御に基づく新規活性物質の基礎分子医薬
化学
1,560千円
遠藤 啓太 助教
高次構造研究分野
キイロショウジョウバエ嗅覚神経細胞のクラス特異的な軸索
投射様式の分化機構の解明
1,950千円
大坪 久子 講師
染色体動態研究分野
レトロトランスポゾンの挿入多型と植物ゲノムの多様化の解析
1,690千円
武山 健一 講師
核内情報研究分野
新たな分子遺伝学的アプローチによる新規クロマチン環境制
御のメカニズム
2,210千円
谷水 直樹 助教
機能形成研究分野
3次元培養を用いた肝臓の胆管チューブ構造形成の分子メカ
ニズムの解析
2,080千円
田中 稔 特任講師
若手研究者自立促進プログラム
慢性肝障害と肝線維化におけるオンコスタチンMの作用機序の
解明
2,210千円
北川 浩史 特任講師
若手研究者自立促進プログラム
炎症制御に関わる核内受容体機能の分子基盤の解析 1,950千円
□萌芽研究
伊藤 啓 准教授
高次構造研究分野
色覚研究の成果を活用した色覚バリアフリーな配色設計法の
実現への基礎研究
1,500千円
前田 達哉 准教授
生体超高分子研究分野
活性化型TOR変異体を用いた代謝活性化による組換えタン
パク質生産能の向上
3,600千円
□若手研究
泊 幸秀 講師
若手フロンティア研究プログラム
miRNA機構の生化学的解析
5,200千円
末次 志郎 講師
若手フロンティア研究プログラム
細胞移動先端における重層的アクチン細胞骨格制御の研究
18,200千円
□若手研究
野口 友美 技術職員
生体有機化学研究分野
細胞分化の制御剤としてのサリドマイド
1,170千円
城地 保昌 助教
創生研究分野
低分解能実験データに基づく蛋白質の動的構造モデリング
1,950千円
西村 芳樹 助教
母性遺伝の分子機構を探る
津田 岳夫 助教
結核菌の銅イオンポンプの結晶化
深井 周也 准教授
RabGTPase活性化機構の構造的基盤
細胞機能研究分野
910千円
生体超高分子研究分野
1,690千円
放射光連携研究機構
1,950千円
松本 高広 協力研究院
性依存性精神神経疾患の分子基盤の解明
核内情報研究分野
2,080千円
村上 智史 助教
形態形成研究分野
ショウジョウバエ嗅覚学習系を用いた記憶形成を支える神経
ネットワークの解明
2,470千円
䌝䌝 孝介 助教
生体有機化学研究分野
細胞死制御剤を鍵とした細胞死分子機構の解明
1,820千円
山形 敦史 助教
酵母Asna-1ATPaseの立体構造解析
放射光連携研究機構
2,210千円
那須 亮 助教
分子情報研究分野
c-Jun制御における転写抑制因子Fbl10の機能解析 2,860千円
成田 新一郎 助教
細胞形成研究分野
緑膿菌リポ蛋白質の選択的局在化を支える分子機構の解析
2,600千円
山本 陽子 特任研究員
核内情報研究分野
炎症性疾患に対するリガンド非依存的なビタミンD受容体の
機能の解明
2,600千円
樋口 麻衣子 助教
情報伝達研究分野
原癌遺伝子Aktの選択的機能制御と創薬への応用 2,210千円
横田 健一 特任研究員
核内情報研究分野
酸化ストレスによるミネラルコルチコイド受容体のユビキチ
ン化修飾の変化と心血管障害
2,210千円
□若手研究(スタートアップ)
堀越 洋輔 特任研究員 若手フロンティア研究プログラム
哺乳類上皮細胞のアピカル膜ドメインの形成・制御機構の解析
1,755千円
石北 央 助教
生体超高分子研究分野
蛋白質内における光エネルギー変換反応の研究
1,729千円
石黒 啓一郎 特任研究員
染色体動態研究分野
高等動物における新規の減数分裂特異的染色体分配因子の解析
1,742千円
大西 啓介 特任研究員
情報伝達研究分野
Aktによる細胞極性形成・維持機構の解析
1,742千円
八杉 徹雄 助教
神経幹細胞形成の時空間的制御機構
形態形成研究分野
1,742千円
□特別研究員奨励費
今村 壮輔 特別研究員(PD)
分子遺伝研究分野
植物における光による核内転写誘導の分子機構の解明
1,100千円
桑原 篤 特別研究員(DC1)
情報伝達研究分野
Wntシグナルによる大脳皮質神経系前駆細胞の運命制御メカ
ニズムの解明
900千円
27
北田 祐介 特別研究員(DC1)
形態形成研究分野
脳神経系の機能単位を形づくる分子メカニズムの解明 900千円
宮岡 佑一郎 特別研究員(DC1)
機能形成研究分野
DlkとEsl1の相互作用による細胞分化・組織の発生を制御す
る機構の解析
900千円
若林 賢一 特別研究員(DC1)
生体有機化学研究分野
核内受容体の活性制御理論仮説を基盤とした新規合成リガン
ドの創製
900千円
川口 大地 特別研究員(DC1)
情報伝達研究分野
マウス大脳皮質発生におけるNotch-Delta経路の機能解析
900千円
四宮 和範 特別研究員(DC1)
高次構造研究分野
キイロショウジョウバエ脳を用いた感覚統合を担う神経回路
の探索
900千円
臼井 伸也 特別研究員(DC2)
生体有機化学研究分野
機能性アート錯体による芳香環化学の新反応・新現象・新機構
900千円
佐藤 塁 特別研究員(DC1)
発生分化構造研究分野
蛋白質構造変換酵素PPIaseによる遺伝子発現制御機構論の
構築
900千円
春日 淳一 特別研究員(DC1)
生体有機化学研究分野
論理的設計による新規PPARリガンドの包括的創製 900千円
古山 渓行 特別研究員(DC1)
生体有機化学研究分野
亜鉛アート錯体の論理的設計に基づく、低分子・高分子横断
型機能性分子の創成
900千円
山内 俊平 特別研究員(DC1)
機能形成研究分野
血管内皮細胞と炎症性細胞との液性因子を介した相互作用に
よる免疫応答制御機構の解析
900千円
細田 信之介 特別研究員(DC2) 生体有機化学研究分野
ジフェニルメタン骨格を共通基盤とした核内受容体リガンド
の構造展開
900千円
岸 雄介 特別研究員(DC1)
情報伝達研究分野
大脳皮質神経系前駆細胞におけるSox2の転写・翻訳後制御
の解明
900千円
長野 稔 特別研究員(DC1)
細胞機能研究分野
スフィンゴ脂質代謝経路を介した細胞死抑制機構の解析
900千円
宮崎 隆明 特別研究員(DC2)
高次構造研究分野
キイロショウジョウバエを用いた味覚二次神経の同定と一
次・二次中枢の投射地図の解析
900千円
横山 敦 特別研究員(DC2)
核内情報研究分野
TLX転写共役因子複合体の同定と解析による、神経幹細胞
未分化維持機構の解明
900千円
神谷 敦史 特別研究員(DC1)
分子情報研究分野
Triple A症候群原因タンパク質であるALADINの機能解析
900千円
小木曽 由梨 特別研究員(DC1)
形態形成研究分野
ショウジョウバエの翅を用いたモルフォゲン活性の勾配形成
メカニズムの解明
900千円
加々美 綾乃 特別研究員(DC1)
染色体動態研究分野
減数第一分裂における還元分裂の制御メカニズムの研究
900千円
上川内 あづさ 特別研究員(PD)
高次構造研究分野
ショウジョウバエ聴覚神経系の構造と機能の包括的な解明
800千円
丹野 悠司 特別研究員(DC2)
染色体動態研究分野
オーロラキナーゼBによる、ヒトシュゴシンSgo2の局在制
御機構の解析
600千円
岡 朋彦 特別研究員(DC1)
情報伝達研究分野
ウイルス感染及び二本鎖RNAによるIFN-βの発現制御メカ
ニズムの解析
600千円
相良 将樹 特別研究員(DC2)
分子情報研究分野
癌抑制遺伝子産物APCによるG蛋白質の制御機構の解析
600千円
清水 一道 特別研究員(DC1)
形態形成研究分野
ショウジョウバエキノコ体の発生におけるWntシグナルの機
能解析
600千円
山岸 有哉 特別研究員(DC1)
染色体動態研究分野
保存されたタンパク質シュゴシンの機能および局在化機構の
解析
600千円
阿部 崇志 特別研究員(DC1)
形態形成研究分野
記憶形成のメカニズム解明の基盤となるショウジョウバエ嗅
覚記憶中枢の発生機序の解明
600千円
生体超高分子研究分野
高原 照直 特別研究員(PD)
アミノ酸-mTOR経路構成因子の同定と解析
800千円
塚原 達也 特別研究員(DC2)
染色体動態研究分野
減数第一分裂における染色体の還元分配を制御する分子機構
の解析
600千円
古舘 昌平 特別研究員(DC1)
情報伝達研究分野
胎生期における成体神経幹細胞の起源の探索
600千円
岩崎 信太郎 特別研究員(DC1) 若手フロンティア研究プ
ログラム
ショウジョウバエmiRNA経路における翻訳抑制機構の生化
学的解析
600千円
谷上 賢瑞 特別研究員(DC2)
分子情報研究分野
SETD2の大腸癌発生における遺伝子発現制御機構の解析
600千円
北尾 彰朗 (外国人特別研究員YANG Lee-Wei) 創生研究分野
実験及び理論的アプローチから得られる蛋白質ダイナミクス
情報の相関マッピング
1,100千円
宮島 篤 (外国人特別研究員KASIM Vivi) 機能形成研究分野
肝オーバル細胞の発生・増殖・分化を制御する分子メカニズ
ムの解析
1,100千円
□学術創成研究費
田中 寛 客員教授
分子遺伝研究分野
核・オルガネラコンソーシアムによる真核細胞の構築原理の
研究
118,820千円
□奨励研究
兼崎 友 特任研究員
分子遺伝研究分野
核の光依存的な遺伝子発現制御とレトログレードシグナルの
関係解明
640千円
28
平成20年度受託研究・共同研究一覧
〈受託研究〉
若手研究者自立促進プログラム
特任講師・北川 浩史・特任講師・田中 稔
特任助教・作野 剛士・特任助教・西村 教子
文部科学省
卓越した若手研究者の自立促進プログラム
250,000千円
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
文部科学省
ヒト全遺伝子レトロウイルス型siRNAライブラリの構築
60,000千円
生体有機化学研究分野・准教授・宮地 弘幸
文部科学省
核内レセプターの新規機能解析と構造情報に基づいた線維化疾患
治療法の開発
1,392千円
機能形成研究分野・教授・宮島 篤
情報伝達研究分野・教授・後藤由季子
文部科学省
(研究代表者:医科学研究所・教授・中内 啓光)
ヒトips細胞等を用いた次世代遺伝子・細胞治療法の開発
18,960千円(分生研受入分)
創生研究分野・准教授・北尾 彰朗
(独)科学技術振興機構
バイオ分子間相互作用形態の分子力場モデリング
核内情報研究分野・講師・武山 健一
(独)科学技術振興機構
AhRとERの相互作用及び分解制御機構
若手フロンティア研究プログラム・講師・泊 幸秀
(独)科学技術振興機構
RNAi複合体形成の生化学的解析
若手フロンティア研究プログラム・講師・末次 志郎
(独)
科学技術振興機構
細胞膜形態決定の動作原理の解明
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
第一三共(株)
癌化シグナルの解析
5,500千円
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
(独)理化学研究所
ヒト全遺伝子レトロウィルス型siRNAライブラリの構築
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
(独)理化学研究所
APC/β-cateninシグナル伝達経路の分子基盤の解明
生体有機化学研究分野・准教授・宮地 弘幸
(独)理化学研究所
新規HDAC阻害の創製
生体有機化学研究分野・教授・橋本 祐一
(独)理化学研究所
天然型および非天然型レチノイド類のPETプローブ合成とその動
態研究
高次機能研究分野・准教授・内藤 幹彦
(独)理化学研究所
AppolonおよびFLIP遺伝子を標的とした特定遺伝子に点突然変異
をもつマウスの作成と解析
7,800千円
16,250千円
若手フロンティア研究プログラム・講師・末次 志郎
(独)理化学研究所、神戸大学
RhoファミリーGTP結合タンパク質関連タンパク質の構造機能研究
9,100千円
1,050千円
5,850千円
高次構造研究分野・講師・伊藤 啓
(独)産業技術総合研究所、京都大学霊長類研究所
ショウジョウバエの立体脳画像をWeb上で提供する研究
創生研究分野・准教授・北尾 彰朗
(独)日本原子力研究開発機構
生体分子シミュレーションシステムを用いた生体分子機能の解析
研究
創生研究分野・准教授・北尾 彰朗
(独)日本原子力研究開発機構
生体物質分子運動のシミュレーションシステム開発
創生研究分野・准教授・北尾 彰朗
(独)日本原子力研究開発機構
計算科学を用いた生命情報解析研究(B)
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
(株)カン研究所
DLG1癌抑制因子結合タンパク質に関する研究
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
住友化学(株)生物環境科学研究所
ステロイドホルモンレセプターに関連した毒性や疾患に関する研究
〈共同研究〉
〈共同実施契約〉
14,845千円
機能形成研究分野・教授・宮島 篤
田辺三菱製薬(株)
肝細胞に対するUDCAの作用総括評価及び新規肝線維化抑制剤の
探索研究
1,420千円
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
大塚製薬(株)
前立腺癌におけるアンドロゲンレセプター調節機構に関する研究
2,000千円
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
中外製薬(株)
活性型ビタミンD誘導体の骨組織への作用機序の解明
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
帝人ファーマ(株)
核内レセプターに関する研究
染色体動態研究分野・講師・大坪 久子
(独)理化学研究所
トランスポゾンIS1の転移酵素のインヒビタータンパク質InsAの
構造とDNA結合様式の解析
細胞機能研究分野・教授・内宮 博文
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
メタボローム解析による高CO2適合型農林作物における新陳代謝
変動の同定
10,000千円
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
(独)科学技術振興機構
核内受容体転写共役因子複合体の機能解析
3,000千円
16,900千円
高次機能研究分野・准教授・内藤 幹彦
メビオファーム(株)
トランスフェリン付加リポソームの作用機序に関する細胞学的研究
1,000千円
生体有機化学研究分野・教授・橋本 祐一
(独)科学技術振興機構、鹿児島大学(再委託)
C型肝炎に対する治療薬の研究開発
分泌蛋白質cDNAの機能解析
2,200千円
機能形成研究分野・教授・宮島 篤
キリンファーマ(株)
(現 協和発酵キリン(株))
HSKIシステムを利用した、肝障害時に発現誘導される機能未知
創生研究分野・准教授・北尾 彰朗
文部科学省、大学共同利用機関自然科学研究機構
次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発(次世
代エネルギー、次世代ナノ生体物質、次世代ナノアプリケーショ
ン連携ツール、システム運用、統括管理)
〈補助金〉
グローバルCOEプログラム
染色体動態研究分野・教授・渡邊 嘉典
核内情報研究分野・教授・加藤 茂明
分子情報研究分野・教授・秋山 徹
情報伝達研究分野・教授・後藤由季子
形態形成研究分野・教授・多羽田哲也
機能形成研究分野・教授・宮島 篤
文部科学省(研究代表者:本学大学院医学系研究科教授・宮下保司)
生体シグナルを基盤とする統合生命学(A03)
109,528千円(分生研受入分)
29
留学生手記
創生研究分野 修士2年 丁 月曦(テイ
ゲッキ)
2009年4月9日
Hさんまだなんも答えなかったうちに、Nさん「ヒ
弾指一揮間
モ⁉うらやましいなぁ、僕もヒモになりたい!」っ
桜が満喫の春、日差し、安田講堂前の銀杏並木を
て興奮になってきた。
通った時、日本に来てからもう一年半経ったと気付
Sさんも「おー!僕もこういうヒモ生活を憧れて
いていた。
いるねぇ。」って嘆いた。
一人で初めて日本の土を踏んだ時、この自分が全
それを聞いた私の顔はたぶん目が広く開けるちび
然知らず国でどういうふうな人達は生活しているだ
丸子ちゃんの顔と一緒だったと思う。
ろうと興味を持っていたが、カルチャーショックを
初めて日本の男の子達には斬新な認識があった。
受ける心準備だった。
私は確かに21世紀の世界で生きているわけだ。
最初の一か月、ワクワクしていた。新しい人と会っ
結論:国籍かかわらず、みんなはただの人間であ
たり、新しいところに行ったり、もちろん、新しい
るそういうこともんだ。
刺激されたりした。結果的に、後の一か月、落ち込
一瞬で国と国のけじめがはっきりしなくなってき
んでいた。フルタイム女学生が第一人として、外向
たと感じた。
的な性格の私は、研究室の男ばかりの雰囲気で息が
この研究室にいる日々が私の指先の間から静かに
荒かった。物理系の授業で同じ状況だった。生半可
流れていく。嬉しいでも、悲しいでも、寂しいでも、
な日本語で言うことが支離滅裂であった。でも、嬉
忙しいでも、勉強、研究、喧嘩、争論しても、いく
しいことに、みんな優しかった。
ら大変しても、これは全部貴重な思い出だと思う。
時間が経って、だんだんみんなと熟知してきた。
生活はもともといい時があるし、悪い時もあるとい
日本人が仕事にまじめな特徴をよく分かってきた同
うことだ。
時に、意外に面白い面も見つけた。
そのうち、人間はそれぞれ、十人十色だというこ
例えば、一番印象深い冗談。
と初めて分かってきた。ほかの人の考え方を尊敬す
ある日、日本の核家族パタンについて、質問した。
る上で、寛容な意識して、コミュニケーションした
私:日本の家庭で、全部男働き、女主婦?中国で普
い意欲をちゃんと持っているポイントだと思いま
通共稼ぎですよ。
す。これは私の留学生活中一番勉強になることだろ
Tさん:そうだよ。
う。
私:もし逆になったら、みんな受け入られる?
お互い励まし。
Hさんしきりに頭を振りながら、
「これ絶対だめ」っ
て答えた。
TさんはHさんにうなずいて納得した、
「うん」っ
て言った。
その後一週間、Hさんは私と図書室のバイトにつ
いて話した。
私:Hさん今お金ほしいなの?
Hさん:うん。いっぱい、いっぱいほしい。
私:でも、以前ずっとバイトとかしてないでしょ
う?じゃ、以前のお金はどこから?
Tさんくすくすと笑って、「もし、、ヒモ?」
あっという間、私、がんーな表情になった。
30
ドクターへの道
林 陽平(発生分化構造研究分野)
みなさんは、堀越研にどんなイメージを抱いてい
学院生の時間を大いに費やしてしまいがちな問題に
るだろうか?私が初めて分生研の飲み会に参加した
早めにけりをつけられる点にある。どう転んでも研
のは確かD1の時だったが、痛烈に感じたのは、
「堀
究者と決めているなら、どのような戦略で研究を展
越研は大いに誤解されているなぁ。」ということだっ
開するかという次の問題に、そして長期的な研究計
た。その誤解の原因を作ったのは他ならぬ我々研究
画を考える訓練に早めに着手できるからである。実
室員だとも感じた。当時余裕がなかった私は他研究
際、出身者の多くが研究者として独立するか、他研
室との交流を希薄にしていたため、自分達がどんな
究室でポストを獲得して多様な分野の研究に従事し
指導を受けているのか、どんな研究をしているのか
ている。
を正確に伝える機会を持たず、又聞きの又聞きのよ
私が修士2年を修了した時のことを考えると、も
うな噂が横行するのを静観していたのではないか、
しあの時就職していたら、それまでの数年間で学び
と。この度堀越研の「ドクターへの道」をみなさん
始めたことの多くは身に付くこと無く消えていただ
に伝える機会を頂けたことに感謝しつつ、書き始め
ろう。博士課程はそれまでに学んだ様々なことを基
たい。
盤として、自分の能力や甘えを再発見し、プロとし
私は、元々「どうしてもこれをやりたい!」とい
ての自覚とあり方を確固たるものにしていく過程だ
うものがある人間ではなかったが、高校の生物の授
と思う。今やD3となり、私が研究を始めて早5年
業で、誰が造った訳でもない生体内に整然とした美
が経過してしまった。堀越研では、「1人前の研究
しいシステムが多数存在することに感銘を受けて以
者として世界中の先駆者から評価を受けるには10年
来、漠然と生物系の科学者に憧れた(生体システム
が必要であった。」と最初から伝えられている。私
が整然とした美しさを獲得しただけでなく、環境変
はようやく折り返し地点に来たところだ。この5年
化に柔軟に対応できる頑強性・しなやかさも有して
間は入力9:出力1ぐらいで「学ぶ難しさ」が圧倒
いるという主旨の論文を最初に発表できた(研究最
的に強かったが、今後5年間は「生む難しさ」が強
前線を参照)のも、その憧れに関係があるのかもし
くなり、これまで身に付けたことが本物であったか
れない)
。一方で、自分が勉強で得た知識や技術が、
も含め科学者・教育者としての資質が試されると考
今後の人生でどのように役立つのか全く検討も付か
えている。
ず、
その答えを知りたい一心で東京大学に入学した。
最後になるが、D1で飲み会に参加して以来、分
しかし、待っていたのは「高校生物に毛が生えた程
生研のイベントには出来るだけ参加させて頂き、堀
度の授業」で、答えの提示は望むべくもなかった。
越研の姿を伝え、他研究室の姿も見て違いを知った。
そんな中、教養学部1年の後期課程で堀越先生が
その中で、他研究室の同期を始め、様々な方々に暖
主催する全学自由ゼミナールの授業に出席した。堀
かく迎え入れて頂き、充実した毎日を過ごせている
越先生の授業では、教科書で学んだ内容が紙の上を
ことに感謝して結びたい。
飛び出て、実に生き生きと頭の中で連結して論理を
構築している様を後方の席から眺めていた。その時、
自分が学んできたことを無駄にせずに進める道が見
えたような気がした。薬学部に進学してしばらくは
そんなことも忘れ、流されるまま薬漬け(誤解なき
よう)の毎日を過ごしたが(そのため、この時期に
もっと勉強をしとけばよかったと後悔した)
、偶然
会った千○自慢ラーメン店の前や薬学部の説明会で
堀越先生の話を再び聞いて、心を決めた。
堀越研は、本来の目標が「独創的な科学者・教育
者を育成する」ことにあるため、修士から入る学生
でも、
博士までの5年間研究することを前提とする。
その点、他の多くの研究室とは異質かもしれない。
このシステムのよい点は、就職か博士か、という大
堀越研での議論で作成したノート。学ぶことは尽きな
い…。
31
OBの手記
明治乳業株式会社 研究本部 食機能科学研究所 元微生物微細藻類研究分野(現バイオリソーシス研究分野)
石田 達也
皆様こんにちは、私が微生物微細藻類(現バイオリソー
シス)研究分野で研究を始めたのは1995年の事でした。分
生研で過ごした5年の間には様々な出来事がありましたが、
中でも一番印象に残っていますのはなんといっても分生研・
農芸化学名物のソフトボールです。
「ソフトの強さと研究の
良さは比例する」と卒論の時の先輩に教えられたこともあ
り、良い研究が出来るよう、シーズンになればPCRの合間
を見てはグラウンドに飛び出したものです。炎天下の中、
守備練習ばかり2時間も3時間行っていたことも度々あり
ました。おかげさまで平均年齢は高い(30歳以上!)が団
結力のあるチームとなり、農芸化学の大会でベスト4に進
出できたのは大変良い思い出となっています。
研究生活を振り返ってみますと、最初に横田明先生より
「シアノバクテリアは宝の山だ」と教えられ、糸状体を特徴
とする目、Oscillatorialesを対象とした分類学的な研究を行
うこととなりました。ところがいざ始めてみますと、そこ
はさすがに宝の山。生育速度の遅い菌株が多く、2週間培
養して緑に色づく程度、2ヶ月培養してようやく試料にと、
なかなか仕事が進まなかったものです。また当時は分子系
統分類の黎明期でもあり、私も16S rDNA、groELの塩基配
列決定・系統解析等に携わることとなりました。配列決定
方法がRIからオートシーケンサーに切り替わった頃でもあ
り、大変便利にはなったのですがまだまだ解析スピードは
遅く、事前に数日準備した後、一晩泳動してようやく数kb
の配列決定というものでした。現在では全ゲノム、メタゲ
ノ ム が 対 象 と さ れ る よ う に な り、 解 析 手 法 も
pyrosequencing、一分子シーケンサー、さらにはSMRT法
が控えているなど、その頃では到底想像のつかない解析ス
ピードになりました。自分の関連する分野でムーアの法則
以上のことが起こっているということは大変感慨深いもの
です。このように学生時代は時間を要する実験ばかりして
いた気がしますが、分生研から援助を頂けたこともあり、
それらの結果をまとめオーストラリアのシドニーで開催さ
れ た9th. ICBAM(International Congress of Bacteriology
and Applied Microbiology)で発表できたのは良い機会で
した。会場ではCastenholz博士の様な当時は教科書でしか目
にしたことのない方とも顔を合わせることができるなど大
変貴重な経験となりました。ただ思うように話すことがで
きないことも多く、語学力の必要性を強く感じたものです。
卒業後は産業技術総合研究所で2年、国立健康・栄養研
究所で3年、どちらも微生物に関わる仕事に従事しました。
これまでと異なり研究一本というわけではなかったのです
が、後者の研究所では特定保健用食品の試験業務にも携わ
るなど、逆に研究以外のことを勉強できたことは大変良い
経験になりました。現在は明治乳業の小田原にある研究所
で食と健康に関する研究として乳酸菌をはじめとする腸内
細菌について研究しており、時には動物を扱う事もありま
す(学生時代には思ってもいませんでした)
。腸内細菌と宿
主との関係は知られているようで知られていない部分もま
だまだ多く、また一対一の対応ではないこともありますの
で結果の解釈が難しいこともありますが、その分やりがい
のある研究分野であります。また研究所は様々な分野の人
が集まっているのですが、風土の異なる研究者の話を聞く
ことは結構勉強になるものです。他分野の情報の必要性を
日々感じており、分野が違えば物事の考え方・切り口が異
なるのですが、思わぬ所で参考になることが良くあります。
他にも興味半分で参加した外部のセミナー・シンポジウム
での情報が考察の助けになることもあります。学生時代に
もっと外の分野・世界に目を向けてみても良かったと思っ
ており、現在はなるべく他の分野にも目を向けて視野・知
識を広げるように務めています。
分生研は所内発表会、分生研セミナーをはじめとして他
分野の研究を身近に感じる・知ることができる環境が整っ
た素晴らしい研究所です。学生のみなさんも自分の専門分
野だけでなく、周りの研究室の話に耳を傾けてみるのも良
いかもしれません。意外なところに研究のヒントが転がっ
ているものです。同じ研究所内でも専門外の分野との交流
は一見敷居が高いように感じますが、分生研ソフトボール
などをきっかけとしてはいかがでしょうか。
最後になりますが分生研のますますのご発展をお祈りし
て終わりとさせて頂きます。この度は原稿依頼ありがとう
ございました。
ホームカミングデイにて(中央が筆者)
32
海外ウォッチング
California Pacific Medical Center Research Institute
羽鳥 勇太
現 在 米 国 サ ン フ ラ ン シ ス コ に あ るCalifornia Pacific Medical
Center Research Institute(CPMCRI)でポスドクをしております。
理学修士・博士過程を豊島研で過ごし、2008年に分生研を卒業し
てCPMCRIのDr. Inesiの研究室に移りました。Inesi研はカルシウ
ムポンプの生化学を専門とし、天然およびリコンビナント蛋白質
を材料に反応サイクルの酵素学的・電気生理学的解析を行って
イオン輸送と基質認識の分子機構を研究しています。私はここで
そのノウハウを利用して銅イオンポンプを対象とした研究を行っ
ております。この銅イオンポンプが中々手のかかる遺伝子、蛋白
質で、リコンビナントの発現が容易ではないのですが、それ故に
その機能は十分に理解されておらず、この分子に関する研究にお
いて世界をリードできる日を夢見ながら毎日実験に励んでおりま
す。
さて、そんな夢はさておき、現実的な問題としまして、僕の英
会話のスキルは移民の多いサンフランシスコでも最低の部類で
す。正直申しまして、成田空港の税関ゲートをくぐってから今日
まで、自分より英語のできない人に出会ったことがありません。
それでも意外と生きていけますし、研究者として好評価してくれ
る人もいたりします。これは、CPMCRIとサンフランシスコに特
有のリベラルな風土から授かった奇跡だと感じずにはいられませ
ん。そのサンフランシスコに関して特筆するならば、まずアメリ
カでも数少ない「車がなくても生きていける街」であることが挙
げられます。市街の至る所にレンタカーのガレージがあるので、
ドライブも引越しもそれで済ませています。またサンフランシス
コは家賃が高いことで有名ですが、それ故にダウンタウンで暮ら
す庶民にとってはハウスシェアが欠かせません。私もその例に漏
れず、渡米当初は1フロアに5人のすし詰め生活、次に2人、そ
して今は成り行きで共働き夫婦の家に居候しております。治安に
ついては、危険なブロックは本当に危険なのですが、そういう場
所を夜に歩いたりしさえしなければ問題はないかなと感じます。
食に関しては、移民やその子供が多い街ですので、様々な国の料
理を楽しむことができて、鮨をはじめとした日本料理のお店も多
いです。日本では鮨とえいば○ッパ寿司以外には足を運ばなかっ
た鮨ビギナーの私ですが、日本人故に何かとその手の店に誘われ
る機会が多く、日本にいた時よりむしろ頻繁に鮨を食べています。
ネタの質はまあまあですが、赤身2カンで4$というのは中々懐
が痛みます。赤身を口にする度に、
「○ッパだったら同じ値段で
これトロだ」と思わずにはいられません。総合しまして、サンフ
ランシスコは私には大変住みやすい街です。あるセミナーで「サ
ンフランシスコは僕にとって最も相性のいい街の一つです」と言
いましたところ、何人かの聴衆から「お前だけじゃなくてみんな
そうだ」とヤジられてしまい、サンフランシスコを住みやすい街
と感じる人は多いのだろうなと思いました。
CPMCRIの研究環境。まず、ハードウェアに関しては、分生研
の方が規模が大きく設備が充実しております。ですがラボの数も
分生研ほど多くないので、機器の競合もなく、あまり不自由はあ
りません(飽くまで自分の研究テーマに関する限りですが)。不
夜城の分生研とは違い、多くの人は夕方で仕事を終え、土日も来
るという人は限られています。これは自称「働きバチより働くポ
スドク」の私にはむしろラッキーなことでもあり、土日と平日の
夜は顕微鏡やフードを占拠させて頂いております。研究所の雰囲
気に関しましては、こじんまりとした機関であるからか、概して
言えば非常に和やか且つフレンドリーです。研究室間には物理的
な壁がありませんので、異なる研究室間での議論や試料・機材の
供与は日常的に行われております。英語のつたない僕ですが、イ
ネシ研をはじめ所内の研究者の方々(写真1)はポジションや所
属を問わず皆快く議論に応じてくれます。所内外での共同研究が
活発に行われているのには、こうした日常のコミュニケーショ
ンが背景としてあるのだと感じます。CPMCRIの研究内容に関し
ましては、ウェブサイト(http://www.cpmc.org/professionals/
research/programs/)をご覧になって頂ければと存じます。ま
た、ポスドクといえど、Administrative teamの皆さん(写真2)
との連携は不可欠です。フェローシップ申請書作製、証明書作製
(こちらでは主にレター)
、給与・税金関連、ネットワーク、英語
の勉強、生活情報。
。。実験に直結することもしないこともあらゆ
る面において助けてもらってます。CPMCRIは、海外留学を考え
ている方々にとってもまだ馴染みの深い研究機関ではないと思う
のですが、私にとってこれ程恵まれた研究環境は他にないような
気がします。
最後に、
「海外に行ってみること」についての主観的な感想を
もって結ばせて頂きます。海外に行くにはそれなりに準備が必
要です。でも完璧なプランを仕上げることは中々難しいことで
す。映画タイタニックのジャックがローズに対して「その情熱の
炎はやがてしぼんで消えてしまうだろう」と言ったように、情熱
はいつまでも変わらずにあるものではないと思います(refが古く
て・ミーハーですみません)。英語もろくに話せない段階で海外
赴任のチャンスに飛びついた私は極端な例ですが、そんな無謀な
冒険も時に軌道に乗る?こともあるということで、言語・文化の
違いから海外留学を躊躇する方の後押しになったら幸いです。日
本を発つ前に「肝心なのはハート、それがあれば何とかなる」と
励ましてくれた研究室の友人の言葉はこの頃、確信に変わりつつ
あります。その情熱を育ててくださった豊島先生には感謝の言葉
がございません。そして海外での孤独を幾度となく慰めてくれた
サンフランシスコの夜景に今日も乾杯(ビール500ml缶がSFでは
$1.5)。
1. Pople in the CPMCRI.(L to R)Meta
(admin team),
Dmitri (Beattie lab), Manisha(Muschler lab)
,
Y.(the author, Inesi lab), Mallika(admin team),
Rajendra
(Inesi lab)
.
2. Pople in the CPMCRI.(L to R)Rosa, Connie, Sue,
Y., Valerie.
33
研究室名物行事
放射光連携研究機構 助教 山形敦史
はじめまして、放射光連携研究機構の山形です。当
研究室は、その名前からは何をやってる研究室か全く
分からないと思います。当研究室ではX線結晶解析法
によるタンパク質の立体構造解析と、それを基にした
生化学的な研究を行っております。設立から1年弱と
るべく頑張っています。
ここまで読まれた方は、このイベントをあまり楽し
くないイベントのように思われるかもしれません。し
かし、実際にはプチ旅行気分も手伝ってなかなか楽し
いイベントなのです。休憩時のおやつタイムは、徹夜
いう生まれたてのような状況に加えて、学生職員併せ
てもたったの4人という核家族研究室ですので、残念
ながらこれといった名物行事がありません。しかし、
当研究室には、4人全員が一致団結して徹夜で頑張っ
てしまうスペシャルイベントがあります。それは、今
や結晶構造解析には欠かせなくなったシンクロトロン
時の妙なテンションの高さも加わり、とても楽しみな
時間の一つです。普段はちょっと敬遠しがちなジャン
クなおやつや夜食を目一杯買い込んで出発するのは、
いつもながらちょっとわくわくする時間です。また、
夕食も楽しみな時間の一つです。SPring-8では食事は
施設内の食堂で済ませることが多いのですが、Photon
放射光施設でのデータ測定です。
御存知の方も多いとは思いますが、シンクロトロン
Factoryの場合、たいてい自転車を借りて近くのレスト
ランまで出かけることが多いです。Photon Factory自
放射光施設とは、一般のX線発生装置とは比べものにな
らないくらい強力なX線を発生させることのできる大
型施設です。我々は、つくばにあるPhoton Factoryと
兵庫県播磨のSPring-8の二つの施設を使用しています。
この施設を使って実際に何をしているのかですが、一
体は筑波駅からさらにバスで30分近く走った閑散とし
たところにありますが、その近くには2軒の個性豊か
なレストランがあり侮れません。一軒は、シーフード
レストランの「メヒコ」です。メヒコとはメキシコ語
でのメキシコの発音で、メキシコ伝統の帽子をかぶっ
言で言いますと、苦労して作ったタンパク質の結晶を
装置に載せて、後は機械任せによるほぼ自動のデータ
測定です。ではなぜ徹夜なのかと思われるでしょうが、
たメキシコ人らしき人物がキャラクターとして描かれ
ています。しかし、メニューはカニを中心としたシー
フード系ファミリーレストランです。このレストラン
その理由として、実験できる時間として割り当てられ
たシフト(ビームタイムと言います)は何故か夜ばか
りでありことが挙げられます。シンクロトロン放射光
施設は日本だけでなく世界からも利用希望が多く集ま
る施設ですから、昼だけでなく夜も絶え間なく動いて
います。加えて、一研究室に割り当てられるビームタ
イムは一ヶ月に一度あるかないか程度ですから、貴重
なビームタイムを無駄に使う訳にはいきません。そこ
の最も驚くべきことは、なんとフラミンゴを飼ってい
るのです。それも1、2匹ではなく、動物園とひけを
とらないくらいの数のフラミンゴがちゃんと飼育され
ているのです。フラミンゴで客を寄せるキワモノレス
トランと思われるかもしれませんが、料理の方もなか
なかのレベルで、この前食べた季節限定のソフトシェ
ルクラブというかにの唐揚げはとてもおいしかったで
す。もう一軒はその近くにある「珈琲哲学」というレ
で、たとえ夜シフトであろうとも、次から次へと持て
る結晶を測定し、出来る限り有効にその時間を使い切
ストランです。コーヒーを珈琲と漢字で表記する上に
哲学までくっつけたたいそうな名前ですが、中身はファ
ミレスです。ポリシーを感じるちょっと奇妙なヨーロッ
パ調の建物の中に入ると、コーヒーの良い香りとおい
しそうなケーキのショーウィンドが出迎えてくれます。
夜は、贅沢にもピアノの生演奏付きというなかなかシャ
レた雰囲気です。パスタ類が豊富で、どれも意外にボ
リューム満点なので、肝心のコーヒーやケーキにまで
胃が頑張れないときがあるのが残念です。このように
なかなか個性豊かなレストランをめぐるのもシンクロ
トロン測定の楽しみの一つです。ちなみに両レストラ
ンともチェーン展開しているみたいですので、どこか
で見かけたら一度お試しください。最後に、このよう
写真:レストラン「メヒコ」のフラミンゴ
に日夜頑張っている我々ですが、もし我々と一緒に構
造解析をしてみたいというサンプルがありましたら、
お気軽に声をかけてくださると幸いです。
34
第24回バイオテクノロジー懇談会を開催
2月19日(木)16:00より、武田先端知ビル5階
る。HIVやエボラウイルスなどは、感染した細胞か
武田ホールにて、第24回バイオテクノロジー懇談会
ら出芽する際に、受容体のリサイクル経路を利用す
が開催されました。後援を財団法人応用微生物学研
ることが知られており、エンドソーム上での選別に
究奨励会が、幹事をアサヒビール株式会社様、大正
関わる因子とAMSHの働きを抑えることでウイル
製薬株式会社様が務められました。
スの出芽が抑制される。また、がん細胞では、EGF
本懇談会の目的は企業との交流や情報交換です
受容体の分解が抑えられ、リサイクルが促進されて
が、宮島所長がご自身の講演の後半で、産学連携へ
いる可能性もある。AMSHの阻害による制がん剤
の課題を述べられております。
や抗ウイルス剤の開発の可能性についても触れてみ
講演終了後はホワイエで、企業関係者とともに懇
たい。
親会が開かれました。
プロシアニジン・オリゴマーはリパーゼおよび中性
講演の要旨
脂肪の吸収を抑制する
受容体の分解を制御する脱ユビキチン化酵素の立体
アサヒビール株式会社 コーポレート研究開発本部
健康おいしさ研究所 栄養生理解析部 杉山 洋
構造とその応用
放射光連携研究機構生命科学部門
りんごポリフェノール(AP)はアサヒビールグ
准教授 深井 周也
ループにより開発、研究されてきたりんご幼果果汁
タンパク質分解のシグナルとして知られるユビキ
より製造されるポリフェノール画分である。これま
チン(Ub)は、近年、様々な細胞内プロセスを制
でわれわれはAPによる抗酸化、抗アレルギー、抗
御することが示されており、複数個のUbがつながっ
腫瘍等の多様な生理作用を確認してきたが、今回は
たポリUb鎖として機能する例が知られる。Ubは、
肥満に対する作用とそのメカニズムを中心に報告
自身のリジン残基と別のUbのC末端のグリシン残
する肥満傾向を有する被験者に一日600mgのAPを
基とのイソペプチド結合によりUb鎖を形成するが、
12週間摂取させたところ腹部内臓脂肪の減少が確認
Ubには7つのリジン残基が存在するため、どのリ
された。動物試験においては、APの摂取が1)食
ジン残基を介して結合するかによって形も機能も異
後の血中トリグリセライドセライドの上昇を抑制、
なるポリUb鎖が合成される。プロテアソームによ
2)糞中脂肪酸排泄量を増加させることから、AP
る分解シグナルとして働くのはLys 48結合型のポリ
はトリグリセライドの消化吸収を阻害することで肥
Ub鎖であるが、Lys 63結合型のポリUb鎖はNF-κ
満に対する有効性を発揮している可能性が考えられ
Bシグナリングや受容体の下方制御などのプロセス
た。この仮説を検証する目的で、膵リパーゼに対す
で働く。例えば、EGF受容体は、EGFとの結合に
るAPの影響を調べた。APは膵リパーゼに対する阻
より活性化すると、細胞内領域がLys 63結合型ユビ
害効果を有しており、なかでもプロシアニジン類が
キチン鎖により修飾され、エンドサイトーシスによ
その活性に大きく寄与していることが明らかとなっ
り細胞内へと取り込まれる。その後、エンドソーム
た。続いて、順相クロマトグラフィーによりプロシ
上で選別を受け、リソソームへと運ばれて分解され
アニジンを重合度別に分取し評価することでさらな
る。
る解析を行った。2量体から5量体にかけて、プロ
AMSHお よ びAMSH-LPは、Lys 63結 合 型Ub鎖
シアニジンの膵リパーゼに対する阻害作用は重合度
に特異的な脱Ub化酵素であり、Ub化されたEGF受
に伴って上昇した。その後、5量体以上のプロシア
容体からUb鎖をエンドソーム上で切り離すことに
ニジンについては、重合度に関わらずほぼ一定の阻
よって、EGF受容体を細胞膜上へとリサイクルす
害作用を示した。これらの結果から、APの有する
る。 我 々 は、AMSH-LP単 体 とLys 63結 合 型Ub二
膵リパーゼ阻害作用はAPに含まれる比較的重合度
量体との複合体の結晶構造を決定し、Lys 63結合型
の高いプロシアニジンが果たす割合が非常に大きい
Ub鎖特異的な切断機構を解明した。特定のポリUb
ことが示された。AP由来プロシアニジンの経口摂
鎖を識別する機構を解明した世界で最初の成果であ
取が食餌由来のトリグリセライドの消化吸収を抑制
35
し、非重合型のポリフェノールにおいてはその作用
ら発生する。我々は肝臓の発生・分化の研究におい
が観察されなかったことも本仮説を支持していると
て、肝芽細胞に発現する分子のスクリーニングから
考えられた。これらの結果から、APは内臓脂肪型
EGFリピートをもつ細胞膜タンパク質Dlkを同定し
肥満への有効性を有しており、その作用は含有され
た。マウス胎児肝臓から抗Dlk抗体とセルソーター
る重合度の比較的高いプロシアニジンによる膵リ
により分離したDlk陽性細胞は、in vitro で増殖して
パーゼ阻害に起因することが示された。
肝細胞と胆管上皮細胞へと分化したことから、肝幹
発表者略歴1996年 東京大学農学生命化学研究科
細胞を含む未分化細胞であることが明らかとなっ
応用生命工学専攻 博士課程前期 修了同年 アサ
た。Dlkの発現は肝発生に伴い減弱し、成体肝では
ヒビール株式会社 入社 現在に至る
完全に消失したが、肝癌組織においてはDlkの発現
が高頻度に認められた。すなわち、Dlkは胎児性癌
肝臓の幹細胞研究から肝癌治療抗体の開発
抗原である。また、Dlkは細胞膜タンパク質であり、
分子細胞生物学研究所・機能形成研究分野
成体における発現は一部の組織に限局していること
教授 宮島 篤
から、癌治療抗体開発の標的となる可能性が考えら
肝臓は、代謝、解毒、胆汁産生、血清タンパク質
れた。事実、ヒト肝癌細胞の増殖を抑制する抗ヒト
の産生など多彩な機能を担う生命活動の維持に必須
Dlkモノクローナル抗体がバイオベンチャーの㈱リ
の臓器であり、これらの機能は肝細胞が担う。ま
ブテックにより作製され、これを使った治療抗体の
た、肝細胞より産生される胆汁は胆管を介して排出
開発が進行している。我々の基礎研究がこの実用化
される。肝臓の幹細胞は肝細胞と胆管上皮細胞への
研究に発展した経緯を述べるとともに、基礎研究を
分化能を備えた細胞と考えられている。胎児肝臓の
実用研究へと発展させる仕組みにつき私見を述べ
幹細胞である肝芽細胞は胎生中期の腸管上皮細胞か
る。
― 国際会議に出席してみて ―
創生研究分野 桜庭 俊
ら吹雪となり、会場である Boston Convention and
Exhibition Center への行き帰りなどが大変でした
2009年 2 月28日 か ら 3 月 4 日 ま で の 5 日 間、
(モノクロなので分かりづらいかもしれませんが、
Boston,MA(USA) で 開 催 さ れ たBiophysical
会場の写真は周り一面雪です)
。天気予報で“Total
Society 53rd Annual Meeting(生物物理学会53回年
snow accumulation of 10 to 14 inches”と聞いたと
会)に参加して参りました。
“Biophysical society”
きの絶望感は今も忘れられません。
と名にある通り、この学会は生物物理学者が集う学
学会本体は世界中から生物物理学者が集まる学会
会です。生物物理学と言われると耳慣れない人も多
ということもあって、王道とも言える研究から、耳
いと思いますが、「主に物理学的手法に基づいて実
慣れない手法まで、様々な研究を聞くことが出来ま
験生物学を行う学問」を指す、という解釈が普通な
した。私は生体分子の分子シミュレーションとよば
ようです。実際の学会での発表内容から例を出すと、
れる分野で現在研究を行っているので、特に自分の
神経・筋電位測定や分光法、シミュレーションに一
研究分野に限って話しますと、D.E. Shaw Research
分子計測といった様々な(主に物理学的な)観測技
グループの口頭発表が衝撃的でした。彼らのグルー
術を用いて「生物とは何か・どのような仕組みなの
プの行ったシミュレーションの計算時間は現在日
か」を解析する、といった具合です。
本で行われているシミュレーションより2桁ほど長
3月のボストンはまだ寒く、また風が強かった
く、「生体分子のシミュレーションで生体分子の機
ため、防寒対策を万全にしないと大変厳しい気候
能を明らかにする」というお題目はいよいよ不可能
でした。東京の冬と同程度のつもりで向かったので
ではない時代になったと思います。私自身はという
すが、完全な失敗でした。到着の当日(2/28)は
と、今回は効率の良い新たな計算手法についてポス
まだ天気が良く寒いだけだったのですが、翌日か
ター発表を行いました。実はこの発表、日本の別の
36
学会で以前発表したときは正直あまり人気がない内
ロマチンについての学会で発表することはこれが初
容だったのですが、こちらでは発表時間の終わりを
めてでした。そのため、これまで聞かれたことのな
過ぎても2時間の間ひっきりなしに他の研究者の方
いような質問や批判を受けることができ、この分野
に来ていただき、大変好評でした。これも層の厚さ
ではこういった議論が大事なんだ、ということを知
のなせる技かと思います。
ることができました。こういった経験は、普段なか
最後になりましたが、今回の学会参加の旅費を援
なか得ることができないもので、これから研究を進
助して下さいました分生研奨励会に篤くお礼を申し
めるにあたって非常に貴重なものでした。
上げます。どうもありがとうございました。
また、本学会は参加者が200人弱とそれほど大き
くないものであったにも関わらず、たくさんある
セッションで口頭発表をされた方々は、いずれも第
一線で活躍する研究者ばかりでした。どの発表も未
公表のデータが時間いっぱいに詰まったもので、こ
んな実験がなされているのかと興奮させられるもの
ばかりでした。あまりなじみの無いこの分野で、今
どういった話題が熱いのかということに触れること
ができて、これから幅広く勉強していかなければ、
と改めて思わされました。
普段の生活では、学会参加者のすべてが会場であ
情報伝達研究分野 博士課程2年 岸 雄介
るホテルに滞在していたため、朝食や夕食も共にし
会議名称:2009 Keystone Symposia/Chromatin
ました。なかなか英語がうまく話せない中でも友人
Dynamics and Higher Order
となった他の学生たちからは、日本とは違う海外で
Organization
の研究生活についてや、これからどういった研究を
開 催 地:Coeur d Alane, Idaho, USA
していきたいか、そして今後の夢についても語るこ
開催期間:2009年2月25日∼3月1日
とができ、自分の研
発表演題:Global change of the chromatin state
究者としての将来に
during neuronal maturation( ポ ス タ ー
ついて考えさせられ
発表)
ました。
最後に、本学会に
この度、財団法人応用微生物学研究奨励会からの
参加する貴重な機会
ご援助により、2009 Keystone Symposia/Chromatin
を与えてくださいま
Dynamics and Higher Order Organizationに参加す
した財団法人応用微
る機会を頂きましたことを心より感謝申し上げま
生物学研究奨励会、
す。本学会は、その名の通りクロマチンの構造的な
ならびに関係者の
変化やその制御について世界中の研究者が集まり発
方々に再度深く感謝
表し合う学会でした。シアトルから飛行機で1時
いたします。
間ほど東に飛び、車でアイダホ州に入ってすぐの
Coeur d Alane Resortというホテルで行われました。
このホテルは大きい湖に面しており、その湖にうつ
る雪をかぶった山々が美しい、学会を開催するには
とてもすばらしい環境でした。
私は、ニューロンが成熟する際にクロマチンの状
態が核全体で変化しているのではないか、という内
容をポスターで発表して参りました。この内容は、
これまで神経や発生について研究している方々の中
で発表することはあったのですが、今回のようなク
37
所内レクリエーション
3月18日御殿下の体育館でバトミントン大会が開かれまし
た。少数精鋭のメンバーで、3時間は無事に楽しく過ぎました。
入賞の声を寄せて下さった方々のコメントを載せさせて頂き
ます。
入賞ペア
1位:南部、西川ペア
2位:八杉、ヤン、杉江ペア
3位:田村、竹村、小木曽ペア
南部さん
「分生研バドミントン大会、とっても楽しかったです!まさ
か優勝できるとは思ってなかったので、感激です。一緒に組
んでくださった後藤研の西川さんのすばらしい運動神経のお
かげで、男子ペアまでも撃破しちゃいました! 皆さん、楽
しい時間をありがとうございました!」
八杉さん
「楽しかったです!」
杉江さん
「チームメイトに感謝の気持ちでいっぱいです」
Leeさん
It was a pleasant afternoon to have a good stretch of
my legs that are always behind the
computer desk. Perhaps the legs being
overstretched a bit that I had a hard
time to walk like a decent scientist
in the following three days. It was
fun indeed and my pleasure to team
up with Yasugi-san against the rest
of the "sporty crowd" in this twohour tournament. I hope the members
from our lab (sousei) have enjoyed the
afternoon as much as I did to sweat and
to laugh. At the moment finishing up
my JSPS term in Japan, it was quite a
memerable event. I thank the organizers
to have made this possible.
竹村さん
「幹事の皆様、お疲れ様でした。日頃の運動不足により、後
日筋肉痛に苦しみましたが、大変楽しい時間を過ごさせてい
ただきました。また、チームメイトの方に迷惑をかけながら、
全く活躍してないにもかかわらず、入賞までさせていただき、
有り難うございました。次回を楽しみにしております。」
首藤
「透明の靴(質量無し)を履いた、グーパーで決められたペ
アの根本君は、とても一生懸命にシャトルを追っていました。
偶然にも初心者同士の私達は、勝利に向けて頑張りました。
結果は写真の対戦表をご覧下さい。
さて、ブービー賞と言えば、下から2番目に相当するのが
一般的ですが、本来は最下位に当てられた賞です。語源に関
することなど、興味深い記事がありますのでご参照頂ければ
幸いです。
ブービー賞
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%
83%93%E3%83%BC%E8%B3%9E
http://www2.plala.or.jp/happy100/zatsugaku/booby/booby.
html」
文末になりましたが、大会にご参加いただいた皆様、ご協
力いただいた皆様にお礼申し上げます。
〈辞 職〉谷 水 直 樹 助 教(機能形成研究分野)
〈定年退職〉大 坪 久 子 講 師 (染色体動態研究分野)
〈定年退職〉矢 部 勇 助 教(情報伝達研究分野)
〈定年退職〉多 胡 義 孝 助 教(細胞形成研究分野)
教職員の異動等について
以下のとおり異動等がありましたのでお知らせしま
す。
○平成21年3月31日付
〈辞 職〉内 藤 幹 彦 准教授(高次機能研究分野)
〈辞 職〉高 田 伊知郎 助 教(核内情報研究分野)
〈辞 職〉津 田 岳 夫 助 教 (生体超高分子研究分野)
○平成21年4月1日付
〈採 用〉藤 木 亮 次 助 教(核内情報研究分野)
〈採 用〉宮 岡 佑一郎 助 教(機能形成研究分野)
〈採 用〉古 原 聡 美 総務チーム
〈配置換〉三 村 久 敏 助 教 生体超高分子研究分野
:放射光連携研究機構から
〈配置換〉小 川 治 夫 准教授 高難度蛋白質立体
構造解析プロジェクト
:生体超高分子研究分野から
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〈配置換〉矢 野 雅 彦 専門員 財務会計チーム
:本部産学連携グループ総務チームより
〈転 出〉石 川 紀世三 専門員 財務会計チーム
:医学部附属病院管理課専門員へ
〈昇 任〉大 島 大 輔 財務会計チーム主任
:財務チーム係員から
お店探訪
−高崎屋商店−
お昼にはお弁当も販売しています。
機能形成研究分野 阿部聡子
弥生キャンパスの正門の目の前にある酒屋「高崎屋」は、分生研の皆さんにとって、もっとも身近なお店の一つで
はないでしょうか。ワイン、日本酒、輸入ビールなど種類も多く、論文掲載の祝いや歓送迎会、あるいは普段?の飲
み会などに利用している方は多いはずです。
この高崎屋が東京大学よりもはるか昔からあることをご存知でしょうか。江戸時代、宝暦年間(1751-64)の創業
といわれ、幕府に勤務する武士を相手に、酒や醤油、両替商を営み、江戸を代表する「大店」になりました。弥生キャ
ンパスは高崎屋の敷地だったため、今でも発掘すると当時のものが出てくることが
あるそうです。その繁盛ぶりを示す「高崎屋絵図」には、広大な屋敷と日本庭園に、
樽の積まれた店や大きな蔵、通りを行き交う人々の賑わいや働く者たちの活き活き
とした姿が描かれています。絵図とともに数千点におよぶ高崎屋の資料は、文京ふ
るさと歴史館に収蔵されているので、興味があ
る方はどうぞ。
戦前すでにワインが国内生産されていた事も
筆者には驚きでしたが、高崎屋では長野で生産
したワインをオリジナルブランドで販売してい
ました。現在はご当主のワイン好きの息子さん
が中心となって、イタリア・トスカーナ産のワ
インをおススメしているそうなので、是非トラ
イしてみてください。
大正時代の高崎屋ブランドのワイ
ンラベル。左から右に書かれた文
字はまだ珍しかったとか。
〒113-0023 東京都文京区向丘1- 1-17
Tel:03-3811-0833 Fax:03-3815-5340
HP:http://www.hi-ho.ne.jp/ornellaia/
営業時間:AM 9:30 ∼ PM10:00
定休日:(日)、(祝)
編 集 後 記
九代目ご当主・渡邊泰男さん。
江戸時代からお店のシンボルだっ
たヒョウタンと、量り売り用徳利
を前に。
致ります。それにしても成田へ帰国した際の飛行機内での検疫
は大変物々しいものでした。(現在は全く無いとのことですが
…)何分、初めての経験。今回の反省が未来の強力なウィルス
に対して役立つことを望みます。それにしても、今年の冬はど
新幹線に乗ると雑誌を読んだり寝たりして移動時間を過ごす人を
多く見かけます。私は車窓を眺めるのが好きなので、必ず窓側の席
に座って外を見ます。山や川はもちろん、田畑、建物、線路に道路、
うなることやら…
(高難度蛋白質立体構造解析プロジェクト 小川治夫)
立て看板にいたるまで、見る対象に事欠きません。仕事での移動時
間も私にとっては楽しい旅行なのですが、多くの人は移動時間は短
く済ませたいと考えるようです。今年の3月には東京から九州に向
分生研ニュース第41号
かう夜行列車が廃止になりました。夜行列車の旅情というものは新
2009年5月号
幹線などとは比べられないほど豊かなものですが、旅情を楽しむ機
発行 東京大学分子細胞生物学研究所
会は徐々に減ってゆくようです。
編集 分生研ニュース編集委員会(小川治夫、成田新一郎、川崎善博、
(細胞形成研究分野 成田新一郎)
石川稔、三浦義治、市原美香)
お問い合わせ先 編集委員長 小川治夫
ゴールデンウィーク明けに米国出張と播磨へ立て続けに出張しま
電話 03―5841―1916
したが、無事に新型インフルエンザの攻撃を躱すことができ現在に
電子メール [email protected]
39
高等動物の生殖細胞における減数分裂特異的
染色体分配因子の解析
染色体動態研究分野 石黒啓一郎(助教)
減数分裂は相同染色体どうしの
対合による二価染色体の形成と引
続いて起こる連続した2回の染色
体分離を経て達成される(図1)
。
とりわけ減数分裂と体細胞分裂と
を比較した場合、両者の本質的な
違いは減数分裂において還元型の
染色体分配(第一分裂)が余分に
挿入されている点にあるが、その
素過程に関わる因子の同定が懸
案とされている(Ishiguro K. and
Watanabe Y., J. Cell. Science , 120,
367-369, 2007)。我々は、これまで攻め倦んでいた高等動物
の生殖細胞より新規の減数分裂特異的因子の同定とその機能
解析を行っている。
(1)減数分裂特異的Zinc fingerタンパク質染色体の解析
核内情報研究分野との共同研究のもと、マウス精巣から染
色体結合因子複合体の精製を行った。第一分裂のPachytene
期以降に発 現 する新 規Zinc finger型タンパク質(図2)は
HDAC1/2およびCyclin A1/Cdc2と複合体を形成し、相同染色
体の脱対合の時期にシナプトネマ(SC)複合体と部分的に共
局在する。興味深いことにCyclin A 1は第一分裂への移行期に
相同染色体の脱対合過程への関与が示唆されている。現在この
Zinc fingerタンパク質を含む複合体がSC複合体の脱離過程で何
らかの役割を果たしている可能性について検討を行っている。
配座固定を基盤とした新規Liver X Receptor
(LXR)リガンドの創製
生体有機化学研究分野 石川 稔(助教)
Liver X Receptor(LXR)は核
内受容体スーパーファミリーに属
し、リガンド依存的に標的遺伝子
の転写を調節することで脂質代謝
や糖代謝に重要な役割を果たして
い る と 考 え ら れ て い る。LXRに
は分布の異なるαとβの2つのサ
ブタイプが存在することが明ら
かとなっている。LXRαは肝臓の
他、小腸、脂肪組織などに局在し、
LXRβは各臓器組織に恒常的に発
石川 稔 助教(左)
現している。肝臓や小腸において
LXRが活性化されると脂質代謝やコレステロール逆転送系
に関わる遺伝子群の発現が誘導される。したがって、これら
の遺伝子の転写制御を行うことにより、動脈硬化性疾患と
いった疾病の改善効果が期待される。一方、特に肝臓におい
てSREBP-1cやFASといった脂質新生系遺伝子の転写も促進
させることで脂肪肝や高トリグリセリド血症という重篤な副
作用を誘発することが医薬開発上の問題点となっている。ま
た、遺伝子改変マウスを用いた実験により、副作用発現には
LXRαの関与が示されている。そこで、我々は副作用発現を
抑えつつコレステロール低下作用を有することが期待される
(2)減数分裂特異的動原体因子の解析
最近我々がYeast 2-hybrid 法により見出した新規減数分裂
特異的因子は、セントロメアタンパク質CENP-Cと会合して
精原細胞および卵原細胞の減数第一分裂時に動原体に局在す
る。減数第一分裂時における動原体の構造・配置は、姉妹染
色分体が同一極方向に分配されるように体細胞分裂のそれと
異なることが推測されている。現在この新規動原体タンパク
質が減数第一分裂の前期から中期にかけて還元型の染色体分
配に向けた動原体の構造変換に何らかの役割を果たしている
可能性について検討している。
生殖細胞の染色体分配の研究は、減数分裂時の染色体分配
のエラーに起因する流産やダウン症などの疾患の分子機構を
理解する上でも重要である。今回我々が見出した新規減数分
裂特異的因子の解析は、基礎生物学にのみならず生殖医療面
においても新たな展望をもたらすことが期待される。
図2 マウス精細管切片における生殖細
胞特異的因子の蛍光抗体染色像
生殖細胞特異的Zinc fingerタンパ
クは緑色、DNAは青色で示され
ている。赤色で示される二価染色
体対合部位をもつ精原細胞は、減
図1 体細胞分裂と減数分裂におけ
数第一分裂前期のステージにいる
る染色体分配様式
ことを表している。
LXRβ選択的アゴニストの創製研究に取り組むことにした。
これまでLXR研究に汎用されてきたT0901317(T1317)は
サブタイプ非選択的なアゴニストであるが、このT1317と
LXR LBDとの複合体X線結晶構造が明らかにされており、
T1317は図に示すように各サブタイプにおいて異なるコン
フォメーションをとることが明らかとなっている。そこで、
本研究の目的であるLXRβ選択的アゴニストの創製を目指
し、コンフォメーションを固定した化合物をデザイン、合
成し、LXR活性評価を行った。その結果、いくつかの化合
物にLXRβ選択的アゴニスト活性を見出すことに成功した1)。
今後は得られたリガンドを用いて、遺伝子発現制御解析なら
びにin vivo 試験を行いたいと考えている。なお本研究は、博
士課程1年の青山惇君(写真右)が中心となり実施している。
1)青山惇ら 第27回メディシナルケミストリーシンポジウ
ムポスター賞受賞
40
化学修飾ネットワーク構築原理とその構
造的基盤及び機能原理
林陽平、堀越正美(発生分化構造研究分野)
生体反応を司る要素(component)間の認識と化学反応(reaction)
の積み重ねが系(system)を構築し、生命の維持・変換が実行される。
1950-70年代には、DNA二重らせん構造の発見を端緒として、オペロン
説・遺伝暗号など生命情報の維持・変換に関する原理が見出され、1980
年代以降はそれら原理を運用した各論的支流研究が主流になった。一昔
前のような生命の維持・変換に関する根本原理の発見は行われるのであ
ろうか?
真核生物では、生命情報DNAはヒストンに巻き付いたヌクレオソー
ムを基本構造単位として存在するため、遺伝情報制御の基本的枠組みを
多種多様なヒストン化学修飾が担っている。ヒストン化学修飾による遺
伝子制御研究は、
「ある化学修飾は他因子による認識を介して更なる化
学修飾や次反応を導き、下流反応を制御する」というヒストンコード仮
説を中心に展開してきた。ところが、化学修飾残基の点変異株のほとん
どが細胞増殖に何らの異常を生じないことを、我々は見出し、その後論
文発表した(1)。この矛盾点を「部分と全体」から生じる問題と捉え、
個々の化学修飾を一つ一つ検討する従来型の研究ではなく、ヒストン化
学修飾全体を一つのシステムとして捉え、システム全体の性質に立脚し
た研究を進めた。ヒストン化学修飾の関連性に関して集積したデータを
基にグラフ理論を適用し、ヒストン化学修飾システムがスケールフリー
ネットワーク構造を有していることを見出した(Histone modification
web )。このスケールフリー性が、ヒストン化学修飾システムの点変異
に対する頑強性の基盤であることを示し、このシステムが進化過程での
多様な環境変化へ柔軟に対応してきたと結論付けるに至った(2)。
Histone modification web がこのようなシステム機能性を持ち得た
のはなぜだろうか?ヒストン化学修飾を始め、機能的特性は、その基盤
となる生体物質の構造的特性を反映しているはずである。特筆すべきは、
Histone modification web を構成する化学修飾の多くが、定まった立
体構造をとらない(不定形構造)領域で起こっていることである。不定
形構造のどのような性質が modification web の形成に必要なのであろ
うか?そこで不定形構造の高い柔軟性と動的性質に着目した。Histone
modification web の構成には、ネットワークの要素となるノード(ヒ
ストン化学修飾)とリンク(その間の制御関係)が必要である。不定形
構造のもつ柔軟性と動的性質は、化学修飾酵素や化学修飾認識ドメイン
との相互作用を容易にし、多くのリンクを生み出すことに繋がる。更に、
不定形構造の末端ほど高い柔軟性と動的性質を有することを加味すると、
リンクの出来やすさに偏りが必要であるというスケールフリーネット
ワーク構造の発生条件に合致した性質を、不定形構造は有している。従っ
て、Histone modification web を担う不定形構造は、情報の受容、処理、
変換を一括して担う生体特有の情報処理装置 Signal router を生み出
していると考えた(2)。驚きを持たれると思うが、真核生物タンパク質
の約50%に上る領域が、一部または全体が不定形構造であると推定され
ている。にも関わらず、これらがもつ生理的意義は、 Induced fit を通
した活性化以外見るべきものはなかった。従って不定形構造を基盤とし
た Signal router theory は、真核生物の特性を理解する端緒になると
考えている。
今回提唱したスケールフリー性を持つ Modification web 、そして不
定形構造を基盤とした Signal router theory は、 Negotiable border
model (3)、 ヌクレオソーム半保存的複製モデル (4)と並んで、生
命の維持・変換の仕組みを説明しうる新しい根本原理である。これらの
研究には、他から生み出された原理を基にした演繹的研究を行わない心
がけと独自の思考から生み出されるアイデア、そしてそれ故に周囲には
理解されにくい独創的研究を遂行するための強い精神力といった様々な
要素が必要不可欠であると実感している。
1. K. Matsubara et al. Global analysis of functional surfaces
of core histones with comprehensive point mutants. Genes
Cells, 12, 13-33(2007).
2. Y. Hayashi et al. Theoretical framework for the histone
modification network: modifications in the unstructured
histone tails form a robust scale-free network. Genes Cells,
14, 789-806(2009).
3. A. Kimura et al. Chromosomal gradient of histone acetylation
established by Sas2p and Sir2p acts as a shield against gene
silencing. Nature Genet., 32, 370-377(2002)
.
4. R. Natsume et al. Structure and function of the histone
chaperone CIA/ASF1 complexed with histones H3 and H4.
Nature, 446, 338-341(2007).
マウス大脳皮質発生において神経系前駆
細胞からニューロン分化細胞を選択する
機構
川口大地、吉松剛志、穂積勝人、後藤由季子(情報伝達
研究分野)
Development, 135, 3849-3858(2008)
マウス大脳皮質発生の「ニューロン産生期」に神経系前駆細胞はほぼ
11回細胞分裂する。この細胞分裂によって神経系前駆細胞とニューロン
の両方を必要な数だけ産み出す必要があるが、どのようにして必要な時
期に必要な割合で未分化細胞と分化細胞を産み出すのかは全く不明で
あった。ひとつの可能性は、適当な時期にニューロンを産み出す非対称
分裂が誘導されているのではないかというものであり、これが主流の考
え方であった。しかし本研究において我々は、非対称分裂を考えなくて
も「均一な細胞集団(未分化細胞群)
」から「不均一な細胞集団(未分
化と分化細胞が混在)」への移行を説明出来る別の可能性を考え、Notch
とNotchリガンドDelta-like 1(Dll1)経路の細胞間におけるシグナル差の
増幅機構が大脳皮質発生においてニューロンになる細胞の選択に働いて
いることを示す結果を得た。すなわち、神経系前駆細胞がニューロンに
分化するかどうかは周囲の細胞とのDll1量の差に基づいているというこ
とがわかり、周囲の細胞よりもDll1の発現量が高い細胞はニューロンに
分化するのに対し、逆に周囲の細胞よりもDll1の発現量が低い細胞は未
分化性が維持された。これまでNotchが未分化性の維持に働くことを示
した例はショウジョウバエから
哺乳類まで多く存在するが、細
胞間のNotchリガンド量の差を
きっかけとした「細胞間の競合」
による分化細胞の選択を哺乳類
の脳で示した例は初めてであ
る。このDll1量の細胞間での違
いをはじめに生むメカニズムは
不明であるが、それこそがどの
細胞が分化するかを決めるきっ
かけと成り得るため、非常に興
味深い。
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