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コンフォーカル顕微鏡

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コンフォーカル顕微鏡
第5編 マイクロマシン/MEMS製造装置
●第5編●第8章●第33節●
コンフォーカル顕微鏡
レーザーテック
1. はじめに
プション機能(波長選択、位相シフト干渉、微分干渉、
原子間力顕微鏡)を組み合わせた、最新のコンフォー
MEMSのスケールが微細化する中で、その形状は複
カル顕微鏡について紹介する。
雑になり、3次元構造観察のため、さらに高い分解能・
深い焦点深度が要求されるようになっている。
このような、MEMSを観察・評価するツールとして、 2. コンフォーカル光学系
コンフォーカル顕微鏡(光源による分類でレーザ顕微
コンフォーカル光学系は、一般の顕微鏡の光学系と
鏡とも呼ばれることが多い。しかし、光源にレーザ光
は大きく異なり、照明光を回折限界の微小スポットに
を使わない機種もあるため、以下総称としてコンフォ
まで絞り込んでサンプルに照明し、試料表面からの反
ーカル顕微鏡と表記する)が使用される機会が増えて
射光を微小面積の光検出器で受光している。点光源で
いる。その理由には、次の3点が考えられる。
発した光は、対物レンズによってサンプル上に収束す
①通常の光学顕微鏡を用いて、マイクロ加工された
る。サンプルが焦点位置にある時は、サンプルからの
サンプルの形状を観察・計測する場合、細部を観察す
反射光がピンホールやスリットを通過して光検出器上
るために倍率を上げると、3次元構造の狭い範囲だけに
に結像する。従って、コンフォーカル光学系では、焦
焦点が合い、深さ方向の観察ができず、また、深さ方
点が合った箇所の画像だけが検出できる。このように
向を観察するために倍率を下げると今度は細部がわか
して得られる光学断層像はオプティカルセクショニン
らないという、トレードオフの関係が成り立ってしま
グ画像と呼ばれる。
う。一方、コンフォーカル顕微鏡では、光学断層像
この光学系は以下の特徴がある。
(オプティカルセクショニング画像)を積算することに
①通常の光学顕微鏡に比べて平面分解能が高い。
よって、高分解能でありながら、極めて焦点深度の深
②光学断層像により高さ方向にもサブμmレベルの分
い画像を作り出すことができる。
解能を有している。
②3次元形状を簡単かつ迅速に作成するのにも、コン
これらにより、高い空間分解能を利用して、精度の
フォーカル顕微鏡は適している。コンフォーカル顕微
高い測定が可能となる。
鏡は、光学断層像と精緻なZ軸位置検出機構とによって
構成される。レーザーテックのコンフォーカル顕微鏡
3. レーザーテックのMEMSソリューション
は、Z軸の変位センサにレーザホログラム方式のリニア
当社の「オプテリクス」シリーズは従来のレーザ顕
スケールを用いて、Z軸移動量を0.01μm単位で読み取
微鏡では得られないフルカラーのコンフォーカル画像
っているため、高精度な3次元計測ができる。
を特徴とする、リアルカラーコンフォーカル顕微鏡
③コンフォーカル顕微鏡による観察と計測は光学式 「C130」
、5つの波長の切り換え機能を有するファイブラ
であり、また、大気中で観察できるため真空引きをす
インコンフォーカル顕微鏡「S130」の2機種で構成され
る必要もなく、サンプルを蒸着する必要もない。さら
てきた。これらに、位相シフト干渉機能の搭載により
に、非接触・非破壊で観察と計測ができ、サンプルの
nmの高さ分解能を実現した「S130IF」を加えた。さら
材質を選ぶことなく、その場での観察が可能となる。
に、最新モデルとして、3ラインCCDの採用で色分離が
以上のような特徴により、コンフォーカル顕微鏡が
良く、高精細画像をリアルタイムで表示できる、3CCD
多く利用されるようになってきている。本稿では、当
リアルカラーコンフォーカル顕微鏡「H1200(WIDE)
」
社が得意とする従来機種のコンフォーカル顕微鏡とオ
をラインナップしている(写真1)
。H1200(WIDE)の
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2008 マイクロマシン/MEMS技術大全
第8章 マイクロマシン/MEMS用検査・測定・評価装置
(nm)
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3
3
4
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(μm)(μm)
写真1 「オプテリクスH1200(WIDE)
」の外観
図2 Siウェーハの圧痕
層の基板の凹凸が同時に3D化されるばかりか、その間
隔を全方位にわたって測定することが可能となってい
る。フレキシブル基板の測定例を図1に示す。
3.3 S130IFの概要と性能
S130IFは、二光束干渉対物レンズ(ミラウ型)とナ
ノポジショナで実現される位相シフト干渉機能を加え
ることで、高さ分解能がS130に比べ、100倍向上してい
る。コンフォーカル顕微鏡と同一視野を、数秒間の計
図1 フレキシブル基板の測定例
測時間で1nm分解能で高さ測定ができる(高さ測定レン
ジ:約270nm)。サブμmの段差、マイクロミラーの曲
WIDEとは、それぞれ、Wavelength Selection(波長選
率測定やMEMS加工表面のナノ粗さの計測に適用でき
択)、Interferometry(位相シフト干渉計)、Differential
る。図2に圧痕の付いたSiウェーハ表面の計測例を示す
Interference Contrast(微分干渉顕微鏡)、Exceeding
。百
Objective(原子間力顕微鏡)の頭文字を表しており、 (ミラウ干渉対物レンズ100倍、測定波長:546 nm)
これら4つをオプションとして用意している。
数十nmの深さの圧痕形状とSiウェーハ表面のナノ粗さ
の様子がわかる。
3.1 C130の概要と性能
C130は、フルカラーコンフォーカルモードとカラー
3.4 H1200(WIDE)概要と性能
最新モデルであるH1200(WIDE)は、ここまで紹介
ノンコンフォーカルモードが瞬時に切り換えられ、従
した各モデルの代表的な機能が全て搭載されており、
来の3次元構造にカラー情報が加わることで、リアルな
3次元画像構築とコンフォーカルカラーでの材料の識別
極めて拡張性の高い設計となっている。
H1200(WIDE)ではMEMSの3次元形状に対して従
までもが可能である。
来の市販レンズよりはるかに大きなNAを持つ専用低倍
3.2 S130の概要と性能
対物レンズを作製し、低倍率広視野アプリケーション
S130は、多様化するサンプルに対応するため、5つの
波長(405/436/546/577/630nm)の切り換えが可能で、 において、分解能・焦点深度・傾斜面観察性能を高い
照明光の波長を変えて、サンプルの材質・構造に合っ
レベルで達成した。MEMS業界のサンプルはV字型や半
球型や高アスペクト比のサンプルが多く、H1200
た観察・計測ができる。同時に、405nmのh線を選択す
ることで、0.13μmという高い解像能力を有する。ま (WIDE)光学系は、そのようなサンプルに対して強い
た、ガラス、プラスチックなど透明材料がサンプルの
光学性能を発揮する。図3に、深さ11μm、45度の波型
場合に、多層の3次元画像を構築できる。これにより、 のプリズムシートの3次元形状の例を示す。
光源にキセノンランプを使用しているのでフルカラ
Z方向に加工された形状のものは、上層の表面状態と下
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(a)ノンコンフォーカルモード (b)コンフォーカルモード
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図5 SiC結晶表面
図3 波型のプリズムシート
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図4 MEMSパターン
ー画像を実現することができ、さらに3ラインCCDを採
用することで色再現性が良く、高精彩な観察を可能と
している。業界最高の最大1200万画素(RGB×400万画
素)の高画質表示を可能とし、新たに開発されたVFR
(Variable Frame Rate)により、業界最速の120フレー
ム/sの高速走査モードを実現している。さらに、2048画
素の1次元CCDは経年劣化もなく、高精度の計測が可能
である。そのため、MEMS製造プロセスの作成精度の
検証が、より迅速にできるようになった。また、計測
ソフトウェアには操作性を向上させるために、1クリッ
クオペレーション機能が搭載された。3D表示、高度差
計測、2D表面粗さ計測、3D表面粗さ計測などが、1ク
リックでフィルタ処理や水平補正処理までを含めて、
簡単に自動処理することが可能となった。MEMSパタ
ーンの測定例を図4に示す。
3.5 4つのオプション機能
H1200は以上のようなコンフォーカル顕微鏡の基本性
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2008 マイクロマシン/MEMS技術大全
能に、さらに、以下に説明する4つのオプションを搭載
できる。
①波長選択機能
波長選択機能(Wave)は、白色光源から干渉フィル
タの自動切り換えで(436/488/546/577/630nm)の5つ
の波長と白色とを合わせて、6色から選択することがで
きる。材料の反射率や透過率に合わせて最適な照明波
長を使うことができる。さらに、受光素子である3CCD
のR、G、Bの3チャネルの信号を分光特性に合わせて自
由に切り換えることで受光側での波長選択も可能であ
る。
②位相シフト干渉機能
位相シフト干渉機能(Interferometry)は、二光束干
渉による干渉縞から位相解析をすることで、サブnmの
分解能で形状測定する方法である。ミラウ型干渉対物
レンズを使う方式だけではなく、リニク型干渉方式も
使用することができる。ミラウ型が主に表面測定に限
定されるのに対して、リニク型の場合はガラスや透明
膜下の測定も原理的に可能である(光路補償の調整が
必要)。位相シフト干渉法は単波長の照明を使用するた
め、波長選択オプションとの併用となる。
③微分干渉機能
微分干渉機能(Differential Interference Contrast)は、
nmレベルの凹凸や傷などを高感度に可視化する観察法
である(図5)。ポラライザとアナライザを照明側と受
光側の専用ポートに取り付け、レボルバにノマルスキ
ープリズムを挿入するだけで使用できる。照明は単波
長でも白色でも使用可能である。ノマルスキープリズ
ムの出し入れの調整により、干渉コントラストを調整
することができる。白色照明の場合は干渉色の変化を
見ることもできる。ノマルスキープリズムを使用しな
第8章 マイクロマシン/MEMS用検査・測定・評価装置
図6 テストパターンの測定例(AFM:ノンコンタクトモー
ド)
い場合は、ポラライザとアナライザの回転角度調整で
クロスニコルなどの偏光観察もできる。
コンフォーカルモードでは散乱光や迷光を除去した
クリアな画像が観察できる(位相シフト干渉機能、微
分干渉機能)
。
④原子間力顕微鏡
原子間力顕微鏡(Exceeding Objective)は、顕微鏡
のレボルバに、スキャニングメカニズムが内蔵された
ユニットを取り付けることで使用できる。顕微鏡の光
軸とスキャニングエリアの中心を合わせておくことに
より、光学顕微鏡で捉えた視野中心をAFMのスキャニ
ングエリアに入れることができる。よって、光学顕微
鏡の解像の限界を超えたナノ測定がシームレスに可能
になる。
標準のスキャナの基本性能としては、走査範囲20μm
(XY)、2μm以下(Z)で、XYZいずれもサブnmの分
解能を持っている。図6にテストパターン(段差約80
nm、10μm角)を測定した例を示す。音響ボックスと
アクティブ除振台の使用により、1μmのエリアの観察
まで比較的安定して描画できる。
AFM機能は光学解像限界以下の微細な測定への利用
だけではなく、光学方式が苦手とする、深穴測定や透
明多層膜上の表面形状・ナノ粗さ測定への適用が考え
られる。
ユニットはAFMコンタクトモード、AFMノンコンタ
クトモードなどの他、各種走査プローブ顕微鏡(SPM)
モードに対応しており、様々な物性のイメージングに
も拡張可能となっている。
以上で紹介した顕微鏡には全て3次元解析ソフト(段
差測定、粗さ測定など)が標準搭載されており、電動
レボルバ(S130、H1200は標準)、自動ステージなどの
オプションも準備されている。もちろん、全モデルと
も大型ステージに対応可能である。これらの技術によ
り、サブμmオーダーでの非接触、非破壊、高スループ
ットの計測・検査を可能にしている。
また、コンパクトに設計され、搬送が容易であるた
め、製造プロセスの近くに置くことで、タイムリーに
設計値と実際値の差異の検証が可能となっている。
顕微鏡の撮像特徴は重要な要素である。観察しよう
とするサンプルの形状・材料に適合した撮像特性の顕
微鏡を選ぶことが、良い結果を得るためのキーポイン
トである。
4. おわりに
非接触、非破壊、広視野の測定技術である光学計測
は、MEMSの検査・測定・評価の幅広い範囲に対して、
今後とも重要な役割を担うものである。測定時間の短
縮と高分解能化を目指す状況において、当社のコンフ
ォーカル顕微鏡などの装置群が役立つと考えている。
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